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特表2022-534144三次元炭化ケイ素含有材料の製造方法
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  • 特表-三次元炭化ケイ素含有材料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(54)【発明の名称】三次元炭化ケイ素含有材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20220721BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220721BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220721BHJP
【FI】
C23C26/00 C
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021524055
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2019080240
(87)【国際公開番号】W WO2020099188
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】102018128434.9
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519397574
【氏名又は名称】ペーエスツェー テクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】グロイリヒ-ヴェーバー、ジークムント
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044BA18
4K044BB10
4K044CA14
4K044CA41
4K044CA71
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、炭化ケイ素含有材料を基板表面に塗布する方法、およびその方法を実行するための装置を提供することである。
【解決手段】 本発明は、ケイ素源および炭素源を含む気体状、液体状または粉末状前駆体材料が、エネルギーの作用によりガス化および/または分解され、分解生成物の少なくとも一部が、炭化ケイ素含有材料として、基板表面に部分選択的に堆積するものである。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素源および炭素源を含む気体状、液体状または粉末状前駆体材料が、エネルギーの作用によりガス化および/または分解され、分解生成物の少なくとも一部が、炭化ケイ素含有材料として、基板表面に部分選択的に堆積することを特徴とする炭化ケイ素含有材料を基板表面に塗布する方法。
【請求項2】
炭化ケイ素含有材料が、任意にドープされた炭化ケイ素、任意にドープされた非化学量論的炭化ケイ素、炭化ケイ素合金、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭化ケイ素含有材料が基板表面上に層として堆積されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
炭化ケイ素含有材料が、0.01~5mm、特に0.05~2mm、好ましくは0.1~1mmの範囲の層厚で基板上に堆積されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前駆体材料、特に粉末状前駆体材料が、微細に分割された形で、特に少なくとも1つの粒子ビームの形で、基板、特に基板表面の方向に移動し、基板に衝突する前または衝突時に、エネルギー、特にレーザー放射の作用によってガス化および分解されること、または、気体状分解生成物が、少なくとも1つの粒子ビームの形で基板の方向に移動することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前駆体材料、特に粉末状前駆体材料、またはガス状分解生成物が、少なくとも1つのノズルによって基板に向かって移動することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
粉末状前駆体材料が粉末ビームの形で基板の方向に移動すること、または、液体状前駆体材料が噴霧の形でまたは液体状ビームとして基板の方向に移動すること、または、ガス状前駆体材料またはガス状分解生成物が、気体状ビームの形で基板の方向に移動することを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、三次元炭化ケイ素含有物体を層ごとに構築するために、および/または、少なくとも2つの構成要素を接合するために使用されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、レーザー堆積溶接であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
粉末状前駆体材料が、基板表面の近くで、特に基板表面に直近で、レーザー放射によってガス化および分解されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前駆体材料のガス化および分解、および炭化ケイ素含有材料の堆積、好ましくは全方法が、保護ガス雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
粒子ビームまたは複数の粒子ビームが、保護ガス流によって取り囲まれていることを特徴とする請求項5~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の方法により得られる炭化ケイ素含有物体。
【請求項14】
基板(2)上に炭化ケイ素含有材料を部分選択的に堆積させるための装置(1)であって、
該装置が、
(c)ガス状前駆体材料を分解するための、または、液体状または粉末状前駆体材料をガス化および分解するための少なくとも1つの装置(2)であって、前駆体材料が少なくとも1つの炭素源および少なくとも1つのケイ素源を含む装置(2)および
(d)少なくとも1つの粒子ビームを生成するための、および/または、粒子ビームを基板表面に向けるための少なくとも1つの装置(3)を具備することを特徴とする装置。
【請求項15】
