(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ゼアラレノンを切断するための手段および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20220720BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20220720BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20220720BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20220720BHJP
【FI】
C12N15/10 200Z
C12N9/14 101
C12P1/00 A
C12N15/55 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021505278
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(85)【翻訳文提出日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070434
(87)【国際公開番号】W WO2020025580
(87)【国際公開日】2020-02-06
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222298
【氏名又は名称】エルバー アクツィエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】サムヘスル ミヒャエラ
(72)【発明者】
【氏名】フルハウフ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】モル ヴルフ-ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ヒューバートナー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シャッツマイヤー ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー エファ-マリア
(72)【発明者】
【氏名】アレシュコ マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フェファー マルティン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050KK03
4B050LL05
4B064AH19
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA10
4B064DA11
(57)【要約】
本発明はα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法に関する。加えて、本発明は、本発明の方法によって得ることができるα/β加水分解酵素に関する。減少した総平均ハイドロパシー(grand average of hydropathy:GRAVY)値を有しかつ/または特定の変異を含むα/β加水分解酵素も提供される。加えて、本発明は、ゼアラレノン(ZEN)を分解するための本発明のα/β加水分解酵素の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列
を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法。
【請求項2】
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、T、G、A、M、C、F、LまたはVから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、TまたはGから選択され、より好ましくはR、K、N、Q、D、E、HまたはPから選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸が、R、D、H、G、NまたはPから選択されるアミノ酸、好ましくはR、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、より好ましくはアミノ酸がRまたはNから選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→N、Q→K、F→Yおよび/またはV→Cのうちの1つまたは複数から選択され、好ましくはアミノ酸置換が、V160A、G185R、G185S、A186P、A186R、A188D、A188H、A188N、A188G、A188R、S189D、P190H、M191D、G199E、I200A、I200V、H203N、Q205K、F183Yおよび/またはV197Cのうちの1つまたは複数から選択され、より好ましくはアミノ酸置換が、G185R、A186R、A188R、A188D、A188H、A188Nおよび/またはM191Dから選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
増加した安定性が、GRAVY値の減少、pH安定性の増加および/または温度安定性の増加である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
請求項4、5または6のいずれか一項記載の方法によって得ることができるα/β加水分解酵素。
【請求項8】
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
【請求項9】
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→NおよびQ→Kから選択され、かつ/または
該アミノ酸が、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸がR、D、H、GまたはNから選択され、より好ましくは該アミノ酸がRまたはNから選択される、
該α/β加水分解酵素。
【請求項10】
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:6のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
【請求項11】
アミノ酸置換
・G→RおよびA→N、好ましくはG185RおよびA188N、
・G→SおよびA→R、好ましくはG185SおよびA188R、
・G→R、A→R、A→H、S→D、P→HおよびM→D、好ましくはG185R、A186R、A188H、S189D、P190HおよびM191D、
・V→A、G→R、A→N、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A188N、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→S、A→R、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185S、A188R、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G199E、I200A、H203NおよびQ205K
・V→A、G→R、A→R、A→H、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→R、A→R、A→H、S→D、P→H、M→D、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、S189D、P190H、M191D、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、ならびに/または
F→YおよびV→C、好ましくはF183YおよびV197C
を含む、前記請求項のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素。
【請求項12】
ゼアラレノン(ZEN)を分解するための、前記請求項のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素の使用。
【請求項13】
前記請求項のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素を含む組成物であって、好ましくは食品添加物もしくは飼料添加物または食品製品もしくは飼料製品である、該組成物。
【請求項14】
疾患の治療または予防において使用するための、前記請求項のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素または組成物。
【請求項15】
前記請求項のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素または組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明はα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法に関する。加えて、本発明は、本発明の方法によって得ることができるα/β加水分解酵素に関する。減少した総平均ハイドロパシー(grand average of hydropathy:GRAVY)値を有しかつ/または特定の変異を含むα/β加水分解酵素も提供される。加えて、本発明は、ゼアラレノン(ZEN)を分解するための本発明のα/β加水分解酵素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
説明
カビ毒は糸状菌によって産生される二次代謝産物である。カビ毒の重要な代表例は、かつてF‐2トキシンと呼ばれていたゼアラレノン(ZEN)である。これは、さまざまなフサリウム(Fusarium)真菌によって産生され、世界中に見いだすことができる。これらの真菌は、栽培植物、とりわけさまざまな種類の穀物などに感染するが、この場合、真菌の感染は通常、収穫前に発生し、その後、真菌の成長および/またはカビ毒の産生が貯蔵前に起こるか、または収穫後でも、貯蔵前もしくは不適切な貯蔵条件下のどちらかで起こりうる。国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations:FAO)は、世界中の農産物の25%がカビ毒で汚染されて、大きな経済的損失をもたらしていると推定している。8年にわたる国際的調査において、2004年1月から2011年12月までに合計19,757の試料が分析されたが、そのうちの72%は少なくとも1種のカビ毒について陽性と判定され、39%は共汚染されていることがわかり、37%はZENについて陽性と判定された(Schatzmayr and Streit(2013)「Global occurrence of mycotoxins in the food and feed chain:Facts and figures」World Mycotoxin Journal 6(3):213-222(非特許文献1))。ZENは、世界のあらゆる地域において、検査されたあらゆるタイプの穀物および飼料作物、例えばトウモロコシ、大豆粉、コムギ、DDGS(可溶性物質添加乾燥蒸留穀物残渣(dried distillers grains with solubles))中、ならびに動物用配合飼料完成品中に、最大100%の頻度で見いだされている。
【0003】
ZENはエストロゲン受容体に結合してホルモン撹乱の原因となる場合があり、哺乳動物では、経口摂取後直ちに吸収されて、2種の立体異性代謝産物α-ゼアラレノール(α-ZEL)および/またはβ-ゼアラレノール(β-ZEL)に変換される。例えば、α-ZELは、そしてまたα-ゼアララノール(α-ZAL)および/またはゼアララノン(ZAN)も、ZENと比べるとはるかに強いエストロゲン効果を有する。抱合されたZEN誘導体はZENそのものよりは低いエストロゲン活性を有するが、消化管ではZENがこれらの抱合ZEN誘導体から再び遊離することにより、その完全なエストロゲン活性を回復しうる。
【0004】
ZENは最大20,000mg/kg体重の経口LD50を有し、長期間にわたってばく露された動物またはヒトでは、催奇性効果、発癌性効果、エストロゲン効果および免疫抑制効果などの亜急性および/または亜慢性毒性を有する。ZENで汚染された飼料は哺乳動物では発育障害につながる。ブタ、特に子ブタは、ZENに対して極めて鋭敏である。試料中のZEN濃度が0.5ppmを超えると発育障害が起こり、1.5ppmを超える濃度はブタにおけるエストロゲン過剰をもたらしうる。ウシでは、濃度12ppmのZENが自然流産を引き起こしうる。
【0005】
ZENは、粘膜、特に胃粘膜ならびに口腔粘膜を通して素早く吸収されるので、即時の定量的な不活化が不可欠である。ZENは経口投与の30分後には早くも血流中に検出されうる。ZENの有害効果ゆえに、欧州連合には、食糧中のZENについて拘束力のある上限と、動物飼料製品中のZENについて上限に関する勧告とがある(EC No.1881/2006(非特許文献2))。
【0006】
食品および動物飼料製品のZEN汚染を低減するための主な戦略は、例えば「農業生産工程管理(good agricultural practice)」を維持することによって、真菌の成長を制限することである。これには、とりわけ、種子が病害虫および真菌の感染を含まないこと、または農業廃棄物が圃場から迅速に除去されることの徹底が含まれる。加えて、殺真菌剤の使用によって圃場における真菌の成長を低減することもできる。収穫後は、真菌の成長を防止するために、収穫物を15%未満の残留水分レベルおよび低温で貯蔵すべきである。また、真菌の感染によって汚染された材料は、さらなる加工の前に除去されるべきである。これら多くの予防措置にもかかわらず、最も高水準の農業規格を持つ北米および中欧などの地域においてさえ、2004年から2011年の間に、検査されたトウモロコシ試料の最大37%はZENで汚染されていることがわかった(Schatzmayr and Streit(2013))。
【0007】
上述の課題および不都合に対処するためには、ZENを解毒することができ、かつ食品添加物もしくは飼料添加物または食品製品もしくは飼料製品としての使用に適した、さらなるα/β加水分解酵素を開発することが必要であった。
【0008】
本発明の解決策を以下に説明し、実施例において例証し、図面に図解し、特許請求の範囲に反映させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Schatzmayr and Streit(2013)「Global occurrence of mycotoxins in the food and feed chain:Facts and figures」World Mycotoxin Journal 6(3):213-222
【非特許文献2】EC No.1881/2006
【発明の概要】
【0010】
本発明は、
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン(CAP-domain);SEQ ID NO:1のキャップドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法に関する。
【0011】
加えて、本発明は、本発明の方法によって得ることができるα/β加水分解酵素に関する。
【0012】
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素の総平均ハイドロパシー(GRAVY)値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素も提供される。
【0013】
本発明は、
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→NおよびQ→Kから選択され、かつ/または
該アミノ酸が、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸がR、D、H、GまたはNから選択され、より好ましくは該アミノ酸がRまたはNから選択される、
該α/β加水分解酵素にも関係する。
【0014】
本発明は、SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:6のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素にも関係する。
【0015】
加えて、本発明は、ZENを分解するための本発明のα/β加水分解酵素の使用に関する。
【0016】
さらに本発明は、本発明のα/β加水分解酵素を含む組成物に関し、好ましくは本組成物は食品添加物もしくは飼料添加物または食品製品もしくは飼料製品である。
【0017】
また本発明は、疾患の治療または予防に使用するための、本発明のα/β加水分解酵素または本発明の組成物に関する。
【0018】
さらに本発明は、本発明のα/β加水分解酵素または本発明の組成物を含むキットに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】キャップドメイン、VIドメインおよびキャップループ(CAP-loop)の位置。SEQ ID NO:1~6のキャップドメイン、VIドメインおよびキャップループのアミノ酸位置。
【
図2A】
図2A~2G:VIドメイン中および/またはキャップループ中のさまざまな変異と、それらがGRAVY値に及ぼす影響。
図2A:SEQ ID NO:1のVIドメイン中の改変がSEQ ID NO:1バリアントのGRAVY値に及ぼす影響。
【
図2B】
図2A~2G:VIドメイン中および/またはキャップループ中のさまざまな変異と、それらがGRAVY値に及ぼす影響。
図2B:SEQ ID NO:1のVIドメイン中の改変がSEQ ID NO:1バリアントのキャップドメインのGRAVY値に及ぼす影響。
【
図2C】
図2A~2G:VIドメイン中および/またはキャップループ中のさまざまな変異と、それらがGRAVY値に及ぼす影響。
図2C:SEQ ID NO:1のVIドメイン中の改変がSEQ ID NO:1バリアントのVIドメインのGRAVY値に及ぼす影響。
【
図2D】
