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特表2022-533904蛍光体の堅牢性および分散性を高める方法ならびに得られる蛍光体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】蛍光体の堅牢性および分散性を高める方法ならびに得られる蛍光体
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/61 20060101AFI20220720BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/85 20060101ALI20220720BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220720BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20220720BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220720BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20220720BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220720BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220720BHJP
【FI】
C09K11/61
C09K11/08 A
C09K11/08 G
C09K11/02 Z
C09K11/62
C09K11/64
C09K11/66
C09K11/67
C09K11/85
H01L33/50
H01L33/00 L
G02B5/20
F21V9/38
F21S2/00 431
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560923
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 US2020028946
(87)【国際公開番号】W WO2020236374
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】16/419,206
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】バッツ, マシュー デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, ジェイムス エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ドハーティー, マーク ダニエル
【テーマコード(参考)】
2H148
3K244
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA18
2H148AA19
3K244AA01
3K244AA02
3K244BA02
3K244BA07
3K244BA48
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244GA04
3K244LA06
4H001CC08
4H001CF01
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4H001XA73
4H001XA83
4H001YA25
5F142BA03
5F142BA14
5F142BA23
5F142CA02
5F142CC03
5F142CE03
5F142CE08
5F142CE13
5F142CG05
5F142DA02
5F142DA12
5F142DA13
5F142DA14
5F142DA48
5F142DA52
5F142DA63
5F142DA73
5F142FA14
5F142FA16
5F142FA26
5F142FA28
5F142GA14
5F142GA21
(57)【要約】
簡潔には、一態様では、本発明は、固体の形態の安定化Mn4+ドープ蛍光体およびそのようなドープ蛍光体を含有する組成物を製造する方法に関する。そのような方法は、a)KHPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、界面活性剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む溶液と、b)固体の形態の式IのMn4+ドープ蛍光体とを組み合わせることを含み得、式Iは、A[MF]:Mn4+であり得る。この方法は、固体の形態の安定化Mn4+ドープ蛍光体を単離することをさらに含むことができる。式Iにおいて、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり得る。式Iにおいて、Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり得る。式Iにおいて、xは[MF]イオンの電荷の絶対値であり、yは5、6または7である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)KHPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、界面活性剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む溶液と、b)固体の形態の式IのMn4+ドープ蛍光体とを組み合わせること、
[MF]:Mn4+

および、固体の形態の安定化Mn4+ドープ蛍光体を単離すること
を含み、式中、
Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり、
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり、
xは、前記[MF]イオンの電荷の絶対値であり、
yは、5、6または7である、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの物質と組み合わせる前に、式Iの前記Mn4+ドープ蛍光体を、高温で気体の形態のフッ素含有酸化剤と接触させて、蛍光体生成物を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Mは、Si、Ge、Ti、またはそれらの組み合わせであり、
Aは、Na、K、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式Iの前記蛍光体がKSiF:Mn4+である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの物質がKHPOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの物質が前記界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの物質が、前記界面活性剤およびKHPOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液が水性であり、Hをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、1-オクタデセン、イソノルボルニルアクリレート、水、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの物質が前記界面活性剤を含み、前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、オレイン酸カリウム、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、およびソルビン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式Iの前記Mn4+ドープ蛍光体が、式Iの蛍光体を含むコアと、前記コアに配置された複合コーティングとを含み、前記複合コーティングが、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化マグネシウム、フッ化イットリウム、フッ化スカンジウム、フッ化ランタン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属フッ化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
a)KHPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質、およびb)式IのMn4+ドープ蛍光体
[MF]:Mn4+

式中、
Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり、
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり、
xは、前記[MF]イオンの電荷の絶対値であり、
yは、5、6または7である、
を含む、組成物。
【請求項13】
Mは、Si、Ge、Ti、またはそれらの組み合わせであり、
Aは、Na、K、またはそれらの組み合わせである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
式Iの前記蛍光体がKSiF:Mn4+である、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの物質が、KHPOおよびフッ化マグネシウムを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
式Iの前記Mn4+ドープ蛍光体が、式Iの蛍光体を含むコアと、前記コアに配置されたマンガン不含有複合コーティングとを含み、前記マンガン不含有複合コーティングが、式IIIの化合物と、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化マグネシウム、フッ化イットリウム、フッ化スカンジウム、フッ化ランタン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属フッ化物とを含み、
[M](III)
式中、Aは、H、Li、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり、Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり、xは、前記[M]イオンの電荷の絶対値であり、yは5、6または7である、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって製造された安定化Mn4+ドープ蛍光体を含む表示装置。
【請求項18】
前記表示装置は、テレビ、コンピュータモニタ、携帯電話または従来の電話、デジタルフォトフレーム、タブレット、自動車用ディスプレイ、電子書籍リーダ、電子辞書、デジタルカメラ、電子キーボード、またはゲーム装置を含む、請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
請求項1に記載の方法によって製造された安定化Mn4+ドープ蛍光体を含む照明装置。
【請求項20】
蛍光体粒子を含み、1)リン含有部分および炭素含有部分を含む組成物;2)前記リン含有部分および金属フッ化物を含有する組成物;3)前記リン含有部分および前記炭素含有部分および前記金属フッ化物を含有する組成物;および4)アルキルホスフェート化合物を含まない前記リン含有部分を含む組成物からなる群から選択される少なくとも1つの表面組成物を前記蛍光体粒子の表面に含む蛍光体組成物であって、前記蛍光体粒子は、式IのMn4+ドープ蛍光体を含み、
[MF]:Mn4+

式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり、
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり、
xは、前記[MF]イオンの電荷の絶対値であり、
yは、5、6または7である、蛍光体組成物。
【請求項21】
前記金属フッ化物がフッ化マグネシウムを含む、請求項20に記載の蛍光体組成物。
【請求項22】
前記リン含有部分がリン酸部分を含む、請求項20に記載の蛍光体組成物。
【請求項23】
前記炭素含有部分が、エチレンジアミン四酢酸、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、オレイン酸カリウム、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ソルビン酸カリウム、およびそれらの誘導体または塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項20に記載の蛍光体組成物。
【請求項24】
前記蛍光体粒子が、A)室温で1時間液状の水に曝した後の量子効率が、水に曝す前に示した前記量子効率の50%~100%であること、またはB)85℃で100時間、85%の相対湿度に曝した場合の量子効率損失が40%未満であることを示す、請求項20に記載の蛍光体組成物。