粒子ビームを生成するための、および/または、粒子ビームを基板表面に向けるための装置(3)が、ノズル、特に固体状ノズル、好ましくは粉末状ノズルであることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
ガス状前駆体材料を分解するための、または、液体状または粉末状前駆体材料をガス化および分解するための装置(2)が、高温を発生させる手段、特にレーザー放射を発生させる手段または電気アークを発生させるための手段を具備することを特徴とする請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
ガス状前駆体材料を分解するための、または、液体状または粉末状前駆体材料をガス化および分解するための装置(2)が、レーザー放射を発生させる手段を具備すること、特にレーザーであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、保護ガス雰囲気を生成する手段(4)を備えることを特徴とする請求項14~17のいずれか1つに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成的製造方法、特に積層造形の技術分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、炭化ケイ素含有材料を基材に塗布するための方法、特に基板への部分選択的塗布のための方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、本発明による方法によって得られる炭化ケイ素含有材料に関する。
【0004】
最後に、本発明は、この方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0005】
積層造形(AM)とも呼ばれる生成的製造方法は、液体、ゲル、ペースト、粉末などの形のない材料からモデル、パターン、ツール、および製品を迅速に製造する方法である。
【0006】
もともと、3D印刷または高速試作という用語は、一般的に生成的製造方法、特に積層造形に使用されていた。ただし、これらの用語は現在、生成的製造方法の特別な構成にのみ使用される。生成的製造方法は、無機材料、特に金属やセラミック、および有機材料から物体を製造するために使用される。
【0007】
無機材料から物体を製造する場合、使用される反応物または前駆体はより高いエネルギー入力でのみ反応または溶融するため、選択的レーザー溶融、電子ビーム溶融またはビルドアップ溶接などの高エネルギー法が好ましく使用される。
【0008】
原則として、積層造形は非常に複雑な部品の迅速な製造を可能にするが、特に無機材料からの構成要素の製造は、反応物と製品材料の両方に多くの課題をもたらす。たとえば、反応物は、エネルギーの影響下で、特定の方法でしか反応しない場合があり、特に破壊的な副作用を排除する必要がある。
【0009】
さらに、例えば、生成物の分離または生成物の相分離あるいは分解さえも、エネルギーの影響下で起こり得ない。
【0010】
高性能セラミックの製造や半導体用途に非常に興味深く用途が広い材料は、カーボランダムとしても知られる炭化ケイ素である。化学式SiCの炭化ケイ素は、非常に高い硬度と高い昇華点を持ち、高温ガス炉の研磨剤または絶縁体としてよく使用されている。また、炭化ケイ素は、高温ですら、高硬度、高耐久性、軽量、低酸化感度などの有利な材料特性を備えているいろいろな元素および合金または化合物を具備する化合物を形成する。
【0011】
従来の焼結方法を介して製造された多孔質炭化ケイ素材料の特性は、コンパクトな結晶性炭化ケイ素の特性と一致しないため、炭化ケイ素の有利な特性を十分に活用することはできない。
【0012】
さらに、炭化ケイ素は、結晶の種類に応じて、2,300~2,700℃の範囲の高温では溶融しないが、昇華する。つまり、固体から気体の凝集体状態に変化する。このため、炭化ケイ素は、特にレーザー溶融などの積層造形プロセスには適していない。
【0013】
炭化ケイ素、または炭化ケイ素を含む材料の多様な適用性、および多数の肯定的な適用特性によるにもかかわらず、付加的な製造方法によって炭化ケイ素を処理するために試みがなされてきた。
【0014】
例えば、DE 10 2015 105 085.4は、炭化ケイ素結晶から物体を製造する方法を記載しており、炭化ケイ素は、特に、選択的レーザー溶融後の粉末床工程において、適切な炭素およびケイ素含有前駆体化合物からのレーザー放射によって得られる(SLM)。
【0015】
DE 10 2015 105 085.4に記載されている方法は、炭化ケイ素結晶から物体を得るのに確かに適しているが、粉末床方工程は、手元に保持される比較的大量の前駆体材料を常に要求し、さらに製造プロセスの過程での副産物によって汚染され、その結果、さらなる製造工程で再処理なしに完全に使用することはできない。
【0016】
層または三次元物体の製造に適した1つの方法は、溶着溶接である。溶着溶接において、基板またはワークピースを溶融すると同時に材料を塗布することにより、基板またはワークピースに材料を塗布する。溶着溶接の特殊な形態は、レーザー溶着溶接であり、溶融工程に提供される熱エネルギーがレーザーによって供給される。さらに、材料の損失を溶着溶接に置き換えることによって、部品を接合したり、たとえば修理したりすることも可能である。通常、金属材料の溶着にはレーザー溶着溶接が使用される。
【0017】
これまで、炭化ケイ素は高温で溶融せず(前述したように)昇華するため、堆積溶接によってセラミック材料、特に炭化ケイ素を含む材料を処理することはできなかった。したがって、従来技術は、原材料をできるだけ効率的に使用する炭化ケイ素および炭化ケイ素含有材料から、物体の目標とされる製造方法を、未だに欠いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】DE 10 2015 105 085.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、先行技術に関連する前述の不利な点および問題を回避すること、または少なくとも軽減することである。
【0020】
特に、本発明の目的は、炭化ケイ素含有材料または構造を、炭化ケイ素含有材料から、部分選択的かつ局所的に限定された方法で基板上に堆積または製造することを可能にする方法を提供することである。
【0021】
