(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-26
(54)【発明の名称】一塩基置換蛋白質およびそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220719BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220719BHJP
C12N 15/56 20060101ALI20220719BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220719BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20220719BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20220719BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20220719BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220719BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220719BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20220719BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20220719BHJP
C12N 9/78 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/09 110
C12N15/56 ZNA
C12N15/55
C12N9/24
C12N9/22
C12N9/14
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12Q1/04
C12Q1/68
C12N9/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569222
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 KR2020006731
(87)【国際公開番号】W WO2020235974
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516355531
【氏名又は名称】ツールゲン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TOOLGEN INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベ スンミン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョンジュン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050CC05
4B050DD02
4B050LL03
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR10
4B063QR14
4B063QR32
4B063QS10
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4H045AA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、一塩基置換蛋白質およびそれを含む組成物およびその用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であって、
(a)CRISPR酵素またはその変異体、
(b)デアミナーゼ(deaminase)、および
(c)DNAグリコシラーゼ(DNA glycosylase)またはその変異体を含み、
前記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンまたはアデニンを任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項2】
前記一塩基置換融合蛋白質は、
(i)N末端-[CRISPR酵素]-[デアミナーゼ]-[DNAグリコシラーゼ]-C末端、
(ii)N末端-[CRISPR酵素]-[DNAグリコシラーゼ]-[デアミナーゼ]-C末端、
(iii)N末端-[デアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-[DNAグリコシラーゼ]-C末端、
(iv)N末端-[デアミナーゼ]-[DNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端、
(v)N末端-[DNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-[デアミナーゼ]-C末端、および
(vi)N末端-[DNAグリコシラーゼ]-[デアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端のうちいずれか1つの構成を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項3】
前記デアミナーゼは、シチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase)であり、
前記DNAグリコシラーゼは、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(Uracil-DNA glycosylase)またはその変異体であり、
前記一塩基置換融合蛋白質は標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンを任意の塩基への置換を誘導する、ことを特徴とする請求項1に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項4】
前記シチジンデアミナーゼは、APOBEC、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(activation-induced cytidine deaminase;AID)またはその変異体である、ことを特徴とする請求項3に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項5】
前記デアミナーゼは、アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase)であり、
前記DNAグリコシラーゼは、アルキラデニン-DNAグリコシラーゼ(Alkyladenine DNA glycosylase)またはその変異体であり、
前記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるアデニンを任意の塩基への置換を誘導する、ことを特徴とする請求項1に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項6】
前記アデノシンデアミナーゼは、TadA,Tad2p,ADA,ADA1,ADA2,ADAR2,ADAT2,ADAT3またはその変異体である、ことを特徴とする請求項5に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項7】
前記一塩基置換融合蛋白質は、1つ以上の核局在配列(nuclear localization sequence;NLS)をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項8】
前記CRISPR酵素またはその変異体は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9蛋白質、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCas9蛋白質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9蛋白質、ストレプトコッカス・アウレウス(Streptococcus aureus)由来のCas9蛋白質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来のCas9蛋白質、およびCpf1蛋白質からなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項9】
前記CRISPR酵素変異体は、RuvCドメインまたはHNHドメインのうちいずれか1つ以上が不活性化される、ことを特徴とする請求項8に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項10】
前記CRISPR酵素変異体は、ニッカーゼ(nickase)である、ことを特徴とする請求項9に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項11】
前記一塩基置換融合蛋白質は、各構成要素(a)、(b)および(c)の間に連結部分(linking moiety)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸。
【請求項12】
請求項1~請求項11の中いずれか一項に記載の一塩基置換融合蛋白質をコードする核酸を含む、ベクター。
【請求項13】
一塩基置換複合体であって、
(a)CRISPR酵素またはその変異体、
(b)デアミナーゼ(deaminase)、
(c)DNAグリコシラーゼ(DNA glycosylase)、および
(d)2つ以上の結合ドメインを含み、
ここで、前記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンまたはアデニンを任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換複合体。
【請求項14】
前記CRISPR酵素、前記デアミナーゼ、および前記DNAグリコシラーゼは、それぞれ1つ以上の結合ドメインに連結され、
ここで、前記CRISPR酵素、デアミナーゼ、および前記DNAグリコシラーゼは、前記結合ドメインの間の相互作用を通じて複合体を形成する、ことを特徴とする請求項13に記載の一塩基置換複合体。
【請求項15】
前記CRISPR酵素、前記デアミナーゼ、および前記DNAグリコシラーゼのうちいずれか1つ(one)は、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、
ここで、前記第1結合ドメインおよび他の構成(another)の結合ドメインは相互作用するペアであり、前記第2結合ドメインおよび残りの構成(the other)の結合ドメインは相互作用するペアであり、
前記ペアによって複合体を形成する、ことを特徴とする請求項14に記載の一塩基置換複合体。
【請求項16】
前記デアミナーゼは、シチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase)であり、
前記DNAグリコシラーゼは、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(Uracil-DNA glycosylase)またはその変異体であり、
前記一塩基置換融合蛋白質は標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンを任意の塩基への置換を誘導する、ことを特徴とする請求項13に記載の一塩基置換複合体。
【請求項17】
前記シチジンデアミナーゼは、APOBEC、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(activation-induced cytidine deaminase;AID)またはその変異体である、ことを特徴とする請求項16に記載の一塩基置換複合体。
【請求項18】
前記デアミナーゼは、アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase)であり、
前記DNAグリコシラーゼは、アルキラデニン-DNAグリコシラーゼ(Alkyladenine DNA glycosylase)またはその変異体であり、
前記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるアデニンを任意の塩基への置換を誘導する、ことを特徴とする請求項13に記載の一塩基置換複合体。
【請求項19】
前記アデノシンデアミナーゼは、TadA,Tad2p,ADA,ADA1,ADA2,ADAR2,ADAT2,ADAT3またはその変異体である、ことを特徴とする請求項18に記載の一塩基置換複合体。
【請求項20】
(i)前記CRISPR酵素、前記デアミナーゼ、および前記DNAグリコシラーゼから選択される2つの構成と第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質と、
(ii)前記選択されなかった残りの1つの構成と第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質と、を含み、
ここで、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインは相互作用するペアであり、
前記ペアによって複合体を形成する、ことを特徴とする請求項13に記載の一塩基置換複合体。
【請求項21】
(i)前記デアミナーゼ、前記DNAグリコシラーゼおよび第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質と、
(ii)CRISPR酵素および第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質と、を含むことを特徴とする請求項20に記載の一塩基置換複合体。
【請求項22】
前記結合ドメインは、FRB domain,FKBP dimerization domain、インテイン(intein),ERT domains,VPR domain,GCN4 peptide,単鎖可変領域フラグメント(single chain variable fragment;scFv)中のいずれか1つ、またはヘテロ二量体(heterodimer)を形成するドメインのうちいずれか1つである、ことを特徴とする請求項14に記載の一塩基置換複合体。
【請求項23】
前記ペアは、
(i)FRBおよびFKBP dimerization domains、
(ii)第1インテイン(intein)および第2インテイン、
(iii)ERTおよびVPR domains、
(iv)GCN4 peptideおよび単鎖可変領域フラグメント(single chain variable fragment;scFv)、または
(v)ヘテロ二量体(heterodimer)を形成する第1ドメインおよび第2ドメインの中から選択されるいずれか1つである、ことを特徴とする請求項15または20に記載の一塩基置換複合体。
【請求項24】
前記ペアは、GCN4 peptideおよび単鎖可変領域フラグメント(single chain variable fragment;scFv)である、ことを特徴とする請求項23に記載の一塩基置換複合体。
【請求項25】
前記第1結合ドメインは、単鎖可変領域フラグメント(single chain variable fragment;scFv)であり、前記第2融合蛋白質は、少なくとも1つ以上の結合ドメインをさらに含み、
ここで、さらに含まれる結合ドメインはGCN4 peptideであり、
2つ以上の第1融合蛋白質は前記GCN4 peptide中のいずれか1つとそれぞれ相互作用することによって複合体を形成する、ことを特徴とする請求項21に記載の一塩基置換複合体。
【請求項26】
一塩基置換組成物であって、
(a)ガイドRNAまたはそれをコードする核酸と、
(b)i)請求項1に記載の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸、またはii)請求項13に記載の一塩基置換複合体と、を含み、
ここで、前記ガイドRNAは標的核酸配列と相補的に結合し、
前記ガイドRNAと結合される標的核酸配列は15~25bpであり、
前記一塩基置換融合蛋白質または前記一塩基置換複合体は前記標的核酸配列を含む標的領域(region)内に存在する1つ以上のシトシンまたはアデニンの任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換組成物。
【請求項27】
1つ以上のベクターを含む、ことを特徴とする請求項26に記載の一塩基置換組成物。
【請求項28】
一塩基置換方法であって、
in vitroまたはex vivo上で標的核酸配列を含む標的領域(region)に(i)ガイドRNAおよび(ii)請求項1に記載の一塩基置換融合蛋白質または請求項12に記載の一塩基置換複合体を接触することを含み、
前記ガイドRNAは標的核酸配列に相補的に結合し、
このとき、前記ガイドRNAと結合される標的核酸配列は15~25bpであり、
前記一塩基置換融合蛋白質または前記一塩基置換複合体は、前記標的核酸配列を含む標的領域(region)内に存在する1つ以上のシトシンまたはアデニンの任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換方法。
【請求項29】
標的遺伝子のSNPスクリーニング方法であって、
前記標的遺伝子を含む細胞に請求項26に記載の一塩基置換組成物を導入して前記標的遺伝子上で人為的にSNPを誘導する(inducing)ことと、
標的とするSNPを含む細胞を選別する(selecting)ことと、
前記選別された細胞を分析することによって標的とするSNPに対する情報(information)を得る(obtaining)ことと、を含み、
このとき、前記標的とするSNPは、前記標的遺伝子から発現する蛋白質の構造または機能に関連する、標的遺伝子のSNPスクリーニング方法。
【請求項30】
前記一塩基置換組成物は、エレクトロポレーション(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子(nanoparticles)、およびプロテイントランスロケーションドメイン(protein translocation domain;PTD)の融合蛋白質方法のうち選択される1つ以上の方法で導入される、ことを特徴とする請求項29に記載の標的遺伝子のSNPスクリーニング方法。
【請求項31】
薬物耐性突然変異のスクリーニング方法であって、
標的遺伝子を含む、少なくとも1つ以上の細胞に請求項26に記載の一塩基置換組成物を導入して前記標的遺伝子上で人為的にSNPを誘導する(inducing)ことと、
前記細胞に特定の薬物を処理する(treating)ことと、
生存した細胞を選別する(selecting)ことと、
前記選別された細胞を分析することによって標的とするSNPに対する情報(information)を得る(obtaining)ことと、を含み、
このとき、前記標的とするSNPは前記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連する、薬物耐性突然変異のスクリーニング方法。
【請求項32】
オシメルチニブ(Osimertinib)耐性SNP情報を取得する方法であって、
a)標的核酸配列を含む細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸、およびガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を導入することと、
b)前記a)の細胞に前記オシメルチニブを処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに対する情報を得ることと、を含み、
このとき、前記標的とするSNPは、前記標的核酸配列を含むEGFR遺伝子から発現するEGFRの構造または機能に関連する、オシメルチニブ(Osimertinib)耐性SNP情報を取得する方法。
【請求項33】
前記一塩基置換組成物は、エレクトロポレーション(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子(nanoparticles)およびPTD(protein translocation domain)の融合蛋白質方法のうち選択される1つ以上の方法で導入される、ことを特徴とする請求項31に記載の標的遺伝子のSNPスクリーニング方法.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、CRISPR酵素、デアミナーゼおよびDNAグリコシラーゼを使用した一塩基置換蛋白質を使用してシトシン(C)やアデニン(A)を任意の塩基で置換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CRISPR酵素が連結されたデアミナーゼ(CRISPR enzyme-linked deaminase)は、点突然変異が起こった遺伝子部位を校正して遺伝的障害を治療したり、ヒトまたは真核細胞の遺伝子内の標的とする一塩基多型(SNP)を誘導したりするために使用されている。
【0003】
現在報告されているCRISPR酵素が連結されたデアミナーゼとして、
1)(i)S.pyogenes由来の触媒欠損Cas9(catalytically-deficient Cas9;dCas9)またはD10A Cas9ニッカーゼ(nCas9)と、(ii)ラットのシチジンデアミナーゼであるrAPOBEC1とを含むベースエディター(Base Editors;BEs)、
2)(i)dCas9またはnCas9と(ii)ウミヤツメ(sea lamprey)の活性化誘導シチジンデアミナーゼ(activation-induced cytidine deaminase(AID))オルソログ(ortholog)であるPmCDA1またはヒトAIDを含むTarget-AID、
3)MS2-結合蛋白質に融合した過活性化AID変異体を募集するためにMS2 RNAヘアピンに連結されたsgRNAsとdCas9を含むCRISPR-X、および
4)ジンク-フィンガー蛋白質または転写活性化因子様エフェクター(transcription activator-like effectors(TALEs))がシチジンデアミナーゼに融合したものがある。
【0004】
従来のDNAグリコシラーゼとともに使用されたCRISPR酵素が連結されたデアミナーゼは、ヌクレオチド内のシトシン(C)をチミン(T)のみに、またはアデニン(A)をグアニン(G)のみに置換することができる。一例として、Cas9、シチジンデアミナーゼ、およびウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤(Uracil DNA glycosylase inhibitor(UGI))が融合した物質は、シトシン(C)をチミン(T)で置換するために使用される。これは、ウラシル(U)がDNAグリコシラーゼによってウラシルが除去されないように誘導するメカニズムを使用してチミン(T)に置換されるようにする。同様に、最近シチジンデアミナーゼの代わりにアデノシンデアミナーゼ(または、アデノシンデアミナーゼ)を使用すると、アデニン(A)をグアニン(G)のみに置換することができることが報告された。
【0005】
そこで、本出願の発明者は、CRISPR酵素、デアミナーゼおよびDNAグリコシラーゼを使用した一塩基置換蛋白質を開発し、シトシン(C)やアデニン(A)を任意の塩基に置換することを意図している。このような技術の開発は、突然変異による遺伝子疾患の究明、SNPによる疾患感受性に影響を与えたり、薬物に対する耐性を有する核酸配列を分析して薬物開発および治療剤などに使用されることができ、これは今後の薬物開発および治療効果を向上させるのにより一層役立つだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のCRISPR酵素が連結されたデアミナーゼは、シトシン(C)やアデニン(A)を特定の塩基(AまたはG)にのみ変更可能であるという限界を有している。このような限界によって突然変異による遺伝子疾患の究明、SNPによる疾患感受性、関連治療剤の開発などの研究範囲が制限される。
【0007】
したがって、シトシン(C)やアデニン(A)を特定の塩基ではない、任意の塩基(A,T,C,G,U)で置換できる手段の開発が切実に求められる。
【0008】
本出願は、一塩基置換蛋白質または一塩基置換複合体、またはそれらを含む一塩基置換組成物およびそれらの用途を提供することを目的とする。
【0009】
また、本出願は、上記一塩基置換蛋白質をコードする核酸配列またはそれを含むベクターを提供することを目的とする。
【0010】
また、本出願は、一塩基置換方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本出願は、上記一塩基置換蛋白質または上記一塩基置換複合体、またはそれらを含む一塩基置換組成物の様々な用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願は、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸を提供する。
【0013】
本出願は、一塩基置換融合蛋白質をコードする核酸を含むベクターを提供する。
【0014】
本出願は、一塩基置換複合体を提供する。
【0015】
本出願は、一塩基置換組成物を提供する。
【0016】
本出願は、一塩基置換方法を提供する。
【0017】
本出願で提供される一塩基置換融合蛋白質、一塩基置換複合体、または一塩基置換組成物を使用して、エピトープスクリーニング、薬物耐性遺伝子または蛋白質スクリーニング、薬物感作スクリーニング、またはウイルス耐性遺伝子または蛋白質スクリーニング用途を提供する。
【0018】
本出願は、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であって、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)デアミナーゼ(deaminase)、および(c)DNAグリコシラーゼ(DNA glycosylase)またはその変異体を含み、ここで、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンまたはアデニンを任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸を提供する。
【0019】
本出願は、(i)N末端-[CRISPR酵素]-[デアミナーゼ]-[DNAグリコシラーゼ]-C末端、(ii)N末端-[CRISPR酵素]-[DNAグリコシラーゼ]-[デアミナーゼ]-C末端、(iii)N末端-[デアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-[DNAグリコシラーゼ]-C末端、(iv)N末端-[デアミナーゼ]-[DNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端、(v)N末端-[DNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-[デアミナーゼ]-C末端、および(vi)N末端-[DNAグリコシラーゼ]-[デアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端のうちいずれか1つの構成を有することを特徴とする、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸を提供する。
【0020】
本出願は、一塩基置換複合体であって、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)デアミナーゼ(deaminase)、(c)DNAグリコシラーゼ(DNA glycosylase)、および(d)2つ以上の結合ドメインを含み、ここで、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンまたはアデニンを任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換複合体を提供する。
【0021】
本出願は、上記CRISPR酵素、上記デアミナーゼ、および上記DNAグリコシラーゼは、それぞれ1つ以上の結合ドメインに連結され、ここで、上記CRISPR酵素、デアミナーゼ、および上記DNAグリコシラーゼは、上記結合ドメインの間の相互作用を通じて複合体を形成することを特徴とする、一塩基置換複合体を提供する。
【0022】
本出願は、上記CRISPR酵素、上記デアミナーゼ、および上記DNAグリコシラーゼのうちいずれか1つ(one)は、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、ここで、上記第1結合ドメインおよび他の構成(another)の結合ドメインは相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインおよび残りの構成(the other)の結合ドメインは相互作用するペアであり、このとき、上記ペアによって複合体を形成することを特徴とする、一塩基置換複合体を提供する。
【0023】
本出願は、(i)上記CRISPR酵素、上記デアミナーゼ、および上記DNAグリコシラーゼから選択される2つの構成と第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質と、(ii)上記選択されなかった残りの1つの構成と第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質と、を含み、ここで、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインは相互作用するペアであり、このとき、上記ペアによって複合体を形成する、ことを特徴とする、一塩基置換複合体を提供する。
【0024】
本出願は、(i)上記デアミナーゼ、上記DNAグリコシラーゼおよび第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質と、(ii)CRISPR酵素および第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質と、を含むことを特徴とする、一塩基置換複合体を提供する。
【0025】
ここで、上記第1結合ドメインは、単鎖可変領域フラグメント(single chain variable fragment;scFv)であり、上記第2融合蛋白質は、少なくとも1つ以上の結合ドメインをさらに含み、ここで、さらに含まれる結合ドメインはGCN4 peptideであり、このとき、2つ以上の第1融合蛋白質は上記GCN4 peptide中のいずれか1つとそれぞれ相互作用することによって複合体を形成することを特徴とする、一塩基置換複合体を提供することができる。
【0026】
本出願は、一塩基置換組成物であって、(a)ガイドRNAまたはそれをコードする核酸と、(b)i)第1項の一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸、またはii)第13項の一塩基置換複合体と、を含み、ここで、上記ガイドRNAは標的核酸配列と相補的に結合し、上記ガイドRNAと結合される標的核酸配列は15~25bpであり、上記一塩基置換融合蛋白質または上記一塩基置換複合体は上記標的核酸配列を含む標的領域(region)内に存在する1つ以上のシトシンまたはアデニンの任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換組成物を提供することができる。
【0027】
本出願は、1つ以上のベクターを含むことを特徴とする一塩基置換組成物を提供することができる。
【0028】
本出願は、一塩基置換方法であって、in vitroまたはex vivo上で標的核酸配列を含む標的領域(region)に(i)ガイドRNAおよび(ii)上記第1項の一塩基置換融合蛋白質または上記第12項の一塩基置換複合体を接触することを含み、上記ガイドRNAは標的核酸配列に相補的に結合し、このとき、上記ガイドRNAと結合される標的核酸配列は15~25bpであり、上記一塩基置換融合蛋白質または上記一塩基置換複合体は上記標的核酸配列を含む標的領域(region)内に存在する1つ以上のシトシンまたはアデニンの任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換方法を提供することができる。
【0029】
このとき、上記デアミナーゼは、シチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase)であり、上記DNAグリコシラーゼは、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(Uracil-DNA glycosylase)またはその変異体であり、このとき、上記一塩基置換融合蛋白質は標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンを任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸を提供することができる。
【0030】
このとき、上記シチジンデアミナーゼは、APOBEC、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(activation-induced cytidine deaminase;AID)またはその変異体であることを特徴とする、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸を提供することができる。
【0031】
このとき、上記デアミナーゼは、アデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase)であり、上記DNAグリコシラーゼは、アルキラデニン-DNAグリコシラーゼ(Alkyladenine DNA glycosylase)またはその変異体であり、このとき、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるアデニンを任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸を提供することができる。
【0032】
このとき、上記アデノシンデアミナーゼは、TadA,Tad2p,ADA,ADA1,ADA2,ADAR2,ADAT2,ADAT3またはその変異体であることを特徴とする、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸を提供することができる。
【0033】
このとき、上記結合ドメインは、FRB domain,FKBP dimerization domain、インテイン(intein),ERT domains,VPR domain,GCN4 peptide,single chain variable fragment(scFv)中のいずれか1つ、またはヘテロ二量体(heterodimer)を形成するドメインのうちいずれか1つであることを特徴とするものを提供することができる。
【0034】
