(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】密封システムの安定化ジルコニア
(51)【国際特許分類】
F01D 5/28 20060101AFI20220720BHJP
F01D 11/12 20060101ALI20220720BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
F01D5/28
F01D11/12
F02C7/28 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556405
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020054898
(87)【国際公開番号】W WO2020193043
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ゾイス,ディミトリオス
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202EA08
3G202KK04
3G202KK27
(57)【要約】
本発明は、ガスタービン用の密封システムに関するものであり、シール部はステータ(4)と、ステータ(4)と向かい合うブレード先端部(25)を有するブレード(3)と、を含んでいる。ブレードは保護セラミックコーティング(21)を含み、それは部分安定化ジルコニアから作成された内部セラミック層(19)を有し、また、垂直亀裂の形状で、少なくとも1つの部分的にセグメント化された微細構造を有する。セラミックコーティング(21)は更に、安定化ジルコニアから作成されまたセグメント化された微細構造を有する外部セラミック層を含む。好ましくは全翼形表面に保護セラミックコーティングが供されている。セラミックコーティング(16)を有するケーシングと向かい合うブレードの端部(25)に安定化ジルコニア被覆があると、より良好な密封システムが得られるであろう。ステータ(4)は、摩耗性のコーティング(15)を含んでおり、それは少なくとも1つの、安定化ジルコニア又はイットリア安定化ジルコニアから作成された外部セラミックコーティングを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封システム(1)であって、
少なくとも、
ステータ(4)またはケーシング(4)を含み、
前記ステータ(4)または前記ケーシング(4)は第1のセラミックコーティング(15)を有し、
前記第1のセラミックコーティング(15)は、ブレード(3)の端部(25)に向かい合っており、
前記第1のセラミックコーティング(15)は、
好ましくは、PSZからなり好ましくは少なくとも15%および最大でも35%の気孔率を有する、第1の内部セラミックコーティング(16)と、
FSZ又はYBZOからなり好ましくは25%~40%の気孔率を有する、第1の外部セラミックコーティング(17)と、
を有し、
また、
ブレード(3)を含み、
前記ブレード(3)は、前記ステータ(4)または前記ケーシング(4)または前記ケーシング(4)の前記第1のセラミックコーティング(15)、に向かい合っており、
前記ブレード(3)の前記端部(25)には第2のセラミックコーティング(21)が存在しており、
前記第2のセラミックコーティング(21)は、
部分的にセグメント化された微細構造と、
125μmの最小厚さと、を有し、
PSZからなる、
第2の内部セラミックコーティング(19)と、
セグメント化された微細構造を有し、FSZからなる、第2の外部セラミックコーティング(20)と、
を含む、
密封システム。
【請求項2】
請求項1に記載の密封システムであって、
前記ブレード(3)の翼形部(14)上に、
PSZ製の内部セラミック翼形コーティング(22)と、
前記ブレード(3)の前記翼形部(14)上にある、FSZ製の外部セラミック翼形部(23)と、を含む、
セラミック翼形部(24;22,23)が存在する、密封システム。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかまたは両方に記載の密封システムであって、
前記第2のセラミックコーティング(21;19,20)は、セグメント化された微細構造から構成されている、密封システム。
【請求項4】
前述の請求項1、2または3のいずれか1項に記載の密封システムであって、
前記セラミック翼形コーティング(24;22,23)は、セグメント化された微細構造から構成されている、密封システム。
【請求項5】
前述の請求項1、2または3のいずれか1項に記載の密封システムであって、
