(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤を使用したシェーグレン症候群を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/505 20060101AFI20220720BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220720BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61K31/505
A61P43/00 111
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568431
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 IB2020054754
(87)【国際公開番号】W WO2020234781
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャリア,スヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ビエス,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】カバンスキー,マチェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェンニ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】デ バック,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】カウル,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】キニカー,アルビンド
(72)【発明者】
【氏名】ラディヴォイェヴィチ,アンドリヤナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィタリティ ガラミ,アレッサンドラ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB08
4C086ZC20
(57)【要約】
本開示は、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を使用する、シェーグレン症候群疾患を処置するための方法に関する。シェーグレン症候群患者を処置するための式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩並びに、開示される使用及び方法での使用のための、薬剤、投与レジメン、医薬処方物、剤形及びキットも本明細書中で開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェーグレン症候群(SjS)の処置を必要とする対象におけるシェーグレン症候群(SjS)の処置での使用のための、式(I)の化合物:
【化1】
又は薬学的に許容可能なその塩であって、式(I)の化合物の1日用量が約10mg~約200mgである、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項2】
前記1日用量が約10mg~約100mgである、請求項1に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項3】
前記1日用量が約100mgである、請求項1に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項4】
前記1日用量が約50mgである、請求項1に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項5】
前記1日用量が約35mgである、請求項1に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項6】
前記1日用量が約25mgである、請求項1に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項7】
前記1日用量が約20mgである、請求項1に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項8】
前記式(I)の化合物が、約10mg、約35mg、約50mg又は約100mgの用量で1日1回投与される、請求項1に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項9】
約10mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で1日2回投与される、請求項1に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項10】
前記対象が中等症~重症のSjSを有する、請求項1~9の何れか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項11】
前記対象が、次の基準:
a)式(I)の化合物での処置前に、前記対象がESSPRIスコア≧5を有すること;
b)式(I)の化合物での処置前に、前記対象が、生物学的所見、血液、関節、皮膚、腺症状、リンパ節腫脹、腎臓及び体質から選択される8個の定められる領域からの重み付けスコア≧5に基づくESSDAIを有すること
の少なくとも1つにより選択される、請求項1~10の何れか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項12】
前記対象が成人である、請求項1~11の何れか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項13】
前記対象が次のうちの:
a)ESSPRIスコアの低下;及び/又は
b)ESSDAIスコアの低下
少なくとも1つを処置の第12週までに又は第24週までに達成する、請求項1~12の何れか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項14】
前記対象が、前記処置完了後第5週にESSPRI又はEDSSDAIにより測定した場合に持続応答を達成する、請求項1~13の何れか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項15】
前記式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩が医薬処方物中で配置される、及び前記医薬処方物が薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1~14の何れか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【請求項16】
約0.5~3時間のT
maxを有する、請求項1~15の何れか1項に記載の使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤を使用してシェーグレン症候群を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シェーグレン症候群(SjS)は、リンパ浸潤及び外分泌腺の進行性の破壊を特徴とする原因不明の全身性自己免疫疾患である(Brito-Zeron P.,et al,(2016)Treating the Underlying Pathophysiology of Primary Sjogren Syndrome:Recent Advances and Future Prospects.Drugs p.1601-1623)。
【0003】
この疾患は主に涙腺及び唾液腺に影響を及ぼすものの、炎症過程はあらゆる臓器を標的とし得、患者のおよそ15%が重度の腺外型所見を示す(Baldini C.,et al(2014)Primary Sjogren’s syndrome as a multi-organ disease:impact of the serological profile on the clinical presentation of the disease in a large cohort of Italian patients.Rheumatology(Oxford)p.839-44)。臨床症状は、最も多くは主に、口腔及び眼の乾燥を呈する唾液線及び涙腺の外分泌腺症を特徴とする。しかし、症状は、非常に不均一であり得、乾燥を超えて、ほぼ全ての患者において影響を与える筋骨格痛及び疲労も含み、より限られたサブセットでは重度の腺外型及び全身性の合併症(上皮周囲のリンパ球浸潤及び免疫複合体沈着を特徴とする)までに及ぶ。SjSの発症の根底にある機序は、自己反応性B細胞及びT細胞の結果としての外分泌腺の上皮の破壊である(Brito-Zeron P.,et al,(2016)Treating the Underlying Pathophysiology of Primary Sjogren Syndrome:Recent Advances and Future Prospects.Drugs p.1601-1623)。非常に早期の段階でさえも自己抗体、特にRo/SSAに対する抗体、の保有率が高いことから、自己反応性B細胞がSjSの病理機序に寄与することが示唆される(Nocturne G.,et al,(2018)B cells in the pathogenesis of primary Sjogren syndrome.Nat Rev Rheumatol p.133-145)。
【0004】
B細胞の病態の結果、悪性形質転換に対するリスクも上昇し、SjS患者の5%でB細胞リンパ腫の生涯リスクが10倍上昇する(Baldini C.,et al,(2014)Primary Sjogren’s syndrome as a multi-organ disease: impact of the serological profile on the clinical presentation of the disease in a large cohort of Italian patients.Rheumatology(Oxford)p.839-44)。SjSの推定有病率は1,000人あたり0.3~1人であり(Qin B.,et al.(2015)Epidemiology of primary Sjogren’s syndrome:a systematic review and meta-analysis.Ann.Rheum.Dis.p.1983-9)、全身性自己免疫疾患としては関節リウマチに次いで第2位である。この疾患は、女性/男性比率が9:1で、主に女性において影響があり、あらゆる年齢で起こり得る。SjSにおける症状の主な影響はクオリティーオブライフ及び生産性における重度の影響であり、これは本疾患に付随する、日常生活に支障を来すほどの疲労により引き起こされることが多い(Mariette X.,et al.(2018)Primary Sjogren’s Syndrome.N.Engl.J.Med.p.931-939)。関節炎、皮膚血管炎、末梢神経障害、糸球体腎炎、間質性腎炎、胆汁性胆管炎、閉塞性細気管支炎などを含め、複数の臓器系を巻き込み、患者の20~40%で起こる、重度となる可能性がある多くの全身性合併症もある(Seror R.,et al(2014)Outcome measures for primary Sjogren’s syndrome:a comprehensive review.J.Autoimmun.p.51-6)。
【0005】
シェーグレン症候群の臨床的特徴は、医学的に評価可能な所見と患者の症候的な所見とに分けられ得る。現時点で、SjSのこれらの両方の臨床症状の疾患活動性を捕捉し得る単一評価ツールはない。従って、「European League Against Rheumatism(EULAR)Sjogren Syndrome(SS)Patient Reported Index」(ESSPRI)及びEULAR SS Disease Activity Index(ESSDAI)は、SjSの症候性及び全身性所見を測定するために広く受け入れられ、検証されている(Franceschini F.,et al,(2017),BMC Medicine,15:69)。
【0006】
現在の治療状況に関して、SjSに対して利用可能な国際的に承認されている全身的療法はない。口腔及び眼の乾燥が懸念される限りは、SjS患者に対する処置は対症療法に限られる。ステロイド及び典型的なDMARDは殆ど無効であり、日常生活が困難である重度の疲労に対する有効な薬学的介入はない。有効な治療選択肢がないことから、この極めて消耗性である疾患に対するより新しい治療アプローチを評価する必要性が強調される。B細胞自己反応性のパターンは全身性狼瘡及び関節リウマチとある程度類似するので、最近、SjSの腺性及び腺外型所見並びにリンパ腫管理の両方について、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)リツキシマブを使用するB細胞除去療法が評価され、奏効度は様々であった。しかし、このアプローチは現在、承認されたSjSの処置ではない。リツキシマブの有効性が不十分であることは、患部組織においてB細胞除去が不完全であることと関連があり得る(Brito-Zeron P et al(2016)Treating the Underlying Pathophysiology of Primary Sjogren Syndrome:Recent Advances and Future Prospects.Drugs p.1601-1623)。