図2A~2G:VIドメイン中および/またはキャップループ中のさまざまな変異と、それらがGRAVY値に及ぼす影響。
図2D:SEQ ID NO:1のキャップループ中の改変がSEQ ID NO:1バリアントのキャップループのGRAVY値に及ぼす影響。
【
図2E】
図2A~2G:VIドメイン中および/またはキャップループ中のさまざまな変異と、それらがGRAVY値に及ぼす影響。
図2E:SEQ ID NO:6のVIドメイン中の改変がSEQ ID NO:6バリアントのGRAVY値に及ぼす影響。
【
図2F】
図2A~2G:VIドメイン中および/またはキャップループ中のさまざまな変異と、それらがGRAVY値に及ぼす影響。
図2F:SEQ ID NO:6のVIドメイン中の改変がSEQ ID NO:6バリアントのVIドメインのGRAVY値に及ぼす影響。
【
図2G】
図2A~2G:VIドメイン中および/またはキャップループ中のさまざまな変異と、それらがGRAVY値に及ぼす影響。
図2G:SEQ ID NO:6のVIドメイン中の改変がSEQ ID NO:6バリアントのVIドメインのGRAVY値に及ぼす影響。
【
図3A】
図3A~3B:ポリペプチドSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:6を基準としてパーセントで表したZEN分解性ポリペプチドの温度安定性の増加。
図3A:ポリペプチドSEQ ID NO:1を基準としてパーセントで表したZEN分解性ポリペプチドの温度安定性(T(50%))の増加。
【
図3B】
図3A~3B:ポリペプチドSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:6を基準としてパーセントで表したZEN分解性ポリペプチドの温度安定性の増加。
図3B:ポリペプチドSEQ ID NO:6を基準としてパーセントで表したZEN分解性ポリペプチドの温度安定性(T(50%))の増加。
【
図4】pH7.5におけるインキュベーション後の活性と比較したpH4.0におけるインキュベーション後のZEN分解性ポリペプチドバリアントの活性(=pH安定性)。pH7.5におけるインキュベーション後の同じポリペプチドバリアントと比較してパーセントで表した、pH4.0におけるインキュベーション後のZEN分解性ポリペプチドバリアントの残存活性。親ポリペプチドSEQ ID NO:1の残存活性(pH安定性)は2.5%である。
【
図5】ブタ飼養試験からの試料を分析するための6500 QTrapでの選択反応モニタリングパラメータ。6500 QTrap質量分析計に接続されたAgilent 1290シリーズUHPLCシステムで、ブタ飼養試験からの試料の分析を行った。選択反応モニタリングパラメータを示す。プロダクトイオンは定量イオン/確認イオンとして記載されている。
【
図6】SEQ ID NO:1と比較したブタ飼養試験からの尿試料の分析結果。各群の尿試料中のZEN+α-ZELの合量を、6500 QTrap質量分析計に接続されたAgilent 1290シリーズUHPLCシステムで決定した(群ごとの平均:n=3)。対照群にはZEN含有食を給餌したが、ZEN分解性ポリペプチドは給餌しなかった。SEQ ID NO:1群、バリアントA群およびバリアントB群には、対照群と同じ食餌であって、表示のZEN分解性ポリペプチドを2.5U/kg、5U/kg、10U/kgまたは20U/kg食餌のいずれかでさらに含有するものを給餌した。SEQ ID NO:1と比較した尿中のZEN+α-ZELの量の変化をパーセントで表す。
【
図7】SEQ ID NO:1と比較したブタ飼養試験からの糞便試料の分析結果。凍結乾燥糞便1gあたりのZEN+α-ZELの合算濃度を、6500 QTrap質量分析計に接続されたAgilent 1290シリーズUHPLCシステムで決定した(群ごとの平均:n=3)。対照群にはZEN含有食を給餌したが、ZEN分解性ポリペプチドは給餌しなかった。SEQ ID NO:1群、バリアントA群およびバリアントB群には、対照群と同じ食餌であって、表示のZEN分解性ポリペプチドを2.5U/kg、5U/kg、10U/kgまたは20U/kg食餌のいずれかでさらに含有するものを給餌した。SEQ ID NO:1と比較した糞便中のZEN+α-ZELの濃度の変化をパーセントで表す。
【
図8】ブロイラー飼養試験の試料を分析するための6500 QTrapでの選択反応モニタリングパラメータ。ブロイラー飼養試験からの試料の分析を、6500 QTrap質量分析計に接続されたAgilent 1290シリーズUHPLCシステムで行った。選択反応モニタリングパラメータを示す。プロダクトイオンは定量イオン/確認イオンとして記載されている。
【
図9】SEQ ID NO:1と比較したブロイラー飼育試験からの作物試料の分析結果。凍結乾燥作物試料1kgあたりのZENの濃度を、6500 QTrap質量分析計に接続されたAgilent 1290シリーズUHPLCシステムで決定した(群ごとの平均:n=8)。対照群にはZEN含有食を給餌したが、ZEN分解性ポリペプチドは給餌しなかった。他の群には、対照群と同じ食餌であって、表示の酵素活性量のZEN分解性ポリペプチドバリアントBをさらに含有するものを給餌した。対照群と比較した作物中のZENの濃度の変化をパーセンテージで示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
驚いたことに、特定の領域、すなわちVIドメインおよびキャップループに本明細書記載の変異を含むα/β加水分解酵素は、向上した温度安定性および/またはpH安定性を呈することが見いだされた。理論に束縛されることは望まないが、VIドメインおよびキャップループは、酵素活性にとって、例えば酵素の活性部位への基質の進入にとって、重要な役割を果たしていると考えられる。酵素のこの部分の高い可動性は活性にとって正の影響を有しうるが、この可動性は安定性にとっては負の影響も有しうる。
【0021】
本発明者らは、SEQ ID NO:1のキャップドメインを145~218位のアミノ酸と同定し、SEQ ID NO:2のキャップドメインを144~217位のアミノ酸と同定し、SEQ ID NO:3、4および5のキャップドメインを145~218位のアミノ酸と同定し、SEQ ID NO:6のキャップドメインを161~235位のアミノ酸と同定した。さらに本発明者らは、SEQ ID NO:1のVIドメインをアミノ酸位置160~205と同定し、SEQ ID NO:2のVIドメインをアミノ酸位置159~204と同定し、SEQ ID NO:3、4および5のVIドメインをアミノ酸位置160~205と同定し、SEQ ID NO:6についてはアミノ酸位置176~222と同定した。具体的には、Phenixアンサンブルリファインメント(ensemble refinement)(https://www.phenix-online.org/;Burnley and Gros(2012)「phenix.ensemble_refinement:a test study of apo and holo BACE1」Computational crystallography newsletter,volume 4,pp.51-58)による動力学シミュレーションと例えばSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:6のバリアントのx線回折データとの組合せは、65の構造を生成させることにより、フレキシブルループを再現した。本明細書においてキャップループと定義されたアミノ酸位置185~191によって画定されるSEQ ID NO:1の領域はこのフレキシブルループの一部である(および、本明細書に記載されるSEQ ID NO:2~6において等価な位置によって画定される領域も同様である)。
【0022】
キャップドメイン中、特に本明細書において定義されるVIドメイン中、またはより具体的には本明細書において定義されるキャップループ中に導入される、本明細書記載の変異は、活性特性および/またはpH安定性を失うことなく、十分な温度安定性を提供するので、そのような酵素は、高温での技術的プロセスに使用することができる。
【0023】
食品産業および飼料産業では、微生物負荷量が低減している衛生化された製品(hygienized product)を生産するために、造粒などの熱処理がよく適用されるので、これは特に重要である。
【0024】
飼料の造粒は、流動性を向上させ、粉塵形成を低減し、微生物負荷量、特にサルモネラの負荷量、を低下させるために、とりわけ普及している標準化されたプロセスである。造粒プロセス中は、物品が、通常、高温蒸煮によって湿らされ、加熱された後、加圧下に鋳型(matrix)によってプレスされる。酵素またはポリペプチドのそのような熱処理は、しばしば、それらの酵素活性の低減および/またはそれらの非可逆的変性をもたらす。
【0025】
また、食品または飼料に応用した場合、酵素はしばしば、動物の消化管内の条件による不活化を受ける。特に、低pH環境は、酵素またはポリペプチドの酵素活性の一時的または永続的な低減、または排除さえ引き起こしうる。
【0026】
しかし、ZEN分解性酵素は通常、温度安定性および/またはpH安定性が低く、したがってそのままでは飼料または食品に混合することができない。したがって、食品または飼料を造粒するための添加剤としてのポリペプチドまたは酵素の使用は、相当な技術的難題に相当する。
【0027】
本明細書記載のα/β加水分解酵素は、とりわけ温度および/またはpH安定性に関して、増加した安定性を有し、それゆえに、食品および飼料生産プロセスにおける使用に、十分に適している。
【0028】
したがって本発明は、
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン;SEQ ID NO:1のキャップドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法に関し、好ましくは、該α/β加水分解酵素は、該アミノ酸を置換する前のα/β加水分解酵素と比較して増加した安定性を有し、かつ/または該アミノ酸置換を含まないα/β加水分解酵素と比較して増加した安定性を有する。
【0029】
本発明は、
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン;SEQ ID NO:6のキャップドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法にも関し、好ましくは、該α/β加水分解酵素は、該アミノ酸を置換する前のα/β加水分解酵素と比較して増加した安定性を有し、かつ/または該アミノ酸置換を含まないα/β加水分解酵素と比較して増加した安定性を有する。
【0030】
本明細書で使用される増加した安定性とは、本発明のα/β加水分解酵素がSEQ ID NO:1(同様にSEQ ID NO:3、4、5)の145~218位に対応する配列を含むα/β加水分解酵素よりも高い安定性を有することを意味しうる。上記に代えて、または上記に加えて、本明細書で使用される増加した安定性とは、本発明のα/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列を含むα/β加水分解酵素よりも高い安定性を有することを意味する。上記に代えて、または上記に加えて、α/β加水分解酵素はSEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列を含む。
【0031】
本明細書で使用される増加した安定性とは、本発明のα/β加水分解酵素がSEQ ID NO:1のα/β加水分解酵素よりも高い安定性を有することも意味しうる。上記に代えて、または上記に加えて、本明細書で使用される増加した安定性とは、本発明のα/β加水分解酵素がSEQ ID NO:2のα/β加水分解酵素よりも高い安定性を有することも意味しうる。上記に代えて、または上記に加えて、本明細書で使用される増加した安定性とは、本発明のα/β加水分解酵素がSEQ ID NO:6のα/β加水分解酵素よりも高い安定性を有することも意味しうる。
【0032】
これには、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素、例えば本発明の方法によって得られるもの、すなわち本発明のα/β加水分解酵素が、本明細書において開示される置換を含まないα/β加水分解酵素と比較して増加した安定性を有することも含まれる。また、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素、例えば本発明の方法によって得られるもの、すなわち本発明のα/β加水分解酵素は、本明細書において開示されるアミノ酸を置換する前のα/β加水分解酵素と比較して増加した安定性を有する。
【0033】
当業者にはさまざまなα/β加水分解酵素が知られており、それらはとりわけ、Lenfant et al.(2013)「ESTHER,the database of the α/β-hydrolase fold superfamily of proteins:tools to explore diversity of functions」Nucleic Acids Research,Volume 41,Issue D1,D423-D429およびMindrebo et al.(2016)「Unveiling the functional diversity of the Alpha-Beta hydrolase fold in plants」Curr Opin Struct Biol.233-246に記載されている。手短にいうと、すべてのα/β加水分解酵素はα/βフォールド(アルファ/ベータ-フォールド)と呼ばれる特殊な折りたたみの特徴を共通して持っている。α/β加水分解酵素フォールドは多様な系統的起源と触媒機能を持つ多くの加水分解酵素に共通している。各酵素のコアは(バレルではない)α/β構造であり、αヘリックス(aA~aF)によってつながれた8本のβストランド(b1~b8)を含有している(Ollis et al.(1992)「The alpha/beta hydrolase fold」Protein Eng.5(3):197-211)。したがって本明細書記載のα/β加水分解酵素はα/βフォールドを含みうる。本明細書記載のα/β加水分解酵素は、好ましくは、中央のβシートに配置された8本のβストランド(b1~b8)からなるα/β加水分解酵素コアドメインを含み、さらに6本のクロスオーバーαヘリックス(aA~aF)を含む。
【0034】
ファミリーメンバーの大半において、βストランドは平行に配向しているが、一部には第1ストランドの反転があって、逆平行配向になっている。このフォールドをとる酵素のプロトタイプは、第5βストランドと後続のαヘリックスの間のγターン(求核エルボー(nucleophile elbow))の頂部に位置する求核残基、酸性アミノ酸残基(グルタミン酸またはアスパラギン酸)およびヒスチジン残基で構成される触媒三残基(catalytic triad)を有する。他のいくつかのメンバーはこれら触媒残基のうちの1つまたは全部を欠く。それゆえにいくつかのメンバーは不活性であり、いくつかのメンバーは表面認識に関与する。本明細書記載のα/β加水分解酵素は、好ましくは、触媒三残基を含む。
【0035】
さまざまなクラスのα/β加水分解酵素のメンバーおよびそれらの構造的特徴は、とりわけ、Kourist et al.(2010)「The alpha/beta-hydrolase fold 3DM database(ABHDB)as a tool for protein engineering」Chembiochem.11(12):1635-43に記載されている。
【0036】
酵素として、α/β加水分解酵素は、エステル結合およびペプチド結合の加水分解を担っていると記載されることが多い。しかしα/β加水分解酵素は、炭素-炭素結合の切断、脱炭酸反応および複素芳香環の補因子非依存的二酸素添加にも参加する。したがってα/β加水分解酵素は、このスーパーファミリーにおける触媒的メンバー(酵素)である。非限定的な例は、加水分解酵素(アセチルコリンエステラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、ジエンラクトン加水分解酵素、リパーゼ、クチナーゼ、チオエステラーゼ、セリンカルボキシペプチダーゼ、プロリンイミノペプチダーゼ、プロリンオリゴペプチダーゼ、エポキシド加水分解酵素)と、反応機序にH2OではなくHCN、H2O2またはO2の活性化を必要とする酵素(ハロアルカンデハロゲナーゼ、ハロペルオキシダーゼ、ヒドロキシニトリルリアーゼ)である。非触媒的メンバーとしては、ニューロリギン、グルタクチン(glutactin)、ニューロタクチン、チログロブリンのC末ドメイン、卵黄タンパク質、CCG1相互作用因子BおよびジペプチジルアミノペプチダーゼVIを挙げることができる。
【0037】
ESTHERデータベースは、このスーパーファミリーの遺伝子配列およびタンパク質配列に関係する公開済の情報を集めて、注釈を付している。したがって当業者は、タンパク質のα/β加水分解酵素フォールドスーパーファミリーのデータベースであるESTHER(http://bioweb.supagro.inra.fr/ESTHER/general?what=index)から、α/β加水分解酵素を得ることもできる。
【0038】
当業者はα/β加水分解酵素がキャップドメインを含むかどうかを決定することもできる。これを行う方法の1つは実施例に記載され、または以下に説明するとおりである:
1. オンライン酵素データベース内で、または所与の配列をSEQ ID NO:1~6と比較することによって、α/β加水分解酵素を検索する。
2. そのα/β加水分解酵素がキャップドメイン、VIドメインまたはキャップループを含有するかどうかを、好ましくは実施例2に記載する手順を使って決定する。
3. キャップドメイン、VIドメインまたはキャップループを含有するα/β加水分解酵素がZENを加水分解できるかどうかを、好ましくは実施例4に記載する手順を使って決定する。
【0039】
本明細書で使用されるα/β加水分解酵素は、
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン)
