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特表2022-533978製造方法、射出成形システムおよび金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】製造方法、射出成形システムおよび金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/10 20060101AFI20220720BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B29C45/10
B29C45/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568655
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2020032733
(87)【国際公開番号】W WO2020236489
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/849,661
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB21
4F202CC04
4F202CK12
4F202CK42
4F202CK52
4F202CK90
4F202CL09
4F202CL40
4F206JA07
4F206JC01
4F206JC09
4F206JL02
4F206JM02
4F206JM06
4F206JM16
4F206JN33
4F206JQ81
4F206JQ83
(57)【要約】
複数の金型を交換しながら射出成形機により成形品を製造する方法であって、中間金型を含むスタック金型を前記射出成形機内の成形動作位置に搬送することであって、前記中間金型がキャビティへ樹脂を送る第1の開口部を閉鎖するための第1のユニットおよび前記中間金型に隣接する隣の金型から前記樹脂を受ける第2の開口部を閉鎖するための第2のユニットを含み、前記隣の金型が前記樹脂を受ける第3の開口部を閉鎖するための第3のユニットを含むことと、前記金型内に前記樹脂を射出することと、前記第1のユニット、第2のユニット、および第3のユニットにより前記の開口部を閉鎖することと、前記金型内への前記樹脂の射出後に、前記成形動作位置から前記金型を搬出することであって、前記第1、第2および第3の開口部がこの順に閉鎖されることと、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金型を交換しながら射出成形機により成形品を製造する方法であって、
中間金型を含むスタック金型を前記射出成形機内に位置する成形動作位置に搬送することであって、前記中間金型がキャビティへ樹脂を送る第1の開口部を閉鎖するための第1のユニットおよび前記中間金型に隣接する隣の金型から前記樹脂を受ける第2の開口部を閉鎖するための第2のユニットを含み、前記隣の金型が前記射出成形機のノズルから前記樹脂を受ける第3の開口部を閉鎖するための第3のユニットを含むことと、
前記スタック金型内に前記樹脂を射出することと、
前記第1のユニットにより前記第1の開口部を閉鎖し、前記第2のユニットにより前記第2の開口部を閉鎖し、前記第3のユニットにより前記第3の開口部を閉鎖することと、
前記スタック金型内への前記樹脂の射出後に、前記成形動作位置から前記スタック金型を搬出することであって、前記第1の開口部、前記第2の開口部、および前記第3の開口部がこの順に閉鎖されることと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のユニットの閉鎖処理、前記第2のユニットの閉鎖処理、および前記第3のユニットの閉鎖処理がこの順に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のユニット、前記第2のユニット、および前記第3のユニットが、前記成形動作位置から移動された前記金型が冷却されている間に、それぞれ前記第1の開口部、前記第2の開口部、および前記第3の開口部を開放する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
射出成形システムであって、
射出成形機と、
中間金型を含むスタック金型を前記射出成形機内に位置する成形動作位置に搬送するように構成される搬送装置であって、前記中間金型がキャビティへ樹脂を送る第1の開口部を閉鎖するための第1のユニットおよび前記中間金型に隣接する隣の金型から前記樹脂を受ける第2の開口部を閉鎖するための第2のユニットを含み、前記隣の金型が前記射出成形機のノズルから前記樹脂を受ける第3の開口部を閉鎖するための第3のユニットを含む搬送装置と、
制御装置であって、前記スタック金型への樹脂の射出を制御し、前記第1の開口部、前記第2の開口部、および前記第3の開口部をそれぞれ前記第1のユニット、前記第2のユニット、および前記第3のユニットにより閉鎖し、前記スタック金型を前記成形動作位置から移動させる制御装置と、
