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特表2022-534097増強されたレベルのプロバイオティクスを有する発酵乳製品を製造するためのプロセス
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  • 特表-増強されたレベルのプロバイオティクスを有する発酵乳製品を製造するためのプロセス 図1
  • 特表-増強されたレベルのプロバイオティクスを有する発酵乳製品を製造するためのプロセス 図2
  • 特表-増強されたレベルのプロバイオティクスを有する発酵乳製品を製造するためのプロセス 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】増強されたレベルのプロバイオティクスを有する発酵乳製品を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/123 20060101AFI20220720BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220720BHJP
【FI】
A23C9/123
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570204
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020064567
(87)【国際公開番号】W WO2020239761
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】19177015.5
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】マージャナ クーリック-バウデン
(72)【発明者】
【氏名】マット ニコルソン
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
【Fターム(参考)】
4B001AC31
4B001BC13
4B001BC14
4B001EC05
4B018LB07
4B018MD71
4B018MD86
4B018MD87
4B018ME11
4B018MF13
(57)【要約】
本発明は、大量のプロバイオティクス細菌を有する発酵乳製品を製造するための組成物及び方法に関する。特に、本発明は、乳ベースに、(i) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株を含むスターター培養物、(ii) 発酵乳製品のpHが4.9~5.5であるときに枯渇するように調整された量の、乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖及び(iii) ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から選択されるプロバイオティクス株、を添加することを含む、発酵乳を製造するためのプロセスに関する。加えて、本発明は、本発明のプロセスによって製造した組成物、及び発酵乳製食品又は飼料製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
i. 乳ベースに、以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス、とを含む乳酸菌のスターター培養物;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株、
を加え;
ii. 目標pHが達成されるまでの期間にわたり乳ベースを発酵させて、発酵乳製品を得ること、
を含む発酵乳製品を製造するためのプロセス。
【請求項2】
前記(単数若しくは複数の)非ラクトース糖が、スクロース、ガラクトース及びグルコースから成る群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ステップiiの目標pHが、約4.8~約4.0、好ましくは約4.6~約4.55、より一層好ましくは約4.55である、請求項1~2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ストレプトコッカス・サーモフィルスラクトース欠損性菌株が、以下の:
(a)(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28952で寄託された菌株;
(ii)DSM28952由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;
(b)(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28953で寄託された菌株;
(ii)DSM28953由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;
(c)(i)2017年8月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM32599で寄託された菌株;
(ii)DSM32599由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;並びに
(d)(i)2017年8月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM32600で寄託された菌株;及び
(ii)DSM32600由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株、
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ラクトース欠損性ラクトバチルス株がL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株であり、以下の:
(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28910で寄託された菌株;及び
(ii)DSM28910由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株、
から成る群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロバイオティクスラクトバチルス株が、ラクトバチルス・ラムノサス株、ラクトバチルス・パラカゼイ株及びラクトバチルス・アシドフィルス株から成る群から選択され、及び/又は前記プロバイオティクスビフィドバクテリウム株が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスから成る群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロバイオティクス株が、ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス、LGG(登録商標)、ATCC55544として寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ株L.カゼイ431(登録商標)、DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)及びDSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)から成る群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記のステップi.c.において乳ベースに添加されるプロバイオティクス株が、ビフィドバクテリウム株、好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスから成る群から選択されるプロバイオティクスビフィドバクテリウム株、より一層好ましくはDSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ステップi.が、乳ベースに、以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる非ラクトース糖、ここで、該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. (i) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標);又は
(ii) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)及びATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標);又は
(iii) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)及びDSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)、
を添加することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株が請求項4に記載のとおり定義されて、かつ、前記非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株が請求項5に記載のとおり定義される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセスによって製造される発酵乳製品。
【請求項12】
非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス、及びラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株を含む食品又は飼料製品であって、ここで、1.3E+08CFUプロバイオティクス細菌の生存細胞/g発酵乳製品(CFU/g)以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上の、食品又は飼料製品中に存在する少なくとも1種のプロバイオティクス株を、請求項1の項目iiで定義した発酵が完了した少なくとも1日後の時点で含み、ここで、発酵が完了した後に約4℃で維持される、食品又は飼料製品。
【請求項13】
前記食品又は飼料製品が、発酵乳製品、好ましくは発酵乳飲料、より好ましくはヨーグルトである、請求項12に記載の食品又は飼料製品。
【請求項14】
前記ストレプトコッカス・サーモフィルスラクトース欠損性菌株が請求項4に記載のとおり定義される菌株であり;及び/又は前記ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株が請求項5に記載のとおり定義される菌株であり;及び/又は前記プロバイオティクス株が、ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス、LGG(登録商標)、ATCC55544として寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ株CRL431、DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)及びDSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)から成る群から選択される、請求項12~13のいずれか一項に記載の食品又は飼料製品。
【請求項15】
以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含む乳酸菌のスターター培養物;及び
b) a)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株の存在下での乳ベースの発酵において、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在する、
を含む発酵乳製品を製造するための組成物。
【請求項16】
前記ストレプトコッカス・サーモフィルスラクトース欠損性菌株が請求項4に記載のとおり定義される菌株であり;及び/又は前記ラクトース欠損性ラクトバチルス株が請求項5に記載のとおり定義されるL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、ラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株を更に含む、請求項15~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
以下の:
a) ラクトース欠損性でない少なくとも1種のストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース欠損性でない少なくとも1種のラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含む乳酸菌のスターター培養物;及び/又は
b) i. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含む乳酸菌のスターター培養物、及び
ii. i)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9を下回るときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在する、
を含む組成物を用いて発酵させた発酵乳製品と比較した場合に、発酵乳製品中の生存プロバイオティクス細胞のカウント数を増加させるための、請求項15~17のいずれか一項に定義される組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、プロバイオティクス細菌の量が増加した発酵乳製品を製造するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)及びビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)などのプロバイオティクス株は発酵乳製品で幅広く使用される。
【0003】
これらのプロバイオティクス株は、単一株として乳中に植菌されたとき、非常に遅くしか増殖しない。加えて、一部の菌株は24時間以内にpH6.0を下回る酸性化ができない、例えば、それぞれ、BB-12(登録商標)及びLGG(登録商標)(BB-12(登録商標)及びLGG(登録商標)はChr. Hansen A/Sの登録商標である)が、それらがヨーグルト培養物なしで植菌されたとき、十分に増殖/酸性化しないことを示す図1を参照のこと。ヨーグルト培養物と組み合わせて、(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株は単一株よりわずかに良く増殖できるが、1log超の増殖は稀である。消費者によって所望される味及びフレーバーのため、典型的なヨーグルト発酵はpH4.60~4.55で止められる。加えて、安全上の理由のために、低いpH、例えば約5.5を下回る、例えばpH4.60~4.55などのpHを達成することが重要である。この時点(pH4.60~4.55)で、ヨーグルト種、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)(ST)及びラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)(LB)は、(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株を制して優勢になる。一般に、最終的なプロバイオティクスヨーグルトは、約5E+08~1E+09CFU/mLのSTとLB、及び2-3E+07~1E+08CFU/mLのプロバイオティクス株を含有する。
【0004】
加えて、典型的なプロバイオティクスヨーグルトにおける貯蔵期間(すなわち、北アメリカと世界の他のいくつかの地域における新鮮な発酵製品の典型的な貯蔵期間である50~60日にわたる保存)にわたり、プロバイオティクスの細胞数は減少する。例えば、貯蔵期間にわたり、ビフィドバクテリウム、BB-12(登録商標)の細胞数は、ヨーグルト培養物、乳ベース、培養、及び貯蔵条件によって、通常は50~60日間にわたって0.5~1log減少する。LA-5(登録商標)(LA-5(登録商標)はChr. Hansen A/Sの登録商標である)の細胞数は、典型的に50~60日間の貯蔵期間にわたり1~2log減少する。
【0005】
従来のヨーグルト培養物と(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株との混ぜ合わせによってそれが達成可能であるより高いプロバイオティクス数(2-3E+07~1E+08CFU(コロニー形成単位)/mL)を達成することが特定の市場、又は特定のタイプの製品に対して求められ、特にここで、該細胞数は、製品の貯蔵期間にわたって維持される。これらの製品の例は、以下の:
【0006】
1) 60日間の貯蔵期間後に65mlの製品中に記録されたレベルのプロバイオティクス(1E+09CFU/一人分)が存在しなければならない発酵プロバイオティクスショット;
2) 50~60日より長期間にわたり記録されたレベルのプロバイオティクス(1E+09CFU/一人分)が存在するプロバイオティクスヨーグルト;
3) 非常に高いカウント数(10~20E+09CFU/一人分)を有するプロバイオティクスヨーグルト;及び
4) 凍結乾燥ヨーグルト「パール」(ペレット)とドロップ(ウェハー)、
である。本出願に投入されるプロバイオティクスヨーグルトは、加工、冷凍及び凍結乾燥された後の有効量(貯蔵期間の終了時点で1E+09CFU/一人分)を確保するためのプロバイオティクス株の非常に高い細胞数(5E+08CFU/g)を含有している必要がある。
【0007】
特別に設計された培養物と菌株の組み合わせが、例えば、最大1~2E+08CFU/mLのビフィドバクテリウム、BB-12(登録商標)の増殖をサポートできる(例えば、WO2008/148561を参照のこと)。一部のプロバイオティクス株のより高いカウント数は、高い植菌率(5~10倍高い、0.05%~0.1%)によってもまた達成され得るが、この溶液は高価であって、ほとんど使用されていない。
【0008】
WO2017/125600は、特定の条件下でのL.パラカゼイCRL431と組み合わせたラクトース(-)スクロース(+)S.サーモフィルス(ST)の共培養が、L.パラカゼイCRL431と組み合わせたラクトース(+)S.サーモフィルス(ST)の共培養と比較した場合に、L.パラカゼイCRL431の高い細胞数をもたらしたことを示す。
【0009】
ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)、ラクトバチルス・アシドフィルス、LA-5(登録商標)、又はラクトバチルス・ラムノサス、LGG(登録商標)などの生存プロバイオティクス細胞の高い細胞数を有する発酵乳製品を製造するための更なる組成物及び方法を必要とし、特にここで、該生存細胞数は、好ましくは4℃にて、典型的に60日間の発酵乳製品の貯蔵期間にわたり増加する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含むスターター培養物;及び
b) a)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、
を使用したときの驚くべき実験的知見に基づいており、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株の存在下での乳ベースの発酵において、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在し(例えば、約0.41%のスクロース、ここで、%は、乳ベースの総量の体積あたりの重量(%w/v)なので、乳ベースが約2重量(wt)%脂質と約4.1重量%のタンパク質を含むとき、a)のスターター培養物は、好ましくは冷凍濃縮培養物として、乳ベースの総量の体積あたりの約0.01%重量の量(%w/v)で添加され、そして発酵温度は約38℃である)、発酵乳製品中に存在するプロバイオティクス細菌の量は:
- プロバイオティクス細菌(先に述べたとおり、プロバイオティクス株は、単一株として乳中に植菌されたとき、増殖が非常に遅くなる、図1も参照のこと)のみを用いて、又は
- ラクトース欠損性でない少なくとも1種のストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース欠損性ではない少なくとも1種のラクトバチルス株、例えば、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株(従来のラクトース(+)ヨーグルト培養物)とを含むスターター培養物を用いて、又は
- 発酵乳のpHが4.9より低い、例えば約4.55などのときに、枯渇するように調整された量のスクロースの存在下で(例えば、0.9%のスクロース、ここで、%は、乳ベースに基づく重量/体積パーセント(w/v%)であり、乳ベースが約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含むとき、スターター培養物は、好ましくは冷凍濃縮培養物として、乳ベースの総量の0.01%w/vの量で添加され、そして発酵温度は38℃である)、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、例えばラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株など、とを含むスターター培養物を用いて、
発酵させた発酵乳製品中に存在するプロバイオティクス細菌の量と比較して、増加している。
【0011】
加えて、長期間にわたる、例えば、約4℃にて少なくとも60日間の貯蔵期間(保存)にわたる、プロバイオティクス細胞の改善された又は増強された生存がある。例えば、発酵乳製品中に存在する生存プロバイオティクス細菌量の増大は、長期間にわたり、発酵が完了した直後、好ましくは発酵が完了した後1日間超、例えば15日間超、又は45日間超など、にわたり、さらに発酵が完了した後60日間超にわたり、維持される。従って、先のa)で定義した本発明のスターター培養物の存在下での生存プロバイオティクス株の総細胞数は、先のa)で定義した本発明のスターター培養物の不存在下での生存プロバイオティクス株の総細胞数と比べて増加しており、そして、この増加は、好ましくは約4℃にて、長期間、例えば、保存(貯蔵期間)後60日間、にわたり維持される。
【0012】
従って、本発明は、以下のステップ:
i. 乳ベースに、以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、とを含む乳酸菌のスターター培養物;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株、
を加え;そして
ii. 目標pH(より好ましくは、そして、約4.6~約4.3までより一層好ましくは好ましくは約4.8~約4.0までの約4.55)が達成されるまでの期間にわたり乳ベースを発酵させて、発酵乳製品を得ること、
を含む発酵乳製品を製造するためのプロセスを提供する。
本発明は、本発明のプロセスによって製造される発酵乳製品、並びに非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、及びラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株を含む食品又は飼料製品をさらに提供し、好ましくはここで、該プロバイオティクスラクトバチルス株は、ラクトバチルス・パラカゼイ株ではなく、より一層好ましくはここで、プロバイオティクスラクトバチルス株は、ATCC55544として寄託されたL.パラカゼイ株CRL431又はDSM19465として寄託されたL.パラカゼイ株CHCC2115ではなく、ここで、該食品又は飼料製品は、好ましくは約4℃にて少なくとも1日の保存後に、1.3E+08CFU超のプロバイオティクス細菌/gの発酵乳製品(CFU/g)、好ましくは2E+08CFU/g超、より一層好ましくは5E+08CFU/gの発酵後のプロバイオティクス株を含む。
【0013】
さらに、本発明は、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、例えばラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株など、とを含む乳酸菌のスターター培養物;及び
b) a)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株の存在下での乳ベースの発酵において、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在する、
を含む発酵乳製品を製造するための組成物を提供する。
【0014】
加えて、本発明は、以下の:
a) ラクトース欠損性でない少なくとも1種のストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース欠損性でない少なくとも1種のラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性でないL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、とを含む乳酸菌のスターター培養物;及び/又は
b) i. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、とを含む乳酸菌のスターター培養物、及び
ii. i)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在する、
を含む組成物を用いて発酵させた発酵乳製品と比較して、発酵乳製品中の生存プロバイオティクス細胞数を増加させるか又は好ましくは4℃にて、長期間にわたる、好ましくは60日間にわたるプロバイオティクス細胞の生存を改善するための、本発明の組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】0.01%で乳ベース中に植菌し、38℃にてインキュベートした、ビフィドバクテリウム、BB-12(登録商標)(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス菌株、DSM15954として寄託されたBB-12(登録商標))(BB-12(登録商標)、A、実線)及びL.ラムノサス、LGG(登録商標)(ラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標)、ATCC53103として寄託された)(LGG(登録商標)、A、破線)の酸性化プロファイル。
図2】乳ベース中に植菌し、38℃にてインキュベートした、Acidifix(登録商標)1.0(Acidifix(登録商標)はChr. Hansen A/Sの登録商標である)とビフィドバクテリウム、BB-12(登録商標)(ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス菌株、BB-12(登録商標)、DSM15954として寄託された)(「Acidifix(登録商標)1.0、BB-12(登録商標)」、点線)、Acidifix(登録商標)1.0、BB-12(登録商標)とLA-5(登録商標)(ラクトバチルス・アシドフィルス菌株、LA-5(登録商標)、DSM13241として寄託された)(「Acidifix(登録商標)1.0、BB-12(登録商標)とLA-5(登録商標)」、実線)又はAcidifix(登録商標)1.0、BB-12(登録商標)とL.ラムノサス、LGG(登録商標)(ラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標)、ATCC53103として寄託された)(「Acidifix(登録商標)1.0、BB-12(登録商標)とLGG(登録商標)」、破線)の組み合わせの酸性化プロファイル。
図3】0.41%(B)及び0.90%のスクロース(D)を含む乳中のAcidifix(登録商標)1.0+0.01%のBB-12(登録商標)の酸性化プロファイル。YoFlex(登録商標)Mild(登録商標)1.0+0.01 BB-12(登録商標)(E)は対照として使用された(YoFlex(登録商標) MildはChr. Hansen A/Sの登録商標である)。スクロースの%は乳ベースに基づく(w/v)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な開示
発酵乳製品を製造するためのプロセス
本発明は、以下のステップ:
i. 乳ベースに、以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、とを含む乳酸菌(LAB)のスターター培養物;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株、
を加え;
ii. 目標又は所望のpHが達成されるまでの期間にわたり乳ベースを発酵させて、発酵乳製品を得ること、
を含む発酵乳製品を製造するためのプロセスに関する。
【0017】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、「発酵乳製品」という表現は食品又は飼料製品を意味し、ここで、該食品又は飼料製品の調製は乳酸菌による乳ベースの発酵を伴う。本明細書中で使用される「発酵乳製品」としては、これだけに限定されるものではないが、例えば、好熱性発酵乳製品、例えばヨーグルト、飲むヨーグルト、撹拌型ヨーグルト、固形ヨーグルト及びヨーグルト様飲料などの製品が挙げられる。例えば、ヨーグルトは、濾されて、ホエーの大部分が取り除かれてもよく、濾していないヨーグルトよりもしっかりした堅さにつながる(「裏ごし」又は「高固形分」ヨーグルト)。
【0018】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、「乳」という用語は、あらゆる哺乳類、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー又はラクダなどの搾乳によって得られる乳糜管分泌物と本発明との関連において理解されるべきである。好ましい実施形態において、乳は牛乳である。本発明によれば、乳は加工されていてもよく、用語「乳」は、全乳、スキムミルク、脱脂乳、低脂肪乳、全脂肪乳、低ラクトース乳(例えば、ラクトースがラクターゼ酵素によってグルコースとガラクトースに消化されていないならば、限外濾過(UF’d)乳)、又は濃縮乳を含む。脱脂乳は、無脂肪又はスキムミルクの製品である。低脂肪乳は、典型的には、約1%~約2%の脂肪を含む乳として定義される。全脂肪乳は2%以上の脂肪を含むことが多い。用語「乳」は、各種起源由来のミルクを包含する意図である。乳の哺乳類の起源としては、これだけに限定されるものではないが、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、ラクダ、ラマ、ウマ及びシカが挙げられる。
【0019】
「乳ベース」という用語は、本発明に従って発酵させることができる任意の生乳及び/又は加工乳材料であり得る。従って、有用な乳ベースとしては、これだけに限定されるものではないが、例えば、全乳又は低脂肪乳、スキムミルク、バターミルク、再構成粉乳、練乳、粉乳、乳清、乳清透過液、ラクトース、ラクトースを結晶化させた母液、ホエータンパク質濃縮物、又はクリームなどのタンパク質を含む任意の乳又は乳状製品の溶液/懸濁液が挙げられる。明らかに、乳ベースは、任意の哺乳動物に由来するもの、例えば、実質的に純粋な哺乳動物の乳であってもよく、又は再構成粉乳であってもよい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のプロセスのステップiにおいてスターター培養物(i.a.)、非ラクトース糖(i.b.)及びプロバイオティクス株(i.c.)がそこに添加される乳ベースは、30.0mg/ml~70mg/ml、好ましくは35mg/ml~65mg/ml、より好ましくは40mg/ml~60mg/ml、及び最も好ましくは50mg/ml~60mg/mlのラクトース含量を有する。ラクトースのレベルは最も重要なものではない。ラクトースは乳ベースに添加され得るが、ごく一部だけがプロバイオティクスによって発酵される。
好ましくは、乳ベースは、少なくとも約2.5重量%のタンパク質、好ましくは約2.9~約4.5重量%のタンパク質、より一層好ましくは、約4~約4.5重量%のタンパク質、例えば約4.1重量%ほどのタンパク質を含む。乳ベース中のこれらの量のタンパク質は、良好な撹拌型又は飲むヨーグルトをもたらす。好ましくは、乳ベースは、約0~約3.8重量%の脂質、例えば約0.5~約3.25重量%ほどの脂質を含む。より好ましくは、乳ベースは約2重量%の脂質を含む。好ましい実施形態において、乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含む。
発酵前に、乳ベースは、当該技術分野で知られている方法に従って均質化及び低温殺菌されてもよい。
【0021】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において使用する場合、「均質化」とは、強力に混合することにより可溶性懸濁液又はエマルジョンを得ることを意味する。均質化を発酵前に行う場合、乳脂肪が乳から分離できないほど小さなサイズに破砕するように行ってもよい。乳を強制的に高圧で小さなオリフィスに通すことによって達成してもよい。
【0022】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において使用する場合、「低温殺菌」とは、微生物などの生きた生物の存在を低減又は排除するために乳ベースを処理することを意味する。好ましくは、低温殺菌は、指定された期間、指定された温度を維持することによって達成される。指定された温度は、通常、加熱により達成される。温度及び時間は、有害細菌などの特定の細菌を殺す又は不活性化するように選択することができる。その後、急冷ステップを行ってもよい。例えば、乳ベースは、92℃にて3分間加熱処理され、38℃に冷やされ、その後、本発明のプロセスのステップi.に記載のとおり植菌され得る。
【0023】
本発明のプロセスのステップi.は、乳ベースへの以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、例えば、ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株などを含む乳酸菌(LAB)のスターター培養物、
を添加することを含む。
【0024】
好ましくは、スターター培養物は、非ラクトース糖を代謝できる2種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくは1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含む。
乳ベースへの菌株の添加もまた、本発明との関連において「植菌」と言及される。
【0025】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、「乳酸菌」(「LAB」)という表現は、糖発酵の主な代謝最終産物として乳酸を生産する食品グレードの菌を示す。これらの菌は、共通の代謝的特徴及び生理学的特徴を有し、通常、グラム陽性、低GC、酸耐性、非胞子形成性、非呼吸性、棒状の桿菌又は球菌である。発酵段階では、これらの菌による糖の消費が乳酸の形成を引き起こし、pHを低下させてタンパク質凝集物の形成をもたらす。従って、これらの菌は乳の酸性化及び乳製品の質感に関与する。産業上最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス種(Lactococcus spp.)、ストレプトコッカス種、ラクトバチルス種、ロイコノストック種(Leuconostoc spp.)、ペディオコッカス種(Pediococcus spp.)、及びプロピオニバクテリウム種(Propionibacterium spp.)を含む目である「ラクトバチルス目(Lactobacillales)」に見られる。これらは、食品用培養物として単独で、又は他の乳酸菌と組み合わせて使用されることが多い。
【0026】
ラクトバチルス属及びストレプトコッカス属から成る属の細菌を含めた乳酸菌は、発酵乳製品などの酪農製品の生産のために発酵容器やバット内でそのままインキュベーションすることを意図した、バルクスターター繁殖(bulk starter propagation)のための冷凍(F-DVS)若しくは凍結乾燥(FD-DVS)培養物、又はいわゆるダイレクトバットセット(Direct Vat Set)(DVS)培養物のいずれかとして通常、酪農業界に供給される。斯かる乳酸細菌培養物は、一般に、「スターター培養物」又は「スターター」と称される。典型的には、ヨーグルトのためのスターター培養物は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(本明細書中では「ST」又は「St」とも称される)とラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(本明細書中では「LB」又は「Lb」とも称される)を含み、そして、ほとんどの国では、ヨーグルトは2種の前記菌株を含むスターター培養物を使用して製造される発酵乳製品と法律によって定義される。
