(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】後房有水晶体眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20220720BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61F2/16
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564160
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2020064808
(87)【国際公開番号】W WO2020239892
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512003777
【氏名又は名称】フィシオル
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パニョーレ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レドゾヴィック,サウド
(72)【発明者】
【氏名】ブカップイ,レンゾ
【テーマコード(参考)】
2H006
4C097
【Fターム(参考)】
2H006BB03
2H006BC03
2H006BC05
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC06
4C097SA01
4C097SA05
(57)【要約】
本発明は、中央光学部(2)と、眼の毛様小帯上に位置するように構成された複数の支持要素(4A~D)を備える周辺ハプティック部(3)と、眼の毛様溝内に位置するように構成された網状遠位領域(52)を含む少なくとも1つの可撓性ハプティック(5)とを備える後房有水晶体眼内レンズ(1)に関する。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後房有水晶体眼内レンズ(1)であって、
前面(11)及び後面(12)と、
レンズを備え、前記前面(11)から前記後面(12)に向けられた光軸(Z)に対して半径方向に延在する中央光学部(2)と、
を備え、
前記後房有水晶体眼内レンズ(1)は、前記中央光学部(2)に対して半径方向外側に延在する周辺ハプティック部(3)をさらに備え、
前記周辺ハプティック部(3)は、
前記中央光学部(2)の周囲に円周方向に延在する近位部分(31)と、
前記中央光学部(2)に対して半径方向外側及び後方の両方に延在する複数の支持要素(4A~D)を備える、少なくとも前記近位部分(31)の周囲の遠位部分(32)と、
を備え、
前記支持要素(4A~D)は、眼(9)内での通常の使用時に、毛様小帯(97)上で前記有水晶体眼内レンズ(1)を支持するように構成されており、
前記中央光学部(2)及び前記周辺ハプティック部(3)は、ドーム(K)を形成しており、
前記後房有水晶体眼内レンズ(1)は、少なくとも1つの可撓性ハプティック(5)をさらに備え、
前記少なくとも1つの可撓性ハプティック(5)は、
前記周辺ハプティック部(3)の前記近位部分(31)に設けられた近位領域(51)と、
複数の細長い可撓性フットプレート(54)を備える、少なくとも前記近位領域(51)の周囲の遠位領域(52)であって、
前記複数の細長い可撓性フットプレート(54)のうちの少なくとも1つが、前記中央光学部(2)に対して少なくとも部分的に半径方向外側に延在しており、
前記複数の細長い可撓性フットプレート(54)が、前記前面(11)と後面(12)との間に延在する空洞(58)を境界付ける、
遠位領域(52)と、
を備え、
前記有水晶体眼内レンズ(1)の第1の直径(81)は、前記光軸(Z)に垂直に測定された、前記中央光学部(2)及び前記周辺ハプティック部(3)からなる光学アセンブリの第2の直径(82)よりも厳密に大きく、
前記細長い可撓性フットプレート(54)の少なくとも1つ(54A)は、実質的に前記第2の直径(82)と第1の直径(81)との間で延在し、
前記遠位領域(52)は、前記細長い可撓性フットプレート(54)のうちの少なくとも2つを接続する遠位境界(56)を含み、
前記遠位境界(56)は、前記有水晶体眼内レンズ(1)が眼(9)内で通常使用されるときに、前記有水晶体眼内レンズ(1)を毛様溝(98)に安定化するように構成されている、
ことを特徴とする後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可撓性ハプティック(5)に軸方向及び/又は半径方向の圧縮が加えられたときに、特に前記有水晶体眼内レンズ(1)が眼(9)内で通常使用されるときに、前記細長い可撓性フットプレート(54)が、全体として湾曲することができるように、
前記遠位境界(56)は、前記細長い可撓性フットプレート(54)に対して横断方向であり、
前記遠位領域(52)は、前記細長い可撓性フットプレート(54)に対して横断方向の近位境界(55)を含む、請求項1に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項3】
前記細長い可撓性フットプレート(54)の各々が、近位端(54
1)及び遠位端(54
2)を備え、複数の前記細長い可撓性フットプレート(54)の近位端(54
1)が、前記近位境界(55)によって接合されており、複数の前記細長い可撓性フットプレート(54)の遠位端(54
2)が、前記遠位境界(56)によって接合されていることを特徴とする、請求項2に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項4】
前記遠位境界(56)が、前記中央光学部(2)に対して円周方向及び半径方向外側の両方に延在することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項5】
前記有水晶体眼内レンズ(1)が眼(9)内で通常使用されるときに、前記遠位境界(56)が毛様溝(98)に滑らかに引っ掛かるように構成された滑らかなリプル(56A)を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項6】
前記空洞(58)が開口空洞であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項7】
前記細長い可撓性フットプレート(54)は、法線ベクトルが前記光軸(Z)と-15°~15°の間に含まれる角度(α)を形成する平面(P)にほぼ沿って延在するように構成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項8】
前記平面(P)で測定された前記空洞(58)の面積が、前記平面(P)で測定された前記細長い可撓性フットプレート(54)の面積よりも少なくとも2倍大きいことを特徴とする、請求項7に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項9】
前記近位領域(51)は、前記支持要素(4A~D)のうちの2つの間で、前記中央光学部(2)に対して半径方向外側及び後方に延在していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項10】
前記近位領域(51)は、複数の細長い可撓性フットプレート(53)を備え、
前記複数の細長い可撓性フットプレート(53)のうちの少なくとも1つは、前記中央光学部(2)に対して少なくとも部分的に半径方向外側かつ後方に延在しており、
前記複数の細長い可撓性フットプレート(53)は、前記前面(11)と後面(12)との間に延在する空洞(57)を境界付ける、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの可撓性ハプティック(5)に軸方向及び/又は半径方向の圧縮が加えられたときに、特に前記有水晶体眼内レンズ(1)が眼(9)内で通常使用されているときに、前記近位領域(51)の細長い可撓性フットプレート(53)が全体として湾曲することができるように、
前記遠位領域(52)及び前記近位領域(51)は、前記遠位領域(52)及び近位領域(51)の両方の前記細長い可撓性フットプレート(53,54)を横断する共通の接続境界(55)を共有することを特徴とする、請求項10に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項12】
前記共通の接続境界(55)は、前記中央光学部(2)の周囲の略円周方向に延在し、前記第2の直径(82)の円の円弧の形状を有することを特徴とする、請求項11に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項13】
前記近位領域(51)の細長い可撓性フットプレート(53)は、第1の方向に配向され、第1の方向に略平行である、及び/又は、
前記遠位領域(52)の細長い可撓性フットプレート(54)は、第2の方向に配向され、第2の方向に略平行であることを特徴とする、
請求項10から12のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項14】
前記第1及び第2の方向が横断方向であり、前記第1と第2の方向との間に80°~140°を含むより小さい角度を形成することを特徴とする、請求項13に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項15】
前記後房有水晶体眼内レンズ(1)が、
配向され、正反対の1対のそのような可撓性ハプティック(5)と、
平面矩形(R)の対角線(r1、r2)に従って配向された4つのそのような支持要素(4A~D)と、
を備えることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項16】
前記後房有水晶体眼内レンズ(1)は、前記光軸(Z)を中心とする180°の回転の下で形状不変であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項17】
