IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォトニス フランスの特許一覧

特表2022-534059量子収量が改善されたフォトカソード
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】量子収量が改善されたフォトカソード
(51)【国際特許分類】
   H01J 29/38 20060101AFI20220720BHJP
   H01L 31/08 20060101ALI20220720BHJP
   H01J 1/34 20060101ALI20220720BHJP
   H01J 31/50 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01J29/38
H01L31/08 S
H01J1/34
H01J31/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569499
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 FR2020000176
(87)【国際公開番号】W WO2020234518
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】1905412
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517348189
【氏名又は名称】フォトニス フランス
【氏名又は名称原語表記】PHOTONIS FRANCE
【住所又は居所原語表記】Avenue Roger Roncier, 19100 Brive, France
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラブート,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ニュッツェル,ヘルト
【テーマコード(参考)】
5F849
【Fターム(参考)】
5F849AB01
5F849AB07
5F849AB09
5F849BB05
(57)【要約】
本発明は、入射光子の流れを受け取ることが意図された入口窓(310)をはじめ、半導体層の形式のフォトカソード(320)を包含する電磁放射線検出器に関する。入口窓の下流面(312)上に導電層(316)が堆積され、導電層(316)と半導体層(320)の間に薄い誘電体層(317)が配置される。導電層には、光電子が再結合ゾーンから駆り出されるように半導体層より低い電位がもたらされ、その結果、フォトカソードの量子収量が改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線検出器であって、入射光子束を受け取ることが意図された上流面(311)をはじめ、前記上流面の反対側の下流面(312)を有するガラス入口窓(310)と、前記入射光子から光電子を生成し、そのように生成された前記光電子を放射することが意図された半導体層(320)の形式のフォトカソードと、前記フォトカソードによって放射された前記光電子を受け取り、受け取った各光電子について複数の二次電子を生成するべく構成された電子増倍デバイス(330)と、前記二次電子から出力信号を生成するべく構成された出力デバイス(340)と、を包含し、それにおいて、前記入口窓の前記下流面(312)を覆って透過性の導電層(316)が堆積され、前記導電層(316)と前記半導体層(320)の間に薄い絶縁層(317)が配置され、前記導電層が第1の電極(315)と電気的に接続され、前記半導体層が第2の電極(325)と電気的に接続され、前記第1の電極が、前記第2の電極において印加される電位より低い電位に設定されることが意図されていること、を特徴とする電磁放射線検出器。
【請求項2】
前記半導体層は、多結晶半導体材料から作られることを特徴とする、請求項1に記載の電磁放射線検出器。
【請求項3】
前記多結晶半導体材料は、SbKCs、SbRbCs、SbRbCs、SbCs、SbNa、SbNaKRbCs、SbNaKCs、SbNaKCsから選択されることを特徴とする、請求項2に記載の電磁放射線検出器。
【請求項4】
前記半導体層は、III-IVまたはII-VI単結晶半導体材料から作られることを特徴とする、請求項1に記載の電磁放射線検出器。
【請求項5】
前記透過性の導電層は、ITOまたはZnOから作られることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電磁放射線検出器。
【請求項6】
