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特表2022-534037アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途
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  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図1
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  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図4
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  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図6
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  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図8
  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図9
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  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図11
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  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図14
  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図15
  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図16
  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図17
  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図18
  • 特表-アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途 図19
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20220720BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20220720BHJP
   A61P 5/32 20060101ALI20220720BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C07D471/04 103H
C07D471/04 CSP
A61K31/437
A61P5/32
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569368
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2020091454
(87)【国際公開番号】W WO2020238733
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】201910438024.8
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510116819
【氏名又は名称】浙江海正薬業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Hisun Pharmaceutical CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.46 Waisha Road,Jiaojiang District,Taizhou,Zhejiang 318000,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】鄭 剣鋒
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
(72)【発明者】
【氏名】趙 敏
(72)【発明者】
【氏名】施 珍娟
(72)【発明者】
【氏名】李 旭飛
(72)【発明者】
【氏名】楊 志清
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065BB04
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP03
4C065QQ10
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZC11
(57)【要約】
式Iで示される化合物の結晶形A、B、C、D、E、F、G、Hおよびその調製方法、並びに各結晶形の医薬用途及び各面での利点は開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが10.5±0.2°、12.3±0.2°、14.9±0.2°、16.2±0.2°、18.1±0.2°、19.4±0.2°、20.3±0.2°、24.4±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする下記の式Iで示される化合物の結晶形A。
【請求項2】
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが10.5±0.2°、12.3±0.2°、13.6±0.2°、14.2±0.2°、14.9±0.2°、16.2±0.2°、17.1±0.2°、18.1±0.2°、19.4±0.2°、20.3±0.2°、22.8±0.2°、24.4±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
粉末X線回折パターンが基本的に図1に示す通りである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶形A。
【請求項4】
式Iで示される化合物一水和物である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶形A。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形Aを調製する方法であって、
式Iで示される化合物をC1~C3アルコール、水またはそれらの混合物である溶剤に加え、懸濁液を得、この懸濁液を、5~50℃で、結晶スラリーを1~7日間撹拌した後、固体を分離し、20~60℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Aを得る方法(1)において、
好ましくは、方法(1)にかかる前記C1~C3アルコールがメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールの一種又は複数種であり、
好ましくは、方法(1)にかかる溶剤に対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:2~1:10(g/mL)である方法(1)、及び
式Iで示される化合物をC1~C3アルコールに加え、溶解して透明な液体を得、濁りが析出するまで水を加え、固体化するまで撹拌し、固体を分離し、20~60℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Aを得る方法(2)において、
好ましくは、方法(2)のC1~C3アルコールがメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールの一種又は複数種であり、
好ましくは、方法(2)のC1~C3アルコールに対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:5~1:20(g/mL)であり、
好ましくは、方法(2)の水に対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:3~1:100(g/mL)である方法(2)
から選ばれるいずれか1つの方法である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形Aの調製方法。
【請求項6】
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが5.5±0.2°、9.9±0.2°、10.7±0.2°、12.7±0.2°、16.2±0.2°、16.7±0.2°、23.0±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする下記の式Iで示される化合物の結晶形B。
【請求項7】
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが5.5±0.2°、9.9±0.2°、10.7±0.2°、12.7±0.2°、14.5±0.2°、16.2±0.2°、16.7±0.2°、19.7±0.2°、23.0±0.2°、24.8±0.2°に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項6に記載の結晶形B。