を備える射出成形システム。
【請求項5】
前記制御装置が、前記第1の開口部の閉鎖、前記第2の開口部の閉鎖、および前記第3の開口部の閉鎖をこの順にさらに制御する、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記第1のユニットの閉鎖処理、前記第2のユニットの閉鎖処理、および前記第3のユニットの閉鎖処理がこの順に開始するようにさらに制御する、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項7】
前記搬送装置が、前記成形動作位置から移動された前記金型が冷却されている間に、前記第1のユニット、前記第2のユニット、および前記第3のユニットがそれぞれ前記第1の開口部、前記第2の開口部、および前記第3の開口部を開放するようにさらに制御する、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項8】
射出成形システム内で用いられる金型であって、前記射出成形システムは、射出成形機と、前記金型を前記射出成形機内の成形動作位置に搬送するように構成される搬送装置とを含み、
第1の金型と、
第2の金型と、
前記第1の金型と前記第2の金型との間に位置する中間金型と、
キャビティに樹脂を射出するための開口部を閉鎖するように構成される第1のユニットと、
前記第1の金型または前記第2の金型から前記樹脂を受けるための開口部を閉鎖するように構成される第2のユニットと、
前記射出成形機のノズルから前記樹脂を受けるための開口部を閉鎖するように構成される第3のユニットと、
を備える金型。
【請求項9】
射出成形用の金型であって、
射出成形機の固定プラテンに固定されるように構成される固定部と、
前記射出成形機の可動プラテンに固定されるように構成される可動部と、
前記固定部と前記可動部との間に位置する中間部と、
前記射出成形機のノズルから射出された材料を受ける前記固定部の第3の開口部を閉鎖するための第3の機構と、前記第3の開口部からの前記材料を前記中間部に送る第2の開口部を閉鎖するための第2の機構と、前記第2の開口部からの前記材料を前記金型のキャビティに送る第1の開口部を閉鎖するための第1の機構とを含む遮断機構であって、材料が前記キャビティに射出された状態において、前記第1の機構による前記第1の開口部の閉鎖、前記第2の機構による前記第2の開口部の閉鎖、および前記第3の機構による前記第3の開口部の閉鎖をこの順に行うように構成される遮断機構と、
を備える金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年5月17日に出願された、米国仮出願第62/849661号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0003】
射出成形機による成形品の製造は、型締め後に樹脂を金型に充填する射出工程、樹脂の固化による体積減少を補うために樹脂を金型に高圧で押し込む保圧工程、樹脂が固化するまで金型内に成形品を保持する冷却工程、および成形品を金型から取り出す取り出し工程が繰り返し行われる。
【0004】
上述の成形方法において、生産性を高めるために、1台の射出成形機に対して、2つの金型を用いる方法が提案されている。例えば、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号では、射出成形機2の両側に、搬送装置3Aおよび3Bを配置するシステムが論じられている。このシステムでは、1台の射出成形機2に対して、搬送装置3Aおよび3Bによって複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する。図1は、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号の射出成形システムを示す。
【0005】
このシステムでは、金型100の冷却を射出成形機2外の搬送装置3Aまたは3B上で行う。一方の金型の冷却中に、他方の金型に対して、成形品の取り出し→型締め→射出/保圧といった各処理を射出成形機2によって行う。型開きおよび成形品の取り出しを射出成形機2で行うため、搬送装置3Aおよび3Bには、型開き機能および成形品の取り出し機能は不要である。
【0006】
これは、1台の射出成形機2により複数の金型を入れ替えながら成形品Pを製造することを可能にする。これにより、システム全体のコストを低減することができる。
【0007】
一方の金型の冷却に要する時間に、金型交換工程の開始から、他方の金型の取り出し工程、射出工程、保圧工程までと、再度の金型交換工程の完了までの全工程に要する時間が収まれば、生産性が通常の成形に比べて最大2倍に向上する。すなわち、コストアップの抑制に加えて、高い生産性を実現できるメリットがある。
【0008】