このとき、上記ペアは、(i)FRBおよびFKBP dimerization domains、(ii)第1インテイン(intein)および第2インテイン、(iii)ERTおよびVPR domains、(iv)GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)、または(v)ヘテロ二量体(heterodimer)を形成する第1ドメインおよび第2ドメインの中から選択されるいずれか1つであることを特徴とする一塩基置換複合体を提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
本出願は、一塩基置換蛋白質および/またはそれをコードする核酸を提供する。
【0036】
本出願は、一塩基置換型蛋白質および/またはそれをコードする核酸を含む一塩基置換組成物を提供する。
【0037】
本出願は、一塩基置換蛋白質またはそれを含む一塩基置換用組成物の様々な用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】一塩基置換蛋白質によって標的核酸領域内のC(シトシン)がN(A,T,G)に置換される過程を図式化して示す図である。
【
図2】一塩基置換蛋白質によって標的核酸領域内のA(アデニン)がN(C,T,G)に置換される過程を図式化して示す図である。
【
図3】シトシンを任意の塩基への置換を誘導する一塩基置換融合蛋白質の様々な設計構造の例を示す図である。
【
図4】アデニンを任意の塩基への置換を誘導する一塩基置換融合蛋白質の様々な設計構造の例を示す図である。
【
図5】
図5(a)はカルボキシル末端に10個の同じGCN4ペプチドを融合させたnCas9を示す図であり、
図5(b)および
図5(c)はそれぞれsingle chain variable fragement(scFv)がApobecとUNGに融合された複合体(scFv-Apobec-UNG,scfv-UNG-Apobec)の様々な設計構造を示す図である。
【
図6】
図6(a)はN末端およびC末端にそれぞれ5個の同じGCN4ペプチドを融合させたnCas9、一方のscFvがAPOBECに融合し、他方のscFvがUNGに融合した複合体の設計構造を示す図であり、
図6(b)はC末端にそれぞれ5個の同じGCN4ペプチドを融合させたnCas9、一方のscFvがAPOBECに融合し、他方のscFvがUNGに融合した複合体の設計構造を示す図である。
【
図7】
図7(a)はBE3 WTおよびbpNLS BE3の設計構造を示すものであり、
図7(b)はHEK cellでBE3 WTとbpNLS BE3を使用した一塩基置換効率を示すグラフである。
【
図8】hela cellでBE3 WT,ncas-delta UGI,UNG-ncasおよびncas-UNGを使用したC to G、C to Tまたは、C to Aの置換率(substitution rate)を示すグラフであり、ncas-delta UGIはBE3 WTからUGI(uracil DNA-glycosylase inhibitor)を除去した蛋白質である。
【
図9】標的領域内の塩基置換が誘導される核酸配列(配列番号1)を示しており、そしてhela cell内でBE3 WT,bpNLS BE3,ncas-delta UGI,UNG-ncasおよびncas-UNGを使用した上記核酸配列(配列番号1)内の15番目に位置したシトシンおよび16番目に位置したシトシンの塩基置換率(substitution rate)を示すグラフである。
【
図10】HEK cellでGX20 sgRNAに標的されるhEMX1標的核酸配列中の置換されるシトシンを確認したグラフである。
【
図11】HEK cellでUNG-ncasおよびncas-UNGを使用した一塩基置換効率を示すグラフであり、左側図はGX20 sgRNAに標的されるhEMX1標的核酸配列中のC to Nの置換率を示すグラフであり、右側図はGX20 sgRNAに標的されるhEMX1標的核酸配列中の13C、15C、16C、17CにおけるC to GまたはC to Aの置換率(substitution rate)を示すグラフである。
【
図12】Nureki nCas9がHEK cellのNG PAMでC to N塩基置換されるかどうかを確認したグラフである。
【
図13】
図5の一塩基置換複合体を使用してC to N塩基置換されるかどうかを確認したグラフである。
【
図14】
図5の一塩基置換複合体を使用してPC9細胞でhEMX1 GX19 sgRNAに標的される核酸配列中の置換されるシトシンを確認したグラフである。
【
図15】
図5の一塩基置換複合体を使用してPC9細胞でhEMX1 sgRNAに標的される配列中の16CにおけるC to G、C to T、またはC to Aの置換率(substitution rate)を示すグラフである。
【
図16】nCas9を使用した一塩基置換蛋白質をコードするプラスミドの設計構造を示す図であり、上記コード化した一塩基置換蛋白質は
図3(a)の1)に図式化されている。
【
図17】Nureki nCas9を使用した一塩基置換CRISPR蛋白質のプラスミドの設計構造を示す図であり、上記コード化した一塩基置換蛋白質は
図3(c)の2)に図式化されている。
【
図18】nCas9を使用した一塩基置換蛋白質をコードするプラスミドの設計構造を示す図であり、上記コード化した一塩基置換蛋白質は
図3(a)の3)に図式化されている。
【
図19】
図4(a)に図式化された一塩基置換蛋白質をコードするプラスミドの設計構造を示す図である。
【
図20】
図4(b)に図式化された一塩基置換蛋白質をコードするプラスミドの設計構造を示す図である。
【
図21】single chain variable fragment(scFv)を含む融合塩基置換ドメインの構造を図式化して示す図である。
【
図22-24】HEK cellで一塩基置換複合体を使用した一塩基置換効率を示すグラフであり、
図22はGX20 sgRNAに標的されるhEMX1標的核酸配列(配列番号1)内の11C、
図23はGX20 sgRNAに標的されるhEMX1標的核酸配列(配列番号1)内の15C、
図24はGX20 sgRNAに標的されるhEMX1標的核酸配列(配列番号1)内の16CにおけるC to G、C to A、またはC to Gの置換率(substitution rate)を示すグラフである。
【
図25】科学雑誌「ネイチャー」に掲載された「base editing of A、T to G、C in genomic DNA without DNA cleavage」論文でExtended Data Figure2に明示されたsgRNA(配列番号2~20)のうち3つ(配列番号2、3および19)を選定した。
【
図26】
図25で選定されたsgRNA1(配列番号2)を使用してHEK293T cellでA to Nの塩基置換率(substitution rate)を示すグラフである。
【
図27】
図25で選定されたsgRNA2(配列番号3)を使用してHEK293T cellでA to Nの塩基置換率(substitution rate)を示すグラフである。
【
図28】
図25で選定されたsgRNA3(配列番号19)を使用してHEK293T cellでA to Nの塩基置換率(substitution rate)を示すグラフである。
【
図29】EGFR遺伝子の一領域と相補的に結合できるsgRNA1(配列番号21)およびsgRNA2(配列番号22)を使用してPC9 cellでC to Nの塩基置換率を示すグラフである。
【
図30】EGFR遺伝子の一領域と相補的に結合できるsgRNA1(配列番号21)およびsgRNA2(配列番号22)を使用してPC9 cellでC to A、C to T、またはC to Gの塩基置換率を示すグラフである。
【
図31】Cytosineをランダムに塩基置換させた後、オシメルチニブ(Osimertinib)を添加した培地で培養して生き残った細胞を分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同一の方法および物質が本発明の実施または試験において使用されることができるが、適合した方法および物質が以下に記載される。本明細書に言及されたすべての刊行物、特許出願、特許およびその他の参照文献は、全体が参照により組み込まれる。さらに、物質、方法および実施例は単に例示的であり、制限することを意図していない。
【0040】
本出願は、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)デアミナーゼ(deaminase)、および(c)DNAグリコシラーゼ(DNA glycosylase)またはその変異体を含む一塩基置換蛋白質を提供する。
【0041】
本出願は、上記一塩基置換蛋白質および(d)ガイドRNAを含む一塩基置換組成物を提供する。
【0042】
このとき、上記一塩基置換蛋白質は、ガイドRNAと同時に作用して標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンまたはアデニンを任意の窒素塩基への置換を誘導することを特徴としてもよい。
【0043】
本出願によって提供される上記一塩基置換蛋白質の(a)CRISPR酵素および上記(d)ガイドRNAの組み合わせは標的核酸配列を含む標的領域に一塩基置換蛋白質を特異的に導く(directing to)ことができる。
【0044】
このとき、上記一塩基置換蛋白質の(b)デアミナーゼおよび(c)DNAグリコシラーゼの組み合わせは標的領域内の1つ以上のヌクレオチドの塩基を他の任意の塩基への置換を誘導することができる。
【0045】
窒素塩基(nitrogenous base)
本出願において、窒素塩基とは、ヌクレオチドの一構成要素であるプリン(purine)またはピリミジン(pyrimidine)系列の塩基、または核塩基(nucleobase)を意味する。
【0046】
本出願において、窒素塩基は塩基と略称することができ、塩基とは、アデニン(Adenine,A)、チミン(thymine,T)、ウラシル(Uracil,U)、ヒポザンチン(hypozanthine,H),グアニン(Guanine,G)、またはシトシン(Cytosine,C)を意味することができる。
【0047】
本出願において、上記塩基の略称であるA,T,C,G,UまたはHは、塩基置換に関する内容についての時は上記窒素塩基を意味し、その他には一般的な核酸またはヌクレオチド配列に関する内容であるか、または明細書で別に設定した配列番号(Seq ID NO.:)に関するものである場合は、当業界で慣用される核酸(nucleic acid)またはヌクレオチド(nucleotide)に対する表現で使用される。
【0048】
一例として、「アデニン(A)がグアニン(G)で置換される」とは、核酸配列上の同じ位置または同じ種類のヌクレオチド内の窒素塩基がAからGに置換されることを意味し得る。
【0049】
一例として、「アデニン(A)がチミン(T)で置換される」とは、核酸配列上の同じ位置または同じ種類のヌクレオチド内の窒素塩基がAからTに置換されることを意味し得る。
【0050】
一例として、「アデニン(A)がシトシン(C)で置換される」とは、核酸配列上の同じ位置または同じ種類のヌクレオチド内の窒素塩基がAからCに置換されることを意味し得る。
【0051】
一例として、「シトシン(C)がグアニン(G)で置換される」とは、核酸配列上の同じ位置または同じ種類のヌクレオチド内の窒素塩基がCからGに置換されることを意味し得る。
【0052】
一例として、「シトシン(C)がチミン(T)で置換される」とは、核酸配列上の同じ位置または同じ種類のヌクレオチド内の窒素塩基がCからTに置換されることを意味し得る。
【0053】
一例として、「シトシン(C)がアデニン(A)で置換される」とは、核酸配列上の同じ位置または同じ種類のヌクレオチド内の窒素塩基がCからAに置換されることを意味し得る。
【0054】
一例として、「3’-ATGCAAA-5’」は、窒素塩基そのものを意味するのではなく、当業界で慣用される核酸配列またはヌクレオチド配列を示すものである。
【0055】
塩基置換(Base substitution)または塩基変形(Base modification)
本出願において、「塩基置換(base substitution)」は、標的遺伝子内のヌクレオチドの塩基が他の任意の塩基で置換されることである。より具体的に、標的領域内のヌクレオチドの塩基が他の任意の塩基で置換されることである。
【0056】
一例として、塩基置換は、アデニン(adenine,A)、グアニン(guanine,G)、シトシン(cytosine,C)、チミン(thymine,T)、ヒポザンチン(Hypozanthine)またはウラシル(uracil,U)が他の任意の塩基に変更されることを意味し得る。
【0057】
一実施例では、アデニンがシトシン、チミン、ウラシル、ヒポザンチン、またはグアニンで置換されることを意味し得る。
【0058】
一実施例では、シトシンがアデニン、チミン、ウラシル、ヒポザンチン、またはグアニンで置換されることを意味し得る。
【0059】
一実施例では、グアニンがシトシン、チミン、ウラシル、ヒポザンチン、またはアデニンで置換されることを意味し得る。
【0060】
一実施例では、チミンがアデニン、シトシン、ウラシル、ヒポザンチン、またはグアニンで置換されることを意味し得る。
【0061】
一実施例では、ウラシルがシトシン、チミン、アデニン、ヒポザンチン、またはグアニンで置換されることを意味し得る。
【0062】
一実施例では、ヒポザンチンがアデニン、チミン、ウラシル、シトシン、またはグアニンで置換されることを意味し得る。
【0063】
ただし、これらに限定されない。
【0064】
本出願において、「塩基置換」とは、「塩基変形(Base modification)」を含む概念であり得る。このとき、変形は塩基の構造が変形されることによって他の塩基に変更されることを、塩基置換は塩基の種類が変更されることを意味し得る。
【0065】
一例として、塩基変形は、アデニン(adenine,A)、グアニン(guanine,G)、シトシン(cytosine,C)、チミン(thymine,T)、ヒポザンチン(Hypozanthine)、またはウラシル(uracil,U)の化学構造が変形されることである。
【0066】
一実施例では、アデニンが脱アミン化されてヒポザンチンに変形することであり得る。
【0067】
一実施例では、ヒポザンチンがグアニンに変形することであり得る。
【0068】
一実施例では、シトシンが脱アミン化されてウラシルに変形することであり得る。
【0069】
一実施例では、ウラシルがチミンに変形することであり得る。
【0070】
ただし、これらに限定されない。
【0071】
標的核酸配列-ガイドRNAと相補的に結合する核酸配列
【0072】
標的核酸配列は、一塩基置換組成物の一構成要素であるガイドRNAと相補的に結合したりすることができるヌクレオチド配列を意味する。
【0073】
一例として、細胞内二本鎖DNAを一塩基置換の対象とする場合、上記細胞内二本鎖DNAは第1DNA鎖および第2DNA鎖で構成されている。このとき、上記二本鎖DNAの第1DNA鎖および上記第1DNA鎖と相補的な第2DNA鎖のうちいずれか1つは標的核酸配列を含むことができる。上記標的核酸配列を含む第1または第2DNA鎖は上記ガイドRNAと結合することができる。このとき、上記ガイドRNAと結合した第1または第2DNA鎖内の核酸配列が標的核酸配列に相当する。
【0074】
一例として、細胞内二本鎖RNAを一塩基置換の対象とする場合、上記細胞内二本鎖RNAは第1RNA鎖および第2RNA鎖で構成されている。上記二本鎖RNAの第1RNA鎖および上記第1RNA鎖と相補的な第2RNA鎖のうちいずれか1つは標的核酸配列を含むことができる。上記標的核酸配列を含む第1または第2RNA鎖は上記ガイドRNAと結合することができる。このとき、上記ガイドRNAと結合した第1または第2RNA鎖内の核酸配列が標的核酸配列に相当する。
【0075】
一例として、細胞内一本鎖DNAまたはRNAを一塩基置換の対象とする場合、、上記一本鎖DNAまたはRNAは標的核酸配列を含むことができる。すなわち、上記一本鎖DNAまたはRNAはガイドRNAと結合でき、このとき、上記ガイドRNAと結合した核酸配列が標的核酸配列に相当する。
【0076】
一例として、標的核酸配列は、10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29または30bp以上のヌクレオチド配列であり得る。
【0077】
標的領域(target region)-塩基置換されるヌクレオチドを含む領域
標的領域は、一塩基置換蛋白質によって塩基置換が誘導されるヌクレオチドを含む領域である。
【0078】
標的領域は、ガイドRNAが結合する標的核酸配列を含む領域である。このとき、上記標的核酸配列は、一塩基置換蛋白質によって塩基置換が誘導されるヌクレオチドを含むことができる。
【0079】
標的領域は、ガイドRNAと相補的に結合する第1DNA鎖内の標的核酸配列と相補的に結合する第2DNA鎖内の核酸配列を含むことができる。このとき、上記第2DNA鎖内の核酸配列は、一塩基置換蛋白質によって塩基置換が誘導されるヌクレオチドを含むことができる。
【0080】
一例として、二本鎖DNAまたはRNA中の上記標的核酸配列を含む鎖を第1鎖とし、上記核酸配列を含まない鎖を第2鎖と称することができる。このとき、標的領域は、上記第1鎖内のガイドRNAと相補的に結合する標的核酸配列および上記標的核酸配列と相補的に結合する上記第2鎖内の核酸配列を含むことができる。
【0081】
一例として、二本鎖DNAまたはRNA中の上記標的核酸配列を含む鎖を第2鎖とし、上記核酸配列を含まない鎖を第1鎖と称することができる。このとき、標的領域は、上記第2鎖内のガイドRNAと相補的に結合する標的核酸配列および上記標的核酸配列と相補的に結合する上記第1鎖内の核酸配列を含むことができる。
【0082】
一塩基置換蛋白質は、上記標的領域内の1つ以上のヌクレオチドの塩基置換を誘導することができる。
【0083】
一例として、ガイドRNAが二本鎖DNAの第1DNA鎖に含まれる標的核酸配列と相補的に結合する場合、一塩基置換蛋白質は、(i)上記標的核酸配列内の1つ以上のヌクレオチドの塩基を置換するか、または(ii)上記二本鎖DNAの第2鎖内の上記標的核酸配列と相補的に結合する核酸配列内の1つ以上のヌクレオチドの塩基を置換することができる。
【0084】
一例として、ガイドRNAが二本鎖RNAの第1RNA鎖に含まれる標的核酸配列と相補的に結合する場合、一塩基置換蛋白質は、(i)上記標的核酸配列内の1つ以上のヌクレオチドの塩基を置換するか、または(ii)上記二本鎖RNAの第2鎖内の上記標的核酸配列と相補的に結合する核酸配列内の1つ以上のヌクレオチドの塩基を置換することができる。
【0085】
一実施例では、上記標的核酸領域内の1つ以上のヌクレオチドのシトシンをグアニン、チミン、ウラシル、ヒポザンチン、またはアデニンで置換することができる。
【0086】
一実施例では、上記標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドのアデニンをグアニン、チミン、ウラシル、ヒポザンチン、またはシトシンで置換することができる。
【0087】
本明細書において、標的遺伝子とは、標的領域および標的核酸配列を含む遺伝子を意味する。また、本明細書において、標的遺伝子とは、一塩基置換蛋白質によって標的領域内の1つ以上のヌクレオチドのシトシン塩基が任意の塩基で置換される遺伝子を意味する。
【0088】
技術的特徴-任意の塩基への置換
本出願で提供される一塩基置換蛋白質は、(i)デアミナーゼおよび(ii)DNAグリコシラーゼを必要構成要素として含む。
【0089】
一塩基置換蛋白質の第1構成であるデアミナーゼと第2構成であるDNAグリコシラーゼの組み合わせは、核酸配列内のヌクレオチドの塩基を任意の塩基への置換を誘導することができる。
【0090】
このとき、上記デアミナーゼおよび上記DNAグリコシラーゼによる塩基置換は、次の二段階、(i)塩基の脱アミン化(Deamination)、および/または(iii)DNAグリコシラーゼによる切断または修復工程が順次または同時に進行した結果であり得る。
【0091】
第1工程:塩基の脱アミン化(Deamination)
脱アミン化とは、アミノ基の切断を伴う生化学反応を意味する。一例として、DNAの場合、ヌクレオチドの一構成要素である塩基のアミノ基をヒドロキシ基またはケトン基に変えることを意味し得る。
【0092】
一実施例では、デアミナーゼはシチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase)であり得る。上記シチジンデアミナーゼは、シトシンを脱アミン化してウラシルを提供することができる。上記シチジンデアミナーゼは、シトシンを変形させてウラシルを提供することができる。
【0093】
【0094】
一実施例では、一塩基置換蛋白質のデアミナーゼはアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase)であり得る。上記アデノシンデアミナーゼは、アデニンを脱アミン化してヒポザンチン(hypozanthine)を提供することができる。上記アデノシンデアミナーゼは、アデニンを変形させてヒポザンチンを提供することができる。
【0095】
【0096】
一実施例では、デアミナーゼはグアニンデアミナーゼ(guanine deaminase)であり得る。上記グアニンデアミナーゼは、グアニンを脱アミン化してキサンチン(xantine)を提供することができる。上記グアニンデアミナーゼは、グアニンを変形させてキサンチンを提供することができる。
【0097】
【0098】
第2工程:DNAのグリコシル化
DNAグリコシラーゼは、塩基除去修復(Base Excision Repair,BER)に関与する酵素であり、BERはDNAの損傷した塩基を除去して交換するメカニズムである。DNAグリコシラーゼは、DNA内の塩基とデオキシリボース(deoxyribose)の間のN-グリコシド結合(N-glycoside linkage)を加水分解して上記メカニズムの最初の段階を触媒する。DNAグリコシラーゼは、sugar-phosphateバックボーン(backbone)を残したまま、損傷した窒素塩基(nitrogenous base)を除去する。その結果、AP付着部位(AP site)、具体的には無プリン部位(apurinic site)またはアピリミジン部位(apyrimidinic site)が作られる。その後、APエンドヌクレアーゼ(AP endonuclease)、末端処理酵素(Endprocessing enzymes)、DNAポリメラーゼ(DNA polymerase)、フラップ エンドヌクレアーゼ(Flap endonuclease)、および/またはDNAリガーゼ(DNA ligase)によって任意の塩基に置換することができる。
【0099】
一実施例では、DNAグリコシラーゼはウラシルDNAグリコシラーゼ(Uracil DNA glycosylase)であり得る。上記ウラシルDNAグリコシラーゼは、DNA内のウラシルとデオキシリボースの間のN-グリコシド結合(N-glycoside linkage)を加水分解する。ウラシルDNAグリコシラーゼは、ウラシルを含むヌクレオチド内のウラシルとデオキシリボースの間のN-グリコシド結合を加水分解する。このとき、上記ウラシルを含むヌクレオチドは、シトシンを含むヌクレオチドにシチジンデアミナーゼが作動して脱アミン化され、提供されたものであってもよい。
【0100】
一実施例では、DNAグリコシラーゼはアルキラデニンDNAグリコシラーゼ(Alkyladenine DNA glycosylase)であり得る。上記アルキラデニンDNAグリコシラーゼは、DNA内のヒポザンチンとデオキシリボースの間のN-グリコシド結合(N-glycoside linkage)を加水分解する。アルキラデニンDNAグリコシラーゼは、ヒポザンチンを含むヌクレオチド内のヒポザンチンとデオキシリボースの間のN-グリコシド結合を加水分解する。このとき、上記ヒポザンチンを含むヌクレオチドは、アデニンを含むヌクレオチドにアデノシンデアミナーゼが作動して脱アミン化され、提供されたものであってもよい。
【0101】
上記第1および第2工程の結果
本出願で提供される一塩基置換蛋白質を使用して標的領域内の1つ以上のアデニンまたはシトシンを任意の塩基で置換することができる。
【0102】
一例として、一塩基置換蛋白質のデアミナーゼはアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase)であり、DNAグリコシラーゼはアルキラデニン-DNAグリコシラーゼ(alkyladenine-DNA glycosylase)またはその変異体であり得る。このとき、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドのアデニンを任意の塩基(グアニン、チミン、シトシン)への置換を誘導することができる。
【0103】
一実施例では、標的領域内の1つ以上のヌクレオチド内のアデニンは、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)アデノシンデアミナーゼ、および(c)アルキラデニンDNAグリコシラーゼを含む一塩基置換蛋白質によってシトシンへの置換を誘導することができる。
【0104】
【0105】
一実施例では、標的領域内の1つ以上のヌクレオチド内のアデニンは、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)アデノシンデアミナーゼ、および(c)アルキラデニンDNAグリコシラーゼを含む一塩基置換蛋白質によってチミンへの置換を誘導することができる。
【0106】
【0107】
一実施例では、標的領域内の1つ以上のヌクレオチド内のアデニンは、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)アデノシンデアミナーゼ、および(c)アルキラデニンDNAグリコシラーゼを含む一塩基置換蛋白質によってグアニンへの置換を誘導することができる。
【0108】
【0109】
一例として、一塩基置換蛋白質のデアミナーゼはシチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase)であり、DNAグリコシラーゼはウラシル-DNAグリコシラーゼ(Uracil-DNA glycosylase)またはその変異体であり得る。このとき、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドのシトシンを任意の塩基への置換を誘導することができる。
【0110】
一実施例では、標的領域内の1つ以上のヌクレオチド内のシトシンは、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)シチジンデアミナーゼ、および(c)ウラシルDNAグリコシラーゼを含む一塩基置換蛋白質によってアデニンへの置換を誘導することができる。
【0111】
【0112】
一実施例では、標的領域内の1つ以上のヌクレオチド内のシトシンは、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)シチジンデアミナーゼ、および(c)ウラシルDNAグリコシラーゼを含む一塩基置換蛋白質によってチミンへの置換を誘導することができる。
【0113】
【0114】
一実施例では、標的領域内の1つ以上のヌクレオチド内のシトシンは、(a)CRISPR酵素またはその変異体、(b)シチジンデアミナーゼ、および(c)ウラシルDNAグリコシラーゼを含む一塩基置換蛋白質によってグアニンへの置換を誘導することができる。
【0115】
【0116】
以下、詳細に説明する。
【0117】
本明細書によって開示される発明の一態様は一塩基置換蛋白質である。
【0118】
一塩基置換蛋白質は、一塩基置換を誘導または発生させることができる蛋白質、ポリペプチド、またはペプチドである。
【0119】
従来のベースエディターの限界
従来のベースエディター(Base Editor)は、デアミナーゼ(deaminase)、CRISPR酵素、DNAグリコシラーゼ阻害剤(DNA glycosylase inhibitor)が融合、連結または結合した形態で使用されてきた。代表的な一例として、ラットのシチジンデアミナーゼであるrAPOBECと、nCas9およびウラシルDNAグリコシラーゼを結合したベースエディターを使用して、シトシン塩基をチミンに置換した。また、シチジンデアミナーゼの代わりにアデノシンデアミナーゼを使用してアデニン(A)をグアニン(G)に置換した。
【0120】
従来のベースエディターは、点突然変異によって発生する疾患を治療するために使用することができる。例えば、遺伝子内の点突然変異発生部位を校正して遺伝的障害を治療するために使用するなど、有意な点がある。ただし、従来のベースエディターは、DNAグリコシラーゼ阻害剤を使用することによってアミノ基(-NH2)を除去するか、アミノ基をケト基で置換することによって、シトシン(C)を特定の塩基チミン(T)にのみ、またはアデノシン(A)を特定の塩基グアニン(G)にのみ変更可能という限界を有している。
【0121】
一塩基置換蛋白質の有用性
従来のベースエディターは、それを使用して置換された塩基から発現されるアミノ酸の種類が変わる可能性が低いという限界がある。ほとんどの疾患または病気は点突然変異によるものではなく、ヌクレオチドレベルを越えてペプチド、ポリペプチド、または蛋白質のレベルで構造や機能に異常が生じることによって発生する場合が多い。最終的に、従来のベースエディターは、アデニンおよびシトシンを特定の塩基にしか変更することができないため、ペプチド、ポリペプチド、または蛋白質の構造が変わる可能性が著しく低下する。
【0122】
従来技術の限界は、本明細書によって提供される一塩基置換蛋白質を使用して克服することができる。本出願で提供される一塩基置換蛋白質は、(a)エディター蛋白質、(b)デアミナーゼ(deaminase)、および(c)DNAグリコシラーゼ(DNA glycosylase)からなる新規な組み合わせを有する。すなわち、本出願で提供する一塩基置換蛋白質は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、またはシトシン(C)を任意の塩基(A,T,C,G,U,H)で置換できるという利点がある。
【0123】
また、上記新規な構成要素および新規な組み合わせの一塩基置換蛋白質は、標的核酸配列内に存在する1つ以上の塩基を同時に置換できるという利点がある。
【0124】
結局のところ、本出願で提供する一塩基置換蛋白質は、様々な塩基がランダムに置換された「突然変異」を提供することができる。上記突然変異された遺伝子から様々な構造を有するペプチド、ポリペプチド、または蛋白質を発現することができる。
【0125】
上記の技術的効果により、本出願で提供する一塩基置換蛋白質は、エピトープスクリーニング、薬物耐性遺伝子または蛋白質スクリーニング、薬物感作スクリーニング、および/またはウイルス耐性遺伝子または蛋白質スクリーニング用途で使用することができる。
【0126】
本出願で提供する一塩基置換蛋白質は、ガイドRNAとともに使用することによって標的遺伝子の標的領域内の塩基を任意の塩基への置換を誘導することができる。
【0127】
<一塩基置換蛋白質の第1構成-デアミナーゼ>
デアミナーゼは、脱アミノ酵素を意味し、化合物のアミノ基をヒドロキシ基またはケトン基に変える酵素を総称する。シトシン、アデニン、グアニン、アデノシン、シチジン、AMP、ADPなどに結合するアミノ基をそれぞれ加水分解する酵素が存在し、このような酵素は一般的に動物組織に含まれている。
【0128】
本出願の明細書において、デアミナーゼは塩基置換ドメインと呼ばれることもある。このとき、塩基置換ドメインは、標的遺伝子内の1つ以上のヌクレオチドの塩基を他の任意の塩基で置換するのに関与するペプチド、ポリペプチド、ドメイン、蛋白質を意味する。
【0129】
本出願のデアミナーゼは、シチジンデアミナーゼであり得る。
このとき、上記シチジンデアミナーゼは、シトシン(cytosine)、シチジン(cytidine)、またはデオキシシチジン(deoxycytidine)のアミノ(-NH2)基を除去する活性を有するすべての酵素を意味する。本明細書で上記シチジンデアミナーゼはシトシンデアミナーゼを含む概念として使用される。本明細書で上記シチジンデアミナーゼは上記シトシンデアミナーゼと組み合わせて使用されることもある。
【0130】
上記シチジンデアミナーゼは、シトシンをウラシル(uracil)に変える可能性がある。
【0131】
上記シチジンデアミナーゼは、シチジンをウリジン(uridine)に変える可能性がある。
【0132】
上記シチジンデアミナーゼは、デオキシシチジンをデオキシウリジン(deoxyuridine)に変える可能性がある。
【0133】
シチジンデアミナーゼは、ヌクレオチドに存在する塩基であるシトシン(例えば、二本鎖DNAまたはRNAに存在するシトシン)をウラシルに変換(C-to-U conversion or C-to-U editing)させる活性を有するすべての酵素を意味することで、標的部位の配列(標的核酸配列)のPAM配列が存在する鎖に位置するシトシンをウラシルに変換する。
【0134】
一例として、シチジンデアミナーゼは、Escherichia coliなどの原核生物、またはヒトやサルなどの霊長類、ラットやマウスなどのげっ歯類などのような哺乳類から由来したものであってもよいが、これに限定されない。例えば、上記シチジンデアミナーゼは、APOBEC(「apolipoprotein B mRNA editing enzyme,catalytic polypeptide-like」)または活性-誘導シチジンデアミナーゼ(activation-induced cytidine deaminase,AID)ファミリーに属する酵素から選択された1つ以上であり得る。
【0135】
上記シチジンデアミナーゼは、APOBEC1、APOBEC2、APOBEC3B、APOBEC3C、APOBEC3D、APOBEC3F、APOBEC3G、APOBEC3H、APOBEC4、AIDまたはCDAであり得るが、これらに限定されない。
【0136】
例えば、上記シチジンデアミナーゼは、ヒトAPOBEC1、例えば、NCBI Accession No.NM_005889,NM_001304566,NM_001644などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記シチジンデアミナーゼは、ヒトAPOBEC1、例えば、NCBI Accession No.NP_001291495,NP_001635,NP_005880などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0137】
例えば、上記シチジンデアミナーゼは、マウスAPOBEC1、例えば、NCBI Accession No.NM_001127863,NM_112436などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記シチジンデアミナーゼは、マウスAPOBEC1、例えば、NCBI Accession No.NP_001127863,NP_112436などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0138】
例えば、上記シチジンデアミナーゼは、ヒトAID、例えば、NCBI Accession No.NM_020661,NM_001330343などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記シチジンデアミナーゼは、ヒトAID、例えば、NCBI Accession No.NP_001317272,NP_065712などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0139】