【請求項8】
粉末X線回折パターンが基本的に図4に示す通りである、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の結晶形B。
【請求項9】
式Iで示される化合物一水和物である、ことを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載の結晶形B。
【請求項10】
式Iで示される化合物を水飽和ハロゲン化炭化水素溶液に加えて懸濁液を形成し、5~40℃で結晶スラリーを0.5~36時間撹拌した後、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Bを得ることを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の結晶形Bを調製する方法であって、
好ましくは、前記ハロゲン化炭化水素がジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン、ジブロモメタンから選ばれる一種又は複数種であり、
好ましくは、水飽和ハロゲン化炭化水素に対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:3~1:4(g/mL)である、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが4.5±0.2°、5.7±0.2°、8.5±0.2°、12.2±0.2°、14.0±0.2°、16.7±0.2°、23.0±0.2に特徴的なピークを有する、ことを特徴とする下記の式Iで示される化合物の結晶形C。
【請求項12】
粉末X線回折パターンが基本的に図7に示す通りである、ことを特徴とする請求項11に記載の結晶形C。
【請求項13】
式Iで示される化合物一水和物である、ことを特徴とする請求項11~12のいずれか一項に記載の結晶形C。
【請求項14】
式Iで示される化合物を水飽和ハロゲン化炭化水素溶液に加えて懸濁液を形成し、5~40℃で、結晶スラリーを2~7日間撹拌した後、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Cを得ることを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の結晶形Cを調製する方法であって、
好ましくは、前記ハロゲン化炭化水素がジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン、ジブロモメタンから選ばれる一種又は複数種であり、
好ましくは、水飽和ハロゲン化炭化水素に対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:15~1:50(g/mL)である、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
治療有効量の、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形A、請求項6~10のいずれか一項に記載の結晶形B、又は請求項11~14のいずれか一項に記載の結晶形Cを含む医薬組成物。
【請求項16】
エストロゲン受容体介在疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形A、請求項6~10のいずれか一項に記載の結晶形B、請求項11~14のいずれか一項に記載の結晶形C、又は、請求項15に記載の医薬組成物の使用であって、前記疾患が癌であり、好ましくは、前記癌症は乳癌或いは婦人科癌であり、好ましくは、前記婦人科癌は卵巣癌或いは子宮内膜癌であり、好ましくは、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αである、使用。
【請求項17】
選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターの製造における、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形A、請求項6~10のいずれか一項に記載の結晶形B、請求項11~14のいずれか一項に記載の結晶形C、又は請求項15に記載の医薬組成物の使用であって、前記選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターはエストロゲン受容体αダウンレギュレーターであることが好ましい、使用。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、発明の名称が「アクリル酸系誘導体の結晶形およびその調製方法及び用途」である、2019年5月24日に中国特許庁へ提出された中国特許出願201910438024.8に基づく優先権を主張し、その全内容は、全体として援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、化学製薬分野に属する。具体的には、本発明は、アクリル酸系誘導体である(E)-3-(3,5-ジフルオロ-4-((1R,3R)-2-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)アクリル酸の新規の結晶形A、B、C、D、E、F、G、Hおよびその調製方法に関する。さらに、本発明は、上記の新規の結晶形を含む医薬組成物及びその医学的使用に関する。
【背景技術】
【0003】
エストロゲン受容体(estrogen receptor,ER)は、リガンド活性化転写レギュレータータンパク質であり、内因性エストロゲンとの相互作用を通じてさまざまな生物学的効果の誘導を媒介する。内因性エストロゲンには、17β-エストラジオールとエストロンが含まれる。ERにはエストロゲン受容体α(ERα、ESR1及びNR3A)及びエストロゲン受容体β(ERβ、ESR2及びNR3b)の2つのサブタイプがあることが見られる。エストロゲン受容体α及びエストロゲン受容体βは、核内受容体ファミリーのメンバーであるステロイドホルモン受容体のメンバーである。核内受容体のメカニズムと類似しているが、ERαは、6つの機能ドメイン(A-Fと命名される)から構成され、リガンド活性化転写因子であり、それが特定のリガンド(内因性エストロゲン17βエストラジオール(E2)を含む)と結合した後で、ゲノム配列に結合して複合体を形成すること、即ち、エストロゲン受容体応答要素と共調節因子とが結合して、標的遺伝子の転写を調節する。ERα遺伝子は、6q25.1に位置し、595Aタンパク質をコードし、スプライシング部位及び転写開始部位の違いにより、異なるサブタイプが得られる。DNA結合モチーフ(ドメインC)及びリガンド結合モチーフ(ドメインE)の他、受容体はさらにN-末端(A/B)ドメイン、ヒンジ領域(C及びEドメインを連結するD)と炭素端(Fドメイン)を含む。ERα及びERβのCドメインとEドメインは、一致性があり、A/B、DとFドメインは一致性が低い。2つの受容体とも女性の生殖管の調節と成長に関連し、中枢神経系、心血管・脳血管系及び骨代謝においても重要な役割を果たす。エストロゲンが受容体に結合すると、さまざまな細胞に変化が生じる可能性があり、その調節メカニズムは、ゲノム経路及び非ゲノム経路の2つの経路に分けることができる。ERを介したゲノム経路には、エストロゲン受容体二量体の形成、エストロゲン調節遺伝子プロモーターにおけるEREの結合、プロモーターへの他の調節タンパク質の凝集の媒介、最後的に該遺伝子mRNAレベルの増加や低下が含まれる。エストロゲンを介した非ゲノム経路においては、エストロゲンは、ERsの細胞膜に存在するか又は隣接する、ひいてはERsのない細胞膜における、エストロゲン結合タンパク質と反応することができる。エストロゲンが非ゲノム経路によって引き起こされる細胞応答は、細胞内のカルシウムイオン及びNOレベルを増加させ、及びMAPK、PI3K、PKA及びPKCを含む様々な細胞内のキナーゼを活性化し、nERをリン酸化して活性化することができる。
【0004】
乳癌患者の約70%はER及び/又はプロゲステロン受容体を発現し、この腫瘍細胞の成長がホルモン依存性であり、また、卵巣癌や子宮内膜癌などの他の腫瘍の成長もERαに依存性であることを示す。これらの疾患の治療は、リガンドとERとの結合に拮抗する、ERαの拮抗又はダウンレギュレートする、エストロゲンの合成をブロックするなど、さまざまな方法でERシグナル伝達を阻害することができる。また、副腎皮質腫瘍、膵臓癌、前立腺癌および甲状腺癌などの内分泌腫瘍;結腸癌、食道癌、肝臓癌及び膵臓癌などの消化器系腫瘍;及び肺癌のいずれにも、ERα及びERβを発見する。上記の治療方法は、ER陽性腫瘍患者である程度に働くが、薬剤耐性を生じることもある。最近、ESR1の変異は、転移性ER陽性の乳癌患者に薬剤耐性を生じる理由の1つであることが報告されている(Toyetal.,Nat.Genetic 2013,45:1439-1445;Li,S.etal Cell Rep.4,1116-1130(2013))。しかし、議論されている可能な薬剤耐性メカニズムには、腫瘍の成長がER依存性の活性を持つ。従って、ERαの選択的ダウンレギュレーションのメカニズムにより、早期、転移性、および薬剤耐性の癌を媒介するERα活性をブロックする良い方法を提供する。
【0005】
