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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-26
(54)【発明の名称】気管内チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
A61M16/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569074
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2020033130
(87)【国際公開番号】W WO2020236588
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/850,784
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521506755
【氏名又は名称】ブライアン メディカル、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョージリス、アンドリュー、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】デペル、ビル
(57)【要約】
第1の開口と第2の開口との間に延在する管部と、管部の遠位端に形成された拡張可能なカフと、管部の一部の周りに形成された耐性部材と、耐性部材の周りに形成されたスリーブとを備える、流体を送達するためのチューブである。スリーブは、実質的に滑らかな外側面を呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口と第2の開口との間に延在する管部と、
前記管部の遠位端に形成された拡張可能なカフと、
前記管部の一部の周りに形成された耐性部材と、
前記耐性部材の周りに形成されたスリーブとを備え、
前記スリーブは実施的に滑らかな外側面を呈する、
流体を送達するためのチューブ。
【請求項2】
前記管部の前記遠位端に形成された拡張可能な第2のカフを更に備える請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
前記管部の壁内の一部に形成され、前記拡張可能なカフに流体結合可能な第1の膨張内腔を更に備える、請求項2に記載のチューブ。
【請求項4】
前記管部の前記壁内の一部に形成され、前記第2の拡張可能なカフに流体結合可能な第2の膨張内腔を更に備える、請求項3に記載のチューブ。
【請求項5】
更に、前記第1の膨張内腔と前記第2の膨張内腔とは、前記管部の壁内において互いに流体結合していない、請求項4に記載のチューブ。
【請求項6】
更に、前記耐性部材は、レーザによる貫通への耐性がある材料から形成されている、請求項1に記載のチューブ。
【請求項7】
更に、前記耐性部材は、アルミニウム材料から形成されている、請求項6に記載のチューブ。
【請求項8】
更に、前記耐性部材は、前記管部の少なくとも一部の周りに巻き付けられている、請求項6に記載のチューブ。
【請求項9】
更に、前記スリーブは、前記耐性部材の径方向外側に配置され、少なくとも前記耐性部材の長さで延在する、請求項8に記載のチューブ。
【請求項10】
接着剤が、前記耐性部材および前記スリーブの近位端および遠位端に塗布されて、前記耐性部材および前記スリーブを前記管部に結合する、請求項1に記載のチューブ。
【請求項11】
更に、前記スリーブは、シリコンで形成される、請求項1に記載のチューブ。
【請求項12】
第1の開口から第2の開口に至る流体チャネルを形成し、管壁を区画する気道管と、
前記気道管の一部の周りに形成された耐性部材と、
前記耐性部材の周りに形成されたスリーブと、
前記第2の開口に近接して前記気道管に沿って形成された第1のカフとを備え、
前記耐性部材は、前記気道管の周りに形成され、
前記スリーブは、実質的に滑らかな外側面を有する単一材料から形成されている、気管内チューブアセンブリ。
【請求項13】
前記第1のカフに隣接して前記気道に沿って形成された第2のカフを更に備える、請求項12に記載の気管内チューブアセンブリ。
【請求項14】
前記管壁内の少なくとも一部に区画され、前記第1のカフに流体結合された第1の膨張内腔と、
前記管壁内の少なくとも一部に区画され、前記第2のカフに流体結合された第2の膨張内腔とを更に備える、請求項13に記載の気管内チューブアセンブリ。
【請求項15】
更に、前記第1のカフと前記第2のカフは互いに独立して膨張可能である、請求項14に記載の気管内チューブアセンブリ。
【請求項16】
