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▶ ビジョン ファーマ ピーティーワイ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】新規の網膜色素変性処置
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220720BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220720BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220720BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61P27/02
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569934
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 AU2020050516
(87)【国際公開番号】W WO2020237294
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】2019901804
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2019903812
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521511162
【氏名又は名称】ビジョン ファーマ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フレッチャー, スー
(72)【発明者】
【氏名】ピットアウト, イアンテ
(72)【発明者】
【氏名】グライノク, ジェイナ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルトン, スティーブ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン, フレッド ケー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
CNOT3遺伝子転写物またはその一部においてpre-mRNAスプライシングを改変するための単離または精製されたアンチセンスオリゴマー。本発明の1つの態様では、CNOT3遺伝子転写物またはその一部のイントロンの付近または内部の領域に相補的なターゲティング配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーを提供する。本発明の別の態様では、CNOT3遺伝子転写物またはその一部のエクソンの付近または内部の領域に相補的なターゲティング配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNOT3遺伝子転写物またはその一部においてpre-mRNAスプライシングを改変するための単離または精製されたアンチセンスオリゴマー。
【請求項2】
CNOT3遺伝子転写物またはその一部において非産生性スプライシングまたは機能障害を誘導する請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項3】
配列番号1~74を含むリストから選択される請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴマーが、(i)改変されたバックボーン構造;(ii)改変された糖部分;(iii)RNアーゼH耐性;(iv)オリゴマー模倣化学を含むリストから選択される代替の化学または修飾に供された1つまたは複数のヌクレオチドの位置を含む、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴマーが、(i)部分への化学的コンジュゲート;および/または(ii)細胞透過性ペプチドでのタグ化によってさらに改変されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項6】
前記アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマーである、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項7】
任意のウラシル(U)がヌクレオチド配列に存在し、前記ウラシル(U)がチミン(T)に置換されている、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項8】
前記CNOT3遺伝子転写物またはその一部のエクソンのうちの1つまたは複数のスキッピングを誘導するように作動する請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項9】
PRPF31タンパク質の発現が、症候性PRPF31変異を有する被験体におけるPRPF31タンパク質発現の1.5倍と5倍との間になる、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項10】
CNOT3遺伝子転写物のスプライシングを操作する方法であって、
a)請求項1~8のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマーのうちの1つまたは複数を提供し、前記オリゴマー(1つまたは複数)を標的核酸部位に結合させる工程
を含む、方法。
【請求項11】
患者におけるCNOT3発現に関する疾患の影響を処置、予防、または改善するための医薬組成物、予防組成物、または治療組成物であって、
a)請求項1~8のいずれか1項に記載の1つまたは複数のアンチセンスオリゴマー、および
b)1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤
を含む、医薬組成物、予防組成物、または治療組成物。
【請求項12】
CNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善する方法であって、
a)有効量の1つまたは複数の請求項1~9のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴマーまたは1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物を患者に投与する工程
を含む、方法。
【請求項13】
CNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善するための医薬の製造のための請求項1~9のいずれか1項に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用。
【請求項14】
患者におけるCNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善するためのキットであって、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのアンチセンスオリゴマーおよびその組み合わせまたはカクテルを、使用説明書と共に適切な容器に包装された状態で含む、キット。
【請求項15】
前記CNOT3発現に関する疾患が網膜色素変性である、請求項11に記載の組成物、請求項10もしくは12に記載の方法、請求項13に記載の使用、または請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記CNOT3発現に関連する疾患を有する被験体がヒトである、請求項11に記載の組成物、請求項10もしくは12に記載の方法、請求項13に記載の使用、または請求項14に記載のキット。
【請求項17】
前記PRPF31タンパク質の発現が、症候性PRPF31変異を有する被験体におけるPRPF31タンパク質の発現の1.5と5倍との間になる、請求項11に記載の組成物、請求項10もしくは12に記載の方法、請求項13に記載の使用、または請求項14に記載のキット。
【請求項18】
配列番号4、7、9、11、15、16~18、27、30、34、35、および64を含むリストから選択される、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【請求項19】
配列番号4、7、27、30、34、および64を含むリストから選択される、請求項1に記載のアンチセンスオリゴマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、網膜色素変性の影響を処置、予防、または改善するためのアンチセンスオリゴマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
網膜色素変性(RP)は、網膜内の桿体光受容細胞の進行性変性によって重度の視力障害を生じる変性眼疾患であり、ほとんどのRPは遺伝性である。この網膜ジストロフィーの形態の初期症状は年齢と無関係に出現し;したがって、RPは、早期乳児期から後期成人期までのあらゆる範囲で診断される。RPは、4000人におよそ1人(全世界で150万人超)が罹患する希少疾患である。家族性RPの症例のうち、30%~40%が常染色体優性遺伝を示す(Hartong et al.2006)。RPの処置方法は現在のところ存在しない。
【0003】
RPは、50を超える遺伝子の変異を原因とする。PRPF31遺伝子のヘテロ接合体変異により、常染色体優性網膜色素変性(adRP)が生じる。場合によっては、かかる変異は不完全浸透度を示し、ある特定のキャリアは網膜変性を発症する一方で、他のキャリアは全く無症状である。無症候性キャリアは、変異していないPRPF31対立遺伝子の発現が平均より高いことによって疾患から保護されている。
【0004】
PRPF31遺伝子の発現は、Ccr4-Notデアデニラーゼ複合体によって調節される。Ccr4-Notは9つのサブユニットのタンパク質複合体であり、真核細胞における翻訳およびmRNA安定性の主要な制御因子である。コアCCR4-Not複合体は、酵母においてはCcr4p、Caf1p、5つのNotタンパク質(CNot1~CNot5)、Caf40p、およびCaf130pからなる。
【0005】
現在のところ、AAV媒介遺伝子置換およびCRISPR/Cas9遺伝子編集が、網膜疾患治療として調査されているところである。PRPF31のコード配列はAAVベクターの能力の範囲内であるが、PRPF31の未制御または過剰な発現の結果は知られていない。さらに、眼内ウイルスベクター注射の結果としてのセロコンバージョンが報告されているので、ウイルスを媒介する眼科遺伝子治療薬を再投与することができるかどうかは知られていない。さらに、CRISPR/Cas9遺伝子修正には、各ファミリーのPRPF31変異のために異なる産物が必要である。さらに、遺伝子置換および遺伝子編集アプローチは共に、適切なトランスフェクションを行うためにウイルスベクターを網膜下注射する必要がある。
【0006】
網膜色素変性のための新規の処置手段または予防手段を提供するか、以前に知られている処置を補完する方法を少なくとも提供する必要がある。
【0007】
本発明は、網膜色素変性の影響を処置、予防、または改善するための改善された方法または代替法の提供を試みている。
【0008】
前述の背景技術の考察は、本発明の理解を容易にすることのみを意図している。この考察は、言及したいかなる資料も現在または過去において本出願の優先日の時点での一般的知識の一部であることを認定も承認もするものではない。
【発明の概要】
【0009】
発明の要旨
概して、本発明の1つの態様によれば、CNOT3遺伝子転写物またはその一部においてpre-mRNAスプライシングを改変するための単離または精製されたアンチセンスオリゴマーを提供する。好ましくは、CNOT3遺伝子転写物またはその一部において非産生性スプライシングを誘導するための単離または精製されたアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0010】
例えば、本発明の1つの態様では、CNOT3遺伝子転写物またはその一部のイントロンの付近または内部の領域に相補的なターゲティング配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーを提供する。本発明の別の態様では、CNOT3遺伝子転写物またはその一部のエクソンの付近または内部の領域に相補的なターゲティング配列を含む10~50ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0011】
好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマーである。好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、改変されたバックボーンを有する。
【0012】
好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、表1に記載の配列を含む群から選択される。
【0013】
好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、配列番号1~74、より好ましくは、配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは、配列番号4、7、27、30、34、および64を含むリストから選択される。
【0014】
アンチセンスオリゴマーは、好ましくは、CNOT3遺伝子転写物またはその一部のエクソンのうちの1つまたは複数のスキッピングを誘導するように作用する。例えば、アンチセンスオリゴマーは、エクソン3、8、9、12、および/または17のスキッピングを誘導し得る。
【0015】
本発明のアンチセンスオリゴマーを、選択されたCNOT3標的部位に結合することができるアンチセンスオリゴマーであるように選択することができ、ここで、前述の標的部位は、スプライス供与部位、スプライス受容部位、またはエクソンスプライシングエレメントから選択されるmRNAスプライシング部位である。また、標的部位は、ドナーまたはアクセプターのスプライス部位が標的にされている場合にいくつかの隣接イントロン配列を含み得る。
【0016】
より具体的には、アンチセンスオリゴマーは、配列番号1~74、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64、ならびに/または表1に記載の配列、ならびにその組み合わせもしくはカクテルのうちの任意の1つまたは複数を含む群から選択され得る。これには、スリンジェントなハイブリッド形成条件下でかかる配列とハイブリッド形成することができる配列、その相補配列、CNOT3遺伝子転写物においてpre-mRNAプロセシング活性を保有するか調整する改変された塩基、改変されたバックボーン、およびその機能的短縮物または伸長物を含む配列が含まれる。ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、標的配列と100%相補的であり得るか、オリゴヌクレオチドと標的配列との間で形成されたヘテロ二重鎖が細胞ヌクレアーゼの作用およびin vivoで起こり得る他の分解様式に抵抗するのに十分に安定である限り、例えば、バリアントに順応するためのミスマッチを含み得る。それ故、ある特定のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドと標的配列との間で約または少なくとも約70%配列相補性(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列相補性を有し得る。
【0017】
また、本発明は、選択された標的に結合してCNOT3遺伝子転写物におけるエクソン排除を誘導することができる2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーの組み合わせ(2またはそれを超えるかかるアンチセンスオリゴマーを含む構築物が含まれる)に及ぶ。構築物は、アンチセンスオリゴマーベースの治療のために使用され得る。
【0018】
本発明は、そのなおさらなる態様によれば、本発明のアンチセンスオリゴマー配列のcDNAまたはクローン化されたコピー、および本発明のアンチセンスオリゴマー配列を含むベクターに及ぶ。また、本発明は、かかる配列および/またはベクターを含む細胞にさらに及ぶ。
【0019】
CNOT3遺伝子転写物のスプライシングを操作する方法であって、
a)本明細書中に記載のアンチセンスオリゴマーのうちの1つまたは複数を提供し、前記オリゴマー(1つまたは複数)を標的核酸部位に結合させる工程
を含む、方法も提供する。
【0020】
患者におけるCNOT3発現に関する疾患の影響を処置、予防、または改善するための医薬、予防、または治療組成物であって、
a)本明細書中に記載の1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーおよび
b)1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤
を含む、医薬、予防、または治療組成物も提供する。
【0021】