前記後房有水晶体眼内レンズ(1)は、平面反射下で形状不変であることを特徴とする、請求項16に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項18】
前記後房有水晶体眼内レンズ(1)は、配向され、正反対の2対のそのような可撓性ハプティック(5)を備え、前記可撓性ハプティック(5)の各々が、他の可撓性ハプティック(5)の中で、それに最も近い可撓性ハプティック(5)から、前記第2の直径(82)の0~25%を含む距離だけ離間していることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項19】
前記距離が正であり、前記遠位部分(32)は、前記有水晶体眼内レンズ(1)が眼(9)内で通常使用されているときに、前記有水晶体眼内レンズ(1)を毛様小帯(97)上で支持するように構成された2つの補助支持要素(4E~F)をさらに備え、前記補助支持要素(4E~F)の各々は、可撓性ハプティック(5)の前記近位領域(51)と、他の可撓性ハプティック(5)の中で、それに最も近い可撓性ハプティック(5)の前記近位領域(51)との間の空間を充填し、かつその空間に延在することを特徴とする、請求項18に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項20】
前記第1の直径(81)は、12.5mm~14.5mmの間に含まれ、
前記第2の直径(82)は、11mm~12mmの間に含まれる、
請求項1から19のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項21】
前記ドーム(K)の滑らかな後面の曲率半径(k)は、8mm~10mmの間に含まれることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項22】
前記ドーム(K)の滑らかな後面が凹面であることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項23】
前記後房有水晶体眼内レンズ(1)は、20~45%の水を含む可撓性で生体適合性のある材料を含み、当該材料のヤング率が1GPa未満であることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項24】
前記中央光学部(2)は、前記前面(11)と後面(12)との間に延在し、流体の流れを可能にするように構成された貫通孔(21)を備えることを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項25】
前記レンズが、近視の矯正、遠視の矯正、老眼の矯正、及び角膜乱視の矯正のうちの少なくとも1つの矯正を可能にする単焦点レンズからなることを特徴とする、請求項1から24のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【請求項26】
前記レンズが、拡張された焦点深度の屈折レンズ又は回折レンズからなることを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズ(IOL)に関する。より詳細には、本発明は、後房有水晶体眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、有水晶体眼内レンズは、視力の欠陥を矯正するために眼内に配置されるように意図された眼内レンズである。これらの眼内レンズは、一般に、ヒトの水晶体(すなわち、天然水晶体)に対する補完物として、まだ若い患者に埋め込まれる。
【0003】
有水晶体眼内レンズにはいくつかのクラスがあり、その中でも後房有水晶体眼内レンズは、虹彩の後面と水晶体の前面との間の眼の領域、及び少なくとも部分的に眼の毛様溝に埋め込まれることが意図されている。
【0004】
そのような眼内レンズの移植における制限は、いくつかのパラメータに基づいて、特に、通常その大きさが患者ごとに数ミリメートル異なる毛様溝の解剖学的構造に基づいて、一方の眼から他方の眼まで異なるように位置している可能性が高いという事実にある。特に、大きさが適合されない可能性がある後房有水晶体眼内レンズの移植は、以下のような、患者にとって多かれ少なかれ重篤になる合併症をもたらすリスクがあるだろう
例えば、有水晶体眼内レンズが患者の毛様溝の大きさ(又は「溝間距離」)に対して小さすぎる場合、視力の精度に影響を及ぼすか、又は眼の白内障を引き起こす眼内レンズとヒトの水晶体との接触、あるいは有水晶体眼内レンズの視力矯正機能の損失、
例えば、有水晶体眼内レンズが患者の毛様溝のサイズに対して大きすぎる場合、炎症、虹彩の色素脱失、瞳孔ブロック、緑内障、及び/又は瞳孔ブロック後の眼の前房と後房の間の窪み。
【0005】
患者の眼の解剖学的構造に基づくいくつかの大きさの後房有水晶体眼内レンズの製造及び使用は、この欠陥を完全に回避することはできない。実際、一旦有水晶体眼内レンズが眼に埋め込まれると、そのような有水晶体眼内レンズの位置の安定性に関する欠点は、同じ医学的合併症をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、任意の眼の解剖学的構造に適合し、眼内の移植位置において特に安定した後房有水晶体眼内レンズを提供することである。
【0007】
この目的のために、本発明は、後眼房有水晶体眼内レンズであって、
前面及び後面と、
レンズを備え、前面から後面に向けられた光軸に対して半径方向に延在する中央光学部と、
中央光学部に対して半径方向外側に延在する周辺ハプティック(触覚;haptic)部と、
を備え、
周辺ハプティック部は、
中央光学部の周囲に円周方向に延在する近位部分と、
中央光学部に対して半径方向外側及び後方の両方に延在する複数の支持要素を備える、少なくとも近位部分の周囲の遠位部分であって、複数の支持要素が、有水晶体眼内レンズが(有水晶体)眼内で通常使用されるときに、毛様小帯上で有水晶体眼内レンズを支持するように構成されている、遠位部分と、
を備え、
中央光学部と周辺ハプティック部は、(剛性)ドームを形成しており、
後眼房有水晶体眼内レンズは、少なくとも1つの可撓性ハプティック(一体形成)をさらに備え、
少なくとも1つの可撓性ハプティックは、
周辺ハプティック部の近位部分に設けられた近位領域と、
複数の細長い可撓性フットプレートを備える、少なくとも近位領域の周囲の(網状の)遠位領域であって、
複数の細長い可撓性フットプレートのうちの少なくとも1つは、中央光学部に対して少なくとも部分的に半径方向外側に延在しており、
複数の細長い可撓性フットプレートが、前面と後面の間に延在する空洞を境界付ける、
遠位領域と、
を備え、
眼内レンズの第1の直径は、光軸に垂直に測定された、中央光学部及び周辺ハプティック部からなる(consisting of)光学アセンブリの第2の直径よりも厳密に大きく、
細長い可撓性フットプレートの少なくとも1つは、実質的に第2の直径と第1の直径との間に延在し、
遠位領域は、細長い可撓性フットプレートのうちの少なくとも2つを(機械的に)接続する遠位境界を備え、
遠位境界は、眼内レンズが(有水晶体)眼内で通常使用されるときに、眼内レンズを毛様溝に安定化するように構成されている、
後眼房有水晶体眼内レンズを提供する。
【0008】
本発明によって提供される後房有水晶体眼内レンズは、2つの別個の相補的なハプティック構造:複数の支持要素を含む周辺ハプティック部と、少なくとも1つの可撓性ハプティック(以下、「可撓性ハプティック」というが、そのような可撓性ハプティックのうちの少なくとも2つあることが好ましい)と、を備えた中央光学部を含む。本発明の技術的効果は、主に、光学アセンブリの(剛性)ドームの形態の構造、有水晶体眼内レンズ、より具体的には光学アセンブリを毛様小帯上に支持するドームの脚部である支持要素、及び光学アセンブリを越えて半径方向に延在し、第1の直径が第2の直径よりも厳密に大きいとすると、任意の毛様溝内に位置(及び/又はそれ自体を安定化)する可撓性ハプティックの能力の組み合わせにある。これらの組み合わされた2つのハプティック構造は、眼の後房に画定された移植部位における有水晶体眼内レンズの、軸方向(眼の光軸に沿って、又は光軸に非常に近く)及び半径方向(眼の光軸に対して直交方向に、又は直交方向に非常に近く)の両方におけるならびに回転(眼の光軸の周囲又は光軸に非常に近く)における安定化の改善の他、有水晶体眼内レンズの広範囲の患者の眼の解剖学的構造への適合性を可能にし、1つのサイズはすべての患者の解剖学的構造に適合する。
【0009】
より具体的には、周辺ハプティック部は、光軸に平行な方向への移植の安定化を可能にする。支持要素は、移植位置にある毛様小帯上でドームを支持するように、中央光学部に接する平面に対して交差する平面に存在する。ドームは、典型的には、滑らかな後面を備え、有水晶体眼内レンズが眼内で通常使用されるときに、ヒトの水晶体の前方上方にあるように構成され、それにより、少なくとも前方で水晶体を取り囲む。結果として、ヒトの水晶体前面と有水晶体眼内レンズの後面との間の、光軸に沿って測定される「vault」と呼ばれる距離が規定され、安定化される。それは、ヒトの水晶体白内障などの物理的外傷及び医学的合併症をもたらす可能性がある、有水晶体眼内レンズと水晶体との間の接触又は過度の近接を回避するために必要な安全距離と一致され得る。有水晶体眼内レンズと虹彩との間の「安全距離」もまた、有水晶体眼内レンズの前面、言い換えれば、ドームの頂部と、瞳孔眼を占有する(開口の増大において)仮想虹彩面として考えられる虹彩の後面との間の距離として規定さら、安定化される。
【0010】
優先的には、「vault」と呼ばれるこの距離は、半径方向及び/又は軸方向の圧縮の有無にかかわらず、100~1000ミクロンの間、より好ましくは350~700ミクロンの間に含まれるか、及び/又は調整可能である。この距離は、有利には、有水晶体眼内レンズと水晶体及び虹彩の両方との間に十分な空間を保証し、眼の後房の解剖学的大きさの欠陥、又は有水晶体眼内レンズの起こり得る位置欠陥を補償することを可能にし、患者の合併症のリスクを大幅に低減することを可能にする。本発明の一実施形態によれば、この距離は、有水晶体眼内レンズが埋め込まれることが意図される特定の天然水晶体の輪郭に従うように有水晶体眼内レンズの後面を削ることによって調整される。