前記薄い絶縁層は、1V/10nmより高い降伏電圧を有する誘電体材料から作られることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電磁放射線検出器。
【請求項7】
前記薄い絶縁層は、100から200nmの厚さを有することを特徴とする、請求項6に記載の電磁放射線検出器。
【請求項8】
前記誘電体材料は、Al、SiO、HfOから選択されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電磁放射線検出器。
【請求項9】
前記第2の電極と前記第1の電極の間に印加される前記電位差は、
【数8】

より高いか、またはそれと等しく選択されることを特徴とし、それにおいて、εおよびεは、それぞれ、前記半導体層および前記絶縁層の比誘電率であり、δは、前記絶縁層の厚さであり、ΔUbbは、電位差の印加がないときのバンド・ベンディングの振幅であり、Nは、前記半導体層内のアクセプタの濃度であり、eは、前記電子の電荷である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電磁放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像増強管または光電子増倍管に使用されているフォトカソード等、フォトカソードの一般分野に関する。
【背景技術】
【0002】
像増強管または光電子増倍管等の電磁放射線検出器は、所定のスペクトル帯域内の電磁放射線を光または電気出力信号に変換することによってそれの検出を可能にする。
【0003】
概して言えば、これらの検出器は、電磁放射線を受け取り、それに応答して光電子束を放射するためのフォトカソードと、前記光電子束を受け取り、それに応答していわゆる二次電子束を放射するための電子増倍デバイスと、最後に、前記電子束を受け取り、それを出力信号に変換するための出力デバイスと、を含む。
【0004】
図1は、従来技術から周知の電磁放射線検出器を表している。
【0005】
この図の中に図解されているとおり、この種の検出器100は、透過性材料、すなわち一般にはガラスから作られる入口窓110を包含し、それが、半導体材料から作られるフォト放射層またはフォトカソード120のための支持としての機能を提供する。入口窓は、入射光子束を受け取ることが意図されている前面111と、当該前面の反対側の背面112とを有する。フォト放射層は、入口窓の背面と接触している上流面121と、光電子が放射される下流面122とを含む。
【0006】
フォトカソードは、電子増倍デバイス130に印加される電位に対して負に設定され、電子増倍デバイス自体は、出力デバイス140、たとえば、蛍光スクリーンまたはCCDアレイに印加される電位に対して負に置かれる。
【0007】
前面111に衝突する光子は、透過窓110を横切り、フォト放射層120内に侵入し、それらが半導体材料のバンド・ギャップ幅より高いエネルギを有していれば、そこで電子-正孔ペアを生成する。光電子は、フォトカソードの下流面122に向かって移動して真空中に放射され、その後に電子増倍デバイス130によって増倍されて、出力デバイス140によって光または電気信号に変換される。
【0008】
フォトカソードの量子収量は、従来的に、フォトカソードによって放射された光電子の数と受け取られた光子の数の間の比として定義されている。フォトカソードの量子収量は、検出器の本質的なパラメータであり、それの感度と信号対ノイズ比の両方を条件付ける。とりわけそれは、入射光子の波長およびフォト放射層の厚さに依存する。
【0009】
量子収量は、フォトカソード120と透過窓110の間の界面における欠陥の存在によって実質的に低下され得る。より具体的に述べれば、これらの欠陥は、フォトカソード内において生成される光電子を捕獲する表面準位を作り出す。その態様で捕獲された光電子は、フォトカソードの下流面に向かって移動することが可能でなくなり、したがって、フォトカソードによって放射される光電子による光電流の生成に寄与しない。
【0010】
フォトカソードの量子収量におけるこの低下は、とりわけ短い波長において見られる。実際、より高いエネルギを伴った光子は、フォトカソード内のそれらの軌道に沿って、より早期に半導体と相互作用する。その結果として、それらの光子によって生成される光電子は、界面において捕獲されることがよりありがちとなる。
【0011】
