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特表2022-533830車両のためのポリマーセーフティグレージング
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  • 特表-車両のためのポリマーセーフティグレージング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-26
(54)【発明の名称】車両のためのポリマーセーフティグレージング
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20220719BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20220719BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20220719BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
B32B27/36 102
B32B7/12
B32B27/36
B29C63/02
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568942
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2020024639
(87)【国際公開番号】W WO2020236306
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/850,966
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/819,526
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519053108
【氏名又は名称】レーシング オプティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、スティーブン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、バート イー.
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AK42
4F100AK42C
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AT00
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA11
4F100CA07
4F100CA07D
4F100CB00
4F100CB00B
4F100CB05
4F100CB05B
4F100EJ93
4F100EJ94
4F100GB31
4F100GB32
4F100JD09
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JL13
4F100JL13B
4F211AA26
4F211AA28
4F211AA33
4F211AA43
4F211AA44
4F211AB06
4F211AD08
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH17
4F211SA01
4F211SC06
4F211SD01
4F211SD11
4F211SN19
4F211SP01
(57)【要約】
積層体は、ポリカーボネート基板と、ポリカーボネート基板上に配置された紫外線ハードコートフィルムとを含む。紫外線ハードコートフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)層、PET層とポリカーボネート基板との間に介在する接着剤、およびポリカーボネート基板と反対側のPET層上に配置された外側ハードコートを含んでいてよい。外側ハードコートは、UV安定剤を含み得る。積層体は、紫外線ハードコートフィルム上に積層された追加の紫外線ハードコートフィルムを含んでもよい。積層体は、湾曲した車両ウインドシールドの形状に熱成形することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体であって、
ポリカーボネート基板と、
前記ポリカーボネート基板上に配置された紫外線ハードコートフィルムと
を備え、前記紫外線ハードコートフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)層、前記PET層と前記ポリカーボネート基板との間に介在する接着剤、および前記ポリカーボネート基板と反対側の前記PET層上に配置された外側ハードコートを含み、前記外側ハードコートは、UV安定剤を含む、
積層体。
【請求項2】