【請求項25】
前記粒子を含有する懸濁液の超音波処理前の前記蛍光体粒子のD50粒径が30μm以下であり、超音波処理後の前記蛍光体粒子の前記D50粒径が20μm以下である、請求項20に記載の蛍光体組成物。
【請求項26】
請求項20に記載の蛍光体組成物を含む表示装置。
【請求項27】
請求項20に記載の蛍光体組成物に放射的に結合されている、および/または蛍光体組成物を含む発光ダイオード装置。
【請求項28】
前記発光ダイオード装置がミニLEDまたはマイクロLEDである、請求項27に記載の発光ダイオード装置。
【請求項29】
a)前記発光ダイオード装置が、前記蛍光体組成物が堆積されたLEDチップを含み、および/またはb)前記組成物が、フィルムの形態のポリマー樹脂に分散されている、請求項27に記載の発光ダイオード装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国特許第7,358,542号明細書、米国特許第7,497,973号明細書、および米国特許第7,648,649号明細書に記載されているような、Mn4+によって活性化された複合型のフッ化物材料に基づく赤色発光蛍光体は、YAG:Ceのような黄色/緑色発光蛍光体と組み合わせて利用して、青色発光ダイオード(LED)から、現行の蛍光灯、白熱灯、およびハロゲンランプにより作られるものと同等の温白色光(黒体軌跡におけるCCT<5000K、演色評価数(CRI)>80)を成し遂げることができる。これらの材料は青色光を強く吸収し、約610nm~658nmの範囲で効率的に発光し、深い赤色/NIR発光はほとんどない。したがって、眼の感受性が低い、深い赤での顕著な発光を有する赤色蛍光体と比較して、発光効率が最大化される。量子効率は、青色(440~460nm)励起下で85%を超えることができる。さらに、表示に赤色蛍光体を使用すると、高い色域および効率を得ることができる。
【0002】
色の安定性が改善されたMn4+ドープ複合型フッ化物蛍光体を作製する方法は、米国特許第8,906724号明細書、ならびにGeneral Electric CompanyまたはCurrentに譲渡された他の特許および特許出願に記載されている。しかし、照明および表示の用途における優れたパフォーマンスを維持しながら、複合型フッ化物蛍光体の安定性および分散性をさらに改善することが、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,358,542号明細書
【特許文献2】米国特許第7,497,973号明細書
【特許文献3】米国特許第7,648,649号明細書
【特許文献4】米国特許第8,906724号明細書
【発明の概要】
【0004】
簡潔には、一態様では、本発明は、固体の形態の安定化Mn+4ドープ蛍光体を製造する方法に関する。そのような方法は、a)K HPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、界面活性剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む溶液と、b)固体の形態の式IのMn+4ドープ蛍光体とを組み合わせることを含み得、式Iは、A[MF]:Mn+4であり得る。この方法は、固体の形態の安定化Mn4+ドープ蛍光体を単離することをさらに含むことができる。式Iにおいて、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり得る。式Iにおいて、Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり得る。式Iにおいて、xは[MF]イオンの電荷の絶対値であり、yは、5、6または7である。
【0005】
本発明の別の態様は、a)K HPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質と、b)式IのMn4+ドープ蛍光体とを含む組成物に関し、式Iは、A[MF]:Mn4+である。式Iにおいて、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり得る。式Iにおいて、Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり得る。式Iにおいて、xは[MF]イオンの電荷の絶対値であり、yは5、6または7である。
【0006】
本発明のさらに別の態様は、蛍光体粒子を含み、1)リン含有部分および炭素含有部分を含む組成物;2)リン含有部分および金属フッ化物を含有する組成物;3)リン含有部分および炭素含有部分および金属フッ化物を含有する組成物;および4)アルキルホスフェート化合物を含まないリン含有部分を含む組成物からなる群から選択される少なくとも1つの表面組成物をそれらの表面に含む蛍光体組成物を対象とし、これにおいて蛍光体粒子は、式IのMn4+ドープ蛍光体を含み、
[MF]:Mn4+
式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり;
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり;
xは[MF]イオンの電荷の絶対値であり;yは、5、6または7である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明が、図面全体にわたって同様の文字が同様の部分を表す添付の図面を参照して読まれるときに、よりよく理解されるであろう。
図1】本発明の一実施形態によるLEDパッケージの概略的な断面図である。
図2】本発明の別の実施形態によるLEDパッケージの概略的な断面図である。
図3】本発明のさらに別の実施形態によるLEDパッケージの概略的な断面図である。
図4】本発明の一実施形態によるLEDパッケージの切断側面斜視図である。
図5】表面実装デバイス(SMD)バックライトLEDの概略的な斜視図である。
図6】バックライトユニットまたはモジュールを示す。
図7】バックライトユニットまたはモジュールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一態様では、本発明は、固体の形態の安定化Mn4+ドープ蛍光体を製造する方法に関する。そのような方法は、a)K HPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、界面活性剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む溶液と、b)固体の形態の式IのMn4+ドープ蛍光体とを組み合わせることを含み得る。実施形態では、上記物質の量は、式IのMn4+ドープ蛍光体の量に対して0.01~20重量%、例えば1%~15%、および2%~10%である。
【0009】
別の態様では、本発明は、a)K HPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、界面活性剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの物質と、b)式IのMn4+ドープ蛍光体とを含む組成物に関する。
【0010】
式IのMn4+ドープ蛍光体は、配位子として作用するフッ化物イオンによって取り囲まれた少なくとも1つの配位の中心を含み、必要に応じて対イオンによって電荷が補われた複合型フッ化物材料または配位化合物である。例えば、KSiF:Mn4+では、配位の中心はSiであり、対イオンはKである。複合型フッ化物は、単純な二元フッ化物の組み合わせとして記載されることがあるが、そのような表現は、配位の中心の周りの配位子の配位数を示すものではない。角括弧(簡略化のために省略することがある)は、それらが包含する錯イオンが単純なフッ化物イオンとは異なる新しい化学種であることを示す。活性化イオン(Mn4+)はまた、配位の中心として作用し、ホスト格子の中心の一部、例えばSiを置換する。ホスト格子(対イオンを含む)は、活性化イオンの励起および発光特性をさらに改変することができる。
【0011】
特定の実施形態では、蛍光体の配位の中心、すなわち式IのMは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、またはそれらの組み合わせである。より具体的には、配位の中心は、Si、Ge、Ti、またはそれらの組み合わせであってもよい。対イオン、または式IのAは、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせ、より詳細にはKであってもよい。式Iの蛍光体の例は、K[SiF]:Mn4+、K[TiF]:Mn4+、K[SnF]:Mn4+、Cs[TiF]:Mn4+、Rb[TiF]:Mn4+、Cs[SiF]:Mn4+、Rb[SiF]:Mn4+、Na[TiF]:Mn4+、Na[ZrF]:Mn4+、K[ZrF]:Mn4+、K[BiF]:Mn4+、K[YF]:Mn4+、K[LaF]:Mn4+、K[GdF]:Mn4+、K[NbF]:Mn4+、K[TaF]:Mn4+を含む。特定の実施形態では、式Iの蛍光体はKSiF:Mn4+である。
【0012】
式IのMn4+ドープ蛍光体中のマンガンの量は、MnおよびM(Siなど)の総モル数に基づいて約1.2mol%(総蛍光体重量に基づいて約0.3wt%)~約21mol%(約5.1wt%)、特に約1.2mol%(約0.3wt%)~約16.5mol%(約4wt%)の範囲であり得る。特定の実施形態では、マンガンの量は、約2mol%(約0.5wt%)~13.4mol%(約3.3wt%)、または約2mol%~12.2mol%(約3wt%)、または約2mol%~11.2mol%(約2.76wt%)、または約2mol%~約10mol%(約2.5wt%)、または約2mol%~5.5mol%(約1.4wt%)、または約2mol%~約3.0mol%(約0.75wt%)の範囲であり得る。
【0013】
式IのMn4+ドープ蛍光体は、KHPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、界面活性剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせと組み合わせる前に、米国特許第8,906,724号明細書に記載されているように安定性を改善するためにアニーリングすることができる。そのような実施形態では、蛍光体生成物は、フッ素含有酸化剤を含む雰囲気と接触しながら、高温に保持される。フッ素含有酸化剤は、F、HF、SF、BrF、NHHF、NHF、KF、AlF、SbF、ClF、BrF、KrF、XeF、XeF、XeF、NF、SiF、PbF、ZnF、SnF、CdF、C~Cフルオロカーボン、またはそれらの組み合わせであってもよい。適切なフルオロカーボンの例としては、CF、C、C、CHF、CFCHFおよびCFCHFが挙げられる。特定の実施形態では、フッ素含有酸化剤はFである。雰囲気中の酸化剤の量は、特に時間および温度の変化と併せて、色安定性蛍光体を得るために変化させることができる。フッ素含有酸化剤がFである場合、雰囲気は少なくとも0.5%のFを含み得るが、いくつかの実施形態ではより低い濃度が有効であり得る。特に、雰囲気は、少なくとも5%のF、より具体的には少なくとも20%のFを含んでもよい。雰囲気は、フッ素含有酸化剤との任意の組み合わせで、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンをさらに含んでもよい。特定の実施形態において、雰囲気は、約20%のFおよび約80%の窒素で構成される。
【0014】
蛍光体が高温でフッ素含有酸化剤と接触する温度は、接触中に約200℃~約700℃、特に約350℃~約600℃、いくつかの実施形態では約500℃~約600℃の範囲の温度であり得る。蛍光体は、色安定性蛍光体に変換するのに十分な期間、酸化剤と接触する。時間と温度は相互に関連しており、例えば、温度を低下させながら時間を増加させるか、または時間を短縮しながら温度を増加させるなど、一緒に調整することができる。特定の実施形態では、時間は、少なくとも1時間、特に少なくとも4時間、より詳細には少なくとも6時間、最も詳細には少なくとも8時間である。高温で所望の期間保持した後、初期冷却期間にわたって酸化雰囲気を維持しながら、炉内の温度を制御された速度で低下させることができる。制御された冷却により温度を約200℃まで下げることができ、次いで、所望であれば制御を中止し得る。
【0015】
蛍光体をフッ素含有酸化剤と接触させる方法は重要ではなく、蛍光体を所望の特性を有する色安定性蛍光体に変換するのに十分な任意の方法で達成することができる。いくつかの実施形態では、蛍光体を含むチャンバは、チャンバが加熱されると過圧が発生するように供給されて、次いで封止され得、他の実施形態では、フッ素と窒素の混合物がアニールプロセス全体で流され、より均一な圧力を確実にする。いくつかの実施形態では、一定期間後に追加の用量のフッ素含有酸化剤を導入することができる。
【0016】
アニールされた蛍光体は、式IIの組成物の飽和またはほぼ飽和した水性フッ化水素酸溶液で処理することができ、
[MF
(II)
式中、
Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり;
