(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(54)【発明の名称】泌尿器系がんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20220720BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220720BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220720BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220720BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220720BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P13/08
A61P35/00
A61K9/06
A61K45/00
A61K31/7068
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570824
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 US2020035140
(87)【国際公開番号】W WO2020243442
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521518068
【氏名又は名称】キューイーディー セラピューティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QED THERAPEUTICS,INC.
【住所又は居所原語表記】75 Federal Street,San Francisco,CA 94107,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パニクッチ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】アランジョ,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ベルマン,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】モンティス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ソイファー,ハリス
(72)【発明者】
【氏名】リー,ガング
(72)【発明者】
【氏名】ダブコウスキ,カール
(72)【発明者】
【氏名】マルリーニー,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C084AA19
4C084MA56
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086EA17
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA67
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
(57)【要約】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、それを必要とする患者の管上部尿路上皮癌を治療する方法。たとえば、少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合を伴う管上部尿路上皮癌を有するそれを必要とする患者を治療する方法であって、(i)患者からサンプルを入手し、(ii)少なくとも1つのFGFR3変異、遺伝子再配列または遺伝子融合の存在についてサンプルを分析し、(iii)有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与し、前記有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩は、ネオアジュバント療法として投与する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、それを必要とする患者の管上部尿路上皮癌を治療する方法。
【請求項2】
管上部尿路上皮癌が、浸潤性管上部尿路上皮癌である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
管上部尿路上皮癌が、非浸潤性管上部尿路上皮癌である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者がシスプラチンベースの化学療法による治療に適格ではない請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
患者が以前にシスプラチンベースの化学療法を投与されたが、癌腫が残存している請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、腎尿道切除術または遠位尿道切除術の後に行われる請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することが、それを必要とする患者に有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することによって膀胱の尿路上皮癌を治療することと比較して、上部管の尿路上皮癌の治療においてより大きな有効性を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含み、患者が以前に腎尿道切除術、遠位尿道切除術または膀胱切除術を受けたことがある、それを必要とする患者の尿路上皮癌を治療する方法。
【請求項9】
尿路上皮癌が、浸潤性管上部尿路上皮癌または膀胱の尿路上皮癌である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
尿路上皮癌が、非浸潤性管上部尿路上皮癌または膀胱の尿路上皮癌である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
患者がシスプラチンベースの化学療法による治療に適格ではない請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
患者が以前にシスプラチンベースの化学療法を投与されたが、癌腫が残存している請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を1日1回経口投与することを含む請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することが、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を1日1回患者に3週間連続投与し、1週間インフィグラチニブを投与しない28日間サイクルを含む請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、100mgの単位用量および25mgの単位用量として提供する請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、単位用量として提供する請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、局所投与によって患者に投与する請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
尿路上皮癌が、組織学的または細胞学的に確認されている請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
尿路上皮癌が、FGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合を有する請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
尿路上皮癌が、FGFR3変異を有する請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
FGFR3変異が、FGFR3 R248C、FGFR3 S249C、FGFR3 G372C、FGFR3 A393E、FGFR3 Y375C、FGFR3 K652M / T、FGFR3 K652E/Q及びそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
それを必要とする患者における非筋肉浸潤性膀胱癌を治療するための方法であって、
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与し、前記患者は、別の治療の前の投与後に非筋肉浸潤性膀胱癌の再発を有する方法。
【請求項23】
別の治療法の以前の投与が、非筋肉浸潤性膀胱癌の治療法である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
別の治療の以前の投与が、免疫療法剤の投与である請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
免疫療法剤の以前の投与が、カルメットゲラン菌を含むレジメンである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
非筋肉浸潤性膀胱癌が、FGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合を有する請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
非筋肉浸潤性膀胱癌が、FGFR3突然変異を有する請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
FGFR3変異が、FGFR3 K650E、FGFR3 S249C、FGFR3 R248C、FGFR3 Y375C、FGFR3 G372C、FGFR3 S373C、FGFR3 A393E、FGFR3 A371A、FGFR3 I378C、FGFR3 379およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
非筋肉浸潤性膀胱癌が、FGFR3遺伝子融合を有する請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
FGFR3遺伝子融合が、FGFR3遺伝子融合パートナーTACC3を含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を1日1回経口投与することを含む請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することが、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を1日1回患者に3週間連続投与し、1週間インフィグラチニブを投与しない28日間サイクルを含む請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、100mgの単位用量および25mgの単位用量として提供する請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、単位用量として提供する請求項31または32に記載の方法。
【請求項35】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、経口投与によって患者に投与する請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、局所投与によって患者に投与する請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、患者の膀胱内に投与する請求項36に記載の方法。
【請求項38】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、制御放出の移植可能なデバイスを患者の膀胱に挿入することによって送達する請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、制御放出の移植可能なデバイスを患者の尿管に挿入することによって送達する請求項36または37に記載の方法。
【請求項40】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、制御放出の移植可能なデバイスを患者の腎盂に挿入することによって送達する請求項36または37に記載の方法。
【請求項41】
制御放出の埋め込み型デバイスが、超弾性ワイヤーフォームを含むデュアルルーメンシリコンチューブである請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
制御放出の移植可能なデバイスがゲルである請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
有効量の第2の治療薬を患者に投与することをさらに含む請求項22~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
有効量の第2の治療薬を、局所投与によって患者に投与する請求項43に記載の方法。
【請求項45】
有効量の第2の治療薬を、患者の膀胱内に投与する請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
第2の治療薬が、ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩である請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含み、有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩がネオアジュバントとして投与する、それを必要とする患者の管上部尿路上皮癌を治療する方法。
【請求項48】
管上部尿路上皮癌がFGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合を有する請求項47に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合を伴う管上部尿路上皮癌を有するそれを必要とする患者を治療する方法であって、
(i)患者からサンプルを入手し、
(ii)少なくとも1つのFGFR3変異、遺伝子再配列または遺伝子融合の存在についてサンプルを分析し、
(iii)有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与し、
前記有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩は、ネオアジュバント療法として投与する、方法。
【請求項50】
尿路上皮癌がFGFR3突然変異を有する請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
FGFR3変異が、FGFR3 R248C、FGFR3 S249C、FGFR3 G372C、FGFR3 A393E、FGFR3 Y375C、FGFR3 K652M / T、FGFR3 K652E/Qおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項50に記載の方法。
【請求項52】
管上部尿路上皮癌が、低悪性度の管上部尿路上皮癌である請求項47~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
管上部尿路上皮癌が、高悪性度の管上部尿路上皮癌である請求項47~51に記載の方法。
【請求項54】
患者がシスプラチンベースのネオアジュバント化学療法療法による治療に適格ではない請求項47~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を1日1回経口投与することを含む請求項47~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することが、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を1日1回患者に3週間連続投与し、1週間インフィグラチニブを投与しない28日間サイクルを含む請求項47~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、2回の連続する28日サイクルの間、患者に投与する請求項56に記載の方法。
【請求項58】
約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、100mgの単位用量および25mgの単位用量として提供する請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
約125mgのインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、単位用量として提供する請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を、局所投与によって患者に投与する請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
術前補助療法を開始してから8週間以内に腎尿道切除術または尿道切除術を受ける患者をさらに含む請求項47~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を用いて管上部尿路上皮癌の治療のために患者を特定する方法であって、
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られたサンプルを試験して、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、
ここで、ベースライン遺伝子発現測定と比較した少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出は、治療のための患者の立候補を示し、ベースライン遺伝子発現測定は、有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与前に患者で測定された遺伝子発現である、方法。
【請求項63】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩による、管上部尿路上皮癌の治療に対する患者の反応を監視するための方法であって、
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られたサンプルを試験して、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、
ここで、ベースライン遺伝子発現測定と比較した少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出は、治療に対する患者の応答を示し、ベースライン遺伝子発現測定は、有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与前に患者で測定された遺伝子発現である、方法。
【請求項64】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を用いて管上部尿路上皮癌の治療のために患者を特定する方法であって、
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られたサンプルを試験して、患者の無細胞DNA(cfDNA)中の少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの対立遺伝子頻度を測定し、
ここで、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーのベースライン対立遺伝子頻度と比較して、患者のcfDNAにおけるより低い変異対立遺伝子頻度での少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの検出は、治療に対する患者の候補を示し、ベースライン対立遺伝子頻度測定値は、有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与前に患者のcfDNAで測定された対立遺伝子頻度である、方法。
【請求項65】
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩による、管上部尿路上皮癌の治療に対する患者の反応を監視するための方法であって、
有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られたサンプルを試験して、患者の無細胞DNA(cfDNA)中の少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの対立遺伝子頻度を測定し、
ここで、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーのベースライン対立遺伝子頻度と比較して、患者のcfDNAにおけるより低い変異対立遺伝子頻度での少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの検出は、治療に対する患者の応答を示し、ベースライン対立遺伝子頻度測定値は、有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩の投与前に患者のcfDNAで測定された対立遺伝子頻度である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月31日に提出された米国特許出願第62/855,277号明細書及び2019年9月26日に提出された米国特許出願第62/906,194号明細書の利益及びそれに対する優先権を主張し、これは、その全体が本明細書において参照によって援用される。
【背景技術】
【0002】
2018年、150,350名の新規患者が泌尿器系がん(81,190名が膀胱;65,340名が腎臓及び腎盂;並びに3,820名が尿管及び他の泌尿器)と診断されたことが推定された。非尿路上皮の腎がんを除き、すべての尿路上皮がんの約5~10%が、上部尿路上皮がん(UTUC)である。UTUCの発生率は、男性において女性よりも2~3倍高い(Siegel et al.,2018;Roupret et al.,2015)。
【0003】
浸潤性膀胱がん(UCB)と対照的に、UTUCはより侵襲性の臨床経過を有する。診断時、UTUCを有する患者の60%は、UCBを有する患者の15%~25%と比較して浸潤性がんを有する(Roupret et al.,2015;Margulis et al.,2009)。36パーセントが局所疾患を、そして9%が遠隔疾患を有する(Raman et al.,2010)。12の施設で根治的腎尿管摘除術(RNU)を受けたUTUCを有する患者1363名の大規模な遡及的検討によると、全集団の28%がRNU後に再発を有することが示された(Margulis et al.,2009)。
【0004】
