IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ステムディーアール インク.の特許一覧

特表2022-534083N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物
<>
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図1
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図2
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図3
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図4
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図5
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図6A
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図6B
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図7A
  • 特表-N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物 図7B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20220720BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20220720BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220720BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20220720BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20220720BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220720BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20220720BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/405
A61P11/06
A61P27/16
A61P27/14
A61P29/00
A23L33/175
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569906
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2020006651
(87)【国際公開番号】W WO2020242133
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0060932
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0060667
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513029921
【氏名又は名称】ステムディーアール インク.
【氏名又は名称原語表記】STEMDR INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ミョン-クァン
(72)【発明者】
【氏名】イ,クァンホ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD19
4B018ME07
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZB08
4C086ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA37
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZA34
4C206ZA59
4C206ZB08
4C206ZB11
(57)【要約】
本発明は、人体に副作用が殆どないN-アシル-アミノ酸を用いた喘息、鼻炎及び/又は結膜炎の予防、改善又は治療用組成物に関する。本発明の組成物は、喘息の主要臨床症状である気道内炎症反応及び気道線維化のいずれに対しても改善効果を示し、喘息症状を改善させる効果に優れるので、喘息改善用の医薬品又は食品に有用に利用可能である。また、鼻炎及び結膜炎に対する臨床症状も顕著に改善され、鼻炎及び結膜炎改善用の医薬品又は食品に有用に利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-アシル-アミノ酸又はその薬剤学的に許容可能な塩を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項2】
前記N-アシル-アミノ酸は、N-アシル-アラニン(N-acyl-alanine)又はN-アシル-トリプトファン(N-acyl-tryptophan))であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項3】
前記N-アシル-アラニンは、N-アセチル-アラニン(N-acetyl-alanine)又はN-オレオイル-アラニン(N-oleoyl-alanine)であることを特徴とする、請求項2に記載の薬剤学的組成物。
【請求項4】
前記N-アシル-トリプトファンは、N-アセチル-トリプトファン(N-acetyl-tryptophan)又はN-オレオイル-トリプトファン(N-oleoyl-tryptophan)であることを特徴とする、請求項2に記載の薬剤学的組成物。
【請求項5】
N-アシル-アミノ酸又はその薬剤学的に許容可能な塩を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は改善用食品組成物。
【請求項6】
前記N-アシル-アミノ酸は、N-アシル-アラニン(N-acyl-alanine)又はN-アシル-トリプトファン(N-acyl-tryptophan)であることを特徴とする、請求項5に記載の食品組成物。
【請求項7】
前記N-アシル-アラニンは、N-アセチル-アラニン(N-acetyl-alanine)又はN-オレオイル-アラニン(N-oleoyl-alanine)であることを特徴とする、請求項6に記載の食品組成物。
【請求項8】