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Hf、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり;
xは[MF]イオンの電荷の絶対値であり;
yは、5、6または7である。
【0017】
ほぼ飽和した溶液は、飽和溶液に添加された約1~5%過剰のHF水溶液を含む。溶液中のHFの濃度は、約25%(wt/vol)~約70%(wt/vol)、特に約40%(wt/vol)~約50%(wt/vol)の範囲である。より濃縮されていない溶液では、蛍光体のパフォーマンスが低下する可能性がある。使用される処理溶液の量は、約2~30ml/gの生成物、特に約5~20ml/gの生成物、より具体的には約5~15ml/gの生成物の範囲である。処理されアニールされた蛍光体を濾過によって単離し、酢酸やアセトンなどの溶媒で洗浄して汚染物質および微量の水を除去し、窒素下で保存することができる。
【0018】
処理後、蛍光体は、任意選択で、第2のより低い温度で気体の形態のフッ素含有酸化剤と接触させてもよい。第2の温度は、第1の温度と同じであってもよく、または第1の温度よりも低くてもよく、225℃以下、特に100℃以下、より具体的には90℃以下の範囲であってもよい。酸化剤と接触する時間は、少なくとも1時間、特に少なくとも4時間、より具体的には少なくとも6時間、最も具体的には少なくとも8時間であってもよい。特定の実施形態では、蛍光体は、約90℃の温度で少なくとも8時間酸化剤と接触する。酸化剤は、第1のアニーリング工程で使用されるものと同じであっても、異なっていてもよい。特定の実施形態では、フッ素含有酸化剤はFである。より具体的には、雰囲気は、少なくとも20%のFを含むことができる。蛍光体の金属による汚染を低減するために、蛍光体は、非金属の表面を有する容器に収容させてもよい。
【0019】
式IのMn4+ドープ蛍光体は、式Iの蛍光体を含むコアと、コアに配置されたマンガン不含有シェルまたは複合コーティングとで構成されたコア-シェル構造を有してもよい。マンガン不含有複合コーティングは、式IIIの化合物および金属フッ化物を含む
[M
(III)
式中、Aは、H、Li、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり;
は、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり;
xは[M]イオンの電荷の絶対値であり;
yは、5、6または7である。
【0020】
金属フッ化物は、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化マグネシウム、フッ化イットリウム、フッ化スカンジウム、およびフッ化ランタンのうちの1つまたは複数であってもよい。特定の実施形態では、式Iの蛍光体はK[SiF]:Mn4+である。金属フッ化物は、実施形態では、MgFであり得る。式Iのコア-シェルMn4+ドープ蛍光体およびそれらを調製する方法は、国際公開第2018/093832号パンフレットに記載されている。上述のように、式IのMn4+ドープ蛍光体は、以下の物質:KHPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、界面活性剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせの1つまたは複数を含む溶液または懸濁液と組み合わせる(または組成物の一部を形成する)ことができる。KHPO、リン酸アルミニウム、シュウ酸、リン酸、界面活性剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせは、本明細書では物質と呼ばれるものとする。蛍光体と物質の重量比は、200:1~1:1であってもよく、より好ましくは50:1~4:1である。適切なキレート剤の例には、クエン酸アンモニウム、クエン酸カリウム、イミノ二酢酸(IDA)、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が含まれるが、これらに限定されない。界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、もしくはカチオン性、またはそれらの混合物であり得る。適切な界面活性剤の例としては、脂肪族アミン、フルオロカーボン界面活性剤、ステアリン酸およびステアリン酸塩、ならびにオレイン酸およびオレイン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。適切な非イオン性界面活性剤としては、TWEEN(登録商標)ブランドで市販されているポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、3Mから入手可能なNOVEC(商標)アンモニウムフルオロアルキルスルホンアミドなどのフルオロカーボン界面活性剤、およびポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルが挙げられる。界面活性剤(または他の表面剤)は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、オレイン酸カリウム、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(Pluronic F-127として販売されているものなど)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween 20として販売されているものなど)、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ソルビン酸カリウム、ソルビタンモノオレエート(Span 80として販売されているものなど)、およびヘキサメタリン酸ナトリウムの1つ以上であり得る。適切な界面活性剤のさらなる例は、米国特許出願公開第2015/0329770号明細書、米国特許第7,985,723号明細書およびKikuyama,et al.,IEEE Transactions on Semiconductor Manufacturing,vol.3,No.3,Aug.1990,pp.99-108に記載されている。特に、物質はKHPOを含み得る。上述のように、物質は界面活性剤も含むことができる。物質は、界面活性剤およびKHPOの両方を含むことができる。
【0021】
界面活性剤が一部を形成する溶液は、以下の溶媒:1-オクタデセン、イソノルボルニルアクリレート、水、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの1つまたは複数を含み得る。本発明の有機溶液は、少量の水を含み得ることに留意されたい。例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に水が存在してもよく(Karl Fischerにより0.05%未満)、オレイン酸カリウム中も少量の水が存在してもよい。界面活性剤が水溶液の一部である場合、そのような水溶液はHも含むことができる。Hが使用される場合、これは、蛍光体のHに対する重量で200:1~1:1、より好ましくは50:1~3:1の範囲であり得る。
【0022】
表示装置または照明装置または器具の一部として使用され得るLEDパッケージまたは発光アセンブリまたはランプ10が、図1に示されている。LEDパッケージ10は、LEDチップ12として示される半導体放射源と、LEDチップに電気的に取り付けられたリード14とを含む。リード14は、より厚いリードフレーム16によって支持された細いワイヤであってもよく、またはリードは自己支持電極であってもよく、リードフレームは省いてもよい。リード14は、LEDチップ12に電流を供給し、したがってLEDチップを放射させる。
【0023】
ランプは、発光した放射線が蛍光体に向けられたときに白色光を生成することができる任意の半導体青色またはUV光源を含むことができる。一実施形態では、半導体光源は、様々な不純物がドープされた青色発光LEDである。したがって、LEDは、任意の適切なIII-V、II-VIまたはIV-IV半導体層に基づく半導体ダイオードを含むことができ、約250~550nmの発光波長を有することができる。特に、LEDは、GaN、ZnSeまたはSiCを含む少なくとも1つの半導体層を含むことができる。例えば、LEDは、式InGaAlN(式中、0≦iであり;0≦j;0≦k、かつ、i+j+k=1)で表される窒化化合物半導体を含み、約250nmより大きく約550nm未満の発光波長を有することができる。特定の実施形態では、チップは、約400~約500nmのピーク発光波長を有する近紫外または青色発光LEDである。このようなLED半導体は当技術分野で公知である。本明細書では、簡便にするため、放射線源をLEDと記載する。しかし、本明細書で使用される場合、この用語は、例えば半導体レーザダイオードを含むすべての半導体放射源を包含することを意味する。さらに、本明細書で説明する本発明の例示的な構造の一般的な説明は、無機LEDベースの光源を対象としているが、特に明記しない限り、LEDチップは別の放射源で置き換えられてもよく、半導体、半導体LED、またはLEDチップへのいずれかの言及は、限定はしないが有機発光ダイオードを含む任意の適切な放射源を表すにすぎないことを理解されたい。
【0024】
LEDパッケージ10では、蛍光体組成物22は、LEDチップ12に放射的に結合される。放射的に結合するとは、要素が互いに関連付けられているため、一方からの放射が他方に伝達されることを意味する。蛍光体組成物22は、任意の適切な方法によってLED12に堆積される。例えば、蛍光体の懸濁液を形成し、蛍光体層としてLED表面に適用することができる。1つのそのような方法では、蛍光体粒子がランダムに懸濁されたシリコーンスラリーをLEDの周りに配置する。この方法は、蛍光体組成物22およびLED12の可能な位置の単なる例示である。したがって、蛍光体組成物22は、LEDチップ12の上に蛍光体懸濁液をコーティングして乾燥させることによって、LEDチップ12の発光面の上方またはその直接上に、コーティングすることができる。シリコーン系懸濁液の場合、懸濁液は適切な温度で硬化される。シェル18および封入材20の両方は、白色光24がそれらの要素を透過できるように透明であるべきである。
【0025】
他の実施形態では、蛍光体組成物22は、LEDチップ12の上に直接形成される代わりに、封入材20内に散在する。蛍光体(粉末の形態)は、封入材20の単一領域内に、または封入材の全体積部にわたって散在させることができる。LEDチップ12によって発せられた青色光は、蛍光体組成物22によって発せられた光と混ざり合い、混合光は白色光として現れる。蛍光体を封入材20の材料内に散在させる場合、蛍光体粉末をポリマーまたはシリコーン前駆体に添加し得、LEDチップ12の周りに装填し、次いでポリマー前駆体を硬化させてポリマーまたはシリコーン材料を固化させることができる。他の既知の蛍光体散在法、例えば、トランスファー装填も使用され得る。
【0026】
さらに別の実施形態では、蛍光体組成物22は、LEDチップ12の上に形成される代わりに、シェル18の表面にコーティングされる。蛍光体組成物は、好ましくはシェル18の内面にコーティングされるが、所望であれば、蛍光体はシェルの外面にコーティングされてもよい。蛍光体組成物22は、シェルの表面全体またはシェルの表面の上部のみにコーティングされ得る。LEDチップ12によって放射されたUV/青色光は、蛍光体組成物22によって放射された光と混ざり、混ざった光は白色光として現れる。むろん、蛍光体は、任意の2つ、または3つすべての位置に、または任意の他の適切な位置に配置されてよく、例えばシェルとは別個に、またはLEDに組み込まれる。
【0027】
図2は、本発明によるシステムの第2の構造を示す。図1~4の対応する数字(例えば、図1の12および図2の112)は、特に明記しない限り、各図の対応する構造に関する。図2の実施形態の構造は、図1の構造と同様であるが、ただし蛍光体組成物122がLEDチップ112上に直接形成される代わりに、封入材120内に散在する。蛍光体(粉末の形態)は、封入材の単一領域内に、または封入材の全体積部にわたって散在させることができる。LEDチップ112によって放射された放射線(矢印124で示す)は、蛍光体122によって放射された光と混ざり、混ざった光は白色光124として現れる。蛍光体を封入材120内に散在させる場合、蛍光体粉末をポリマー前駆体に添加し、LEDチップ112の周りに装填することができる。次いで、ポリマーまたはシリコーン前駆体を硬化させて、ポリマーまたはシリコーンを固化させることができる。他の既知の蛍光体散在法、例えば、トランスファー成形も使用され得る。
【0028】
図3は、本発明によるシステムの第3の可能な構造を示す。図3に示す実施形態の構造は、図1の構造と同様であるが、ただし蛍光体組成物222が、LEDチップ212の上に形成される代わりに、エンベロープ218の表面にコーティングされる。蛍光体組成物222は、エンベロープ218の内面にコーティングされることが好ましいが、所望であれば、エンベロープの外面にコーティングされてもよい。蛍光体組成物222は、エンベロープの表面全体、またはエンベロープの表面の上部のみにコーティングされ得る。LEDチップ212によって放射された放射線226は、蛍光体組成物222によって放射された光と混ざり、混ざった光は白色光224として現れる。むろん、図1~3の構造を組み合わせることができ、蛍光体は、任意の2つ、または3つすべての位置に、または任意の他の適切な位置に配置されてよく、例えばエンベロープとは別個に、またはLEDに組み込まれる。
