(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-26
(54)【発明の名称】植物の成長のための機器
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20220719BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567800
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(85)【翻訳文提出日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 IB2020055488
(87)【国際公開番号】W WO2020230112
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521492768
【氏名又は名称】ザルヒ、エラン
(71)【出願人】
【識別番号】521492779
【氏名又は名称】ブルコ、エラッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザルヒ、エラン
(72)【発明者】
【氏名】ブルコ、エラッド
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314NA01
2B314NA22
2B314NC02
2B314ND20
2B314ND38
2B314PB11
2B314PC02
(57)【要約】
外面上での発芽及び植物の成長を支持するように考案された、植物の成長のためのモザイク状機器が記載される。水は、多孔質材と浸透連通して配置された貯水容積部から、多孔質材を通って浸透圧下で移動し、外面で利用可能な水となる。段階的な断面は、水頭によって加えられる圧力の勾配に従って貯水容積部から外面まで貫通する、水の流れを規制する。植物の成長は、外面上に配置された複数のモザイク状凹部内で促進され、生命のある意匠を補強し補助するようにデザイン要素を融合させることができる、光沢仕上げ材、うわぐすり、封止材、及び/又は、他の表面特徴を適用することによって、外面の領域での成長が制限され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面であって、その上に幾何学的な配列で配置された複数のモザイク状凹部を有する外面と、
前記外面と浸透連通して配置された貯水容積部と
を備える、植物の成長のためのモザイク状セラミック機器であって、
前記外面が、前記外面にわたる植物の増殖を可能にし、前記貯水容積部は、利用可能な水を、前記セラミック機器の多孔を通して流体動力学的に提供する、植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項2】
前記機器は、前記貯水容積部が1つの端部に沿って配置された平坦な広がりを備え、前記貯水容積部が、前記セラミック機器の前記多孔を通る水の移動を提供する、請求項1に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項3】
前記機器が、
頂部が開口した内部容積部と、
ベース部材と
を更に含み、
前記貯水容積部が、前記内部容積部と同一の広がりを持ち、水が、前記内部容積部内から前記外面へ提供される、請求項1に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項4】
前記複数のモザイク状凹部の各々が、オボイド形又は菱形であり、前記セラミック機器が鉛直面に取り付けられて配置されたときでも、前記複数のモザイク状凹部に種子を保持するのに適した深さを有する、請求項2に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項5】
前記外面が、上塗りされた、光沢がある、又は封止された部分を更に含み、植物の成長が、前記上塗りされた、光沢がある、又は封止された部分の上では抑制される、請求項2に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項6】
前記セラミック機器が、底部で最大直径を有する円錐形状である、請求項3に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項7】
前記セラミック機器が平行六面体である、請求項3に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項8】