更に、前記耐性部材は、前記第1のカフの少なくとも一部の径方向内側に配置される、請求項12に記載の気管内チューブアセンブリ。
【請求項17】
更に、前記耐性材料は、前記気道管の周りに巻き付けられ、
前記スリーブは、前記耐性材料を前記気道管に向けて径方向に圧縮する、請求項12に記載の気管内チューブアセンブリ。
【請求項18】
更に、前記耐性材料と前記スリーブは、近位端および遠位端で前記気道管に接着剤で結合されている、請求項17に記載の気管内チューブアセンブリ。
【請求項19】
気道管の壁内に少なくとも2つの膨張内腔通路が区画された前記気道管を形成し、
前記気道管の外側部の周りに耐性部材を巻き付けることと、
スリーブを拡張して、前記耐性部材の周りに配置することと、
前記スリーブを収縮させて前記耐性部材を前記気道管に向けて圧縮することと、
近位および遠位カフを前記気道管に結合し、前記2つの膨張内腔通路のうち他方を前記近位および遠位カフの各カフに流体結合することを含む、気管内チューブを製造する方法。
【請求項20】
前記スリーブと前記耐性部材の両方の近位端と遠位端に接着剤を塗布し、前記スリーブと前記耐性部材を前記気道管に接着剤で結合することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1の開口と第2の開口との間に延在する管部と、
前記管部の遠位端に形成された拡張可能なカフと、
前記管部の一部の周りに形成された耐性部材と、
前記耐性部材の周りに形成されたスリーブとを備え、
前記耐性部材は、拡張可能なカフと管部との間の少なくとも一部に配置される、流体を送達するためのチューブ。
【請求項22】
気道壁内に膨張内腔を区画する気道管と、
前記気道管の一部の周りに少なくとも部分的に配置された耐性部材と、
前記耐性部材の周りに少なくとも部分的に配置されたスリーブと、
前記膨張内腔と流体結合された空隙を区画するカフとを備え、
前記膨張内腔は、前記耐性部材を経て前記空隙に流体結合する、気管内チューブアセンブリ。
【請求項23】
その内部に膨張内腔を有する気管内チューブと、前記気管内チューブの少なくとも一部の周りに配置された耐性材料と、前記耐性部材の少なくとも一部の周りに配置されたスリーブを準備し、
前記膨張内腔に近接する位置で第1の穴を前記スリーブと前記耐性部材を貫通するように切り出し、
前記第1の穴の内側に区画される第2の穴を、前記気管内チューブを部分的に貫通するように切り出し、
前記第2の穴にストッパーを挿入し、前記第1の穴の周囲に沿って前記ストッパーの周りに接着剤を塗布し、
前記ストッパーを取り除き、前記カフを前記気管内チューブ沿って結合して、前記第2の穴を介して前記カフを前記膨張内腔に流体結合することを含む、気管内チューブのためのカフを膨張内腔に結合する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2019年5月21日に出願された米国仮出願第62/850,784号の利益を主張し、その内容の全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、気管内チューブに関し、更に具体的には耐性層を有する気管内チューブに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの場合、手術などの医療施術中に、医師は、患者に出入りする流体の流れを制御することを望んでいる。そのような例の1つとして、患者の肺への流体の流れを制御するために気管内チューブが用いられている。挿入プロセスの一部において、気管内チューブは患者の口を通過し、声帯を通過して、部分的に気管に入る。気管内チューブは、遠位端に膨張可能なカフを備えていることが多く、該カフは気管内チューブの遠位端と気管壁との間に流体シールを提供するために選択的に膨張可能となっている。膨張したカフが気管内チューブを気管壁に流体的に密封することにより、気管内チューブにより、医師が患者の肺に出入りする流体の量と種類を制御することが可能となる流体チャネルを提供できるようになっている。
【0004】
気管内チューブを介して導入される流体は、気体状であることが多く、施術中の患者の肺への十分な酸素供給を確保するために酸素を含んでいる。更に、多くの施術では、気管内チューブに近接する気管または患者の解剖学的構造の他の部分の周りの軟組織上での操作を伴う。これらの施術において、医師は、カッティングデバイスで気管内チューブを損傷しないように特別な注意を払う必要がある。更に、多くの施術は、カッティングデバイスとして外科用レーザまたは他の発熱性のデバイスを使用することを伴う。
【0005】
