(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-26
(54)【発明の名称】手持ち式工作機械のスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 15/16 20060101AFI20220719BHJP
H01H 15/02 20060101ALI20220719BHJP
H01H 89/00 20060101ALI20220719BHJP
H01H 9/04 20060101ALI20220719BHJP
H01H 13/06 20060101ALI20220719BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
H01H15/16 Z
H01H15/02 H
H01H89/00
H01H9/04 A
H01H13/06 A
B25F5/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524474
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2020064191
(87)【国際公開番号】W WO2020239600
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】102019114287.3
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518361790
【氏名又は名称】フェスツール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フックス、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フッゲンベルガー、フィリップ
【テーマコード(参考)】
3C064
5G010
5G052
5G206
【Fターム(参考)】
3C064AA01
3C064AA03
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA11
3C064BB52
3C064BB53
3C064BB82
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3C064CA27
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3C064CB17
3C064CB19
3C064CB62
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3C064CB82
5G010AA09
5G010KB09
5G010LB04
5G052AA07
5G052AA14
5G052BB01
5G052BB04
5G052HA06
5G206AS38K
5G206GS16
5G206KS09
5G206NS02
5G206NS06
(57)【要約】
本発明は、スイッチ(30)によって切換え可能な電気駆動モータ(16)を有する手持ち式工作機械(10)のための、又は手持ち工作機械(10)の構成要素としてのスイッチ(30)に関し、スイッチ(30)が、スイッチチャンバ(35)を有するスイッチハウジング(33)を具備し、電気的切換え要素を作動させるために、少なくとも2つの切換え位置(ML、MR)間で変位可能な切換えアクチュエータ(75)がスイッチハウジング内に配置され、切換えアクチュエータは、スイッチハウジング(33)の外側に配置された、かつ少なくとも2つの作動位置(R、L)間で変位可能なスイッチ(30)の作動要素(32)と伝達要素(70)を用いて運動結合され、伝達要素(70)は、スイッチハウジング(33)の壁の貫通開口(54)を貫通し、それにより切換え要素(24)を作動させるために作動要素(32)を変位させることによって切換えアクチュエータ(75)が変位可能である。貫通開口(54)に回転軸受(77)が配置され、伝達要素(70)が回転軸線(D)を中心として回転可能に回転軸受に支承されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ(30)によって切換え可能な電気駆動モータ(16)を有する手持ち式工作機械(10)のための、又は手持ち工作機械(10)の構成要素としてのスイッチ(30)であって、前記スイッチ(30)が、スイッチチャンバ(35)を有するスイッチハウジング(33)を具備し、電気的切換え要素(24)を作動させるために、少なくとも2つの切換え位置(ML、MR)間で変位可能な切換えアクチュエータ(75)が前記スイッチハウジング内に配置され、前記切換えアクチュエータは、前記スイッチハウジング(33)の外側に配置された、かつ少なくとも2つの作動位置(R、L)間で変位可能な前記スイッチ(30)の作動要素(32)と伝達要素(70)を用いて運動結合され、前記伝達要素(70)は、前記スイッチハウジング(33)の壁の貫通開口(54)を貫通し、それにより前記切換え要素(24)を作動させるために前記作動要素(32)を変位させることによって前記切換えアクチュエータ(75)が変位可能であるスイッチにおいて、前記貫通開口(54)に回転軸受(77)が配置され、前記伝達要素(70)が回転軸線(D)を中心として回転可能に前記回転軸受に支承されていることを特徴とする、スイッチ。
【請求項2】
前記回転軸線(D)は、前記回転軸受(77)が配置される壁を貫通することを特徴とする、請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記回転軸線(D)は、前記回転軸受(77)が配置される、又は延びる壁の壁面に対して角度をなし、特に直角であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記スイッチチャンバ(35)は、前記貫通開口(54)を除いて閉じていることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記貫通開口(54)において、前記作動要素を摺動不能に保持するための摺動防止輪郭(78A、56A)及び/又は摺動防止部が前記回転軸線(D)に対して平行に、又は前記回転軸線(D)に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項6】
貫通開口(54)及び伝達要素(70)の前記コンポーネントの一方に少なくとも1つの部分リング状又は完全リング状のリングフランジ(78B)が配置され、前記リングフランジは、貫通開口(54)及び伝達要素(70)のもう一方のコンポーネントにおける部分リング状又は完全リング状のリング溝(56B)に係合することを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項7】
前記貫通開口(54)及び/若しくは前記回転軸受(77)にシール(76)が配置されている、又は前記貫通開口(54)及び/若しくは前記回転軸受(77)がシール(76)として形成されているか、若しくはシール(76)を有することを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項8】
前記シール(76)は、前記伝達要素(70)をリング状に取り囲むことを特徴とする、請求項7に記載のスイッチ。
【請求項9】
前記シール(76)は、リング状のシール収容部(56)に係合するシールフランジ(78)を備えることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載のスイッチ。
【請求項10】
前記シール(76)がラビリンスシールを備えることを特徴とする、請求項7~請求項9のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項11】
前記作動要素(32)は、摺動軸受(60A)において前記スイッチハウジング(33)に対して並進的に支承されていることを特徴とする、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項12】