【0007】
SjSに対する処置が利用可能であるにもかかわらず、SjS対象に対する新しい治療選択肢が依然として医学的に強く必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、シェーグレン症候群疾患の処置を必要とする対象においてシェーグレン症候群疾患を処置する新規方法を提供することであり、この方法は、治療的有効量のN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩を前記対象に投与することを含む。
【0009】
従って、シェーグレン症候群(SjS)の処置を必要とする対象に、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩の約0.5mg~約600mgの1日用量、好ましくは約10mg~約200mgの1日用量又はより好ましくは約10mg~約100mgの用量を投与することを含む、シェーグレン症候群(SjS)を処置する方法が本明細書中で開示される。
【0010】
SjSの処置での使用のためのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド;又は薬学的に許容可能なその塩も開示され、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩は、約0.5mg~約600mgの1日用量、好ましくは約10mg~約200mgの1日用量、最も好ましくは約10mg~約100mgの1日用量で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】単回漸増投与0.5mg~600mg後の化合物(I)の血液濃度-時間経過。
【
図2】反復漸増投与10mg~400mg、q.d.投与後の化合物(I)の血液濃度-時間経過。
【
図3】100mg b.i.d.及び200mg b.i.dの反復漸増投与後の化合物(I)の血液濃度-時間経過。
【
図4】式(I)の化合物の60mgの単回経口投与後に観察されるような食事の影響。
【
図5】式(I)の化合物の単回投与後の末梢血中の加算平均(SD)パーセントBTK占有率。
【
図6】式(I)の化合物の反復漸増投与の第12日での式(I)の化合物の総1日用量に対する、好塩基球活性化の中央値パーセント阻害。
【
図7】反復漸増投与における皮膚プリックテストでの膨疹サイズの縮小。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は、細胞質チロシンキナーゼであり、TECキナーゼファミリーのメンバーである。BTKは、B細胞、マクロファージ、好塩基球、肥満細胞及び血小板を含む適応及び自然免疫系両方の細胞で発現される。BTKは、Fcイプシロン受容体(IgEに対するFcεR1)及び活性化したFcガンマ受容体(IgGに対するFcγR)並びにB細胞抗原受容体(BCR)を通じたシグナル伝達に不可欠である。BTK阻害は、B細胞悪性腫瘍を処置するための有効な構想であることが示されている。共有結合性BTK阻害剤イブルチニブ(Imbruvica(登録商標))、アカラブルチニブ(Calquence(登録商標)及びザヌブルチニブ(Brukinsa(登録商標))は、ある種のB細胞悪性腫瘍の処置に対して承認されている(Thompson PA,et al,(2018)Bruton’s tyrosine kinase inhibitors: first and second generation agents for patients with Chronic Lymphocytic Leukemia(CLL).Expert Opin Investig Drugs p.31-42)。BTK阻害は、前臨床及び臨床試験においてB細胞自己免疫に対して有望な効力を示している(Tan SL.,et al,(2013)Targeting the SYK-BTK axis for the treatment of immunological and hematological disorders:recent progress and therapeutic perspectives.Pharmacol.Ther.p.294-309;Whang J.A.,et al.(2014)Bruton’s tyrosine kinase inhibitors for the treatment of rheumatoid arthritis.Drug Discov.Today p.1200-4;Satterthwaite A.B.(2017)Bruton’s Tyrosine Kinase,a Component of B Cell Signaling Pathways,Has Multiple Roles in the Pathogenesis of Lupus.Front Immunol p.1986;Rip J.,et al,(2018)The Role of Bruton’s Tyrosine Kinase in Immune Cell Signaling and Systemic Autoimmunity.Crit.Rev.Immunol.p.17-62)。従って、BTKの阻害は、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息及び原発性シェーグレン症候群を含む様々な自己免疫及び慢性炎症疾患を処置するための魅力的な治療構想である(Tan SL,Liao C,Lucas MC,et al(2013)Targeting the SYK-BTK axis for the treatment of immunological and hematological disorders:recent progress and therapeutic perspectives.Pharmacol.Ther.p.294-309;Whang JA,Chang BY(2014)Bruton’s tyrosine kinase inhibitors for the treatment of rheumatoid arthritis.Drug Discov.Today p.1200-4)。
【0013】
さらに、高い血清リウマチ因子(RF)レベルが付随するSjS患者の顕著なパーセンテージの循環B細胞においてBTKレベルが上昇することが示された(Corneth OBJ et al.(2017)Enhanced Bruton’s Tyrosine Kinase Activity in Peripheral Blood B Lymphocytes From Patients With Autoimmune Disease.p.1313-1324)。
【0014】
N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩は、本明細書中で式(I)の化合物と呼ばれるBTK阻害剤:
【化1】
又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0015】
本化合物は、2015年6月4日提出の国際公開第2015/079417号パンフレットに記載された(Attorney docket number PAT056021-WO-PCT)。この化合物は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の選択的で強力な不可逆性の共有結合性阻害剤であり、BTK介在疾患又は障害で使用され得る。
【0016】
従って、発明者らは、ここで、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩でSjS患者を処置するための投与レジメンを発明した。
【0017】
定義:
本明細書を解釈するために、以下の定義が適用され、また単数形で使用される用語は、適当と認められる場合、複数形も含み、その逆も同様である。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な」という句は、適切な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に対応して、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織との接触における使用に適切であるそれらの化合物、物質、組成物及び/又は剤形を指す。
【0019】
本明細書中で与えられる式は何れも、化合物の未標識形態及び同位体標識形態を表すことも意図される。同位体標識化合物は、1つ以上の原子が、選択された原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられることを除いて本明細書中で与えられる式によって示される構造を有する。本開示の化合物に組み込まれ得る同位体としては、例えば、3H、11C、13C、14C、15N、18F及び36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、フッ素及び塩素の同位体が挙げられる。従って、本開示は、例えば、3H及び14Cの放射性同位体、又は2H及び13Cなどの非放射性同位体が存在するものを含む、前述の同位体の何れかのうちの1つ以上を組み込む化合物を含むことを理解すべきである。このような同位体標識化合物は、代謝試験(14Cによる)、反応速度試験(例えば2H若しくは3Hによる)、薬物若しくは基質組織分布アッセイを含むポジトロン放出断層撮影(PET)若しくは単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)などの検出若しくはイメージング技術、又は患者の放射線治療において有用である。特に、18F又は標識化合物は、PET又はSPECT試験のために特に望ましい場合がある。同位体標識化合物は通常、例えば、以前に利用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、当業者にとって公知の従来の技術によって調製され得る。
【0020】
「薬物の組み合わせ」という用語は、本明細書中で使用される場合、複数の有効成分の使用又は混合又は組み合わせから生じる産物を意味する。薬物の組み合わせは、本明細書中で使用される場合、有効成分の固定及び非固定的組み合わせの両方を含むことを理解されたい。「固定的な組み合わせ」という用語は、有効成分、例えば式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩及び1つ以上の組み合わせパートナーが、単一体又は剤形として同時に患者に投与されることを意味する。このような場合のこの用語は、1単位剤形(例えばカプセル、錠剤又はサシェ)中の固定用量の組み合わせを指す。「非固定的な組み合わせ」又は「部品一式」という用語は両方とも、有効成分、例えば本開示の化合物及び1つ以上の組み合わせパートナー及び/又は1つ以上のコエージェント(co-agent)が、別個の物体として、同時に、同じときに、又は具体的な時間制限なく連続的に、の何れかで、患者に独立に投与されるか又は同時投与され、このような投与は、患者の身体においてこの2つの化合物の治療的有効レベルを提供し、特にこれらの時間間隔によって、組み合わせパートナーが協同性の、例えば付加的又は相乗的な効果を示すことが可能になる。「非固定的な組み合わせ」という用語はまた、カクテル療法、例えば3つ以上の有効成分の投与に適用される。従って、「非固定的な組み合わせ」という用語は、本明細書中に記載の化合物が互いに独立に、即ち同時に又は異なる時点で、投与され得るという意味において、特に投与、使用、組成物又は処方物を定義する。「非固定的な組み合わせ」という用語はまた、そこに含有される有効成分の別個の量を有する各独立処方物で、1つ以上の固定的な組み合わせの生成物と一緒に単剤を使用することも包含することを理解されたい。本明細書中に記載の組み合わせ生成物並びに「非固定的な組み合わせ」という用語は、有効成分(本明細書中に記載の化合物を含む)を包含し、完全に別個の医薬剤形として又は互いに独立にも販売される医薬処方物として組み合わせパートナーが投与されることをさらに理解されたい。非固定的な組み合わせの使用のための説明書は、包装において、例えばリーフレットなど、又は医師及び/又は医療スタッフに提供される他の情報において提供されるか又は提供され得る。次に、独立処方物又はこの処方物、生成物若しくは組成物の部品は、同時に投与され得るか、又は経時的にずらして投与され得、即ち、部品一式の個々の部品は、それぞれ、部品一式の部品の何れかに対して、異なる時点で、及び/又は等しいか若しくは異なる時間間隔で、投与され得る。特に、投与のための時間間隔は、部品の組み合わせ使用で処置される疾患に対する効果が式(I)の化合物のみの使用により得られる効果よりも大きく/高くなるように選択され;従って、本明細書中に記載の薬物の組み合わせで使用される化合物は、連帯して活性である。薬物の組み合わせとして投与しようとする式Iの化合物と第2の薬剤との総量の比率は、処置しようとする特定の患者サブ集団のニーズ又は単一の患者のニーズに良好に対処するために変更され得るか又は調整され得、これは、例えば患者の年齢、性別、体重などにより得る。