一部の気管内チューブは、気管内チューブの外側を取り囲む耐火性材料により形成される。これにより、発熱性のカッティングデバイスによる気管内チューブの損傷防止に役立つ一方、その外面が患者の軟組織に対して研磨性を有することとなる。より具体的には、気管内チューブは、患者の気管内に配置され気管から取り出される際に、とりわけ声帯を通過する。従って、従来の耐火性気管内チューブの研磨性のある外側は、挿入および取出しの際にしばしば患者の軟組織を過度に傷つける。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態は、第1の開口と第2の開口との間に延在する管部と、管部の遠位端に形成された拡張可能なカフと、管部の一部の周りに形成された耐性部材と、耐性部材の周りに形成されたスリーブとを備える、流体を送達するためのチューブである。ここで、スリーブは、実質的に滑らかな外側面を呈する。
【0007】
本実施形態の一例は、管部の遠位端に形成された第2の拡張可能なカフを備える。更に、本例は、管部の壁内に部分的に形成され、拡張可能なカフに流体結合可能な第1の膨張内腔を有する。本例は、管部の壁内に部分的に形成され、第2の拡張可能なカフに流体結合可能な第2の膨張内腔を有していてもよい。本例の一態様では、管部の壁内において、第1の膨張内腔と第2の膨張内腔は互いに流体結合していない。
【0008】
更に別の例においては、耐性部材は、レーザによる貫通への耐性がある材料から形成されている。本例の一態様では、耐性部材は、アルミニウム材料から形成されている。更に別の例においては、耐性部材は、管部の少なくとも一部の周りに巻き付けられている。本例の一態様では、スリーブが耐性部材の径方向外側に配置され、少なくとも耐性部材の長さで延在する。
【0009】
本実施形態の別の例においては、接着剤が耐性部材およびスリーブの近位端および遠位端に塗布されて、耐性部材およびスリーブを管部に結合する。一例では、スリーブは、シリコンで形成される。
【0010】
別の実施形態は、第1の開口から第2の開口に至る流体チャネルを形成し、管壁を区画する気道管と、気道管の一部の周りに形成された耐性部材と、耐性部材の周りに形成されたスリーブと、第2の開口に近接して気道管に沿って形成された第1のカフとを備える気管内チューブアセンブリである。ここで、耐性部材は、気道管の周りに形成され、スリーブは実質的に滑らかな外側面を有する単一材料から形成されている。
【0011】
本実施形態の一例は、第1のカフに隣接する気道に沿って形成された第2のカフを有する。本例の一態様は、管壁内の少なくとも一部に区画され、第1のカフに流体結合された第1の膨張内腔流体チャネルと、管壁内の少なくとも一部に区画され、第2のカフに流体結合された第2の膨張内腔流体チャネルとを含む。本例の一態様では、第1のカフと第2のカフは互いに独立して膨張可能である。更に別の態様では、耐性部材は、第1のカフの少なくとも一部の径方向内側に配置されている。
【0012】
本実施形態の別の例では、耐性材料が気道管の周りに巻き付けられ、スリーブが耐性材料を気道管に向けて径方向に圧縮する。本例の別の態様では、耐性材料およびスリーブは、近位端および遠位端で気道管に接着剤で結合されている。
【0013】
別の実施形態は、気管内チューブを製造する方法を含み、該方法は、気道管の壁内に少なくとも2つの膨張内腔通路が区画された気道管を形成し、気道管の外側部の周りに耐性部材を巻き付け、スリーブを拡張して耐性部材の周りに配置し、スリーブを収縮させて耐性部材を気道管に向けて圧縮し、近位および遠位カフを気道管に結合し、2つの膨張内腔通路のうち他方を近位および遠位カフの各カフに流体結合することを含む。
【0014】
本実施形態の一例は、スリーブと耐性部材の両方の近位端と遠位端に接着剤を塗布し、スリーブと耐性部材を気道管に接着剤で結合することを含む。
【0015】
本開示の上記の態様およびそれらを入手する方法は、以下の添付の図面と併せて本開示の実施形態の以下の記載を参照することで、より明らかとなり、その開示自体がよりよく理解されるであろう。
【0016】
いくつかの図面にわたり、対応する部材を示すために対応する参照番号を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、気管内チューブアセンブリを立位斜視図である。
図2図2は、2つのカフが膨張された状態の図1の気管内チューブアセンブリの側面図である。
図3図3は、図2の気管内チューブアセンブリの断面図である。
図4図4(a)は、遠位カフが膨張された状態の図1の気管内チューブアセンブリの部分側面図であり、図4(b)は、近位カフが膨張された状態の図2の気管内チューブアセンブリの部分側面図である。
図5図5は、図1の気管内チューブアセンブリの製造方法である。
図6図6(a)は、気管内チューブアセンブリの他の実施形態であり、図6(b)は、遠位カフが膨張された状態の図6(a)の気管内チューブアセンブリの部分側面図であり、図6(c)は、近位カフが膨張された状態の図6(a)の気管内チューブアセンブリの部分側面図である。