現在、選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(selective estrogen receptor downregulator(degrader)として使用できる多くのアクリル酸系誘導体薬が開示されている。その中、Genentech社のそれぞれの第II相臨床と第I相臨床にあるGDC-0810とGDC-0927、AstraZeneca社の第I相臨床にあるAZD-9496が含まれる。また、WO2011156518、WO2012037410、WO2015082990などを含む一連のアクリル酸系誘導体の特許出願が開示される。それでも、新たなエストロゲン受容体αダウンレギュレーターの研究や開発は、依然として必要とされる。
【0006】
WO2017080338A1は、下記の式Iの構造を有するアクリル酸系誘導体を開示し、その分子式はC2523であり、化学名称:(E)-3-(3,5-ジフルオロ-4-((1R,3R)-2-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)アクリル酸である。さらに、WO2017080338A1は、式Iで示される化合物の調製方法及びエストロゲン受容体拮抗剤或いはエストロゲン受容体αダウンレギュレーターとしてのその使用を開示し、該化合物が良好なERαのダウンレギュレーション作用を有することを示している。
【0007】
ところが、WO2017080338A1に開示された上記の式Iで示される化合物は、その調製方法に従って得られた黄色固体がアモルファス形態であり、その安定性および粒子サイズは依然として満足のいくものではない。特には、WO2017080338A1に開示されたアモルファス粒子は、粒子サイズが小さく、流動性が低く、固形製剤(例えば、錠剤、カプセル剤又は顆粒剤)の成形プロセスに適していない。
【0008】
現在、従来技術において、製剤成形に適しており、かつ、良好な安定性を有する式Iで示される化合物の形態はまだ開示されていなく、式Iで示される化合物の結晶形に関する報告もない。本発明者らは、多くの実験を通じて、式Iで示される化合物の結晶形を得た。
【発明の概要】
【0009】
そこで、上記の従来の技術に存在する課題に鑑みて、本発明は、下記の式Iで示される構造を有する化合物(E)-3-(3,5-ジフルオロ-4-((1R,3R)-2-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)アクリル酸の結晶形およびその調製方法を提供する。
【0010】
第1の態様においては、本発明は式Iで示される化合物の結晶形A(以下、「結晶形A」と呼ぶ)を提供する。
【0011】
前記結晶形Aは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折(XRPD)パターンにおける、度で表される2θが10.5±0.2°、12.3±0.2°、14.9±0.2°、16.2±0.2°、18.1±0.2°、19.4±0.2°、20.3±0.2°、24.4±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0012】
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが10.5±0.2°、12.3±0.2°、13.6±0.2°、14.2±0.2°、14.9±0.2°、16.2±0.2°、17.1±0.2°、18.1±0.2°、19.4±0.2°、20.3±0.2°、22.8±0.2°、24.4±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0013】
より好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが以下の位置に特徴的なピーク及び相対強度を有する。
【0014】
より好ましくは、前記結晶形Aは、その粉末X線回折パターンが、基本的に図1に示す通りである。
【0015】
さらに、前記結晶形Aは、示差走査熱量測定(DSC)曲線において、110~150℃に吸熱ピークを有する。DSC曲線は基本的に図2に示す通りである。
【0016】
さらに、前記結晶形Aの熱重量分析(TGA)曲線は、基本的に図3に示す通りである。カールフィッシャー水分計で測定した結晶形Aの含水率が3.9%であり、TGA曲線は3.9%の重量減少が認められ、結晶形Aが式Iで示される化合物一水和物であることを示す。
【0017】
さらに、前記式Iで示される化合物一水和物の単結晶が直方晶系、P2空間群、a=7.33580(10)Å、b=14.3722(2)Å、c=41.3094(7)Å、α=β=γ=90°である。式Iで示される化合物一水和物の構造式は、以下の通りである。
【0018】
以上に応じて、本発明は、以下の方法から選ばれるいずれか1つの方法である、結晶形Aを調製するための方法を提供する。
【0019】
方法(1):式Iで示される化合物を溶剤に加え、前記溶剤はC1~C3アルコール、水またはそれらの混合物であり、懸濁液を得、この懸濁液を、5~50℃で結晶スラリーを1~7日間撹拌した後、固体を分離し、20~60℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Aを得る。
【0020】
好ましくは、方法(1)において、前記C1~C3アルコールがメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種である。
【0021】
好ましくは、方法(1)において、溶剤に対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:2~1:10(g/mL)である。
【0022】
方法(2):式Iで示される化合物をC1~C3アルコールに加えて溶解させて透明な液体を得、さらに、濁りが析出するまで水を加え、固体を分離し、20~60℃で8~24時間乾燥させ、結晶形Aを得る。
【0023】
好ましくは、方法(2)において前記C1~C3アルコールがメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種である。
【0024】
好ましくは、方法(2)においてC1~C3アルコールに対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:5~1:20(g/mL)であり、
好ましくは、方法(2)において水に対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:3~1:100(g/mL)である。
【0025】
別の態様において、本発明は有効成分として治療有効量の結晶形Aを含有する医薬組成物を提供する。好ましくは、前記医薬組成物においては、結晶形Aは、一種又は複数種の薬学的に許容される固体或いは液体希釈剤及び/又は賦形剤と混合してガレノス製剤を製造することができる。
【0026】
別の態様において、本発明は、エストロゲン受容体介在疾患を治療するための医薬品の製造における結晶形A或いはその医薬組成物の使用において、ここで、前記疾患が癌であり、好ましくは、前記癌症は乳癌或いは婦人科癌であり、好ましくは、前記婦人科癌は卵巣癌或いは子宮内膜癌であり、好ましくは、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αである、使用を提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターの製造における、結晶形A或いはその医薬組成物の使用において、前記選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターは、エストロゲン受容体αダウンレギュレーターであることが好ましい使用を提供する。
【0028】
さらに、本発明は、治療有効量の結晶形Aをそれを必要とする個体に投与することを含むエストロゲン受容体介在疾患を治療する方法において、前記疾患が癌であり、好ましくは、前記癌症は乳癌或いは婦人科癌であり、好ましくは、前記婦人科癌は卵巣癌或いは子宮内膜癌であり、好ましくは、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αである、方法を提供する。
【0029】
さらに、本発明は、結晶形A或いはその医薬組成物をエストロゲン受容体と接触させることを含み、エストロゲン受容体を選択的にダウンレギュレートする方法において、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αであることが好ましい方法、を提供する。
【0030】
別の態様において、本発明は式Iで示される化合物の結晶形B(以下、「結晶形B」という)提供する。
【0031】
前記結晶形Bは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折(XRPD)パターンにおける、度で表される2θが5.5±0.2°、9.9±0.2°、10.7±0.2°、12.7±0.2°、16.2±0.2°、16.7±0.2°、23.0±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0032】
好ましくは、前記結晶形Bは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが5.5±0.2°、9.9±0.2°、10.7±0.2°、12.7±0.2°、14.5±0.2°、16.2±0.2°、16.7±0.2°、19.7±0.2°、23.0±0.2°、24.8±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0033】
より好ましくは、前記結晶形Bは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが以下の位置に特徴的なピーク及び相対強度を有する。
