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特表2022-534006補償システムおよび分析物バイオセンサ内のサーミスタ感知の方法
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  • 特表-補償システムおよび分析物バイオセンサ内のサーミスタ感知の方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】補償システムおよび分析物バイオセンサ内のサーミスタ感知の方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20220720BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220720BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20220720BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01N27/26 371B
G01N27/416 338
G01N27/28 R
G01N33/66 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569139
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 IB2020054643
(87)【国際公開番号】W WO2020234728
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/850,841
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043328
【氏名又は名称】アセンシア・ディアベティス・ケア・ホールディングス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン,バーン エバレット
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA31
2G045JA01
2G045JA02
2G045JA07
(57)【要約】
分析物濃度推定アルゴリズムに入力する温度を選択する分析物濃度センサシステムを開示する。分析物濃度推定アルゴリズムは、テストセンサ中のサンプルを分析する分析物メータによって実行される。サーミスタベースの温度センサは、温度を測定するように構成されている。温度推定アルゴリズムを介して推定温度が得られる。推定温度と測定温度との差異が決定される。推定温度、測定温度、および推定温度と測定温度との差異の絶対値に基づいて、推定温度と測定温度のうちの一方が選択される。さらに推定温度、測定温度、および推定温度と測定温度との差異の絶対値に基づいて、テストセンサの故障が決定され得る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの体液サンプルの分析物を測定する分析物濃度センサシステムであって、
前記体液サンプルを保持するテストセンサに接続するように動作可能なバイオセンサインターフェースと、
温度を測定するように構成されたサーミスタベースの温度センサと、
前記バイオセンサインターフェースと前記温度センサとに連結されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記バイオセンサインターフェースへの入力信号を生成し、
前記バイオセンサインターフェースからの出力信号を読み取り、
前記温度センサからの測定温度を決定し、
温度推定アルゴリズムを実行することにより推定温度を決定し、
前記推定温度と前記測定温度との差異の絶対値を決定し、
前記推定温度、前記測定温度、および前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値に基づいて、前記推定温度と前記測定温度のうちの一方を選択する、
ように動作可能である、分析物濃度センサシステム。
【請求項2】
前記分析物はグルコースであり、前記体液サンプルは血液である、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記入力信号はゲート化電流測定パルスである、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記温度推定アルゴリズムは重回帰分析によって決定された入力変数を含む、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記推定温度と前記測定温度とが室温範囲内である場合、前記測定温度が選択される、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記室温範囲は、25℃と30℃との間の高温および13℃と20℃との間の低温を含む、請求項5に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記測定温度は室温範囲外であるが前記推定温度は前記室温範囲の調整済み高温よりも低く且つ前記室温範囲の調整済み低温よりも高く、前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値が平衡化閾値よりも大きい場合、前記推定温度が選択される、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記室温範囲は、25℃と30℃との間の高温および13℃と20℃との間の低温を含み、前記調整済み高温は27℃と34℃との間であり、前記調整済み低温は11℃と18℃との間であり、前記平衡化閾値は3℃と10℃との間である、請求項7に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値が最大許容温度補償値よりも大きい場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告するように動作する、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記測定温度と前記推定温度とが互いに反対方向に室温範囲からはみ出している場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告するように動作する、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記測定温度が室温範囲内であり且つ前記推定温度と前記測定温度との前記差異が残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告するように動作する、請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記測定温度と前記推定温度とが前記室温範囲の最高温度よりも高く且つ前記推定温度と前記測定温度との前記差異が極度残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告するように動作する、請求項11に記載のセンサシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記測定温度と前記推定温度とが前記室温範囲の最低温度よりも低く且つ前記測定温度と前記推定温度との前記差異が極度残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告するように動作する、請求項11に記載のセンサシステム。
【請求項14】
前記コントローラはさらに、