図7図7は、直線状に配向された図6(a)の気管内チューブアセンブリの他の側面図である。
図8図8は、図6(a)の気管内チューブアセンブリの1つのカフの部分断面図である。
図9図9は、図6(a)の気管内チューブアセンブリのためのカフを内腔に流体結合する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の原理の理解を促す目的で、本明細書に記載し、図面に示す実施形態を参照し、特定の言語を使用してこれを説明する。しかしながら、これにより本開示の範囲は限定されないことを意図しており、本開示の関連技術の当業者が通常想達するような、図示した装置および方法における変更および更なる変形、ならびに本明細書に示す本開示の原理の更なる応用も考慮されていることを理解されたい。
【0019】
ここで、図1図3を参照すると、人工呼吸器または任意の他の医療機器から取り外された気管内チューブアセンブリ100が示される。気管内チューブアセンブリ100は、近位端に第1の開口102を有し、遠位端に第2の開口108を有する気道管106から形成されてもよい。第1の開口102は、そこに結合されたカプラ104を有していてもよい。カプラ104により、気道管106を介して第2の開口108から流出させる流体を選択的に供給する人工呼吸器または他の医療機器に対し、第1の開口102を流体結合する場所を設けることができる。本開示の一態様では、気道管106により、第1の開口102と第2の開口108との間に流体的に密封されたチャネル306(図3参照)が設けられる。
【0020】
気道管106は、無菌の、流体的に密封された内部チャネル306を設けることができるシリコンまたは任意の他の材料で形成され得る。本開示の一態様では、気道管106は、気道壁302を有する実質的にチューブ状の構造であり得る(図3参照)。気道壁302は、その内部に第1および第2の膨張管通路または内腔304(図3参照)を区画するのに十分な厚さを有し得る。膨張内腔通路304は、対応する第1および第2のパイロットバルーン114、116から近位カフ118および遠位カフ120に至る流体的に隔離された通路を提供し得る。本開示の一態様では、第1の膨張パイロットバルーン114は、膨張内腔通路304の一方を介して近位カフ118または遠位カフ120の一方に流体結合され、それによって当該カフを選択的に膨張可能とする(図4(a)及び図4(b)参照)。同様に、第2のパイロットバルーン116は、他方の膨張内腔通路304を介して近位カフ118または遠位カフ120の他方に流体結合され、それによって他方のカフを選択的に膨張可能とする。
【0021】
気道管106は、気道管106の径方向外側面に結合された耐性部材110も有し得る。耐性部材110は、気道管106を傷つける可能性のある外科用レーザまたは他の外科用器具による貫通への耐性がある任意の材料であり得る。耐性部材110は、気道管106のうち使用中に患者内に配置されることが意図されている部分に対応する気道管106の長さで延在し得る。しかしながら、一実施形態では、耐性部材110は、その露出部112を除いた気道管106の実質的に全長に延在してもよい。露出部112は、カプラ104に隣接して位置する気道管106の部分であり得る。一例においては、耐性部材110は、遠位カフ120の径方向内側部から近位カフ118を通り、気道管106に沿って露出部112まで延在する。他の実施形態においては、耐性部材110は、近位カフ118と露出部112の間に延在する。
【0022】
本開示の一態様では、耐性部材110は、KTPレーザよる貫通への耐性がある材料から形成され得る。より具体的には、顕微鏡に接続された400ミリメートルのレンズマイクロビームを備えたKTPレーザは、気管内チューブアセンブリ100から35センチメートル離れて配置され、380ミクロンの集束スポットを送出し得る。KTPレーザは、耐性層に対して約90度の入射角を有し得る。このシナリオでは、レーザ耐性材料は、約15ワットの最大出力を連続的に送出するレーザによる連続ビームに少なくとも3分間耐え得る任意の材料でよい。より具体的には、酸素ガスが、その周囲に耐火性部材110が配置された気管内チューブアセンブリ100を通してポンプで送られるが、耐火性部材110は、上記の条件における酸素の燃焼を防止し得る。
【0023】