前記N-アシル-トリプトファンは、N-アセチル-トリプトファン(N-acetyl-tryptophan)又はN-オレオイル-トリプトファン(N-oleoyl-tryptophan)であることを特徴とする、請求項6に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息、鼻炎又は結膜炎の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息は、遺伝的及び環境的要因により発病する呼吸器の炎症疾患であり、肺中にある気管支が極めて鋭敏になった状態、すなわち、しばしば気管支が狭くなって息苦しくなり、ゼーゼーという喘鳴が聞こえながらひどく咳をする症状を示す疾患である。近年、環境汚染及び化学物質の露出が増加するにつれてその発生が増えている趨勢である。喘息は全年齢層で発生するが、30%程度が児童であり、慢性呼吸器炎症疾患へ発展して頻繁な入院と生活の質の低下を招く主要疾患の一つである(Eur Respir J 2001;17(5):881-6)。
【0003】
鼻炎は、鼻腔粘膜の炎症反応を示す疾病であり、大きく、アレルギー性鼻炎と非アレルギー性鼻炎とに区別できる。アレルギー性鼻炎は細部タイプによって様々に現れるが、主に、特定の免疫グロブリン(IgE、IgMなど)異常反応によるくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、粘膜細胞拡張のような症状を示す。非アレルギー性鼻炎は、ウイルス感染による鼻風邪の他に、細菌及びかび感染による感染性鼻炎、鼻粘膜に分布する自律神経系統の異常から発生し得る血管運動性鼻炎、不適合な薬剤の使用、寒冷気温などの物理的原因、食べ物による鼻炎、鼻腔構造異常による鼻炎などがある。
【0004】
全世界的にアレルギー性鼻炎の有病率は増加の一途にある。米国では20世紀に既にアレルギー性鼻炎に対する直接医療費用(外来費用、処方箋及び救急室訪問費用)が19億ドルを越え、合併症による追加損失は40億ドルに達した。2011年の健保統計年譜によれば、韓国人の外来多発生疾病順位においてアレルギー性鼻炎が2000年の200万名から2011年には560万名(14位→5位)へと急増し、このため、500余種の疾病のうち、健康保険公団給与支出順位で4位を記録した。今後もアレルギー性鼻炎に発生する社会的費用は増加し続くと考えられ、アレルギー性鼻炎の治療又は改善法に対する要求が増加する趨勢である。
【0005】
結膜炎は、結膜にアレルギー反応が起きる疾病であり、アレルギーによる疾病である枯草熱やアレルギー性鼻炎がある場合に頻繁に伴われる疾病である。代表的な季節病であって、春に症状が悪化するが、秋や冬には良くなる。主にアレルギー体質である人に多く見られ、思春期前に始まって5~10年間再発するが、それ以降には発病回数が減り、症状も軽くなることが一般であった。しかしながら、最近では異常高温が続きながら季節や体質に関係なく老若男女誰にでも発病するものと知られており、主原因は、獣の毛、ホコリ、花粉、イエダニなどであり、この頃は車両の排気ガスや化学粉塵のような公害物質も大きな影響を及ぼすと知られている。一般の症状は、目が非常にかゆくて、ひどい充血及び眼瞼浮腫がある上に、涙が多く出てしまい、目を擦るとよりひどくなることがある。また、引っ掻かれたり灼かれたりするかのような疼痛があり、異物感、目くそ、結膜下出血が発生することがある。
【0006】
喘息治療は主に薬物療法に依存し、一般に、抗炎症治療(ステロイド経口投与及び吸入)に加え、気管支拡張剤(theophylline)及び抗炎症剤の一種としてロイコトリエン(leukotriens)抑制剤などを使用している(Clin Exp Allergy.2012 42:650-8)。
【0007】
アレルギー性鼻炎では、症状の緩和のために抗ヒスタミン剤の服用を推奨しているが、抗ヒスタミン剤の多量服用時には、眠気や目眩を誘発する可能性があり、長期服用時にはヒスタミンの過剰分泌を招いて症状がさらに激しくなる場合もある。
【0008】
結膜炎の代表的な治療剤であるグルココルチコイド系統のステロイド性抗炎症薬物は、抗炎症薬物として通常用いられ、リウマチ性関節炎などに優れた効果を示し、放射性、機械的、化学的、感染性及び免疫刺激を含む様々な炎症反応を抑制又は予防する。
【0009】
ステロイドは、現在、喘息、鼻炎及び結膜炎を含むアレルギー性炎症疾患に最も広く使用される薬剤である。喘息の場合、急性喘息はステロイドにより比較的よく調節されるものと知られている。ただし、喘息が慢性に進んだり、或いは症状が極めて深刻な喘息(severe asthma)では、ステロイドに反応せず、かかる症状を抱えている多くの患者は治療方法がなくて長い間苦しんでおり、生活の質が著しく低下し、残酷には死亡にも至る(Clin Exp Allergy.2012 42:650-8)。
【0010】
ステロイド使用において、問題点は、ステロイドが深刻な副作用を招くという点である。ステロイドは免疫反応を低下させて微生物感染や癌発生を増加させる致命的な副作用を有し、皮膚、筋肉、骨、目、神経系、内分泌系、心血管系、免疫系、消火器官などの機能異常及び他の疾病を招き、その使用が極めて制限的である(N Engl J Med.2005,353:1711-23)。
【0011】
したがって、ステロイドを代替可能な安全なアレルギー性炎症抑制薬物の開発は、現代医学が解決すべき最も重要で至急な課題の一つである。この方面の研究者らは、ステロイドの副作用を克服するために、非ステロイド性抗炎症薬物(Non-steroidal antiinflammatory drugs;NSAID)を開発してきた。その代表例がアスピリンであるが、アスピリンは、細胞質型ホスホリパーゼA2(cytosolic phospholipase A2,cPLA)の作用によって作られるアラキドン酸(arachidonic acid)からプロスタグランディン合成に関与する酵素であるシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase,COX)抑制剤であり、アスピリン以外にも多くのNSAID(Indomethacin、Ibuprofen、Celecoxib、Rofecoxibなど)がCOX抑制剤である。しかし、それらのNSAIDは、ステロイドに比べて炎症抑制作用が弱いため、アレルギー性炎症疾患の治療に使用されない。しかも、科学者らはかなり前から炎症反応誘発酵素であるp38分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(mitogen-activated protein kinase)及びcPLA抑制剤を開発してきたが、副作用のため現在臨床で使われる薬剤はない現状である(Bioorg Med Chem2008;16:1345-58)。
【0012】
