(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】製造方法および射出成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/04 20060101AFI20220720BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220720BHJP
B29C 33/34 20060101ALI20220720BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20220720BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220720BHJP
B29C 45/42 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B29C45/04
B29C45/14
B29C33/34
B29C33/12
B29C45/26
B29C45/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568653
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020032728
(87)【国際公開番号】W WO2020236488
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM17
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CC01
4F202CC03
4F202CC04
4F202CL50
4F202CM12
4F202CM14
4F202CR01
4F206AM17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JC01
4F206JC09
4F206JL02
4F206JL05
4F206JM06
4F206JM16
4F206JN25
4F206JN43
4F206JQ06
4F206JQ81
4F206JQ90
4F206JT04
(57)【要約】
1台の射出成形機を用いて複数の金型を入れ替えながら行う成形品の製造は、前記射出成形機の成形動作位置で金型の型締め、射出および保圧を行い、前記金型を前記成形動作位置から搬送して前記成形動作位置とは異なる位置で前記金型の冷却処理を行い、前記金型を前記成形動作位置に搬送して前記金型を型開きし、前記金型から成形品を取り出すことを含み、第1の金型に対して前記第1のステップを行う前に、予め第2の金型から取り出しておいた成形品を型開きされた前記第1の金型に配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の射出成形機を用いて、複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する方法であって、
前記射出成形機の成形動作位置で、金型の型締め、射出および保圧を行う第1のステップと、
前記金型を前記成形動作位置から搬送し、前記成形動作位置とは異なる位置で前記金型の冷却処理を行う第2のステップと、
前記金型を前記成形動作位置に搬送し、前記金型を型開きして、前記金型から成形品を取り出す第3のステップと、
を含み、
第1の金型に対して前記第1のステップを行う前に、予め第2の金型から取り出しておいた成形品を前記第3のステップにおいて型開きされた前記第1の金型内に配置する、
方法。
【請求項2】
前記第3のステップでは、取出機により前記成形品を取り出し、前記取出機は、前記第1の金型により成形された成形品と、前記第2の金型により成形された成形品とを取り出すように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取出機は、前記第1の金型から成形品を取り出すための第1の保持部と、前記第2の金型から成形品を取り出すための第2の保持部とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の保持部または前記第2の保持部は、前記成形品を真空吸着力により保持する機構を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第3のステップでは、取出機により成形品を取り出し、前記取出機は、前記第3のステップにおける前記第1の金型からの前記成形品の取り出し後から、前記取出機による前記第2の金型内への前記成形品の配置まで、前記成形品を把持し続ける、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第3のステップでは、取出機は、前記第1の金型から成形品を取り出し、前記第2の金型内への前記成形品の配置前に、前記射出成形機外部の構造体上に前記成形品を配置する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
射出成形機と、
金型を搬送するように構成される第1の搬送装置と、
金型を搬送するように構成される第2の搬送装置と、
制御装置と、
を備える射出成形システムであって、
前記制御装置は、
前記射出成形機の成形動作位置で、金型を型締めし、前記金型に射出し、前記金型を保圧する第1のステップと、
前記第1の搬送装置または前記第2の搬送装置を介して、前記金型を前記成形動作位置から異なる位置に搬送し、前記異なる位置で前記金型の冷却を行う第2のステップと、
前記第1の搬送装置または前記第2の搬送装置を介して、前記金型を所定位置に搬送し、前記金型を型開きして、成形品を取り出す第3のステップと、
を制御し、
第1の金型に対して前記第1のステップを行う前に、予め第2の金型から取り出しておいた前記成形品を前記第3のステップにおいて型開きされた前記第1の金型内に配置する、
射出成形システム。
【請求項8】
前記金型から前記成形品を取り出すように構成される取出機をさらに備え、前記取出機は、前記第1の金型により成形された成形品と、前記第2の金型により成形された成形品とを取り出すように構成される、請求項7に記載の射出成形システム。
【請求項9】
前記取出機は、前記第1の金型から前記成形品を取り出すための第1の保持部と、前記第2の金型から前記成形品を取り出すための第2の保持部とを含む、請求項8に記載の射出成形システム。
【請求項10】
前記第1の保持部または前記第2の保持部は、前記成形品を真空吸着力により保持する機構を含む、請求項9に記載の射出成形システム。
【請求項11】
前記第3のステップでは、取出機により成形品を取り出し、前記取出機は、前記第1の金型からの前記成形品の取り出し後から、前記取出機による前記第2の金型内への前記成形品の配置まで、前記成形品を把持し続ける、請求項7に記載の射出成形システム。