代替的または追加的に、耐火性部材100は、CO2レーザによる貫通に耐えることができる任意の材料でよい。例えば、気管内チューブアセンブリ100は、約0.38ミリメートルの一定のスポットを送出可能なCO2レーザから約35.5センチメートルの位置に配置され得る。CO2レーザは、少なくとも約40~45ワットの最大出力を送出するCO2レーザによる連続ビームを少なくとも3分間生成し得る。他の例では、CO2レーザは約60ワットの最大出力を送出し得る。CO2レーザは、気管内チューブアセンブリ100に対して異なる角度で複数回の照射を行い得る。このシナリオでは、レーザ耐性材料は、耐性層がCO2レーザに曝されている状態で、酸素ガスが気管内チューブアセンブリ100を介してポンプで送られる際に燃焼するのを防止できる任意の材料でよい。
【0024】
上記のレーザ耐性材料の例は、全ての例を網羅しているわけではない。耐性部材110は、気道管106内を流れる流体が外部点火による影響を受けないように保護できる任意の材料から形成されてよい。従って、耐性部材110に任意の既知の耐性材料を用いることができる。
【0025】
本開示の一態様では、耐性部材110は、らせん状のパターンで気道管106の周りに巻き付けられている。この構成では、気道管106に沿って耐性部材110の隣接する部分同士が互いに部分的に重なることで、耐性部材110が、気道管106の周りに巻き付けられた場合に、気道管106の外側面を完全に覆うことを確保する。言い換えれば、耐性部材110は、巻き付けパターン内の隙間や気道管106の折り曲げにより生じる隙間による気道管106の非被覆部分が存在しないことを確保するように、気道管106の周りに巻き付けられる。
【0026】
ここでは耐性部材110を巻き付けて適用することを記載したが、他の適用方法も考えられる。より具体的には、耐性部材110は、らせん構造の代わりに、気道管106の周りに一度で巻き付けられるシート状に形成されていてもよい。本実施形態においては、耐性部材110は、耐性部材110の所望の長さを有する実施的に長方形のシートから形成されてもよい。そして、該シートは、気道管106の周りに360度よりわずかに大きく巻き付けられて、外側面を実質的に覆うことができる。このように、本明細書では、耐性部材110を適用する任意の既知の方法を想定している。
【0027】
巻き付けパターンまたは方法とは関係なく、耐性部材110は、軟組織に対して研磨性を有する外側面を有し得る。従って、本開示の一態様では、スリーブ122が、耐性部材110の径方向外側部の周りに配置されてもよい。スリーブ122は、滑らかな外側面を有する実質的に連続した材料から形成され得る。非排他的な例においては、スリーブ122は、気道管106の周りに配置されたときの耐性部材110の外径よりわずかに小さい内径を有するチューブである。この構成では、スリーブ122は、延伸されるか、そうでなければ拡張されることにより、耐性部材110の外側面の周りに配置され得る。その周りに配置されると、スリーブ122は、未延伸サイズに戻り、それによって、その下にある耐性部材110を気道管106に向けて圧縮する径方向の圧縮を耐性部材110にもたらす。
【0028】
本開示の他の態様では、スリーブ122と耐性部材110が、それらの下の気道管に接着剤で結合される。本開示の本態様においても、本明細書で記載するように、耐性部材110とスリーブ122は気道管106の周りに配置されてよい。しかしながら、耐性部材110とスリーブ122を気道管106に結合するように耐性部材110に圧縮荷重をかけるスリーブ122に加えて、接着剤を耐性部材110とスリーブ122の近位端と遠位端に塗布して、接着剤でそれらを気道管106に更に結合させてもよい。非排他的な例においては、接着剤は、室温加硫(「RTV:Room-Temperature-Vulcanizing」)シリコーンであってよい。しかしながら、本明細書においては任意の既知の接着剤を想定する。
【0029】
スリーブ122は、任意の適切な大きさの壁の厚さを有する。より具体的には、壁の厚さは、耐性部材110上でスリーブを延伸可能とするのに十分な薄さである一方、気管内チューブアセンブリ100の製造中にスリーブが裂けないことを確保するのに十分な厚さであり得る。非排他的な例においては、スリーブは、シリコンから形成され、約1000分の8インチから1000分の10インチの壁の厚さを有し得る。しかしながら、他の実施形態では、スリーブ122は、シリコン以外の材料で形成され得る。更に、スリーブ122は、1000分の8インチ未満または1000分の10インチを超える壁の厚さであってもよい。従って、本開示は、スリーブ122の多くの異なるサイズおよび材料を想定している。
【0030】