を含む。したがって、この配列を含むα/β加水分解酵素はいずれも、α/β加水分解酵素という用語に包含される。この配列はSEQ ID NO:1のα/β加水分解酵素のキャップドメインに対応する。
【0040】
上記に加えて、または上記に代えて、本明細書で使用されるα/β加水分解酵素は、
SEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列、または
SEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン)
も含むことができる。したがって、この配列を含むα/β加水分解酵素はいずれも、α/β加水分解酵素という用語に包含される。この配列はSEQ ID NO:2のα/β加水分解酵素のキャップドメインに対応する。
【0041】
上記に加えて、または上記に代えて、本明細書で使用されるα/β加水分解酵素は、
SEQ ID NO:3、4もしくは5の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:3、4もしくは5の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン)
を含むこともできる。したがって、この配列を含むα/β加水分解酵素はいずれも、α/β加水分解酵素という用語に包含される。この配列はSEQ ID NO:3、4または5のα/β加水分解酵素のキャップドメインに対応する。
【0042】
上記に加えて、または上記に代えて、本明細書で使用されるα/β加水分解酵素は、
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン)
も含むことができる。したがって、この配列を含むα/β加水分解酵素はいずれも、α/β加水分解酵素という用語に包含される。この配列はSEQ ID NO:6のα/β加水分解酵素のキャップドメインに対応する。
【0043】
例えば、α/β加水分解酵素は、SEQ ID NO:1の配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、α/β加水分解酵素は、SEQ ID NO:2の配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、α/β加水分解酵素は、SEQ ID NO:3、4および/または5の配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、α/β加水分解酵素は、SEQ ID NO:6の配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。
【0044】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書において使用される場合、ペプチド、タンパク質、またはポリペプチドを意味し、これらは、相互可換的に使用され、所与の長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基はペプチド共有結合によって連結されている。セレノシステインなど、当業者に公知の標準遺伝コードの20種のタンパク質構成アミノ酸以外のアミノ酸も、本発明に包含される。そのようなポリペプチドはSEQ ID NO:1~6のいずれかを含む。
【0045】
ポリペプチドという用語は、ポリペプチドの修飾体も指し、ポリペプチドの修飾体を排除しない。修飾には、グリコシル化、アセチル化、アシル化、リン酸化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合的橋かけ結合の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、フォーミュレーション(formulation)、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA媒介付加、例えばアルギニル化、およびユビキチン化が含まれる。例えばPROTEINS-STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993)、POST-TRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York(1983),pgs.1-12、Seifter,Meth.Enzymol.182(1990);626-646、Rattan,Ann.NY Acad.Sci.663(1992);48-62を参照されたい。
【0046】
本発明によれば、SEQ ID NO:1~6などの2つ以上のポリペプチド配列との関連において「同一」または「同一性パーセント」という用語は、当技術分野において公知の配列比較アルゴリズムを使った評価で、または手作業によるアラインメントと目視点検とによる評価で、比較ウインドウ全体にわたって、または指定された領域全体にわたって、最大の一致が得られるように比較し、アラインメントした場合に、同じであるか、または指定されたパーセンテージのヌクレオチドが同じである(例えば少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性)、2つ以上の配列または部分配列を指す。80%~95%以上の配列同一性を有する配列は実質的に同一であるとみなされる。そのような定義は試験配列の相補鎖にも適用される。例えば、CLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson Nucl.Acids Res.2(1994),4673-4680)またはFASTDB(Brutlag Comp.App.Biosci.6(1990),237-245)に基づくものなど、当技術分野において公知のアルゴリズムを使うなどして、配列間の同一性パーセントを決定する方法は、当業者にはわかるだろう。
【0047】
当業者はBLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.6アルゴリズム(Altschul Nucl.Acids Res.25(1977),3389-3402)も利用することができる。アミノ酸配列用のBLASTPプログラムは、デフォルト値として、ワードサイズ(W)6、期待値のしきい値10、および両鎖の比較を使用する。さらにまた、BLOSUM62スコアリング行列(Henikoff Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89,(1989),10915、Henikoff and Henikoff(1992)「Amino acid substitution matrices from protein blocks」Proc Natl Acad Sci USA.1992 Nov 15;89(22):10915-9)を使用することができる。
【0048】
例えば、ローカル配列アラインメントを検索するには、Basic Local Alignment Search Toolを意味するBLAST2.6(Altschul,Nucl.Acids Res.25(1997),3389-3402、Altschul,J.Mol.Evol.36(1993),290-300、Altschul,J.Mol.Biol.215(1990),403-410)を使用することができる。
【0049】
本明細書で使用される「キャップドメイン」は、Kourist et al.(2010)「The alpha/beta-hydrolase fold 3DM database(ABHDB)as a tool for protein engineering」Chembiochem.11(12):1635-43のFig 1、またはCarr and Ollis(2009)「α/β Hydrolase Fold:An Update」Protein&Peptide Letters,2009,16(10):1137-1148に記載されているα/β加水分解酵素のキャップドメインに関する。また、例えばOllis et al.(1992)「The alpha/beta hydrolase fold」Protein Eng.5(3):197-211に記載されているように、キャップドメインが、α/β加水分解酵素のβシートとαヘリックスの間の、例えばb6とaDの間の、可動領域(excursion)内に位置しうることも想定される。例えば、キャップドメインは、α/β加水分解酵素コアドメインのb6 βストランドのC末端のすぐ後ろで始まることができ、α/β加水分解酵素コアドメインのaD αヘリックスのN末開始点まで及ぶことができる。キャップドメインはαヘリックスを含みうると想定される。ただしキャップドメインはβシートまたは他のタンパク質構造も含みうる。
【0050】
本発明の方法は、α/β加水分解酵素の
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を必要とする。これらの位置はすべてVIドメイン内に位置する。
【0051】
本明細書で使用される時、「VIドメイン」は、キャップドメインの一部である。したがってキャップドメインはVIドメインを含む。このVIドメインは、キャップドメイン中に存在するQXAGPモチーフ(SEQ ID NO:7)後の最初のアミノ酸で始まることができ、EYDPEモチーフ(SEQ ID NO:8)前の最後のアミノ酸まで及ぶことができるが、EYDPEモチーフはVIドメインの一部ではない。本明細書の表2に示す配列ではこれらのモチーフに下線が付されている。
【0052】
例えばVIドメインは、SEQ ID NO:1の160~205位に対応する配列を含むか、またはSEQ ID NO:1の160~205位に対応する配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、VIドメインはSEQ ID NO:2の159~204位に対応する配列を含むか、またはSEQ ID NO:2の159~204位に対応する配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、VIドメインはSEQ ID NO:3、4および/または5の160~205位に対応する配列を含むか、またはSEQ ID NO:3、4および/または5の160~205位に対応する配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、VIドメインはSEQ ID NO:6の176~222位に対応する配列を含むか、またはSEQ ID NO:6の176~222位に対応する配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。
【0053】
「位置」という用語が、本発明に従って使用される場合、それは、本明細書に示すアミノ酸配列内でのアミノ酸の位置を意味する。本明細書において使用する「対応する」という用語には、位置が、先行するアミノ酸の数だけで決定されるわけではないことも含まれる。置換されうる所与のアミノ酸の位置は、本発明では、(変異型または野生型の)α/β加水分解酵素中のどこかにあるアミノ酸の欠失またはアミノ酸の追加により、変動しうる。
【0054】
したがって、本発明に従う「対応する位置」下では、アミノ酸は、表示される番号は異なりうるが、それでもなお、類似する隣接アミノ酸を有しうると理解されることが好ましい。交換、欠失または付加を受けうる該アミノ酸も、「対応する位置」に含まれる。具体的に述べると、本明細書において指定されるアミノ酸位置(すなわちSEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列の185位および/または188位に対応する位置)を探す場合、当業者は、リファレンス配列(対象配列)、例えばSEQ ID NO:1~6のうちのいずれか1つ、好ましくはSEQ ID NO:1を、関心対象のアミノ酸配列(クエリ配列)とアラインメントしてから、例えば関心対象の配列をSEQ ID NO:1の配列(またはこのタンパク質をコードする対応するアミノ酸配列)について点検することができる。
【0055】
本発明の方法において、アミノ酸は、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、該ハイドロパシーインデックスは、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定される。
【0056】
本明細書で使用される時、「アミノ酸置換」とは、特定されたSEQ ID NOの対応する位置と比較した場合の、例えばSEQ ID NO:1~6の、本明細書において表示された位置のいずれか1つと比較した場合の、アミノ酸の置き換えを意味する。例えば一態様において、置き換えは、SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置と比較した場合の、アミノ酸のアミノ酸置換である。
【0057】
「ハイドロパシーインデックス」は、本明細書では「ハイドロパシー値」ともいい、アミノ酸の側鎖の疎水性または親水性を表す数字である。具体的には、ハイドロパシーインデックスでは、各アミノ酸に、その相対的ハイドロパシーを反映する値が割り当てられている。したがってアミノ酸のハイドロパシーはハイドロパシーインデックスによって決定することができる。アミノ酸のこのハイドロパシーインデックスはJack KyteとRussell F.Doolittleによって提唱された(Kyte and Doolittle(1983)「A simple method for displaying the hydropathic character of a protein」J.Mol.Biol.157(1):105-32)。最も負でないハイドロパシーインデックスを持つアミノ酸はイソロイシン(4.5)およびバリン(4.2)である。KyteとDoolittleによれば、最も負のハイドロパシーインデックスを持つアミノ酸はアルギニン(-4.5)およびリジン(-3.9)である。ハイドロパシーインデックスはタンパク質構造において重要であると考えられている。ハイドロパシーインデックスが負でないアミノ酸ほど(タンパク質の三次元形状に関して)内部にある傾向が高く、一方、ハイドロパシーインデックスが負であるアミノ酸ほど、タンパク質表面上に見いだされることが多い。KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスは、本明細書において表1に要約されている。
【0058】
(表1)KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックス
【0059】
少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個またはそれ以上のアミノ酸が置換されることが、さらに想定される。
【0060】
本方法では、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程も想定される。これらの位置はいずれもキャップループ内に位置する。
【0061】
これに関連して、キャップドメインおよびVIドメインはループ(配列/ドメイン)をさらに含みうることに留意されたい。この「ループ」は、本明細書では「キャップループ」ともいい、VIドメイン中に存在するG(F/Y)XXAA(SEQ ID NO:9)モチーフ後の最初のアミノ酸の後に始まり、ARXFモチーフ(SEQ ID NO:10)(SEQ ID NO:6の場合はQLFPモチーフ(SEQ ID NO:11))の前の最後のアミノ酸までにまたがりうるが、ARXFモチーフ(SEQ ID NO:6の場合はQLFPモチーフ)はキャップループの一部ではない。下記表2ではこれらのモチーフのすべてに下線が付されている。
【0062】
例えばキャップループは、SEQ ID NO:1の185~191位に対応する配列を含むか、またはSEQ ID NO:1の185~191位に対応する配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、キャップループは、SEQ ID NO:2の184~190位に対応する配列を含むか、またはSEQ ID NO:2の184~190位に対応する配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、キャップループは、SEQ ID NO:3、4および/または5の185~191位に対応する配列を含むか、またはSEQ ID NO:3、4および/または5の185~191位に対応する配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。上記に加えて、または上記に代えて、キャップループは、SEQ ID NO:6の201~208位に対応する配列を含むか、またはSEQ ID NO:6の201~208位に対応する配列に対して少なくとも58%、59%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を含むことができる。
【0063】
したがって本明細書記載のα/β加水分解酵素は、本明細書記載のVIドメインおよび/またはキャップループを含むことができる。
【0064】
アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、T、G、A、M、C、F、LまたはVから選択されるアミノ酸で置換されることも考えられる。
【0065】
アミノ酸は、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、TまたはGから選択されるアミノ酸で置換されることが、さらに想定される。
【0066】
アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、HまたはPから選択されるアミノ酸で置換されることも考えられる。
【0067】
アミノ酸は、R、K、D、Q、D、N、E、P、G、T、SまたはHから選択されるアミノ酸で置換されることが、さらに想定される。
【0068】
アミノ酸が、S、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換されることも考えられる。アミノ酸は、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換することもできる。
【0069】