前記切換えアクチュエータ(75)と前記作動要素(32)との間、特に前記伝達要素(70)と前記作動要素(32)との間に伝達伝動装置(80)が配置されていることを特徴とする、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項13】
前記伝達伝動装置(80)は、前記スイッチハウジング(33)の外側に配置されていることを特徴とする、請求項12に記載のスイッチ。
【請求項14】
前記伝達伝動装置(80)は、前記作動要素(32)の直進運動又は並進運動を前記切換えアクチュエータ(75)の回転運動に変換するように形成されている、及び設けられていることを特徴とする、請求項12又は請求項13に記載のスイッチ。
【請求項15】
前記伝達伝動装置(80)は、クランク伝動装置(81)及び/若しくは特にラックと歯車を備える歯車伝動装置を備える、又はクランク伝動装置(81)及び/若しくは特にラックと歯車を備える歯車伝動装置によって形成されていることを特徴とする、請求項12~請求項14のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項16】
前記伝達要素(70)は、前記スイッチハウジング(33)の前記壁に配置された前記回転軸受(59)に対して前記回転軸線(D)に関して長手方向に距離をおいて、前記スイッチハウジング(33)に、特に前記スイッチハウジング(33)の、前記貫通開口(54)の向かい側に位置する壁に回転可能に支承されていることを特徴とする、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項17】
前記作動要素(32)が第1作動要素(32)をなし、かつ前記切換えアクチュエータ(75)が、第1切換え要素(24)をなす前記電気的切換え要素(24)を作動させるための第1切換えアクチュエータ(75)をなすことと、前記スイッチ(30)が、前記スイッチハウジング(33)の外側に配置され、かつ少なくとも2つの作動位置(R、L)間で変位可能な第2作動要素(31)と、第2電気的切換え要素(23)を作動させるための、前記第2作動要素(31)によって作動可能な第2切換えアクチュエータ(65)とを有し、前記第2作動要素(31)は、前記スイッチハウジング(33)の壁における第2貫通開口(53)を貫通する第2伝達要素(60)を用いて前記第2切換えアクチュエータ(65)と運動結合されていることと、を特徴とする、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項18】
前記第2伝達要素(60)は、前記スイッチハウジング(33)に対して摺動軸線(S)に沿って直進的に摺動可能に支承され、及び/又は前記第2伝達要素(60)は、摺動軸線(S)に沿って直進的に摺動可能に前記第2貫通開口(53)を貫通し、特に前記第2貫通開口(53)において摺動可能に支承されていることを特徴とする、請求項17に記載のスイッチ。
【請求項19】
前記摺動軸線(S)は、前記回転軸線(D)に対して平行であるか、又は前記回転軸線(D)に対して90°未満の、特に60°未満の、さらに好ましくは30°未満の角度で延びることを特徴とする、請求項18に記載のスイッチ。
【請求項20】
前記作動要素(31、32)は、前記スイッチハウジング(33)の同じ側に配置され、並びに/又は前記第1貫通開口(54)及び前記第2貫通開口(53)は、互いに一直線に並ぶ側壁(51、52)、若しくは共通の側壁(52)に、及び/若しくは前記スイッチハウジング(33)の同じ平坦側に配置されていることを特徴とする、請求項17~請求項19に記載のスイッチ。
【請求項21】
前記伝達伝動装置(80)の、前記第1作動要素(32)と係合した状態にある駆動部(74A)が前記スイッチハウジング(33)と前記第2作動要素(31)との間の中間空間に配置されている、又は前記中間空間内に突出することを特徴とする、請求項17~請求項20のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項22】
前記作動要素(31、32)の少なくとも一方がもう一方の作動要素(31、32)をブロックするためのブロック輪郭(90、91)を有し、予め定められた作動位置(R、L)にある一方の、又は前記作動要素(31、32)が前記もう一方の作動要素(31、32)の第1作動位置(R、L)から第2作動位置(R、L)への作動をブロックすることを特徴とする、請求項17~請求項21のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項23】
前記作動要素(31、32)は相互にブロックするように形成されていることを特徴とする、請求項22に記載のスイッチ。
【請求項24】
前記ブロック輪郭(90、91)は、前記伝達要素(70)、及び/又は前記伝達要素(70)と前記伝達要素を作動させる前記作動要素(32)との間の伝達伝動装置(80)と直接接触していない及び/又は係合していないことを特徴とする、請求項22又は請求項23に記載のスイッチ。
【請求項25】
前記第1切換えアクチュエータ(75)を収容する前記スイッチチャンバ(35)が第1スイッチチャンバ(35)をなし、前記第2切換えアクチュエータ(65)が前記第1スイッチチャンバ(35)とは別個の第2スイッチチャンバ(34)内に配置されていることを特徴とする、請求項17~請求項24のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項26】
前記第1スイッチチャンバと前記第2スイッチチャンバ(34)は、隔壁(42)によって互いに分離又は隔絶されていることを特徴とする、請求項25に記載のスイッチ。
【請求項27】
前記第1スイッチチャンバ(35)は、特にラビリンスシール及び/又は弾性シール又はゴムシールを用いて前記第2スイッチチャンバ(34)に対して密封されていることを特徴とする、請求項25又は請求項26に記載のスイッチ。
【請求項28】
前記第2スイッチチャンバ(34)は、前記第2貫通開口(53)又は前記軸受開口を除いて閉じていることを特徴とする、請求項17~請求項27に記載のスイッチ。
【請求項29】
前記第2貫通開口(53)にシール(66)が配置されていることを特徴とする、請求項17~請求項28のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項30】
前記第1切換えアクチュエータ(75)及び前記第1切換え要素は、前記手持ち式工作機械(10)の前記駆動モータ(16)の回転方向を設定するように、並びに/又は前記第2切換えアクチュエータ(65)及び前記第2切換え要素(23)は、前記手持ち式工作機械(10)の前記駆動モータ(16)をスイッチオン及びスイッチオフするように、及び/若しくは回転数を変化させるように設けられている、及び形成されていることを特徴とする、請求項17~請求項29のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項31】
前記スイッチが、少なくとも1つの切換えアクチュエータ(75)を予め定められた切換え位置(ML、MR)へ荷重負荷するためのばねアセンブリ(64A)、及び/又は少なくとも1つの切換えアクチュエータ(75)を予め定められた切換え位置(ML、MR)で係止するための係止アセンブリ(98)を有することを特徴とする、請求項1~請求項30のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項32】
前記スイッチが少なくとも1つの切換えアクチュエータ(65、75)を有し、前記少なくとも1つの切換えアクチュエータが非接触式切換えセンサとして、及び/若しくは磁石(65A、75A)として形成されている、又は磁気センサを備えることを特徴とする、請求項1~請求項31のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項33】