組成物は、約1nM~1000nMの各々の本発明の所望のアンチセンスオリゴマー(1つまたは複数)を含み得る。好ましくは、組成物は、約10nM~500nM、最も好ましくは1nMと10nMとの間の各々の本発明のアンチセンスオリゴマー(1つまたは複数)を含み得る。
【0022】
CNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善する方法であって、
a)有効量の本明細書中に記載の1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーまたは1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物を患者に投与する工程
を含む、方法も提供する。
【0023】
CNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善するための医薬の製造のための本明細書中に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用も提供する。
【0024】
患者におけるCNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善するためのキットであって、本明細書中に記載の少なくとも1つのアンチセンスオリゴマーおよびその組み合わせまたはカクテルを、使用説明書と共に適切な容器に包装された状態で含む、キットも提供する。
【0025】
好ましくは、患者におけるCNOT3発現に関連する疾患は、網膜色素変性である。CNOT3発現に関連する疾患を有する被験体は、ヒトが含まれる哺乳動物であり得る。
【0026】
本発明のさらなる態様を、添付の限定されない例および図面を参照して本明細書に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のさらなる特徴を、以下の本発明のいくつかの非限定的な実施形態の説明においてより詳細に説明する。この説明は、本発明を例証することのみを目的としている。上記の発明の概要、開示、または説明を制限するものと理解されないものとする。以下の添付の図面を参照して説明する:
図1図1は、CNOT3読み枠の略図である。CNOT3は18個のエクソンからなり、753個のアミノ酸を有するタンパク質をコードする。図1(a)インフレームのエクソンを矩形で示し、一方で、コドンに割り込んだジャンクション有するエクソンを山形で示す(青色、赤色)。図1(b)CNOT3タンパク質を表し、上記のエクソンに対応する機能的ドメインおよびアミノ酸の位置を示す。NAR:NOT係留領域。CS:連結配列。NOTボックス:TATAボックス陰性。いずれのエクソン2、3、8、9、11、12、13、14、15、および16が排除されても、読み取り枠が破壊される。
図2図2は、2’O-メチルホスホロチオアートAOでのトランスフェクション(50、25、および12.5nM)の48時間後のRP11患者の線維芽細胞由来のCNOT3転写産物を示すゲル画像である。既知配列を標的にしない対照AO(-ve対照AO)を、比較のために含めた。
図3図3は、濃度50および25nMで末端イントロン保持を誘導するように設計された2’O-メチルホスホロチオアートAOでのトランスフェクション48時間後の線維芽細胞由来のCNOT3転写産物を示すゲル画像である。
図4図4Aは、家系図0255である:PRPF31変異(c.267delA)を有する11人のメンバー。図4Bは、家系図0080である:13人の罹患メンバー(c.1205 G>A)。矢印=皮膚線維芽細胞の供与、黒色=現時点でCRE自然史研究が行われている患者。
図5図5A~Hは、多能性に再プログラミングされたCLN3変異を有する患者由来の皮膚線維芽細胞を示す。患者-iPSC(CLN3-/-)は、典型的なiPSC形態を示し、多能性マーカー(OCT4、NANOG、SOX2、およびSSEA4が含まれる)を発現した(A)。定量的RT-PCRによって6つのiPSC系統における多能性遺伝子発現を比較すると、全ての系統について類似の発現パターンが実証された(B)。患者iPSCは、3系列に分化可能であることが実証された。患者iPSC(CLN3-iPS-EB)、遺伝子修正された対照iPSC(CLN3HDR-iPS-EB)、および対照ヒトiPSC(WT-iPS-EB、ThermoFisher)は、2週間で胚様体に分化し、次いで、外胚葉系列(PAX6、OTX1)、中胚葉系列(SOX17、GATA4、FOX2A)、および内胚葉系列(BRACHYURY、FDGFR)、ならびに多能性遺伝子(OCT4、NANOG、SOX2)のマーカーの発現について定量的RT-PCRによってスクリーニングした(C)。D~H:iPSCの網膜分化。網膜オルガノイドは、透明な層状の網膜組織(D)に囲まれた眼杯様形態を示し、前述の網膜組織は、リカバリンを発現する光受容体の組織化した頂端側の層(E)および基底側に存在するSmi32を発現する網膜神経節細胞(F)を含んでいた。170日目の網膜オルガノイドにおける光受容体外節の電子顕微鏡法(G)により、発生中の(E120)ヒト網膜(H)の外節に類似する形態が実証された。
図6A図6は、PSバックボーンに対して2’-O-メチル化学を使用したAO誘導CNOT3エクソンスキッピングのスクリーニングを示す。pre-mRNAスプライシング中に標的エクソン(1つまたは複数)の排除を媒介してCNOT3のノックダウンまたはタンパク質機能の破壊を媒介するために、CNOT3エクソンのスプライスエンハンサーモチーフを標的にするようにAOを設計する。皮膚線維芽細胞を、エクソンを標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS化学)で48時間トランスフェクトした(表示のとおり)。RT-PCR産物を、2%アガロースゲルで分離した。
図6B図6は、PSバックボーンに対して2’-O-メチル化学を使用したAO誘導CNOT3エクソンスキッピングのスクリーニングを示す。pre-mRNAスプライシング中に標的エクソン(1つまたは複数)の排除を媒介してCNOT3のノックダウンまたはタンパク質機能の破壊を媒介するために、CNOT3エクソンのスプライスエンハンサーモチーフを標的にするようにAOを設計する。皮膚線維芽細胞を、エクソンを標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS化学)で48時間トランスフェクトした(表示のとおり)。RT-PCR産物を、2%アガロースゲルで分離した。
図7A図7は、PSバックボーンに対して2’-O-メチル化学を使用したAO誘導CNOT3エクソンスキッピングのスクリーニングを示す。pre-mRNAスプライシング中に標的エクソン(1つまたは複数)の排除を媒介してCNOT3のノックダウンまたはタンパク質機能の破壊を媒介するために、CNOT3エクソンのスプライスエンハンサーモチーフを標的にするようにAOを設計する。皮膚線維芽細胞を、エクソンを標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS化学)で48時間トランスフェクトした(表示のとおり)。RT-PCR産物を、2%アガロースゲルで分離した。
図7B図7は、PSバックボーンに対して2’-O-メチル化学を使用したAO誘導CNOT3エクソンスキッピングのスクリーニングを示す。pre-mRNAスプライシング中に標的エクソン(1つまたは複数)の排除を媒介してCNOT3のノックダウンまたはタンパク質機能の破壊を媒介するために、CNOT3エクソンのスプライスエンハンサーモチーフを標的にするようにAOを設計する。皮膚線維芽細胞を、エクソンを標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS化学)で48時間トランスフェクトした(表示のとおり)。RT-PCR産物を、2%アガロースゲルで分離した。
図8a図8は、CNOT3とPRPF31との間のmRNA発現の逆相関を示す。図8(a)RP11、無症候性、および健常な(WT)個体由来のiPSC由来網膜色素上皮においてTATA結合タンパク質(TBP)発現に対して正規化したPRPF31およびCNOT3のmRNA発現のqRT-PCR分析。RP11および無症候性の被験体は、同一の家系図に由来し、両者はPRPF31 c.1205C>A(Ser402*)変異のヘテロ接合体である。健常被験体は、無関係の家系に由来する。健常対照におけるCNOT3およびPRPF31のmRNA発現を、1に設定した(n≧2)。図8(b)RP11患者由来の皮膚線維芽細胞を、エクソン4、6、7、または10を標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS)で48時間トランスフェクトした。PRPF31転写物レベルを、qRT-PCRを使用して分析し、TBP発現に対して正規化した。25nMの対照AOで処置した細胞におけるPRPF31発現を、1に設定した(n=1)。図8(c)RP11患者由来の皮膚線維芽細胞を、エクソン3、8、9、16、または17を標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS化学)で48時間トランスフェクトした。PRPF31転写物レベルを、qRT-PCRを使用して分析し、TBP発現に対して正規化し、25nMでの偽対照AOで処置した細胞におけるPRPF31発現(1に設定した対照PRPF31発現)(n=1)と比較して示す。
図8b図8は、CNOT3とPRPF31との間のmRNA発現の逆相関を示す。図8(a)RP11、無症候性、および健常な(WT)個体由来のiPSC由来網膜色素上皮においてTATA結合タンパク質(TBP)発現に対して正規化したPRPF31およびCNOT3のmRNA発現のqRT-PCR分析。RP11および無症候性の被験体は、同一の家系図に由来し、両者はPRPF31 c.1205C>A(Ser402*)変異のヘテロ接合体である。健常被験体は、無関係の家系に由来する。健常対照におけるCNOT3およびPRPF31のmRNA発現を、1に設定した(n≧2)。図8(b)RP11患者由来の皮膚線維芽細胞を、エクソン4、6、7、または10を標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS)で48時間トランスフェクトした。PRPF31転写物レベルを、qRT-PCRを使用して分析し、TBP発現に対して正規化した。25nMの対照AOで処置した細胞におけるPRPF31発現を、1に設定した(n=1)。図8(c)RP11患者由来の皮膚線維芽細胞を、エクソン3、8、9、16、または17を標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS化学)で48時間トランスフェクトした。PRPF31転写物レベルを、qRT-PCRを使用して分析し、TBP発現に対して正規化し、25nMでの偽対照AOで処置した細胞におけるPRPF31発現(1に設定した対照PRPF31発現)(n=1)と比較して示す。
図8c図8は、CNOT3とPRPF31との間のmRNA発現の逆相関を示す。図8(a)RP11、無症候性、および健常な(WT)個体由来のiPSC由来網膜色素上皮においてTATA結合タンパク質(TBP)発現に対して正規化したPRPF31およびCNOT3のmRNA発現のqRT-PCR分析。RP11および無症候性の被験体は、同一の家系図に由来し、両者はPRPF31 c.1205C>A(Ser402*)変異のヘテロ接合体である。健常被験体は、無関係の家系に由来する。健常対照におけるCNOT3およびPRPF31のmRNA発現を、1に設定した(n≧2)。図8(b)RP11患者由来の皮膚線維芽細胞を、エクソン4、6、7、または10を標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS)で48時間トランスフェクトした。PRPF31転写物レベルを、qRT-PCRを使用して分析し、TBP発現に対して正規化した。25nMの対照AOで処置した細胞におけるPRPF31発現を、1に設定した(n=1)。図8(c)RP11患者由来の皮膚線維芽細胞を、エクソン3、8、9、16、または17を標的にするCNOT3 AO(2’OMe-PS化学)で48時間トランスフェクトした。PRPF31転写物レベルを、qRT-PCRを使用して分析し、TBP発現に対して正規化し、25nMでの偽対照AOで処置した細胞におけるPRPF31発現(1に設定した対照PRPF31発現)(n=1)と比較して示す。
図9図9は、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)として合成し、RP11 iPSC由来RPEにトランスフェクトしたASO6(配列番号64、CNOT3_H17A(+83+107)、CNOT3エクソン17を標的にする)の影響を示す。(A)濃度5μMのPMO単独または細胞透過性ペプチドタグ化PMO(PPMO)で処置した細胞におけるCNOT3エクソン17スキッピング。(B)qRT-PCRによって判定し、TATA結合タンパク質(TBP)発現に対して正規化したCNOT3ノックダウンの結果としてのPRPF31上方制御。無処置対照におけるPRPF31発現を、1に設定した。
図10A図10は、(A)ASO6(配列番号64、CNOT3_H17A(+83+107)、CNOT3エクソン17を標的にする)でのアンチセンスオリゴマーでの処置または無処置の場合の野生型およびRP11のRPEにおける繊毛(赤色)および基底小体(緑色)の免疫染色を示す。(B)1,000個超の細胞から計数した繊毛を発現するRPE細胞の百分率。(C)NIS-Elements画像化ソフトウェアを使用した繊毛の長さの測定値。棒グラフは、約300個の線毛細胞についての平均±SEMを表す。スケールバー=10μm。スチューデントt検定。***p<0.001。
図10B図10は、(A)ASO6(配列番号64、CNOT3_H17A(+83+107)、CNOT3エクソン17を標的にする)でのアンチセンスオリゴマーでの処置または無処置の場合の野生型およびRP11のRPEにおける繊毛(赤色)および基底小体(緑色)の免疫染色を示す。(B)1,000個超の細胞から計数した繊毛を発現するRPE細胞の百分率。(C)NIS-Elements画像化ソフトウェアを使用した繊毛の長さの測定値。棒グラフは、約300個の線毛細胞についての平均±SEMを表す。スケールバー=10μm。スチューデントt検定。***p<0.001。
図10C図10は、(A)ASO6(配列番号64、CNOT3_H17A(+83+107)、CNOT3エクソン17を標的にする)でのアンチセンスオリゴマーでの処置または無処置の場合の野生型およびRP11のRPEにおける繊毛(赤色)および基底小体(緑色)の免疫染色を示す。(B)1,000個超の細胞から計数した繊毛を発現するRPE細胞の百分率。(C)NIS-Elements画像化ソフトウェアを使用した繊毛の長さの測定値。棒グラフは、約300個の線毛細胞についての平均±SEMを表す。スケールバー=10μm。スチューデントt検定。***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の説明
発明の詳細な説明
アンチセンスオリゴヌクレオチド
光受容体は、一般的なスプライシング活性の低下に対する脆弱性が高い。スプライシング因子の変異は種々の組織においてスプライシングの欠陥を引き起こし得るが、光受容細胞は、mRNA産生(ロドプシンおよび他の光伝達タンパク質をコードするmRNAなど)の需要が高いので、大きな影響を受ける。このモデルから、網膜によるmRNAの産生量が他の組織によるmRNAの産生レベルを大きく上回ることが推測される。
【0029】
PRPF31(hPRP31としても公知)は、U4/U6 RNA複合体の組み立ておよび再利用に必要な必須のpre-mRNAスプライシング因子をコードする。いくつかの研究から、RP11患者における総PRPF31 mRNA量の低下、ならびにスプライソソームの組み立ておよびpre-mRNAプロセシングの遅延が実証された。これは、疾患がハプロ不全機序を介して生じることを示す。他の組織と比較して、網膜は、7倍の主なスプライセオソームの核内低分子RNA(snRNA)を発現する。
【0030】
CCR4-Not転写複合体サブユニット3(CNOT3、Ccr4-Notデアデニラーゼ複合体の5つのNotタンパク質のうちの1つ)は、転写抑制機序を介してPRPF31変異の浸透度を決定し、そのプロモーターへの直接的な結合によってPRPF31転写を調整する主な変更遺伝子として同定されている。野生型PRPF31対立遺伝子の発現レベルは、変異PRPF31対立遺伝子のキャリアが症候性であるかどうかを決定する。無症候性キャリアでは、CNOT3は低レベルで発現され、野生型PRPF31転写物がより大量に産生されるため、網膜変性の発現が防止される。
【0031】
ヒトCNOT3は、753個のアミノ酸を有するタンパク質をコードする18-エクソン遺伝子である。エクソン2を排除すると、転写物から翻訳開始コドンが除去される。エクソン4、5、6、7、10、または17を除去すると、CNOT3の機能的ドメインが破壊され得る。エクソン3、8、9、および11~16のいずれかを排除すると、読み取り枠が破壊される。
【0032】