UTUCを有する患者における罹患率及び死亡率を低下させるため、ネオアジュバント又はアジュバント治療が求められる。UTUCにおける大規模無作為化試験であるPOUT試験は、標準治療としてのアジュバントシスプラチンに基づく化学療法の使用を支持する(Birtle et al.,2020)。UTUCを有する多くの患者がRNU後に1つの残存する腎臓を有し、他の有意な併発状態を有することが多いため、シスプラチンに基づく治療は、耐性が不十分である(NCCNガイドラインバージョン3,2018)。RNU前後の腎機能は、プラチナベースのネオアジュバント又はアジュバント療法に適格であるUTUCを有する患者の数を大いに制限する。したがって、標的化療法は、UTUCを治療するために必要である(Lane et al.,2010)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浸潤性UCBのネオアジュバント治療において延命効果が実証されたにもかかわらず、浸潤性UCBを有する多くの患者は、一部にはシスプラチン不適格性が理由で、(ネオ)アジュバントシスプラチンに基づく化学療法を受けることはないであろう(Porter et al.,2011)。さらに、ネオアジュバント療法後の残存疾患は、予後不良に関連する(Grossman et al.,2003)。したがって、シスプラチンベースのアジュバント化学療法に不適格であるか若しくはそれを受けることを拒否する、又はネオアジュバント療法後に残存疾患を有するような浸潤性UCBを有するかなりの割合の患者における要求は満たされないままである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、それを必要とする患者における上部尿路上皮がんを治療する方法であって、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩を患者に投与することを含む方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、上部尿路上皮がんは、浸潤性上部尿路上皮がんである。特定の実施形態では、上部尿路上皮がんは、非侵襲性上部尿路上皮がんである。
【0007】
特定の実施形態では、患者は、シスプラチンに基づく化学療法による治療に適格でない。特定の実施形態では、患者は、事前にシスプラチンに基づく化学療法が投与されているが、残存がんを有する。
【0008】
特定の実施形態では、腎尿管摘除術又は遠位尿管摘除術に続いて、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与が行われる。
【0009】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の患者への投与は、上部尿路上皮がんの治療において、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩を、それを必要とする患者に投与することにより、膀胱の尿路上皮がんの治療と比較して、より大きい有効性を有する。
【0010】
別の態様では、それを必要とする患者における尿路上皮がんを治療する方法であって、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を患者に投与することを含み、ここで患者が事前に腎尿管摘除術、遠位尿管摘除術、又は膀胱全摘除術を受けている、方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、尿路上皮がんは、浸潤性上部尿路上皮がん又は膀胱の尿路上皮がんである。特定の実施形態では、尿路上皮がんは、非侵襲性上部尿路上皮がん又は膀胱の尿路上皮がんである。
【0011】
特定の実施形態では、患者は、シスプラチンに基づく化学療法による治療に適格でない。特定の実施形態では、患者は、事前にシスプラチンに基づく化学療法が投与されているが、残存がんを有する。
【0012】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を1日1回経口投与することを含む。
【0013】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩が患者に1日1回で3連続週にわたり経口投与され、そしてインフィグラチニブが1週間投与されないような28日サイクルを含む。いくつかの実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、100mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。いくつかの実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、単位用量として提供される。
【0014】
特定の実施形態では、尿路上皮がんは、組織学的又は細胞学的に確認される。
【0015】
特定の実施形態では、尿路上皮がんは、FGFR3突然変異、遺伝子再構成又は融合を有する。特定の実施形態では、尿路上皮がんは、FGFR3突然変異を有する。いくつかの実施形態では、FGFR3突然変異は、FGFR3 R248C、FGFR3 S249C、FGFR3 G372C、FGFR3 A393E、FGFR3 Y375C、FGFR3 K652M/T、FGFR3 K652E/Q及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
別の態様では、それを必要とする患者における非筋肉浸潤性膀胱がんを治療する方法であって、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を投与することを含み、ここで患者が別の治療薬の事前投与後に非筋肉浸潤性膀胱がんの再発を有する、方法が本明細書に提供される。
【0017】
特定の実施形態では、別の治療薬の事前投与は、非筋肉浸潤性膀胱がんに対する治療法である。特定の実施形態では、別の治療薬の事前投与は、免疫療法剤の投与である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤の事前投与は、カルメット-ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)を含むレジメンである。
【0018】
特定の実施形態では、非筋肉浸潤性膀胱がんは、FGFR3突然変異、遺伝子再構成又は遺伝子融合を有する。特定の実施形態では、非筋肉浸潤性膀胱がんは、FGFR3突然変異を有する。いくつかの実施形態では、FGFR3突然変異は、FGFR3 K650E、FGFR3 S249C、FGFR3 R248C、FGFR3 Y375C、FGFR3 G372C、FGFR3 S373C、FGFR3 A393E、FGFR3 A371A、FGFR3 I378C、FGFR3 L379L、FGFR3 G382R、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、非筋肉浸潤性膀胱がんは、FGFR3遺伝子融合を有する。いくつかの実施形態では、FGFR3遺伝子融合は、FGFR3遺伝子融合パートナーTACC3を含む。
【0019】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を1日1回投与することを含む。
【0020】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩が患者に1日1回で3連続週にわたり経口投与され、そしてインフィグラチニブが1週間投与されないような28日サイクルを含む。
【0021】
特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、100mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、単位用量として提供される。
【0022】
特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に経口投与される。
【0023】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、局所投与を介して患者に投与される。いくつかの実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に腫瘍内投与される。いくつかの実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に膀胱内投与される。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、徐放性の移植可能な装置の患者の膀胱への挿入を介して送達される。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、徐放性の移植可能な装置の患者の尿管への挿入を介して送達される。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、徐放性の移植可能な装置の患者の腎盂への挿入を介して送達される。
【0024】
特定の実施形態では、徐放性の移植可能な装置は、超弾性ワイヤーフォームを含む二重管腔シリコンチューブである。特定の実施形態では、徐放性の移植可能な装置は、ゲルである。
【0025】
特定の実施形態では、当該方法は、有効量の第2の治療薬を患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、有効量の第2の治療薬は、局所投与を介して患者に投与される。特定の実施形態では、有効量の第2の治療薬は、患者に膀胱内投与される。いくつかの実施形態では、第2の治療薬は、ゲムシタビン又はその薬学的に許容できる塩である。
【0026】
別の態様では、それを必要とする患者における上部尿路上皮がんを治療する方法であって、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩を患者に投与することを含み、ここで有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩がネオアジュバント療法として投与される、方法が本明細書に提供される。
【0027】
特定の実施形態では、上部尿路上皮がんは、FGFR3突然変異、遺伝子再構成又は遺伝子融合を有する。
【0028】
別の態様では、少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再構成又は遺伝子融合を伴う上部尿路上皮がんを有するそれを必要とする患者を治療する方法であって、(i)患者からサンプルを得ることと;(ii)サンプルを少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再構成又は遺伝子融合の存在について分析することと、(iii)ネオアジュバント療法として投与される、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩を患者に投与することと、を含む方法が本明細書に提供される。
【0029】
特定の実施形態では、尿路上皮がんは、FGFR3突然変異を有する。いくつかの実施形態では、FGFR3突然変異は、FGFR3 R248C、FGFR3 S249C、FGFR3 G372C、FGFR3 A393E、FGFR3 Y375C、FGFR3 K652M/T、FGFR3 K652E/Q、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0030】
特定の実施形態では、上部尿路上皮がんは、低グレード上部尿路上皮がんである。特定の実施形態では、上部尿路上皮がんは、高グレード上部尿路上皮がんである。
【0031】
特定の実施形態では、患者は、シスプラチンベースのネオアジュバント化学療法による治療に適格でない。
【0032】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を1日1回経口投与することを含む。
【0033】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩が患者に1日1回で3連続週にわたり経口投与され、そしてインフィグラチニブが1週間投与されないような28日サイクルを含む。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、2つの連続した28日サイクルにわたり患者に投与される。
【0034】
特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、100mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、単位用量として提供される。
【0035】
特定の実施形態では、当該方法は、患者がネオアジュバント療法の開始から8週以内に腎尿管摘除術又は尿管摘除術を受けていることをさらに含む。
【0036】
別の態様では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩による上部尿路上皮がんの治療に対する患者を同定する方法であって、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定するため、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩の投与後に患者から得られたサンプルを試験することを含み、ここで少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現のレベルにおける、ベースライン遺伝子発現測定(baseline gene expression measurement)と比較しての変化の検出が、患者の治療に対する候補要件を意味しており、且つベースライン遺伝子発現測定が、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩の投与前の患者において測定された遺伝子発現である、方法が本明細書に提供される。
【0037】
別の態様では、上部尿路上皮がんに対する有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩による治療に対する患者の応答を監視するための方法であって、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定するため、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩の投与後に患者から得られたサンプルを試験することを含み、ここで少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現のレベルにおける、ベースライン遺伝子発現測定と比較しての変化の検出が、治療に対する患者の応答を意味しており、且つベースライン遺伝子発現測定が、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩の投与前に患者において測定された遺伝子発現である、方法が本明細書に提供される。
【0038】
別の態様では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩による上部尿路上皮がんの治療に対する患者を同定する方法であって、患者の無細胞DNA(cfDNA)における少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの対立遺伝子頻度を測定するため、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩の投与後に患者から得られたサンプルを試験することを含み、ここで患者のcfDNAにおける、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーのベースライン対立遺伝子頻度と比較してより低い変異体対立遺伝子頻度での少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの検出が、治療に対する患者の候補要件を意味しており、且つベースライン対立遺伝子頻度測定が、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩の投与前に患者のcfDNAにおいて測定された対立遺伝子頻度である、方法が本明細書に提供される。
【0039】
別の態様では、上部尿路上皮がんに対する有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩による治療に対する患者の応答を監視するための方法であって、患者の無細胞DNA(cfDNA)における少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの対立遺伝子頻度を測定するため、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩の投与後に患者から得られたサンプルを試験することを含み、ここで患者のcfDNAにおける、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーのベースライン対立遺伝子頻度と比較してより低い変異体対立遺伝子頻度での少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの検出が、治療に対する患者の応答を意味しており、且つベースライン対立遺伝子頻度測定が、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩の投与前に患者のcfDNAにおいて測定された対立遺伝子頻度である、方法が本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】上部尿路上皮がん患者の腫瘍組織内で認められたFGFR3における突然変異の頻度を表す。
【
図1B】膀胱の尿路上皮がん患者の腫瘍組織内で認められたFGFR3における突然変異の頻度を表す。
【
図2】インフィグラチニブで治療された上部尿路上皮がん患者及び膀胱の尿路上皮がん患者の無増悪生存率の重ね合わせである。
【
図3】インフィグラチニブで治療された上部尿路上皮がん患者及び膀胱の尿路上皮がん患者の全生存率の重ね合わせである。
【
図4】上部尿路上皮がん患者及び膀胱の尿路上皮がん患者のcfDNAにおける変異体の頻度の比較を表す。
【
図5】上部尿路上皮がん患者及び膀胱の尿路上皮がん患者における腫瘍組織及びcfDNAにおけるFGFR3ゲノム変異における変異体対立遺伝子頻度の中央値(メジアン)を表す。
【
図6】上部尿路上皮がん患者及び膀胱の尿路上皮がん患者におけるcfDNAゲノム特性のオンコプロットを表す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
一般に本明細書に記載の通り、本開示は、例えば患者が浸潤性上部尿路上皮がんを有するとき、それを必要とする患者における上部尿路上皮がんを治療する方法を提供する。本開示は、例えば患者が事前に腎尿管摘除術、遠位尿管摘除術、又は膀胱全摘除術を受けているとき、それを必要とする患者における尿路上皮がん(例えば浸潤性上部尿路上皮がん又は膀胱の尿路上皮がん)を治療する方法も提供する。
【0042】
定義
本発明の理解を容易にするために、多くの用語及び句について、下記に定義される。
特に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する当技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において使用される略語は、化学及び生物学の技術の範囲内にあるそれらの従来の意味を有する。本明細書において記載される化学構造及び化学式は、化学技術において知られている化学結合価の標準のルールに従って構成される。
【0043】
記載の全体にわたって、組成物及びキットが特定の構成成分を有する、含む(including)、若しくは含む(comprising)と記載される場合又はプロセス及び方法が特定のステップを有する、含む(including)、若しくは含む(comprising)と記載される場合、加えて、列挙される構成成分から本質的になる又はそれからなる本発明の組成物及びキットがあること並びに列挙される処理ステップから本質的になる又はそれからなる本発明によるプロセス及び方法があることが想定される。
【0044】
本出願において、要素又は構成成分が、一連の列挙される要素又は構成成分の中に含まれる及び/又はそれから選択されると言われる場合、要素若しくは構成成分は、列挙される要素若しくは構成成分のいずれか1つとすることができること又は要素若しくは構成成分は、2つ以上の列挙される要素若しくは構成成分からなる群から選択することができることが理解されるべきである。
【0045】
さらに、本明細書において記載される組成物又は方法の要素及び/又は特徴は、本明細書において明示されるか暗示されるかにかかわらず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々に組み合わせることができることが理解されるべきである。例えば、特定の化合物について言及される場合、その化合物は、文脈からそうとは理解されない場合を除いて、本発明の組成物の種々の実施形態において及び/又は本発明の方法において使用することができる。言い換えれば、本出願内で、実施形態は、出願についてわかりやすく簡潔に書き示すように記載され、表現されたが、実施形態は、本発明の教示及び本発明から逸れることなく、種々に組み合わせられてもよい又は分けられてもよいことが意図されており、理解されるであろう。例えば、本明細書において記載され、表現される特徴はすべて、本明細書において記載され、表現される本発明のすべての態様に適用可能とすることができることが理解されるであろう。
【0046】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、文脈から不適切である場合を除いて、1つの又は1つを超える(すなわち少なくとも1つの)、冠詞の文法上の対象物を指すために本開示において使用される。例として、「1つの要素」は、1つの要素又は1つを超える要素を意味する。
用語「及び/又は」は、そうとは示されない場合を除いて、「及び」又は「又は」を意味するために本開示において使用される。
「少なくとも1つの」という語句は、文脈及び使用からそうとは理解されない場合を除いて、その語句の後に列挙される対象物のそれぞれ及び列挙される対象物の2つ以上の種々の組み合わせを個々に含むことが理解されるべきである。3つ以上の列挙される対象物を伴う語句「及び/又は」も、文脈からそうとは理解されない場合を除いて、同じ意味を有することが理解されるべきである。
【0047】
用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、又は「含有すること(containing)」の使用は、その文法上の等価物を含め、オープンエンドで、非限定的であるとして概して理解されるべきであり、例えば、そうとは明確に述べられない又は文脈からそうとは理解されない場合を除いて、追加の列挙されていない要素又はステップを除外しない。
【0048】
用語「約」が、量に関する値の前に使用される場合、本発明はまた、そうとは明確に述べられない場合を除いて、特定の量に関する値自体をも含む。本明細書において使用されるように、用語「約」は、そうとは示されない又は文脈からそうとは推測されない場合を除いて、基準値からの±10%の変動を指す。