【請求項12】
前記第3のステップでは、取出機は、前記第1の金型から成形品を取り出し、前記第2の金型内への前記成形品の配置前に、前記射出成形機外部の構造体上に前記成形品を配置する、請求項7に記載の射出成形システム。
【請求項13】
1台の射出成形機を用いて、複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する方法であって、
前記射出成形機の成形動作位置で、金型の型締め、射出および保圧を行う第1のステップと、
前記金型を前記成形動作位置から搬出し、前記成形動作位置とは異なる位置で前記金型の冷却を行う第2のステップと、
前記金型を前記射出成形機の所定位置に搬入し、前記金型の型開きを行い、成形品の取り出しを行う第3のステップと、
を含み、
第1の金型に対して前記第1のステップを行う前に、予め第2の金型から取り出しておいた前記成形品を前記第3のステップにおいて型開きされた前記第1の金型内に配置する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月17日に出願された、米国仮出願62/849482号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0003】
射出成形機による成形品の製造は、型締め後に樹脂を金型に充填する射出工程、樹脂の固化による体積減少を補うために樹脂を金型に高圧で押し込む保圧工程、樹脂が固化するまで金型内に成形品を保持する冷却工程、および成形品を金型から取り出す取り出し工程が繰り返し行われる。
【0004】
上述の成形方法において、生産性を高めるために、1台の射出成形機に対して、2つの金型を用いる方法が提案されている。例えば、米国特許出願公開第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号では、射出成形機2の両側に、搬送装置3Aおよび3Bを配置するシステムが論じられている。このシステムでは、1台の射出成形機2に対して、搬送装置3Aおよび3Bによって複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する。
図1~
図4は、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号の射出成形システムを示す。
【0005】
日本特許公開第H7-119012号には、射出成形機の両側に、それぞれ、成形品の取り出し装置が配置されたシステムが開示されている。このシステムでは、射出成形機内で一方の金型に対して射出工程および保圧工程を行い、射出成形機外の成形品取り出し装置で他方の金型に対して冷却工程および取り出し工程を行うことができる。2つの金型を射出成形機と成形品取り出し装置との間で交換(入れ替え)しながら成形動作を進行する。
【0006】
一般に、金型は鋼材などの金属で製造されており、重量が数キログラムから数100キログラムに達することがある。金型は、バリなどの不具合がなく寸法精度の高い成形品を製造するために、高い寸法精度で金型部品が製造され組み合わされているため、金型の開閉機構には十分な精度が求められる。したがって、開閉機構は高価な場合が多い。
【0007】
日本特許公開第H7-119012号のシステムでは、射出成形機外で成形品の取り出しを行うため、金型の開閉機構を各取り出し装置に設ける必要がある。また、成形品の取り出し機構も各取り出し装置に設ける必要がある。したがって、金型の開閉機構や成形品の取り出し機構が複数必要となり、システム全体としてのコストが高額になる。
【0008】
日本特許公開第H7-119012号のシステムは、射出成形機の内部と外部の両方で冷却工程を実行することで、通常の成形に比べて生産性を高めることができるものの、さらなる改善の余地がある。例えば、射出成形機の内外の工程時間を、全成形工程の半分ずつに割り当てれば、生産性が最大となる。
【0009】
日本特許公開第H10-180797号には、インサート成形に関する技術が開示されている。部品を金型内に移送後に射出成形を行って、当該部品と樹脂との一体成形を行うインサート成形技術が広く知られている。ただし、多くのインサート部品は予め準備される。
【0010】
現在までのところ、金型を入れ替えながらインサート成形を行う技術は知られていない。金型交換をしながらのインサート成形実行時の生産性を考慮した装置構成については十分に検討されていなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の少なくとも一態様によれば、1台の射出成形機を用いて、複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する方法は、前記射出成形機の成形動作位置で金型の型締め、射出および保圧を行う第1のステップと、前記金型を前記成形動作位置から搬送し、前記成形動作位置とは異なる位置で前記金型の冷却処理を行う第2のステップと、前記金型を前記成形動作位置に搬送し、前記金型を型開きして、成形品を取り出す第3のステップとを含み、第1の金型に対して前記第1のステップを行う前に、予め第2の金型から取り出しておいた成形品を前記第3のステップにおいて型開きされた前記第1の金型内に配置する。
【0012】
本開示のこれらの実施形態、特徴および利点、ならびにその他の実施形態、特徴および利点は、以下の本開示の例示的実施形態の詳細な説明を添付の図面および提供する特許請求の範囲と併せ読めば、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一例示的実施形態における射出成形システムの平面図である。
【
図3】
図3は、固定プラテンの端面図であり、
図2のI-I線の矢印方向から見た図である。
【
図4】
図4は、成形動作位置周辺の構成を説明する部分斜視図である。
【
図5】
図5は、コントローラ41が実行する成形システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、別の例示的実施形態のチャック板の説明図である。 図面全体を通して、別段の記載がない限り、同一の参照番号および符号は、図示する実施形態の同様の特徴、要素、構成要素、または部分を示すために用いられる。さらに、これから図面を参照して本開示を詳細に説明するが、これは説明のための例示的な実施形態に関連して行われる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲および趣旨を逸脱することなく、説明される例示的な実施形態に対して変更および修正を加えることができることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、いくつかの例示的な実施形態を説明しており、当業者に既知の詳細については、特許、特許出願、および他の参考文献に依拠する。したがって、本明細書において、特許、特許出願、または他の参考文献が引用される、または繰り返されるとき、それらは、記載されている提案だけでなくあらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることを理解されたい。