さらに、本発明のさらなる目的は、炭化ケイ素含有材料で作られた構成要素または物体が、標的材料の堆積によって製造または修理されることを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の様相による本発明の主題は、請求項1による炭化ケイ素含有材料を基板に塗布する方法である。本発明のこの様相のさらに有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の対象である。
【0023】
本発明の第2の様相による本発明のさらなる主題は、請求項13に記載の炭化ケイ素含有三次元物体である。
【0024】
最後に、本発明の第3の様相による本発明のさらなる主題は、請求項14に記載の炭化ケイ素含有材料を部分選択的に堆積するための装置である。さらに、本発明のこの様相の有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の対象である。
【0025】
言うまでもなく、以下に述べる特別な構成、特に本発明の1つの様相に関してのみ説明される特別な実施形態などは、明示的な言及を必要とせずに、本発明の他の様相に関しても同様に適用される。
【0026】
さらに、以下に述べるすべての相対的またはパーセンテージ、特に重量関連の量の指摘の場合、これらは本発明の範囲内において当業者によって、常に、含有物、添加剤または補助物質等の合計が結果として100%または100重量%がもたらすように選択されるものであるといえる。しかしながら、これは当業者にとって自明である。
【0027】
また、以下に述べるすべてのパラメータデータ等は、基本的には、当業者に馴染みのある標準化または明示的に記載された決定手順または決定方法によって決定できるものとする。
【0028】
この但し書きを述べた上で、本発明の主題を以下により詳細に説明する。
【0029】
したがって、本発明の主題は、本発明の第1の様相によれば、炭化ケイ素含有材料を基板表面に適用するための方法であり、ここで、ケイ素源を含む気体状、液体状、または粉末状前駆体材料および炭素源は、エネルギーの作用によってガス化および/または分解され、分解生成物の少なくとも一部は、炭化ケイ素含有材料として基板表面上に部分選択的に堆積される。
【0030】
本発明による方法は、高解像度で詳細な三次元構造の生成を可能にする。いわゆる角または縁などの輪郭の経路が非常に正確であり、特に突起がない。
【0031】
本発明に関して、特に、多孔質構造を含まないが結晶性炭化ケイ素含有材料からなるコンパクトな固体の形態で物体を得ることがさらに可能である。したがって、本発明による方法によって得られる炭化ケイ素含有材料で作られた材料および三次元物体は、それらの材料特性において、結晶性炭化ケイ素または炭化ケイ素合金のほとんどの特性を有する。
【0032】
特に、本発明による方法は、三次元炭化ケイ素含有物体または層の非常に高速かつ低コストの製造を可能にし、特に、コンパクトな非多孔性または低多孔性の材料及び部品を提供するために圧力を加えることを必要としない。
【0033】
本発明による方法は、炭化ケイ素含有材料の層を基板表面に塗布するため、および炭化ケイ素含有材料の三次元物体を基板表面上に構築するための両方に使用でき、その後、必要に応じて再び除去することができる。同様に、炭化ケイ素含有材料を適用することによって部品(構成要素)を結合すること、または部品(構成要素)の材料欠陥を補うこともできる。
【0034】
本発明に関して、前記炭化ケイ素含有化合物は、その分子式がケイ素および炭素を含む二元、三元または四元の無機化合物として理解されるべきである。特に、前記炭化ケイ素含有化合物は、一酸化炭素または二酸化炭素などの分子的に結合した炭素を含まず、むしろ、炭素は固体構造で存在する。
【0035】
本発明に関して、ケイ素源または炭素源とは、炭化ケイ素含有化合物が形成されるようなプロセス条件下で、それぞれケイ素または炭素を放出することができる化合物を意味する。これに関して、シリコンと炭素は元素の形で放出される必要はなく、プロセス条件下で反応して炭化ケイ素含有化合物を形成するのであれば十分である。
【0036】
以下に説明するように、ケイ素源、炭素源、または任意のドーピングまたは合金化元素の前駆体は、特定の化合物、または、例えば、それらの反応生成物、特に加水分解物のいずれかであり得る。
【0037】
本発明に関して、基材は、前駆体材料の好ましくはガス状の分解生成物が適用される材料として理解されるべきである。特に、本発明に関する基板は、前駆体材料の分解生成物が堆積される表面を有する三次元またはほぼ二次元の構造である。前記基板表面は、平坦または輪郭があり、特に三次元的に構造化されていてもよい。前記基板は、ほぼすべての三次元形状を含むことができる。したがって、前記基板は、炭化ケイ素含有材料が層ごとに堆積されるキャリア材料であり得る。基板という用語はまた、特に、炭化ケイ素含有材料の1つまたは複数の層で部分的にコーティングされた基板材料を含む。しかしながら、前記基板はまた、堆積された炭化ケイ素含有材料によって、第2の基板、特に別の三次元物体に接合された三次元物体であり得る。
【0038】
さて、前駆体材料またはその分解生成物が堆積される基板に関して、これは、様々な適切な材料から選択することができる。本発明に関して、前記基板は、結晶性およびアモルファス基板から選択されることが可能である。本発明のより好ましい実施形態によれば、基板はアモルファス基板である。材料が炭素、特にグラファイト、およびセラミック材料、特に炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ならびに金属およびそれらの混合物から選択される場合、特に良好な結果が得られる。本発明による方法が炭化ケイ素含有材料の物体の製造に使用される場合、前記基板はしばしばいくつかの材料、特に支持材料および炭化ケイ素含有材料の少なくとも部分的に構築された三次元物体を含む。
【0039】
本発明に関して、前駆体材料は、好ましくは、気体、液体、または粉末状前駆体材料から選択され、固体、特に粉末状前駆体材料の使用が好ましい。液体前駆体材料は、均質な溶液または分散液、特に液体中の固体分散体であり得る。
【0040】
本発明に関して、前駆体材料は、プロセス条件下で反応して所望の生成物材料、特に炭化ケイ素を含む材料を形成するための化合物または化合物の混合物である。
【0041】