前記電気的切換え要素(23、24)の少なくとも一方が前記スイッチハウジング(33)の外側に、及び/又は電気的回路基板(22)に、特に前記手持ち式工作機械(10)の前記駆動モータ(16)を給電するための給電装置(21)を有する電気的回路基板(22)に配置されていることを特徴とする、請求項1~請求項32のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項34】
前記スイッチ(30)を切換え可能な少なくとも1つの電気的切換え要素(23、24)が電気的回路基板(22)に配置され、前記少なくとも1つの電気的切換え要素(23、24)が、前記スイッチハウジング(33)と前記回路基板(22)との間にサンドイッチ状に配置されている、及び/又は前記回路基板(22)が流し込み成形材料(27A)を用いて前記スイッチハウジング(33)とともに流し込み成形されていることを特徴とする、請求項1~請求項33のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項35】
前記スイッチが、少なくとも1つの切換えアクチュエータ(65)及び前記切換えアクチュエータ(75)によって作動可能な少なくとも1つの電気的切換え要素(23)を有し、前記切換え要素が、前記切換えアクチュエータ(65)による最初の作動時にスリープモードからアクティブモードへ作動可能であり、前記スリープモードにおいて、前記切換え要素(23)及び/又は前記切換え要素(23)によって作動可能な、かつ前記切換え要素と電気的に接続された前記手持ち式工作機械(10)の電気的装置が電気エネルギーを消費しない、又は前記アクティブモードの場合より少ない電気エネルギーを消費することを特徴とする、請求項1~請求項34のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項36】
前記スイッチハウジング(33)は、ハウジング底部材(36)及び前記ハウジング底部材(36)を閉鎖するためのハウジングカバー(37)を有し、伝達要素のための少なくとも1つの貫通開口(53、54)のそれぞれ1つの部分区分が前記ハウジング底部材(36)及び前記ハウジングカバー(37)に配置され、それにより前記ハウジング底部材(36)及び前記ハウジングカバー(37)が前記貫通開口(53、54)を相補的に形成し、前記ハウジング底部材及び前記ハウジングカバーが相接して配置される場合に前記伝達要素を包囲することを特徴とする、請求項1~請求項35のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項37】
前記ハウジング上部材と前記ハウジング底部材(36)との間に少なくとも1つのシール(38A、39A)が配置されていること、及び/又は前記ハウジング底部材(36)と前記ハウジングカバー(37)とが係止アセンブリ(43A)を用いて互いに係止されていることを特徴とする、請求項36に記載のスイッチ。
【請求項38】
請求項1~請求項37のいずれか1項に記載のスイッチ(30)を備える手持ち式工作機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチによって切換え可能な電気駆動モータを有する手持ち式工作機械のための、又は手持ち工作機械の構成要素としてのスイッチに関し、スイッチが、スイッチチャンバを有するスイッチハウジングを具備し、電気的切換え要素を作動させるために、少なくとも2つの切換え位置間で変位可能な切換えアクチュエータがスイッチハウジング内に配置され、切換えアクチュエータは、スイッチハウジングの外側に配置された、かつ少なくとも2つの作動位置間で変位可能なスイッチの作動要素と伝達要素を用いて運動結合され、伝達要素は、スイッチハウジングの壁の貫通開口を貫通し、それにより切換え要素を作動させるために作動要素を変位させることによって切換えアクチュエータが変位可能である。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチは欧州特許出願公開第2395527号明細書に記載されている。スイッチは、スイッチハウジングのスイッチチャンバ内に収容されている切換えアクチュエータとしての磁気センサを有する。作動要素の押圧作動によって、切換えアクチュエータが摺動可能であり、このようにして駆動モータをスイッチオンし、かつ駆動モータの回転数を変化させる。
【0003】
駆動モータのそれぞれの回転方向を調整するため、例えばねじを締める、及び外すために別個の切換え要素が設けられ、この切換え要素も磁気により動作する。しかし、回転方向スイッチの磁気的切換えアクチュエータは、強磁性塵埃、切削屑、及びそれに類するものを引き寄せる傾向があり、それにより手持ち式工作機械が使用できなくなる。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の課題は、手持ち式工作機械の改善されたスイッチ、及びこのスイッチを備えた手持ち式工作機械を提供することである。
【0005】
上記課題を解決するために、冒頭で述べた種類のスイッチにおいて、貫通開口に回転軸受が配置され、伝達要素が回転軸線を中心として回転可能に回転軸受に支承されている。
【0006】
回転軸受は、スイッチを例えば回転方向スイッチとして形成することを可能にし、すなわち、切換えアクチュエータの変位によって駆動モータの回転方向、例えば手持ち式工作機械の工具収容部の右回り又は左回りを設定可能である。
【0007】
例えば、回転軸受は滑り軸受として形成されている。しかし回転軸受が、例えば玉軸受又はころ軸受などの転がり軸受を備えることもできる。
【0008】
殊に、回転軸受は、貫通開口の構成要素又は貫通開口が配置されている壁の構成要素である。例えば、貫通開口自体が作動要素のための軸受収容部として形成されている。
【0009】
しかし、この回転軸受、又は回転軸線を中心として作動要素を支承する回転軸受を、貫通開口のすぐ横に配置することもできる。例えば、回転軸受が、貫通開口が設けられた壁から分離した回転軸受として、又は分離したコンポーネントとして形成されている転がり軸受又は滑り軸受を備えることができる。この実施形態では、貫通開口は、例えばそれ自体を作動要素のための回転軸受として形成することはできない。それでも、作動要素が貫通開口を貫通するが、貫通開口において密封されている場合はこのシナリオでも有利である。
【0010】
回転軸線が、回転軸受が配置された壁を貫通することが好ましい。例えば、回転軸線が壁の側壁面に対して平行に延び、すなわち回転軸受は、壁に直接配置されているが、スイッチハウジングの壁に対して例えば平行であり、かつ壁において延びる回転軸線を有する。
【0011】
しかし好ましい概念は、回転軸線が、回転軸受が配置されている壁の壁面に対して角度をなし、特に直角であることを企図する。回転軸線が壁面に対して斜角であり、すなわち直角でないことも問題なく可能である。例えば、伝達要素は、シャフト要素として形成されているか、又はシャフト区分を有し、シャフト区分は、回転軸受において、角度をなして壁面を貫通する回転軸線を中心として回転可能に支承されている。
【0012】
好ましい概念は、スイッチチャンバが、回転軸受が収容されているか、又は回転軸受をなす貫通開口を除いて閉じていることを企図する。したがって、すなわち伝達要素は、貫通開口を閉鎖するか、又は貫通開口において密封して収容されている。スイッチチャンバは、切換えアクチュエータを密に収容し、それにより環境の影響、例えば塵埃、特に強磁性塵埃などが、スイッチハウジング及び/又は切換えアクチュエータが配置されているスイッチチャンバに侵入し得ない。
【0013】
貫通開口には、伝達要素を摺動不能に保持するための、殊に摺動防止輪郭又は摺動防止部が回転軸線に対して平行に、又は回転軸線に沿って設けられている。したがって、すなわち伝達要素は、殊に回転軸線に関して摺動不能に貫通開口に保持されている。摺動防止部又は摺動防止輪郭は、例えば互いに係合する形状接続輪郭のアセンブリを備え、一方の形状接続輪郭が伝達要素に配置され、もう一方の形状接続輪郭が貫通開口に、又は貫通開口を有するスイッチハウジングの壁に配置されている。形状接続輪郭は、殊に回転軸線を中心とした伝達要素の回転可能性を可能にする、及び/又は伝達要素の回転軸線を中心として伝達要素を支承する、及び/又は貫通開口に配置された回転軸受の構成要素をなす。