CNOT3遺伝子は、種々の生理学的過程におけるmRNAターンオーバーの制御およびmRNA分解の制御による細胞周期の進行に極めて重要であるので、CNOT3遺伝子のノックアウトは胎生致死である。しかしながら、RPのリスクが有るか罹患している被験体の眼におけるCNOT3のレベルが低下するか、局所的に消失し得る場合、改変されていない遺伝子由来のPRPF31の平均発現量がより多いことによって無症候性キャリアが疾患から保護されるという不完全浸透度モデルを模倣してPRPF31タンパク質量を増加させることができれば、疾患の進行に影響を及ぼす。
【0033】
したがって、本発明は、CNOT3レベルを低下させ(しかし、除去しないことが好ましい)、それにより正常なPRPF31対立遺伝子由来の転写および翻訳を増加させるために、CNOT3(PRPF31の負の制御因子)の機能障害タンパク質の非産生性スプライシングを誘導するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0034】
他のアンチセンスオリゴマーに基づいた治療と対照的に、本発明は、RNアーゼHの動員を介したRNA分解の増加を誘導せず、ここで、RNアーゼHは、CNOT3遺伝子のDNAに結合して二重鎖となったRNAに優先的に結合してRNAを分解する。本発明は、複製、転写、転座、および翻訳などの通常の機能を干渉することによってCNOT3タンパク質の産生量を調整するために、アンチセンスオリゴマーのCNOT3ゲノムDNAへのハイブリッド形成や、アンチセンスオリゴマーのmRNAへの結合に依存することもない。
【0035】
むしろ、アンチセンスオリゴマーを、CNOT3遺伝子転写物またはその一部におけるpre-mRNAスプライシングを改変し、エクソン「スキッピング」および/または末端イントロン保持を誘導するために使用する。このストラテジーは、好ましくは、総タンパク質発現を低下させるか、機能的ドメインを欠くタンパク質を生成し、それにより、タンパク質機能を低下させる。
【0036】
本発明の第1の態様によれば、CNOT3遺伝子転写物上の選択された標的に結合して、CNOT3遺伝子転写物またはその一部におけるpre-mRNAスプライシングを改変することができるアンチセンスオリゴマーを提供する。概して、CNOT3遺伝子転写物またはその一部において標的にされたエクソン排除および/または末端イントロン保持を誘導するための単離または精製されたアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0037】
一般集団において、PRPF31の発現には大きなばらつきがあり、発現レベルは連続分布に従う。発現レベルの任意単位は0.53から2.48まで変動し、これは最低発現と最高発現に5倍のばらつきがあることを表す。30%のPRPF31変異キャリアは無症状であり、これらの個体は、症候性PRPF31変異を有する個体のほぼ2倍の発現を示す野生型対立遺伝子を有する。したがって、好ましくは、CNOT3発現を調整することにより、症候性PRPF31変異を有する個体よりPRPF31を少なくとも2倍発現させることが可能である。好ましくは、CNOT3発現を低下させる本発明のAOに起因するPRPF31の発現は、症候性PRPF31変異を有する個体の1.5倍と5倍との間である。例えば、PRPF31の発現は、2倍と4倍との間であり得る。
【0038】
「単離された」は、未変性の状態で通常は物質に付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を意味する。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたオリゴヌクレオチド」は、本明細書中で使用される場合、天然の状態で隣接する配列から精製されているか除去されているポリヌクレオチドを指し得る(例えば、ゲノム内の断片に隣接する配列から取り除かれたDNA断片)。用語「単離」は、細胞に関連する場合、細胞(例えば、線維芽細胞、リンパ芽球)の供給元の被験体(例えば、ポリヌクレオチド反復疾患を有する被験体)からの精製を指す。mRNAまたはタンパク質の文脈では、「単離」は、供給源(例えば、細胞)からのmRNAまたはタンパク質の回収を指す。
【0039】
アンチセンスオリゴマーは、ハイブリッド形成する標的配列「に指向する」または「を標的にする」ということができる。ある特定の実施形態では、標的配列は、プレプロセシングされたmRNAの3’または5’スプライス部位を含む領域、分岐点、またはスプライシングの制御に関与する他の配列を含む。標的配列は、エクソン内に存在し得るか、イントロン内に存在し得るか、イントロン/エクソンジャンクションにまたがっていてもよい。
【0040】
ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、標的RNA(すなわち、スプライス部位の選択が調整されるRNA)に対して有効な様式で標的RNAのある領域(例えば、pre-mRNA)を遮断するのに十分な配列相補性を有する。例示的な実施形態では、CNOT3 pre-mRNAのかかる遮断は、本来はスプライシングを調整すると考えられるネイティブタンパク質の結合部位をマスキングすることおよび/または標的にされたRNAの構造を変化させることによってスプライシングを調整する働きをする。いくつかの実施形態では、標的RNAは、標的pre-mRNA(例えば、CNOT3遺伝子pre-mRNA)である。
【0041】
標的RNA配列に対して標的RNAのスプライシングを調整するのに十分な配列相補性を有するアンチセンスオリゴマーは、前述のアンチセンスオリゴマーが、本来は標的にされたRNAのスプライシングを調整し、そして/またはその三次元構造を変化させると考えられるネイティブタンパク質の結合部位のマスキングを誘発するのに十分な配列を有することを意味する。
【0042】
選択されたアンチセンスオリゴマーは、その配列が標的配列へのハイブリッド形成の際にスプライシングを調整するのに十分に相補的であり、必要に応じて、RNAとTmが45℃またはそれを超えるヘテロ二重鎖を形成する限り、より短くするか(例えば、約12塩基)、より長くする(例えば、約50塩基)ことができ、少数のミスマッチを含むことができる。
【0043】
好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、表1に記載の配列を含む群から選択される。好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、配列番号1~74、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64中の配列を含む群から選択される。
【0044】
ある特定の実施形態では、標的配列とアンチセンスオリゴマーとの間の相補度は、安定な二重鎖を形成するのに十分である。アンチセンスオリゴマーの標的RNA配列との相補性領域は、8~11塩基の短さであってよいが、12~15塩基またはそれを超えることができる(例えば、10~50塩基、10~40塩基、12~30塩基、12~25塩基、15~25塩基、12~20塩基、または15~20塩基(これらの範囲の間の全ての整数が含まれる)。約16~17塩基のアンチセンスオリゴマーは、一般に、固有の相補配列を有するのに十分な長さである。ある特定の実施形態では、本明細書中に考察されるように、不可欠な結合Tmを得るための最短の相補塩基が必要であり得る。
【0045】
ある特定の実施形態では、少なくとも最小数の塩基(例えば、10~12塩基)が標的配列に相補的である場合、長さが50塩基のオリゴヌクレオチドは適切であり得る。しかしながら、一般に、細胞への容易なまたは積極的な取り込みのためのオリゴヌクレオチドの長さは約30塩基未満が最適である。ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)アンチセンスオリゴマーについて、一般に、塩基の長さが18~25塩基のときに結合安定性と取り込みとの間で最適なバランスがとれる。約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50塩基からなるアンチセンスオリゴマー(例えば、CPPMO、PPMO、PMO、PMO-X、PNA、LNA、2’-OMe)が含まれる。
【0046】
ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、標的配列と100%相補的であり得るか、オリゴヌクレオチドと標的配列との間で形成されたヘテロ二重鎖が細胞ヌクレアーゼの作用およびin vivoで起こり得る他の分解様式に抵抗するのに十分に安定である限り、例えば、バリアントに順応するためのミスマッチを含み得る。それ故、ある特定のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドと標的配列との間で約または少なくとも約70%配列相補性(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列相補性を有し得る。
【0047】
ミスマッチは、存在する場合、典型的には、ハイブリッド二重鎖の中央よりも末端領域に向かうにつれて不安定性が低下する。許容されるミスマッチ数は、十分に理解された二重鎖安定性の原理にしたがって、オリゴヌクレオチドの長さ、二重鎖内のG:C塩基対の比率、および二重鎖内のミスマッチ(1つまたは複数)の位置に依存する。かかるアンチセンスオリゴマーは必ずしも標的配列と100%相補的でなくとも、標的pre-RNAのスプライシングが調整されるように標的配列に安定かつ特異的に結合するのに有効である。
【0048】
アンチセンスオリゴマーと標的配列との間に形成された二重鎖の安定性は、結合Tmおよび細胞の酵素切断に対する二重鎖の感受性と相関する。相補配列RNAに関するオリゴヌクレオチドのTmを、従来の方法(Hames et al.,Nucleic Acid Hybridization,IRL Press,1985,pp.107-108またはMiyada C.G.and Wallace R.B.,1987,Oligonucleotide Hybridization Techniques,Methods Enzymol.Vol.154 pp.94-107に記載の方法など)によって測定してよい。ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、相補配列RNAに関して、体温より高く、好ましくは、約45℃または50℃より高い結合Tmを有し得る。60~80℃の範囲またはそれを超えるTmも含まれる。
【0049】
バリアントのさらなる例には、配列番号1~74のうちのいずれか、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64、または表1に提供した配列の全長に対して約または少なくとも約70%の配列同一性または相同性(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性または相同性を有するアンチセンスオリゴマーが含まれる。
【0050】
より具体的には、選択された標的部位に結合して、CNOT3遺伝子転写物またはその一部におけるpre-mRNAスプライシングを改変することができるアンチセンスオリゴマーを提供する。アンチセンスオリゴマーは、好ましくは、表1に提供したアンチセンスオリゴマー(すなわち、配列番号1~74)、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64から選択される。
【0051】
pre-mRNAスプライシングの改変には、好ましくは、「スキッピング」(すなわち、mRNAの1つまたは複数のエクソンまたはイントロンの除去)および/または末端イントロンの保持を誘導する。得られたタンパク質は、親全長CNOT3タンパク質と比較した場合、内部短縮または未成熟の末端化のいずれかに起因してより短い場合があるか、末端イントロンの保持に起因してより長い場合がある。これらのCNOT3タンパク質を、非改変CNOT3タンパク質のイソ型と命名する場合がある。
【0052】
生成されたmRNAの残存エクソンは、インフレームにあり、元の3’と5’末端との間の領域に内部短縮を有すること以外は、親全長タンパク質に類似する配列を有するより短い配列を産生し得る。別の可能性としては、エクソンスキッピングはフレームシフトを誘導する場合があり、それにより、タンパク質の第1の部分は親全長タンパク質と実質的に同一であるが、タンパク質の第2の部分はフレームシフトに起因して異なる配列(例えば、ナンセンス配列)を有するタンパク質が得られる場合がある。あるいは、エクソンスキッピングは、読み枠の破壊および翻訳が未成熟に終止したことに起因する未成熟に終止したタンパク質の産生を誘導し得る。さらに、アンチセンスオリゴマーは、インフレームで末端イントロンを保持することに起因した人為的に延長したタンパク質を産生し得る。
【0053】
CNOT3の機能的ドメインには、コイルドコイル、リンカー、NAR(Notアンカー領域)、CS(コネクター配列)、およびNOTボックスが含まれる。エクソン4を排除するとコイルドコイルドメインの一部が除去され、エクソン9が喪失されると読み取り枠が破壊されてmRNAが分解され、任意のコードされたタンパク質が短縮する。一方で、エクソン17のスキッピングによってNOTボックスが変化し、複合体形成に影響を及ぼし、それ故、CNOT3機能に影響を及ぼすと予想される。
【0054】
1つまたは複数のエクソンが除去されると、さらに、CNOT3タンパク質がミスフォールディングし、タンパク質が膜を介して首尾よく輸送される能力が低下し得る。
【0055】
内部短縮タンパク質(すなわち、1つまたは複数のエクソンによってコードされるアミノ酸を欠くタンパク質)が存在することが好ましい。CNOT3タンパク質がノックアウトされる場合、身体がCNOT3タンパク質の総量の低下を相殺しようとするためにCNOT3転写を上昇させるという問題が生じ得る。対照的に、転写の上昇を防止するのに内部短縮タンパク質(完全なCNOT3タンパク質の特徴のうちの1つまたは複数を欠くことが好ましい)が存在することで十分なはずであるが、機能的CNOT3タンパク質の総量の減少に起因する治療上の利点も得られる。
【0056】
本発明のアンチセンスオリゴマー誘導エクソンスキッピングは、CNOT3タンパク質の機能を完全に破壊する必要も、実質的に破壊する必要さえもない。好ましくは、エクソンスキッピングプロセスにより、CNOT3タンパク質の機能性が低下するか損なわれる。
【0057】
アンチセンスオリゴマーを使用した本発明のスキッピングプロセスは、個別のエクソンをスキッピングする場合があるか、2またはそれを超えるエクソンを一度にスキッピングする場合がある。
【0058】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、選択された標的に結合してCNOT3遺伝子転写物におけるエクソン排除を誘導することができる2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーの組み合わせであり得る。組み合わせは、2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーのカクテルおよび/または共に連結した2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを含む構築物であり得る。
【表1-1】
【表1-2】
【0059】
CNOT3遺伝子転写物のスプライシングを操作する方法であって、
a)本明細書中に記載のアンチセンスオリゴマーのうちの1つまたは複数を提供し、前記オリゴマー(1つまたは複数)を標的核酸部位に結合させる工程
を含む、方法も提供する。
【0060】
本発明のさらに別の態様によれば、表1(すなわち、配列番号1~74からなる群)、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64、ならびにこれらに相補的な配列から選択される核酸配列のDNA等価物を含むCNOT3のスプライス操作のための標的核酸配列を提供する。
【0061】
コンセンサススプライス部位を完全にマスキングするようにアンチセンスオリゴマーをデザインしても、必ずしも標的にされたエクソンのスプライシングを変化させないかもしれない。さらに、本発明者らは、アンチセンスオリゴマーを設計する場合にアンチセンスオリゴマー自体のサイズまたは長さが常に主因であるわけではないことを発見した。IGTA4エクソン3などのいくつかの標的の場合、20塩基の短さのアンチセンスオリゴマーは、ある特定の場合には同一のエクソンに指向する他のより長い(例えば、25塩基)オリゴマーより効率的にいくつかのエクソンスキッピングを誘導することができた。
【0062】
また、本発明者らは、アンチセンスオリゴマーによって遮断またはマスキングされてスプライシングを再度指示することができるいかなる標準的なモチーフも存在しないようであることを発見した。アンチセンスオリゴマーをデザインし、その個別の有効性を経験的に評価しなければならないことが見出されている。
【0063】
