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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】表面を塗装するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 12/00 20180101AFI20220720BHJP
   B05B 12/36 20180101ALI20220720BHJP
   B05B 7/24 20060101ALI20220720BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220720BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20220720BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B05B12/00 Z ZAB
B05B12/36
B05B7/24
B05D3/00 B
B05D3/00 D
B05D3/04 Z
B05D1/02 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570350
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2020064633
(87)【国際公開番号】W WO2020239798
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】2023223
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2023224
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521516020
【氏名又は名称】クレイヤーズ ホールディング ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ゲウトイェンス ルーベン
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F033
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073DB04
4D073DB08
4D073DB13
4D073DB19
4D075AA01
4D075AA71
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA83
4D075AA85
4D075BB18Y
4D075BB22Y
4D075BB23X
4D075BB24Z
4D075BB26Z
4D075BB57X
4D075BB57Y
4D075BB57Z
4D075BB91Y
4D075BB93Y
4D075EA05
4D075EC30
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD14
4F033QE06
4F033QK02X
4F033QK16X
4F035AA03
4F035BA22
4F035BB21
4F035BB22
4F035BC06
(57)【要約】
本発明は、霧化した塗装粒子(10)を噴霧する噴霧塗装具(2)を用いて物体(3)の表面(3a)を塗装するシステム(1)及び方法に関する。噴霧室を区画するコンディショニングフード(20)が適用されている。動作中に、噴霧塗装具(2)は、塗装具装着端(21)に装着され、吐出端(22)は、塗装対象の物体(3)の表面(3a)の近傍に配置される。噴霧塗装具(2)は、塗装具(2)から噴霧室及び吐出端(22)を通って移動する霧化した塗装粒子(10)を物体(3)の表面(3a)に噴霧するように動作する。動作中に霧化した塗装粒子(10)を物体(3)の表面(3a)に運ぶキャリアガスを、噴射する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンキ等の霧化した塗装粒子(10)を噴霧する噴霧塗装具(2)を用いて物体(3)の表面(3a)を塗装するシステム(1)であって、
前記噴霧塗装具(2)に連通し、塗料流量を設定する塗料ポンプを含む塗料供給部(6)と、
噴霧室を区画するコンディショニングフード(20)であって、
- 塗装具装着端、及び
- 塗装対象の物体の表面の近傍に配置されるように構成された、前記塗装具装着端とは反対側の吐出端を有し、
動作中には、
- 前記噴霧塗装具が前記塗装具装着端に装着され、
- 前記吐出端が前記塗装対象の物体の表面の近傍に配置され、
- 前記噴霧塗装具が前記噴霧塗装具から前記噴霧室及び前記吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を前記塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作する、コンディショニングフード(20)と、
前記コンディショニングフードの前記塗装具装着端又は前記噴霧塗装具(2)に連通し、動作中に前記霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスを供給するように構成されたキャリアガス装置(30)と、を含み、
前記システムは、
前記コンディショニングフード内、例えば前記噴霧室(5)内に設置され、粒度分布及び/又は粒子密度を検出する粒子センサー(23、36)と、