【0034】
より好ましくは、前記結晶形Bは、粉末X線回折パターンが基本的に図4に示す通りである。
【0035】
さらに、前記結晶形BのDSC曲線は110~135℃に吸熱ピークを有する。DSC曲線は、基本的に図5に示す通りである。
【0036】
さらに、前記結晶形BのTGA曲線は、基本的に図6に示す通りである。カールフィッシャー水分計で測定した結晶形Bの含水率が3.9%であり、TGA曲線は3.9%の重量減少が認められ、結晶形Bが式Iで示される化合物一水和物であることを示す。
【0037】
以上に応じて、本発明は、
式Iで示される化合物を水飽和ハロゲン化炭化水素溶液に加えて懸濁液を形成し、5~40℃で結晶スラリーを0.5~36時間撹拌した後、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Bを得ることを含む、結晶形Bの調製方法を提供する。
【0038】
好ましくは、前記ハロゲン化炭化水素がジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン、ジブロモメタンから選ばれる一種又は複数種であり、
好ましくは、水飽和ハロゲン化炭化水素に対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:3~1:4(g/mL)である。
【0039】
別の態様において、有効成分として治療有効量の本発明は結晶形Bを含む医薬組成物を提供する。好ましくは、前記医薬組成物において、結晶形Bは、一種又は複数種の薬学的に許容される固体或いは液体希釈剤及び/又は賦形剤と混合してガレノス製剤を製造することができる。
【0040】
別の態様において、本発明は、エストロゲン受容体介在疾患を治療するための医薬品の製造における結晶形B或いはその医薬組成物の使用において、前記疾患が癌であり、好ましくは、前記癌症は乳癌或いは婦人科癌であり、好ましくは、前記婦人科癌は卵巣癌或いは子宮内膜癌であり、好ましくは、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αである使用を提供する。
【0041】
別の態様において、本発明は、選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターの製造における、結晶形B或いはその医薬組成物の使用において、前記選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターはエストロゲン受容体αダウンレギュレーターであることが好ましい使用を提供する。
【0042】
さらに、本発明は、治療有効量の結晶形Bをそれを必要とする個体に投与することを含む、エストロゲン受容体介在疾患を治療する方法において、前記疾患が癌であり、好ましくは前記癌症は乳癌或いは婦人科癌であり、好ましくは前記婦人科癌は卵巣癌或いは子宮内膜癌であり、好ましくは前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αである方法を提供する。
【0043】
さらに、本発明は、結晶形B或いはその医薬組成物をエストロゲン受容体と接触させることを含む、エストロゲン受容体を選択的にダウンレギュレートする方法において、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αであることが好ましい方法を提供する。
【0044】
別の態様において、本発明は式Iで示される化合物の結晶形C(以下、「結晶形C」という)を提供する。
【0045】
前記結晶形Cは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折(XRPD)パターンにおける、度で表される2θが4.5±0.2°、5.7±0.2°、8.5±0.2°、12.2±0.2°、14.0±0.2°、16.7±0.2°、23.0±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0046】
好ましくは、前記結晶形Cは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが以下の位置に特徴的なピーク及び相対強度を有する。
【0047】
より好ましくは、前記結晶形Cは、その粉末X線回折パターンが基本的に図7に示す通りである。
【0048】
さらに、前記結晶形CのDSC曲線は100~140℃に吸熱ピークを有する。DSC曲線は、基本的に図8に示す通りである。
【0049】
さらに、前記結晶形CのTGA曲線は、基本的に如図9に示す通りである。カールフィッシャー水分計で測定した結晶形Cの含水率が3.9%であり、TGA曲線は3.9%の重量減少が認められ、結晶形Cが式Iで示される化合物一水和物であることを示す。
【0050】
以上に応じて、本発明は、
式Iで示される化合物を水飽和ハロゲン化炭化水素溶液に加えて懸濁液を形成し、5~40℃で結晶スラリーを2~7日間撹拌した後、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Cを得ることを含む結晶形Cの調製方法を提供する。
【0051】
前記ハロゲン化炭化水素がジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン、ジブロモメタンから選ばれる一種又は複数種である。
【0052】
好ましくは、前記ハロゲン化炭化水素がジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン、ジブロモメタンから選ばれる一種又は複数種であり、好ましくは、水飽和ハロゲン化炭化水素に対する前記式Iで示される化合物の重量体積比が1:15~1:50(g/mL)である。
【0053】
別の態様において、本発明は有効成分として治療有効量の結晶形Cを含む医薬組成物を提供する。好ましくは、前記医薬組成物において、結晶形Cは、一種又は複数種の薬学的に許容される固体或いは液体希釈剤及び/又は賦形剤と混合してガレノス製剤を製造することができる。
【0054】
別の態様において、本発明は、エストロゲン受容体介在疾患を治療するための医薬品の製造における結晶形C或いはその医薬組成物の使用において、前記疾患が癌であり、好ましくは、前記癌症は乳癌或いは婦人科癌であり、好ましくは、前記婦人科癌は卵巣癌或いは子宮内膜癌であり、好ましくは、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αであるを提供する。
【0055】
別の態様において、本発明は、選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターの製造における結晶形C或いはその医薬組成物の使用において、前記選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーターはエストロゲン受容体αダウンレギュレーターであることが好ましい、使用を提供する。
【0056】
また、本発明は、治療有効量の結晶形Cをそれを必要とする個体に投与することを含む、エストロゲン受容体介在疾患を治療する方法、前記疾患が癌であり、好ましくは、前記癌症は乳癌或いは婦人科癌であり、前記婦人科癌は卵巣癌或いは子宮内膜癌であり、好ましくは、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αである方法を提供する。
【0057】
さらに、本発明は、結晶形C或いはその医薬組成物をエストロゲン受容体と接触させることを含む、エストロゲン受容体を選択的にダウンレギュレートする方法において、前記エストロゲン受容体はエストロゲン受容体αであることが好ましい方法を提供する。
【0058】
別の態様において、本発明は、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折(XRPD)パターンにおける、度で表される2θが9.5±0.2°、19.0±0.2°、19.7±0.2°、21.3±0.2°、21.8±0.2°に特徴的なピークを有する、式Iで示される化合物の結晶形D(以下、「結晶形D」という)を提供する。
【0059】
具体的な実施形態において、本発明に係る結晶形Dは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが7.1±0.2°、9.5±0.2°、10.6±0.2°、14.2±0.2°、15.2±0.2°、17.8±0.2°、19.0±0.2°、19.7±0.2°、21.3±0.2°、21.8±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0060】
より具体的な実施形態において、前記結晶形Dは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される7.1±0.2°、9.5±0.2°、10.6±0.2°、11.8±0.2°、12.7±0.2°、14.2±0.2°、15.2±0.2°、17.8±0.2°、19.0±0.2°、19.7±0.2°、20.7±0.2°、21.3±0.2°、21.8±0.2°、23.8±0.2°、24.2±0.2°、27.7±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0061】
一実施形態では、前記結晶形Dは、その粉末X線回折パターンが基本的に図10に示すとおりである。
【0062】
別の実施形態においては、前記結晶形DのDSC曲線は、110~120℃に吸熱ピークを有する。DSC曲線は、基本的に図11に示すものである。
【0063】