前記セラミック機器が、少なくとも最小の厚さと、最大の厚さとを備える段階的な断面を含み、前記最小の厚さが、前記最大の厚さの上方に配置され、それにより、前記内部容積部から前記外面まで貫通する水の流れが規制され、前記内部容積部が保有する水頭によって加えられる静水圧の相対的な変化を受け入れる、請求項6に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項9】
前記セラミック機器が、少なくとも最小の厚さと、最大の厚さとを備える段階的な断面を含み、前記最小の厚さが、前記最大の厚さの上方に配置され、それにより、前記内部容積部から前記外面まで貫通する水の流れが規制され、前記内部容積部が保有する水頭によって加えられる静水圧の相対的な変化を受け入れる、請求項7に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項10】
前記外面が、上塗りされた又は光沢がある部分を更に含み、植物の成長が、前記上塗りされた又は光沢がある領域の上では抑制される、請求項8に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項11】
前記外面が、上塗りされた又は光沢がある部分を更に含み、植物の成長が、前記上塗りされた又は光沢がある領域の上では抑制される、請求項9に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項12】
内部容積部の境界を定める、頂部が開口したセラミック体と、
前記セラミック体を、基底として支持するように配置されたベース部分と、
前記頂部が開口したセラミック体を封じるように固定可能な蓋部材と、
外面であって、その上に幾何学的な配列の、複数のモザイク状のオボイド形又は菱形凹部を備える外面と、
最小の厚さと、最大の厚さとを備える段階的な断面であって、前記最大の厚さが、前記最小の厚さよりも前記ベース部分の近位に配置される、段階的な断面と
を備える、植物の成長のためのモザイク状セラミック機器であって、
前記内部容積部内に貯留された水が、前記内部容積部から前記外面へ、濃度勾配に従って前記セラミック体の多孔を通り提供され、それにより提供される前記水は、前記セラミック体の前記段階的な断面によって規制され、そのため、前記内部容積部内に貯留された水の水頭によって加えられる静水圧が異なるにもかかわらず、前記外面への水の移動が規制される、植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項13】
前記外面が、上塗りされた、光沢がある、又は封止された部分を更に含み、植物の成長が、前記上塗りされた、光沢がある、又は封止された部分の上では抑制される、請求項12に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項14】
前記複数のモザイク状凹部の各々が、オボイド形又は菱形であり、その中に種子を保持するのに適した深さを有する、請求項12に記載の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器。
【請求項15】
前記複数のモザイク状凹部が、装飾的なパターンに植物が成長することを支持するように考案された幾何学的なパターンを画定する、請求項12に記載の根元を固定するためのモザイク状セラミック機器。
【請求項16】
外面であって、その上に幾何学的な配列で配置された複数のモザイク状凹部を有する外面と、
前記外面と浸透連通して配置された貯水容積部と
を備える、植物の成長のための機器であって、
前記外面が、前記外面にわたる植物の増殖を可能にし、前記貯水容積部が、利用可能な水を、前記機器の多孔を通して流体動力学的に提供する、植物の成長のための機器。
【請求項17】
前記機器が多孔質材から構築される、請求項16に記載の機器。
【請求項18】
前記多孔質材がセラミックである、請求項17に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、否認を生じることなく参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年5月14日に出願された「Tessellated Ceramic Apparatus for Plant Growth」というタイトルの、米国特許出願第16/411,514号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、根の成長のための機器に関し、より詳細には、植物の成長のための機器に関し、この機器は、規制された方法で外面へ水を拡散し、それにより、土又は他の鉢植え培地(potting media)を使用することなく、外面上で成長する植物を培う、関連する貯水容積部(water storage volume)を兼ね備える。本発明の植物の成長のための機器は、外面の、ある部分上での植物の成長を抑制し、他の部分での成長を促進することにより、精巧な意匠と幾何学的な配列に植物を成長させることを更に可能にし得る。更に、外面は、複数のモザイク状(tessellated)凹部を採用することができ、その中で種子が発芽まで支持されて保たれ得、それにより、関連する貯水容積部へ水を加えるだけで、本発明品の上で様々な種の植物を発芽させて育てることができる。