分析物濃度決定アルゴリズムへの温度入力として前記選択された推定温度または測定温度を提供し、
前記分析物濃度決定アルゴリズムを実行することにより分析物濃度を決定する、
ように動作する、請求項11に記載のセンサシステム。
【請求項15】
分析物メータ内のサーミスタ温度センサからの温度測定値の適性を決定する方法であって、前記分析物メータは体液サンプルを保持するテストセンサに接続するように動作可能であるバイオセンサインターフェースと、コントローラとを備え、前記方法は、
前記バイオセンサインターフェースが前記体液サンプルを有する前記テストセンサに接続されたときに前記インターフェースへの入力信号を生成することと、
前記テストセンサからの出力信号を決定することと、
サーミスタベースの温度センサからの測定温度を決定することと、
前記コントローラを介して、温度推定アルゴリズムからの推定温度を決定することと、
前記コントローラを介して、前記推定温度と前記測定温度との差異の絶対値を決定することと、
前記推定温度、前記測定温度、および前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値に基づいて、前記推定温度と前記測定温度のうちの一方を前記コントローラを介して選択することと、
を含む方法。
【請求項16】
前記分析物はグルコースであり、前記体液サンプルは血液である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記入力信号はゲート化電流測定パルスである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記温度推定アルゴリズムは重回帰分析によって決定された入力変数を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記推定温度と前記測定温度とが室温範囲内である場合、前記測定温度を選択する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記室温範囲は、25℃と30℃との間の高温および13℃と20℃との間の低温を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記測定温度は室温範囲外であるが前記推定温度は前記室温範囲の調整済み高温よりも低く且つ前記室温範囲の調整済み低温よりも高く、前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値が平衡化閾値よりも大きい場合、前記推定温度を選択する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記室温範囲は、25℃と30℃との間の高温および13℃と20℃との間の低温を含み、前記調整済み高温は27℃と34℃との間であり、前記調整済み低温は11℃と18℃との間であり、前記平衡化閾値は3℃と10℃との間である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値が最大許容温度補償値よりも大きい場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記測定温度と前記推定温度とが互いに反対方向に室温範囲からはみ出している場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記測定温度が室温範囲内であり且つ前記推定温度と前記測定温度との前記差異が残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記測定温度と前記推定温度とが前記室温範囲の最高温度よりも高く且つ前記推定温度と前記測定温度との前記差異が極度残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記測定温度と前記推定温度とが前記室温範囲の最低温度よりも低く且つ前記測定温度と前記推定温度との前記差異が極度残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記テストセンサについてのエラーコードを報告することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
分析物濃度決定アルゴリズムへの温度入力として前記選択された推定温度または測定温度を提供することと、
前記分析物濃度決定アルゴリズムから分析物濃度を決定することと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
ユーザの体液サンプルの分析物を測定する分析物濃度センサシステムであって、
前記体液サンプルを保持するテストセンサに接続するように動作可能なバイオセンサインターフェースと、
温度を測定するように構成されたサーミスタベースの温度センサと、
前記バイオセンサインターフェースと前記温度センサとに連結されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記バイオセンサインターフェースへの入力信号を生成し、
前記バイオセンサインターフェースからの出力信号を読み取り、
前記温度センサからの測定温度を決定し、
温度推定アルゴリズムを実行することにより推定温度を決定し、
前記推定温度と前記測定温度との差異の絶対値を決定し、
前記推定温度、前記測定温度、および前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値に基づいて、前記テストセンサの故障を決定する、
ように動作可能である、分析物濃度センサシステム。
【請求項30】
前記コントローラはさらに、前記推定温度、前記測定温度、および前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値に基づいて、前記推定温度と前記測定温度のうちの一方を選択するように動作可能である、請求項29に記載のセンサシステム。
【請求項31】
前記分析物はグルコースであり、前記体液サンプルは血液である、請求項29に記載のセンサシステム。
【請求項32】
前記入力信号はゲート化電流測定パルスである、請求項29に記載のセンサシステム。
【請求項33】
前記温度推定アルゴリズムは重回帰分析によって決定された入力変数を含む、請求項29に記載のセンサシステム。
【請求項34】
前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値が最大許容温度補償値よりも大きい場合に、前記故障が決定される、請求項29に記載のセンサシステム。
【請求項35】
前記測定温度と前記推定温度とが互いに反対方向に室温範囲からはみ出している場合に、前記故障が決定される、請求項29に記載のセンサシステム。
【請求項36】
前記測定温度が室温範囲内であり且つ前記推定温度と前記測定温度との前記差異が残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記故障が決定される、請求項29に記載のセンサシステム。
【請求項37】
前記測定温度と前記推定温度とが前記室温範囲の最高温度よりも高く且つ前記推定温度と前記測定温度との前記差異が極度残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記故障が決定される、請求項36に記載のセンサシステム。
【請求項38】
前記測定温度と前記推定温度とが前記室温範囲の最低温度よりも低く且つ前記測定温度と前記推定温度との前記差異が極度残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記故障が決定される、請求項36に記載のセンサシステム。
【請求項39】