前記ポリカーボネート基板は、3~8mmの厚さである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記PET層は、2~6ミルの厚さである、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記外側ハードコートは、2~10ミクロンの厚さである、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記外側ハードコートは、8Hを超えるガウジ鉛筆硬度を有している、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記接着剤は、感圧接着剤である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記PET層と反対側の前記ポリカーボネート基板上に配置された内側ハードコートをさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記内側ハードコートは、6Hから8Hのガウジ鉛筆硬度を有している、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記紫外線ハードコートフィルムは、前記ポリカーボネート基板上に積層された複数の紫外線ハードコートフィルムのうちの第1の紫外線ハードコートフィルムであり、前記複数の紫外線ハードコートフィルムは、前記第1の紫外線ハードコートフィルム上に配置された第2の紫外線ハードコートフィルムを含み、前記第2の紫外線ハードコートフィルムは、第2のPET層、前記第2のPET層と前記第1の紫外線ハードコートフィルムとの間に介在する第2の接着剤、および前記第1の紫外線ハードコートフィルムと反対側の前記第2のPET層上に配置された第2の外側ハードコートを含み、前記第2の外側ハードコートは、UV安定剤を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
前記第1の紫外線ハードコートフィルムの接着剤は、前記第2の接着剤よりも強い、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記積層体は、湾曲した車両ウインドシールドの形状に熱成形されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
方法であって、
ポリエチレンテレフタレート(PET)キャリアの第1面にUV安定化ハードコートを堆積させること、
前記PETキャリアの前記第1面と反対側の第2面を接着剤でコーティングすること、
前記接着剤を用いて前記PETキャリアの前記第2面をポリカーボネート基板に接着すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記PETキャリア、前記UV安定化ハードコート、および前記接着剤は、紫外線ハードコートフィルムを定義し、前記方法は、前記接着することの前に前記紫外線ハードコートフィルムをロール上に巻回することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングすることの後に、前記PETキャリアの前記第2面に取り外し可能なライナーを付けること、
前記接着することの前に、前記PETキャリアの前記第2面から前記取り外し可能なライナーを取り除くこと
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記PETキャリア、前記UV安定化ハードコート、および前記接着剤は、紫外線ハードコートフィルムを定義し、前記方法は、接着された前記紫外線ハードコートフィルムを有する前記ポリカーボネート基板を、湾曲した車両ウインドシールドの形状に熱成形することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記PETキャリア、前記UV安定化ハードコート、および前記接着剤は、第1の紫外線ハードコートフィルムを定義し、前記方法は、
第2のPETキャリアの第1面に第2のUV安定化ハードコートを堆積させること、
前記第2のPETキャリアの前記第1面と反対側の第2面を第2の接着剤でコーティングすること、
前記第2の接着剤を用いて前記第2のPETキャリアの前記第2面を前記第1の紫外線ハードコートフィルムに接着すること
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の紫外線ハードコートフィルムの接着剤は、前記第2の接着剤よりも強い、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のPETキャリア、前記第2のUV安定化ハードコート、および前記第2の接着剤は、第2の紫外線ハードコートフィルムを定義し、前記方法は、接着された前記第1および第2の紫外線ハードコートフィルムを有する前記ポリカーボネート基板を、車両ウインドシールドの形状に熱成形することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の紫外線ハードコートフィルムを剥離して、前記第1の紫外線ハードコートフィルムを露出させることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
