(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】多重流れベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/344 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
F04C2/344 331J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570415
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 DE2020200101
(87)【国際公開番号】W WO2021098921
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】102019218034.5
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520361450
【氏名又は名称】ハンオン システムズ エーエフペー ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーゼル,ティロ
(72)【発明者】
【氏名】ベルグ,セルゲイ
【テーマコード(参考)】
3H040
【Fターム(参考)】
3H040AA03
3H040BB05
3H040BB11
3H040CC10
3H040DD06
3H040DD23
3H040DD28
(57)【要約】
【課題】騷音発生及び/または摩耗を改善できる多重流れベーンポンプを提供する。
【解決手段】本発明の多重流れベーンポンプ(10)は、作動中に実際に同じ圧力が支配する、ローター(30)の回転方向に沿って形成された2つ以上の地点に開口(28)を有し、前記地点の開口(28)は、流入口(16)と流出口(20)から離隔されており、前記地点の開口(28)は、油圧式で互いに連結される連結部(26)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重流れベーンポンプであって、
作動中に実際に同じ圧力が支配する、ローターの回転方向に沿って形成された2つ以上の地点に開口を備え、前記開口は流入口と流出口から離隔され、前記開口が油圧式で互いに連結される連結部を備えることを特徴とする多重流れベーンポンプ。
【請求項2】
開口、特にボア及び/またはグルーブ形態の1つ以上の連結部が前記ローター及び/またはハブリング及び/または1つ以上の側板内に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の多重流れベーンポンプ。
【請求項3】
2つ以上の開口またはグルーブがローター軸から同じ間隔を有することを特徴とする請求項2に記載の多重流れベーンポンプ。
【請求項4】
1つ以上のボア(bore)またはグループが放射状に形成されるか、1つ以上の開口が軸方向に形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の多重流れベーンポンプ。
【請求項5】
1つ以上のボア、開口またはグループが線形に形成されることを特徴とする請求項4に記載の多重流れベーンポンプ。
【請求項6】
1つ以上の連結部が円周方向に少なくとも部分的に延びることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の多重流れベーンポンプ。
【請求項7】
1つ以上の連結部がピンを囲んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の多重流れベーンポンプ。
【請求項8】
1つ以上の側板が蓋で閉まっていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の多重流れベーンポンプ。
【請求項9】
ポンプがポート状のハウジングで構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の多重流れベーンポンプ。
【請求項10】
1つ以上の連結部が積層製造方法によって生産されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の多重流れベーンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多重流れベーンポンプ(multi-flow vane pump)に関する。
【0002】
ベーンポンプは、例えば、自動車分野で油圧流体、特にオイルを移送するための動力操向ポンプまたはギアポンプ(power steering pump or gear pump)として用いられる。
【背景技術】
【0003】
ベーンポンプは、例として西独国特許出願公開第1553283号明細書(特許文献1)を挙げることができる。このベーンポンプには、ローターの軸から最小距離地点とローターの軸から最大距離地点間に油圧連結部を有する。また、米国特許第9366251号明細書(特許文献2)は、多重流れベーンポンプに関するもので、ポンプが通常対称的に形成される。即ち、ローター軸の周囲に各1つの吸入領域と流出領域を有する複数のポンプが配置される。その結果、ポンプの油圧及び機械的力(そして少なくとも理論的にはせん断力)が補償される。そしてこのような力がローター、ローターのシャフトまたは周辺ハブリング(hub ring)に対して発生しない。しかしながら、実際の製造の公差は、部品とそれらの構造が対称にならない。このため、作動中に非対称的な圧力を生成し、非対称的な力を発生させる。類似の現象は移送されたオイルに気泡があるか吸入領域にオイルが異なるように供給される場合にも発生する。力の側面でこのような不均衡(imbalance)の結果、騷音発生及び摩耗が増加する。今まで、このような問題は、圧力変動を少ない水準に維持し、比較的限定された公差及び/または圧力出口上でのノッチング(notching)により阻止されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】西独国特許出願公開第1553283号明細書
【特許文献2】米国特許第9366251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、騷音発生及び/または摩耗を改善できる多重流れベーンポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、請求項1に記載された多重流れベーンポンプにより解決される。本発明による多重流れベーンポンプは、作動中に実際に同じ作動圧力が支配する、ローターの回転方向に沿って形成された少なくとも2つの地点が、流入口及び流出口から離隔されて、油圧式で互いに連結されたことを特徴とする。