より具体的には、アンチセンスオリゴマーは、表1に記載のものから選択され得る。配列は、好ましくは、配列番号1~74、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64、ならびにその組み合わせまたはカクテルのうちのいずれか1つまたは複数のうちのいずれか1つまたは複数からなる群から選択される。これには、pre-CNOT3遺伝子転写物においてmRNAプロセシング活性を保有するか調整する、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下でかかる配列にハイブリッド形成することができる配列、その相補配列、改変された塩基、改変されたバックボーン、およびその機能的短縮物または伸長物を含む配列が含まれる。
【0064】
オリゴマーとDNA、cDNA、またはRNAは、各分子内の十分な数の対応する位置が相互に水素結合することができるヌクレオチドで占められている場合、相互に相補的である。したがって、「特異的にハイブリッド形成可能な」および「相補的な」は、オリゴマーとDNA、cDNA、またはRNA標的の間に安定かつ特異的な結合が生じるのに十分な程度の相補性または対合を示すために使用される用語である。アンチセンスオリゴマー配列が特異的にハイブリッド形成することができるその標的配列と100%相補的である必要がないことが当該分野で理解される。化合物の標的DNAまたはRNA分子への結合が標的DNAまたは標的RNA産物の通常の機能に干渉し、かつ相補性の程度が、特異的結合が望まれる条件下で(すなわち、in vivoアッセイまたは治療上の処置の場合の生理学的条件下、およびin vitroアッセイの場合のアッセイ実施条件下で)アンチセンスオリゴマーの非標的配列への非特異的結合を回避するのに十分である場合に、アンチセンスオリゴマーは特異的に結合可能である。
【0065】
選択的ハイブリッド形成は、低、中程度、または高ストリンジェンシー下で可能であるが、高ストリンジェンシー下が好ましい。当業者は、ハイブリッド形成のストリンジェンシーが、塩基組成、相補鎖の長さ、およびハイブリッド形成する核酸の間のヌクレオチド塩基のミスマッチ数に加えて、塩濃度、温度、または有機溶媒などの条件に影響を受けることを認識する。ストリンジェントな温度条件には、一般に、30℃超、典型的には37℃超、好ましくは45℃超、好ましくは少なくとも50℃、典型的には60℃~80℃、またはそれを超える温度が含まれる。ストリンジェントな塩条件は、通常は1000mM未満、典型的には500mM未満、好ましくは200mM未満である。しかしながら、任意の単一のパラメーターの基準よりもパラメーターの組み合わせの方がはるかに重要である。ストリンジェントなハイブリッド形成条件の例は、65℃および0.1×SSC(1×SSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム(pH7.0))である。したがって、本発明のアンチセンスオリゴマーは、表1に提供した配列(すなわち配列番号1~74)、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64に選択的にハイブリッド形成するオリゴマーを含み得る。
【0066】
構造タンパク質内のエクソンの末端のコドンの配置によって常にコドン末端を破壊できるわけではないため、mRNAのインフレームでの読み取りを確実にするためにpre-mRNAから1つを超えるエクソンを欠失させる必要があり得ると認識される。かかる状況において、複数のアンチセンスオリゴマーは、所望のエクソンおよび/またはイントロンの包含を誘導させる異なる領域に各々のアンチセンスオリゴマーを指向させる本発明の方法によって選択される必要があり得る。所与のイオン強度およびpHで、Tmは、50%の標的配列が相補ポリヌクレオチドにハイブリッド形成する温度である。かかるハイブリッド形成は、アンチセンスオリゴマーが標的配列に対して正確な相補性を有する場合だけでなく、「近い」または「実質的な」相補性を有する場合に起こり得る。
【0067】
典型的には、選択的ハイブリッド形成は、アンチセンスオリゴマーのヌクレオチドと少なくとも約14ヌクレオチドのストレッチにわたって少なくとも約55%同一、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90%、95%、98%、または99%同一である場合に生じる。相同性比較のための長さは、記載のように、より長いストレッチにわたる場合があり、ある特定の実施形態では、しばしば、少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約12ヌクレオチド、より通常には少なくとも約20、しばしば少なくとも約21、22、23、または24ヌクレオチド、少なくとも約25、26、27、または28ヌクレオチド、少なくとも約29、30、31、または32ヌクレオチド、少なくとも約36またはそれを超えるヌクレオチドのストレッチにわたる。
【0068】
したがって、本発明のアンチセンスオリゴマー配列は、好ましくは、本明細書中の配列表に示した配列に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも86、87、88、89、または90%の相同性を有する。より好ましくは、相同性は、少なくとも91、92、93 94、または95%、より好ましくは少なくとも96、97、98%、または99%である。一般に、アンチセンスオリゴマーの長さが短いほど、選択的にハイブリッド形成させるために必要な相同性は高くなる。それ故に、本発明のアンチセンスオリゴマーが約30ヌクレオチド未満からなる場合、本明細書中の配列表に記載のアンチセンスオリゴマーと比較して、同一率が75%超、好ましくは85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95%、96、97、98%、または99%を超えることが好ましい。ヌクレオチドの相同性比較を、GCG Wisconsin BestfitプログラムまたはGAP(Deveraux et al.,1984,Nucleic Acids Research 12,387-395)などの配列比較プログラムによって行ってよい。このような方法で、本明細書中に引用した配列と類似するか実質的に異なる長さの配列を、アラインメントにギャップ(かかるギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される)を挿入することによって比較することができる。
【0069】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、標的配列と相同性の低い領域、および正確に相同する領域を有し得る。オリゴマーは、その全長にわたって正確な相同性を有する必要はない。例えば、オリゴマーは、標的配列と同一の少なくとも4塩基または5塩基の一続きのストレッチ、好ましくは標的配列と同一の少なくとも6塩基または7塩基の一続きのストレッチ、より好ましくは標的配列と同一の少なくとも8塩基または9塩基の一続きのストレッチを有し得る。オリゴマーは、標的配列と同一の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26塩基のストレッチを有し得る。オリゴマー配列の残りのストレッチは、標的配列と間欠的に同一であってよく;例えば、残りの配列は、同一の塩基を有し、非同一塩基が続き、同一塩基が続き得る。あるいは(または同様に)オリゴマー配列は、完全未満の相同性のストレッチが点在する同一配列(例えば、3、4、5、または6個の塩基)のいくつかのストレッチを有し得る。かかる配列ミスマッチは、好ましくは、スプライススイッチング活性の喪失が全くないか極めて少ない。
【0070】
用語「調整する(modulate)」または「調整する(modulates)」には、必要に応じて規定量および/または統計的に有意な量の1つまたは複数の定量可能なパラメーターが「増加する」または「減少する」ことが含まれる。用語「増加する(increase)」もしくは「増加(increasing)」、「増強する(enhance)」もしくは「増強(enhancing)」、または「刺激する(stimulate)」もしくは「刺激(stimulating)」は、一般に、1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーまたは組成物が、細胞または被験体において、アンチセンスオリゴマーなしまたは対照化合物のいずれかによって生じる生理学的応答(すなわち、下流効果)と比較して高い応答を生じるか生じさせる能力を指す。用語「減少(decreasing)」または「減少する(decrease)」は、一般に、1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーまたは組成物が、細胞または被験体において、アンチセンスオリゴマーなしまたは対照化合物のいずれかによって生じる生理学的応答(すなわち、下流効果)と比較して低い応答を生じるか生じさせる能力を指す。
【0071】
関連する生理学的応答または細胞応答(in vivoまたはin vitro)は当業者に明らかであり、必要とする細胞、組織、または被験体において、CNOT3コードpre-mRNA内の特異的エクソンの排除を増加させるか、CNOT3コードpre-mRNAの量を減少させるか、機能的CNOT3タンパク質の発現を減少させ得る。「減少(decreased)」量または「低下(reduced)」量は、典型的には、統計的に有意な量であり、アンチセンスオリゴマーが存在しないか(作用因子の不在)または対照化合物を使用した場合の産生量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50分の1、またはそれ未満(例えば、500、1000分の1)(その間の1を超える全ての整数および小数点(例えば、1.5、1.6、1.7.1.8が含まれる))の量であり得る。
【0072】
用語「低下する(reduce)」または「阻害する(inhibit)」は、一般に、1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーまたは組成物が、診断分野の日常的な技術に従って測定した場合に関連する生理学的応答または細胞応答(本明細書中に記載の疾患または容態の症状など)を「減少させる」能力に関し得る。関連する生理学的応答または細胞応答(in vivoまたはin vitro)は、当業者に明らかであり、網膜色素変性などの疾患の症状または病態の緩和が含まれ得る。
【0073】
応答の「減少(decrease)」は、アンチセンスオリゴマーなしまたは対照組成物によって得られた応答と比較して統計的に有意であり得、減少には、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%(その間の全ての整数が含まれる)の減少が含まれ得る。
【0074】
アンチセンスオリゴマーの長さは、pre-mRNA分子内の意図する位置に選択的に結合することができる限り、変動し得る。かかる配列の長さを、本明細書中に記載の選択手順にしたがって決定することができる。一般に、アンチセンスオリゴマーは、約10ヌクレオチド長から約50ヌクレオチド長までである。しかしながら、この範囲内の任意の長さのヌクレオチドを方法で使用してよいと認識される。好ましくは、アンチセンスオリゴマーの長さは、10と40との間、10と35との間、15~30ヌクレオチド長、または20~30ヌクレオチド長、最も好ましくは約25~30ヌクレオチド長である。例えば、オリゴマーは、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長であり得る。
【0075】
本明細書中で使用される場合、「アンチセンスオリゴマー」は、Watson-Crick塩基対合によって核酸塩基がRNA内の標的配列とハイブリッド形成して、標的配列内にオリゴヌクレオチド:RNAヘテロ二重鎖を形成することが可能な直鎖のヌクレオチド配列またはヌクレオチドアナログ配列を指す。用語「アンチセンスオリゴマー」、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「オリゴマー」、および「アンチセンス化合物」を、オリゴヌクレオチドを指すために互換的に使用してよい。環状サブユニットは、リボースもしくは別のペントース糖または、ある特定の実施形態では、モルホリノ基(以下のモルホリノオリゴヌクレオチドの説明を参照のこと)に基づき得る。当該分野で公知の数あるアンチセンス作用因子のうちで、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、および2’-O-メチルオリゴヌクレオチドも意図される。
【0076】
天然に存在しないアンチセンスオリゴマーまたは「オリゴヌクレオチドアナログ」((i)改変されたバックボーン構造(例えば、天然に存在するオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに見出される標準的なホスホジエステル結合以外のバックボーン)、および/または(ii)改変された糖部分(例えば、リボース部分またはデオキシリボース部分よりもむしろモルホリノ部分)を有するアンチセンスオリゴマーまたはオリゴヌクレオチドが含まれる)が含まれる。オリゴヌクレオチドアナログは、Watson-Crick塩基対合によって標準的なポリヌクレオチド塩基に水素結合することができる塩基を支持し、ここで、前述のアナログのバックボーンは、オリゴヌクレオチドアナログ分子と標準的なポリヌクレオチド(例えば、一本鎖RNAまたは一本鎖DNA)内の塩基との間で配列特異的にかかる水素結合が可能な塩基を提供する。好ましいアナログは、実質的に不変のリン含有バックボーンを有するアナログである。
【0077】
アンチセンスオリゴマーの1つの産生方法は、2’ヒドロキシリボース位のメチル化であり、ホスホロチオアートバックボーンを取り込むと、RNAに見かけ上類似しているが、ヌクレアーゼ分解に対する耐性がはるかに高い分子が産生されるにもかかわらず、当業者は、本発明の目的で使用可能であり得る他の適切なバックボーン形態を承知している。
【0078】
アンチセンスオリゴマーとの二重鎖形成中のpre-mRNAの分解を回避するために、方法で使用されるアンチセンスオリゴマーは、内因性RNアーゼHによる切断を最小にするか防止するように適応され得る。細胞内またはRNアーゼHを含む粗抽出物中のいずれかにおいて非メチル化オリゴマーでRNAを処置するとpre-mRNA:アンチセンスオリゴマー二重鎖が分解されるので、この性質は非常に好ましい。かかる分解を迂回するか誘導しないことが可能な任意の形態の改変アンチセンスオリゴマーが本発明で使用され得る。本発明のアンチセンスオリゴマーを、部分不飽和脂肪族炭化水素鎖および1つまたは複数の極性基または荷電基(カルボン酸基、エステル基、またはアルコール基が含まれる)を含むように改変することによってヌクレアーゼ耐性が付与され得る。
【0079】
RNアーゼHを活性化しないアンチセンスオリゴマーを、公知の技術(例えば、米国特許第5,149,797号を参照のこと)にしたがって作製することができる。デオキシリボヌクレオチド配列またはリボヌクレオチド配列であり得るかかるアンチセンスオリゴマーは、その1つのメンバーとしてオリゴマーを含む二重鎖分子へのRNアーゼHの結合を立体的に妨害するか防止する任意の構造の改変を簡潔に含み、構造の改変は、二重鎖形成を実質的に妨害も破壊もしない。二重鎖形成に関与するオリゴマー部分はオリゴマー部分へのRNアーゼH結合に関与する部分と実質的に異なるので、RNアーゼHを活性化しない多数のアンチセンスオリゴマーが利用可能である。例えば、かかるアンチセンスオリゴマーは、ヌクレオチド間架橋リン酸残基のうちの少なくとも1つまたは全てが改変ホスファート(メチルホスホナート、メチルホスホロチオアート、ホスホロモルホリダート、ホスホロピペラジダート ボラノホスファート、アミド結合、およびホスホルアミダートなど)であるオリゴマーであってよい。例えば、1つおきのヌクレオチド間架橋リン酸残基が記載のように改変されていてよい。別の非限定的な例では、かかるアンチセンスオリゴマーは、ヌクレオチドのうちの少なくとも1つまたは全てが2’低級アルキル部分(例えば、C~C、直鎖または分岐、飽和または不飽和のアルキル、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニル、およびイソプロピルなど)を含む分子である。例えば、1つおきのヌクレオチドが記載のように改変されていてよい。
【0080】
RNAと二重鎖形成した場合に細胞RNアーゼHによって切断されないアンチセンスオリゴマーの一例は、2’-O-メチル誘導体である。かかる2’-O-メチル-オリゴリボヌクレオチドは、細胞環境および動物組織において安定であり、RNAとのその二重鎖のTm値は、そのリボ対応物またはデオキシリボ対応物より高い。あるいは、本発明のヌクレアーゼ耐性アンチセンスオリゴマーは、最後の3’末端ヌクレオチドのうちの少なくとも1つがフッ素化されていてよい。さらに、あるいは、本発明のヌクレアーゼ耐性アンチセンスオリゴマーは、最後の3末端ヌクレオチド塩基のうちの少なくとも2つの間を連結するホスホロチオアート結合を有し、好ましくは、最後の4つの3’末端ヌクレオチド塩基の間を連結するホスホロチオアート結合を有する。
【0081】