アミノ酸が、P、S、RまたはHから選択されるアミノ酸で置換されることも考えられる。アミノ酸をRまたはNから選択されるアミノ酸で置換することもできる。
【0070】
アミノ酸置換は、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→N、Q→K、F→Yおよび/またはV→Cのうちの1つまたは複数から選択されることが、さらに想定される。
【0071】
アミノ酸置換は、V160A、G185R、G185S、A186P、A186R、A188D、A188H、A188N、A188G、A188R、S189D、P190H、M191D、G199E、I200A、I200V、H203N、Q205K、F183Yおよび/またはV197Cのうちの1つまたは複数から選択することもできる。
【0072】
アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→Nおよび/またはQ→Kのうちの1つまたは複数から選択されることも想定される。アミノ酸置換は、V160A、G185R、G185S、A186P、A186R、A188D、A188H、A188N、A188G、A188R、S189D、P190H、M191D、G199E、I200A、I200V、H203Nおよび/またはQ205Kのうちの1つまたは複数から選択することもできる。
【0073】
アミノ酸置換は、G185R、A186R、A188R、A188D、A188H、A188Nおよび/またはM191Dから選択することもできる。
【0074】
アミノ酸は、R、D、H、G、NまたはPから選択されるアミノ酸で置換されることが、さらに想定される。
【0075】
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程であって、該アミノ酸が、R、D、H、G、NまたはPから選択されるアミノ酸で置換される、該工程を、本発明の方法が含むことも考えられる。
【0076】
本発明はα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法に関する。安定性の増加は、GRAVY値の減少、pH安定性の増加および/または温度安定性の増加であることができる。
【0077】
本明細書において使用されるタンパク質の「GRAVY値」は、その相対的な疎水性または親水性の尺度である。ハイドロパシースケールまたはハイドロパシーインデックスではこれら2つの尺度が組み合わされている。KyteとDoolittleによれば(Kyte J,Doolittle RF(May 1983)「A simple method for displaying the hydropathic character of a protein」J.Mol.Biol.157(1):105-32)、GRAVY値は、各残基のハイドロパシー値(ハイドロパシーインデックス、上記表1参照)を足し、配列中の残基の数で割ることによって計算される。したがってGRAVY値は(KyteとDoolittleの計算に従って)すべてのアミノ酸のハイドロパシー値(インデックス)の和を配列中のアミノ酸残基の数で割ったものによって計算することができる。本明細書において使用する時、「温度安定性」という用語は、高温への一時的ばく露後にそれぞれの触媒活性を維持する酵素の特性を指す。温度安定性は、10分間の熱処理の前後で、または熱処理することなく同一の所定の条件において、酵素溶液またはポリペプチド溶液の酵素活性を測定し、比較することによって決定される。
【0078】
具体的には、温度安定性は以下のように測定することができる。ポリペプチドを試料緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含有するpH7.5のTeorell Stenhagen緩衝液(Stenhagen&Teorell.(1938)Nature 141,415))で濃度が0.001526923U/mlになるように希釈し、さらなる使用まで氷上に保つ。希釈ポリペプチドの50μlアリコート40個を、4本の12連チューブストリップ(例えばstarlab製)のチューブに、各ストリップの最初と最後のチューブを省いて移す。これらのストリップを12連キャップ(例えばstarlab製)で密封する。陽性対照として、希釈酵素溶液の50μlアリコート4つを4本のPCRチューブに移す。すべてのPCRチューブおよびストリップを、温度インキュベーション工程が開始されるまで、氷上に保つ。陰性対照として、試料緩衝液の50μlアリコート4つを4本のPCRチューブに移す。これらのチューブは25℃で保存する。
【0079】
4本の12連チューブストリップを、予熱した勾配機能付きPCRサイクラー(例えばEppendorf Mastercycler gradient)において、選ばれた温度±10℃でインキュベートする。PCRサイクラーのサーモブロックに沿った温度勾配(選ばれた温度の±10℃)は、PCRサイクラーによって自動的に計算される。陽性対照が入っているPCRチューブを氷上でインキュベートし、陰性対照が入っているものを25℃でインキュベートする。0分後、5分後、10分後および20分後に、1本のPCRストリップと1つの陰性対照チューブを移動させて、インキュベーションの終了時点、すなわちインキュベーションの開始から20分後まで、氷上に保つ。すべてのインキュベーション工程が終了して、すべてのストリップおよびチューブが氷上に移動した後に、ZEN分解アッセイを開始する。
【0080】
ZEN分解アッセイ緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンと5.3ppmのZENとを含有するTeorell Stenhagen緩衝液、pH7.5)を調製し、アッセイ緩衝液の660μlアリコートを48本の反応チューブに移す。チューブを密封し、ZEN分解アッセイの開始まで25℃に保つ。分解アッセイのために、PCRストリップからの40の温度処理済試料各40μl、4つの陰性対照各40μlおよび4つの陽性対照各40μlを、660μlのアッセイ緩衝液が入っている前記チューブに加えることにより、アッセイ反応中、5ppmの最終ZEN濃度にする。また、ポリペプチドの最終濃度も、これにより、ZENを3時間以内に効率よく分解するもの(すなわち90%~100%のZEN分解)になる。
【0081】
温度処理済試料、陽性対照または陰性対照のいずれかをアッセイ緩衝液に加えることによって、分解アッセイを開始する。前もって温めておいた37℃の水浴でZEN分解反応をインキュベートする。分解反応を開始した直後に、約2秒間のボルテックスによってそれを混合し、100μlの0時間試料を新しい反応チューブに移す。0.5時間、1.0時間、2.0時間および3.0時間後に、追加の試料をZEN分解アッセイ反応から抜き取る。試料を分解反応から抜き取ったらすぐに、この試料中の酵素を、99℃で10分間のインキュベーションによって熱失活させる。次に、チューブを遠心分離(2分、25℃、14674×g)し、上清のうち90μlを、インサート付きHPLCバイアルに移す。これらのHPLCバイアルを実施例4で述べるHPLC-DAD測定まで4℃で保存する。
【0082】
ZEN分解試料のHPLC-DAD分析によって決定されるZEN濃度の直線的減少を使って、酵素活性を1リットルあたりの単位数(U/l)で計算する。1単位は、記載の条件下で1μmolのZENを1分間で分解する酵素活性の量と定義される。さまざまな温度での0分、5分、10分および20分間のインキュベーション後の残存活性は、次のように計算される:温度処理済試料中の酵素活性を陽性対照の酵素活性の平均値で割り、100を掛ける。
【0083】
温度安定性(T(50%))は、10分間のインキュベーション後にポリペプチドが陽性対照と比較して50%の残存活性を有する温度と定義される。以下の例が説明に役立つ:親酵素は氷上で10分間のインキュベーション後に50U/mlの酵素活性を有し、59.3℃における10分間のインキュベーション後に25U/mlの活性を有するので、T(50%)値は59.3℃である。酵素バリアントが61.0℃のT(50%)値を有するとすると、親酵素と比較した温度安定性(T(50%))の相対的増加は2.9%である。これは、2つのT(50%)値の間の1.7℃という差を59.3℃という親酵素のT(50%)で割って、100を掛けることによって得られる。
【0084】
したがって、本明細書で使用される温度安定性は、20℃~85℃の範囲から選択された温度に一時的にばく露した時の、不活化に対する酵素活性の耐性の尺度である。10分間のインキュベーション後に熱処理酵素の残存活性が50%になる温度を、陽性対照と比較することができる。ポリペプチドバリアントのT(50%)の、その親ポリペプチドを基準とする増加は、本明細書では、温度安定性の増加と定義され、百分率値として相対的に表示するか、または摂氏温度で絶対的に表示することができる。
【0085】
本明細書において使用する「pH安定性」という用語は、一定のpHにおける一時的インキュベーション後のそれぞれの触媒活性を維持するポリペプチドの特性を指し、したがって、一定のpHで一時的にインキュベートした後のポリペプチドの残存活性に反映される。一定のpHでのインキュベーション後の残存活性は、さまざまなpHの緩衝液における60分間のインキュベーション後のポリペプチド溶液のZEN分解酵素活性を、pH7.5の緩衝液における60分間のインキュベーション後の同じポリペプチドの溶液における酵素活性と比較することによって決定される。pH安定性は、一定のpH環境への一時的ばく露に対する酵素の耐性の尺度である。pH安定性の増加は、親酵素バリアントのpH4.0におけるインキュベーション(=pH処理)後の残存活性と比較した、ポリペプチドバリアントのpH4.0におけるインキュベーション後の残存活性の増加と定義される。
【0086】
pH安定性は以下のように測定することができる。ZEN分解性ポリペプチドを、さまざまなpH値の緩衝溶液中で、1時間インキュベートする。ポリペプチドバリアントを含有するアリコートを、8つの異なるpH値を持つインキュベーション緩衝液が入っている8本の試料チューブに移す。インキュベーション緩衝液は、ミルクを含まない50%濃度の摂食時人工胃液中期緩衝液(Fed State Simulated Gastric Fluid middle Buffer)である(Jantratid et al.(2008)「Dissolution media simulating conditions in the proximal human gastrointestinal tract:an update」Pharm Res.2008 Jul;25(7):1663-76))。8本の試料チューブ中のインキュベーション緩衝液のpH値は、3.5、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0および6.0のいずれかに設定される。陽性対照として、ポリペプチドバリアントのアリコートの1つは、試料緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含有するTeorell Stenhagen緩衝液、pH7.5)が入っている1本のチューブに移す。陰性対照としては、100μlの試料緩衝液を、予め温めておいた水浴中、37℃で1時間インキュベートする。インキュベーション後に、試料を、アッセイ緩衝溶液中のZENを分解するそれらの能力について、本明細書の他の項の記載と同様にして、または実施例(例えば実施例4)で述べるように、検査する。ZEN分解アッセイ緩衝液の添加により、すべての試料において、pH7.5の一定したpHが保証される。ZEN分解アッセイ反応の全体にわたって試料を採取し、ZEN、ゼアラレノン加水分解物(hydrolyzed zearalenone:HZEN)および脱炭酸ゼアラレノン加水分解物(decarboxylated hydrolyzed zearalenone:DHZEN)の濃度を、HPLC-DAD測定を使って、例えば実施例4で述べるように分析する。活性は例えば実施例4で述べるように計算される。
【0087】
pH安定性の増加は、同じ処理後の非変異親酵素溶液の残存活性と比較した、pH4.0におけるインキュベーション後のポリペプチド溶液の残存活性の増加と定義される。残存活性は、pH処理したポリペプチド溶液の活性の、pH7.5におけるインキュベーション後の同じポリペプチドバリアント溶液の活性との比較によって定義される。残存活性は次のように計算される:pH処理した試料の酵素活性を、pH7.5においてインキュベートした対照の酵素活性で割り、100を掛ける。以下の例が説明に役立つ:pH4.0におけるインキュベーション後のポリペプチド試料の酵素活性が0.5U/lであり、pH7.5におけるインキュベーション後のポリペプチドの酵素活性が2.7U/lであるとすると、残存活性は18.5%である。pH4.0におけるインキュベーション後のSEQ ID NO:1の親ポリペプチドの残存活性が2.5%と測定されるとすると、親ポリペプチドと比較した該ポリペプチドバリアントのpH安定性の増加は7.4倍である。
【0088】
本発明は、本明細書記載の方法によって得ることができるα/β加水分解酵素にも関する。
【0089】
本発明は、
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素にも関係する。
【0090】
本発明は、
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:6のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素にも関係する。
【0091】
α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して、少なくとも3.0%、4.2%、4.8%、6.0%、6.6%、7.8%、10.2%、12.0%またはそれ以上低いGRAVY値を有することも考えられる。
【0092】
α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:6のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して、少なくとも1.0%、2.0%、2.5%、2.6%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、6.8%またはそれ以上低いGRAVY値を有することも考えられる。
【0093】
本発明は、
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→NおよびQ→Kから選択され、かつ/または
該アミノ酸が、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸がR、D、H、GまたはNから選択され、より好ましくは該アミノ酸がRまたはNから選択される、
該α/β加水分解酵素にも関する。そのようなα/β加水分解酵素は、これらの置換を有しない同じα/β加水分解酵素またはこれらの置換を導入する前の同じα/β加水分解酵素よりも高い安定性を有しうる。例えばそのようなα/β加水分解酵素は、SEQ ID NO:1のα/β加水分解酵素と比較して、より高い安定性を有しうる。
【0094】
本発明は、
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該アミノ酸置換が、F→YまたはV→Cから選択される、
該α/β加水分解酵素にも関する。そのようなα/β加水分解酵素は、これらの置換を有しない同じα/β加水分解酵素またはこれらの置換を導入する前の同じα/β加水分解酵素よりも高い安定性を有しうる。例えばそのようなα/β加水分解酵素は、SEQ ID NO:6のα/β加水分解酵素と比較して、より高い安定性を有しうる。
【0095】
本明細書記載のα/β加水分解酵素は、アミノ酸置換
・G→RおよびA→N、好ましくはG185RおよびA188N、
・G→SおよびA→R、好ましくはG185SおよびA188R、
・G→R、A→R、A→H、S→D、P→HおよびM→D、好ましくはG185R、A186R、A188H、S189D、P190HおよびM191D、
・V→A、G→R、A→N、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A188N、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→S、A→R、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185S、A188R、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→R、A→R、A→H、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、ならびに/または
F→YおよびV→C、好ましくはF183YおよびV197C
を含むことが想定される。
【0096】
本発明は、本明細書記載のα/β加水分解酵素をコードする核酸分子にも関する。本核酸は発現ベクター中に導入または挿入されうる。「発現ベクター」という用語は、インビボまたはインビトロで遺伝子を発現させることができる核酸分子コンストラクトを指す。特にこれは、ポリペプチドコードヌクレオチド配列がゲノムに組み込まれて、または染色体外の空間に自由に位置して、細胞内でポリペプチドコードヌクレオチド配列を発現させ、任意でポリペプチドを細胞外に輸送するように、ポリペプチドコードヌクレオチド配列を宿主細胞中に移行させるのに適したDNAコンストラクトを包含しうる。
【0097】