【0027】
その実施形態のいずれにおいても本発明による乳酸菌(LAB)のスターター培養物は、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含むか、あるいはそれらから成る。スターター培養物は乳ベースの酸性化の原因となる。スターター培養物は、新鮮なものであっても、冷凍であっても又は凍結乾燥であってもよい。
【0028】
発酵乳製品の製造に関して、スターター培養は任意の量で加えられ得る。典型的には、スターター培養物は、0.001~3%、例えば0.05%、0.01%、0.015%、0.02%、1%、2%、3%など、好ましくは0.001~0.025%の濃度を達成する量で添加され、ここで、%とは乳ベースの総量の体積あたりの重量であり(%w/v)、例えば乳ベースの総量の0.0015~0.15%w/vなど、例えば0.01~0.015%w/v、0.01~0.02%w/v、又は0.01~0.025%w/vなどである。好ましくは、スターター培養物は、冷凍濃縮培養物として、乳ベースの総量の0.01%w/v~0.04%w/v、例えば、0.01%w/v又は0.02%w/vなどの量で添加される。冷凍濃縮培養物は6E+10~1.5E+11CFU/gを典型的には含有している。あるいは、スターター培養物は、凍結乾燥培養物として、乳ベースの総量の0.001~0.0025%w/vの量で添加される。より好ましくは、スターター培養物は、冷凍濃縮培養物として、乳の総量の体積あたり約0.01%重量(%w/v)の濃度を達成ような量で添加され、好ましくは、ここで、該乳は約2重量%の脂肪含量と約4.1重量%のタンパク質含量を有する。
【0029】
好ましい実施形態において、スターター培養物は、好ましくは乳ベースが約2重量%の脂質の脂肪含量と約4.1重量%のタンパク質を有するとき、約1E+06~1E+08CFU/ml乳ベース、例えば約6E+06CFU/ml~約1.5E+07CFU/mlなど、の量で、好ましくは約5E+06~約1E+07CFU/ml乳ベースの量で、より一層好ましくは約1.2~約1.3E+07CFU/mlの量で(細菌の総量、すなわち、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株)、乳ベースに添加される。
【0030】
WO2005/003327で開示されるように、特定の凍結保護剤をスターター培養物に添加することは有益である。よって、本発明のプロセスのステップi.a.のスターター培養物は、イノシン-5’-一リン酸(IMP)、アデノシン-5’-一リン酸(AMP)、グアノシン-5’-一リン酸(GMP)、ウラノシン-5’-一リン酸(UMP)、シチジン-5’-一リン酸(CMP)、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ヒポキサンチン、キサンチン、ヒポキサンチン、オロチジン、チミジン、イノシン及び任意の斯かる化合物の誘導体から成る群から選択される1若しくは複数の凍結保護剤を含んでもよい。
【0031】
「ラクトース代謝の欠損」及び「ラクトース欠損性」という用語は、その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、細胞増殖又は細胞生存維持のための源としてラクトースを使用する能力を部分的又は完全に失ったLABを特徴づけるために使用される。それぞれのLABは、スクロース、ガラクトース及び/又はグルコースから選択される1若しくは複数の糖、又はその他の発酵可能な糖を代謝することができる。これらの糖は、ラクトース欠損突然変異体による発酵を補助するのに十分な量で乳中に天然に存在しないので、これらの糖を乳に添加することが必要である。ラクトースを欠損した及び部分的にラクトースを欠損したLABは、ラクトース及びX-Galを含む培地上における白色コロニーとして特徴づけることができる。ラクトース欠損性LAB及びその製造する方法は、ラクトース代謝に欠損のあるLABを製造するための方法とこれらの方法で得られた特定の菌株を記載しているWO2013/160413、PCT/EP2015/063767及びPCT/EP2015/063742を含めた先に公開された特許出願に大まかに記載、例示及び寄託された。
【0032】
「乳中に存在するラクトース以外の1又は数種の糖を代謝できる」という用語は、その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、ラクトース以外の糖を使用した糖発酵の主要な代謝最終生成物として乳酸の生成を引き起こすラクトース欠損性LABの代謝活性を記載するのに使用される。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、(単数若しくは複数の)ラクトース欠損性菌株は、スクロース、ガラクトース及びグルコースからなる群から選択される1若しくは複数の非ラクトース糖、好ましくはスクロースを代謝することができる。本発明の特定の実施形態において、(単数若しくは複数の)ラクトース欠損性菌株は、ガラクトースを代謝することができる。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明のステップaにおいて乳ベースに添加されるスターター培養物に含まれる、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、同じ非ラクトース糖を代謝でき、そしてそれは、好ましくはスクロースである。他の実施形態において、本発明のステップaにおいて乳ベースに添加されるスターター培養物に含まれる、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、異なった非ラクトース糖を代謝でき、好ましくはここで、該非ラクトース糖はグルコースでない。例えば、少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株はスクロースを代謝でき、かつ、少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株はガラクトースを代謝できるか、又はその逆もまた同様である。
【0035】
好ましくは、ストレプトコッカス・サーモフィルスのラクトース欠損性菌株は、以下の:
(a)(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28952で寄託された菌株;
(ii)DSM28952由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;
(b)(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28953で寄託された菌株;
(ii)DSM28953由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;
(c)(i)2017年8月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM32599で寄託された菌株;
(ii)DSM32599由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;並びに
(d)(i)2017年8月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM32600で寄託された菌株;及び
(ii)DSM32600由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株、
からなる群から選択される。
【0036】
好ましくは、スターター培養物中に存在するラクトース欠損性ラクトバチルス株は、ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である。より好ましくは、ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、以下の:
(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28910で寄託された菌株;及び
(ii)DSM28910由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株、
から成る群から選択される。
【0037】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、「に由来する菌株」若しくは「に由来し得る菌株」(「そこから誘導された菌株」)又は「突然変異体」とは、例えば、
遺伝子工学、放射線及び/又は化学的処理によって他の菌株(例えば、先に示した寄託された菌株)から得られた菌株を意味する。「そこから誘導された菌株」又は「突然変異体」はまた、自然発生的な突然変異体であってもよい。「そこから誘導された菌株」又は「突然変異体」は、機能的に均等な突然変異体、例えば、その母株と実質的に同一であるか又は向上した特性を有する突然変異体であることが好ましい。例えば、誘導菌株又は突然変異体は、ラクトースとX-Galを含有する培地で白色コロニーを作り出す能力を有することを更なる特徴とする。特に「そこから誘導された菌株」又は「突然変異体」は、本発明の菌株(例えば、先に示した寄託された菌株)を、従来使用されている任意の化学変異原、例えば、エタンメタンスルホネート(EMS)若しくはN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトログアニジン(NTG)、UV光による処理を含む突然変異誘発処理に付すことにより得られる菌株又は自然発生的な突然変異体を指す。突然変異体は、数回の突然変異誘発処理(単回の処理はそれぞれ、1回の突然変異誘発工程に続いてスクリーニング/選別工程を行うものと理解すべきである)に付されたものとすることができるが、20回以下、又は10回以下、又は5回以下の処理(又はスクリーニング/選別工程)を行うことが現時点においては好ましい。現時点において好ましい突然変異においては、細菌のゲノムのヌクレオチドのうち、その母株と比較して他のヌクレオチドに置換されているか又は欠失しているものは、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満又は0.0001%未満でさえある。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株、及び/又は非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクスは、タンパク分解性菌株、好ましくは高度なタンパク分解性菌株である。
【0039】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、LABは、活性細胞壁プロテイナーゼを含有する場合、「タンパク質分解性LAB」である。細胞壁プロテイナーゼは、カゼインなどの乳タンパク質を加水分解し、それによって、アミノ酸栄養要求性を有するLABの急速な増殖用の培地として乳の品質を向上させる。細胞壁プロテイナーゼは、例えば、L.ラクティスのPrtP、S.サーモフィルスのPrtS、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb.ブルガリカス)のPrtBといった、多数のLABにおいて同定され、詳細に特徴づけられている。従って、タンパク質分解性LABは、細胞壁プロテイナーゼをコードする遺伝子の存在によって同定することができる。さらに、タンパク質分解性LABは、その株を蛍光標識カゼインを含有する培地中で6時間増殖させることによる蛍光の増加を、該株の細胞を含まない対照試料と比較して決定する、蛍光基質フルオレセインイソチオシアネート標識カゼイン又はFITCカゼインアッセイによって同定することができる。アッセイの詳細は、例えば、WO2017/125600の実施例1に記載されている。
【0040】
好ましくは、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、好ましくは乳ベースが約2重量%の脂質の脂肪含量と約4.1重量%のタンパク質を有するとき、本発明のプロセスのステップi.a.において、乳ベースに、1E+04~1E+10CFU(コロニー形成単位)/ml乳ベース、好ましくは1E+05~1E+10CFU/ml、又は1E+06~1E+10CFU/ml、又は1E+07~1E+09CFU/mlの量で添加される。より好ましくは、非ラクトース糖、好ましくはスクロースを代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、好ましくは乳ベースが約2重量%の脂質の脂肪含量と約4.1重量%のタンパク質を有するとき、本発明のプロセスのステップi.a.において、乳ベースに、1E+06~1E+08CFU/ml乳ベースの量で添加される。
【0041】
好ましくは、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクスは、好ましくは乳ベースが約2重量%の脂質の脂肪含量と約4.1重量%のタンパク質を有するとき、本発明のプロセスのステップi.a.において、乳ベースに、1E+04~1E+10CFU/ml乳ベース、好ましくは1E+05~1E+10CFU/ml、又は1E+06~1E+10CFU/ml、又は1E+07~1E+09CFU/mlの量で添加される。より好ましくは、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクスは、好ましくは乳ベースが約2重量%の脂質の脂肪含量と約4.1重量%のタンパク質を有するとき、本発明のプロセスのステップi.a.において、乳ベースに、1E+06~1E+08CFU/ml乳ベースの量で添加される。
【0042】
先に記載のとおり、本発明の好ましい実施形態において、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株は、好ましくは約2重量%の脂質の脂肪含量と約4.1重量%のタンパク質を有する乳ベースに、約1E+06~約1E+08CFU/ml乳ベース総量で、好ましくは約5E+06~約1E+07CFU/ml乳ベース、例えば約6E+06CFU/ml~約1.5E+07CFU/mlなどの総量で、より一層好ましくは約1.2E+07CFU/ml~約1.3E+07CFU/mlの総量で添加される(「植菌量」)。
【0043】
スターター培養物又は発酵開始時の乳ベース中の非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株(ST)と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス(LB)との細菌細胞数の比(ST:LB)は、当業者によって容易に決定され得る。特定の実施形態において、その比は、99:1~1:99、例えば95:5~5:95、80:20~20:80、又は70:30~30:70、又は60:40~40:60、又は50:50(ST:LB)などの範囲内にある。好ましい比は、90:10~99:1(ST:LB)の範囲内にある。
【0044】
b. aで定義した乳酸菌によって代謝されることができる非ラクトース糖。
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、「非ラクトース糖」という用語は、ラクトースでなく、かつ、本発明のラクトース欠損性LABは代謝できるあらゆる糖を意味する。本発明の特定の実施形態において、非ラクトース糖は、スクロース、ガラクトース、及びグルコースから成る群から選択される。好ましくは、非ラクトース糖はグルコースではない。より一層好ましくは、非ラクトース糖はスクロースである。
【0045】
非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、であるときに、好ましくは発酵乳製品のpHが約5.3であるときに枯渇するように調整された量で乳ベースに添加される。乳ベースの酸性化プロファイルは、当業者に知られている標準的な手段、例えばオンラインpH測定装置など、によって追跡調査され得る。
【0046】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、(単数若しくは複数の)非ラクトース糖と関連した「枯渇」という用語は、(単数若しくは複数の)非ラクトース糖の濃度がゼロであるか、又はステップi.a.で定義したスターター培養物がもう増殖できない若しくはステップi.a.で定義したスターター培養物が乳ベースをもうさらに酸性化できないほど低いことを意味する。注目すべきは、増殖と酸性化速度/プロファイルは直接関連する。ヨーグルトスターター培養物の増殖の不存在の兆候は酸性化プロファイルにより示される。(単数若しくは複数の)発酵性糖(例えば、スクロース)がいったん枯渇すると、酸性化曲線は破断する。その時から、曲線の傾き/形状が変化し、そしてそれは、培養ミックスの別の部分(プロバイオティクス)だけが増殖していることを示す。本発明のプロセスのステップaのスターター培養物の増殖の欠如はまた、例えば、ST(ストレプトコッカス・サーモフィルス)菌株の平板培養によっても測定され得る。本発明の特定の実施形態において、発酵の終了時点で、「枯渇した」非ラクトース糖の濃度は、25mg/g~0.01mg/gの範囲、又は5mg/g~0.01mg/gの範囲を含めた、100mg/g未満の範囲内、例えば30mg/g未満などであり得る。
【0047】
これに関連して、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、であるときに、好ましくは発酵乳製品のpHが約5.3であるときに、スターター培養物の代謝による発酵は終わる。本発明によると、スターター培養物の発酵はこれにより、1若しくは複数の非ラクトース糖の枯渇によって打ち切られる。しかしながら、乳ベースは、組成物中に存在する糖、例えばラクトースなど、を代謝できるプロバイオティクス株をさらに含むので、プロバイオティクス株の代謝による発酵は続くであろう。実際には、本発明との関連において、プロバイオティクス株、好ましくはラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株(以下を参照のこと)、の代謝による乳ベースの発酵が所望され、かつ、好ましくは、本発明のプロセスのステップiiに従って起こる。
【0048】
従って、スターター培養物の代謝((単数若しくは複数の)非ラクトース糖の異化)による乳ベースの発酵は、(単数若しくは複数の)非ラクトース糖が枯渇し、スターター培養物が原則的にもう増殖できない/乳ベースを酸性化できないので、4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3のpHで止まる。しかしながら、乳ベースが、乳ベース中にそれでも存在している1若しくは複数の糖、例えばラクトースなど、を代謝できる更なる菌株、すなわち、ラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株を含むので、乳ベースの発酵は続く、以下を参照のこと。