目標化合物への反応は、さまざまな方法で行うことができる。しかし、有利には、前駆体化合物は、エネルギーの作用により、特にレーザー放射の作用により、液体またはガス状の前駆体材料の場合、必要に応じてガス化され開裂されまたは分解され、そして反応粒子としてガス相に移行することが想定される。ケイ素および炭素、および付加的に、ドーピングされまたは合金化元素が、前駆体の特別な組成により、気体相の直ぐ近傍に存在するので、2,300℃以上でのみ昇華する炭化ケイ素またはドープされた炭化ケイ素または炭化ケイ素合金が沈殿する。特に、結晶質炭化ケイ素が、前駆体粒状物よりもレーザーエネルギーの吸収がはるかに少なく、熱が非常に良く伝動するため、制限された炭化ケイ素化合物の局所的に厳密に制限された堆積が実行される。他方、前駆体化合物の望ましくない成分は、CO、HCl、HOなどの安定なガスを形成することが好ましく、気相を介して除去することができる。
【0042】
本発明の範囲内で、特に、前駆体材料が、固体前駆体材料、特に前駆体粒状物であることが提供される。前駆体粒状物が粉末状混合物ではない場合、特に異なる前駆体粉末および/または粒状物の混合物ではない場合、特に良好な結果が得られる。好ましくは、本発明の範囲内で、均質な粒状物、特に前駆体粒状物が、本発明による方法の前駆体材料として使用される。
【0043】
このように、エネルギー、特にレーザービームへの短い曝露時間によって、前駆体粒状物は気相に移行することができ、または前駆体化合物は反応して所望の目標化合物を形成することができるものであり、マイクロメートルの範囲の粒子サイズを持つさまざまな無機物質の個々の粒子を昇華させる必要はないが、その成分は、対応する化合物と合金を形成するために拡散する必要がある。本発明で好ましく使用される均質な前駆体粒状物により、炭化ケイ素含有目標化合物の個々の成分、特に元素は、均質に分布され、お互いに近接して配置される、いわゆる炭化ケイ素含有化合物の製造に必要なエネルギーがあまり要求されない。これは、基板表面を形成する炭化ケイ素含有材料の最上層を炭化ケイ素が昇華する温度に加熱することなく、炭化ケイ素含有材料の多層構造を構築できるという利点を有する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、前駆体粒状物は、前駆体溶液または前駆体分散液、特に前駆体ゾルから得ることができる。したがって、本発明に関して、前駆体粒状物は、好ましくは、液体から、特に溶液または分散液から、細かく分割された形態で得られる。このようにして、個々の成分、特に前駆体化合物の均一な分布を粒状物内で達成することができ、好ましくは、生成される炭化ケイ素含有材料の化学量論がすでに実施されている。
【0045】
前駆体粒状物が、溶液または分散液、特にゲルから得られる場合、前駆体粒状物は、前駆体溶液または分散液または得られたゲルを乾燥させることによって得られる。
【0046】
さて、前駆体粒状物の粒子サイズに関する限り、これは、それぞれの化学組成、使用されるレーザーエネルギー、ならびに製造される材料または物体の特性に応じて、広範囲に変化する可能性がある。しかしながら、一般に、前駆体粒状物は、0.1~150μm、特に0.5~100μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは7~70μm、特に好ましくは20~40μmの範囲の粒子サイズを含む。
【0047】
前駆体粒状物の粒子が、1~100μm、特に2~70μm、好ましくは10~50μm、より好ましくは21~35μmの範囲のD60値を含む場合、本発明に関して、特に良好な結果が得られる。粒子サイズのD60値は、それ以下では前駆体粒状物の粒子の60%の粒子サイズが存在する下限、すなわち、前駆体粒状物の粒子の60%が、D60値よりも小さい粒子サイズを含むことを表す。
【0048】
これに関連して、前駆体粒状物が二峰性の粒子サイズ分布を含むことも同様に提供することができる。このようにして、嵩密度の高い前駆体粒状物に特にアクセスできる。
【0049】
前述のように、本発明による方法は、広範囲の炭化ケイ素含有化合物からの層または三次元物体の製造に適している。本発明に関して、炭化ケイ素含有化合物は、典型的には、炭化ケイ素、ドープされた炭化ケイ素、非化学量論的炭化ケイ素、ドープされた非化学量論的炭化ケイ素、および炭化ケイ素合金から選択される。
【0050】
したがって、本発明による方法は、普遍的に使用することができ、特にそれらの機械的特性を目標とする方法で調整するために、多数の異なる炭化ケイ素化合物の製造または堆積に適している。
【0051】
本発明に関して、非化学量論的炭化ケイ素は、モル比1:1であるが、それから逸脱する比で、炭素とケイ素を含有しない炭化ケイ素であると理解される。典型的には、本発明に関する非化学量論的炭化ケイ素は、ケイ素のモル過剰を含む。
【0052】
本発明に関して、炭化ケイ素合金は、変化し大きく変動する比率で、炭化ケイ素を含むチタンのような金属または炭化ジルコニウムまたは窒化ホウ素のような他の化合物を有する炭化ケイ素の化合物であると理解される。炭化ケイ素合金は、特定の硬度と耐熱性を特徴とする高性能セラミックを形成することがよくある。
【0053】
本発明に関して、非化学量論的炭化ケイ素が生成される場合、非化学量論的炭化ケイ素は、通常、下記する一般化学式(I)の炭化ケイ素である。
【0054】
SiC1-x (I)
【0055】
尚、x=0.05~0.8、特に0.07~0.5、好ましくは0.09~0.4、より好ましくは0.1~0.3である。
【0056】
ケイ素が豊富なこのような炭化ケイ素は、特に高い機械的耐荷重能力を有し、セラミックとしての幅広い用途に適している。
【0057】
本発明に関して、炭化ケイ素含有化合物がドープされた炭化ケイ素である場合、炭化ケイ素は、典型的には、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、 インジウム、およびそれらの混合物によってドープされる。好ましくは、炭化ケイ素は、元素の周期表の13番目および15番目のグループから選択される元素でドープされ、これにより、特に、炭化ケイ素の電気的特性を特別に操作および調整することができる。このようなドープされた炭化ケイ素は、半導体技術の用途に特に適している。前述のように、ドープされた炭化ケイ素は、化学量論的炭化ケイ素または非化学量論的炭化ケイ素であり、これらが半導体技術でますます使用されるので、化学量論的炭化ケイ素のドーピングは、より好ましい。
【0058】