【0014】
摺動防止輪郭は、例えば回転軸線を中心として部分リング状に、又は完全リング状に延在するリングフランジを備え、リングフランジは、部分リング状又は完全リング状のリング溝に係合する。リングフランジは伝達要素に配置され、リング溝は貫通開口に配置され得る。しかしその逆に、リングフランジが貫通開口に配置され、すなわち例えば貫通開口内に径方向内方に突出するのに対して、リング溝が伝達要素に配置されていることも可能である。リングフランジが2つ以上の部分リング状のリングフランジ区分を備えることができ、部分リング状のリングフランジ区分間には回転軸線に関して角度間隔が設けられていることは自明である。さらに、伝達要素の回転軸線に関して軸方向に距離をおいて、それぞれ互いに係合する少なくとも2対のリングフランジとリング溝が設けられ得ることは自明である。リングフランジは、例えばディスク状である。リングフランジ及び/又はリング溝は、殊に伝達要素と一体である。
【0015】
リングフランジ及びリング溝は、例えば以下に説明するシールの構成要素であり得る。特に、リングフランジ及びリング溝は、ラビリンスシールの構成要素をなすことが有利である。しかし、リングフランジ及びリング溝は、例えばこれらが部分リング状でしかない場合に密封機能を有していないことも可能である。
【0016】
貫通開口及び/又は回転軸受には、殊にシールが配置されている。回転軸受及び/又は貫通開口がシールとして形成されている、又はシールを有するならば好ましい。例えば、ラビリンスシールの構成要素は同時に回転軸受又は貫通開口の構成要素であり得る。殊に、シールと相補的なコンポーネント、例えばラビリンスシールの構成要素も伝達要素に配置されている。
【0017】
シールは、例えば滑り軸受の種類の滑りシールであり得、Oリング又はそれに類するものを備え得る。
【0018】
シールが伝達要素をリング状に取り囲むならば好ましい。例えばシールが、リング状シール収容部に係合するシールフランジを備えるならば有利である。シールフランジが、例えば伝達要素に配置されるのに対して、リング状シール収容部は回転軸受の軸受収容部に配置されている。しかし、回転軸受が伝達要素に向かって径方向内方に突出するリング状シールフランジを有し、このシールフランジが伝達要素におけるリング状シール収容部に係合することも可能である。シールフランジとしてOリングも適している。特に、シールフランジにOリング又は他のゴムシール又は弾性シールも配置されていることが可能である。
【0019】
シールがラビリンスシールを備えるか、又はラビリンスシールによってなるならば好ましい。例えば、上記のシールフランジはラビリンスシールの方式で形成され得る。伝達要素と貫通開口との間にラビリンスシールしかなく、弾性シールは設けられていないならば好ましい。ラビリンスシールは、同時に滑り軸受を形成し得るか、又は滑り軸受の構成要素であり得る。それによって、例えば伝達要素が回転軸受又は滑り軸受において回転する場合に摩耗を少なくすることができる。
【0020】
回転可能な伝達要素を駆動する、又は作動させる作動要素は、殊に摺動軸受においてスイッチハウジングに対して並進的に支承されている。摺動軸受は、スイッチハウジングの構成要素であり得るか、又はスイッチハウジングに配置され得る。摺動軸受が手持ち式工作機械の機械ハウジングに設けられているならば好ましい。
【0021】
スイッチと作動要素との間、特に伝達要素と作動要素との間には殊に伝達伝動装置が配置されている。当然のことながら、例えば伝達要素と切換えアクチュエータとの間に伝達伝動装置が配置されていることが可能である。
【0022】
伝達伝動装置は、スイッチハウジング内に、特にスイッチチャンバ内に完全に又は部分的に配置され得る。しかし殊に、伝達伝動装置は、全く、又は完全にスイッチハウジングの外側に配置されている。したがって、例えばスイッチハウジング又はスイッチチャンバ内には伝達要素の一部と切換えアクチュエータのみが配置されている。
【0023】
伝達伝動装置は、殊に作動要素の直進運動又は並進運動を切換えアクチュエータの回転運動に変換するように形成されているか、又は設けられている。この種の変換は、例えば楔伝動装置(Keilgetriebe)又は傾斜面伝動装置(Schraegflaechengetriebe)を用いて行うことができる。歯車伝動装置、特にラックと歯車との組み合わせも上記の機能を果たすことができる。例えば、作動要素には、ラック又はラック区分が配置され、ラック区分は歯車と、又は伝達要素における取り囲む歯列と噛み合う。図面に示される特に好ましい実施例は、伝達伝動装置がクランク伝動装置を備えるか、又はクランク伝動装置によってなることを企図する。
【0024】
伝達伝動装置は、殊に作動要素と結合された、及び/又は作動要素によって駆動される駆動部、並びに切換えアクチュエータを駆動する、又は切換えアクチュエータを支持する出力部を有する。駆動部及び/又は出力部が伝達要素に配置されていることが好ましい。特に、伝達要素は駆動部と出力部とを一体的に有する。
【0025】
伝達要素がクランクシャフト要素若しくはクランクシャフトとして形成されているか、又はクランクシャフトとともに回転可能、若しくはクランクシャフトと固定結合されているならば有利である。例えば、伝達要素は、スイッチハウジングの貫通開口に回転可能に支承されているシャフト区分を有する。シャフト区分からクランクアームが角度をなして、特に直角に突出する。クランクアームからもまた有利には作動アームが角度をなして、特に直角に突出する。シャフト区分及び作動アームは、殊に互いに平行に延びるか、又は互いに平行に延びる長手方向延在を有する。シャフト区分、クランクアーム、及び作動アームは、例えば段状輪郭を形成するか、又は側面視で段状に延びる。シャフト区分だけがスイッチハウジングに係合する、及び/又は貫通開口を貫通するならば好ましい。シャフト区分は、例えば互いに反対側で貫通開口の前に突出する。さらに、スイッチハウジングにおけるシャフト区分を密封するための少なくとも1つのシール、及び/又は摺動防止輪郭の1つ、及び/又は、スイッチハウジング、特に貫通開口におけるリング溝若しくはリングフランジのどちらかに係合するリング溝若しくはリングフランジの少なくとも一方がシャフト区分に配置されているならば有利である。
【0026】
伝達要素が、貫通開口を有するスイッチハウジングの上記の壁若しくは側壁、又は貫通開口を有するスイッチハウジングの壁若しくは側壁の前に自由に、スイッチハウジングの壁又は側壁によって画定されるスイッチチャンバ内に突出するシャフト区分を有するならば有利である。シャフト区分に上述のシール、及び/又は摺動防止輪郭の1つ、及び/又は回転軸線を中心としに部分リング状若しくは完全リング状に延在するリングフランジ、及び/又は部分リング状若しくは完全リング状のリング溝が配置されていることが有利である。シャフト区分の少なくとも1つの部分リング状又はリング状のリングフランジが貫通開口におけるリング溝に係合するのに対して、シャフト区分におけるリング溝は、貫通開口における、回転軸線に対して径方向に突出する突出部、例えばリングフランジと係合している。
【0027】
伝達要素の上記の2つの実施形態では、シャフト区分が設けられている。シャフト区分には、殊に切換えアクチュエータが配置されている。回転軸線を中心とした伝達要素の回転作動のために設けられた、かつシャフト区分に配置された伝達要素の作動アーム又はクランクアームは、殊に、回転軸線に関して径方向に、切換えアクチュエータよりも大きくシャフト区分から突出する。切換えアクチュエータは、例えば非接触式切換えセンサ、特に磁気センサ又は磁石である。
【0028】
しかし、伝達伝動装置が作動要素の第1方向での直進運動方向を、第1方向とは異なる第2方向に、例えば第1方向に対して角度をなして、特に直角方向の切換えアクチュエータの直進変位に方向転換させることも可能である。
【0029】