【0029】
上記の構造のいずれにおいても、ランプ10はまた、封入材に埋め込まれた複数の散乱粒子(図示せず)を含むことができる。散乱粒子は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、またはそれらの組み合わせを含み得る。散乱粒子は、LEDチップから放出された指向性光を、好ましくは無視できる量の吸収で効果的に散乱させる。
【0030】
図4の第4の構造に示すように、LEDチップ412が、反射カップ430内に取り付けられてもよい。カップ430は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、または当技術分野で知られている他の誘電性粉末などの誘電材料から作製される、またはそれでコーティングされてもよく、またはアルミニウムもしくは銀などの反射性の金属によってコーティングされてもよい。図4の実施形態の構造の残りの部分は、先の図のいずれかの構造と同じであり、2つのリード416、導線432、および封入材420を含むことができる。反射カップ430が、第1のリード416に支えられており、導線432が、LEDチップ412と第2のリード416とを電気的に接続するために用いられる。
【0031】
別の構造は、例えば図5に示すような表面実装デバイス(SMD)タイプの発光ダイオード550である。このSMDは、「側面発光型」であり、導光部材554の突出部分に発光窓552を有しており、特にバックライトの用途に有用である。SMDパッケージは、上で定義したようなLEDチップと、LEDチップから放出された光によって励起される蛍光体材料とを備えることができる。
【0032】
350~550nmの光を発するLED、および1つ以上の他の適切な蛍光体と共に使用される場合、得られる照明システムは、白色を有する光を生成する。
【0033】
別の実施形態では、図6は、本発明によるバックライトユニットまたはモジュール600を示し、これは光源602、導光板604、シートまたはフィルムの形態の遠隔蛍光体部606、フィルタ660、およびLCDパネル616を含む。また、バックライトユニット600は、プリズム612および輝度向上フィルム614を、任意選択で備えていてもよい。光源602は、青色発光LEDである。均一な照明を生成するために、光源602からの青色光は、最初に、青色光を拡散させる導光板604を通過する。また、LCDパネル616は、サブピクセルに配置されたカラーフィルタ、前面偏光子、背面偏光子、および液晶、ならびに電極を含む。一般に、LCDパネル616と輝度向上フィルム614との間には空気のスペースが存在する。輝度向上フィルム614は、反射偏光子フィルムであり、別様であればLCDの背面偏光子によって吸収される任意の無偏光を繰り返し反射することによって、効率を高める。輝度向上フィルム614は、いずれの他のフィルムをも介さずに、液晶表示パネル616の後方に配置されている。輝度向上フィルム614は、その透過軸が後方偏光子の透過軸と略平行になるように装着され得る。輝度向上フィルム614は、液晶パネル616の背面偏光子(図示せず)が通常吸収する白色光622をリサイクルしやすくし、そのため液晶表示パネル616の輝度を高める。
【0034】
遠隔蛍光体部606は、式Iの複合型フッ化物蛍光体の粒子608Aと、ポリマー樹脂に分散された第2の発光材料の粒子608Bとを含む。これは、一次光源と蛍光体材料とが別個の要素であり、蛍光体材料は単一の要素として一次光源と一体化されていないという意味において、「遠隔」なのである。一次光は、一次光源から放出され、1つまたは複数の外部媒体を通って進み、LED光源を蛍光体材料に放射的に結合する。本発明によるバックライトユニットは、構成が異なっていてもよいことが当業者に理解される。例えば、直接点灯させる構成を使用することができる。プリズム612がまた、代替の実施形態では、他の輝度向上構成要素によって、除去または置換されてもよい。所望であれば、輝度向上フィルム614を除去してもよい。
【0035】
別の実施形態で、図7は、バックプレーン702と、導光板704と、LED光源706と、取り付けブラケット708と、バックプレーン702に取り付けられたストリップ710の形態の遠隔蛍光体パッケージとを含むバックライトユニット700を示す。遠隔蛍光体部710は、取り付けブラケット708を介して、導光板704とLED光源706との間に取り付けられ、そうすることで、バックライト光源706から出射された光が、部分710に透過されて、次いで導光板704に入射する。バックライトユニットは、導光板704とバックプレーン702との間に配置された底部反射板と、導光板704の上方に配置された光学フィルムアセンブリとをさらに含み得る。
【0036】
安定化Mn4+ドープ蛍光体と放射的に結合されたLEDは、表示装置の一部を形成することができる。表示装置は、青色スペクトルの光を放射するミニ発光ダイオードまたはマイクロ発光ダイオードを含む、発光ダイオードに放射的に結合されたMn4+ドープ蛍光体を、含むことができる。マイクロ発光ダイオード(マイクロLED(micro LED)、マイクロLED(microLED)、マイクロLED(micro-LED)、mLED、およびμLEDとしても知られている)は、ディスプレイに利用される技術であり、それにおいて、画面の各ピクセルに対して少なくとも1つの小型LEDデバイスがあってもよく、またはピクセルごとに少なくとも1つを超える小型LEDデバイスがあってもよく、またそれらのLEDデバイスはそれぞれ赤色蛍光体および緑色蛍光体に結合されてもよい。そのような表示装置は、背面照明ユニットと、a)表示装置の背面照明ユニットの一部であり、LEDまたはマイクロLEDと直接的または間接的に接触している安定化Mn4+ドープ蛍光体、またはb)背面照明ユニットの一部であり、LEDまたはマイクロLEDに遠隔で結合され、任意選択的にフィルムの形態である、安定化Mn4+ドープ蛍光体とを含むことができる。安定化Mn4+ドープ蛍光体は、少なくとも1つのフィルタを介して背面照明ユニットに動作可能に接続されてもよく、背面照明ユニットは、発光ダイオードまたはマイクロ発光ダイオードを含む。表示装置では、Mn4+ドープ蛍光体は、当技術分野で知られている任意の方法で、表示装置の背面照明ユニットに動作可能に接続されてもよく、またはその一部であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明によるMn4+ドープ蛍光体は、1から300μmのスケール、より具体的には1から100μm、さらには1から50μm、1から20μm、または1から10μmのスケールの寸法を有するマイクロLEDのアレイを含む直接発光表示装置に使用される。マイクロLEDに結合された波長変換層において蛍光体粒子を含む直接発光表示装置を製造するための例示的な方法は、米国特許第9,111,464号明細書および米国特許第9,627,437号明細書に記載されており、これらの特許は両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明によるバックライトユニットまたは直接発光ディスプレイを含む装置には、TV、コンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、および半導体光源を含むディスプレイを有する他のハンドヘルド装置;および本発明によるMn4+ドープ蛍光体が含まれるが、これらに限定されない。実施形態では、本発明の蛍光体粒子は、LED、量子ドット、ミニLED、またはマイクロLEDを含む装置の一部である。ミニLEDは、50μm~300μmのサイズのLEDである。本発明による表示装置は、テレビ、コンピュータモニタ、携帯電話または従来の電話、デジタルフォトフレーム、タブレット、自動車ディスプレイ、電子書籍リーダ、電子辞書、デジタルカメラ、電子キーボード、またはゲーム装置、または画面を有する他の任意の電子装置であってもよい。
【0038】
本発明による装置は、Mn4+ドープ蛍光体に加えて、1つまたは複数の他の発光材料を含むことができる。約250~550nmの範囲の放射線を放出する青色または近紫外LEDと組み合わせて照明装置または器具で使用される場合、アセンブリによって放出される、結果として生じる光は白色光であり得る。他の蛍光体または量子ドット(QD)材料、例えば緑色、青色、黄色、赤色、橙色、または他の色の蛍光体またはQD材料をブレンドに使用して、得られる光の色をカスタマイズし、特定のスペクトルパワーの分布を生成することができる。他の実施形態では、材料は、多層構造で物理的に分離されてもよく、または多層構造の1つ以上のブレンドに存在してもよい。図1~5では、蛍光体組成物22は、単層ブレンド、または各層に1つ以上の蛍光体QD材料を含むまたは多層構造であってもよい。マイクロLED直接発光表示装置では、個々のマイクロLEDをMn4+ドープ蛍光体および他の蛍光体または量子ドット(QD)の材料に別々に結合して、所望の仕様を有する光を生成することができる。
【0039】
Mn4+ドープ蛍光体とともに、本発明による装置で使用するのに適した蛍光体は、以下を含むが、これらに限定されない:
((Sr1-z(Ca,Ba,Mg,Zn)1-(x+w)(Li,Na,K,Rb)Ce(Al1-ySi)O4+y+3(x-w)1-y-3(x-w),0<x≦0.10,0≦y≦0.5,0≦z≦0.5,0≦w≦x;
(Ca,Ce)ScSi12(CaSiG);
(Sr,Ca,Ba)Al1-xSi4+x1-x:Ce3+(SASOF));
(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu2+,Mn2+
(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu2+,Mn2+
(Sr,Ca)10(PO*nB:Eu2+(式中0<n≦1);SrSi*2SrCl:Eu2+;(Ca,Sr,Ba)MgSi:Eu2+,Mn2+;BaAl13:Eu2+;2SrO*0.84P*0.16B:Eu2+;(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu2+,Mn2+;(Ba,Sr,Ca)Al:Eu2+;(Y,Gd,Lu,Sc,La)BO:Ce3+,Tb3+;ZnS:Cu,Cl;ZnS:Cu,Al3+;ZnS:Ag,Cl;ZnS:Ag,Al3+
(Ba,Sr,Ca)Si1-n4-2n:Eu2+(式中0≦n≦0.2);(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu2+;(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu2+
(Y,Gd,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)5-a12-3/2a:Ce3+(式中0≦a≦0.5);(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu2+,Mn2+;NaGd:Ce3+,Tb3+;(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu2+,Mn2+;(Gd,Y,Lu,La):Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)S:Eu3+,Bi3+;(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu3+,Bi3+;(Ca,Sr)S:Eu2+,Ce3+;SrY:Eu2+;CaLa:Ce3+;(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu2+,Mn2+;(Y,Lu)WO:Eu3+,Mo6+
(Ba,Sr,Ca)Si:Eu2+(式中2b+4g=3m);Ca(SiO)Cl:Eu2+
(Lu,Sc,Y,Tb)2-u-vCeCa1+uLiMg2-w(Si,Ge)3-w12-u/2(式中-0.5≦u≦1,0<v≦0.1、また0≦w≦0.2);(Y,Lu,Gd)2-m(Y,Lu,Gd)CaSi6+m1-m:Ce3+,(式中0≦m≦0.5);
(Lu,Ca,Li,Mg,Y)、Eu2+および/またはCe3+ドープのα-SiAlON;(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu2+,Ce3+
β-SiAlON:Eu2+,Ba[Li(AlSi)N]:Eu2+,3.5MgO*0.5MgF*GeO:Mn4+
(Ca,Sr)1-c-fCeEuAl1+cSi1-c3,(式中0≦c≦0.2,0≦f≦0.2);
Ca1-h-rCeEuAl1-h(Mg,Zn)SiN3,(式中0≦h≦0.2,0≦r≦0.2);