分析物メータに接続されたテストセンサの不具合を決定する方法であって、前記分析物メータは体液サンプルを保持するテストセンサに接続するように動作可能であるバイオセンサインターフェースと、コントローラとを備え、前記方法は、
前記バイオセンサインターフェースが前記体液サンプルを有する前記テストセンサに接続されたときに前記インターフェースへの入力信号を生成することと、
前記テストセンサからの出力信号を決定することと、
サーミスタベース温度センサからの測定温度を決定することと、
前記コントローラを介して、温度推定アルゴリズムからの推定温度を決定することと、
前記コントローラを介して、前記推定温度と前記測定温度との差異の絶対値を決定することと、
前記推定温度、前記測定温度、および前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値に基づいて、前記テストセンサの故障を決定することと、
を含む方法。
【請求項40】
前記推定温度、前記測定温度、および前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値に基づいて、前記推定温度と前記測定温度のうちの一方を選択することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記分析物はグルコースであり、前記体液サンプルは血液である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記入力信号はゲート化電流測定パルスである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記温度推定アルゴリズムは重回帰分析によって決定された入力変数を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記推定温度と前記測定温度との前記差異の絶対値が最大許容温度補償値よりも大きい場合に、前記故障を決定する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記測定温度と前記推定温度とが互いに反対方向に室温範囲からはみ出している場合に、前記故障を決定する、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記測定温度が室温範囲内であり且つ前記推定温度と前記測定温度との前記差異が残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記故障を決定する、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記測定温度と前記推定温度とが前記室温範囲の最高温度よりも高く且つ前記推定温度と前記測定温度との前記差異が極度残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記故障を決定する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記測定温度と前記推定温度とが前記室温範囲の最低温度よりも低く且つ前記測定温度と前記推定温度との前記差異が極度残存エラー限度閾値よりも大きい場合に、前記故障を決定する、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は2019年5月21日に出願された米国仮特許出願第62/850,841号に基づく優先権を主張しており、その全体を本明細書中に参考のため援用する。
【0002】
本発明は概して分析物の濃度(例えば、血糖値)用のバイオセンサに関し、特に分析物濃度決定のプロセスにおいて推定温度または測定温度のいずれかから温度値を提供する際にテストセンサの故障を検出するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
体液中の分析物の定量的決定は、特定の生理学的状態の診断および維持にとって非常に重要である。例えば、糖尿病の患者(persons with diabetes:PWD)は体液中のグルコース値を頻繁にチェックする。このようなテストの結果を用いて、食事でのグルコースの摂取量を規定したり、および/またはインスリンまたはその他の薬品投与が必要かどうかを決定したりすることができる。PWDは典型的には、PWDからの体液サンプル中のグルコース濃度を計算する測定デバイス(例えば、血糖値計)を用いる。その場合、体液サンプルは測定デバイスが受け取るテストセンサ上に収集される。是正措置をし損なうと、その患者に対して深刻な医学的影響をもたらし得る。
【0004】
PWDの血糖値をモニタする方法として、ポータブルテストデバイスの使用が挙げられる。このようなデバイスはポータブルであるため、ユーザは任意の場所で血糖値を計測することができ便利である。あるタイプのデバイスは、電気化学的テストセンサを用いて血液サンプルを分析する。ユーザはランセットを用いて血液サンプルを得て、それをテストセンサ内のリザーバに入れる。電気化学的テストセンサは典型的には、メータと組み合わせた場合に血液サンプルの反応を電気的に測定する電極を含み、それによって分析物の濃度を決定する。したがって、血液サンプルの分析値を決定するためには、ユーザは専用のメータデバイスを持ち運ばなくてはならない。
【0005】
典型的には、メータがテストセンサの電極に入力信号(例えば、ゲート化電流測定信号)を印加する。従来のテストセンサおよびメータは典型的には、血液サンプルからの測定電流出力とこれらの出力と相関する所定の分析物濃度値との相関関係を決定する、グルコース濃度推定アルゴリズムを用いる。これら所定の値はYSI実験器具などの実験器具によって決定する。
【0006】
いずれの電流測定血糖値モニタリング(BGM)システムのテストセンサで採用されている化学反応も温度の影響を受ける。そのため、測定温度値はこのようなシステムのグルコース推定アルゴリズムに対する重要な入力である。公知のシステムでは、サーミスタベースの温度センサによって温度を測定する。温度センサ用のサーミスタは典型的には、メータ内に配置されている。メータの熱質量のために、サーミスタは周囲温度の変化に即時に対応することができず、よって温度測定値に歪みが起こり得る。BGMメータをある環境から別の環境に移した場合、メータが新しい環境に平衡化されるためには一定の時間が必要であり、その間サーミスタの値は実際の温度を正確に反映しない。ゲート化電流測定メータで採用されている複合的なグルコース推定アルゴリズムでは、様々な補償式の多くの項に温度が含まれている。よって、サーミスタベースの温度値が不正確である場合、誤った結果となり得る。
【0007】