別のオリゴヌクレオチド化学を使用してスプライススイッチングを増加さてもよい。例えば、アンチセンスオリゴマーは、以下を含むリストから選択され得る:ホスホルアミダートまたはホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO);PMO-X;PPMO;ペプチド核酸(PNA);ロックド核酸(LNA)および誘導体(α-L-LNA、2’-アミノLNA、4’-メチルLNA、および4’-O-メチルLNAが含まれる);エチレン架橋核酸(ENA)およびその誘導体;ホスホロチオアートオリゴマー;トリシクロ-DNAオリゴマー(tcDNA);トリシクロホスホロチオアートオリゴマー;2’O-メチル改変オリゴマー(2’-OMe);2’-O-メトキシエチル(2’-MOE);2’-フルオロ、2’-フルオロアラビノ(FANA);アンロックド核酸(UNA);ヘキシトール核酸(HNA);シクロヘキセニル核酸(CeNA);2’-アミノ(2’-NH2);2’-O-エチレンアミン、または混合物もしくはギャップマーとしての前述の物質の任意の組み合わせ。送達有効性をさらに改善するために、前述の改変ヌクレオチドは、しばしば、脂肪酸/脂質/コレステロール/アミノ酸/炭水化物/ポリサッカリド/ナノ粒子などを用いて糖部分または核酸塩基部分にコンジュゲートされる。また、これらのコンジュゲートされたヌクレオチド誘導体を使用して、エクソンスキッピングアンチセンスオリゴマーを構築することができる。ヒトCNOT3遺伝子転写物のアンチセンスオリゴマー誘導スプライス改変では、一般に、オリゴリボヌクレオチド、PNA、ホスホロチオアートバックボーン上の2OMeまたはMOE改変塩基のいずれかが使用されている。2OMeAOは、カチオン性リポプレックスとして送達された場合にin vitroで効率的に取り込まれるので、オリゴデザインのために使用されるが、これらの化合物は、ヌクレアーゼ分解に感受性を示し、in vivoまたは臨床での適用に理想的とは見なされていない。別の化学を使用して本発明のアンチセンスオリゴマーを生成する場合、本明細書中に提供した配列のウラシル(U)は、チミン(T)に置換され得る。
【0082】
上記のアンチセンスオリゴマーは本発明のアンチセンスオリゴマーの好ましい形態であるが、本発明には、他のオリゴマーアンチセンス分子(下記などのオリゴマー模倣物が含まれるが、これらに限定されない)が含まれる。
【0083】
本発明で有用な好ましいアンチセンスオリゴマーの具体例には、改変されたバックボーンまたは非天然のヌクレオシド間結合を含むオリゴマーが含まれる。本明細書中で定義するように、改変されたバックボーンを有するオリゴマーには、バックボーン内にリン原子を保持するオリゴマーおよびバックボーン内にリン原子を持たないオリゴマーが含まれる。本明細書の目的のために、当該分野で時折参照されるように、ヌクレオシド間バックボーン内にリン原子を持たない改変オリゴマーを、アンチセンスオリゴマーとみなすこともできる。
【0084】
他の好ましいオリゴマー模倣物では、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合の両方(すなわち、バックボーン)が新規の基と置換されている。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリッド形成のために維持される。1つのかかるオリゴマー化合物(優れたハイブリッド形成特性を有することが示されているオリゴマー模倣物)は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれている。PNA化合物では、オリゴマーの糖バックボーンが、アミド含有バックボーン、特にアミノエチルグリシンバックボーンに置換されている。核酸塩基は、保持され、バックボーンのアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合している。
【0085】
別の好ましい化学はホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)オリゴマー化合物であり、これはいかなる公知のヌクレアーゼやプロテアーゼによっても分解されない。これらの化合物は不変であり、RNA鎖に結合した場合にRNアーゼH活性を活性化せず、in vivo投与後にスプライス改変を維持することが示されている(Summerton and Weller,Antisense Nucleic Acid Drug Development,7,187-197)。
【0086】
また、改変されたオリゴマーは、1つまたは複数の置換された糖部分を含み得る。また、オリゴマーは、核酸塩基(しばしば当該分野で簡潔に「塩基」と呼ばれる)の改変または置換を含み得る。ある特定の核酸塩基は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増加させるのに特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6、およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンが含まれる)が含まれる。5-メチルシトシン置換は、さらにより具体的には2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合に、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃増加させることが示されている。
【0087】
本発明のオリゴマーの別の改変は、オリゴマーの活性、細胞分布、または細胞取り込みを向上させる1つまたは複数の部分またはコンジュゲートのオリゴマーへの化学的連結を含む。かかる部分には、脂質部分、例えば、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホナート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、ミリスチル、もしくはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
細胞取り込みおよび核局在化を強化するために、細胞透過性ペプチドがホスホロジアミダートモルホリノオリゴマーに付加されている。Jearawiriyapaisarn et al.(2008),Mol.Ther.16 9,1624-1629に示すように、異なるペプチドタグは、取り込み効率および標的組織特異性に影響を及ぼすことが示されている。
【0089】
所与の化合物内の全ての位置が一様に改変される必要はなく、実際は、1つを超える前述の改変が、単一の化合物内、またはオリゴマー内の単一のヌクレオシドに取り込まれ得る。また、本発明は、キメラ化合物であるアンチセンスオリゴマーを含む。「キメラ」アンチセンスオリゴマーまたは「キメラ」は、本発明の文脈において、アンチセンスオリゴマー、特に、2またはそれを超える化学的に異なる領域を含み、前述の領域の各々が少なくとも1つのモノマー単位(すなわち、オリゴマー化合物の場合のヌクレオチド)で構成されているオリゴマーである。これらのオリゴマーは、典型的には、オリゴマーまたはアンチセンスオリゴマーがヌクレアーゼ分解耐性、細胞取り込みを増大するようにオリゴマーが改変された少なくとも1つの領域、および標的核酸に対する結合親和性を増加させるためのさらなる領域を含む。
【0090】
アンチセンスオリゴマーおよびそのバリアントの活性を、当該分野の日常的技術にしたがってアッセイすることができる。例えば、調査されるRNAおよびタンパク質のスプライス形態および発現レベルは、転写された核酸またはタンパク質のスプライス形態および/または発現を検出するための多種多様の周知の方法のうちのいずれかによって査定され得る。かかる方法の非限定的な例には、RNAのスプライシングされた形態のRT-PCRとその後のPCR産物のサイズ分離、核酸ハイブリッド形成法(例えば、ノーザンブロットおよび/または核酸アレイの使用);核酸増幅法;タンパク質の免疫学的検出方法;タンパク質精製方法;およびタンパク質の機能または活性のアッセイが含まれる。
【0091】
RNA発現レベルを、細胞、組織、または生物からのmRNA/cDNA(すなわち、転写されたポリヌクレオチド)の調製、およびアッセイされる核酸の相補物またはその断片である基準ポリヌクレオチドとのmRNA/cDNAのハイブリッド形成によって査定することができる。cDNAを、必要に応じて、相補ポリヌクレオチドとのハイブリッド形成前に種々のポリメラーゼ連鎖反応またはin vitro転写法のうちのいずれかによって増幅させることができるが、増幅されないことが好ましい。また、1つまたは複数の転写物の発現を、定量的PCRを使用して検出して、転写物(1つまたは複数)の発現レベルを査定することができる。
【0092】
本発明は、CNOT3遺伝子転写物のアンチセンスオリゴマー誘導スプライススイッチング、臨床的に関連するオリゴマー化学、およびCNOT3スプライス操作を臨床レベルに仕向けるための送達系を提供する。全長CNOT3 mRNA量の実質的な減少、それによるCNOT3遺伝子転写由来のCNOT3タンパク質量の実質的な減少は、以下によって達成される:
1)(i)イントロン-エンハンサー標的モチーフ、(ii)アンチセンスオリゴマーの長さおよびオリゴマーカクテルの開発、(iii)化学の選択、および(iv)オリゴマー送達を向上させるための細胞透過性ペプチド(CPP)の付加の実験での査定による、線維芽細胞の細胞株を使用したin vitroでのオリゴマーの改良;および
2)1つまたは複数のエクソンが喪失したCNOT3転写物を生成するための新規のアプローチの詳細な評価。
【0093】
そのようなものとして、特異的アンチセンスオリゴマーを用いてCNOT3 pre-mRNAのプロセシングを操作することができることを本明細書中で実証している。この方法では、CNOT3タンパク質量を機能的に有意に減少させることができ、それにより、網膜色素変性に関連する重度の病態を軽減することができる。
【0094】
本発明にしたがって使用されるアンチセンスオリゴマーは、都合の良いことに、周知の固相合成技術によって作成され得る。かかる合成装置は、いくつかの販売者(例えば、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)が含まれる)から販売されている。修飾固体支持体上でのオリゴマーの1つの合成方法は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0095】
当該分野で公知のかかる合成の任意の他の手段を、追加でまたは代わりに使用してよい。ホスホロチオアートおよびアルキル化誘導体などのオリゴマーを調製するための類似の技術を使用することが周知である。1つのかかる自動化された実施形態では、ジエチル-ホスホルアミダイトを出発物質として使用し、Beaucage,et al.,(1981)Tetrahedron Letters,22:1859-1862に記載のように合成してよい。
【0096】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、in vitroで合成され、生物起源のアンチセンス組成物や、アンチセンスオリゴマーのin vivo合成のためにデザインされた遺伝子ベクター構築物を含まない。また、本発明の分子を、例えば、リポソーム、受容体を標的にする分子などとして他の分子、分子構造物、または化合物の混合物と混合するか、コンジュゲートするか、そうでなければ会合させてもよい。
【0097】
アンチセンスオリゴマーは、経口、局所、非経口、または他の送達、特に、局所的な眼への送達および注射による眼への送達のために処方され得る。製剤は、送達部位または活性部位での取り込み、分布、および/または吸収を補助するために製剤化され得る。好ましくは、本発明のアンチセンスオリゴマーは、CNOT3産生の影響が空間的に制限されて全身に及ばないように、眼への局所的な送達または眼内注射もしくは眼内インプラントのために製剤化される。
【0098】
処置方法
本発明のなおさらなる態様によれば、アンチセンスオリゴマーに基づいた治療で用いるための1つまたは複数の本明細書中に記載のアンチセンスオリゴマーを提供する。好ましくは、治療は、CNOT3発現に関する容態のためのものである。より好ましくは、CNOT3発現に関する容態のための治療は、網膜色素変性のための治療である。
【0099】
より具体的には、アンチセンスオリゴマーは、表1(すなわち、配列番号1~74のうちのいずれか1つまたは複数からなる群)、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64、ならびにその組み合わせまたはカクテルから選択され得る。これには、pre-CNOT3遺伝子転写物においてmRNAプロセシング活性を保有するか調整する、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下でかかる配列にハイブリッド形成することができる配列、その相補配列、改変された塩基、改変されたバックボーン、およびその機能的短縮物または伸長物を含む配列が含まれる。
【0100】
また、本発明は、選択された標的に結合してCNOT3遺伝子転写物におけるエクソン排除を誘導することができる2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーの組み合わせに及ぶ。組み合わせは、アンチセンスオリゴマーに基づいた治療で用いるための2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーのカクテル、共に連結した2またはそれを超える2またはそれを超えるアンチセンスオリゴマーを含む構築物であり得る。
【0101】
したがって、CNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善する方法であって、
a)有効量の本明細書中に記載の1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーまたは1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物を患者に投与する工程
を含む、方法を提供する。
【0102】
好ましくは、患者におけるCNOT3発現に関連する疾患は、網膜色素変性である。
【0103】
したがって、本発明は、網膜色素変性の影響を処置、予防、または改善する方法であって、
a)有効量の本明細書中に記載の1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーまたは1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーを含む医薬組成物を患者に投与する工程
を含む、方法を提供する。
【0104】
好ましくは、前述の治療を使用して、エクソンスキッピングストラテジーを介して機能的CNOT4タンパク質のレベルを低下させる。CNOT3遺伝子転写物またはその一部においてpre-mRNAスプライシングを改変することによって転写物のレベルを低下させることにより、CNOT3レベルを低下させることが好ましい。
【0105】
好ましくは、CNOT3が低下すると、CNOT3に関する容態または病態(網膜色素変性など)の症状の量、持続時間、または重症度を低下する。
【0106】
本明細書中で使用される場合、被験体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)または細胞の「処置」は、個体または細胞の自然経過を変化させようとする場合に使用される任意のタイプの介入である。処置には、医薬組成物の投与が含まれるが、これらに限定されず、予防的にか、病理学的事象の開始後か、病原体との接触後のいずれかに処置され得る。処置される疾患または容態の進行速度を低下させるか、疾患または容態の発症を遅延させるか、その発症の重症度を軽減するように仕向けることができる「予防的」処置も含まれる。「処置」または「予防」は、疾患もしくは容態またはその関連する症状の完全な根絶、治癒、または防止を必ずしも示さない。
【0107】
CNOT3発現に関連する疾患を有する被験体は、ヒトが含まれる哺乳動物であり得る。
【0108】
また、本発明のアンチセンスオリゴマーは、代替治療(薬物治療など)と併せて使用されてよい。
【0109】
したがって、本発明は、CNOT3発現に関連する疾患または容態の影響を処置、予防、または改善する方法であって、本発明のアンチセンスオリゴマーを、CNOT3発現に関連する疾患または容態の影響の処置、予防、または改善に関連する別の代替治療と連続的にか同時に投与する、方法を提供する。好ましくは、疾患または容態は、網膜色素変性である。
【0110】
送達
また、本発明のアンチセンスオリゴマーを、疾患の処置のために利用され得る予防薬または治療薬として使用することができる。したがって、1つの実施形態では、本発明は、薬学的に許容され得る担体、希釈剤、または賦形剤と混合された、治療有効量の、CNOT3 pre-mRNA内の選択された標的に結合して本明細書中に記載の効率的かつ一貫したエクソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0111】
患者におけるCNOT3発現に関する疾患の影響を処置、予防、または改善するための医薬、予防、または治療組成物であって、
a)本明細書中に記載の1つまたは複数のアンチセンスオリゴマー;および
b)1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤
を含む、医薬、予防、または治療組成物も提供する。