【0011】
光学アセンブリの剛性ドームの構造は、ドームの後面が水晶体の前面よりも優先的には湾曲しているドームの曲率に基づいて、および、優先的には11mm~12mmの間、より好ましくは眼の標準的な後房解剖学的構造と適合する11.25mmの値である第2の直径の選択に基づいて、任意の眼に適合するように設計されている。したがって、光学アセンブリによって誘導された剛性ドーム構造は、眼の後房に適切に移植され、毛様小帯上に載置され、光軸に平行な有水晶体眼内レンズを安定化させる間、水晶体の上方にある。可撓性ハプティックは、眼の後房の光学アセンブリよりもさらに半径方向に延在し、毛様溝内に位置する(横たわる)。このハプティックの可撓性及び幾何学的形状により、毛様溝のサイズ変動を補償することが可能になり、その結果、移植位置にある有水晶体眼内レンズは、術前に正確に推定することができないものを含む眼寸法の範囲にわたって毛様溝のサイズに完全に適合し、それにより、有水晶体眼内レンズが眼内で通常使用されるときに、すなわち、有水晶体眼内レンズが眼の移植位置にあるとき、ドーム形状の光学アセンブリを本質的に第2の直径に対応する寸法に維持しながら、有水晶体眼内レンズの第1の直径の大きさを減少させることができる。したがって、有利には、本発明による単一の有水晶体眼内レンズモデルの製造及び取り扱いは、広範囲の患者の眼の解剖学的構造に対して十分なものである。
【0012】
さらに、可撓性ハプティックは、光軸に垂直な平面内での回転における、本発明による有水晶体眼内レンズの安定化を可能にし、それにより、内溝直径(「楕円」形状のため、ある方向において別の方向よりも大きいと認められる)の変動を完全に補償することができる。この可撓性ハプティック(好ましくは、これらの少なくとも2つの可撓性ハプティック)は、眼の毛様溝内に位置する(及び/又は引っ掛ける及び/又はそれ自体を安定化させる)ために半径方向及び円周方向に延在し、横方向スタビライザを使用して横方向に取り付けられた平面弾性布のように、有水晶体眼内レンズのための円周方向アンカーの役割を果たす。特に、この可撓性ハプティックは、レンズが乱視を矯正するための円筒を有する光学素子を備える円環状インプラントのレンズである実施形態において重要である。この場合、「回転安定性」と呼ばれる垂直面内のレンズの角度位置の安定性は、予想される光学的結果を保証するために重要である。可撓性ハプティックはまた、有水晶体眼内レンズが通常使用されるときに、前述の垂直面内で有水晶体眼内レンズを安定させることに寄与するほか、予想される光学的結果に影響を及ぼし得る眼の光軸に対する有水晶体眼内レンズの偏心の可能性を回避する。可撓性ハプティックは、レンズを中央の光学ゾーンに維持することを可能にする。
【0013】
複数の支持要素及び(少なくとも1つの)可撓性ハプティックの両方を備え、特許請求される有水晶体眼内レンズの安定性の技術的効果を達成することを可能にする2つの相補的ハプティック構造の有利な組み合わせを越えて、可撓性ハプティックの遠位領域の非常に具体的で特定の幾何学的形状も、本発明の完全な一部である。これについては後述する。
【0014】
本文書の枠組みにおいて、「網状」という用語は、古典的には網を模倣する幾何学的形状を有するものとして解釈される必要がある。この定義にしたがって、本発明の定義の結果として、可撓性ハプティックの遠位領域は、前述の「レチクル」の集合体、より好ましくは網を形成する組み合わさったレチクルを含むという意味で必然的に網状になっている。遠位領域のレチクルは、少なくとも細長い可撓性フットプレート及び遠位境界を備える。これらの細長い可撓性フットプレートは、任意選択的に、一緒に及び/又はそれら自体で交錯していない。細長い可撓性フットプレートは、好ましくは、中央光学部に対して少なくとも部分的に半径方向外側に延在する。遠位境界は、好ましくは、細長い可撓性フットプレートの大部分に対して横断方向であり、より好ましくは、すべての細長い可撓性フットプレートに対して横断方向である。特に、かつ、好ましくは、遠位境界は、細長い可撓性フットプレートを交錯させ、網を模倣する。さらに、レチクルがこれらの空洞を境界付けるように、これらのレチクルの間に前述の空洞、好ましくは開口空洞が存在する。これらの(開口)空洞は、眼内レンズを構成する固体物質の存在しない空間と同等に解釈することができる。この用語「空間」は、これらの空間が特に固体物質に設けられた穴ではないことが好ましいため、「穴」よりも便利である。それにもかかわらず、これは、遠位領域のレチクルを画定するために固体物質に穴を設けることによる、本発明による有水晶体眼内レンズの製造方法を排除することはできない。動詞「境界付ける」は、空洞が典型的には2つ以上のレチクルによって境界付けられることを考えると、「少なくとも部分的に境界付ける」と解釈されなければならない。
【0015】
可撓性ハプティックの可撓性は、少なくとも部分的に、この前述の「網状」幾何学的形状及び/又は細長い可撓性フットプレートの可撓性に起因する。優先的には、近位領域は第2の直径に外接し、遠位領域は第2の直径と第1の直径との間で半径方向に延在する。遠位領域は、毛様溝のサイズの変化とは無関係に、眼内への有水晶体眼内レンズの術後の安定した移植が可能となるように、特に可撓性である。第1の直径と第2の直径との間に延在する少なくとも1つの細長い可撓性フットプレートは、有水晶体眼内レンズを眼の毛様溝内に安定させるための可撓性アンカーとして作用する。遠位境界は、細長い可撓性フットプレートのうちの少なくとも2つを接続し、それらのうちの一方は、好ましくは前述の少なくとも1つの細長い可撓性フットプレートであり、これは、遠位領域に上述の網状構造体を少なくとも局所的に提供し、遠位領域の一体構造保持に寄与する。好ましくは、細長い可撓性フットプレートは、第1の直径と第2の直径との間に延在する厳密に2つ以上の細長い可撓性フットプレートを備え、その遠位端は遠位境界に属する。この場合、上述の有利な網状構造体及び一体構造体の保持が改善される。
【0016】
遠位端が毛様溝内に位置するように構成されている、第1の直径と第2の直径との間に延在する単一の可撓性フットプレートを考慮する代わりに、遠位領域にそのような上記の「網状」構造体を設けることが特に有利である。実際、そのようなフットプレートのみでは、眼内の移植プロセス中に見ること及び操作することは困難である。これは、フットプレートが下に挿入されなければならない眼の虹彩が不透明である一方で、フットプレートは、長く、透明で薄いからである。さらに、そのようなフットプレートは、虹彩の下への挿入中に非常に容易に反転し、有水晶体眼中での通常の使用時に所望の移植位置に入れるための追加の外科的操作を必要とする。これらの外科的操作は、患者の健康に対するリスクとなるため、回避されるべきである。実際、そのような追加の各外科的操作は、例えば、眼の天然水晶体に触れるリスクを増加させ、眼の白内障の発生を増加させる。最後に、そのような単一の可撓性フットプレートの使用は、フットプレートが反転する傾向があるため、任意の軸アライメント補正を非常に困難にする。これは、レンズが乱視矯正のための円環状インプラントのレンズである実施形態において重要である。これらすべての理由から、一体型可撓性ハプティックの網状遠位領域のレチクルとして、そのような可撓性フットプレートを考慮することがはるかに実用的である。実際、網状領域全体として上述の欠点を克服することは、単一の可撓性フットプレートと比較して、眼内の移植プロセス中に見ること及び操作することがはるかに容易であると同時に、この有利な網状構造体は、遠位端が毛様溝内に横たわるように構成される、第1の直径と第2の直径との間に延在するそのような可撓性フットプレートを使用することを可能にし、眼内で自己位置決めを可能にする。これは、上記で詳述した意味での遠位領域の特定の「網状」形状が、なぜ本発明及びその利点に完全に寄与するかを説明する。
【0017】
有水晶体眼内レンズは、好ましくは、そのような(網状)遠位領域を備えた少なくとも2つの正反対の可撓性ハプティックを備える。2つの可撓性ハプティックのこのような組み合わせは、眼内での通常の使用時の有水晶体眼内レンズの安定性を改善した。それにもかかわらず、本発明による有水晶体眼内レンズは、単独で、又は当業者に知られている任意の他のハプティック構造と組み合わせて、特許請求される単一の可撓性ハプティックを備えることができる。具体的には、例えば、本発明の枠組みでは、上述のような遠位領域を有する単一の可撓性ハプティックと、好ましくは第1の直径と第2の直径との間で、支持要素の1つの周囲に部分的に円周方向及び中央光学部品に対して半径方向外側の両方に延び、好ましくは近位部分に設けられた近位端、および毛様溝に位置するように構成された自由遠位端を備える、少なくとも1つの、好ましくは正反対(直径方向反対)である、細長い可撓性フットプレートと、を備える(回転非対称)有水晶体眼内レンズを考えることができる。
【0018】
周辺ハプティック部及び可撓性ハプティックは、優先的には、非常に可撓性かつ非常に耐久性のある材料で作られる。それらは、安定の必要性と眼内構造との適合性、及びその多くが複雑であり移植中又は移植前には見えない繊細な眼内構造に対する力及び外傷の過剰な作用を回避する剛性の必要性との間の妥協点を構成する。それらは、上述のvaultが眼の内部の解剖学的構造によってレンズの縁部に加えられるレンズの圧縮から確実に生じないように構成される。可撓性ハプティック及び/又は細長い可撓性フットプレートの「可撓性」特性は、上記の網状幾何学的形状及び/又は光軸に沿って測定した可撓性ハプティック及び/又は細長い可撓性フットプレートの低い平均厚さと組み合わされたこの材料によって優先的には誘発される。ドームの「剛性」特性は、好ましくは、一方では、光軸に平行に測定された、可撓性ハプティックの厚さよりも、平均して著しく大きい周辺ハプティック部の厚さ、並びに/又は、他方では、支持要素のフレア状及び/若しくは幅広及び/若しくは厚い形状、並びに/又は、さらに他方では、広範囲の患者の眼の解剖学的構造に対するドームの幾何学的技術的特性の剛性及び適応性、によって誘発される。優先的には、用語「剛性」の使用は、ドームを特定する目的のためではなく、ドームを可撓性ハプティックと比較するためである。