新たな第2のPETキャリアの第1面に新たな第2のUV安定化ハードコートを堆積させること、
前記新たな第2のPETキャリアの前記第1面と反対側の第2面を新たな第2の接着剤でコーティングすること、
前記新たな第2の接着剤を用いて前記新たな第2のPETキャリアの前記第2面を前記第1の紫外線ハードコートフィルムに接着すること
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してセーフティグレージング、より詳細には、ウインドシールドを含む車両窓のためのポリマーセーフティグレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
セーフティグレージングは、歴史的にガラスで作られてきた。ガラスは、ウインドシールドのワイパーおよびある程度の研磨破片による引っかき傷に耐えることができる硬度を有している。また、非常に経済的であり、大量生産技術に適している。しかしながら、ガラスは割れやすく、乗客を傷つけ、人身傷害を引き起こし得る危険な鋭利な破片を生じさせる可能性がある。この問題は、ガラスを強化し、小さな破片(1/2”)にし、小さな破片を一緒に保持するために2枚のガラス片をその間の柔軟なポリマーポリビニルブチラール(PVB)コアと共に積層することによって、ある程度まで軽減された。
【0003】
残念なことに、ガラスのセーフティグレージングは、空気中の小さな塊およびほこりによるピッティングの影響を受けやすく、太陽に向かって移動する際に視界が悪くなることがある。米国だけでも毎年1,500万を超えるガラス製ウインドシールドが、ピッティングおよび破損のために交換されている。さらに、積層されたガラス-PVB-ガラスのウインドシールドは、PVBコアがガラスを汚染しているため、リサイクルできない。
【0004】
ガラス製のセーフティグレージングの欠点を考慮すると、乗客の裂傷は長年の問題であり、理想的な解決策はない。例えば、30年間の研究で、ガラスのウインドシールドの内部にポリマーコーティングまたは層を配置する試みがなされたが、商業的な成功はなかった。
【0005】
ポリカーボネートは優れた耐衝撃性を示し、自動車レースおよびオフロード車の車両グレージングに使用される。しかしながら、ポリカーボネートは非常に柔らかい素材であるため、商用車や公共車両で使用するには傷および穴ができやすい。現在までのところ、これらの耐久性の問題を克服するために利用可能な直接ハードコーティングは存在しない。したがって、ポリカーボネート製のウインドシールドは、現在、公道でのオートバイに制限されている。例えば、サウジ基礎産業公社(Saudi Basic Industries Corporation,SABIC)は、LEXANブランドのポリカーボネートの生産者である。LEXANシート製品に関する2016年の運輸省(DOT)ガイドブックでは、「オートバイのウインドシールドを除いて、SABICの熱可塑性材料は通常、前向きの外側グレージングには使用できない」と記載されている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、関連技術に伴う上記の欠点を克服するための様々なシステムおよび方法を企図している。本開示の実施形態の一態様は、ポリカーボネート基板と、ポリカーボネート基板上に配置された紫外線ハードコートフィルムとを含む積層体である。紫外線ハードコートフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate,PET)層、PET層とポリカーボネート基板との間に介在する接着剤、およびポリカーボネート基板と反対側のPET層上に配置された外側ハードコートを含んでいてよい。外側ハードコート、PET層、および/または接着剤は、UV安定剤を含み得る。
【0007】
ポリカーボネート基板は、3~8mmの厚さであってよい。PET層は、2~6ミルの厚さであってよい。外側ハードコートは、2~10ミクロンの厚さであってよい。外側ハードコートは、8Hを超えるガウジ鉛筆硬度を有していてよい。接着剤は、感圧接着剤であってよい。
【0008】
積層体は、PET層と反対側のポリカーボネート基板上に配置された内側ハードコートを含んでいてよい。内側ハードコートは、6Hから8Hのガウジ鉛筆硬度を有していてもよい。
【0009】
紫外線ハードコートフィルムは、ポリカーボネート基板上に積層された複数の紫外線ハードコートフィルムのうちの第1の紫外線ハードコートフィルムであってよい。複数の紫外線ハードコートフィルムは、第1の紫外線ハードコートフィルム上に配置された第2の紫外線ハードコートフィルムを含んでいてよく、第2の紫外線ハードコートフィルムは、第2のPET層、第2のPET層と第1の紫外線ハードコートとの間に介在する第2の接着剤、および第1の紫外線ハードコートフィルムと反対側の第2のPET層上に配置された第2の外側ハードコートを含む。第2の外側ハードコート、第2のPET層、および/または第2の接着剤は、UV安定剤を含み得る。第1の紫外線ハードコートフィルムの接着剤は、第2の接着剤よりも強くてよい。