前記粒子センサー(23、36)及び前記塗料供給部(6)及び/又は前記キャリアガス装置(30)と通信可能に接続されて、塗料流量などの前記粒子センサーからの入力データに基づいて塗装処理を制御する中央制御システム(45)と、を更に含む、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記塗料供給部は、塗料加熱素子を更に含み、塗料の温度は、前記粒子センサーの入力に基づいて制御される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記物体の表面と前記噴霧室を区画する前記コンディショニングフードとの間の距離を調整する噴霧室調整機構は、前記コンディショニングフードの吐出端に設置され、前記距離は前記粒子センサーの入力に基づいて制御される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記キャリアガス装置(30)は、キャリアガスを前記噴霧室に噴射するガス流量を設定するキャリアガスポンプを含み、前記中央制御システムは、前記キャリアガスポンプと通信可能に接続されて前記粒子センサーからの入力データに基づいて前記ガス流量を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記キャリアガス装置は、前記キャリアガスの湿度を調整する保湿剤を備え、前記キャリアガスの湿度は、前記粒子センサーの入力に基づいて制御される、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記キャリアガス装置は、前記キャリアガスの温度を調整する加熱素子を含み、前記キャリアガスの温度は、前記粒子センサーの入力に基づいて制御される、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コンディショニングフードは、環状ダクト(29)と前記環状ダクトの内部の前記噴霧室(5)とを区画する2つの同心円状の壁を有し、ガス抽出装置(35)は、前記環状ダクトに連通し、前記コンディショニングフードの吐出端の近くの残りの霧化した塗装粒子と共にガスを抽出するように構成され、抽出率を設定するポンプ(38)を含み、前記抽出率は、前記粒子センサー(36)の入力に基づいて制御される、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記粒子センサー(36)は、前記環状ダクト(29)内に設置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コンディショニングフードは、同心円状の外壁、中間壁及び内壁を有し、前記内壁は、前記噴霧室を区画し、前記外壁及び前記中間壁は、外側環状ダクトを区画し、前記中間壁及び前記内壁は、内側環状ダクトを区画し、
前記内側環状ダクトに連通し、前記コンディショニングフードの前記吐出端の近くの残りの霧化した塗装粒子と共にガスを抽出するように構成されるガス抽出装置は、好ましくは抽出率を設定するポンプを含み、
好ましくは、前記環状ダクト(29)には粒子センサー(36)が設置され、
前記外側環状ダクトに連通し、吐出端で前記環状ダクトを出る遮蔽流体を前記外側環状ダクトに噴射することにより、前記噴霧室を環境から遮蔽するように構成される遮蔽流体噴射装置は、好ましくは前記遮蔽流体の圧力を設定する遮蔽流体ポンプを含み、
前記抽出率は、前記粒子センサーの入力に基づいて制御され、及び/又は前記遮蔽流体の圧力は、前記粒子センサーの入力に基づいて制御される、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のシステムを利用して、霧化した塗装粒子を噴霧する噴霧塗装具を用いて物体の表面を塗装する方法であって、
- 前記噴霧塗装具を前記塗装具装着端に装着するステップと、
- 前記吐出端を前記塗装対象の物体の表面の近傍に配置するステップと、
- 前記噴霧塗装具が前記噴霧塗装具から前記噴霧室及び前記吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を前記物体の表面に噴霧するように動作させ、前記噴霧塗装具の動作中に粒度及び/又は粒子密度を検出するステップと、
- 前記粒子センサーのデータに基づいて前記塗料流量及び/又は前記キャリアガスの流量を制御するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
ペンキ等の霧化した塗布粒子(10)を噴霧する噴霧塗装具(2)を用いて物体(3)の表面(3a)を塗装するシステム(1)であって、
噴霧室(5)を区画コンディショニングフード(20)であって、
- 塗装具装着端(21)、及び
- 塗装対象の物体の表面の近傍に配置されるように構成された、前記塗装具装着端とは反対側の吐出端(22)を有し、
動作中には、
- 前記噴霧塗装具が前記塗装具装着端に装着され、
- 前記吐出端が前記塗装対象の物体の表面の近傍に配置され、
- 前記噴霧塗装具が前記噴霧塗装具から前記噴霧室及び前記吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を前記塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作する、コンディショニングフード(20)と、
前記コンディショニングフードの前記塗装具装着端(21)又は前記噴霧塗装具に連通し、動作中に前記霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスを供給するように構成されたキャリアガス装置(30)と、を含み、
前記コンディショニングフードは、3つの同心円状の壁として、外壁(25)、中間壁(26)及び内壁(27)を有し、前記内壁は、前記噴霧室(5)を区画し、前記外壁及び前記中間壁は、外側環状ダクト(28)を区画し、前記中間壁及び前記内壁は内側環状ダクト(29)を区画し、
前記システムは、前記内側環状ダクト(29)に連通し、前記コンディショニングフードの前記吐出端の近くの残りの霧化した塗装粒子と共にガスを抽出するように構成されたガス抽出装置(35)と、
前記外側環状ダクト(28)に連通し、吐出端で前記環状ダクトを出る遮蔽流体を前記外側環状ダクトに噴射することにより、前記噴霧室を環境から遮蔽するように構成された遮蔽流体噴射装置(40)と、を更に含む、ことを特徴とするシステム。
【請求項12】