【背景技術】
【0003】
植物の成長を支持するための様々なタイプのセラミック鉢及び入れ物が、先行技術で知られている。ほとんどのものが、鉢植え培地を支持する容積部をとり囲む。しかしながら、本発明は、土又は他の鉢植え培地を必要とせず、セラミック機器自体の外面にわたって植物の成長及び増殖を可能にする。
【0004】
米国特許第5,549,500号は、髪の毛を模倣する植物の成長によって大きくなるように設計された、装飾的な動物の小像を提示する。しかしながら、この小像は、植物の生命のための栄養材の本体を必要とし、概して、この粒状の栄養材と接触するように、種子及び根を維持する。同様の効果のために、米国特許第6,298,599号も、植物を支持し、培うことを可能にするために、鉢植え用土又は他の鉢植え培地を必要とする。
【0005】
カリフォルニア州サンフランシスコのJoseph Enterprises, Inc.によって作られた広く知れわたっているCHIA PET(登録商標)は、セラミック体の外面で、サルビア属の特定の種子が発芽することを可能にする。しかしながら、発根した根自体の作用によるものではなく、種子自体が、湿った際にゲル状のペーストを生成することによって定着機構を提供し、表面に設けられた計画性のない溝及びピット内で発芽する(この点については、例えば、本発明者が本発明を考案する際の第一の動機となった、米国特許第5,549,500号の教示を参照されたい)。従って、一般的には、サルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica)及びサルビア・コルンバリアエ(Salvia columbariae)以外の植物は、サルビア・ヒスパニカ及びサルビア・コルンバリアエ種の種子によって生じるこのゲルのペーストを利用するように特に適合されているCHIA PET(登録商標)での使用には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,549,500号
【特許文献2】米国特許第6,298,599号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
植物の成長のための機器が必要とされ、この機器は、外面であって、複数のモザイク状凹部をその上に有し、種子が必ずしもゲルのペーストを形成しなくても複数のモザイク状凹部に収容され得る、外面を含み、この外面は、関連する貯水容積部から機器の多孔を通って水が拡散され、外面上で増殖する植物にとって利用可能となるようにすることを可能にしながら、外面上での様々な種の植物の成長を支えるために、その上に根が定着することを促進する。更に、モザイクに沿って、及び、上塗りされた、光沢がある、又は、別の方法で封止された外面の部分の間で植物の成長を制御することで、植物の成長によってもたらされる精巧な生命のある(living)意匠を生成することが可能となる。開示された主題は、セラミック又は任意の他の適する多孔質材を用いて実装され得る、植物の成長のための機器を含むことができる。
【0008】
本発明の植物の成長のための機器は、機器の外面上での植物の成長を可能にするために考案された。機器は、多孔性であり、機器を通して外面で成長する植物相へ水を提供することを可能にする。外面は、複数のモザイク状凹部を有し、これらは、平らでない面の上に根が定着することを可能にするために、及び、発芽前にその中に種子のための座を提供するために配置される。本明細書の全体を通して使用される「モザイク状」という用語は、外面にわたって配置された規則的又は不規則的なパターンの幾何学的な凹部を意味すると解釈される。規則的又は不規則的な形状は、配置が秩序正しいか無秩序かにかかわらず、この用語の範囲内であると考えられる。モザイク状凹部にわたって、その上に、及び、その中に配置された小規模な隆起、溝、凹部、並びに、他の規則的又は不規則的な表面特徴などのテクスチャの特徴は、外面を更に特徴づけ、多様性に富んだテクスチャと、その上に根が定着するための機能とを提供することができる。
【0009】