【0021】
「同時投与」又は「組み合わせ投与」などという用語は、本明細書中で利用される場合、それを必要とする単一対象(例えば患者又は対象)に対して選択される組み合わせパートナーと一緒に本明細書中に記載の1つ以上の化合物を投与することを包含することを意味し、同じ投与経路により及び/又は同じ時間に本化合物が必ずしも投与されない治療レジメンを含むものとする。
【0022】
「医薬組成物」という用語は、本明細書中で、温血動物に影響する特定の疾患又は状態を予防又は処置するための、温血動物、例えば哺乳動物又はヒトに投与しようとする少なくとも1つの有効成分又は治療剤を含有する混合物(例えば溶液又はエマルション)を指すものと定義される。
【0023】
本開示の化合物(即ち式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩)の「治療的有効量」という用語は、対象(対象の患者)の生物学的又は医学的応答、例えば酵素若しくはタンパク質活性の低下若しくは阻害又は症状の寛解、状態の緩和、疾患進行の緩徐化若しくは遅延、又は疾患の予防などを引き出す本開示の化合物の量を指す。化合物、医薬組成物又はその組み合わせの治療的有効投与量は、患者の種、体重、年齢、性別及び個々の状態、処置している障害若しくは疾患又はその重症度に依存する。熟練の、医師、臨床家又は獣医師は、障害又は疾患の進行を予防、処置又は阻害するのに必要な有効成分それぞれの有効量を容易に決定し得る。
【0024】
投薬の頻度は、使用される化合物及び処置又は予防しようとする特定の状態に依存して変動し得る。一般に、有効な治療を提供するために十分である最小投与量の使用が好ましい。患者は一般に、処置又は予防される状態に適切なアッセイを使用して治療有効性について監視され得、これは当業者には自明であろう。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「担体」又は「薬学的に許容可能な担体」という用語は、当業者にとって公知であるような、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば抗細菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩類、保存剤、薬物、薬物安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素など、及びこれらの組み合わせを含む(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329)。あらゆる従来の担体が、有効成分と不適合である場合を除き、治療又は医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は動物を指す。典型的には、動物は哺乳動物である。対象は、例えば、霊長類(例えばヒト、男女)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥なども指す。特定の実施形態では、対象は霊長類である。好ましい実施形態では、対象はヒトである。「対象」という用語は、それがヒトを指す場合、「患者」と交換可能に使用される。
【0027】
本明細書中で使用される場合、対象が処置を「必要とする」のは、このような対象が、そのような処置から生物学的に、医学的に又はクオリティーオブライフにおいて恩恵を受ける場合である。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「患者集団」という句は、患者の群を意味するために使用される。
【0029】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」並びに「からなる(consisting)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXからなり得るか、又は幾分追加されるものを含み得る(例えばX+Y)。
【0030】
数値xに関連する「約」という用語は、例えば+/-10%を意味する。数値範囲又は数値リストの前で使用される場合、「約」という用語は、各数値に順次適用され、例えば「約1~5」という語句は、「約1~約5」と解釈すべきであり、又は例えば「約1、2、3、4」という語句は、「約1、約2、約3、約4など」と解釈すべきである。
【0031】
「処置(treatment)」又は「処置する(treat)」という用語は、本明細書中で、対象又は対象由来の単離組織若しくは細胞株に、本開示による化合物(式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩又は前記化合物を含む医薬組成物の適用又は投与として定義され、対象は、特定の疾患(例えばSjS)、疾患(例えばSjS)に関連付けられる症状又は疾患(例えばSjS)の発生の素因を有し(該当する場合)、この目的は、疾患の、治癒(該当する場合)、発症遅延、重症度低下、1つ以上の症状の、緩和、寛解、疾患の改善、疾患の何らかの関連する症状の軽減若しくは改善又は疾患の発症に対する素因の軽減若しくは改善である。「処置(treatment)」又は「処置する(treat)」という用語は、疾患を有する疑いのある患者並びに病気である患者又は疾患若しくは医学的病態に罹患していると診断されている患者を処置することを含むとともに、臨床的再発の抑制を含む。
【0032】
本明細書中で使用される場合、患者に関連して「選択すること(selecting)」及び「選択される(selected)」は、予め決められた基準を有する特定の患者に基づき(それに起因する)より大きい患者群から特定の患者が具体的に選択されることを意味するために使用される。同様に、「選択的に処置する」は、特定の疾患を有する患者に処置を提供することを指し、その患者は、予め決められた基準を有する特定の患者に基づくより大きい患者群から具体的に選択される。同様に、「選択的に投与する」とは、予め決められた基準を有する特定の患者に基づき(それに起因する)より大きい患者群から具体的に選択される患者に薬剤を投与することを指す。「選択する」、「選択的に処置する」及び「選択的に投与する」とは、より大きい群における患者のメンバーシップのみに基づいて標準的治療レジメンを提供するのではなく、患者個人の治療歴(例えば、以前の治療介入、例えば生物剤による以前の処置)、生物学的因子(例えば特定の遺伝子マーカー)及び/又は症状(例えば特定の診断基準を満たさないもの)に基づいて個別化治療を患者に提供することを意味する。本明細書中で使用されるような処置方法に関連して、選択するとは、特定の基準を有する患者の偶発的処置を指すのではなく、特定の基準を有する患者に基づいて患者に処置を施す意図的選択を指す。従って、選択的な処置/投与は、標準的処置/投与とは異なり、それら個人の治療歴、疾患所見及び/又は生物学に関わらず、特定の疾患を有する患者に特定の薬物を送達する。いくつかの実施形態では、SjSを有することに基づいて処置に対して患者が選択された。
【0033】
本発明の実施形態
シェーグレン症候群及び本発明による処置の有効性
開示されるBTK阻害剤、即ち式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、SjS患者(例えばヒト患者)を処置するために、インビトロ、エクスビボで使用され得るか、又は医薬組成物に組み込まれ、インビボで投与される。
【0034】
シェーグレンの処置の有効性は、シェーグレン症候群の状況及び/又はシェーグレンの臨床応答を測定する様々な既知の方法及びツールを使用して評価され得る。いくつかの例としては、例えばEULAR Sjogren’s Syndrome Disease Activity Index (ESSDAI)、Physician Global Assessment Scale (PhGA)、EULAR Sjogren’s Syndrome Patient Reported Index(ESSPRI)、The Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue Scale(FACIT-Fatigue)及びEQ5Dが挙げられる。
【0035】
有効性
主目標及び副次目標に関する臨床有効性測定を以下で概説する。
【0036】
EULARシェーグレン症候群疾患活動性指標(ESSDAI)
ESSDAIは、シェーグレン症候群に対する検証された疾患アウトカムの目安であり、試験対象に適用される(Seror R,et al(2015)Validation of EULAR primary Sjogren’s syndrome disease activity(ESSDAI) and patient indexes(ESSPRI).Ann.Rheum.Dis.p.859-66)。この手段は、疾患活動性に寄与する12種類の臓器特異的な領域を含有する。各領域に対して、それらの重症度に従い、疾患活性の特性を3又は4レベルでスコア化する。次に、重み付け方式で12種類の領域にわたりこれらのスコアを合計して、総スコアを提供する。領域(重み)は以下のとおりである:体質(3)、リンパ節腫脹(4)、腺症状(2)、関節(2)、皮膚(3)、肺(5)、腎臓(5)、筋肉(6)、PNS(5)、CNS(5)、血液(2)及び生物学的所見(1)。可能な最大スコアは123である。
【0037】
発明者らの試験において、ESSDAIを計算するために、計画された全時点で全12種類の臓器領域を個々に評価しなければならない(スクリーニング来院から試験終了まで)。分野評価を表(中央ベンダー(central vendor)により提供)に記入、ソフトウェアによりESSDAIスコアを計算する。
【0038】
X線検査、高解像度コンピューター断層撮影法(HRCT)、肺機能検査(DLCO、FVC)、推定糸球体ろ過率(eGFR)、筋電図検査(EMG)、筋肉(又は何らかの他の)生検を含む、必須の検査としてプロトコールで列挙されないがESSDAIを推定するために必要とされ得る評価については、治験医師の裁量で、正しいESSDAI読み取りを提供するために患者の徴候及び症状に基づきこれらを評価させる。EULARシェーグレン症候群疾患指標(ESSDAI)、領域及び項目の定義及び重みを表1でまとめる:
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
医師総合評価スケール(PhGA)
「疾患活動性なし」(0)~「最大疾患活動性」(100)の範囲の100mm VASを使用してその患者の疾患活動性を評価するために、担当医師により医師総合評価スケールが使用される。
【0044】
客観性を促進するために、医師は、その患者に対して医師自身の評価を行う際に、特定の患者の報告される治療成績評価を知ってはならない。従って、全体的な疾患活動性スコアの患者の全体評価を見る前にこの評価を行わなければならない。
【0045】
EULAR Sjogren’s Syndrome Patient Reported Index(ESSPRI)
ESSPRIは、シェーグレン症候群に対する確立された疾患アウトカムの目安である(Seror R,et al(2011)EULAR Sjogren’s Syndrome Patient Reported Index(ESSPRI):development of a consensus patient index for primary Sjogren’s syndrome.Ann.Rheum.Dis.p.968-72)。これは、乾燥、疼痛及び疲労の3つの領域からなる。対象は、3つの領域のそれぞれに対して単一の0~10の数字スケール上で対象が経験する症状の重症度を評価し得る。ESSPRIスコアは、3つのスケールからのスコアの平均として定められる:(乾燥+疼痛+疲労)/3。
【0046】
FACIT-疲労
The Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue Scale(FACIT-F v4)は、直近1週間にわたる対象個人の通常の1日の活動中の個人の疲労レベルを測定する、短い13項目の管理し易いツールである。5-ポイントのLikertスケール上で疲労レベルを評価する(0=全くない、1=僅か、2=幾分ある、3=かなりある、4=非常にある)(Webster K,et al.(2003)The Functional Assessment of Chronic Illness Therapy(FACIT)Measurement System:properties,applications,and interpretation.Health Qual Life Outcomes p.79)。
【0047】
EQ5D