ドープされた炭化ケイ素が本発明の範囲内で製造される場合、ドープされた炭化ケイ素が、ドープされた炭化ケイ素に基づいて、0.000001~0.0005重量%、特に0.000001~0.0001重量%、好ましくは0.000005~0.0001重量%、0.000005~0.00005重量%のドーピング元素を含む場合により良いことが証明された。したがって、炭化ケイ素の電気的特性の特定の調整には、非常に少量のドーピング元素で完全に十分である。前述の量のドーピング元素は、化学量論的および非化学量論的炭化ケイ素の両方に適用される。
【0059】
本発明で調製される炭化ケイ素含有化合物が炭化ケイ素合金である場合、炭化ケイ素合金は、MAX相、元素、特に金属を有する炭化ケイ素の合金、金属炭化物および/または金属窒化物を有する炭化ケイ素の合金から通常選択される。そのような炭化ケイ素合金は、変化し大きく変動する比率で炭化ケイ素を含む。特に、炭化ケイ素が合金の主成分を構成することが想定され得る。ただし、炭化ケイ素合金に炭化ケイ素が少量しか含まれていない可能性もある。
【0060】
典型的には、炭化ケイ素合金は、炭化ケイ素合金に基づいて10~95重量%、特に15~90重量%、好ましくは20~80重量%の量の炭化ケイ素を含有するものである。
【0061】
本発明に関して、MAX相は、特に、n=1~3の一般式Mn+1AXの六方晶層で結晶化する炭化物および窒化物を意味する。Mは、元素の周期表の第3から第6のグループの初期遷移金属を表すと同時に、Aは元素の周期表の13番目から16番目の元素を表す。最後に、Xは炭素または窒素のいずれかである。しかしながら、本発明に関して、分子式が炭化ケイ素(SiC)、すなわちケイ素および炭素を含むそれらのMAX相のみが対象となる。
【0062】
MAX相は、条件に応じて金属とセラミックの両方の挙動を示すため、化学的、物理的、電気的、機械的特性の異常な組み合わせで構成される。これは、たとえば、高い電気伝導率と熱伝導率、熱衝撃に対する高い弾力性、非常に高い硬度、および低い熱膨張係数を含むものである。
【0063】
炭化ケイ素合金がMAX相である場合、MAX相がTiSiCおよびTiSiCから選択されることが好ましい。
【0064】
特に、前述のMAX相は、すでに説明した特性に加えて、化学薬品や高温での酸化に対して高い耐性がある。
【0065】
炭化ケイ素含有化合物が炭化ケイ素の合金である場合、合金が炭化ケイ素と金属の合金である場合、合金が炭化ケイ素とAl、Ti,V、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Zrおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属との合金から選択される場合が良好であることが十分に証明されている。
【0066】
炭化ケイ素の合金が金属炭化物および/または窒化物と炭化ケイ素の合金から選択される場合、金属炭化物および/または窒化物と炭化ケイ素の合金が、特に炭化ホウ素、特にBC、炭化クロム、特にCr、炭化チタン、特にTiC、炭化モリブデン、特にMoC、炭化ニオブ、特にNbC、炭化タンタル、特にTaC、炭化バナジウム、特にVC、炭化ジルコニウム、特にZrC、炭化タングステン、特にWC、窒化ホウ素、特にBN、およびそれらの混合物からなる群から選択される場合が良好であることが十分に証明されている。
【0067】
前駆体材料がガス化および/または分解する温度に関して、前駆体材料、特に前駆体粒状物は、エネルギーの作用によって、特に少なくとも特定の領域において、1,600~2,100℃、特に1,700~2,000℃、好ましくは1,700~1,900℃の範囲内の温度まで、加熱されることが良好であることが十分に証明されている。前述の温度で、前駆体材料のすべての成分が気相に入り、前駆体材料が分解されて所望の反応種を形成し、次にこれが反応して標的化合物を形成する。
【0068】
前に述べたように、固体状、特に粉末状前駆体材料の使用が好ましい。しかしながら、本発明による方法はまた、液体または気体の前駆体材料を用いて実施することができる。
【0069】
ガス状前駆体材料が本発明に関して使用される場合、前駆体材料はエネルギーの作用によって分解され、分解された前駆体材料の少なくとも一部は、炭化ケイ素含有材料として基板表面上に部分選択的に堆積される。
【0070】
液体または固体、特に粉末状前駆体材料が本発明に関して使用される場合、それらは通常、ガス化および分解され、次に分解生成物の少なくとも一部が炭化ケイ素含有材料として基板表面に部分選択的に堆積される。本発明に関して、部分選択的堆積は、材料が1つの場所に局所的に限定されて堆積されることを意味するが、それはプロセスの過程で変化し得る。
【0071】
典型的には、分解生成物は、0.1~2mm、特に0.5~1.5mm、好ましくは0.8~1.2mmの領域に堆積される。
【0072】
したがって、本発明の範囲内で、基板表面上への炭化ケイ素含有材料の局所的に鋭く定義された部分選択的堆積が可能である。
【0073】
出願人は、驚くべきことに、炭素源とケイ素源の両方を含む前駆体材料の使用が、炭化ケイ素含有材料の三次元物体または炭化ケイ素含有材料のコーティングを、好ましくは蒸着溶接に基づく方法で製造することができることを発見した。
【0074】
炭化ケイ素の使用に伴う問題は、昇華して通常の条件下では溶融できないが、適切な前駆体材料を使用することにより、特に層の形の炭化ケイ素含有材料が、気相から部分選択的な方法において、前駆体材料を分解することにより、基板表面に堆積することが示されるものである。炭化ケイ素含有材料の層は、基板表面を完全に、または特定の領域のみを覆うことができる。炭化ケイ素含有材料の層を繰り返し塗布する場合、本発明に関して、すでに完成した炭化ケイ素含有材料の層が基板に追加され、それから、その表面が、基板材料を覆う領域に基板表面を形成する。本発明に関して、基板は、ほぼすべての三次元構造を含むことができる。
【0075】
繰り返し部分選択的に塗布することで、対象物に選択的にコーティングを施したり、炭化ケイ素含有材料の三次元物体を作成したりすることができる。さらに、物体または部品をコーティングするだけでなく、炭化ケイ素を含む材料によってそれらを接合したり、材料の欠陥の形で損傷を修復したりすることも可能である。
【0076】
粉末状前駆体材料を使用する場合、本発明に関して特に良好な結果が得られる。このようにして、一方では、層の厚さにおいて高い材料の適用が実現でき、他方では、粉末状前駆体材料は、例えばノズルによって基板表面に向かって移動し、レーザー照射によって、分解生成物が方向に過度に偏向されることなく、ガス化され、分解されるので、部分選択的適用も可能である。
【0077】