従って、植物の成長のための機器は、貯水容積部に単に水を加えるだけで植物の成長を達成し、貯水容積部は、本明細書で考えられる例示的な実施例では、機器の内部容積部と同一の広がりを持ち、交互に機器と浸透連通して配置される。従って、水は、外面の上で成長する植物を培うために、セラミック機器の孔を通って浸透により運ばれる。
【0010】
複数の凹状モザイクを、秩序正しい及び無秩序な形状の幾何学的な配列に、並びに、追加的には、上塗りされた、光沢がある、又は封止された外面の部分に対して配置させて形成することで、外面の上での植物の成長を、特定の意匠と一致するように制御及び/又は誘導することができる。光沢が付けられた、上塗りされた、又は封止された外面の部分は、意匠の一部として方向づけられ得、そこを通って水が流出することを妨げ、それにより、外面上の上塗りされた、光沢がある、滑らかな、又は封止された領域の上では、植物の成長が抑制される。その結果、幾何学的な配列は、植物の成長によって知らされ、視覚的に示され得る。
【0011】
本発明の植物の成長のための機器の複数の実施例が、本明細書で考察される。第1の実施例では、タイルの実施例を考察する。タイルの実施例は、実質的には平行六面体の広がりであり、複数のモザイク状凹部を有する外面が、表になる面として配置される。裏になる面は、そこを通って水が運ばれることを妨げ、表になる面へ水の流れを制御するために、上塗りされ、光沢が付けられ、又は封止され得る。複数のモザイク状凹部は、タイルの実施例が鉛直面上に配置されたときに、種子をその中に収容し、その中に種子を維持するのに十分な能力を有する。この実施例では、貯水容積部は、タイルの実施例の1つの端部に沿って配置され得、それにより、水が、毛細管現象及び浸透圧によってタイルを通って引き出され、種子、及び/又は、根が外面と接触している植物にとって利用可能となる。代替え的には、貯水容積部は、タイルの実施例の中に配置された内部容積部と同一の広がりを持ち得、それにより、外面まで貫通して浸透が発生する。後者の実施例の場合、タイルの実施例は、不浸透性のベース部材を含み、それにより、内部容積部に注がれた水は、浸透によって外面まで進み、それから重力の影響によりベース部材の中に排出される。ベース部材は、タイルの実施例の下端に取り付け可能であり得、蓋部材は、内部容積部を封じ、その中に貯留された水の蒸発を防止することができる。タイルの実施例は、従って、緑の成長を生み出し、例えば壁の領域を装飾するために、追加のタイルの実施例と共に使用され得る。
【0012】
本発明の別の実施例は、花器の実施例を含む。花器の実施例は、外面及びベース部分によって境界が定められた内部容積部を含む。内部容積部は、花器の実施例では貯水容積部と同一の広がりを持ち、それにより、貯水のために水が内部容積部に注がれる。内部容積部内の水は、静水圧を加え、外面まで貫通して浸透によって進み、外面上の種子及び成長する植物にとって利用可能となる。内部容積部からの蒸発を低減させるために、花器の実施例は、内部容積部を密封するための蓋部材を含むことができる。
【0013】
花器の実施例では、外面が、同様に複数のモザイク状凹部を含み、そこでは種子及び根の成長が支えられる。いくつかの実施例では、外面は、上塗りされた、光沢が付けられた、又は封止された領域の区画を含むことができ、それにより、その上での植物の成長が抑制され、植物の成長は、例えば特定の意匠を連想させる特定の幾何学的な配列に一致する。従って、いくつかの実施例では、複数の凹部は、当業者が考える範囲内の他の潜在的な実施例の中から本明細書に例として図示された星モチーフの連結線などの、特定の幾何学的なパターンを画定することができ、それにより、連結線内で植物が発芽及び成長することで、この線が緑色になる。当業者には明らかであるように、追加的な及び他の幾何学的なパターン並びに配列が、本開示の一部として考えられる。
【0014】
花器の実施例の一実施例は円錐形であり、開口頂部に最も近位の最小の厚さと、ベース部分に最も近位の最大の厚さとを有する、段階的な断面(graduated cross-section)を含む。セラミック機器の厚さは、内部容積部からの一定の水の流出をもたらすように考案され、それにより、水頭に起因して内部容積部の底部で増加する圧力は、外面に到達するためにセラミック機器の孔を通る、長めの距離によって受け入れられる。外面上の種子及び成長する植物は、従って、内部容積部が適切に水で満たされている限り、外面のどこに配置されても、同じ量の浸透的な移動と、その結果生じる水の利用可能性に晒される。つまり、全ての実施例で使用者は、貯水容積部に水を加えるだけで、セラミック機器の外面にわたる緑の増殖を楽しむことができる。
【0015】