以下、シチジンデアミナーゼの一例を挙げる。
【0140】
APOBEC1:ヒトAPOBEC1(e.g.,NCBI Accession No.NP_001291495,NP_001635,NP_005880)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_005889,NM_001304566,NM_001644と表現されるAPOBEC1遺伝子、またはマウスAPOBEC1(e.g.,NCBI Accession No.NP_001127863,NP_112436)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_001127863,NM_112436と表現されるAPOBEC1遺伝子。
【0141】
APOBEC2:ヒトAPOBEC2(e.g.,NCBI Accession No.NP_006780)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_006789と表現されるAPOBEC2遺伝子、またはマウスAPOBEC2(e.g.,NCBI Accession No.NP_033824)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_009694と表現されるAPOBEC2遺伝子。
【0142】
APOBEC3B:ヒトAPOBEC3B(e.g.,NCBI Accession No.NP_001257340,NP_004891)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_004900,NM_001270411と表現されるAPOBEC3B遺伝子、またはマウスAPOBEC3B(e.g.,NCBI Accession No.NP_001153887,NP_001333970,NP_084531)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_001160415,NM_030255,NM_001347041と表現されるAPOBEC3B遺伝子。
【0143】
APOBE3C:ヒトAPOBEC3C(e.g.,NCBI Accession No.NP_055323)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_014508と表現されるAPOBEC3C遺伝子。
【0144】
APOBEC3D:ヒトAPOBEC3D(e.g.,NCBI Accession No.NP_689639,NP_0013570710)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_152426,NM_001363781と表現されるAPOBEC3D遺伝子。
【0145】
APOBEC3F:ヒトAPOBEC3F(e.g.,NCBI Accession No.NP_001006667,NP_660341)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_001006666,NM_145298と表現されるAPOBEC3F遺伝子。
【0146】
APOBEC3G:ヒトAPOBEC3G(e.g.,NCBI Accession No.NP_068594,NP_001336365,NP_001336366,NP_001336367)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_021822と表現されるAPOBEC3G遺伝子。
【0147】
APOBEC3H:ヒトAPOBEC3H(e.g.,NCBI Accession No.NP_001159474,NP_001159475,NP_001159476,NP_861438)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_001166002,NM_001166003,NM_001166004,NM_181773と表現されるAPOBEC3H遺伝子。
【0148】
APOBEC4:ヒトAPOBEC4(e.g.,NCBI Accession No.NP_982279)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_203454と表現されるAPOBEC4遺伝子、またはマウスAPOBEC4をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_001081197と表現されるAPOBEC4遺伝子。
【0149】
上記シチジンデアミナーゼは、活性-誘導シチジンデアミナーゼ(activation-induced cytidine deaminase,AID)遺伝子から発現することができる。例えば、AID遺伝子は、ヒトAID遺伝子(e.g.,NP_001317272,NP_065712)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_020661,NM_001330343と表現されるAID遺伝子、またはマウスAID遺伝子(e.g.,NP_03377512)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_009645と表現されるAID遺伝子からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0150】
上記シチジンデアミナーゼは、CDA遺伝子からコード化することができる。例えば、CDA遺伝子は、ヒトCDA(e.g.,NCBI Accession No.NP_001776)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_001785と表現されるCDA遺伝子、またはマウスCDA(e.g.,NCBI Accession No.NP_082452)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_028176と表現されるCDA遺伝子からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0151】
上記シチジンデアミナーゼは、シチジンデアミナーゼ変異体であり得る。
【0152】
上記シチジンデアミナーゼ変異体は、野生型シチジンデアミナーゼよりもシチジンデアミナーゼ活性(cytidine deaminase activity)が増加した酵素であり得る。シチジンデアミナーゼ活性は、シトシンまたはその類似体のうちの1つの脱アミノ酸反応を含むと理解される。
【0153】
例えば、シチジンデアミナーゼ変異体は、上記シチジンデアミナーゼ内の1つ以上のアミノ酸配列が変形された酵素であり得る。
【0154】
このとき、アミノ酸配列の変形は、アミノ酸の置換、欠失および挿入から選択されるいずれか1つであり得る。
【0155】
本出願のデアミナーゼは、アデノシンデアミナーゼであり得る。
アデノシンデアミナーゼは、アデニン(adenine)、アデノシン(adenosine)、またはデオキシアデノシン(deoxyadenosine)のアミノ(-NH2)基の除去またはケト(=O)基で置換する活性を有するすべての酵素を意味する。本明細書において、上記アデノシンデアミナーゼはアデニンデアミナーゼを含む概念として使用される。本明細書において、上記アデノシンデアミナーゼは上記アデニンデアミナーゼを含む概念として使用される。
【0156】
上記アデノシンデアミナーゼは、アデニンをヒポザンチン(hypoxanthine)に変える可能性がある。
【0157】
上記アデノシンデアミナーゼは、アデノシンニンをイノシン(inosine)に変える可能性がある。
【0158】
上記アデノシンデアミナーゼは、デオキシアデノシンをテオクシイノシン(deoxyinosine)に変える可能性がある。
【0159】
アデノシンデアミナーゼは、Escherichia coliなどの原核生物、またはヒトやサルなどの霊長類、ラットやマウスなどのげっ歯類などのような哺乳類から由来したものであってもよいが、これに限定されない。例えば、上記アノシンデアミナーゼはTadA(tRNA-specific adenosine deaminase)またはADA(adenosine deaminase)ファミリーに属する酵素から選択される1つ以上であり得る。
【0160】
上記アデノシンデアミナーゼは、TadA,Tad2p,ADA,ADA1,ADA2,ADAR2,ADAT2またはADAT3であってもよいが、これらに限定されない。
【0161】
例えば、上記アデノシンデアミナーゼは、Escherichia coli TadA、例えば、NCBI Accession No.NC_000913.3などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記アデノシンデアミナーゼは、Escherichia coli TadA、例えば、NCBI Accession No.NP_417054.2などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0162】
例えば、上記アデノシンデアミナーゼは、ヒトADA、例えば、NCBI Accession No.NM_000022,NM_001322050,NM_001322051などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記アデノシンデアミナーゼは、ヒトADA、例えば、NCBI Accession No.NP_000013,NP_001308979,NP_001308980などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0163】
例えば、上記アデノシンデアミナーゼは、マウスADA、例えば、NCBI Accession No.NM_001272052,NM_007398などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記アデノシンデアミナーゼは、マウスADA、例えば、NCBI Accession No.NP_001258981,NP_031424などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0164】
例えば、上記アデノシンデアミナーゼは、ヒトADAR2、例えば、NCBI Accession No.NM_001033049,NM_001112,NM_001160230,NM_015833,NM_015834などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記アデノシンデアミナーゼは、ヒトADAR2、例えば、NCBI Accession No.NP_001103,NP_001153702,NP_001333616,NP_001333617,NP_056648などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0165】
例えば、上記アデノシンデアミナーゼは、マウスADAR2、例えば、NCBI Accession No.NM_001024837,NM_001024838,NM_001024839,NM_001024840,NM_130895などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記アデノシンデアミナーゼは、マウスADAR2、例えば、NCBI Accession No.NP_001020008,NP_570965,NP_001020009などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0166】
例えば、上記アデノシンデアミナーゼは、ヒトADAT2、例えば、NCBI Accession No.NM_182503.3,NM_001286259.1などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記アデノシンデアミナーゼは、ヒトADAT2、例えば、NCBI Accession No.NP_001273188.1,NP_872309.2などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0167】
上記アデノシンデアミナーゼは、adA variants、ADAR2 variantsおよびADAT2 variants中のいずれか1つであってもよいが、これらに限定されない。
【0168】
例えば、ADAR2 variantsは、以下のものからなる群より選択される1つ以上であってもよいが、これらに限定されない。ヒトADAR2をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_001282225,NM_001282226,NM_001282227,NM_001282228,NM_001282229,NM_017424,NM_177405等で表現されるCDA遺伝子であり得る。
【0169】
上記アデノシンデアミナーゼは、アデノシンデアミナーゼ変異体であり得る。
【0170】
上記アデノシンデアミナーゼ変異体は、野生型アデノシンデアミナーゼよりもアデノシンデアミナーゼ活性(adenine deaminase activity)が増加した酵素であり得る。
【0171】
例えば、アデノシンデアミナーゼ変異体は、上記アデノシンデアミナーゼ内の1つ以上のアミノ酸配列が変形された酵素であり得る。
【0172】
上記アデノシンデアミナーゼは、アデノシンデアミナーゼ変異体であり得る。
【0173】
上記アデノシンデアミナーゼ変異体は、野生型アデノシンデアミナーゼよりもアデノシンデアミナーゼ活性(adenosine deaminase activity)が増加した酵素であり得る。このとき、上記アデノシンデアミナーゼ活性は、アデニン(adenine)、アデノシン(adenosine)、デオキシアデノシン(deoxyadenosine)またはその類似体のアミノ(-NH2)基の除去またはケト(=O)基による置換反応を含んでもよいが、これに限定されない。
【0174】
上記アデノシンデアミナーゼ変異体は、野生型アデノシンデアミナーゼを構成するアミノ酸配列から選択される1つ以上のアミノ酸配列が変形された酵素であり得る。
【0175】
このとき、アミノ酸配列の変形は、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失および挿入から選択されるいずれか1つであり得る。
【0176】
上記アデノシンデアミナーゼ変異体は、TadA変異体、Tad2p変異体、ADA変異体、ADA1変異体、ADA2変異体、ADAR2変異体、ADAT2変異体、またはADAT3変異体であってもよいが、これらに限定されない。
【0177】
例えば、上記アデノシンデアミナーゼはTadA変異体であり得る。一例として、上記TadA変異体は、ABE0.1,ABE1.1,ABE1.2,ABE2.1,ABE2.9,ABE2.10,ABE3.1,ABE4.3,ABE5.1,ABE5.3,ABE6.3,ABE6.4,ABE7.4,ABE7.8,ABE7.9またはABE7.10であり得、上記TadA変異体に対する具体的な内容は、論文「base editing of A、T to C、G in genomic DNA without DNA cleavage」(Nicole M.Gaudelli et al.,(2017)Nature、551,464-471)に詳しく記載されているので、当該文献を参照にすることができる。
【0178】
上記アデノシンデアミナーゼは、融合アデノシンデアミナーゼであり得る。
【0179】
本出願で提供されるデアミナーゼ、例えば、シチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼは、1つ以上の機能的ドメインが連結されて融合した形態で提供されることができる。
【0180】
このとき、上記デアミナーゼおよび上記機能的ドメインは、それぞれの機能が発現されるように連結または融合したものであり得る。
【0181】
アデノシンディアアデノシンディアアデノシンディア上記機能的ドメインは、メチラーゼ(methylase)活性、ジメチラーゼ(demethylase)活性、転写促進(transcription activation)活性、転写阻害(transcription repression)活性、転写放出因子(transcription release factor)活性、ヒストン変形(histone modification)活性、RNA切断(cleavage)活性、または核酸結合(nucleic acid binding)活性を有するドメインであってもよく、または、蛋白質(ペプチドを含む)の分離精製のためのタグ(tag)またはレポーター遺伝子であってもよいが、これに限定されない。
【0182】
上記機能的ドメインは、蛋白質(ペプチドを含む)の分離精製のためのタグ(tag)またはレポーター遺伝子であり得る。
【0183】
このとき、上記タグは、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグのうちいずれか1つを含むことができる。このとき、上記レポーター遺伝子は、自己蛍光蛋白質、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュ(horseradish)過酸化酵素(HRP)、クロランフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光蛋白質(GFP)、HcRed、DsRed、青緑色蛍光蛋白質(CFP)、黄色蛍光蛋白質(YFP)、および青色蛍光蛋白質(BFP)中のいずれか1つを含むことができる。ただし、これらに限定されない。
【0184】
上記機能的ドメインは、核局在化配列またはシグナル(nuclear localization sequence or signal;NLS)または核外輸送配列またはシグナル(nuclear export sequence or signal;NES)であり得る。
【0185】
このとき、上記NLSは、CRISPR酵素のアミノ末端またはその近傍、カルボキシ末端またはその近傍、またはそれらの組み合わせに1つ以上のNLSを含むことができる。上記NLSは、以下に由来するNLS配列であってもよいが、これらに限定されない。アミノ酸配列PKKKRKV(配列番号23)を有するSV40ウイルス大型T-抗原のNLS、ヌクレオプラスミン(nucleoplasmin)からのNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号24)を有するヌクレオプラスミン二分割(bipartite)NLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLD(配列番号25)またはRQRRNELKRSP(配列番号26)を有するc-myc NLS、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号27)を有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチンαからのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号28)、マイオマ(myoma)T蛋白質の配列VSRKRPRP(配列番号29)およびPPKKARED(配列番号30)、ヒトp53の配列POPKKKPL(配列番号31)、マウスc-abl IVの配列SALIKKKKKMAP(配列番号32)、インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRR(配列番号33)およびPKQKKRK(配列番号34)、感染性ウイルスデルタ抗原の配列RKLKKKIKKL(配列番号35)、マウスMx1蛋白質の配列REKKKFLKRR(配列番号36)、ヒトポリ(ADP-ribose)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号37)、およびステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号38)中から選択されるいずれか1つ以上であり得る。
【0186】
上記機能的ドメインは、他のドメイン、ペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質と複合体を形成することができるようにする結合ドメインであり得る。
【0187】
上記結合ドメインは、FRBおよびFKBP dimerization domainsのうちの1つ、インテイン(intein)、ERTおよびVPR domainsのうちの1つ、GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)のうちの1つまたはヘテロ二量体(heterodimer)を形成するドメインであり得る。
【0188】
上記結合ドメインはscFvであり得る。このとき、上記scFvはGCN4 pepetideとペアであり、上記GCN4と特異的に結合または連結することができる。
【0189】
一例として、上記アデノシンデアミナーゼにscFv機能的ドメインが連結された第1融合蛋白質は、GCN4 peptideを含むペプチド、ポリペプチド、蛋白質、または第2融合蛋白質と互いに結合することができる、
【0190】
<一塩基置換蛋白質の第2構成-DNAグリコシラーゼ>
【0191】
DNAグリコシラーゼは、塩基除去修復(Base Excision Repair,BER)に関与する酵素であり、BERは、DNAの損傷した塩基を除去して交換するメカニズムである。DNAグリコシラーゼは、DNA内の塩基とデオキシリボース(deoxyribose)の間のN-グリコシド結合(N-glycoside linkage)を加水分解して上記メカニズムの最初の段階を触媒する。DNAグリコシラーゼは、sugar-phosphateバックボーン(backbone)を残したまま、損傷した窒素塩基(nitrogenous base)を除去する。
【0192】
本出願のグリコシラーゼは、ウラシル-DNAグリコシラーゼであり得る。
【0193】
ウラシルDNAグリコシラーゼは、DNAに存在するウラシル(U)を除去してDNAの突然変異を防止するように作用する酵素として、ウラシルのN-glycosylic bondを切断することでbase-excision repair(BER) pathwayを開始するように作用するすべての酵素から1種以上選択することができる。
【0194】
上記グリコシル加水分解酵素はUracil-DNA glycosylase(UDG or UNG)であり得る。上記Uracil-DNA glycosylase(UNG)は、ヒトUNG(e.g.,NCBI Accession No.NP_003353,NP_550433)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_080911,NM_003362と表現されるUNG遺伝子、またはマウスUNG遺伝子(e.g.,NCBI Accession No.NP_001035781,NP_035807)をコードする遺伝子、例えば、NCBI Accession No.NM_001040691,NM_011677と表現されるUNG遺伝子またはEscherichia coli UNG(e.g.,NCBI Accession No.ADX49788.1,ACT28166.1,EFN36865.1,BAA10923.1,ACA76764.1,ACX38762.1,EFU59768.A,EFU53885.A,EFJ57281.1,EFU47398.1,EFK71412.1,EFJ92376.1,EFJ79936.1,EFO59084.1,EFK47562.1,KXH01728.1,ESE25979.1,ESD99489.1,ESD73882.1,ESD69341.1)をコードする遺伝子からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0195】
上記DNAグリコシラーゼは、ウラシルDNAグリコシラーゼ変異体であり得る。上記ウラシルDNAグリコシラーゼ変異体は、野生型ウラシルDNAグリコシラーゼよりもDNAグリコシラーゼ活性(DNA glycosylase activity)が増加した酵素であり得る。
【0196】
例えば、ウラシルDNAグリコシラーゼ変異体は、野生型ウラシルDNAグリコシラーゼの1つ以上のアミノ酸配列が変形された酵素であり得る。このとき、アミノ酸配列の変形は少なくとも1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0197】
上記グリコシラーゼは、融合ウラシル-DNAグリコシラーゼであり得る。
【0198】
本出願のグリコシラーゼは、アルキラデニンDNAグリコシラーゼ(alkyladenine DNA glycosylase,AAG)であり得る。
【0199】
アルキラデニンDNAグリコシラーゼは、DNAに存在するアルキル化または脱アミノ化された塩基を除去してDNAの突然変異を防止するように作用する酵素として、アルキル化または脱アミノ化された塩基のN-glycosidic bondの加水分解(hydrolysis)を触媒することによって、base-excision repair(BER) pathwayを開始するように作用するすべての酵素から1種以上選択することができる。
【0200】
上記DNAグリコシラーゼは、アルキラデニンDNAグリコシラーゼ(Alkyladenine DNA glycosylase(AAG))またはその変異体であり得る。
【0201】
例えば、上記アルキラデニンDNAグリコシラーゼ(AAG)は、ヒトAAG、例えば、NCBI Accession No.NM_002434,NM_001015052,NM_001015054などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記アルキラデニンDNAグリコシラーゼ(AAG)は、ヒトAAG、例えば、NCBI Accession No.NP_001015052,NP_001015054,NP_002425などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0202】
例えば、上記アルキラデニンDNAグリコシラーゼ(AAG)は、マウスAAG、例えば、NCBI Accession No.NM_010822などで表現される遺伝子またはmRNAによって発現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。または、上記アルキラデニンDNAグリコシラーゼ(AAG)は、ヒトAAG、例えば、NCBI Accession No.NP_034952などで表現される蛋白質またはポリペプチドであり得る。
【0203】
上記DNAグリコシラーゼは、アルキラデニンDNAグリコシラーゼ変異体であり得る。上記アルキラデニンDNAグリコシラーゼ変異体は、野生型アルキラデニンDNAグリコシラーゼよりもDNAグリコシラーゼ活性(DNA glycosylase activity)が増加した酵素であり得る。
【0204】
例えば、アルキラデニンDNAグリコシラーゼ変異体は、野生型アルキラデニンDNAグリコシラーゼの1つ以上のアミノ酸配列が変形された酵素であり得る。このとき、アミノ酸配列の変形は少なくとも1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0205】
上記グリコシラーゼは、融合アルキラデニンDNAグリコシラーゼであり得る。
【0206】
本出願は、ウラシルDNAグリコシラーゼまたはアルキラデニンDNAグリコシラーゼに1つ以上の機能的ドメインが連結された融合ウラシルDNAグリコシラーゼまたは融合アルキラデニンDNAグリコシラーゼを提供することができる。このとき、上記ウラシルDNAグリコシラーゼまたは上記アルキラデニンDNAグリコシラーゼおよび上記機能的ドメインのそれぞれの機能が発現するように連結または融合したものであってもよい。
【0207】
上記機能的ドメインは、メチラーゼ(methylase)活性、ジメチラーゼ(demethylase)活性、転写促進(transcription activation)活性、転写阻害(transcription repression)活性、転写放出因子(transcription release factor)活性、ヒストン変形(histone modification)活性、RNA切断(cleavage)活性、または核酸結合(nucleic acid binding)活性を有するドメインであってもよく、または、蛋白質(ペプチドを含む)の分離精製のためのタグ(tag)またはレポーター遺伝子であってもよいが、これに限定されない。
【0208】
このとき、上記機能的ドメインは、蛋白質(ペプチドを含む)の分離精製のためのタグ(tag)またはレポーター遺伝子であり得る。
【0209】
このとき、上記タグは、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグのうちいずれか1つを含むことができる。このとき、上記レポーター遺伝子は、自己蛍光蛋白質、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュ(horseradish)過酸化酵素(HRP)、クロランフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光蛋白質(GFP)、HcRed、DsRed、青緑色蛍光蛋白質(CFP)、黄色蛍光蛋白質(YFP)、および青色蛍光蛋白質(BFP)中のいずれか1つを含むことができる。ただし、これらに限定されない。
【0210】
上記機能的ドメインは、NLS(nuclear localization sequence or signal)またはNES(nuclear export sequence or signal)であり得る。
【0211】
このとき、上記NLSは、CRISPR酵素のアミノ末端またはその近傍、カルボキシ末端またはその近傍、またはそれらの組み合わせに1つ以上のNLSを含むことができる。上記NLSは、以下に由来するNLS配列であってもよいが、それらに限定されない。アミノ酸配列PKKKRKV(配列番号23)を有するSV40ウイルス大型T-抗原のNLS、ヌクレオプラスミン(nucleoplasmin)からのNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号24)を有するヌクレオプラスミン二分割(bipartite)NLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLD(配列番号25)またはRQRRNELKRSP(配列番号26)を有するc-myc NLS、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号27)を有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチンαからのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号28)、マイオマ(myoma)T蛋白質の配列VSRKRPRP(配列番号29)およびPPKKARED(配列番号30)、ヒトp53の配列POPKKKPL(配列番号31)、マウスc-abl IVの配列SALIKKKKKMAP(配列番号32)、インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRR(配列番号33)およびPKQKKRK(配列番号34)、感染性ウイルスデルタ抗原の配列RKLKKKIKKL(配列番号35)、マウスMx1蛋白質の配列REKKKFLKRR(配列番号36)、ヒトポリ(ADP-ribose)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号37)、およびステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号38)中から選択されるいずれか1つ以上であり得る。
【0212】
上記機能的ドメインは、他のドメイン、ペプチド、ポリペプチド、または蛋白質と複合体を形成することができるようにする結合ドメインであり得る。
【0213】
上記結合ドメインは、FRBおよびFKBP dimerization domainsのうちの1つ、インテイン(intein)、ERTおよびVPR domainsのうちの1つ、GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)のうちの1つまたはヘテロ二量体(heterodimer)を形成するドメインであり得る。
【0214】
上記結合ドメインはscFvであり得る。このとき、上記scFvはGCN4 pepetideとペアであり、上記GCN4と特異的に結合または連結することができる。
【0215】
一例として、上記ウラシルDNAグリコシラーゼまたは上記アルキラデニンDNAグリコシラーゼにscFv機能的ドメインが連結された第1融合蛋白質は、GCN4 peptideを含むペプチド、ポリペプチド、蛋白質、または第2融合蛋白質と互いに結合することができる。
【0216】
<一塩基置換蛋白質の第3構成-CRISPR酵素>
本出願で提供する一塩基置換蛋白質は、CRISPR酵素またはそれを含むCRISPRシステムを含む。本明細書でCRISPR酵素はCRISPR蛋白質と称することもある。
【0217】
CRISPRシステムは、ゲノムDNA上でPAM(proto-spaceradjacent Motif)配列周辺の標的核酸配列を標的して人為的な突然変異を導入できるシステムである。具体的に、上記ガイドRNAとCas蛋白質は互いに結合して(または、相互作用して)ガイドRNA-Cas蛋白質複合体を形成し、標的化するDNA配列を切断することによって、ゲノムDNA上に突然変異インデル(indel)を誘導することができる。
【0218】
上記ガイドRNA、Cas蛋白質、ガイドRNA-Cas蛋白質複合体に対するより具体的な説明として、韓国公開特許第10-2017-0126636号を参照することができる。
【0219】
Cas蛋白質は、天然型蛋白質に加えて、ガイドRNAと協働して活性化したエンドヌクレアーゼまたはニッカーゼ(Nickase)として作用できる変異体全体を含む概念として本明細書で使用されている。活性化したエンドヌクレアーゼまたはニッカーゼの場合、標的核酸配列を切断でき、それを使用して核酸配列を操作または変形させることができる。また、不活性化される変異体である場合、それを使用して転写を調節したり標的とするDNAを分離したりすることができる。
【0220】