【0019】
好ましくは、周辺ハプティック部の厚さは、後面が特定の天然水晶体の(前方)曲率を模倣するように、前面及び/又は後面の曲率を選択的に調整することによって、有水晶体眼内レンズが天然水晶体の前面から特定の距離に位置することを可能にすることを目的とする。
【0020】
本文書の枠組みにおいて、眼の「光軸」は、優先的には、角膜、虹彩及び水晶体を連続的に備えるその前部によって、特に網膜を備えるその後部に向けられた、一方の側から他方の側へ眼を横切るベクトルに存在する。眼内の移植位置にある本発明による有水晶体眼内レンズの場合、眼の光軸は前面から後面に向けられ、優先的には有水晶体眼内レンズに対して本質的に規定される光軸に対応する。特に、光軸という用語は、本文書では、眼及び/又は有水晶体眼内レンズに対する基準軸として目下優先して使用されている。
【0021】
本文書の枠組みにおいて、眼又は眼内レンズの一部の「前」側及び/又は「前」面(又は「後」側及び/若しくは「後」面)は、優先的には、光軸によって規定されるベクトルに対して眼又は眼内レンズの一部の上流(又は後側もしくは後面の場合は、下流)に位置する側及び/又は表面に存在する。例として、眼において、虹彩は、水晶体に対して前方に位置する。したがって、虹彩の後面は、水晶体に最も近い虹彩の一部である。同様に、眼又は眼内レンズの第1の部分が眼又は眼内レンズの第2の部分よりも前方(又は後方)にある場合、この第1の部分はこの第2の部分に対して前方(又は後方)に位置することになる。
【0022】
眼及び/又は眼内レンズの一部に対する光軸の前方、後方、又は同一面上という前述の概念は、当業者に周知である。
【0023】
特に、本発明による有水晶体眼内レンズは、眼の後房内に配置されるように構成されるので、その前面が眼の虹彩に少なくとも部分的に面し、その後面が眼の天然水晶体に少なくとも部分的に面する。
【0024】
本文書の枠組みにおいて、有水晶体眼内レンズの一部は、光軸と共通の点からこの共通点を中心とする円の点に向けられた、光軸に垂直なベクトルに従って優先的に延在するときに、「半径方向外側に」延在すると言われる。同様に、有水晶体眼内レンズの一部は、光軸に垂直な平面上に存在しかつその平面と光軸との交点を中心とする円の少なくとも円弧に沿って優先的に延在するときに、「周方向」に延在すると言われる。半径方向及び円周方向の延長のこれらの概念は、光軸に垂直な各平面内の極座標系を指す。
【0025】
「遠位」という形容詞は、基準器官から又は体の胴体から最も遠い身体の部分の一部を指し、「近位」という形容詞は、基準器官又は体の胴体に最も近い身体の部分の一部を指すことは当業者に周知である。本文書の枠組みにおいて、これらの2つの定義は、基準の光軸に対する距離に関して、本発明による眼及び/又は有水晶体眼内レンズの一部に優先的に適用される。例えば、優先的には、本発明による有水晶体眼内レンズの近位部分は、中央光学部及び/又は中央部の周囲の有水晶体眼内レンズの一部を含み、本発明による有水晶体眼内レンズの遠位部分は、眼の一部に到達するのに適した有水晶体眼内レンズの外側横方向縁を含む。
【0026】
本文書の枠組みにおいて、要素を導入するための不定冠詞「a」、「an」又は定冠詞「the」の使用は、複数のこれらの要素の存在を排除しない。本文書では、「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」という用語は、要素を区別するためにのみ使用され、これらの要素の順序を暗示するものではない。
【0027】
本文書の枠組みにおいて、動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」、「伴う(involve)」、又は任意の他の変形、ならびにそれらの活用形の使用は、言及された要素以外の要素の存在を決して排除することはできない。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、
第1の直径は、12.5mm~14.5mmの間に含まれ、及び/又は、
第2の直径は、11mm~12mmの間に含まれる。
前述のように、これらの第1及び第2の直径は、光軸に垂直に測定される。
【0029】
より優先的には、半径方向及び/又は軸方向の圧縮力が有水晶体眼内レンズに加えられないとき、第1の直径は14mmに相当する。より優先的には、第二の直径は、11.2mm~11.3mmの間に含まれ、より好ましくは、11.25mmに等しく、より小さいサイズの毛様溝に対応し、それにより、剛性ドーム形状光学アセンブリは、広範囲の患者の眼の解剖学的構造に適合するサイズを有する。特に、剛性ドーム形状光学アセンブリは、それ自体が眼内で圧縮を受けないくらい十分に小さい。第1の直径と第2の直径との間の差は、(少なくとも1つの)可撓性ハプティックに起因する可能性があり、優先的には、剛性ドームの第2の直径と患者の毛様溝の実際のサイズとの間のギャップを埋めるように収縮し得る可撓性の寄与を構成する。したがって、本発明による有水晶体眼内レンズは、有水晶体眼内レンズの可撓性ハプティックの圧縮に依存しない、計画された結果として生じるvault、すなわち上述の距離を有する任意の眼の解剖学的構造に特によく適合する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、ドームの滑らかな後面は、実質的に凹面であり、好ましくはドームの滑らかな後面の凹面及び/又は曲率半径は、8mm~10mmの間に含まれ、好ましくは9mmに等しい。
【0031】
有利には、このようにして選択された曲率半径により、中央光学部及び周辺ハプティック部が、
後面が水晶体の前面よりも湾曲しているドームを形成すること、及び/又は水晶体の前面の直径がこの曲率半径よりも小さくなるようにドームを形成すること、
したがって、この前面より本質的に前方にあること、
が可能になる。
前述の曲率及び曲率半径は、ドームの後面が滑らかであり、数学的分析的な意味で少なくとも規則的であるため、明確に規定されていることが指摘される。特に、周辺ハプティック部と中央光学部との間の接合部の後面は、不規則性又は角度点を含まない。
【0032】
優先的には、この曲率半径は、眼の天然水晶体の前面の曲率半径よりも小さい。より好ましくは、この曲率半径は、眼の天然水晶体の前面の最小平均曲率半径にある。有水晶体眼内レンズの前面及び後面の曲率半径もまた、目標屈折力に関して最適化され、中央光学部の中心厚さが全視度範囲にわたって略一定に保たれるように最適化される。さらに、有水晶体眼内レンズの透明な光学系が明確に定義される。
【0033】
優先的には、中央光学面は、前方に実質的に凸状であり、及び/又は略平面であり、及び/又は光軸に本質的に垂直である。これにより、圧縮、したがって有水晶体眼内レンズの前方への屈曲を必要とせずにvaultを提供することが可能になる。
【0034】
優先的には、遠位領域は、3~11個の間、より好ましくは4~8個の間の細長い可撓性フットプレートを備える。本発明の好ましい実施形態によれば、軸方向及び/又は半径方向の圧縮が少なくとも1つの可撓性ハプティックに加えられたときに、特に有水晶体眼内レンズが眼内で通常使用されているときに、細長い可撓性フットプレートが全体として湾曲することができるように、遠位境界は、(すべての)細長い可撓性フットプレートを横断する、及び/又は、遠位領域は、(すべての)細長い可撓性フットプレートを横断する近位境界を備える。換言すれば、(網状の)遠位領域は、好ましくは、細長い可撓性フットプレートを横断する少なくとも2つのレチクルを含み、これらのレチクルのうちの第1のレチクルは、(網状の)遠位領域の近位境界からなり、これらのレチクルのうちの第2のレチクルは、遠位境界からなる。
【0035】
特に、各細長い可撓性フットプレートが遠位領域の近位境界と遠位境界の両方を横断する(交差及び/又は交錯する)ので、細長い可撓性フットプレートは、少なくとも1つの可撓性ハプティックに軸方向及び/又は半径方向の圧縮が加えられると、アコーディオングリッドシステム全体のように挙動する。これにより、遠位領域は、そのような圧縮下で抵抗性及び可撓性の両方であることが可能になる。この好ましい実施形態による可撓性ハプティックはさらに、特に毛様溝のサイズが小さい場合に、遠位領域と毛様溝との間の接触角を増大させることを可能にする。
【0036】
本発明のこの好ましい実施形態の第1の選択肢として、(網状の)遠位領域は、
細長い可撓性フットプレートと、
近位境界と、
遠位境界と、
から成り(consists of)、
空洞を境界付ける。
【0037】
本発明のこの好ましい実施形態の第2の区別される選択肢として、(網状の)遠位領域は、細長い可撓性フットプレートを横断する少なくとも3つのレチクルを備える。
【0038】
より好ましくは、本発明のこの好ましい実施形態によれば、細長い可撓性フットプレートの各々は、近位端及び遠位端を備え、細長い可撓性フットプレートの近位端は、近位境界によって接合され、細長い可撓性フットプレートの遠位端は、遠位境界によって接合される。特に、各細長い可撓性フットプレートは、遠位領域の近位境界と遠位境界との間に延在し、可撓性ハプティックに軸方向及び/又は半径方向の圧縮が加えられたときに、全体として湾曲する可撓性で抵抗性のアコーディオングリッドシステムを遠位領域に提供する。さらに、これにより、遠位領域は、眼内における移植プロセス中に、容易に見え、操作することができる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、遠位境界は、中央光学部に対して円周方向及び半径方向外側の両方に延在する。遠位境界は、有利には、毛様溝内の大きな接触面を提供し、可撓性ハプティックは、毛様溝内により良好に横たわり、半径方向及び回転の両方に対するより高い安定性を提供する。
【0040】