本発明に関して、前述のように、炭化ケイ素含有材料は、任意選択でドープされた炭化ケイ素、任意選択でドープされた非化学量論的炭化ケイ素、炭化ケイ素合金、およびそれらの混合物から選択されるのが通例である。前駆体化合物、特に粉末状前駆体化合物からの炭化ケイ素、特にドープされた化学量論的炭化ケイ素の製造は、原則として知られており、例えばドイツ特許出願第10 2015 105 085.4号の範囲内で実施される。
【0078】
しかし、今日まで、適切な前駆体化合物の分解により、ほとんどすべての炭化ケイ素含有材料を基板上に部分選択的に堆積し、これによって、炭化ケイ素含有物体を作成したり、物体を炭化ケイ素含有材料でコーティングしたりすることは知られていない。
【0079】
本発明に関して、炭化ケイ素含有材料は、基板表面上に層として堆積されるのが通例である。層状の炭化ケイ素含有材料の堆積は、特に、コーティングされる基板表面のすべての所望の位置で連続的または不連続的に部分選択的堆積を実行することによって達成される。
【0080】
これにより、例えば、粒子ビームを基板表面に選択的かつ連続的に向けて移動させることにより、堆積位置が連続的に変化する方法を連続的に実行することにより、例えば連続堆積を得ることができる。一方、不連続な堆積は、例えば、炭化ケイ素含有材料の堆積を中断し、基板表面の異なる位置で堆積を再開することによって達成される。
【0081】
通常、炭化ケイ素含有材料は、0.01~5mm、特に0.05~2mm、好ましくは0.1~1mmの範囲の層厚で基板表面に堆積される。上述した層厚を有する材料を塗布することにより、一方では炭化ケイ素含有材料でできた三次元物体を積層造形によって短時間で得ることができ、他方、炭化ケイ素含有材料を用いた薄くても耐性のあるコーティングも可能である。同時に、炭化ケイ素含有材料を使用して、ほとんどの物体を接合することもできる。
【0082】
本発明に関して、前駆体材料、特に粉末状前駆体材料が、微細に分割された形態、特に少なくとも1つの粒子ビームの形態で、基板の方向に移動し、基板に衝突する前または衝突時に、エネルギー、特にレーザー放射の作用によってガス化および分解される場合、または、ガス状分解生成物が、基板の方向に、特に粒子ビームの形で移動する場合が良好であることが十分に証明されている。
【0083】
本発明に関して、粒子ビームは、一定の断面を有することが好ましく、直線的に移動することが好ましい粒子または微粒子の有向流として理解されるべきである。本発明に関して、前駆体材料または分解生成物は、1つまたは複数の粒子ビームにおいて基板表面に向かって移動し、例えば、焦点、例えばレーザーの光線において、または基板上において合流することができる。1つまたは複数の粒子ビームは、基板表面に向けられることが好ましい。
【0084】
したがって、本発明においては、開始化合物が、微細に分割された形で、好ましくは微細な粉末、特に粉末ビームの形で、基板表面の方向に移動し、エネルギーの作用によって、特にレーザービームの作用によって、基板表面に衝突する前、特にその直前、または衝突したときに、ガス化および分解される。このようにして、分解生成物は、それらが適用される表面のすぐ近くで生成され、より低温の基板表面に好ましくは単結晶の形で堆積することができる。またその代案として、分解生成物が、例えばノズルによって基板表面の方向に移動させてそこに適用することも可能であり、分解生成物が、少なくとも部分的に基板表面上に所望の炭化ケイ素含有材料として堆積する。しかしながら、ここには、より大きな凝集体が気相においてすでに形成され、密度が低く均一な表面が得られるというリスクが常にある。
【0085】
本発明に関して、粒子ビームは、0.1~2mm、特に0.2~1.5mm、好ましくは0.5~1.2mmの範囲の断面を含むことが提供され得る。より好ましくは、粒子ビームは1mmの断面を含む。
【0086】
本発明に関して、エネルギー入力は、通常、熱エネルギー、特に温度上昇によって、特に抵抗加熱、電気アークまたは放射エネルギーによって、好ましくは電気アークまたは放射エネルギー、より好ましくはレーザー放射によるものである。
【0087】
エネルギー入力に関する限りにおいて、エネルギー入力が、特にレーザー放射によって、0.1~150μm、特に1~100μm、好ましくは10~50μmの解像度で行われる場合に十分に良好であることが証明されている。このようにして、高いエネルギー入力は、狭い限られたスペースにおいて確保されるので、前記前駆体が完全にガス化または分解される。
【0088】
本発明による方法の特別な特徴は、特に、これに続く焼結工程を必要としないことである。すなわち、本発明の範囲内で、前駆体が選択され、特に、次のような方法でプロセス性能に適合される。均質でコンパクトな三次元物体は、気相から直接得られるため、焼結する必要がないからである。
【0089】
本発明において、前駆体材料、特に粉末状前駆体材料、またはガス状分解生成物は、少なくとも1つのノズルによって基板の方向に移動されることが好ましい。ノズルを使用することにより、特に、基板表面に部分選択的に適用される、好ましくはガス状粒子または粉末粒子の鮮明な粒子噴流を得ることができる。特に好ましくは、ノズルは粉末ノズルまたはガスノズルである。
【0090】
ノズルは、例えばレーザービームと同軸に、または横に配置することができる。同軸配置では、レーザービームとノズルは通常、処理ヘッドまたはアセンブリ内に配置され、レーザービームは基板表面に対してほぼ垂直に向けられ、粒子ビームが基板と交差するか、いくつかの粒子ビームが、焦点でレーザービームの軸と交差する。横方向の配置では、レーザービームも通常、基板表面に垂直に配置されると共に移動可能であり、粒子の流れがレーザービームの軸に横方向に噴射される。
【0091】
前述のように、粉末状前駆体材料の使用が好ましいが、ガス状または液状の前駆体材料も使用できる。
【0092】
本発明に関して、通常、粉末状前駆体材料が粉末ビームの形で基板の方向に移動するか、または、液体状前駆体材料が、細分化された形でまたは液体ビームとして、基板の方向に、常に粒子ビームの形で移動されることが望ましい。さらに、ガス状前駆体材料をガスビームの形で基板に向かって移動させることが可能である。その代替案として、ガス分解生成物が、ガスビームの形で基板の方向に移動させることも可能である。
【0093】
本発明による方法は、多数の三次元物体の製造のために、または炭化ケイ素含有材料によって物体を被覆するために適している。本発明に関して、本方法が、三次元炭化ケイ素含有物体を層ごとに構築するために、および/または、少なくとも2つの部品(構成要素)を接合するために使用される場合が特に好ましい。したがって、本発明による方法は、一方では生成的製造方法であることができ、他方では、物体を接合するためのまたは物体を修復するための接合工程として使用することもできる。