量子収量におけるこの低下を克服するために、入口窓とフォトカソードの間の界面に、フォトカソードより広いバンド・ギャップを有する半導体材料の中間層を導入することが提案された。したがって、たとえば、フォトカソードがp型GaAs等のIII-V半導体材料から作られている場合には、当該界面にp型GaAlAsの中間層を導入することが可能である。GaAsに関して言えば、それより広いGaAlsAsのバンド・ギャップ幅が、図2のバンド・ダイアグラムに示されるとおり、フォトカソード側への上向きのバンド・ベンディングを作り出す。したがって、光子が界面直近で電子-正孔ペアを生成するとき、局所電界によって光電子が再結合エリアから抜き取られる。
【0012】
それにもかかわらず、この解決策は、すべてのタイプのフォトカソード、とりわけ、多結晶の材料、たとえば、SbKCs、SbRbCs、SbRbCs、SbCs、SbNa、SbNaKRbCs、SbNaKCs、SbNaKCs等の2-またはマルチ-アルカリ化合物から作られるそれに移植することが不可能である。これらのフォトカソードは、その多結晶構造に起因して明確なバンド・ダイアグラムを有してなく、多結晶材料との界面における所望のバンド・ベンディングを得ることを可能にする第2の半導体材料の中間層の提供が困難である。
【0013】
より一般的に言えば、単結晶半導体材料から作られたフォトカソードについてさえ、そのフォトカソードを形成する半導体材料とともにメッシュ・マッチングと所望のバンド・ベンディングの両方の獲得が可能になる適切な第2の半導体材料を見付けることが常に容易であるとは限らない。このことは、とりわけ、CdTe等のII-VI半導体材料から作られるフォトカソードについて問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、高い量子収量を有し、しかも、入口窓とフォトカソードの間に適切な第2の半導体材料から作られた中間層を必要としない、第1の半導体材料から作られたフォトカソードを有する電磁放射線検出器を提供することをねらいとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、電磁放射線検出器であって、入射光子束を受け取ることが意図された上流面をはじめ、前記上流面の反対側の下流面を有するガラス入口窓と、前記入射光子から光電子を生成し、そのように生成された前記光電子を放射することが意図された半導体層の形式のフォトカソードと、前記フォトカソードによって放射された前記光電子を受け取り、受け取った各光電子について複数の二次電子を生成するべく構成された電子増倍デバイスと、前記二次電子から出力信号を生成するべく構成された出力デバイスと、を包含し、それにおいて、前記入口窓の前記下流面を覆って透過性の導電層が堆積され、前記導電層と前記半導体層の間に薄い絶縁層が配置され、前記導電層が第1の電極と電気的に接続され、前記半導体層が第2の電極と電気的に接続され、前記第1の電極が、前記第2の電極において印加される電位より低い電位に設定されることが意図されていること、が特有である放射線検出器によって定義される。
【0016】
とりわけ、前記半導体層は、多結晶半導体材料から作ることができる。この材料は、SbKCs、SbRbCs、SbRbCs、SbCs、SbNa、SbNaKRbCs、SbNaKCs、SbNaKCsから選択できる。
【0017】
それに代えて、前記半導体層を、III-IVまたはII-VI単結晶半導体材料から作ることができる。
【0018】
通常、前記透過性の導電層は、ITOまたはZnOから作られる。
【0019】
好都合には、前記薄い絶縁層が、1V/10nmより高い降伏電圧を有する誘電体材料から作られる。概して言えば、この薄い絶縁層は、100乃至200nmの厚さを有する。好都合には、前記誘電体材料が、Al、SiO、HfOから選択される。
【0020】
好都合には、前記第2の電極と前記第1の電極の間に印加される前記電位差が、
【数1】

より高いか、またはそれと等しく選択され、それにおいて、εおよびεは、それぞれ、前記半導体層および前記絶縁層の比誘電率であり、δは、前記絶縁層の厚さであり、ΔUbbは、電位差の印加がないときのバンド・ベンディングの振幅であり、Nは、前記半導体層内のアクセプタの濃度であり、eは、前記電子の電荷である。
【0021】
本発明のこのほかの特徴および利点は、添付図面を参照して説明する本発明の好ましい実施態様を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】すでに説明済みの従来技術から周知の電磁放射線検出器の構造を略図的に表した説明図である。
図2】従来技術から周知の高量子収量を伴うフォトカソードのバンド・ダイアグラムを表した説明図である。
図3】本発明の実施態様に従った電磁放射線検出器の構造を略図的に表した説明図である。