本発明の別の適合する好ましい実施形態によれば、遠位境界は、有水晶体眼内レンズが眼内で通常使用されているときに、毛様溝に滑らかに引っ掛かるように構成された滑らかなリプル(波形)を含む。有利には、リプルは、毛様溝への遠位境界の滑らかな引っ掛かりを促進する。リプルは、優先的には、この遠位境界にピンの役割を与えて、毛様溝内により容易に横たわるようにすると共に、安定化させる。これらのリプルは、好ましくは、それらの輪郭が滑らかであり、毛様溝又は眼の解剖学的構造の他の部分を刺激することができないように、研磨される。好ましくは、リプルは、細長い可撓性フットプレートの遠位端の形状に追従する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、細長い可撓性フットプレートは、法線ベクトルが光軸と-15°~15°の間に含まれる角度を形成する平面にほぼ沿って延在するように構成される。好ましくは、可撓性ハプティックの近位領域は、支持要素の1つに本質的に平行に後方に延在するのが好ましいが、遠位領域は必ずしも近位領域に平行ではなく、これには、遠位領域に対する近位領域の配向を変えるために、可撓性ハプティックが主に湾曲する傾向にある共通の縁領域が与えられる。遠位領域と光軸に対する垂直線との間に形成される角度は、実質的に任意であるが、好ましくは上述の角度に対応し、特に、毛様溝に横たわるのに適した遠位領域の配向を可能にするために、眼内の移植位置において-15°~15°の間に含まれる。任意選択的に、近位及び遠位領域は、有水晶体眼内レンズが製造中であり、まだ眼内に移植されていないとき、患者の虹彩の下への可撓性ハプティックの挿入が容易になるように、絶対値で5°未満の別の角度を形成する。
【0042】
より優先的には、本発明の前述の好ましい実施形態によれば、平面内で測定された空洞の面積は、平面内で測定された細長い可撓性フットプレートの面積よりも少なくとも2倍大きい。換言すれば、この平面上で、細長い可撓性フットプレートの固体物質で満たされた面積に対する(網状の)遠位領域の固体物質のない面積の比は、2より大きい。より好ましくは、平面内で測定された空洞の面積は、平面内で測定された(網状の)遠位領域(細長い可撓性フットプレートを含む)のすべてのレチクルの面積よりも少なくとも2倍、好ましくは4倍大きい。特に、レチクルは特に薄く可撓性である。
【0043】
好ましくは、可撓性ハプティックの遠位領域は、光軸に沿って測定して、略一定の厚さを有する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、上述したように、近位領域は、支持要素のうちの2つの間で、中央光学部に対して半径方向外側かつ後方に延在する。可撓性ハプティックは、特に遠位領域と近位領域の共通の縁領域に、材料の折り畳みを容易にするように構成された材料の折り目を含むことができ、それにより、軸方向及び/又は半径方向の圧力が加えられたときにそれがより急激及び/又はより穏やかに湾曲する。
【0045】
任意選択的に、可撓性ハプティックは、その近位領域に側方凹部を備え、これは、可撓性ハプティックと周辺ハプティック部の近位部分との間のヒンジとして動作することを可能にしやすい。このようにして、可撓性ハプティックは、その近位領域で、より可撓性で頑丈で滑らかである。有利には、側方凹部はまた、可撓性ハプティックから中央光学部に伝達される過剰な力を防ぐためのフェイルセーフ機構の役割を果たす。それは、毛様溝への適合された固定を提供し、繊細な眼内組織の侵食を防止するために、可撓性ハプティックによって加えられる力を制御する。
【0046】
代替的に及び/又は組み合わせて、本発明の非常に好ましい実施形態によれば、近位領域は、複数の細長い可撓性フットプレートを含み、
複数の細長い可撓性フットプレートのうちの少なくとも1つ、好ましくはその全てが、中央光学部に対して少なくとも部分的に半径方向外側及び後方に延在し、
複数の細長い可撓性フットプレートは、前面と後面との間に延在する、空洞、任意選択的には開口空洞、を境界付ける。
これらの空洞は、固体物質のない空間を構成することができる。空洞はまた、細長い可撓性フットプレートの厚さ(これらの任意の点における)よりも薄い厚さを有する可撓性材料で充填された非開口空洞であってもよく、それらの厚さの各々は光軸に沿って測定される。
【0047】
本発明のこの非常に好ましい実施形態によれば、近位領域は、(網状)遠位領域と同様に、優先的には、少なくとも局所的に網状であり、より好ましくは全体的に網状である。これにより、可撓性ハプティック全体に近位領域及び遠位領域の両方で改善された可撓性が提供され、任意の眼の解剖学的構造に対して有水晶体眼内レンズのより良好な適応性が提供される。
【0048】
本発明の特定の実施形態によれば、近位領域は、本発明の前述の好ましい実施形態のいずれかによる遠位領域に類似した網状幾何学的形状を有する。
【0049】
優先的には、可撓性ハプティックに軸方向及び/又は半径方向の圧縮が加えられたときに近位領域の細長い可撓性フットプレートが全体として湾曲することができるように、本発明のこの非常に好ましい実施形態による遠位領域及び近位領域は、遠位領域及び近位領域の両方の細長い可撓性フットプレートを横断する共通の接続境界(レチクルからなる)を共有する。この共通の接続境界は、優先的には、中央光学部の周囲に実質的に円周方向に延在し、第2の直径の円の円弧の形状を有する。
【0050】
この場合、共通の接続境界は、可撓性ハプティックの遠位領域及び近位領域の両方に対する共通のレチクルであり、これらの領域の細長い可撓性フットプレートに対して横断方向に延在する(次いで、交差及び/又は交錯する)。
【0051】
遠位領域及び近位領域の細長い可撓性フットプレートの各々は、好ましくは近位端及び遠位端を有する。優先的には、共通の接続境界は、近位領域の細長い可撓性フットプレートの遠位端と、遠位領域の細長い可撓性フットプレートの近位端とを接合する。本発明の特定の実施形態では、近位領域の細長い可撓性フットプレートは、遠位領域の細長い可撓性フットプレート内で遠位に延在する。
【0052】
近位領域の細長い可撓性フットプレートの各々は、周辺ハプティック部、より好ましくはその近位部分と、この共通の接続境界との間で好ましくは遠位方向に延在する。代替的に、近位領域の細長い可撓性フットプレートは、近位領域の細長い可撓性フットプレートを横断する近位領域の別の中間レチクルと共通の接続境界との間に延在することができ、この別の中間レチクルは、近位領域の細長い可撓性フットプレートの近位端を接続する。そうでなければ、任意選択的に、近位領域は、近位領域の細長い可撓性フットプレートを備える遠位網状部と、遠位網状部に設けられ、それ自体が好ましくは周辺ハプティック部の近位部分に設けられた近位非網状部とを備える。
【0053】
共通の接続境界には、遠位領域と近位領域との間の可撓性を改善し、これらの領域の間のヒンジとして機能することができる少なくとも1つの凹部を任意選択的に設けることができる。
【0054】
好ましくは、本発明の非常に好ましい実施形態による近位領域の細長い可撓性フットプレートは、第1の方向に配向され、第1の方向に略平行である。好ましくは、本発明の任意の実施形態による遠位領域の細長い可撓性フットプレートは、第2の方向に配向され、第2の方向に略平行である。これにより、有利には、可撓性ハプティックをより容易に製造することができる。さらに、細長い可撓性フットプレートのこの特定の配向及び設計は、遠位及び/又は近位領域の操作性、及び/又はアコーディオングリッド全体としてその可撓性を改善する。好ましくは、これらの第1及び第2の方向は横断方向であり、それらの間に80°~140°、より好ましくは100°~120°を含むより小さい角度を形成する。
【0055】
特定の好ましい本発明の一実施形態によれば、有水晶体眼内レンズは、第1、第2、第3及び第4の支持要素を備え、より好ましくは、中央光学部を中心とする、光軸に沿って細長い、第2の直径に等しい直径を有する円筒内に内接し、第1及び第2の支持要素は、光軸の両側で正反対(直径方向反対)の方向に延在し、第3及び第4の支持要素は、光軸の両側で正反対(直径方向反対)の方向に延在する。特定の好ましい本発明の別の適合する実施形態によれば、有水晶体眼内レンズは、本発明による2つの可撓性ハプティックを備え、それらは、より好ましくは、配向され正反対である。他の数の可撓性ハプティック(例えば、回転対称に配向された4つの可撓性ハプティック)は、本発明の範囲から除外されない。より一般的には、有水晶体眼内レンズは、(少なくとも)1対、好ましくは1対又は2対の、配向され正反対(直径方向反対)である可撓性ハプティックを備える。
【0056】
有利には、支持要素及び可撓性ハプティックのこの構成は、本発明による有水晶体眼内レンズに、軸方向及び半径方向の両方ならびに回転においてより大きな安定性を提供する。特に、有水晶体眼内レンズと天然水晶体との間の所定の空間としてのvaultは、圧縮を加える有水晶体眼内レンズ本体全体を通して加えられる横方向の力に依存しない。そのような横方向の力が発生した場合、この有水晶体眼内レンズの設計は、剛性光学アセンブリがそのような圧縮の影響を受けないままであるように、可撓性ハプティック内で横方向の力を吸収する。
【0057】
光軸の両側の一対の支持要素の、正反対の方向への延長は、この支持要素対の点の平面中心対称性の集合に同化することができる。特に、延長は、必ずしも線又は直径に沿って実現されるのではなく、光軸の両側に対称的に延在する滑らかな曲線に沿って実現される。
【0058】
より優先的には、第1、第2、第3、及び第4の支持要素は、光軸上で交差する平面矩形の対角線に従って対称的に、中央光学部に対して外側に半径方向に配向される。第1の平面矩形の頂点は、円筒上に優先的に配置される。平面矩形の最も大きい辺と、平面矩形の最も小さい辺との比は、好ましくは1~1.5の間に含まれる。
【0059】
優先的には、一対の可撓性ハプティックは、光軸を中心とした有水晶体眼内レンズの180°の回転によって他方のうちの1つの像がそれぞれ存在するような向きを有する。これは、乱視を矯正するために曲率不規則性を含むレンズの場合に、例えば有水晶体円環状眼内レンズの場合に、非常に有利かつ重要である。実際、この場合、有水晶体眼内レンズを術前に回転させて適切な軸に位置決めすることがしばしば必要である。可撓性ハプティックの設計及び回転対称性は、手術時にそのような回転操作を有利に容易にする。