したがって、サーミスタからの温度推定は、メータがその環境にまだ平衡化されていないためにアルゴリズムが誤った温度値を用いるという危険をはらむ。これによりグルコースの測定値が不正確となるおそれがある。平衡化されない環境を解決する一方法は、サーミスタ由来ではない他のパラメータに基づく推定温度を用いることである。しかしこの推定温度を用いた場合、ダメージを受けたセンサが誤った温度推定値を提供してしまうという別の危険がある。したがって、推定温度とサーミスタ温度との差異が大きいということは、メータが平衡化されていないことに加えてセンサがダメージを受けていることを示している可能性がある。センサがダメージを受けている場合、正しい対応はエラーコードを報告することである。しかし、ダメージを受けたセンサが検出されない場合、メータはそのダメージを受けたセンサからの温度測定値を用いてグルコースを計算しようと試み、その結果、グルコースの測定値が不正確となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、サーミスタベースの温度測定のみに依存する非平衡化メータが不正確なグルコースの結果を提供してしまうという危険性に対処する手順が必要である。さらに推定温度と測定温度とを比較してメータが適切に平衡化されているか否かに関する情報を提供するシステムが必要である。さらに、非平衡化が検出された場合でも、温度推定アルゴリズムからの推定温度を用いて分析物濃度を決定することができるシステムが必要である。さらに、推定温度と測定温度とを比較してテストセンサがダメージを受けているか否かに関する情報を提供するシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施例によると、ユーザの体液サンプルの分析物を測定する分析物濃度センサシステムが開示される。センサシステムは、体液サンプルを保持するテストセンサに接続するように動作可能なバイオセンサインターフェースを含む。サーミスタベースの温度センサは温度を測定するように構成されている。コントローラは、バイオセンサインターフェースと温度センサとに連結されている。コントローラは、バイオセンサインターフェースへの入力信号を生成し、バイオセンサインターフェースからの出力信号を読み取るように動作可能である。コントローラは、温度センサからの測定温度を決定する。コントローラは、温度推定アルゴリズムを実行することにより推定温度を決定する。コントローラは、推定温度と測定温度との差異を決定する。コントローラは、推定温度、測定温度、および推定温度と測定温度との差異に基づいて、推定温度と測定温度のうちの一方を選択する。コントローラは、分析物濃度決定アルゴリズムへの温度入力として、選択された推定温度または測定温度を提供する。
【0010】
別の実施例は、分析物メータ内のサーミスタ温度センサからの温度測定値の適性を決定する方法である。分析物メータは体液サンプルを保持するテストセンサに接続するように動作可能なバイオセンサインターフェースと、コントローラとを含む。バイオセンサインターフェースが体液サンプルを有するテストセンサに接続されたときに、インターフェースへの入力信号が生成される。テストセンサからの出力信号が決定される。サーミスタベースの温度センサからの測定温度が決定される。コントローラを介して、温度推定アルゴリズムからの推定温度が決定される。コントローラを介して、推定温度と測定温度との差異が決定される。推定温度、測定温度、および推定温度と測定温度との差異に基づいて、推定温度と測定温度のうちの一方がコントローラを介して選択される。分析物濃度決定アルゴリズムへの温度入力として、選択された推定温度または測定温度が提供される。
【0011】
別の実施例は、ユーザの体液サンプルの分析物を測定する分析物濃度センサシステムである。センサシステムは、体液サンプルを保持するテストセンサに接続するように動作可能なバイオセンサインターフェースを含む。システムは、温度を測定するように構成されたサーミスタベースの温度センサを含む。システムは、バイオセンサインターフェースと温度センサとに連結されたコントローラを含む。コントローラは、バイオセンサインターフェースへの入力信号を生成し、バイオセンサインターフェースからの出力信号を読み取るように動作可能である。コントローラは、温度センサからの測定温度を決定し、温度推定アルゴリズムを実行することにより推定温度を決定するように動作可能である。コントローラは、推定温度と測定温度との差異の絶対値を決定する。コントローラは、推定温度、測定温度、および推定温度と測定温度との差異の絶対値に基づいて、テストセンサの故障を決定する。
【0012】
別の実施例は、分析物メータに接続されたテストセンサの不具合を決定する方法である。分析物メータは、体液サンプルを保持するテストセンサに接続するように動作可能なバイオセンサインターフェースと、コントローラとを含む。インターフェースが体液サンプルを有するテストセンサに接続されたときに、インターフェースへの入力信号が生成される。テストセンサからの出力信号が決定される。サーミスタベースの温度センサからの測定温度が決定される。コントローラを介して、温度推定アルゴリズムからの推定温度が決定される。コントローラを介して、推定温度と測定温度との差異の絶対値が決定される。推定温度、測定温度、および推定温度と測定温度との差異の絶対値に基づいて、テストセンサの故障が決定される。
【0013】
本発明のさらなる局面は、以下に簡単に説明する図面を参照して述べる様々な実施形態の詳細な説明を読むことにより当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、体液サンプルから分析物濃度を決定する、一実施形態によるバイオセンサシステムの一例を示すブロック図である。
【0015】
図2A図2Aは、一実施形態によるルーチンであって、図1のバイオセンサシステムが実行する分析物濃度推定アルゴリズムにおいて用いる温度値を選択するように実行されるルーチンを示すフロー図である。
図2B図2Bは、一実施形態によるルーチンであって、図1のバイオセンサシステムが実行する分析物濃度推定アルゴリズムにおいて用いる温度値を選択するように実行されるルーチンを示すフロー図である。
【0016】
図3図3は、図2Aおよび図2Bのルーチンの応答の状態図であって、測定温度を用いる状態、推定温度を用いる状態、およびエラーメッセージを返す状態を示す状態図である。
【0017】
図4】温度推定アルゴリズムの一例におけるパラメータを示す表である。
【0018】
図5A】温度推定アルゴリズムの出力を、サーミスタベースのセンサが測定した温度と比較して示す要約表である。
【0019】
図5B】サーミスタベースのセンサが測定した温度を用いた分析物濃度推定アルゴリズムの出力の正確度と、メータを平衡化状態において研究を行った場合の、温度推定アルゴリズムの出力の正確度とを示す要約表である。
【0020】
図6】温度推定アルゴリズム用の入力信号シーケンスの一例を示すグラフである。
【0021】
図7A】メータを広範囲の平衡化状態において行ったテストで得た測定温度を用いて分析物濃度推定アルゴリズムを実行した場合の、出力エラーをプロットしたグラフである。
【0022】
図7B】メータを広範囲の平衡化状態において行ったテストで得た推定温度を用いて分析物濃度推定アルゴリズムを実行した場合の、出力エラーをプロットしたグラフである。
【0023】
図8】メータを広範囲の平衡化状態において行ったテストで得た、最終的に選択した温度(推定温度または測定温度)を用いて分析物濃度推定アルゴリズムを実行した場合の、出力エラーをプロットしたグラフである。
【0024】
図9】メータを3つの平衡化状態(低温、高温および平衡化)において行ったテストであって、サーミスタベースのセンサによる測定温度で算出した結果と、テストセンサからの信号を用いたアルゴリズムで推定した温度で算出した結果と、サーミスタ温度と推定温度との差異に基づいた論理によって選択した温度で算出した結果とを比較するテストを行った場合の、分析物濃度推定アルゴリズムの出力の正確度を示す要約表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は様々な改変および変更が可能であるが、特定の実施形態を図面の例で示した。以下、特定の実施形態を詳細に述べる。ただし本発明はここに開示する特定の形態に限定されるものではないことが理解されるべきである。むしろ本発明は添付の請求の範囲に規定する本発明の思想および範囲に含まれる全ての改変、均等物および変更を含む。
【0026】
本開示は、温度平衡化論理を採用することにより、非サーミスタ信号を用いて周囲温度を推定する分析物濃度測定システムに関する。推定温度とサーミスタからの測定温度との差異を規定の閾値と比較することにより、3つの行為のうちいずれを行うかを決定する。3つの行為とは、1)メータは平衡化されておりテストセンサの信号は有効であると仮定して、サーミスタ信号を用いて通常通り分析物濃度を計算する、2)メータは周囲条件に平衡化されておらず推定温度を用いた方がより正確な結果が得られると仮定して、推定温度を用いて分析物濃度を計算する、3)テストセンサは劣化しており号は無効であると仮定して、エラーを報告する、を含む。