ここで、図4(a)及び図4(b)を参照すると、カフ118、120の2つの異なる構成が示される。図4(a)において、近位カフ118が非膨張状態で示され、遠位カフ120が膨張状態で示される。近位カフ118と遠位カフ120の膨張は、第1または第2のパイロットバルーン114、116の一方を介して対応するカフに流体を選択的に供給することにより変更し得る。図4(a)に示す例においては、第1のパイロットバルーン114は、気道管106の壁内の膨張内腔通路304の一方を介して遠位カフ120の内部チャンバへ送られる圧縮流体を供給され得る。同様に、図4(b)においては、第2のパイロットバルーン116は、気道管106の壁内の膨張内腔通路304の他方を介して近位カフ118の内部チャンバへ送られる圧縮流体を供給され得る。更に、近位カフ118と遠位カフ120の両方が、本明細書で記載するように、対応するカフ118、120の内部チャンバに供給される流体の量、体積、および圧力に応じて、図1に示すように収縮されてもよいし、図2に示すように膨張されてもよい。
【0031】
ここで、図5を参照すると、製造方法500の非排他的な例が示される。最初に、ボックス502では、気道管106が既知の押出技術を用いて形成され得る。気道管106の形成過程の一部として、膨張内腔通路304も気道管106の壁内に形成され得る。次に、ボックス504では、気道管106が所望の適用に応じた所望の長さに切断され得る。ボックス506では、気道管106が、円弧状のマンドレルを用いて加熱処理を施すことにより、円弧状に成形され得る。ボックス508では、とりわけ本明細書に記載される技術のいずれかを利用して、耐性部材110が気道管106の周りに形成され得る。次に、ボックス510では、スリーブ122が、耐性部材110および気道管106上に拡張されて引っ張られ得る。ボックス512では、接着剤がスリーブ122、耐性部材110、および気道管106の近位端と遠位端の両方に塗布され得る。
【0032】
ボックス514では、気道管106の近位端で、膨張内腔通路304が削り出され得る。次に、ボックス516では、第1および第2のパイロットバルーン114、116が、対応する膨張内腔通路304が削り出された位置に結合され得る。第1および第2のパイロットバルーン114、116の膨張内腔通路304への流体結合を確保にするために接着剤などを利用してもよい。ボックス518では、各カフ118、120の内側部を対応する膨張内腔通路304に流体結合するため、気道管106の一部を貫通する穴が形成され得る。穴は、カフ118、120内で、対応する膨張内腔通路304を気道管106の外側面に流体結合する流体ポートであり得る。従って、ボックス520では、近位カフ118および遠位カフ120は、対応する流体ポートの周りに配置され、気道管106に結合され得る。接着剤を使用して、対応するカフ118、120を気道管106に流体結合して、対応するカフ118、120を対応する第1および第2のパイロットバルーン114、116に更に流体結合することができる。
【0033】
ボックス522では、いずれかの膨張内腔が埋め戻され、ボックス524では、気道管106の遠位端にマーフィーアイを形成し得る。次に、ボックス526では、膨張弁がパイロットバルーン114、116に挿入され得る。最後に、ボックス528では、気管内チューブアセンブリ100に対する漏れ試験が行われる。
【0034】
ここで、図6(a)を参照すると、他の実施形態の気管内チューブアセンブリ600が示される。本実施形態においては、耐性部材110は、気管内チューブ106の開始部604から気管内チューブ106の終了部602まで延在してもよい。本開示の一態様では、終了部602は、遠位カフ120の遠位であってよい。言い換えれば、耐性材料110は、両方のカフ118、120の下で第2の開口108に向かって延在し得る。本実施形態では、耐性材料110は、気道管106の露出部112を除いた実質的に全長である耐性長さ702で延在してもよい。この構成においては、気道管106の患者内に配置されることが意図される部分が、遠位カフ120に至るまで、耐性材料110により取り囲まれる。
【0035】
本開示の一態様では、耐性材料110は、径方向でカフ118、120と膨張内腔304との間に配置される。従って、カフ118、120の内側部を対応する膨張内腔304に流体結合するために、スリーブ122、耐性材料110、および気道壁302の一部を貫通する流体通路を形成しなければならない。本開示の一態様は、膨張内腔304から気道壁302、耐性材料110、およびスリーブ122を貫通する通路の流体的密封を確保しつつ、この流体接続を形成する方法である。
【0036】
ここで、図8および図9を参照すると、カフ118、120を対応する膨張内腔304に結合する非排他的な方法が記載されている。ボックス902では、本明細書に記載するように、気道管106が耐性材料110で包まれ得る。ボックス902では、耐性材料110は、近位カフ118を通過し、少なくとも部分的に位カフ120内に至るように気道管106に沿って軸方向に配置されて巻き付けられる。本開示の一態様では、耐性材料110は、近位カフ118および遠位カフ120の両方を軸方向に通過するように気道管106に沿って延在して巻き付けられる。次に、ボックス904では、本明細書で記載されるように、スリーブ122が耐性材料110上に配置され、気道管106および耐性材料110に結合される。