EQ-5Dは、健康関連のクオリティーオブライフを測定する標準化手段である。EQ-5Dは、記述システム及びEQ VASスケールからなる。
【0048】
この記述システムは、5つの観点を含む:可動性、セルフケア、通常の活動、疼痛/不快感及び不安/抑うつ。これは、患者自身の判断を反映する健康アウトカムの定量的目安として使用され得る。これらの5つの観点でのスコアは、健康プロファイルとして提示され得るか、又は他の健康プロファイルと比較して一層好ましいことを反映する単一の集約された指標数(有用性)へと変換され得る。
【0049】
EQ VASは、0が「最悪の想像可能な健康状態」を表し、100が「最良の想像可能な健康状態」を表す、垂直な視覚アナログスケール上で患者が自己評価した健康状態を記録する。
【0050】
有効性評価の適切性
この試験における有効性の目安は主に、臓器特異的な疾患基準を測定するESSDAI(EULAR SS Disease Activity Index)及び患者の主観的な疾患の影響を測定するESSPRI(European League Against Rheumatism[EULAR]Sjogren Syndrome[SS]Patient Reported Index)に基づく。両手段は、広く受け入れられ、検証されている、それぞれSjSの全身的及び症候的所見のゴールドスタンダード的な目安である。ESSDAIは、異なって重み付けされる12種類の領域(生物学的所見、血液、関節、腺症状、皮膚、体質、リンパ節腫脹、腎臓、肺、PNS、CNS及び筋肉)のそれぞれにわたって、3~4つのレベルで疾患活動性を分類する全身性疾患活動性指標である。複合的な重み付けスコアは、複数のコホート試験で検証した場合、変化に対する感度が良好な、疾患活動性の正確な評価を提供する(Seror R et al(2015)Validation of EULAR primary Sjogren’s syndrome disease activity(ESSDAI)and patient indexes(ESSPRI).Ann.Rheum.Dis.p.859-66)。一方で、ESSPRIツールは、先行する2週間中、0~10の視覚アナログスケール上で評価される、乾燥、四肢痛及び疲労の症状の、患者が報告する複合的スコアである(Seror R et al(2011)EULAR Sjogren’s Syndrome Patient Reported Index(ESSPRI):development of a consensus patient index for primary Sjogren’s syndrome.Ann.Rheum.Dis.p.968-72)。患者が報告するスコアは、疾患活動性の変化に対する感度が低いが、利用可能なツールの中で、ESSPRIは顕著に良好な感度を有することが報告されている。最近の前向き試験は、体系的スコアと患者スコアとの間の相関性が低いことを報告しており、このことから、2つの指標が疾患活動性の補完的な成分を評価することを示唆し、従って疾患活動性及びその変化の正しい評価に到達するための両パラメーターの評価の重要性が強調される(Seror R et al(2015)Validation of EULAR primary Sjogren’s syndrome disease activity(ESSDAI)and patient indexes(ESSPRI).Ann.Rheum.Dis.p.859-66)。
【0051】
医薬組成物
BTK阻害剤、即ち式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせた場合、医薬組成物として使用され得る。このような組成物は、式(I)の化合物に加えて、担体、様々な希釈剤、充填剤、塩類、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤及び当技術分野で公知の他の材料を含有し得る。担体の特徴は投与経路に依存する。開示される方法で用いられる医薬組成物は、特定の標的となる障害の処置のためのさらなる治療剤も含有し得る。例えば、医薬組成物は、抗炎症剤又はかゆみ止め剤も含み得る。このようなさらなる因子及び/又は薬剤は、式(I)の化合物との相乗効果を生じさせるため又は式(I)の化合物により引き起こされる副作用を最小化するために医薬組成物中に含まれ得る。好ましい実施形態では、開示される方法での使用のための医薬組成物は、10mg、20mg、25mg、50mg又は約100mgの用量で式(I)の化合物を含む。
【0052】
経口投与に対する適切な組成物は、錠剤、薬用キャンディー、水性若しくは油性懸濁剤、分散性の粉末又は顆粒剤、エマルション、硬若しくは軟カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤の形態で有効量の本発明の化合物を含む。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物を製造するために当技術分野で公知の何らかの方法に従って調製され、このような組成物は、薬学的に的確であり口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1つ以上の薬剤を含有し得る。錠剤は、錠剤の製造に適切な無毒性の薬学的に許容可能な賦形剤と混合して有効成分を含有し得る。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;顆粒剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアラビアゴム;及び滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクである。錠剤は、コーティングされていないか、又は消化管における崩壊及び吸収を遅延させ、それによってより長期間にわたる持続作用をもたらすように、既知の技術によってコーティングされる。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用し得る。経口使用のための処方は、有効成分が不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合される硬ゼラチンカプセル剤として、又は有効成分が水又は油性媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセル剤として提供され得る。
【0053】
開示される方法での使用のための医薬組成物は従来方式で製造され得る。一実施形態では、本医薬組成物は経口投与のために提供される。例えば、本医薬組成物は、次のものと一緒に有効成分を含む錠剤又はゼラチンカプセルである:
a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン;
b)滑沢剤、例えばシリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウム又はカルシウム塩及び/又はポリエチレングリコール;また錠剤用、
c)結合剤、例えばケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン;必要に応じて
d)崩壊剤、例えばデンプン、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩又は発泡性混合物;及び/又は
e)吸収剤、着色剤、香味料及び甘味料。
錠剤は、当技術分野で公知の方法に従って、フィルムコート又は腸溶コートの何れかがなされ得る。
【0054】
組み合わせ:
本開示の処置又は使用方法のいくつかを実施する際、治療的有効量の式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩が、患者、例えば哺乳動物(例えばヒト)に投与される。開示される方法が、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を使用したシェーグレン患者の処置を提供することが理解される一方で、この治療は必ずしも単剤療法とは限らない。実際には、患者が式(I)の化合物での処置に対して選択される場合、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、単独で、又は他の薬剤及びシェーグレン患者を処置するための治療と組み合わせて、例えば少なくとも1つのさらなるシェーグレン薬剤と組み合わせて、の何れかで、本開示の方法に従い投与され得る。1つ以上のさらなるSjS薬剤と同時投与される場合、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、他の薬剤と、同時に又は連続的に、の何れかで投与され得る。連続的に投与される場合、担当医は、他の薬剤と組み合わせて式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を投与する適切な順序及び同時送達のための適切な投与量を決定する。
【0055】
様々な治療剤が、SjSの処置中、開示される式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩と有益に組み合わせられ得る。このような治療剤としては、ステロイド(コルチコステロイド、例えばプレドニゾン又は同等物);DMARDS、例えばヒドロキシクロロキン(Plaquenil)、メトトレキサート(Trexall)、スルファサラジン(Azulfidine)、ミノサイクリン(Minocin)又はレフルノミド(Arava));又はB細胞除去薬、例えばリツキシマブなどが挙げられる。
【0056】
当業者は、開示される式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩との同時送達のための上記SjS剤の適切な投与量を見定めることが可能である。
【0057】
本発明のキット
本開示はまた、SjSを処置するためのキットも包含する。このようなキットは、BTK阻害剤、例えばN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又はその医薬組成物を含む。さらに、このようなキットは使用のための説明書を含み得る。
【0058】
一実施形態では、本キットは、2つ以上2つ以上の個別の医薬組成物を含み、そのうち少なくとも1つは、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を含有する。一実施形態では、本キットは、容器、分割されたボトル又は分割された金属箔の袋など、前記組成物を別個に保持する手段を含む。このようなキットの例は、錠剤、カプセル剤などの包装に通常使用されるようなブリスターパックである。
【0059】
本開示のキットは、異なる剤形、例えば、経口及び非経口で投与するために、個別の組成物を異なる投与間隔で投与するために、又は互いに対して別個の組成物の量を決めるために使用され得る。服薬遵守を支援するために、本開示のキットは通常、投与のための指示書を含む。
【0060】
本発明の組み合わせ療法において、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩及び他のSjS剤(本明細書中で定められるとおり)は、同じ又は異なる製造者により製造及び/又は処方され得る。さらに、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩及び他のSjS剤は組み合わせ療法に一緒にまとめられ得る:(i)医師に対しての組み合わせ製品の発売前に(例えば式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩及び他のSjS薬剤を含むキットの場合);(ii)投与直前に医師自身により(又は医師の指導下で);(iii)患者自身において、例えば式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩及び他のSjS薬剤の連続投与中に、まとめられ得る。
【0061】
さらなる実施形態
式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は都合よく1日約10mg~約200mgの用量で患者に(好ましくは経口で)投与される。
【0062】
式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は都合よく、1日約10mg~約200mgの1日用量で患者に(好ましくは経口で)投与される。
【0063】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約10mg~約100mgの1日用量で投与される。
【0064】
他の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約100mgの1日用量で投与される。
【0065】
他の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約50mgの1日用量で投与される。
【0066】
他の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約35mgの1日用量で投与される。