前記コンディショニングフードは、前記塗装具装着端が相対的に小さい開口部を有する前記コンディショニングフードの側にあり、前記吐出端が相対的に大きい開口部を有する前記コンディショニングフードの側にある略円錐形状を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コンディショニングフードの3つの同心円状の壁は、互いに平行に設置される、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記物体の表面と前記噴霧室を区画する前記内壁との間の距離を調整する噴霧室調整機構は、前記コンディショニングフードの吐出端に設置される、請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記物体の表面と少なくとも外側の同心円状の壁との間の距離dを調整する外壁調整機構は、前記コンディショニングフードの吐出端に設置される、請求項11~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記噴霧室内に設置され、粒度及び/又は粒子密度を検出する粒子センサーと、前記粒子センサー及び塗料供給部及び/又は前記キャリアガス噴射装置と通信可能に接続されて、塗料流量及び/又はキャリアガス流量などの前記粒子センサーからの入力データに基づいて塗装処理を制御する中央制御システムと、を更に含む、請求項11~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
キャリアガスを噴射するように構成されたキャリアガス噴射装置(30)を更に含む、請求項11~16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
請求項11~17のいずれか1項に記載のシステムを利用して、霧化した塗装粒子を噴霧する噴霧塗装具を用いて物体の表面を塗装する方法であって、
- 前記噴霧塗装具を前記塗装具装着端に装着するステップと、
- 前記吐出端を前記塗装対象の物体の表面の近傍に配置するステップと、
- 前記噴霧塗装具が前記噴霧塗装具から前記噴霧室及び前記吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を前記塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作させるステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンキ(paint)などの霧化(atomiase)した塗装粒子(coating particle)を噴霧する噴霧塗装具(spray coating tool)を用いて、物体の表面を塗装するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物体の表面を1層以上の塗膜で覆うことにより、物体の保護に寄与することが知られている。このような層は、霧化した塗装粒子を比較的近い距離から物体に塗布するスプレーガンなどの噴霧塗装具を操作するロボット又は人によって塗布される。
【0003】
しかしながら、風及び他の環境要因に起因して、霧化した塗装粒子の大部分が逃げて(抜けて)(escape)しまい、所望しない領域に堆積される。この現象は、オーバースプレーとも呼ばれる。その結果、塗料の塗布効率が相対的に低くなる一方、環境に対して問題が生じる。
【0004】
例えば、US5688323には、処理対象の物体から非常に短い距離に配置された筐体が知られており、人は、上半身を該筐体内に位置させ、下半身を筐体外に位置させる。筐体内にはファンによって真空が形成され、筐体と処理対象の表面との間の隙間(slit)から空気が引き出される。
【0005】
EP2859960には、塗装具と処理対象の物体との間に配置されたコンディショニングフードが知られている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、オーバースプレーに伴う問題を低減するための代替案(solution)を提供することにある。
【0007】
本発明において、ペンキ(paint)等の霧化した塗装粒子を噴霧する噴霧塗装具を用いて物体の表面を塗装するシステムは、
噴霧室(spray chamber)を区画するコンディショニングフードであって、
塗装具装着端(coating tool mounting end)、及び
塗装対象の物体の表面の近傍に配置されるように構成された、塗装具装着端とは反対側の吐出端を有し、
動作中には、
- 噴霧塗装具が塗装具装着端に装着され、
- 吐出端が塗装対象の物体の表面の近傍に配置され、
- 噴霧塗装具が塗装具から噴霧室及び吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作する、コンディショニングフードと、
コンディショニングフードの塗装具装着端又は塗装具に連通し、動作中に霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスを供給するように構成されたキャリアガス装置と、を含む。
【0008】
本発明に係る塗装に適する物体としては、船舶と、飛行機、ヘリコプター、ロケット、人工衛星などの航空機と、建物と、橋、水門(lock)、防水壁(water barriers)の部品などのインフラストラクチャコンポーネントが考えられる。
【0009】
塗装層は、噴霧塗装具を表面上で移動させることにより塗布される。この移動は、塗装速度で手動又は自動的に行われてよい。実施形態では、噴霧塗装具を移動させる塗装速度が調整可能なドライブ(駆動部)が設置される。
【0010】
通常、1層以上の塗膜を塗布することにより物体の保護に寄与する。例えば、防食層、色層及び/又は保護ワニス層を塗布する。一般的に、「塗装」という用語は、堆積層に用いられる。
【0011】
「塗料」は、堆積されている組成物、すなわち噴霧前の組成物を識別するために用いられる。通常、水系又は溶剤系塗料組成物、特に水系又は溶剤系ペンキを適用する。塗料の粘度を変化させるために溶剤の水の量を変化させることができる。
【0012】