【0007】
本発明による多重流れベーンポンプは、それぞれ複数の流入口及び流出口を互いに連結する多重流れまたは多重ハブベーンポンプであり、通常的なポンプとは異なる。本発明によれば、ベーンポンプ内部で領域は油圧式で互いに連結されており、この時、前記領域は少なくとも理論的には同じセル圧力を有し流入口及び流出口から離隔されている。その結果、同様に常に引起こされる圧力側面での不均衡が少なくとも部分的に補償されて対等になる。それにより騷音発生及び摩耗を有利に減少させることができる。
【0008】
本発明による多重流れベーンポンプは、経済的でコストを有利にすることが可能である。本発明による多重流れベーンポンプの流れの数は任意であり、特に二重、三重、四重または多重流れベーンポンプであることができる。二重、四重または他の偶数流れベーンポンプの場合、対角線に向き合って置かれたセルが連結されており、そして三重または五重流れポンプの場合は、例えば、120°または72°程度、そして全ての場合に円周方向で同じ間隔で互いに離隔されたセルがある。
【0009】
好ましくは、ローター及び/またはハブリング及び/または少なくとも1つの側板内に開口、特にボア及び/またはグルーブ形態になっている油圧連結部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
ハブリング内には側板により金属で密封される適したグルーブを挿入できる。また、側板内には開口が形成できる。例えば、ドリルリングされるか付加的な製造方法で形成できる。本発明による油圧連結部を生成するために、ローター内に開口を形成するには、同じ製造方法が適する。これは特に、作動中に理論的には同じ圧力が存在する全てのセル間でまたはこれらセルのうち多数だけを連結して形成できる。ローター内に開口などを形成する場合は、本発明による連結部が常に存在する長所がある一方、ハブリングまたは側板内に開口を形成する場合は、油圧連結のために提供された開口を経る時にポンプベーンにより連結部の中断が発生する。しかし、このような点は本発明による効果に大した影響を及ぼさない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、2つ以上の開口またはグルーブが、ローター軸から同じ距離にある場合、特に広範囲に用いることができる。その結果、製造が簡略化できる。特に、線形に形成された場合、放射的に拡張された1つ以上のボアまたは溝及び/または1つの軸方向の開口に対して特に優れた機能性と製造性が期待される。他の使用事例では、特にストロークリングで拡張されて最小限部分的に円周方向に構成された連結部を通じてローターと側板の弱化を有利に防止することができる。この場合、1つ以上の連結部がピンを囲むように設計された場合、より多くの空間を要しない。ポンプが側板を閉める蓋及び/又は基本的にポート状のハウジングで構成される場合、発明によるポンプの取り扱い及び組み立てにおいてさらに有利である。積層製造方法は発明によって連結を形成する比較的複雑な形態の形成と関してさらに多くの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によるポンプの第1実施形態を有する油圧概略図である。
【
図2】本発明によるポンプの第2実施形態の断面図である。
【
図4】本発明によるポンプの第3実施形態の断面図である。
【
図5】本発明によるポンプの第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、二重(複流式)ベーンポンプ(10)は、貯蔵槽(12)から油圧流体を移送する。このために、2つのライン(14)がそれぞれの吸入領域または流入領域(16)で形成されており、そして類似の方式でそれぞれの流出領域(20)から2つのライン(18)が延長されて、これらライン(18)は互いに連結されている。
【0014】
図1のベーンポンプ(10)の構造を、
図3を参照して説明する。
図1では、流入口(16)と流出口(20)から離隔されておりポンプの二重設計によって直径が向き合って置かれた領域またはセルは示される連結部(26)により油圧式で互いに連結されている。このため、
図3に示すように側板内に開口(28)が形成されている。回転方向はローター領域に矢印で表示している。
【0015】
図2は、
図1とは異なり、三重流れベーンポンプ(10)が図示される。前記ポンプはスロット(32)を有するローター(30)を含み、前記スロット内には各1つのベーン(34)が半径方向に移動可能に収容されている。三重流れ形成に相応するように
図2の実施形態は3つの流入口(16)と3つの流出口(20)を有する。これらは公知となった方式でハブリング(36)内に形成されている。
図1に図示される実施形態によれば、流出口(16)と流出口(18)から離隔されて、理論的に同じ圧力が存在する地点にはこれらを油圧式で連結するための開口(28)が提供されている。
図2に示されるベーンポンプの三重流れ設計によれば、このような開口(28)は120°だけ互いに離隔されている。また、開口がローター軸から同じ距離を有することが好ましい措置に示される。
図3から分かるように、
図1に示される連結部(26)は放射線で延びる溝の形態に側板(40)のうち1つに構成されて、2つの開口(28)を互いに連結する。溝と共に提供される側板(40)は蓋(42)によって閉まり、蓋(42)は基本的に側板(40)、ローター(30)及びストロークリング(36)と共にポート状のハウジング(44)に収容される。
図2に示される3つの流量ポンプには表示されていないが、発明による連結部はローター(30)またはストロークリング(36)の放射状連結部の形態に構成されることができる。下記の説明のように、3つのセル間の円周方向に拡張される連結部の形態は、
図4、5に示されているベーンセルポンプに図示される。
【0016】
図4には、
図1の実施形態と類似のベーンポンプ(10)を図示する。
図4の場合は、ローター(30)、そして特にローターのシャフト(38)に前述の圧力補償のための連結部(26)が形成されている。好ましく連結部(26)は直線型貫通ボアとして設計されている。全てのセル領域にわたって完全な圧力補償のためには、各セルの対に対して連結部が繰り返されなければならない。
【0017】
図5では最後に、連結部(26)がハブリング(36)内に形成された追加実施形態が示される。
図5に示すように、連結部(26)はハブリング(36)の外部輪郭に同心で広いコースにわたって遂行され、短い放射状連結部によりポンプの各セルと連結されている。
【符号の説明】
【0018】
10 多重流れベーンポンプ
14 ライン
16 流入口
18 ライン
20 流出口
26 連結部
28 開口
30 ローター
32 スロット
34 ベーン
36 ハブリング
38 シャフト
【国際調査報告】