【0049】
本明細書における種々の場所に、変数又はパラメーターが、群で又は範囲で開示される。記載が、そのような群及び範囲のメンバーのそれぞれの及びすべての個々の副組み合わせを含むことが特に意図される。例えば、0~40の範囲の整数は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、及び40を個々に開示することが特に意図され、1~20の範囲の整数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び20を個々に開示することが特に意図される。
【0050】
本明細書における任意の及びすべての例又は例示的な言葉、例えば「などの」若しくは「を含む」の使用は、単に、本発明をより適切に例証することだけを意図するものであり、特に主張されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中のどの言葉も、あらゆる主張されていない要素を、本発明の実施にとって不可欠なものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0051】
一般的な事項として、パーセンテージを特定している組成物は、そうとは明記されない場合を除いて、重量によるものである。さらに、変数に定義が伴わない場合、変数コントロールについての上記の定義が適用される。
【0052】
本明細書において使用されるように、「医薬組成物」又は「医薬製剤」は、組成物を、インビボ又はエクスビボにおける診断上の又は治療上の使用にとりわけ適したものにする、不活性な又は活性なキャリアとの活性薬の組み合わせを指す。
「薬学的に許容される」は、連邦政府若しくは州政府の規制当局又は米国以外の国々における該当する機関又は米国薬局方若しくは他の一般に認識される薬局方において掲載される機関によって、動物、より詳細にはヒトにおける使用について承認されている又は承認可能であることを意味する。
本明細書において使用されるように、「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物(例えばインフィグラチニブ)中に存在してもよい酸性基又は塩基性基の任意の塩を指し、この塩は、医薬の投与と適合している。
【0053】
当業者らに知られていているように、化合物の「塩」は、無機酸又は有機酸及び塩基から誘導されてもよい。酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタン硫酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸を含むが、これらに限定されない。シュウ酸などの他の酸は、それら自体、薬学的に許容されないが、本明細書において記載される化合物及びそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において用いられてもよい。
【0054】
塩基の例は、アルカリ金属(例えばナトリウム及びカリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム及びカルシウム)水酸化物、アンモニア、並びに式中、WはC1~4アルキルである式NW4+の化合物並びにその他同種のものを含むが、これらに限定されない。
【0055】
塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩(pectinate)、ペルオキソ硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩(tosylate)、ウンデカン酸塩、及びその他同種のものを含むが、これらに限定されない。塩の他の例は、適したカチオンNa+、K+、Ca2+、NH4+、及びNW4+(WはC1~4アルキル基とすることができる)並びにその他同種のものと混ぜ合わせた本発明の化合物のアニオンを含む。
【0056】
治療上の使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるとして想定される。しかしながら、薬学的に許容されない酸及び塩基の塩もまた、例えば、薬学的に許容される化合物の調製又は精製において、使用を見出してもよい。
【0057】
本明細書において使用されるように、「薬学的に許容される賦形剤」は、活性薬の対象への投与及び/又は対象による吸収を助ける物質を指し、患者に対して深刻で有害な毒性の影響を引き起こすことなく、本発明の組成物中に含むことができる。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、水、NaCl、リン酸緩衝生理食塩水などの生理食塩水、エマルション(例えば油/水又は水/油エマルションなど)、乳酸リンゲル液、生理スクロース(normal sucrose)、生理グルコース(normal glucose)、バインダー、増量剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味料、香料、塩類溶液(リンゲル溶液など)、アルコール、油、ゼラチン、ラクトース、アミロース、又はデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース(hydroxymethycellulose)、ポリビニルピロリジン、及び着色料並びにその他同種のものを含む。そのような調製物は、滅菌することができ、所望により、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、バッファー、着色剤、及び/又は芳香族物質並びに本発明の化合物と有害に反応しないその他同種のものなどの助剤と混合することができる。賦形剤の例について、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ. Co.,Easton,PA(1975)を参照されたい。
【0058】
「AUC」という用語は、医薬組成物の投与後の時間/血漿濃度曲線下の面積を指す。AUC0-infinityは、0時間から無限大までの血漿濃度対時間曲線下の面積を表し;AUC0-tは、0時間からt時間までの血漿濃度対時間曲線下の面積を表す。AUC値は、当技術分野において知られている方法によって決定することができることが理解されるべきである。
【0059】
投与が想定される「対象」は、ヒト(すなわち、あらゆる年齢群の男性又は女性、例えば小児対象(例えば乳児、幼児、青年)又は成人対象(例えば若年成人、中年、若しくは高齢者))並びに/或いは非ヒト動物、例えば、霊長類(例えばカニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類、ネコ、及び/又はイヌなどの哺乳類を含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、対象は、ヒトである。ある実施形態では、対象は、非ヒト動物である。
【0060】
用語「Cmax」は、医薬組成物の投与後の血液(例えば血漿)中の治療薬(例えばインフィグラチニブ)の最大濃度を指す。
用語「tmax」は、治療薬(例えばインフィグラチニブ)を含む医薬組成物の投与後にCmaxに達した時の時間を指す。
【0061】
本明細書において使用されるように、「固形剤」は、固形の形態、例えば錠剤、カプセル、顆粒剤、粉剤、包、再構成可能な粉剤、ドライパウダー式吸入器及び咀嚼錠の形態をした医薬の用量を意味する。
【0062】
本明細書において使用されるように、「投与すること」は、対象への経口投与、坐剤としての投与、局所接触、静脈内投与、非経口投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、鞘内投与、頭蓋内投与、鼻腔内投与、若しくは皮下投与又は徐放性デバイス、例えばミニ浸透圧ポンプの移植を意味する。投与は、非経口及び経粘膜(例えば頬側、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、膣、直腸、又は経皮)を含め、任意のルートによるものである。非経口投与は、例えば静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、及び頭蓋内を含む。送達の他の様式は、リポソーム製剤、点滴静注、経皮パッチなどの使用を含むが、これらに限定されない。「同時投与」によって、本明細書において記載される組成物が、1つ以上の追加の療法(例えば抗癌剤、化学療法薬、又は神経変性疾患のための治療)の投与と同時に、その直前に、又はその直後に投与されることを意味する。インフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、患者に単独で投与することができる又は同時投与することができる。同時投与は、化合物の、個々の又は組み合わせた(1つを超える化合物又は薬)、同時に起こる又は連続的な投与を含むことを意味する。したがって、調製物はまた、所望により、他の活性物質(例えば、代謝による分解を低下させるための)と組み合わせることもできる。
【0063】
用語「疾患」、「障害」及び「状態」は、本明細書において区別なく使用される。
本明細書において使用されるように、そうとは明記されない場合を除いて、用語「治療する」、「治療こと」、及び「治療」は、対象が特定の疾患、障害、又は状態に罹患している間に行われ、疾患、障害、若しくは状態の重症度を低下させる又は疾患、障害、若しくは状態の進行を遅らせる若しくは遅延させる活動(例えば「治療上の処置」)を想定する。
【0064】
一般に、化合物の「有効量」は、所望される生物学的反応を誘起するのに、例えば、胆管癌を治療するのに十分な量を指す。当業者らによって理解されるように、本開示の化合物の有効量は、所望される生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、治療されている疾患、投与様式、並びに対象の年齢、体重、健康、及び状態のような因子に応じて変動してもよい。
【0065】
インフィグラチニブ
式(I)に表現されるインフィグラチニブは、3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-{6-[4-(4-エチル-1-ピペラジン-1-イル)フェニルアミノ]-ピリミジニル-4-イル}-1-メチル尿素としても知られている選択的でATP競合的なpan-線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)キナーゼ阻害剤である。インフィグラチニブは、FGFR1、FGFR2、FGFR3及びFGFR4のキナーゼ活性を選択的に阻害する。
【0066】
インフィグラチニブを化学合成するための方法(本明細書において提供される実施例1を含む)、インフィグラチニブのいくつかの結晶及びアモルファス形態(本明細書において記載される無水結晶一リン酸塩を含む)、並びに前記形態を調製するための方法(本明細書において提供される実施例2を含む)は、米国特許第9,067,896号明細書において記載され、これは、本明細書においてその全体が参照によって援用される。
【0067】
一態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌の治療のために、インフィグラチニブ、またはその薬学的に許容される塩を投与する方法である。 特定の実施形態において、患者は、以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術、又は膀胱切除術を受けた。 特定の実施形態では、インフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、患者が腎尿管切除術、遠位尿管切除術、又は膀胱切除術を受ける前に投与される。
【0068】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における尿路上皮癌(例えば、浸潤性上部管尿路上皮癌又は膀胱の尿路上皮癌)の治療のために、インフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩を投与する方法であって、患者が以前に腎尿膜切除術、遠位尿膜切除術又は膀胱摘出を受けた、前記方法である。
【0069】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、非筋肉浸潤性膀胱癌の治療のために、インフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与する方法である。
別の態様において、本明細書で提供されるのは、非筋肉浸潤性膀胱癌の治療のためにインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する方法であって、患者が別の療法の以前の投与の後に非筋肉浸潤性膀胱癌の再発を有する、方法である。
特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌の治療のために、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩を投与する方法である。 特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における尿路上皮癌(例えば、浸潤性上部路尿路上皮癌又は膀胱の尿路上皮癌)の治療のためにインフィグラチニブの薬学的に許容される塩を投与する方法であって、患者は、以前に腎尿管切除術、遠位尿路切除術又は膀胱摘出を受けたことがある、方法である。
【0070】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、非筋肉浸潤性膀胱癌の治療のためにインフィグラチニブの薬学的に許容される塩を投与する方法である。 特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、非筋層浸潤性膀胱癌の治療のためにインフィグラチニブの薬学的に許容される塩を投与する方法であって、患者が、別の療法の以前の投与の後に非筋層浸潤性膀胱癌の再発を有する、方法である。
【0071】
ある実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩は、一リン酸塩である。インフィグラチニブの一リン酸塩はまた、BGJ398と称することがある。
【0072】
いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの一リン酸塩は、無水結晶一リン酸塩である。いくつかの実施形態では、無水結晶一リン酸塩は、約15.0°又は15.0°±0.2°に2θに関する特徴的なピークを含む粉末X線回折(XRPD)パターンを有する。いくつかの実施形態では、無水結晶一リン酸塩の粉末X線回折パターンは、約13.7°±0.2°、約16.8°±0.2°、約21.3°±0.2°、及び約22.4°±0.2°のピークから選択される、2θに関する1つ以上の特徴的なピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、無水結晶一リン酸塩の粉末X線回折パターンは、約9.2°、約9.6°、約18.7°、約20.0°、約22.9°、及び約27.2°のピークから選択される、2θに関する1つ以上の特徴的なピークをさらに含む。いくつかの実施形態では、無水結晶一リン酸塩は、約13.7°、約15°、約16.8、約21.3°、及び約22.4°のピークから選択される、2θに関する少なくとも3つの特徴的なピークを含むXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、無水結晶一リン酸塩についての粉末X線回折パターンは、約9.2°、約9.6°、約13.7°、約15°、約16.8°、約18.7°、約20.0°、約21.3°及び約22.4°、約22.9°、並びに約27.2のピークから選択される、2θに関する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11の特徴的なピークを含んでいてもよい。
【0073】
医薬組成物
インフィグラチニブの医薬組成物及び前記医薬組成物を調製するための方法(例えば、本明細書において記載される実施例3を含む)は、米国特許出願公開第2017/0007602号明細書において記載されており、これは、本明細書においてその全体が参照によって組み込まれる。
【0074】
一態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌の治療のために、インフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を投与する方法である。 特定の実施形態では、患者は、以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術、または膀胱切除術を受けたことがある。 特定の実施形態では、インフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、患者が腎尿管切除術、遠位尿管切除術又は膀胱切除術を受ける前に投与される。
【0075】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、尿路上皮癌の治療のために、インフィグラチニブ又は薬学的に許容されるその塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を投与する方法である(例えば。ここで、患者は以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術、または膀胱切除術を受けたものである。
【0076】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における非筋層浸潤性膀胱癌の治療のために、インフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を投与する方法である。
【0077】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における非筋層浸潤性膀胱癌の治療のために、インフィグラチニブ又は薬学的に許容されるその塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を投与する方法であって、患者が別の療法の以前の投与の後に非筋層浸潤性膀胱癌を再発させた、前記方法である。
【0078】
ある実施形態では、本発明の教示の医薬組成物は、
(a)その遊離塩基形態をした、重量で約20%~約60%のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩;
(b)約0.5重量%~約5重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;
(c)約1重量%~約4重量%の架橋ポリビニルピロリドン;並びに
(d)セルロース、ラクトース、マンニトール、及びその組み合わせからなる群から選択される増量剤;を含み、重量パーセントは、医薬組成物の総重量に基づく。
【0079】
ある実施形態では、医薬組成物は、その遊離塩基形態をした、重量で約30%~約45%のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0080】
ある実施形態では、医薬組成物は、約2%~約4%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。ある実施形態では、医薬組成物は、約2%~約4%の架橋ポリビニルピロリドンを含む。
【0081】
ある実施形態では、医薬組成物は:
(e)医薬組成物の総重量に基づいて、重量で約10%~約95%の1つ以上の増量剤;
(f)医薬組成物の総重量に基づいて、重量で約0.1%~約3%の1つ以上の潤滑剤;及び
(g)医薬組成物の総重量に基づいて、重量で約0.1%~約2%の1つ以上の流動化剤の1以上をさらに含む。
【0082】
ある実施形態では、1つ以上の増量剤は、結晶セルロース、ラクトース及び/又はマンニトールからなる群から選択される。
【0083】
ある実施形態では、医薬組成物中の1つ以上の潤滑剤は、医薬組成物の総重量に基づいて、重量で約0.2%~約2%の量で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0084】
ある実施形態では、1つ以上の流動化剤は、医薬組成物の総重量に基づいて、重量で約0.1%~約0.5%の量で医薬製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の流動化剤は、コロイド状二酸化ケイ素(コロイドケイ酸)である。
【0085】
ある実施形態では、医薬組成物中のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の量は、約25mg~約150mg、約50mg~約150mg、約75mg~約150mg、約100mg~約150mg、約125mg~約150mg、約25mg~約125mg、約25mg~約100mg、約25mg~約75mg、約25mg~約50mg、約50mg~約125mg、約50mg~約100mg、約50mg~約75mg、約75mg~約125mg、約75mg~約100mg又は約100mg~約125mgである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の量は、約100mg~約150mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩である。
【0086】
ある実施形態では、医薬組成物中のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の量は、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg又は約200mgである。ある実施形態では、医薬組成物中のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の量は、約125mgである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の量は、約100mgである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の量は、約25mgである。
【0087】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌の治療のための、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容される塩;及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物である。
【0088】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩;及び薬学的に許容される賦形剤を含む、それを必要とする患者における尿路上皮癌の治療のための医薬組成物であって、患者は、以前に腎尿膜切除、遠位尿膜切除又は嚢胞切除を有していた、である。
【0089】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容される塩;及び薬学的に許容される賦形剤を含む、それを必要とする患者における非筋層浸潤性膀胱癌の治療のための医薬組成物である。