本出願において、CRISPR蛋白質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)、スターピロコッカス・アウレス(Staphylococcus aureus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、ノカルディオプシス・ダソンヴィレイ(Nocardiopsis dassonvillei)、ストレプトマイセス・プリスティネス・ピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトスポランギウム・ロセウム(Streptosporangium roseum)、ストレプトスポランギウム・ロセウム(Streptosporangium roseum)、アリサイクロバクルスアシドカルダリウス(AlicyclobacHlus acidocaldarius)、バチルス・シュドマイコイデス(Bacillus pseudomycoides)、バチルス・セレニティ・レドゥセンス(Bacillus selenitireducens)、エクシグオバクテリウム・シビリクム(Exiguobacterium sibiricum)、ラクトバチルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ミクロスキラマリーナ(Microscilla marina)、ブルクホルデリアレスバクテリウム(Burkholderiales bacterium)、ポラロモナスナフタレニボランス(Polaromonas naphthalenivorans)、ポラロモナス属(Polaromonas sp.)、クロコスパエラ・ワトソニイ(Crocosphaera watsonii)、シアノテセ属(Cyanothece sp.)、マイクロシスティス・アエルギノサ(Microcystis aeruginosa)、シネココッカス属(Synechococcus sp.)、アセトハロビウム・アラバチクム(Acetohalobium arabaticum)、アンモニペックス・デゲンシイ(Ammonifex degensii)、カルジセルロシロプトベシイ(Caldicelulosiruptor bescii)、カンジダトゥスデスルフォルディス(Candidatus Desulforudis)、クロストリジウムボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウムディフィシレ(Clostridium difficile)、ピネゴルディアマグナ(Finegoldia magna)、ナトラナエロビウスサーモフィラス(Natranaerobius thermophilus)、ペロトマクラムサーモプロピオニクム(Pelotomaculum thermopropionicum)、アシディチオバチルス・カルドゥス(Acidithiobacillus caldus)、アシディチオバチルス・ペロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、アロクロマチウム・ビノスム(Allochromatium vinosum)、マリノバクター属(Marinobacter sp.)、ニトロソコッカス・ハロフィラス(Nitrosococcus halophilus)、ニトロソコッカス・ワトソニ(Nitrosococcus watsoni)、プシュー・アルテロ・モナス・ハロプランクティス(Pseudoalteromonas haloplanktis)、クテドノバクテル・ラセミペル(Ktedonobacter racemifer)、メタノハロビウム・エベスティガトゥム(Methanohalobium evestigatum)、アナベナ・バリアビリス(Anabaena variabilis)、ノドラリア・スプミゲナ(Nodularia spumigena)、ノーストーク属(Nostoc sp.)、アルトロスピラマキシマ(Arthrospira maxima)、アルトロスピラプラテンシス(Arthrospira platensis)、アルトロスピラ属(Arthrospira sp.)、リンビア属(Lyngbya sp.)、マイクロコレウス・クトノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、オシラトリア属(Oscillatoria sp.)、ペトロトガモビリス(Petrotoga mobilis)、サーモシポアフリカヌス(Thermosipho africanus)、またはカリオクロリスマリーナ(Acaryochloris marina)等、様々な微生物由来のCas9またはCpf1であり得る。
【0221】
上記CRISPR酵素は、完全活性を有するCRISPR酵素であり得る。
【0222】
一実施例では、上記完全活性を有するCRISPR酵素変異体は、SpCas9ストレプトコッカス・ピヨジェンス(streptococcus pyogenes)由来のCas9蛋白質の変異体であり得る。以下、変異の例を挙げる。
【0223】
変異体は、E108G、E217A、A262T、R324L、S409I、E480K、E543D、M694I、E1219V、E480K、E543D、E1219V、A262T、S409I、E480K、E543D、E1219V、A262T、S409I、E480K、E543D、M694I、E1219V、E108G、E217A、A262T、S409I、E480K、E543D、M694I、E1219V、A262T、R324L、S409I、E480K、E543D、M694I、E1219V、L111R、D1135V、G1218R、E1219F、A1322R、R1335VおよびT1337Rのうちの1つ以上のアミノ酸が置換された酵素であり得る。このとき、上記CRISPR酵素変異体は異なるPAM配列を認識し、このようなCRISPR酵素変異体はCRISPR酵素が認識できるPAM配列のシークエンスの長さを短くすることによってゲノム内の標的核酸配列を拡張することができ、核酸近接能力を向上することができる。
【0224】
一実施例では、SpCas9の場合、SpCas9をL111R、D1135V、G1218R、E1219F、A1322R、R1335V、およびT1337Rとともに変異(mutation)させると、上記SpCas9変異体は既存の認識していたPAM配列「NGG」でPAM配列「NG」のみ認識して作動することができる(NはA,T,C,Gのうちの1つである)。
【0225】
このとき、上記SpCas9(L111R、D1135V、G1218R、E1219F、A1322R、R1335V、およびT1337R)変異体は「Nureki Cas9」と組み合わせて使用することができる(「CRISPR-Cas9 nuclease with expanded targeting space」masu et al.,(2018) Science 361,1259-1262)。
【0226】
上記CRISPR酵素は、ニッカーゼ(nickase)であり得る。
【0227】
例えば、上記Type II CRISPR酵素が野生型SpCas9の場合、上記ニッカーゼは野生型SpCas9のアミノ酸配列840番のヒスチジンをアラニンに変異(mutation)させ、HNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化されるSpCas9変異体であり得る。このとき、生成されたニッカーゼ、すなわち、SpCas9変異体はRuvCドメインによるヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または核酸の非相補的鎖、すなわち、gRNAと相補的に結合しない鎖を切断することができる。
【0228】
別の例において、上記Type II CRISPR酵素が野生型CjCas9の場合、上記ニッカーゼは野生型CjCas9のアミノ酸配列559番のヒスチジンをアラニンに変異(mutation)させ、HNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化されるCjCas9変異体であり得る。このとき、生成されたニッカーゼ、すなわち、CjCas9変異体は、RuvCドメインによるヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または核酸の非相補的鎖、すなわち、gRNAと相補的に結合しない鎖を切断することができる。
【0229】
また、上記ニッカーゼは、CRISPR酵素のHNHドメインによるヌクレアーゼ活性を有することができる。すなわち、上記ニッカーゼは、CRISPR酵素のRuvCドメインによるヌクレアーゼ活性を含まない可能性があり、そのために、RuvCドメインは操作または変更され得る。
【0230】
一例として、上記CRISPR酵素がType II CRISPR酵素である場合、上記ニッカーゼは変形されたRuvCドメインを含むType II CRISPR酵素であり得る。
【0231】
例えば、上記Type II CRISPR酵素が野生型SpCas9の場合、上記ニッカーゼは野生型SpCas9のアミノ酸配列10番のアスパラギン酸をアラニンに変異(mutation)させ、RuvCドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化されるSpCas9変異体であり得る。このとき、生成されたニッカーゼ、すなわち、SpCas9変異体はHNHドメインによるヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または核酸の相補的鎖、すなわち、gRNAと相補的に結合する鎖を切断することができる。
【0232】
別の例において、上記Type II CRISPR酵素が野生型CjCas9の場合、上記ニッカーゼは野生型CjCas9のアミノ酸配列8番のアスパラギン酸をアラニンに変異(mutation)させ、RuvCドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化されるCjCas9変異体であり得る。このとき、生成されたニッカーゼ、すなわち、CjCas9変異体はHNHドメインによるヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または核酸の相補的鎖、すなわち、gRNAと相補的に結合する鎖を切断することができる。
【0233】
一実施例では、上記ニッカーゼは、Nureki Cas9のアミノ酸配列10番のアスパラギン酸をアラニンに変異(mutation)させ、RuvCドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化されるNureki Cas9変異体、すなわち、Nureki Cas9ニッカーゼ(Nureki nCas9)であり得る。このとき、生成されたNureki nCas9はHNHドメインによるヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または核酸の相補的鎖、すなわち、gRNAと相補的に結合する鎖を切断することができる。
【0234】
他の一実施例では、上記ニッカーゼは、Nureki Cas9のアミノ酸配列840番のヒスチジンをアラニンに変異(mutation)させ、HNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化されるNureki Cas9変異体、すなわち、Nureki Cas9ニッカーゼ(Nureki nCas9)であり得る。このとき、生成されたNureki nCas9はRuvCドメインによるヌクレアーゼ活性を有するので、標的遺伝子または核酸の非相補的鎖、すなわち、gRNAと相補的に結合しない鎖を切断することができる。
【0235】
上記CRISPR酵素は、不活性CRISPR酵素であり得る。
【0236】
「不活性」とは、野生型CRISPR酵素の機能、すなわち、DNAの二本鎖のうち第1鎖を切断する第1機能と、DNAの二本鎖のうち第2鎖を切断する第2機能との両方が失われた状態を意味する。このような状態のCRISPR酵素は不活性CRISPR酵素と呼ばれる。
【0237】
上記不活性CRISPR酵素は、野生型CRISPR酵素のヌクレアーゼ活性を有するドメインに変異によるヌクレアーゼ不活性を有することができる。
【0238】
上記不活性CRISPR酵素は、RuvCドメインおよびHNHドメインに変異によるヌクレアーゼ不活性を有することができる。すなわち、上記不活性CRISPR酵素は、CRISPR酵素のRuvCドメインおよびHNHドメインによるヌクレアーゼ活性を含まないこともあり、そのために、RuvCドメインおよびHNHドメインは操作または変更され得る。
【0239】
一例として、上記CRISPR酵素がType II CRISPR酵素である場合、上記不活性CRISPR酵素は変形されたRuvCドメインおよびHNHドメインを含むType II CRISPR酵素であり得る。
【0240】
例えば、上記Type II CRISPR酵素が野生型SpCas9の場合、上記不活性CRISPR酵素は野生型SpCas9のアミノ酸配列10番のアスパラギン酸と840番のヒスチジンを全部アラニンに変異(mutation)させ、RuvCドメインおよびHNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化されるSpCas9変異体であり得る。このとき、生成された不活性CRISPR酵素、すなわち、SpCas9変異体は、RuvCドメインおよびHNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性になるので、標的遺伝子または核酸の二本鎖を全て切断することができない。
【0241】
別の例において、上記Type II CRISPR酵素が野生型CjCas9の場合、上記不活性CRISPR酵素は野生型CjCas9のアミノ酸配列8番のアスパラギン酸と559番のヒスチジンを全部アラニンに変異(mutation)させ、RuvCドメインおよびHNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性化されるCjCas9変異体であり得る。このとき、生成された不活性CRISPR酵素、すなわち、CjCas9変異体は、RuvCドメインおよびHNHドメインのヌクレアーゼ活性が不活性になるので、標的遺伝子または核酸の二本鎖を全て切断することができない。
【0242】
また、本出願は機能的ドメインに連結されたCRISPR酵素を提供することができる。このとき、上記CRISPR酵素変異体は野生型CRISPR酵素の元の機能に加えて付加的な機能を有することができる。
【0243】
上記機能的ドメインは、メチラーゼ(methylase)活性、ジメチラーゼ(demethylase)活性、転写促進(transcription activation)活性、転写阻害(transcription repression)活性、転写放出因子(transcription release factor)活性、ヒストン変形(histone modification)活性、RNA切断(cleavage)活性、または核酸結合(nucleic acid binding)活性を有するドメインであってもよく、または、蛋白質(ペプチドを含む)の分離精製のためのタグ(tag)またはレポーター遺伝子であってもよいが、これに限定されない。
【0244】
上記機能的ドメインは、蛋白質(ペプチドを含む)の分離精製のためのタグ(tag)またはレポーター遺伝子であり得る。
【0245】
このとき、上記タグは、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグのうちいずれか1つを含むことができる。このとき、上記レポーター遺伝子は、自己蛍光蛋白質、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュ(horseradish)過酸化酵素(HRP)、クロランフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光蛋白質(GFP)、HcRed、DsRed、青緑色蛍光蛋白質(CFP)、黄色蛍光蛋白質(YFP)、および青色蛍光蛋白質(BFP)中のいずれか1つを含むことができる。ただし、これらに限定されない。
【0246】
上記機能的ドメインは、NLS(nuclear localization sequence or signal)またはNES(nuclear export sequence or signal)であり得る。
【0247】
このとき、上記NLSは、CRISPR酵素のアミノ末端またはその近傍、カルボキシ末端またはその近傍、またはそれらの組み合わせに1つ以上のNLSを含むことができる。上記NLSは、以下に由来するNLS配列であってもよいが、これに限定されない。アミノ酸配列PKKKRKV(配列番号23)を有するSV40ウイルス大型T抗原のNLS、ヌクレオプラスミン(nucleoplasmin)からのNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号24)を有するヌクレオプラスミン二分割(bipartite)NLS)、アミノ酸配列PAAKRVKLD(配列番号25)またはRQRRNELKRSP(配列番号26)を有するc-myc NLS、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号27)を有するhRNPA1 M9 NLS、インポーチンαからのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号28)、マイオマ(myoma)T蛋白質の配列VSRKRPRP(配列番号29)およびPPKKARED(配列番号30)、ヒトp53の配列POPKKKPL(配列番号31)、マウスc-abl IVの配列SALIKKKKKMAP(配列番号32)、インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRR(配列番号33)およびPKQKKRK(配列番号34)、感染性ウイルスデルタ抗原の配列RKLKKKIKKL(配列番号35)、マウスMx1蛋白質の配列REKKKFLKRR(配列番号36)、ヒトポリ(ADP-ribose)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号37)、およびステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号38)から選択されたいずれか1つ以上であり得る。
【0248】
上記機能的ドメインは、他のドメイン、ペプチド、ポリペプチド、または蛋白質と複合体を形成することができるようにする結合ドメインであり得る。
【0249】
上記結合ドメインは、FRBおよびFKBP dimerization domainsのうちの1つ、インテイン(intein)、ERTおよびVPR domainsのうちの1つ、GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)のうちの1つ、またはヘテロ二量体(heterodimer)を形成するドメインであり得る。
【0250】
上記結合ドメインは、GCN4 peptideであり得る。このとき、上記GCN4 pepetideはscFvとペアであり、上記scFvと特異的に結合または連結することができる。
【0251】
一例として、上記CRISPR酵素にGCN4 peptide機能的ドメインが連結された第1融合蛋白質は、scFvを含むペプチド、ポリペプチド、蛋白質、または第2融合蛋白質と互いに結合することができる、
【0252】
<一塩基置換蛋白質の第1態様-一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸>
【0253】
本明細書によって開示される一塩基置換蛋白質の一態様は一塩基置換融合蛋白質である。
【0254】
一例として、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸として、
(a)CRISPR酵素またはその変異体、
(b)デアミナーゼ(deaminase)、および
(c)DNAグリコシラーゼ(DNA glycosylase)またはその変異体を含み、
このとき、上記アデニン置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンまたはアデニンを任意の塩基への置換を誘導する一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であり得る。
【0255】
一実施例では、上記一塩基置換融合蛋白質は、各構成要素(a)、(b)および(c)の間に連結部分(linking moiety)を含むことを特徴とする一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であり得る。
【0256】
一実施例では、上記一塩基置換融合蛋白質は、
(i)N末端-[CRISPR酵素]-[デアミナーゼ]-[DNAグリコシラーゼ]-C末端、
(ii)N末端-[CRISPR酵素]-[DNAグリコシラーゼ]-[デアミナーゼ]-C末端、
(iii)N末端-[デアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-[DNAグリコシラーゼ]-C末端、
(iv)N末端-[デアミナーゼ]-[DNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端、
(v)N末端-[DNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-[デアミナーゼ]-C末端、および
(vi)N末端-[DNAグリコシラーゼ]-[デアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端のうちいずれか1つの構成を有することを特徴とする一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であり得る。
【0257】
一実施例では、上記CRISPR酵素またはその変異体は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9蛋白質、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCas9蛋白質、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9蛋白質、ストレプトコッカス・アウレウス(Streptococcus aureus)由来のCas9蛋白質、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来のCas9蛋白質、およびCpf1蛋白質からなる群より選択されるいずれか1つ以上を含む一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であり得る。
【0258】
一実施例では、上記CRISPR酵素変異体は、RuvCドメインまたはHNHドメインのうちいずれか1つ以上が不活性化されることを特徴とする、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であり得る。
【0259】
一実施例では、上記CRISPR酵素変異体は、ニッカーゼ(nickase)であることを特徴とする、一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であり得る。
【0260】
一実施例では、アデニン置換融合蛋白質を提供することができる。
【0261】
アデニン置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸として、
(a)CRISPR酵素またはその変異体、
(b)アデノシンデアミナーゼ(adenine deaminase)、および
(c)アルキラデニンDNAグリコシラーゼまたはその変異体を含み、
このとき、上記アデニン置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるアデニンを任意の塩基への置換を誘導するアデニン置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であり得る。
【0262】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[CRISPR酵素]-[アデノシンデアミナーゼ]-[アルキラデニナルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0263】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0264】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[アデノシンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0265】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0266】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[CRISPR酵素]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0267】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0268】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、追加として連結ドメインをさらに含むことができる。
【0269】
一例として、上記連結ドメインは、CRISPR酵素およびアデノシンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼおよびアルキラデニンDNAグリコシラーゼ、および/またはCRISPR酵素およびアルキラデニンDNAグリコシラーゼを作動可能に連結するドメインであり、CRISPR酵素、アデノシンデアミナーゼおよびアルキラデニンDNAグリコシラーゼが各々の機能が活性となるように連結されるドメインであり得る。
【0270】
一例として、上記連結ドメインは、CRISPR酵素、アデノシンデアミナーゼおよびアルキラデニンDNAグリコシラーゼの機能活性および/または構造にいかなる影響を及ぼさないアミノ酸、ペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0271】
一例として、上記アデニン塩基置換ドメインは、N末端-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[アデノシンデアミナーゼ]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-C末端、N末端-[CRISPR酵素]-[アデノシンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-C末端、またはN末端-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[アデノシンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0272】
一例として、上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端、N末端-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端、またはN末端-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0273】
一例として、上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[アデノシンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端、N末端-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[アデノシンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-C末端、またはN末端-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[アデノシンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0274】
一例として、上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-C末端、N末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-C末端、またはN末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0275】
一例として、上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端、N末端-[CRISPR酵素]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端、またはN末端-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0276】
一例として、上記アデニン塩基変形蛋白質は、N末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端、N末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-C末端、またはN末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[アルキラデニンDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0277】
一実施例では、シトシン置換融合蛋白質を提供することができる。
【0278】
シトシン置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸として、
(a)CRISPR酵素またはその変異体、
(b)シチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase)、および
(c)ウラシルDNAグリコシラーゼ(Uracil DNA glycosylase)またはその変異体を含み、
このとき、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンを任意の塩基への置換を誘導するシトシン置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸であり得る。
【0279】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[CRISPR酵素]-[シチジンデアミナーゼ]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0280】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-[シチジンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0281】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[シチジンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0282】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[シチジンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0283】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[CRISPR酵素]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[シチジンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0284】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[シチジンデアミナーゼ]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0285】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、追加として連結ドメインをさらに含むことができる。
【0286】
一例として、上記連結ドメインは、CRISPR酵素およびシチジンデアミナーゼ、シチジンデアミナーゼおよびウラシルDNAグリコシラーゼ、および/またはCRISPR酵素およびウラシルDNAグリコシラーゼを作動可能に連結するドメインであり、CRISPR酵素、シチジンデアミナーゼおよびウラシルDNAグリコシラーゼが各々の機能が活性となるように連結されるドメインであり得る。
【0287】
一例として、上記連結ドメインは、CRISPR酵素、シチジンデアミナーゼおよびウラシルDNAグリコシラーゼの機能活性および/または構造にいかなる影響を及ぼさないアミノ酸、ペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0288】
一例として、上記シトシン塩基置換ドメインは、N末端-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[シチジンデアミナーゼ]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-C末端、N末端-[CRISPR酵素]-[シチジンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-C末端、またはN末端-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[シチジンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0289】
一例として、上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-[シチジンデアミナーゼ]-C末端、N末端-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[シチジンデアミナーゼ]-C末端、またはN末端-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[シチジンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0290】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[シチジンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端、N末端-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[シチジンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-C末端、またはN末端-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[シチジンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0291】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[シチジンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-C末端、N末端-[シチジンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-C末端、またはN末端-[シチジンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0292】