一実施形態では、前記結晶形Dは、ブタノン溶媒和物であり、その単結晶のデータは、それが直方晶系、P2空間群,a=8.4557(4)Å、b=16.7248(9)Å、c=18.6864(10)Å,α=β=γ=90°であることを示している。
【0064】
本発明は、以下の方法から選ばれるいずれか1つの方法である結晶形Dの調製方法に関する。
方法(1):式Iで示される化合物をブタノンに加えて透明な液を形成し、さらに、濁りが析出するまで水を加え、撹拌しながら固体化し、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Dを得る。
【0065】
方法(2):式Iで示される化合物をブタノンに加えて懸濁液を形成し、20~40℃で1~3日撹拌した後、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Dを得る。
【0066】
一態様では、本発明は、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折(XRPD)パターンにおける、度で表される2θが9.1±0.2°、10.6±0.2°、11.1±0.2°、11.9±0.2°、14.4±0.2°、18.2±0.2°、19.0±0.2°、20.3±0.2°、21.8±0.2°に特徴的なピークを有する式Iで示される化合物の結晶形E(以下、「結晶形E」という)に関する。
【0067】
具体的な実施形態においては、前記結晶形Eは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが9.1±0.2°、10.6±0.2°、11.1±0.2°、11.9±0.2°、12.7±0.2°、13.9±0.2°、14.4±0.2°、15.9±0.2°、18.2±0.2°、19.0±0.2°、20.3±0.2°、21.8±0.2°、24.1±0.2°、25.2±0.2°、25.8±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0068】
一実施形態では、前記結晶形Eは、その粉末X線回折パターンが基本的に図12に示す通りである。
【0069】
別の実施形態において、前記結晶形EのDSC曲線は、110~130℃に吸熱ピークを有する。DSC曲線は、基本的に図13に示す通りである。
【0070】
一実施形態では、前記結晶形Eがアセトン溶媒和物である。
【0071】
別の態様において、本発明は、以下の方法から選ばれるいずれか1つの方法であることを特徴とする結晶形Eの調製方法に関する。
方法(1):式Iで示される化合物をアセトンに加えて透明な液を形成し、濁りが析出するまで水或いはn-ヘプタンを加え、撹拌しながら固体化し、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Eを得る。
【0072】
方法(2):式Iで示される化合物をアセトン又はアセトンとn-ヘプタンとの混合溶液に加えて懸濁液を形成し、20~40℃で1~3日撹拌した後、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、結晶形Eを得る。
【0073】
一態様では、本発明は、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折(XRPD)パターンにおける、度で表される2θが4.4±0.2°、8.8±0.2°、13.5±0.2°、14.9±0.2°、15.6±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、22.8±0.2°、30.1±0.2°に特徴的なピークを有する式Iで示される化合物の結晶形F(以下、「結晶形F」という)に関する。
【0074】
具体的な実施形態において、前記結晶形Fは、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折パターンにおける、度で表される2θが4.4±0.2°、8.8±0.2°、11.6±0.2°、13.5±0.2°、14.9±0.2°、15.6±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.6±0.2°、19.7±0.2°、21.1±0.2°、22.0±0.2°、22.8±0.2°、23.9±0.2°、24.4±0.2°、30.1±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0075】
一実施形態では、前記結晶形Fは、その粉末X線回折パターンが基本的に図14に示す通りである。
【0076】
別の実施形態において、前記結晶形FのDSC曲線は、90~110℃に吸熱ピークを有する。DSC曲線は、基本的に図15に示す通りである。
【0077】
一実施形態では、前記結晶形Fが1,4-ジオキサン溶媒和物である。
【0078】
別の態様において、本発明は、式Iで示される化合物を1,4-ジオキサンに加えて透明な液を形成し、濁りが析出するまで水を加え、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、20~40℃で24時間真空乾燥させ、結晶形Fを得ることを含む結晶形Fの調製方法に関する。
【0079】
一態様では、本発明は、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折(XRPD)パターンにおける、度で表される2θが4.3±0.2°、5.9±0.2°、8.8±0.2°、12.6±0.2°、14.4±0.2°、17.7±0.2°、21.0±0.2°に特徴的なピークを有する式Iで示される化合物の結晶形G(以下、「結晶形G」という)に関する。
【0080】
一実施形態では、前記結晶形Gは、その粉末X線回折パターンが基本的に図16に示す通りである。
【0081】
別の実施形態において、前記結晶形GのDSC曲線は、100~130℃に吸熱ピークを有する。DSC曲線は、基本的に図17に示す通りである。
【0082】
一実施形態では、前記結晶形Gがメチル-tert-ブチルエーテル溶媒和物である。
【0083】
別の態様において、本発明は、式Iで示される化合物をメチル-tert-ブチルエーテルに加えて懸濁液を形成し、20~40℃で結晶スラリーを1~3日撹拌した後、固体を分離し、20~40℃で8時間真空乾燥させ、結晶形Gを得ることを含む結晶形Gの調製方法に関する。
【0084】
一態様では、本発明はCu-Kα線を使用した粉末X線回折(XRPD)パターンにおける、度で表される2θが4.7±0.2°、5.6±0.2°、9.1±0.2°、10.1±0.2°、12.2±0.2°、13.4±0.2°、14.4±0.2°、23.5±0.2°に特徴的なピークを有する式Iで示される化合物の結晶形H(以下、「結晶形H」という)に関する。
【0085】
一実施形態では、前記結晶形Hは、その粉末X線回折パターンが基本的に図18に示す通りである。
【0086】
別の実施形態において、前記結晶形HのDSC曲線は、80~120℃に吸熱ピークを有する。DSC曲線は、基本的に図19に示す通りである。
【0087】
一実施形態では、前記結晶形Hがn-ヘプタン溶媒和物である。
【0088】
別の態様において、本発明は、結晶形Hを調製する方法において、式Iで示される化合物をアセトニトリル、テトラヒドロフラン、エタノール、ジエチルエーテル又はそれらの混合溶液に加え、透明になるように撹拌しながら溶けて透明な液体を得、濁りが析出するまでn-ヘプタンを加え、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、20~40℃で8~24時間真空乾燥させ、前記結晶形Hを得ることを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1図1は、実施例1で調製された前記結晶形Aの粉末X線回折パターンである。
図2図2は、実施例1で調製された前記結晶形AのDSC曲線である。
図3図3は、実施例1で調製された前記結晶形AのTGA曲線である。
図4図4は、実施例7で調製された前記結晶形Bの粉末X線回折パターンである。
図5図5は、実施例7で調製された前記結晶形BのDSC曲線である。
図6図6は、実施例7で調製された前記結晶形BのTGA曲線である。
図7図7は、実施例11で調製された前記結晶形Cの粉末X線回折パターンである。
図8図8は、実施例11で調製された前記結晶形CのDSC曲線である。
図9図9は、実施例11で調製された前記結晶形CのTGA曲線である。
図10図10は、実施例15で調製された前記結晶形Dの粉末X線回折パターンである。
図11図11は、実施例15で調製された前記結晶形DのDSC曲線である。
図12図12は、実施例17で調製された前記結晶形Eの粉末X線回折パターンである。
図13図13は、実施例17で調製された前記結晶形EのDSC曲線。
図14図14は、実施例21で調製された前記結晶形Fの粉末X線回折パターンである。
図15図15は、実施例21で調製された前記結晶形FのDSC曲線である。
図16図16は、実施例22で調製された前記結晶形Gの粉末X線回折パターンである。
図17図17は、実施例22で調製された前記結晶形GのDSC曲線である。
図18図18は、実施例23で調製された前記結晶形Hの粉末X線回折パターンである。
図19図19は、実施例23で調製された前記結晶形HのDSC曲線である。
図20図20は、調製例で得られた黄色アモルファス固体の粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。これらの用語は、目的を説明するために用いられるものであり、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0091】