以下に続く本発明の詳細な説明がより理解され得、当技術分野への本発明の貢献がより認識され得るように、これまで、本発明の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器のより重要な特徴を概説した。
【0016】
本発明の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器の目的は、本発明を特徴づける様々な新規の特徴とともに、本開示の一部を形成する特許請求の範囲で詳細に指摘されている。植物の成長のためのモザイク状セラミック機器、その操作上の利点、及び、それを使用することによって得られる特定の目的をより理解するために、添付の図面及び説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1B】蓋及びベース部材から分離された例示的な実施例の正面立面図である。
【
図2A】例示的な実施例の詳細図であり、その上で植物相が成長している。
【
図2B】
図2Aに示される例示的な実施例の詳細図であり、上で成長している植物相を除き、モザイク状外面を特徴づける複数のテクスチャをなす溝(textural grooves)を示す。
【
図3A】例示的な実施例の起立した状態の立面図であり、その上で成長している植物相がある場合とない場合とを示す。
【
図3B】タイルの実施例の開口頂部、及び、不規則的なモザイクを備える外面を図示する、例示的な実施例の起立した状態の斜視図である。
【
図3C】
図3Bに示された例示的な実施例の外面の詳細図である。
【
図4】例示的な実施例の正面立面図であり、その上で植物相が成長している。
【
図5】特定の幾何学的なパターンを採用する例示的な実施例の正面立面図である。
【
図6】焼成に備えた、型の内部にある例示的な実施例のスリップキャストの正面立面図であり、該型は、内側にある例示的な実施例を示すために1つの側面が取り除かれている。
【
図7】1つの側面が取り除かれたスリップキャスト型の例示的な実施例の正面立面図である。
【
図8】内部容積部の境界を定める、最小の厚さと最大の厚さとの間の段階的な断面を示す、例示的な実施例の長手方向断面図である。
【
図9】
図8に示された長手方向断面図の起立した状態の立面図である。
【
図10】規則的及び不規則的なモザイク状凹部の例示的な実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、図を参照し、詳細には
図1から10を参照し、本発明の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器の原理と概念を採用し参照符号10で全体が示される、本発明の植物の成長のためのモザイク状セラミック機器の実例が記載される。
【0019】
図1A及び1Bは、花器として配置された本発明品10の例示的な実施例を図示する。概して円錐形のセラミック機器10は、外面20を含み、外面20は、その上に幾何学的な配列で配置された複数のモザイク状凹部22を有する。
図1A及び1Bに図示された例示的な実施例のモザイク状凹部22の各々は菱形であり、十分に小さいサイズの種子を維持することができるオボイド形のくぼみを含む。従って、複数の十分に小さい種子(図示せず)が、所望するように、外面20上において、複数のモザイク状凹部22の内部に収容可能である。一部の種子はサイズが十分に小さいため、複数のそのような種子が、各モザイク状凹部22に維持されることができ、
図1A及び1Bに示されるように、例示的な実施例がそのベース部材24上に直立して配置されるとき、各モザイク状凹部22の中にとどまる。
【0020】
図1A及び1Bに示された例示的な実施例は、水を機器10の内部に貯留することができる貯水容積部30と同一の広がりを持つ内部容積部28に通じる、開口頂部26を含む。蓋部材52は、開口頂部26を密封するために嵌合可能であり、開口頂部26を通じた蒸発を防止する。ベース部材24は、水が、機器10の底部を通って、下にある表面上に排出されるのを防止する。ベース部材24に配置された開放空間50は、内部容積部28内に貯留された水の柱の水頭によって加えられた浸透圧を中断させることにより、排水を阻止する役割を果たす。ベース部材の下側は、封止され、不浸透にされ得る。ベース部材24は、外面20上に排出される水を回収する役割を更に果たす。
【0021】
静水圧下では、モザイク状凹部22の内部に格納された種子、及び、外面20の上で成長する植物に利用可能な水をもたらすために、水は、内部容積部28からセラミック器10の多孔を通って外面20まで、機器10を通って横方向に排出される。発芽後、水は、毛細管現象により、浸透勾配に従って機器10を通って進み、モザイク状凹部22に定着している植物100にとって利用可能な水となる。モザイク状凹部22は、そこに根を定着させる助けとなる複数の小さめの溝又は他の表面凹凸などの、粗く平らでない表面特徴を更に備えることができる。例えば、