上記シトシン塩基置換蛋白質は、N末端-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[シチジンデアミナーゼ]-C末端、N末端-[CRISPR酵素]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[シチジンデアミナーゼ]-C末端、またはN末端-[CRISPR酵素]-[連結ドメイン]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[シチジンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0293】
上記シトシン塩基変形蛋白質は、N末端-[シチジンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端、N末端-[シチジンデアミナーゼ]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-C末端、またはN末端-[シチジンデアミナーゼ]-[連結ドメイン]-[ウラシルDNAグリコシラーゼ]-[連結ドメイン]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0294】
<一塩基置換蛋白質の第2態様-一塩基置換複合体>
本明細書によって開示される一塩基置換蛋白質の一態様は一塩基置換複合体である。
【0295】
一例として、一塩基置換複合体あって、
(a)CRISPR酵素またはその変異体、
(b)デアミナーゼ(deaminase)、
(c)DNAグリコシラーゼ(DNA glycosylase)、および
(d)2つ以上の結合ドメインを含み、
このとき、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンまたはアデニンを任意の塩基への置換を誘導する一塩基置換複合体であり得る。
【0296】
一例として、上記一塩基置換複合体は、上記CRISPR酵素が2つ以上の結合ドメインと連結されることを特徴としてもよい。
【0297】
このとき、上記CRISPR酵素に連結された上記2つ以上の結合ドメインのうちの一方は、上記(b)デアミナーゼに連結された結合ドメインとペアであり、他方は上記(c) DNAグリコシラーゼに連結された結合ドメインとペアであり得る。このとき、上記ペアの間の結合によって上記構成要素(a)CRISPR酵素、(b)デアミナーゼ、および(c) DNAグリコシラーゼが複合体を形成して一塩基置換複合体を提供することができる。
【0298】
一実施例では、上記2つ以上の結合ドメインと連結されたCRISPR酵素は、[結合ドメイン(functional domain)]n-CRISPR酵素の構成を有することができる(nは2つ以上の整数であり得る)。
【0299】
【0300】
このとき、上記GCN4は、CRISPR酵素と連結された結合ドメインの一例であり、他の種類の結合ドメインを連結することができる。これに限定されない。
【0301】
このとき、上記CRISPR酵素は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個以上の結合ドメインと連結することができる。
【0302】
【0303】
このとき、上記GCN4は、CRISPR酵素と連結された結合ドメインの一例であり、他の種類の結合ドメインを連結することができる。これに限定されない。
【0304】
このとき、上記CRISPR酵素は、C末端およびN末端にそれぞれ1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個以上の結合ドメインと連結することができる。
【0305】
本出願で提供される一塩基置換複合体は、一実施例として、
図33の(a)、(b)および(c)構成内の結合ドメイン間の特異的結合にて提供することができる。
【0306】
このとき、上記(a)の結合ドメインGCN4、上記(b)の結合ドメインscFv、および上記(c)の結合ドメインscFvは、1つの例示であり、これに限定されない。上記APOBECの代わりにアデノシンデアミナーゼに取替することができ、上記UNGの代わりにアルキラデニンDNAグリコシラーゼに取替することができる。
【0307】
このとき、上記1つの(a)に複数個の上記(b)および/または複数個の上記(c)を結合することができる。
【0308】
このとき、上記複数とは、2,3,4,5,6,7,8,9または10以上の整数を意味する。
【0309】
本出願で提供される一塩基置換複合体は、一実施例として、
図34の(a)、(b)および(c)構成内の結合ドメイン間の特異的結合にて提供することができる。
【0310】
このとき、上記(a)の結合ドメインGCN4、上記(b)の結合ドメインscFv、および上記(c)の結合ドメインscFvは、1つの例示であり、これに限定されない。上記APOBECの代わりにアデノシンデアミナーゼに取替することができ、上記UNGの代わりにアルキラデニンDNAグリコシラーゼに取替することができる。
【0311】
このとき、上記1つの(a)に複数個の上記(b)および/または複数個の上記(c)を結合することができる。
【0312】
このとき、上記複数とは、2,3,4,5,6,7,8,9または10以上の整数を意味する。
【0313】
一例として、上記一塩基置換複合体は、上記デアミナーゼが2つ以上の結合ドメインと連結されることを特徴としてもよい。このとき、上記デアミナーゼに連結される上記2つ以上の結合ドメインそれぞれは上記(a)CRISPR酵素に連結された結合ドメインおよび上記(c)DNAグリコシラーゼに連結された結合ドメインとペアになる。このとき、上記ペアの間の結合によって上記構成要素(a)CRISPR酵素、(b)デアミナーゼ、および(c)DNAグリコシラーゼが複合体を形成して一塩基置換複合体を提供することができる。
【0314】
一例として、上記一塩基置換複合体は、上記DNAグリコシラーゼが2つ以上の結合ドメインと連結されることを特徴としてもよい。このとき、上記DNAグリコシラーゼに連結される上記2つ以上の結合ドメインそれぞれは上記(a)CRISPR酵素に連結された結合ドメインおよび上記(b)デアミナーゼに連結された結合ドメインとペアになる。このとき、上記ペアの間の結合によって上記構成要素(a)CRISPR酵素、(b)デアミナーゼ、および(c)DNAグリコシラーゼが複合体を形成して一塩基置換複合体を提供することができる。
【0315】
一例として、上記一塩基置換複合体は、上記CRISPR酵素が2つ以上の結合ドメインと連結され、上記デアミナーゼおよび上記DNAグリコシラーゼが連結された融合蛋白質の形態で存在することを特徴としてもよい。このとき、上記融合蛋白質は1つ以上の結合ドメインを含む。一実施例では、上記CRISPR酵素に連結されるある結合ドメインは上記融合蛋白質の結合ドメインとペアになる。このとき、上記ペアの間の結合によって上記構成要素(a)CRISPR酵素、(b)デアミナーゼ、および(c)DNAグリコシラーゼが複合体を形成して一塩基置換複合体を提供することができる。
【0316】
本出願で提供される一塩基置換複合体は、一実施例として、
図35中の(a)の結合ドメインおよび(b)の結合ドメイン間の特異的結合にて複合体を形成したものであり得る。
【0317】
このとき、上記(a)の結合ドメインGCN4および上記(b)の結合ドメインscFvは、1つの例示であり、これに限定されない。上記APOBECの代わりにアデノシンデアミナーゼまたは他の種類のシチジンデアミナーゼに取替することができ、上記UNGの代わりにアルキラデニンDNAグリコシラーゼに取替することができる。
【0318】
このとき、上記1つの(a)に複数個の上記(b)を結合することができる。
【0319】
このとき、上記複数とは、2,3,4,5,6,7,8,9または10以上の整数を意味する。
【0320】
本出願で提供される一塩基置換複合体は、一実施例として、
図36中の(a)の結合ドメインおよび(c)の結合ドメイン間の特異的結合にて複合体を形成したものであり得る。
【0321】
このとき、上記(a)の結合ドメインGCN4および上記(c)の結合ドメインscFvは、1つの例示であり、これに限定されない。上記APOBECの代わりにアデノシンデアミナーゼまたは他の種類のシチジンデアミナーゼに取替することができ、上記UNGの代わりにアルキラデニンDNAグリコシラーゼに取替することができる。
【0322】
このとき、上記1つの(a)に複数個の上記(b)を結合することができる。
【0323】
このとき、上記複数とは、2,3,4,5,6,7,8,9または10以上の整数を意味する。
【0324】
本出願で提供される一塩基置換複合体は、一実施例として、
図37中の(a)の結合ドメインおよび(b)の結合ドメイン間の特異的結合にて複合体を形成したものであり得る。
【0325】
このとき、上記(a)の結合ドメインGCN4および上記(b)の結合ドメインscFvは、1つの例示であり、これに限定されない。上記APOBECの代わりにアデノシンデアミナーゼまたは他の種類のシチジンデアミナーゼに取替することができ、上記UNGの代わりにアルキラデニンDNAグリコシラーゼに取替することができる。
【0326】
このとき、上記1つの(a)に複数個の上記(b)を結合することができる。
【0327】
このとき、上記複数とは、2,3,4,5,6,7,8,9または10以上の整数を意味する。
【0328】
本出願で提供される一塩基置換複合体は、一実施例として、
図38中の(a)の結合ドメインおよび(c)の結合ドメイン間の特異的結合にて複合体を形成したものであり得る。
【0329】
このとき、上記(a)の結合ドメインGCN4および上記(b)の結合ドメインscFvは、1つの例示であり、これに限定されない。上記APOBECの代わりにアデノシンデアミナーゼまたは他の種類のシチジンデアミナーゼに取替することができ、上記UNGの代わりにアルキラデニンDNAグリコシラーゼに取替することができる。
【0330】
このとき、上記1つの(a)に複数個の上記(b)を結合することができる。
【0331】
このとき、上記複数とは、2,3,4,5,6,7,8,9または10以上の整数を意味する。
【0332】
一例として、上記一塩基置換複合体は、上記デアミナーゼが2つ以上の結合ドメインと連結され、上記CRISPR酵素および上記DNAグリコシラーゼが連結された融合蛋白質の形態で存在することを特徴としてもよい。このとき、上記融合蛋白質は1つ以上の結合ドメインを含む。一実施例では、上記デアミナーゼに連結されるある結合ドメインは、上記融合蛋白質の結合ドメインとペアになる。このとき、上記ペアの間の結合によって上記構成要素(a)CRISPR酵素、(b)デアミナーゼ、および(c)DNAグリコシラーゼが複合体を形成して一塩基置換複合体を提供することができる。
【0333】
一例として、上記一塩基置換複合体は、上記DNAグリコシラーゼが2つ以上の結合ドメインと連結され、上記デアミナーゼおよび上記CRISPR酵素が連結された融合蛋白質の形態で存在することを特徴としてもよい。このとき、上記融合蛋白質は1つ以上の結合ドメインを含む。一実施例では、上記DNAグリコシラーゼに連結されるある結合ドメインは上記融合蛋白質の結合ドメインとペアになる。このとき、上記ペアの間の結合によって上記構成要素(a)CRISPR酵素、(b)デアミナーゼ、および(c)DNAグリコシラーゼが複合体を形成して一塩基置換複合体を提供することができる。
【0334】
一例として、一塩基置換複合体は、(i)上記CRISPR酵素、上記デアミナーゼ、および上記DNAグリコシラーゼから選択される2つの構成と第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質、および(ii)上記選択されなかった残りの1つの構成と第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質を含み、このとき、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインは相互作用するペアであり、上記ペアによって複合体を形成することを特徴とする一塩基置換複合体であり得る。このとき、上記第2融合蛋白質は、第2結合ドメインに加えて複数の結合ドメインをさらに含むこともできる。
【0335】
一実施例では、上記一塩基置換複合体は、(i)上記デアミナーゼ、上記DNAグリコシラーゼおよび第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質、および(ii)CRISPR酵素および第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質を含むことを特徴とする一塩基置換複合体であり得る。このとき、上記第2融合蛋白質は、第2結合ドメインに加えて複数の結合ドメインをさらに含むことができる。このとき、上記第1結合ドメインはsingle chain variable fragment(scFv)であり、上記第2融合蛋白質はGCN4 peptideであり得る。このとき、上記scFvは、上記GCN4 peptideとの相互作用を通じて一塩基置換複合体を提供することができる。
【0336】
一実施例では、上記一塩基置換複合体は、(i)上記デアミナーゼ、CRISPR酵素および第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質、および(ii)DNAグリコシラーゼおよび第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質を含むことを特徴とする一塩基置換複合体であり得る。このとき、上記第2融合蛋白質は、第2結合ドメインに加えて複数の結合ドメインをさらに含むことができる。このとき、上記第1結合ドメインはsingle chain variable fragment(scFv)であり、上記第2融合蛋白質はGCN4 peptideであり得る。このとき、上記scFvは、上記GCN4 peptideとの相互作用を通じて一塩基置換複合体を提供することができる。
【0337】
一実施例では、上記一塩基置換複合体は、(i)上記CRISPR酵素、上記DNAグリコシラーゼおよび第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質、および(ii)上記デアミナーゼおよび第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質を含むことを特徴とする一塩基置換複合体であり得る。このとき、上記第2融合蛋白質は、第2結合ドメインに加えて複数の結合ドメインをさらに含むことができる。このとき、上記第1結合ドメインはsingle chain variable fragment(scFv)であり、上記第2融合蛋白質はGCN4 peptideであり得る。このとき、上記scFvは、上記GCN4 peptideとの相互作用を通じて一塩基置換複合体を提供することができる。
【0338】
一例として、CRISPR酵素、上記デアミナーゼ、および上記DNAグリコシラーゼのうちいずれか1つ(one)は、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、このとき、上記第1結合ドメインは、他の構成(another)の結合ドメインと相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインは、残りの構成(the other)の結合ドメインと相互作用するペアであり、上記ペアによって一塩基置換複合体を提供することができる。
【0339】
一実施例において、CRISPR酵素は、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、このとき、上記第1結合ドメインは上記デアミナーゼの結合ドメインと相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインはDNAグリコシラーゼの結合ドメインと相互作用するペアであり、上記ペアによって一塩基置換複合体を提供することができる。
【0340】
一実施例において、デアミナーゼは、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、このとき、上記第1結合ドメインは上記CRISPR酵素の結合ドメインと相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインはDNAグリコシラーゼの結合ドメインと相互作用するペアであり、上記ペアによって一塩基置換複合体を提供することができる。
【0341】
一実施例において、DNAグリコシラーゼは、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、このとき、上記第1結合ドメインは上記デアミナーゼの結合ドメインと相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインはCRISPR酵素の結合ドメインと相互作用するペアであり、上記ペアによって一塩基置換複合体を提供することができる。
【0342】
このとき、結合ドメインは、FRBおよびFKBP dimerization domainsのうちの1つ、インテイン(intein)、ERTおよびVPR domainsのうちの1つ、GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)のうちの1つ、またはヘテロ二量体(heterodimer)を形成するドメインであり得る。
【0343】
このとき、上記ペアは、以下のいずれか1セットであり得る。
FRBおよびFKBP dimerization domains、
第1インテイン(intein)および第2インテイン、
ERTおよびVPR domains、
GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)、
ヘテロ二量体(heterodimer)を形成する第1ドメインおよび第2ドメイン。
【0344】
本出願は、シトシン置換複合体を提供することができる。
【0345】
一例として、上記デアミナーゼはシチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase)であり、上記DNAグリコシラーゼはウラシル-DNAグリコシラーゼ(Uracil-DNA glycosylase)またはその変異体であり、このとき、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるシトシンを任意の塩基への置換を誘導する一塩基置換複合体であり得る。
【0346】
一例として、上記シチジンデアミナーゼは、APOBEC、AID(activation-induced cytidine deaminase)またはその変異体であることを特徴とする一塩基置換複合体であり得る。
【0347】
一例として、CRISPR酵素、シチジンデアミナーゼ、およびウラシルDNAグリコシラーゼのうちいずれか1つ(one)は、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、このとき、上記第1結合ドメインは他の構成(another)の結合ドメインと相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインは残りの構成(the other)の結合ドメインと相互作用するペアであり、上記ペアによって一塩基置換複合体を提供することができる。
【0348】
一実施例において、CRISPR酵素は、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、このとき、上記第1結合ドメインは上記デアミナーゼの結合ドメインと相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインはDNAグリコシラーゼの結合ドメインと相互作用するペアであり、上記ペアによって一塩基置換複合体を提供することができる。
【0349】
一例として、一塩基置換複合体は、(i)CRISPR酵素、シチジンデアミナーゼ、およびウラシルDNAグリコシラーゼから選択される2つの構成と第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質、および(ii)上記選択されなかった残りの1つの構成と第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質を含み、このとき、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインは相互作用するペアであり、上記ペアによって複合体を形成することを特徴とする一塩基置換複合体であり得る。このとき、上記第2融合蛋白質は、第2結合ドメインに加えて複数の結合ドメインをさらに含むことができる。
【0350】
このとき、上記ペアは、以下のいずれか1セットであり得る。
FRBおよびFKBP dimerization domains、
第1インテイン(intein)および第2インテイン、
ERTおよびVPR domains、
GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)、
ヘテロ二量体(heterodimer)を形成する第1ドメインおよび第2ドメイン。
【0351】
本出願は、アデニン置換複合体を提供することができる。
【0352】
一例として、上記デアミナーゼはアデノシンデアミナーゼであり、上記DNAグリコシラーゼはアルキラデニン-DNAグリコシラーゼまたはその変異体であり、このとき、上記一塩基置換融合蛋白質は、標的核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドに含まれるアデニンを任意の塩基への置換を誘導する一塩基置換複合体であり得る。
【0353】
一例として、上記アデニンシチジンデアミナーゼは、TadA,Tad2p,ADA,ADA1,ADA2,ADAR2,ADAT2,ADAT3またはその変異体であることを特徴とする一塩基置換複合体であり得る。
【0354】
一例として、CRISPR酵素、アデノシンデアミナーゼ、およびアルキラデニンDNAグリコシラーゼのうちいずれか1つ(one)は、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、このとき、上記第1結合ドメインは他の構成(another)の結合ドメインと相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインは残りの構成(the other)の結合ドメインと相互作用するペアであり、上記ペアによって一塩基置換複合体を提供することができる。
【0355】
一実施例において、CRISPR酵素は、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインに連結され、このとき、上記第1結合ドメインは上記デアミナーゼの結合ドメインと相互作用するペアであり、上記第2結合ドメインはDNAグリコシラーゼの結合ドメインと相互作用するペアであり、上記ペアによって一塩基置換複合体を提供することができる。
【0356】
一例として、一塩基置換複合体は、(i)CRISPR酵素、アデノシンデアミナーゼ、およびアルキラデニンDNAグリコシラーゼから選択される2つの構成と第1結合ドメインを含む第1融合蛋白質、および(ii)上記選択されなかった残りの1つの構成と第2結合ドメインを含む第2融合蛋白質を含み、このとき、第1結合ドメインおよび第2結合ドメインは相互作用するペアであり、上記ペアによって複合体を形成することを特徴とする一塩基置換複合体であり得る。このとき、上記第2融合蛋白質は、第2結合ドメインに加えて複数の結合ドメインをさらに含むことができる。
【0357】
このとき、上記ペアは、以下のいずれか1セットであり得る。
FRBおよびFKBP dimerization domains、
第1インテイン(intein)および第2インテイン、
ERTおよびVPR domains、
GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)、
ヘテロ二量体(heterodimer)を形成する第1ドメインおよび第2ドメイン。
【0358】
本明細書によって開示される発明の一態様は、塩基置換用組成物およびそれを使用する方法である。
【0359】
一塩基置換組成物は、遺伝子内に1つ以上のヌクレオチドの塩基を人為的に変形させるために使用することができる。
【0360】
「人為的に変形される(artificially modified or artificially engineered)」という用語は、自然状態で起きる存在そのままの状態でない、人為的に変形を加えた状態を意味する。例えば、人為的に変形を加えた状態は、野生型遺伝子に突然変異を人為的に発生させるような変形であり得る。以下で非自然の人為的に変形された多型依存遺伝子は人為的な多型依存遺伝子という用語と組み合わせて使用することができる。
【0361】
上記塩基変形用組成物は、追加としてガイドRNAまたはそれをコードする核酸をさらに含むことができる。
【0362】
一例として、(a)ガイドRNAまたはそれをコードする核酸、および(b)一塩基置換融合蛋白質またはそれをコードする核酸、または一塩基置換複合体を含み、このとき、上記ガイドRNAは標的核酸配列と相補的に結合し、上記ガイドRNAと結合される標的核酸配列は15~25bpであり、上記一塩基置換融合蛋白質または上記一塩基置換複合体は、上記標的核酸配列を含む標的領域(region)内に存在する1つ以上のシトシンまたはアデニンの任意の塩基への置換を誘導する、一塩基置換組成物を提供する。
【0363】
<塩基置換組成物の第1構成-ガイドRNA>
塩基置換組成物は、ガイドRNAまたはそれをコードする核酸を含むことができる。
【0364】
ガイドRNA(gRNA)は、標的遺伝子または核酸に対するgRNA-CRISPR酵素複合体、すなわち、CRISPR複合体を特異的に標的化することができるRNAを指す。また、上記gRNAは、標的遺伝子または核酸特異的RNAを意味し、CRISPR酵素と結合してCRISPR酵素を標的遺伝子または核酸に導くことができる。
【0365】
ガイドRNAは、標的遺伝子または核酸の二本鎖のうちいずれか1つ鎖の一部の配列に相補的に結合することができる。上記一部の配列は標的核酸配列を指すことができる。
【0366】
ガイドRNAは、標的遺伝子または核酸の特定のヌクレオチド配列を有する位置にガイドRNA-CRISPR酵素複合体を誘導する機能を果たすことができる。
【0367】
ガイドRNAは、標的遺伝子、標的領域または標的核酸配列に対するgRNA-CRISPR酵素複合体、すなわち、CRISPR複合体を特異的に標的化することができるRNAを指す。また、上記gRNAは、標的遺伝子または核酸特異的RNAを意味し、CRISPR酵素と結合してCRISPR酵素を標的遺伝子、標的領域または標的核酸配列に導くことができる。
【0368】
ガイドRNAは、一本鎖ガイドRNA(単一RNA分子、single gRNA、sgRNA)、または二本鎖ガイドRNA(1つ超える通常の2個の別々のRNA分子を含む)と呼ぶことができる。
【0369】
ガイドRNAは、上記対象配列と相補的に結合する部位(以下ガイド部位と称する)とCas蛋白質と複合体を形成するのに関与する部位(以下、複合体形成部位と称する)を含む。
【0370】
一例として、上記ガイドRNAは、SpCas9蛋白質と相互作用し、配列番号48~81から選択されるいずれか1つであり得る。
【0371】
他の例として、上記ガイドRNAは、CjCas9蛋白質と相互作用し、配列番号82~92から選択されるいずれか1つを含むことができる。
【0372】
【0373】
このとき、上記複合体形成部位はCas9蛋白質由来微生物の種類によって決定される。例えば、SpCas9蛋白質と相互作用するガイドRNAの場合、上記複合体形成部位は、5’-GUUUUAGUCCCUGAAAAGGGACUAAAAUAAAGAGUUUGCGGGACUCUGCGGGGUUACAAUCCCCUAAAACCGCUUUU-3’(配列番号45)を含むことができ、CjCas9蛋白質と相互作用するガイドRNAの場合、5’-GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC-3’(配列番号46)を含むことができる。
【0374】
上記PAM(proto-spacer-adjacent Motif)配列として、spCas9蛋白質を使用する場合、NGG(NはA,T,CまたはGである)が考慮され、cjCas9蛋白質を使用する場合、NNNNRYAC(配列番号47)(Nはそれぞれ独立的にA,T,CまたはGであり、RはAまたはGであり、YはCまたはTである)が考慮される。
【0375】
上記組成物は、ガイドRNAを1個または複数個含むことができる。
【0376】
<塩基置換組成物の第2構成-一塩基置換蛋白質>
塩基置換組成物は、一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を含むことができる。
【0377】
一塩基置換蛋白質は、前述したものと同様である。
【0378】
<塩基置換組成物の第3構成-ベクター>
上記塩基変形用組成物は、ベクターの形態であり得る。
【0379】
「ベクター」は、細胞に遺伝子配列を伝達することができる。典型的に、「ベクター構造体」、「発現ベクター」、および「遺伝子伝達ベクター」は、関心する遺伝子の発現を指示することができ、標的細胞に遺伝子配列を伝達できる任意の核酸構造体を意味する。したがって、上記用語は、クローニングおよび発現ビヒクルだけでなく、ベクターを統合することを含む。
【0380】
このとき、上記ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)であり得る。
【0381】
このとき、上記ベクターは、1つ以上の調節/制御構成要素を含むことができる。
【0382】
このとき、上記調節/制御構成要素は、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザック共通(Kozak consensus)配列、内部リボソーム流入部位(internal ribosome entry site,IRES)、スプライスアクセプターおよび/または2A配列を含むことができる。
【0383】
上記プロモーターは、RNAポリメラーゼIIによって認識されるプロモーターであり得る。
【0384】
上記プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIによって認識されるプロモーターであり得る。
【0385】
上記プロモーターは、誘導性プロモーターであり得る。
【0386】
上記プロモーターは、対象特異的プロモーターであり得る。
【0387】
上記プロモーターは、ウイルスまたは非ウイルスプロモーターであり得る。
【0388】
上記プロモーターは、制御領域(すなわち、ガイドRNAまたはCRISPR酵素をコードする核酸配列)に応じて適切なプロモーターを使用することができる。
【0389】
例えば、ガイドRNAのために有用なプロモーターは、H1、EF-1a、tRNAまたはU6プロモーターであり得る。例えば、CRISPR酵素のために有用なプロモーターは、CMV、EF-1a、EFS、MSCV、PGKまたはCAGプロモーターであり得る。
【0390】
ベクターは、ウイルスベクターまたは組換えウイルスベクターであり得る。
【0391】
上記ウイルスは、DNAウイルスまたはRNAウイルスであり得る。
【0392】
このとき、上記DNAウイルスは、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスまたは一本鎖DNA(ssDNA)ウイルスであり得る。
【0393】
このとき、上記RNAウイルスは、一本鎖RNA(ssRNA)ウイルスであり得る。
【0394】
上記ウイルスは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ-関連ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、または単純ヘルペスウイルスであってもよいが、これらに限定されない。
【0395】
一般に、ウイルスは、宿主(例えば、細胞)に感染し、宿主内にウイルスの遺伝情報をコードする核酸を導入するか、または宿主のゲノムに遺伝情報をコードする核酸を挿入することができる。このような特徴を有するウイルスを使用して、対象内にガイドRNAおよび/またはCRISPR酵素を導入することができる。ウイルスを使用して導入されたガイドRNAおよび/またはCRISPR酵素は、対象(例えば、細胞)において一時的に発現され得る。または、ウイルスを使用して導入されたガイドRNAおよび/またはCRISPR酵素は、対象(例えば、細胞)において長期間(例えば、1週、2週、3週、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、または永続的)において連続的に発現することができる。
【0396】
ウイルスのパッケージング能力は、少なくとも2kb~50kbで、ウイルスの種類によって異なり得る。このようなパッケージング能力に応じてガイドRNAまたはCRISPR酵素を単独で含むウイルスベクターを設計するか、またはガイドRNAおよびCRISPR酵素の両方を含むウイルスベクターを設計することができる。または、ガイドRNA、CRISPR酵素および追加的構成要素を含むウイルスベクターを設計することができる。
【0397】
例えば、レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列に対するパッケージング能力を有し、シス(cis)-作用性の長い末端反復順序(long terminal repet:LTR)から構成される。レトロウイルスベクターは細胞内に治療遺伝子を挿入して永続的な移植遺伝子の発現を提供する。
【0398】
別の例として、アデノ関連ウイルスベクターは、細胞分裂の有無に関係なく、様々な細胞(筋肉、脳、肝臓、肺、網膜、耳、心臓、血管)への形質導入効率が非常に高く、病原性がなく、ウイルスゲノムの大部分が治療遺伝子によって置換することができて免疫反応を誘導せず、繰り返し投与が可能である。また、AAVは対象細胞の染色体内に挿入されることによって治療蛋白質が長期間安定的に発現される。例えば、核酸およびペプチドの試験管内に生成して生体内および生体外で細胞の標的核酸に形質導入するために使用するのに役立つ。ただし、AAVはサイズが小さく、4.5kb以下のパッケージング能力を有する。
【0399】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸を含むベクター、およびアデニン塩基置換蛋白質を含むことができる。
【0400】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNA、およびアデニン塩基置換蛋白質をコードする核酸を含むベクターを含むことができる。
【0401】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸を含むベクター、およびアデニン塩基置換蛋白質をコードする核酸を含むベクターを含むことができる。
【0402】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸およびアデニン塩基置換蛋白質をコードする核酸を含むベクターを含むことができる。
【0403】
別の例として、塩基変形用組成物は、
(a)第1結合ドメインを含むCRISPR酵素またはそれをコードする核酸、および
(b)第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼまたはそれをコードする核酸を含むことができる。
【0404】
このとき、CRIPSR酵素は、野生型CRIPSR酵素またはCRIPSR酵素変異体であり得る。
【0405】
このとき、上記CRIPSR酵素変異体は、ニッカーゼ(nickase)であり得る。
【0406】
上記アデノシンデアミナーゼは、TadA,Tad2p,ADA,ADA1,ADA2,ADAR2,ADAT2,ADAT3またはその変異体であり得る。