【0027】
行われる可能性のある3つの行為を規定する論理は以下の通りである。推定温度とサーミスタによる測定温度とがうまく一致している場合、両方の結果とも正確であると考えられ、サーミスタによる測定温度を用いて分析物濃度を計算する。なぜなら通常の状況であれば、これにより最も信頼できる値が得られるからである。サーミスタ温度と推定温度との間に大きな不一致が見られる場合、原因として次の2つが考えられる。1)メータが周囲環境に平衡化されていないためサーミスタによる測定温度が不正確である、2)センサがダメージを受けているか或いはテスト中にサンプルが擾乱したせいで、計算するために用いたセンサ信号が不正確であり、そのために推定温度が不正確である。訂正した結果を出すか、エラーメッセージを返すかの決定は、上記可能性のある2つのシナリオの各々において、サーミスタによる測定温度と推定温度との間に存在する可能性が最も高い関係を理解することに基づいて行われる。ほとんどのグルコース濃度テストは室温で行われるため、サーミスタによる測定温度が極端な値であり推定温度が通常の値である場合、最も可能性の高い原因は非平衡化である。この場合、推定温度を用いて分析物濃度を計算する。サーミスタによる測定温度値が通常の値であり推定温度が極端な値である場合、テストセンサからの出力信号波形が異常である可能性が高く、エラーを報告すべきである。
【0028】
図1は、生体液サンプル中の分析物濃度を決定するバイオセンサシステム100の模式図である。バイオセンサシステム100は、測定デバイス102とテストセンサ104とを含む。測定デバイス102およびテストセンサ104は、ベンチトップデバイス、ポータブルデバイスまたはハンドヘルドデバイスなどを含む任意の分析機器に実装され得る。測定デバイス102およびテストセンサ104は、電気化学的センサシステム、光学センサシステム、またはこれらの組み合わせなどを実装するように適応され得る。バイオセンサシステム100は、入力された温度を用いて温度出力を訂正するグルコース推定アルゴリズムを用いて、出力信号から分析物濃度を決定する。温度選択ルーチンは、サーミスタセンサによる測定温度を用いるか、推定温度を用いるか、またはエラーメッセージを返すかを決定する。以下に説明するように、このルーチンは、バイオセンサシステム100がより正確な温度を分析物濃度推定アルゴリズムに入力することによってサンプルの分析物濃度を決定する際に、バイオセンサシステム100の測定性能を向上させる。
【0029】
バイオセンサシステム100を用いて、グルコース、脂質プロファイル(例えば、コレステロール、トリグリセリド、LDLおよびHDL)、マイクロアルブミン、ヘモグロビンA1c、フルクトース、乳酸またはビリルビンの濃度を含む、分析物濃度を決定し得る。他の分析物濃度も決定し得ると考えられる。複数の分析物も決定し得ると考えられる。分析物は例えば、全血サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、尿などの他の体液、および非体液中に存在し得る。よって分析物濃度推定アルゴリズムの一例はバイオセンサシステム100が実行するグルコース濃度推定アルゴリズムである。本明細書において、用語「濃度」は分析物濃度、活性(例えば、酵素および電解質)、力価(例えば、抗体)または所望の分析物を測定するのに用いられる他の任意の測定濃度を意味する。バイオセンサシステム100を特定の構成を有するものとして示すが、バイオセンサシステム100はさらなるコンポーネントを含むなど他の構成も有していてもよい。
【0030】
テストセンサ104はベース106を有し、ベース106は、リザーバ108と、開口部112を有するチャネル110とを形成する。リザーバ108およびチャネル110は、通気口を有する蓋に覆われ得る。リザーバ108は部分的に囲われた容積を規定する。リザーバ108は、液体サンプルを保持することを補助する組成物、例えば水で膨張するポリマーまたは多孔性ポリマーマトリクスなどを含み得る。リザーバ108および/またはチャネル110に試薬を投入し得る。試薬は1つ以上の酵素、バインダ、メディエータおよびその他の種を含み得る。試薬は光学システム用の化学的インジケータを含み得る。テストセンサ104はさらに、リザーバ108に隣接するサンプルインターフェース114を有し得る。サンプルインターフェース114は部分的または全体的にリザーバ108を囲み得る。テストセンサ104は他の構成を有していてもよい。
【0031】
光学システムにおいては、サンプルインターフェース114は、サンプルを観察するための光学ポータルまたは光学アパーチャを有する。光学ポータルは本質的に透明な材料で覆われ得る。サンプルインターフェースは、リザーバ108の両側に光学ポータルを有し得る。
【0032】
電気化学的システムにおいては、サンプルインターフェース114は、作用電極に接続した導体と対向電極に接続した導体とを有する。これらの電極は実質的に同じ平面内にあってもよいし、異なる平面内にあってもよい。電極は、リザーバ108を形成するベース106の表面上に配置され得る。電極はリザーバ108に延出または突出し得る。誘電層が導体および/または電極を部分的に覆い得る。サンプルインターフェース114は他の電極または導体を有していてもよい。
【0033】
測定デバイス102は、センサインターフェース118およびディスプレイ120に接続した電気回路116を含む。電気回路116はプロセッサ122を含み、プロセッサ122は信号生成器124、温度センサ126および記憶媒体128に接続している。本実施例では、温度センサ126は、サーミスタに電気信号を供給し、サーミスタからの周囲温度に比例する出力信号を読み取るという動作を行う。
【0034】
信号生成器124は、プロセッサ122に応答してセンサーインタフェース118に入力電気信号を提供する。光学システムにおいては、この入力電気信号を用いて、センサーインターフェース118内の検出器および光源を操作または制御し得る。電気化学的システムにおいては、センサーインタフェース118によってこの入力電気信号をサンプルインターフェース114に送信し、生体液サンプルに印加し得る。入力電気信号は電位または電流であり得、不変、可変、またはその組み合わせであり得る。不変と可変との組み合わせとは、直流信号のオフセットとともに交流信号を印加する場合などである。入力電気信号は単一のパルスとして、複数のパルスとして、シーケンスで、またはゲート化電流測定信号のようにサイクルで印加され得る。信号生成器124はさらに生成器兼記録器として、センサーインターフェースからの出力信号を記録し得る。
【0035】
温度センサ126は、センサ126内のサーミスタからの出力信号に基づいて、テストセンサ104のリザーバ内のサンプルの温度を決定する。以下に説明するように、サンプルの温度は、出力信号(単数または複数)、時間、および信号間の比などの非温度信号からの計算によって推定され得る。推定温度は、周囲温度の測定値またはバイオセンサシステムを実装したデバイスの温度の測定値と同じか又はそれに類似していると考えられる。温度は別の温度感知デバイスを用いて測定され得る。
【0036】
記憶媒体128は、磁気メモリ、光学メモリ、半導体メモリ、または他の記憶媒体などであり得る。記憶媒体128は固定メモリデバイスであってもよいし、リモートでアクセスするメモリカードなどのリムーバブルメモリデバイスであってもよい。
【0037】