【0112】
好ましくは、本発明のアンチセンスオリゴマーは、全身への影響を回避するために局所眼科経路を介して送達される。投与経路には、硝子体内、前房内、結膜下、テノン嚢下、眼球後、後強膜近傍、または局所(点眼薬、洗眼薬、クリーム剤など)が含まれるが、これらに限定されない。送達方法には、例えば、注射器および薬物送達デバイス(植え込み硝子体送達デバイス(すなわち、VITRASERT(登録商標))など)による注射が含まれる。
【0113】
1つの実施形態では、アンチセンスオリゴマーを、20mg/kgの用量で静脈内投与する。例えば、アンチセンスオリゴマーを、マウスにおいて20mg/kgの用量で静脈内投与してよい。
【0114】
好ましくは、アンチセンスオリゴマーを、硝子体内注射によって、0.01~1.5mg/kg体重、0.1~0.1mg/kg体重、0.2~0.8mg/kg体重、0.4~0.7mg/kg体重、またはより好ましくは0.4~0.6mg/kg体重で投与する。アンチセンスオリゴマーを、硝子体内注射によって、例えば、約0.05mg/kg体重、0.1mg/kg体重、0.2mg/kg体重、0.3mg/kg体重、0.4mg/kg体重、0.5mg/kg体重、0.6mg/kg体重、0.7mg/kg体重、0.8mg/kg体重、0.9mg/kg体重、1.0mg/kg体重、1.1mg/kg体重、1.2mg/kg体重、1.3mg/kg体重、1.4mg/kg体重、1.5mg/kg体重で投与してよい。好ましくは、アンチセンスオリゴマーを、硝子体内注射によって、約0.5mg/kg体重で投与する。例えば、アンチセンスオリゴマーを、硝子体内注射によって、約0.5mg/kg体重でマウスに投与してよい。
【0115】
より好ましくは、アンチセンスオリゴマーを、硝子体内注射によって、0.5~50mg/眼、0.5~40mg/眼、0.5~30mg/眼、2~30mg/眼、2~20mg/眼、0.5~20mg/眼、またはより好ましくは5~20mg/眼で投与する。アンチセンスオリゴマーを、硝子体内注射によって、例えば、約0.5mg/眼、1.0mg/眼、2.0mg/眼、3.0mg/眼、4.0mg/眼、5.0mg/眼、6.0mg/眼、7.0mg/眼、8.0mg/眼、9.0mg/眼、10.0mg/眼、11.0mg/眼、12.0mg/眼、13.0mg/眼、14.0mg/眼、15.0mg/眼、16.0mg/眼、17.0mg/眼、18.0mg/眼、19.0mg/眼、20.0mg/眼、21mg/眼、22mg/眼、23mg/眼、24mg/眼、25mg/眼、30mg/眼、35mg/眼、40mg/眼、45mg/眼、または50mg/眼で投与してよい。好ましくは、アンチセンスオリゴマーを、硝子体内注射によって、約5~20mg/眼で投与する。
【0116】
アンチセンスオリゴマーを、一定間隔で短期間(例えば、2週間またはそれ未満で毎日)投与してよい。しかしながら、多くの場合、オリゴマーを、長期間にわたって間欠的に投与する。投与後または投与と同時に抗生物質を投与するか他の治療上の処置を行ってよい。処置レジメンを、処置を受けている被験体の免疫アッセイ、他の生化学検査、および生理学的試験の結果に基づいて、表示のように(用量、頻度、経路などを)調整してよい。
【0117】
投薬は処置すべき病状の重症度および応答性に依存し得、一連の処置は、数日間から数カ月間、または治癒するまで、または病状が軽減するまで継続される。あるいは、投薬は、疾患の進行速度に応じて用量設定され得る。ベースラインの進行を確立する。次いで、最初の1回量の投与後の進行速度をモニタリングして、速度の低下をチェックする。好ましくは、投薬後に進行しない。好ましくは、進行速度が不変である場合に限って再投薬が必要である。処置が成功して疾患がさらに進行しないか、さらに視力がいくらか回復することが好ましい。最適な投与計画を、患者の体内の薬物蓄積の測定値から計算することができる。当業者は、最適な投薬量、投与方法、および反復回数を容易に決定することができる。
【0118】
最適な投薬量は、個別のオリゴマーの相対的効力に応じて変動し得、一般に、in vitroおよびin vivo動物モデルで有効であることが見出されているEC50に基づいて推定することができる。
【0119】
一般に、投薬量は、0.01~1.5mg/kg体重であるか、硝子体内注射を介した投与では0.5~50mg/眼であり、1日、1週間、1ヶ月、もしくは1年に1回または複数回、またはさらに2~20年ごとに1回投与され得る。投薬の反復速度は、疾患の進行速度に依存する。当業者は、体液または組織内の薬物の滞留時間および濃度の測定値に基づいて投与の反復回数を容易に見積もることができる。処置が成功した後に、患者は病状の再発を防止するために維持療法を受けることが望ましい場合があり、ここで、オリゴマーは維持量で投与され、用量は、0.01~1.5mg/kg体重であり得るか、硝子体内注射を介した投与では0.5~50mg/眼であり得、1日、1週間、1ヶ月、もしくは1年に1回または複数回、またはさらに2~20年ごとに1回投与され得る。
【0120】
本発明のアンチセンスオリゴマーを使用した有効なin vivo処置レジメンは、期間、用量、頻度、および投与経路、ならびに処置を受ける被験体の容態(すなわち、予防的投与と限局性感染または全身性感染に対応した投与との比較)に応じて変動し得る。したがって、かかるin vivo治療は、しばしば、最適な治療結果を得るために、特定のタイプの処置を受けている障害に適切な試験によるモニタリング、および用量または処置レジメンを調整して対応することが必要である。
【0121】
処置は、例えば、当該分野で公知の疾患の一般的指標によってモニタリングされ得る。in vivo投与された本発明のアンチセンスオリゴマーの有効性は、アンチセンスオリゴマーの投与前、投与中、および投与後に被験体から採取された生物試料(組織、血液、尿など)から決定され得る。かかる試料のアッセイは、(1)当業者に公知の手順(例えば、電気泳動ゲル移動度アッセイ)を使用して、標的配列および非標的配列とのヘテロ二重鎖形成の存在または非存在をモニタリングする工程;(2)標準的な技術(RT-PCR、ノーザンブロッティング、ELISA、またはウェスタンブロッティングなど)によって判定した場合に、基準となる正常なmRNAまたはタンパク質と比較して変異mRNAの量をモニタリングする工程を含む。
【0122】
核内オリゴマー送達は、アンチセンスオリゴマーにおける大きな課題である。異なる細胞透過性ペプチド(CPP)は、条件および細胞株が異なる場合に種々の程度でPMOに局在し、本発明者らは、新規のCPPを、PMOを標的細胞に送達させる能力によって評価している。CPPまたは「細胞取り込み向上させるペプチド部分」という用語は、互換的に使用され、カチオン性細胞透過性ペプチドを指し、「輸送ペプチド」、「担体ペプチド」、または「ペプチド透過ドメイン」とも呼ばれる。ペプチドは、本明細書中に示すように、約または少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%以内の所与の細胞培養集団の細胞透過を誘導する能力を有し、全身投与した場合にin vivoで複数の組織内に高分子を移行させることが可能である。CPPは、当該分野で周知であり、例えば、米国特許出願公開第2010/0016215号(その全体が参考として援用される)に開示されている。
【0123】
したがって、本発明は、治療医薬組成物の製造のための細胞透過性ペプチドと組み合わせた本発明のアンチセンスオリゴマーを提供する。
【0124】
賦形剤
本発明のアンチセンスオリゴマーは、薬学的に許容され得る組成物中で送達させることが好ましい。組成物は、約1nM~1000nMの各々の本発明の所望のアンチセンスオリゴマー(1つまたは複数)を含み得る。好ましくは、組成物は、約1nM~500nM、10nM~500nM、50nM~750nM、10nM~500nM、1nM~100nM、1nM~50nM、1nM~40nM、1nM~30nM、1nM~20nM、最も好ましくは1nMと10nMとの間の本発明の各々の本発明のアンチセンスオリゴマー(1つまたは複数)を含み得る。
【0125】
組成物は、約1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、20nm、50nm、75nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、または1000nmの本発明の各々の所望のアンチセンスオリゴマー(1つまたは複数)を含み得る。
【0126】
本発明は、患者への送達に適切な形態でCNOT3発現に関する疾患または病態などの疾患の予防的処置または治療上の処置、症状の予防または改善に役立つように適応させた1つまたは複数のアンチセンスオリゴマーをさらに提供する。
【0127】
句「薬学的に許容され得る」は、患者に投与した場合に生理学的に忍容性があり、典型的にはアレルギー反応または類似する有害反応(胃の不調など)を生じない分子実体および組成物を指す。用語「担体」は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。かかる薬学的担体は、水および油(ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、およびゴマ油などの石油、動物、植物に由来するか、合成の油が含まれる)などの滅菌液であり得る。水または生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロールの水溶液を、特に注射液のための担体として使用することが好ましい。適切な薬学的担体は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Ed.,Pharmaceutical Press,PA(2013)に記載されている。
【0128】
本発明のより具体的な形態では、治療有効量の1つまたは複数の本発明のアンチセンスオリゴマーを、薬学的に許容され得る希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/またはキャリアと共に含む医薬組成物を提供する。かかる組成物は、種々の緩衝液成分(例えば、Tris-HCI、酢酸、リン酸)、pH、およびイオン強度の希釈剤および添加物(界面活性剤および溶解補助剤(例えば、Tween(登録商標)80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール(Thimersol)、ベンジルアルコール)、および増量剤(例えば、ラクトース、マンニトール)など)を含む。材料は、高分子化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸など)の粒子調製物またはリポソーム中に取り込まれ得る。ヒアルロン酸(hylauronic acid)も使用され得る。かかる組成物は、本発明のタンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、in vivoでの放出速度、およびin vivoでのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Ed.,Pharmaceutical Press,PA(2013)を参照のこと。組成物は、液体で調製され得るか、乾燥粉末(凍結乾燥形態など)であり得る。
【0129】
本発明にしたがって提供された医薬組成物は、当該分野で公知の任意の手段によって投与され得ると認識される。投与のための医薬組成物は、注射によるか、経口、局所、または肺もしくは鼻腔経路によって投与される。例えば、アンチセンスオリゴマーは、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、または皮下経路での投与によって送達され得る。当業者は、適切な経路を、処置中の被験体の容態に応じて適切に決定し得る。好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、CNOT3産生の影響が空間的に制限されて全身に及ばないように、眼に局所的に送達されるか、眼内注射または眼内インプラントによって送達される。
【0130】
局所投与のための製剤には、開示のオリゴマーが局所送達剤(脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤、および界面活性物質など)との混合物中に存在する製剤が含まれる。脂質およびリポソームには、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰イオン性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)、およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が含まれる。局所投与または他の投与のために、開示のオリゴマーは、リポソーム内にカプセル化され得るか、特にカチオン性リポソームと複合体を形成し得る。あるいは、オリゴマーは、脂質、特にカチオン性脂質と複合体を形成し得る。脂肪酸およびエステル、その薬学的に許容され得る塩、ならびのその使用は、米国特許第6,287,860号および/または米国特許出願第09/315,298号(1999年5月20日出願)にさらに記載されている。
【0131】
ある特定の実施形態では、開示のアンチセンスオリゴマーを、局所的方法または経皮的方法(例えば、例えば乳剤へのアンチセンスオリゴマーの取り込みを介し、かかるアンチセンスオリゴマーは必要に応じてリポソーム内にパッケージングされている)(眼表面への送達が含まれる)によって送達することができる。かかる局所的または経皮的および乳剤/リポソーム媒介の送達方法は、当該分野、例えば、米国特許第6,965,025号においてアンチセンスオリゴマーの送達に関する記載がある。好ましくは、局所送達は眼への送達である。
【0132】
また、本明細書中に記載のアンチセンスオリゴマーは、植込み型デバイスを介して送達され得る。かかるデバイスのデザインは、例えば、米国特許第6,969,400号に記載の合成インプラントデザインを用いた当該分野で認識されているプロセスである。好ましくは、インプラントは、アンチセンスオリゴマーの持続送達のために眼に植え込むことができる。
【0133】
眼投与のための組成物および製剤(眼注射、局所眼送達、および眼インプラントが含まれる)は、滅菌水溶液を含んでよく、滅菌水溶液は、緩衝液、希釈剤、および他の適切な添加物(浸透促進剤、担体化合物、および他の薬学的に許容され得る担体または賦形剤などであるが、これらに限定されない)も含み得る。
【0134】
治療に有用な量のアンチセンスオリゴマーは、以前に発表された方法によって送達され得る。例えば、アンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴマーと有効量のブロックコポリマーとの混合物を含む組成物を介して送達され得る。この方法の例は、米国特許出願公開第20040248833号に記載されている。核へのアンチセンスオリゴマーの他の送達方法は、Mann CJ et al.(2001)Proc,Natl.Acad.Science,98(1)42-47およびGebski et al.(2003)Human Molecular Genetics,12(15):1801-1811に記載されている。発現ベクターによって核酸分子を裸のDNAまたは脂質担体と複合体化したDNAのいずれかとして細胞に導入する方法は、米国特許第6,806,084号に記載されている。
【0135】
アンチセンスオリゴマーを、当該分野で認識されている技術(例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、融合、リポソーム、コロイドポリマー粒子ならびにウイルスベクターおよび非ウイルスベクターならびに当該分野で公知の他の手段)を使用して細胞に導入することができる。送達方法の選択は、少なくとも処置される細胞および細胞の位置に依存し、この選択は当業者に自明である。例えば、表面上にリポソームを方向づけるための特異的マーカーを有するリポソーム、標的細胞を含む組織内への直接注射、特異的受容体媒介取り込みなどによって局在化させることができる。
【0136】
コロイド分散系中のアンチセンスオリゴマーを送達させることが望ましい場合がある。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質ベースの系(水中油型乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソームまたはリポソーム製剤が含まれる)が含まれる。これらのコロイド分散系を、治療医薬組成物の製造で使用することができる。
【0137】
リポソームは、in vitroおよびin vivoでの送達ビヒクルとして有用な人工膜小胞である。これらの製剤は、最終的にカチオン性、アニオン性、または中性の電荷特性を有し、in vitro、in vivo、およびex vivoでの送達方法に有用な特徴を有し得る。巨大な単層小胞が巨大高分子を含む水性緩衝液をかなりの比率でカプセル化することができることが示されている。RNAおよびDNAを水性の内部にカプセル化することができ、生物学的に活性な形態で細胞に送達させることができる(Fraley,et al.,Trends Biochem.Sci.6:77,1981)。