【0407】
上記第1結合ドメインは、第2結合ドメインと非共有結合を形成することができる。
【0408】
このとき、上記第1結合ドメインは、FRBおよびFKBP dimerization domainsのうちの1つ、インテイン(intein)、ERTおよびVPR domainsのうちの1つ、GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)のうちの1つ、またはヘテロ二量体(heterodimer)を形成するドメインであり得る。
【0409】
このとき、上記第2結合ドメインは、FRBおよびFKBP dimerization domainsのうちの1つ、インテイン(intein)、ERTおよびVPR domainsのうちの1つ、GCN4 peptideおよびsingle chain variable fragment(scFv)のうちの1つ、またはヘテロ二量体(heterodimer)を形成するドメインであり得る。
【0410】
上記塩基変形用組成物は、1つ以上のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を追加でさらに含むことができる。
【0411】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNA-第1結合ドメインを含むCRISPR酵素-第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼ複合体、すなわち、ribonucleoprotien(RNP)形態であり得る。
【0412】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸を含むベクターと、第1結合ドメインを含むCRISPR酵素をコードする核酸を含むベクターと、第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼをコードする核酸を含むベクターと、を含むことができる。
【0413】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸を含むベクターと、第1結合ドメインを含むCRISPR酵素-第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼ複合体と、を含むことができる。
【0414】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸を含むベクターと、第1結合ドメインを含むCRISPR酵素をコードする核酸および第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼをコードする核酸を含むベクターと、を含むことができる。
【0415】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸および第1結合ドメインを含むCRISPR酵素をコードする核酸を含むベクターと、第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼをコードする核酸を含むベクターと、を含むことができる。
【0416】
このとき、塩基変形用組成物は、第1結合ドメインを含むCRISPR酵素をコードする核酸を含むベクターと、ガイドRNAをコードする核酸および第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼをコードする核酸を含むベクターと、を含むことができる。
【0417】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸を含むベクターと、第1結合ドメインを含むCRISPR酵素と、第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼをコードする核酸を含むベクターと、を含むことができる。
【0418】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸を含むベクターと、第1結合ドメインを含むCRISPR酵素をコードする核酸を含むベクターと、第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼと、を含むことができる。
【0419】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNAをコードする核酸および第1結合ドメインを含むCRISPR酵素をコードする核酸を含むベクターと、第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼと、を含むことができる。
【0420】
このとき、塩基変形用組成物は、第1結合ドメインを含むCRISPR酵素と、ガイドRNAをコードする核酸および第2結合ドメインを含むアデノシンデアミナーゼをコードする核酸を含むベクターと、を含むことができる。
【0421】
<塩基置換組成物の第4構成-ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体>
上記塩基変形用組成物は、核酸-蛋白質複合体の形態であり得る。このとき、上記核酸-蛋白質複合体は、ガイドRNA-アデニン塩基置換蛋白質複合体であり得る。このとき、上記核酸-蛋白質複合体は、ガイドRNA-シトシン塩基置換蛋白質複合体であり得る。
【0422】
このとき、上記ガイドRNA-アデニン塩基置換蛋白質複合体は、ガイドRNAとアデニン塩基置換蛋白質間に非共有結合によって形成されたものであってもよい。
【0423】
このとき、上記ガイドRNA-シトシン塩基置換蛋白質複合体は、ガイドRNAとシトシン塩基置換蛋白質間に非共有結合によって形成されたものであってもよい。
【0424】
上記塩基変形用組成物は、非ベクターの形態であり得る。
【0425】
このとき、上記非ベクターは、ネイキッドDNA、DNA複合体またはmRNAであり得る。
【0426】
上記塩基変形用組成物は、ベクターの形態であり得る。
【0427】
上記ベクターの関連説明は、上記の通りである。
【0428】
一例として、塩基変形用組成物は、CRISPR酵素およびアデノシンデアミナーゼを含むアデニン塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を含むことができる。
【0429】
このとき、CRIPSR酵素は、野生型CRIPSR酵素またはCRIPSR酵素変異体であり得る。
【0430】
このとき、上記CRIPSR酵素変異体は、ニッカーゼ(nickase)であり得る。
【0431】
上記アデノシンデアミナーゼは、TadA,Tad2p,ADA,ADA1,ADA2,ADAR2,ADAT2,ADAT3またはその変異体であり得る。
【0432】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[CRISPR酵素]-[アデノシンデアミナーゼ]-C末端の順に構成することができる。
【0433】
上記アデニン塩基置換蛋白質は、N末端-[アデノシンデアミナーゼ]-[CRISPR酵素]-C末端の順に構成することができる。
【0434】
このとき、上記アデニン塩基置換蛋白質は、追加として連結ドメインをさらに含むことができる。
【0435】
上記塩基変形用組成物は、1つ以上のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を追加でさらに含むことができる。
【0436】
このとき、塩基変形用組成物は、ガイドRNA-アデニン塩基置換蛋白質複合体、すなわち、ribonucleoprotien(RNP)の形態であり得る。
【0437】
本明細書によって開示される発明の一態様は、一塩基置換蛋白質またはそれを含む一塩基置換組成物の用途である。
【0438】
本出願で提供する一塩基置換蛋白質を通じて次の用途を提供することができる。
【0439】
塩基変形用組成物は、標的遺伝子内に1つ以上のヌクレオチドの塩基を人為的に変形させるために使用することができる。
【0440】
(i)特定の遺伝子の標的化する領域(region)の1つ以上のヌクレオチドの塩基を人為的に変形することによって、その変形された核酸配列から発現した物質を識別できないように突然変異した部分、すなわち抗体耐性を有するエピトープに対する情報を得るために使用することができる。
【0441】
(ii)特定の遺伝子の標的化する領域(region)の1つ以上のヌクレオチドの塩基を人為的に変形することによって、その変形された核酸配列から発現した物質の特定の薬物に対する感度の低下または喪失の有無に関する情報を得るために使用される。すなわち、特定の薬物に影響を与える標的遺伝子または標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)の1つの領域を探索または確認するために使用することができる。
【0442】
(iii)特定の遺伝子の標的化する領域(region)の1つ以上のヌクレオチドの塩基を人為的に変形することによって、その変形された核酸配列から発現した物質が特定の薬物に対する感度が増加するかどうかに関する情報を得るために使用することができる。すなわち、特定の薬物に感度の増加に影響を与える標的遺伝子または標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)の1つの領域を探索または確認するために使用することができる。
【0443】
(iv)特定の遺伝子の標的化する領域(region)の1つ以上のヌクレオチドの塩基を人為的に変形することによって、その変形された核酸配列から発現した物質がウイルスに耐性を有するかどうかに関する情報を得るために使用することができる。すなわち、ウイルス耐性遺伝子またはウイルス耐性蛋白質スクリーニングに使用することができる。
【0444】
<第1用途-エピトープ(epitope)スクリーニング>
一実施例として、一塩基置換蛋白質またはそれを含む塩基置換用組成物はエピトープ(epitope)スクリーニングに使用することができる。
【0445】
「エピトープ(epitope)」とは、抗体、B細胞、T細胞など免疫系が抗原を識別するようにする抗原の特定の部分を意味し、抗原決定基(antigenic determinant)とも呼ばれる。蛋白質のエピトープは、形とエピトープを識別する抗体の特定の部分である抗原結合部位との作用方式によって立体構造エピトープ(conformational epitopes)と線形エピトープ(linear epitopes)に大きく分かれる。立体構造エピトープは、抗原、すなわち、蛋白質の不連続的なアミノ酸配列からなる。立体構造エピトープは、抗体の抗原結合部位の3次元構造と反応する。ほとんどのエピトープは立体構造エピトープイである。逆に、線形エピトープは、抗体の抗原結合部位の1次元構造と反応して、抗原の線形エピトープを構成するアミノ酸は連続的なアミノ酸配列からなる。
【0446】
「エピトープスクリーニング」とは、抗体、B細胞、T細胞など免疫系が抗原を識別するようにする抗原の特定の部分を探索または確認することであり、また、抗体、B細胞、T細胞など免疫系が抗原を識別できないように突然変異された抗原の特定の部分を探索または確認する方法、組成物、キットなどを意味する。このとき、上記抗体、B細胞、T細胞など免疫系が抗原を識別できないように突然変異された抗原の特定の部分は抗体耐性を有するエピトープであり得る。
【0447】
一塩基置換蛋白質またはそれを含む塩基置換用組成物は、一塩基多型(SNP)を人為的に生成し、生体内変化、すなわち、特定因子の発現の生成、抑制、増加または低下、特定機能の生成または消失、または疾患の有無または外部薬物または化合物などの反応性の違い、例えば、エピトープとして利用可能な配列および薬物の耐性誘発の有無に関与する一塩基多型の位置を提供することができる。
【0448】
上記一塩基置換蛋白質および塩基置換用組成物の関連説明は上記の通りである。
【0449】
上記エピトープスクリーニングのために、一塩基置換蛋白質はゲノム内で人為的に一塩基多型を誘発するために使用することができる。
【0450】
このとき、上記人為的な一塩基多型は点突然変異を誘発することができる。
【0451】
点突然変異は、1つのヌクレオチドが変形されて現れる突然変異をいう。点突然変異にはミスセンス(missense)突然変異、ナンセンス(nonsense)突然変異、沈黙(silence)突然変異がある。
【0452】
ミスセンス突然変異は、1つ以上の変形されたヌクレオチドによって変異したコドンが他のアミノ酸をコードすることを意味する。ナンセンス突然変異は、1つ以上の変形されたヌクレオチドによって変異したコドンが終結コドンである場合をいう。沈黙突然変異は、1つ以上の変形されたヌクレオチドによって変異したコドンが、変異が起こらなかったコドンと同じアミノ酸をコードする場合をいう。
【0453】
一例として、塩基配列AがC,T,Gなどの他の塩基配列に置換することによって、他のアミノ酸をコードするコドンに変更することができる。すなわち、ミスセンス突然変異が誘発される可能性がある。例えば、AがCに置換される場合、ロイシンはグリシンに変わり得る。
【0454】
別の例として、塩基配列AがC,T,Gなどの他の塩基配列に置換することによって、同じアミノ酸をコードするコドンに変更することができる。すなわち、沈黙突然変異が誘発される可能性がある。例えば、AがCに置換される場合、同じプロリンをコードするコドンを有することができる。
【0455】
また、別の例として、AがC,T,Gなどの他の塩基配列に置換されてTAG,TGCおよびTAA中のいずれか1つが生成される場合、UAA,UAGおよびUGA中のいずれかの終結コドンを有することができる。すなわち、ナンセンス突然変異が誘発することができる。
【0456】
上記一塩基置換蛋白質は、遺伝子内に1つ以上のヌクレオチドの塩基に人為的な置換を誘導または発生させることで点突然変異を誘発することができる。
【0457】
上記塩基置換用組成物は、遺伝子内に1つ以上のヌクレオチドの塩基に人為的な置換を誘導または発生させることで点突然変異を誘発することができる。
【0458】
上記一塩基の人為的な置換誘導は上記の通りである。
【0459】
一塩基置換蛋白質またはそれを含む塩基置換用組成物によって生成される点突然変異によってコード化した蛋白質は、少なくとも1つ以上のアミノ酸配列が変更された蛋白質変異体であり得る。
【0460】
例えば、EGFRをコードする遺伝子を一塩基置換蛋白質またはそれを含む塩基置換用組成物で点突然変異を誘発させた場合、生成された点突然変異によってコード化した蛋白質は野生型EGFRと少なくとも1つ以上のアミノ酸配列が変更されたEGFR変異体であり得る。
【0461】
変更された1つ以上のアミノ酸は似た特性を有するアミノ酸に変更することができる。
【0462】
上記疏水性アミノ酸は、他の疏水性アミノ酸に変更することができる。疏水性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのいずれかである。
【0463】
上記塩基性アミノ酸は、他の塩基性アミノ酸に変更することができる。塩基性アミノ酸は、アルギニンまたはヒスチジンのいずれかである。
【0464】
上記酸性アミノ酸は、他の酸性アミノ酸に変更することができる。酸性アミノ酸は、グルタミン酸またはアスパラギン酸のいずれかである。
【0465】
上記極性アミノ酸は、他の極性アミノ酸に変更することができる。極性アミノ酸は、セリン、スレオニン、アスパラギンまたはグルタミンのいずれかである。
【0466】
変更された1つ以上のアミノ酸は、異なる特性を有するアミノ酸に変更することができる。
【0467】
一例として、上記アミノ酸は、疏水性アミノ酸が極性アミノ酸に変更することができる。
【0468】
別の例では、上記アミノ酸は、疏水性アミノ酸が酸性アミノ酸に変更することができる。
【0469】
一例として、上記アミノ酸は、疏水性アミノ酸が塩基性アミノ酸に変更することができる。
【0470】
別の例では、上記極性アミノ酸は、疏水性アミノ酸に変更することができる。
【0471】
一例として、上記酸性アミノ酸は、塩基性アミノ酸に変更することができる。
【0472】
別の例では、上記塩基性アミノ酸は、サムスンアミノ酸に変更することができる。
【0473】
上記少なくとも1つ以上のアミノ酸配列が変更された蛋白質変異体は、3次元蛋白質構造を変形することができる。これは、アミノ酸配列中のいずれか1つ以上のアミノ酸が他の特性のアミノ酸配列に変更される場合、アミノ酸配列間の結合力が変化しつつ、3次元構造が変更することができる。3次元構造が変更された場合、立体構造エピトープが変形することができる。上記の変形は、本出願で提供する一塩基置換蛋白質またはそれを含む組成物を使用して誘導することができる。
【0474】
例えば、ATMをコードする遺伝子を一塩基置換蛋白質またはそれを含む塩基変形用組成物で点突然変異を誘発させた場合、生成された点突然変異によってコード化したATM変異体は、3次元構造が一部変更されることができ、それによって立体構造エピトープが変形されることができる。上記の変形は、本出願で提供される単一塩基置換蛋白質またはそれを含む組成物を使用して誘導することができる。
【0475】
人為的な一塩基多型を含む遺伝子は、合成される蛋白質の量を制御することができる。
【0476】
一例として、上記人為的な一塩基多型を含む遺伝子は、mRNA転写する量の増加または減少することができる。これは、蛋白質合成量を増加または減少することができる。
【0477】
別の例として、上記遺伝子内の調節領域の1つ以上の人為的な一塩基多型を含む遺伝子の場合、上記一塩基多型を含む遺伝子から合成される蛋白質の量を増加または減少することができる。
【0478】
遺伝子内に存在する人為的な一塩基多型は蛋白質の活性を調節することができる。
【0479】
一例として、上記の1つ以上の人為的な一塩基多型は蛋白質の活性を促進および/または低下することができる。
【0480】
例えば、核膜受容体をコードする遺伝子内に人為的な一塩基多型が含まれる場合、リガンドを認知し、リガンドと結合して信号を伝達する過程に関与するすべての因子またはメカニズム(燐酸化、アセチル化など)を活性化させたり低下させたりすることができる。
【0481】
例えば、特定の酵素をコードする遺伝子内に人為的な一塩基多型が含まれる場合、酵素の機能、例えば、アセチラーゼの場合、標的因子のアセチル化させる程度を促進させるか、または低下させることができる。
【0482】
遺伝子内に存在する人為的な一塩基多型は蛋白質の機能を変更することができる。
【0483】
一例として、1つ以上の人為的な一塩基多型によって蛋白質の元の機能を追加および/または抑制することができる。
【0484】
例えば、核膜受容体をコードする遺伝子内に人為的な一塩基多型が含まれる場合、リガンドを認知および/または結合する能力を抑制することができる
【0485】
または、例えば、核膜受容体をコードする遺伝子内に人為的な一塩基多型が含まれる場合、リガンドと結合して下流因子(downstream factor)に信号を伝達する機能中の一部を抑制することができる。
【0486】
一実施例として、エピトープスクリーニング方法は、
a)標的遺伝子内に存在する標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAを発現できる細胞を用意することと、
-このとき、上記細胞は標的核酸配列を含む-、
b)上記細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞分離することと、
e)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0487】
一実施例として、エピトープスクリーニング方法は、
a)標的遺伝子内に存在する標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAを発現できる細胞を用意することと、
-このとき、上記細胞は標的核酸配列を含む-、
b)上記細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞分離することと、
e)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0488】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0489】
一実施例として、エピトープスクリーニング方法は、
a)標的核酸配列を含む細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸、およびガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0490】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0491】
他の実施例として、エピトープスクリーニング方法は、
a)塩基置換用組成物を標的核酸配列を含む細胞に導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0492】
他の実施例として、エピトープスクリーニング方法は、
a)塩基置換用組成物を標的核酸配列を含む細胞に導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0493】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0494】
上記ガイドRNAライブラリーは、標的配列の一部の核酸配列と相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAセットであり得る。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入されても各細胞はそれぞれ異なるガイドRNAを含むことができる。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入された結果、各細胞は互いに同じガイドRNAを含むことができる。
【0495】
上記ガイドRNAの関連説明は上記の通りである。
【0496】
上記一塩基置換蛋白質は、アデニン置換蛋白質またはシトシン置換蛋白質であり得る。
【0497】
上記一塩基置換蛋白質、アデニン置換蛋白質およびシトシン置換蛋白質の関連説明は上記の通りである。
【0498】
上記の導入は、エレクトロポレーション(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子(nanoparticles)、およびPTD(protein translocation domain)融合蛋白質方法のうち選択される1つ以上の方法で実行することができる。
【0499】
上記の処理する抗体は、標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)を識別する抗体であってもよく、上記標的蛋白質のエピトープと反応できる抗体であり得る。
【0500】
上記の生存した細胞は、上記の処理した抗体と反応しない細胞であり得る。
【0501】
上記から分離した細胞は、標的遺伝子に少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形を含む細胞であり得る。
【0502】
このとき、上記の1つ以上のヌクレオチドの変形は、標的遺伝子内に発生した1つ以上の人為的な一塩基多型(SNP)であり得る。
【0503】
このとき、上記の1つ以上の人為的な一塩基多型(SNP)は、点突然変異を誘発することができる。
【0504】
上記標的遺伝子に存在する少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形、すなわち、1つ以上の人為的な一塩基多型を確認することができる。これにより、標的化する情報を得ることができる。
【0505】
このとき、確認された少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形、すなわち、1つ以上の人為的な一塩基多型を含む核酸配列はエピトープをコードする核酸配列であり得る。
【0506】
<第2用途-薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質スクリーニング>
他の一実施例として、一塩基置換蛋白質またはそれを含む塩基置換用組成物は、薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質スクリーニングに使用することができる。
【0507】
薬物耐性スクリーニングは、特定の薬物に関する感度の減少または喪失に影響を与える標的遺伝子または標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)の一領域に関する情報を提供することができる。本出願で提供する一塩基置換蛋白質またはそれを含む組成物を使用して上記一領域を探索または確認することができる。
【0508】
本出願は、薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質のスクリーニング方法を提供する。以下、上記スクリーニング方法の一例として、具体的な各段階について説明する。
【0509】
sgRNAライブラリーの用意
標的遺伝子の一領域と相補的に結合できるガイドRNAを用意する。一実施例では、標的遺伝子内のエクソン(exon)の一領域と相補的に結合できるガイドRNAを用意する。このとき、上記用意されるガイドRNAは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、200個、500個、1000個、2000個、または3000個以上であり得る。このとき、上記用意される複数個のガイドRNAは、標的遺伝子内のエクソンの一領域と相補的に結合することができる。
【0510】
一例として、上記ガイドRNAは、標的遺伝子内のエクソン領域の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、または30個以上の領域に対応するヌクレオチド配列と相補的に結合できる部位を含む。
【0511】
ガイドRNAの発現可能な形質転換細胞の用意
標的遺伝子内のエクソンの一領域と相補的に結合できるガイドRNAを製造できる細胞を用意する。上記細胞は上記用意されたsgRNAライブラリーをコードするベクターによって形質感染されたことであり得る。このとき、上記細胞は、sgRNAライブラリーにコードした1つ以上のガイドRNAを発現することができる。
【0512】
一塩基置換蛋白質の上記形質転換細胞内の導入
sgRNAライブラリーにコードした1つ以上のガイドRNAを発現できる形質転換細胞内に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入する。上記一塩基置換蛋白質は、標的領域内の少なくとも1つ以上の塩基の任意の塩基への置換を誘導することができる。
【0513】
上記一塩基置換蛋白質は、標的遺伝子内の少なくとも1つ以上のSNPの発生を誘導することができる。
【0514】
上記一塩基置換蛋白質は、標的領域内の少なくとも1つ以上のSNPの発生を誘導することができる。
【0515】
一例として、上記導入された一塩基置換蛋白質がシチジン置換蛋白質である場合、標的領域内の少なくとも1つ以上のシトシンは任意の塩基で置換することができる。
【0516】
一例として、上記導入された一塩基置換蛋白質がアデニン置換蛋白質である場合、標的領域内の少なくとも1つ以上のアデニンは任意の塩基で置換することができる。
【0517】
形質転換細胞の用意
上記ガイドRNAの発現可能な形質転換細胞の用意および一塩基置換蛋白質の上記形質転換細胞内の導入段階の代わりに、下記のような段階でも本出願の方法を実行できる。
【0518】
標的遺伝子を含む細胞を用意する。
【0519】
上記細胞に上記一塩基置換蛋白質および上記ガイドRNAを導入する。このとき、上記一塩基置換蛋白質およびガイドRNAは、RNP複合体(ribonucleoprotein complex)の形態で導入するか、またはこれらをそれぞれコーディングする核酸の形態で導入することができる。
【0520】
上記形質転換細胞に薬物または治療剤の処理
上記形質転換細胞に抗生物質、抗癌剤または抗体など、薬物(drug)または治療剤(therapeutic agent)として使用される物質を処理する。このとき、上記処理される薬物または治療剤は、上記標的遺伝子から発現されるペプチド、ポリペプチド、または蛋白質と特異的に結合したり反応したりすることができる。または、上記処理される薬物または治療剤は、上記標的遺伝子から発現されるペプチド、ポリペプチド、または蛋白質の活性または機能を低下または喪失させることができる。または、上記処理される薬物または治療剤は、上記標的遺伝子から発現されるペプチド、ポリペプチド、または蛋白質の活性または機能を改善または向上することができる。
【0521】
上記形質転換細胞は、上記薬物または治療剤によって死滅することができる。
【0522】
上記形質転換細胞は、上記薬物または治療剤の処理にもかかわらず、生存することができる。
【0523】
細胞の選別
上記薬物または治療剤の処理にもかかわらず、生存した細胞を分離、選別、または取得することができる。
【0524】
上記生存した細胞は、少なくとも1つ以上のガイドRNAおよび一塩基置換蛋白質によって標的遺伝子の標的領域内の少なくとも1つ以上の塩基が任意の塩基に置換したことであり得る。上記一塩基置換蛋白質によって標的遺伝子内の塩基が任意の塩基に置換した細胞は、上記処理された薬物または治療剤に耐性を有することができる。
【0525】
このとき、上記生存した細胞の標的遺伝子から発現されるペプチド、ポリペプチド、または蛋白質は、上記薬物または治療剤に耐性を有することができる。
【0526】
情報の取得(obtaining the information)
上記生存した細胞のゲノムまたは標的遺伝子の核酸配列を分析して上記処理された薬物または治療剤に耐性を有する部位に関する情報を得ることができる。
【0527】
上記生存した細胞のゲノムまたは標的遺伝子の核酸配列を分析して上記標的遺伝子から発現されるペプチド、ポリペプチド、または蛋白質の構造または機能の変更の有無に関する情報を得ることができる。上記変更される構造または機能は、薬物に耐性を有するかどうかに決定的な役割を果たすことができる。
【0528】
一実施例では、薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)標的遺伝子を含む細胞を用意することと、
b)上記細胞に、標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAまたはこれをコーディングする核酸、および一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞を分離することと、
e)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0529】
一実施例では、薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)標的遺伝子内に存在する標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAを発現できる細胞を用意することと、
b)上記細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞を分離することと、
e)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0530】
一実施例では、薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)標的遺伝子内に存在する標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAを発現できる細胞を用意することと、
b)上記細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞を分離することと、
e)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0531】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0532】
一実施例では、薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸、およびガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0533】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0534】
他の実施例として、薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)塩基置換用組成物を、標的核酸配列を含む細胞に導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0535】
他の実施例として、薬物耐性遺伝子または薬物耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)塩基置換用組成物を、標的核酸配列を含む細胞に導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0536】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
上記ガイドRNAライブラリーは、標的配列の一部の核酸配列と相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAセットであり得る。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入されても各細胞はそれぞれ異なるガイドRNAを含むことができる。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入された結果、各細胞は互いに同じガイドRNAを含むことができる。
【0537】
上記ガイドRNAライブラリーは、標的配列の一部の核酸配列と相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAセットであり得る。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入されても各細胞はそれぞれ異なるガイドRNAを含むことができる。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入された結果、各細胞は互いに同じガイドRNAを含むことができる。
【0538】
上記ガイドRNAの関連説明は上記の通りである。
【0539】
上記一塩基置換蛋白質は、アデニン置換蛋白質またはシトシン置換蛋白質であり得る。
【0540】
上記一塩基置換蛋白質、アデニン置換蛋白質およびシトシン置換蛋白質の関連説明は上記の通りである。
【0541】
上記の導入は、エレクトロポレーション(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子(nanoparticles)、およびPTD(protein translocation domain)融合蛋白質方法のうち選択される1つ以上の方法で実行することができる。
【0542】
上記の処理する薬物は、標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)の活性、機能を阻害または抑制する物質であり得る。このとき、上記物質は、生物学的物質(RNA、DNA、蛋白質、ペプチド、抗体など)または非生物学的物質(化合物など)であり得る。