【0090】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における非筋肉浸潤性膀胱癌の治療のための、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩;及び薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物で、患者は、別の療法の以前の投与後に非筋肉浸潤性膀胱癌の再発を有するものである。
【0091】
ある実施形態では、医薬組成物は、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩の有効量を含む。いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩は、一リン酸塩である。いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩は、無水一リン酸塩である。いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩は、15.0°±0.2°の粉末X線回折(XRPD)ピーク(2θ)によって特徴づけられる多形形態をした無水一リン酸塩である(及び本明細書において記載されるこの形態についての他のXRPDピークを含むことができる)。
【0092】
本明細書において提供される医薬組成物は、経口(経腸)投与、非経口(注射による)投与、直腸投与、経皮投与、皮内投与、鞘内投与、皮下(SC)投与、静脈内(IV)投与、筋肉内(IM)投与、及び鼻腔内投与を含むが、これらに限定されない種々のルートによって投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される医薬組成物は、経口投与される。
【0093】
本明細書において提供される医薬組成物はまた、長期にわたって投与されてもよい(「長期投与」)。長期投与は、長期間にわたる、例えば、例えば3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、3年、5年等にわたる化合物又はその医薬組成物の投与を指す又は無期限に、例えば対象の一生の間、継続されてもよい。ある実施形態において、長期投与は、長期間にわたって、血液中に一定のレベルの、例えば治療濃度域内の化合物を提供することが意図される。
【0094】
本明細書において提供される医薬組成物は、正確な投薬を容易にするために、単位投薬形態で提供されもよい。用語「単位投薬形態」は、ヒト対象及び他の哺乳類のための、単一の投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位は、適した医薬賦形剤と共同して所望の治療効果をもたらすように算出された、所定の分量の活性物質を含有する。典型的な単位投薬形態は、液体組成物の充填済みの事前に測定されたアンプル若しくは注射器又は固形組成物の場合、丸剤、錠剤、カプセル、若しくはその他同種のものを含む。
【0095】
ある実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、固形剤として患者に投与される。いくつかの実施形態では、固形剤は、カプセルである。
【0096】
ある実施形態では、本明細書において提供される化合物は、単独の活性剤として投与することができる又はそれらは、他の活性剤と組み合わせて投与することができる。
【0097】
本明細書において提供される医薬組成物の説明は、主として、ヒトへの投与に適した医薬組成物に関するものであるが、そのような組成物は、あらゆる種類の動物への投与に概して適していることが当業者によって理解されるであろう。組成物を種々の動物への投与に適したようにするための、ヒトへの投与に適した医薬組成物の改変は、十分に理解されており、通常の熟練の獣医薬理学者は、通常の実験法によりそのような改変を設計する及び/又は実行することができる。医薬組成物の製剤及び/又は製造における一般的な考察は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005において見いだすことができる。
【0098】
使用及び治療の方法
上部管尿路上皮癌(Upper Tract Urothelial Carcinoma)の治療
移行細胞癌と呼ばれることもある尿路上皮癌は、典型的には泌尿器系に発生する癌の一種である。 これらの癌は、例えば、膀胱、腎盂、尿管及び/又は尿道で発生し得る。
【0099】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌を治療する方法である。
【0100】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌の治療方法であって、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法である。
【0101】
特定の実施形態において、上部管尿路上皮癌は、浸潤性上部管尿路上皮癌である。 一部の実施形態では、浸潤性上部管尿路上皮癌は、腎膀胱、腎盂及び/又は尿管に存在する。 特定の実施形態では、上部管尿路上皮癌は、非浸潤性上部管尿路上皮癌である。
【0102】
特定の実施形態では、患者は、シスプラチンをベースとする化学療法療法による治療に適格でない。 特定の実施形態では、患者は、以前にシスプラチンベースの化学療法を受けたが、残存癌腫を有する。
【0103】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与は、患者が腎尿管切除術又は遠位尿管切除術を受ける前に行われる。 特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与は、腎尿管切除術又は遠位尿管切除術の後に行われる。 特定の実施形態では、インフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の有効量の投与は、腎尿管切除術又は遠位尿管切除術の後、120日以内に行われる。
【0104】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することは、それを必要とする患者に有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与して膀胱の尿路上皮癌を治療することと比較して、上部管の尿路上皮癌の治療においてより大きな有効性を有する。
【0105】
特定の実施形態において、上部管尿路上皮癌は、組織学的又は細胞学的に確認される。
【0106】
特定の実施形態において、上部管尿路上皮癌は、FGFR1突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合を有する。 特定の実施形態では、上部路尿路上皮癌は、FGFR1遺伝子融合を有する。 いくつかの実施形態では、FGFR1遺伝子融合は、BAG4、ERLIN2、NTM、FGFR1OP2、TACC3及びTRPからなる群から選択されるFGFR1遺伝子融合パートナーを含む。
【0107】
特定の実施形態において、上部管尿路上皮癌は、FGFR2突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合を有する。特定の実施形態では、上部路尿路上皮癌は、FGFR2遺伝子融合を有する。いくつかの実施形態では、FGFR2遺伝子融合は、10Q26.13, AFF1, AFF3, AFF4, AHCYL1, ALDH1L2, ARFIP1, BAG4, BAIAP2L1, BICC1, C10orf118, C10orf68, C7, CASC15, CASP7, CCDC147, CCDC6, CELF2, CIT, COL14A1, CREB5, CREM, DNAJC12, ERLIN2, HOOK1, INA, KCTD1, KIAA1217, KIAA1598, KIAA1967, KIFC3, MGEA5, NCALD, NOL4 , NPM1, NRAP, OFD1, OPTN, PARK2, PAWR, PCMI, PDHX, PHLDB2, PPAPDC1A, PPHLN1, RASAL2, SFMBT2, SLC45A3, SLMAP, SLMAP2, SORBS1, STK26, STK3, TACC1, TACC2, TACC3, TBC1D1, TEL, TFEC, TRA2B, UBQLN1, VCL, WAC, ZMYM4及びFGFROP2からなる群から選択されるFGFR2遺伝子融合パートナーを含む。
【0108】
特定の実施形態において、上部管尿路上皮癌は、FGFR3突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合を有する。 特定の実施形態では、上部管尿路上皮癌は、FGFR3遺伝子融合を有する。 一部の実施形態では、FGFR3遺伝子融合は、BAIAP2L1、JAKMIP1、TACC3、TNIP2及びWHSC1からなる群から選択されるFGFR3遺伝子融合パートナーを含む。
【0109】
特定の実施形態では、患者は、例えば次世代シーケンサー、循環腫瘍DNA分析又は蛍光in situハイブリダイゼーションアッセイを用いて、上部管尿路上皮癌がFGFR1、FGFR2又はFGFR3突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合を有するかどうかを決定する分子プリスクリーニングを受ける。 いくつかの実施形態では、分子プリスクリーニングは、有効量のインフィグラチニブ又は薬学的に許容されるその塩の投与前に行われる。 いくつかの実施形態では、分子プリスクリーニングは、シスプラチンをベースとする化学療法療法の前投与の前に行われる。
【0110】
特定の実施形態では、上部管尿路上皮癌は、FGFR1、FGFR2及び/又はFGFR3変異を有する。 特定の実施形態では、上部管尿路上皮癌は、FGFR1変異を有する。 特定の実施形態では、上部管尿路上皮癌は、FGFR2変異を有する。 特定の実施形態では、上部管尿路上皮癌は、FGFR3変異を有する。
【0111】
特定の実施形態において、FGFR1突然変異は、FGFR1 G818R, FGFR1 K656E, FGFR1 N546K, FGFR1 R445W, FGFR1 T141R及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0112】
特定の実施形態では、FGFR2変異は、FGFR2 D471N, FGFR2 A315T, FGFR2 D336N, FGFR2 P253R, FGFR2 S252W, FGFR2 Y375C, FGFR2 I547V, FGFR2 K659E, FGFR2 N549K, FGFR2 N549S, FGFR2 N549Y, FGFR2 V395D, FGFR2 C382R, FGFR2 E565A, FGFR2 K641R, FGFR2 K659M, FGFR2 L617V , FGFR2 N549H, FGFR2 N550K, FGFR2 V564Fおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0113】
特定の実施形態では、FGFR3変異は、FGFR3 A391E, FGFR3 A393E, FGFR3 D785Y, FGFR3 E627K, FGFR3 G370C, FGFR3 G372C, FGFR3 G380R, FGFR3 K650E, FGFR3 K652E/Q, FGFR3 K650M, FGFR3 K652M/T, FGFR3 K650N, FGFR3 K650T, FGFR3 K652E, FGFR3 N540S, FGFR3 R248C, FGFR3 R399C, FGFR3 S131L, FGFR3 S249C, FGFR3 S249C, FGFR3 S371C, FGFR3 V555M, FGFR3 V677I, FGFR3 Y373C, FGFR3 Y375C,およびそれらの組合せからなる群から選択される。 いくつかの実施形態では、FGFR3変異は、FGFR3 R248C, FGFR3 S249C, FGFR3 G372C, FGFR3 A393E, FGFR3 Y375C, FGFR3 K652M/T, FGFR3 K652E/Q及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0114】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌を治療する方法であって、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含み、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、新アジュバント療法として投与される、方法である。
【0115】
特定の実施形態において、上部管尿路上皮癌は、FGFR3突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合を有する。
【0116】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合を有する上部管尿路上皮癌を有するその必要がある患者の治療方法であり、その方法は、以下の工程を含む。
(i)患者から試料を得ること、
(ii)少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合の存在について試料を分析すること、および
(iii) 有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を患者に投与すること、ここで、有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩が、ネオアジュバント療法として投与される。
【0117】
特定の実施形態では、患者から得られる試料は、選択的上部管洗浄、細針吸引、コア針生検、ブラシ生検、尿細胞フリーDNA、血液細胞フリーDNA及び他の細胞学試料(胸水などの転移部位の細胞学サンプリング用)からなる群から選択される方法を用いて患者から得られる試料である。
【0118】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合を有する上部管尿路上皮癌を有する、それを必要とする患者を治療する方法であり、その方法は以下の工程を包む。
(i)患者から試料を得ることであって、試料が、選択的上部管洗浄を用いて患者から得られ、
(ii)少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合の存在について試料を分析すること、および
(iii) 有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を患者に投与し、ここで、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩が、ネオアジュバント療法として投与される。
【0119】
特定の実施形態において、上部路尿路上皮癌は、低悪性度上部路尿路上皮癌である。 特定の実施形態では、上部路尿路上皮癌は、高悪性度上部路尿路上皮癌である。
【0120】
特定の実施形態では、患者は、シスプラチンベースのネオアジュバント化学療法による治療に対して適格ではない。
【0121】
特定の実施形態では、その方法は、患者が、ネオアジュバント療法を開始してから5週間、6週間、7週間、8週間、9週間または10週間以内に腎尿管切除術または尿管切除術を受けることをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、患者が、ネオアジュバント療法を開始してから8週間以内に腎尿管切除術又は尿管切除術を受けることをさらに含む。
【0122】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による上部管尿路上皮癌の治療のための患者の同定方法であって、以下を含む、方法である。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を試験して、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、
ベースライン遺伝子発現測定と比較した、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出が、患者の治療に対する候補を示すものであり、ここで、ベースライン遺伝子発現測定は、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者において測定された遺伝子発現である。
【0123】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、上部管尿路上皮癌に対する有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による治療に対する患者の応答をモニタリングする方法であって、以下を含む方法である。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を試験して、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、
ベースライン遺伝子発現測定と比較した、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出が、治療に対する患者の応答を示すものであり、ここで、ベースライン遺伝子発現測定は、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者において測定された遺伝子発現である。
【0124】
特定の実施形態では、患者から得られた試料は、排泄された尿試料である。 特定の実施形態では、患者から得られた試料は、血液試料である。 特定の実施形態では、患者から得られた試料は、選択的上部管洗浄を使用して患者から得られた試料である。
【0125】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による上部管尿路上皮癌の治療のための患者を特定する方法であって、以下を含む方法である。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を試験して、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、
ベースライン遺伝子発現測定と比較した、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出が、患者の治療に対する候補を示すものであり、ここで、ベースライン遺伝子発現測定は、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者において測定された遺伝子発現である。
【0126】
特定の実施形態では、患者から得られる試料は、選択的上部管洗浄、細針吸引、コア針生検、ブラシ生検、尿細胞フリーDNA、血液細胞フリーDNA、及び他の細胞学試料(胸水等の転移部位の細胞学的サンプリング用)からなる群より選択される方法を用いて患者から得られる試料である。
【0127】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による上部管尿路上皮癌の治療のための患者を特定する方法であって、以下を含む方法である。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を検査して、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、ここで、試料は、選択的上部管洗浄を用いて患者から得られたものであり、
ベースラインの遺伝子発現測定と比較した、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出が、患者の治療に対する候補を示すものであり、ここで、ベースライン遺伝子発現測定は、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者において測定された遺伝子発現である。
【0128】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、上部管尿路上皮癌に対する有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による治療に対する患者の応答をモニタリングする方法であって、以下を含む方法である。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を試験して、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、
ベースラインの遺伝子発現測定と比較した、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出が、治療に対する患者の応答を示すものであり、ここで、ベースライン遺伝子発現測定は、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者において測定された遺伝子発現値である。
【0129】
特定の実施形態では、患者から得られる試料は、選択的上部管洗浄、細針吸引、コア針生検、ブラシ生検、尿細胞フリーDNA、血液細胞フリーDNA、及び他の細胞学試料(胸水等の転移部位の細胞学サンプリング用)からなる群から選択される方法を用いて患者から得られる試料である。
【0130】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、上部管尿路上皮癌に対する有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による治療に対する患者の応答をモニタリングする方法であって、以下の工程を含む。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を検査して、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定すること、ここで、試料は、選択的上部管洗浄を用いて患者から得られ、
ベースラインの遺伝子発現測定と比較した、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出が、治療に対する患者の応答を示すものであり、ここで、ベースライン遺伝子発現測定は、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者において測定された遺伝子発現値である。
【0131】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による上部管尿路上皮癌の治療のための患者を特定する方法であって、以下を含む方法である。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を検査して、患者の無細胞DNA(cfDNA)中の少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの対立遺伝子頻度を測定し、