伝達伝動装置には、殊に一方の作動要素が予め定められた作動位置にある場合にもう一方の作動要素をブロック可能であるブロック輪郭が配置されていない。
【0030】
伝達要素は、殊に、スイッチハウジングの壁に配置されている回転軸受に、及びこれに加えて、回転軸線に関して長手方向に距離をおいてスイッチハウジングに、例えば貫通開口の向かい側に位置するスイッチハウジングの壁に支承されている。伝達要素がスイッチハウジングの互いに反対側の壁に、回転軸線に対して回転可能に支承されているならば有利である。
【0031】
有利な概念は、スイッチが上記の作動要素及び切換えアクチュエータを有するだけでなく、作動要素が第1作動要素をなし、切換えアクチュエータが、第1切換え要素である切換え要素を作動させるための第1切換えアクチュエータをなすことを企図する。これに加えて、スイッチは、スイッチハウジングの外側に配置され、かつ少なくとも2つの作動位置間で変位可能な第2作動要素と、第2電気的切換え要素を作動させるための、第2作動要素によって作動可能な第2切換えアクチュエータとを有する。したがって、すなわちスイッチは、第2切換えアクチュエータ及び第2電気的切換え要素を用いて第2機能を果たすことができる。
【0032】
第2作動要素は、殊にスイッチハウジングの壁における第2貫通開口を貫通する第2伝達要素を用いて第2切換えアクチュエータと運動結合される。この壁は、第1切換えアクチュエータの伝達要素も回転可能に支承されているのと同じ壁である。
【0033】
第2伝達要素も同様にスイッチハウジングに対して回転可能に支承され得る。しかし第2伝達要素がスイッチハウジングに対して直進的に摺動軸線に沿って支承されているならば好ましい。
【0034】
第2伝達要素が摺動軸線に沿って直進的に摺動可能に貫通開口を貫通する、例えば貫通開口において摺動可能に支承されているならば有利である。その場合、摺動軸線が第1切換えアクチュエータの回転軸線に対して平行であることが特に好ましい。
【0035】
第2伝達要素及び第2切換えアクチュエータによって、例えば駆動モータをスイッチオン可能及び/若しくはスイッチオフ可能、並びに/又は駆動モータの回転数に関して変更可能である。
【0036】
作動要素がスイッチハウジングの同じ側に配置されているならば好ましい。それに伴い、作動要素が操作者によって同じ側から操作され得る。
【0037】
第1伝達要素の回転軸線と第2伝達要素の摺動軸線とが互いに90°未満、特に60°未満、特に好ましくは30°未満の角度をなすことが有利である。
【0038】
第1伝達要素の回転軸線と第2伝達要素の摺動軸線とが互いに平行である、又は互いに平行に延びるならば有利である。
【0039】
作動要素の少なくとも1つ又は両方の作動要素が、もう一方の作動要素をブロックするためのブロック輪郭を有することが好適である。特に、作動要素及び/又は作動要素のブロック輪郭が相互にブロックするように形成されているならば有利である。例えば、作動要素の一方が予め定められた作動位置、例えば中間作動位置で、もう一方の作動要素の第1作動位置から第2作動位置への作動をブロックすることが可能である。したがって、例えば、摺動運動し得る作動要素は、この作動要素を作動されない出発位置から作動位置へ変位させた場合に第1作動要素の作動をブロックし、それにより、例えば、駆動モータがすでに回転している場合に駆動モータの回転方向を切り換えることができないことが企図され得る。しかし、回転方向のための作動要素、殊に第1作動要素が、第1作動要素が所定の第1作動位置又は第2作動位置にあり、第1作動位置と第2作動位置との間の中間位置にあるのではない場合にのみ、例えば駆動モータをスイッチオンすることができる第2作動要素の作動を可能にすることも可能である。第1作動位置及び第2作動位置において、第1作動要素によって、例えば駆動モータの右回り又は左回りを調整可能である。
【0040】
ブロック輪郭は、殊にそれぞれの作動要素に、特にそれぞれの作動要素の作動体又は作動ハウジングに直接配置されている。
【0041】
第1切換えアクチュエータを有するスイッチチャンバは、好適には第1スイッチチャンバをなす。第2切換えアクチュエータは、この第1スイッチチャンバとは別個の第2スイッチチャンバ内に配置されている。したがって、すなわち2つの切換えアクチュエータは別々のスイッチチャンバ内に配置されている。
【0042】
例えば、第1スイッチチャンバと第2スイッチチャンバが隔壁によって互いに分離又は隔絶されていることが可能である。隔壁は、例えばスイッチハウジングの側壁又は周壁と接続され得る。
【0043】
さらに、第1スイッチチャンバが第2スイッチチャンバに対して密封されているならば有利である。例えば互いに係合する、並びにスイッチチャンバを互いに密封及び分離する密封輪郭、密封突出部、又はそれに類するものが設けられている。第1スイッチチャンバと第2スイッチチャンバとの間に少なくとも1つのラビリンスシール及び/又は弾性シール又はゴムシールが設けられているならば有利である。
【0044】
第2スイッチチャンバは、好適には、第2貫通開口又は第2伝達要素のための軸受開口を除いて閉じているか、又は封止されている。例えば、第1スイッチチャンバ及び/又は第2スイッチチャンバは周壁とそれぞれ1つの底壁と上壁とによって取り囲まれている。
【0045】
第2貫通開口又は第2伝達要素のための軸受開口には、殊にシール、例えばリングシール、Oリング、又はそれに類するものが配置されている。第2伝達要素において、すでに第1伝達要素との関連で述べた密封措置、すなわち例えばリング状のシール収容部に係合するシールフランジも問題なく可能である。
【0046】
スイッチの場合に、スイッチが少なくとも1つの切換えアクチュエータ、特に第2切換えアクチュエータを予め定められた切換え位置へ荷重負荷するためのばねアセンブリを有することが企図されていることが好ましい。少なくとも1つの切換えアクチュエータを予め定められた切換え位置で係止又は固定するための係止アセンブリ、クランプアセンブリ、又はその他の固定アセンブリが有利である。特にスイッチの回転方向の設定を固定するために、例えば第1作動要素、又は第1作動要素と結合された部材を係止アセンブリ又は固定アセンブリを用いて係止可能である。
【0047】
ばねアセンブリ又は係止アセンブリは、切換えアクチュエータに直接作用することができるが、切換えアクチュエータをそれぞれ作動させる作動要素に作用することもできる。
【0048】
少なくとも1つの切換えアクチュエータ、殊に両方の切換えアクチュエータは磁石として形成されているか、又は磁気センサ及び/若しくは、例えば静電容量式若しくは光学式センサなどの非接触式切換えセンサを有するか、又は磁気センサ及び/若しくは、例えば静電容量式若しくは光学式センサなどの非接触式切換えセンサのように形成されている。当然のことながら、例えば機械的に作動する作動原理、光学式センサなどの他の作動原理も問題なく可能である。切換えアクチュエータは、例えば電気接点を、例えばスイッチオン位置又はスイッチオフ位置との間で作動させることもできる。
【0049】
電気的切換え要素の少なくとも1つは、スイッチハウジングの外側及び/又は回路基板に配置されていることが好適である。回路基板が手持ち式工作機械の駆動モータを給電するための給電装置の構成要素をなすことが好適である。それに伴い、例えば回路基板に、スイッチによって作動可能な1つ又は複数の切換え要素がすでに配置されていることが可能である。したがって、スイッチは、切換え要素を有することができるが、必ずしも有していなくてもよい。切換え要素が回路基板の構成要素であるのに対して、少なくとも1つの切換えアクチュエータが本発明によるスイッチの構成要素であるならば十分である。
【0050】
スイッチを切換え可能な1つ又は複数の電気的切換え要素が回路基板に配置されていることが有利であり、それぞれの切換え要素は、殊にスイッチハウジングと回路基板との間にサンドイッチ状に配置されている。これに代えて、又はこれに加えて、回路基板が流し込み成形材料を用いてスイッチハウジングとともに流し込み成形されているならば有利である。スイッチハウジング又はスイッチが、回路基板に向かって突出し、かつそれぞれの切換え要素のための収容能力を制限する密封突出部を有するならば好ましい。それに伴い、例えば、流し込み成形材料を切換え要素まで流すのではなく、密封突出部によって、いわば切換え要素のためのキャビティの外側で停止させることが可能である。