図2A及び2Bに示された詳細図を参照されたい。
【0022】
ここで
図3A、3B、及び3Cを参照すると、本発明のデバイス10の別の例示的な実施例が示されている。この例示的な実施例では、セラミック機器10は、例えば壁に吊り下げるタイルとして構成される。タイルセラミック器10の1つの例示的な実施例では、貯水容積部30は、内部容積部28と同一の広がりを持って配置され、開口頂部26を介して通じることができ、セラミック器10と流体連通する(例えば
図3Bを参照)。ベース部材24は、セラミック器10の最下端32で取り付け可能であり、外面20上に排出され、重力の作用で最下端32に向かって移動する水を捕らえる。
【0023】
この例示的な実施例では、外面20は、セラミック器10が吊り下げられる壁とは面せず(outface)、前側に配置される。外面20は、その上に配置された複数のモザイク状凹部22を含み、水が、貯水容積部30から、セラミック器10の多孔を通って外面20まで貫通し、セラミック器10を通って移動するため、複数のモザイク状凹部22の各々は、発芽のために少なくとも1つの種子をその中に支持するのに適している。従って、各凹部22の内部に配置された種子にとって、及び、該種子の発芽後は外面20の上で成長する植物相102の根100にとって利用可能な水をもたらすために、貯水容積部30の水は、濃度勾配に従った浸透圧の作用によって外面20で滲出する。セラミック器10は、開口頂部26の最も近位に配置された最小の厚さと、最下端32の最も近位に配置された最大の厚さとを有する、段階的な断面(例えば
図8及び9に図示)を含むことができる。段階的な断面は、以下でより詳細に記載するように、内部容積部28が保有する水頭によって加えられる圧力の勾配の至る所で、セラミック器10を通る水の流れを規制するように考案されている。
【0024】
図3A、3B、及び3Cに図示された例示的な実施例では、セラミック器10の基部側34は、光沢が付けられ、上塗りされ、又は、別の方法で封止され得、水が該基部側34から滲出し、セラミック器10が配置されている後方の壁と接触することを防止する。加えて、複数のモザイク状凹部22は、外面20に入り込んでいるそれらの凹状空洞によって、浸透勾配を生成することができ、浸透勾配は、水が貯留容積部30から外面20へ移動し、一方側に優先的に排出されるように一貫して導く。この例示的な実施例を備える複数のセラミック器10は、装飾的に、単独で又はまとめて吊り下げられ得、見ている者を楽しませる美しさのある緑のカーテン(living wall)を作り出し、屋内で使用される場合、室内の空気の質を保つのに有益であると考えられる。
図3B及び3Cに示されるように、モザイク状凹部の形態及び配列、パターン及び範囲の変形例は、例えば
図3Cに図示された詳細図に示されるような不規則的なモザイクを含め、本開示の一部として考えられる。
【0025】
図4は、外面20の特定の部分の上に植物相102を支持するように考案された、例示的な実施例を図示する。この実施例では、外面20の上での植物の成長が促進されるが、外面20の特定の部分での増殖は制限される。植物の成長の制限は、所望の広がりにわたってセラミック器10の多孔を封止し、それによりその場所での水の利用を妨げる、うわぐすり、光沢仕上げ材、封止材、又は他の表面特徴を使用することによって、或いは、その場所に根が定着することを妨げるような他の手段によって有効となり得る。従って、貯水容積部30からの水は、外面20のある領域に到達することが妨げられ得るが、代わりに、外面20の他の部分に浸透圧下で排出され、又は移動され、それにより、外面20上で支持され成長している植物相102によって、特定のパターンが具現化され得る。
【0026】
図4に示される実施例では、貯水容積部30は、
図1で示された実施例に関して上で論じられた(並びに
図8及び9を参照して以下でも論じる)内部容積部に類似した内部容積部28と、同一の広がりを持つことができる。しかしながら、貯水容積部30は、ベース部材24の範囲内に含まれる解放されている水(free water)としても配置され得る。そのような実施例では、ベース部材24に収まっている水は、浸透圧及び毛細管現象の下でセラミック器10の多孔を通ってセラミック器10を上昇し、外面20の上塗りされていない、光沢が付けられていない、又は、別の方法で水の移動が封止されていない部分から滲出する。従って、水の利用可能性が制御され、それにより、関連する植物相102の成長を、美観目的のために、外面20上の特定のパターン又は領域に維持することができる。