実施形態では、塗料供給部は、塗料の温度と塗料の粘度を変化させることを可能にするために、塗料供給用の加熱素子を備える。この加熱素子は、塗料の加熱及び冷却の両方に用いることができる。
【0013】
噴霧塗装具は、霧化した塗装粒子を噴霧する。噴霧塗装具は、一般的に、噴霧ノズルを備えており、塗料の分散(dispersion)、例えば、霧状化(nebulize)とも呼ばれる塗液の液滴(drop)への分解(breakup)を容易にし、霧化した塗装粒子の噴霧に吐出する。好ましくは、単一の吐出口を有する噴霧ノズルを適用する。
【0014】
塗料は、固体又は液体であってよい。固体塗料は、例えば、粉末であり、そのため、霧化した塗装粒子は、固体粉末粒子である。液体塗料が比較的高い粘度を有する可能性があるが、本発明のシステムは、粘度の低い液体塗料にも適する。霧化した塗装粒子は、液滴である。また、液体塗料は分散粒子を含むことが考えられる。
【0015】
噴霧室を区画するコンディショニングフードが設置される。コンディショニングフードの形状及び寸法は、噴霧塗装具及び/又は塗装の種類及び/又は物体に合わせて有利に(advantageously)調整される。有利には、噴霧塗装具は、円錐状の噴霧を生成し、コンディショニングフードは、対応する円錐形状を有する。コンディショニングフードは、塗装具装着端を有し、好ましくは、この塗装具装着端で噴霧室を閉塞する。塗装具装着端の反対側には、塗装対象の物体の表面の近傍に配置されるように構成された吐出端が設置される。コンディショニングフードは、少なくとも1つの望ましくない方向への液滴の分散を阻害するように、有利に形成される。
【0016】
実施形態では、コンディショニングフードは、塗装具装着端から吐出端に向かって拡径している。例えば、コンディショニングフードは、略円錐形状を有する。塗装具装着端は、相対的に小さい開口部を有するコンディショニングフードの側にあり、吐出端は、相対的に大きい開口部を有するコンディショニングフードの側にある。この円錐は、吐出端から塗装具が装着可能な架空(fictional)の頂部まで先細になっている。
【0017】
代替の実施形態では、コンディショニングフードは、非テーパ壁を有する略円筒形状である。
【0018】
コンディショニングフードの吐出端は、有利には円形であるが、楕円形又は多角形のベースも考えられる。
【0019】
コンディショニングフードは、3Dプリントされたプラスチックを含む任意の種類の材料から製造することができる。有利には、静電気を除去するための準備がなされている。
【0020】
本発明に係るシステムを用いて塗装を行うために、動作中に、
- 噴霧塗装具は、塗装具装着端に装着され、
- 吐出端は、塗装対象の物体の表面の近傍に配置され、
- 噴霧塗装具は、塗装具から噴霧室及び吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作する。
【0021】
このシステムは、コンディショニングフードの塗装具装着端又は塗装具に連通し、動作中に霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスを供給するように構成されたキャリアガス装置(installation)を含む。
【0022】
キャリアガスは、霧化した塗装粒子を運ぶのに適する。このように固体塗装粒子又は液体塗装液滴がキャリアガス中に懸濁したもの(suspension)は、一般的にエアロゾル、特に、噴霧ジェットエアロゾルと呼ばれている。このようなエアロゾルには、粒子は、1分子1mm (a particle size in the range of a molecule to 1 mm)、特に500nm~200μmの範囲の粒度で存在する。
【0023】
キャリアガスの機能としては、噴霧室からコンディショニングフードの吐出端へ、内側環状ダクトに向かって、ガス抽出装置に向かって残り(residual)の霧化した塗装粒子を運ぶことが考えられる。実施形態では、噴霧塗装具は、霧化した塗装粒子を「無気」(particles ‘airless’)で噴霧することができる。このような実施形態では、噴霧は、ガスアシストによるものではない。
【0024】
実施形態では、キャリアガスは、粒子を噴霧塗装具から物体の表面へ運ぶ際に噴霧を補助してよい。また、キャリアガスは、霧化処理にも寄与することができる。このように、キャリアガスは「霧化ガス」と呼ばれてよい。
【0025】
霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスの利点は、噴霧室を区画するコンディショニングフードの内壁に粒子が付着することを防止することである。これにより、キャリアガスは、噴霧室の壁を遮蔽(shield)する。
【0026】
実施形態では、キャリアガスを噴射するように構成されたキャリアガス噴射装置が設置されている。このような装置は、ガスポンプ、例えば遠心ファンを用いて、加圧されたキャリアガスを噴霧室内に供給してよい。
【0027】
代わりに、キャリアガス装置は、塗装具装着端にある1つ以上の開口部によって形成され、例えば、外気の導入を可能にする。
【0028】
通常、キャリアガスとしては、空気が使用されるが、他のガスも考えられる。これは、例えば、塗料の種類、特に使用される希釈剤又は溶剤の種類に依存する。
【0029】
なお、物体に塗膜を形成する実際の噴霧ジェットは、一次又は主ジェットと呼ばれる場合が多い。「オーバースプレー」という用語は、意図しない場所への塗装粒子の塗布を意味する。
【0030】
主ジェットは、霧化した塗装粒子、必要に応じてキャリアガスを含み、結合剤及び希釈剤又は溶剤を含んでもよい。粒子のみ、場合によっては結合剤は、物体に塗膜を形成する。キャリアガスと場合によっては希釈剤は、表面に付着せず、低圧帯、すなわち噴霧室の外部に移動(move)する。小さい粒子は、相対的に大きい粒子よりもガス流れに追従しやすいことが知られている。そのため、最も小さい霧化した塗装粒子は、オーバースプレーを起こすことになる。つまり、霧化した粒子が小さいほど、オーバースプレーの量が多くなり、転送効率(transfer efficiency)が低くなる。