【0051】
本発明は、さらに上記の記載によるスイッチを有する手持ち式工作機械に関する。
【0052】
本発明による手持ち式工作機械は、殊にねじ回し機及び/又は穿孔機である。しかし、他の手持ち式工作機械、特に本発明によるスイッチを用いて駆動モータの回転方向を、例えば右回り又は左回りに設定可能な手持ち式工作機械も問題なく本発明によるスイッチとともに形成することができる。
【0053】
スイッチハウジングは、殊に2部分からなる、及び/又は相接して配置された状態において1つ又は複数のスイッチチャンバを画定する互いに適合するハウジングシェルを有する。例えば、スイッチハウジングは、ハウジング底部材を備え、ハウジング底部材はハウジングカバーによって覆われている。ハウジング底部材及びハウジングカバーには、それぞれもう一方の部材の方向に突出する側壁がそれぞれ設けられ得る。2つのハウジング部材であるハウジング底部材とハウジングカバーとの間に殊にシールが設けられている。ハウジング部材、すなわちハウジング底部材とハウジングカバーとは相補的に、貫通開口又は上記の伝達要素の一方又は両方のための軸受開口を画定することができる。
【0054】
以下、図面を用いて本発明の一実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】スイッチを備え、スイッチの機械ハウジングが開いている手持ち式工作機械の側面図を示す。
【
図2】
図1による手持ち式工作機械の給電装置及びスイッチの上面図を示す。
【
図3】スイッチハウジングが開いている、かつ第2作動要素又はスイッチオン要素が作動されない
図1及び
図2によるスイッチの側面図を示す。
【
図4】第1作動要素がスイッチオン位置に作動された
図3による図を示す。
【
図5】第2作動要素が中立作動位置にある
図1~
図4による切換え要素の斜視図を示す。
【
図6】
図1による手持ち式工作機械の駆動モータの左回りに割り当てられた第1作動位置に作動要素を変位させた
図5による図を示す。
【
図7】駆動モータの右回りに割り当てられた第2作動位置に第2作動要素を変位させた
図5又は
図6による図を示す。
【
図8】
図5による作動位置に相当する
図3の切断線A-Aに沿う
図1~
図7による切換え要素の断面図を示す。
【
図9】第1作動要素が
図6による作動位置にある
図8による断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
手持ち式工作機械10が機械ハウジング11を有し、機械ハウジング内には駆動モータ16を有するドライブトレイン15が配置されている。ドライブトレイン15は駆動部12に入っていて、操作者によって掴まれる、又は握られるハンドグリップ部13が駆動部から突出する。ハンドグリップ部13は、例えばピストルのハンドグリップの方式で、駆動部12から角度をなして、特に約80~90°の角度で突出する。
【0057】
駆動モータ16は、例えばドライバビット、ドリル、又はそれに類するものを収容可能な相応の工具収容部を有する出力要素19を直接駆動し得る。しかしここでは、駆動モータ16と出力要素19との間に伝動装置17が接続されている。
【0058】
ドライブトレイン15、それに伴い手持ち式工作機械10全体の制御及び作動のために、給電装置21を備える制御モジュール20が設けられている。制御モジュール20は、実質的にハンドグリップ部13内に入っている。機械ハウジング11についてさらに述べておきたいのは、図面には後ろの片方のハウジング部材14のみが示されているが、このハウジング部材と相補的な、かつ図示されたハウジング部材14と一緒に機械ハウジング11の内部空間を閉鎖するハウジング部材は図面に見えないということである。
【0059】
給電装置21は、駆動モータ16を制御するため、特に駆動モータに給電するための図面に見えない種々の電子及び電気部品が配置されている基板22を備えている。しかし例えば磁気センサである切換え要素23及び24は模式的に示されている。切換え要素23によって、例えば給電装置21、及びそれに伴い駆動モータ16をスイッチオン又はスイッチオフすることができる。それに加えて、切換え要素23によって駆動モータ16の回転数を予め定めることができる。切換え要素23を、アクセル切換え要素(Gasgeber-Schaltelement)と呼ぶこともできる。切換え要素24を用いて、駆動モータ16の回転方向、例えば右回り又は左回りが調整可能である。
【0060】
給電装置21は、電線25を用いて駆動モータ16、特に駆動モータの、図面に詳しく示されない励磁コイルアセンブリの励磁コイルと接続されている、又は接続可能である。駆動モータ16は、例えばブラシレスモータ又は電気的に整流されるモータなどである。しかし、切換え要素23及び24を切換え可能なスイッチ30をユニバーサルモータ又はその他の電気モータとともに使用することも可能であろう。
【0061】
給電装置21は、手持ち式工作機械10に電気エネルギーを供給できるようにするための供給インターフェイス28と電線26を用いて接続されている、又は接続可能である。例えば、図示されないが、例えば110Volt又は230Voltの交流電圧の電気供給網に接続するための電気供給線、例えば電源ケーブルを供給インターフェイス28に設けることができる。しかしここでは、手持ち式工作機械10は電線なしで作動可能な手持ち式工作機械である。供給インターフェイス28は、模式的に示唆された電気エネルギー貯蔵器29、例えばバッテリパックを接続するために用いられる。エネルギー貯蔵器29に貯蔵された電気エネルギーは、給電装置21、したがって駆動モータ16に供給するために用いられる。
【0062】
しかし、特に塵埃負荷のある環境で手持ち式工作機械10を作動させる場合、壊れやすい電気的部品、切換え要素、又はそれに類するものが汚れる恐れがある。特に問題があるのは、例えば欧州特許出願公開第2395527号明細書によるスイッチの磁気センサなどの磁気センサに磁気的に付着し得る強磁性塵埃である。しかしスイッチ30ではこれらの問題が生じないか、又は格段に低減された範囲で生じる。
【0063】
スイッチ30は、切換え要素23及び24を作動可能な作動要素31及び32を備えている。すなわちそれに対応して、作動要素31により、駆動モータ16をスイッチオン及びスイッチオフすることができ、駆動モータの回転数に影響を及ぼすことができるのに対して、作動要素32は、駆動モータ16の回転方向を設定するために設けられている。
【0064】
スイッチ30は、スイッチハウジング33を有し、スイッチハウジング内に別々にスイッチチャンバ34及び35が設けられている。スイッチハウジング33は、ハウジングカバー37によって閉鎖されているハウジング底部材36を備えている。2つのスイッチチャンバ34及び35は、スイッチチャンバ34及び35の側壁51、52における貫通開口53、54を除いて周囲側が閉じている。これに加えて、スイッチチャンバ34及び35間には、スイッチチャンバ34及び35を互いに分離する隔壁42がある。
【0065】
ハウジング底部材36とハウジングカバー37は互いに相補的な、かつスイッチチャンバ34、35を閉鎖するハウジング部材36A、37Aを形成する。
【0066】
ハウジング底部材36は底壁45を有し、この底壁から周壁46が突出する。ハウジングカバー37は上壁47を有し、この上壁から周壁48が突出する。周壁46、48の端面と、ハウジング底部材36及びハウジングカバー37の、隔壁42を形成する壁区分とは、それぞれの端面で互いに向かい合う。
【0067】
周壁46、48及び隔壁42の隔壁壁区分のこれらの端面には、スイッチチャンバ34、35を画定するシール突出部38、39と、シール突出部と相補的にシール収容部40、41が設けられ、シール収容部にシール突出部38、39が密封係合し、それに伴いシール38A、39Aを形成する。シール38A、39Aは、スイッチチャンバ34、35を相互に、かつ周囲環境に対して密封する。シール突出部38、39は、例えば収容溝として形成されるシール収容部40、41に係合するばねの方式で形成されている。