前記第1の内部セラミックコーティング(16)は、セグメント化された微細構造から構成されてない、密封システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封システムにおいて摩耗性のものとして作用するプレート上のチップに基づく安定化ジルコニア(英:Fully stabilized Zirconia)に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン部で現在使用されている摩耗性のコーティングは、高気孔率セラミックス(25%以上)である。具体的には、現代の大型ガスタービン(LGT(英:Large Gas Turbine))で現在使用されている典型的な摩耗性のコーティングは、YBZO(イッテルビア安定化ジルコニア)コーティングである。コーティングの全体的な気孔率を増加させるために、セラミック粉末と共に散逸物としてのポリエステルが噴霧される。高い気孔率は、摩耗性のものの最も重要な要素である、なぜならば、それはブレード端部がそれに接して擦り合わされる間に良好な摩耗性を可能にすることができるからである。新しいLGTでは、タービン入口温度(TIT)は1873K以上と推定される。これらの温度では、TBCはプライムリライアント(英:prime reliant)であると考えられる。つまり、部品の替えがきかない構成要素であることを意味する。セラミック被覆が失われると、この温度での下地金属の露出は、その素早い劣化を導き、部品は交換されなければならない。
【0003】
同様に、第1列または第2列のブレード端部がTBCで被覆されていない場合、それらは素早く劣化し、端部上のTBCコーティングの重要性を示す。端部上のTBCコーティングは、下地金属を保護するために十分な厚さでなければならず、リングセグメント上の摩耗性のコーティングとの接触中に擦り取られないように十分に強靭にすべきである。
【0004】
現在まで、使用されている典型的なTBC端部コーティングは、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)であるが、このコーティングは、より高い温度で残存する特性を欠いている。最新世代のIGTに見られるより高い温度に対処するために、TBC用の新しい化学物質が開発された。安定化ジルコニア(FSZ)コーティングとして知られるこの新しい化学物質は、標準的な8YSZコーティングと比較して、より高い化学相安定性とより良好な焼結抵抗を組み合わせている。しかし、新しい化学物質の難点は、靭性も更により低いことである。これは、それらが摩耗性コーティングのような相手材(英:counterbody)に対して比較的容易に擦り取られ得ることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上述した問題を克服することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題は、請求項1に記載の密封システムによって解決される。
【0007】
さらなる有利な点が、従属クレームにリストアップされており、それらはさらなる利点をもたらすために互いに任意に組み合わせることができる。
【0008】
FSZをその靭性を最大にする微細構造を有して堆積させることが提案される。この微細構造はセグメント化される。コーティングは、その中に垂直方向亀裂が形成されるほどに、緻密に堆積される。セグメント化された微細構造は、同じ化学構造の多孔質コーティングと比較して、著しく改善された靭性およびエロージョン耐性と共に、良好な熱歪特性を兼ね備えることが、十分に立証されている。FSZコーティングのセグメント化された微細構造の靭性は、15%多孔質FSZの靭性と比較して、3倍以上高いこと、が示されている。
【0009】
本発明の新規性は、ブレードの先端上のFSZコーティングを摩耗性のコーティングとして使用することを可能にすることにある。セグメント化されたFSZの著しく改善された靭性は、摩耗性のものが擦り取られ、逆にならないことを確実にするであろう。
【0010】
本発明の利点は、以下の通りである。
引き継がれた低靭性を有する高温安定コーティングは、微細構造と共に堆積され得て、当該微細構造は、その靭性およびその摩耗特性を著しく増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【0012】
図面および明細書は、本発明の1つまたは複数の例を示すにすぎない。
【0013】
密封システム1はケーシング4又はステータ4を備える。
【0014】
ステータ4又はケーシング4は、好ましくは基材10を有し、これは特には金属性であり、その上に好ましくは第1の内部セラミックコーティング16が施されている。好ましくは、この第1の内部セラミックコーティング16は、好ましくは少なくとも15%および最大35%の気孔率を有する多孔質PSZ(部分安定化ジルコニア(英:partially stabilized zirconia))コーティングである。
【0015】
第1の内部セラミックコーティング16の上には、第1の外部セラミックコーティング17が施されており、これはYBZO(Yb2O3安定化ジルコニア)又は安定化ジルコニア(FSZ)であり得て、両者は好ましくは25%~40%の間の気孔率を有する。