【0031】
本発明の第2の態様によれば、オーバースプレーに伴う問題は、ペンキ等の霧化した塗布粒子を噴霧する噴霧塗装具を用いて物体の表面を塗装するシステムによって軽減され、このシステムは、
噴霧室を区画するコンディショニングフードであって、
- 塗装具装着端、及び
- 塗装対象の物体の表面の近傍に配置されるように構成された、塗装具装着端とは反対側の吐出端を有し、
動作中には、
- 噴霧塗装具が塗装具装着端に装着され、
- 吐出端が塗装対象の物体の表面の近傍に配置され、
- 噴霧塗装具が塗装具から噴霧室及び吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作する、コンディショニングフードと、
コンディショニングフードの塗装具装着端又は塗装具に連通し、動作中に霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスを供給するように構成されたキャリアガス装置と、を含み、
コンディショニングフードは、3つの同心円状の壁、すなわち、外壁、中間壁及び内壁を有し、内壁は、噴霧室を区画し、外壁及び中間壁は、外側環状ダクトを区画し、中間壁及び内壁は、内側環状ダクトを区画し、
このシステムは、内側環状ダクトに連通し、コンディショニングフードの吐出端の近くの残りの霧化した塗装粒子と共にガスを抽出するように構成されたガス抽出装置(installation)と、
外側環状ダクトに連通し、吐出端で環状ダクトを出る(leave)遮蔽流体(shielding fluid)を外側環状ダクトに噴射することにより、噴霧室を環境から遮蔽するように構成された遮蔽流体噴射装置(installation)と、を更に含む。
【0032】
本発明のこの態様に係るコンディショニングフードの他の利点は、噴霧条件の制御を向上できることである。本発明のコンディショニングフードの構成は、噴霧中に温度及び湿度などの条件を一定のレベルに維持することに寄与する。
【0033】
コンディショニングフードは、同心円状の外壁、中間壁及び内壁を有する。内壁は、噴霧室を区画し、外壁及び中間壁は、外側環状ダクトを区画し、中間壁及び内壁は、内側環状ダクトを区画する。
【0034】
実施形態では、コンディショニングフードの3つの同心円状の壁は、互いに平行に設置される。環状ダクトは、コンディショニングフードの全長に亘って同じ幅を有してよい。しかしながら、他の構成も考えられる。例えば、外壁の形状は、円錐状の内壁と組み合わせて円筒状であってよい。中間壁は、円筒状又は円錐状であってよい。このような実施形態では、3つの同心円状の壁のうちの2つの壁のみが互いに平行である。
【0035】
実施形態では、同心円状の壁の間の距離は、調整可能である。
【0036】
コンディショニングフードは、噴霧塗装具が3つの同心円状の壁のうちの内壁のみに対して塗装具装着端に装着されるように構成されてよい。
【0037】
コンディショニングフードの3つの同心円状の壁は、塗装対象の物体の表面まで同じ距離を有することが考えられる。しかしながら、内壁と表面との間の距離dは、外壁と表面との間の距離dと異なる可能性がある。中間壁と表面との間の距離dは、外壁と表面との間の距離d、及び内壁と表面との間の距離dと同じであってもよし、これらとは異なってもよい。
【0038】
或いは、コンディショニングフードの上述した距離d、d及びdは、噴霧塗装具の動作の前に、塗装処理に合わせて選択されるか又は調整されてよい。
【0039】
コンディショニングフードの上述した距離d、d及びdの1つ以上は、噴霧中に、例えば中央制御システムにより、コンディショニングフードに設置された粒子センサーからの入力データに基づいて能動的(actively)に調整されることも考えられる。
【0040】
実施形態では、物体の表面と噴霧室を区画する内壁との間の距離を調整する噴霧室調整機構は、コンディショニングフードの吐出端に設置される。或いは、物体の表面と内壁との間の距離dを小さくすることによりオーバースプレーの量を低減してよい。距離dを最適値よりも小さくすることによりオーバースプレーの量が増加することも考えられる。
【0041】
実施形態では、物体の表面と少なくとも外側の同心円状の壁との間の距離dを調整する外壁調整機構は、コンディショニングフードの吐出端に設置される。外壁は、コンディショニングフードの吐出端、特に内側環状ダクト及び噴霧室を機械的に遮蔽する。
【0042】
有利には、中央制御システムは、粒子センサー及び外壁調整機構と通信可能に接続されて、粒子センサーからの入力データに基づいて距離dを調整することにより塗装処理を制御する。
【0043】
或いは、外側環状ダクトと物体の表面との間の距離dを調整することを可能にするために、中間壁調整機構も設置される。有利には、中央制御システムは、粒子センサー及び中間壁調整機構と通信可能に接続されて、粒子センサーからの入力データに基づいて距離dを調整することにより塗装処理を制御する。
【0044】
内側環状ダクトに連通するガス抽出装置は、ガス、場合によっては揮発性有機化合物などの希釈剤又は溶剤、及びコンディショニングフードの吐出端の近くの、特に噴霧室の近くの残りの霧化した塗装粒子を抽出する。残りの霧化した塗装粒子を抽出することによりオーバースプレーが最小化される。有利には、ガスから残りの塗装粒子を濾過するために、1つ以上のフィルタは、内側環状ダクト及び/又はガス抽出装置内に適用される。濾過後に、ガスを再利用のためにリサイクルされるか又は周囲(environment)に放出される。
【0045】
実施形態では、ガス抽出装置は、ガスポンプ、例えば遠心ファンを用いて部分真空を形成する。このような真空により、キャリアガスが噴霧室から吸引される。このような実施形態では、キャリアガス装置は、ポンプを用いて加圧されたキャリアガスを供給することではなく、例えば塗装具装着端の開口部を介してキャリアガスを供給するという点で受動的である。
【0046】
代替の実施形態では、加圧されたキャリアガスを噴霧室内に供給するために、能動的に動作するキャリアガス噴射装置が設置されることが考えられる。このような実施形態において、ガス抽出装置は受動的であることが考えられる。