【0067】
他の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約25mgの1日用量で投与される。
【0068】
他の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約20mgの1日用量で投与される。
【0069】
一実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約10mg、約35mg、約50mg又は約100mgの用量で1日1回投与される。
【0070】
別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約10mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で1日2回投与される。
【0071】
ある一定の患者、例えば、(例えば本明細書中で開示されるシェーグレンスコア化システムの何れかにより測定した場合)示される反応が不十分なシェーグレン患者に対して、用量漸増が必要とされ得ることが理解されよう。ある一定の患者、例えば、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩での処置に対する有害事象又は有害な反応を呈するシェーグレン患者に対して、用量漸減も必要とされ得ることもまた理解されよう。従って、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩の投与量は、約10mg、約20mg、約25mg、約50mg又は約100mg未満であり得る。
【0072】
投与のタイミングは一般に、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩の初回投与日(「ベースライン」としても知られる)から測定される。投与のタイミングは一般に、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩の初回投与日(「ベースライン」としても知られる)から測定される。
【0073】
しかし、医療提供者は、投与スケジュールを識別するために異なる命名慣例を使用することが多い。明確にするために、本明細書中で開示される場合、投与初日を第1日と呼ぶ。しかし、この命名慣例は、単に一貫性を保つために用いられ、限定するものと解釈すべきでなく、即ち1日の投与は式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩の1日用量の提供であり、医師が特定の日を「第0日」又は「第1日」と呼び得ることは当業者により理解されよう。
【0074】
シェーグレン症候群疾患(SjS)の処置を必要とする患者に式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を投与することを含む、シェーグレン症候群疾患(SjS)を処置する方法が本明細書中で開示され、その用量は約10mg~約200mgである。
【0075】
シェーグレン症候群疾患(SjS)の処置を必要とする患者に式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を投与することを含む、シェーグレン症候群疾患(SjS)を処置する方法も本明細書中で開示され、その1日用量は約10mg~約200mgである。
【0076】
SjSの処置での使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩も本明細書中で開示され、この化合物の1日用量は約10mg~約200mgである。
【0077】
開示される方法、使用及びキットの一実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約10mg~約100mgの1日用量で投与される。
【0078】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約10mg、約20mg、約25mg、約35mg、約50mg、約100mg又は約200mgの1日用量で投与される。
【0079】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約100mgの1日用量で投与される。
【0080】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約50mgの1日用量で投与される。
【0081】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約35mgの1日用量で投与される。
【0082】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約25mgの1日用量で投与される。
【0083】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約20mgの1日用量で投与される。
【0084】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約10mg、約35mg、約50mg又は約100mgの用量で1日1回投与される。
【0085】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、約10mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で1日2回投与される。
【0086】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は中等症~重症のSjSを有する。中等症~重症のSjSの患者は、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩での処置前に、8種類の定められた領域(生物学、血液、関節、皮膚、腺性、リンパ節腫脹、腎臓、体質)からの≧5(即ち少なくとも5)のESSDAIスコア(表1で示されるような重み付けスコアに基づく)及び少なくとも5のESSPRIスコアを有する患者として定義される。
【0087】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は成人である。
【0088】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、患者及び/又は医師が報告するアウトカム(即ちESSPRI、FACIT-F、EQ-5D、PhGA)のうち少なくとも1つのベースラインからの変化を達成する。
【0089】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、ESSPRIスコアのベースラインからの変化を達成する。
【0090】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、ESSPRIスコアの低下を達成する。
【0091】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、少なくとも1ポイント、好ましくは少なくとも2ポイントのESSPRIスコアの低下を達成する。
【0092】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、ESSPRIスコアの低下を達成する。開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、ESSPRIスコアの少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも50%又は少なくとも60%の低下を達成する。ESSPRIスコアの低下は、次のように計算される:
【数1】
【0093】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、ESSDAIスコアの低下を達成する。
【0094】
開示される方法、使用及びキットのまた別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、少なくとも3ポイントのESSDAIスコアの低下を達成する。
【0095】
開示される方法、使用及びキットの別の実施形態では、患者は、処置の第12週までに又は第24週までに、ESSDAIスコアのベースラインからの変化を達成する。
【0096】
開示される方法、使用及びキットの好ましい実施形態では、患者は成人である。開示される方法、使用及びキットのいくつかの実施形態では、患者は青年期である。
【0097】
列挙されるさらなる実施形態
1. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩の約10mg~約200mgの1日用量を、シェーグレン症候群(SjS)の処置を必要とする対象に投与することを含む、シェーグレン症候群(SjS)を処置する方法。
2. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩の1日用量が、約10mg~約100mgである、実施形態1に記載の方法。
3. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩の1日用量が約100mgである、実施形態1に記載の方法。
4. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩の1日用量が約50mgである、実施形態1に記載の方法。
5. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩の1日用量が約35mgである、実施形態1に記載の方法。
5. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩の1日用量が約25mgである、実施形態1に記載の方法。
7. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩の1日用量が約20mgである、実施形態1に記載の方法。
8. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩が、約10mg、約35mg、約50mg又は約100mgの用量で1日1回投与される、実施形態1に記載の方法。
9. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩が、約10mg、約25mg、約50mg又は約100mgの用量で1日2回投与される、実施形態1に記載の方法。
10. 前記対象が中等症~重症のSjSを有する、上記実施形態1~9の何れか1つに記載の方法。
11. 前記対象が次の基準のうち少なくとも1つに従い選択される、実施形態1~10の何れか1つに記載の方法:
a)式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩での処置前に、対象がESSPRIスコア≧5を有する;
b)式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩での処置前に、対象が、生物学的所見、血液、関節、皮膚、腺症状、リンパ節腫脹、腎臓及び体質から選択される8種類の定められる領域から、重みスコア≧5に基づくESSDAIを有する。
12. 前記患者が成人である、実施形態1~11の何れか1つに記載の方法。
13. 前記対象が、処置の第12週までに又は第24週までに、次のうち少なくとも1つを達成する、実施形態1~12の何れか1つに記載の方法:
a)ESSPRIスコアの低下;及び/又は
b)ESSDAIスコアの低下。
14. 前記対象が、処置完了後第5週でESSPRI又はESSDAIにより測定した場合、持続的応答を達成する、実施形態1~13の何れか1つに記載の方法。
15. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩が医薬処方物中に配置され、前記医薬処方物が薬学的に許容可能な担体をさらに含む、実施形態1~14の何れか1つに記載の方法。
16. N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド又は薬学的に許容可能なその塩のTmaxが約05~3時間である、実施形態1~15の何れか1つに記載の方法。
【0098】
上記の添付の説明において、本開示の1つ以上の実施形態の詳細を示す。本開示の実施又は試験において、本明細書中に記載のものと同様又は等価である何れかの方法及び材料を使用し得るが、ここでは好ましい方法及び材料を記載する。本開示の他の特性、目的及び長所は、記載及び特許請求の範囲から明らかとなろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。別途定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の熟練者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で引用される全ての特許及び刊行物は参照により組み込まれる。以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態をさらに詳細に例示するために提供される。これらの例は、決して添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの開示される主題の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0099】