【0010】
積層体は、湾曲した車両ウインドシールドの形状に熱成形することができる。
本開示の実施形態の別の態様は、方法である。方法は、ポリエチレンテレフタレート(PET)キャリアの第1面にUV安定化ハードコートを堆積させること、PETキャリアの第1面と反対側の第2面を接着剤でコーティングすること、接着剤を用いてPETキャリアの第2面をポリカーボネート基板に接着することを含んでいてよい。
【0011】
PETキャリア、UV安定化ハードコート、および接着剤は、紫外線ハードコートフィルムを定義することができる。方法は、PETキャリアの第2面をポリカーボネート基板に接着することの前に、紫外線ハードコートフィルムをロール上に巻回することを含んでもよい。方法は、コーティングすることの後に、PETキャリアの第2面に取り外し可能なライナーを付けることを含んでもよい。方法は、PETキャリアの第2面をポリカーボネート基板に接着することの前に、PETキャリアの第2面から取り外し可能なライナーを取り除くことを含んでもよい。方法は、接着された紫外線ハードコートフィルムを有するポリカーボネート基板を、湾曲した車両ウインドシールドの形状に熱成形することを含んでもよい。
【0012】
PETキャリア、UV安定化ハードコート、および接着剤は、第1の紫外線ハードコートフィルムを定義することができる。方法は、第2のPETキャリアの第1面に第2のUV安定化ハードコートを堆積させること、第2のPETキャリアの第1面と反対側の第2面を第2の接着剤でコーティングすること、第2の接着剤を用いて第2のPETキャリアの第2面を第1の紫外線ハードコートフィルムに接着することをさらに含んでもよい。第1の紫外線ハードコートフィルムの接着剤は、第2の接着剤よりも強くてよい。第2のPETキャリア、第2のUV安定化ハードコート、および第2の接着剤は、第2の紫外線ハードコートフィルムを定義することができる。
【0013】
方法は、接着された第1および第2の紫外線ハードコートフィルムを有するポリカーボネート基板を、車両ウインドシールドの形状に熱成形することを含んでもよい。方法は、第2の紫外線ハードコートフィルムを剥離して、第1の紫外線ハードコートフィルムを露出させることを含んでもよい。方法は、新たな第2のPETキャリアの第1面に新たな第2のUV安定化ハードコートを堆積させること、新たな第2のPETキャリアの第1面と反対側の第2面を新たな第2の接着剤でコーティングすること、新たな第2の接着剤を用いて新たな第2のPETキャリアの第2面を第1の紫外線ハードコートフィルムに接着することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に開示される様々な実施形態のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の説明および図面に関してよりよく理解されるだろう。なお、同様の番号は、全体を通して同様の部品を指す。
図1】本開示の一実施形態による、車両のウインドシールドの形状に熱成形され、車両に取り付けられた積層体を示す図である。
図2図1の線2-2に沿った積層体の断面図である。
図3】本開示の一実施形態による例示的な操作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、車両ウインドシールドとして使用するための積層体の様々な実施形態およびその製造方法を包含する。添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、いくつかの現在企図されている実施形態の説明として意図されており、開示された発明が開発または利用され得る唯一の形態を表すことを意図していない。説明は、例示された実施形態に関連する機能および特徴を説明する。しかしながら、同じまたは同等の機能は、本開示の範囲内に包含されることも意図されている異なる実施形態によって達成され得ることが理解されるべきである。さらに、第1、第2などの関係用語は、あるエンティティと別のエンティティを区別するためにのみ使用されており、そのようなエンティティ間の実際の順序関係を必ずしも必要とせず、また示唆するものでもないことが理解される。
【0016】
図1は、本開示の一実施形態による、車両ウインドシールドの形状に熱成形され、車両10に取り付けられた積層体100を示している。図2は、図1の線2-2に沿った積層体100の断面図である。図2に示されるように、積層体100は、ポリカーボネート基板110と、ポリカーボネート基板110上に配置された1つまたは複数の紫外線ハードコートフィルム120(120a,120bなど)とを含んでいてよい。ポリカーボネート基板110上に1つまたは複数の紫外線ハードコートフィルム120を配置することにより、ポリカーボネート基板110は、使用中のウインドシールドワイパーおよび破片による引っかき傷およびピッティングから保護され得る。このようにして、積層体100は、ガラス製ウインドシールドに関連する安全上の危険を回避しながら、ポリカーボネートの耐衝撃性を車両の広範な使用に必要な耐久性と組み合わせることができる。