【0068】
シール突出部38、39は、シール収容部40、41と一緒に例えばラビリンスシールを形成する。シール突出部38、39の代わりに、例えば、特にOリング、シールリップの方式でゴムシールが嵌め込まれるシール収容部を設けることも問題なく可能である。さらに、シール突出部38、39を弾性シール突出部又はゴムシール突出部として形成することもできる。
【0069】
スイッチチャンバ34及び35がシール38A、39Aによって相互に密封されている、及び/又は密に互いに分離されていることが特に有利である。例えば、シール38A、39Aは、ラビリンスシールの方式でシール区分38Bを備え、シール区分は、スイッチチャンバ34及び35が直接隣接する領域35Aに沿って延在する。例えば、シール区分38Bは、ラビリンスシールの方式で互いに係合するシール突出部38、39及びシール収容部40、41の区分を備える。
【0070】
したがって、すなわち、2つのスイッチチャンバ34、35は、シールアセンブリによって環境に対して密封される一方で、相対しても密封されている。すなわちスイッチチャンバ34、35の内部空間に収容された切換えアクチュエータ65、75は、環境の影響から守られている。
【0071】
ハウジング底部材36及びハウジングカバー37は、係止アセンブリを用いて互いに係止されている。例えば、ハウジング底部材36に係止突出部43、特に係止フック又はそれに類するものが設けられ、これらはハウジングカバー37の係止収容部44に係合する。係止突出部43及び係止収容部44は係止アセンブリ43Aをなし、例えば周壁46、48の領域に設けられている。好ましくは、互いに間隔をおいて配置された複数の係止突出部及び係止収容部が設けられ、それによりハウジングカバー37がハウジング底部材36に堅固に保持される。当然のことながら、ハウジング底部材36とハウジングカバー37との接着、溶接、又はそれに類する他の接続も可能であり得、それによりこれらの2つの部材が互いに堅固に保持され、スイッチチャンバ34、35が密封されている。
【0072】
スイッチハウジング33、例えばハウジングカバー37に、電線、特に電線25を収容するのに適した電線収容部49が設けられることが有利である。
【0073】
さらに、スイッチハウジング33は、支持脚50を用いて回路基板22に支持されている。支持脚50によって、底壁45と回路基板22との間に距離が設けられ、この距離で切換え要素23、24、例えば半導体素子がサンドイッチ状に配置されている。底壁45が、切換え要素23、24と接触し、例えばスイッチ30の方を向いた上面に面状に当接することが可能である。しかし、底壁45と切換え要素23、24との間に距離が設けられていることも可能である。底壁45から、殊にシール突出部51Aが回路基板22の方向に突出し、シール突出部は、切換え要素23及び/又は切換え要素24が配置される内部空間を画定する。すなわち、スイッチハウジング33は、シール突出部51Aを除いて流し込み成形材料27Aを用いて導体本体22とともに流し込み成形されることが有利であり、それにより切換え要素23、24が流し込み成形材料27Aと接触せず、いわば流し込み成形材料27Aと底壁45と回路基板22とによって閉鎖されたキャビティに収容されている。流し込み成形材料27Aは、流し込み成形体27を形成し、この流し込み成形体は、スイッチハウジング33を回路基板22に保持し、殊に回路基板22に配置された電気部品を環境の影響から守る。
【0074】
作動要素31は、伝達体60を用いて切換えアクチュエータ65と接続されている。切換えアクチュエータ65は、例えば磁石を備えるか、又は磁石65Aによってなり、この磁石の作用によって切換え要素23を作動可能である。伝達要素60は、摺動ガイド又は摺動軸受60Aの構成要素をなす。伝達要素60は、シャフト区分61を有し、シャフト区分は保持区分62、例えば保持突出部で作動要素31と接続され、作動要素の、例えば保持収容部31A、特に差込み収容部に係合する。したがって、伝達要素60は、作動要素31からスイッチハウジング33の方向に突出し、スイッチハウジングに係合する。
【0075】
作動要素31の反対側に位置するシャフト区分61の長手方向端部にはキャリッジ63が配置され、キャリッジはキャリッジガイド57において摺動軸線Sに関して直進的に案内されている。キャリッジガイド57がスイッチチャンバ34に設けられ、それによりキャリッジ63は、スイッチチャンバ34内に摺動軸線Sに関して、又は摺動軸線Sに沿って摺動可能に収容されている。キャリッジガイド57は、キャリッジ63及びスイッチチャンバ34に例えばガイド突出部57A及びガイド収容部57Bを備えている。
【0076】
摺動軸線Sと回転軸線Dは互いに平行である。
【0077】
キャリッジ63には切換えアクチュエータ65、例えば磁石が配置されている。キャリッジ63、及びそれに伴い切換えアクチュエータ65を摺動軸線Sに沿って変位させることによって、切換え要素22に対する切換えアクチュエータ65の相対ポジションを調整可能であり、それにより切換え要素が異なった切換え位置をとる。すなわち、例えばスイッチオフ位置に相当する作動位置Aを出発点として作動要素31を作動位置E、すなわちスイッチオン位置の方向に作動させた場合(
図4)、切換えアクチュエータ65の磁界が切換え要素23を作動させ、例えば駆動モータ16をスイッチオンするか、又はスイッチオフするか、又は駆動モータの回転数を変化させる。
【0078】
有利な措置は、作動要素31を始めて作動する場合に、切換え要素23が作動位置Aから作動位置Eの方向にいわばウエイクアップされ、給電装置21の残りのコンポーネントを作動させることを企図する。切換え要素31が予め定められた時間作動されないままである、すなわち作動位置Aをとる場合、切換え要素23は、手持ち式工作機械10又は手持ち式工作機械の電子コンポーネント、特に給電装置21をスイッチオフし、すなわち、ある種のスリープモードの状態になり、それにより電気エネルギー消費が最小限となるか、それどころか遮断される。
【0079】
切換えアクチュエータ65は、貫通開口53の反対側、すなわち支柱58で支持されているばね64を有するばねアセンブリ64Aによって作動位置Aの方向にばね荷重が負荷されている。したがって、すなわち操作者は、操作力BKを用いて切換えアクチュエータ65をばね64のばね力に抗して作動位置Aから作動位置Eの方向に作動させることができる。
【0080】
伝達要素60のための摺動軸受の軸受収容部でもある貫通開口53に殊にシール66が配置されている。シール66、例えばシールリング、特に発泡材からなるシールリング及び/又はOリングに伝達要素60が貫通し、かつシールは伝達要素の外周に密封当接する。切換えハウジング33、特に側壁51において貫通開口53の近くに、シール66のためのシール収容部55、例えばリング溝が設けられ、リング溝にシール66が収容される。ハウジング底部材36及びハウジングカバー37は、側壁51の領域に軸受収容部67又は貫通開口53の部分区分67A、67Bを有する。軸受収容部67又は貫通開口53に、伝達要素60が摺動軸線Sに関して直進的に案内されている。軸受収容部67は、例えばハウジング底部材36及びハウジングカバー37に配置されたスリーブ状の部分区分67A、67Bを備えている。
【0081】
切換えアクチュエータ75を作動させるために、伝達要素70が設けられ、伝達要素は、スイッチハウジング33に対して回転軸線Dを中心に回転可能に支承されている。伝達要素70がシャフト区分71を有し、シャフト区分は、実質的にスイッチチャンバ35内に入っていて、スイッチチャンバ35の側壁52又はスイッチハウジング33における貫通開口54を貫通する。貫通開口54は、側壁52における回転軸受77の軸受収容部でもある。ハウジング底部材36及びハウジングカバー37には、軸受収容部79又は貫通開口54のスリーブ状の部分区分79A、79Bが設けられている。