【0543】
上記の処理する薬物は、標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)の活性、機能を促進または増加させる物質であり得る。このとき、上記物質は、生物学的物質(RNA、DNA、蛋白質、ペプチド、抗体など)または非生物学的物質(化合物など)であり得る。
【0544】
上記の生存した細胞は、上記の処理した薬物によって標的蛋白質の活性、機能が変わらない、すなわち、薬物耐性を有する細胞であり得る。
【0545】
上記の分離した細胞は、標的遺伝子に少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形を含む細胞であり得る。
【0546】
このとき、上記の1つ以上のヌクレオチドの変形は、標的遺伝子内に発生した1つ以上の人為的な一塩基多型(SNP)であり得る。
【0547】
このとき、上記の1つ以上の人為的な一塩基多型(SNP)は点突然変異を誘発することができる。
【0548】
上記の標的遺伝子に存在する少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形、すなわち、1つ以上の人為的な一塩基多型を確認することができる。これにより、標的化する情報を得ることができる。
【0549】
このとき、確認された少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形、すなわち、1つ以上の人為的な一塩基多型を含む核酸配列は、薬物耐性に影響を与える蛋白質の一領域をコードする核酸配列であり得る。
【0550】
上記の処理する薬物は抗癌剤であり得る。ただし、抗癌剤に制限されず、公知のすべての疾病または疾患を治療するために使用される物質または治療剤も含まれる。
【0551】
一例として、上記薬物は、表皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor,EGFR)を阻害して癌細胞が成長を妨げたり、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)を遮断して癌細胞への血管新生を阻害したり、未分化リンパ腫キナーゼ(Anaplastic lymphoma kinase)を阻害したりするなどのメカニズムを使用することができる。
【0552】
一実施例では、薬物耐性突然変異スクリーニング方法として、標的遺伝子を含む細胞に上記一塩基置換組成物を導入して上記標的遺伝子上で人為的にSNPを誘導する(inducing)ことと、上記細胞に特定の薬物を処理する(treating)ことと、標的とするSNPを含む生存した細胞を選別する(selecting)ことと、上記選別された細胞を分析することによって標的とするSNPに関する情報(information)を得る(obtaining)ことと、を含み、このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連したことを含む薬物耐性突然変異スクリーニング方法であり得る。
【0553】
一実施例では、上記標的遺伝子は、EGFR遺伝子、VEGF遺伝子、または未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子であり得る。ただし、これらに限定されない。
【0554】
一実施例では、上記処理する薬物は、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、ビノレルビン(vinorelbine)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ペメトレキセド(pemetrexed)、イレッサ(iressa)、タルセバ(tarceva)、ジオトリフ(giotrif)、タグリッソ(tagrisso)、ザルコリ(Xalkori)、ザイカディア(zykadia)、アレクチニブ(alectinib)、アルンブリグ(brigatinib)、アバスチン(bevacizumab)、アバスチン(bevacizumab)、キトルダ(pembrolizumab)、オプジボ(nivolumab)、チセントリック(atezolizumab)、インピンジ(durvalumab)、またはOsimertinib(オシメルチニブ)であり得る。ただし、これらに限定されない。
【0555】
一実施例として、Osimertinibに耐性を有するEGFR突然変異遺伝子をスクリーニングする方法は、以下のように実行することができる。
【0556】
一実施例では、薬物耐性突然変異スクリーニング方法として、EGFR遺伝子を含む細胞に一塩基置換組成物を導入して上記EGFR遺伝子上で人為的にSNPを誘導する(inducing)ことと、上記細胞に薬物を処理する(treating)ことと、標的とするSNPを含む生存した細胞を選別する(selecting)ことと、上記選別された細胞を分析することによって標的とするSNPに関する情報(information)を得る(obtaining)ことと、を含み、このとき、上記標的とするSNPは、上記EGFRの構造または機能に関連したことを含む薬物耐性突然変異スクリーニング方法であり得る。
【0557】
このとき、上記処理される薬物はOsimertinibであり得る。ただし、これに限定されず、EGFRの機能を阻害したり喪失させたりする物質であり得る。
【0558】
一実施例で、薬物耐性突然変異スクリーニング方法として、EGFR遺伝子を含む細胞に一塩基置換組成物を導入して上記EGFR遺伝子上で人為的にSNPを誘導する(inducing)ことであって、上記一塩基置換組成物は、C797S sgRNA1および/またはC797S sgRNA2を含むことと、上記細胞に薬物を処理する(treating)ことと、標的とするSNPを含む生存した細胞を選別する(selecting)ことと、上記選別された細胞を分析することによって標的とするSNPに関する情報(information)を得る(obtaining)ことと、を含み、このとき、上記標的とするSNPは、上記EGFRの構造または機能に関連したことを含む薬物耐性突然変異スクリーニング方法であり得る。
【0559】
このとき、上記処理される薬物はOsimertinibであり得る。ただし、これに限定されず、EGFRの機能を阻害したり喪失させたりする物質であり得る。
【0560】
上記の実施例により、Osimertinibに耐性を有するEGFR部位を確認した。上記Osimertinibに耐性を有するEGFR部位は、上記導入された一塩基置換組成物または一塩基置換蛋白質によってSNPが誘導されたことを確認した。
【0561】
すなわち、本出願で提供する一塩基置換蛋白質を使用して細胞内のEGFR遺伝子に存在するシトシンを任意の塩基に置換することによって上記Osimertinibに耐性を示すことができる様々な位置などに関する情報を把握することができる。
【0562】
一実施例として、本出願は、EGFR耐性SNP情報を取得する方法を提供することができる:
a)細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸、およびガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0563】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0564】
<第3用途-薬物感作(sensitization)スクリーニング>
一実施例として、一塩基置換蛋白質またはそれを含む塩基変形用組成物は、薬物感作(sensitization)スクリーニングに使用することができる。
【0565】
「薬物感作または薬物敏感化」とは、特定の薬物に対して敏感になる状態を指し、特定の薬物に対する感度が増加した状態を意味する。逆に、「脱感作」とは、特定の薬物に対する感度が失われた状態を意味し、脱感作は特定の薬物に耐性がある状態を含む。
【0566】
薬物感作スクリーニングは、特定の薬物に対する感度の増加に影響を与える標的遺伝子または標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)の一領域を探索または確認する方法、組成物、キットなどを意味する。
【0567】
一実施例として、薬物感作(sensitization)スクリーニング方法は、
a)標的遺伝子内に存在する標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAを発現できる細胞を用意することと、
b)上記細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞を分離することと、
e)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0568】
一実施例で、薬物感作(sensitization)スクリーニング方法は、
a)標的遺伝子内に存在する標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAを発現できる細胞を用意することと、
-このとき、上記細胞は標的核酸配列を含む-、
b)上記細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞を分離することと、
e)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0569】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0570】
一実施例では、薬物感作(sensitization)スクリーニング方法は、
a)標的核酸配列を含む細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸、およびガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0571】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0572】
他の実施例として、薬物感作(sensitization)スクリーニング方法は、
a)塩基置換用組成物を、標的核酸配列を含む細胞に導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0573】
他の実施例として、薬物感作(sensitization)スクリーニング方法は、
a)塩基置換用組成物を、標的核酸配列を含む細胞に導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0574】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0575】
上記ガイドRNAライブラリーは、標的配列の一部の核酸配列と相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAセットであり得る。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入されても各細胞はそれぞれ異なるガイドRNAを含むことができる。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入された結果、各細胞は互いに同じガイドRNAを含むことができる。
【0576】
上記ガイドRNAの関連説明は、上記の通りである。
【0577】
上記一塩基置換蛋白質は、アデニン置換蛋白質またはシトシン置換蛋白質であり得る。
【0578】
上記一塩基置換蛋白質、アデニン置換蛋白質およびシトシン置換蛋白質の関連説明は、上記の通りである。
【0579】
上記の導入は、エレクトロポレーション(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子(nanoparticles)、およびPTD(protein translocation domain)融合蛋白質方法のうち選択される1つ以上の方法で実行することができる。
【0580】
上記の処理する薬物は、標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)の活性、機能を阻害または抑制する物質であり得る。このとき、上記物質は、生物学的物質(RNA、DNA、蛋白質、ペプチド、抗体など)または非生物学的物質(化合物など)であり得る。
【0581】
上記の処理する薬物は、標的蛋白質の活性、機能を促進または増加させる物質であり得る。このとき、上記物質は、生物学的物質(RNA、DNA、蛋白質、ペプチド、抗体など)または非生物学的物質(化合物など)であり得る。
【0582】
上記の分離した細胞は、上記c)で処理した薬物によって標的蛋白質の活性、機能が著しく変化した、すなわち、薬物感受性が増加した細胞であり得る。
【0583】
このとき、上記薬物の感度が増加した細胞は、薬物処理後に生存した細胞であり得る。
【0584】
上記の分離した細胞は、標的遺伝子に少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形を含む細胞であり得る。
【0585】
このとき、上記の1つ以上のヌクレオチドの変形は、標的遺伝子内に発生した1つ以上の人為的な一塩基多型(SNP)であり得る。
【0586】
このとき、上記の1つ以上の人為的な一塩基多型(SNP)は、点突然変異を誘発することができる。
【0587】
上記の標的遺伝子に存在する少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形、すなわち、1つ以上の人為的な一塩基多型を確認することができる。これにより、標的化する情報を得ることができる。
【0588】
このとき、確認された少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形、すなわち、1つ以上の人為的な一塩基多型を含む核酸配列は、薬物感度の増加に影響を与える蛋白質の一領域をコードする核酸配列であり得る。
【0589】
<第4用途-ウイルス耐性遺伝子またはウイルス耐性蛋白質のスクリーニング>
他の一実施例として、一塩基置換蛋白質またはそれを含む塩基変形用組成物は、ウイルス耐性遺伝子またはウイルス耐性蛋白質のスクリーニングに使用することができる。
【0590】
一実施例として、ウイルス耐性遺伝子またはウイルス耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)標的遺伝子内に存在する標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAを発現できる細胞を用意することと、
b)上記細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞を分離することと、
e)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0591】
一実施例では、ウイルス耐性遺伝子またはウイルス耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)標的遺伝子内に存在する標的核酸配列に相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAを発現できる細胞を用意することと、
-このとき、上記細胞は標的核酸配列を含む-、
b)上記細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸を導入することと、
c)上記b)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
d)生存した細胞を分離することと、
e)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0592】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0593】
一実施例では、ウイルス耐性遺伝子またはウイルス耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)標的核酸配列を含む細胞に一塩基置換蛋白質またはそれをコードする核酸、およびガイドRNAライブラリー中のいずれか1つ以上のガイドRNAまたはそれをコードする核酸を導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0594】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0595】
他の実施例として、ウイルス耐性遺伝子またはウイルス耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)塩基置換用組成物を、標的核酸配列を含む細胞に導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的遺伝子の核酸配列を分析することと、
を含む方法であり得る。
【0596】
他の実施例として、ウイルス耐性遺伝子またはウイルス耐性蛋白質のスクリーニング方法は、
a)塩基置換用組成物を、標的核酸配列を含む細胞に導入することと、
b)上記a)の細胞に薬物または治療剤を処理することと、
c)生存した細胞を分離することと、
d)分離した細胞で標的とするSNPに関する情報を得ることと、
を含む方法であり得る。
【0597】
このとき、上記標的とするSNPは、上記標的遺伝子から発現される蛋白質の構造または機能に関連するものであってもよい。
【0598】
上記ガイドRNAライブラリーは、標的配列の一部の核酸配列と相補的に結合できる1つ以上のガイドRNAセットであり得る。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入されても各細胞はそれぞれ異なるガイドRNAを含むことができる。同じガイドRNAライブラリーをコードする核酸が各細胞に導入された結果、各細胞は互いに同じガイドRNAを含むことができる。
【0599】
上記ガイドRNAの関連説明は、上記の通りである。
【0600】
上記一塩基置換蛋白質は、アデニン置換蛋白質またはシトシン置換蛋白質であり得る。
【0601】
上記一塩基置換蛋白質、アデニン置換蛋白質およびシトシン置換蛋白質の関連説明は、上記の通りである。
【0602】
上記の導入は、エレクトロポレーション(electroporation)、リポソーム、プラスミド、ウイルスベクター、ナノ粒子(nanoparticles)、およびPTD(protein translocation domain)融合蛋白質方法のうち選択される1つ以上の方法で実行することができる。
【0603】
上記の処理するウイルスは、標的遺伝子がコードする蛋白質(以下、標的蛋白質と記す)と相互作用して細胞内に導入することができる。
【0604】
上記の生存した細胞は、上記c)で処理したウイルスと相互作用しない、すなわち、ウイルス耐性を有する細胞であり得る。
【0605】
上記の分離した細胞は、標的遺伝子に少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形を含む細胞であり得る。
【0606】
上記の分離した細胞は、標的遺伝子に少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形を含む細胞であり得る。
【0607】
このとき、上記の1つ以上のヌクレオチドの変形は、標的遺伝子内に発生した1つ以上の人為的な一塩基多型(SNP)であり得る。
【0608】
このとき、上記の1つ以上の人為的な一塩基多型(SNP)は、点突然変異を誘発することができる。
【0609】
上記の標的遺伝子に存在する少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形、すなわち、1つ以上の人為的な一塩基多型を確認することができる。これにより、標的化する情報を得ることができる。
【0610】
このとき、確認された少なくとも1つ以上のヌクレオチドの変形、すなわち、1つ以上の人為的な一塩基多型を含む核酸配列は、ウイルスと相互作用に重要な蛋白質の一領域をコードする核酸配列であり得る。
【0611】
本明細書によって開示される発明の一態様は一塩基置換方法である。
【0612】
上記塩基置換用組成物は、遺伝子内に1つ以上のヌクレオチドの塩基に人為的な変形を誘導または発生することができる。
【0613】
上記人為的な変形または置換は、ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体によって誘導または発生することができる。
【0614】
このとき、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体は、i)標的核酸配列ターゲッティング、ii)標的核酸配列切断、iii)標的核酸配列内に1つ以上のヌクレオチドの脱アミノ化、iv)脱アミノ化された塩基除去、およびv)塩基が除去された標的核酸配列の改善または修復する段階のうちの1つ以上の段階で作用することができる。このとき、上記段階は順次的または同時に発生する可能性があり、また、上記段階の順序は変更されてもよい。
【0615】
i)標的核酸配列の標的化
「標的核酸配列」は、標的遺伝子または核酸内に存在するヌクレオチド配列であり、具体的には、標的遺伝子または核酸内に標的領域の一部のヌクレオチド配列であり、このとき、「標的領域」は標的遺伝子または核酸内にガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体によって変形され得る部位である。
【0616】
以下において、標的配列とは、二種類のヌクレオチド配列情報の両方を意味する用語で使用される。例えば、標的遺伝子の場合、標的核酸配列は、標的遺伝子DNAのtranscribed strandの配列情報を意味することもあるし、non-transcribed strandのヌクレオチド配列情報を意味することもある。
【0617】
例えば、標的核酸配列は、標的遺伝子Aの標的領域のうち一部のヌクレオチド配列(transcribed strand)の5’-ATCATTGGCAGACTAGTTCG-3’(配列番号17)を意味することもあるし、これに対し相補的なヌクレオチド配列(non-transcribed strand)の5’-CGAACTAGTCTGCCAATGAT-3’(配列番号18)を意味することもある。
【0618】
標的核酸配列は、5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0619】
一実施例として、上記標的核酸配列は、16個のヌクレオチド配列、17個のヌクレオチド配列、18個のヌクレオチド配列、19個のヌクレオチド配列、20個のヌクレオチド配列、21個のヌクレオチド配列、22個のヌクレオチド配列、23個のヌクレオチド配列、24個のヌクレオチド配列、または25個のヌクレオチド配列であり得る。
【0620】
標的核酸配列は、ガイドRNA結合配列あるいはガイドRNA非結合配列を含む。
【0621】
「ガイドRNA結合配列(guide nucleic acid-binding sequence)」は、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列と部分的または完全な相補性を有するヌクレオチド配列であり、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列と相補的に結合できる。標的核酸配列およびガイドRNA結合配列は、標的遺伝子または核酸によって、すなわち、遺伝子の操作または変形しようとする対象によって変化し得るヌクレオチド配列であり、標的遺伝子または核酸によって様々に設計することができる。
【0622】
「ガイドRNA非結合配列(guide nucleic acid-non-binding sequence)」は、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列と部分的または完全な相同性を有するヌクレオチド配列であり、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列と相補的に結合できない。また、ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNA結合配列と相補性を有するヌクレオチド配列であり、ガイドRNA結合配列と相補的に結合できる。
【0623】
ガイドRNA結合配列は、標的核酸配列のうち一部のヌクレオチド配列であり、標的核酸配列の2つの異なる配列順序を有するヌクレオチド配列、すなわち、互いに相補的な結合ができる2つのヌクレオチド配列のうち1つのヌクレオチド配列であり得る。このとき、ガイドRNA非結合配列は、標的核酸配列のうち、ガイドRNA結合配列を除いた残りのヌクレオチド配列であり得る。
【0624】
例えば、標的遺伝子Aの標的領域のうち一部のヌクレオチド配列である5’-ATCATTGGCAGACTAGTTCG-3’(配列番号17)と、それに相補的なヌクレオチド配列である5’-CGAACTAGTCTGCCAATGAT-3’(配列番号18)を標的核酸配列とする場合、ガイドRNA結合配列は、2つの標的核酸配列のうちの1つ、すなわち、5’-ATCATTGGCAGACTAGTTCG-3’(配列番号17)または5’-CGAACTAGTCTGCCAATGAT-3’(配列番号18)であり得る。このとき、ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNA結合配列が5’-ATCATTGGCAGACTAGTTCG-3’(配列番号17)である場合、5’-CGAACTAGTCTGCCAATGAT-3’(配列番号18)であってもよく、またはガイドRNA結合配列が5’-CGAACTAGTCTGCCAATGAT-3’(配列番号18)である場合、ガイドRNA非結合配列は5’-ATCATTGGCAGACTAGTTCG-3’(配列番号17)であり得る。
【0625】
ガイドRNA結合配列は、標的核酸配列、すなわち、transcribed strandと同じヌクレオチド配列およびnon-transcribed strandと同じヌクレオチド配列から選択される1つのヌクレオチド配列であり得る。このとき、ガイドRNA非結合配列は、標的核酸配列のうちガイドRNA結合配列、すなわち、transcribed strandと同じヌクレオチド配列およびnon-transcribed strandと同じヌクレオチド配列から選択される1つのヌクレオチド配列を除いた残りのヌクレオチド配列であり得る。
【0626】
ガイドRNA結合配列は、標的核酸配列の長さと同じであり得る。
【0627】
ガイドRNA非結合配列は、標的核酸配列またはガイドRNA結合配列の長さと同じであり得る。
【0628】
ガイドRNA結合配列は、5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0629】
一実施例として、上記ガイドRNA結合配列は、16個のヌクレオチド配列、17個のヌクレオチド配列、18個のヌクレオチド配列、19個のヌクレオチド配列、20個のヌクレオチド配列、21個のヌクレオチド配列、22個のヌクレオチド配列、23個のヌクレオチド配列、24個のヌクレオチド配列、または25個のヌクレオチド配列であり得る。
【0630】
ガイドRNA非結合配列は、5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0631】
一実施例として、上記ガイドRNA非結合配列は、16個のヌクレオチド配列、17個のヌクレオチド配列、18個のヌクレオチド配列、19個のヌクレオチド配列、20個のヌクレオチド配列、21個のヌクレオチド配列、22個のヌクレオチド配列、23個のヌクレオチド配列、24個のヌクレオチド配列、または25個のヌクレオチド配列であり得る。
【0632】
ガイドRNA結合配列は、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列と部分的または完全に相補的な結合をすることができ、上記ガイドRNA結合配列の長さはガイド配列の長さと同じであり得る。
【0633】
上記ガイドRNA結合配列は、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列に相補的なヌクレオチド配列であってもよい。例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の相補的または完全に相補的なヌクレオチド配列であり得る。
【0634】
一例として、上記ガイドRNA結合配列は、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列に相補的ではない1~8個のヌクレオチド配列を有するかまたは含むことができる。
【0635】
ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列と部分的または完全な相同性を有し得、上記ガイドRNA非結合配列の長さはガイド配列の長さと同じであり得る。
【0636】
上記ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列に相同性を有するヌクレオチド配列であってもよい。例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上の相同性または完全な相同性であるヌクレオチド配列であり得る。
【0637】
一例として、上記ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNAのガイドドメインに含まれるガイド配列に相同的ではない1~8個のヌクレオチド配列を有するかまたは含むことができる。
【0638】
ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNA結合配列と相補的に結合でき、上記ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNA結合配列の長さと同じであり得る。
【0639】
上記ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNA結合配列に相補的なヌクレオチド配列であってもよい。例えば、少なくとも90%または95%以上の相補的または完全に相補的なヌクレオチド配列であり得る。
【0640】
一例として、上記ガイドRNA非結合配列は、ガイドRNA結合配列に相補的ではない1~2個のヌクレオチド配列を有するかまたは含むことができる。
【0641】
また、上記ガイドRNA結合配列は、CRISPR酵素が認識できるヌクレオチド配列に近接した位置に位置したヌクレオチド配列であり得る。
【0642】
一例として、上記ガイドRNA結合配列は、CRISPR酵素が認識できるヌクレオチド配列の5’末端または/および3’末端に隣接して位置する連続する5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0643】
また、上記ガイドRNA非結合配列は、CRISPR酵素が認識できるヌクレオチド配列に近接した位置のヌクレオチド配列であり得る。
【0644】
一例として、上記ガイドRNA非結合配列は、CRISPR酵素が認識できるヌクレオチド配列の5’末端または/および3’末端に隣接して位置する連続する5~50個のヌクレオチド配列であり得る。
【0645】
「標的化(targeting)」とは、標的遺伝子または核酸内に存在する標的核酸配列のうちガイドRNA結合配列と相補的に結合することを意味する。このとき、上記相補的結合は100%の完全な相補的結合であってもよく、または、70%以上100%未満の不完全な相補的結合であり得る。したがって、「標的化するgRNA」は、標的遺伝子または核酸内に存在する標的核酸配列のうちガイドRNA結合配列と相補的に結合するgRNAを意味する。
【0646】
上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体は、標的核酸配列を標的化することができる。
【0647】
ii)標的核酸配列切断
上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体は、標的核酸配列を切断することができる。
【0648】
このとき、上記標的核酸配列が二本鎖の核酸である場合、上記切断は二本鎖を全部切断することであってもよい。または、上記切断は二本鎖のうちの1つの鎖だけ切断することもできる。
【0649】
このとき、上記標的核酸配列が一本鎖の核酸の場合、上記切断は一本鎖を切断することであってもよい。
【0650】
または、標的核酸配列切断は、ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するCRISPR酵素の種類によって切断形態が変わり得る。
【0651】
例えば、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するCRISPR酵素が野生型のCRISPR酵素(例えば、SpCas9)である場合、上記標的核酸配列切断は標的核酸配列の二本鎖を全部切断することであってもよい。
【0652】
別の例として、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するCRISPR酵素がCRISPR酵素変異体であるニッカーゼ(例えば、Nureki nCas9)である場合、上記標的核酸配列切断は標的核酸配列の二本鎖のうちの1つの鎖を切断することであってもよい。
【0653】
iii)標的核酸配列内に1つ以上のヌクレオチドの脱アミノ化
上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体は、標的核酸配列内に1つ以上のヌクレオチドが有する塩基のアミノ(-NH2)基を脱アミノ化することができる。
【0654】
このとき、上記脱アミノ化は、シトシンまたはアデニン塩基で発生する可能性がある。
【0655】
例えば、標的核酸配列内にアデニンを有するヌクレオチドが5個(このとき、5個のヌクレオチドは連続しても連続しなくてもよい)である場合、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体はアデニンを有するヌクレオチド5個のアデニンのアミノ(-NH2)基を全て脱アミノ化することができる。
【0656】
別の例として、標的核酸配列内にシトシンを有するヌクレオチドが8個(このとき、5個のヌクレオチドは連続しても連続しなくてもよい)である場合、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体はシトシンを有するヌクレオチド8個のうち3個のヌクレオチドが有するシトシンのアミノ(-NH2)基を脱アミノ化することができる。
【0657】
脱アミノ化が発生する塩基は、ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するデアミナーゼの種類によって異なり得る。
【0658】
例えば、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するデアミナーゼがアデノシンデアミナーゼ(例えば、TadAまたはTadA変異体)である場合、上記脱アミノ化はアデニンで発生する可能性がある。このとき、アデニンのアミノ(-NH2)基が脱アミノ化されてケト(=O)基を形成することができる。上記アデニンの脱アミノ化によってヒポキサンチンを生成する可能性がある。
【0659】