【0017】
ポリカーボネートにハードコーティングを付けようとする以前の試みとは異なり、紫外線ハードコートフィルム120aは、キャリアとして機能するポリエチレンテレフタレート(PET)層122aを含み、これは、間に介在する接着剤124aによってポリカーボネート基板110に接着され得る。UV安定化外側ハードコート126aは、ポリカーボネート基板110と反対側のPET層122a上に配置されてよく、PET層122a、接着剤124a、および外側ハードコート126aは、紫外線ハードコートフィルム120aを定義する。外側ハードコート126aは、8Hを超えるガウジ鉛筆硬度(gouge pencil hardness)を有していてよく、ポリカーボネート基板110が単独で存在するよりも積層体100をはるかに耐久性のあるものにする。PET層122aをキャリアとして使用することにより、外側ハードコート126aをポリカーボネート基板110に直接付けようとした場合に生じ得る困難を伴わずに、外側ハードコート126aを付けることができる。例えば、ポリカーボネート基板110は、ハードコート126aを支持するには柔らかすぎる可能性があり、ポリカーボネート基板110とハードコート126aとの間の熱膨張係数の差は、ハードコート126aを経時的に破壊させる可能性があり、および/またはポリカーボネート基板110の親水性によって吸収された水がハードコート126aを持ち上げる原因となる可能性がある。これらの懸念は、ハードコート126aをPET層122aに付け、接着剤124aを間に介在させてPET層122aをポリカーボネート基板110上に「浮かせる」ことによって回避することができる。
【0018】
図2の例に示されるように、紫外線ハードコートフィルム120aは、ポリカーボネート基板110上に積層された複数の紫外線ハードコートフィルム120(120a,120bなど)のうちの第1の紫外線ハードコートフィルムであってよい。例として、第2の紫外線ハードコートフィルム120bは、PET層122b、接着剤124b、および外側ハードコート126bを含み、これらによって定義され、これらは、接着剤124bが、PET層122bと第1の紫外線ハードコートフィルム120(例えば、その外側ハードコート126a)との間に介在していることを除いて、PET層122a、接着剤124a、および外側ハードコート126aとそれぞれ同じであってよい。追加の(例えば、第3、第4などの)紫外線ハードコートフィルム120を同様に付けることができる。複数の紫外線ハードコートフィルム120を有する積層体100が、車両ウインドシールドまたは他の窓の寿命の間に(例えば、欠けや酸化などのために)経時的に許容できないほど劣化した場合、最も外側の紫外線ハードコートフィルム120は、単純に、剥離して除去され、下にある新鮮な紫外線ハードコートフィルム120を露出させることができる。この目的のために、第1の紫外線ハードコートフィルム120aの接着剤124aは、追加の紫外線ハードコートフィルム120に使用される接着剤124bなどよりも強力であってよい(また、場合によっては紫外線ハードコートフィルム120を追加するごとに接着剤124b等はさらに強度が低下し得る)。このようにして、第1の紫外線ハードコートフィルム120aは、別の紫外線ハードコートフィルム120が剥離されている間、ポリカーボネート基板110に接着されたままであることができる。例えば、第1の紫外線ハードコートフィルム120aは、積層体100の寿命の間、ポリカーボネート基板110上に留まるように意図されていてよく、追加のハードコートフィルム120は、必要に応じて除去可能(および以下に説明するように、場合によっては補充可能)であると企図されていてよい。同様に、第1の120aを超えるそのような追加の紫外線ハードコートフィルム120の各々は、積層体100の寿命中に容易に剥離するためのタブまたは他の手段を備えていてもよい。
【0019】
紫外線ハードコートフィルム120aのPET層122aは、2~6ミルの厚さ(1ミル=1000分の1インチ)であってよく、例えば、DuPont社が所有している登録商標Mylarの下で販売されている二軸配向ポリエチレンテレフタレート(biaxially-oriented polyethylene terephthalate,BoPET)であってよい。外側ハードコート126aは、2~10ミクロン(例えば、5ミクロン)の厚さであってよく、例えば、DIC社によって販売されているUV硬化性樹脂などのUV硬化性ポリシロキサン-アクリルハイブリッド樹脂であってよい。8Hを超えるガウジ鉛筆硬度を有していることに加えて、外側ハードコート126aは、米国国家規格協会(American National Standards Institute,ANSI)Z26.1-1996規格で指定されている摩耗試験#18およびANSI Z26.1-1996規格で指定されている1年間の気象試験#16に合格することができる。