図4図3の電磁放射線検出器内に使用されているフォトカソードのバンド・ダイアグラムを表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の根底をなす概念は、電磁検出器の入口窓とフォトカソードの間に、分極電極としての機能を提供する薄い導電層によって、かつ薄い誘電体層によって形成される容量性の構造を導入することにある。分極電極は、界面直近で生成された光電子が再結合エリアから追い出されるように、フォトカソードに印加される電位より低い電位で分極されることが意図されている。
【0024】
図3は、本発明の実施態様に従った電磁放射線検出器の構造を略図的に表している。
【0025】
検出器は、前述と同様に、注目スペクトル帯域において透過性の材料から作られた入口窓310、たとえば、石英またはホウケイ酸ガラスから作られた窓を包含する。
【0026】
入口窓は、入射光子束を受け取ることが意図された上流面311と、上流面の反対側の下流面312とを有する。
【0027】
注目スペクトル帯域において透過性の導電層316が、入口窓の下流面を覆って堆積されている。さらにこれは、第1の電極315と電気的に接続される。透過性の導電層は、ZnOまたはITOから都合よく作ることができる。それの厚さは50から数百ナノメートルまでの範囲内から選択され、都合よくは150nmに等しい。
【0028】
誘電体材料から作られる絶縁層317が、導電層316とフォトカソード320の半導体層の間に配置されている。誘電体材料は、高い降伏電圧を有するように、たとえばそれが1V/10nmより高くなるように選択される。誘電体層の厚さは、通常、100から200nmまでとなる。誘電体材料は、とりわけ、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、または酸化ハフニウム(HFO)からなるとすることができる。1つの変形によれば、絶縁層を、上記の誘電体材料を伴った多層誘電体構造の形式で作ることができる。
【0029】
フォトカソード320は、絶縁層317を覆って堆積された半導体層の形式で作られる。半導体は、単結晶、たとえば、GaAs等のIII-V半導体、またはCdTe等のII-VI半導体とすることができる。それに代えて、それは、とりわけ、SbKCs、SbRbCs、SbRbCs、SbCs、SbNa、SbNaKRbCs、SbNaKCs、SbNaKCs等の2-またはマルチ-アルカリ化合物についての場合が可能となるとおり、多結晶構造を有することができる。
【0030】
いずれの場合においても、フォトカソードは、第2の電極325と電気的に接続される。
【0031】
フォトカソードによって放射される一次電子は、真空中に放射され、電子増倍デバイス330、たとえば、本件出願人の名において出願された仏国特許出願公開第2961628A号の中で述べられているとおりのマイクロチャンネル・プレート(MCP)またはナノ結晶ダイアモンド層、または従来的な光電子増倍管の場合の離散的なダイノード増倍管によって増倍される。
【0032】
電子増倍デバイスは、第3の電極(図示せず)と接続される。
【0033】
この態様で増倍された、二次電子と呼ばれる光電子は、出力デバイス340によって受け取られる。出力デバイスは、像増強管におけるような画像への直接変換を確保する蛍光スクリーン、またはEB-CCD(電子衝撃CCD)またはEBCMOS(電子衝撃CMOS)システムにおけるような入射光子束の分布を表す電気信号を出力するCCDまたはCMOSアレイ、または従来的な光電子増倍管の場合の単純な金属アノードを含むことができる。
【0034】
出力デバイスは、アノードとしての機能を提供する第4の電極と接続される。
【0035】
入口窓310、フォトカソード320、電子増倍デバイス330、および出力デバイスは、コンパクトな管本体内に都合よくマウントされ、電極の外部電源との電気的な接続は、誘電体スペーサによって分離された接続リングによって確保される。好都合な変形によれば、管本体を、本件出願人の名において出願された仏国特許出願公開第2925218A号の中で述べられているとおり、電子増倍デバイスが上に固定される多層セラミック基板の形式とすることができる。
【0036】
当然のことながら、従来的なフォトカソードと同様に、光電子の抜き取りおよびそれの加速は、アノードとカソードの間における高電圧の印加によって確保される。それにもかかわらず、非従来的な点として、導電層がフォトカソードの電位より低い電位に設定されるように、第1の電極と第2の電極の間に負の電圧が印加される。より具体的に述べれば、導電層とフォトカソードとアノードのそれぞれの電位を、それぞれ、V、Vpk、Vで表せば、
【数2】
となる。言い換えると、導電層とアノードの間の電位差は、本質的にフォトカソードとアノードの間の電位差に起因する。実際問題として、電位差Vpk-Vは、1から50Vの間となるが、電位差V-Vpkは、数百Vの範囲内となる。