【0082】
側壁52の向かい側では、シャフト区分71が回転軸受59Aの軸受収容部59に回転可能に支承されている。例えば、軸受収容部59を形成するために、周壁46の壁区分の前、及び/又は周壁48の壁区分の前に支柱区分又は壁区分59Bが突出する。
【0083】
軸受収容部59と回転軸受77との間で、切換えアクチュエータ75、例えば磁石75Aがシャフト区分71に、例えば収容部73に配置され、この切換えアクチュエータによって切換え要素24を作動可能である。回転軸線Dに対する切換えアクチュエータ75のそれぞれの回転位置又は角度位置に依存して、切換えアクチュエータ75が、駆動モータ16の互いに逆の回転方向、例えば右回り及び左回りに割り当てられている切換え位置間で変位可能である。その際、例えば摺動要素として形成されている作動要素32は、作動位置R及びLをとる。
【0084】
作動要素32は、機械ハウジング11において調整軸線BSに沿って支承されている。機械ハウジング11は、例えば軸受収容部95を有し、この収容部には、作動要素32が調整軸線BSに関して摺動可能に支持されている。作動位置Rにおいて、例えば作動要素32の作動区分96は、機械ハウジング11の一方の側の前に、作動要素32の作動区分97が機械ハウジング11のもう一方の反対側の前に突出するより大きく突出する。すなわち、操作者は、作動要素32を作動位置Rから作動位置L又はその逆に作動させるために、作動区分96又は97の1つを押す。
【0085】
作動要素32の調整軸線BSに沿う直進運動を回転軸線Dを中心とした伝達要素70の回転運動に変換するために、伝達伝動装置80が設けられている。伝達伝動装置80は、例えばクランク伝動装置81である。例えば、伝達要素70のシャフト区分71からクランクアーム72が角度をなして、特に直角に突出する。クランクアーム72からも作動アーム74が角度をなして突出し、作動アーム74、クランクアーム72、及びシャフト区分71が側面視で段状に延びる。したがって、すなわちシャフト区分71の長手軸線(回転軸線Dに相当する)と作動アーム74の長手軸線とは互いに平行である。
【0086】
クランクアーム72は、回転軸線Dを中心として回転可能であり、回転軸線Dを中心として円軌道で旋回する。クランクアーム72は、作動要素32から突出する連行突出部82間に、旋回軸線Kを中心として旋回可能に収容されている。すなわち連行突出部82間には、作動アーム74のための回転軸線又は旋回軸線Kを有する回転軸受又は旋回軸受83が設けられている。したがって、スイッチハウジング33の外側に配置された伝達要素70の構成要素及び回転軸受82がクランク伝動装置81を形成する。
【0087】
図面に模式的に示されるが、例えば、作動要素32の歯区分182と噛み合うシャフト区分71に歯車172をクランクアーム72の代わりに配置することも問題なく可能であり、歯区分は、例えば作動要素32の、この歯車172の方を向いた側に配置されていて、作動要素の作動区分96、97間に延在する。
【0088】
クランク伝動装置81と、それに伴い伝達伝動装置80は、スイッチハウジング33の外側に配置されている。これに対して、切換えアクチュエータ75、例えば磁石は、スイッチハウジング33、すなわちスイッチチャンバ35の内側に配置されている。
【0089】
作動アーム74は、伝達伝動装置80の、及び同時に伝達要素70の駆動部74Aをなす。シャフト区分71は、伝達伝動装置80の、及び同時に伝達要素70の出力部71Aをなす。したがって伝達要素70は、駆動部74A及び出力部71Aを一体的に有する。
【0090】
回転軸受77にはシール76が配置され、それにより伝達要素70とスイッチチャンバ35との間の移行領域が密封される。シール76は、例えばシャフト区分71の前に、径方向外方に突出するとともにスイッチハウジング33のシール収容部56に係合する、例えばリングフランジ78Bとして形成されるシールフランジ78を備えている。シール収容部56は、側壁52に例えばリング溝56Bを備えている。
【0091】
これに加えて、シールフランジ78及びシール収容部56によって、伝達要素70が回転軸線Dに関して長手方向に摺動可能にスイッチハウジング33に保持されている。したがって、シールフランジ78及びシール収容部56は、伝達要素70を回転軸線Dに関して摺動不能に貫通開口54に摺動防止輪郭78A及び56Aを形成する。摺動防止輪郭78A及び56Aは、形状接続的に互いに係合し、及び/又は回転軸線Dに対して垂直の支持輪郭を有するか、若しくは形成し、それにより摺動防止輪郭は、伝達要素70を回転軸線Dに関して摺動不能に保持する。しかし摺動防止輪郭78A及び56Aは、スイッチハウジング33に対する回転軸線Dを中心とした伝達要素70の回転可能性を可能にする。
【0092】
切換え要素24は、切換えアクチュエータ75、例えば磁石のそれぞれの角度位置又は切換え位置MN、ML、MRに依存して、例えば駆動モータ16を右回り又は左回りに調整可能な、異なった切換え位置をとる。切換え位置MN、ML、MRは、作動要素32の作動位置N、L、Rに割り当てられ、及び/又はこれらの作動位置と相関関係にある。切換え位置MN、ML、MRにおいて、切換えアクチュエータ75の磁界が切換え要素24を異なった方向に貫通し、それにより例えば異なったセンサ信号又は制御信号SIGを制御装置21A、例えばマイクロコントローラに出力するために切換え要素24が制御される。制御装置21Aの切換え要素24は、この制御信号又はセンサ信号を用いて、制御装置が例えば、左回転方向又は右回転方向に駆動モータ16を給電するために給電装置21を制御することを設定する。
【0093】
しかし一義的な回転方向が調整されない場合、作動要素32が、すなわち例えば中間又は中立作動位置Nをとり、切換えアクチュエータ75が中間、いわゆる定義されない切換え位置MNをとる場合、ブロック輪郭90、91は、作動要素31が作動位置Aから作動位置Eの1つに作動し得ないようにする。その一方で、作動要素31を作動位置Eの1つに作動させた場合、駆動モータ16の回転方向の変更がブロックされ、すなわち作動要素31を作動位置Eに、すなわち駆動モータ16のスイッチオン位置に作動させた場合にブロック輪郭90、91は、作動要素32の作動位置Rから作動位置Lへの、そしてその逆の変位を阻止する。
【0094】
ブロック輪郭90、91は、互いに直接作用を及ぼし合う。ブロック輪郭90、91が伝達伝動装置80又は伝達伝動装置のコンポーネントに直接作用しないことが有利である。ブロック輪郭90、91は、伝達伝動装置80若しくは伝達伝動装置のコンポーネント及び/又は伝達要素70と係合しない、及び/又は直接接触しないことが好適である。
【0095】
ブロック輪郭90、91は、例えばブロック突出部92、93を作動要素31、32に備える。ブロック突出部92は、例えば作動要素32の方を向いた作動要素31の上面の前に突出する。特に、ブロック突出部92は、リブとして形成されている。作動要素32から、ブロック輪郭91がブロック突出部93の方式で突出する。作動位置Nにおいて、ブロック突出部92、93が互いに打ち当たり、それにより作動要素31が作動位置Eの1つの方向に作動できなくなる。
【0096】
ブロック突出部92の他に自由空間又は空所が設けられ、作動要素32を作動位置R又は作動位置Lに変位させた場合に自由空間又は空所にブロック突出部93が係合することができる。その場合、作動要素31を作動位置Aから作動位置Eの1つに変位させることができる。しかし、その一方で、ブロック突出部93がブロック突出部92の傍らを通過し作動位置R、Lの1つからそれぞれもう一方の作動位置L、Rに作動し得ることが不可能である。
【0097】
その場合、ブロック突出部93はすなわち摺動軸線Sに対して平行に延在するブロック突出部92の側に打ち当たる。
【0098】
作動要素32は、殊に係止アセンブリ98を用いて係止可能である。係止アセンブリは、例えばスイッチハウジング33及び/又は機械ハウジング11に対して定置の係止突出部99を備え、この係止突出部が作動位置R、Lにおいて2つの係止切欠き99R、99Lの1つに係合する。
【国際調査報告】