1回の射出成形動作で比較的薄い複数のプラスチック成形品を製造する方法として、スタック成形技術が知られている。この技術では、通常、金型は3つの部分に分けられる。中間金型内のホットランナーとノズルからの樹脂経路とが、中間金型内で複数の経路に分岐する。また、中間金型内の樹脂漏れを防止するバルブが設けられる。
【0009】
複数の金型を交換(入れ替え)しながら、スタック成形を行う機能が必要となる。
【発明の概要】
【0010】
複数の金型を交換しながら射出成形機により成形品を製造する方法であって、中間金型を含むスタック金型を前記射出成形機内に位置する成形動作位置に搬送することであって、前記中間金型がキャビティへ樹脂を送る第1の開口部を閉鎖するための第1のユニットおよび前記中間金型に隣接する隣の金型から前記樹脂を受ける第2の開口部を閉鎖するための第2のユニットを含み、前記隣の金型が前記射出成形機のノズルから前記樹脂を受ける第3の開口部を閉鎖するための第3のユニットを含むことと、前記スタック金型内に前記樹脂を射出することと、前記第1のユニットにより前記第1の開口部を閉鎖し、前記第2のユニットにより前記第2の開口部を閉鎖し、前記第3のユニットにより前記第3の開口部を閉鎖することと、前記スタック金型内への前記樹脂の射出後に、前記成形動作位置から前記スタック金型を搬出することであって、前記第1の開口部、前記第2の開口部、および前記第3の開口部がこの順に閉鎖されることと、を含む方法。
【0011】
本開示のこれらの実施形態、特徴および利点、ならびにその他の実施形態、特徴および利点は、以下の本開示の例示的実施形態の詳細な説明を添付の図面および提供する特許請求の範囲と併せ読めば、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、射出成形システムの平面図を示す。
【0013】
図2図2は、金型の型閉じ状態を示す。
【0014】
図3図3は、金型の型開き状態を示す。
【0015】
図4図4は、遮断ユニットの構成を示す。
【0016】
図5図5は、射出成形処理を示す。
【0017】
図面全体を通して、別段の記載がない限り、同一の参照番号および符号は、図示する実施形態の同様の特徴、要素、構成要素、または部分を示すために用いられる。さらに、これから図面を参照して本開示を詳細に説明するが、これは説明のための例示的な実施形態に関連して行われる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲および趣旨を逸脱することなく、説明される例示的な実施形態に対して変更および修正を加えることができることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、いくつかの例示的な実施形態を説明しており、当業者に既知の詳細については、特許、特許出願、および他の参考文献に依拠する。したがって、本明細書において、特許、特許出願、または他の参考文献が引用される、または繰り返されるとき、それらは、記載されている提案だけでなくあらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることを理解されたい。
【0019】
図面を参照して、各図中の矢印XおよびYは、互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは、地面に対して垂直(直立)方向を示す。
【0020】
図1は、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号の射出成形システム1を示しており、本明細書では情報/説明の目的のためだけに提供されている。
【0021】
射出成形システム1は、射出成形機2と、搬送装置3Aおよび3Bと、制御装置4とを含む。射出成形システム1は、1台の射出成形機2に対して、搬送装置3Aおよび3Bを用いて、複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する。2つの金型100Aおよび100Bを用いる。
【0022】
金型100A/100Bは、固定金型101と、固定金型101に対して開閉される可動金型102との組である。成形品は、固定金型101と可動金型102との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出することで成形される。固定金型101および可動金型102には、それぞれ取付板101aおよび102aが固定されている。取付板101aおよび102aは、金型100A/100Bを射出成形機の成形動作位置11(型締位置)に固定するために用いられる。
【0023】
金型100A/100Bには、固定金型101と可動金型102との間を閉状態に維持する自己閉鎖部103が設けられている。自己閉鎖部103により、射出成形機2から金型100A/100Bを搬出した後も、金型100A/100Bが開くことを防止することが可能となる。自己閉鎖部103は、磁力を利用して金型100A/100Bを閉状態に維持する。自己閉鎖部103は、固定金型101および可動金型102の対向面に沿って複数の箇所に配置されている。自己閉鎖部103は、固定金型101側の要素と可動金型102側の要素との組み合わせである。通常、金型100Aおよび100Bの1つに対して2組以上の自己閉鎖部103が設けられる。