上記のように、外側ハードコート126aは、例えば、ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾールまたはヒドロキシフェニル-トリアジンUV吸収剤などのUV安定剤を含めることによって、UV安定化され得る。外側ハードコート126aにUV安定剤を含めることにより、日光中の紫外線放射によって引き起こされるPETキャリア122aおよび接着剤124aの劣化(例えば、黄変または脆化)を、紫外線ハードコートフィルム120aの寿命中に防止または減速することができる。UV安定剤は、追加的または代替的に、PETキャリア122aおよび/または接着剤124aに含まれ得ることが企図されている。接着剤124aは、10~25ミクロン(例えば、25ミクロン)の厚さであってよく、例えば、剥離に必要な単位幅あたりの一定の荷重として決定される剥離強度が1インチあたり約30グラムである低粘着性PSAなどの感圧接着剤(PSA)であってよい。第1の紫外線ハードコートフィルム120a以外の追加の紫外線ハードフィルム120の構成要素は、同じまたは類似の仕様を有し得る。下にあるポリカーボネート基板110は、3~8mm(例えば、4mm)の厚さであってよい。
【0020】
図2に示されるように、積層体100は、PET層122aと反対側のポリカーボネート基板110上に配置された内側ハードコート130をさらに含んでいてよい。内側ハードコート130は、ウインドシールドの内向きの面となるので、外側ハードコート126aと同じ摩耗および衝撃を受けることはなく、同じ基準に保持される必要はない。したがって、内側ハードコート130は、外側ハードコート126aよりも柔らかくてよく、したがって、外側ハードコート126aをポリカーボネート基板110に直接付けることに関して上記した困難を軽減することができる。内側ハードコート130は、例えば、わずか6Hから8Hのガウジ鉛筆硬度を有し得る。内側ハードコート130は、必ずしも、ANSI Z26.1-1996規格で指定された摩耗試験#13またはANSI Z26.1-1996規格で指定された1年間の気象試験#16に合格する必要はない。外側ハードコート126aと同様に、内側ハードコート130は、2~10ミクロン(例えば5ミクロン)の厚さであってよく、例えば、DIC社によって販売されているUV硬化性樹脂などのUV硬化性ポリシロキサン-アクリルハイブリッド樹脂であってよい。直射日光にさらされないので、内側ハードコート130は、UV安定剤を有していても、有していなくてもよい。
【0021】
図3は、本開示の一実施形態による例示的な操作フローを示している。操作フローは、PETキャリア122aの第1面に外側ハードコート126aとして機能するUV安定化ハードコートを堆積することから開始することができる(ステップ310)。外側ハードコート126aは、PETキャリア122a上に好ましくは湿式で堆積されるが、スピンコーティング、ディップコーティング、または真空堆積を含む任意の適切な方法に従って付けることができる。外側ハードコート126aが付けられる前または後に、PETキャリア122aは、反対側の面を接着剤124aでコーティングされてよい(ステップ320)。これらの3つの要素、PETキャリア122a、接着剤124a、および外側ハードコート126aは、互いに恒久的に接着されていてもよく、集合的に紫外線ハードコートフィルム120aと見なすことができる。接着剤124aがPETキャリア122a上にコーティングされると、接着剤124aを保護するために、取り外し可能なライナーをPETキャリア122aの同じ面に付けることができる(ステップ330)。次いで、紫外線ハードコートフィルム120aがロールに巻き付けられて、幅が約2メートルであってもよいロールツーロール(roll-to-roll)処理ウェブを形成することができる(ステップ340)。ステップ310~340の操作フローは、毎分約30メートルの速度で紫外線ハードコートフィルム120aのロールを生成することができる。
【0022】
紫外線ハードコートフィルム120aがロールから巻き戻されると、取り外し可能なライナーが取り除かれて接着剤124aを露出させることができ(ステップ350)、PETキャリア122aを、露出された接着剤124aによってポリカーボネート基板110に接着することができる(ステップ360)。例えば、紫外線ハードコートフィルム120aは、ローラーによって平坦なポリカーボネート基板110に乾式ニップ(dry nipped)されてもよい。紫外線ハードコートフィルム120aがポリカーボネート基板110に接着された状態で、積層体100は、ウインドシールドまたは他の窓の所望の最終形状に熱成形する準備ができていてよい。しかしながら、上述したように、また図2に示すように、積層体100は、追加の紫外線ハードコートフィルム120bなどを含むことができ、これらは使用とともに劣化するので、後で1つずつ剥離することができる。