【0049】
乳ベースに添加されるべき非ラクトース糖の量は、スターター培養物に使用される乳酸菌、乳ベースの組成物、発酵温度及びこの場合は4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3である所望の目標pHを含めた、多くのパラメーターに依存する。乳ベースに添加されるべき非ラクトース糖の量は実験で決定でき、そして、斯かる実験を実施することは当業者の技能の範疇にある。従って、当業者は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、のときに、好ましくは発酵乳製品のpHが約5.3であるときに、(単数若しくは複数の)非ラクトース糖が使い果たされるので、ステップi.a.で添加されるスターター培養物は増殖が止まるように、本発明のプロセスのステップi.b.で乳ベースに添加されるべき非ラクトース糖、好ましくはスクロースの量が計算できる。これにより、(単数若しくは複数の)非ラクトース糖の量は、使用されるLAB、及び非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクスとを含むスターター培養物によって主に引き起こされる所望の酸性化(4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3の目標pH)に基づいて容易に決定され得る。たいていの場合、スクロース、ガラクトース及び/又はグルコース、好ましくはスクロースは、0.4g/L~10g/Lの範囲、1g/L~8g/Lの範囲又は2g/L~6g/Lの範囲の濃度をもたらす量で乳に添加される。
【0050】
好ましい実施形態において、非ラクトース糖(好ましくはスクロースである)は、本発明のプロセスのステップi.b.において、乳ベースに、0.9%未満(ここで、%は乳ベースの総量の体積あたりの重量である(%w/v))の量で、好ましくは0.7%未満の量で、より一層好ましくは0.5%未満、例えば0.41%などの量で添加され、好ましくはここで、該乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含み、ステップi.a.における該スターター培養物は、好ましくは乳の総量の0.01%w/v(例えば、約1.2~1.3E+07CFU/ml)の量で冷凍濃縮培養物として添加され、及び発酵温度は約38℃である。
【0051】
例えば、ステップi.a.で添加されるスターター培養物の量は、0.01%w/v(例えば、約1.2~1.3E+07CFU/ml)であるとき、ステップi.b.で添加される(単数若しくは複数の)非ラクトース糖、好ましくはスクロースは、0.9%未満の量で、好ましくは0.7%未満、より一層好ましくは0.5%未満の量で、好ましくは0.5%~0.41%、最も好ましくは約0.41%の量で添加され、ここで、%は乳ベースに基づく体積(w/v)あたりの重量であり(%w/v)、好ましくはここで、該乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含み、及び発酵温度は約38℃である。
【0052】
c. ラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株。
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、「プロバイオティクス細菌」又は「プロバイオティクス株」という用語は、消費者の健康促進効果を達成する目的のために適当量で消費者に投与される生存細菌を指す。プロバイオティクス細菌は、摂取後に胃腸管の条件を乗り切ることができ、かつ、消費者の腸に定着する。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、本発明によるプロバイオティクス株は、ラクトバチルス属の細菌、例えばラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・デルブルエッキ、ラクトバチルス・ラクティス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ロイテリ及びラクトバチルス・ジョンソニー、ビフィドバクテリウム属、例えばビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスなど、から成る群から選択される。
【0054】
好ましい実施形態において、プロバイオティクスラクトバチルス株は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・デルブルエッキ、ラクトバチルス・ラクティス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ロイテリ及びラクトバチルス・ジョンソニーから成る群から選択される。
【0055】
本発明の特定の実施形態において、プロバイオティクスラクトバチルス株は、ラクトバチルス・ラムノサス株、ラクトバチルス・アシドフィルス株及びラクトバチルス・パラカゼイ株から成る群から選択される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態において、プロバイオティクス株は、ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標)である。本発明の別の好ましい実施形態において、プロバイオティクス株は、DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)である。本発明の特定の実施形態において、プロバイオティクス株は、ATCC55544として寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ株CRL431であり、そしてそれは市販されている。好ましい実施形態において、プロバイオティクスラクトバチルス株は、ATCC55544として寄託されたL.パラカゼイ株CRL431ではなく、又は2007年6月27日付で、DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr. 7B、D-38124 Braunschweigに受託番号DSM19465で寄託されたL.パラカゼイ株CHCC2115でもない。
【0057】
本発明の特定の実施形態において、プロバイオティクスビフィドバクテリウム株は、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスから成る群から選択される。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、プロバイオティクスビフィドバクテリウムプロバイオティクス株は、2003年9月30日付で、DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg. 1b、D-38124 Braunschweigに受託番号DSM15954で寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)(BB-12(登録商標)とも称される)である。ビフィドバクテリウム、BB-12(登録商標)はChr. Hansen A/S、Horsholm、DKから入手可能な公知のプロバイオティクス細菌である。BB-12(登録商標)の場合では、入手可能な臨床上の証拠は、少なくとも1E+09~1E+10CFU生存プロバイオティクス細菌の日用量が必要とされることを示す。従って、高レベルの、例えば、発酵乳製品(例えば、発酵乳ヨーグルト製品)の1グラムあたり1E+08CFU以上のプロバイオティクス細菌を有することが望ましい。
【0059】
好ましい実施形態において、ステップi.c.は、ビフィドバクテリウム株、好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスから成る群から選択されるビフィドバクテリウム株を乳ベースに添加すること、より一層好ましくは、2003年9月30日付で。DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg. 1b、D-38124 Braunschweigに受託番号DSM15954で寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)を乳ベースに添加すること、を含む。
【0060】
例えば、ステップi.c.は、ビフィドバクテリウム属に属する、好ましくはビフィドバクテリウム・アニマリス種に属するプロバイオティクス株、より一層好ましくは、先に記載のビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)と、ラクトバチルス属に属するプロバイオティクス株、例えばラクトバチルス・ラムノサス及び/又はラクトバチルス・アシドフィルスなど、とを乳ベースに加えることを含んでもよく、好ましくはここで、該ラクトバチルス属に属するプロバイオティクス株は、L.パラカゼイ株ではなく、より一層好ましくはここで、該プロバイオティクスラクトバチルス株は、ATCC55544として寄託されたL.パラカゼイ株CRL431又はDSM19465として寄託されたL.パラカゼイ株CHCC2115ではない。
【0061】
より一層好ましくは、本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム・アニマリス種に属するプロバイオティクス株、好ましくはDSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス株、BB-12(登録商標)と、ラクトバチルス・ラムノサス種に属するプロバイオティクス株、好ましくはATCC53103として寄託された菌株、LGG(登録商標)及び/又はラクトバチルス・アシドフィルス種に属するプロバイオティクス株、好ましくはDSM13241として寄託された菌株、LA-5(登録商標)を含む。
【0062】
好ましくは、プロバイオティクスビフィドバクテリウム株は、1E+06~1E+08CFU/ml乳ベース、好ましくは5E+06~5E+07CFU/ml、より好ましくは約1.2E+07CFU/ml乳ベースの量で、本発明のプロセスのステップi.c.において乳ベースに添加される。
【0063】
好ましくは、プロバイオティクス株は、0.001~2%(ここで、%は乳ベースの総量の体積あたりの重量である(%w/v))、例えば0.005%、0.01%、0.015%、0.02%など、好ましくは0.001~0.025%重量/乳ベースの総量の体積、例えば0.0015~0.15%など、例えば0.01~0.015%など、又は0.01~0.02%、若しくは0.01~0.025%重量/乳ベースの総量の体積の量で、本発明のプロセスのステップi.c.において乳ベースに添加される。好ましくは、プロバイオティクス株は、約0.01%重量/乳ベースの総量の体積の濃度を達成するための量で乳ベースに添加され、好ましくはここで、該プロバイオティクス株は冷凍濃縮培養物として添加され、好ましくはここで、該乳ベースは、約2重量%の脂肪含量と約4.1重量%のタンパク質含量を有する。プロバイオティクス株が約0.001%重量/乳ベースの総量の体積の量で、本発明のプロセスのステップi.c.において乳ベースに添加される場合、好ましくは、プロバイオティクス株は凍結乾燥濃縮培養物として添加される。
【0064】
好ましい実施形態において、0.01%のF-DVSでの植菌による乳中のBB-12(登録商標)の細胞数は、約1.2E +07CFU/mlである。好ましい実施形態において、0.01%のF-DVSでの植菌による乳中のLA-5(登録商標)の細胞数は、約7E+06CFU/mlである。好ましい実施形態において、0.001%のFD-DVSでの植菌による乳中のLGG(登録商標)の細胞数は、約7E +06CFU/mlである。
【0065】
従って、好ましい実施形態において、本発明のプロセスのステップi.は、乳ベースに以下の:
a. 好ましくは約1.2~1.3E+07CFU/mlの量で、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくは少なくとも1種のラクトース欠損性L.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. 好ましくは約1.2E+07CFU/mlの量で、DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標);
【0066】
或いは:
a. 好ましくは約1.2~1.3E+07CFU/mlの量で、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくは少なくとも1種のラクトース欠損性L.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. 好ましくは約1.2E+07CFU/mlの量で、DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)と、好ましくは約7E+06CFU/mlの量で、ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標);
【0067】
或いは:
a. 好ましくは約1.2~1.3E+07CFU/mlの量で、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくは少なくとも1種のラクトース欠損性L.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)と、DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)、好ましくはここで、該BB-12(登録商標)は約1.2E+07CFU/mlの量で添加され、かつ、該LA-5(登録商標)は約7E+06CFU/mlの量で添加され、
を添加することを含む。
【0068】
先に記載したこれらの好ましい実施形態において、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、好ましくは以下の:
(a)(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28952で寄託された菌株;
(ii)DSM28952由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;
(b)(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28953で寄託された菌株;
(ii)DSM28953由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;
(c)(i)2017年8月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM32599で寄託された菌株;
(ii)DSM32599由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;並びに
(d)(i)2017年8月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM32600で寄託された菌株;及び
(ii)DSM32600由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株、
から成る群から選択される。
【0069】
好ましくは、スターター培養物中に存在するラクトース欠損性ラクトバチルス株は、ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である。好ましくは、ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、以下の:
(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28910で寄託された菌株;及び
(ii)DSM28910由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株、
から成る群から選択される。
【0070】
それが当業者によって理解されるので、本発明のプロセスのステップi.は、i.a.(スターター培養物)、i.b.((単数若しくは複数の)非ラクトース糖)及びi.c.(プロバイオティクス株)の乳ベースへの添加を含む。これらの3つの要素の添加の順序は関連していない;例えば、スターター培養物が最初に乳ベースに添加され、次に、非ラクトース糖、そして次に、プロバイオティクス株が添加されてもよい。又は、スターター培養物とプロバイオティクス株一緒に混合され、次に同時に(単数若しくは複数の)非ラクトース糖を含む乳ベースに添加されてもよい。最も好ましくは、(i) (単数若しくは複数の)非ラクトース糖(好ましくはスクロース)が最初に乳ベースに添加され、次に(ii)スターター培養物とプロバイオティクス株が乳ベースに添加される、例えば、スターター培養物とプロバイオティクス株は、同時に、かつ、(単数若しくは複数の)非ラクトース糖が乳ベースに添加された後の時点で添加される。好ましくは、(単数若しくは複数の)非ラクトース糖(好ましくはスクロースである)は、もしあれば、夾雑物の不存在を確保するための熱処理(例えば、低温殺菌)の前に乳ベースに添加される。
【0071】
典型的には、冷凍濃縮ヨーグルト培養物とプロバイオティクス培養物(F-DVS)は6E+10~1.5E+11CFU/gを含有している。0.01%w/vにて植菌したとき、インキュベーション前(発酵前)の乳中の細胞数は、好ましくは約6E+06CFU/ml~約1.5E+07CFU/mlである。0.02%w/vにて植菌したとき、インキュベーション前(発酵前)の乳中の細胞数は、好ましくは約1.2E+07CFU/ml~約3E+07CFU/mlである。
【0072】
本発明のプロセスのステップiiは、標的(又は所望される)pHが達成されるまでの期間にわたり乳ベースを発酵させて、発酵乳製品を得ることを含む。
【0073】
「発酵」は、その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、微生物の作用によるアルコール又は酸への糖の変換を意味する。例えば、本発明のスターター培養物との関連において発酵は、非ラクトース糖、例えばスクロースの乳酸への変換を含む。
【0074】
本発明の方法のステップiiとの関連において、発酵は以下の:
- 発酵が主として、ステップi.a.をにおいて添加される、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含むLABのスターター培養物による、ステップi.b.において乳ベースに添加される非ラクトース糖、例えばスクロースの乳酸への変換による第一ステージ;
- 発酵が主として、プロバイオティクス株によるラクトースの乳酸への変換を伴う、ステップi.c.において乳ベースに添加される、本発明との関連で定義されるプロバイオティクス株による第二ステージ、
を含む。
【0075】
本発明のプロセスにおいて、発酵の第一ステージの間、ラクトース欠損性菌株は、(単数若しくは複数の)非ラクトース糖が枯渇するまで(単数若しくは複数の)非ラクトース糖を代謝するであろう。先に示したとおり、ヨーグルト培養物との組み合わせにおいて、(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株が単一株よりわずかに良好に増殖し得るが、それにしても、このステージにて(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株より優勢であろうヨーグルト種、ストレプトコッカス・サーモフィルス(ST)及びラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(LB)よりはるかに増殖が遅い。
【0076】
(単数若しくは複数の)非ラクトース糖の量は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加されるので、発酵の第一ステージは、乳のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは5.3であるときに終わる。このステージにて、(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株より優勢であるラクトース欠損性菌株は、それらが原則的にラクトースを代謝できないので、さらに増殖できない。
【0077】
しかしながら、ラクトースを代謝できるプロバイオティクス株を含む、本発明のプロセスのステップi.c.において乳ベースに添加されるラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択される(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株は、乳ベースの酸性化を続ける。従って、第二のステップにおいて、発酵は主として、(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株の代謝活性による。プロバイオティクス株は、乳ベース中に存在するラクトースを消費し、そして標的(所望される)pHに達するまで酸性化を続ける。標的(所望される)pHは、約3.2~約4.9未満、好ましくは約3.6~約4.8、より好ましくは約4.0~4.6、例えば約4.0、約4.3、約4.4若しくは約4.5など、好ましくは約4.6~約4.5、より一層好ましくは約4.55であり得る。好ましい実施形態において、標的(所望される)pHは約4.55である。
【0078】
この第二の発酵ステップ(よって、本発明の発酵ステップii)は、例えば冷却処理などの当業者に知られている任意の手段によって、或いは乳が、(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株が増殖できない状態にするpHに達することにより、又は乳中のラクトースが枯渇し、プロバイオティクス株がさらに増殖できないことによるなどで終了し得る。例えば、本発明の発酵ステップiiは冷却(例えば、約4℃)によって終了され得、そして、発酵乳製品は(例えば、約4℃にて)冷蔵保存される。冷却は一般的に、代謝活性を減速させ、培養物とプロバイオティクスを生きたまま維持するための手段として使用される。
【0079】
発酵乳製品の製造に使用される発酵プロセスは周知であり、当業者は、温度、酸素、微生物の量及び特性、ならびに処理時間などの適切なプロセス条件をいかに選択するかがわかるであろう。明らかに、発酵条件は、例えば固形物(例えば、裏ごし若しくは高固形分ヨーグルトなど)又は液体(例えば、ヨーグルト、飲むヨーグルト、撹拌型ヨーグルト、固形ヨーグルト若しくはヨーグルト様飲料など)の乳製品を得るための本発明の達成を助けるように選択される。本発明との関連において、発酵は、約34℃~約43℃、例えば約34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃など、好ましくは約38℃、約40℃又は約43℃の温度にて実施される。
【0080】
好ましい実施形態において、本発明のプロセスによって得られる発酵乳製品は、例えば、発酵直後、好ましくは発酵が完了した(すなわち、本発明の発酵ステップ(ii)が完了した)少なくとも1日後、例えば15日後、若しくは30日後、若しくは45日後など、より好ましくは発酵が完了した60日後になる時点で、1.3E+08CFUプロバイオティクス細胞/g発酵乳製品(CFU/g)以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、若しくは3E+08CFU/g以上、若しくは4E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上、例えば6E+08CFU/g以上などの少なくとも1種のプロバイオティクス株を含み、ここで好ましくは、食品又は飼料製品は、本発明のプロセスのステップiiによる発酵が仕上がった(完了した)後に約4℃で貯蔵され、好ましくはここで、乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含み、好ましくはここで、発酵は約38℃にて、そして約4.55のpHに達するまで行われる。
【0081】
発酵乳製品
さらに、本発明は、本発明のプロセスによって製造した、得られた又は直接的に得られた発酵乳製品を提供する。
有利なことには、本発明の発酵乳製品は、プロバイオティクス細菌だけを用いてインキュベートされた、又は発酵乳のpHが4.9、例えば4.55などより低いときに、枯渇するように調整された量で(例えば、約0.9%のスクロース)非ラクトース糖、好ましくはスクロースの存在下、ラクトース欠損性でない少なくとも1種のストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース欠損性でない少なくとも1種のラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス(例えば、従来のラクトース(+)ヨーグルト培養物)を含むスターター培養物を用いて、若しくは非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくは少なくとも1種のラクトース欠損性L.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含むスターター培養物を用いて発酵された、発酵乳製品中に存在する生存プロバイオティクスの量と比較して、より大量の生存プロバイオティクス細菌(より大量の生存プロバイオティクス細胞数)を含む。加えて、有利なことに、本発明の発酵乳製品は、好ましくは約4℃(約4℃における保存)にて、長期間にわたる、例えば、少なくとも60日間の貯蔵期間にわたるプロバイオティクス数のより高い安定性を有する。
【0082】
従って、本発明は、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくは少なくとも1種のラクトース欠損性L.デルブルエッキ亜種ブルガリクス、及びラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株を含む食品又は飼料製品(発酵乳製品)を提供し、ここで、該食品又は飼料製品は、発酵(すなわち、本発明の発酵ステップ(ii)が完了した)直後、好ましくは発酵が完了した少なくとも1日後、例えば発酵が完了した15日後、若しくは30日後、若しくは45日後、若しくは60日後などになる時点で、1.3E+08CFUプロバイオティクス細胞/g発酵乳製品(CFU/g)以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、若しくは3E+08CFU/g以上、若しくは4E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上、例えば6E+08CFU/g以上などの食品又は飼料製品中に存在する少なくとも1種のプロバイオティクス株を含み、ここで、食品又は飼料製品は、本発明のプロセスのステップiiによる発酵が仕上がった(完了した)後に約4℃で貯蔵され、好ましくはここで、乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含み、好ましくはここで、発酵は約38℃にて、約4.55のpHに達するまで行われた。これにより、本発明の食品又は飼料製品は、非常に大量のプロバイオティクス(先に記載したように、1.3E+08CFU/g超)を有する。既に発酵している乳製品に斯かる大量のプロバイオティクスを加えると、発酵乳製品の味やフレーバーなどの特性に影響を及ぼすであろう。加えて、それは本発明による発酵前の乳ベースの植菌率に比べて30~50倍の量でのプロバイオティクスの添加になるであろうから、非常に高価になるであろう。従って、本発明の食品又は飼料製品はまた、実質的に同じ量のプロバイオティクスを含む食品又は飼料製品と比較して、これらの利点を示すが、ここで、該プロバイオティクスは乳ベースの発酵後に添加される。
【0083】
先に示したとおり、本発明のプロセスとの関連において、好ましくは、本発明の食品又は飼料製品(発酵乳製品)に含まれる、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクスは、同じ非ラクトース糖、好ましくはスクロース、を代謝できる。
【0084】
本発明の食品又は飼料製品(発酵乳製品)は、発酵乳、食品添加物、安定化剤、凍結防止剤、香味剤、人工甘味料などを含めたいくつかの更なる成分を含んでもよい。本発明の食品又は飼料製品は、例えばフルーツヨーグルト、ヨーグルト飲料、撹拌型ヨーグルト、固形ヨーグルト、ヨーグルト様飲料、裏ごしヨーグルトなどのヨーグルトを含めた任意の発酵乳製品であり得る。好ましくは、本発明の食品又は飼料製品はヨーグルトである。
【0085】
その実施形態のいずれにおいても本発明との関連において、「ヨーグルト」という用語は、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス、そして場合により他の微生物、例えばラクトバチルス・デルブルッキー亜種ラクティス、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・アシドフィルス、及びラクトバチルス・パラカゼイ、又はそれらに由来する任意の微生物を含む製品を指す。ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス以外の乳酸菌株も、最終製品に様々な特性、例えば腸内叢の平衡を促進する特性、を付与するために含まれる。本明細書で使用される用語「ヨーグルト」は、セットヨーグルト、スタードヨーグルト、飲用ヨーグルト、プチスイス、熱処理ヨーグルト、高タンパク質量であるという特徴を有する水切りヨーグルト又はギリシャスタイルヨーグルト、及びヨーグルト風の製品を包含する。特に、「ヨーグルト」という用語は、フランス及びヨーロッパの規制に従って定義されるヨーグルト、つまり特定の好熱性乳酸菌(つまり、ラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルス)のみによる乳酸発酵によって得られ、これらの菌が同時に培養され最終製品中に少なくとも10×106CFU(コロニー形成単位)/gの量で生存している凝固乳製品も含むが、これらに限定されない。ヨーグルトは場合により、酪農原料(例えば、クリーム)、あるいは砂糖又は甘味剤、1つ又は複数の香味料、果物、穀物、又は栄養物質、特にビタミン、ミネラル、繊維、ならびに安定剤及び増粘剤といった他の成分を含有してもよい。あるいは、ヨーグルトはAFNOR NF 04-600規格及び/又はcodex StanA-lla-1975規格の発酵乳及びヨーグルトの基準を満たす。AFNOR NF 04-600規格を満たすためには、製品は発酵後に加熱してはならず、酪農原料は完成品の最低70%(m/m)を占める必要がある。
【0086】
1.3E+08CFUプロバイオティクス細胞/g発酵乳(CFU/g)以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、若しくは3E+08CFU/g以上、若しくは4E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上、例えば6E+08CFU/g以上などの本明細書中に記載した発酵乳中に存在する少なくとも1種のプロバイオティクス株を含む、本発明のプロセスによって入手可能な発酵乳はまた、例えば、カードチーズ、チョコレート、ジュース、食肉製品及び年少乳児のためのドライミルク粉末製品などの他の食用食品製品に入れるための製品添加物としても使用され得る。
【0087】
好ましいストレプトコッカス・サーモフィルスラクトース欠損性菌株は、本発明のプロセスとの関連において既に定義され、そして、この実施形態にも同様に適用される。
好ましくは、ラクトース欠損性ラクトバチルス株は、ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である。好ましいラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、本発明のプロセスとの関連において既に定義され、そして、この実施形態にも同様に適用される。
【0088】
好ましいプロバイオティクス株は、本発明のプロセスとの関連において既に記載されており、そして、この実施形態にも同様に適用される。従って、好ましくは、本発明の食品又は飼料製品中に存在するプロバイオティクス株は、以下のプロバイオティクス株:
- 2003年9月30日付で、DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg. 1b、D-38124 Braunschweigに、受託番号DSM15954で寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標);及び/又は
- ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標);及び/又は
- DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)、
のうちの1若しくは複数である。
【0089】
従って、好ましい実施形態において、本発明の食品又は飼料製品(発酵乳製品)は、発酵直後、好ましくは本発明のステップiiによる発酵が完了した少なくとも1日後、例えば発酵が完了した15日後、若しくは30日後、若しくは45日後、若しくは60日後などになる時点で、1.3E+08CFUプロバイオティクス細菌/g発酵乳製品(CFU/g)以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、若しくは3E+08CFU/g以上、若しくは4E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上、例えば6E+08CFU/g以上などの先のプロバイオティクス株のうちの少なくとも1種、好ましくはビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)、DSM15954を含み、ここで、食品又は飼料製品は、本発明のプロセスのステップiiによる発酵が仕上がった後に約4℃で貯蔵され、好ましくはここで、乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含み、好ましくはここで、発酵は約38℃にて、そして、約4.55のpHに達するまで行われた。
【0090】
注目すべきは、本発明の食品又は飼料製品(発酵乳製品)は、発酵が完了した60日後に(60日間の保存)、1.3E+08CFU/g以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、若しくは3E+08CFU/g以上、若しくは4E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上、例えば5.7E+08CFU/g以上などの製品中に存在する少なくとも1種のプロバイオティクス株を含み、ここで、食品又は飼料製品は、本発明のプロセスのステップiiによる発酵が仕上がった後に約4℃で貯蔵され、及び好ましくはここで、乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を有し、及び好ましくはここで、発酵は約38℃にて、約4.55のpHに達するまで行われた。従って、本発明の食品又は飼料製品(発酵乳製品)は、同じ初期量のプロバイオティクス細胞を用いて、同じ発酵条件で、同じ乳ベースを使用したが、以下の:
- スターター培養物なし、すなわち、乳ベースはプロバイオティクス細菌だけでインキュベートされた;
- ラクトース欠損性でない(lac+)少なくとも1種のストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース欠損性でない(lac+)少なくとも1種のラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクスを含むスターター培養物(例えば、従来のラクトース(+)ヨーグルト培養物);
- 発酵乳のpHが4.9、例えば4.55などより低いときに、枯渇するように調整された量の非ラクトース糖、好ましくはスクロースの存在下での、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性(lac-)ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性(lac-)ラクトバチルス株、好ましくは少なくとも1種のラクトース欠損性L.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含むスターター培養物、
のうちの1つを用いて発酵させた食品又は飼料製品よりも(約4℃における)60日間の保存にわたり高い安定性を示す(大量の生存プロバイオティクス細菌が長期間にわたり維持される)。
【0091】
組成物