一般的な定義及び用語
特に断りがない限り、本明細書で使用される前記技術用語および科学用語は当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、本願で提供されている定義が優先される。範囲、好適な範囲、又は好適な数値上限及び好適な数値下限の形である量、濃度、他の値、又はパラメータを表す場合、その範囲が具体的に開示されているかどうかに関係なく、任意的な1対の範囲上限または好適な数値と任意的な範囲下限または好適な数値と組み合わせたいずれかの範囲を具体的に開示していることと同等であることを理解されたい。特に断りがない限り、本明細書で記載された数値範囲は範囲の端点及びその範囲内の全ての整数および分数(小数)を含むことを意図する。
【0092】
数値変数とともに使用される場合の「約」、「大約」という用語は、通常、該変数の数値及び変数のすべての数値が実験誤差内(例えば、平均値95%の信頼区間内)、又は所定数値の±10%以内、又は、より広い範囲内にあることを意味する。
【0093】
「含む」という表現またはその同義の類似表現「含める」、「含有する」、および「有する」などは、他の例示されない要素、ステップ又は成分を除外するものではない開放型である。「...からなる」という表現は、特定されない何かの要素、ステップ又は成分を除外することを意味する。「基本的に...からなる」という表現は、特定された要素、ステップまたは成分に加えて、保護しようとするテーマの基本的および新しい特徴に実質的に影響を与えない、任意選択的に存在した要素、ステップまたは成分を加えた範囲に限定されることを意味する。「含む」という表現は、「基本的に...からなる」及び「...からなる」の表現を包含することを理解されたい。
【0094】
本明細書で使用される「任意選択的」或いは「任意選択的に」という用語は、後述する事件または状況が発生する場合もなく場合もがあることを意味し、この表現は前記事件または状況が発生すること、と前記事件または状況が発生しないことが含まれる。
【0095】
特に断りがない限り、本明細書で記載されたパーセンテージ、部数などは、すべて重量によるものである。
【0096】
本明細書で使用されるように、「結晶形」或いは「結晶」という用語は、三次元的秩序を持つ任意の固体物質を指し、アモルファス固体物質とは異なり、それが明確な境界のあるピークを有する特徴的な粉末X線回折パターンを生じる。
【0097】
本明細書で使用されるように、「アモルファス」という用語は、三次元的な秩序を持たないを持たない任意的な固体物質を指す。
【0098】
本明細書で使用されるように、「水和物」という用語は、医薬品と化学量論的または非化学量論的な数量の水とを含む溶媒和物を表す。
【0099】
本明細書で使用されるように、「溶媒和物」という用語は、医薬品と化学量論的または非化学量論的量の水以外のものを含む溶媒和物を表す。
【0100】
本明細書で使用されるように、「X線粉末回折(XRPD)パターン」という用語は、実験的に観察された回折パターン、またはそれから導き出されたパラメータ、データ、または値を指す。XRPDパターンは、通常、ピーク位置(横座標)及び/又はピーク強度(縦座標)によって特徴付けられる。
【0101】
本明細書で使用されるように、「2θ」という用語は、X線回折実験に設定された度(°)で表されるピーク位置を指し、また、通常、回折パターンにおける横軸の単位である。入射ビームが特定の格子面に対してθ角度を形成する場合、反射は回折され、実験装置は設定に2θ角度で反射ビームを記録することが必要である。本明細書に言及された特定の結晶形を持つ特定の2θ値が本明細書に記載されたX線回折実験条件を使用して測定された2θ値(度で表される)を表すことを意図していることを理解されたい。例えば、本明細書に記載されるように、Cu-Kα(Kα1は1.5418Åである)を放射線源として使用される。本明細書におけるXRPDパターンは、例えば、Rigaku D/max-2200X-線粉末回折分析装置で収集することができる。例示的な試験条件は、スキャン速度10°/min、走査ステップ幅0.01°であることができる。
【0102】
本明細書で使用されるように、X線回折ピークに関する「基本的に」という用語は、代表的なピーク位置および強度変化が考慮に入れられることを意味する。例えば、当業者に理解されるように、ピーク位置(2θ)が幾つかの変化を示す場合があり、通常、その変化は0.1~0.2度(±0.1から±0.2度)と大きく、また、回折測定に用いられる機器はいくつかの変化を引き起こす場合もある。また、当業者に理解されるように、相対的ピーク強度は、機器間の相違、および結晶化度、優先配向、製造されたサンプルの表面、および当業者に知られている他の要因によって変化することを理解し、それを定性的な測定としてのみ見なすべきである。
【0103】
本明細書で使用されるように、示差走査熱量測定(DSC)は、結晶が結晶構造の変化または結晶の融解によって熱を吸収または放出するときの転移温度を測定する。同種化合物の同種結晶形に対しては、連続分析において、熱転移温度と融点の誤差は典型的に約5℃以内である。ある化合物が特定のDSCピークまたは融点を持つと説明されている場合、該DSCピークまたは融点が±5℃であることを意味する。「基本的に」の用語もその温度変化を考慮に入ったものである。DSCは異なる結晶形を区別するための補助的な方法を提供する。異なる結晶態様は、異なる転移温度特性に従って識別することができる。なお、混合物の場合、そのDSCピークまたは融点はより広い範囲で変化する可能性があることに注意する必要がある。なお、物質の溶融に伴って分解が発生するので、溶融温度が昇温速度に関係している。DSC曲線は、例えば、モデルNETZSCH DSC214 Polymaの機器で測定することができる。例示的な試験条件は、加熱速度:10℃/分、温度範囲:25~250℃である。
【0104】
医薬組成物及び投薬
一実施態様において、本発明は式Iで示される化合物の結晶形及び一種又は複数種薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物を提供する。
【0105】
本明細書で使用される「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、治療薬と共に投与される固体或いは液体の希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指し、そして、それを合理的な医学的判断の範囲内でヒト及び/又は他の動物の組織と接触するのに適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または合理的な利益/リスクに対応する他の問題または合併症がない。
【0106】
本発明に係る医薬組成物に使用できる薬学的に許容されるキャリアには、例えば、水、及び油などの無菌液体が含まれるが、これらに限定されなく、石油、動物、植物、合成由来のものを含み、例えば、大豆油、ピーナッツオイル、ミネラルオイルなどである。医薬組成物が静脈内投与される場合、水が例示的なキャリアである。特には、注射液に用いられる液体キャリアとしては、生理食塩水とグルコース及びグリセリン水溶液も使用することができる。適切な医薬品賦形剤には、グルコース、デンプン、乳糖、ゼラチン、麦芽糖、スクロース、チョーク、シリカゲル、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ナトリウム、タルク、塩化ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれる。前記組成物は、必要に応じて、僅かの湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝剤を含むこともできる。経口製剤は、例えば、薬物レベルのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸ナトリウム、セルロース、サッカリンナトリウム、炭酸マグネシウムなどの標準キャリアを含むこともできる。適切な薬学的に許容されるキャリアの実例は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)に記載されたている。
【0107】
本発明に係る組成物は、全身的および/または局所的に作用することができる。そのため、それらは、例えば、注射、動脈内、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内または経皮などの適切な経路によって投与することができ、または、経口、経鼻、バッカル、経粘膜、局所、眼科用製剤、または吸入によって投与することができる。
【0108】
これらの投与経路について、本発明の組成物は、適切な剤形で投与することができる。前記剤形には、以下に限定されないが、錠剤、滴丸剤、カプセル剤、錠剤、ハードキャンデー剤、散剤、スプレー剤、クリーム剤、軟膏剤、坐剤、ゲル剤、水性懸濁液、注射剤、エリキシル剤、シロップ剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
本発明の医薬組成物は、当分野における周知の任意の方法で製造することができる。例えば、混合、溶解、造粒、糖コーティング、粉砕、乳化、凍結乾燥などの処理によって調製することができる。本明細書で使用される「治療有效量」という用語は、投与後、ある程度治療されている病気の1つまたは複数の症状を軽減できる化合物の量を指す。