【0015】
図面を参照して、各図中の矢印XおよびYは、互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは、地面に対して垂直(直立)方向を示す。
【0016】
図1~
図4は、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号の射出成形システム1を示しており、本明細書では情報/説明の目的のためだけに提供されている。
【0017】
射出成形システム1は、射出成形機2と、搬送装置3Aおよび3Bと、制御装置4とを含む。射出成形システム1は、1台の射出成形機2に対して、搬送装置3Aおよび3Bを用いて、複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する。2つの金型100Aおよび100Bを用いる。
【0018】
金型100A/100Bは、固定金型101と、固定金型101に対して開閉される可動金型102との組である。成形品は、固定金型101と可動金型102との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出することで成形される。固定金型101および可動金型102には、それぞれ取付板101aおよび102aが固定されている。取付板101aおよび102aは、金型100A/100Bを射出成形機の成形動作位置11(型締位置)に固定するために用いられる。
【0019】
金型100A/100Bには、固定金型101と可動金型102との間を閉状態に維持する自己閉鎖部103が設けられている。自己閉鎖部103により、射出成形機2から金型100A/100Bを搬出した後も、金型100A/100Bが開くことを防止することが可能となる。自己閉鎖部103は、磁力を利用して金型100A/100Bを閉状態に維持する。自己閉鎖部103は、固定金型101および可動金型102の対向面に沿って複数の箇所に配置されている。自己閉鎖部103は、固定金型101側の要素と可動金型102側の要素との組み合わせである。通常、金型100Aおよび100Bの1つに対して2組以上の自己閉鎖部103が設けられる。
【0020】
搬送装置3Aは、金型100Aを射出成形機2の成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3Bは、金型100Bを成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3A、射出成形機2、および搬送装置3Bは、この順にX軸方向に並ぶように配置されている。言い換えれば、搬送装置3Aおよび搬送装置3Bは、射出成形機2をX軸方向において挟むように、射出成形機2に対して横方向に配置されている。搬送装置3Aおよび3Bは、互いに対向して配置され、搬送装置3Aは射出成形機2の左右の一側方に、搬送装置3Bは他側方にそれぞれ隣接して配置されている。成形動作位置11は、搬送装置3Aと搬送装置3Bとの間に位置している。搬送装置3Aおよび3Bは、それぞれフレーム30と、搬送ユニット31と、複数のローラ32と、複数のローラ33とを含む。
【0021】
フレーム30は、搬送装置3Aおよび3Bの骨格であり、搬送ユニット31と、複数のローラ32および33とを支持する。搬送ユニット31は、金型100A/100BをX軸方向に往復移動させ、成形動作位置11に対して金型100A/100Bを排出および挿入する装置である。
【0022】
搬送ユニット31は、モータを駆動源とした電動シリンダであり、シリンダに対して進退するロッドを含む。シリンダはフレーム30に固定され、ロッドの端部には固定金型101が固定されている。搬送ユニット31は、流体アクチュエータ、電動アクチュエータのいずれも使用可能であるが、電動アクチュエータにより、金型100A/100Bの搬送時に、その位置や速度の制御精度の向上を図ることができる。流体アクチュエータとしては、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダを挙げることができる。電動アクチュエータとしては、電動シリンダに加えて、モータを駆動源としたラックアンドピニオン機構、モータを駆動源としたボールねじ機構等を挙げることができる。
【0023】
搬送ユニット31は、搬送装置3Aと3Bのそれぞれに独立して配置されている。しかし、金型100Aおよび100Bを支持する共通の支持部材を用い、この支持部材に対して単一の共通の搬送ユニット31を配置してもよい。搬送ユニット31を搬送装置3Aと3Bのそれぞれに独立して配置した場合は、金型100Aと金型100Bとで搬送時の移動ストロークが異なる場合に対応することが可能となる。例えば、金型の幅(X方向の幅)が異なっていたり、金型の厚み(Y方向の幅)が異なっていたりして、金型を同時に搬送できない場合である。
【0024】
複数のローラ32は、X軸方向に配列されたローラ列を構成しており、Y軸方向に離間して2列構成されている。複数のローラ32は、Z軸方向の回転軸を中心に回転し、金型100A/100Bの側面(取付板101aおよび102aの側面)に接触して、金型100A/100Bを横から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動をガイドする。複数のローラ33は、X軸方向に配列されたローラ列を構成しており、Y軸方向に離間して2列構成されている。複数のローラ33は、Y軸方向の回転軸を中心に回転し、金型100A/100Bの底面(取付板101aおよび102aの底面)を支持して、金型100A/100Bを下から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動を円滑にする。
【0025】