Ca1-2s-tCe(Li,Na)EuAlSiN3,(式中0≦s≦0.2,0≦t≦0.2,s+t>0);(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+,Ce3+(CASN);(Ba,Sr)Si:Eu2+;Sr[LiAl]:Eu2+;およびSr[MgSiN]:Eu2+
【0040】
6+ドープ蛍光体も使用することができ、例示的な組成物は、BaAl26:U6+、BaO:U6+、BaZn(PO:U6+、およびBaBPO:U6+を含む。他のU6+ドープ蛍光体は、2018年3月8日に出願された米国特許出願公開第2019/0088827号明細書、米国特許出願第15/915341号明細書、および2018年9月7日に出願された米国特許出願第16/124520号明細書に開示されており、すべてはGeneral Electric Companyに譲渡されている。
【0041】
本発明による装置に使用するための量子ドット(QD)材料は、II-VI族の化合物、III-V族の化合物、IV-IV族の化合物、IV族の化合物、I-III-VI族の化合物、またはそれらの組み合わせであり得る。II-VI族の化合物の例には、CdSe、CdTe、CdS、ZnSe、ZnTe、ZnS、HgTe、HgS、HgSe、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、またはそれらの組み合わせが含まれる。III-V族の化合物の例には、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GalnNP、GalnNAs、GalnPAs、InAlNP、InAlNAs、InAlPAs、およびそれらの組み合わせが含まれる。IV族の化合物の例は、Si、Ge、SiC、SiGeが挙げられる。I-III-VI族カルコパイライト型化合物の例は、CuInS、CuInSe、CuGaS、CuGaSe、AgInS、AgInSe、AgGaS、AgGaSeおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
QD材料はコア/シェルQDであってもよく、例えばコア、コアにコーティングされた少なくとも1つのシェル、および1つまたは複数のリガンド、好ましくは有機ポリマー性リガンドを含む外側コーティングを含む。コア-シェルQDを作製するための例示的な材料には、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイヤモンドを含む)、P、Co、Au、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、MnS、MnSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si、Ge、Al、(Al,Ga,In)(S,Se,Te)、AlCO、および2つ以上のそのような材料の適切な組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。例示的なコア-シェル型QDには、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、CdSe/CdS/ZnS、CdSeZn/CdS/ZnS、CdSeZn/ZnS、InP/ZnS、PbSe/PbS、PbSe/PbS、CdTe/CdS、およびCdTe/ZnSが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
QD材料は、典型的には、それらの表面に共役した、配位した、会合した、または付着したリガンドを含む。特に、QDは、高温、高強度の光、外部ガス、および水分を含む環境条件に由来するQDを保護するリガンドを含むコーティング層を含むことができる。そのようなコーティング層はまた、凝集を制御するのに役立ち得、マトリクス材料におけるQDの分散を可能にすることができる。
【0044】
表示装置または照明装置で使用するための蛍光体組成物は、紫外線、紫色、または青色励起下で緑色のスペクトルのパワー分布をもたらす1つ以上の蛍光体を含み得る。本発明の文脈では、これは緑色蛍光体または緑色蛍光体材料と呼ばれる。緑色蛍光体は、セリウムドープイットリウムアルミニウムガーネット、より具体的には(Y,Gd,Lu,Tb)(Al,Ga)12:Ce3+(YAG)などの、緑色~黄緑色~黄色の範囲の光を放出する単一の組成物またはブレンドであってもよい。いくつかの実施形態では、LEDパッケージ10は、4200°K以下の色温度を有し、蛍光体組成物22に存在する唯一の赤色蛍光体は、Mn4+ドープ蛍光体、特にKSiF:Mn4+である。組成物は、緑色蛍光体をさらに含んでもよい。緑色蛍光体は、Ce3+ドープガーネットまたはガーネットのブレンド、特にCe3+ドープイットリウムアルミニウムガーネット、より具体的にはYAGであってもよい。赤色蛍光体がKSiF:Mn4+である場合、緑色蛍光体材料に対する赤色蛍光体の質量比は3.3未満であり得、これは、同様の組成の赤色蛍光体よりも大幅に低いが、Mnドーパントのレベルがより低い。Mn4+ドープ蛍光体と共に使用され得る他の緑色発光は、緑色発光QD材料およびβ-SiAlONが挙げられる。
【0045】
蛍光体ブレンド中の個々の蛍光体のそれぞれの比率は、所望の光出力の特性に応じて変化し得る。様々な実施形態の蛍光体ブレンドにおける個々の蛍光体の相対的な割合を調整することができ、それらの発光がブレンドされてLED照明装置に使用される場合、CIE色度図での所定のxおよびyの値の可視光が生成され、好ましくは白色光が生成されるようにする。この白色光は、例えば、約0.20~約0.55の範囲のx値、および約0.20~約0.55の範囲のy値を有し得る。しかし、蛍光体組成物における各蛍光体の正確な同一性および量は、エンドユーザのニーズに応じて変えることができる。例えば、この材料は、液晶ディスプレイ(LCD)バックライティング用のLEDに使用することができる。この用途では、LEDのカラーポイントは、LCD/カラーフィルタの組み合わせを通過した後、所望の白色、赤色、緑色、および青色に基づいて、適切に調整される。ここでなされるブレンド用の潜在的に可能な蛍光体の列挙は、網羅的であることを意図するものではなく、これらのMn4+ドープ蛍光体は、所望のスペクトルパワー分布を達成するために、異なる発光をする様々な蛍光体とブレンドすることができる。
【0046】
本発明による装置に使用するのに適した他の材料は、エレクトロルミネセンス性のポリマー、例えばポリフルオレン、好ましくはポリ(9,9-ジオクチルフルオレン)およびそのコポリマー、例えばポリ(9,9’-ジオクチルフルオレン-co-ビス-N,N’-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(F8-TFB);ポリ(ビニルカルバゾール)およびポリフェニレンビニレンならびにそれらの誘導体を含む。さらに、発光層は、青色、黄色、橙色、緑色もしくは赤色の燐光性染料もしくは金属錯体、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。燐光性染料としての使用に適した材料には、トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(赤色染料)、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(緑色染料)、およびイリジウム(III)ビス(2-(4,6-ジフルオレフェニル)ピリジナト-N,C2)(青色染料)が含まれるが、これらに限定されない。ADS(American Dyes Source社)から得られる市販されている蛍光および燐光性金属錯体も使用することができる。ADS緑色染料は、ADS060GE、ADS061GE、ADS063GE、およびADS066GE、ADS078GE、およびADS090GEが挙げられる。ADS青色染料は、ADS064BE、ADS065BE、ADS070BEが挙げられる。ADS赤色染料は、ADS067RE、ADS068RE、ADS069RE、ADS075RE、ADS076RE、ADS067REおよびADS077REが挙げられる。
【0047】
本発明のMn4+ドープ蛍光体は、上記以外の用途において使用されてもよい。例えば、材料は、上で説明したように、蛍光灯、陰極線管、プラズマ表示装置、またはLCDの蛍光体として、使用することができる。材料はまた、電磁熱量計、ガンマ線カメラ、コンピュータ断層撮影スキャナ、またはレーザのシンチレータとして使用することもできる。これらの使用は単なる例示であり、限定するものではない。
【0048】
本発明はまた、特定の発明の蛍光体組成物に関する。例えば、本発明は、蛍光体粒子を含み、1)リン含有部分および炭素含有部分を含む組成物;2)リン含有部分および金属フッ化物を含有する組成物;3)リン含有部分および炭素含有部分および金属フッ化物を含有する組成物;および4)アルキルホスフェート化合物を含まないリン含有部分を含む組成物からなる群から選択される少なくとも1つの表面組成物を蛍光体粒子の表面に含む蛍光体組成物を対象とすることができ、これにおいて蛍光体粒子は、A[MF]:Mn4+である式IのMn4+ドープ蛍光体を含み、式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs、またはそれらの組み合わせであり;Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせであり;xは[MF]イオンの電荷の絶対値であり;yは、5、6または7である。
【0049】
リン含有部分を含む表面組成物は、蛍光体粒子をKHPOに曝すことによって形成され得る。炭素含有部分を含む表面組成物は、蛍光体粒子を、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、オレイン酸カリウム、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、およびソルビン酸カリウムのうちの1つまたは複数に曝すことによって形成することができる。アルキルホスフェートを含まないリン含有部分を含む表面組成物は、蛍光体粒子をKHPOに曝すことによって形成することができる。
【0050】
1つのそのような組成物において、実施形態では、金属フッ化物はフッ化マグネシウムを含む。別の実施形態において、リンを含有する化合物は、リン酸部分を含む;本発明の文脈において、「ホスフェート(リン酸)」は、POを含有するイオンを意味し、ホスフェートイオン、PO 3-、リン酸水素イオン、HPO 2-およびリン酸二水素イオン、HPO を含む。さらに別の実施形態では、炭素含有化合物は、エチレンジアミン四酢酸、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、オレイン酸カリウム、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ソルビン酸カリウム、およびそれらの誘導体または塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0051】
表面組成物は、液状の水または水蒸気に曝されたときの蛍光体粒子の量子効率を改善する。実施形態では、蛍光体粒子は、A)室温で1時間液状の水に曝した後の量子効率が、水に曝す前に示した量子効率の50%~100%であること、またはB)85℃で100時間、85%の相対湿度に曝した場合の量子効率損失が40%未満であることを示す。
【0052】
本発明の利点は、蛍光体粒子が別様の場合よりも凝集しにくいことである。実施形態では、粒子を含有する溶液の超音波処理前の蛍光体粒子のD50粒径は30μm以下であり、超音波処理後の蛍光体粒子のD50粒径は20μm以下である。換言すれば、蛍光体粒子は十分に凝集していないので、超音波処理を使用すると、本発明に従って処理されない粒子で生じるよりも、凝集の減少が少なくなる。実質的に凝集していない粒子を含む蛍光体粉末は、LEDパッケージ製造中に改善された流動性および分散性を示すことができる。
【0053】
発光ダイオード装置は、発光ダイオードを含む構造体である。実施形態では、発光ダイオード装置は、本発明による蛍光体組成物に放射的に結合され、および/またはそれを含む。別の実施形態では、発光ダイオード装置はミニLEDまたはマイクロLEDである。さらに別の実施形態では、発光ダイオード装置は、蛍光体組成物が堆積されたLEDチップを含むことができる。蛍光体組成物は、任意選択で、フィルム状のポリマー樹脂に分散される。
【実施例
【0054】
以下に記す実施例において、一次粒径は、走査型電子顕微鏡を用いて、当技術分野で公知の手順で測定し、二次粒径はまた、Horiba LA-950V2 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzerを用いて、当技術分野で公知の手順で測定したものである。本願による一次粒径は、凝集状態であるか否かを問わず、各蛍光体粒子の粒径である。本願による二次粒径は、各々の別個の粒子または粒子ユニットの粒径である。例えば、10μmの蛍光体粒子を2つ凝集させた場合、それが各基本蛍光体粒子の大きさであるため、一次粒径は10μmとなる。このシナリオでは、二次粒径は10μmを超える。例えば、凝集により20μmであり得る。
【0055】
Spanは、粒状の材料または粉末に対する粒径分布曲線の幅の尺度であり、式(1)に従って定められる:
式中、
50は、体積分布の粒径のメジアンであり;
90は、分布している粒子の90%の粒径より大きい体積分布の粒径であり;
10は、分布している粒子の10%の粒径より大きい体積分布の粒径である。
【0056】
量子効率(QE)の測定は、当技術分野で公知であり、例えば分光計を用いて行うことができる。QEは、吸収された青色光子/蛍光体の発光から放出された赤色光子の尺度である。100%のQEがある場合、これは、吸収されるすべての青色光子が赤色光子の発光をもたらすことを意味する。QEは基準のサンプルに対して測定されるので、本願では、QEを比較するとき、それらは基準のサンプルに対するQEである。他の2つ以上のサンプルを互いに比較することができるように、比較は基準のサンプルに対する2つ以上の他のサンプルの比較であるため、どの基準のサンプルを利用するかは重要ではない。
水との接触に対する堅牢性の判定
実施例1
【0057】
この実施例は、化学式KSiF:Mn4+を有する蛍光体を対象とする。この蛍光体粉末が走査型電子顕微鏡により測定されたとき、平均一次粒径は10.5μmであった。この蛍光体は、本願に記載されているように安定化されず、水の試験に曝されなかった。
実施例2
【0058】
1gの実施例1の蛍光体を、15mLのプラスチックの瓶内で3gの脱イオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、合計100mLのアセトンで4回洗浄した(すなわち、100mLのアセトンを使用して、4回の洗浄を行った)。粉末を真空下で少なくとも24時間乾燥させた。
実施例3
【0059】
実施例1の蛍光体1.2gを、15mLのプラスチックの瓶にて、39mMのリン酸溶液3.6gと混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で少なくとも18時間乾燥させた。粉末を新しい瓶に添加し、粉末対水の比1g:3gにて脱イオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で少なくとも24時間乾燥させた。
実施例4
【0060】
実施例3の実験を繰り返し、39mMのリン酸を390mMのリン酸で置き換えた。
実施例5
【0061】
実施例3の実験を繰り返し、39mMのリン酸を39mMのシュウ酸で置き換えた。
実施例6
【0062】
実施例3の実験を繰り返し、39mMのリン酸を390mMのシュウ酸で置き換えた。
実施例7
【0063】
実施例3の実験を繰り返し、39mMのリン酸を39mMの二塩基性リン酸水素カリウムで置き換えた。
実施例8
【0064】
実施例3の実験を繰り返し、39mMのリン酸を390mMの二塩基性リン酸水素カリウム(pH9)で置き換えた。
【0065】
分散した蛍光体粒子を含む2部熱硬化ポリジメチルシロキサンエラストマー(例えば、Dow CorningからSylgard 184として販売されている)の硬化膜を、シリコーン1.5gあたり蛍光体0.5gの濃度で調製した。使用した蛍光体は、実施例1~8で調製したものであった。これらのフィルムにおいて、蛍光体粒子の量子効率(QE)を測定した。
【0066】
実施例1~8における蛍光体含有フィルムのQEの測定結果を、表1に概説する。
【0067】
【0068】
表1のデータは、KSiF:Mn4+蛍光体の堅牢性が、KSiF:Mn4+をKHPOなどのいくつかの物質の水溶液と混合し、続いて粉末を単離し、乾燥することを含むプロセスによって向上することを示している。堅牢性の強化は、水と混合しない出発蛍光体粉末のQEと比較して、水と1時間混合して生成された非処理粉末のQEに対して、処理された蛍光体粉末を水と1時間混合した後のQEの保存として、示されている。実施例1のQEは105.6%であり、これは水で処理されていない。実施例2のQEは74.6%であり、これは水が蛍光体のQEに大きな悪影響を及ぼし得ることを示している。実施例2は、本発明に従って処理されていない。実施例3は、本発明に従って処理され、74.6%のQEよりもはるかに高い86.2%のQEを示している。蛍光体の技術では、QEの百分率のわずかな変化でさえも重要であり、蛍光体の製造業者は、自分らの蛍光体に数パーセント分のQEであっても付与する方法を日常的に探している。したがって、74.6%から86.2%への飛躍は、重要で驚くべきことである。上記の実施例のうち、KHPOの水溶液で蛍光体粉末を処理する効果は、実施例7および8がそれぞれ100.7%および104.2%のQEを示しているので、QEを維持する際に最も顕著であった。
実施例9
【0069】
この実施例は化学式KSiF:Mn4+を有する蛍光体を対象とする。この蛍光体は、本願に記載されているように安定化されず、水の試験に曝されなかった。実施例9の蛍光体KSiF:Mn4+は、走査型電子顕微鏡によって測定されたとき、10.0μmの平均一次粒径を有していた。さらに、実施例9の蛍光体は、アニール後にKSiFのHF溶液で処理しなかった。
実施例10
【0070】
実施例10で用いた蛍光体は実施例1と同一であり、両者ともアニール後にKSiFで飽和したHF溶液で処理した。諸実施例は、互いを重複させたものである。QEについて同様の結果が得られているという事実は、この実験が再現可能であることを意味している。
実施例11
【0071】
平均一次粒径がより小さいKSiF:Mn4+蛍光体を、実施例1および9の際に利用した。実施例11の蛍光体粉末は、走査型電子顕微鏡によって測定された際に平均一次粒径が3.9μmであり、本発明による安定化処理を受けなかった。
実施例12
【0072】
平均一次粒径が実施例1および9より小さいKSiF:Mn4+蛍光体を利用した。実施例12の蛍光体は、走査型電子顕微鏡によって測定された際に平均一次粒径が3.9μmであり、本発明による安定化処理を受けなかった。
実施例13~16
【0073】
4つの別々の実験で、実施例9、実施例1、実施例11、および実施例12からの蛍光体サンプルそれぞれ1gを、15mLのプラスチックの瓶にて3gの脱イオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、それぞれ合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で少なくとも24時間乾燥させた。
実施例17~20
【0074】
4つの別個の実験で、実施例9、実施例1、実施例11、および実施例12からの蛍光体サンプルそれぞれ1.2gを、15mLのプラスチックの瓶で二塩基性(pH9)のリン酸水素カリウム390mMの溶液3.6gと混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、それぞれ合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で少なくとも18時間乾燥させた。次いで、粉末を新しい瓶に添加し、粉末対脱イオン水の比1g:3gにて脱イオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、それぞれ合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で少なくとも24時間乾燥させた。
実施例21
【0075】
実施例1の蛍光体サンプル1.2gを、15mLのプラスチックの瓶で、二塩基性(pH9)のリン酸水素カリウム390mMの溶液3.6gと混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで15分間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、次いで合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で4時間乾燥させた。次いで、粉末を新しい瓶に添加して、粉末対脱イオン水の比1g:3gにて脱イオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、次いで合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で少なくとも24時間乾燥させた。
実施例22
【0076】
実施例21の実験を繰り返した。ただし、実施例1の蛍光体と混合した390mMのKHPO水溶液を、15分間ではなく90分間ロールした。
実施例23
【0077】
実施例1から得た蛍光体1.2gを、15mLのプラスチックの瓶にて水酸化カリウム(pH13.5)の390mM溶液3.6gと混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、次いで合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で4時間乾燥させた。次いで、粉末を新しい瓶に添加して、粉末対脱イオン水の比1g:3gにてイオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、次いで合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で少なくとも24時間乾燥させた。
実施例24
【0078】
実施例23の実験を繰り返した。ただし、390mMのKOH溶液を、pH9に調整したより希薄なKOH水溶液に置き換えた。
【0079】
【0080】
表2に示すデータは、KSiF:Mn4+蛍光体の粉末を水と混合すると、蛍光体のQEに重大な悪影響を及ぼすことを確証させる。実施例17および18は、蛍光体粉末を純水と混合する前にKHPOの水溶液と混合すると、蛍光体粉末が後に水へ曝されたとき劣化に対して驚くほどより堅牢になることを明確に示している。分解はQEの低下によって示され、KHPOに曝さないサンプル13~16は、KHPOで処理した実施例17~20よりもはるかに低いQEを示した。さらに、いずれかの理論に束縛されることを意図するものではないが、この安定性または堅牢性の程度は、KHPO水溶液、処理溶液から粉末を単離し、洗浄および乾燥した後でも、利益が持続するという意味で、永続的である。データは、わずか15分間KHPO水溶液と混合した粉末のQEが、混合時間が1時間またはさらには90分であった場合と本質的に同じであったため、粉末の安定化が驚くほど速いことを示している。実施例18、21および22では、KHPO水溶液へ15分間曝すことは、90分間曝した後のQEとまさに同じ水準のQEをもたらした。KHPO水溶液は、大概が、蛍光体を分解することが公知の水であるという事実があるにもかかわらず、蛍光体粉末は、長期間にわたってKHPO処理溶液において実質的に安定している。
【0081】
実施例11、12、15および16は、KHPOで処理されず、小さな粒径のサンプルを含む。実施例19および20は両方ともKHPOで処理され、小さな粒径のサンプルを含む。実施例19および20の結果は、KSiF:Mn4+粉末が3.9μmの一次粒径を有する場合でも、蛍光体の粉末をKHPO水溶液で処理することから生じる安定化が驚くほど高いことを示している。
【0082】
蛍光体をKHPO水溶液で処理すると得られる驚くべき安定化は、pHの効果だけではない。実施例24に示すように、蛍光体の粉末を、390mMのKHPOのpHに一致するようにpHを調整したKOH水溶液と混合しても(実施例17~20参照)、蛍光体の安定化は起こらなかった。実際、実施例24のQEはわずか51%であり、73.7%のQEを有し、安定剤と混合されなかった実施例14(pH3.28の酸性であった)よりも大幅に低い。言い換えれば、KOHでpHを塩基性に調整すると(実施例24)、安定剤を添加しない場合(実施例14)よりもはるかに不良な結果が得られた。また、最も低いQEが91.9%であった実施例17~22のKHPO溶液(390mM)の濃度と一致するKOH水溶液(pH13.48)と蛍光体粉末を混合した場合、実施例23(75.6%のQE)でも大幅なQEの低下が観察された。
凝集の低減
【0083】
蛍光体粒子の凝集を低減するために、いくつかの処理を検証した。その目的は、凝集を低減して樹脂における分散性を改善し、蛍光体粉末が、例えばフォトレジストまたは疎水性アクリレートの膜に分散している場合、蛍光体が均一に分布するようにすることである。溶媒と界面活性剤の様々な組み合わせを使用した。典型的な溶媒は、1-オクタデセン(ODE)などの非極性炭化水素溶媒から中極性イソノルボルニルアクリレート、極性非プロトン性プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)までに及んでいた。界面活性剤/分散剤添加剤には、非イオン性(オレイルアミン、オレイン酸、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(Triton X-100として販売されている場合がある))、アニオン性(オレイン酸カリウム)およびカチオン性(ポリエチレンオキシド誘導体化脂肪アンモニウムエトサルフェート(これは、Hypermer KD 25-LQ-(MV)として市販され得る)であるものが含まれた。実施例25~71は、光散乱を用いて測定した二次粒径d50を有していた。
実施例25
【0084】