【0024】
搬送装置3Aは、金型100Aを射出成形機2の成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3Bは、金型100Bを成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3A、射出成形機2、および搬送装置3Bは、この順にX軸方向に並ぶように配置されている。言い換えれば、搬送装置3Aおよび搬送装置3Bは、射出成形機2をX軸方向において挟むように、射出成形機2に対して横方向に配置されている。搬送装置3Aおよび3Bは、互いに対向して配置され、搬送装置3Aは射出成形機2の左右の一側方に、搬送装置3Bは他側方にそれぞれ隣接して配置されている。成形動作位置11は、搬送装置3Aと搬送装置3Bとの間に位置している。搬送装置3Aおよび3Bは、それぞれフレーム30と、搬送ユニット31と、複数のローラ32と、複数のローラ33とを含む。
【0025】
フレーム30は、搬送装置3Aおよび3Bの骨格であり、搬送ユニット31と、複数のローラ32および33とを支持する。搬送ユニット31は、金型100A/100BをX軸方向に往復移動させ、成形動作位置11に対して金型100A/100Bを排出および挿入する装置である。
【0026】
搬送ユニット31は、モータを駆動源とした電動シリンダであり、シリンダに対して進退するロッドを含む。シリンダはフレーム30に固定され、ロッドの端部には固定金型101が固定されている。搬送ユニット31は、流体アクチュエータ、電動アクチュエータのいずれも使用可能であるが、電動アクチュエータにより、金型100A/100Bの搬送時に、その位置や速度の制御精度の向上を図ることができる。流体アクチュエータとしては、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダを挙げることができる。電動アクチュエータとしては、電動シリンダに加えて、モータを駆動源としたラックアンドピニオン機構、モータを駆動源としたボールねじ機構等を挙げることができる。
【0027】
搬送ユニット31は、搬送装置3Aと3Bのそれぞれに独立して配置されている。しかし、金型100Aおよび100Bを支持する共通の支持部材を用い、この支持部材に対して単一の共通の搬送ユニット31を配置してもよい。搬送ユニット31を搬送装置3Aと3Bのそれぞれに独立して配置した場合は、金型100Aと金型100Bとで搬送時の移動ストロークが異なる場合に対応することが可能となる。例えば、金型の幅(X方向の幅)が異なっていたり、金型の厚み(Y方向の幅)が異なっていたりして、金型を同時に搬送できない場合である。
【0028】
複数のローラ32は、X軸方向に配列されたローラ列を構成しており、Y軸方向に離間して2列構成されている。複数のローラ32は、Z軸方向の回転軸を中心に回転し、金型100A/100Bの側面(取付板101aおよび102aの側面)に接触して、金型100A/100Bを横から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動をガイドする。複数のローラ33は、X軸方向に配列されたローラ列を構成しており、Y軸方向に離間して2列構成されている。複数のローラ33は、Y軸方向の回転軸を中心に回転し、金型100A/100Bの底面(取付板101aおよび102aの底面)を支持して、金型100A/100Bを下から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動を円滑にする。
【0029】
制御装置4は、射出成形機2を制御するためのコントローラ41と、搬送装置3Aを制御するためのコントローラ42Aと、搬送装置3Bを制御するためのコントローラ42Bとを含む。各コントローラ41、42A、42Bは、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置と、センサやアクチュエータに接続されるインタフェース(図示せず)とを含む。プロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行する。コントローラ41が実行するプログラム(制御)の一例は後述する。コントローラ41は、コントローラ42Aおよび42Bと通信可能に接続され、コントローラ42Aおよび42Bに金型100A/100Bの搬送に関する指示を行う。コントローラ42Aおよび42Bは、金型100A/100Bの搬入や搬出が終了した場合に、動作完了の信号をコントローラ41に送信する。さらに、コントローラ42Aおよび42Bは、異常発生時に非常停止信号をコントローラ41に送信する。
【0030】