【0138】
リポソームが効率的な遺伝子移入小胞となるために、以下の特徴を示すべきである:(1)目的のアンチセンスオリゴマーの生物学的活性を損なうことなく高効率で前述のアンチセンスオリゴマーをカプセル化すること;(2)非標的細胞と比較して標的細胞に優先的かつ実質的に結合すること;(3)小胞の水性内容物を高い効率で標的細胞質に送達させること;および(4)遺伝情報を正確かつ有効に発現すること(Mannino,et al.,Biotechniques,6:682,1988)。リポソームの組成物は、通常、リン脂質、特に相転移温度が高いリン脂質の組み合わせ(通常はステロイド、具体的にはコレステロールとの組み合わせ)である。他のリン脂質または他の脂質も使用され得る。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、および2価カチオンの存在に依存する。カチオン性リポソームは正電荷のリポソームであり、負電荷のDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成すると考えられている。pH感受性を示すか負電荷のリポソームは、DNAと複合体を形成するよりもDNAを捕捉すると考えられている。カチオン性および非カチオン性のリポソームの両方は、DNAを細胞に送達させるために使用されている。
【0139】
また、リポソームには、「立体的に安定化された」リポソームが含まれ、この用語は、本明細書中で使用される場合、1つまたは複数の特殊化脂質を含むリポソームを指し、ここで、特殊化脂質は、リポソームに取り込まれた場合に、かかる特殊化脂質を欠くリポソームと比較して循環寿命が向上する。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が1つまたは複数の糖脂質を含むか、1つまたは複数の親水性ポリマー(ポリエチレングリコール(PEG)部分など)で誘導体化されているリポソームである。リポソームおよびその使用は、米国特許第6,287,860号にさらに記載されている。
【0140】
当該分野で公知のように、アンチセンスオリゴマーは、例えば、リポソーム媒介取り込み、脂質コンジュゲート、ポリリジン媒介取り込み、ナノ粒子媒介取り込み、および受容体媒介エンドサイトシス、ならびにさらなる非エンドサイトシスの送達様式、例えば、微量注入、透過処理(例えば、ストレプトリシン-O透過処理、アニオン性ペプチド透過処理)、エレクトロポレーション、および当該分野で公知の種々の非侵襲性の非エンドサイトシスの送達方法(Dokka and Rojanasakul,Advanced Drug Delivery Reviews 44,35-49(その全体が参考として援用される)で言及されている)を含む方法を使用して送達され得る。
【0141】
また、アンチセンスオリゴマーは、医薬組成物を生産するために他の薬学的に許容され得る担体または希釈剤と組み合わされ得る。適切な担体および希釈剤には、等張生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)が含まれる。組成物は、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、経口、または経皮投与のために製剤化され得る。
【0142】
当業者は任意の特定の動物および条件に最適な投与経路および任意の投薬量を容易に決定することができると考えられるので、記載の投与経路は、指針のみを意図する。
【0143】
in vitroおよびin vivoの両方で機能的な新規の遺伝子材料を細胞に導入するための複数のアプローチが試みられている(Friedmann(1989)Science,244:1275-1280)。これらのアプローチには、発現すべき遺伝子の改変されたレトロウイルスへの組み込み(Friedmann(1989)前出;Rosenberg(1991)Cancer Research 51(18),suppl.:5074S-5079S);非レトロウイルスベクターへの組み込み(Rosenfeld,et al.(1992)Cell,68:143-155;Rosenfeld,et al.(1991)Science,252:431-434);または異種プロモーター-エンハンサーエレメントに連結した導入遺伝子のリポソームを介した送達(Friedmann(1989),前出;Brigham,et al.(1989)Am.J.Med.Sci.,298:278-281;Nabel,et al.(1990)Science,249:1285-1288;Hazinski,et al.(1991)Am.J.Resp.Cell Molec.Biol.,4:206-209;およびWang and Huang(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),84:7851-7855);リガンド特異的なカチン系輸送系へのカップリング(Wu and Wu(1988)J.Biol.Chem.,263:14621-14624)、または裸のDNA、発現ベクターの使用(Nabel et al.(1990),前出);Wolff et al.(1990)Science,247:1465-1468)が含まれる。導入遺伝子を組織に直接注射すると、局在化発現のみが起こる(Rosenfeld(1992)前出);Rosenfeld et al.(1991)前出;Brigham et al.(1989)前出;Nabel(1990)前出;and Hazinski et al.(1991)前出)。Brigham et al.のグループ(Am.J.Med.Sci.(1989)298:278-281 and Clinical Research(1991)39(要約))は、DNAリポソーム複合体の静脈内投与後または気管内投与後のいずれかにおけるマウス肺のみでのin vivoトランスフェクションを報告している。ヒト遺伝子療法の手順についての総説の例は、以下である:Anderson,Science(1992)256:808-813;Barteau et al.(2008),Curr Gene Ther;8(5):313-23;Mueller et al.(2008).Clin Rev Allergy Immunol;35(3):164-78;Li et al.(2006)Gene Ther.,13(18):1313-9;Simoes et al.(2005)Expert Opin Drug Deliv;2(2):237-54。
【0144】
本発明のアンチセンスオリゴマーは、ヒトが含まれる動物への投与の際に、生物学的に活性な代謝産物またはその残基を(直接または間接的に)提供することができる任意の薬学的に許容され得る塩、エステル、またはかかるエステルの塩、または任意の他の化合物を含む。したがって、一例として、本開示は、本発明の化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容され得る塩、かかるプロドラッグの薬学的に許容され得る塩、および他の生物学的等価物にも注目している。
【0145】
用語「薬学的に許容され得る塩」は、本発明の化合物の生理学的におよび薬学的に許容され得る塩(すなわち、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ親化合物に望ましくない毒性効果を付与しない塩)を指す。オリゴマーについて、薬学的に許容され得る塩の好ましい例には、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン(スペルミンおよびスペルミジンなど)のカチオンを用いて形成された塩;(b)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、および硝酸など)を用いて形成された酸付加塩;(c)有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、およびポリガラクツロン酸など)を用いて形成された塩;および(d)アニオン性元素(塩素、臭素、およびヨウ素など)から形成された塩が含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物を、局所または全身処置のいずれが望ましいのか、および処置すべき領域に応じて、いくつかの方法で投与することができる。局所経路(眼または筋肉の膜、および直腸送達が含まれる)、肺経路(例えば、散剤またはエアロゾルの吸入またはガス注入(ネブライザーが含まれる)、気管内、鼻腔内、上皮および経皮)、経口経路、または非経口経路を介して投与され得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、眼内、または筋肉内への注射または注入;または頭蓋内(例えば、髄腔内または脳室内)投与が含まれる。少なくとも1つの2’-O-メトキシエチル改変を有するオリゴマーは、眼内投与に特に有用であると考えられる。好ましくは、アンチセンスオリゴマーは、眼内経路を介して送達される。
【0146】
単位投薬形態で都合よく提供され得る本発明の医薬製剤は、医薬品産業で周知の従来技術にしたがって調製され得る。かかる技術は、有効成分を薬学的担体(1つまたは複数)または賦形剤(1つまたは複数)と関連させる工程を含む。一般に、製剤は、有効成分を液体担体または微粉化固体担体またはその両方と均一かつ完全に関連させ、次いで、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0147】
スイススタイル
本発明の別の態様によれば、CNOT3発現に関連する疾患を調整するか抑制するための医薬の製造における1つまたは複数の本明細書中に記載のアンチセンスオリゴマーの使用を提供する。
【0148】
また、本発明は、CNOT3発現に関連する疾患の処置のための医薬を製造するための本明細書中に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用を提供する。
【0149】
CNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善するための医薬の製造のための本明細書中に記載の精製および単離されたアンチセンスオリゴマーの使用も提供する。
【0150】
好ましくは、CNOT3に関する病態または疾患は、網膜色素変性である。
【0151】
本発明は、そのなおさらなる態様によれば、本発明のアンチセンスオリゴマー配列のcDNAまたはクローン化されたコピー、および本発明のアンチセンスオリゴマー配列を含むベクターに及ぶ。また、本発明は、かかる配列および/またはベクターを含む細胞にさらに及ぶ。
【0152】
キット
患者におけるCNOT3発現に関連する疾患の影響を処置、予防、または改善するためのキットであって、本明細書中に記載の少なくとも1つのアンチセンスオリゴマーおよびその組み合わせまたはカクテルを、使用説明書と共に適切な容器に包装された状態で含む、キットも提供する。
【0153】
好ましい実施形態では、キットは、少なくとも1つの、本明細書中に記載されているか表1に示したアンチセンスオリゴマー(すなわち、配列番号1~74)、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64、または本明細書中に記載のアンチセンスオリゴマーのカクテルを含む。また、キットは、緩衝液、安定剤などの助剤を含み得る。
【0154】
したがって、被験体におけるCNOT3発現に関連する疾患または容態を処置、予防、または改善するためのキットであって、前述のキットは、少なくとも、本明細書中に記載されているか表1に示したアンチセンスオリゴマーおよびその組み合わせまたはカクテルを、使用説明書と共に適切な容器に包装された状態で含む、キットを提供する。
【0155】
また、被験体におけるCNOT3発現に関連する疾患または容態を処置、予防、または改善するためのキットであって、前述のキットは、少なくとも、配列番号1~74のうちのいずれか1つまたは複数からなる群から選択されるアンチセンスオリゴマー、より好ましくは配列番号4、7、9、11、14、16~18、27、30、34、35、64、および67、さらにより好ましくは配列番号4、7、27、30、34、および64、およびその組み合わせまたはカクテルを、使用説明書と共に適切な容器に包装された状態で含む、キットを提供する。
【0156】
好ましくは、疾患または容態は、網膜色素変性である。
【0157】
キットの内容物を凍結乾燥することができ、キットは、凍結乾燥された構成要素の再構成のための適切な溶媒をさらに含むことができる。キットの各構成要素は、個別の容器に包装される。かかる容器には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって承認された形式の通知書を添付することができ、この通知書は、政府機関によるヒトへの投与のための製造、使用、または販売の承認を反映している。
【0158】
キットの内容物を1つまたは複数の溶液中に提供する場合、溶液は、水溶液、例えば、滅菌水溶液であり得る。in vivoでの使用のために、発現構築物は、薬学的に許容され得る注射用組成物に製剤化され得る。この場合、容器手段は、それ自体が吸入器、注射器、ピペット、点眼器、または他の類似の装置であってよく、これらの手段由来の製剤は、肺などの動物の病変部に適用するか、動物に注射するか、さらには、キットの他の構成要素に適用して混合され得る。
【0159】
1つの実施形態では、本発明のキットは、CNOT3遺伝子転写物上の選択された標的に結合して、CNOT3遺伝子転写物またはその一部におけるpre-mRNAスプライシングを改変することができるアンチセンスオリゴマーを有効量で含む組成物を含む。別の実施形態では、製剤は、測定済み、混合済み、および/または包装済みである。好ましくは、眼内溶液は無菌である。
【0160】
また、本発明のキットは、利用者遵守が容易なようにデザインされた説明書を含み得る。説明書は、本明細書中で使用される場合、任意のラベル、添付文書などを指し、包装材料の1つまたは複数の表面上に配置され得るか、説明書は、個別のシート上に提供され得るか、前述の組み合わせでもよい。例えば、1つの実施形態では、本発明のキットは、本発明の製剤の投与のための説明書を含む。1つの実施形態では、説明書は、本発明の製剤が網膜色素変性の処置に適切であることを示す。また、かかる説明書は、投薬量に関する説明書、および眼への局所送達または眼内注射を介した投与のための説明書を含み得る。
【0161】
アンチセンスオリゴマーおよび適切な賦形剤を、従事者または使用者が必要に応じて構成要素を薬学的に許容され得る組成物に製剤化することが可能なように個別に包装することができる。あるいは、アンチセンスオリゴマーおよび適切な賦形剤を共に包装することができ、それにより、従事者または使用者が必要な製剤化を最小限にすることができる。いずれにしても、包装材料は、有効成分の化学的、物理的、および審美的完全性を維持すべきである。
【0162】
通則
当業者は、本明細書中に記載の発明が具体的に記載した変形形態および修正形態以外の変形形態および修正形態が可能であると認識する。本発明は、全てのかかる変形形態および修正形態を含む。また、本発明は、本明細書中に言及または表示した全ての工程、特徴、製剤、および化合物を個別または集合的に含み、工程または特徴の任意の組み合わせおよび全ての組み合わせまたは任意の2つまたはそれを超える工程または特徴を含む。
【0163】
本明細書中に引用した各々の書類、参考文献、特許出願、または特許は、その全体が本明細書中で参考として明確に援用され、これは、読み手によってこれらの文書が本明細書の一部であると読み取られ、かつ見なされるべきであることを意味する。本明細書中に引用した各々の書類、参考文献、特許出願、または特許が本明細書中で繰り返されないのは、本明細書を簡潔にすることのみを目的としている。
【0164】
本明細書中または本明細書中で参考として援用される任意の生成物のための任意の書類中で言及した任意の製造者の指示書、説明書、製品仕様書、およびプロダクトシートは、本明細書中で参考として援用され、本発明の実施において使用され得る。
【0165】
本発明は、本明細書中に記載のいかなる特定の実施形態によってもその範囲を制限されないものとする。これらの実施形態は、例示のみを意図する。機能的に等価な製品、製剤、および方法は、明確に本明細書中に記載の発明の範囲内にある。
【0166】
本明細書中に記載の発明は、1つまたは複数の値の範囲(例えば、サイズ、変位量、および場の強度など)を含み得る。値の範囲は、範囲内の全ての値(範囲を定義する値が含まれる)および前述の範囲の近傍にある値(前述の範囲の境界を定義する値に隣接するので、同一または実質的に同一の結果が得られる)を含むと理解される。したがって、そうではないと示されない限り、明細書および特許請求の範囲に記載の数値のパラメーターは近似値であり、本発明によって得ようとされる所望の性質に応じて変動し得る。それ故に、「約80%」は、「約80%」を意味し、「80%」も意味する。最低限でも、各数値パラメーターは、有効数字および通常の丸めを考慮して解釈されるべきである。
【0167】