プロセッサ122は、コンピュータ読み取り可能なソフトウェアコードおよび記憶媒体128に格納したデータを用いて分析物の分析およびデータ処理を実行する。プロセッサ122は例えば、センサインターフェース118にテストセンサ104が存在すること、テストセンサ104に対するサンプルの付与、ユーザの入力などに応答して、分析物の分析を開始し得る。プロセッサ122は、信号生成器124に指示してセンサインターフェース118に電気信号を入力させる。プロセッサ122は、サンプルの温度に連動した出力信号を温度センサ126から受信する。プロセッサ122は、センサインターフェース118から出力信号(単数または複数)を受信する。出力信号は、サンプル中の分析物の反応に応答して生成される。出力信号は、光学システムまたは電気化学的システムなどを用いて生成され得る。プロセッサ122は、上記したようにグルコース推定アルゴリズムを用いて出力信号から補償済み分析物濃度を決定する。分析物の分析結果は、ディスプレイ120に出力され得、記憶媒体128に格納され得る。
【0038】
分析物濃度と出力信号との相関式は、グラフ的に、数学的に、またはその組み合わせによるなどで表され得る。相関式は1つ以上のインデックス関数を含み得る。相関式は、記憶媒体128に格納されたプログラムナンバー(PNA)表または別のルックアップテーブルなどで表され得る。定数および重み係数も記憶媒体128に格納され得る。分析物の分析の実行に関する命令は、記憶媒体128に格納されたコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードによって供給され得る。コードは、本明細書に記載する機能を記載または制御するオブジェクトコートまたは他の任意のコードであり得る。分析物の分析から得られたデータに対して、崩壊率(decay rate)、K定数、割合、関数などの決定を含む1つ以上のデータ処理をプロセッサ122内で行い得る。本実施例では、記憶媒体128は、センサーインターフェース118からの信号などの入力から分析物濃度を決定する分析物濃度推定アルゴリズム130を格納する。記憶媒体はさらに、分析物濃度推定アルゴリズム130に入力する温度値を決定する温度選択ルーチン132を格納する。記憶媒体128はさらに、温度選択ルーチン132用の推定温度値を決定する温度推定アルゴリズム134を格納する。
【0039】
電気化学的システムにおいては、センサーインターフェース118は、テストセンサ104のサンプルインターフェース114内の導体と接続するか又は電気的に通信するコンタクトを有する。センサインターフェース118は、コンタクトを介して、信号生成器124からの入力電気信号をサンプルインターフェース114内のコネクタに送信する。センサインターフェース118はさらに、コンタクトを介して、サンプルからの出力信号をプロセッサ122および/または信号生成器124に送信する。
【0040】
光吸収光学システムおよび光生成光学システムにおいては、センサインターフェース118は、光を収集し測定する検出器を含む。検出器はサンプルインターフェース114内の光学ポータルを介して液体サンプルから光を受け取る。光吸収光学システムにおいては、センサインターフェース118はさらに、レーザまたは発光ダイオードなどの光源を含む。入射ビームは、反応生成物に吸収されるように選択された波長を有し得る。センサインターフェース118は、光源からの入射ビームをサンプルインターフェース114内の光学ポータルを介して導く。検出器は、サンプルからの反射光を受け取るために、光学ポータルに対して例えば45度などの角度を有するように配置され得る。検出器は、サンプルを透過した光を受け取るために、サンプルに対して光源とは反対の側にある光学ポータルに隣接して配置され得る。検出器は、反射光および/または透過光を受け取るために、別の位置に配置されてもよい。
【0041】
ディスプレイ120はアナログであってもよいし、デジタルでであってもよい。ディスプレイ120は、LCD、LED、OLED、真空蛍光体ディスプレイ、または読み取り値を数値で示すように適応された他のディスプレイを含み得る。他のディスプレイを用いてもよい。ディスプレイ120はプロセッサ122と電気的に通信する。ディスプレイ120は、プロセッサ122とワイヤレスで通信する場合などは、測定デバイス102とは別体であってもよい。或いはディスプレイ120は、測定デバイス102がリモートの演算デバイスおよび薬品用量注入ポンプなどと電気的に通信する場合などは、測定デバイス102から取り外されてもよい。
【0042】
使用に際して、分析用液体サンプルを開口部112に導入することによりリザーバ108に移送する。液体サンプルはチャネル110を流れてリザーバ108を満たしながら、これまで含まれていた空気を追い出す。液体サンプルは、チャネル110および/またはリザーバ108内に投入された試薬と化学的に反応する。
【0043】
テストセンサ104は、測定デバイス102に隣接して配置される。「隣接」とは、サンプルインターフェース114がセンサインターフェース118と電気的および/または光学的に通信する位置を含む。「電気的通信」とは、センサインターフェース118内のコンタクトとサンプルインターフェース114内の導体との間の入力信号および/または出力信号の伝達を含む。「光学的通信」とは、サンプルインターフェース114内の光学ポータルとセンサインターフェース118内の検出器との間の光の伝達を含む。「光学的通信」はさらに、サンプルインターフェース114内の光学ポータルとセンサインターフェース118内の光源との間の光の伝達を含む。
【0044】
プロセッサ122は温度センサ126から測定温度を受け取る。プロセッサ122は信号生成器124に指示して、センサインターフェース118に信号を入力させる。光学システムにおいては、センサインターフェース118は、この入力信号に応答して検出器および光源を操作する。電気化学的システムにおいては、センサインターフェース118は、サンプルインターフェース114を介してサンプルにこの信号を入力する。プロセッサ122は、上記したようにサンプル中の分析物の酸化還元反応に応答して生成された出力信号を受信する。
【0045】
本実施例では、プロセッサ122は、分析物濃度推定アルゴリズム130を介してサンプルの分析物濃度を決定する。分析物濃度推定アルゴリズム130への入力の1つは温度である。温度を用いて、センサ出力信号に対する温度間の差異の影響を訂正する。
【0046】
本実施例では、プロセッサ122は、分析物濃度推定アルゴリズム130用の温度を選択する温度選択ルーチン132を実行するように動作可能である。プロセッサ122はさらに温度推定アルゴリズム134を実行する。温度推定アルゴリズム134は十分な正確度で周囲温度を推定することが可能であり、その正確度が高いため、非平衡化を間違いなく検出することができ且つ分析物濃度推定アルゴリズム130に用いられて正確な結果を算出することができる。温度選択ルーチン132はさらに、推定温度と温度センサ126のサーミスタによる測定温度との大きな差異が非平衡化によるものではなくダメージを受けたセンサによって引き起こされるのはどのような場合かを決定する論理を含む。これにより、ダメージを受けた温度センサが出力する温度で分析物濃度推定アルゴリズム130を実行することにより得られる不正確な結果を表示するのではなく、エラーコードをディスプレイ120に表示することが可能となる。代替的に、「エラーコード」とは、ディスプレイ120に表示されたかつ/またはメモリに記録された、エラーインデックスナンバまたは実際のメッセージを意味し得る。
【0047】