このように、“ステロイド補助薬物”及び“ステロイド代替薬物”の開発は、喘息を含む様々なアレルギー性炎症疾患治療に画期的に貢献できると考えられ、それらの物質開発が切実に望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明者らは、副作用がない上に、喘息、鼻炎及び結膜炎の改善効果に優れた薬物を開発するために鋭意研究努力した結果、N-アシル-アミノ酸を投与した時に、優れた喘息、鼻炎及び結膜炎抑制効果があることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0014】
したがって、本発明の目的は、N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む喘息の予防、改善又は治療用組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、N-アシル-アミノ酸を有効成分として含むアレルギー性鼻炎の予防、改善又は治療用組成物を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、N-アシル-アミノ酸を有効成分として含む結膜炎の予防、改善又は治療用組成物を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によって一層明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によれば、本発明は、N-アシル-アミノ酸を有効成分として含有する喘息、鼻炎又は結膜炎の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0019】
本発明の他の態様によれば、本発明は、有効量のN-アシル-アミノ酸を対象(subject)に投与する段階を含む、喘息、鼻炎又は結膜炎の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、喘息、鼻炎又は結膜炎の予防、改善又は治療のためのN-アシル-アミノ酸の用途を提供する。
【0021】
本発明において、前記喘息は、肺中にある気管支が極めて鋭敏になった状態、すなわち、しばしば気管支が狭くなって息苦しくなり、ゼーゼーという喘鳴が聞こえながらひどく咳をする症状を示す疾患であって、気管支のアレルギー炎症により発生するアレルギー性疾患である。
【0022】
本発明において、前記鼻炎は、鼻腔粘膜の炎症反応を示す疾病であって、大きく、アレルギー性鼻炎と非アレルギー性鼻炎とに区別できる。アレルギー性鼻炎は、鼻粘膜が特定物質に対して過敏反応を示すものであって、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が鼻粘膜に露出された後、刺激部位に肥満細胞、好酸球をはじめとする種々のIgE抗体を媒介とする炎症細胞が寄り集まり、それらが分泌する様々な媒介物質によって炎症反応が発生する疾患を意味する。非アレルギー性鼻炎は、ウイルス感染による鼻風邪の他に、細菌及びかび感染による感染性鼻炎、鼻粘膜に分布する自律神経系統の異常から発生し得る血管運動性鼻炎、不適合な薬剤の使用、寒冷気温などの物理的原因、食べ物による鼻炎、鼻腔構造異常による鼻炎などがある。
【0023】
本発明において、前記結膜炎は、局所感覚によって発生する結膜炎を意味し、結膜に軽い充血のみが見られるものから眼瞼腫脹、結膜浮腫を伴うものまであり、特に、遺伝性素因に関連があり、即時型アレルギーを示すものをアレルギー性結膜炎という。
【0024】
本発明のN-アシル-アミノ酸は、好ましくは、N-アシル-アラニン又はN-アシル-トリプトファンであり、より好ましくは、N-アシル-L-アラニン又はN-アシル-L-トリプトファンである。
【0025】
前記N-アシル-L-アラニン又はN-アシル-L-トリプトファンは、アラニン又はトリプトファンのアルファアミノ基がアシル化された形態であり、有機合成的な方法で合成してもよく、市販の試薬を購入して使用してもよい。
【0026】
本明細書において、用語“アシル(acyl)”又は“アシル基”は特に制限されず、カルボン酸のカルボキシ基であるOHを除く残りの原子団であり、一般にRCOで表される。Rは、1つ又はそれ以上の置換基であり、前記COに結合可能な置換基であれば制限されない。前記Rが芳香族原子団である場合は、特に“アロイル”と称する場合もあるが、これもアシル基の一種である。前記アシルの例には、ホルミル(HCO-)、アセチル(CHCO-)、プロピオニル(CCO-)、ブチリル(CCO-)、バレリル(CCO-)、ペンタノイル(CH(CHCO-)、パルミトイル(C1531CO-)、ステアロイル(C1733CO-)、オレオイル(C1731CO-)、オキサリル(-CO-CO-)、マロニル(-COCHCO-)、スクシニル(-CO(CHCO-)、ベンゾイル(CCO-)、トルオイル(CH-C-CO-)、サリシロイル(HO-C-CO-)、シンナモイル(CCH=CHCO-)、ナフトイル(C10CO-)、フタロイル(CO-C-CO-)、フロイル(C-)、ウンデカノイル(CH(CHCO-)、ドコセン酸(docosenoic acid)からOH基が除去されたドコセノイルを含むが、これに制限されない。
【0027】
前記N-アシル-アラニン(N-acyl-alanine)は、制限されないが、好ましくは、N-アセチル-アラニン(N-acetyl-alanine)又はN-オレオイル-アラニン(N-oleoyl-alanine)である。
【0028】
前記N-アシル-トリプトファン(N-acyl-tryptophan)は、制限されないが、好ましくは、N-アセチル-トリプトファン(N-acetyl-tryptophan)又はN-オレオイル-トリプトファン(N-oleoyl-tryptophan)である。
【0029】
前記N-アシル-L-アラニン(N-acyl-L-alanine)は、制限されないが、好ましくは、N-アセチル-L-アラニン(N-acetyl-L-alanine)又はN-オレオイル-L-アラニン(N-oleoyl-L-alanine)である。
【0030】
前記N-アシル-L-トリプトファン(N-acyl-L-tryptophan)は、制限されないが、好ましくは、N-アセチル-L-トリプトファン(N-acetyl-L-tryptophan)又はN-オレオイル-L-トリプトファン(N-oleoyl-L-tryptophan)である。
【0031】
一方、本明細書において、用語“有効成分として含む”又は”有効量”とは、N-アシル-アミノ酸の効能又は活性を達成するのに十分な量を含むことを意味する。本発明の一具体例において、本発明の組成物中にN-アシル-アミノ酸は、例えば、10μg/kg以上、好ましくは0.1mg/kg以上、より好ましくは1mg/kg以上、さらに好ましくは10mg/kg以上含まれる。N-アシル-アミノ酸は過量投与しても人体に副作用が殆どないので、本発明の組成物中に含まれるN-アシル-アミノ酸の量的上限は、当業者が適切な範囲内で選択して実施することができる。
【0032】