本明細書記載の発現ベクターは宿主細胞中で発現されうる。「宿主細胞」という用語は、発現させようとするヌクレオチド配列または発現ベクターのどちらかを含有し、本発明の酵素またはポリペプチドを産生することができる、すべての細胞を指す。特にこれは、原核細胞および/または真核細胞、好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、トリコデルマ(Trichoderma)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アスペルギルス(Aspergillus)、植物細胞および/またはバチルス、トリコデルマまたはアスペルギルスの胞子を指す。本明細書において使用するP.パストリス(P.pastoris)という名称は、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)という名称と同義であって、P.パストリスの方が古く、K.パストリス(K.pastoris)は体系的に新しい名前である(Yamada et al.(1995)「The Phylogenetic Relationships of Methanol-assimilating Yeasts Based on the Partial Sequences of 18S and 26S Ribosomal RNAs:The Proposal of Komagataella Gen.Nov.(Saccharomycetaceae)」Bioscience,Biotechnology and Biochemistry,Vol.59,issue 3,pp.439-444)。特筆すべきことに、コマガタエラ・パストリスは最近、コマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffii)に帰属変更されている(Kurtzman(2009)「Biotechnological strains of Komagataella(Pichia)pastoris are Komagataella phaffii as determined from multigene sequence analysis」J Ind Microbiol Biotechnol.36(11):1435-8)。本明細書で使用されるコマガタエラ・ファフィは、例えばコマガタエラ・ファフィCBS7435株、コマガタエラ・ファフィGS115株またはコマガタエラ・ファフィJC308株を指しうる。
【0098】
本発明は、ゼアラレノン(ZEN)を分解するための本明細書記載のα/β加水分解酵素の使用にも関係する。
【0099】
ZENは、ポリケチド代謝経路によって合成される、以下の構造式:
を持つ非ステロイド性エストロゲン性大環状ラクトンであり、IUPAC命名法によるその名称は(2E,11S)-15,17-ジヒドロキシ-11-メチル-12-オキサビシクロ[12.4.0]オクタデカ-1(18),2,14,16-テトラエン-7,13-ジオンである。
【0100】
しかし、さまざまなZEN誘導体も自然界に存在し、それらはZENの酵素的修飾または化学的修飾によって形成されうる。例としては、とりわけ、真菌、植物または哺乳動物の代謝によって形成されるグリコシドZEN抱合体または硫酸基を含有するもの、ならびにヒトまたは動物体において形成されるZEN代謝産物が挙げられる。ZEN誘導体は、以下では、天然に存在するかまたは化学合成もしくは生化学合成によって合成されるZEN抱合体またはZEN代謝産物であるが、とりわけα-ゼアラレノール(α-ZEL;(2E,7R,11S)-7,15,17-トリヒドロキシ-11-メチル-12-オキサビシクロ[12.4.0]-オクタデカ-1(18),2,14,16-テトラエン-13-オン)、β-ゼアラレノール(β-ZEL;(2E,7S,11S)-7,15,17-トリヒドロキシ-11-メチル-12-オキサビシクロ[12.4.0]オクタデカ-1(18),2,14,16-テトラエン-13-オン)、α-ゼアララノール(α-ZAL;(7R,11S)-7,15,17-トリヒドロキシ-11-メチル-12-オキサビシクロ[12.4.0]オクタデカ-1(18),14,16-トリエン-13-オン)、β-ゼアララノール(β-ZAL;(7S,11S)-7,15,17-トリヒドロキシ-11-メチル-12-オキサビシクロ[12.4.0]オクタデカ-1(14),15,17-トリエン-13-オン)、ゼアラレノン14-サルフェート(Z14S;[(2E,11S)-15-ヒドロキシ-11-メチル-7,13-ジオキソ-12-オキサビシクロ[12.4.0]オクタデカ-1(18),2,14,16-テトラエン-17-イル]ハイドロゲンサルフェート)、ゼアラレノン-14-グリコシド(Z14G;(2E,11S)-15-ヒドロキシ-11-メチル-17-[(3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)-テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-12-オキサビシクロ[12.4.0]オクタデカ1(18)2,14,16-テトラエン-7,13-ジオン)ならびにゼアララノン(ZAN;(11S)-15,17-ジヒドロキシ-11-メチル-12-オキサビシクロ-[12.4.0]オクタデカ-1(18),14,16-トリエン-7,13-ジオン)であると理解される。
【0101】
ZENならびにZEN誘導体、特にα-ZEL、β-ZEL、Z14S、α-ZAL、β-ZAL、Z14GおよびZANは、化学的安定性および物理的安定性が高いので、パンまたはビールなどの加工食品および動物飼料製品にも検出されうる。
【0102】
ZENおよびZEN誘導体の加水分解は配列ID番号1~6のポリペプチドのいずれかで達成される。ZENまたはその誘導体の加水分解は、以下の反応機序:
に従って、エステル基で起こると考えられる。ZENの加水分解による無毒性のゼアラレノン加水分解物(HZEN)および/またはZEN誘導体加水分解物の形成は、本発明のα/β加水分解酵素によって起こりうる。脱炭酸ZEN加水分解物(DHZEN)および/または脱炭酸ZEN誘導体加水分解物へのHZENのさらなる脱炭酸は自発的に起こると考えられる。
【0103】
本明細書記載のα/β加水分解酵素は、ZENを分解する能力を有し、ZENを分解するのに適している。例えばα/β加水分解酵素は、ZENおよび/またはその誘導体のエステル基の補因子を必要としない酸素非依存的加水分解切断に適しうる。
【0104】
ZEN分解は、0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含むTeorell Stenhagen緩衝液(pH7.5)に、37℃の温度で、本発明のα/β加水分解酵素を加えることによって測定することができる。反応における初期基質濃度は15.71μM ZENである。反応から抜き取った試料からは、HPLCまたは当業者に周知の他の方法を使って、ZEN、HZEN、DHZENおよび/または他の誘導体を検出することができる。
【0105】
具体的には、ZEN分解は、試料緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含有するTeorell Stenhagen緩衝液(Stenhagen&Teorell.(1938)Nature 141,415)、pH7.5)中、37℃の温度で3時間にわたって、以下のように測定することができる。ポリペプチド/酵素を試料緩衝液で希釈し、使用するまで氷上で保存する。陰性対照としては、5μg/ml ZENを含有する試料緩衝液をインキュベートする。分解アプローチの場合、5μg/ml ZENを含有する試料緩衝液をポリペプチド/酵素溶液と混合することで、利用可能なZENを3時間以内に90%~100%程度まで分解する最終酵素濃度にする。分解アプローチにポリペプチド/酵素を加えることで、反応を開始させる。陰性対照には酵素を加えない。各反応を開始した直後に、約2秒間ボルテックスし、0時間試料(100μl)を新しい反応チューブに移す。予め温めておいた37℃の水浴で反応をインキュベートし、99℃で10分間のインキュベーションによって試料を熱失活させ、遠心分離(2分、25℃、14674×g)し、90μlの上清をインサート付きHPLCバイアルに移す。試料をHPLC-DAD測定まで4℃で保存する。0.5時間、1.0時間、2.0時間および3.0時間後に試料採取を繰り返す。
【0106】
ZEN、HZENおよびDHZENの濃度は、Vekiruらが記載しているように、HPLC-DADで分析することができる(Vekiru et al.(2016)「Isolation and characterisation of enzymatic zearalenone hydrolysis reaction products」World Mycotoxin Journal 9:353-363)。分析は、274nmで作動するダイオードアレイ検出器(diode array detector:DAD)を装着したAgilent 1100シリーズHPLCで行われる。溶媒A:20%メタノール/水+5mM酢酸アンモニウムおよび溶媒B:90%メタノール/水+5mM酢酸アンモニウムならびに以下の勾配を使用し、35℃において、Zorbax SB-Aq、4.6×150mm、5μmカラム(Agilent Technologies)で分離を行った場合、分析物の保持時間は、ZENが7.03分、HZENが5.17分、DHZENが5.95分である:0~0.1分 0%B相、0.1~3分 90%B相への直線的増加、3~5分 100%Bへの直線的増加、それを1.9分間継続した後、0.1分で0%B相にする、カラムを2.0分間、再コンディショニングしてから、次の実験を開始する。流量は0.8ml/分に設定し、注入体積は15μlに設定する。
【0107】
定量はZEN、HZENおよびDHZENの外部標準によるキャリブレーションに基づく。1リットルあたりの単位数(U/l)で表される酵素活性は、試料中のZEN濃度対試料採取時点のプロットから決定されるZEN分解の直線範囲の傾きから計算される。試料中の酵素活性の量をU/lの単位で決定するために、上述したプロットの直線部分の傾きを、毎時μM ZENの単位で計算し、60で割ることで、μM/分を決定することができる。考えうる希釈を考慮し、これらの適当な希釈率を計算に含めることで、試料中の酵素活性をU/lの単位で決定することができる。以下の例が説明に役立つ:直線範囲の傾きが10μM/時であるとすると、無希釈試料の酵素活性は0.17U/lである。これは10/60=0.17によって計算される。
【0108】
これに関連して、「単位」または「U」という用語は、酵素の触媒活性の尺度を指し、所定の条件下で1分あたりに反応するまたは切断される基質、すなわちこの場合はゼアラレノンのマイクロモル数(μmol)と定義されることに留意されたい。酵素溶液またはポリペプチド溶液の酵素濃度は、酵素溶液またはポリペプチド溶液の「活性」によって定義され、溶液1ミリリットルあたりの単位数(U/ml)または溶液1リットルあたりの単位数(U/l)で示される。
【0109】
本発明は、本明細書記載のα/β加水分解酵素を含む組成物にも関係する。本組成物は食品添加物もしくは飼料添加物または食品製品もしくは飼料製品であることができる。
【0110】
そのような食品組成物および/または飼料組成物を調製するための方法は当業者に公知であり、とりわけ、WO 99/35240に記載されている。
【0111】
本発明は、疾患の治療または予防に使用するための本明細書記載のα/β加水分解酵素または本明細書記載の組成物にも関係する。疾患は、エストロゲンバランスなどのホルモンバランスに影響を及ぼす疾患、とりわけZENが引き起こすカビ毒症であることができる。
【0112】
本発明は、本明細書記載のα/β加水分解酵素または本明細書記載の組成物を含むキットにも関係する。
【0113】
本発明はさらに、以下の項目を特徴とする。
【0114】
1. SEQ ID NO:1、3、4、5の145~218位に対応する配列を含み、かつ/またはSEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列を含み、かつ/または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、および/もしくはSEQ ID NO:1、3、4、5の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン;SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6のキャップドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置、
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法。
【0115】
2. ある特定のアミノ酸のハイドロパシーインデックスが以下のとおりである、第1項記載の方法。
【0116】
3.
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含む、第1項または第2項記載の方法。
【0117】
4. 前記アミノ酸が、R、K、D、Q、D、N、E、P、G、T、SまたはHから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0118】
5. 前記アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、T、G、A、M、C、F、LまたはVから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0119】
6. 前記アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、TまたはGから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0120】
7. 前記アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、HまたはPから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0121】
8. 前記アミノ酸が、S、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0122】
9. 前記アミノ酸が、R、D、H、G、NまたはPから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0123】
10. 前記アミノ酸が、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0124】
11. 前記アミノ酸が、P、S、RまたはHから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0125】
12. 前記アミノ酸がRまたはNから選択されるアミノ酸で置換される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0126】
13. アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→Nおよび/またはQ→Kのうちの1つまたは複数から選択される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0127】
14. アミノ酸置換が、V160A、G185R、G185S、A186P、A186R、A188D、A188H、A188N、A188G、A188R、S189D、P190H、M191D、G199E、I200A、I200V、H203Nおよび/またはQ205Kのうちの1つまたは複数から選択される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0128】
15. アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→Nおよび/またはQ→Kのうちの1つまたは複数から選択される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0129】
16. アミノ酸置換が、G185R、A186R、A188R、A188D、A188H、A188Nおよび/またはM191Dから選択される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0130】
17. 増加した安定性が、GRAVY値の減少、pH安定性の増加および/または温度安定性の増加である、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0131】
18. GRAVY値が(KyteとDoolittleの計算に従って)すべてのアミノ酸のハイドロパシー値(インデックス)の和を配列中のアミノ酸残基の数で割ったものによって計算される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0132】
19. GRAVY値が、配列中の全アミノ酸のハイドロパシー値(インデックス)の和を配列中のアミノ酸の総数で割ることによって計算される、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0133】
20. 前記アミノ酸が、R、D、H、G、NまたはPから選択されるアミノ酸で置換される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【0134】
21.
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程であって、該アミノ酸が、R、D、H、G、NまたはPから選択されるアミノ酸で置換される、該工程
を含む、前記項目のいずれか一項記載の方法。
【0135】
22. 前記項目のいずれか一項記載の方法によって得ることができるα/β加水分解酵素。
【0136】
23. SEQ ID NO:1、3、4、5の145~218位に対応する配列を含み、かつ/またはSEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列を含み、かつ/または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、および/もしくはSEQ ID NO:1、3、4、5の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン;SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6のキャップドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
【0137】
24.