【0037】
ボックス906では、第1の直径802を有するカッターを使用して、対応する膨張内腔304の径方向外側の位置で、スリーブ122および耐性材料110を貫通する第1の穴806を切り出す。第1の穴806は、気道管106の中心部を長手方向に通ると定義される気道軸804に対して膨張内腔304の径方向外側に位置し得る。本開示の一態様では、カッターを、気道管106の気道壁302の実質的に径方向内部まで進めるのではなく、むしろスリーブ122および耐性材料110を貫通する穴を切り出すのに十分な分だけ進める。第1の穴806のためのカッターは、第1の穴806を切り出す際に気道管106の一部に僅かに接触するかもしれないが、膨張内腔304内には進出しない。言い換えると、カッターは、スリーブ122および耐性材料110内に第1の穴806を切り出すのに十分な分だけ径方向内側に進む。第1の穴806からスリーブ122および耐性材料110の一部の全てが取り除かれ、気道管106の径方向外側面が露出される。
【0038】
次に、ボックス908では、気道管106を部分的に貫通し、その下の膨張内腔304内に通じる第2の穴808が切り出され得る。第2の穴808は、第1の穴806と実質的に同軸に配置され得る。非排他的な実施形態においては、第2の穴808は、第1の直径802より僅か小さい第2の直径810を有していてもよい。第2の穴808は、単に気道管106の気道壁302の一部を貫通して区画されているが、これは、その下の膨張内腔304のための抜け口(第2の穴808)を気道管106から径方向外側に向けて設けるためである。本明細書に記載するように、最終的には、カフ118、120の一方が抜け口に沿って配置され、膨張内腔304を当該カフ118、120の内部チャンバに流体結合する。
【0039】
ボックス910では、ストッパープラグ822が、第2の穴808を実質的に塞ぐように第2の穴808を貫通して配置され得る。ストッパープラグ822は、その内部に配置されたときに第2の穴808を実質的に塞ぐために、第2の直径810と同じか、僅かに大きい直径を有していてもよい。更に、ストッパープラグ822は、ストッパープラグ822の周りに環状チャネル820を区画するスリーブ122から径方向に離れる方向に延在し得る。環状チャネル820は、ストッパープラグ822と、第1の穴と第2の穴の間の気道管106の外側面と、第1の穴806の周囲に沿った耐性部材110と、および第1の穴806の周囲に沿ったスリーブ122とにより区画される。ボックス910では、ストッパープラグ822が第2の穴808を貫通して位置づけられた状態で、接着剤を環状チャネル820内に塗布することができる。環状チャネル820内に接着剤を配置することにより、接着剤でスリーブ122、耐性部材110および気道管106の間のいかなる隙間も実質的に塞ぐことができ、流体が第1の穴806を通り抜けてスリーブ122と気道管106の外側面との間の空間に侵入不能となることを確保できる。言い換えると、接着剤を環状チャネル820に塗布することで、対応するカフ118、120が膨張された際に、流体が耐性材料110の層へ染み出すことを防止する。
【0040】
接着剤は、任意の既知の接着剤でよく、非排他的な実施形態においてはRTVシリコーンである。更に、プラグは、接着剤により接着されにくい材料から形成することができる。非排他的な例においては、プラグは、テフロン(登録商標)材料から形成されている。しかしながら、任意の既知の接着剤およびプラグ材料を用いてもよく、本開示では全ての既知の接着剤およびプラグ材料を想定している。
【0041】
ここで、ボックス912を参照すると、接着剤が少なくとも部分的に硬化した後、ストッパープラグ822が第2の穴808から取り除かれ得る。本明細書に記載するように、ストッパープラグ822は、接着剤により実質的に接着されにくい材料から形成され得る。従って、接着剤が少なくとも部分的に硬化した後、プラグを第2の穴808から取り除いてもよい。更に、接着剤は少なくとも部分的に硬化しているため、第2の穴808は、気道管106を部分的に貫通して膨張内腔304をスリーブ122の外側部に流体結合するよう区画されたままとなり得る。
【0042】