【0047】
遮蔽流体噴射装置は、遮蔽流体を噴射する。遮蔽流体は、液体、ガス又はプラズマによって形成することができる。実施形態では、遮蔽ガスとして空気が用いられる。
【0048】
或いは、空気は、その中の汚染物質を除去するように浄化又は清浄化される。汚染物質としては、全ての種類の粒子であるが、COなどのガスを含んでよい。遮蔽流体は、外部の空気流れが噴霧処理を阻害することを防止する。実施形態では、遮蔽流体噴射装置は、ポンプ、例えば遠心ファンを用いて、遮蔽流体、好ましくは加圧された遮蔽流体を供給する。
【0049】
遮蔽流体は、実際の粒子噴霧の前処理又は後処理を提供するという点で、塗装に寄与することも考えられる。遮蔽流体は添加剤を含むことが考えられる。代わりに又は追加的に、遮蔽流体は、塗装処理、すなわち塗膜の固化、乾燥、硬化に影響を与える温度又は組成物を有する。また、遮蔽流体は、堆積された塗装層上のゴミの除去、すなわち吹き飛ばし(blow away)にも役立つ。塗装対象の物体の表面を予備加熱することも有利である。
【0050】
この点において、外側環状ダクトは、後端部から物理的に分離された先頭部(leading part)を含み、前処理に有利な遮蔽流体が先頭部に入り、後処理に有利な遮蔽流体が後端部(trailing part)に入ることを可能にすることが考えられる。
【0051】
また、本発明は、上述したシステムを利用して、霧化した塗装粒子を噴霧する噴霧塗装具を用いて物体の表面を塗装する方法に関し、この方法は、
- 噴霧塗装具を塗装具装着端に装着するステップと、
- 吐出端を塗装対象の物体の表面の近傍に配置するステップと、
- 噴霧塗装具が塗装具から噴霧室及び吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作させるステップと、を含む。
【0052】
本発明の第1の態様によれば、オーバースプレーに伴う問題は、ペンキ等の霧化した塗装粒子を噴霧する噴霧塗装具を用いて物体の表面を塗装するシステムによって軽減され、このシステムは、
塗装具に連通し、塗料流量を設定する塗料ポンプを含む塗料供給部と、
噴霧室を区画するコンディショニングフードであって、
- 塗装具装着端、及び
- 塗装対象の物体の表面の近傍に配置されるように構成された、塗装具装着端とは反対側の吐出端を有し、
動作中には、
- 噴霧塗装具が塗装具装着端に装着され、
- 吐出端が塗装対象の物体の表面の近傍に配置され、
- 噴霧塗装具が塗装具から噴霧室及び吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作する、コンディショニングフードと、
コンディショニングフードの塗装具装着端又は塗装具に連通し、動作中に霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスを供給するように構成されたキャリアガス装置と、を含み、
該システムは、
コンディショニングフード内、例えば噴霧室内に設置され、粒度分布(particle size distribution)及び/又は粒子密度を検出する粒子センサーと、
粒子センサー及び塗料供給部及び/又はキャリアガス装置と通信可能に接続されて、塗料流量などの粒子センサーからの入力データに基づいて塗装処理を制御する中央制御システムと、を更に含む、ことを特徴とする。
【0053】
本発明に係るシステムの重要な利点は、塗装品質を向上させることである。
【0054】
粒子センサーは、一般的に入手可能なセンサーであってよい。粒子センサーは、位相ドップラー式粒子分析計のような光学式センサーであってもよい。最小粒子のオーバースプレーを減少させるために、粒度分布を検出する粒子センサーを設置することが望ましい。粒度分布は、一般的に、質量などの基準で大きさに応じて存在する粒子の相対量を規定する値のリストである。
【0055】
また、粒子の量、特に粒子密度又は粒子の濃度を検出することは有用である。
【0056】
有利には、粒子センサーは、スプレー式粒子センサーである。この粒子センサーは、噴霧中に霧化した塗装粒子の速度を検出してもよい。
【0057】
中央制御システムは、塗装処理を制御し、特に、粒子センサーからの入力データに基づいて、オーバースプレーを低減し、塗装処理の効率及び品質を向上させるために設置される。中央制御システムは、塗装速度が上がるか又は塗膜の固化が最適となるように塗装処理を制御することも考えられる。
【0058】
噴霧塗装具と、粒度分布、濃度との間には関係があることが一般的に知られている。よって、粒子センサーからの入力データに基づいて噴霧塗装具を制御することが知られている。
【0059】
本発明の第1の態様によれば、中央制御システムは、塗料供給部、コンディショニングフード及び/又はキャリアガス装置と通信可能に接続されている。
【0060】
中央制御システムが塗料供給部と通信可能に接続されている場合に、粒子センサーからの入力データに基づいて塗料流量を制御することができる。例えば、平均粒度が小さすぎると、塗布流量を増加させる。
【0061】
実施形態では、塗料供給部は、塗料を加熱及び/又は冷却する加熱素子を更に含み、塗料の温度は、粒子センサーの入力に基づいて制御される。例えば、平均粒度が小さすぎると、塗料の温度を低下させ、粘度を上昇させる。
【0062】
中央制御システムがキャリアガス装置と通信可能に接続されている場合に、粒子センサーからの入力データに基づいてキャリアガスの供給を制御することができる。例えば、小粒子が多いと、キャリアガス速度の量を減少させる。キャリアガス装置が塗装具装着端にある1つ以上の開口部によって形成される実施形態では、開口部を増大させるか又は開口部の数を増加させることが考えられる。
【0063】
キャリアガス装置がキャリアガスを噴霧室に噴射するガス流量を設定するキャリアガスポンプを含む実施形態では、中央制御システムは、キャリアガスポンプと通信可能に接続されて、粒子センサーからの入力データに基づいてガス流量を制御してよい。例えば、平均粒度が大きすぎると、キャリアガス流量を増加させる。或いは、小粒子が多いと、キャリアガス流量を減少させる。これにより、塗装表面の品質が明確になる。