この場合、ステップ310~360は、ステップ360で後続の各紫外線ハードコートフィルム120がポリカーボネート基板110ではなくスタックのうち先行する紫外線ハードコートフィルム120に接着されることを除いて、追加の各紫外線ハードコートフィルム120について繰り返されてよい。所望の数の紫外線ハードコートフィルム120がポリカーボネート基板110上に積層されると、ポリカーボネート基板110および1つまたは複数の接着された紫外線ハードコートフィルム120を含む積層体110全体を、2Dまたは3D熱成形して、ウインドシールドまたは他の窓を作成することができる(ステップ370)。熱成形温度は、通常、摂氏約180度であってよく、ウインドシールド形状のパターンまたはモールド表面を利用して、車両10(図1参照)に取り付けるための適切なサイズの2Dまたは3D形状の車両ウインドシールドを形成することができる。
【0023】
上で説明したように、2つ以上の紫外線ハードコートフィルム120を有する積層体100は、最も外側の紫外線ハードコートフィルム120を剥離して除去し、その下にある新鮮な紫外線ハードコートフィルム120を露出させることができることが企図されている。この点、図3の操作フローは、車両10に取り付けられた積層体100の寿命の間、継続してもよい。最も外側の紫外線ハードコートフィルム120が時間の経過とともに許容できないほど劣化した場合、それを剥がして、その下にある次の紫外線ハードコートフィルム120を露出させることができる(ステップ380)。
【0024】
ステップ380での1つまたは複数の紫外線ハードコートフィルム120の除去に続いて、場合によっては、紫外線ハードコートフィルム120のセットを補充して、第1の、最も内側の紫外線ハードコートフィルム120aへの劣化を回避し、積層体100の寿命を延ばすことがさらに企図されている。この第1の紫外線ハードコートフィルム120aは、一般に除去されないことが想定されており、なぜなら、そうすると、車両10で使用するための同じ基準に適合しない可能性がある、より柔らかいポリカーボネート基板110が露出することになるからである。したがって、図3の操作フローは、1つまたは複数の新たな紫外線ハードコートフィルム120を第1の紫外線ハードコートフィルム120aまたは紫外線ハードコートフィルム120の残りのスタックに付けるステップ(ステップ390)を含み得る。例えば、ステップ310~360は、ステップ360において、積層体100が既に車両10に取り付けられ、したがってそれが熱成形された後に新たな紫外線ハードコートフィルム120が積層体100に追加され得ることを除いて、追加の新たな各紫外線ハードコートフィルム120について実行されてよい。これは、例えば、新たな紫外線ハードコートフィルム120(複数可)をスタックにウェット積層し、カードまたはスキージを用いて圧力を加えながら、ヒートガンまたはブロードライヤーでそれらを収縮させて、積層体100の既存の形状に適合させることによって行うことができる。場合によっては、そのような追加の紫外線ハードコートフィルム(複数可)は、2020年1月31日に出願された「THERMOFORM WINDSHIELD STACK WITH INTEGRATED FORMABLE MOLD」と題する共通所有の米国特許出願第16/778,928号に記載されるように、雌型キャビティとして機能する犠牲層を使用して適用することができ、その全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0025】
積層体100の寿命の終わりにおいて、従来の積層されたガラス-PVB-ガラスウインドシールドの場合のような汚染はない。したがって、ポリカーボネート基板110は、容易にリサイクルすることができ、その結果、廃棄物が少なくなり、環境に利益をもたらす。
【0026】
積層体100の上記の例では、ウインドシールドまたは他の窓の所望の形状に熱成形する前に、少なくとも1つの紫外線ハードコートフィルム120が、ポリカーボネート基板110に接着されていることが想定されている。しかしながら、本開示はそのように限定されることを意図するものではなく、1つまたは複数の紫外線ハードコートフィルム120は、ポリカーボネート基板110がすでに熱成形された後に付けられてもよいことが企図される。例えば、ステップ390で紫外線ハードコートフィルム120のスタックを補充することに関連して上記した同じ技術を使用して、元の1つまたは複数の紫外線ハードコートフィルム120を付けることができる。
【0027】
上記の説明は、例示であって、限定ではない。以上の開示を受けて、当業者であれば、本明細書に開示された発明の範囲および技術思想内にある変形を考案することができる。さらに、本明細書に開示される実施形態の様々な特徴は、単独で、または互いに様々な組み合わせで使用することができ、本明細書に記載の特定の組み合わせに限定されることを意図しない。したがって、特許請求の範囲は、例示された実施形態によって限定されるべきではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】