【0060】
より一般的には、本発明による有水晶体眼内レンズは、光軸を中心とする180°の回転下で形状が不変であることが好ましい実施形態である。特に、特許請求される形状不変性は、両方のハプティック構造、すなわち、好ましい特定の(少なくとも)4つの支持要素及び(少なくとも)2つの可撓性ハプティックの回転対称を含む。
【0061】
有水晶体眼内レンズは(また)、好ましくは、平面反射下、すなわち平面に対して直交対称下で形状不変である。この好ましい実施形態は、限定されないが、特に、有水晶体眼内レンズが2対の可撓性ハプティックを備える場合に適用することができる。それは、移植中及び移植後のレンズのねじれを回避することを可能にする有利な鏡映対称性を有水晶体眼内レンズに提供する。このような2対の可撓性ハプティックは、好ましくは配向されて正反対であり、各可撓性ハプティックは、他の可撓性ハプティックの中で、それに最も近い可撓性ハプティックから、第2の直径の0~25%の間の距離だけ離隔している。この距離は、好ましくは正(>0)であり、周辺ハプティック部の遠位部は、好ましくは、有水晶体眼内レンズが眼内で通常使用されるときに、毛様小帯上で有水晶体眼内レンズを支持するための2つの補助支持要素をさらに備え、これらの補助支持要素の各々は、可撓性ハプティックの近位領域と、他の可撓性ハプティックの中でそれに最も近い可撓性ハプティックの近位領域との間の空間を充填しかつその空間に延在する。この好ましい場合では、ドームは、6つの脚部、すなわち4つの支持要素及び2つの補助支持要素を備える。
【0062】
本発明の好ましい実施形態によれば、有水晶体眼内レンズは、20~45%の水を含む可撓性で生体適合性のある材料を含み、その材料のヤング率は1GPa未満である。優先的には、この可撓性で生体適合性のある材料は、36~38%の水を含む。優先的には、この材料は、0.25~0.75GPa、より好ましくは0.4~0.6GPaの間に含まれるヤング率を有し、さらにより好ましくは0.5GPaである。
【0063】
この可撓性で生体適合性のある材料は、カプセル型眼内レンズ設計に通常使用される材料よりも優先的にはより可撓性である。これは、優先的には、非常に低い表面摩擦、負のゼータ電位、柔らかい感触及び防汚特徴のための高度に親水性の共有結合したコーティングを含む。
【0064】
優先的には、本発明による有水晶体眼内レンズは、フライス加工後に丸いハプティック縁及び眼内レンズ輪郭を作るために、その外面、特に前面、後面及び側面のそれぞれで広範囲に研磨される。これにより、周辺ハプティック部又は中央光学部の可撓性ハプティックの片側又は鋭い縁部を回避して、有水晶体眼内レンズが移植位置にあるとき又は手術中に患者の眼の後房の組織を刺激することを避けることができる。
【0065】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、有水晶体眼内レンズは、前面と後面との間に延在し、流体の流れを可能にするように構成された貫通孔を備える。
【0066】
優先的には、流体の流れは、有水晶体眼内レンズが眼内で通常使用されているときに、眼の前房と後房との間の液体の流れである。この孔は、有利には、有水晶体レンズの前方空間と後方空間のいずれかの実際のサイズにかかわらず、有水晶体レンズの前方空間と後方空間との間の流体の流れの結果として生じる制限を伴って、第2の人工後房が形成されるのを防止することを可能にする。これは、前眼房と後眼房との間の完全かつ永続的な流体連通を保証することを可能にする。優先的には、貫通孔は、中央光学部の中心に配置され、より好ましくは中央光学部と光軸との交点に少なくとも部分的に配置される。
【0067】
本発明は、有利には、患者において矯正されるべき視覚の欠陥に最も適合する中央光学部レンズの選択を可能にする。
【0068】
特に、本発明の一実施形態によれば、中央光学部レンズは、近視の矯正、遠視の矯正、老眼の矯正、及び角膜乱視の矯正の中から少なくとも1つの矯正を可能にする単焦点レンズからなる。本発明の特定の実施形態によれば、レンズは、好ましくは老眼を治療するために、焦点深度拡張型屈折又は回折レンズからなる。優先的に、レンズは、最新技術に従って選択される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになり、その理解のために、添付の図面を参照されたい。
【
図1A】概念上の幾何学的ガイドマークが設けられた、本発明による後房有水晶体眼内レンズの上部の第1の簡略化された平面図を示す。
【
図1B】
図1Aに表される後房有水晶体眼内レンズの可撓性ハプティックの拡大図を示す。
【
図2】
図1Aに表される後房有水晶体眼内レンズの側面の第2の簡略化された平面図を示す。
【
図3】
図1Aに表される後房有水晶体眼内レンズの前部の第3の簡略化された平面図を示す。
【
図4A】本発明による後房有水晶体眼内レンズの側面及び後面の一部の簡略化された3次元図を示す。
【
図4B】
図4Aに示す後房有水晶体眼内レンズの前面の簡略化された3次元図を示す。
【
図5】本発明による後房有水晶体眼内レンズが装着された眼の一部の簡略断面図を示す。
【
図6】本発明による後房有水晶体眼内レンズの側面の簡略平面図を示す。
【
図7A-E】本発明による後房有水晶体眼内レンズの可撓性ハプティックの拡大図を示す。
【
図8】本発明による後房有水晶体眼内レンズの前面の簡略化された3次元図を示す。
【
図9】毛様溝直径に基づく、本発明による後房有水晶体眼内レンズの軸方向位置のグラフ表示を示す。
【0070】
図面の図面は縮尺されていない。一般に、類似の要素は、図面において類似の符号によって割り当てられる。本文書の枠組みにおいて、同一又は類似の要素は、同じ符号を有することができる。さらに、図面における符号の存在は、これらの符号が特許請求の範囲に示される場合を含み、限定的であるとみなしてはならない。
【発明を実施するための形態】
【0071】
この部分は、本発明の好ましい実施形態の詳細な説明をする。具体的な実施形態及び図面を参照して説明するが、本発明はこれらによって限定されない。特に、以下に説明する図面又は図は概略的なものに過ぎず、決して限定するものではない。
【0072】
符号81、82、83、83’、89A、89B、X、Y、Z、K、d、P、R、α、r1及びr2によって指定された幾何学的要素及び/又は寸法は、本発明の実施形態の技術的特性を定量化及び/又は視覚化するために、以下の図のいくつかに例示として表されている。これらの幾何学的要素は、実質的に概念的であり、具体的な材料物体に対応しない。
【0073】
同様に、様々な点線は、本発明のいくつかの特定の実施形態による有水晶体眼内レンズの領域及び/又は部分のいくつかの範囲を示すことのみを目的として、以下の
図1A~
図1B、
図4A~
図4B及び
図7A~
図7Eに表されている。これらの線は実際には存在しない。
【0074】
本発明は、光軸Zに沿った軸方向および半径方向の両方において、ならびに光軸Zに垂直でかつベクトルXとYに基づく平面内での回転時において、任意の眼の解剖学的構造に適合し、眼9の移植位置で術後に安定する後房有水晶体眼内レンズ1を提供する。光軸Zは、有水晶体眼内レンズ1の前面11から有水晶体眼内レンズ1の後面12に向けられる。
【0075】
以下の図に示すように、本発明による有水晶体眼内レンズ1は、光軸Zに対して半径方向に、本質的に平坦及び/又は略凸状に延在する中央光学部2を備え、直径は5.5~6.5mmの範囲であり、優先的には6mmに等しい。中央光学部2は、光軸Zに沿って細長い、前面11と後面12との間に延在する貫通孔21を備え、これらの表面間の流体連通を可能にする。
【0076】
図1A及び
図1Bに示すように、有水晶体眼内レンズ1は、中央光学部2に対して半径方向外側に延在する周辺ハプティック部3を備え、
中央光学部2の周囲に及び中央光学部2から、円周方向及び略対称的に延在する近位部分31と、
少なくとも部分的に近位部分31から半径方向に延長する遠位部分32であって、光軸Zに垂直な平面矩形Rの対角線r1及びr2に沿って半径方向外向きに延在し、かつ、中央光学部2に対して後方にも延在する複数の支持要素4A~Dを備える、遠位部分32と、
を備え、
その結果、中央光学部2及び周辺ハプティック部3は、支持要素4A~Dからなる広い脚部によって支持されたドームKを形成する。
【0077】
ドームKを
図2に示す。十分な壁厚は、ドームKが軸方向及び/又は半径方向の圧縮に耐えるようにドームKに剛性を付与する。ドームKの後面は湾曲しており、その優先的な曲率半径kは約9mmであるため、
図2に示すように、ドームKを半径kの球体に内接させることができる。光軸Zに沿って測定され、
図2に示されるドームKの高さ89A、及び前述の「固有のvault」は、有水晶体眼内レンズ1に固有のvaultの高さを構成する。これは、1.5mm~2.2mmの間に含まれる、より好ましくは1.7mm~2mmの間に含まれる優先値を受け入れ、さらにより好ましくは、これは、1.87mmである。ドームKの基部の幅は、典型的には、中央光学部2及び周辺ハプティック部3の第2の直径82に対応する。この第2の直径82は、約11.25mmに相当する。ドームKの「頂」部は、中央光学部2及び周辺ハプティック部3の近位部分31に実質的に対応し、約7mmに相当する直径で延在する。
【0078】
本発明の開示に詳細に示されているように、これらの値は、中央光学部2及び周辺ハプティック部3から構成されるアセンブリが、
図3に示されているように、眼の天然水晶体94を取り囲んでその前方上方に着座するように十分に剛性で十分に広い構造を構成し、それによって、光軸Zに平行に安定しながら、眼後房の非常に広範囲の解剖学的構造に移植されやすいように選択される。
【0079】
図1A及び
図1Bに示すように、有水晶体眼内レンズ1はまた、少なくとも1つ、より正確には2つの可撓性ハプティック5を備え、各可撓性ハプティック5は、無移植状態で、有水晶体眼内レンズ1に軸方向又は径方向に圧縮が及ぼされていない状態で、優先的には13.5mm~14.5mmの間に含まれる値、より好ましくは14mmに相当する値を有する第1の直径81の円筒に内接するように、2つの支持要素4A~Dの間で中央光学部2に対して径方向外側に、及び周辺ハプティック3を越えて径方向に延在する。