本発明の組成物から有効成分として用いられる前記N-アシル-アミノ酸は、その化合物自体だけでなく、その薬剤学的、食品学的又は化粧品学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物又はプロドラッグを含む意味で解釈される。
【0033】
本明細書において用語“薬剤学的に許容可能な塩”、“食品学的に許容可能な塩”又は“化粧品学的に許容可能な塩”は、化合物が投与される有機体に深刻な刺激を誘発しなく、化合物の生物学的活性及び物性を損ねない、化合物の剤形を意味する。前記薬剤学的、食品学的又は化粧品学的に許容可能な塩は、本発明の化合物を、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、カプリン酸、イソブタン酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、グルコン酸、ベンゾ酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸などのような有機カーボン酸と反応させて得ることができる。また、本発明の化合物を塩基と反応させ、アンモニウム塩、ナトリウム又はカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム又はマグネシウム塩などのアルカリ土金属塩などの塩、ジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどの有機塩基の塩、及びアルギニン、リシンなどのアミノ酸塩を形成することによって得ることもでき、これに制限されない。
【0034】
本明細書において、用語“薬剤学的に許容可能な水和物”、“食品学的に許容可能な水和物”又は“化粧品学的に許容可能な水和物”とは、所望する薬理学的効果を有する前記N-アシル-アミノ酸の水和物を指す。用語“薬剤学的に許容可能な溶媒和物”、“食品学的に許容可能な溶媒和物”又は“化粧品学的に許容可能な溶媒和物”とは、所望する薬理学的効果を有する前記N-アシル-アミノ酸の化合物の溶媒和物を指す。前記水和物及び溶媒和物も上記の酸を用いて製造することができ、広い範囲で前記薬剤学的、食品学的又は化粧品学的に許容可能な塩に含まれる。
【0035】
本明細書において、用語“薬剤学的に許容可能なプロドラッグ”、“食品学的に許容可能なプロドラッグ”又は“化粧品学的に許容可能なプロドラッグ”とは、前記N-アシル-アミノ酸の薬理学的効果を発揮する前に生物転換をすべき前記N-アシル-アミノ酸の誘導体を指す。このようなプロドラッグは、化学的安定性、患者受容性、生物学的利用性、器官選択性又は調製の便宜を改善するために、作用期間の長期化及び副作用の低減のために製造される。本発明のプロドラッグの製造は、前記N-アシル-アミノ酸を用いて当業界における通常の方法(例:Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Chemistry,5th ed.,1:172-178 and 949-982(1995))によって容易に製造され得る。
【0036】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、薬剤学的組成物である。
【0037】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含む。
【0038】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他にも、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適宜の薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0039】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、非経口投与の場合には、鼻腔投与、点眼投与、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与、直腸注入、子宮内硬膜投与、脳血管内注射などで投与できる。
【0040】
本発明の薬剤学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、通常の熟練した医師は、所望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、10μg~1,000mg/kgである。
【0041】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明に属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって、単位容量の形態で製造されてもよく、或いは多回容量容器内に内入して製造されてもよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であり得、分散剤又は安定化剤をさらに含んでもよい。
【0042】
本発明の薬剤学的組成物は、皮膚外用剤、エアゾール、スプレー、点眼剤、経口剤及び注射剤形態の剤形で製造され得る。
【0043】
本発明の薬剤学的組成物は、喘息、鼻炎又は結膜炎の予防及び治療のために単独で、又は手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法などを併用することができる。
【0044】
本発明の薬剤学的組成物は、人間用又は動物用に用いられてよい。
【0045】
本明細書において用語“対象”又は“subject”は、前記N-アシル-アミノ酸の投与を必要とする人間又は動物を意味する。
【0046】
本明細書において用語“予防”は、本発明の組成物の投与により喘息、鼻炎又は結膜炎を抑制させたり進行を遅延させたりする全ての行為を意味する。
【0047】
本明細書で使われる用語“治療”とは、本発明の組成物の投与により喘息、鼻炎又は結膜炎が好転したり又は有益に変更されたりする全ての行為を意味する。
【0048】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は食品組成物である。
【0049】
本発明に係る食品組成物は、機能性食品に用いるか、或いは各種食品に添加し得る。本発明の組成物を添加できる食品には、例えば、飲料類、アルコール飲料類、菓子類、ダイエットバー、乳製品、肉類、チョコレート、ピザ、パン類、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0050】