射出成形機2、搬送装置Aおよび搬送装置Bのそれぞれには、コントローラが配置されているが、1つのコントローラで3台全ての装置を制御してもよい。より確実に協調的に動作させるために、搬送装置Aと搬送装置Bとを単一のコントローラで制御してもよい。
【0031】
射出シリンダ51は、駆動部54に支持されている。駆動部54には、スクリュ51aを回転駆動させて樹脂の可塑化と計量を行うモータと、スクリュ51aを軸方向に進退させる駆動モータとが配置されている。駆動部54は、フレーム10上のレール12に沿ってY軸方向に進退可能である。また、駆動部54には、射出装置5をY軸方向に進退させるアクチュエータ(例えば電動シリンダ)55が配置されている。
【0032】
型締装置6は、金型100A/100Bの型締めおよび型開閉を行う。型締装置6には、Y軸方向に順に、固定プラテン61、可動プラテン62、可動プラテン63が配置されている。プラテン61~63には、複数のタイバー64が通過している。各タイバー64は、Y軸方向に延びる軸であり、その一端部が固定プラテン61に固定されている。各タイバー64は、可動プラテン62に形成された各貫通穴に挿入されている。各タイバー64の他端部は、調整機構67を介して可動プラテン63に固定されている。可動プラテン62および63は、フレーム10上のレール13に沿ってY軸方向に移動可能であり、固定プラテン61は、フレーム10に固定されている。
【0033】
可動プラテン62と可動プラテン63との間には、トグル機構65が配置されている。トグル機構65は、可動プラテン63に対して(言い換えれば、固定プラテン61に対して)、可動プラテン62をY軸方向に進退させる。トグル機構65は、リンク65a~65cを含む。リンク65aは、可動プラテン62に回転自在に連結されている。リンク65bは、可動プラテン63に回動自在に連結されている。リンク65aとリンク65bとは、互いに回動自在に連結されている。リンク65cとリンク65bとは、互いに回動自在に連結されている。リンク65cは、アーム66cに回動自在に連結されている。
【0034】
アーム66cは、ボールナット66bに固定されている。ボールナット66bは、Y軸方向に延びるボールねじ軸66aに係合し、ボールねじ軸66aの回転によりY軸方向に進退する。ボールねじ軸66aは、可動プラテン63によって回転自在となるように支持されており、モータ66は、可動プラテン63に支持されている。モータ66は、モータ66の回転量を検出しながら、ボールねじ軸66aを回転駆動する。モータ66の回転量を検出しながらモータ66を駆動することにより、金型100A/100Bの型締めおよび型開閉を行うことが可能となる。
【0035】
射出成形機2は、型締力を計測するためのセンサ68を含み、各センサ68は、例えばタイバー64に設けられた歪みゲージであり、タイバー64の歪みを検出することで型締力を算出する。
【0036】
調整機構67は、可動プラテン63に回転自在に支持されたナット67bと、駆動源であるモータ67aと、モータ67aの駆動力をナット67bに伝達する伝達機構とを含む。各タイバー64は、可動プラテン63に形成された穴を通過して、ナット67bと係合している。ナット67bを回転させることにより、ナット67bとタイバー64との間のY軸方向の係合位置が変化する。すなわち、タイバー64に対する可動プラテン63の固定位置が変化する。これにより、可動プラテン63と固定プラテン61との間の間隔を変化させることができるため、型締力等を調整することができる。
【0037】
成形動作位置11は、固定プラテン61と可動プラテン62との間の領域である。
【0038】
成形動作位置11に導入された金型100A/100Bは、固定プラテン61と可動プラテン62との間に挟まれ、それによって型締めされる。可動プラテン62の移動により、可動金型102の移動に基づく開閉が行われる。
【0039】
固定プラテン61の中央部には開口部61aがあり、ノズル52がこの開口部を通って進退する。固定プラテン61の可動プラテン62側の面(内面という)には、複数のローラBRが回転自在となるように支持されている。複数のローラBRは、回転軸を中心としてY軸方向に回転し、金型100A/100Bの底面(取付板101aの底面)を支持して、金型100A/100Bを下から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動を円滑にする。
【0040】
図2および図3は、例示的な実施形態における金型100A/100Bを示す。図2は金型100A/100Bの型閉じ状態を示し、図3は金型100A/100Bの型開き状態を示す。
【0041】
固定金型101には、射出成形機2のノズル52から樹脂を受け、スタック金型100内に樹脂を送るための開口部110が形成されている。射出された樹脂は、固定金型101および中間金型104内の経路を通って流れ、4つのキャビティに達する。壁152は経路を形成し、この経路は固定金型101から中間金型104およびキャビティまで延びている。
【0042】