制御装置4は、射出成形機2を制御するためのコントローラ41と、搬送装置3Aを制御するためのコントローラ42Aと、搬送装置3Bを制御するためのコントローラ42Bとを含む。各コントローラ41、42A、42Bは、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置と、センサやアクチュエータに接続されるインタフェース(図示せず)とを含む。プロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行する。コントローラ41が実行するプログラム(制御)の一例は後述する。コントローラ41は、コントローラ42Aおよび42Bと通信可能に接続され、コントローラ42Aおよび42Bに金型100A/100Bの搬送に関する指示を行う。コントローラ42Aおよび42Bは、金型100A/100Bの搬入や搬出が終了した場合に、動作完了の信号をコントローラ41に送信する。さらに、コントローラ42Aおよび42Bは、異常発生時に非常停止信号をコントローラ41に送信する。
【0026】
射出成形機2、搬送装置Aおよび搬送装置Bのそれぞれには、コントローラが配置されているが、1つのコントローラで3台全ての装置を制御してもよい。より確実に協調的に動作させるために、搬送装置Aと搬送装置Bとを単一のコントローラで制御してもよい。
【0027】
図2は、射出成形機2の側面図である。
図3は、固定プラテン61の端面図であり、
図2のI-I線の矢印方向から見た図である。
図4は、成形動作位置11周辺の構成を説明するための部分斜視図である。
【0028】
図1および
図2を参照して、射出成形機2は、射出装置5と、型締装置6と、成形品を取り出す取出機7とを含む。射出装置5および型締装置6は、フレーム10上にY軸方向に配置されている。
【0029】
射出装置5は、Y軸方向に延びるように配置された射出シリンダ51を含む。射出シリンダ51は、バンドヒータ等の加熱装置(図示せず)を含み、ホッパ53から導入された樹脂を溶融する。射出シリンダ51にはスクリュ51aが内蔵されており、スクリュ51aを回転させることで射出シリンダ51内に導入された樹脂が可塑化され、計量される。スクリュ51aの軸方向(Y軸方向)への移動により、射出ノズル52から溶融樹脂を射出することができる。
【0030】
図2に、ノズル52としての遮断ノズルの一例を示す。吐出口52aを開閉するピン56aが、
図2の開閉機構56として配置されている。ピン56aは、リンク56bを介してアクチュエータ(シリンダ)56cに連結されており、アクチュエータ56cの動作により吐出口52aが開閉される。
【0031】
射出シリンダ51は、駆動部54に支持されている。駆動部54には、スクリュ51aを回転駆動させて樹脂の可塑化と計量を行うモータと、スクリュ51aを軸方向に進退させる駆動モータとが配置されている。駆動部54は、フレーム10上のレール12に沿ってY軸方向に進退可能である。また、駆動部54には、射出装置5をY軸方向に進退させるアクチュエータ(例えば電動シリンダ)55が配置されている。
【0032】
型締装置6は、金型100A/100Bの型締めおよび型開閉を行う。型締装置6には、Y軸方向に順に、固定プラテン61、可動プラテン62、可動プラテン63が配置されている。プラテン61~63には、複数のタイバー64が通過している。各タイバー64は、Y軸方向に延びる軸であり、その一端部が固定プラテン61に固定されている。各タイバー64は、可動プラテン62に形成された各貫通穴に挿入されている。各タイバー64の他端部は、調整機構67を介して可動プラテン63に固定されている。可動プラテン62および63は、フレーム10上のレール13に沿ってY軸方向に移動可能であり、固定プラテン61は、フレーム10に固定されている。
【0033】
可動プラテン62と可動プラテン63との間には、トグル機構65が配置されている。トグル機構65は、可動プラテン63に対して(言い換えれば、固定プラテン61に対して)、可動プラテン62をY軸方向に進退させる。トグル機構65は、リンク65a~65cを含む。リンク65aは、可動プラテン62に回転自在に連結されている。リンク65bは、可動プラテン63に回動自在に連結されている。リンク65aとリンク65bとは、互いに回動自在に連結されている。リンク65cとリンク65bとは、互いに回動自在に連結されている。リンク65cは、アーム66cに回動自在に連結されている。
【0034】
アーム66cは、ボールナット66bに固定されている。ボールナット66bは、Y軸方向に延びるボールねじ軸66aに係合し、ボールねじ軸66aの回転によりY軸方向に進退する。ボールねじ軸66aは、可動プラテン63によって回転自在となるように支持されており、モータ66は、可動プラテン63に支持されている。モータ66は、モータ66の回転量を検出しながら、ボールねじ軸66aを回転駆動する。モータ66の回転量を検出しながらモータ66を駆動することにより、金型100A/100Bの型締めおよび型開閉を行うことが可能となる。
【0035】
射出成形機2は、型締力を計測するためのセンサ68を含み、各センサ68は、例えばタイバー64に設けられた歪みゲージであり、タイバー64の歪みを検出することで型締力を算出する。
【0036】
調整機構67は、可動プラテン63に回転自在に支持されたナット67bと、駆動源であるモータ67aと、モータ67aの駆動力をナット67bに伝達する伝達機構とを含む。各タイバー64は、可動プラテン63に形成された穴を通過して、ナット67bと係合している。ナット67bを回転させることにより、ナット67bとタイバー64との間のY軸方向の係合位置が変化する。すなわち、タイバー64に対する可動プラテン63の固定位置が変化する。これにより、可動プラテン63と固定プラテン61との間の間隔を変化させることができるため、型締力等を調整することができる。
【0037】
成形動作位置11は、固定プラテン61と可動プラテン62との間の領域である。
【0038】
成形動作位置11に導入された金型100A/100Bは、固定プラテン61と可動プラテン62との間に挟まれ、それによって型締めされる。可動プラテン62の移動により、可動金型102の移動に基づく開閉が行われる。
【0039】
図3は、固定プラテン61の中央部の開口部61aを示しており、ノズル52がこの開口部を通って進退する。固定プラテン61の可動プラテン62側の面(内面という)には、複数のローラBRが回転自在となるように支持されている。複数のローラBRは、回転軸を中心としてY軸方向に回転し、金型100A/100Bの底面(取付板101aの底面)を支持して、金型100A/100Bを下から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動を円滑にする。固定プラテン61のX軸方向の両側には、ローラ支持体620が固定されており、このローラ支持体620によって、複数のローラBRが支持されている。
【0040】
固定プラテン61の内面には、X軸方向に延びる溝61bが形成されている。
【0041】