本発明の食品組成物は、有効成分としてN-アシルアミノ酸だけでなく、食品製造時に通常添加される成分を含むことができ、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えばブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロース、オリゴ糖など;及び、ポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤[タウマチン、ステビア抽出物(例えばレバウジオシドA、グリチルリチンなど])及び合成香味剤(サッカリン、アスパルタムなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤と飲料類として製造される場合には、N-アシルアミノ酸の他に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、及び各種植物抽出液などをさらに含めることができる。
【0051】
上記の他に、本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含むことができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は独立して又は組み合わせて使用することができる。このような添加剤の比率はあまり重要ではないが、本発明の組成物100重量部につき0.01~10重量部の範囲で選ばれるのが一般的である。
【0052】
本発明は、N-アシル-アミノ酸又はその食品学的に許容可能な塩を有効成分として含む食品組成物として健康機能食品を提供する。健康機能食品とは、疾病の予防及び改善、生体防御、免疫、病後の回復、老化抑制などの生体調節機能を有する食品のことを指し、長期服用した時に人体に無害であるべきである。前記健康機能食品は、N-アシル-アミノ酸を飲料、茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加するか、カプセル化、粉末化、懸濁液などにするかして製造した食品であり、これを摂取すると健康上に特定の効果を示すものを指すが、一般薬品とは違い、食品を原料とするので、薬品の長期服用時に生じ得る副作用などがない長所がある。このようにして得られる本発明の健康機能食品は、日常的に摂取することが可能なので非常に有用である。このような健康機能食品におけるN-アシル-アミノ酸の添加量は、対象の健康機能食品の種類によって変わり、一律的に規定することはできないが、食品本来の味を損ねない範囲で添加すればよく、対象の食品に対して通常0.01~50重量%、好ましくは0.1~20重量%の範囲である。また、丸剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤タイプの健康機能食品では通常0.1~100重量%、好ましくは0.5~80重量%の範囲で添加すればよい。一具体例において、本発明の健康機能食品は、丸剤、錠剤、カプセル剤又は飲料の形態であり得る。
【0053】
本明細書で使われる用語“改善”は、本発明の組成物の摂取又は投与により喘息、鼻炎又は結膜炎に関連した諸般症状がそれ以上進まないか好転しない全ての行為を意味する。
【0054】
本発明の食品組成物は、人間用食品、若しくは動物用飼料又は飼料添加剤などとして使用されてよい。
【0055】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、化粧料組成物である。
【0056】
本発明の組成物が化粧料組成物として製造される場合、本発明の組成物は、上述したN-アシル-アミノ酸だけでなく、化粧料組成物に通常用いられる成分を含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤、そして担体を含む。また、本発明の組成物は、上述したN-アシル-アミノ酸の他に、その作用を損ねない限度で、従来から使用されてきた喘息、鼻炎又は結膜炎の改善剤又は鎮静剤を共に混合して使用することができる。
【0057】
前記担体として、精製水、一価アルコール類(エタノール又はプロピルアルコール)、多価アルコール類(グリセロール、1,3-ブチレングリコール又はプロピレングリコール)、高級脂肪酸類(パルミチン酸又はリノレン酸)、油脂類(小麦胚芽油、椿油、ホホバ油、オリーブ油、スクアレン、ひまわり油、マカデミアナッツ油、アボカド油、大豆水添レシチン又は脂肪酸グリセリド)などを使用することができるが、これに限定されない。また、必要によって、界面活性剤、殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消炎剤及び清涼剤を添加することができる。
【0058】
界面活性剤は、ポリオキシエチレン、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン、オレイルエーテル、モノオレイン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン、グリセリルモノステアレート、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン、ソルビタン、蔗糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリン、ポリオキシエチレン還元ラノリン、POE、グリセリルピログルタミン酸、イソステアリン酸、ジエステル、N-アセチルグルタミン及びイソステアリルエステルからなる群から選択的に含むことができる。
【0059】
殺菌剤は、ヒノキチオール、トリクロサン、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン(azulene)、サリチル酸及びジンクピリチオンからなる群から選択的に含むことができる。
【0060】
酸化防止剤は、ブチルヒドロキシアニソール、沒食子酸、沒食子酸プロピル及びエリソルビン酸のいずれを使用してもよい。
【0061】
紫外線吸収剤は、ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、メラニン、パラアミノベンゾ酸エチル、パラジメチルアミノベンゾ酸2-エチルヘキシルエステル、シノキセート、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシルエステル、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸及び金属酸化物微粒子のいずれを使用してもよい。
【0062】
消炎剤としてはグリチルリチン酸ジカリウム又はアラントインを使用することができ、清涼剤としてはトウガラシチンキ又は1-メントールを使用することができる。
【0063】
前記組成物の剤形は、N-アシル-アミノ酸を有効成分として配合できる任意の剤形であり、トニックウォーター、シャンプー、リンス、ヘアーコンディショナー、ヘアスプレー、粉末、ゲル、クリーム、エッセンス、ローション、ゾルゲル、エマルジョン、オイル、ワックス、スプレー、ミストなどの様々な形態で製造され得るが、これらに制限されない。
【発明の効果】
【0064】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