実施例25は対照であり、15.0μmの二次粒径d50を有する3gのKSiF:Mn4+粉末からなる。溶媒または界面活性剤/分散剤は添加しなかった。この対照を使用して、表3の第2列の値を判定した(Δd50-ODE+ローラ(μm))。
実施例26
【0085】
実施例26は、有機溶媒を含み、界面活性剤を含まず、実施例25と同じロットからKSiF:Mn4+粉末3gを採取し、有機溶媒であるODE20mLと混合して作製した。次いで、得られた組成物を短時間振盪して混合し、80rpmで20~30分間ロールした。次いで、得られた混合物を真空濾過して粉末を回収し、3×20mLのアセトンですすぎ、微量の溶媒を除去した。アセトン洗浄後、粉末をフィルタで5分間以下乾燥させた後、回収し、真空デシケータ中で少なくとも4時間乾燥させた。次いで、乾燥粉末を、流動性を改善するために170メッシュのふるいに通してふるい分けし、次いで、粒径分布(PSD)および量子効率(QE)について分析することができるまで、窒素パージされた箱/キャビネットに貯蔵した。次いで、二次粒径d50を実施例25について測定したものと比較し、差または「デルタ」を表3の第2列に記録した。Δd50は-1.4μmであったので、実施例26のd50は実施例25のd50より1.4μm小さかった。したがって、溶媒としてODEを使用すると、サンプルの二次粒径が減少した。
実施例27~31
【0086】
実施例27~31は、20mLのODEを採取し、それを表3の第1列で特定されるそれぞれの界面活性剤0.3gと組み合わせ、次いで、実施例25と同じロットからのKSiF:Mn4+粉末3gを添加することによって作製した。次いで、得られた組成物を短時間振盪して混合し、80rpmで20~30分間ロールした。次いで、得られた混合物を真空濾過して粉末を回収し、3×20mLのアセトンですすぎ、微量の溶媒を除去した。アセトン洗浄後、粉末をフィルタで5分間以下乾燥させた後、回収し、真空デシケータ中で少なくとも4時間乾燥させた。次いで、乾燥粉末を、流動性を改善するために170メッシュのふるいに通してふるい分けし、次いで、二次粒径およびQEについて分析することができるまで、窒素パージされた箱/キャビネットに貯蔵した。次いで、二次粒径d50を実施例25と比較し、各々の差または「デルタ」を表3の第2列に記録した。
実施例32
【0087】
実施例32は対照であり、33.4μmの二次粒径d50を有する3gのKSiF:Mn4+粉末からなる。溶媒または界面活性剤/分散剤は添加しなかった。実施例32のQEは92.8%であった。この対照を使用して、表3の第3列の値を判定した(Δd50-PGMEA+ローラ(μm))。
実施例33
【0088】
実施例33は、有機溶媒を有し、界面活性剤を有さず、実施例32と同じロットからKSiF:Mn4+粉末3gを採取し、有機溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)20mLと混合して作製した。次いで、得られた組成物を短時間振盪して混合し、80rpmで20~30分間ロールした。次いで、得られた混合物を真空濾過して粉末を回収し、3×20mLのアセトンですすぎ、微量の溶媒を除去した。アセトン洗浄後、粉末をフィルタで5分間以下乾燥させた後、回収し、真空デシケータ中で少なくとも4時間乾燥させた。次いで、乾燥粉末を、流動性を改善するために170メッシュのふるいに通してふるい分けし、次いで、PSDおよびQEについて分析することができるまで、窒素パージされた箱/キャビネットに貯蔵した。次いで、二次粒径分布d50を実施例32と比較し、差または「デルタ」を表3に記録したので、Δd50は-18.6μmであり、実施例33のd50は実施例32のd50より18.6μm小さかった。
実施例34~38
【0089】
実施例34~38は、20mLのPGMEAを採取し、それを表3の第1列で特定される0.3gの特定の界面活性剤と組み合わせ、次いで実施例32と同じロットからの3gのKSiF:Mn4+粉末を添加することによって作製した。次いで、得られた組成物を短時間振盪して混合し、80rpmで20~30分間ロールした。次いで、得られた混合物を真空濾過して粉末を回収し、3×20mLのアセトンですすぎ、微量の溶媒を除去した。アセトン洗浄後、粉末をフィルタで5分間以下乾燥させた後、回収し、真空デシケータ中で少なくとも4時間乾燥させた。次いで、乾燥粉末を、流動性を改善するために170メッシュのふるいに通してふるい分けし、次いでPSDおよびQEについて分析することができるまで、窒素パージされた箱/キャビネットに貯蔵した。次いで、粒径d50を実施例32と比較し、その差または「デルタ」を表3の第3列に記録した。
実施例39
【0090】
実施例39は対照であり、35.2μmの二次粒径d50を有する3gのKSiF:Mn4+粉末からなる。溶媒または界面活性剤/分散剤は添加しなかった。このサンプルのQEは94.1%であると判定された。実施例39は、表3の第4~6列(各々、Δd50-PGMEA+超音波(μm);Δd50-アクリレート+ローラ(μm);Δd50-アクリレート+超音波(μm))と併せて使用した対照である。
実施例40
【0091】
実施例40は、有機溶媒を含み、界面活性剤を含まず、実施例39と同じロットからKSiF:Mn4+粉末3gを採取し、有機溶媒であるイソノルボルニルアクリレート20mLと混合して作製した。次いで、得られた組成物を短時間振盪して混合し、80rpmで20~30分間ロールした。次いで、得られた混合物を真空濾過して粉末を回収し、3×20mLのアセトンですすぎ、微量の溶媒を除去した。アセトン洗浄後、粉末をフィルタで5分間以下乾燥させた後、回収し、真空デシケータ中で少なくとも4時間乾燥させた。次いで、乾燥粉末を、流動性を改善するために170メッシュのふるいに通してふるい分けし、次いで二次PSDおよびQEについて分析することができるまで、窒素パージされた箱/キャビネットに貯蔵した。次いで、二次粒径d50を実施例39と比較し、差または「デルタ」を表3の第5列に記録したので、Δd50は-19.4μmであり、実施例40のd50は実施例39のd50より19.4μm小さかった。
実施例41~47
【0092】
実施例41~47は、20mLのPGMEA(実施例41~43の場合)または20mLのイソノルボルニルアクリレート(実施例44~47)を採取し、それぞれを表3の第1列の最後の3行で特定される0.3gの界面活性剤と組み合わせることによって作製した。続いて、実施例39と同じロットからのKSiF:Mn4+粉末3gを添加した。次いで、得られた組成物を短時間振盪して混合し、7分間超音波を浴びせる処理(実施例41~43および47)に曝したか、または80rpmで20~30分間ロールした(実施例44~46)。次いで、得られた混合物を真空濾過して粉末を回収して、3×20mLのアセトンですすぎ、微量の溶媒を除去した。アセトン洗浄後、粉末をフィルタで5分間以下乾燥させた後、回収し、真空デシケータ中で少なくとも4時間乾燥させた。次いで、乾燥粉末を、流動性を改善するために170メッシュのふるいに通してふるい分けし、次いで二次PSDおよびQEについて分析することができるまで、窒素パージされた箱/キャビネットに貯蔵した。次いで、二次粒径d50を実施例39と比較し、その差または「デルタ」を表3に記録した。実施例41~43は表3の第4列(Δd50-PGMEA+超音波(μm))に記録され、実施例44~46は第5列(Δd50-アクリレート+ローラ(μm))に記録され、実施例47は第6列(Δd50-アクリレート+超音波(μm))に記録されている。サンプル41の絶対的な二次粒径d50(すなわち、実施例39に対する相対的なものではない)は12.9μmであり、QEは88.4%であった。サンプル42の絶対的な二次粒径d50(すなわち、実施例39に対する相対的なものではない)は12.0μmであり、QEは94.3%であった。サンプル43の絶対的な二次粒径d50(すなわち、実施例39に対する相対的なものではない)d50は12.5μm、QEは94.2%であった。
【0093】
表3 KSiF:Mn4+粉末の界面活性剤/分散剤処理時の測定時超音波処理なしの粒径分布の減少
【0094】
表3に見られるように、特定の溶媒を使用することは、凝集を減少させるのに寄与し得る。また、特定の界面活性剤を使用することは、凝集を減少させることができる。溶媒と界面活性剤の特定の組み合わせも同様に利点を示す。初期の粉末の凝集の程度にかかわらず、オレイン酸カリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、およびポリエチレンオキシド誘導体化脂肪族アンモニウムエトサルフェート(PODFAE)は、それぞれ主要なアニオン性、非イオン性、およびカチオン性添加剤候補として、Hypermer KD25-LQ-(MV)として得られ、12~14μmの絶対的な二次d50(すなわち、別のサンプルに対して相対的ではない)を有する二次粒径をもたらした。対照との比較を表3に示す。
【0095】
上に示される実施例の変形例もまた、本発明の利点を実証する。以下の実施例48~51はこれを例示し、結果は表4にある。
実施例48
【0096】
これは、いずれの表面処理もない、KSiF:Mn4+である対照である。言い換えれば、KEDTAもKHPOも、オレイン酸カリウムも、PGMEAも、MgFコーティングの蛍光体も、MgSiF・6HOも、HSiFもない。
実施例49
【0097】
このサンプルは、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩二水和物(KEDTA)によるKSiF:Mn4+の処理を対象とする。16.3gのKHPO、6.4gのKEDTA、22mLの30%H水溶液、および480mLの蒸留HOを、pHが7~8になるように1Lのポリプロピレンの瓶に加えることによって、溶液を調製した。これに、128gのKSiF:Mn4+を添加し、瓶を40RPMで20分間ロールした。次いで、材料を沈降させ、上清をデカントし、スラリーを真空濾過し、100mLのHO+2mLの30%Hで1回、次いで100mLのアセトンで5回すすいだ後、真空下で乾燥させた。
【0098】
サンプルを任意選択で酢酸およびエタノールですすぎ、最大200℃の高温で真空下でサンプルを乾燥させることも可能である。瓶をロールする代わりに/瓶をロールすることと組み合わせて、任意選択で超音波処理を使用することも可能である。
実施例50
【0099】
このサンプルは、有機媒体中のオレイン酸カリウムでのKSiF:Mn4+処理を対象とする。オレイン酸カリウム(7.5229g、23.47mmol、Sigma Aldrich製の水中40wt%ペースト、KSiF:Mn4+に対して5重量%)を250mLのPGMEAに溶解した。この溶液を、150.14gのKSiF:Mn4+粉末および250mLのPGMEAを含む1ガロンのプラスチックの瓶に添加した。3つのさらなる250mL部分のPGMEAを使用してオレイン酸カリウム容器をすすぎ、KSiF:Mn4+/界面活性剤混合物(総PGMEA=1.25L)を含む1ガロンの瓶に添加した。1ガロンの瓶に蓋をし、30分間ロールした。得られた安定化蛍光体粉末をプラスチックブフナー漏斗に移し、真空濾過によって単離した。500mLのアセトンを使用して1ガロンのプラスチックの瓶をすすぎ、ブフナー漏斗に移して固体を洗浄した。アセトンのさらに3つの500mLの部分を使用して固体を洗浄し、各洗浄の前に固体を撹拌し(合計2Lのアセトン)、次いで3分間風乾した。わずかに湿った粉末を収集し、真空デシケータ内で3日間乾燥させ、次いで、170メッシュの膜を通してふるい分けして、146.77gの界面活性剤処理されたKSiF:Mn4+生成物を得た。
実施例51
【0100】
このサンプルは、MgFコーティングの蛍光体を対象とする。MgSiF・6HO(17.6992g、64.48mmol)を60mLのプラスチックジャーに秤量し、次いで高純度脱イオン水40gを加えた。混合後、わずかに濁った混合物を0.45μmの膜を通して濾過した。濾過した溶液を40mLの35%HSiF水溶液(52.8g、密度1.32)で希釈した。これにより溶液Aを作製した。別個に、125gのKSiF:Mn4+を、大きな撹拌子を含む2LmLのプラスチックビーカーに添加した。30分間かけて37.5mLの溶液A(合計75mLの溶液A)を反応混合物中に直接送達するように、2つのシリンジポンプのそれぞれを設定した。蛍光体粉末を含むビーカーに、KSiFで飽和した49%HF水溶液1.425Lを添加した。混合物を30秒間(300rpm)激しく撹拌し、その後、撹拌を120rpmに下げた。シリンジポンプを介した撹拌反応混合物への溶液Aの添加を開始した。添加が完了した後、撹拌を停止し、撹拌子を除去し、反応混合物を10分間沈降させた。上清をデカントし、廃棄した。湿潤スラリーを、KSiFおよびMgFで飽和した400mLの49%HF水溶液と混合した。洗浄混合物を10分間沈降させ、次いで上清をデカントし、廃棄した。スラリーを、0.65μmのフルオロポリマー膜を取り付けたプラスチックブフナー漏斗に移した。残留HF溶液を濾別し、蛍光体ケークを、合計800mLのアセトンを使用して、アセトンで4回洗浄し、各洗浄の前に固体を撹拌した。生成物を真空下で3日間乾燥させ、次いで、170メッシュの膜に通してふるいにかけ、最終生成物を得た。実施例48~51の試験の結果を表4に示す。
【0101】
【0102】
サンプル48~51のD50二次粒径を以下のように測定した。