【0110】
投薬レジメンは、所望する最好の応答を提供するように調整することができる。例えば、シングルボーラスショットで投与することができ、幾つかの分画投与量で経時的に投与することもでき、又は、治療状況の緊急需要に応じて投与量を比例して減少または増加させることができる。なお、用量は、軽減されるべき病状のタイプおよび重症度によって変化することができ、また、単回または複数回の投与量を含むことができることに留意されたい。さらに、特定の個人については、具体的な投薬レジメンは、個人のニーズ及び組成物を投与するかまたは組成物の投与を監督する従業員の専門的な判断に基づき、経時的に調整するべきであることを理解されたい。
【0111】
別段の説明がない限り、本明細書で使用される「治療」という用語は、このような用語が適用される障害または状態或いはこのような障害または状態の1つまたは複数の症状の進行を逆転、軽減、阻害するか、又は、このような障害または状態或いはこのような障害または状態の1つまたは複数の症状の進行を予防することを意味する。
【0112】
本明細書で使用されるように、「個体」には、ヒトまたはヒト以外の動物が含まれる。例示的なヒト個体には、疾患(例えば、本明細に係る疾患)に罹患している個体(患者と呼ばれる)或いは正常な個体が含まれる。本発明における「非ヒト動物」には、すべての脊椎動物が含まれ、例えば、非哺乳動物(両生類、爬虫類、鳥類など)、及び非ヒト霊長類、家畜及び/又は飼いならされた動物(犬、猫、羊、牛、豚など)などの哺乳動物が挙げられる。
【0113】
有利な効果
本発明の式Iで示される化合物の結晶形は、良好な溶解性、簡単な結晶化プロセス、便利な操作、低汚染を有し、工業生産を実現することができる。さらに、本発明の結晶形薬は、高い製品の純度、優れた物理的性質、高温・高湿度での良好な安定性、および良好な化学的や物理的安定性、優れた処理(ろ過、乾燥、溶出及び打錠)の適応性、再現性などの利点を有し、また、良好な溶解度、溶出速度、溶出時間および生物学的放出を有し、良好な市場適用の見通しを有する。
【実施例
【0114】
以下、実施例より、本発明をさらに説明するが、それらの実施例は、本発明の内容をよく理解することを目的とし、本発明の保護範囲に対する制限または限定を構成するものではない。
【0115】
式Iで示される化合物の結晶形の製造及び特徴付け
調製例
本発明の実施例に記載の式Iで示される化合物は、特許WO2017080338A1の実施例1の方法1に従って調製し、ジクロロメタン/メタノール混合溶媒で透明になるように溶けた後、減圧下で濃縮し、黄色固体を得た。XRPDによって検出した結果、得られた黄色固体がアモルファスであり、その粉末X線回折パターンが図20に示される。
【0116】
測定機器の情報及び方法
本発明に係るX-線粉末回折装置及び測定条件は、X線回折機器モデルRigaku D/max-2200 Cuターゲットを使用し、操作方法:走査速度10°/min、走査ステップ幅0.01°である。
【0117】
本発明に係るDSC測定条件は、DSC検出装置のモデルがNETZSCH DSC214 Polymaであり、操作方法は、昇温速度10℃/min或いは2℃/min、温度範囲25~250℃である。
【0118】
本発明に係るTGA測定条件は、TGA検出装置のモデルがPerkinElmer TGA4000であり、操作方法は、昇温速度10℃/min、温度範囲25~250℃である。
【0119】
本発明に係る高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定条件は、液体クロマトグラフのモデルがAgilent 1260であり、カラムがAgilent Eclipse XDB C-18 250mm×4.6mm 5umであり、検出波長が280nmであり、カラム温度が35℃である。
【0120】
本発明に係る単結晶の測定条件は、単結晶X線回折装置のモデルがBruker APEX-II CCDであり、GaKαターゲットであり、温度169.97Kである。
【0121】
本発明に係るカールフィッシャー水分計は、モデルがMettler Toledo V20 Volumetric KF Tieratorであり、溶剤がメタノールである。
実施例1 結晶形Aの製造
【0122】
式Iで示される化合物1gを5mLのメタノールに加え、25℃で撹拌しながら透明になるように溶け、濁りが析出するまで3mLの水に加え、固体化するまで撹拌し、固体を分離し、40℃で8時間真空乾燥させ、0.85gの固体を得た。それは、結晶形A(純度99.33%)であり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線が、それぞれに図1~3に示される。
実施例2 結晶形Aの製造
【0123】
式Iで示される化合物1gを20mLエタノールに加え、20℃で撹拌しながら透明になるように溶け、濁りが析出するまで100mL水に加え、固体化する撹拌し、固体を分離し、20℃で24時間真空乾燥させ、0.82gの固体を得た。それは、結晶形Aであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線がそれぞれ図1~3と一致している。
実施例3 結晶形Aの製造
【0124】
式Iで示される化合物1gを15mLイソプロパノールに加え、60℃で撹拌しながら透明になるように溶け、濁りが析出するまで50mL水に加え、固体化するまで撹拌し、固体を分離し、60℃で16時間真空乾燥させ、0.87gの固体を得た。それは、結晶形Aであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線がそれぞれ図1~3と一致している。
実施例4 結晶形Aの製造
【0125】
式Iで示される化合物1gを10mLの水に加えて懸濁液を得、50℃で結晶スラリーを1日間撹拌し、固体を分離し、フィルターケーキを60℃で24時間真空乾燥させ、0.95gの固体を得た。それは、結晶形Aであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線がそれぞれ図1~3と一致している。
実施例5 結晶形Aの製造
【0126】
式Iで示される化合物1gを2mLのメタノールに加えて懸濁液を得、5℃で結晶スラリーを7日間撹拌し、固体を分離し、フィルターケーキを20℃で8時間真空乾燥させ、0.90gの固体を得た。それは、結晶形Aであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線がそれぞれ図1~3と一致している。
実施例6 結晶形Aの製造
【0127】
式Iで示される化合物1gを4mLのイソプロパノールに加えて懸濁液を得、25℃で結晶スラリーを3日間撹拌し、固体を分離し、フィルターケーキ40℃で16時間真空乾燥させ、0.92gの固体を得た。それは、結晶形Aであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線がそれぞれ図1~3と一致している。
実施例7 結晶形Bの製造
【0128】
式Iで示される化合物1gを3mLの水飽和ジクロロメタンに加えて懸濁液を形成し、25℃で、結晶スラリーを24時間撹拌し、固体を分離し、40℃で8時間真空乾燥させ、0.65gの固体を得た。それは、結晶形B(純度99.87%)であり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線がそれぞれに図4~6に示される。
実施例8 結晶形Bの製造
【0129】
式Iで示される化合物1gを3mLの水飽和ジクロロエタンに加えて懸濁液を形成し、40℃で0.5時間撹拌し、固体を分離し、20℃で8時間真空乾燥させ、0.78gの固体を得た。それは、結晶形Bであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線が図4~6と一致している。
実施例9 結晶形Bの製造
【0130】
式Iで示される化合物1gを、4mLの水飽和トリクロロメタンに加えて懸濁液を形成し、5℃で12時間撹拌し、固体を分離し、40℃で16時間真空乾燥させ、0.68g固体を得た。それは、結晶形Bであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線が図4~6と一致している。
実施例10 結晶形Bの製造
【0131】
式Iで示される化合物1gを、4mLの水飽和ジブロモメタンに加えて懸濁液を形成し、15℃で36時間撹拌し、固体を分離し、40℃で24時間真空乾燥させ、0.72gの固体を得た。それは、結晶形Bであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線が図4~6と一致している。
実施例11 結晶形Cの製造
【0132】
式Iで示される化合物1gを、15mLの水飽和ジクロロメタンに加えて懸濁液を形成し、25℃で3日間撹拌し、固体を分離し、40℃で8時間真空乾燥させ、0.80gの固体を得た。それは、結晶形C(純度99.78%)であり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線が、それぞれ図7~9に示される。
実施例12 結晶形Cの製造
【0133】
式Iで示される化合物1gを50mLの水飽和ジブロモメタンに加えて懸濁液を形成し、5℃で7日間撹拌し、固体を分離し、40℃で16時間真空乾燥させ、0.68gの固体を得た。それは、結晶形Cであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線が、それぞれ図7~9と一致している。
実施例13 結晶形Cの製造
【0134】