【0080】
これらの2つの可撓性ハプティック5、より具体的にはそれらの遠位境界56は、有水晶体眼内レンズ1の眼内での通常の使用時に、有水晶体眼内レンズ1を毛様溝内に安定化させるように構成される。本発明の開示に詳述されているように、これらの可撓性ハプティック5は、有水晶体眼内レンズ1が移植位置にある状態で毛様溝のサイズ変動を補償することを可能にする。可撓性ハプティック5はまた、光軸Zに垂直な平面内で回転する有水晶体眼内レンズ1を安定化させるための横方向アンカーとして作用する。
【0081】
図1A~
図1B及び
図4A~
図4Bに示されるように、可撓性ハプティック5のそれぞれは、
周辺ハプティック部3、優先的にはその近位部分31上に設けられた(少なくとも局所的な)網状近位領域51と、
近位領域51上に設けられた網状遠位領域52と、
からなる(consists of)。
近位領域51は、典型的には、支持要素4A~Dのうちの2つの間で、中央光学部2に対して半径方向外側及び後方に延在する。遠位領域52は、第2の直径82のほぼ円の円弧に沿って延在する共通の接続境界55上に設けられている。この共通の接続境界55は、遠位領域52の近位境界であり、かつ近位領域51の遠位境界である。遠位領域52は、有水晶体眼内レンズ1が眼内で通常使用されているときに毛様溝に位置する(及び/又は引っ掛ける及び/又はそれ自体を安定化させる)ための滑らかなリプル56Aを含む遠位境界56を含む。
【0082】
図4A~
図4Bにより明確に示されるように、可撓性ハプティック5のそれぞれは、近位領域51及び遠位領域52のそれぞれに対応する2つのローブ(丸い突出部;lobes)を有する湾曲した穿孔樹木葉の形態を有する。上述の「穿孔」という用語は、近位領域51及び遠位領域52の(少なくとも局所的な)「網状」の技術的特性に関連する。これらの特性の結果として、これらの領域は、網を形成する複数の交錯するレチクルを含む。この幾何学的形状は、ハプティック幾何学形状に対して非常に独特であり、非常に特殊である。それは完全に本発明の一部である。その主な利点は、有水晶体眼内レンズ1の移植プロセス中に可撓性ハプティック5が反転するのを回避するために周辺ハプティック部3に十分に接続された非常に柔軟なハプティックを有水晶体眼内レンズ1に提供することである。さらに、このような可撓性ハプティック5は、このプロセス中に眼の中を見るのがより容易であり、これは、有水晶体眼内レンズ1の眼内への位置調整を取扱うために非常に重要である。手短に言えば、可撓性ハプティック5のこの網状幾何学的形状は、特に、上述のようにその回転安定性を可能にしながら、有水晶体眼内レンズ1の眼内への操作性を向上させるために設計されている。
【0083】
ここで、(少なくとも局所的に)網状の近位領域51及び遠位領域52のレチクルを、
図1Bを考慮して具体的に説明する。近位領域51のレチクルは、周辺ハプティック部3から共通の接続境界まで第1の方向に略平行に延在する配向された細長い可撓性フットプレート53を備える。遠位領域52のレチクルは、遠位領域52の共通の接続境界55から遠位境界56まで第1の方向を横断する第2の方向に略平行に、優先的には、これらの2つの方向の間に80°~120°に含まれる(最小の)角度で延在する配向された細長い可撓性フットプレート54を備える。細長い可撓性フットプレート53、54は、中央光学部2に対して少なくとも部分的に半径方向外側に延在する。それらは、第2の方向に対して横断方向に測定された、優先的には0.05~0.20mmの間に含まれる幅84B、好ましくは0.10mmの値にほぼ相当する幅84B、を有する類似の細長い薄いレチクルである。各細長い可撓性フットプレート53(または54)は、近位端53
1(または54
1)及び遠位端53
2(または54
2)を備える。共通の接続境界55は、細長い可撓性フットプレート53、54を横断し、細長い可撓性フットプレート53の遠位端53
2と細長い可撓性フットプレート54の近位端54
1とを一緒に接合する近位領域51及び遠位領域52の両方のレチクルを構成する。遠位境界56は、細長い可撓性フットプレート54を横断し、細長い可撓性フットプレート54の遠位端54
2を一緒に接合する遠位領域52のレチクルを構成する。遠位境界56の前述の滑らかなリプル56Aは、
図4A~
図4Bに示されるように、細長い可撓性フットプレート54の遠位端54
2の端部の接合形状に優先的には追従する。2つの細長い可撓性フットプレート54A及び54B(潜在的に他の中で)は、第2の直径82と第1の直径81との間に実質的に延在する。換言すれば、有水晶体眼内レンズ1は、眼内での通常の使用時に、毛様溝に位置するための遠位端54A~B
2を有する細長い可撓性フットプレート54A~Bを備える。これらの細長い可撓性フットプレート54A~Bは、その可撓性及び操作性を改善することを可能にする上述したような網状の可撓性ハプティック5に有利に接合される。細長い可撓性フットプレート53の近位端53
1は、好ましくは、周辺ハプティック部3の近位部分31で一緒に接合される。結果として、細長い可撓性フットプレート53、54は接合され、有水晶体眼内レンズ1が移植位置にあるとき、可撓性ハプティック5に加えられる軸方向及び/又は半径方向の圧縮下で湾曲しかつ/又は移動する可撓性アコーディオングリッド全体として機能する。好ましくは、近位領域51及び遠位領域52は、それらを構成する固体物質としてレチクルのみを備える。前面11と後面12との間に延在し、レチクルによって境界付けられた開口空洞(又は、等価には、そのような固体物質が存在しない空間)が存在する。これらの空洞は、近位領域51及び遠位領域52に対してそれぞれ符号57及び58で示されている。それらは、典型的には、細長い可撓性フットプレート53、54と同様に配向されかつ細長い。第2の方向に対して横断方向に測定された空洞58の幅84Aは、0.10mm~0.50mmの間、好ましくは0.20mm~0.30mmの間に含まれ、より好ましくは0.26mmの値にほぼ相当する。結果として、遠位領域52は、好ましくは、前述の固体物質で満たされた前述の固体物質よりもはるかに空である。近位領域51についても同様である。
【0084】
レチクルの数及びそれらの構成は、
図1A~
図1B及び
図4A~
図4Bを考慮して前述された。特に、この場合、開口空洞57、58は楕円形状を有する。それにもかかわらず、本発明の枠組みでは、
図7A~
図7Dに非限定的な方法で示されているように、様々な向きを有する、菱形、楕円形又は円などの他の形状を有する開口空洞57、58を提供するレチクルの構成を考慮することが可能である。
図7Eに示すように、本発明の枠組みでは、開口空洞57の代わりに、少数の非開口空洞57(又は近位領域51に空洞57が全くない)を考慮することが可能である。これらの図の点線は、レチクルの延長方向を表す。
図7Cには、細長い可撓性フットプレート53(または54)を横断する追加の中間レチクル55’’(または55’)を備える近位領域51(または遠位領域52)が示されている。遠位領域52の同様のレチクル55’も
図7Dに示されており、フットプレート54の大部分を接続している。
図7Dのフットプレート53は、より良好な可撓性を有する可撓性ハプティック5を提供するために取り除くことができる。
【0085】
可撓性ハプティック5の(少なくとも局所的な)網状幾何学的形状は、有利には、可撓性ハプティック5が強い抵抗性及び可撓性の両方を有することを可能にする。それはまた、遠位領域52と近位領域51との間の接続、および近位領域51と周辺ハプティック部3の近位部分31との間の接続に大きな剛性及び抵抗性を付与する。可撓性ハプティック5は、好ましくは38%の水を含む可撓性及び耐久性のある材料から構成され、その幾何学的形状と組み合わされて、それらの強い耐久性及び可撓性に寄与する。
【0086】
図3及び
図4Aに示すように、光軸Zに沿って測定された遠位領域52の厚さ83は、好ましくは略一定であり、0.10~0.40mmの間に含まれ、より好ましくは0.15~0.35mmの間に含まれ、中央光学部2の厚さ83’よりも大きい。任意選択で、これは20mm又は30mmのいずれかに相当する。それにもかかわらず、より容易に、眼の毛様溝に挿入され及び/又は安定化するために、共通の接続境界55から遠位境界56へと厚さ83が実質的に減少する遠位領域82を考慮することが可能である。
【0087】
図6に示すように、光軸Zに垂直な線dと遠位領域52の延長面Pとの間の調整可能な角度αが、優先的には、-15°~15°の間に含まれるように、圧縮が有水晶体眼内レンズ1に軸方向及び/又は半径方向に加えられたときに、遠位領域52が折り畳まれる及び/又は湾曲するよう設計される。
【0088】
図1A~
図1B及び
図4A~
図4Bに表される2つの可撓性ハプティック5は、有水晶体眼内レンズ1に「空気力学的」回転対称形状を提供するように配置及び設計される。特に、遠位境界56は、中央光学部2に対して円周方向及び半径方向外側に延在する。さらに、有水晶体眼内レンズ1全体の形状は、光軸Zを中心とする180°の回転下で不変である。有水晶体眼内レンズ1のこの形状、より具体的には可撓性ハプティック5の形状は、有水晶体眼内レンズ1を眼に移植した後の回転における軸調整の取り扱いに有利である。実際、そのような軸調整中の、可撓性ハプティック5の反転又は眼の眼内組織への損傷を回避することが重要であり、可撓性ハプティックの形状はそのために特に適合される。
図8に示すように、2対のそのような可撓性ハプティック5を有する有水晶体眼内レンズ1も本発明の枠組みに含まれる。この場合、有水晶体眼内レンズ1は、中央光学部2の中心を含む(および有水晶体眼内レンズ1を2つの同様の部分に切断する)平面による平面反射の下でも不変であることが好ましい。任意選択的に、2つの補助支持要素4E~Fは、これらの対の一方の各可撓性ハプティック5の近位領域51と、これらの対の他方の最も近い可撓性ハプティック5の近位領域と間の空間内で、正反対に延び、この空間を充填している。これらの補助支持要素4E~Fはまた、ドームKの補助脚として、有水晶体眼内レンズ1が眼9内で通常使用されているときに、毛様小帯97上に有水晶体眼内レンズ1を支持するように構成される。