図2Aおよび図2Bは、図1の温度選択ルーチン132を示すフロー図である。温度選択ルーチン132は、本実施例のバイオセンサシステム100において分析物濃度推定アルゴリズム130に入力する温度値を決定する。ルーチン132は、図1のプロセッサ122などのコントローラ上で実行される。サーミスタ温度が3℃より大きくシフトした場合は推定温度を用いる方がよいが、この状況が実際にいつ起こったかを確実に知ることは不可能である。温度選択ルーチン132が入手可能な情報は、サーミスタ温度と推定温度との差異のみである。そのため図2Aおよび図2Bの温度選択ルーチン132は、特定の温度補償論理に従うことにより、推定温度を用いるべきか、サーミスタからの温度を用いるべきか、エラーメッセージを返すべきかを決定する。
【0048】
ルーチン132はまず、すべてのテスト信号を測定する(200)。これは、信号生成器124からの入力信号をテストセンサ104内の電極に印加することを含む。プロセッサ122はバイオセンサインターフェース118からの出力信号を読み取る。テスト信号測定工程はさらに、プロセッサ122が図1の温度センサ126からの信号を読み取り、測定された周囲温度(T)を決定することを含む。プロセッサ122は、バイオセンサインターフェース118から読み取った出力信号と温度推定アルゴリズム134が要求する他の入力とに基づいて周囲温度(T Est)を推定する(202)。その後プロセッサ122は、推定周囲温度と温度センサ126が測定した温度との差異の絶対値(T Est Residual)を決定する(204)。
【0049】
その後プロセッサ122は、推定周囲温度と温度センサ126が測定した温度との差異の絶対値が最大許容温度補償値(MaxComp)を超えるか否かを決定する(206)。この差異が最大許容温度補償値を超える場合、プロセッサ122はテストセンサ104についてのエラーコードを報告する(208)。本実施例では、推定温度とセンサ126からの測定温度との差異は最大22℃であるが、15℃と25℃との間の値など他の値を用いてもよい。このような大きな差異は、システム100が真の非平衡化状態である可能性が低く、よってテストセンサ104が故障しているというエラーコードを報告する方が安全だということを示す。
【0050】
この差異が最大許容温度補償値より小さい場合、プロセッサ122は、温度センサ126からの測定温度と推定温度とが共に室温範囲内であるか否かを決定する(210)。本実施例では、室温範囲は17.5℃と27.5℃との間(例えば、22.5±5℃)であるが、他の値の範囲を用いてもよい。例えば室温範囲の定義は、予想される典型的な使用環境に依存して異なり得る。よって室温範囲中の高温は25℃と30度との間であり得、低温は13℃と20度との間であり得る。推定温度と測定温度とが互いに反対方向に室温範囲からはみ出している場合、プロセッサ122はテストセンサ104についてのエラーコードを報告する(208)。
【0051】
測定温度と推定温度とが共に室温範囲内である場合、プロセッサ122は、測定温度が室温範囲内であるか否かを決定し、測定温度と推定温度との差異が残存エラー限度閾値より大きいか否かを決定する(212)。測定温度は室温範囲内であるが上記差異が残存エラー限度閾値より大きい場合、プロセッサ122はテストセンサ104についてのエラーコードを報告する(208)。本実施例では、残存エラー限度閾値は10℃であり、10℃を超える差異はテストセンサがダメージを受けていることを示すため、エラーコードが報告される。システムによるが、残存エラー限度閾値の範囲は7℃と15℃との間であり得る。
【0052】
上記差異が残存エラー限度閾値より小さい場合、プロセッサ122は、測定温度と推定温度とが共に室温範囲の最高温度より高いか否か、および推定温度と測定温度との差異が極度残存エラー限度閾値大きいか否かを決定する(214)。これらの条件が満たされた場合、プロセッサ122はテストセンサ104についてのエラーコードを報告する(208)。本実施例では、室温範囲の最高温度は27.5℃であり、極度残存エラー限度閾値は12℃である。
【0053】
これらの条件が満たされない場合、プロセッサ122は、測定温度と推定温度とが共に室温範囲の最低温度より低いか否か、および測定温度と推定温度との差異が極度残存エラー限度閾値より大きいか否かを決定する(216)。本実施例では、室温範囲の最低温度は17.5℃であり、極度残存エラー限度閾値は工程214および216の両方において12℃である。システムによるが、極度残存エラー限度閾値の範囲は工程214および216の両方において7℃と15℃との間であり得る。これらの条件が満たされた場合、プロセッサ122はテストセンサ104についてのエラーコードを報告する(208)。本実施例では、推定温度が極度条件において僅かに信頼度が低い可能性があるため、極度残存エラー限度閾値は残存エラー限度閾値よりも僅かに広い。しかし、実施例によってはこれら両方の閾値に同じ値を用いてもよい。
【0054】
上記の条件が満たされない場合、プロセッサ122は、a)測定温度が室温範囲の最低温度より低く且つ推定温度が調整済み低温値以上であるか否か、b)測定温度が室温範囲の最高温度より高く且つ推定温度が調整済み高温値以下であるか否かを決定する(218)。この工程では、推定温度が室温である一方でサーミスタによる測定温度が極度値を有するか否かが決定される。この組み合わせは、高温環境または低温環境から屋内(inside)に持ち込まれたばかりの非平衡化メータに合致する。メータが非平衡化されている場合、センサへ、又はセンサから伝達される熱量が少なく、その結果、高温メータでテストしたセンサの予測温度(expected temperature)が上がり、低温メータでテストしたセンサの予測温度が下がる。本実施例では、調整済み高温値又は低温値は室温範囲の高温および低温よりもそれぞれ2.5℃高く又は低く、よって調整済み低温値は15℃であり調整済み高温値は30℃である。上記の条件が満たされない場合、プロセッサ122は分析物濃度推定アルゴリズム130への温度入力として温度センサ126からの温度を用いる(220)。
【0055】
工程218の条件が満たされた場合、プロセッサ122は、測定温度と推定温度との差異の絶対値を平衡化閾値と比較する(222)。本実施例では、平衡化閾値は6℃である。一例としての6℃という平衡化閾値は、温度推定アルゴリズムの正確度、および偽の否定的結果と偽の肯定的結果との間のリスクの望ましいバランスに依存して調整され得る。平衡化閾値は3℃と10℃との間であってもよい。上記差異が平衡化閾値より大きい場合、プロセッサ122は分析物濃度推定アルゴリズム130への温度入力として推定温度を用いる(224)。上記差異の絶対値が平衡化閾値より小さい場合、プロセッサ122は分析物濃度推定アルゴリズム130への温度入力として温度センサ126からの温度を用いる(222)。
【0056】
図3は、推定温度と温度センサからの測定温度との相関、およびその結果得られる様々な論理状態を示すグラフである。第1の領域300は、分析物濃度推定アルゴリズム130への温度入力として測定温度を用いた状況を示す。2つの領域310および312は、分析物濃度推定アルゴリズム130への温度入力として推定温度を用いた状況を示す。領域310および312は線302および304によって取り囲まれており、線302および304は室温範囲の境界を示す。領域310および312はさらに線314および316によって取り囲まれており、線314および316平衡化境界の下限を示す。さらに2つの領域320および322は、エラーメッセージを返して温度センサ126がダメージを受けていることを表した状況を示す。
【0057】
本実施例では、温度の推定は温度推定アルゴリズム134によって行う。温度推定アルゴリズム134は、入力変数の重回帰分析に由来する。このようなアルゴリズムは、特定のテストセンサ用の様々なパラメータと他の測定信号とに基づいて重回帰を行うことにより開発し得る。本実施例では、グルコーステスト中にテストセンサが生成した電気信号を用いて周囲温度を正確に推定する重回帰式(標準偏差:1.5℃)を開発した。