【0064】
実施形態では、キャリアガス装置は、キャリアガスの湿度を調整する保湿剤を備える。有利には、キャリアガスの湿度は、粒子センサー及び/又は湿度センサーの入力に基づいて制御される。
【0065】
実施形態では、キャリアガス装置は、キャリアガスの温度を調整する加熱素子を含む。有利には、キャリアガスの温度は、粒子センサーの入力に基づいて制御される。
【0066】
実施形態では、コンディショニングフードは、環状ダクトと環状ダクトの内部の噴霧室とを区画する2つの同心円状の壁を有し、ガス抽出装置は、環状ダクトに連通し、コンディショニングフードの吐出端の近くの残りの霧化した塗装粒子と共にガスを抽出するように構成される。好ましくは、ガス抽出装置は、抽出率(抽出速度、extraction rate)を設定するポンプを含む、このような実施形態では、粒子センサーの入力に基づいて抽出率を制御することができる。
【0067】
実施形態では、コンディショニングフードの内側環状ダクト又はガス抽出装置には、粒子センサーを含むフィルタが設置される。有利には、この粒子センサーは、中央制御システムと通信可能に接続されて、このセンサーの入力データに基づいて塗装処理を制御することができる。
【0068】
実施形態では、塗装層を塗布するために、噴霧塗装具を移動させる塗装速度が調整可能なドライブが設置される。有利には、このドライブは、中央制御システムと通信可能に接続されて、塗装速度を制御することにより塗装処理を制御することができる。
【0069】
そのため、コンディショニングフードに設置された粒子センサーは、噴霧室内に設置されてよく、及び/又はガス抽出処理に関連する粒子センサーは、コンディショニングフードの環状ダクト内に設置されてよい。
【0070】
実施形態では、コンディショニングフードの外部には、追加の外部粒子センサーが設置される。このような外部センサーは、環境中に存在する粒子を検知するために用いられ、参照に用いることができる。
【0071】
粒子センサーのいずれか一方又は両方が中央制御システムと通信可能に接続されていることは、本発明の範囲にある。
【0072】
実施形態では、コンディショニングフードは、3つの同心円状の壁、すなわち、外壁、中間壁及び内壁を有し、内壁は、噴霧室を区画し、外壁及び中間壁は、外側環状ダクトを区画し、中間壁及び内壁は、内側環状ダクトを区画する。ガス抽出装置は、内側環状ダクトに連通し、コンディショニングフードの吐出端の近くの残りの霧化した塗装粒子と共にガスを抽出するように構成され、好ましくは抽出率を設定するポンプを含む。遮蔽流体噴射装置は、外側環状ダクトに連通し、吐出端で環状ダクトを出る(leave)遮蔽流体を外側環状ダクトに噴射することにより、噴霧室を環境から遮蔽するように構成され、好ましくは遮蔽流体の圧力を設定する遮蔽流体ポンプを含む。ガス抽出率は、粒子センサーの入力に基づいて制御され、及び/又は遮蔽流体の圧力は、粒子センサーの入力に基づいて制御される。
【0073】
実施形態では、物体の表面と噴霧室を区画するコンディショニングフードとの間の距離dを調整する噴霧室調整機構は、コンディショニングフードの吐出端に設置され、距離dは粒子センサーの入力に基づいて制御される。中央制御システムは、粒子センサー及び噴霧室調整機構と通信可能に接続されて、粒子センサーからの入力データに基づいて距離dを調整することにより塗装処理を制御する。例えば、小粒子が多すぎると、小粒子の量を減少させる方法として、距離を短くする。
【0074】
一般的に、塗装対象の物体の表面が溶接部を有する場合に、コンディショニングフードと該表面との距離dは、少なくとも10mmである。
【0075】
実施形態では、物体の表面と少なくとも外側の同心円状の壁との間の距離dを調整する外壁調整機構は、コンディショニングフードの吐出端に設置される。外壁は、コンディショニングフードの吐出端、特に内側環状ダクト及び噴霧室を機械的に遮蔽する。
【0076】
或いは、外側環状ダクトと物体の表面との間の距離dを調整することを可能にするために、中間壁調整機構も設置される。
【0077】
例示的な実施形態では、圧力、温度及び照明などの噴霧室の条件を制御することができる。有利には、このような噴霧室の条件は、粒子センサーに基づいて制御される。
【0078】
また、噴霧室内に設置された粒子センサーの他に、温度センサー及び/又は湿度センサーが、例えば噴霧室内に設置されることも考えられ、該温度センサー及び/又は湿度センサーも中央制御システムと通信可能に接続されてこれらの入力データに基づいて塗装処理を制御することができる。
【0079】
本発明は、また、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステムを利用して、霧化した塗装粒子を噴霧する噴霧塗装具を用いて物体の表面を塗装する方法に関する。この方法は、
- 噴霧塗装具を塗装具装着端に装着するステップと、
- 吐出端を塗装対象の物体の表面の近傍に配置するステップと、
- 噴霧塗装具が塗装具から噴霧室及び吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を該物体の表面に噴霧するように動作させ、噴霧塗装具の動作中に粒度及び/又は粒子密度を検出するステップと、
- 粒子センサーのデータに基づいて塗料流量及び/又はキャリアガス流量を制御するステップと、を含む。
【0080】
本開示の態様は本発明に適用されることが有利であり、逆も同様である。本開示の両方の態様は、単独で適用されてもよいし、組み合わせて適用されてもよい。図面を参照して本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】従来技術に係る塗装システムを概略的に示す。
図2】本発明の第2の態様に係る塗装システムを概略的に示す。
図3】本発明の第1の態様に係る塗装システムを概略的に示す。