溝61bは、上下に離間して2列形成されている。各溝61bには、ローラユニット640が配置されている。ローラユニット640には、複数のローラSRが回転自在となるように支持されている。複数のローラSRは、回転軸を中心としてZ軸方向に回転し、金型100A/100Bの外面(取付板101aの外面)に接触して、金型100A/100Bを横から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動をガイドする。II-II線断面図に示すように、ローラユニット640は、バネ641の付勢により、ローラSRが溝61bから突出する位置に位置する一方、型締め時には、溝61b内に後退して、ローラSRが溝61bから突出しない位置に位置する。ローラユニット640は、金型100A/100Bの入れ替え時には、金型100A/100Bと固定プラテン61の内面とが接触して内面が損傷することを防止でき、型締め時には、固定プラテン61の内面と金型100A/100Bとが密接することを妨げない。
【0042】
固定プラテン61のX軸方向の両側には、ローラ支持体630が固定されており、このローラ支持体630によって、複数のローラSRが支持されている。
【0043】
固定プラテン61には、固定金型101を固定プラテン61に固定するための複数の固定機構(クランプ)610が配置されている。各固定機構610は、取付板101aと係合する係合部610a、および係合位置と係合解除位置との間で係合部610aを移動させる内蔵アクチュエータ(図示せず)を含む。
【0044】
なお、可動プラテン62についても、固定プラテン61と同様に、複数のローラBRと、ローラ支持体620および630と、ローラユニット640と、可動金型102を固定するための固定機構610とが配置されている。
【0045】
図4に示すように、型締装置6の周囲は、安全性のためにカバー(外装板)60で囲まれているが、金型100A/100Bの入れ替えのために、成形動作位置11の側方に金型100A/100Bが通過する開口部60aが形成されている。各開口部60aは、基本的に常時開放されており、成形動作位置11に対する金型100A/100Bの自由な排出および挿入が可能となっている。
【0046】
図2に戻り、次に、取出機7について説明する。取出機7は、X軸方向に延びるレール71と、レール71上をX軸方向に移動可能な可動レール72とを含む。可動レール72は、Y軸方向に延びるように配置されており、可動レール72上にはスライダ73が配置されている。スライダ73は、可動レール72にガイドされてY軸方向に移動し、昇降軸73aをZ軸方向に昇降させる。昇降軸73aの下端部には、真空ヘッド74が配置されており、真空ヘッド74には、成形品に特化したチャック板75が取り付けられている。
【0047】
取出機7は、型開き後、レール71、可動レール72、およびスライダ73により、
図2中に破線で示すように、真空ヘッド74を固定金型101と可動金型102との間に移動し、成形品に吸着して、成形品を金型100A/100Bの外に搬送する。
【0048】
図6は、本明細書では情報/説明の目的のためだけに提供されている。
図6のEX1は、チャック板75の一例を示す。チャック板75は、保持部75Aと、保持部75Bとを含む。真空ヘッド74は、チャック板75を軸74a周りに回転させ、保持部75Aおよび保持部75Bの位置が変化するようにチャック板75を変位させる。これにより、成形品に対向する保持部を切り替えることができ、チャック板75を交換せずに短時間で異なる成形品に対応することができる。
図6のEX2は、チャック板75の別例を示す。チャック板75は、保持部75Aと、保持部75Bとを含む。真空ヘッド74は、レール74bと、レール74bに沿って移動するスライダ74cとを含み、チャック板75はスライダ74cに配置されている。スライダ74cを移動することで、保持部75Aおよび保持部75Bの位置が変化するようにチャック板75を変位させることができる。これにより、成形品に対向する保持部を切り替えることができ、チャック板75を交換せずに短時間で異なる成形品に対応することができる。
【0049】
図5は、コントローラ41が実行する射出成形システム1の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0050】
以下の例では、金型100Aを用いた成形→金型100Bを用いた成形→金型100Aを用いた成形、というような形で、金型100Aおよび100Bを入れ替えながら成形動作を行う場合を想定する。ただし、金型100Bの型開き時に、金型100Aで成形された成形品Aを金型100B内に配置する。次いで、成形品Aを含む金型100B内に樹脂を射出し、成形品Aと一体化した成形品Bを製造する。
【0051】
この処理の流れの開始時には、樹脂を射出した状態の金型100Bは、射出成形機2から搬送装置3Bに搬出されている。以下では、このステップに続く処理について説明する。
図5のステップS1では、冷却された金型100Aを射出成形機2に搬入する。金型Aは、前サイクルで射出し、次いで冷却処理で硬化させた樹脂から作られた成形品Aを含む。ステップS2では、モータ66を駆動して、可動プラテン62を固定プラテン61から遠ざける。固定金型101は固定プラテン61に固定機構610により固定され、可動金型102は可動プラテン62に固定機構610により固定されている。これにより、固定金型101から可動金型102が離間し、金型100Aが型開きされる。
【0052】
ステップS3では、取出機7は保持部75Aを駆動して、金型100Aの可動金型102側に残留している成形品Aを取り出す。保持部75Aは、取り出した成形品AをステップS12の処理まで把持し続ける。
【0053】
ステップS4では、型締装置はモータ66を駆動してトグル機構65を駆動し、固定プラテン61と可動プラテン62とにより金型100Aの型締めを行う。
【0054】
ステップS5では、射出装置5により金型100Aに対する射出の準備を行う。射出装置5は、アクチュエータを駆動して移動し、ノズル52を移動させて金型100Aに接触させる。
【0055】
ステップS6では、溶融樹脂の射出および保圧を行う。射出装置5を駆動してノズル52から金型100A内のキャビティに溶融樹脂を充填し、樹脂の固化による体積減少を補うために、樹脂を金型100A内に高圧で押し込む。ステップS6の処理中に、センサ68によって実際の型締力を計測する。成形中、金型100Aの温度が次第に上昇することで、金型100Aが熱膨張する。初期の型締力としばらく時間が経過した後の型締力に差が生じる場合がある。したがって、次回の型締めの際の型締力を、センサ68の計測結果に基づき補正することができる。
【0056】
型締力の調整は、モータ67を駆動して、タイバー64に対する可動プラテン63の位置調整により行う。このように、タイバー64に対する可動プラテン63の位置の初期値を、センサ68の計測結果に基づいて補正して型締力を調整することで、型締力の精度を高めることができる。タイバー64に対する可動プラテン63の位置調整は、任意のタイミング(例えば、