別の例として、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するデアミナーゼがシチジンデアミナーゼ(例えば、APOBEC1またはAPOBEC1変異体)である場合、上記脱アミノ化はシトシンで発生する可能性がある。このとき、シトシンのアミノ(-NH2)基が脱アミノ化されてケト(=O)基を形成することができる。上記シトシンの脱アミノ化によってウラシルを生成する可能性がある。
【0660】
iv)脱アミノ化された塩基の除去
上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体は、iii)段階によって生成された脱アミノ化された塩基を除去することができる。このとき、脱アミノ化された塩基の除去は、iii)段階によって生成された脱アミノ化された塩基を全部または一部を除去することであり得る。
【0661】
このとき、上記脱アミノ化された塩基は、脱アミノ化されたシトシンまたは脱アミノ化されたアデニンであり得る。
【0662】
このとき、上記脱アミノ化された塩基は、ウラシルまたはヒポキサンチンであり得る。
【0663】
脱アミノ化された塩基の除去は、ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するDNAグリコシラーゼの種類によって異なり得る。
【0664】
例えば、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するDNAグリコシラーゼがAlkyladenine DNA glycosylase(AAG)またはAAG変異体である場合、ヌクレオチドを構成するデオキシリボースまたはリボースと塩基(脱アミノ化されたアデニンまたはヒポキサンチン)を連結するN-グリコシド結合(N-glycoside linkage)を加水分解することができる。また、AP付着部位(AP site,apurinic/apyrimidinic site)を形成することができる。上記AP付着部位は自発的またはDNA(またはRNA)損傷によりプリンまたはピリミジン塩基のないDNA(またはRNA)の位置であり得る。
【0665】
別の例として、上記ガイドRNA-一塩基置換蛋白質複合体を構成するDNAグリコシラーゼがUracil-DNA glycosylase(UDG or UNG)またはUDG変異体である場合、ヌクレオチドを構成するデオキシリボースまたはリボースと塩基(脱アミノ化されたシトシンまたはウラシル)を連結するN-グリコシド結合(N-glycoside linkage)を加水分解することができる。また、AP付着部位(AP site,apurinic/apyrimidinic site)を形成することができる。
【0666】
v)塩基が除去された標的核酸配列の改善または修復
塩基が除去された標的核酸配列の改善または修復は、標的核酸配列の切断による改善または修復を含む。
【0667】
上記塩基が除去された標的核酸配列は、切断された標的核酸配列であり得る。
【0668】
このとき、上記切断された標的核酸配列は、二本鎖が全て切断された標的核酸配列であり得る。
【0669】
このとき、上記切断された標的核酸配列は、二本鎖のうちの1つの鎖が切断された標的核酸配列であり得る。このとき、切断された1つの鎖は塩基が除去された鎖であり得る。または、切断された1つの鎖は塩基が除去されなかった鎖であり得る。
【0670】
塩基が除去された標的核酸配列の改善または修復は、標的核酸配列内に1つ以上の塩基が除去されたヌクレオチドのAP付着部位に任意の塩基、すなわち、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、またはウラシルで改善または修復されることであり得る。
【0671】
例えば、標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたアデニンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がグアニンで修復されてもよい。または、標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたアデニンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がシトシンで修復されてもよい。標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたアデニンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がチミンで修復されてもよい。標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたアデニンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がウラシルで修復されてもよい。標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたアデニンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がアデニンで修復されてもよい。
【0672】
別の例として、標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたシトシンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がアデニンで修復されてもよい。または、標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたシトシンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がグアニンで修復されてもよい。または、標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたシトシンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がチミンで修復されてもよい。または、標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたシトシンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がウラシルで修復されてもよい。または、標的核酸配列内に1つ以上の脱アミノ化されたシトシンが除去されたヌクレオチドのAP付着部位がシトシンで修復されてもよい。
【0673】
上記人為的な変形は、遺伝子のエクソン、イントロン、スプライシング部位(splicing site)、調節領域(エンハンサー、サプレッサー領域)、5’末端またはその隣接した部位、3’末端またはその隣接した部位などで発生する可能性がある。
【0674】
例えば、上記人為的な変形は、エクソン領域に1つ以上の塩基配列が置換されたことであり得る。例えば、遺伝子内のエクソン領域に1つ以上のAおよび/またはCが他の任意の塩基配列(A,C,T,G,U)で置換されたことであり得る。
【0675】
別の例として、上記人為的な変形は、イントロン領域に1つ以上の塩基配列が置換されたことであり得る。例えば、遺伝子内のイントロン領域に1つ以上のAおよび/またはCが他の任意の塩基配列(A,C,T,G,U)で置換されたことであり得る。
【0676】
例えば、上記人為的な変形は、スプライシング部位に1つ以上の塩基配列が置換されたことであり得る。例えば、遺伝子内のスプライシング部位に1つ以上のAおよび/またはCが他の任意の塩基配列(A,C,T,G,U)で置換されたことであり得る。
【0677】
別の例として、上記人為的な変形は、調節領域(エンハンサー、サプレッサー領域)に1つ以上の塩基配列が置換されたことであり得る。例えば、遺伝子内の調節領域(エンハンサー、サプレッサー領域)に1つ以上のAおよび/またはCが他の任意の塩基配列(A,C,T,G,U)で置換されたことであり得る。
【0678】
上記人為的な変形は、蛋白質をコードする遺伝子のコドン配列の変形であり得る。
【0679】
「コドン」とは、遺伝子からアミノ酸をコード化(encoding)している遺伝コードのうちの1つをいう。DNAがメッセンジャーRNAに転写されるとき、このようなメッセンジャーRNAの塩基配列は3個ずつコドンを形成する。コドンは一種類のアミノ酸をコードすることができ、またはアミノ酸合成を終結させる終結コドンであり得る。
【0680】
上記人為的な変形は、1つ以上の一塩基配列変形によって蛋白質をコードするコドン配列の変形であってもよく、変形されたコドン配列は同じアミノ酸または異なるアミノ酸をコードすることができる。
【0681】
例えば、1つ以上の核酸配列がCからTに変更する場合、プロリンをコードするCCCは、ロイシン(Leucine)をコードするCUUまたはCUC、セリン(serine)をコードするUCCまたはUCU、またはフェニルアラニン(phenyl-alanine)をコードするUUCまたはUUUなどでコドンを変形することができる。
【0682】
例えば、1つ以上の核酸配列がAからCに変更する場合、スレオニン(Threonine)をコードするACCまたはACAは、プロリンをコードするCCCまたはCCAなどでコドンを変形することができる。
【0683】
例えば、1つ以上の核酸配列がAからGに変更する場合、リシンをコードするAAAは、グルタミン酸をコードするGAAまたはGAG、グリシン(Glycine)をコードするGGAまたはGGG、またはアルギニン(Arginine)をコードするAGAまたはAGGなどでコドンを変形することができる。
【0684】
発明の実施のための形態
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0685】
これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業者にとって自明であろう。
【0686】
(実験方法)
<第1実施例>
実施例1-1:プラスミド構築(Plasmid construction)
プラスミドは、Gibson Assembly(NEB Builder HiFi DNA Assembly kit,NEB)を使用して構築した。
図3(a)、
図7(a)および
図21の各断片を、PCRを使用して増幅させた後、Gibson Assembly Master mixにPCRで増幅したDNA断片を追加し、その後、50℃で60分間インキューベート(incubate)した。すべてのプラスミドは、CMVプロモーター、p15A複製開始点およびアンピシリン(ambicillin)抗生物質耐性遺伝子を選択するマーカーを含む。一部のプラスミドは、ヒトコドン-最適化WT-Cas9(P3s-Cas9HC、Addgene plasmid #43945)またはその変異体を含む。
【0687】
実施例1-2:細胞培養および形質導入(Cell culture and transfection)
(1)HEK293T細胞:一塩基置換CRISPR蛋白質形質導入
HEK293T細胞は、5%CO2下、37℃で10%FBSと1%抗生物質を添加したDulbeccco’s Modified Eagle’s培地(DMEM,Welgene)で培養した。形質感染の前にHEK293T細胞を6-wellプレートにwell当たり2x105の密度で分注した。その後、1ug BE3(WT,bpNLS,xCas-UNG,UNG-xCas,scFv-APO-UNGまたはscFv-UNG-APO)および1ug sgRNA-発現プラスミド(hEMX1 GX19 or GX20)を200ul Opti-MEM培地で4uLリポペクタミン(lipofectamine)TM2000(thermo Fisher Scientific、11668019)を使用して形質感染させた。
【0688】
(2)Hela細胞:一塩基置換CRISPR蛋白質形質導入
Hela細胞は、5%CO2下、37℃で10%FBSと1%抗生物質を添加したDulbeccco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM,Welgene)で培養した。形質感染の前にHela細胞を6-wellプレートにwell当たり2x105の密度で分注した。その後、1ug塩基置換プラスミド(BE3 WT,bpNLS BE3,ung-ncas,ncas-ungまたはncas-delta UNG)および1ug sgRNA-発現プラスミドを200ul Opti-MEM培地で4uLリポペクタミン(lipofectamine)TM2000(thermo Fisher Scientific、11668019)を使用して形質感染させた。
【0689】
(3)HEK293T細胞:一塩基置換CRISPR蛋白質形質導入
HEK293T細胞は、5%CO2下、37℃で10%FBSと1%抗生物質を添加したDulbeccco’s Modified Eagle’s培地(DMEM,Welgene)で培養した。形質感染の前にHEK293T細胞を12-wellプレートにwell当たり2x105の密度で分注した。その後、500ng塩基置換プラスミド(bpNLS-UNG-APOBEC-Nureki nCas9-bpNLS)、500ng sgRNA-発現プラスミド(hEMX1 GX19 or GX20)を200ul Opti-MEM培地で2uLリポペクタミン(lipofectamine)TM2000(thermo Fisher Scientific、11668019)を使用して形質感染させた。
【0690】
実施例1-3:hEMX1 GX19 sgRNA,hEMX1 GX20 sgRNA設計および合成
(1)sgRNA設計および合成
CRISPR RGEN Tools((http://www.rgenome.net、Park et al,Bioinformatics 31:4014-4016,2015)を使用して、hEMX遺伝子の「NGG PAM」または「NG」PAMを考慮したguide RNAをデザインした。デザインしたguide RNAはOn-target部位を除いて1baseまたは2base mismatchがないことを考慮した。
【0691】
sgRNA発現プラスミドを生成するために使用したオリゴ(表1参照)をアニーリングおよび伸長させた後、pRG2プラスミドのBsa1部位にクローニングした。
【0692】
【0693】
(2)Deep sequencing
Hipi Plus DNA polymerase(Elpis-bio)を使用して、オンターゲット(ontarget)およびオフターゲット(off-target)の部位を200~300bpのサイズにPCR増幅した。上記の方法で得られたPCR産物を、Mi-seq.(Illumina)装置を使用してsequencingし、CRISPR RGEN tool(www.rgenome.net)のCas Analyzerを介して分析した。CRISPR/Cas9の切断部位から5bp以内での置換を一塩基置換CRISPR蛋白質から誘導された変異と見なした。
【0694】
実施例1-4:実験の結果
本実施例において、一塩基置換CRISPR蛋白質を使用してシトシン(C)がアデニン(A)、チミン(T)またはグアニン(G)で置換効果を確認した。
【0695】
(1)bpNLS検証
HEK cellでBE3 WTおよびbpNLS BE3 WTを使用して、bpNLS BE3 WTがBE3 WTよりもC to Tの置換率(substitution rate)が増加したことを確認した(
図7(b)参照)。
【0696】
(2)一塩基置換CRISPR蛋白質の塩基置換効率の確認
1)Hela cellでC to N(A,T,G)効率の確認
Hela cellで一塩基置換CRISPR蛋白質を使用して、hEMX1 GX19 sgRNA targetでC to Nへの置換率を確認した。
【0697】
実験の結果、UGIを除去したncas-delta UGIは、BE3 WTとC to GまたはC to Aの置換率にほとんど差がないことを確認した。一方、UNGを融合させたUNG-ncas、ncas-UNGはBE3 WTと比較してC to GまたはC to Aの置換率が増加したことを確認した(
図8参照)。このような結果から、BE3 WTにUGIをUNGに置換する場合、C to GまたはC to Aで塩基置換される確率が増加することを確認した。
【0698】
また、hEMX1 GX19 sgRNAシークエンスで15C、16Cの塩基置換率を確認した。実験の結果、15C、16CでBE3 WT、bpNLS BE3よりもUNG-ncas、ncas-UNGでC to GまたはC to Aで塩基置換される確率が増加することを確認した(
図9参照)。
【0699】
hEMX1 GX19 sgRNAシークエンスにおいて、16Cよりも15CでC to GまたはC to Aへの塩基置換がよりよく起こり、UNG-ncas構造を有する一塩基置換CRISPR蛋白質におけるC to GまたはC to Aへの塩基置換確率が最も高いことを確認した(
図9参照)。
【0700】
2)HEK cellでC to N(A,T,G)効率の確認
HEK cellからhEMX1 GX20 sgRNA targetへの一塩基置換CRISPR蛋白質のC to Nへの置換率を確認した。
【0701】
実験の結果、hEMX1 GX19 sgRNAシークエンスにおいて13C、15C、16C、17Cで塩基置換されることを確認した(
図10参照)。
【0702】
また、HEK cellではncas-UNGがUNG-ncasよりもC to Nへの塩基置換率が高いことを確認した(
図11参照)。特に、15C、16C、17CではUNG-ncasがncas-UNGよりもC to GまたはC to Aへの塩基置換がよりよく起こることを確認した(
図11参照)。
【0703】
また、一塩基置換CRISPR蛋白質複合体、すなわち、single chain variable fragment(scFv)を含む融合塩基置換ドメイン(scFv-APO-UNGまたはscFv-UNG-APO)を使用して、hEMX1標的核酸配列中の一塩基置換効率を確認した結果、11CではC to Aで、15Cと16CではC to Gで塩基置換がよりよく起こることを確認した(
図22~24参照)。
【0704】
(3)Nureki nCas9検証
一塩基置換CRISPR蛋白質を使用して、ランダムエラー(random error)を与えることができる標的部位を拡張しようとして、NG PAM配列を有するNureki nCas9を使用して実験を進めた。
【0705】
hEMX1 GX17 sgRNA、hEMX1 GX20 sgRNAを使用して実験を進めた結果、HEK cellでよく作動することを確認した。特に、NG PAMにおいてC to Nへ置換することを確認した(
図12参照)。
<第2実施例>
【0706】
実施例2-1:プラスミド構築(Plasmid construction)
プラスミドは、Gibson Assembly(NEB Builder HiFi DNA Assembly kit,NEB)を使用して構築した。
図4の各断片を、PCRを使用して増幅させた後、Gibson Assembly Master mixにPCRで増幅したDNA断片を追加し、その後、50℃で60分間インキューベート(incubate)した。すべてのプラスミドは、ヒトコドン-最適化されたWT-Cas9(P3s-Cas9HC、Addgene plasmid #43945)、CMVプロモーター、p15A複製開始点およびアンピシリン(ambicillin)抗生物質耐性遺伝子を選択するマーカーを含む(
図19および20参照)。
【0707】
実施例2-2:sgRNA設計および合成
(1)sgRNA設計
科学雑誌「ネイチャー」に掲載された「base editing of A to G in genomic DNA without DNA cleavage」論文でExtended Data Figure2に明示されたsgRNAのうち3個を選定した(
図25参照)。
【0708】
(2)sgRNA合成
2個の相補的オルリゴヌクレオチドをアニーリングおよび伸長させてsgRNA合成のための鋳型をPCR-増幅させた。
【0709】
上記鋳型DNA(標的配列において3’末端の「NGG」を除く)に対してT7 RNA polymerase(New England Biolabs)を使用してin vitro transcription)を行い、製造者の使用説明書にしたがってRNAを合成した後、Turbo DNAse(Ambion)を用いて鋳型DNAを除去した。Expin Combo kit(GeneAll)とイソプロパノール沈殿によって転写したRNAを精製した。
【0710】
本実施例において、上記chemically synthesized sgRNAは、2’OMeおよびphosphorothioateに変形するものを使用した。
【0711】
実施例2-3:細胞培養および形質導入(cell culture and transfection)
(1)HEK293T細胞:一塩基置換CRISPR蛋白質形質導入
HEK293T細胞は、5%CO2下、37℃で10%FBSと1%抗生物質を添加したDulbeccco’s Modified Eagle’s培地(DMEM,Welgene)で培養した。形質感染の前にHEK293T細胞を24-wellプレートにwell当たり5x104の密度で分注した。その後、異なる3つの1ug sgRNA発現プラスミドにそれぞれ3ug ABE(WT,N-AAG,C-AAG)を200ul Opti-MEM培地で12uL FugeneR HD transfection regaten(Cat no.E231A、promega)を使用して形質感染させた。
【0712】
(2)Deep sequencing
Hipi Plus DNA polymerase(Elpis-bio)を使用して、オンターゲット(ontarget)およびオフターゲット(off-target)の部位を200~300bpのサイズにPCR増幅した。上記の方法で得られたPCR産物を、Mi-seq.(Illumina)装置を使用してsequencingし、CRISPR RGEN tool(www.rgenome.net)のCas Analyzerを介して分析した。CRISPR/Cas9の切断部位から5bp以内での置換を一塩基置換CRISPR蛋白質から誘導された変異と見なした。
【0713】
実施例2-4:実験の結果
ABE(Adenine Base Editor)は、アデニン塩基校正遺伝子はさみで、アデニン(A)塩基をグアニン(G)塩基に置換する技術である。Alkyladenine DNA glycosylase(AAG)は、DNAでイノシン(Inosine)塩基を除去する酵素である(
図2)。本発明者らは、アデニン(adenine,A)塩基のランダム的突然変異を誘導するためにABE WTプラスミドのN-末端とC-末端それぞれにAAG(Alkyladenine DNA glycosylase、AAG)遺伝子を挿入して変形させ、アデニン塩基置換蛋白質を開発した。Cas9ニッカーゼ、アデノシンデアミナーゼおよびDNAグリコシラーゼを様々な順序で構成して融合蛋白質を生成した(
図4)。
【0714】
アデニン(A)塩基のランダム的突然変異を確認するために3つのsgRNA(sgRNA1,sgRNA2,sgRNA3)をHEK293T細胞に塩基置換蛋白質をコードする核酸を含むプラスミド(すなわち、変形させたABEプラスミド)とともに形質感染させた。実験の結果、ABE WTと比較すると、変形させたABEプラスミド(N-AAG,C-AAG)を形質感染させたHEK293T細胞でsgRNA1の塩基配列のうち14番目のアデニン(A)塩基が他の塩基(チミン;T、シトシン;C、グアニン;G)にランダム的置換することを確認した。sgRNA1の塩基配列では19番目と13番目のアデニン(A)塩基が他の塩基に置換したことを確認した(
図27)。sgRNA1では、N-末端にAAGを挿入したプラスミドだけで16番目と12番目のアデニンが置換されたことを確認した(
図28)。したがって、ABEにAAGを挿入することによってアデニン(A)塩基が他の塩基へのランダム的置換が誘導されることを確認した。さらに、Cas9ニッカーゼ、アデノシンデアミナーゼおよびDNAグリコシラーゼの順序にかかわらず、アデニン塩基置換蛋白質を使用する場合、アデニン(A)塩基が他の塩基へのランダム的置換が誘導されることを確認した(
図26~28参照)。
<第3実施例>
【0715】
suntagシステムを使用した一塩基置換
実施例3-1:プラスミド製作(Plasmid construction)
プラスミドは、Gibson Assembly(NEB Builder HiFi DNA Assembly kit,NEB)を使用して構築した。
図5の(a)、(b)、(c)の各断片を、PCRを使用して増幅させた後、Gibson Assembly Master mixにPCRで増幅したDNA断片を追加し、その後、50℃で15-60分間インキューベート(incubate)した。すべてのプラスミドは、ヒトコドン-最適化WT-Cas9(P3s-Cas9HC、Addgene plasmid #43945)、CMVプロモーター、p15A複製開始点およびアンピシリン(ambicillin)抗生物質耐性遺伝子を選択するマーカーを含む。
【0716】
実施例3-2:細胞培養および形質導入(Cell culture and transfection)
PC9細胞は、5%CO2下、37℃で10%FBSと1%抗生物質を添加したRosewell Park Memorial Institute 1640(RPMI 1640,Welgene)で培養した。形質感染の前にPC9細胞を24-wellプレートにwell当たり2x105の密度で分注した。その後、1500ng塩基置換プラスミド(Apobec-nCas9-UGI,Apobec-nureki nCas9-UNG)と500ng sgRNA-発現プラスミド(hEMX1 GX19)を、そして1000ng suntagプラスミド(GCN4-nCas9)と1000ng ScFvプラスミド(ScFv-Apobec-UNG,ScFv-UNG-Apobec)と500g sgRNA-発現プラスミド(hEMX1 GX19)を200ul Opti-MEM培地で4uLリポペクタミン(lipofectamine)TM2000(thermo Fisher Scientific、11668019)を使用して形質感染させた。
【0717】
実施例3-3:Deep sequencing
Hipi Plus DNA polymerase(Elpis-bio)を使用して、オンターゲット(ontarget)およびオフターゲット(off-target)の部位を200~300bpのサイズにPCR増幅した。上記の方法で得られたPCR産物を、Mi-seq.(Illumina)装置を使用してsequencingした後、CRISPR RGEN tool(www.rgenome.net)のBE Analyzerを介して分析した。sgRNA sequence部位から10bp以内での置換を一塩基置換CRISPR蛋白質から誘導された変異と見なした。
【0718】
実施例3-4:実験の結果
PC9 cellで一塩基置換蛋白質を使用してC to Nへの置換率を確認した。
【0719】
SunTagシステムを使用して1つのnCas9でもUNGの効果を最大化することによってランダム的な突然変異誘導を増加させようとした。その結果、ScFv-UNG-Apobecの場合、WTと似た一塩基置換効率を有してランダム的な塩基置換(C to T or A or G)を誘導することを確認することができた(
図13参照)。
<第4実施例>
【0720】
一塩基置換CRISPR蛋白質を使用したEGFR C797S突然変異誘導およびOsimertinib耐性確認
実施例4-1:PC9細胞:一塩基置換CRISPR蛋白質形質導入および薬物培養
PC9細胞は、5%CO2下、37℃で10%FBSと1%抗生物質を添加したRosewell Park Memorial Institute 1640(RPMI 1640,Welgene)で培養した。形質感染の前にPC9細胞を15cm2 dishに3x106の密度で分注した。その後、異なる2つの5ug sgRNA発現プラスミドにそれぞれ15ug N-UNGを3mL Opti-MEM培地で40uLリポペクタミン(lipofectamine)TM2000(thermo Fisher Scientific、11668019)を使用して形質感染させた。形質感染させた日から3日後、blasticidin 4ug/mLの濃度で抗生物質を処理して7日間培養した。十分な抗生物質培養による安定化細胞株を確保した後、非小細胞性肺癌標的治療剤であるOsimertinib(selleckchem,S5078)100nMの濃度で20日間細胞を培養した。Osimertinibに耐性があると知られているC797S変異を生成できるsgRNA(C797S sgRNA1(配列番号21)およびC797S sgRNA2(配列番号22)を用いてpositive control実験を進めた。スクリーニングシステムを使用してC797S変異がenrichされることを確認した。
【0721】
実施例4-2:Deep sequencing
Hipi Plus DNA polymerase(Elpis-bio)を使用して、オンターゲット(ontarget)およびオフターゲット(off-target)の部位を200~300bpのサイズにPCR増幅した。上記の方法で得られたPCR産物を、Mi-seq.(Illumina)装置を使用してsequencingした後、CRISPR RGEN tool(www.rgenome.net)のBE Analyzerを介して分析した。sgRNA sequence部位から10bp以内での置換を一塩基置換CRISPR蛋白質から誘導された変異と見なした。
【0722】
実施例4-3:実験の結果
3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるOsimertinibは、2世代薬物に耐性があるEGFR T790M-陽性の非小細胞肺癌患者の治療剤として使用されている。N-UNGによるtarget sgRNA sequence内のcytosineのランダム的塩基置換を誘導することによって特定の薬物に対する耐性突然変異をスクリーニングした。
【0723】
osimertinib薬物の既知の耐性突然変異であるC797Sをpositive controlとして使用し、該当toolが作動するかを確認した。C797S sgRNA1内の15番目に位置したCがGへ、またはC797S sgRNA2内の13番目のCがGへ塩基置換する場合、EGFRの797番目のアミノ酸であるcysteineがSerineに変わる。実験の結果、ブラスチジン(Blastidine)のみ処理した群では、C797S sgRNA1と2がN-UNGによって15Cと13Cが10%だけGに置換するが、Osimertinibを処理した群では、C to Gに変わった部分がそれぞれ50%と80%に増えたことを確認した(
図30参照)。
<第5実施例>
【0724】
EGFR sgRNAライブラリー導入で形質転換(Transformation)細胞製造および薬物耐性突然変異スクリーニング
実施例5-1:EGFR sgRNAライブラリーデザインおよび合成
CRISPR RGEN tool(www.rgenome.net)を使用してEpidermal Growth Factor Receptor(EGFR)遺伝子のexon 27個で合計1803個のsgRNAをデザインした。デザインされた1803個のsgRNA oligo poolの順方向オリゴ配列では5’末端にCACCGを追加し、逆方向オリゴ配列ではそれぞれ5’末端にAAACを、3’末端にCを追加してTwist Bioscienceに合成を依頼した。
【0725】
実施例5-2:EGFR sgRNAライブラリープラスミド製造
合成されたEGFR sgRNA oligo poolは、95℃で5分間反応し後、25℃まで段階的に温度を低くして結合(annealing)させた。その後、EGFR sgRNA oligo poolらとBsa1制限酵素で切断されたピギーバック転移(Piggybac transposon)バックボーンベクター(backbone vector)は、T4 ligaseによってligationした。Ligationされた反応液は、EnduraTM DUOs Electrocompetent cell(lucigen,Cat no.60242-2)にエレクトロポレーション(electroporation)を利用して挿入した。このように、形質転換された大腸菌は、Ampicillin抗生物質を添加したLB培地に等しく塗って37℃で1日間放置して培養した。NuceloBond Xtra Midi EF(Macherey-Nagel,cat No.740420.50)を使用して大腸菌群集(colony)からEGFR sgRNAライブラリープラスミドを確保した。
【0726】
実施例5-3:細胞培養
PC9細胞は、5%CO2下、37℃で10%FBSと1%抗生物質を添加したRosewell Park Memorial Institute 1640(RPMI 1640,Welgene)で培養した。
【0727】
実施例5-4:ピギーバック転移(piggybac transposon)を利用した形質転換細胞の製造
PC9細胞に遺伝子伝達システムであるピギーバック転移(piggybac transposon)を適用してEGFR sgRNA発現が可能な細胞を製造した。形質転換の前に、PC9細胞をT175 flaskに4x106の密度で分注した。その後、piggybac transposon vectorとtransposase expression vectorを1:5の割合で3mL Opti-MEM培地で40uLリポペクタミン(lipofectamine)TM2000(thermo Fisher Scientific、11668019)を使用して形質感染させた。翌日puromycin 2ug/mLの濃度で抗生物質を処理し、7日間培養した。十分な抗生物質の継代培養によって安定化細胞株を確保した。
【0728】
実施例5-5:一塩基置換CRISPR蛋白質形質導入および薬物耐性突然変異スクリーニング
リポペクタミン(lipofectamine)TM2000(thermo Fisher Scientific、11668019)を使用して形質感染を下記約18~24時間前に形質転換されたPC9細胞をT175 flaskに4x106の密度で分注した。その後、20ug N-UNGを形質感染させた。形質感染させた日から3日後、blasticidin 4ug/mLの濃度で抗生物質を処理して7日間培養した。十分な抗生物質培養によって安定化細胞が確保されればT175 flaskに4x106の密度で分注した。その後、非小細胞性肺癌標的治療剤であるOsimertinib (selleckchem,S5078)100nMの濃度で20日間細胞を培養して耐性突然変異細胞を確保した。
【0729】
実施例5-6:Deep sequencing
Hipi Plus DNA polymerase(Elpis-bio)を使用してオンターゲット(ontarget)およびオフターゲット(off-target)の部位を200~300bpのサイズにPCR増幅した。上記の方法で得られたPCR産物を、Mi-seq.(Illumina)装置を使用してシークエンス(sequencing)した後、結果を1803個のEGFR sgRNA sequenceで分析を依頼した。
【0730】
実施例5-7:実験の結果
EGFR sgRNAが発現するPC9細胞にN-UNGでsgRNA内のCytosineをランダムに塩基置換した後、Osimertinibを添加した培地で培養して生き残った細胞を分析した結果を確保した(
図29および
図30参照)。
図31は、EGFR sgRNAを発現できるPC9細胞にN-UNGでsgRNA内のCytosineをランダムに塩基置換した後、Osimertinibを添加した培地で培養して生き残った細胞を分析した結果である。
【配列表】
【国際調査報告】