固定金型101と中間金型104の両方には、開口部111が形成されている。固定金型101の側面の開口部111は、開口部110から開口部111に至る固定金型101内の流路に接続されている。中間金型104の開口部111は、開口部111から延び、各開口部112に分岐する中間金型104内の流路に接続されている。中間金型104内のこの流路は、壁152により画定される。
【0043】
固定金型101の側面の開口部111と中間金型104の側面の開口部111とが互いに嵌合して、固定金型101から中間金型104に至る流路を形成する。
【0044】
開口部111は、ノズル52から射出し、固定金型101の開口部110で受けた樹脂を受け、中間金型104の内部領域に樹脂を送る。
【0045】
中間金型104、可動金型102および固定金型101には、開口部112が形成されている。中間金型104の側面の開口部112と可動金型102の側面の開口部111とが互いに嵌合して、中間金型104から可動金型102内のキャビティに至る流路を形成する。中間金型104の側面の開口部112と固定金型101の側面の開口部111とが互いに嵌合して、中間金型104から固定金型101内のキャビティに至る流路を形成する。
【0046】
開口部112は、ノズル52から射出し、開口部110を経由して送り、開口部111で受けた樹脂を受け、スタック金型100のキャビティに樹脂を送る。キャビティに射出された樹脂は冷却されることで成形品Pとなる。経路の中央には、複数の遮断ユニットが配置されている。これらの遮断ユニットを、遮断機構と総称することができる。
【0047】
遮断ユニット105は、開口部112をキャビティに対して開閉することができる。遮断ユニット106、107は、固定金型101と中間金型104との間の開口部111を開閉することができる。遮断ユニット108は、開口部110を開閉することができる。
【0048】
図3は、金型100A/100Bの型開き状態を示す。樹脂の射出後、全ての遮断ユニット105、106、107、108は、それぞれの開口部を閉鎖する。次いで、金型100A/100Bを型開きする。
【0049】
図4は、各遮断ユニット105、106、107、108の構成を示す。図4の開閉機構56は、開口部52aを開閉するピン56aを含む。ピン56aは、リンク56bを介してアクチュエータ(シリンダ)56cに接続されている。アクチュエータ56cの動作により、開口部52aが開閉する。アクチュエータ56cは、金型100A/100Bに接続されたケーブルを介して駆動する。コントローラ40は、アクチュエータ56cを制御する。キャビティへの樹脂の射出後に、コントローラ40は、アクチュエータ56cを制御して開口部110、111、112を閉鎖する。
【0050】
図5は、本例示的実施形態における射出成形処理を示す。射出成形機2内に搬送される金型100A/100Bに対して射出成形処理を行う。図5のフローチャートに基づく制御は、ROMに格納されたプログラムに基づいて、制御装置4に含まれるCPUによって実行される。
【0051】
S1では、金型を交換(入れ替え)する。S2では、型締装置6を駆動して、射出成形機2内に搬送された金型100A/100Bを型開きする。S3では、型開きされた金型100A/100Bから成形品を取り出す。S4では、固定プラテン61と可動プラテン62との間の距離が縮まるように型締め装置6を再度駆動し、金型100A/100Bを型閉じする。
【0052】
S5では、型閉じされた金型100A/100Bに樹脂を射出する。S6では、コントローラ41は、遮断ユニット105、106、107、108に対応するアクチュエータ56cを駆動して、開口部112、111、110をこの順に閉鎖する。これにより、成形品Pに加わる圧力が及ぼす影響を防止することができる。
【0053】
開口部112、111、110が完全に閉鎖した後、コントローラ41は、コントローラ42Aおよびコントローラ42Bに金型100Aおよび100Bの搬送指示を送信する。これにより、成形品Pに加わる圧力が、ホットランナー(図示せず)や射出成形機2に漏れることを防止することができる。これにより、成形品Pの品質を向上させることができ、開口部112、111、110が異なる順で閉鎖されることに起因する樹脂の糸引き問題を抑制することができる。
【0054】
この樹脂の糸引き問題は、開口部112、111、110からの樹脂漏れによって生じる。例えば、開口部110から樹脂が漏れる場合には、ノズル52と固定金型101との間に長い糸状の樹脂が形成される。ノズル52の移動に基づいて、この長い糸状の樹脂が射出成形機2の周囲に付着し、それにより、長い糸状樹脂の除去にかかる労力と時間が増大するおそれがある。
【0055】
例えば、開口部112、110、111をこの順に閉鎖する場合には、ホットランナー内に圧力が残留するため、次の射出成形動作時に樹脂が漏れ出る可能性がある。開口部111、112、110をこの順に閉鎖する場合には、射出成形機2によって加えられた圧力が開口部111で低減し、成形品Pに所望の圧力を加えることができなくなる。