次に、ボックス914では、対応するカフ118、120が、軸方向で第2の穴808に並んだ位置でスリーブ122の周りに位置づけられる。より具体的には、カフ118、120が第2の穴808に合わせられ、第2の穴808が対応する膨張内腔304をカフ118、120の空隙818に流体結合するようになる。ボックス916では、各カフ118、120が、近位端812および遠位端814においてスリーブ122の径方向外側面に接着剤で結合され得る。空隙818は、カフ118、120の近位端812と遠位端814との間で、カフ118、120の内側面とスリーブ122の外側面との間に形成される。更に、キャップ816を接着剤で膨張内腔304の遠位端に形成して、流体が遠位端より流出するのを防止し得る。これにより、膨張内腔304を介して供給された流体は、第2の穴808を通って空隙818に流れ込み、所定の圧力・体積条件でカフ118、120を拡張する。
【0043】
最後に、ボックス918では、膨張内腔304のカフ118、120への流体結合を確保するために漏れ試験が実施され得る。より具体的には、空隙818を満たすと立証された流体圧力で、流体が膨張内腔304に供給され得る。流体は、試験圧力で供給され、試験圧力が低下しないことを確保する期間にわたり監視され得る。試験圧力の低下は、膨張内腔304とカフ118、120との間の漏れを示し得る。本明細書に記載するように、漏れ試験の一態様は、流体が第1の穴806の周囲を通過して、スリーブ122と気道管106との間の空間に侵入しないことを確保するものでよい。言い換えると、漏れ試験の一態様は、環状チャネル820に塗布された接着剤による、第1の穴806の周囲の周りでスリーブ122、耐性部材110、および気道管106の適切な密封を確保するものである。
【0044】
図8および図9は、1つのカフを膨張内腔に流体結合する方法を図示し記載しているが、本開示は、本明細書で記載される方法と実質的に同じ方法を利用して、2つ以上のカフを膨張内腔に流体結合することも意図している。より具体的には、図3に示すように、2つの膨張内腔304が気道壁302に区画されてもよい。この実施形態では、近位カフ118を第1の膨張内腔に結合し、次に遠位カフ120を第2の膨張内腔に結合するように本明細書で記載の方法を実施することができる。この構成においては、第1および第2の穴806、808が、気道管106の複数の異なる位置に沿って配置されることにより、対応するカフ118、120を第1および第2の膨張内腔の一方に流体結合する。従って、本開示の教示は、任意の数のカフを有する気管内チューブに適用可能である。
【0045】
使用に際し、本明細書に記載の気管内チューブアセンブリ100は、気管内チューブアセンブリ100を外科用レーザなどに曝す可能性のある施術に利用してもよい。これらの種類の施術において、気管内チューブアセンブリ100は、軟組織に研磨的に接触することなく、声帯を越えて患者の気管に部分的に挿入され得る。1つまたは複数のカフを膨らませて、気管内チューブアセンブリ100を気管壁に対し流体的に密封することができる。次に、流体が気管内チューブアセンブリ100を介して患者内に流入する状態で、医師が外科用レーザなどを利用して施術を行うことができる。
【0046】
医師が意図せずに外科用レーザを気管内チューブアセンブリ100に接触させた場合、耐性部材110は、レーザを実質的に反射して、そうでなければ遮断して、レーザが気道管106の流体通路内に侵入できないようにし得る。施術が完了すると、医師は1つまたは複数のカフを収縮して、気管内チューブアセンブリ100を気管または声帯に接触して擦ることなく患者から取り外し得る。より具体的には、スリーブ122およびカフ118、120が耐性部材110の外側面の実質的に全体を覆うことで、気管内チューブアセンブリ100が患者に対しスムーズに挿入・除去可能となることを確保することができる。
【0047】
本明細書に記載するように、耐性部材110は、気道管106に沿って軸方向に延在し、近位カフを通り、遠位カフに部分的に入り込むまたは通り抜けてもよい。気道管106の実質的に全長に亘って耐性部材110を延在させることにより、医師が、患者のカフ118、120に隣接する部分に沿って外科用レーザなどを用いることが可能となる。より具体的には、医師が不注意で外科用レーザをカフ118、120に、そして気道管106に向け直したとしても、依然として、耐性部材110により外科用レーザの気道管106への侵入が実質的に防止され得る。
【0048】
本開示の原理を組み込んだ例示的な実施形態を本明細書に記載したが、本開示はそのような実施形態に限定されない。代わりに、本願は、その一般原則を使用して、本開示の様々なバリエーション、使用、または適合を包含することを意図するものである。更に、本出願は、本開示が関係する当技術分野における既知のまたは慣習的な慣行の範囲内に限り本開示からの新たな試みも包含することを意図する。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
【国際調査報告】