(i)本発明は、N-アシル-アミノ酸を用いた喘息、鼻炎又は結膜炎の予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0065】
(ii)本発明の組成物は、様々な原因によるアレルギー性疾患及び喘息を、副作用への心配無しに安全で効果的に改善又は治療するのに有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】N-アシル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アシル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの経口投与時に肺組織のH&E染色上の炎症抑制を示す写真である(OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
図2】N-アシル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アシル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの経口投与時に肺組織のマッソントリクローム(masson’s trichrome)染色上の気管支線維化抑制を示す写真である(OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
図3】N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの気道内細胞由来Th2サイトカイン(IL4)分泌抑制効果を示す図である(*p<0.05 vs卵黄アルブミングループ;OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
図4】N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの気道内細胞由来Th2サイトカイン(IL5)分泌抑制効果を示す図である(*p<0.05 vs卵黄アルブミングループ;OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
図5】N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの気道内細胞由来Th2サイトカイン(IL13)分泌抑制効果を示す図である(*p<0.05 vs卵黄アルブミングループ;OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
図6A】N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの鼻炎反応抑制効果を示す図である(図6A:鼻擦り動作、図6B:くしゃみ)(*p<0.05 vs卵黄アルブミングループ;OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
図6B】N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの鼻炎反応抑制効果を示す図である(図6A:鼻擦り動作、図6B:くしゃみ)(*p<0.05 vs卵黄アルブミングループ;OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
図7A】N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンのアレルギー性結膜炎抑制効果を示す図である(図7A:眼球写真、図7B:臨床等級(Clinical grade))(*p<0.05 vs卵黄アルブミングループ;OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
図7B】N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンのアレルギー性結膜炎抑制効果を示す図である(図7A:眼球写真、図7B:臨床等級(Clinical grade))(*p<0.05 vs卵黄アルブミングループ;OVA=卵黄アルブミン、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン)。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0068】
[実施例]
〔準備例1.実験動物の準備〕
マウスは、特定病源体のないBALB/cマウス(6週齢、雄)をドアルバイオテック(韓国,オサン市)から購入した。実験開始時に7~10週齢のマウスを使用し、ラミナーフローキャビネット(laminar flow cabinet)で飼育しながら水と飼料を制限無く供給した。
【0069】
〔準備例2.使用薬物の準備〕
本特許に使用した薬物N-アセチル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファンなどは、Sigma社(米国、ミズーリ州)から購入し、N-オレイル-L-アラニンはCayman社(米国、ミシガン州)から購入した。N-オレイル-トリプトファンは、次の方法で合成した。まず、メチルオレイル-L-トリプトファネートを製造するために、オレイン酸(2.36mmol)、L-トリプトファンメチルエステル塩酸塩(2.60mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)(2.60mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(2.60mmol)、トリエチルアミン(11.8mmol)をジクロロメタンに溶かした混合物を室温で12時間撹拌した。反応物を濃縮し、飽和NaHCO溶液で希釈した後、酢酸エチルで3回抽出した。抽出された有機溶媒層を集めて塩水で洗浄し、1N HClで洗浄した後、再び塩水で洗浄した。有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥し、濃縮した後、中圧液体クロマトグラフィー(Medium pressure liquid chromatography,MPLC)上でn-ヘキサン及び酢酸エチルを用いて精製した。収得率は73%であり、メチルオレイル-L-トリプトファネートの性質は、次の通りである。
【0070】