本発明は、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含むか、或いはそれらから成る乳酸菌(LAB)のスターター培養物;及び
b) a)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株の存在下での乳ベースの発酵において、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在する、
を含む発酵乳製品を製造するための組成物(以下「本発明の組成物」)を提供する。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明の食品又は飼料製品(発酵乳製品)に含まれる、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、同じ非ラクトース糖を代謝でき、そしてそれは、好ましくはスクロースである。他の実施形態において、本発明のステップaにおいて乳ベースに添加されるスターター培養物に含まれる、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、異なった非ラクトース糖を代謝でき、好ましくはここで、該非ラクトース糖はグルコースでない。例えば、少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株はスクロースを代謝でき、かつ、少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株はガラクトースを代謝できるか、又はその逆もまた同様である。
【0093】
特定の実施形態において、組成物は、2種以上のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくは1種のラクトース欠損性L.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含む。
本発明の組成物のスターター培養物は、本発明のプロセスのステップi.a.において添加されるスターター培養物を記載するときに、先に詳細に記載された。従って、本発明の組成物中に含まれるスターター培養物(a)は、本発明のプロセスのステップi.a.で乳ベースに添加されるスターター培養物に相当し、そしてそれは先に詳細に記載され、そして、本発明の組成物にも同様に適用される。
加えて、本発明の組成物中に含まれるスターター培養物の乳酸菌によって代謝されることができる非ラクトース糖(b)は、本発明のプロセス(ステップi.b.)との関連において詳細に記載された。
【0094】
好ましいストレプトコッカス・サーモフィルスラクトース欠損性菌株は、本発明のプロセスとの関連において既に定義され、そして、この実施形態にも同様に適用される。
好ましくは、ラクトース欠損性ラクトバチルス株は、ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である。好ましいラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、本発明のプロセスとの関連において既に定義され、そして、この実施形態にも同様に適用される。
【0095】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択される少なくとも1種のプロバイオティクス株をさらに含む。
本発明の組成物に好ましくは含まれるプロバイオティクス株は、本発明のプロセス(ステップi.c.)との関連において詳細に記載された。
本発明の組成物中に好ましくは含まれる、ラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株は、本発明のプロセスのステップi.c.において乳ベースに添加されるラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株に相当し、そしてそれは、先に詳細に記載され、そして、本発明の組成物にも同様は適用される。
【0096】
従って、本発明の好ましい実施形態において、組成物は、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b) a)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で該組成物中に存在し;及び
c) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)、
を含み;
【0097】
或いは、組成物は、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b) a)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で該組成物中に存在し;
c) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標);及び
d) ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標)、
を含み;
【0098】
或いは、組成物は、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b) a)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で該組成物中に存在し;
c) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標);及び
d) DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)、
を含む。
【0099】
スターター培養物中に存在する菌株の量及び/又は(単数若しくは複数の)プロバイオティクス株の量は、本発明のプロセスとの関連において先に記載され、そして、本発明の組成物にも同様に適用される。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、1E+04~1E+09CFUストレプトコッカス・サーモフィルス株/g組成物以上、好ましくは1E+05~1E+07CFU/g、又は1E+06~1E+07CFU/gのストレプトコッカス・サーモフィルス株を含む。より好ましくは、本発明の組成物は、約6~7E+08CFU/g以下のストレプトコッカス・サーモフィルス株を含む。
【0100】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、1E+04~1E+09CFUラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株/g組成物、好ましくは1E+05~1E+07CFU/g、又は1E+06~1E+07CFU/gのラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含む。より好ましくは、本発明の組成物は、約1E+07CFUラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株/g組成物を含む。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1E+10CFU/gのCFUの総量(すなわち、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス、及びプロバイオティクス株の量と見なす)を含む。
【0101】
WO2005/003327で開示されるように、特定の凍結保護剤をスターター培養物に添加することは有益である。よって、本発明の組成物中に含まれるスターター培養物(a.)は、イノシン-5’-一リン酸(IMP)、アデノシン-5’-一リン酸(AMP)、グアノシン-5’-一リン酸(GMP)、ウラノシン-5’-一リン酸(UMP)、シチジン-5’-一リン酸(CMP)、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ヒポキサンチン、キサンチン、ヒポキサンチン、オロチジン、チミジン、イノシン及び任意の斯かる化合物の誘導体から成る群から選択される1若しくは複数の凍結保護剤を含んでもよい。
【0102】
さらに、スターター培養物は、液体スターター培養物に加えて、冷凍又は乾燥スターター培養物として提供されてもよい。よって、本発明の組成物は、冷凍、凍結乾燥又は液体の形状であってもよい。
【0103】
本発明の使用
本発明は、以下の:
a) ラクトース欠損性でない少なくとも1種のストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース欠損性でない少なくとも1種のラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス、とを含む乳酸菌のスターター培養物;又は
b) i. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス、とを含む乳酸菌のスターター培養物、及び
ii. i)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在し;又は
c) 乳ベースは少なくとも1種のプロバイオティクス細菌と共に(すなわち、先に記載した「スターター培養物」の不存在下で)インキュベートされる、
を含む組成物を用いて発酵させた発酵乳製品と比較して、発酵乳製品中の生存プロバイオティクス細胞数を増加させるための、本発明の組成物の使用を更に提供する。
【0104】
従って、本発明の組成物は、発酵乳製品中に存在する少なくとも1種のプロバイオティクス株の生存細胞のカウント数を増加させるのに使用されてもよく、ここで、該食品又は飼料製品は、本発明のプロセスのステップiiによる発酵直後、好ましくは発酵が完了した少なくとも1日後、例えば発酵が完了した15日後、若しくは30日後、若しくは45日後、若しくは60日後などになる時点で、1.3E+08CFUプロバイオティクス細菌/g発酵乳製品(CFU/g)以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、若しくは3E+08CFU/g以上、若しくは4E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上、例えば6E+08CFU/g以上などの食品又は飼料製品中に存在する少なくとも1種のプロバイオティクス株を含み、ここで、食品又は飼料製品は、本発明のプロセスのステップiiによる発酵が仕上がった後に約4℃で貯蔵され、好ましくはここで、乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含み、好ましくはここで、発酵は約38℃にて、そして、約4.55のpHに達するまで行われた。
【0105】
好ましくは、本発明の組成物は、以下の:
- 2003年9月30日付で、DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg. 1b、D-38124 Braunschweigに、受託番号DSM15954で寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標);及び/又は
- ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標);及び/又は
- DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)、
から選択される少なくとも1種のプロバイオティクス株の生存細胞のカウント数を増加させる(生存を増加又は改善する)のに使用される。
【0106】
従って、好ましい実施形態において、本発明の組成物は、先に記載したように、発酵乳製品中に存在する少なくとも1種の先のプロバイオティクス株の生存細胞のカウント数を増加させる(生存を増加又は改善する)のに使用され、ここで、該発酵乳製品は、発酵直後、好ましくは本発明のプロセスのステップiiによる発酵が完了した少なくとも1日後、例えば発酵が完了した15日後、若しくは30日後、若しくは45日後、若しくは60日後などになる時点で、1.3E+08CFUプロバイオティクス細菌の生存細胞/g発酵乳製品(CFU/g)以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、若しくは3E+08CFU/g以上、若しくは4E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上、例えば6E+08CFU/g以上などの先のプロバイオティクス株のうちの少なくとも1種、好ましくはビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)、DSM15954を含み、ここで、食品又は飼料製品は、本発明のプロセスのステップiiによる発酵が仕上がった後に約4℃で貯蔵され、好ましくはここで、乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含み、好ましくはここで、発酵は約38℃にて、そして、約4.55のpHに達するまで行われた。
【0107】
従って、本発明は、先に詳細に記載したとおり、本発明の組成物を使用した、発酵乳製品中に存在する少なくとも1種のプロバイオティクス株の生存プロバイオティクス細胞のカウント数を増加させるための方法を提供する。
【0108】
本明細書中に使用される場合、「長期間にわたり生存プロバイオティクス細胞の生存を増加又は改善するため」という用語は、本発明のスターター培養物を用いて発酵させた製品中の生存プロバイオティクス細胞のカウント数が、同じ初期量のプロバイオティクス細胞を用いて、同じ発酵条件で、同じ乳ベースを使用したが、以下の:
- スターター培養物なし、すなわち、乳ベースはプロバイオティクス細菌だけでインキュベートされた;
- ラクトース欠損性でない(lac+)少なくとも1種のストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース欠損性でない(lac+)少なくとも1種のラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクスを含むスターター培養物(例えば、従来のラクトース(+)ヨーグルト培養物);
- 発酵乳のpHが4.9、例えば4.55などより低いときに、枯渇するように調整された量の非ラクトース糖、好ましくはスクロースの存在下での、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性(lac-)ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性(lac-)ラクトバチルス株、好ましくは少なくとも1種のラクトース欠損性L.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含むスターター培養物、
のうちの1つを用いて発酵させた製品中のプロバイオティクス細胞のカウント数よりも長期間にわたりより高く維持されることを意味する。
【0109】
これに関連して、「長期間」とは、本発明のプロセスのステップiiによる発酵が完了した少なくとも1日後、例えば15日後、30日後、若しくは45日後など、又は発酵が完了した60日後を意味し、ここで、食品又は飼料製品は、本発明のプロセスのステップiiによる発酵後に約4℃にて貯蔵され、好ましくはここで、乳ベースは約2重量%の脂質と約4.1重量%のタンパク質を含む。
【0110】
本明細書中に使用される場合、「約」(又は「前後」)という用語は示された値±その値の1%を意味するか、又は「約」という用語は、示された値±その値の2%を意味するか、又は「約」という用語は示された値±その値の5%を意味するか、又は「約」という用語は示された値±その値の10%を意味するか、又は「約」という用語は示された値±その値の20%を意味するか、又は「約」という用語は示された値±その値の30%を意味し;好ましくは「約」という用語はちょうど示された値(±0%)を意味する。
【0111】
別段の規定がない限り、本明細書中に使用されるすべて技術用語及び学術用語は、本願発明が属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載したものと類似又は同等な方法及び材料が、本発明の実施に際し使用できる。本発明の追加的な目的、利点、及び特徴は、本明細書の検討により当業者に明らかになるか又は本発明の実施によって分かる可能性がある。以下の実施例と図面は、実例として提供されるので、それらが本発明を制限することを意図していない。
【0112】
本明細書と請求項を通じて、「含む(comprise)」という言葉とその単語の変化形(例えば、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」、「含有する(containing)」)は典型的には限定ではなく、これにより他の特徴(それは、技術的な特徴、添加物、成分、又はステップであってもよい)を排除しない。しかしながら、「含む」という単語が本明細書中に使用されるときは常に、これはまた、この単語が限定として理解される特別な実施形態も包含する;この特定の実施形態において、「含む(comprise)」という単語は「から成る(consist of)」という単語の意味を有する。
【0113】
本願の記載における(特に、以下の特許請求の範囲との関連における)「1つの(「a」及び「an」)」ならびに「前記(the)」という用語、及びこれらの類似語は、別段の言及がない限り、又は明確に否定していない限り、単数及び複数の両方を包含すると想定される。本明細書中の数値範囲の記載は、別段の言及がない限り、単に当該範囲内の各個別の数値を個別に参照する簡単な方法と見なされることが意図され、各個別の数値は、それらが個別に本明細書中に記載されているかのように本明細書中に包含される。本明細書中に記載される全ての方法は、本記載中に別段の言及がない限り、又は明確に否定されていない限り、任意の適切な順番で実施され得る。本明細書中の任意の及び全ての実施例、又は例示的用語(「例えば(「such as」)」)は、本発明をより良く明示することのみを意図しており、別段の言及がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいずれの用語も、本発明の実施に必須の明示されていない要素であることを示唆するものとして解釈されるべきではない。
【0114】
好ましい実施形態
1. 以下のステップ:
i. 乳ベースに、以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス、とを含む乳酸菌のスターター培養物、好ましくはここで、スターター培養物は、1.2~1.3E+07CFUストレプトコッカス・サーモフィルス株とラクトバチルス株/ml乳ベースの量で添加され、好ましくはここで、スターター培養物中の少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株(ST)対少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス(LB)の比は、1:99~99:1(ST:LB)、例えば50:50など、より好ましくは90:10~99:1(ST:LB)であり;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株、
を加え;
ii. 目標pHが達成されるまでの期間にわたり乳ベースを発酵させて、発酵乳製品を得ること、
を含む発酵乳製品を製造するためのプロセス。
【0115】
2. 前記少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株、及び少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクスは、同じ非ラクトース糖を代謝できる、項目1に記載のプロセス。
【0116】
3. 前記(単数若しくは複数の)非ラクトース糖が、スクロース、ガラクトース及びグルコースから成る群から選択され、好ましくはここで、該非ラクトース糖がグルコースでなく、より一層好ましくはここで、該非ラクトース糖がスクロースである、項目1~2のいずれか一項に記載のプロセス。
【0117】
4. 前記ステップiiの目標pHが、約4.8~約4.0、好ましくは約4.6~約4.55、より一層好ましくは約4.55である、項目1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【0118】
5. 前記ストレプトコッカス・サーモフィルスラクトース欠損性菌株が、以下の:
(a)(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28952で寄託された菌株;
(ii)DSM28952由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;
(b)(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28953で寄託された菌株;
(ii)DSM28953由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;
(c)(i)2017年8月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM32599で寄託された菌株;
(ii)DSM32599由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株;並びに
(d)(i)2017年8月22日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM32600で寄託された菌株;及び
(ii)DSM32600由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株、
からなる群から選択される、項目1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【0119】
6. 前記ラクトース欠損性ラクトバチルス株がL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株であり、以下の:
(i)2014年6月12日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクションDSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、D-38124 Braunschweigに受託番号:DSM28910で寄託された菌株;及び
(ii)DSM28910由来株であって、ラクトース及びX-Galを含有する培地で白色コロニーを形成する能力を有することを更なる特徴とする株、
から成る群から選択される、項目1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【0120】
7. 前記プロバイオティクス株がラクトバチルス・パラカゼイ株ではなく、より一層好ましくは、前記プロバイオティクスラクトバチルス株が、ATCC55544として寄託されたL.パラカゼイ株CRL431又はDSM19465として寄託されたL.パラカゼイ株CHCC2115ではない、項目1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【0121】
8. 前記プロバイオティクスラクトバチルス株が、ラクトバチルス・ラムノサス株、ラクトバチルス・パラカゼイ株及びラクトバチルス・アシドフィルス株から成る群から選択され、及び/又は前記プロバイオティクスビフィドバクテリウム株が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスから成る群から選択される、項目1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【0122】
9. 前記プロバイオティクス株が、ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス、LGG(登録商標)、ATCC55544として寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ株CRL431、DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)及びDSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)から成る群から選択される、項目1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【0123】
10. 前記のステップi.c.において乳ベースに添加されるプロバイオティクス株が、ビフィドバクテリウム株、好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスから成る群から選択されるプロバイオティクスビフィドバクテリウム株、より一層好ましくはDSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)を含む、項目1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【0124】
11. 前記ステップi.が、乳ベースに、以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、好ましくはここで、該非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、約1.2~1.3E+07CFUの量で添加され;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. 好ましくは約1.2E+07CFU/ml乳ベースの量での、DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)、
を添加することを含む、項目1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【0125】
12. 前記ステップi.が、乳ベースに、以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、好ましくはここで、該非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、約1.2~1.3E+07CFUの量で添加され;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)と、ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標)、好ましくはここで、該ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)は約1.2E+07CFU/mlの量で添加され、及び該ラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標)は約7E+06CFU/mlの量で添加される、
を添加することを含む、項目1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【0126】
13. 前記ステップi.が、乳ベースに、以下の:
a. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、好ましくはここで、該非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、約1.2~1.3E+07CFUの量で添加され;
b. a.で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、 (単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で添加され;及び
c. DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)と、DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)、好ましくはここで、該ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)は約1.2E+07CFU/mlの量で添加され、及び該ラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)は約7E+06CFU/mlの量で添加される、
を添加することを含む、項目1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【0127】
14. 前記非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株が項目5に記載のとおり定義されて、かつ、前記非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株が項目6に記載のとおり定義される、項目11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【0128】
15. 1E+04~1E+10CFU(コロニー形成単位)/ml乳ベースのストレプトコッカス・サーモフィルス株、好ましくは1E+05~1E+10CFU/ml、又は1E+06~1E+10CFU/ml、又は1E+07~1E+09CFU/ml、好ましくは約1E+06~約1E+08CFU/mlのストレプトコッカス・サーモフィルス株が、ステップi.a.において乳ベースに添加される、項目1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【0129】
16. 1E+04~1E+10CFU/ml乳ベースのラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、好ましくは1E+05~1E+10CFU/ml、又は1E+06~1E+10CFU/ml、又は1E+07~1E+09CFU/ml、好ましくは約1E+06~約1E+08CFU/mlのラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株が、ステップi.a.において乳ベースに添加される、項目1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【0130】
17. 約1E+06~約1E+08CFU/ml乳ベース、好ましくは約5E+06~5E+07CFU/ml、より好ましくは約1~1.5E+07CFU/ml、例えば約1.2E+07CFU/mlなど、のプロバイオティクス株、又は約7E+06CFU/mlのプロバイオティクス株が、ステップi.c.において乳ベースに添加される、項目1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【0131】
18. 前記非ラクトース糖、好ましくはスクロースが、0.9%未満の量で、好ましくは0.7%未満の量で、より一層好ましくは0.5%未満、例えば0.41%などの量で(%は乳ベースの体積(%w/v)あたりの重量である)ステップi.b.において乳ベースに添加される、項目1~17のいずれかに記載のプロセス。
【0132】
19. 項目1~18のいずれか一項に記載のプロセスによって製造される発酵乳製品。
【0133】
20. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス、及びラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株を含む食品又は飼料製品であって、好ましくはここで、該ラクトバチルス株はラクトバチルス・パラカゼイ株ではなく、より一層好ましくはここで、該ラクトバチルス株は、ATCC55544として寄託されたL.パラカゼイ株CRL431又はDSM19465として寄託されたL.パラカゼイ株CHCC2115ではなく、ここで、1.3E+08CFUプロバイオティクス細菌の生存細胞/g発酵乳製品(CFU/g)以上、好ましくは2E+08CFU/g以上、より一層好ましくは5E+08CFU/g以上、例えば6E+08CFU/gなどの食品又は飼料製品中に存在する少なくとも1種のプロバイオティクス株を、発酵直後、好ましくは発酵が完了した少なくとも1日後、例えば発酵が完了した15日後、若しくは30日後、若しくは45日後、若しくは60日後などになる時点で含み、ここで、発酵が完了した後に約4℃で維持される、食品又は飼料製品。
【0134】
21. 前記プロバイオティクスラクトバチルス株が、ラクトバチルス・ラムノサス株、ラクトバチルス・パラカゼイ株及びラクトバチルス・アシドフィルス株から成る群から選択され、及び前記プロバイオティクスビフィドバクテリウム株が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスから成る群から選択される、項目20に記載の食品又は飼料製品。
【0135】
22. 前記食品又は飼料製品が、発酵乳製品、好ましくは発酵乳飲料、より好ましくはヨーグルトである、項目20~21のいずれか一項に記載の食品又は飼料製品。
【0136】
23. 前記ストレプトコッカス・サーモフィルスラクトース欠損性菌株が項目5に記載のとおり定義される菌株であり;及び/又は前記ラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株が項目6に記載のとおり定義される菌株であり;及び/又は前記プロバイオティクスラクトバチルス株が、ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス、LGG(登録商標)、ATCC55544として寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ株CRL431、DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)及びDSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)から成る群から選択される、項目20~22のいずれか一項に記載の食品又は飼料製品。
【0137】
24. 以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含む乳酸菌のスターター培養物;及び
b) a)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、ラクトバチルス株及びビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株の存在下での乳ベースの発酵において、発酵乳製品のpHが4.9~5.5、例えば5.0~5.4など、好ましくは約5.3であるときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在する、
を含む発酵乳製品を製造するための組成物。
【0138】
25. 前記少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株、及び少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス株、好ましくはL.デルブルエッキ亜種ブルガリクスは、同じ非ラクトース糖を代謝できる、項目24に記載の組成物。
【0139】
26. 前記非ラクトース糖が、スクロース、ガラクトース及びグルコースから成る群から選択され、好ましくはここで、該非ラクトース糖がグルコースでなく、より一層好ましくはここで、該非ラクトース糖がスクロースである、項目24~25のいずれか一項に記載の組成物。
【0140】
27. 前記ストレプトコッカス・サーモフィルスラクトース欠損性菌株が項目5に記載のとおり定義される菌株であり;及び/又は前記ラクトース欠損性ラクトバチルス株が項目6に記載のとおり定義されるL.デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である、項目24~26のいずれか一項に記載の組成物。
【0141】
28. 前記組成物が、ラクトバチルス株とビフィドバクテリウム株から成る群から選択されるプロバイオティクス株を更に含み、好ましくはここで、該ラクトバチルス株がラクトバチルス・パラカゼイ株ではなく、より一層好ましくはここで、該ラクトバチルス株が、ATCC55544として寄託されたL.パラカゼイ株CRL431又はDSM19465として寄託されたL.パラカゼイ株CHCC2115ではない、項目24~27のいずれか一項に記載の組成物。
【0142】
29. 前記プロバイオティクスラクトバチルス株が、ラクトバチルス・ラムノサス株、ラクトバチルス・パラカゼイ株及びラクトバチルス・アシドフィルス株から成る群から選択され、及び前記プロバイオティクスビフィドバクテリウム株が、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス及びビフィドバクテリウム・インファンティスから成る群から選択される、項目24~28のいずれか一項に記載の組成物。
【0143】