【0056】
中間金型104には開口部111が形成され、固定金型101には開口部111が形成されている。これらの開口部111を閉鎖するために、中間金型104に遮断ユニット106を設け、固定金型107に遮断ユニット107を設ける。遮断ユニット106および遮断ユニット107は、任意の順で、または同じタイミングで閉鎖することができる。なお、遮断ユニット106の閉鎖タイミングと遮断ユニット107の閉鎖タイミングとのうち、いずれか早い方のタイミングが、開口部112の閉鎖タイミングと開口部110の閉鎖タイミングとの間であることが好ましい。別の例示的な実施形態によれば、金型は、遮断ユニット106および遮断ユニット107のうちの一方のみを有していてもよい。
【0057】
別の例示的な実施形態では、遮断ユニット105、106、107、108は、図4に示すものと同じ機構であってもよい。さらに別の例示的な実施形態では、開口部52aの閉鎖を異なる方法で実行することができる。
【0058】
上述の実施形態では、固定金型101と可動金型102の両方に金型100A/100Bのキャビティが存在する。別の例示的な実施形態によれば、金型の可動部および固定部のうちの一方のみにキャビティが形成される。
【0059】
上述の実施形態では、遮断ピン105、106、107、108を固定金型101、可動金型102および中間金型104の端面の開口部110、111、112に水平に挿入して流路を遮断している。別の例示的な実施形態によれば、金型の端面からずれた位置で、金型内の流路に遮断機構を垂直または斜めに挿入することで、遮断機構が金型内の流路を遮断する。
【0060】
遮断ユニットは、様々な異なる構成を採用することができ、上述の特定の構成に限定されるものではない。
【0061】
上述の実施形態では、遮断機構のピンはテーパ状の遠位端部を有し、開口部に接続する流路内にテーパ状の遠位端部を挿入して、流路を遮断する。ピンの挿入は、必ずしも材料の流れを完全に遮断する必要はない。流路と流路内に挿入されたピンとの間には、例えば、ピンや流路の製造上のばらつきにより、隙間が存在し得る。言い換えれば、ピンは、材料漏れの問題(または糸引き問題)を低減または実質的に解消するように流路内の材料の流れを阻害するだけでよい。
【0062】
上述したように、本実施形態では、射出成形機2は金型により射出成形を行い、遮断ユニット105、106、107、108の閉鎖動作を上述の順で行う。次いで、搬送装置3Aまたは3Bに金型を移動して冷却する。
【0063】
上述の実施形態によれば、型開き時の樹脂漏れや糸引き問題を抑制することができる。
【0064】
上述の実施形態によれば、複数の金型を交換(入れ替え)しながらスタック成形を行うように、開口部110の閉鎖後に金型を移動させる。開口部の閉鎖順序を制御することで、成形品Pの品質が良好となり、糸引き問題が抑制される。
【0065】
説明においては、開示する実施例が完全に理解されるように、具体的な詳細を記載している。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および回路については、本開示を不要に長くすることを避けるために、詳細には説明していない。
【0066】
本明細書では、ある要素または部分が、別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」と言及される場合、それは、直接にその別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」こともあるし、あるいは介在する要素または部分が存在することもあることを理解されたい。これに対して、ある要素が、別の要素または部分「の上に直接にある」、「に直接に接続されている」、または「に直接に結合されている」と言及される場合には、介在する要素または部分は存在しない。「および/または」という用語を用いるときには、関連して列挙されている項目があれば、そのうちの1つまたは複数のあらゆる組合せを含む。
【0067】
本明細書では、「の下(under)」、「の真下(beneath)」、「の下方(below)」、「の下側(lower)」、「の上方(above)」、「の上側(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」等の空間的に相対的な用語を、様々な図面に示すある要素または特徴の別の(1つまたは複数の)要素または特徴に対する関係を記述する際に、説明を容易にするために用いることがある。しかし、これらの空間的に相対的な用語は、図面に示す配向に加えて、使用時または動作時における装置の様々な配向をも包含することを意図するものと理解されたい。例えば、図中の装置を反転した場合には、別の要素または特徴の「下方(below)」または「真下(beneath)」と記述された要素が、それらの別の要素または特徴の「上方(above)」に配向されることになる。したがって、「の下方(below)」等の相対的な空間用語は、上および下の両方の配向を包含することができる。装置は、その他の配向にすることもでき(90度またはその他の配向に回転させることもでき)、本明細書で用いる空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈されるものとする。同様に、「近位(proximal)」および「遠位(distal)」という相対的な空間用語も、適用可能な場合には、入れ換えることができることもある。