略称
AE 有害事象
AUC 曲線下面積
AUCinf 時間0~無限の血漿(又は血清又は血中)濃度-時間曲線下面積(質量x時間/体積)
AUClast 時間0~最終の定量可能濃度の血漿(又は血清又は血中)濃度-時間曲線下面積(質量x時間/体積)
AUCtau 時間0~投与間隔タウの終了時までの血漿(又は血清又は血中)濃度-時間曲線下面積(質量x時間/体積)
BCR B細胞受容体
Bid又はb.i.d. 1日2回(ラテン語では:“bis in die”)
BMI 体格指数
BTK ブルトン型チロシンキナーゼ
CBC 全血球計算
cm センチメートル
CL/F 投与後の血漿(又は血清又は血中)からの見かけの全身性(又は全身)クリアランス(質量/体積)
CNS 中枢神経系
CV 変動係数
DMARD 疾患修飾性抗リウマチ薬
ECG 心電図
eGFR 推定糸球体ろ過率
ELISA 酵素結合免疫吸着法
EMG 筋電図検査
EQ-5D EuroQual 5 dimensions(健康関連のクオリティーオブライフを測定するための標準的手段)
ESSDAI EULAR Sjogren’s Syndrome Disease Activity Index
ESSPRI EULAR Sjogren’s Syndrome Patient Reported Index
EULAR European League against Rheumatism
FACIT-F Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue
FIH ファースト・イン・ヒューマン
h 時間
HRCT 高解像度コンピューター断層撮影法
i.v. 静脈内
IA 中間解析
INR 国際標準化比
kg キログラム
LC-MS/MS 液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析法
mAb モノクローナル抗体
MCP-Mod 多重比較手順-モデリング
MMRM 混合効果モデル反復測定
MRT 平均滞留時間
NOAC 新規経口抗凝固薬
NSAID 非ステロイド抗炎症薬
PD 薬力学
PhGA 医師総合評価スケール
PK 薬物動態学
PNS 末梢神経系
PT プロトロンビン時間
PTT 部分トロンボプラスチン時間
Qd又はq.d. 1日1回(ラテン語で「quaque die」)
QTcF Fridericiaの式により補正されたQT間隔
Racc 薬物の累積係数
SAE 重篤な有害事象
SjS シェーグレン症候群
SOM 現場運営マニュアル
SPT 皮膚プリックテスト
SS 安全性セット
TEC チロシン-タンパク質キナーゼ
Vz/F 投与後の終末消失期中の見かけの分布容積(容積)
【実施例】
【0100】
実施例1:前臨床試験
実施例1a:BTK占有率及び前臨床PK/PDの関係
阻害剤による共有結合性BTK占有の程度及び持続時間によって、化合物(I)のような不可逆的BTK阻害剤のインビボPD効果を調べる。式(I)の化合物(化合物(I)とも呼ばれる)での処置後のBTK占有率をエクスビボ免疫アッセイで測定した。化合物(I)及びプローブが相互に排他的にBTKに結合するので、共有ビオチン化BTKプローブとのインビトロ温置後に未占有BTKタンパク質の分画をアッセイした。選択される組織の溶解液中で未占有BTK並びに総BTK相対タンパク質レベルを決定し、同じ試料中の総BTKタンパク質レベルに対して未占有BTKのレベルを正規化した。
【0101】
雌ラットにおいて、3mg/kg化合物(I)の単回経口投与の結果、完全な脾臓BTK占有が起こり、1mg/kgの用量では76%~81%占有率となったが、一方で0.3mg/kgの単回投与後では30%の部分的な占有率にしか到達しなかった。血中のBTK占有率は、脾臓で観察されるものと一致するレベルに達した。実験データから、1~3mg/kgの低い経口用量で、いくつかの組織では、完全BTK占有率を達成するために化合物(I)の短い一過性の全身性曝露で十分であることが明らかであった。1mg/kg投与後の化合物(I)の血液曝露は、0.5時間で49.1nMに達し、投与5時間後は5.6nMであった。この非常に低く一過性である全身性曝露は、不可逆的阻害剤の典型的なPK/PDモデルと一致する。
【0102】
脾臓、血中、リンパ節及び肺について、化合物(I)の単回経口投与後にラット及びマウスにおいてBTK占有の持続時間を調べた。ラットにおいて、BTK占有は、およそ87時間という長い血中半減期を示した。ラット脾臓での推定BTK占有半減期は、僅かおよそ5時間と、血中よりも顕著に短かった。代謝回転速度が異なることは、末梢血中のBTK発現B細胞及び単球が静止状態であり、脾臓と比較して代謝的に比較的不活性であるという事実を反映し得る。血中でBTK占有がより長く持続することが以前報告されている(Advani et al 2013,J Clin Onc;31(1):88-94)。分析した他の組織(肺及びリンパ節)は全て、脾臓と同様のBTK代謝回転及び占有半減期を示した。
【0103】
皮膚でのBTK発現細胞のレベルが低すぎて占有率を測定できなかったので、肥満細胞FcγRIII介在性炎症の逆受け身Arthus(RPA)モデルにおいて、単回投与後の皮膚におけるPD効果の持続時間を評価した。このモデルにおいて、皮膚腫脹の阻害は、Arthus反応を誘発する2時間前に化合物(I)を投与したときに最大であった。この効果は徐々に減弱し、化合物(I)投与後45時間以降にArthus反応を誘発した場合にベースラインに到達した。これにより、皮膚でのBTK占有が脾臓、肺及びリンパ節のように同様の時間経過を示すことが示唆される。
【0104】
これらの前臨床薬理学試験において、BTK占有及び個々の薬理学的読み取りは強い相関を示した。従って、BTK占有率は、臨床試験での使用に対する適切なPDバイオマーカーであり、従って第1相臨床試験で使用した。
【0105】
実施例2:第1相臨床試験
健常ボランティア及びアトピー体質がある者において1日1回(qd)及び1日2回(bid)経口投与の両方として、化合物(I)の単回及び反復投与の安全性及び忍容性、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)を評価するためにファースト・イン・ヒューマン試験を行い、自己免疫疾患における化合物(I)のさらなる臨床開発を支援した。この試験は食物摂取の影響も調べた。
【0106】
最大およそ168名の健常ボランティア(HV)におけるファースト・イン・ヒューマン試験で、そのうち64名(パート2及び4)は無症候性アトピー体質を有した。
・パート1は、10コホートの、二重盲検(対象及び治験医師はブラインド、スポンサーは非ブラインド)、プラセボ対照単回投与漸増(SAD)の漸増試験(N=80)であった。
・パート2は、無症候性アトピー体質の健常ボランティア(N=48)における6コホートでの、1日1回投与を使用した、二重盲検(対象及び治験医師はブラインド、スポンサーは非ブラインド)、プラセボ対照反復投与漸増(MAD)(12日間にわたり13回投与)の漸増試験であった。
・パート3は、12HVにおける単回投与オープンラベルクロスオーバー食事影響試験であった。
・パート4は、無症候性アトピー体質の健常ボランティアの2コホートにおける、1日2回投与を使用する、二重盲検(対象及び治験医師はブラインド、スポンサーは非ブラインド)、プラセボ対照反復投与(12日間で25回投与)試験(N=16)であった。
【0107】
SADパート(パート1)は、10種類の用量レベルがあり、MADパート(パート2及び4)は、8種類の用量レベル(パート2の単回1日投与を使用した6コホート及びパート4の1日2回投与を使用した2コホート)からなった。8名の対象を各コホートに無作為に分けて、SAD及びMADパートにおいて、6:2(活性:プラセボ)の比率で化合物(I)又は対応するプラセボの何れかを与えた。SADパート内で、それまでSADパートから安全性シグナルが出現しなかった場合は、推定される薬理活性用量(PAD)の4倍までの用量を試験のMADパートが開始される前に評価することとした。パート2(MAD qdレジメン)及びパート4(反復投与bidレジメン)で使用された化合物(I)の総1日用量は、調べられた最大SAD用量レベルを超えなかった。さらに、パート4の総1日用量は、パート2の総1日用量を超えなかった。
【0108】
パート1(SAD)において、センチネル投薬とは、次のように各用量レベルで最初の投与を行うことであった。初日に最初の2名の対象に投与した(活性薬物で1名、プラセボで1名)。48時間の観察期間後、このコホートの残りの6名の対象(活性薬物で5名、プラセボで1名)に投薬した。
【0109】
全ての試験パートにわたり標準的安全性監視を使用した。潜在的な皮膚の内出血事象の専用評価が含まれた。最終投与後96時間までの全てのバイタルサイン、身体検査及び対象の既往歴、ECG、有害事象及び安全性臨床検査パラメーター(血液化学、血液学及び検尿)並びに最終投与後48時間までの以前の投与群からのPKデータ(入手可能な場合)は、用量漸増前に各コホートに対して、ブラインドで見直すべきものであった。各用量レベルの完了後、報告された有害事象、安全性臨床検査パラメーター、QTc及び心拍の安全性レポートのまとめが提供された。
【0110】
パート1、2及び4において、各対象は、28日スクリーニング期間(第-29日~第-2日)、ベースライン期間、処置期間及び研究終了時点での評価を含んだフォローアップ期間に参加した。
【0111】
パート1で、ベースライン安全性評価のために、及び適格性を確認するために、第-2日又は第-1日に対象を試験施設に入院させた。第1日に空腹状態下で適格対象に化合物(I)又はプラセボの単回投与を行った。第-1日~第5日の朝(最終薬物投与後96時間)まで適格対象を滞在させた。
【0112】
パート2及び4において、ベースライン安全性評価のために、及び適格性を確認するために、第-2日又は第-1日に対象を入院させた。第1日に空腹状態下で適格対象に化合物(I)の最初の投与を行い、第12日まで及びこの日を含め、空腹状態下で試験投薬を行い続けた。第-2又は-1日から化合物(I)の最終投与が行われてから96時間後にあたる第16日の朝まで対象を滞在させた。パート2及び4において、それぞれ1日1回及び1日2回、試験投薬を行った(詳細は評価スケジュールで見られる)。
【0113】
パート3は、食事の影響を評価するための、オープンラベル、無作為化、2群クロスオーバー、単回投与試験であった。パート3において、各対象は、28日間のスクリーニング期間(第-29日~第-2日)、2ベースライン(第-1日)及び、第1日での単回用量投与とそれに続く第5日までの安全性及びPK評価からそれぞれなる2処置期間に参加した。処置期間2は、それぞれ、フォローアップ来院及び第22及び40日の試験評価終了からなった。2つの処置期間は少なくとも18日(+/-1日)間の休薬期間を挟んで分けた。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
組み入れ基準:
1.スクリーニング時に、18~65歳(当該年齢を含む)の範囲の年齢であり、且つ過去の既往歴、身体検査、バイタルサイン、心電図及び臨床検査によって判定した場合に良好な健康状態である、健康な男性及び女性対象。健康な対象は、これらの具体的な試験部分に対して適格であるものとしてアトピー体質を有し、パート2又はパート4に参加した。アトピーの健常ボランティアは、スクリーニングで既知のアレルゲンに対する陽性皮膚プリックテストがなければならなかった(アトピー体質)が、臨床的に無症候性であり、全身投薬を全く必要としなかった。
2.対象は、体重が少なくとも50kgであり、体格指数(BMI)が18~30kg/m2の範囲内(当該数値を含む)であることが求められた。BMI=体重(kg)/[身長(m)]2。
3.スクリーニング及び最初のベースライン時に、対象が少なくとも3分間安静にした後、及びまた(必要に応じて)立位で3分後、バイタルサイン(体温、収縮期及び拡張期血圧及び脈拍数)を座位で評価した。座位のバイタルサインは、次の範囲(当該数値を含む)内であることが求められた:
・口腔体温35.0~37.5℃
・収縮期血圧90~139mmHg
・拡張期血圧50~89mmHg
・脈拍数50~90bpm
【0118】
除外基準
1.試験薬物の何れかに対する、又は同様の化学的分類の薬物に対する過敏症の既往歴。
2.スクリーニング及び/又は前処置での、臨床的に意義のあるECG異常又は次のECG異常の何れかの既往歴:
・PR間隔>200msec
・QRS複合>120msec
・QTcF>450msec(男性)
・QTcF>460msec(女性)
3.スクリーニング又は最初のベースライン時のヘモグロビンレベルが12.0g/dL未満。
4.スクリーニング又は最初のベースライン時の血小板数が正常範囲外(150x109/Lを下回るか又は450x109を上回る)。