少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーのベースラインアレル頻度と比較して、患者のcfDNAにおけるより低いバリアントアレル頻度での検出が、治療に対する患者の応答を示すものであり、ここで、ベースラインアレル頻度測定値が、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者のcfDNAにおいて測定されたアレル頻度である。
【0132】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による上部管尿路上皮癌の治療のための患者を特定する方法であって、以下を含む方法である。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を試験して、患者の無細胞DNA(cfDNA)中の少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、
ベースラインの遺伝子発現測定と比較して、患者のcfDNAにおける少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出が、患者の治療に対する候補を示すものであり、ここで、ベースライン遺伝子発現測定が、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者のcfDNAにおいて測定された遺伝子発現である。
【0133】
上部管尿路上皮癌に対する有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による治療に対する患者の応答をモニタリングする方法であって、以下を含む方法。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を検査して、患者の無細胞DNA(cfDNA)中の少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの対立遺伝子頻度を測定し、
少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーのベースラインアレル頻度と比較して、患者のcfDNAにおけるより低いバリアントアレル頻度での検出が、治療に対する患者の応答を示すものであり、ここで、ベースラインアレル頻度測定値が、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者のcfDNAにおいて測定されたアレル頻度である。
【0134】
上部管尿路上皮癌に対する有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩による治療に対する患者の応答をモニタリングする方法であって、以下を含む方法。
有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に患者から得られた試料を検査し、患者の無細胞DNA(cfDNA)中の少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの遺伝子発現を測定し、
ベースラインの遺伝子発現測定と比較した、患者のcfDNAにおける少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーの発現レベルの変化の検出が、治療に対する患者の応答を示すものであり、ここで、ベースライン遺伝子発現測定が、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与する前に患者のcfDNAにおいて測定された遺伝子発現である。
【0135】
特定の実施形態において、患者から得られた試料は、血液試料である。
【0136】
特定の実施形態では、少なくとも1つのFGFR3バイオマーカーは、ERK, pERK, STAT, pSTAT, RAF, pRAF又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0137】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における尿路上皮癌を治療するための方法である。 特定の実施形態では、患者は、以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術、または膀胱切除術を受けたことがある。
【0138】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における尿路上皮癌の治療方法であって、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含み、ここで患者は、以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術、又は膀胱摘出術を受けたものである。
【0139】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における尿路上皮癌の治療方法であって、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含み、患者が投与後120日以内に以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術又は膀胱摘出術を受けた場合である方法である。
【0140】
特定の実施形態において、尿路上皮癌は、浸潤性上部路尿路上皮癌又は膀胱の尿路上皮癌である。 特定の実施形態では、尿路上皮癌は、非浸潤性上部路尿路上皮癌又は膀胱の尿路上皮癌である。
【0141】
特定の実施形態では、患者は、以前にシスプラチンをベースとする化学療法を投与されたが、残存する癌腫を有している。
【0142】
特定の実施形態では、尿路上皮癌は、組織学的又は細胞学的に確認される。
【0143】
特定の実施形態では、尿路上皮がんは、FGFR1変異、遺伝子再配列又は融合を有する。 特定の実施形態では、尿路上皮癌は、FGFR1遺伝子融合を有する。 いくつかの実施形態では、FGFR1遺伝子融合は、BAG4, ERLIN2, NTM, FGFR1OP2, TACC3及び TRPからなる群から選択されるFGFR1遺伝子融合パートナーを含む。 いくつかの実施形態では、FGFR1遺伝子融合は、FGFR1遺伝子融合パートナーを含み、FGFR1遺伝子融合パートナーは、NTMである。
【0144】
特定の実施形態において、尿路上皮癌は、FGFR2突然変異、遺伝子再配列又は融合を有する。 特定の実施形態では、尿路上皮癌は、FGFR2遺伝子融合を有する。 いくつかの実施形態では、FGFR2遺伝子融合は、10Q26.13, AFF1, AFF3, AFF4, AHCYL1, ALDH1L2, ARFIP1, BAG4, BAIAP2L1, BICC1, C10orf118, C10orf68, C7, CASC15, CASP7, CCDC147, CCDC6, CELF2, CIT, COL14A1, CREB5, CREM, DNAJC12, ERLIN2, HOOK1, INA, KCTD1, KIAA1217, KIAA1598, KIAA1967, KIFC3, MGEA5, NCALD , NOL4 , NPM1, NRAP, OFD1, OPTN, PARK2, PAWR, PCMI, PDHX, PHLDB2, PPAPDC1A, PPHLN1, RASAL2, SFMBT2, SLC45A3, SLMAP, SLMAP2, SORBS1, STK26, STK3, TACC1, TACC2, TACC3, TBC1D1, TEL, TFEC, TRA2B, UBQLN1, VCL, WAC, ZMYM4及びFGFROP2からなる群から選択されるFGFR2遺伝子融合パートナーを含む。
【0145】
特定の実施形態において、尿路上皮癌は、FGFR3突然変異、遺伝子再配列又は融合を有する。 特定の実施形態では、尿路上皮癌は、FGFR3遺伝子融合を有する。 一部の実施形態では、FGFR3遺伝子融合は、BAIAP2L1, JAKMIP1, TACC3, TNIP2及びWHSC1からなる群から選択されるFGFR3遺伝子融合パートナーを含む。 いくつかの実施形態では、FGFR3遺伝子融合は、BAIAP2L1, JAKMIP1, TACC3及びTNIP2からなる群から選択されるFGFR3遺伝子融合パートナーを含む。
【0146】
特定の実施形態では、患者は、例えば次世代シークエンシング、循環腫瘍DNA分析又は蛍光in situハイブリダイゼーションアッセイを用いて、上部管尿路上皮癌がFGFR1、FGFR2又はFGFR3突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合を有するかどうかを決定するために分子プリスクリーングを受ける。 いくつかの実施形態では、分子プリスクリーニングは、有効量のインフィグラチニブ、又は薬学的に許容されるその塩の投与前に行われる。 いくつかの実施形態では、分子プリスクリーニングは、シスプラチンをベースとする化学療法療法の前投与の前に行われる。
【0147】
特定の実施形態において、尿路上皮癌は、FGFR1、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異を有する。 特定の実施形態では、尿路上皮がんは、FGFR1変異を有する。 特定の実施形態では、尿路上皮がんは、FGFR2変異を有する。 特定の実施形態では、尿路上皮癌は、FGFR3変異を有する。
【0148】
特定の実施形態では、FGFR1突然変異は、FGFR1 G818R, FGFR1 K656E, FGFR1 N546K, FGFR1 R445W, FGFR1 T141R及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0149】
特定の実施形態では、FGFR2変異は、FGFR2 D471N, FGFR2 A315T, FGFR2 D336N, FGFR2 P253R, FGFR2 S252W, FGFR2 Y375C, FGFR2 I547V, FGFR2 K659E, FGFR2 N549K, FGFR2 N549S, FGFR2 N549Y, FGFR2 V395D, FGFR2 C382R, FGFR2 E565A, FGFR2 K641R, FGFR2 K659M, FGFR2 L617V , FGFR2 N549H, FGFR2 N550K, FGFR2 V564F及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0150】
特定の実施形態では、FGFR3変異は、FGFR3 A391E, FGFR3 A393E, FGFR3 D785Y, FGFR3 E627K, FGFR3 G370C, FGFR3 G372C, FGFR3 G380R, FGFR3 K650E, FGFR3 K652E/Q, FGFR3 K650M, FGFR3 K652M/T, FGFR3 K650N, FGFR3 K650T, FGFR3 K652E, FGFR3 N540S, FGFR3 R248C, FGFR3 R399C, FGFR3 S131L, FGFR3 S249C, FGFR3 S249C, FGFR3 S371C, FGFR3 V555M, FGFR3 V677I, FGFR3 Y373C, FGFR3 Y375Cおよびそれらの組合せからなる群から選択される。 いくつかの実施形態では、FGFR3変異は、FGFR3 R248C, FGFR3 S249C, FGFR3 G372C, FGFR3 A393E, FGFR3 Y375C, FGFR3 K652M/T, FGFR3 K652E/Q及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。 特定の実施形態では、本明細書に記載のFGFR3変異は、FGFR3 mRNAアイソフォームNM_001163213.1に対するアミノ酸番号付けに対応する。 特定の実施形態では、様々なFGFR3アイソフォームにおける類似の位置に対応するアミノ酸ナンバリングは、当業者に知られているように、異なっていてもよい(例えば、アイソフォームNM_00142.5においてA393EはA391Eとなる)。
【0151】
特定の実施形態において、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、1日1回、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を経口投与することを含む。 特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約100mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を、1日1回経口投与することを含む。 特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約75mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を1日1回、経口投与することを含む。 特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約50mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を、1日1回経口投与することを含む。 特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約25mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を、1日1回経口投与することを含む。
【0152】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を3週間連続して患者に毎日1回経口投与し、1週間インフィグラチニブを投与しない28日間のサイクルを構成する。
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約100mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を、3週間連続して患者に1日1回経口投与し、1週間インフィグラチニブを投与しない28日サイクルを構成する。
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約75mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を、3週間連続して患者に1日1回経口投与し、1週間はインフィグラチニブを投与しない28日サイクルを構成する。
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約50mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を、3週間連続して患者に1日1回経口投与し、1週間はインフィグラチニブを投与しない28日サイクルを構成する。
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を投与することは、約25mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩を、3週間連続して患者に1日1回経口投与し、1週間はインフィグラチニブを投与しない28日サイクルを構成する。
【0153】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の連続した28日サイクルの間、患者に投与される。 一部の実施形態では、有効量のインフィグラチニブまたはその薬学的に許容される塩が、2回連続の28日間サイクルで患者に投与される。
【0154】
特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、単位用量として提供される。 特定の実施形態では、約100mgのインフィグラチニブ又は薬学的に許容されるその塩が、単位用量として提供される。 特定の実施形態では、約75mgのインフィグラチニブ又は薬学的に許容されるその塩が、単位用量として提供される。 特定の実施形態では、約50mgのインフィグラチニブ又は薬学的に許容されるその塩が、単位用量として提供される。 特定の実施形態では、約25mgのインフィグラチニブ又は薬学的に許容されるその塩が、単位用量として提供される。
【0155】
特定の実施形態において、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、100mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。 ある実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、75mgの単位用量及び50mgの単位用量として提供される。
【0156】
特定の実施形態において、約100mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、75mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。 ある実施形態では、約100mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、2つの50mg単位用量として提供される。
【0157】
特定の実施形態では、約75mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩が、50mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。
【0158】
特定の実施形態において、約50mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩は、2つの25mgの単位用量として提供される。
【0159】
特定の実施形態では、方法は、それを必要とする患者に、有効量のインフィグラチニブの薬学的に許容される塩を投与することを含む。 一部の実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩は、一リン酸塩である。 いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩は、無水一リン酸塩である。 いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容される塩は、15.0°±0.2°のX線粉末回折(XRPD)ピーク(2シータ)により特徴付けられる多形形態の無水一リン酸塩である。 いくつかの実施形態において、インフィグラチニブの無水結晶一リン酸塩の多形形態は、本明細書に記載されている。
【0160】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌を治療する方法であって、本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを患者に投与することを含む方法である。
【0161】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における尿路上皮癌を治療する方法であって、本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを患者に投与することを含み、患者が以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術、または膀胱切除術を受けていた場合である、方法である。
【0162】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における尿路上皮癌の治療方法であって、本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを患者に投与することを含み、ここで患者は以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術、または膀胱摘出術を受けたことがある、というものである。 いくつかの実施形態では、患者は、投与から120日以内に、以前に腎尿管切除術、遠位尿管切除術又は膀胱切除術を受けている。
【0163】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、それを必要とする患者における上部管尿路上皮癌を治療する方法であって、本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを患者に投与することを含み、医薬組成物はネオアジュバント療法として投与される。
【0164】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合を有する上部管尿路上皮癌を有するそれを必要とする患者の治療方法であって、その方法は、以下を含む方法である。
(i)患者から試料を得、
(ii)少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合の存在について試料を分析し、および
(iii)本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを患者に投与することであり、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩が、ネオアジュバント療法として投与される方法。
【0165】
特定の実施形態では、サンプルは、選択的上部管洗浄、細針吸引、コア針生検、ブラシ生検、尿細胞フリーDNA、血液細胞フリーDNA、及び他の細胞学サンプル(胸水などの転移部位の細胞学サンプリング用)からなる群より選択される方法を用いて患者から取得される。
【0166】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列または遺伝子融合を有する上部管尿路上皮癌を有するそれを必要とする患者を治療する方法であり、その方法は以下の工程を包む。
(i)患者から試料を得ることであって、試料が、選択的上部管洗浄を用いて患者から得られ、
(ii)少なくとも1つのFGFR3突然変異、遺伝子再配列又は遺伝子融合の存在について試料を分析し、及び
(iii)本明細書に開示される医薬組成物のいずれか1つを患者に投与することであり、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容される塩が、ネオアジュバント療法として投与される方法。
【0167】
非筋肉浸潤性膀胱がんの治療
一態様では、それを必要とする患者における非筋肉浸潤性膀胱がんを治療する方法が本明細書に提供される。非筋肉浸潤性膀胱がんはまた、中リスク非筋肉浸潤性膀胱がん又は高グレード非侵襲性乳頭状尿路上皮がんと称することがある。
【0168】
特定の実施形態では、それを必要とする患者における非筋肉浸潤性膀胱がんを治療する方法であって、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を患者に投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0169】
特定の実施形態では、患者は、別の治療薬の事前投与後、非筋肉浸潤性膀胱がんの再発を有する。
【0170】