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:6のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
【0138】
25. SEQ ID NO:1、3、4、5の145~218位に対応する配列を含み、かつ/またはSEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列を含み、かつ/または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、および/もしくはSEQ ID NO:1、3、4、5の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン;SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6のキャップドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→N、Q→K、F→Yおよび/またはV→Cから選択され、かつ/または
該アミノ酸が、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸がR、D、H、GまたはNから選択され、より好ましくは該アミノ酸がRまたはNから選択される、
該α/β加水分解酵素。
【0139】
26. アミノ酸置換
・G→RおよびA→N、好ましくはG185RおよびA188N、
・G→SおよびA→R、好ましくはG185SおよびA188R、
・G→R、A→R、A→H、S→D、P→HおよびM→D、好ましくはG185R、A186R、A188H、S189D、P190HおよびM191D、
・V→A、G→R、A→N、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A188N、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→S、A→R、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185S、A188R、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→R、A→R、A→H、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、ならびに/または
・V→A、G→R、A→R、A→H、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→R、A→R、A→H、S→D、P→H、M→D、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、S189D、P190H、M191D、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、ならびに/または
・F→YおよびV→C、好ましくはF183YおよびV197C
を含む、前記項目のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素。
【0140】
27. ゼアラレノン(ZEN)を分解するための、前記項目のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素の使用。
【0141】
28. 前記項目のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素を含む組成物であって、好ましくは食品添加物もしくは飼料添加物または食品製品もしくは飼料製品である、該組成物。
【0142】
29. 疾患の治療または予防において使用するための、前記項目のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素または組成物。
【0143】
30. 前記項目のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素または組成物を含む、キット。
【0144】
31. SEQ ID NO:1、3、4、5の160~205位に対応する配列を含み、かつ/またはSEQ ID NO:2の159~204位に対応する配列を含み、かつ/または
SEQ ID NO:6の176~222位に対応する配列、および/もしくはSEQ ID NO:1、3、4、5の160~205位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:2の159~204位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:6の176~222位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(VIドメイン;SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6のVIドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置、
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法。
【0145】
32. SEQ ID NO:1、2、3、4、5または6の配列を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置、
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法。
【0146】
33. SEQ ID NO:1、3、4、5の160~205位に対応する配列を含み、かつ/またはSEQ ID NO:2の159~204位に対応する配列を含み、かつ/または
SEQ ID NO:6の176~222位に対応する配列、および/もしくはSEQ ID NO:1、3、4、5の160~205位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:2の159~204位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:6の176~222位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(VIドメイン;SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6のVIドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
【0147】
34. SEQ ID NO:1、3、4、5の145~218位に対応する配列を含み、かつ/またはSEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列を含み、かつ/または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、および/もしくはSEQ ID NO:1、3、4、5の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:2の144~217位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列、および/もしくはSEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列(キャップドメイン;SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6のキャップドメインに対して58%の同一性が存在する)
を含むα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→NおよびQ→Kから選択され、かつ/または
該アミノ酸が、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸が、R、D、H、GまたはNから選択され、より好ましくは該アミノ酸がRまたはNから選択される、
該α/β加水分解酵素。
【0148】
本明細書において使用される単数形「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含することに注意されたい。したがって、例えば「試薬(a reagent)」への言及は、そのようなさまざまな試薬のうちの1つまたは複数を包含し、「方法(the method)」への言及は、本明細書記載の方法のために改変することまたは本明細書記載の方法の代わりに使用することができる、当業者に公知の等価な工程および方法への言及を包含する。
【0149】
別段の表示がある場合を除き、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、それら一連の要素のそれぞれを指すと理解されるべきである。本明細書に記載する発明の具体的態様の数多くの均等物は、当業者にはわかるか、せいぜい日常的な実験を使って確かめることができるであろう。そのような均等物は本発明に包含されるものとする。
【0150】
「および/または」という用語は、本明細書において使用される場合はいつでも、「および」、「または」および「該用語によってつながれる要素のすべてまたは他の任意の組合せ」の意味を包含する。
【0151】
「未満(less than)」という用語、そしてまた「超(more than)」という用語は、その具体的な数を含まない。
【0152】
例えば20未満は表示した数より少ないことを意味する。同様に、より多いまたはより大きいとは、表示した数より多いまたは表示した数より大きいことを意味し、例えば80%超とは、80%という表示した数より多いまたは大きいことを意味する。
【0153】
この明細書と下記特許請求の範囲の全体を通して、文脈上別段の必要がある場合を除き、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変化形は、言明された完全体(integer)もしくは工程または完全体もしくは工程の群の包含を含意するが、他の任意の完全体もしくは工程または完全体もしくは工程の群の除外を含意しないと理解されるだろう。本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」または「含む/包含する(including)」という用語で、また時には、本明細書において使用される場合、「有する(having)」という用語で置換することができる。本明細書において使用される場合、「からなる(consisting of)」は、特定されていない要素、工程または成分をいずれも排除する。
【0154】
「含む/包含する(including)」という用語は、「~を含むが、それらに限定されない」を意味する。「含む/包含する」と「~を含むが、それらに限定されない」は相互に交換可能である。
【0155】
本発明は、本明細書記載の特定の方法、プロトコール、材料、試薬および物質などに限定されず、したがってさまざまでありうると、理解すべきである。本明細書において使用される術語には、特定の態様を説明する目的しかなく、本願の請求項によってのみ規定される本発明の範囲を限定する意図はない。
【0156】
本明細書の本文全体を通して引用される刊行物は(すべての特許、特許出願、科学刊行物、説明書などを含めて)いずれも、上述したものも後述するものも、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本発明が、先行発明を理由に、そのような開示に先行する資格がないことの自白であるとみなすべきものは、本明細書には何もない。参照により組み入れられた資料が本明細書と矛盾するか適合しない場合は、本明細書がそれらの資料のいずれにも優先されることになる。
【0157】
本明細書において引用されるすべての文書および特許文書の内容は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0158】
本願では以下の配列が使用される。
【0159】
(表2)本願において使用される配列
本明細書記載のVIドメインに隣接しうるモチーフをSEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8として示す。本明細書記載のキャップループに隣接しうるモチーフをSEQ ID NO:9、10、11に示す。モチーフ中の「X」は任意のアミノ酸であることができる。SEQ ID NO:9のモチーフの第2アミノ酸は、「(F/Y)」で示されているとおり、FまたはYのどちらか一方であることができる。VIドメインとキャップループはどちらも、Ollis et al.(1992)「The alpha/beta hydrolase fold」Protein Eng.5(3):197-211に記載されているように、α/β加水分解酵素のβシートとαヘリックスの間の、例えばb6とaDの間の、可動領域内に位置することができるキャップドメインに含まれる。SEQ ID NO:1~6についてはVIドメインおよびキャップループが下線で示されている。
【0160】
本発明とその利点のより良い理解は、例示のみを目的として提供される以下の実施例から得られるだろう。実施例は決して本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0161】
実施例1:ゼアラレノン切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの改変、クローニングおよび発現
QuikChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を製造者の説明書に従って使用し、PCRにより、ヌクレオチド配列の変異で、アミノ酸の置換、挿入または欠失を行った。あるいは、完全なヌクレオチド配列の合成も行った(例えばThermo Fisher ScientificによるGeneArt Gene Synthesis)。PCR突然変異誘発法によって生成したヌクレオチド配列とGeneArtから入手したものとを、標準的な方法で、大腸菌(E.coli)における発現のための発現ベクターに組み込んだ。大腸菌BL21(DE3)を発現ベクターで形質転換し、ヌクレオチド配列をその株内で発現させた(J.M.Cregg,Pichia Protocols,second Edition,ISBN-10:1588294293,2007、J.Sambrook et al.2012,Molecular Cloning,A Laboratory Manual 4th Edition,Cold Spring Harbor)。この作業には他の任意の適切な宿主細胞も使用しうる。大腸菌の可溶性細胞溶解物を使って、ポリペプチドバリアントの触媒特性を決定した。
【0162】
実施例2:ZEN分解性α/β加水分解酵素、それらのキャップドメイン、それらのVIドメインおよびキャップループの決定
アミノ酸配列がZEN分解性α/β加水分解酵素であるかどうかを決定するために、関心対象の配列をSEQ ID NO:1の配列とアラインメントすることで、配列同一性を決定した。さらにまた、関心対象の配列に対してトポロジー予測およびホモロジーモデリングを行った。配列アラインメントは以下のパラメータを使ってCLC sequence viewer 7.8.1で行った:Gap open costs:10.0、gap extension costs:1.0、end gap cost:As any other、alignment:Very accurate。
【0163】
トポロジー予測およびホモロジーモデリングは、以下のパラメータを使ったホモロジーモデリングにより、YASARA Structure 16.7.22(1993-2016、開発者:Elmar Krieger、Bioinformatics 30,2981-2982)で行った:PSI-BLAST iterations:3、PSI-BLAST E-value:0.5、Oligomerization state:4,Templates:5,with same sequence:1、alignment per template:5、modelling speed:Fast、terminal extension:10、loop samples:50、use PSSP:Yes。YASARA Homology Modeling Reportでは、PSI-Pred二次構造予測アルゴリズム(Jones(1999)「Protein secondary structure prediction based on position-specific scoring matrices」J.Mol.Biol.292:195-202)によるトポロジー予測を記録した。生成したすべてのホモロジーモデルについてzスコアを記録した。生成したモデルのうち、最も良いzスコアを持つものを、例えばOllis et al.(1992)「The alpha/beta hydrolase fold」Protein Eng.5(3):197-211に記載されているようなα/β加水分解酵素の構造分析および構造特徴ならびに可動領域の決定のために採用した。
【0164】
新しい関心対象配列におけるキャップドメイン、VIドメインおよびキャップループを決定するには、α/β加水分解酵素コアドメインの二次構造を、Ollis et al.(1992)「The alpha/beta hydrolase fold」Protein Eng.5(3):197-211のFig 2aに従ってラベルする必要がある。キャップドメイン、VIドメインならびにキャップループは、ZEN分解性α/β加水分解酵素のb6とaDの間の可動領域内に位置する。キャップドメインは、α/β加水分解酵素コアドメインのb6 βストランドのC末端のすぐ後ろで始まることができ、α/β加水分解酵素コアドメインのaD αヘリックスのN末開始点まで及ぶことができる。VIドメインはキャップドメインの一部であり、キャップドメイン中に存在するQXAGPモチーフ後の最初のアミノ酸で始まって、EYDPEモチーフ前の最後のアミノ酸まで及ぶが、EYDPEモチーフはVIドメインの一部ではない。キャップループはVIドメインの一部であり、VIドメイン中に存在するG(F/Y)XXAAモチーフ後の最初のアミノ酸から始まり、ARXFモチーフ(SEQ ID NO:6の場合はQLFPモチーフ)の前の最後のアミノ酸まで及ぶが、ARXFモチーフ(SEQ ID NO:6の場合はQLFPモチーフ)はキャップループの一部ではない。例えばSEQ ID NO:1~6のポリペプチドについて、キャップドメイン、VIドメインおよびキャップループの位置は、本明細書に記載するように決定された。それらを
図1に示す。
【0165】
実施例3:総平均ハイドロパシー(GRAVY)値の決定
ポリペプチドのアミノ酸配列の総平均ハイドロパシー(GRAVY)値は、すべてのアミノ酸のハイドロパシー値(本明細書において引用するKyte and Doolittle,1982)の和を、ポリペプチドのアミノ酸の総数に対応するポリペプチドの長さで割ったものによって定義される。https://web.expasy.org/protparam(John M.Walker編「The Proteomics Protocols Handbook」(Humana Press,2005)のpp.571~607、Gasteiger E.et al.「Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server」)のProtParamプログラムを使って、ポリペプチドおよびポリペプチドの所定の部分について、GRAVY値を計算した。SEQ ID NO:1のキャップドメインは、アミノ酸位置145からアミノ酸位置218まで(両位置を含む)の部分によって定義され、SEQ ID NO:1のVIドメインはアミノ酸位置160からアミノ酸位置205まで(両位置を含む)のアミノ酸配列と定義され、SEQ ID NO:1のキャップループはアミノ酸配列のうちアミノ酸位置185からアミノ酸位置191まで(両端を含む)の部分によって定義される。SEQ ID NO:1のポリペプチド全体の場合、算出されたGRAVY値は-0.167であり、SEQ ID NO:1のキャップドメインの場合、GRAVY値は-0.284であり、SEQ ID NO:1のVIドメインの場合、GRAVY値は-0.043であり、SEQ ID NO:1のキャップドメイン内のキャップループの場合、GRAVY値は+0.271である。SEQ ID NO:6のキャップドメイン、VIドメインおよびキャップループは、それぞれアミノ酸位置161~235、176~222、201~208の部分によって定義される(表示した範囲の両位置を含む)。SEQ ID NO:6のポリペプチド全体の場合、算出されたGRAVY値は-0.192であり、SEQ ID NO:6のキャップドメインの場合、GRAVY値は-0.388であり、SEQ ID NO:6のVIドメインの場合、GRAVY値は-0.468であり、SEQ ID NO:6のキャップループの場合、GRAVY値は-0.362である。
【0166】
SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:6の非変異/非置換ポリペプチドのアミノ酸配列全体を基準として、少なくとも1つの変異が引き起こすポリペプチドのアミノ酸配列全体のGRAVY値の減少は、パーセント表示で、2つのGRAVY値の間の差を非変異ポリペプチドのGRAVY値で割って100を掛けることによって計算した。例示のためにSEQ ID NO:1バリアントV160Aに関する計算をここに示す:((-0.174)-(-0.167))/(-0.167)×100=4.2%。さらなる実施例に関する結果は
図2Aおよび
図2Eに列挙する。
【0167】
SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:6の非変異キャップドメインの配列を基準として、キャップドメイン内の変異が引き起こすキャップドメインのGRAVY値の減少は、パーセント表示で、2つのGRAVY値の間の差を非変異キャップドメインのGRAVY値で割って100を掛けることによって計算した。例示のためにSEQ ID NO:1バリアントV160Aに関する計算をここに示す:((-0.316)-(-0.284))/(-0.284)×100=11.3%。さらなる実施例に関する結果は
図2Bおよび
図2Fに列挙する。
【0168】
SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:6の非変異VIドメインの配列を基準として、VIドメイン内の変異が引き起こすVIドメインのGRAVY値の減少は、パーセント表示で、2つのGRAVY値の間の差を非変異VIドメインのGRAVY値で割って100を掛けることによって計算した。例示のためにSEQ ID NO:1バリアントG185Rに関する計算をここに示す:((-0.133)-(-0.043))/(-0.043)×100=209.3%。さらなる実施例に関する結果は
図2Cおよび2Gに列挙する。
【0169】
SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:6の非変異キャップループの配列を基準として、キャップループ内の変異が引き起こすキャップループのGRAVY値の減少は、パーセント表示で、2つのGRAVY値の間の差を非変異キャップループのGRAVY値で割って100を掛けることによって計算した。例示のためにSEQ ID NO:1バリアントG185Rに関する計算をここに示す:((-0.314)-(+0.271))/(+0.271)×100=-215.9%。この値が負であるのは、親キャップループのGRAVY値が正だからである。変異に関するさらなる実施例についてのデータ表示を簡単にするために、
図2Dにはパーセント値を正の値として示す。
【0170】
実施例4:ZEN分解性ポリペプチドの活性の決定
ZEN分解性ポリペプチドをコードする対応する遺伝子を標準的方法を使ってクローニングし、大腸菌の細胞内で発現させ、産生されたポリペプチドを大腸菌から当業者に公知の方法によって、例えばフレンチプレスセルを使った溶解によって、単離した。タンパク質濃度の決定は、標準的方法、例えばBCA法(Pierce BCAプロテインアッセイキット、製品番号23225)を使って行った。
【0171】
酵素活性の決定は、試料緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含有するTeorell Stenhagen緩衝液(Stenhagen&Teorell.(1938)Nature 141,415)、pH7.5)中、37℃の温度で3時間にわたって行った。ポリペプチドを試料緩衝液で希釈し、使用するまで氷上で保存した。アセトニトリル中の1500ppm(w/v)ZEN保存溶液を試料緩衝液で1:10希釈し、分解反応において使用するためのさらなる希釈まで25℃で保存した。分解アプローチおよび1つの陰性対照を反応チューブに調製した。陰性対照として、5μg/ml ZENを含有する試料緩衝液をインキュベートした。分解反応のために、試料緩衝液をポリペプチド溶液と混合することで、5μg/mlの最終ZEN濃度と、3時間以内に90%~100%のZEN分解を達成する最終酵素濃度とを得た。ZEN含有試料緩衝液にポリペプチドを添加することで、反応を開始させた。陰性対照には酵素を加えなかった。各反応を開始した直後に、約2秒間ボルテックスし、0時間試料(100μl)を採取して、新しい反応チューブに移した。予め温めておいた37℃の水浴で反応をインキュベートし、99℃で10分間のインキュベーションによって試料を熱失活させ、遠心分離(2分、25℃、14674×g)し、90μlの上清をインサート付きHPLCバイアルに移した。試料をHPLC-DAD測定まで4℃で保存した。0.5時間、1.0時間、2.0時間および3.0時間後に試料採取を繰り返した。
【0172】
Vekiruらが記載しているように、HPLC-DADで、ZEN、HZENおよびDHZENの濃度を分析した(Vekiru et al.(2016)「Isolation and characterisation of enzymatic zearalenone hydrolysis reaction products」World Mycotoxin Journal 9:353-363)。分析は、274nmで作動するDAD検出器を装着したAgilent 1100シリーズHPLCで行った。溶媒A:20%メタノール/水+5mM酢酸アンモニウムおよび溶媒B:90%メタノール/水+5mM酢酸アンモニウムならびに以下の勾配を使用し、35℃において、Zorbax SB-Aq、4.6×150mm、5μmカラム(Agilent Technologies)で分離を行った場合、分析物の保持時間は、ZENが7.03分、HZENが5.17分、DHZENが5.95分であった:0~0.1分 0%B相、0.1~3分 90%B相への直線的増加、3~5分 100%Bへの直線的増加、それを1.9分間保持した後、0.1分で0%B相に戻す。カラムを2.0分間、再コンディショニングしてから、次の実験を開始した。流量は0.8ml/分に設定し、注入体積は15μlに設定した。定量はZEN、HZENおよびDHZENの外部標準によるキャリブレーションに基づいた。試料中のZEN濃度対試料採取時点のプロットから決定されるZEN分解の直線範囲の傾きから、1リットルあたりの単位数(U/l)で表される酵素活性を計算した。試料中の酵素活性の量をU/lの単位で決定するために、上述したプロットの直線部分の傾きを、毎時μM ZENの単位で計算し、60で割ることで、μM/分を決定することができた。考えうる希釈を考慮し、これらの適当な希釈率を計算に含めることで、試料中の酵素活性をU/lの単位で決定することができる。以下の例が説明に役立つ:直線範囲の傾きが10μM/時であった場合、無希釈試料の酵素活性は0.17U/lであった。これは10/60=0.17によって計算される。
【0173】
実施例5:ZEN分解性ポリペプチドの温度安定性
ZEN分解性ポリペプチドの生産と定量は上記実施例で述べたように行った。温度安定性を評価するために、ZEN分解性酵素を緩衝溶液中、さまざまな温度でインキュベートしてから、至適条件下でZENを分解するそれらの能力について試験した。加熱インキュベーション全体にわたって試料を採取し、非熱処理対照を基準として残存活性を計算した。
【0174】
温度安定性試験のために、ポリペプチドを試料緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含有するTeorell Stenhagen緩衝液、pH7.5)で濃度が0.001526923U/mLになるように希釈し、さらなる使用まで氷上に保った。希釈ポリペプチドの50μlアリコート40個を、4本の12連チューブストリップ(例えばstarlab製)のチューブに移し、各ストリップの最初のチューブと各ストリップの最後のチューブは使用せずに、空のままにしておいた。これらのストリップを12連キャップ(例えばstarlab製)で密封した。陽性対照として、希釈酵素溶液の50μlアリコート4つを4本のPCRチューブに移した。すべてのPCRチューブおよびストリップを、温度インキュベーション工程が開始されるまで、氷上に保った。陰性対照として、試料緩衝液の50μlアリコート4つを4本のPCRチューブに移した。これらのチューブは25℃で保存した。
【0175】
4本の12連チューブストリップを、予熱した勾配機能付きPCRサイクラー(例えばEppendorf Mastercycler gradient)において、選ばれた温度±10℃でインキュベートした。PCRサイクラーのサーモブロックに沿った温度勾配(選ばれた温度の±10℃)は、PCRサイクラーによって自動的に計算された。陽性対照が入っているPCRチューブを氷上でインキュベートし、陰性対照が入っているものを25℃でインキュベートした。0分後、5分後、10分後および20分後に、1本のPCRストリップと1つの陰性対照チューブを移動させて、インキュベーションの終了時点、すなわちインキュベーションの開始から20分後まで、氷上に保った。
【0176】
すべてのインキュベーション工程が終了して、すべてのストリップおよびチューブが氷上に移動した後に、ZEN分解アッセイを開始した。
【0177】
ZEN分解アッセイ緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンと5.3ppmのZENとを含有するTeorell Stenhagen緩衝液、pH7.5)を調製し、アッセイ緩衝液の660μlアリコートを48本の反応チューブに移した。チューブを密封し、ZEN分解アッセイの開始まで25℃に保った。分解アッセイのために、PCRストリップからの40の温度処理済試料各40μl、4つの陰性対照各40μlおよび4つの陽性対照各40μlを、660μlのアッセイ緩衝液が入っている前記チューブに加えることにより、アッセイ反応中、5ppmの最終ZEN濃度にした。また、ポリペプチドの最終濃度も、これにより、ZENを3時間以内に効率よく分解するもの(すなわち90%~100%のZEN分解)になった。
【0178】
温度処理済試料、陽性対照または陰性対照のいずれかをアッセイ緩衝液に加えることによって、分解アッセイを開始した。前もって温めておいた37℃の水浴でZEN分解反応をインキュベートした。分解反応を開始した直後に、約2秒間のボルテックスによってそれを混合し、100μlの0時間試料を新しい反応チューブに移した。0.5時間、1.0時間、2.0時間および3.0時間後に、追加の試料をZEN分解アッセイ反応から抜き取った。試料を分解反応から抜き取ったらすぐに、この試料中の酵素を、99℃で10分間のインキュベーションによって熱失活させた。次に、チューブを遠心分離(2分、25℃、14674×g)し、上清のうち90μlを、インサート付きHPLCバイアルに移した。これらのHPLCバイアルを実施例4で述べるHPLC-DAD測定まで4℃で保存した。
【0179】
ZEN分解試料のHPLC-DAD分析によって決定されるZEN濃度の直線的減少を使って、酵素活性を、例えば1リットルあたりの単位数(U/l)または1ミリリットルあたりの単位数(U/ml)で計算した。1単位は、記載の条件下で1μmolのZENを1分間で分解する酵素活性の量と定義された。さまざまな温度での0分、5分、10分および20分間のインキュベーション後の残存活性を、次のように計算した:温度処理済試料中の酵素活性を0分試料からの酵素活性の平均値で割り、100を掛ける。
【0180】
温度安定性(T(50%))は、10分間のインキュベーション後にポリペプチドが陽性対照と比較して50%の残存活性を有する温度と定義した。
【0181】
以下の例が説明に役立つ:親酵素は氷上で10分間のインキュベーション後に50U/mlの酵素活性を有し、59.3℃における10分間のインキュベーション後に25U/mlの活性を有し、T(50%)値は59.3℃である。酵素バリアントが61.0℃のT(50%)値を有するとすると、親酵素と比較した温度安定性(T(50%))の相対的増加は2.9%である。これは、2つのT(50%)値の間の1.7℃という差を59.3℃という親酵素のT(50%)で割って、100を掛けることによって得られる。
【0182】
個々の変異ならびに変異の組合せは、
図3Aおよび3Bに示すように、温度安定性の増加を示す。
【0183】
実施例6:ZEN毒素分解性ポリペプチドのpH安定性
ZEN分解性ポリペプチドを、さまざまなpH値の緩衝溶液中で1時間インキュベートしてから、至適条件下でZENを分解するそれらの能力について試験した。試料を定期的に採取し、HPLC-DAD測定を使ってZEN、HZENおよびDHZENの濃度を分析した。
【0184】
実験に使用したpH値はpH3.5、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0および6.0だった。被験ポリペプチドを、8つの異なるpHを持つインキュベーション緩衝液が入っている8本の試料チューブに移した。インキュベーション緩衝液は、pH3.5、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0および6.0のいずれかに設定した、ミルクを含まない50%濃度の摂食時人工胃液中期緩衝液とした(Jantratid et al.(2008)「Dissolution media simulating conditions in the proximal human gastrointestinal tract:an update」Pharm Res.2008 Jul;25(7):1663-76))。また、陽性対照として、ポリペプチドバリアントのアリコートの1つを、試料緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含有するTeorell Stenhagen緩衝液、pH7.5)が入っている1本のチューブに移した。インキュベーション溶液中の被験ポリペプチドの濃度は、体積100μlで、0.001526923U/mlであった。チューブを約2秒間ボルテックスし、予め温めておいた水浴中、37℃で1時間インキュベートした。陰性対照として、100μlの試料緩衝液を、予め温めておいた水浴中、37℃で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後に、8.72527E-05U/mlという被験ペプチドの最終濃度でZEN分解アッセイを行った。ZEN分解反応を開始するために、インキュベートされた試料のうちの40μlを、660μlのアッセイ緩衝液(0.1mg/mlウシ血清アルブミンと5.3ppmのZENとを含有するTeorell Stenhagen緩衝液、pH7.5)に移した。アッセイ緩衝液の添加により、すべての試料において、pH7.5の一定したpHが保証された。各反応を開始した直後に、約2秒間ボルテックスし、0時間試料(100μl)を採取して、新しい反応チューブに移した。予め温めておいた37℃の水浴で反応をインキュベートし、反応から抜き取った試料を、99℃で10分間のインキュベーションによって熱失活させ、遠心分離(2分、25℃、14674×g)し、90μlの上清をインサート付きHPLCバイアルに移した。試料をHPLC-DAD測定まで4℃で保存した。0.5時間、1.0時間、2.0時間および3.0時間後に、試料を各分解アッセイ反応から抜き取った。実施例4で述べたようにHPLC-DADでZEN、HZENおよびDHZENを分析し、活性を実施例4で述べたように計算した。
【0185】
pH安定性の増加は、同じ処理後の非変異親酵素溶液の残存活性と比較した、pH4.0におけるインキュベーション後のポリペプチド溶液の残存活性の増加と定義した。残存活性は、pH処理したポリペプチド溶液の活性の、pH7.5におけるインキュベーション後の同じポリペプチドバリアント溶液の活性との比較によって定義した。残存活性は次のように計算した:pH処理した試料の酵素活性を、pH7.5においてインキュベートした対照の酵素活性で割り、100を掛ける。以下の例が説明に役立つ:pH4.0におけるインキュベーション後のポリペプチド試料の酵素活性が0.5U/lであり、pH7.5におけるインキュベーション後のポリペプチドの酵素活性が2.7U/lであったとすると、このポリペプチド試料の残存活性は18.5%になるだろう。さらに、pH4.0におけるインキュベーション後のポリペプチドバリアントの残存活性が18.5%と測定され、SEQ ID NO:1を持つ親ポリペプチドのpH4.0におけるインキュベーション後の残存活性が2.5%と測定されたとすると、親ポリペプチドと比較したポリペプチドバリアントのpH安定性の増加は7.4倍である。本明細書記載の変異導入後の増加したpH安定性に関するデータを
図4に示す。
【0186】
実施例7:ブタにおけるZENの解毒に関するポリペプチドバリアントの試験
合計12頭の離乳子ブタ(雌、38日~40日齢)を選び、それぞれ子ブタ1頭の個別ケージ12個を使って、試験設定に従ってランダム化した(3ケージ/各レプリケートで4群)。3つの試験群にZEN分解性酵素を与え、1つの対照群にはZEN分解性酵素を何も与えなかった。子ブタはすべてオーストリア遺伝子型O-HYB-F1[(ランドレース種×ラージホワイト種)×ピエトレン種]であった。すべてのケージにスノコ床、個別のカップ型給水器および個別の給餌トラフを装着した。気候条件はコンピュータで操作し、離乳子ブタに関する標準的勧告に従って自動的に調節され、毎日記録された。
【0187】
収容後は、パーセント(w/w)表示で以下の成分を含有する食餌を、すべての子ブタに給餌した:29.70%オオムギ、10.00%コムギ、9.98%トウモロコシ、0.27%ナタネ油、15.30%全脂大豆(fullfat soya)、10.94%加圧調理トウモロコシ(maize pressure cooked)、5.00%ジャガイモタンパク質、5.13%デキストロース、3.75%パーム核、ココヤシ脂肪(cocos fat)、3.75%ラクトース、1.35%リグノセルロース、1.23%リン酸一カルシウム、0.93%炭酸カルシウム、0.48%塩化ナトリウム、0.25%リン酸マグネシウム、0.42%ビタミン/微量元素プレミックス、0.70%L-リジン、0.30%L-スレオニン、0.27%DL-メチオニン、0.15%L-バリン、0.07%L-トリプトファンおよび0.02%甘味料。
【0188】
実験期間中は、すべての群の食餌に、最終濃度が500μg ZEN/kg食餌になるようにZENを添加した。試験群には、SEQ ID NO:1の親ポリペプチドとそのポリペプチドバリアント2種とを使用した。ポリペプチドを以下の濃度で試験した:2.5U/kg食餌、5U/kg食餌、10U/kg食餌および20U/kg食餌。3日間の順応期間後に、2.5U/kg食餌の濃度で1日間のポリペプチドの適用を開始し、続いて、食餌中にポリペプチドなしおよびZENなしのウォッシュアウト日を設けた。ウォッシュアウト日後に、非対照子ブタにはZEN含有食を5U/kg食餌の同じペプチドと共に与え、続いて、ウォッシュアウト日を設けるなどとした。試験中は尿を12時間にわたって収集し、糞便試料を1日に1回採取した。試料をLC-MS/MS測定まで-20℃で保存した。
【0189】
尿排泄量を標準化するために、尿試料中のクレアチニン濃度を測定した。クレアチニン含量を決定するために尿試料を水で1:5000希釈した。尿試料を2.5mMクレアチニンの最終濃度になるように水で希釈した。100μlの希釈尿試料を、528Uのベータ-グルクロニダーゼを含有する20μlの100mM PBS緩衝液と混合し、37℃で終夜インキュベートした。終夜インキュベーション後に、380μlの冷メタノールを加え、14674×gで遠心分離し、上清をHPLCバイアルに移し、分析まで-20℃で保存した。糞便試料を分析するために、500mgの凍結乾燥糞便を、3回(90分、30分および30分)、それぞれ5mlのアセトニトリル/水(50/50、v/v)で抽出した。各抽出工程後に、試料を遠心分離(10分、14674×g)によって清澄化した。プールした上清のアリコートを遠心分離し、HPLC-MS/MSによって測定した。分析は、6500 QTrap質量分析計に接続されたAgilent 1290シリーズUHPLCシステムで行った。カラム温度を30℃に設定し、流速を0.25ml/分に設定した。移動相Aおよび移動相Bはそれぞれ水/酢酸およびアセトニトリル/酢酸(どちらも99.9/0.1、v/v)からなった。勾配は0.5分間の5%Bで始まり、36%Bへの直線的増加を17.0分まで続け、17.0分~22.0分は100%Bへの直線的勾配、続いて24.0分までは100%B、24.0分~24.1分は5%Bへの急減とした。最後に、カラムを5%Bで27.0分まで再平衡化した。注入体積は尿試料の場合は2μl、糞便試料の場合は3μlとした。分離はPhenomenex Kinetex C18カラム(150×2.1mm、2.6μm)で行った。定量はZEN、α-ZEL、HZENおよびDHZENの外部標準によるキャリブレーションに基づいた。α-ZELはより高いエストロゲン性を持つZENの代謝産物であり、豚では肝生体内変換によって産生される(Malekinejad et al.(2006)「Hydroxysteroid dehydrogenases in bovine and porcine granulosa cells convert zearalenone into its hydroxylated metabolites alpha-zearalenol and beta-zearalenol」Vet Res Commun:445-53)。選択反応モニタリング(selected reaction monitoring:SRM)パラメータを