30. 前記プロバイオティクス株ラクトバチルスが、ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス、LGG(登録商標)、ATCC55544として寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ株CRL431、DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)及びDSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)から成る群から選択される、項目28~29のいずれか一項に記載の組成物。
【0144】
31. 前記組成物が、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;及び
b) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)、
を含む、項目28~30のいずれか一項に記載の組成物。
【0145】
32. 前記組成物が、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標);及び
c) ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標)、
を含む、項目28~30のいずれか一項に記載の組成物。
【0146】
33. 前記組成物が、以下の:
a) 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株;
b) DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標);及び
c) DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)、
を含む、項目28~30のいずれか一項に記載の組成物。
【0147】
34. 前記非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株が項目5に記載のとおり定義されて、かつ、前記非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株が項目6に記載のとおり定義される、項目31~33のいずれか一項に記載の組成物。
【0148】
35. 前記組成物が、約6~7E+08CFU(コロニー形成単位)/g以下のストレプトコッカス・サーモフィルス株を含む、項目24~34のいずれか一項に記載の組成物。
【0149】
36. 前記組成物が、約1E+07CFU/gのラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含む、項目24~35のいずれか一項に記載の組成物。
【0150】
37. 前記組成物が、1E+06~1E+08CFU/gのプロバイオティクス株、好ましくは5E+06~5E+07CFU/g、より好ましくは約1.2E+07CFU/gのプロバイオティクス株を含む、項目24~36のいずれか一項に記載の組成物。
【0151】
38. 前記非ラクトース糖が、0.9%未満の量で、好ましくは0.7%未満の量で、より一層好ましくは0.5%未満、例えば約0.41%などの量で(%は乳ベースの体積(%w/v)あたりの重量である)組成物中に存在する、項目24~37のいずれか一項に記載の組成物。
【0152】
39. 以下の:
a) ラクトース欠損性でない少なくとも1種のストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース欠損性でない少なくとも1種のラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含む乳酸菌のスターター培養物;及び/又は
b) i. 非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含む乳酸菌のスターター培養物、及び
ii. i)で定義した乳酸菌によって代謝されることができる1若しくは複数の非ラクトース糖、ここで、(単数若しくは複数の)該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが4.9を下回るときに、枯渇するように調整された量で組成物中に存在し、
好ましくはここで、該発酵乳製品は、4℃にて60日間の貯蔵期間(保存)後に、少なくとも2E+08CFU生存プロバイオティクス細胞/g発酵乳製品、好ましくは少なくとも4E+08CFU生存プロバイオティクス細胞/g発酵乳製品、より一層好ましくは少なくとも5.5E+08CFU、例えば5.7E+08CFU生存プロバイオティクス細胞/g発酵乳製品など、を含む、
組成物を用いて発酵させた発酵乳製品と比較した場合に、発酵乳製品中のプロバイオティクス細胞のカウント数を増加させるための、項目24~38のいずれか一項に定義される組成物の使用。
【0153】
寄託及び専門家のみへの試料の分譲(EXPERT SOLUTION)
出願人は、EPC規則33で言及された寄託微生物の入手可能性が、請求人によって指名された独立した専門家に対する試料の分譲によってのみもたらされるべきであることを要求する(EPC規則32(1))。
【0154】
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr. 7B、D-38124 Braunschweigに、2014年6月12日付で、受託番号DSM28952で寄託されたストレプトコッカス・サーモフィルス株。
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr. 7B、D-38124 Braunschweigに、2014年6月12日付で、受託番号DSM28953で寄託されたストレプトコッカス・サーモフィルス株。
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr. 7B、D-38124 Braunschweigに、2017年8月22日付で、受託番号DSM32599で寄託されたストレプトコッカス・サーモフィルス株。
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr. 7B、D-38124 Braunschweigに、2017年8月22日付で、受託番号DSM32600で寄託されたストレプトコッカス・サーモフィルス株。
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr. 7B、D-38124 Braunschweigに、2014年6月12日付で、受託番号DSM28910で寄託されたラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株。
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg. 1b、D-38124 Braunschweigに、2003年9月30日付で、受託番号DSM15954で寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス菌株、BB-12(登録商標)。
DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg. 1b、D-38124 Braunschweigに、2003年9月30日付で、受託番号DSM13241で寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス株、LA-5(登録商標)。
寄託は、特許手続きを目的とした微生物の寄託に関する国際的承認に関するブダペスト条約に従って出願人CHR. HANSEN A/Sによってなされた。
【0155】
商標
BB-12(登録商標)はChr. Hansenの登録商標である。
LGG(登録商標)はChr. Hansenの登録商標である。
LA-5(登録商標)はChr. Hansenの登録商標である。
YoFlex(登録商標)はChr. Hansenの登録商標である。
Acidifix(登録商標)はChr. Hansenの登録商標である。
【実施例
【0156】
実施例1
この実施例の目的は、プロバイオティクス培養物BB-12(登録商標)、LGG(登録商標)及び/又はLA-5(登録商標)の細胞数における、乳酸菌のスターター培養物の効果を比較することであり、ここで、該スターター培養物は、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、非ラクトース糖を代謝できる少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株と、先に定義したスターター培養物の乳酸菌によって代謝されることができる非ラクトース糖とを含み、ここで、該非ラクトース糖は、発酵乳製品のpHが約5.3であるときに枯渇するように調整された量で組成物中に存在する。
【0157】
スターター培養物
Acidifix(登録商標):Chr. Hansen A/Sから「F-DVS YoFlex(登録商標) Acidifix(登録商標)1.0」として市販されている、少なくとも1種のラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス(ST)菌株と少なくとも1種のラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(LB)菌株とを含むラクトース欠損性培養物。菌株を、例えばEP2957180の実施例1に記載のとおり単離した。
【0158】
YoFlex(登録商標)Mild 1.0:ラクトース陽性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と、ラクトース陽性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とを含む市販のラクトース陽性ヨーグルト培養物。Chr. Hansen製の市販の菌株F-DSV(Frozen Direct Vat Set(DVS)、濃縮冷凍培養物)YoFlex(登録商標)Mild 1.0。A/S.F-DVS YoFlex(登録商標) Mild 1.0はChr. Hansen A/S GIN702897から市販されている。
【0159】
プロバイオティクス培養物
LGG(登録商標):ATCC53103として寄託されたラクトバチルス・ラムノサス株、LGG(登録商標)。
BB-12(登録商標):DSM15954として寄託されたビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス株、BB-12(登録商標)。
LA-5(登録商標):DSM13241として寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス、LA-5(登録商標)。
【0160】
培養組成物
上記プロバイオティクス細菌株を、試験を実施するために使用した:ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス、BB-12(登録商標)、ラクトバチルス・アシドフィルス、LA-5(登録商標)、及びラクトバチルス・ラムノサス、LGG(登録商標)。それらを、先に示したように、Lac(-)STとLac(-)LB株で構成されるF-DVS YoFlex(登録商標) Acidifix(登録商標)1.0と組み合わせた。先に記載したラクトース(+)ヨーグルト培養物F-DSV YoFlex(登録商標) Mild 1.0+BB-12(登録商標)と、ヨーグルト培養物を伴わない単独のF-DVS BB-12(登録商標)を対照として使用した。
植菌マトリックス(「培養物の組み合わせ」)を以下の表1に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
F-DVS Acidifix(登録商標)1.0(F-DVS YoFlex(登録商標) Acidifix(登録商標)1.0)又はF-DVS YF Mild 1.0(F-DVS YoFlex(登録商標) Mild 1.0)が0.01%で植菌されるとき、植菌時の(発酵前の)STとLBの細胞数は、1.2~1.3 E+07CFU/mlであった。0.01%のF-DVSにて植菌時のBB-12(登録商標)の細胞数は、1.2E +07CFU/mlであった。0.01%のF-DVSにて植菌時のLA-5(登録商標)の細胞数は、7E +06CFU/mlであった。0.001%(のFD-DVS)にて植菌時のLGG(登録商標)の細胞数は、7E +06CFU/mlであった。
【0163】
培養物を、2重量%の脂質を含み、かつ、4.1重量%タンパク質に標準化するように脱脂乳を加えた乳(乳ベース)で試験した。スクロースを0.41%又は0.90%(ここで、%は乳ベースに基づく(w/v))にて添加して、それぞれ約pH5.3及び4.55まで酸性化させた。乳ベースを、92℃にて3分間熱処理し、38℃まで冷まし、そして記載したとおり植菌した。乳を38℃にてインキュベートした。酸性化プロファイルを、20~24時間にわたりオンラインpH測定装置(CINAC)によって追跡調査した。
【0164】
発酵をpH4.55で停止させ、プロバイオティクスヨーグルトを4℃まで冷やし、そして貯蔵期間(保存)の間、4℃にて貯蔵した。細胞数を、1、15、30、45及び60日目のプレートのカウントによって測定した。
【0165】
理論的に、最も高い細胞数は単一株の培養によって達成される。しかしながら、プロバイオティクス株は、ヒト胃腸管内で生き残る能力、腸粘膜に付着する能力、及び健康に対する特定の有益な効果に基づいて選択される。それらは、乳の酸性化及びヨーグルトや他の発酵乳製品の製造のために使用される乳酸菌と異なった代謝活性を有する。それがプロバイオティクス株の主要な機能でないため、例えばBB-12(登録商標)やLGG(登録商標)などのプロバイオティクス株は、乳中での増殖に十分に適合しておらず、そのため、乳を効率的に酸性化できない。それらは、増殖できず、かつ、24時間で、それぞれpH6.1及び5.8を下回るまで乳を酸性化できない、図1を参照のこと。
【0166】
かなり高いプロバイオティクス細胞数が、F-DVS YoFlex(登録商標) Acidifix(登録商標)1.0、すなわち、Lac(-)STとLB菌株を伴ったプロバイオティクスの組み合わせによって達成される、図2を参照のこと。培養物の組み合わせを、pH5.30前後までの酸性化を可能にするのに十分なだけのスクロースを補った乳中に植菌した。
【0167】
図2に示すとおり、二相の酸性化が存在する。第一の相は約5.30のpHまでの酸性化に対応している。これはLac(-)STとLB菌株(F-DVS YoFlex(登録商標) Acidifix(登録商標)1.0)の増殖に起因する。5.30~4.55、又はそれを下回る第二の酸性化相は、LA-5(登録商標)又はLGG(登録商標)の有無にかかわらず、プロバイオティクス株、例えばビフィドバクテリウム、BB-12(登録商標)の増殖のみに起因する。これらのプロバイオティクス株は、乳中に存在するラクトースを代謝できるので、例えば4.55の所望のpHが達成されるまで発酵(酸性化)を続ける。この時点で、乳を冷やして、更なる酸性化を止める。
【0168】
表2は、4.55のpHに達するまでに、試験した培養物のそれぞれによって必要とされる時間を示す。図3は、0.41%(B)及び0.90%のスクロース(D)を含む乳におけるAcidifix(登録商標)1.0+0.01%のBB-12(登録商標)の酸性化プロファイルを示す。スクロースの%量を、先に記載したとおり、乳ベースに基づく(w/v)として示す。
【0169】
【表2】
【0170】
プロバイオティクスを用いた5.30前後のpHにて酸性化を止めるように設計したF-DVS YoFlex(登録商標) Acidifix(登録商標)1.0(すなわち、ラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス(ST)株とラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(LB)株)の組み合わせは、より高いプロバイオティクス細胞数をもたらした。
例えば、1.4~9.6E +08CFUプロバイオティクス細菌の生存細胞/g発酵乳製品(CFU/g)のビフィドバクテリウム、BB-12(登録商標)、2.4~4.6E+08CFU/gのL.アシドフィルス、LA-5(登録商標)、及び2.7~4.3E+08CFU/gのL.ラムノサス、LGG(登録商標)。すべてのプロバイオティクスの細胞数は、プロバイオティクス発酵乳で典型的に見らるものより高く、そしてそのカウント数は60日間の貯蔵期間にわたりより安定していた。
【0171】
(0.41%、すなわち、5.30前後のpHにて酸性化を止めるように設計された)限定されたスクロースレベルを有する乳においてAcidifix(登録商標)1.0を用いて発酵したとき(培養物の組み合わせA、B及びC)、BB-12(登録商標)の細胞数はヨーグルト培養物(lac+)の組み合わせで典型的に達成されるものよりほぼ1log高かった、以下の表3を参照のこと。
【0172】
【表3】
【0173】
pH4.55までの酸性化を可能にするために調整された0.9%のスクロースを乳ベースに補ったとき(変量D)、Acidifix(登録商標)1.0 + BB-12(登録商標)を、ラクトース(+)ヨーグルト培養物YoFlex(登録商標) Mild 1.0 + BB-12(登録商標)(変量E)と同様に実施した。ラクトース欠損性ストレプトコッカス・サーモフィルス(ST)とラクトース欠損性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(LB)が4.55まで酸性化させる両変量におけるBB-12(登録商標)の細胞数は同等であり、約1.2~1.3E+08CFU/g前後の範囲に及んだ。ヨーグルト培養物を伴わずに植菌したとき(変量F)、BB-12(登録商標)の細胞数は増加せず、原則的に種菌の細胞数に相当する1.2E+07CFU/g前後であった。
【0174】
貯蔵期間中の改善された生存
北米や世界のその他の地域における生鮮発酵乳製品の典型的な貯蔵期間である60日間にわたる細胞数もまた試験した。典型的なプロバイオティクスヨーグルトにおける貯蔵期間にわたり、ビフィドバクテリウム、BB-12(登録商標)の細胞数は通常、ヨーグルト培養物、乳ベース、培養及び貯蔵条件によって、60日間を通じて0.5~1log減少する。LA-5(登録商標)の細胞数は典型的に、60日間の貯蔵期間を通じて1~2log減少する。Acidifix(登録商標)1.0(増殖は5.30前後のpHに制限される)と共同培養したとき、プロバイオティクスBB-12(登録商標)、LA-5(登録商標)及びLGG(登録商標)の細胞数は、典型的に見られるものより0.5~1log高く、また貯蔵期間(60日間)を通じて素晴らしい安定性も示した。
【0175】
【化1】
【0176】
【化2】
【0177】
【化3】
図1
図2
図3
【国際調査報告】