式Iで示される化合物1gを、25mLの水飽和ジクロロエタンに加えて懸濁液を形成し、15℃で5日間撹拌し、固体を分離し、20℃で24時間真空乾燥させ、0.74gの固体を得た。それは、結晶形Cであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線が、それぞれ図7~9と一致している。
実施例14 結晶形Cの製造
【0135】
式Iで示される化合物1gを、30mLの水飽和トリクロロメタンに加えて懸濁液を形成し、40℃で3日間撹拌し、固体を分離し、30℃で16時間真空乾燥させ、0.71gの固体を得た。それは、結晶形Cであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線及びTGA曲線が、それぞれ図7~9と一致している。
実施例15 結晶形Dの製造
【0136】
式Iで示される化合物1gを10mLのブタノンに加え、撹拌しながら溶解させ、透明な液体を形成し、さらに、濁りが析出するまで100mLの水を加え、固体化するまで撹拌し、固体を分離し、40℃で8時間真空乾燥させ、0.81gの固体を得た。それは、結晶形Dであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図10~11に示される。
実施例16 結晶形Dの製造
【0137】
式Iで示される化合物1gを3mLのブタノンに加えて懸濁液を形成し、25℃で24時間撹拌し、固体を分離し、40℃で24時間真空乾燥させ、0.91gの固体を得た。それは、結晶形Dであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図10~11と一致している。
実施例17 結晶形Eの製造
【0138】
式Iで示される化合物1gを3mLのアセトンに加えて懸濁液を形成し、25℃で24時間撹拌し、ろ過し、固体を分離し、40℃で8時間真空乾燥させ、0.55gの固体を得た。それは、結晶形Eであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図12~13に示される。
実施例18 結晶形Eの製造
【0139】
式Iで示される化合物1gを、8mLのアセトンに加え、撹拌しながら透明になるように溶けて透明な液を形成し、濁りが析出するまで6mLのn-ヘプタンを加えて、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、40℃で24時間真空乾燥させ、0.75gの固体を得た。それは、結晶形Eであり、その粉末X線回折パターン、DSC曲線が、それぞれ図12~13と一致している。
実施例19 結晶形Eの製造
【0140】
式Iで示される化合物1gを、8mLのアセトンに加え、撹拌しながら透明になるように溶けて透明な液を形成し、さらに、濁りが析出するまで8mLの水を加え、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、20℃で16時間真空乾燥させ、0.78gの固体を得た。それは、結晶形Eであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図12~13と一致している。
実施例20 結晶形Eの製造
【0141】
式Iで示される化合物1gを、3mLのアセトン、3mLのn-ヘプタンに加えて懸濁液を形成し、30℃で3日間撹拌し、ろ過し、25℃で16時間真空乾燥させ、0.82gの固体を得た。それは、結晶形Eであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図12~13と一致している。
実施例21 結晶形Fの製造
【0142】
式Iで示される化合物1gを、5mLの1,4-ジオキサンに加え、撹拌しながら透明になるように溶けて透明な液を形成し、200mLの水を加えて固体を析出させ、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、40℃で24時間真空乾燥させ、0.94gの固体を得た。それは、結晶形Fであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図14~15に示される。
実施例22 結晶形Gの製造
【0143】
式Iで示される化合物1gを、10mLのメチル-tert-ブチルエーテルに加えて懸濁液を形成し、25℃で24時間撹拌し、固体を分離し、40℃で8時間真空乾燥させ、0.75gの固体を得た。それは、結晶形Gであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図16~17に示される。
実施例23 結晶形Hの製造
【0144】
式Iで示される化合物1gを、15mLのアセトニトリルに加え、撹拌しながら透明になるように溶けて透明な液を得、さらに、濁りが析出するまで95mLのn-ヘプタンを加え、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、40℃で16時間真空乾燥させ、0.70gの固体を得た。それは、結晶形Hであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図18~19に示される。
実施例24 結晶形Hの製造
【0145】
式Iで示される化合物1gを、10mLのエタノールに加えて、撹拌しながら透明になるように溶けて透明な液を得、さらに、濁りが析出するまで100mLのn-ヘプタンを加え、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、20℃で8時間真空乾燥させ、0.74gの固体を得た。それは、結晶形Hであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図18~19と一致している。
実施例25 結晶形Hの製造
【0146】
式Iで示される化合物1gを、150mLのジエチルエーテルに加えて撹拌しながら透明になるように溶けて透明な液を得、さらに、濁りが析出するまで950mLのn-ヘプタンを加え、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、40℃で8時間真空乾燥させ、0.67gの固体を得た。それは、結晶形Hであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図18~19と一致している。
実施例26 結晶形Hの製造
【0147】
式Iで示される化合物1gを、10mLのテトラヒドロフランに加え、撹拌しながら透明になるように溶けて透明な液を得、さらに、濁りが析出するまで75mlのn-ヘプタンを加え、撹拌しながら固体化させ、固体を分離し、30℃で24時間真空乾燥させ、0.63gの固体を得た。それは、結晶形Hであり、その粉末X線回折パターン、及びDSC曲線が、それぞれ図18~19と一致している。
式Iで示される化合物のアモルファス形態の調製
【0148】
WO2017080338A1の実施例1に従って式Iで示される化合物のアモルファス形態を調製する。
定性実験
【0149】
前記調製例で調製された式Iで示される化合物のアモルファス形態、実施例1で調製された式Iで示される化合物の結晶形A、実施例7で調製された式Iで示される化合物の結晶形B及び実施例11で調製された式Iで示される化合物の結晶形Cを、それぞれ75%RH、92.5%RH、40℃、60℃及び光照射の環境下で10日間放置し、各結晶形の粉末X線回折パターン及び純度を測定した結果、結晶形A、結晶形B及び結晶形Cは、安定性が良好であることが示される。具体的な結果を下記の表に示す。

粒子サイズ実験
【0150】
前記調製例で調製された式Iで示される化合物のアモルファス形態、実施例1で調製された式Iで示される化合物の結晶形A、実施例7で調製された式Iで示される化合物の結晶形B及び実施例11で調製された式Iで示される化合物の結晶形Cを取り、それぞれの粒子サイズを測定した。具体的な結果を下記の表に示す。
【0151】
上記の結果は、アモルファス粒子が明らかに小さく、結晶形A、B及びCの粒子サイズよりも著しく小さいことを示している。
流動性試験
【0152】
前記調製例で調製された式Iで示される化合物のアモルファス形態、実施例1で調製された式Iで示される化合物の結晶形A、実施例7で調製された式Iで示される化合物の結晶形B及び実施例11で調製された式Iで示される化合物の結晶形Cを取り、それぞれの安息角を測定した。具体的な結果を下記の表に示す。
【0153】
上記の結果は、アモルファス形態の安息角が結晶形A、B及びCの安息角よりも著しく大きいことを示し、これは、結晶形A、B及びCが流動性の点でアモルファス形態よりも著しく優れたことを示している。
【0154】
当業者は、本発明の技術案に係る数値または数値端点は、その意味又は保護する範囲がその数値自体に限定されず、当分野で広く受け入れられている許容誤差範囲、例えば実験誤差、測定誤差、統計誤差及びランダム誤差などを含み、また、それらの誤差範囲の全てが本発明の範囲に含まれることを理解することができる。
【0155】
本発明は、その思想および範囲から逸脱することなく、多くの修正や変更を行うことができることは当業者にとって明らかである。本明細書に記載された具体的な実施形態は、実例としてのみ提供されるが、何かに限定されることを意味するものではない。本発明の本質的な範囲及び思想は、後記の特許請求の範囲によって示される。明細書及び実施例が単なる例示である。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10
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【国際調査報告】