【0068】
本明細書で用いる「約」という用語は、例えば、10%以内、5%以内、またはそれ未満を意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することもある。
【0069】
本明細書では、第1、第2、第3等の用語を、様々な要素、構成要素、領域、部分、および/または区画を説明するために用いることがある。これらの要素、構成要素、領域、部分、および/または区画は、これらの用語によって限定されないものと理解されたい。これらの用語は、単にある要素、構成要素、領域、部分、または区画を、別の領域、部分、または区画と区別するために用いているに過ぎない。したがって、以下に論じる第1の要素、構成要素、領域、部分、または区画は、本明細書の教示を逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、部分、または区画と呼ぶこともできる。
【0070】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することは意図していない。本開示を説明する文脈における(中でも、添付の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a,an)」および「前記/その(the)」という用語ならびに類似の指示語の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈されるものとする。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の言及がない限り、非限定用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるものとする。具体的には、本明細書でこれらの用語を用いるとき、記載する特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを指定するが、明示的には述べられていない1つまたは複数のその他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループが存在すること、あるいは追加されることを排除するものではない。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲に該当する各別個の値について個々に言及する簡略表記法として機能するよう意図するものに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書においては個々に記載されたかのごとく本明細書に組み込まれる。例えば、10~15の範囲を開示する場合には、11、12、13および14もまた開示される。本明細書に記載する全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提示するあらゆる例または例示的な言葉(例えば「等の(such as)」)の使用は、単に本開示をより明確にすることを意図するものに過ぎず、別段に特許請求の範囲に記載がない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、特許請求の範囲に記載のない任意の要素が、本開示の実施に必須であることを示すものではないと解釈されたい。
【0071】
本開示の方法および構成は、様々な実施形態の形で組み込むことができ、そのほんの一部が本明細書に開示されているに過ぎないことを理解されたい。それらの実施形態の変形形態は、上述の説明を読めば、当業者には明白であろう。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を必要に応じて採用するものと想定しており、また、本開示が、本明細書に具体的に記載されたものとは別様に実施されることを意図している。したがって、本開示は、適用法により許容されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正形態および均等物を含む。さらに、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせが、本開示に包含される。
【0072】
上記に開示される例示的実施形態のいかなる組み合わせも、本開示の実施形態として含まれる。上記の例示的実施形態は説明のための実施形態について論じるが、これらの実施形態に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】