5.スクリーニング及び/又はベースライン時の、プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)又は国際標準化比(INR)を含む、標準的な凝固検査の何れかにおける何らかの臨床的に意義のある異常。
6.血栓若しくは血栓塞栓事象の既往歴若しくは存在又は血栓若しくは血栓塞栓事象に対するリスク上昇。
【0119】
施される処置
パート1(SAD)
次の10個のコホートのうち1つに対象を割り当てた。各コホートにおいて、全体的に6:2の比で化合物(I)又は対応するプラセボの何れかに8名の対象を無作為に割り当てた。化合物(I)に対して対象1名及び対応するプラセボに対して1名で、1:1の比で最初のサブコホートを無作為に割り当てた。最初に投与した2名の対象の48時間観察期間後に投与するコホートあたり残りの6名を5:1の比で無作為に分けた。
・コホート1:0.5mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート2:1.5mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート3:5mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート4:15mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート5:30mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート6:60mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート7:100mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート8:200mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート9:400mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
・コホート10:600mgの化合物(I)又は対応するプラセボの単回経口投与
【0120】
パート2(MAD、qdレジメン)
次の6つのコホートのうち1つに対象を割り当てた。各コホートにおいて、6:2の比で化合物(I)又は対応するプラセボの何れかに8名の対象を無作為に割り当てた。
・コホート1:10mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート2:25mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート3:50mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート4:100mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート5:400mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート6:600mg以下の化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
【0121】
パート3(食事の影響)
1:1の比で2つの処置順序の1つに対象を無作為に割り当てた。
【0122】
【0123】
パート4(MAD、bidレジメン)
次のコホートのうち1つに対象を割り当てた。各コホートにおいて、6:2の比で化合物(I)又は対応するプラセボの何れかに8名の対象を無作為に割り当てた。
・コホート1:bidレジメンでの100mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
・コホート2:bidレジメンでの200mgの化合物(I)又は対応するプラセボの反復経口投与
【0124】
薬物動態学データ
生物学的分析方法
血中の薬物動態試料を得て、全用量レベルで全対象において評価した。プラセボ対象からの試料は分析しなかった。試験の定められた時点で対象からのPK評価用の試料を回収した。有効なLC-MS/MS法によって、化合物(I)濃度を血中で測定した。
【0125】
0.5mg~600mgの単回漸増投与の薬物動態:
単回漸増投与後の化合物(I)の平均血中濃度-時間経過を
図1で示す。化合物(I)は、経時的に急速に吸収され、全用量にわたり約1~1.5時間でCmaxに到達した。吸収相は、殆どの対象において1つの明瞭な吸収ピークを特徴とした。薬物の体内動態は、双指数関数的な低下を示した。初期分布相下で薬物の殆どが排除され、これにより、実質的な薬物クリアランスが全身組織の平衡に達する前に起こり得ることが示唆された。投与後12時間まで見かけの終末消失期には達せず、これは、100mg以上の用量を与えられた対象においてのみ測定可能であった。測定可能な終末相半減期は、4時間(100mg)~18時間(600mg)の範囲であり、1時間~5時間までの循環で平均滞留時間(MRT)となった(MRT≒T1/2/ln2)。分布相は、約1時間の主要な用量依存的T1/2を示した。単回用量投与後の経口血中クリアランス(CL/F)の計算幾何平均は、SADコホートにわたって250~506L/hの範囲のとなり、全コホートにわたって約383L/hの推定値となった。
【0126】
反復経口投与薬物動態
10mg~400mgの反復用量漸増後の化合物(I)の平均血中濃度-時間経過を
図2で示す。
経口投与後の定常状態での見かけの幾何平均クリアランス(CLss/F、第12日 MAD、q.d.)は、コホートにわたり246L/h~414L/hの範囲であった。一般に、第1日と比較した場合、定常状態ではより低いクリアランスが観察されたが、この差は100mg以上の用量では殆ど消失した(表2-1(第1日)及び表2-2(第12日))。この挙動に対する理由は、化合物(I)の初期クリアランスに寄与する共有結合性の標的(BTK)結合であると思われる。連続日においてトラフ値での残りの標的占有がクリアランス(CLss/F)に対する標的結合の寄与率を低下させるので、この効果は第1日で最も顕著である。必然的に、この差は、トラフ値での標的占有がほぼ完全である場合、用量の増加とともに減少する。結果的に、(対象内での)薬物累積係数(Racc)により例示されるように、薬物曝露(AUC、Cmax)は、第1日と比較して第12日でより高いことが分かり、その範囲は5(低用量)~1.2(高用量)であり、一般にCmaxよりもAUCに対して高く、これにより、全身性クリアランスに対する影響が関与し得ることが確認された。
【0127】
【0128】
【0129】
一般に、最終投与から24時間後の血中濃度は通常、100mg以上の数人の対象を除き、1ng/mlを下回り、このことから、2回連続投与内に化合物(I)がほぼ完全にウォッシュアウトされたことが示唆される。後者はまた、数回の投与内に定常状態に達することも示唆する。
【0130】
BTKの代謝回転が組織においてより高いので、b.i.d.投与も調べた。100mg及び200mgの1日2回の反復漸増投与後に得られた平均血中濃度時間プロファイルを
図3で示す。他のコホートからの結果と一致して、b.i.d.レジメン後、投与に対して1h前後のTmaxで速い吸収が観察された。観察される累積係数(Racc)はAUCについては1.5(100mg)及び2.0(200mg)、Cmaxについては約1.65(両用量)に達した。第12日にAUCtauの用量比例上昇が観察され、一方でCmaxについては僅かな増加(1.33倍)しか見られなかった。結論として、化合物(I)のb.i.d投与は、全体的なPKプロファイルを損なうことなく、及び高用量q.d.処置の必要なく、投与間隔中の組織におけるより速い標的再合成に対処するための選択肢を提供する。
【0131】
食事の影響:パート3の結果:
以下の表2~3でまとめた食事の影響コホートからのPKデータは、1.25倍低いCmaxにより示唆されるように、より低い吸収速度を示し、1.4倍高いAUC0-24により示されるように、より完全な全体的吸収を示した。最も重要なこととして、平均Tmaxが1時間(空腹)から>3時間(食事摂取)にシフトした。(
図4)
【0132】
【0133】
薬力学
標的占有及び遠位経路阻害を評価することによって、薬力学(PD)の特徴を調べた。ヒト全血中のBTK占有率の測定(遊離及び総BTKの比として導かれる)は、治療標的関与の直接的マーカーとなる。
【0134】
式(I)の化合物に対する前臨床モデルにわたり、複合インビボ経路及び疾患リードアウトにおけるBTK占有率、用量、全身的化合物曝露及び有効性の間の関係が確立された。(例えば実施例1)
【0135】
式(I)の化合物はBTKの不可逆的阻害剤であり、BTK占有の程度及び持続時間を決定した。2つの個別のアッセイにおいて、Meso Scale Diagnostics(MSD)プラットフォーム上での酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって全血中の遊離BTK(結合なし)及び総BTKの両方を測定することにより、化合物(I)のPD効果を評価した。
【0136】
治療標的関与の直接的なマーカーであるヒト血中のBTK占有率(遊離及び総BTKの比として導かれる)の測定によって、用量と薬力学との間の関係の特徴を調べた。0.5~400mgの範囲の単回漸増投与に対して、10mg~400mgの範囲のq.d.反復漸増投与に対して、及び100mg及び200mgのb.i.d.反復漸増投与に対して、BTK占有率を決定した。
【0137】
式(I)の化合物は、末梢血BTK占有の程度及び持続時間の両方の明らかな用量依存性の増加を示した。ピーク標的占有は一般に投与後0.5hの早い時期に見られ、このことから、ピーク薬物曝露に対する、薬物効果の関連するヒステリシスがない迅速な開始が示された。そのBTKへの共有結合能から結論付けられるように、標的占有は、全身循環からのその体内動態を超えてよく保持され、このことから、非平衡PK-PD関係が示される。従って、BTK占有の持続時間は、BTKのデノボ合成の速度により支配されると結論付けられる。
【0138】
より低い用量のコホート(0.5~1.5mg)とは異なり、15mg化合物(I)以上の単回投与は、ほぼ全ての対象で100%に近づくピーク標的占有を確立し、24hで80%超残っていた。15mgでは対象間で応答が大きく変動した一方で、30mg以上の用量によって、全対象において持続的な(>24h)及びほぼ完全な(>90%)占有となり、対象間の変動性が明らかに低下した。BTKタンパク質プールを投与前レベルに回復させるまでの時間は約10日であり、約48時間の中央値代謝回転T1/2に対応した(
図5)。
【0139】
化合物(I)の反復投与後、既に10mgの化合物(I)q.dは、第12日の投与前に>96%~の血中BTK占有率に達した。
【0140】
さらに、好塩基球活性化のエクスビボ阻害(CD63及びCD203cの表面発現により監視)を末端の機構的なバイオマーカーとして使用し、化合物(I)の下流PD効果を試験した。好塩基球活性化における化合物(I)のPD効果を決定するために、抗IgEによりエクスビボで全血を刺激した。フローサイトメトリーによってCD63+及びCD203+好塩基球のパーセンテージにより脱顆粒を評価した。
【0141】
化合物(I)の単回用量漸増後、データから、FcεR1介在性好塩基球活性化の用量依存性阻害が示される。CD63により測定した場合のエクスビボ血中好塩基球活性化は、60mgの用量でほぼ完全に阻害され(>89%)、投与24時間後、より高い用量で100%阻害近くに達した。その一方、化合物(I)の単回投与24時間後のCD203cの最大阻害(およそ50%阻害)は200mgの化合物(I)でのみ達成された。
【0142】
第12日に、式(I)の化合物のMADのq.d.又はb.i.d.投与の8時間後、既に、化合物(I)の最低試験用量(10mg q.d.)によって、CD63上方制御が>90%阻害となり、CD63のトラフレベル阻害は化合物(I)用量≧50mg q.d.で>90%である(
図6)。第12日のCD203c活性化の最大のトラフ値阻害は、化合物(I)の単回投与後よりも一貫して高く、化合物(I)の100mg及び200mgのb.i.d.投与でのみ達成された。
【0143】
定められたアレルゲン応答を化合物(I)が阻害する能力は、ファースト・イン・ヒューマン試験のMAD試験部分において健康なアトピー対象での皮膚プリックテスト(SPT)により評価した。投与前(スクリーニング、ベースライン及び第1日の投与前)及び初回投与(第1日)後の異なる時点及び1日1回投与の11日後(第12日)にSPTを行った。
【0144】
エクスビボ好塩基球活性化の阻害と同様に、ベースラインと比較した、平均投与後膨疹サイズの縮小により示されるように、反復用量漸増コホートにおいて膨疹直径における用量依存的効果が識別可能であった(
図7)。100mg前後の化合物(I)q.d.で効果がプラトーになり始めた。
【0145】
用量選択に対する根拠/結論