図4】本発明の第1の態様に係る塗装の代替システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図1は、ペンキなどの霧化した塗装粒子10を物体3の表面3aに噴霧する噴霧塗装具2を用いて塗装するシステム1を示す。見えるように、風8などの外部要因はオーバースプレー11を引き起こす。
【0083】
一般的に、噴霧塗装具2と表面との距離が5~10cmである場合、外部要因による影響が最も少なくなる。距離が大きいほど、表面に付着した塗装粒子の転送効率が著しく低下する。
【0084】
表面に効果的に付着して塗膜を形成するための霧化した塗装粒子の最適な粒度は、塗料の種類によっては、最大10~15%外れて(deviate)よい。
【0085】
一般的に、塗料の種類によって、関連する噴霧塗装具及びノズルが決定される。
【0086】
図2は、本発明に係るシステム1を示す。図示されるシステム1は、ペンキなどの霧化した塗装粒子10を噴霧する噴霧塗装具2を用いて物体3の表面3aを塗装する。このシステムは、噴霧室5を区画するコンディショニングフード20を含む。
【0087】
本発明のシステムでは、噴霧塗装具2と表面との間の距離は、小さい表面の場合に約10cmであり(~10cm for smaller surfaces)、大きい塗装対象の物体の場合に最大30cmまで増加することができる。
【0088】
このコンディショニングフードは、
- 塗装具装着端21を有し、場合によって、この塗装具装着端で噴霧室を閉塞し、
- 塗装対象の物体の表面の近傍に配置されるように構成された、塗装具装着端とは反対側の吐出端22を有する。
【0089】
動作中に、
- 噴霧塗装具は、塗装具装着端に装着され、
- 吐出端は、塗装対象の物体の表面の近傍に配置され、
- 噴霧塗装具は、塗装具から噴霧室及び吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作する。
【0090】
このシステムは、コンディショニングフードの塗装具装着端21又は塗装具に連通し、動作中に霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスを供給するように構成されたキャリアガス装置30を更に含む。
【0091】
本発明の第2の態様に係る図示のコンディショニングフード20は、3つの同心円状の壁、すなわち、外壁25、中間壁26及び内壁27を有し、内壁は、噴霧室5を区画し、外壁及び中間壁は、外側環状ダクト28を区画し、中間壁及び内壁は内側環状ダクト29を区画する。
【0092】
本発明のシステムは、内側環状ダクト29に連通し、コンディショニングフードの吐出端の近くの残りの霧化した塗装粒子と共にガスを抽出するように構成された、概略的に示されるガス抽出装置35を更に含む。
【0093】
更に、このシステムは、外側環状ダクト28に連通し、吐出端で環状ダクトを出る遮蔽流体を外側環状ダクトに噴射することにより、噴霧室を環境から遮蔽するように構成された遮蔽流体噴射装置40を含む。
【0094】
図3及び図4は、本発明の第1の態様に係る塗装システム1を示す。システム1は、ペンキなどの霧化した塗装粒子10を噴霧する噴霧塗装具2を用いて物体3の表面3aを塗装するシステムである。このシステムは、塗装具2に連通する塗料供給部6を含む。塗料供給部6は、塗料流量を設定する塗料ポンプ(詳細は図示せず)を含む。
【0095】
このシステムは、図2に示されるフード又は従来技術から知られているコンディショニングフードなど、噴霧室5を区画するコンディショニングフード(図示せず)を更に含む。
【0096】
コンディショニングフードは、塗装具装着端と、塗装対象の物体の表面の近傍に配置されるように構成された、塗装具装着端とは反対側の吐出端と、を有する。動作中に、
- 噴霧塗装具2は、塗装具装着端に装着され、
- 吐出端は、塗装対象の物体の表面の近傍に配置され、
- 噴霧塗装具は、塗装具噴霧室及び吐出端を通って移動する霧化した塗装粒子を塗装対象の物体の表面に噴霧するように動作する。
【0097】
塗料供給部6を塗装具2に連通させるステップは、個別のステップであってよい。
【0098】
このシステムは、キャリアガス装置30を更に含む。動作中に、キャリアガス装置は、コンディショニングフードの塗装具装着端又は塗装具2に連通し、動作中に霧化した塗装粒子を運ぶキャリアガスを供給するように構成される。図4に示される実施形態では、抽出率を設定するポンプ38と、フィルタ37と、図2に詳細に示されたコンディショニングフードの2つの同心円状の壁(図示せず)によって区画された環状ダクト29内に設置された粒子センサー36と、を含むガス抽出装置35が概略的に示される。
【0099】
本発明の第1の態様に係るシステムでは、コンディショニングフードには、粒度分布及び/又は粒子密度を検出する粒子センサーが設置される。図3には、粒子センサー23は噴霧室内に設置される。図4の実施形態では、粒子センサー36は、環状ダクト29内に設置される。
【0100】
本発明の第1の態様によれば、粒子センサー23、36及び塗料供給部6及び/又はキャリアガス装置30と通信可能に接続されて、塗料流量などの粒子センサーからの入力データに基づいて塗装処理を制御する中央制御システム45が設置される。
【0101】
粒子センサーからの入力データに基づいて制御できるパラメータの例としては、
- 噴霧塗装具2と物体の表面3aとの距離d
- 噴霧室27を区画する内壁と物体の表面3aとの間の距離d
- 中間壁26と物体の表面3aとの間の距離d、外壁25と物体の表面3aとの間の距離d
塗料流量、
- キャリアガス噴射ポンプの制御及び/又はガス抽出ポンプの制御などによるキャリアガス流量、
- 塗料とキャリアガスとの比率、
- 水又は溶剤の添加又は塗料の温度の制御などによる塗料の粘度、
- 噴霧室5内の温度、
噴霧室5内の湿度が挙げられる。
【0102】
図4の実施形態では、中央制御システム45は抽出装置のポンプ38と通信可能に接続されていることも考えられる。

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】