1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.18 (s, 1H), 7.56 (dd, J = 7.9, 1.0 Hz, 1H), 7.39 (dt, J = 8.1, 0.9 Hz, 1H), 7.29 (s, 1H), 7.22 (ddd, J = 8.2, 7.1, 1.2 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 8.0, 7.0, 1.0 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.99 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 5.37 (qd, J = 4.1, 2.1 Hz, 2H), 5.00 (dt, J = 8.0, 5.3 Hz, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.39 - 3.28 (m, 2H), 2.20 - 2.13 (m, 2H), 2.08 - 1.99 (m, 5H), 1.60 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.34 - 1.28 (m, 24H), 0.92 - 0.89 (m, 3H). LC-MS (ESI), calcd for C30H46N2O3 482.4, found m/z 483.4 (M + H+)。
メチルオレイル-L-トリプトファネートからN-オレイルトリプトファンを製造するために、メチルオレイル-L-トリプトファネート(0.37mmol)をテトラヒドロフランに溶かした溶液にNaOH(1.48mmol)溶液を加え、室温で12時間撹拌した。反応物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。水層に1N HClを加えてpH 1に調節した後、酢酸エチルで3回抽出した。抽出した有機溶媒層を無水MgSO上で乾燥し、濃縮した。収得率は86%であり、N-オレイルトリプトファンの性質は、次の通りである。
1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.22 (s, 1H), 7.61 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.40 (dt, J = 8.1, 0.9 Hz, 1H), 7.23 (ddd, J = 8.1, 6.9, 1.2 Hz, 1H), 7.15 (ddd, J = 8.0, 7.1, 1.0 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.37 (qd, J = 5.3, 4.6, 2.3 Hz, 2H), 4.95 (dt, J = 7.3, 5.6 Hz, 1H), 3.45 - 3.33 (m, 2H), 2.17 - 2.10 (m, 2H), 1.59 - 1.51 (m, 2H), 1.38 - 1.26 (m, 26H), 0.91 (d, J = 6.8 Hz, 3H). C29H44N2O2468.3, found m/z 469.3 (M + H+)。
【0071】
〔準備例3.マウス喘息誘発〕
マウスを0.02mgの卵黄アルブミン(ovalbumin,OVA)と免疫補助剤としてミョウバン(alum)(1mg)(Sigma-Aldrich)を腹腔に0日目及び14日目に2回注射して感作した。28日目から4日間、マウスを一定大きさのプラスチックネブライザー筒に入れ、それぞれ5% OVAを酸素ガス噴霧方式で30分間噴射し、マウスにエアゾール形態のOVAを吸い込ませた。これを‘気道チャレンジ(airway challenge)’と命名した。
【0072】
〔準備例4.マウス鼻炎誘発〕
マウスを、0.02mgの卵黄アルブミン(ovalbumin,OVA)と免疫補助剤としてミョウバン(1mg)(Sigma-Aldrich)を腹腔に0日目と14日目に2回腹腔内に注射して感作した。21日目から7日間、毎日1回ずつOVA 100μgを20μlのリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline)に溶かし、両側鼻腔にそれぞれ10μlずつ注入して局所刺激させた。最後の鼻腔内OVA点滴後(実験27日)に、マウスが起こす鼻擦り動作(nasal rubbing)とくしゃみ(sneezing)回数の合計を症状点数(symptom score)と定義する。症状点数を15分間記録して各実験群の結果を比較し、結果は、図6に示した。
【0073】
〔準備例5.マウスの結膜炎誘発〕
マウスを、0.5mgの卵黄アルブミン(ovalbumin,OVA)と免疫補助剤としてミョウバン(1.5mg)(Sigma-Aldrich)を腹腔に0日目、7日目に2回腹腔内に注射して感作した。14日目から12日間、毎日1回ずつOVA 100μgを10μlのリン酸緩衝生理食塩水に溶かし、両眼に10μlずつ注入して局所刺激をし、結膜炎を誘導した。
【0074】
〔準備例6.気管支内の炎症細胞の測定〕
マウスを麻酔して気管支内にチューブを挿入し、緩衝液で気管支を洗浄して細胞を得る。これを遠心分離して1×10cells/100μlで浮遊させ、サイトスピン(cytospin)を用いてスライドに遠心させ固定し、Diff-Quik染色で好酸球、単核球、好中球及び大食細胞数を測定する。
【0075】
〔準備例7.肺組織染色〕
組織学的分析方法で肺を摘出し、ホルマリンで固定し、パラフィンで包埋する。包埋された組織を4μm厚に切片し、1)炎症程度を調べるためにH/E(Hematoxylin and Eosin)染色し、2)肺の線維化程度を調べるためにマッソントリクローム染色する。
【0076】
〔準備例8.結膜の浮腫及び発赤の臨床的等級化測定〕
最後にOVA点眼して(実験25日)24時間後に、結膜の浮腫及び発赤(redness)の臨床的等級化(clinical grading)をポータブルスリットランプ(portable slit lamp,Cail Zeiss,Oberkochen,Germany)により行った。評価は、OVA注入後2時間に盲検方式(blinded fashion)で行われた。それぞれの臨床的パラメータは、Merayo-Lloves,J.,Calonge,M,and Foster,C.S.1995.Experimental model of allergic conjunctivitis to ragweed in guinea pig.Curr.Eye Res.14:487-494で説明したように、0~4+(0不在(absent)、1+最小、2+軽微、3+普通、4+深刻)の範囲で記録した。一つのグループに対しては陰性対照群として何ら処置もしなかった。
【0077】
〔実施例1.N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの喘息抑制効果〕
〔実施例1-1.N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの投与による喘息誘導マウスにおいて気道内炎症細胞流入抑制効果〕