単回投与として与えたか又は1日1回若しくは2回、最長18日間与えたかの何れかで、0.5mg~600mgの範囲の用量で第1相臨床試験において健常ボランティアを化合物(I)に曝露した。化合物(I)は忍容性に優れており、化合物(I)の摂取に関連する重篤又は重度の有害事象はなかった。臨床試験において、観察された有害事象(AE)は用量依存的ではないようであり、殆どは単一事象であり、通常は事実上軽度であった。従って、臨床安全性情報は、この第2b相試験に対して選択された用量を裏付ける。
本発明の用量レベルは、次の分析(健常ボランティアにおける、BTK占有率、好塩基球活性化の阻害(CD63及びCD203c上方制御により監視);及び、無症候性アトピーの健常ボランティアにおける皮膚プリックテスト(SPT)-皮膚内の肥満細胞及び好塩基球阻害の代わり-における影響から導かれたものであった。
【0146】
この上記の臨床試験において、q.d.での化合物(I)10mgの投与の結果、血中でほぼ完全なBTK占有が起こり、CD63上方制御が>90%低下し(定常状態で化合物(I)の投与後8時間)、SPTでの膨疹サイズの阻害が最小となった。従って、q.d.での化合物(I)10mgは、生物学的活性の開始に対応する。式(I)の化合物100mgで、SPTにおける膨疹サイズの平均縮小がプラトーになり始めた。従って、本化合物100mgは化合物(I)の最大効果に対応する。q.d.での35mg化合物(I)の中程度の用量は、q.d.での化合物(I)の用量反応曲線を正確に表すのによく適している。
【0147】
式(I)の化合物は共有結合によりBTKを阻害する。血中のBTK占有が>24時間(h)である一方で、組織における速いBTK代謝回転(例としてげっ歯類の脾臓ではおよそ5時間)は、最大有効性に到達するために化合物(I)のb.i.d.投与を必要とし得る。10mg、25mg及び100mgの化合物(I)b.i.d.の用量は、それぞれ、1日2回与えた場合の化合物(I)の用量反応曲線を的確に表す。
【0148】
ヒトにおける安全性
有害作用の分析については、全てのSAD及びMADコホート(コホートあたり2名)からの、及びSAD及びMADパートにより分離されるプラセボ対象を1つのプラセボ群(SADに対してn=20及びMADに対してn=16)にプールして、各単回化合物(I)投与群(各n=6)及び総化合物(I)群(SADに対してn=60及びMADに対してn=48)と比較した。SAD及びMAD集団の両方に対して、プラセボと活性群との間で人口動態データの明らかな大きな違いはなかった。健常ボランティアにおけるFIH試験の安全性評価から、600mgまでの投薬で顕著な安全性の懸念事項は明らかにならない。
【0149】
実施例3:中等症~重症のSjSの対象における有効性及び安全性データ
この疾患の処置のための化合物をさらに開発させるために、中等症~重症のSjSの対象において、安全性及び有効性を確立し、式(I)の化合物の用量反応を特徴評価するために設計された、式(I)の化合物による第2相試験を行う。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
試験デザイン
これは、アダプティブ第2相無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設、統合用量設定試験であり、中等症~重症のシェーグレン症候群(SjS)患者における化合物(I)の反復投与の安全性及び有効性を評価するためのものである。この試験において、中等症~重症のSjSは、ACR/EULAR基準及び少なくとも5(12領域から8領域)のESSDAI及び少なくとも5のESSPRIにより、シェーグレン症候群として定義される。試験対象がそれらの基礎疾患に対してある一定の併用治療を受け、組み入れ基準に依然として合致する場合、この試験の終了まで安定なままであるならば、これらの対象はこの治療に留まる。
【0154】
試験は2つのパートからなる。この試験のパート1では、2つの異なる投与レジメンで、結論付けられる最大の生物学的活性がある単回用量(100mg式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩)を:1日1回投与(qd)又は1日2回投与(bid)として試験し、プラセボ群と比較する。群あたり24名の対象という予想される試料サイズに対して、合計でおよそ72名の試験対象をこれらの3つの治療群に等しく無作為に分ける。パート2では、選択される投与レジメン(qd又はbid)は、結論付けられる最低(10mgの式(I)の化合物)と最高(100mgの式(I)の化合物)用量との間でこの投与レジメンの安全性及び用量反応を評価するために、より低い用量まで拡張される。この結果、4つの治療群;プラセボ+3つの用量レベル(100mg bid/qd、25mg bid又は35mg qd及び10mg bid/qd)の式(I)の化合物となる。全部でおよそ180名の対象をこれらの4つの治療群に等しく無作為に分け、その結果、試料サイズは群あたり45名の対象となると予想される。
【0155】
各個々の試験対象は、最初に最長6週間のスクリーニング期間、24週間の治療持続期間及び試験治療薬の最終投与後30日間のフォローアップ期間、試験終了前の来院を経る。この試験における各対象に対する総持続時間は、スクリーニングを含め、最長35週間である。
【0156】
治療期間の全持続時間(24週間)にわたり、対象は、選択された投与レジメンに関わらず、式(I)の化合物又はプラセボを1日2回投与され、試験全体を通じてブラインドが維持されるようにする。
【0157】
安全性評価には、身体検査、ECG、バイタルサイン、標準的臨床検査評価(血液学、生化学及び尿検査)並びに有害事象及び重篤な有害事象の監視が含まれる。
【0158】
スクリーニング
インフォームドコンセントの署名後、ESSDAI及びESSPRIについて対象を評価し、安全性及び他の評価を完了して、適格性を評価する。ロジスティック上の理由のために、治験医師により適切とみなされる場合は、6週間のスクリーニング期間中、異なる日に評価を行う。スクリーニングで失格となる対象は、1回のさらなる機会のために再スクリーニングされ得る。対象が試験に対して適格であると確認されたら、対象に対して装着型装置の使用法についてのガイダンスも行われ(対象がそれを使用することを選択する場合)、それが対象に提供される。
【0159】
ベースライン
適格な対象は、第1日のベースライン来院のために戻って来る。対象は、ロジスティック上の理由のために治験施設に一晩滞在し得るが、これは入院とみなされない。適格性を無作為化の前に確認し、求められるベースライン評価は第1日の投与前に完了されるものとする。スケジューリングの目的のために治験施設により好ましい場合、一部のベースライン評価が第1日の前の夕刻に行われる。
【0160】
試験治療
治験薬は、適切にブラインド化されたラベル付きのボトルとして提供される。このボトルには、10mg若しくは25mg若しくは50mgの活性物質(式(I)の化合物)又は対応するプラセボの何れかが入ったカプセルが含有される。各用量(カプセル2個)を水とともに嚥下し、胃が空の状態で摂取すべきである。朝夕の投与の間に、およそ12時間(10時間~14時間)の投与間隔を維持すべきである。試験治療薬の保管及び管理についての要件及び、試験治療薬を数え、分配し、摂取する対象にとって従うべき指示の詳細はSOMで概説される。
【0161】
治療群
パート1において、第1日に、対象を1:1:1の比で以下の3つの治療群のうち1つに割り当てる。
・式(I)の化合物、100mg bid
・式(I)の化合物、100mg qd
・プラセボ
【0162】
パート2に対する投与スケジュール及び用量範囲はIAからのデータに基づく。パート2において、第1日に対象を1:1:1:1の比で以下の4つの治療群のうち1つに割り当てる。
・式(I)の化合物、100mg bid又はqd
・式(I)の化合物、35mg qd又は25mg bid
・式(I)の化合物、10mg bid又はqd
・プラセボ
【0163】
対象は、2個のカプセルを各投与時に摂取する。両パートにおいて全対象に対して、朝夕の投与(それぞれカプセル2個)がある。
【0164】
対象は、第1日、第29日(第4週)、第57日(第8週)、第85日(第12週)、第113日(第16週)、第141日(第20週)及び第169日(第24週)に、当該施設で式(I)の化合物又はプラセボのその朝の投与を受ける。他の朝の投与及び全ての夕刻の投与は、通常は家庭で、参加する対象により行われる。全対象が、対象の治験施設へのスケジュールされた来院中、4週間ごとに式(I)の化合物又はプラセボカプセルのそれらの個々の供給を受ける。
【0165】
対象を試験パートごとに個々の処置群に無作為に分ける。日本を除き、ベースラインESSDAI(重み付けスコアに基づき<又は≧10)によって無作為化を層別化する。無作為化番号の個々のブロックを参加する日本及び他国の対象に対して作成し、日本人対象がこの試験の全ての治療群にわたり等しく分配されることを確実にする。対象は、第1日(第1週)、第29日(第4週)、第57日(第8週)、第85日(第12週)、第113日(第16週)、第141日(第20週)及び第169日(第24週)に、治験施設で式(I)の化合物又はプラセボのそれらの朝の投与を受ける。次に、対象に試験薬を提供し、対象は、帰宅して、その1日の投与レジメンを継続し得る(自己投与)。第4週及び第24週の来院時に、対象に対して投与後安全性及びPK評価も行う。対象はおよそ4週間間隔で治験施設に戻り、第2週の終了時(第15日)にさらに来院する。試験来院の際、対象に対して、ESSDAI及びESSPRI評価並びに他のスケール/質問票、安全性及び様々なPK、PD及びバイオマーカー試料回収を、評価スケジュールで示されるとおりに行う。毎週、対象にそのSjS症状及び治療薬の投与を記録するために日記を完成させるよう求める。
【0166】
この試験の主要エンドポイントは、パート2の終了時、24週間処置の完了後に評価する(第169日;第24週終了時の来院)。中間分析は、パート1における24週間の治療結果の代わりに、処置12週間後、有効性及び安全性を評価する。
【0167】
用量/レジメン及び処置の持続時間に対する根拠
パート1に対する用量/レジメン
この試験に対して計画される最大用量(100mg bid又はqd)は、血中(B細胞遮断)及び組織における予想されるBTK占有及び好塩基球におけるCD63上方制御の阻害(IB)に基づき、式(I)の化合物についての最大効果を明らかにした(実施例2での結果)。従って、この用量は、SjSに対して、リンパ組織を含む組織において最大の臨床効果を提供すると結論付けられる。第1相試験において、単回及び反復投与の両方として最大600mgの用量及び1日2回投与として200mgをヒトボランティアで試験し、安全であることが証明された。
【0168】
パート1において、最大効果を提供すると結論付けられた用量(100mg)をqd及びbidレジメンで試験し、プラセボと比較する。細胞内BTKに対する式(I)の化合物の結合の共有結合的な性質ゆえに、治療効果の持続時間は、BTK分子の代謝回転速度に依存する。シミュレーションモデルから、定常状態での式(I)の化合物100mgを用いたqdレジメンが、投与24時間後(及び次の投与の直前)平均83%のBTK占有率をもたらし、一方で100mgの同じ単回投与を用いたbidレジメンの24時間での平均BTK占有率が96%であることが示された。
【0169】
さらに、定常状態での各投与期間の約90%に対する70%BTK阻害は、最適な臨床有効性に適切であるとみなされる。従って、この試験のパート1で試験されるqd-及びbidレジメンの両方の化合物(I)100mgの投与レジメンは、有効性をもたらす。
【0170】
パート2に対する用量/レジメン
パート2は、10mg~100mgの用量で選択された投与レジメンの全用量範囲を評価する。式(I)の化合物を用いたファースト・イン・ヒューマン試験において、10mgの式(I)の化合物のq.d.投与の結果、血中でほぼ完全なBTK占有が起こり、CD63上方制御の>80%低下となったが、皮膚プリックテスト(SPT)における膨疹サイズは最小限の阻害のみであった。従って、10mgの式(I)の化合物のq.d.は、組織での薬力学活性について生物学的活性の開始と対応すると結論付けられる。中程度の用量として、35mgのqd又は25mgのbidの式(I)の化合物の1日用量は、qd又はbidのそれぞれでの式(I)の化合物の完全用量反応曲線を的確に表すために適切であると考えられる。最長24週間の二重盲検治療期間の継続によって、式(I)の化合物に対する継続的な安全性及び有効性データが提供される。
【0171】
対照薬(プラセボ)の選択のための根拠
対照薬処置は、24週間の試験中、潜在的なAE及び他の安全性データ、並びに式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩で処置された対象から生成される臨床有効性及びPDデータの客観的エビデンスを提供するためのプラセボである。SjSに対する承認された全身処置はないので、プラセボの使用は正当である。SjS患者に対する最新の標準治療は、粘膜の徴候及び症状(乾燥)に対する対症療法に限定され、ステロイド及び従来のDMARDは無効であることが多い。SjSと関連する重度の日常生活に支障を来すほどの疲労に対する有効な薬理学的介入はない。
【国際調査報告】