【0037】
第1の電極へのこの電圧の印加は、生成された、再結合エリア321内の光電子をフォトカソードの放射表面322へ向けて追い出す結果をもたらす。フォトカソードの再結合エリアは、誘電体層との界面に位置する。実際のところ、誘電体層との界面における転位および欠陥は、光電子の再結合の中心として働くことをこの分野の当業者は理解するはずである。再結合エリア内における光電子の滞留時間は、導電層とフォトカソードの間に印加される電界に起因して非常に短く、その分、それの再結合の尤度が低減される。
【0038】
さらにまた、フォトカソード内の光電子の運びが、主として拡散に帰するものではなくなり、内部電界にも起因することになる。その結果、フォトカソード内における電子の平均移動時間が短縮され、光検出器の応答時間の改善がもたらされる。
【0039】
図4は、図3の電磁放射線検出器内に使用されているフォトカソードのバンド・ダイアグラムを表す。
【0040】
導電層が410によって、絶縁層が420によって、フォトカソードの半導体層が430によってそれぞれ示されている。
【0041】
上側部分の(A)として参照される図は、導電層と(p型)半導体層の間に電位差の印加がない状況に対応する。
【0042】
ここで、半導体層の伝導帯および価電子帯が、絶縁層との界面において下向きにカーブしていることに注意する必要がある。言い換えると、その種の状況では、界面において、ポテンシャル・カップ424内に光電子ガスが形成される。それに加えて、表面準位が見付かる再結合エリアが425によって示されている。
【0043】
界面またはその近傍において生成された光電子は、表面準位との再結合の尤度が高く、ポテンシャル・カップ内に存在する光電子が再結合エリアに向かって移動する傾向を有するときには、さらにそれが高くなる。
【0044】
下側部分の(B)として参照される図は、導電層が半導体層より低い電位に設定される状況に対応する。より具体的に述べれば、電位差Vpk-Vが、後述するとおり、ここではスレッショルド値ΔVthより高く選択される。
【0045】
半導体層の伝導帯および価電子帯が、この場合には、絶縁層との界面において上向きにカーブしていることに注意する必要がある。言い換えると、その種の状況では、界面において生成された光電子が、バンド・ベンディングのエリアに存在する電界によって再結合エリア425から追い出される。
【0046】
印加されるべき電位差Vpk-Vは、次のとおりに推定することが可能である:印加電圧がない場合(状況(A))においては、バンド・ベンディングに対応する(負の)空間電荷が表面準位の(正の)電荷とバランスする。この空間電荷は、次式によって近似できる。
【数3】

これにおいて、eは電子の電荷であり、Nは(p型)フォトカソード内のアクセプタの濃度であり、xdtは、欠乏エリアの幅である。
【0047】
欠乏エリアの幅は、次式によって推定できる。
【数4】

これにおいて、εは、半導体の比誘電率であり、ΔUbbは、電位差がないときのバンド・ベンディングである。この結果が、
【数5】

である。
【0048】
したがって、フォトカソード内の容量効果によるこの電荷の単純なバランスを可能にする導電層とフォトカソードの間に印加されるべき電位差は、次式により与えられる。
【数6】

これにおいて、指数FFは、界面においてバンドが平坦である状況に対応し、δは、絶縁層の厚さであり、εは、その比誘電率である。バンド・ベンディングを少なくとも反転することが望ましい場合には、次式を用いて電位差(V-Vpk)≦-ΔVthを適用する必要がある。
【数7】
【0049】
しかしながら、この分野の当業者であれば理解されるものとするが、バンド・ベンディングの低減により、それの反転の前でさえ、界面におけるポテンシャル・カップの幅が低減され、かつ光電子の再結合の尤度が結果的に低減される限りにおいて、量子収量の改善が、V<Vpkのときに得られることになる。
【符号の説明】
【0050】
100 検出器
110 入口窓、透過窓
111 前面
112 背面
120 フォトカソード、フォト放射層
121 上流面
122 下流面
130 電子増倍デバイス
140 出力デバイス
310 入口窓
311 上流面
312 下流面
315 第1の電極
316 導電層
317 絶縁層
320 フォトカソード
321 再結合エリア
322 放射表面
325 第2の電極
330 電子増倍デバイス
340 出力デバイス
424 ポテンシャル・カップ
425 再結合エリア
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
【国際調査報告】