【0058】
広範囲の条件でテストした、適切に平衡化されたメータからの電流分布の大規模データベースから取った1組のトレーニングデータを用いて、図4の表に示すパラメータに基づく様々な項を含む式を開発した。実験室での研究で読み取った値38,367個と、内科臨床研究において平衡化メータでテストした、正常に充填されたセンサから読み取った値12,796個とを用いて、この温度推定アルゴリズムの正確度を評価した。温度センサで測定した温度と本実施例の温度推定アルゴリズムの出力とを比較した要約統計量を図5Aの表に示す。図5Bは、サーミスタで算出したグルコースの結果、および平衡化メータを用いて推定温度で算出したグルコースの結果の百分率誤差の要約統計量を示す表である。温度推定アルゴリズムは正確であるが、メータが平衡化されており且つサーミスタ温度が正しい場合にこの推定値を用いると、性能が僅かに悪くなる。
【0059】
本実施例では、温度(摂氏)を推定する式は、図4のパラメータに基づく複数の項と定数とを含む。温度推定は、これらの項と定数との和として計算する。主要グルコース作用電極での6つの電位パルス(Mパルス)およびストリップテストチャンバ内の前部にある単なる「G」電極での4つの電位パルス(Gパルス)の期間に、信号を測定する。テストの最後に、高電位信号パルス1つをG電極に印加することによりヘマトクリット(Hパルス)と相関する信号を測定する。図6に、この入力電位信号シーケンスパターンを示す。図6は、一連の6つの主要パルス610、612、614、616、618および620を示す。図6は、単なるG電極での4つのパルス630、632、634および636を示す。図6はさらに、ヘマトクリットと相関する信号を測定するための入力信号640を示す。
【0060】
6つのMパルスのうちの1つの間に測定した電流信号をMxArray(y)と呼ぶことにする。ここでxはパルス番号(1~6)であり、yはパルス内の測定番号である。4つのGパルスも同じように呼ぶ(すなわちGxArray(y)と呼ぶ)。1つのHパルス(HArray(y))の間に4つの信号を測定する。パラメータは図4の表に示す通りである。推定式の各項は、係数と、1つ以上の測定電流値から構築した指標パラメータとの積である。
【0061】
言うまでもなく、人工ニューラルネットワークを適切な機械学習アルゴリズムと共に用いるなど、他の手順を用いて温度を推定してもよい。本実施例では、温度推定アルゴリズム134は、広範囲の温度、グルコース濃度およびヘマトクリット含有量を表す研究において正確な結果を提供する。
【0062】
これらの研究は、低温または高温で保存した後に室温(~22℃)でテストしたメータを用いて行った。非平衡化メータの場合、不正確なサーミスタ値で算出した結果は不正確であり、特にメータがテスト環境よりも低温であった場合に不正確であった。しかし、推定温度で算出した結果は、すべての場合において正確であった。そのため、メータがいつ非平衡化されたかを上手く特定し、そして測定温度ではなく推定温度を用いてグルコースを計算することが非常に望ましい。図7Aは、メータを広範囲の平衡化状態において行ったテストで得た測定温度を用いて分析物濃度推定アルゴリズムを実行した場合の、出力エラーをプロットしたグラフである。図7Bは、メータを広範囲の平衡化状態において行ったテストで得た推定温度を用いて分析物濃度推定アルゴリズムを実行した場合の、出力エラーをプロットしたグラフである。図8は、メータを広範囲の平衡化状態において行ったテストで得た、最終的に選択した温度(推定温度または測定温度)を用いて分析物濃度推定アルゴリズムを実行した場合の、出力エラーをプロットしたグラフである。図7A図7Bおよび図8において、「*」は高温メータの出力を示し、「o」は平衡化メータの出力を示し、「x」は低温メータの出力を示す。
【0063】
図7Aおよび図7Bは、メータを実際に非平衡化した場合、推定温度で算出したグルコースの結果はサーミスタで算出したグルコースの結果よりはるかに正確であることを示す。図8は、酷い非平衡化が起こった場合、アルゴリズム論理が上手く働いて推定温度に正しくスイッチし、それによって図7に見られる酷く不正確な結果をしっかりと防止したことを示す。
【0064】
非平衡化論理を適用すると、低温環境または高温環境から持ち込まれた後に未だ平衡化されていないメータの性能が大幅に向上する一方で、平衡化されたメータの性能も維持される。図9は、平衡化メータ、低温メータおよび高温メータの研究結果の要約データを、測定温度、本実施例の温度推定温度アルゴリズムで得た推定温度、ならびに図2Aおよび図2Bの温度選択ルーチン132と関連づけて示す表である。
【0065】
上記のように、温度選択ルーチン132は非平衡化メータに加えて、ダメージを受けたテストセンサを決定し得、そのためダメージを受けたテストセンサから得たデータを分析物濃度に用いることを回避し得る。ダメージを受けたテストセンサまたは擾乱したテストセンサを用いて多くの研究を行った。これらのダメージを受けたテストセンサは異常な電流信号を生成し、その信号は温度推定の正確度に影響を与え得る。そのため温度選択ルーチン132は、推定温度と測定温度との不一致が閾値よりも大きいか否か、およびその不一致が測定温度ではなく推定温度のエラーによるものである可能性、すなわちテストセンサによるエラーである可能性が高いか否かを決定する。このように、テストセンサの故障に対するエラー検出器としてその不一致を用いる。
【0066】
この論理は、実際に平衡化されていないメータの性能を大幅に向上させる一方で、テストセンサがダメージを受けた場合にはエラー検出の成功率を高め、テストセンサが正常である場合には現状の性能を維持する。
【0067】
本明細書において、用語「コンポーネント」「モジュール」または「システム」などは概してコンピュータに関連する実体を示し、ハードウェア(例えば、回路)、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせ、ソフトウェア、または1つ以上の特定の機能を有する動作マシンに関連する実体を示す。例えば、「コンポーネント」は、プロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ)上で動作するプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プログラム、および/またはコンピュータであり得るが、これらに限られない。例示として、コントローラ上で動作するアプリケーションとそのコントローラとは共にコンポーネントであり得る。1つ以上のコンポーネントがプロセスおよび/または実行スレッド内に存在し得、コンポーネントは1つのコンピュータ上に局所的に存在してもよいし、および/または2以上のコンピュータ間に分散していてもよい。さらに「デバイス」は特別に設計されたハードウェア、汎用ハードウェアであるがそのハードウェアに特定の機能を持たせることが可能なソフトウェアを実行することにより特定化されたハードウェア、コンピュータ読み取り可能な媒体に保存されたソフトウェア、またはこれらの組み合わせという形態であり得る。
【0068】
本発明を1つ以上の実施形態について説明し記載したが、本明細書および添付の図面を読み理解した当業者には均等な変更物および改変物も考えられるものであり、明らかである。さらに、本発明の特定の特徴がいくつかの実施形態のうちの1つのみで開示されている可能性もあるが、そのような特徴は、任意のまたは特定の適用にとって望ましく有利である場合には、他の実施形態の他の1つ以上の特徴とも組み合わされ得る。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
【国際調査報告】