気道内炎症細胞としては好中球(neutrophils)、大食細胞(macrophages)、単核球(monocytes)及び好酸球(eosinophils)を観察した。N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンを、それぞれ、kg当たりに3.5μmoleに該当する量を10mlのリン酸緩衝生理食塩水に溶かして25日目から7日間に、1日に1回ずつ経口投与した。表1に見られるように、N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの経口投与は、好酸球の気道内流入をいずれも有意に抑制した。
【0078】
【表1】
【0079】
OVA=卵黄アルブミン(ovalbumin)、NAA=N-アセチル-L-アラニン、NOA=N-オレイル-L-アラニン、NAT=N-アセチル-L-トリプトファン、NOT=N-オレイル-L-トリプトファン、MAC=大食細胞、NEU=好中球、MONO=単核球、EOS=好酸球、N=マウスの数、S.D.=標準偏差、Min=最小値、Max=最大値
〔実施例1-2.肺組織のH&E染色上の炎症程度〕
肺組織のH&E染色は、1週間の薬物の経口投与後に実施した。正常グループ(normal)では気道の周囲に炎症細胞が殆どなく、OVAでチャレンジ(challenge)したグループ(OVA)では、気道の周囲に多くの炎症細胞が広範囲に集まっており、気管支も狭くなっており、気管支周囲に血管形成を観察できるのに対し(図1)、N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファン経口投与したグループ(OVA+NAA、OVA+NOA、OVA+NAT、OVA+NOT)ではこのような炎症程度が顕著に抑制されたが、特にN-オレイル-L-アラニンの作用が最も抑制した(図1)。
【0080】
〔実施例1-3.気管支洗浄液内サイトカイン測定〕
気管支洗浄液中の複数のサイトカイン(TNF-α、IL-4、IL-5、IL-13)濃度は、ELISAキット(R&D Systems,Minneapolis,Minn,USA)を用いて測定した。
【0081】
〔実施例2.N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの気管支閉鎖抑制効果〕
肺組織のマッソントリクローム染色は、1週間の薬物の経口投与後に実施した。正常グループ(normal)では、気道の周囲に線維化が殆どなく、OVAでチャレンジしたグループ(OVA)では、気道の周囲に多くの線維化程度を観察できるのに対し(図2)、N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファン経口投与したグループ(OVA+NAA、OVA+NOA、OVA+NAT、OVA+NOT)ではこのような線維化の程度が抑制されたが、特にN-オレイル-L-アラニンの作用が最も抑制した(図2)。
【0082】
〔実施例3.N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの気道内細胞由来Th2サイトカイン(IL4、IL5及びIL13)分泌抑制効果〕
Th2サイトカインであるIL-4、IL-5及びIL-13は、好酸球を通じた気道炎症、気管支過敏反応及びIgE抗体生産に関与すると知られている。N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンを、それぞれ、kg当たりに3.5μmoleに該当する量を10mlのリン酸緩衝生理食塩水に溶かし、喘息誘導後に25日目から7日間に1日に1回ずつ経口投与し、サイトカイン測定した。N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファン経口投与は、IL-4、IL-5及びIL-13をいずれも有意に抑制した(図3図4及び図5)。
【0083】
〔実施例4.N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの鼻炎反応抑制効果〕
アレルギー性鼻炎を誘発するための抗原としては、準備例3の卵黄アルブミン(ovalbumin,OVA)を使用し、薬物は、試験21日目から26日目までに、OVAチャレンジした12時間後にN-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファン各10μMになるようにリン酸緩衝生理食塩水に溶かし、10μlずつ鼻腔に投与した。最後の鼻腔内OVA点滴後(実験27日)、マウスが起こす鼻擦り動作(nasal rubbing)とくしゃみ(sneezing)回数の合計を症状点数(symptom score)として定義して測定した。症状点数を15分間記録して各実験群の結果を比較し、結果は、図6に示した。正常グループでは、鼻擦り動作又はくしゃみが殆どなく、OVAでチャレンジしたグループでは、鼻擦り動作又はくしゃみが顕著に増加するのに対し(図6A及び図6B)、N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンを鼻腔投与したグループではいずれも鼻擦り動作及びくしゃみ回数が顕著に低下した(図6A及び図6B)。
【0084】
〔実施例5.N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンの結膜炎抑制効果〕
結膜炎を誘発するための抗原としては、準備例4の卵黄アルブミンを使用し、薬物は、試験15日目から26日目までに、卵黄アルブミン100μgで目にチャレンジした30分後及び12時間後に、N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファンがそれぞれ100μMとなるようにリン酸緩衝生理食塩水に溶かし、10μlずつ目に投与した。26日目に、結膜の浮腫及び発赤(redness)の臨床的等級化(clinical grading)をポータブルスリットランプ(portable slit lamp,Cail Zeiss,Oberkochen,Germany)を用いて、卵黄アルブミンを注入して24時間後に行った。臨床等級は、各実験群の結果を比較し、結果を図7に示した。正常グループでは、結膜炎の症状が殆どなく、卵黄アルブミンでのみチャレンジしたグループでは結膜炎臨床等級が増加するのに対し(図7A及び図7B)、N-アセチル-L-アラニン、N-オレイル-L-アラニン、N-アセチル-L-トリプトファン、N-オレイル-L-トリプトファン点眼投与したグループではいずれも臨床等級が顕著に低下した(図7A及び図7B)。
【0085】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとってこのような具体的な記述は単に好ましい具現例に過ぎず、これに本発明の範囲が制限されない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項及びその等価物によって定義されると言えよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
【国際調査報告】