【0027】
図5は、花器の形態で示されたセラミック機器10の別の例示的な実施例を図示する。この特定の実施例では、複数のモザイク状凹部22は、
図1に図示された実施例よりも大きく分解された、幾何学的なパターンを形成する。この実施例は、従って、大きめの種子から発芽する植物の成長に適することができ、又は、例えば、凹部に沿って群生する小さめの植物による特定のパターンを生成するために適することができる。凹部22間の広がり部分36は、凹部22内で成長する植物の侵入を防止するために、及び、凹部22によって画定されるパターンに一致するように植物の成長を制限するために、上塗りされ、光沢が付けられ、又は、別の方法で封止され得る。従って、生命のある幾何学的形状が、外面20で保たれ得る。
【0028】
図6は、
図1で示された例示的な実施例の製造を図示する。鋳型70は、複数のモザイク状凹部22によって特徴づけられるパターンを、焼成前に外面20上に生成するスリップキャスト成形中に、セラミック器10を支持する。各実施例は、従って、個々の鋳型70を外面20に刻印する作用によって生成することができる。鋳型70は、そこから焼成前に取り外され、外面20の少なくとも一部を構成する所望のモザイク状凹部22を有する焼成前のセラミック器10が現れる。
【0029】
図5に例示したような(上述の)実施例では、鋳型70によって刻印されていない外面20の部分は、焼成前に上塗りされ得、それにより、着色、光沢仕上げ、及び他の特徴が、意匠に追加され、凹部22で成長する植物相を、新規の、生命のある意匠として組み込むように考案された、模様付きの美的作品(patterned aesthetic)を生成するために使用され得る。加えて、不浸透部分とするために、焼成後、外面の部分に封止材を塗ることができる。
【0030】
図7は、セラミック機器10の加工物が中に無い状態の鋳型70の例示的な実施例を示す。
【0031】
図8及び9は、少なくとも
図1に図示された例示的な実施例に配置された、段階的な断面40の例示的な実施例を図示するが、これは、考察中のセラミック機器10の形状に関わらず、溜水の静水圧が、貯水容積部30内、内部容積部28内、又は、セラミック機器10上に圧力の勾配を生成する、全ての実施例に適用可能である。段階的な断面40は、外面20まで貫通する水の流れを規制し、従って、外面20に配置された植物相に水が利用可能となる速度を制御する。
【0032】
段階的な断面40は、開口頂部26に最も近位の最小の厚さ42からベース部材24に最も近位の最大の厚さ44まで、内部容積部28の境界を定める。段階的な断面40は、内部容積部28から外面20まで貫通してセラミック器10を通る水の流れを規制し、貯水容積部30内に立っている関連する水柱によって加えられる水頭の静水圧力の勾配を受け入れる。水柱の底部で加えられる大きめの圧力は、例えば、外面20に到達するために、水が最大の厚さ44において、セラミック器10の多孔を通って進まなければならない長めの距離によって均衡が取られる。同様に、開口頂部26により近位の水柱の頂部で加えられる小さめの圧力は、外面20に到達するために、水が最小の厚さ42において、セラミック器10の多孔を通って進まなければならない短めの距離によって均衡が取られる。
【0033】
このようにして、セラミック器10を通る水の流れ、従って、水の利用可能性は、概して、貯水容積部30を占める水がある限り外面20にわたって規制され、一貫して維持される。更に、段階的な断面40は、最小の厚さ42と最大の厚さ44との間の厚さの段階的変化を、セラミック器10の多孔及びサイズへ結びつけ、水の流れを長期にわたり適切に規制することができ、それにより、内部容積部28への定期的な給水を予測することができる。
【0034】
段階的な断面40は、規制された速度で液状粘土を型から排出させることによって、スリップキャスト成形中に製作され得、それにより、焼成前の加工物は、最下の開口を通って排出されるスリップキャストの流速によって決定される連続的な変化率で段階を付けられた断面を有する。
【0035】
図10は、本発明の機器10の外面を特徴づけるモザイク状凹部の例示的な実施例を図示する。追加の幾何学的な配列、パターン、形態、又は他の凹部については、規則的及び不規則的なものの両方が本発明の一部として考えられるということを説明するために、これらの例示的な実施例が含まれている。それゆえ、当業者には理解可能であるように、本明細書で考えられているような特定のモザイク状凹部は、本発明の特徴を限定することを想定するものとしてではなく、例示的な実施例において、意図する特許請求の範囲内であると考えられる可能性のある多くの変形例の例証として記載される。
【国際調査報告】