特定の実施形態では、それを必要とする患者における非筋肉浸潤性膀胱がんを治療する方法であって、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を投与することを含み、ここで患者が別の治療薬の事前投与後、非筋肉浸潤性膀胱がんの再発を有する、方法が本明細書に提供される。
【0171】
特定の実施形態では、別の治療薬の事前投与は、非筋肉浸潤性膀胱がんに対する治療法である。いくつかの実施形態では、別の治療薬の事前投与は、免疫療法剤の投与である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤の事前投与は、カルメット-ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)を含むレジメンである。
【0172】
特定の実施形態では、非筋肉浸潤性膀胱がんは、FGFR3突然変異、遺伝子再構成又は遺伝子融合を有する。
【0173】
特定の実施形態では、非筋肉浸潤性膀胱がんは、FGFR3突然変異を有する。いくつかの実施形態では、FGFR3突然変異は、FGFR3 K650E、FGFR3 S249C、FGFR3 R248C、FGFR3 Y375C、FGFR3 G372C、FGFR3 S373C、FGFR3 A393E、FGFR3 A371A、FGFR3 I378C、FGFR3 L379L、FGFR3 G382R及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0174】
特定の実施形態では、非筋肉浸潤性膀胱がんは、FGFR3遺伝子融合を有する。いくつかの実施形態では、FGFR3遺伝子融合は、FGFR3遺伝子融合パートナーTACC3を含む。
【0175】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を1日1回投与することを含む。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約100mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を1日1回投与することを含む。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約75mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を1日1回投与することを含む。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約50mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を1日1回投与することを含む。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約25mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩を1日1回投与することを含む。
【0176】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩が患者に1日1回で3連続週にわたり投与され、そしてインフィグラチニブが1週間投与されないような28日サイクルを含む。有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約100mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩が患者に1日1回で3連続週にわたり投与され、そしてインフィグラチニブが1週間投与されないような28日サイクルを含む。有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約75mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩が患者に1日1回で3連続週にわたり投与され、そしてインフィグラチニブが1週間投与されないような28日サイクルを含む。有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約50mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩が患者に1日1回で3連続週にわたり投与され、そしてインフィグラチニブが1週間投与されないような28日サイクルを含む。有効量のインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩の投与は、約25mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩が患者に1日1回で3連続週にわたり投与され、そしてインフィグラチニブが1週間投与されないような28日サイクルを含む。
【0177】
特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、単位用量として提供される。特定の実施形態では、約100mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、単位用量として提供される。特定の実施形態では、約75mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、単位用量として提供される。特定の実施形態では、約50mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、単位用量として提供される。特定の実施形態では、約25mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、単位用量として提供される。
【0178】
特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、100mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。いくつかの実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、75mgの単位用量及び50mgの単位用量として提供される。
【0179】
特定の実施形態では、約100mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、75mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。いくつかの実施形態では、約100mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、2つの50mgの単位用量として提供される。
【0180】
特定の実施形態では、約75mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、50mgの単位用量及び25mgの単位用量として提供される。
【0181】
特定の実施形態では、約50mgのインフィグラチニブ、又はその薬学的に許容できる塩は、2つの25mgの単位用量として提供される。
【0182】
特定の実施形態では、約125mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に経口投与される。特定の実施形態では、約100mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に経口投与される。特定の実施形態では、約75mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に経口投与される。特定の実施形態では、約50mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に経口投与される。特定の実施形態では、約25mgのインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に経口投与される。
【0183】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、局所投与を介して患者に投与される。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に膀胱内投与される。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、患者に腫瘍内投与される。
【0184】
特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、徐放性の移植可能な装置の患者の膀胱への挿入を介して送達される。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、徐放性の移植可能な装置の患者の尿管への挿入を介して送達される。特定の実施形態では、有効量のインフィグラチニブ又はその薬学的に許容できる塩は、徐放性の移植可能な装置の患者の腎盂への挿入を介して送達される。
【0185】
特定の実施形態では、徐放性の移植可能な装置は、超弾性ワイヤーフォームを含む二重管腔シリコンチューブである。超弾性ワイヤーフォームを含む二重管腔シリコンチューブの一例が、Taris装置(Taris device)である。
【0186】
特定の実施形態では、徐放性の移植可能な装置は、ゲルである。いくつかの実施形態では、ゲルは、生分解性ゲルである。生分解性ゲルの一例が、ハイドロゲルである。
【0187】
特定の実施形態では、当該方法は、それを必要とする患者に有効量のインフィグラチニブの薬学的に許容できる塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容できる塩は、一リン酸塩である。いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容できる塩は、無水一リン酸塩である。いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの薬学的に許容できる塩は、15.0°±0.2°でのX線粉末回折(XRPD)ピーク(2θ)を特徴とする多形形態の無水一リン酸塩である。いくつかの実施形態では、インフィグラチニブの無水結晶一リン酸塩の多形形態は、本明細書に記載される。
【0188】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、有効量の第2の治療薬を患者に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、有効量の第2の治療薬は、局所投与を介して患者に投与される。特定の実施形態では、有効量の第2の治療薬は、患者に膀胱内投与される。
【0189】
特定の実施形態では、有効量の第2の治療薬は、徐放性の移植可能な装置の患者の膀胱への挿入を介して送達される。特定の実施形態では、有効量の第2の治療薬は、徐放性の移植可能な装置の患者の尿管への挿入を介して送達される。特定の実施形態では、有効量の第2の治療薬は、徐放性の移植可能な装置の患者の腎盂への挿入を介して送達される。
【0190】
特定の実施形態では、徐放性の移植可能な装置は、超弾性ワイヤーフォームを含む二重管腔シリコンチューブである。超弾性ワイヤーフォームを含む二重管腔シリコンチューブの一例が、Taris装置である。
【0191】
特定の実施形態では、徐放性の移植可能な装置は、ゲルである。いくつかの実施形態では、ゲルは、生分解性ゲルである。生分解性ゲルの一例が、ハイドロゲルである。
【0192】
特定の実施形態では、第2の治療薬は、ゲムシタビン又はその薬学的に許容できる塩である。
【0193】
別の態様では、それを必要とする患者における非筋肉浸潤性膀胱がんを治療する方法であって、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか1つを患者に投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0194】
別の態様では、それを必要とする患者における非筋肉浸潤性膀胱がんを治療する方法であって、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか1つを患者に投与することを含み、ここで患者が別の治療薬の事前投与後に非筋肉浸潤性膀胱がんの再発を有する、方法が本明細書に提供される。
【実施例】
【0195】
本明細書において記載される本開示がさらに詳しく理解されるために、以下の実施例を記載する。本出願において記載される合成の及び生物学的な実施例は、本明細書において提供される化合物、医薬組成物、及び方法を例証するために提供され、それらの範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0196】
実施例1:3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシ-フェニル)-1-{6-4-(4-エチル-ピペラジン-1-イル)-フェニルアミノール-ピリミジン-4-イル}-1-メチル-尿素(インフィグラチニブ)の合成
ステップA:N-4-(4-エチル-ピペラジン-1-イル)-フェニル)-N’-メチル-ピリミジン-4,6-ジアミンの合成
ジオキサン(15mL)中4-(4-エチルピペラジン-1-イル)-アニリン(1g、4.88mmol)、(6-クロロ-ピリミジン-4-イル)-メチル-アミン(1.81g、12.68mmol、1.3eq.)、及び4N HClの混合物を、5時間150℃まで封管において加熱する。反応混合物を、濃縮し、ジクロロメタン(DCM)及び炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液により希釈する。水層を、DCMにより分離し、抽出する。有機相を、ブラインにより洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、ろ過し、濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH、93:7)によって残渣を精製し、その後、ジエチルエーテル中でトリチュレーションし、白色固体として表題化合物を得る:ESI-MS:313.2[MH]+;tR=1.10分(勾配J);TLC:Rf=0.21(DCM/MeOH、93:7)。
【0197】
ステップB:4-(4-エチルピペラジン-1-イル)-アニリンの合成
MeOH(120mL)中1-エチル-4-(4-ニトロ-フェニル)-ピペラジン(6.2g、26.35mmol)及びラネーニッケル(2g)の懸濁液を、水素雰囲気下、RTで7時間撹拌する。反応混合物を、セライトのパッドを通してろ過し、濃縮し、紫色の固体として5.3gの表題化合物を得る:ESI-MS:206.1[MH]+;TLC:Rf=0.15(DCM/MeOH+1%NH3
aq、9:1)。
【0198】
ステップC:1-エチル-4-(4-ニトロ-フェニル)-ピペラジンの合成
1-ブロモ-4-ニトロベンゼン(6g、29.7mmol)及び1-エチルピペラジン(7.6mL、59.4mmol、2eq.)の混合物を、15時間80℃まで加熱する。RTまで冷却した後、反応混合物を、水及びDCM/MeOH、9:1により希釈する。水層を、DCM/MeOH、9:1により分離し、抽出する。有機相を、ブラインにより洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、ろ過し、濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH+1%NH3
aq、9:1)によって残渣を精製し、黄色の固体として6.2gの表題化合物を得る:ESI-MS:236.0[MH]+;tR=2.35分(純度:100%,勾配J);TLC:Rf=0.50(DCM/MeOH+1%NH3
aq、9:1)。
【0199】
ステップD:(6-クロロ-ピリミジン-4-イル)-メチル-アミンの合成
この物質は、文献において公開される手順を変更して調製した(J.Appl.Chem.1955,5,358):イソプロパノール(60mL)中市販で入手可能な4,6-ジクロロピリミジン(20g、131.6mmol、1.0eq.)の懸濁液に、内部温度が50℃を超えて上昇しないように、エタノール(40.1mL、328.9mmol、2.5eq.)中33%メチルアミンを追加する。追加が完了したら、反応混合物を、室温で1時間撹拌した。次に、水(50mL)を追加し、形成される懸濁液を、5℃まで氷浴で冷やす。沈殿した生成物を、ろ過し、冷イソプロパノール/水2:1(45mL)及び水により洗浄する。収集した物質を、45℃で一晩、真空乾燥させ、無色の粉末として表題化合物を得る:tR=3.57分(純度:>99%、勾配A)、ESI-MS:144.3/146.2[MH]+。
【0200】
ステップE:3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシ-フェニル)-1-{6-4-(4-エチル-ピペラジン-1-イル)-フェニルアミノール-ピリミジン-4-イル}-1-メチル-尿素の合成
表題化合物は、2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル-イソシアネート(1.25eq.)を、トルエン中N-4-(4-エチル-ピペラジン-1-イル)-フェニル)-N’-メチル-ピリミジン-4,6-ジアミン(2.39g、7.7mmol、1eq.)の溶液に追加し、還流させながら1.5時間、反応混合物を撹拌することによって、調製した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH+1%NH3
aq、95:5)によって粗生成物を精製し、白色固体として表題化合物を得る:ESI-MS:560.0/561.9[MH]+;tR=3.54分(純度:100%、勾配J);TLC:Rf=0.28(DCM/MeOH+1%NH3
aq、95:5)。分析:C26H31N7O3Cl2,計算値 C,55.72%;H,5.57%;N,17.49%;O,8.56%;C1,12.65%。実測値 C,55.96%:H,5.84%:N,17.17%;O,8.46%;C1,12.57%。
【0201】
実施例2:3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシ-フェニル)-1-{6-4-(4-エチル-ピペラジン-1-イル)-フェニルアミノール-ピリミジン-4-イル}-1-メチル-尿素の一リン酸塩形態A(BGJ398)の合成
丸底フラスコに、3-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-1-(6-4-(4-エチルピペラジン-1-イル)フェニルアミノール-ピリミジン-4-イル)-1-メチル-尿素(134g、240mmol)及びイソプロパノール(IPA)(2000mL)を追加した。懸濁液を撹拌し、50℃まで加熱し、水(2000mL)中リン酸(73.5g、750mmol)の溶液を、分けてそれに追加した。混合物を、30分間60℃で撹拌し、ポリプロピレンパッドを通してろ過した。パッドを、温かいIPA/水(1:1、200mL)により洗浄し、ろ液を組み合わせた。この透明溶液に、IPA(6000mL)を追加し、混合物を20分間、還流下で撹拌し、室温(25℃)までゆっくり冷却し、24時間撹拌した。白色の塩生成物を、ろ過によって収集し、IPA(2×500mL)により洗浄し、2日間、減圧下で60℃のオーブンで乾燥させ、無水結晶一リン酸塩(110g)がもたらされた。収率70%。HPLCによる純度>98%。分析:C26H34N7O7Cl2P,計算値 C,47.42%;H,5.20%;N,14.89%;O,17.01%;C1,10.77%;P.4.70%。実測値 C,47.40%;H,5.11%:N,14.71%;O,17.18%:Cl,10.73%;P 4.87%。
【0202】
実施例3:25mg、100mg及び125mg用量のインフィグラチニブ医薬製剤についての製造プロセス
以下の実施例において、製造プロセスを、すべての例示される投与量について概説する。
成分について該当する量は、下記の実施例3.1、3.2、及び3.3の配合において提供する。
【0203】
医薬配合物の製造
セルロースMK-GR、ラクトース(粉)、インフィグラチニブ、セルロースHPM 603、及び架橋ポリビニルピロリドン(PVP-XL)を、垂直湿式高剪断造粒機(例えばTK Fiedler(底部駆動型、65L)の中に、約45~50%の造粒機充填容積で、順に追加し、次に、5つの構成成分を、インペラーを60~270rpm、好ましくは150rpmに設定し;チョッパーを600~3000rpm、好ましくは1500rpmに設定して、約5分間混合し、乾燥した配合物を得た。
【0204】
精製水を、造粒液として、7分間、約385g/分の速度で(水を約2.7kgまで追加)、スプレーの圧力を1.5バールに設定し(インペラーを60~270rpm、好ましくは150rpmに設定し;チョッパーを600~3000rpm、好ましくは1500rpmに設定)、追加した。結果として生じる造粒混合物を、約3分間練る(インペラーを60~270rpm、好ましくは150rpmに設定し;チョッパーを600~3000rpm、好ましくは1500rpmに設定)。練られた造粒塊を、90~600rpmでComilを使用して、3.0mmのふるいにかける。この工程段階は、必須ではなく、省略されてもよいが、好ましくは、この工程段階は、実行される。
【0205】
顆粒剤は、≦2.2%の乾燥エンドポイントに到達するように、流動層乾燥装置、例えばGlatt GPCG 15/30又は等価物において、55~65℃、好ましくは60℃の吸気温度、約30~40℃の生成物温度、及び300~1200m3/時の吸気容積で乾燥させる。
【0206】
乾燥させた顆粒剤は、Comilにおいて800~1000μmでふるいにかける。結果として生じる乾燥させ、ふるいにかけた顆粒剤はまた、本明細書において内側相とも称される。
【0207】
外側相の賦形剤PVP XL及びAerosil 200を、およそ50~150rpmでComilにおいて900~1000μmでふるいにかけ、次に、約5分間、4~25rpm、好ましくは17rpmで混合することによって、適したコンテナー(例えばビンブレンダー、ターブラ(turbula)、又は等価物)中で内側相と組み合わせる(33~66%の粉末を充填)。
【0208】
固体は、約17rpmで約3分間、拡散ミキサー(タンブル)又はビンブレンダー(例えばBohle PM400、Turbula、若しくは等価物)において配合することによって、追加の外側相賦形剤として500rpmでふるいにかけたステアリン酸マグネシウムを追加することによってなめらかにし、カプセル充填にすぐに使うことができる最終配合物を得る。
【0209】
カプセルの製造
最終配合物は、次に、ドーシングプレート原理を有する又はドーシングチューブを有するカプセル化装置(例えばHoefliger&Karg GKF330、Bosch GKF1500、Zanasi12 E.Zanasi40 E)によって、10,000~100,000キャップ/時のカプセル化速度で且つ予圧なしで、サイズ0、1、又は3の硬ゼラチンカプセル(HGC)の中に充填する。カプセルの重量を検査し、カプセルを除塵する。
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