1.表4のD50測定値。測定前に3分間、超音波処理なしで循環を5に設定して、Horiba 950で完了した。溶媒はイソプロピルアルコールである。
【0103】
2.表4のD50 USの測定値。上記と同様に測定を完了するが、循環を5に設定したことに加えて、超音波処理を7に設定した。
【0104】
Horibaの測定により凝集サイズが得られる。これは、塩基性粒子の凝集塊のサイズである。USの測定により、最小凝集サイズが得られる。これは、超音波処理によっていくらか減少した塩基性粒子の凝集塊であることを意味する。
【0105】
実施例48~51は、表面処理およびMgFコーティングが、驚くべきことに、量子効率をほとんどまたは全く低下させずに、より少ない凝集粒径を生成することを示している。
【0106】
実施例52~76はまた、以下に説明するように、粒子の凝集の低減と同時に良好な量子効率を維持することを示す。
実施例52
【0107】
これは、実施例53~76すべてで使用したKSiF:Mn4+のバッチである。
実施例53
【0108】
これが対照バッチである。実施例52からの4gのKSiF:Mn4+を、30mLのNalgeneの瓶の20mLのHOに入れた。これを80RPMで30分間ロールした。次いで、サンプルを20分間沈降させ、2500RPM(約30秒)に対して遠心パルスに供し、次いで、デカントし、真空濾過し、アセトンで3回洗浄し、真空乾燥し、170メッシュの膜に通してふるい分けした。実施例53は、本発明の表面剤を含有せず、表面剤を有するサンプルと比較されている。
実施例54~76
【0109】
実施例54~76は以下のように作製した:実施例52からの4gのKSiF:Mn4+を、30mLのNalgeneの瓶において、20mLのHOまたは20mLの0.78MのKHPO(水溶液)+0.3gまたは0.6g(または0.3mL)の表面剤に入れた。瓶を80RPMで30分間ロールした。次いで、サンプルを20分間沈降させ、2500RPM(約30秒)に対して遠心パルスに供し、次いで、デカントし、真空濾過し、アセトンで3回洗浄し、真空乾燥し、170メッシュに通してふるい分けした。各実施例の細部に関する情報を以下の表5に示す。実施例73および74のポリアクリル酸アンモニウムポリマーは、DispexAA 4040として販売され得る
【0110】
下方の表5は、第1列に「実施例」番号、第2列に使用した界面活性剤または他の「表面剤」を、示す。第3列は、KHPOが使用されたか否かである(この列は「0.78MのKHPO」と分類される)。そのカラムにYと記載されている場合、20mLの0.78MのKHPOを使用し、Nと記載されている場合、20mLの水のみを使用した。第3列はまた、1mLの30%H水溶液を添加するなど、KHPOまたは水と共に添加される他の添加剤を示していることがある。「量」と分類される第4列には、使用された「表面剤」の量が0.3グラムであるか0.3mLであるかが列挙されている。第5列には、QEが示されている。第6列には、KHPOを含むサンプルと含まないサンプルとの間のQEの差であるΔQEが示されている。
【0111】
【0112】
上に示されているように、ΔQEの列におけるKHPOの使用によるQE改善の平均は、驚くべきことに24.2%であった。別の観察結果は、実施例58について示しているように、HがQEを>25%増加させたことである。さらに、表5に示すように、多くの表面剤がまた、QEを大幅に増加させた。
実施例77~86
【0113】
実施例77~84では、KSiF:Mn4+3.5gを、表6に列挙した表面剤を含む0.39MのKHPO(水溶液)15mL中の溶液に添加した。表面剤も表6に列挙した量で供給した。サンプルを30分間ロールミルに供した。次いで、材料を沈降させ、上清をデカントし、スラリーを真空濾過し、30mLのHO+2mLの30%Hで1回、次いで40mLのアセトンで5回すすいだ後、真空下で乾燥させた。次いで、乾燥させたサンプルを120メッシュのナイロンスクリーンを通してふるい分けした。実施例86は、実施例77~85に使用した母体のバッチであり、水処理を施さなかった。実施例85を水処理に供したが、表面剤には供しなかった。試験の結果を表6に示し、第1列は実施例の番号を示し、第2列は使用された表面剤を特定し、第3列は使用された表面剤(「SA」)の量を定量し、第4列はそのようなサンプルのQEを提示している。表6が示すように、実施例85に対する水処理の効果は、QEを大幅に低下させた。しかし、表面剤およびKHPOの添加は、実施例85で示される有害なQE効果を大きく逆転させた。
【0114】
【0115】
サンプル77~86に関する追加の試験結果を以下の表7に提示する。
【0116】
表7において、第1列は実施例番号である。第2列は、超音波処理なしで測定したときの二次粒径を示す。第3列は、超音波処理なしのスパンを示す。スパンは、粒径分布の幅を測定している。第3列において、界面活性剤で処理しなかった実施例85および86は、比較的大きなスパンを示した。実施例80を除いて、界面活性剤を含む実施例は、実施例85および86と比較してスパンの減少を示しており、これは、粒径の広がりがより狭いためより良好な分散およびより少ない凝集を示したということを意味している。第4列は、超音波処理を伴った二次粒径の情報である。第5列は、超音波処理を伴ったサンプルのスパンに関する情報である。分散を改善し、凝集を減少させる超音波処理を伴っていても、表面剤を含むサンプルは、サンプル85および86と比較してスパンを減少させており、それは分散の改善および凝集の減少を示す。第6列は、非超音波処理と超音波処理との間のD50の変化(ΔD50)を示す。ΔD50が大きいことは、超音波処理が分散および凝集に対してより大きな効果を及ぼしたということを意味しているので、ΔD50はまた、分散および凝集の程度に関連する。実施例85および86は、表面剤の処理を受けたすべてのサンプルよりも大きいΔD50を有し、これは、表面処理を受けた実施例が分散を改善し、凝集を低減したことを意味している。
実施例87~95
実施例87
【0117】
実施例87は、いずれの安定化処理もなしでKSiF:Mn4+を含み、これも水試験に供されなかった。これは、実施例88~95と併せて使用される対照である。
実施例88~95
【0118】
実施例88~95を実施して、AlPOの存在下でKSiF:Mn4+の液状の水へ曝す効果を判定した。KSiF:Mn4+の1.2gのサンプルを、それぞれ、3.6mLの高純度脱イオン水、0.39MのKHPO、0.39MのAlPO、0.39MのAlPO+0.3mLの30%H、0.1MのAlPO、0.1MのAlPO+0.3mLの30%H、0.6MのAlPO、および0.6MのAlPO+0.3mLの30%Hと組み合わせた。すべてのサンプルを短時間振盪して混合し、40rpmで1時間ロールした。各サンプルのpHを記録し、次いで、それぞれを濾過し、アセトンで3回洗浄した(合計50mL)。フィルタケークを収集し、デシケータにて真空下で一晩乾燥させた。次いで、高純度脱イオン水を、新しいプラスチックの瓶にて1gの粉末:3gの水の比で、単離された粉末に添加した。これらのサンプルを短時間振盪して混合し、40rpmで1時間ロールした。各サンプルを濾過し、アセトンで3回(合計50mL)洗浄し、フィルタケークを収集し、デシケータにて真空下で一晩乾燥させた。結果を以下の表8に示す。
【0119】
【0120】
上記の結果は、KSiF:Mn4+を水で処理するとQEが大幅に低下し、KHPOで処理するとQEが大幅に改善される他の実施例と一致する。ΔQEは、対照(実施例87)と残りの実施例(実施例88~95)との差である。上記のデータから明らかなように、水のみを使用した場合(実施例88)のQE低下は63.1%であった。驚くべきことに、他のすべての例では、QEの低下がはるかに小さかった。最大の減少は38.0%であり、これは依然として実施例88で観察されたQEの損失よりもはるかに小さい。これは、水の有害な影響に対して蛍光体を安定化する際の本発明の有用性をさらに実証する。KHPOへ曝すことはAlPOよりも良好なQEの値をもたらしたが、AlPOとHの両方の処理が、KHPO単独と同様のパフォーマンスに至った。しかし、0.39Mおよび0.6MでのAlPOは、依然として、Hなしでも非常に良好なQEの値をもたらした。
実施例96~100
【0121】
実施例96~100は、リン酸水素カリウム処理のある状態とない状態とで、MgFで処理したときの液状の水および水蒸気に対する蛍光体の堅牢性の改善を対象とする。出発KSiF:Mn4+蛍光体粉末は、光の散乱によって判定したとき、12.3μmのd50の平均二次粒径を有していた。
実施例96
【0122】
1gの出発KSiF:Mn4+蛍光体を、15mLのプラスチックの瓶にて3gの脱イオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で3日間乾燥させた。
実施例97
【0123】
実施例96の出発蛍光体5gを、実施例51で定めた手順に従って、出発蛍光体に対して重量で1%の量のMgFを生成するMgSiF・6HO前駆体の量を使用して、MgFでコーティングした。コーティングされた蛍光体1gを15mLのプラスチックの瓶で脱イオン水3gと混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で3日間乾燥させた。
実施例98
【0124】
実施例96の出発蛍光体5gを、実施例51で定めた手順に従って、出発蛍光体に対して重量で1%の量のMgFを生成するMgSiF・6HO前駆体の量を使用してMgFでコーティングした。残留HF溶液を生成物から濾別し、アセトンで2回すすいだ後、半乾燥ケークを反応ビーカーに戻した。この固体に、30mLの0.39MのKHPO水溶液を添加した。混合物を140rpmで2分間混合した。スラリーを、0.7μmの紙膜(Whatman GF/F)を取り付けた新しいプラスチックブフナー漏斗に移した。水溶液を濾別した。固体をアセトンで4回洗浄し、次いで、真空下で乾燥させた。その後KHPOで処理した1gのこのコーティングされた蛍光体を、15mLのプラスチックの瓶で3gの脱イオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で3日間乾燥させた。
実施例99
【0125】
実施例96の出発蛍光体5gを、実施例51で定めた手順に従って、出発蛍光体に対して重量で5%の量のMgFを生成するMgSiF・6HO前駆体の量を使用して、MgFでコーティングした。出発蛍光体1gを15mLのプラスチックの瓶で脱イオン水3gと混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で3日間乾燥させた。
実施例100
【0126】
実施例96の出発蛍光体5gを、実施例51で定めた手順に従って、出発蛍光体に対して重量で5%の量のMgFを生成するMgSiF・6HO前駆体の量を使用して、MgFでコーティングした。残留HF溶液を生成物から濾別し、アセトンで2回すすいだ後、半乾燥ケークを反応ビーカーに戻した。この固体に、30mLの0.39MのKHPO水溶液を添加した。混合物を140rpmで2分間混合した。スラリーを、0.7μmの紙膜(Whatman GF/F)を取り付けた新しいプラスチックブフナー漏斗に移した。水溶液を濾別した。固体をアセトンで4回洗浄し、次いで、真空下で乾燥させた。その後KHPOで処理した1gのこのコーティングされた蛍光体を、15mLのプラスチックの瓶で3gの脱イオン水と混合した。混合物を手で15秒間振盪し、次いで、40rpmで1時間ロールした。混合物をWhatman#4濾紙で濾過し、合計100mLのアセトンで4回洗浄した。粉末を真空下で3日間乾燥させた。
【0127】
出発蛍光体を水中で1時間混合した後、表9に示すように、QEは99.9%から16.8%に低下した(実施例96)。比較すると、1%MgFレベルでコーティングされた蛍光体は77.6%までしか降下せず(実施例97)、5%MgFレベルでコーティングされた蛍光体は93.3%までしか降下しなかった(実施例99)。MgFコーティング生成物を0.39MのKHPO水溶液と2分間単に混合することで、MgFコーティング蛍光体をKHPO水溶液で処理することを組み込み、液状の水へ曝したときにQEがいっそう顕著に保存されるに至った。蛍光体を1%レベルのMgFでコーティングし、次いでKHPO水溶液と混合したとき、QEは、純水と1時間混合したときに1.3%しか低下しなかった。また、表9のデータによって示されるのは、85℃で100時間、85%の相対湿度へ曝されたことに関連するQEの低下が、出発蛍光体と比較して、MgFコーティング蛍光体粒子でははるかに少なかったという事実である。湿度へ曝したときのQEの低下は、MgFコーティング蛍光体をKHPO水溶液で処理した場合にさらに低減された。
【0128】
【0129】
表9に示すように、KHPO水溶液での後続の処理がある状態とない状態で、蛍光体をMgFでコーティングすることは、3つの利点を有する:分散性を高める、液状の水に対する堅牢性を高める、および高温での湿度に対する堅牢性を高めるということである。これらの効果は、MgFでコーティングされた蛍光体が続いてKHPO水溶液で処理される本発明の組成物においてさらに増強される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】