本明細書を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「comprise」またはそのバリエーション(「comprises」または「comprising」など)は、言及した整数または整数の群を含むことを意味するが、いかなる他の整数または整数の群も排除しないと理解される。本開示、特に特許請求の範囲および/またはパラグラフにおいて、「含む(comprises)」、「含んだ(comprised)」、および「含む(comprising)」などの用語が米国特許法中の用語に帰する意味を有することができ;例えば、これらの用語は、「含む(includes)」、「含んだ(included)」、および「含む(including)」などを意味することができ;「~から本質的になる(consisting essentially of)」および「~から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法中の用語に帰する意味を有する(例えば、これらの用語は、要素が明確に列挙されなくとも、先行技術で見出されるか、本発明の基本的な特徴または新規の特徴に影響を及ぼす要素を排除する)ことも示す。
【0168】
本明細書中で使用される選択された用語についての他の定義は、発明の詳細な説明内に見出され、全体で適用され得る。別段の定義がない限り、本明細書中で使用した全ての他の技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されている意味を有する。用語「活性薬剤」は、1つの活性薬剤を意味する場合があるか、2またはそれを超える活性薬剤を含む場合がある。
【0169】
本明細書中に含まれるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報を含む配列識別番号(「配列番号」)は、説明の終わりにまとめられており、Patentlnバージョン3.0プログラムを使用して作成されている。各々のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、配列表において数値表記<210>に続く配列識別子よって識別される(例えば、<210>1、<210>2など)。各々のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列についての配列の長さ、タイプ、および供給元となる生物を、それぞれ、数値表記フィールド <211>、<212>、および<213>に提供した情報によって示す。本明細書中で言及したヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、数値表記フィールド<400>に続く配列識別子で提供された情報(例えば、<400>1、<400>2)によって定義される。
【0170】
アンチセンスオリゴマー命名法は、アンチセンスオリゴマーの相違を区別するために提案および発表された(Mann et al.,(2002)J Gen Med 4,644-654を参照のこと)。以下に示すように、この命名法により、いくつかのわずかに相違するアンチセンスオリゴマーを試験する場合に具体的に関連付けられ、全ての同一の標的領域が対象とされるようになった:
H#A/D(x:y)
最初の文字は種を示す(例えば、H:ヒト、M:マウス)
「#」は、標的エクソン番号を示す
「A/D」は、それぞれ、エクソンの最初と最後のアクセプターまたはドナーのスプライス部位を示す
(x y)は、アニーリング座標を表し、ここで、「-」または「+」は、イントロン配列またはエクソン配列をそれぞれ示す。一例として、A(-6+18)は、標的エクソンに先行するイントロンの最後の6塩基および標的エクソンの最初の18塩基を示す。最も近いスプライス部位はアクセプターであると考えられるので、これらの座標は「A」が先行する。ドナースプライス部位でのアニーリング座標の記載はD(+2-18)であり得、ここで、最後の2つのエクソン塩基および最初の18個のイントロン塩基がアンチセンスオリゴマーのアニーリング部位に対応する。全エクソンアニーリング座標は、A(+65+85)(前述のエクソンの最初から65番目のヌクレオチドと85番目のヌクレオチド(両端を含む)の間の部位である)で表される。
【0171】
以下の実施例は、上記の発明の使用様式をより完全に記載するだけでなく、本発明の種々の態様を実施するための意図する最良の形態を示すのにも役立つ。これらの方法は、本発明の真の範囲を決して制限せず、むしろ、例示を目的として提供していると理解される。
【実施例
【0172】
実施例1
CNOT3のフレームシフトを誘導するためのAO媒介エクソンスキッピング
CNOT3のエクソン構造を、図1に示す。スプライススイッチングAOを、CNOT3 pre-mRNA(図1)においてフレームシフトしているエクソン内のエンハンサー部位を標的にして、CNOT3のエクソンスキッピングを誘導し、その結果として、読み取り枠の喪失およびノックダウンを誘導するようにデザインした。
【0173】
正常なヒトの線維芽細胞およびRP11患者由来の線維芽細胞(PRPF31c.1205 C>A Ser402)を、皮膚生検から採取し、10%FBSを補足したDMEM中で培養した。研究室内で2’O-メチルホスホロチオアートオリゴマーとして合成したアンチセンス配列(表1)を、製造者の説明書にしたがってリポフェクタミン3000(Life Technologies)を使用したリポプレックスとして、24ウェルプレート中の線維芽細胞にトランスフェクトした。次いで、変化している標的エクソンの選択で有効であった配列を、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)として合成し、PMOを以下のようにして線維芽細胞にトランスフェクトした:i)非複合体化の状態、ii)センスODNリーシュへのアニーリングしおよびリポフェクタミン3000を用いた送達(上記の通り)、またはiii)製造者の説明書にしたがってP2初代細胞4-D NucleofectorXキットS(Lonza)を使用したヌクレオフェクション。
【0174】
総RNAを、MagMax RNA抽出システム(Life Technologies)を用いて、トランスフェクトした細胞および対照細胞から抽出した。目的の転写物を、まず第一に半定量的RT-PCRによって評価し、次いで、qRT-PCRによって評価する。cDNA(RNA 300ng)を、製造者の説明書に従ってSuperScriptIV逆転写酵素キット(Life Technologies)を用いて合成した。製造者の説明書に従ってGC緩衝液Iを含むLA Taq DNAポリメラーゼ(TAKARA)を使用してRT-PCRを行った。
【0175】
細胞をCNOT3エクソンスキッピングAOでトランスフェクトした後に、CNOT3転写物を評価するために以下の3つの異なるプライマーセットを使用した:
1.エクソン3を標的にするAOのために、エクソン2にアニーリングする順方向プライマーを、エクソン6中の逆方向プライマーとペアにした。
2.エクソン8および9を標的にするAOのために、エクソン7中の順方向プライマーを、エクソン11逆方向プライマーとペアにした。
3.エクソン16および17を標的にするAOのために、エクソン15中の順方向プライマーを、エクソン18中の逆方向プライマーとペアにした。
【0176】
qRT-PCRを使用して、CNOT3エクソンスキッピングAOでのトランスフェクション後のPRPF31転写物レベルを定量した。PRPF31のエクソン2および3ジャンクションにまたがる順方向プライマーを、エクソン3および4ジャンクションにまたがる逆方向プライマーとペアにした(表2)。全てのCNOT3 AO処置細胞の結果を、2つのハウスキーピング遺伝子TBPおよびGAPDHの発現に対して正規化し、抗ISS-N1および偽AOで処置した細胞と比較してPRPF31転写物の変化倍率を計算した。
【表2】
【0177】
エクソンスキッピングの誘導に起因すると予測される誘導された(小さい方の)CNOT3転写産物の配列決定により、AO3697およびAO3698がエクソン3スキッピングを媒介し、AO3702がエクソン8の部分的スキッピングおよび完全なスキッピングの両方を誘導し、AO3703が用量依存性のエクソン8スキッピングを媒介したことが明らかとなった(データ示さず)。次いで、効率的なCNOT3エクソン3、8、または9のスキッピングを媒介したAOを、RP患者の線維芽細胞に48時間トランスフェクトし、CNOT3転写物をRT-PCRによって分析した(図2)。CNOT3エクソンスキッピングは、トランスフェクション48時間後に明らかとなり、全長転写産物レベルがいくらか低下した。エクソン3はAO3697によって排除され、エクソン8はAO3702およびAO3703によってスキッピングされ、エクソン9はAO3706によってスキッピングされた。
【0178】
以前に、本発明者らは、ホスホロジアミダートモルホリノ(PMO)化学が2’O-メチルPS化学として合成した同一の配列よりもスプライス改変を有効に媒介することを示していた。したがって、CNOT3転写物をノックダウンするのに最も有望なAO配列を、PMOとして合成し、正常な非複合体化線維芽細胞に、複合体化せずにか、リーシュ/リポプレックスを用いるか、ヌクレオフェクション(Nucleofector、Lonza)を介してトランスフェクトする。CNOT3を標的にするAO配列の評価および最適化は進行中である。
【0179】
SH-SY5Y細胞は、しばしば、ニューロンの機能および分化のin vitroモデルとして使用される。この細胞は、表現型がアドレナリン作動性であるが、ドーパミン作動性マーカーも発現する。線維芽細胞においてCNOT3転写物を改変するAOを、分化したSH-SY5Y細胞においてCNOT3を下方制御してPRPF31発現(転写物およびタンパク質)を増加させる能力について評価する。
【0180】
実施例2
CNOT3をノックダウンするためのAO媒介末端イントロン保持
アンチセンス配列を、CNOT3の末端エクソンを標的にしてCNOT3の末端イントロン保持およびノックダウンを誘導するようにデザインした。
【0181】
CNOT3の末端エクソンを標的にする2’O-メチルAOを、adRP11患者の線維芽細胞に48時間トランスフェクトした。CNOT3転写物のRT-PCR分析は、AO3887、3888、および3889(表1)が末端イントロン保持および全長転写産物レベルの低下を用量依存性様式で誘導したことを示した(図3)。
【0182】
実施例3
RPを有する家族の採用および概説
本発明者らは、WA在住のPRPF31変異を有する2家族(コーカサス人の1家族および先住民の1家族)の3世代を試験した(図4)。本発明者らは、患者7人から皮膚線維芽細胞を採取し、これらの家族の24人の罹患個体のうちの10人において疾患進行のモニタリングを開始した。
【表3】
【0183】
実施例4
RP11患者由来の誘導多能性幹細胞および対照線維芽細胞の生成ならびにCNOT3ノックダウンの結果としての遺伝子発現の査定
誘導多能性幹細胞を、患者線維芽細胞および対照線維芽細胞から生成する。患者線維芽細胞を、NEON(登録商標)エレクトロポレーションシステムを使用して、再プログラミングエピソーム(ThermoFisher(登録商標))でトランスフェクトする。典型的な再プログラミング実験では、12~15個のiPSC用コロニーをトランスフェクション3~4週間後に選別し、免疫染色およびRT-PCR分析による多能性遺伝子発現の評価のために継代した(図5A~C)。次いで、3つのクローンを、さらなる試験(TaqMan Arrays(ヒト幹細胞多能性アレイ、ThermoFisher)による遺伝子発現プロファイリングおよびQuantiSNP分析(AGRF)を用いた染色体Gバンド分析によるバーチャル核型分類が含まれる)のために選択する。
【0184】
3系列への分化可能性を実証するために、iPSCを胚様体として2~4週間培養し、外胚葉、中胚葉、および内胚葉への分化のマーカーの発現、ならびに多能性マーカーの下方制御についてRT-PCRによって試験する(図5C)。iPSCは、CIFの公開プロトコール(Mellough et al.,Efficient stage-specific differentiation of human pluripotent stem cells toward retinal photoreceptor cells.Stem Cells,2012.30(4):p.673-86.)を使用して網膜オルガノイドに分化される(図5D~H)。
【0185】
分化細胞を、各分析のために三連でモルホリノ化合物として合成されたリードCNOT3ターゲティングAOでトランスフェクトする。
【0186】
CNOT3、PRPF31、および他のスプライシング因子の転写物を分析する。CNOT3、PRPF31、ならびに選択したパラスペックルタンパク質およびスプライシング因子を、スプライシング機構およびスプライシング経路の完全性を反映するためのウェスタンブロットおよび免疫蛍光によって査定する。
【0187】
実施例5
AOの用量依存性試験
AO配列を、CNOT3伝令RNA由来の選択されたエクソンをスキッピングするようにデザインし、効率的なトランスフェクションのためのカチオン性リポソームとの複合体化の後に2‘O-メチルホスホロチオアートAOとして線維芽細胞にトランスフェクトした。標的エクソンをスキッピングすると、2%アガロースゲル上の産物の分離および染色によって同定したところ、伝令RNAのRT-PCR産物が短くなる(図6および7)。
【0188】
好ましい配列は、用量依存性の標的エクソンのスキッピングを示す。次いで、リード配列を、患者線維芽細胞へのトランスフェクションによる試験のためのホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PPMO)として合成した。
【0189】
RP11患者は、健康な集団のおよそ50%のPRPF31レベルを示す。CNOT3およびPRPF31の伝令RNAを、RP11ファミリーメンバーおよび健常対照群における逆転写および定量的PCR(qRT-PCR)によって定量した。図8aは、より高いCNOT3発現がヘテロ接合性PRPF31変異キャリアにおけるPRPF31の低下および臨床転帰に相関することを示す。標的CNOT3エクソンのスキッピングを、qRT-PCRによって査定し(図8b、8c)、AO処置後のPRPF31発現を、健常なヒトゲノムのいかなる領域も標的にしない対照AO配列(25nMの対照AOでのトランスフェクション値を1に設定)で処置した細胞(影響なしと予想される-負の対照)のPRPF31発現と比較して示す。無処置細胞由来のデータを、比較のために含めている。
【0190】
RP11患者は、健康な集団のおよそ50%のPRPF31レベルを示し、他方では、症候性PRPF31変異キャリアは健常レベルの少なくとも70%またはそれを超えるレベルを示す。PRPF31発現が1.5倍に増加すると(例えば、CNOT3エクソン3または10のスキッピング(図8b)およびCNOT3エクソン9、16、または17のスキッピング(図8c))、RP11網膜色素上皮におけるスプライシング機能がレスキューされると予想される。
【0191】
実施例6
アンチセンスオリゴマー媒介CNOT3エクソンスキッピングは、RP11患者のiPSC誘導網膜色素上皮(RPE)におけるPRPF31発現を上方制御し、一次繊毛の長さおよび数をレスキューする
ASO6(配列番号64、CNOT3_H17A(+83+107)、CNOT3エクソン17を標的にする)をホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)として合成し、培養培地中で5uM ASOを使用した直接トランスフェクションによってRP11 iPSC由来RPEにトランスフェクトした。
【0192】
免疫細胞化学を、アンチセンスオリゴマーでの処置または無処置の場合の野生型およびRP11のRPEにおける繊毛および基底小体の免疫染色のために使用した。
【0193】
繊毛の免疫染色プロトコール
チャンバースライド上のRPE細胞を、氷冷アセトン-メタノール(1:1)を用いて4分間固定し、次いで風乾した。細胞を、10%濾過ヤギ血清を含むPBS中で30分間ブロッキングした。基底小体染色のために、細胞を、マウス抗ペリセントリン抗体(1:100)と室温で1時間インキュベートした。一次抗体を、アレキサフルオロ488抗マウス(1:400)を使用して検出した。繊毛染色のために、細胞を、ウサギ抗ARL13B抗体(1:500)とインキュベートし、4℃で一晩インキュベートした。第2の一次抗体を、アレキサフルオロ568抗ウサギ(1:400)を使用して室温で1時間検出し、核検出のためのHoechst(1:125に希釈)を用いて対比染色した。カバーガラスを、Prolong Gold退色防止剤入り培地を使用してスライドガラス上にマウントした。
【0194】
共焦点顕微鏡による解析および定量化
RPEの一次繊毛を、共焦点顕微鏡法を使用してPRPF31機能を評価するために査定した。およそ300個のRPE細胞/試料の繊毛の長さを、NIS-Elements画像化ソフトウェアを使用して測定した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8a
図8b
図8c
図9
図10A
図10B
図10C
【手続補正書】
【提出日】2022-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022534086000001.app
【国際調査報告】