実施例4:FGFR3ゲノム変異を伴う浸潤性尿路上皮がんを有する患者の治療のための経口インフィグラチニブ(BGJ398)の試験
試験の目的
主目的:腎尿管摘除術、遠位尿管摘除術、又は膀胱全摘除術に続いてインフィグラチニブとプラセボで治療された、FGFR3ゲノム変異を伴う浸潤性尿路上皮がんを有する対象の中央判定無疾患生存(DFS)を比較すること。
二次目的:インフィグラチニブとプラセボで治療された対象における腔内での低リスク再発を含むDFSを比較すること。
インフィグラチニブとプラセボで治療された対象の無転移生存(MFS)を比較すること。
インフィグラチニブとプラセボで治療された対象における全生存(OS)を比較すること。
インフィグラチニブとプラセボで治療された対象における、治験責任医師判定DFSを比較すること。
インフィグラチニブの術後アジュバント単独療法として投与されるときの安全性及び耐性を特徴づける。
インフィグラチニブとプラセボで治療された対象における生活の質(QOL)を比較する。
インフィグラチニブのPKを評価する。
無細胞DNA(cfDNA)及び/又はRNAを耐性の機構について評価する。
【0214】
試験のエンドポイント
無作為化日から、局所/領域又は対側浸潤性又は転移性再発、又は任意の原因による死亡のいずれか早く生じる方までの中央判定DFS。
無作為化日からあらゆる再発又は任意の原因による死亡のいずれか早く生じる方までの腔内での低リスク再発を含む治験責任医師判定DFS。
無作為化からあらゆる転移性再発又は任意の原因による死亡のいずれか早く生じる方までの期間と定義される、治験責任医師判定MFS。
無作為化から死亡までの期間と定義されるOS。
有害事象(AE)及び重篤AE(SAE)のタイプ、頻度、及び重症度、実験室異常、並びに他の安全性所見。
無作為化日から、局所/領域又は対側浸潤性又は転移性再発、又は任意の原因による死亡のいずれか早く生じる方までの治験責任医師判定DFS。
EuroQOL five dimensions questionnaire(EQ-5D)及びEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)生活の質質問表(QLQ)C30による測定としてのQOL。
薬物動態(PK)パラメータ(トラフ及び最大血漿濃度)。
疾患再発のバイオマーカーとして、cfDNA及び/又はRNA配列決定によって検出されるFGFR3変異。
【0215】
試験設計
これは、腎尿管摘除術、遠位尿管摘除術、又は膀胱全摘除術後120日以内であり、且つシスプラチンに基づく(ネオ)アジュバント化学療法に不適格であるか、又はネオアジュバント療法後に残存疾患を有する、FGFR3ゲノム変異を伴う浸潤性尿路上皮がんを有する約218名の成人対象におけるインフィグラチニブの有効性を評価するための第3相多施設二重盲検無作為化プラセボ対照試験である。サンプルサイズは、アダプティブデザインのpromising zoneアプローチを用いる暫定分析結果に基づき、全部で328名の対象までさらに増加してもよい。浸潤性尿路上皮がんを有する対象は、浸潤性上部尿路上皮がん(UTUC)及び膀胱の尿路上皮がん(UCB)を有する対象を含む。
【0216】
対象は、1:1に無作為化し、各28日サイクルの最初の3週(21日)間、経口インフィグラチニブ又はプラセボを1日1回、最大で52週間、又は局所/領域又は対側浸潤性又は転移性再発、許容できない毒性、インフォームドコンセントの撤回、若しくは死亡まで、投与を受ける。対象は、腫瘍再発について、X線検査又は尿細胞診により評価する。UTUCを有する対象(即ち膀胱を有する対象)の場合、膀胱鏡検査を実施する。ラジオグラフィー、尿細胞診、及び膀胱鏡検査は、盲検化された独立中央判定(BICR)による転移性再発又は治験責任医師評価による転移性再発まで、BICRによる局所/領域又は対側浸潤性再発が既に生じている場合、継続する。その時期以降、対象は、最終のDFS事象目標の達成(即ち試験の終了)後の1年間、生存状態及び抗がん療法の使用についてフォローアップする。
【0217】
約35の中央判定DFS事象が生じてから、暫定分析を実施する。DFSについての暫定分析の結果に基づき、サンプルサイズ増加がpromising zoneアプローチを用いて必要とみなされる場合、サンプルサイズ/DFS事象目標は、最大で50%増加する(328/105)。サンプルサイズが増加し、事象目標が調節される場合、調節された事象目標が達成されるとき、その後の分析は、それにより時間的に調節する。サンプルサイズ適合法の詳細は、適合計画において事前に特定する。
【0218】
対象は、ネオアジュバント化学療法(有又は無)、ステージ(pT2対>pT2)、及び疾患(UTUC対UCB)に先立ち、リンパ節関与(有又は無)に応じて層別化する。
【0219】
対象の数:試験参加について初期には約218名の対象を計画する。サンプルサイズは、アダプティブデザインのpromising zoneアプローチを用いる暫定分析結果に基づき、全部で328名の対象まで増加してもよい。集団の15%以下がUCBで登録し、UTUC対象の25%がpT2 UTUCを有する(限界は層別化に基づくことになる)。
【0220】
診断及び組み入れ基準
適格な対象は以下の基準のすべてを満たす。
1.いずれかの性別の≧18歳である。
2.インフォームドコンセントに署名している。
3.腎尿管摘除術、遠位尿管摘除術、又は膀胱全摘除術後120日以内に感受性FGFR3変異を有する浸潤性尿路上皮がんを組織学的又は細胞学的に確認している。
FGFR3変異のサンプル及び文書に関連して、FGFR3突然変異は、FGFR3遺伝子がエクソン7(R248C、S249C)、エクソン10(G370C、A391E、Y373C)、又はエクソン15(K650M/T、K650E/Q)において突然変異される場合、確認される;FGFR3遺伝子融合又は転座は、遺伝子融合又は転座が同定される場合、確認される;FGFR3突然変異におけるアミノ酸番号は、FoundationOne CDxテストによりFGFR3における遺伝子変異を報告するために使用されるNCBI Refseq IDである機能的FGFR3アイソフォーム1(NP_000133.1)を指す;FGFR3変異の(Foundation Medicine USAによる)FoundationOne CDxテストによる中央検査室判定の書面文書は、中国外の試験施設における試験適格性のために要求される。中国内の試験施設の場合、中央試験の場合に相当する試験により確認が求められる;組み入れ基準を満たすようにFGFR3変異の存在を確認するための分子プレスクリーニングを必要とする患者の場合、病理学的報告を伴うアーカイブ腫瘍サンプルは、FoundationOne CDxテストのためにFoundation Medicine USAに送付されなければならない;中国内の試験施設の場合、契約された中央検査室によるFGFR3変異の書面文書が試験適格性のために要求される。
ネオアジュバント化学療法後の状態の場合、外科的切除時の病理学的ステージは、AJCCステージ≧ypT2及び/又はyN+でなければならない。事前のネオアジュバント療法は、少なくとも3サイクルのネオアジュバントシスプラチンに基づく化学療法で、計画されたシスプラチン用量が70mg/m2/サイクルであると定義する。これを下回る又は非シスプラチンベースのネオアジュバント治療を受けた患者は、ネオアジュバント化学療法を受けていない者とみなされることになる。
ネオアジュバント化学療法後の状態でない場合、Galsky et al.(2011):クレアチニンクリアランス≦60mL/分、及び/又は有害事象における共通用語基準(CTCAEバージョン5.0又はそれ以降)でグレード≧2の聴力損失、又はCTCAEグレード≧2の神経障害に基づくと、シスプラチンベースのアジュバント化学療法を受けるには不適格である。
Galsky et al.(2011)に基づき、シスプラチンで不適格である場合、上部尿路疾患がAJCCステージ≧pT2 pN0-2 M0(リンパ節郭清術後又はリンパ節郭清術なし[pNx])の必要があり;UBCがAJCCステージ≧pT3又はpN+の必要があるという基準も満たさなければならない。
ベースライン時の疾患の不在を確認するため、無作為化前28日以内に中央判定された陰性の術後CT(固形癌効果判定基準[RECIST]v1.1によると、短軸<1.0cmを有し、増殖がなく且つ遠隔転移がないリンパ節と定義)又は陰性の生検を有する必要がある。
4.事前の手術又はネオアジュバント化学療法に関連する有害事象(AE)を有している場合、彼らは無作為化前にグレード≦2まで安定化又は回復している。
5.≦2の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)活動状態を有する。
6.出産可能性のある女性(WOCBP)の場合、試験薬の初回投与から7日以内に陰性の妊娠検査を有する必要がある。WOCBP及び性的パートナーがWOCBPである男性は、バリアー避妊法及び避妊の第2形態(臨床試験促進グループ2014)を使用することに同意する一方で、試験薬を試験薬の最終投与後の3か月間受ける必要がある。性的に活発な男性は、性交中にコンドームを使用する一方で、試験薬を試験薬の最終投与後の3か月間摂取する必要があり、この期間中に子供の父親になるべきでない。試験対象は、試験中と試験薬の最終投与後3か月間、精子及び卵子の提供を控えることに同意しなければならない。
7.試験訪問及び試験手順に積極的に従い、また従うことができる。
【0221】
除外基準
試験に適格であるように、対象は以下の基準のいずれも満たしてはならない。
1.腎尿管摘除術、遠位尿管摘除術、又は膀胱全摘除術後の陽性切除縁の存在。
2.過去30日以内にNMIBCに対するカルメット-ゲラン桿菌(BCG)又は他の膀胱内療法を受けている。
3.本試験への参加期間中に、CYP3A4の既知の強力な誘発剤又は阻害剤である薬剤による治療並びに血清リン及び/又はカルシウム濃度を増加させる薬物療法を現在受けているか又は受けることを計画している。対象は、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、及びプリミドンを含む、酵素誘発性抗てんかん薬を受けることが許可されない。事前のネオアジュバント化学療法又は免疫療法は、組み入れ基準#3が満たされる場合に可能である。事前の化学療法は、試験薬の初回投与前の治療に使用されるサイクル長より長い期間で完了していなければならない。生物学的療法を受けた対象は、試験薬の初回投与前の≧5の半減期である期間で治療を完了している必要がある。
4.本試験の最中に、浸潤性尿路上皮がんを治療することが意図された他の全身療法を受けることを計画している。
5.マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)又は選択的FGFR阻害剤による治療を事前に有しているか又は現在受診中である。
6.過去3年以内に、(1)浸潤性UBC又はUTUC(即ち試験中の疾患)、(2)非侵襲性尿路上皮がん、(3)任意の十分に治療された上皮内がん又は皮膚の非メラノーマがん、(4)試験への参加期間中に再発に対する治療を必要とすることが想定されない任意の他の治癒的に治療された悪性腫瘍、又は(5)臨床医の評価/声明に基づき、≧3年にわたり対象の生存状態に影響しない場合がある調査時に未治療のがん、以外の原発性悪性腫瘍の病歴を有する。上の基準を満たさない任意の他のがんの場合、メディカルモニターによる承諾書が要求される。
7.限定はされないが、眼科検査により確認される、水疱性/帯状角膜症、炎症又は潰瘍、角結膜炎を含む、角膜又は網膜障害/角膜症についての最新証拠を有する。試験参加に対して最小リスクを呈する、治験責任医師によって評価された無症候性眼疾患を有する対象は、試験に登録してもよい。
8.石灰化リンパ節、微量な肺実質石灰化、小さい腎嚢胞又は石灰化、及び無症候性冠動脈石灰化を例外として、限定はされないが、軟部組織、腎臓、腸、脈管構造、心筋、及び肺を含む、広範な組織の石灰化の病歴及び/又は最新証拠を有する。
9.経口インフィグラチニブの吸収を有意に改変することがある胃腸(GI)機能障害又はGI疾患(例えば、活動性潰瘍性疾患、制御されない悪心、嘔吐、下痢、吸収不良症候群、小腸切除)を有する。
10.十分に制御されない限り、カルシウム/リン酸塩の恒常性の内分泌変化(例えば、副甲状腺障害、副甲状腺摘出術の病歴、腫瘍溶解、腫瘍状石灰化症)の最新証拠を有する。
11.試験薬の初回投与前7日以内に、グレープフルーツ、グレープフルーツジュース、グレープフルーツハイブリッド、ザクロ、スターフルーツ、ポメロ、又はセビリアオレンジ又はこれらの果実のジュースを含有する製品を消費している。
12.試験薬の初回投与前7日以内にQT間隔を延長することが知られ、且つ/又は多形性心室頻拍(TdP)のリスクに関連する薬物を使用している。
13.試験薬の初回投与前90日以内にアミオダロンを使用している。
14.不十分な骨髄機能:絶対好中球数(ANC)<1,000個/mm3(1.0×109個/L);血小板<75,000個/mm3(<75×109個/L);ヘモグロビン<9.0g/dLを有する。
15.不十分な肝臓及び腎臓機能:総ビリルビン>1.5×試験機関の正常上限(ULN)(文書化されたジルベール症候群を有する患者の場合、直接ビリルビン>1.5×ULNについての除外及び登録は、メディカルモニターによる承認を必要とする);アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST/SGOT)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/SGPT)>2.5×試験機関のULN;(コッククロフト・ゴールト[C-G]式(Cockcroft and Gault,1976)を用いて計算、又は<30mL/分のクレアチニンクリアランスが測定。
16.アミラーゼ又はリパーゼ>2.0×ULNを有する。
17.異常なカルシウム-リン酸塩の恒常性:試験機関のULNより高い無機リン;試験機関のULNより高い総血清カルシウム(補正可能)を有する。
18.治療を必要とするうっ血性心不全(ニューヨーク心臓病学会[NYHA]グレード≧2)、多重解像度取得(MUGA)スキャン若しくは心エコー図(ECHO)によって判定された左室駆出率(LVEF)<50%若しくは局所正常下限、又は管理不良高血圧症(欧州心臓学会及び欧州高血圧学会ガイドライン[Williams et al.,2018]を参照);有害事象における共通用語基準(バージョン5.0又はそれ以降)でグレード≧2の心室不整脈、心房細動、徐脈、又は伝導異常の存在;不安定狭心症又は急性心筋梗塞≦試験薬の初回投与前3か月;QTcF>470ミリ秒(男性及び女性)のいずれかを含む臨床的に有意な心臓病を有する。最初の心電図(ECG)においてQTcFが>470ミリ秒である場合、少なくとも5分で隔てられた全部で3つのECGが実施されるべきであることに注目されたし。QTcFについてのこれら3つの連続的結果の平均が≦470ミリ秒である場合、対象はこれに関して適格性;先天性QT延長症候群を満たす。
19.最近(≦試験薬の初回投与前3か月)、一過性脳虚血発作又は脳卒中を有している。
20.女性の場合、妊娠が受胎後で妊娠の終結までの女性の状態と定義される場合に妊娠中又は保育中(授乳中)であり、それはヒト絨毛性ゴナドトロピン尿又は血液の実験室試験陽性により確認される。
21.試験薬の任意の成分に対して既知のアレルギー/過敏症反応を有する。
22.治験責任医師の所見では、試験参加に干渉することがある任意の他の併発疾患又は病態を有する。
【0222】
インフィグラチニブ群に無作為化された対象は、インフィグラチニブ125mg QDの経口投与(1回の100mgカプセル剤及び1回の25mgカプセル剤として投与)として硬質ゼラチンカプセル剤を、3週オン(1~21日目)/1週オフ(22~28日目)の投与スケジュールを用いて受ける。
【0223】
プラセボに無作為化された対象は、経口使用のための硬質ゼラチンカプセル剤として提供され、3週オン(1~21日目)/1週オフ(22~28日目)の投与スケジュールで1日1回投与される、活性試験薬(インフィグラチニブ)に外見上適合するプラセボを受ける。
【0224】
治療の持続期間
対象は治療を最大52週間受ける。
【0225】
評価のための基準
有効性:評価は、治療開始前28日以内のベースライン時、3か月から最大24か月ごと、C13D28又は治療終了(EOT)時、そしてそれ以降は毎年、又はBICRによる局所/領域又は対側浸潤性再発が既に生じている場合の治験責任医師評価による転移性再発まで実施されるコンピュータ断層撮影(CT)/磁気共鳴画像法(MRI)スキャンからなる。膀胱鏡検査及び細胞診(膀胱でのUTUC対象の場合)は、スクリーニング時;3、6、9、及び12か月;C13D28又はEOT時;次いで6か月から最大24か月ごと、そしてそれ以降は毎年、又はBICRによる局所/領域又は対側浸潤性再発が既に生じている場合のBICRによる転移性再発若しくは治験責任医師評価による転移性再発まで実施する。治療の年末までに再発以外の理由で治療から脱落する対象は、評価のスケジュール(表3:評価のスケジュール:PKサンプリング)に応じて有効性評価を完遂し続ける必要がある。
【0226】
QOL:対象QOLは、スクリーニング時、及び試験薬の中断後の最初6か月のフォローアップ訪問を通じて各訪問時に、EORTC QLQ-C30及びEQ-5Dを用いて評価する。
【0227】
PK:血液サンプルは、サイクル1、1日目の投与前と投与後4時間(±30分);サイクル1、21日目の投与前と投与後4時間(±30分);及びサイクル2及びその後のすべてのサイクル、21日目の投与前と投与後4時間(±30分)に収集する。インフィグラチニブ及びその活性代謝物の血漿濃度を測定する。Ctrough及びCmaxの薬物動態(PK)パラメータも計算する。
【0228】
安全性:評価:有害事象(AE及び重篤AE[SAE])、臨床検査(血液及び尿)、身体検査、バイタルサイン、及び心電図(ECG)、LVEF(ECHO又はMUGA)、ECOG、眼科的評価は、スクリーニング時及び治療期間全体を通じた各訪問時(表2参照)及び治療から最大30日後に収集する。網膜光干渉断層法(OCT)スキャン画像をBICRに送る。AE及びSAEは、治療から30日後に評価する。
【0229】
統計学的方法
サンプルサイズ:約218名の対象は、最初に本試験における治療に二重盲検様式で無作為に割り当てる。サンプルサイズは、アダプティブデザインのpromising zoneアプローチを用いる暫定分析結果に基づいて、全部で328名の対象まで増加し得る。試験は、約35の中央判定DFS事象(初期事象目標の50%)で1つの暫定分析を伴う群逐次デザインから開始する。中央判定DFSについての暫定分析時に費やされた0.00005の固定された片側α、及び一次中央判定DFS分析時に費やされたαの残り(片側α=0.025)での有効性境界について、Haybittle-Peto境界を使用する。有効性境界は暫定中央判定DFS分析用に特定化されるが、有効性境界が交差される場合、暫定分析時、試験は停止させない。O’Brien-Fleming境界を近似するLan DeMets消費関数を、非結合不毛境界に使用する。プラセボ群において最初の2年以内に対象の46%、及び3年目以降に5%の年間再発率において疾患が再発すると仮定すると、初期の群逐次デザインで要求されるサンプルサイズは、70の中央判定DFS事象に達するように約218名の対象である。これは、3年の均一な登録、1年フォローアップ、10%の年間脱落率、及び0.5のハザード比(HR)を仮定している。当該サンプルサイズは、片側0.025でログランク検定を制御するタイプI誤差に基づき、0.5のHRを仮定すると、DFSにおける差異に対する約80%の検出力を提供することになる。
【0230】
暫定分析時、試験では、サンプルサイズ及び事象目標を必要に応じて調節するため、アダプティブデザインのpromising zoneアプローチを用いる。サンプルサイズ適合法の詳細は、適合計画の中で予め特定する。暫定分析時、サンプルサイズの適合が不要である場合、試験は、最初の対象の無作為化から4年で計画された中央判定DFS事象の数(70)に達するように計画する。暫定結果及びpromising zoneアプローチに基づき、サンプルサイズの増加が必要とみなされる場合、サンプルサイズ/事象目標は、最大で50%増加することになる(328/105)。サンプルサイズが増加し、事象目標が調節される場合、その後の分析は、調節された事象目標が達成されるとき、それにより時間的に調節されることになり、調節された事象目標が達成されるとき、中央判定DFSを検定するための境界は、初期の群逐次デザインからの元の境界に基づくことになる。
【0231】
有効性分析:一次有効性分析は、無作為化された全対象を含む治療企図(ITT)集団に対して実施する。対象は、彼らが無作為化された治療群に応じて分析する。
【0232】
一次有効性エンドポイントの場合、暫定分析時のサンプルサイズ増加の場合のタイプI誤差を制御するため、(疾患タイプ[UTUC又はUBC]以外の無作為化層別化因子を用いる)層別化ログランク検定に基づくCHW統計学を使用する。通常の層別化ログランク検定は、サンプルサイズが暫定分析時に調節されない場合、中央判定DFSに対する推論において使用する。層別化Cox比例ハザードモデルに基づいて評価されたHRに対して、反復信頼区間を提示する。
【0233】
二次有効性エンドポイントのDFS(腔内低リスク再発を含む)、MFS、及びOSの場合、片側0.025のレベルでファミリー単位のタイプI誤差を制御するため、固定順検定法が後続する。
【0234】
中央判定DFSに対する検定が有意である場合、腔内低リスク再発を含むDFSを最初に検定し、その後、DFS及び腔内低リスク再発を含むDFSの双方が有意である場合、MFSに対して検定する。OSは、DFS、腔内低リスク再発を含むDFS、及びMFSがすべて有意である場合、最後に検定する。
【0235】
暫定分析:全部で35のDFS事象が生じているとき、1つの正式なDFSの暫定分析を実施する。
【0236】
暫定分析時、有効性についての試験は、中央判定DFSにおける有効性境界が交差される場合、停止させない。
【0237】
試験は、中央判定DFSを検定するための不毛境界が交差される場合、暫定DFS分析時の不毛性が理由で停止させてもよい。不毛停止境界は非結合性であり、さらなる検討の余地がある。
【0238】
promising zoneアプローチを用いてのDFSに対する暫定結果に基づき、サンプルサイズ増加が必要とみなされる場合、サンプルサイズ/事象目標は、最大で50%増加する(328/105)。サンプルサイズ適合法の詳細は、別々の適合計画の中で事前に特定する。
【0239】
実施例5:FGFR3ゲノム変異を伴う非筋肉浸潤性膀胱がんを有する患者における経口インフィグラチニブ(BGJ398)のマーカー病変試験
試験設計
膀胱内カルメット-ゲラン桿菌(BCG)による事前治療後に再発していた高い臨床グレードの非侵襲性乳頭状尿路上皮がんを有する患者は、試験に適格であった。
【0240】
患者のFGFR3変異状態を、事前治療又はアーカイブ腫瘍組織の試験を介して判定した。
【0241】
BGJ398を、3週オン、1週オフの投与スケジュール(1サイクル)を用いて、125mg POの用量で適格患者に経口投与した。2サイクルの治療後(7週目)、膀胱鏡検査及び尿細胞診を介して応答を判定した。完全寛解を有する患者に対し、さらに11か月間治療を継続するための選択肢を与えた。
【0242】
結果