図5に示す。
【0190】
SEQ ID NO:1を有するポリペプチドに加えて、2種の被験ポリペプチドバリアントである、SEQ ID NO:1のバリアントAおよびバリアントBを有するポリペプチドを試験した。
【0191】
バリアントAはSEQ ID NO:1と比較して以下の変異を含む:
V160A/G185R/A186R/A188H/G199E/I200V/H203N/Q205K。
【0192】
バリアントBはSEQ ID NO:1と比較して以下の変異を含む:
V160A/G185R/A186R/A188H/S189D/P190H/M191D/G199E/I200V/H203N/Q205K。
【0193】
尿試料および糞便試料の分析からの結果を
図6および
図7に示す。SEQ ID NO:1と比較してZEN+α-ZELの合算濃度の変化は、パーセント表示で、2つの群の濃度の差を、SEQ ID NO:1を使った群の濃度で割って、100を掛けることによって得られる。ZEN分解性ポリペプチドをその食餌に入れて与えなかった対照群における飼育試験経過中のZEN+α-ZEL濃度の増加は、ブタにおけるZENおよびZEN誘導体の腸肝循環によって、したがってその蓄積によって、引き起こされるのだろう(Biehl et al.(1993)「Biliary excretion and enterohepatic cycling of zearalenone in immature pigs」Toxicol Appl Pharmacol.1993 Jul;121(1):152-9)。
【0194】
実施例8:ブロイラーにおけるZENの解毒に関するさまざまな濃度のポリペプチドの試験
飼養試験には、90日齢の雌雄ブロイラーニワトリ(Ross308)を使用した。鶏には二期にわけて2種の異なる食餌を給餌した。順応期間中は鶏に第1期食餌を与え(ライブ期間1~14日目(period live day 1-14))、実験期間中は鶏に第2期食餌を与えた(ライブ期間15~28日目(period live day 15-28))。パーセント(w/w)で表示した第1期食餌の組成:55.00%トウモロコシ、29.00%大豆HP(soya HP)、1.00%ヒマワリ油、6.92%全脂大豆、0.72%大豆タンパク質濃縮物、1.88%パーム核、ココヤシ脂肪、1.96%炭酸カルシウム、1.89%リン酸一カルシウム、0.35%炭酸水素ナトリウム、0.23%塩化ナトリウム、0.13%リン酸マグネシウム、0.24%ビタミン/微量元素プレミックス、0.34%L-リジン、0.12%L-スレオニンおよび0.24%DL-メチオニン。
【0195】
パーセント(w/w)で表示した第2期食餌の組成:62.00%トウモロコシ、23.80%大豆HP、2.00%ヒマワリ油、5.53%全脂大豆、0.58%大豆タンパク質濃縮物、1.50%パーム核、ココヤシ脂肪、1.56%炭酸カルシウム、1.71%リン酸一カルシウム、0.28%炭酸水素ナトリウム、0.19%塩化ナトリウム、0.10%リン酸マグネシウム、0.19%ビタミン/微量元素プレミックス、0.27%L-リジン、0.10%L-スレオニンおよび0.20%DL-メチオニン。
【0196】
順応期間(14日間)は、鶏を3つのケージにランダムに分配した。順応期間後に、鶏を、平均体重に基づいて、それぞれ8羽の7つのケージ(群)に均等に分配した。試験継続期間は14日間とした。気候条件は繁殖会社の標準的勧告に従って調節した。給餌は毎日1回手作業で行った。飼料および水は自由摂取させた。食餌中のZEN濃度は400μg ZEN/kg食餌とした。対照群には、ZEN分解性酵素を何も添加せずに、食餌1kgにつき400μg ZENを含有する食餌を給餌した。ポリペプチドバリアントA(以下の変異V160A/G185R/A186R/A188H/G199E/I200V/H203N/Q205Kを含むSEQ ID NO:1)を以下の濃度で試験した:5U/kg食餌、10U/kg食餌、20U/kg食餌、40U/kg食餌、80U/kg食餌および160U/kg食餌。安楽死後に、試験の開始時と試験の終了時の鶏から作物試料を採取した。試料を凍結し、凍結乾燥した。ZEN、HZENおよびDHZENを分析するために、1gの各試料を50mlチューブに秤量し、ロータリーシェーカーで、25℃において30分、15mlの80%アセトニトリルを使って2回抽出した。次にチューブを2300×g、25℃で10分間遠心分離し、上清を新鮮な50mlチューブにプールした。1mlを2300×g、25℃で5分間、再び遠心分離し、上清をLC-MS/MS測定用のバイアルに移した。試料を測定まで-20℃で保存し、LC-MS/MSによって分析した。分析は、6500+QTrap質量分析計に接続されたAgilent 1290シリーズUHPLCシステムで行った。カラム温度を30℃に設定し、流速を0.25ml/分に設定した。移動相Aおよび移動相Bはそれぞれ水/酢酸およびアセトニトリル/酢酸(どちらも99.9/0.1、v/v)からなった。勾配は0.5分間の15%Bで始まり、60%Bへの直線的増加を13.5分まで続け、13.5分~14.0分は100%Bへの直線的増加、続いて16.9分までは100%B、16.9分~17.0分は15%Bへの急減とした。最後に、カラムを15%Bで20.0分まで再平衡化した。注入体積は2μlとした。分離はPhenomenex Kinetex C18カラム(150×2.1mm、2.6μm)で行った。定量はZEN、HZENおよびDHZENの外部標準によるキャリブレーションに基づいた。選択反応モニタリング(SRM)パラメータを
図8に示す。
【0197】
試験の終了時に得た作物試料の分析によって得られた結果を
図9に列挙する。パーセントで表されるZEN濃度の低減は以下のように計算した:(対照群のZEN濃度-試料群のZEN濃度)を対照群のZEN濃度で割って100を掛ける。
【0198】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して
80%以上の配列同一性を有する配列
を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、
該アミノ酸を置換する前のα/β加水分解酵素と比較して増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法。
【請求項2】
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、T、G、A、M、C、F、LまたはVから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、TまたはGから選択され、より好ましくはR、K、N、Q、D、E、HまたはPから選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸が、R、D、H、G、NまたはPから選択されるアミノ酸、好ましくはR、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、より好ましくはアミノ酸がRまたはNから選択される、請求項
1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→N、Q→K、F→Yおよび/またはV→Cのうちの1つまたは複数から選択され、好ましくはアミノ酸置換が、V160A、G185R、G185S、A186P、A186R、A188D、A188H、A188N、A188G、A188R、S189D、P190H、M191D、G199E、I200A、I200V、H203N、Q205K、F183Yおよび/またはV197Cのうちの1つまたは複数から選択され、より好ましくはアミノ酸置換が、G185R、A186R、A188R、A188D、A188H、A188Nおよび/またはM191Dから選択される、請求項
1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
増加した安定性が、GRAVY値の減少、pH安定性の増加および/または温度安定性の増加である、請求項
1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
請求項4、5または6のいずれか一項記載の方法によって得ることができるα/β加水分解酵素
であって、SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して95%以上の配列同一性を有する、該α/β加水分解酵素。
【請求項8】
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して
95%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
【請求項9】
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して
80%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→NおよびQ→Kから選択され、かつ/または
該アミノ酸が、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸がR、D、H、GまたはNから選択され、より好ましくは該アミノ酸がRまたはNから選択され、
該α/β加水分解酵素が、該アミノ酸を置換する前のα/β加水分解酵素と比較して増加した安定性を有する、
該α/β加水分解酵素。
【請求項10】
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して
99%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:6のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
【請求項11】
アミノ酸置換
・G→RおよびA→N、好ましくはG185RおよびA188N、
・G→SおよびA→R、好ましくはG185SおよびA188R、
・G→R、A→R、A→H、S→D、P→HおよびM→D、好ましくはG185R、A186R、A188H、S189D、P190HおよびM191D、
・V→A、G→R、A→N、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A188N、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→S、A→R、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185S、A188R、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G199E、I200A、H203NおよびQ205K
・V→A、G→R、A→R、A→H、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→R、A→R、A→H、S→D、P→H、M→D、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、S189D、P190H、M191D、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、ならびに/または
F→YおよびV→C、好ましくはF183YおよびV197C
を含む、請求項
7~10のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素。
【請求項12】
ゼアラレノン(ZEN)を分解するための、請求項
7~11のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素の使用。
【請求項13】
請求項
7~11のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素を含む組成物であって、好ましくは食品添加物もしくは飼料添加物または食品製品もしくは飼料製品である、該組成物。
【請求項14】
疾患の治療または予防において使用するための、請求項
7~11のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素または
請求項13記載の組成物。
【請求項15】
請求項
7~11もしくは14のいずれか一項記載のα/β加水分解酵素または
請求項13~14のいずれか一項記載の組成物を含む、キット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
さらに本発明は、本発明のα/β加水分解酵素または本発明の組成物を含むキットに関係する。
[本発明1001]
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%以上の配列同一性を有する配列
を含むα/β加水分解酵素の安定性を増加させるための方法であって、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含み、
該アミノ酸が、置換されるアミノ酸と比べてハイドロパシーインデックスがより負であるアミノ酸で置換され、
該ハイドロパシーインデックスが、KyteとDoolittleのハイドロパシーインデックスによって決定され、
該置換する工程によって、増加した安定性を持つα/β加水分解酵素を得る、
該方法。
[本発明1002]
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、および/または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
にある少なくとも1つのアミノ酸を置換する工程を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、T、G、A、M、C、F、LまたはVから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸が、R、K、N、Q、D、E、H、P、Y、W、S、TまたはGから選択され、より好ましくはR、K、N、Q、D、E、HまたはPから選択される、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
アミノ酸が、R、D、H、G、NまたはPから選択されるアミノ酸、好ましくはR、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、より好ましくはアミノ酸がRまたはNから選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1005]
アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→N、Q→K、F→Yおよび/またはV→Cのうちの1つまたは複数から選択され、好ましくはアミノ酸置換が、V160A、G185R、G185S、A186P、A186R、A188D、A188H、A188N、A188G、A188R、S189D、P190H、M191D、G199E、I200A、I200V、H203N、Q205K、F183Yおよび/またはV197Cのうちの1つまたは複数から選択され、より好ましくはアミノ酸置換が、G185R、A186R、A188R、A188D、A188H、A188Nおよび/またはM191Dから選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1006]
増加した安定性が、GRAVY値の減少、pH安定性の増加および/または温度安定性の増加である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1007]
本発明1004、1005または1006のいずれかの方法によって得ることができるα/β加水分解酵素。
[本発明1008]
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:1のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
[本発明1009]
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列、または
SEQ ID NO:1の145~218位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の184~190位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の185~191位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の201~208位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該アミノ酸置換が、V→A、G→R、G→S、A→P、A→R、A→D、A→H、A→N、A→G、S→D、P→H、M→D、G→E、I→A、I→V、H→NおよびQ→Kから選択され、かつ/または
該アミノ酸が、P、R、D、H、GまたはNから選択されるアミノ酸で置換され、好ましくは該アミノ酸がR、D、H、GまたはNから選択され、より好ましくは該アミノ酸がRまたはNから選択される、
該α/β加水分解酵素。
[本発明1010]
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列、または
SEQ ID NO:6の161~235位に対応する配列に対して58%超の配列同一性を有する配列
を含むポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素であって、
該ポリペプチド配列が、
・SEQ ID NO:1の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:2の159~204位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:3、4もしくは5の160~205位に対応する位置、または
・SEQ ID NO:6の176~222位に対応する位置
に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
該α/β加水分解酵素が、SEQ ID NO:6のポリペプチド配列を有するα/β加水分解酵素のGRAVY値と比較して少なくとも0.6%、より負のGRAVY値を有する、
該α/β加水分解酵素。
[本発明1011]
アミノ酸置換
・G→RおよびA→N、好ましくはG185RおよびA188N、
・G→SおよびA→R、好ましくはG185SおよびA188R、
・G→R、A→R、A→H、S→D、P→HおよびM→D、好ましくはG185R、A186R、A188H、S189D、P190HおよびM191D、
・V→A、G→R、A→N、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A188N、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→S、A→R、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185S、A188R、G199E、I200A、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→E、I→A、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G199E、I200A、H203NおよびQ205K
・V→A、G→R、A→R、A→H、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、
・V→A、G→R、A→R、A→H、S→D、P→H、M→D、G→E、I→V、H→NおよびQ→K、好ましくはV160A、G185R、A186R、A188H、S189D、P190H、M191D、G199E、I200V、H203NおよびQ205K、ならびに/または
F→YおよびV→C、好ましくはF183YおよびV197C
を含む、前記本発明のいずれかのα/β加水分解酵素。
[本発明1012]
ゼアラレノン(ZEN)を分解するための、前記本発明のいずれかのα/β加水分解酵素の使用。
[本発明1013]
前記本発明のいずれかのα/β加水分解酵素を含む組成物であって、好ましくは食品添加物もしくは飼料添加物または食品製品もしくは飼料製品である、該組成物。
[本発明1014]
疾患の治療または予防において使用するための、前記本発明のいずれかのα/β加水分解酵素または組成物。
[本発明1015]
前記本発明のいずれかのα/β加水分解酵素または組成物を含む、キット。
【国際調査報告】