【0089】
図5は、本発明による有水晶体眼内レンズ1が本発明に従って移植された眼9の断面を示す。この断面には、眼9の、角膜91、虹彩92、瞳孔93、水晶体94及び前房95、後房96、毛様小帯97ならびに毛様溝98が示されている。有水晶体眼内レンズ1は、後房96に配置される。周辺ハプティック部3の支持要素4A~Dは毛様小帯97上に載置され、一方、可撓性ハプティック5は、本発明の開示に記載及びコメントされているように、毛様溝98内に置かれる。光軸Zに沿って測定された、水晶体94と有水晶体眼内レンズ1の後面との間の、vaultと呼ばれる安全な距離89Bは、優先的には350~700ミクロンの間に含まれ、調整可能である。ハプティック4A~D及び5の二重構造は、有利には、有水晶体眼内レンズ1の移植位置における有水晶体眼内レンズ1の軸方向及び半径方向の安定化ならびに回転安定性を可能にする。安全な距離89Bは、有利には、眼のサイズにも移植状態での圧縮にも依存しない。
【0090】
図9は、軸72上に示され、模擬毛様溝直径に基づいてミクロン単位で測定され、軸71上に示され、ミリメートル単位で測定された、本発明1による後房有水晶体眼内レンズの軸方向位置のグラフ表示74を表す。望ましい平衡位置は、軸72上で測定された1500ミクロンの線76によって表され、この値は500ミクロンの前述の距離89Bに相当する。この平衡位置76の周囲で光軸Zにしたがって軸方向に許容される変動の余地は、350ミクロンである。この余地は、その上限及び下限がそれぞれ2つの点線75A及び75Bによって表されている。グラフ74は、毛様溝のサイズに基づく有水晶体眼内レンズ1の軸方向変位が、ほとんど変化せず、11.5mm~13.5mmの間に含まれる広範囲の毛様溝のサイズに対して線75A~Bの間の許容値内にとどまることを示している。点線で示される曲線73は、従来技術による12.6mmの直径を有する平均的な後房有水晶体眼内レンズの平均的な軸方向変位の測定傾向を示す。グラフ74と傾向曲線73との比較は、本発明による有水晶体眼内レンズ1の軸方向安定性に関する性能及び改善を示す。
【0091】
換言すれば、本発明は、中央光学部2と、眼の毛様小帯上に位置するように配置された複数の支持要素4A~Dを備える周辺ハプティック部3と、眼の毛様溝内に位置するように配置された網状遠位領域52を含む少なくとも1つの可撓性ハプティック5と、を備える後房有水晶体眼内レンズ1に関する。
【0092】
本発明は、純粋に例示的であり、限定的であると見なされるべきではない値を有する特定の実施形態に関連して説明された。一般的に言えば、本発明が図示され及び/又は上述された例に限定されないことは、当業者にとって明らかであると思われる。本発明は、本文書全体を通して記載される新しい特徴の各々、ならびにそれらのすべての組み合わせを含む。
【0093】
本発明はまた、いずれの眼の解剖学的構造にも適合し、眼内の移植位置において、光軸に沿って軸方向に、及び光軸に垂直な平面内で半径方向及び回転において術後安定である後房有水晶体眼内レンズの有利な技術開発に関連して説明された。前述のように、この有水晶体眼内レンズは、好ましい網状幾何学的形状を有する少なくとも1つの可撓性ハプティックを備える。本発明者らはまた、(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズにこの少なくとも1つの可撓性ハプティックが非常に有利に含まれることを提案する。特に、本発明者らはまた、眼内レンズの少なくとも1つの既知のハプティックを、そのような特許請求される可撓性ハプティックに置き換えることを提案する。
【0094】
本発明の別の目的は、眼内の移植位置において光軸に垂直な平面内での回転において安定であり、眼内の移植プロセス中に特に見て操作しやすい(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズを提供することである。
【0095】
この目的のために、本発明者らは、(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズであって、
前面及び後面と、
レンズを備え、前面から後面に向かう光軸に対して半径方向に延在する中央光学部と、
少なくとも中央光学部の周囲の(網状、好ましくは遠位)領域52と、複数の細長い可撓性フットプレート54と、を備える少なくとも1つの可撓性ハプティック5(一体型)であって、
複数の細長い可撓性フットプレート54が、
中央光学部に対して少なくとも部分的に半径方向外側に延在し、
前面と後面との間に延在する(好ましくは開口)空洞58を境界付けており、
領域52がまた、遠位境界56を備えており、遠位境界56が、
複数の細長い可撓性フットプレート54のうちの少なくとも2つを接続しており、
眼内レンズの眼内での通常の使用時に、眼内レンズを安定させるように構成されている、
少なくとも1つの可撓性ハプティック5と、
を備える眼内レンズを提案する。
【0096】
上述の符号は、典型的には、大きなクラスの(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズに広く適合させることができる
図1Bの可撓性ハプティック5の形状を反映する。本発明による有水晶体眼内レンズについて記載及び特許請求される可撓性ハプティック5の実施形態のセット全体、及びこれらの実施形態の使用の利点は、必要な変更を加えて、本願の可撓性ハプティック5及び(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズに適用される。特に、この可撓性ハプティック5は、(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズに、光軸に垂直な平面内での改善された回転安定性、及び半径方向の圧縮下での改善された耐久性(抵抗)をもたらす。本発明は、特許請求される後房有水晶体眼内レンズよりも一般的であるが、特許請求される(網状)可撓性ハプティックがこれらの有利な効果を単独で提供するという事実は、完全に本発明の一部である。ドームを形成する特許請求される周辺ハプティック部は、特許請求される後房有水晶体眼内レンズの完全な安定性を目標とするために重要であるが、光軸に垂直な平面内におけるより一般的な(無水晶体又は水晶体)眼内レンズの回転の安定性の技術的効果、及び眼内への移植プロセス中にハプティックを特に見て操作しやすい他の技術的効果を得るためには必要ではない。したがって、本発明者らはまた、段落0095に提示される眼内レンズを提案し、したがってドームを形成する周辺ハプティック部はない。
【0097】
「網状」という用語は、前述のように網を模倣する幾何学的形状を有するものとして解釈されなければならず、領域のレチクルは、少なくとも細長い可撓性フットプレート及び遠位境界を含む。本発明の開示において先に説明したように、可撓性ハプティックの可撓性は、少なくとも部分的に、この前述の「網状」幾何学的形状及び/又は細長い可撓性フットプレートの可撓性に起因する。この領域は、特に可撓性であるため、移植位置のサイズ変動とは無関係に眼内レンズの術後安定した移植が可能になる。遠位境界は、細長い可撓性フットプレートのうちの少なくとも2つを接続し、それらのうちの1つは、好ましくは前述の最長の細長い可撓性フットプレートであり、これは少なくとも局所的に、領域に前記「網状」構造体を提供し、領域の一体的構造の保持に寄与する。本発明の開示において先に説明されたように、複数の可撓性フットプレートを一体の可撓性ハプティックの網状遠位領域のレチクルとして考慮することが実際的である、なぜなら、この網状構造体は、眼内レンズを安定化するために複数の可撓性フットプレートを使用することを可能にする一方で、眼内の移植プロセス中に見ること及び操作することが非常に容易であり、単一の可撓性フットプレートと比較して眼内で自己位置決めすることができるからである。
【0098】
優先的には、(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズは、そのような(網状の遠位)領域を備えた少なくとも2つの正反対の可撓性ハプティックを備える。2つの柔軟なハプティックのこのような組み合わせは、眼内での通常の使用における眼内レンズの安定性を改善した。(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズは、好ましくは光軸を中心に回転対称である。
【0099】
優先的には、遠位境界56は、(すべての)細長い可撓性フットプレートを横断する。優先的には、領域52は、(すべての)細長い可撓性フットプレートを横断する近位境界55を含む。このようにして、細長い可撓性フットプレート54は、可撓性ハプティック5に軸方向及び/又は半径方向の圧縮が加えられるときに、特に(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズが眼内で通常使用されているときに、全体として湾曲することができる。より好ましくは、細長い可撓性フットプレート54の各々は、近位端541及び遠位端542を備え、細長い可撓性フットプレート54の近位端541は、近位境界55によって接合され、細長い可撓性フットプレート54の遠位端542は、遠位境界56によって接合される。遠位境界56は、好ましくは、中央光学部に対して円周方向及び/又は半径方向外側に延在し、(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズのための大きな接触面及びより大きな安定性を提案する。
【0100】
領域52は、可撓性ハプティック5の任意の十分な部分とすることができる。特に、前述のように、近位境界55に沿って前述の(網状遠位)領域52に接続された近位領域51を含む可撓性ハプティック5を考えることができる。これらの近位領域51及び遠位領域52の任意の特定の実現は、必要な変更を加えて、(無水晶体又は有水晶体)眼内レンズのこの実施形態に適用することができる。
【国際調査報告】