【0094】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、この方法は、レーザー堆積溶融またはレーザー堆積溶融に類似の方法であり、基板表面と接触する前または接触するまで、前駆体材料がガス化および/または分解される。
【0095】
本発明に関して、前駆体材料、特に粉末状前駆体材料が、基板表面の近く、特に基板表面のすぐ近くでレーザー放射によってガス化および分解される場合が好ましい。このようにして、副反応および望ましくない凝集が特に防止される。さらに、本発明において、基板は、特にレーザービームによって導入されたエネルギーによってごくわずかしか加熱されないため、一方で、できるだけストレスフリーの炭化ケイ素含有材料を適用することができる。
【0096】
通常、粉末状開始材料のガス化および分解並びに炭化ケイ素含有材料の堆積、好ましくは方法全体が、保護ガス雰囲気中で行われることが提供される。このようにして、酸素による望ましくない酸化が防止される。
【0097】
本発明による方法が保護ガス雰囲気中で実施される場合、その方法が窒素および/またはアルゴン雰囲気、好ましくはアルゴン雰囲気中で実施される場合が十分に良好であることが証明されている。本発明による方法は、特に炭素含有前駆体化合物が酸化されないように、一般に保護ガス雰囲気中で実施される。この方法がアルゴン雰囲気で行われる場合、アルゴンはプロセス条件下で前駆体化合物と反応しないため、一般的には不活性ガス雰囲気でもある。不活性ガスとして窒素を使用する場合、特に窒化ケイ素を形成することもできる。これは、例えば、炭化ケイ素に窒素をさらに混合ドーピングする場合に望ましいことである。
【0098】
しかしながら、炭化ケイ素へのまたは炭化ケイ素含有化合物への窒素の混入が望ましくない場合、本発明による方法は、アルゴン雰囲気中で実施される。
【0099】
好ましい実施形態によれば、1つおよび/または複数の粒子ビームは、保護ガス流に囲まれていることが提供される。したがって、粒子の流れは保護ガスの流れに囲まれ、周囲の大気との反応を防ぐ。このようにして、例えば、不活性ガスで満たされたチャンバー内に容易に移動できないより大きな物体を炭化ケイ素含有材料によってコーティングすることも可能である。
【0100】
特に、本発明による方法は、広範囲の前駆体材料から、事実上あらゆる炭化ケイ素含有材料、特に非化学量論的炭化ケイ素から高性能セラミック用の炭化ケイ素含有合金までの炭化ケイ素含有材料の簡単な製造を可能にする。
【0101】
適切な前駆体材料については、以下でより詳細に説明する。
【0102】
本発明に関して、例えば、前駆体材料が、液体および/または気体の炭素及びケイ素源のいずれかの混合物、すなわち、反応条件下で炭素またはケイ素または反応性中間体を放出する化合物、または炭素源およびケイ素源を具備する液体溶液または分散液を使用することが想定される。
【0103】
液体状および/または気体状の炭素源が本発明において前駆体材料として使用される場合、液体状および/または気体状の炭素源は、アルカン、アミン、ハロゲン化アルキル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、 カルボン酸エステルおよびその混合物、特にC1-~C8-アルカン、第一級および第二級C1-~C4-アルキルアミン、C1-~C8-ハロゲン化アルキル、C1-~C8-アルデヒド、C1-~C8-ケトン、C1-~C8-カルボン酸、C1-~C8-アミド、C1-~C8-カルボン酸エステル、およびそれらの混合物から選択されることが提供されるものである。
【0104】
これに関して、気体状および/または液体状の炭素源が、C1-~C8-アルカン、特にC1-~C4-アルカン、およびそれらの混合物から選択される場合が特に良好な結果が得られる。したがって、本発明に関して、気体状または液体状の炭素源が短鎖であり、したがって揮発性の高いアルカンである場合が好ましい。特に酸素含有官能基を使用する場合は、炭素が常に酸化されて一酸化炭素または二酸化炭素になり、たとえばケイ素が酸化されて二酸化ケイ素になり、または二酸化ケイ素が炭素によって直ぐに再び還元されることから、二酸化ケイ素が、炭化ケイ素を含む繊維またはフォームの構造および機能を著しく破壊するため、過剰な炭素がより高くなることに注意する必要がある。
【0105】
本発明に関して、液体および/または気体状ケイ素源が、シラン、シロキサンおよびそれらの混合物、好ましくはシランから選択される場合が十分に良好であることが証明されている。
【0106】
本発明においてシロキサンが前駆体として使用される場合、適切なシロキサンが選択されるならば、シロキサンが炭素源およびシリコン源の両方になることが可能であり、ドーピングまたは合金化試薬を除いて他の前駆体を使用する必要はなくなる。
【0107】
しかしながら、好ましくは、固体状、特に粉末状前駆体材料が本発明において使用される。前記固体状前駆体材料は、通常、
少なくとも1つのケイ素源、
少なくとも1つの炭素源、および、
付加的に、ドーピング元素および/または合金化元素のための前駆体
を含有する前駆体粒状物の形態である。
【0108】
前駆体粒状物の場合、ケイ素源は通常、シラン加水分解物およびケイ酸およびそれらの混合物から選択される。本発明に関して、ケイ素源、すなわち炭化ケイ素含有化合物におけるケイ素の前駆体は、特にテトラアルコキシシランの加水分解によって得られ、これによって、前駆体粒状物において、ケイ素は好ましくはケイ酸またはシラン加水分解物の形であることが好ましい。
【0109】
前駆体粒状物の炭素源に関する限り、これは通常、糖類、特にスクロース、グルコース、フルクトース、転化糖、マルトース;スターチ; デンプン誘導体および有機ポリマー、特にフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物および/またはその反応生成物、特に糖類および/またはその反応生成物からなる群から選択される。特に好ましくは、炭素源は、糖類およびその反応生成物から選択され、スクロースおよび/または転化糖および/またはそれらの反応生成物が使用されることが好ましい。また、炭素源の場合は、試薬だけでなく、その反応生成物を使用することもできる。
【0110】
前駆体粒状物を使用して (化学量論的) 炭化ケイ素を生成する場合、組成物は通常、