図5のフローチャート中のステップS6、ステップS7、ステップS13~S15等)で行えばよい。
【0057】
ステップS7では、型締装置6に関連する処理を行う。まず、固定機構610による金型100Aのロックを解除する。モータ66を駆動して、トグル機構65を駆動する。これにより、型締力が消失し、固定プラテン61に対して可動プラテン62が僅かに離間して、金型100Aと100Bとの入れ替えが可能となる空間を形成する。
【0058】
ステップS8では、金型100Aを成形動作位置11から搬送装置3Aに搬出または排出する。成形動作位置11からの金型100Aの排出後、金型100Aを所定時間内に適正温度に冷却する。金型は通常、金型内に延びる流路を含んでおり、金型の射出成形準備時に、金型表面に形成された流路の接続部にホースを介して温度調節器を接続する。一定温度の流体が温度調節器から金型内に流れ、金型を一定温度に保つ。冷却処理を含めて射出成形処理中は、通常、金型内には常に流体が流れている。
【0059】
通常、ステップS108の後も、金型100A内に射出された溶融樹脂により、金型100Aは依然として熱を帯びている。冷却処理では、温度調節器からの流体によって、温度を所定温度、例えば摂氏60度まで低下させる。冷却処理は、冷却処理の開始から所定時間が経過するまで継続する。
【0060】
ヒートアンドクール成形のような一部の射出成形処理においては、冷却処理は、金型が射出装置から溶融樹脂を受ける温度とは異なる一定温度に金型を冷却するための専用の温度調節器を含む。
【0061】
ステップS9では、金型100Bを搬送装置3Bから成形動作位置11に搬入する。ステップS10では、モータ66を駆動して、固定プラテン61から可動プラテン62を離間する。固定金型101は固定プラテン61に固定機構610により固定され、可動金型102は可動プラテン62に固定機構610により固定されている。したがって、自己閉鎖部103の力に抗して、固定金型101から可動金型102が離間し、金型100Bが型開きされる。ステップS11では、取出機7を駆動し、保持部75Bを用いて、金型100Bの可動金型102側に残留している成形品Aと一体化した成形品Bを取り出し、射出成形機2の外部へ搬送する。
【0062】
ステップS12では、保持部75Aが把持している成形品Aを金型B内に配置する。ステップS13では、金型100Bの型締めを行う。ステップS14では、アクチュエータ55を駆動して射出装置5を移動し、金型100Bに対する射出の準備を行う。これにより、ノズル52を金型100Bに接触させる。
【0063】
ステップS15では、溶融樹脂の射出および保圧を行う。ステップS16では、型締装置6に関連する処理を行う。これは、ステップS7と同様の処理である。ステップS17では、金型100Bを成形動作位置11から搬送装置3Bに搬出する。
【0064】
上述したように、本実施形態では、金型100A/100Bの冷却を射出成形機2外の搬送装置3Aまたは3B上で行う。そして、金型100Aまたは100Bの一方を冷却中に、金型100Aまたは100Bの他方に対して、射出成形機2によって、成形品の取り出し→型締め→射出/保圧といった各処理を行う。型開きおよび成形品の取り出しを射出成形機2で行うため、搬送装置3Aおよび3Bは、型開き機能および成形品の取り出し機能を含んでいる必要はない。
【0065】
したがって、射出成形システム1のコストアップを回避しつつ、1台の射出成形機2で複数の金型100Aおよび100Bを入れ替えながら、成形品Aと一体化した成形品Bを製造することができる。射出成形機2は、成形品Aの成形に続いて成形品Bを成形するので、予め大量の成形品Aを製造しておく必要がない。これにより、成形品Aの余剰在庫保管のリスクを低減することができる。
【0066】
図7は、別の例示的実施形態のチャック板の説明図である。
図7は、軸74dの先端に接続されたチャック板74eを示す。チャック板74eは、一方の面に複数の保持部75Aを含み、もう一方の面に複数の保持部75Bを含む。チャック板74eを軸74d周りに回転させることで、成形品に対向する保持部を切り替えることができる。回転角は、180度に限定されるものではない。保持部が成形品を適切に掴んで把持することが可能であれば、任意の角度を適用することができる。
【0067】
取出機7は、成形品Aと成形品Bの両方を把持可能なロボットハンドを含んでいてもよい。上述の実施形態では、取出機7による第1の金型からの成形品の取り出し後から、取出機7による第2の金型内への成形品の配置まで、取出機7は成形品を把持し続ける。別の例示的実施形態では、取出機7は、成形動作位置11付近に一時的に設けられたテーブル(図示せず)の上に成形品を配置することができる。
【0068】
成形品Aを金型100B内に配置する前に十分に冷却する必要がある場合は、1回または複数回の金型交換サイクルが経過する間、テーブル上で成形品Aを冷却することができる。この場合、成形品Aの冷却に必要なサイクル数よりも長くテーブル上に成形品Aを置くことができるようにした方がよい。これにより、1回前または複数回前の交換サイクルで成形した成形品Aを金型100B内に配置する成形品として用いることが可能となる。
【0069】
金型内にセンサ(図示せず)を設けて、金型100B内に成形品Aが配置されたことを検出可能としてもよい。圧力センサまたは光学センサを用いることができる。成形動作位置11近傍に設けられたカメラを用いて配置状態の画像を撮影することができ、この撮影された画像を用いて配置判定を行う。金型100B内への成形品Aの配置を検出するためのセンサは、金型100A/100Bや取出機7以外の射出成形機2内の他の位置に設けてもよい。
【0070】
別の例示的実施形態では、取出機7が把持する成形品Aの把持姿勢を調整するためのテーブルを設けてもよい。成形品Aの位置変更をこのテーブル上で行うこともできる。テーブル近傍や取出機7に設けられたセンサ(画像センサ等)(図示せず)を用いて、正確な姿勢に把持を変更し、成形品を金型100B内に配置することもできる。
【0071】
射出成形システム1の一例示的実施形態では、検査処理を実施して、成形品が合格であると判断するようにする。例えば、金型表面または金型の内部構造のいずれにも異常等が検出されない場合に、成形品は合格であると判断される。
【0072】
検査処理は、例えば、射出成形機2内に位置し、成形品の外観画像を撮影する撮像装置を含むことができる。撮影された画像に基づいて、成形品の表面状態や形状を確認する。また、撮影された画像に基づいて、成形品の色を確認することもできる。
【0073】