【0016】
両者は第1のセラミックコーティング15を形成する。
【0017】
密封システム1の他の部分は、ブレード3であり、ここでは、端部25のみが示されている。ブレード3は、端部25上に第2の内部セラミックコーティング19を有し、当該第2の内部セラミックコーティング19は、セグメント化された微細構造の部分安定化ジルコニア(PSZ)コーティングを含み、好ましくは少なくとも125μmの厚さである。
【0018】
このPSZコーティング19の上に、第2の外部セラミックコーティング20が塗布されており、これはセグメント化されており、そして微細構造及び安定化ジルコニア(FSZ)化学構造と類似のものである。
【0019】
両者は第2のセラミックコーティング21を形成する。
【0020】
ブレード3は、特には金属基材13を含み、当該金属基材13は、特にニッケルベースまたはコバルトベースの超合金であるが、任意のCMCまたは任意のセラミック材料であってもよい。
【0021】
ケーシングの基材10、13上又はブレード3上の全てのコーティング15、21、24に対して、基材10、13とセラミックコーティング16、19、22との間には、ここには示されていない任意のボンドコート、特に金属被覆(NiCoCrAlY、…)を設けることができる。
【0022】
ブレード3は、その翼形部14上に、セラミック翼形部コーティング24も有している。
【0023】
翼形部14上のこのセラミック翼形部コーティング24(22、23)は、端部25上のセラミックコーティングと理想的には同じ組成および微細構造を有することができ、これは、内部セラミック翼形部コーティング22および外部セラミック翼形部コーティング23を有するPSZの上のセグメント化されたFSZを意味する。
【0024】
それは、微細組織に関して異なっていてもよいが、組成に関しては好ましくない。
【符号の説明】
【0025】
1 密封システム
4 ステータまたはケーシング
3 ブレード
14 ブレードの翼形部
15 第1のセラミックコーティング
25 ブレード3の端部
16 第1の内部セラミックコーティング
17 第1の外部セラミックコーティング
19 第2の内部セラミックコーティング
20 第2の外部セラミックコーティング
21 第2のセラミックコーティング
22 内部セラミック翼形コーティング
23 外部セラミック翼形部
24 セラミック翼形部
【手続補正書】
【提出日】2022-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封システム(1)であって、
少なくとも、
ステータ(4)またはケーシング(4)を含み、
前記ステータ(4)または前記ケーシング(4)は第1のセラミックコーティング(15)を有し、
前記第1のセラミックコーティング(15)は、ブレード(3)の端部(25)に向かい合っており、
前記第1のセラミックコーティング(15)は、
PSZから
なる第1の内部セラミックコーティング(16)と、
FSZ又はYBZOから
なる第1の外部セラミックコーティング(17)と、
を有し、
また、
前記ブレード(3)を含み、
前記ブレード(3)は、前記ステータ(4)または前記ケーシング(4)または前記ケーシング(4)の前記第1のセラミックコーティング(15)、に向かい合っており、
前記ブレード(3)の前記端部(25)には第2のセラミックコーティング(21)が存在しており、
前記第2のセラミックコーティング(21)は、
部分的にセグメント化された微細構造と、
125μmの最小厚さと、を有し、
PSZからなる、
第2の内部セラミックコーティング(19)と、
セグメント化された微細構造を有し、FSZからなる、第2の外部セラミックコーティング(20)と、
を含む、
密封システム。
【請求項2】
請求項1に記載の密封システムであって、
前記ブレード(3)の翼形部(14)
にはセラミック翼形コーティング(24;22,23)が存在し、
前記セラミック翼形コーティング(24;22,23)は、PSZ
からなる内部セラミック翼形コーティング(22)と、
FSZ
からなる外部セラミック翼形部(23)と、を含む、
密封システム。
【請求項3】
請求項
2に記載の密封システムであって、
前記セラミック翼形コーティング(24;22,23)は、セグメント化された微細構造から構成されている、密封システム。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか1項に記載の密封システムであって、
前記第1の内部セラミックコーティング(16)は、セグメント化された微細構造から構成されて
いない、密封システム。
【請求項5】
請求項1
から4のいずれか1項に記載の密封システムであって、
前記第2のセラミックコーティング(21;19,20)は、セグメント化された微細構造から構成されている、密封システム。
【国際調査報告】