患者4名を試験に登録した。患者中2名がFGFR3 S249C突然変異を有することが判定され、患者1名がFGFR3 K650E突然変異を有し、且つ患者1名がFGFR3-TACC3融合を有した。
【0243】
患者中3名が、7週評価時点で完全寛解を示した。他の患者は、4週目に治療中断後、より小さい壊死様病変を示した。
【0244】
臨床的に有意な毒性は、眼疾患、皮膚及び爪障害、並びに肝機能検査(LFT)における増加を含んだ。患者中2名は、毒性のため、用量減少を必要とした。患者中2名は、7週評価前に治療を中断したが、1名は皮膚毒性に起因し、もう1名は肝毒性に起因する。それ以外の患者2名は、7週目の完全寛解後、治療を継続したが、各々、視力/皮膚毒性及び爪感染/粘膜炎のため、3及び4サイクルの治療後(11及び16週後)、最終的に治療を中断した。
【0245】
【0246】
実施例6:上部尿路上皮がんにおけるネオアジュバントインフィグラチニブ(BGJ398)の耐性及び活性の試験
試験の目的
主目的:低グレード及び高グレードのプラチナ不適格な上部尿路上皮がん(UTUC)を有する患者におけるインフィグラチニブの耐性を評価する
【0247】
二次目的は、30~44の糸球体濾過率(GFR)を有する者におけるインフィグラチニブの耐性の評価;FGFR3変異の存在下及び不在下のUTUCにおける2サイクル後のインフィグラチニブの客観的奏効率(完全寛解(CR)及び部分寛解(PR))の評価;腫瘍組織FGFR3変異(存在/不在、変異タイプ、及びクローン状態)と高リン血症などの有害事象(AE)の応答及び発生率/重症度との相関;12か月以内の上部尿路、膀胱及び局所/遠隔再発;腎機能が治療前と2回の治療後に評価されること、を含む。
【0248】
目的は、応答及び/又は耐性の潜在的機構を同定するための、治療前及び後の、単細胞RNA配列決定(scRNA-seq)及びマスサイトメトリ(CyTOF)を使用しての腫瘍内異質性、遺伝子発現特性、及び腫瘍微小環境内変化の評価、並びにAEの発生率/重症度との相関;検出及び応答にとって有望なバイオマーカーとしての尿路/上部尿路を洗浄するFGFR3変異;FGFR3変異の検出のために加え、応答の予測変数としての無細胞DNA(cfDNA)、を含む。
【0249】
主要エンドポイント:過剰な毒性が理由で、2サイクルの治療を完了できない患者の割合
【0250】
二次エンドポイントは、2サイクルのインフィグラチニブ後、病理学的評価に基づき、客観的応答(CR又はPR)を達成している患者の百分率を含む。腫瘍マッピングを内視鏡的評価から実施し、病理学的所見と比較するために使用し、応答を判定する。
【0251】
他の考えられるエンドポイントは以下を含む:
(1)腫瘍試験:10xGenomicsプラットフォームを使用し、新しい凍結腫瘍に対してscRNA-seqを実施する。腫瘍細胞の異質性、FGFR3遺伝子発現、及び腫瘍微小環境を特性化する。Computational Biology Laboratory,Department of Genomic Medicineにおいて、すべてのバイオインフォマティクスデータ分析を実施し;組織マイクロアレイ(TMA)をFFPE組織(生検及び最終の病理標本)から構築し、CyTOFを使用し、免疫学的試験についての検討を行う。残存腫瘍が不在で完全寛解を有する患者の場合、(腫瘍マップに基づく)最大の治療前腫瘍床を免疫学的試験に使用し;組織の優先順位付けでは、生検及び病理腫瘍組織の使用について、以下の順序及び供給源:1.突然変異分析(FFPE)、2.RNAseq(新鮮/凍結)、3.TMA(FFPE)において優先順位付けする。
(2)尿中バイオマーカー:無効尿を優先的に収集するが、無効尿が利用不可である又は不十分であるとき、選択的な上部尿路洗浄で置き換える。尿及び血液は、3つの時点(治療前、インフィグラチニブ治療の終了後/手術前、及び手術後5週+/-2週)で収集する。尿処理は、確立された標準操作手順に従う。サンプルを-80℃で貯蔵し、次にさらなる分析用にFox Chase Cancer Center(Dr.Phil Abbosh laboratory、我々が既存の共同研究及びMTAを有する相手)に送付する。DNAを尿サンプルから単離し、次に(典型的には数μgの高分子量DNAを生成する)品質について点検する。DNAは、治療開始前、末梢血単核球(PBMC)からも単離し、生殖系列参照サンプルとして使用する。治療前/治療後/手術後の時点での生殖系列からのDNAを、54の十分に特徴づけられたがん遺伝子をカバーする1000倍の目標深さを有するHaloPlexHSプラットフォームを使用する次世代配列決定にかける。(FGFR3を含む)尿路上皮がんを有する患者において、これらの遺伝子を濃縮する。HaloPlexHSでは、増幅前の単一分子タグを用いて、PCR中に生じるタグエラーをフィルタリングすることで、希少な対立遺伝子に対する検出力が大きく増強される。予備実験では、このアプローチは、高感度且つ正確であることが検証され、尿中の腫瘍組織突然変異の>60%を検出し、組織内で認められていない尿中のさらなる突然変異を同定した。尿をFGFR3ホットスポット又は他のミスセンス変異体について特徴づけ、それらの変異体対立遺伝子頻度を縦方向のサンプル中で追跡する。治療前尿中の点突然変異の存在は、事前予測バイオマーカーとしての病理学的応答と相関する。それとは別に、治療後のすべての治療前突然変異の排除は、インフィグラチニブ、及び手術後の事後バイオマーカーとしての病理学的応答と相関する。相関は、両分析におけるフィッシャー直接検定を用いて判定する。
(3)無細胞DNA(cfDNA):cfDNAの応答との関連性の分析では、血液は登録時と治療後/手術前に収集する(各時点、30mL)。これらのサンプルは、処理し、腫瘍試験が完了するまで貯蔵することで、結果は利用可能である。腫瘍FGFR3変異を有するとして同定された全患者の中で、5名を彼らのベースラインcfDNAをアッセイするために無作為に選択し;3名以上が検出可能なFGFR3変異を有することが見出される場合、最大5名より多くの患者ベースラインサンプルに対して実行する。彼らのcfDNA中に検出可能なベースラインFGFR3変異を有することが見出された者は、それらの第2の時点でアッセイする。そこで、これらの結果は、疾患負荷、病理学的所見、疾患グレード、ステージ、客観的応答、及び免疫相関物に相関する。cfDNAの場合、70-Gene Liquid Biopsy Panel(LBP-70)の有効性が影響を受ける。MD Anderson Department of Pathology and Laboratory Medicineにおいて、検証された次世代配列決定(NGS)に基づくパネルを実行する。輸送中に循環cfDNAと血球からの細胞DNAとの混合物を低減するように設計されたStreckチューブに末梢血を収集する。NGSに基づくパネルは、パネル中に含まれる全部で70の遺伝子中の単一ヌクレオチド変異体(SNV)及び小さい挿入欠失(インデル)を検出するように設計する。さらに、選択された遺伝子を含む増幅(コピー数多形;CNV)及び融合(転座)も検出可能である。具体的には本試験に関連して、パネルは、FGFR3の突然変異/インデル、増幅、及び融合を検出することが可能である。包括的な液体生検検査では、低レベル突然変異の高感度且つ正確な検出を可能にするため、分子バーコード技術及び精巧なエラー検出アルゴリズムが利用される。
【0252】
試験設計
腎尿管摘除術又は尿管摘除術による計画された外科的切除を受けており、バイオマーカー試験にとって十分な生検組織を有し、且つネオアジュバント化学療法にとっての候補ではない(低グレード疾患、又は高グレードのプラチナ不適格)患者は、インフィグラチニブを2サイクル(1サイクル=3週オン、1週オフ)にわたり服用し、次に腎尿管摘除術又は尿管摘除術を受ける。患者は、安全性及び耐性について継続的に監視する。熱心な試験GU病理学者による外科的切除時のバイオマーカー試験用に、重複性腫瘍及び正常組織を収集する。FGFR3変異について治療前生検を評価し、治療に対する客観的応答(完全寛解及び部分寛解、腫瘍マッピングを用いる治療前内視鏡的評価と比較)について外科標本組織を評価すると、FGFR3変異の存在は客観的応答と相関する。
【0253】
用量:全患者には、各28日治療サイクルに対応する3週オン、1週オフのスケジュールを用いて、125mgのインフィグラチニブを1日1回(QD)経口投与し、それを全部で2サイクルにわたり反復する。8~9週目の間に手術を実施する。
【0254】
対象の数:最初に試験参加に対する対象20名を計画する。
【0255】
組み入れ基準
適格な対象は以下の基準のすべてを満たす。
1.対象は、腎尿管摘除術又は尿管摘除術を受けている低グレードUTUC、又は高グレードUTUCを有し、且つ医療併存疾患(例えば、心機能不全、聴力損失、GFR<50)が理由で、又は臨床ノモグラムによる非臓器限局性疾患の<49%のリスク予測に基づくと、シスプラチンネオアジュバント化学療法に適格でない(Petros F.et al.,Urol.Oncol.,2018)。
2.対象は、登録前、試験病理学者による判定として、突然変異分析に利用可能である十分な生検組織を有する。
3.対象は、0~2の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)活動状態を有する。
4.対象は、事前の全身抗がん療法のAEからベースライン又はグレード1(脱毛症を除く)まで回復している。
【0256】
除外基準
適格対象は以下の基準のいずれも満たさない。
1.対象は、3年以内に、a.十分に治療された子宮頸部の上皮内がん、又は皮膚の非メラノーマがん、b.治療医師により試験期間中の進行が低リスクであるとみなされた任意の他の非治療がん(例えば、低又は中リスク前立腺がん)、c.試験経過中に再発を有する又は治療を必要とすることが想定されない治癒的に治療された悪性腫瘍を除く、別の原発性悪性腫瘍の病歴を有する。
2.対象は、制御されない膀胱がんを有する。膀胱がんを有する患者は、治療開始前に経尿道的切除術により膀胱から疾患が除去されなければならず、全身療法又は膀胱全摘除術が必要であってはならない。
3.対象は、限定はされないが、眼科検査によって確認される、水疱性/帯状角膜症、角膜擦過傷、炎症/潰瘍、及び角結膜炎を含む、角膜又は網膜障害/角膜症に関する最新証拠を有する。治験責任医師により試験参加に対する最小リスクを呈すると評価された無症候性眼科的状態を有する対象は、本試験に登録してもよい。
4.対象は、石灰化リンパ節、微量な肺実質石灰化、及び無症候性冠動脈石灰化を例外として、限定はされないが、軟部組織、腎臓、腸、心筋及び肺を含む広範な組織の石灰化の病歴及び/又は最新証拠を有する。
5.対象は、経口インフィグラチニブの吸収を有意に改変することがある胃腸(GI)機能障害又はGI疾患(例えば、潰瘍性疾患、制御されない悪心、嘔吐、下痢、吸収不良症候群、小腸切除)を有する。
6.対象は、カルシウム/リン酸塩の恒常性の内分泌変化、例えば、副甲状腺障害、副甲状腺摘出術の病歴、腫瘍溶解、腫瘍状石灰化症などの最新証拠を有する。
7.対象は、既知のCYP3A4の強力な誘導剤又は阻害剤である薬剤並びに血清リン及び/又はカルシウム濃度を増加させる薬物による治療を現在受けている。対象は、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、及びプリミドンを含む酵素誘発性抗てんかん薬を受けることが許可されない。
8.対象は、試験薬の初回投与前7日以内に、グレープフルーツ、グレープフルーツジュース、グレープフルーツハイブリッド、ザクロ、スターフルーツ、ポメロ、又はセビリアオレンジ又はこれらの果実のジュースを含有する製品を消費している。
9.対象は、試験薬の初回投与の7日前、QT間隔を延長することが知られた薬物を使用しており、且つ/又は多形性心室頻拍(TdP)のリスクに関連している。
10.対象は、試験薬の初回投与前90日以内にアミオダロンを使用している。
11.対象は、現在、治療量のワルファリンナトリウム又は任意の他のクマジン誘導体抗凝固剤を使用中であり、又は直接トロンビン阻害剤(例えばアルガトロバン)若しくは主にCYP3A4によって代謝される第Xa因子阻害剤(例えばリバーロキサバン)を使用中である。ヘパリン及び/又は低分子量ヘパリン又は直接トロンビン阻害剤及び/又はCYP3A4によって代謝されない第Xa因子阻害剤(例えば、ダビガトラン、エドキサバン)を許容する。
12.対象は、不十分な骨髄機能を有する。
(a)絶対好中球数(ANC)<1,000個/mm3(1.0×109個/L)
(b)血小板<100,000個/mm3(75×109個/L)
(c)ヘモグロビン<9.0g/dL
13.対象は、不十分な肝臓及び腎臓機能を有する。
(a)総ビリルビン>1.5×正常上限(ULN)(文書化されたジルベール症候群以外、そして次いで専ら試験メディカルモニターによる承認による)
(b)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST/SGOT)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/SGPT)>2.5×ULN(胆管細胞がんの肝合併症の存在下でAST及びALT>5×ULN)
(c)<30mL/分の計算又は測定されたクレアチニンクリアランス
14.対象は、アミラーゼ又はリパーゼ>2.0×ULNを有する。
15.対象は、異常なカルシウム-リン酸塩の恒常性を有する。
(a)局所正常範囲を外れる無機リン
(b)局所正常範囲を外れる補正血清総カルシウム
16.対象は、以下のいずれかを含む臨床的に有意な心臓病を有する。
(a)治療を必要とするうっ血性心不全(ニューヨーク心臓病学会グレード≧2)、心エコー図(ECHO)によって判定された左室駆出率(LVEF)<50%若しくは局所正常下限、又は管理不良高血圧症(欧州心臓学会及び欧州高血圧学会ガイドラインを指す)
(b)有害事象における共通用語基準(CTCAE)v5.0でグレード≧2の心室不整脈、心房細動、徐脈、又は伝導異常の存在
(c)不安定狭心症又は急性心筋梗塞≦試験薬の初回投与前3か月
(d)QTcF>470ミリ秒(男性及び女性)。注:QTcFが最初の心電図(ECG)において>470ミリ秒である場合、少なくとも5分離れた全部で3つのECGを実施するべきである。QTcFにおけるこれら3つの連続的結果の平均が≦470ミリ秒である場合、対象はこれに関連する適格性を満たす。
(e)既知の先天性QT延長症候群の病歴
17.対象は、最近の(≦3か月)一過性脳虚血発作又は脳卒中を有している。
18.CTCAE(v5.0)グレード≧2の聴力損失。
19.CTCAE(v5.0)グレード≧2の神経障害。
20.女性の場合、妊娠が受胎後で妊娠の終結までの女性の状態と定義される場合に妊娠中又は保育中(授乳中)であり、それはヒト絨毛性ゴナドトロピン尿又は血液の実験室試験陽性により確認される。
【0257】
経口インフィグラチニブ125mg QDを、各28日治療サイクルにおける「3週オン、1週オフ」スケジュールを用いて対象に投与する(1つの100mgカプセル剤及び1つの25mgカプセル剤として投与する)。2つの28日サイクルは、それらの各々に対して「3週オン、1週オフ」を用いる。
【0258】
安全性:安全性評価は、AEの報告、実験室パラメータ、バイタルサイン、身体検査、12リードECG、及び眼科的評価に基づく。耐性は、試験薬中断をもたらすAEの発生率によって評価する。
【0259】
有効性:腫瘍応答は、治療前の内視鏡的評価時の腫瘍マッピングを外科標本における病理学的所見と比較することにより評価する。
【0260】
主目的:主目的は、ネオアジュバント療法としてのインフィグラチニブの安全性及び耐性を評価することである。最大20名の患者を試験に登録する。試験では、90%の正確信頼区間に伴う過剰な毒性が理由で治療を完了できない(2サイクルの治療を完了する前に中断)患者の割合を推定する。グレード及びそれらの治療との関連による頻度及び百分率を用いて毒性について作表する。過剰な毒性による30%の中断を仮定すると、90%信頼区間は、20のサンプルサイズで(13.1%、46.9%)となる。
【0261】
患者の群全体とeGFR≧50及びeGFR[即ち30~49]を別々に有する患者についての毒性データをまとめる。安全性分析は、少なくとも1用量のインフィグラチニブを受ける全患者を含む。
【0262】
安全性監視:試験では、この監視ルールを用いて、過剰な毒性が理由で治療を完了しない発生率を監視する。即ち、Prob(Ptox>0.3|データ)>0.85の場合、試験は早期に停止される。ここでPtoxは、治療を完了することができない患者の割合を表す。対応する停止境界は、随時、(患者のnは過剰な毒性が理由で治療を完了しない/患者のNは治療される)>=3/5、4/(6~8)、5/(9~10)、6/(11~13)、7/(14~16)、及び8/(17~19)が認められる場合、試験が早期に停止されることである。この停止ルールは、eGFR≧45及びeGFR30~44の各コホートに別々に適用することで、罹患GFRコホートに限って登録が停止される。
【0263】
二次目的(有効性):二次有効性エンドポイントは、インフィグラチニブの2サイクル治療後の客観的応答である。客観的奏効率は、患者の全コホート、並びにFGFR3変異の存在下及び不在下での患者についての90%信頼区間に応じて評価する。フィッシャー直接検定を使用し、患者の2コホート間の応答における差異を探索する。
【0264】
二次目的(他の二次分析及び探索分析):記述統計学を使用し、連続変数としての定量化を要約し、95%CIに応じた頻度及び百分率を使用し、カテゴリー変数を要約する。ウィルコクソン順位和検定及びフィッシャー直接検定を使用し、客観的応答と二次評価項目、例えば、cfDNA、マーカーの発現、FGFR3変異タイプとの間の関連性を探索する。さらに、同じ方法を使用し、高リン血症などのAEの応答との関連性を探索する。12か月後の再発を、割合及び90%信頼区間をバイナリー結果として用いて要約し、カプラン・マイヤー法を事象までの時間の変数として用いて評価する。すべての分析は、全患者、及びFGFR3変異を有する又は有しないとして層別化された患者に対して実施する。
【0265】
サンプルサイズ:参加者20名
安全性分析:計画された統計学的解析の全詳細を統計分析計画に含める
【0266】
実施例7:膀胱の尿路上皮がんと比較しての上部尿路上皮がんにおけるインフィグラチニブ(BGJ398)の試験及び包括的ゲノムプロファイリング/無細胞DNAデータとの関連性
目的
上部尿路上皮がん(UTUC)及び膀胱の尿路上皮がん(UCB)におけるインフィグラチニブ活性において、UTUC及びUCBの異なる生物学的特徴を仮定すれば差異があるか否かを判定する。
腫瘍組織及び無細胞DNA(cfDNA)の特徴づけを通じて、UTUC及びUCBが進行性又は転移性尿路上皮がんを有する患者におけるそれらのゲノム特性において異なったか否かを判定する。
【0267】
試験設計
適格患者は、活性化FGFR3突然変異/融合及び事前のプラチナベースの化学療法(禁忌でない場合)を伴う転移性尿路上皮がんを有した。
【0268】
患者は、3週オン/1週オフの投与計画を用いて、125mgのインフィグラチニブを経口投与により1日1回受けた。
【0269】
UCB及びUTUC患者において、奏効率(ORR:CR+PR)及び疾患制御率(DCR;CR+PR+SD)を特徴づけた。
【0270】
UCB及びUTUC患者のゲノムプロファイリングを、治療前に得たFFPE腫瘍組織及び血漿(cfDNA)から単離したDNAを用いて実施した:
・FGFR3における遺伝子変異を有する患者を登録するため、腫瘍組織(Foundation Medicine;Cambridge,MA)の包括的ゲノムプロファイリングを患者に対して使用した。
・治療前に血液から得た無細胞DNA(cfDNA)を、600の遺伝子パネル(Novartis Labs)を用いる次世代配列決定により評価した。
試験に参加した患者のベースライン特徴を表5に示す。
【0271】
【0272】
UTUCにおいて、FGFR3細胞外Ig様ドメイン内で、UCBと比較して、突然変異R248C及びS249Cの異なる頻度が認められた(各々、
図1A及び1B)。Ig様ドメイン外の突然変異は、UCBにおいて認められたが、UTUCにおいて認められなかった。
【0273】
UTUC又はUCBを有する患者における事前の抗がん療法の有効性を比較する要約を表6に示す。
【0274】
【0275】
UTUC又はUCBを有する患者におけるインフィグラチニブの有効性を比較する試験の要約を表7に示す。
図2及び
図3は、インフィグラチニブで治療した患者における無増悪生存率及び全生存率各々の重ね合わせである。
【0276】
【0277】
患者0507_00103(完全寛解を有するUTUC患者については表7を参照):ステージIIIのUTUCを有する62歳女性(肺及び縦隔における標的病変並びに非標的肺小結節、ベースライン時)。彼女は、インフィグラチニブ125mgで3週オン/1週オフを2013年5月29日に開始し、いまだ治療中である(50mg、3週オン/1週オフ)。CRは2016年8月19日に始まり、継続中である。
【0278】
試験中に認められた治療下で発現した有害事象(TEAE)のまとめを表8に示す。
【0279】
【0280】
遺伝子の大部分を通じて、cfDNAにおける変異体対立遺伝子頻度(VAF)が、UCBの場合、UTUCの場合より高いことが認められた(
図4)。UCBにおいて認められたcfDNAにおけるより高いVAFは、UCB患者が、UTUCと比べて、より高い疾患負荷又は異なる転移機構を有することを示唆する。
【0281】
FGFR3ゲノム変異におけるVAF中央値は、UCB患者における腫瘍組織及びcfDNAにおいて、UTUC患者と比較してより高かった(
図5)。
【0282】
FGFR3変異は、スクリーニング時、腫瘍組織及びcfDNA双方を有する患者の30/38(79%)において一致した。UCB患者からのcfDNAにおいて、UTUC患者と比較して増加した遺伝子変異数を伴うより複雑なゲノム特性が認められた(
図6)。高い突然変異荷重を有するUTUC患者(▲)は、MSH2におけるフレームシフト突然変異に起因し、ミスマッチ修復が欠損している可能性が高い。
【0283】
参照による援用
本願は、様々な交付済み特許、特許出願公開、雑誌論文、及び他の刊行物を参照し、これらのすべては参照により本明細書中に援用される。援用された参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾が生じる場合、本明細書が制御するものとする。さらに、先行技術の範囲内に該当する本開示の任意の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明示的に除外されてもよい。かかる実施形態は、当業者にとって公知とみなされることから、たとえ除外が本明細書中で明示されなくても除外されてもよい。本開示の任意の特定の実施形態は、先行技術の存在との関連の有無にかかわらず、何らかの理由で任意の特許請求の範囲から除外され得る。
等価物
本発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で例示されてもよい。そのため、前述の実施形態は本明細書において記載される本発明を限定するものではなく、あらゆる点において例示とみなされるべきである。本発明の範囲は、したがって、前述の説明ではなく添付の請求項によって示され、請求項と同等の意味及び範囲内にある変化はすべて、請求項に包含されることが意図される。
【国際調査報告】