確認処理に対して、X線等の放射線を用いて成形品の内部構造を撮影する撮像装置を使用することもできる。射出成形機2外で成形品Bの確認処理を行う場合には、射出成形機2内で行う成形品Aの確認処理は外観検査のみでよい。
【0074】
検査処理では、取出機7で成形品Aを取り出し、制御装置4により制御される1つまたは複数の撮像装置が、取出機7に把持された状態の成形品Aの外観画像を撮影する。撮影された画像は、制御装置4により解析され、成形品Aが合格品であるか否かを示す結果が得られる。別の実施形態では、撮影された画像は、制御装置4以外の構成要素により解析することができる。
【0075】
別の実施形態では、取出機7で取り出した成形品Aを射出成形機2外の所定位置に配置して、そこで成形品Aの検査処理を行うことができる。この場合、取出機7による金型100Aからの成形品Aの取り出しから、取出機7による金型100Bへの成形品Aの配置までの間、取出機7が成形品Aを把持し続けることはない。
【0076】
成形品Aが不合格であると判断された場合には、それに続き得る様々な選択肢がある。1つの選択肢では、金型100Aを射出成形機2の成形動作位置11から移動させずに、金型100Aを用いた射出成形を繰り返す。検査処理を行う前に、金型100Aが射出成形機2から既に移動している場合は、再度金型100Aを射出成形機2に移動させ、金型100Aを用いた射出成形を繰り返す。次いで、成形品Aを再度確認する。成形品Aが合格品であると判定された場合は、成形品Aを金型100B内に配置する。成形品Aが合格品と判定された場合には、通常通り、金型100Aを射出成形機2から移動させ、金型100Bを射出成形機2内に移動させる。
【0077】
第2の選択肢では、予め別の合格品を射出成形機2外に準備しておき、その準備しておいた成形品Aを取出機7で把持して不合格品の代わりに使用する。この場合、成形品Aが不合格品であると示す判定に基づいて、制御装置が取出機7を制御して不合格品を解放し、不合格品を廃棄できるようにする。準備しておいた成形品Aは、取出機7により把持され、金型100B内に配置される。成形品Aが合格品であると判定された場合には、通常通り、取出機7で金型100Aから取り出したばかりの成形品Aを金型100B内に配置する。
【0078】
第3の選択肢では、取出機7は、成形品Aを射出成形機2外の所定位置に配置する。この場合、成形品Aを所定位置に配置後、取出機7は、合格品と判定された別の成形品Aを把持して金型100B内に配置する。この流れは、成形品Aの確認に要する時間が比較的長い場合に有効である。
【0079】
制御装置4には、上述した各選択肢に関連する処理が予めインストールされている。射出成形機2は、例えばユーザの入力に基づいて、これらの処理のうちの1つを選択する。
【0080】
成形品Aが不合格品である場合、その成形品Aを含む成形品Bもまた不合格品となる。成形品Aを金型100B内に配置する前に、成形品Aを検査し、合格品か否かを判定するべきである。
【0081】
上述の第2の選択肢では、予め成形品Aのみをいくつか生産しておくことが好ましい。すなわち、金型100Aを成形動作位置11に配置し、所定数、例えば10個の合格品Aが生産されるまで射出成形を行う。射出成形機2は、金型100Aのみを用いる射出成形モードで動作する。所定数の合格品Aが生産された場合は、射出成形機2は、金型100Aと金型100Bとを交互に用いる射出成形モードに入る。また、上述の第3の選択肢においても、金型100Aのみを用いる射出成形モードを採用することができる。
【0082】
上述の第1の選択肢において、成形品Aが不合格品であると判定された後の射出成形処理、および予め所定数の成形品Aを生産しておく射出成形処理では、成形動作位置11以外の位置で金型100Aを冷却する必要はない。言い換えれば、金型100Aを射出成形機2外に移動させて冷却する必要はない。ただし、搬送装置3Aまたは3B上で金型を冷却する場合に金型にかかる圧力と、射出成形機2の成形動作位置11で金型を冷却する場合に金型にかかる圧力とには相違がある。このため、金型の品質は、この2つの状況で異なり得る。
【0083】
上記の射出成形処理では、金型100Aを成形動作位置11から移動させた状態で金型100Aを冷却することができる。また、金型100Aが成形動作位置11にあり、金型100Aからプラテン61、62を離間可能な状態で金型100Aを冷却することもできる。これにより、金型100Aにかかる圧力は、搬送装置3Aまたは3B上で金型100Aを冷却する場合の圧力と同様となる。
【0084】
一実施形態によれば、複数の取出機7を設けることができる。例えば、取出機A(図示せず)は、金型100Aから成形品Aを取り出し、その成形品Aを金型100B内に配置するのに使用する。取出機B(図示せず)は、100Bから成形品Bを取り出すのに使用することができる。この場合、取出機Aは、成形動作位置11近傍のみで動作可能であればよいので、例えば、成形動作位置11近傍の下方に設けることができ、取出機Bよりも小さな動作領域を有してもよい。この構成においては、取出機Bは、取り出した成形品Bを射出成形機2外に搬送可能な大きさである必要があるかもしれない。
【0085】
上述の実施形態では、2つの金型の使用について言及したが、金型の数は2つに限定されるものではない。上述の実施形態によれば、射出成形を行いながら複数の金型を入れ替えることが可能となる。
【0086】
上述の実施形態では、金型が成形動作位置11にある状態での型締め、射出/保圧、型開き、および取り出しの実行について説明したが、これに限定されるものではない。必ずしも全ての処理を成形動作位置11で行う必要はない。一部の処理を成形動作位置11とは異なる位置で行ってもよい。例えば、金型の冷却処理後、成形動作位置11とは異なる射出成形機2の所定位置に金型を搬送する。この所定位置で成形品を取り出すことができる。次いで、金型を所定位置から成形動作位置11に搬送することができる。
【0087】
上述の実施形態では、金型が搬送装置3Aまたは3B上にあり、射出成形機2外にある状態で冷却処理が行われると説明したが、これに限定されるものではない。金型が固定プラテン61および可動プラテン62に接触しない位置で冷却処理を行ってもよい。例えば、金型の一部が射出成形機2内にあり、金型の別の一部が射出成形機外にある状態で冷却処理を行ってもよい。搬送装置3Aまたは3Bの一部が射出成形機2内に位置する構成を用いる場合には、金型の一部が射出成形機2内にあり、金型の別の一部が搬送装置3Aまたは3Bのいずれか一方の上にある状態で冷却処理を行うことができる。
【0088】
定義
説明においては、開示する実施例が完全に理解されるように、具体的な詳細を記載している。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および回路については、本開示を不要に長くすることを避けるために、詳細には説明していない。
【0089】
本明細書では、ある要素または部分が、別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」と言及される場合、それは、直接にその別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」こともあるし、あるいは介在する要素または部分が存在することもあることを理解されたい。これに対して、ある要素が、別の要素または部分「の上に直接にある」、「に直接に接続されている」、または「に直接に結合されている」と言及される場合には、介在する要素または部分は存在しない。「および/または」という用語を用いるときには、関連して列挙されている項目があれば、そのうちの1つまたは複数のあらゆる組合せを含む。
【0090】
本明細書では、「の下(under)」、「の真下(beneath)」、「の下方(below)」、「の下側(lower)」、「の上方(above)」、「の上側(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」等の空間的に相対的な用語を、様々な図面に示すある要素または特徴の別の(1つまたは複数の)要素または特徴に対する関係を記述する際に、説明を容易にするために用いることがある。しかし、これらの空間的に相対的な用語は、図面に示す配向に加えて、使用時または動作時における装置の様々な配向をも包含することを意図するものと理解されたい。例えば、図中の装置を反転した場合には、別の要素または特徴の「下方(below)」または「真下(beneath)」と記述された要素が、それらの別の要素または特徴の「上方(above)」に配向されることになる。したがって、「の下方(below)」等の相対的な空間用語は、上および下の両方の配向を包含することができる。装置は、その他の配向にすることもでき(90度またはその他の配向に回転させることもでき)、本明細書で用いる空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈されるものとする。同様に、「近位(proximal)」および「遠位(distal)」という相対的な空間用語も、適用可能な場合には、入れ換えることができることもある。
【0091】
本明細書で用いる「約」という用語は、例えば、10%以内、5%以内、またはそれ未満を意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することもある。
【0092】
本明細書では、第1、第2、第3等の用語を、様々な要素、構成要素、領域、部分、および/または区画を説明するために用いることがある。これらの要素、構成要素、領域、部分、および/または区画は、これらの用語によって限定されないものと理解されたい。これらの用語は、単にある要素、構成要素、領域、部分、または区画を、別の領域、部分、または区画と区別するために用いているに過ぎない。したがって、以下に論じる第1の要素、構成要素、領域、部分、または区画は、本明細書の教示を逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、部分、または区画と呼ぶこともできる。
【0093】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することは意図していない。本開示を説明する文脈における(中でも、添付の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a,an)」および「前記/その(the)」という用語ならびに類似の指示語の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈されるものとする。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の言及がない限り、非限定用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるものとする。具体的には、本明細書でこれらの用語を用いるとき、記載する特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを指定するが、明示的には述べられていない1つまたは複数のその他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループが存在すること、あるいは追加されることを排除するものではない。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲に該当する各別個の値について個々に言及する簡略表記法として機能するよう意図するものに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書においては個々に記載されたかのごとく本明細書に組み込まれる。例えば、10~15の範囲を開示する場合には、11、12、13および14もまた開示される。本明細書に記載する全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提示するあらゆる例または例示的な言葉(例えば「等の(such as)」)の使用は、単に本開示をより明確にすることを意図するものに過ぎず、別段に特許請求の範囲に記載がない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、特許請求の範囲に記載のない任意の要素が、本開示の実施に必須であることを示すものではないと解釈されたい。
【0094】
本開示の方法および構成は、様々な実施形態の形で組み込むことができ、そのほんの一部が本明細書に開示されているに過ぎないことを理解されたい。それらの実施形態の変形形態は、上述の説明を読めば、当業者には明白であろう。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を必要に応じて採用するものと想定しており、また、本開示が、本明細書に具体的に記載されたものとは別様に実施されることを意図している。したがって、本開示は、適用法により許容されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正形態および均等物を含む。さらに、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせが、本開示に包含される。
【0095】
上記に開示される例示的実施形態のいかなる組み合わせも、本開示の実施形態として含まれる。上記の例示的実施形態は説明のための実施形態について論じるが、これらの実施形態に限定されるものではない。
【国際調査報告】