(A)組成物に基づいて、40~60重量%、好ましくは45~55重量%の量のケイ素源、
(B)組成物に基づいて、40~60重量%、好ましくは45~55重量%の量の炭素源、および
(C)付加的にドーピング元素の前駆体
を含むものである。
【0111】
ドーピング元素の前駆体は、通常、非常に少量、特にppm範囲でのみ、前駆体粒状物を含む。
【0112】
前駆体粒状物を使用して非化学量論的炭化ケイ素を生成する場合、組成物は通常、
(A)組成物に基づいて、60~90重量%、特に65~85重量%、好ましくは70~80重量%の量のケイ素源、
(B)組成物に基づいて、10~40重量%、特に15~35重量%、好ましくは20~30重量%の量の炭素源、および
(C)付加的に、ドーピング元素のための前駆体
を含むものである。
【0113】
炭素源およびケイ素源を前述の量の範囲で含む前駆体粒状物は、過剰なケイ素を含む非化学量論的炭化ケイ素を再現性よく生成するのに優れている。
【0114】
前駆体粒状物が炭化ケイ素合金の製造に使用される場合、組成物は通常、それぞれの場合において組成物に基づいて、
(A)5~40重量%、特に5~30重量%、好ましくは10~20重量%の量のケイ素源、
(B)10~60重量%、特に15~50重量%、好ましくは20~50重量%の量の炭素源、および
(c)5~70重量%、特に5~65重量%、好ましくは10~60重量%の量の合金化元素のための1つまたは複数の前駆体、
を含むものである。
【0115】
好ましい前駆体粒状物は、前駆体溶液または前駆体分散液から得ることができる。これに関連して、前駆体粒状物が、ゾルゲル法によってまたはゾルの乾燥によって得られる場合が特に好ましい。ゾルゲル法では、通常、溶液または細かく分割された液体中の固体状分散液が生成され、その後の熟成およびその過程で発生する凝縮工程によって、より大きな固体粒子を含むゲルに変換される。
【0116】
ゲルまたはゾルを乾燥させた後、特に均一な組成物、特に適切な前駆体粒子が得られ、それによって適切な化学量論が選択されると、付加的な製造工程におけるエネルギーの作用により、所望の炭化ケイ素含有化合物が得られる。
【0117】
さらに、前駆体粒状物は、還元条件下での熱処理によって還元前駆体粒状物に変換されることが提供され得る。還元熱処理は、通常不活性ガス雰囲気中で行われ、特に炭素源、好ましくは糖ベースの炭素源が、ケイ素の酸化物またはケイ素の他の化合物並びに他の元素の可能なさらなる化合物と反応し、元素を還元し、特に気相を介して除去される揮発性酸化炭素および水素化合物、特に水およびCOを形成するものである。
【0118】
前駆体粒状物は、特にゾルゲル法によって調製することができるもので、該ゾルゲル法において、
(i)第1の方法ステップにおいて、
(I)少なくとも1つのケイ素含有化合物、
(II)少なくとも1つの炭素含有化合物、
(III)少なくとも1つの溶媒または分散剤、および
(IV)付加的にドーピングおよび/または合金化試薬、
を含む溶液または分散液、特にゾルが製造されること、
(ii)第1の方法ステップ(i)に続く第2の方法ステップにおいて、溶液または分散液が反応し、特にゲルに熟成されること、および、
(iii)第2の方法ステップ(ii)に続く第3の方法ステップにおいて、第2の方法ステップ(ii)から生成された反応生成物、特にゲルが、乾燥され、必要に応じて粉砕されることを特徴とするものである。
【0119】
ゾルゲル法による炭化ケイ素の製造に適した前駆体粒子の製造方法は、例えばドイツ特許出願DE102015105085.4に記載されている。
【0120】
本発明に関して、溶液は、少なくとも1つの物質、特に化合物またはイオンなどのその構成要素が、さらなる物質に均一に分布する単相系として理解されるべきである。本発明に関して、分散液は少なくとも二相系として理解されるべきであり、第1相、すなわち分散相は、第2相に分散されて存在する連続相である。連続相は、分散媒または分散剤とも呼ばれる。特にゾルまたは高分子化合物による溶液から分散液への移行は、しばしば流動的であるため、溶液と分散液を明確に区別することは不可能である。
【0121】
前記方法ステップ(a)における溶媒または分散剤の選択に関する限り、これはすべての適切な溶媒または分散剤から選択することができる。しかしながら、通常、前記方法ステップ(a)における溶媒または分散剤は、水および有機溶媒およびそれらの混合物から、好ましくはそれらの混合物から選択される。特に、水を含む混合物の場合、無機水酸化物、特に金属水酸化物およびケイ酸は、出発化合物の加水分解反応によって形成されることが多く、続いて凝縮するため、前記方法は、いずれかのゾル-ゲル工程の形で実施され、ゾル段階で停止するものである。
【0122】
さらに、溶媒は、アルコール、特にメタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、酢酸エチルおよびそれらの混合物から選択されることが提供され得る。 これに関連して特に好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、2-プロパノールおよびそれらの混合物から選択されること、特にエタノールがより好ましい。
【0123】
前述の有機溶媒は、広範囲で水と混和性があり、特に極性無機物質の分散または溶解にも適している。
【0124】
ゾルまたはゲルの製造について、水と少なくとも1つの有機溶媒の混合物、特に水とエタノールの混合物は、溶媒または分散剤として使用されることが好ましい。 これに関連して、溶媒または分散剤が、1:10~20:1、特に1:5~15:1、好ましくは1:2~10:1、より好ましくは1:1~5:1、特に好ましくは1:3の水と有機溶媒の重量比を有する場合が好ましい。水と有機溶媒の比率によって、一方で、特にケイ素含有化合物および合金化試薬の加水分解速度が調整され、他方で、炭素含有化合物、特に糖などの炭素含有前駆体化合物の溶解度および反応速度が調整されるものである。
【0125】
さらに、方法ステップ(i)における前駆体粒状物の製造方法において、ケイ素含有化合物は、シラン、シラン加水分解物、オルトケイ酸、およびそれらの混合物、特にシランから選択されることがより好ましい。オルトケイ酸およびその加水分解生成物は、本発明において、例えば、アルカリ金属イオンがイオン交換によりプロトンに交換されたアルカリ金属ケイ酸塩から得ることができる。しかしながら、アルカリ金属化合物は、本発明に関して、特にゾル-ゲル法を使用する場合、またはゾルが乾燥される場合に、それらが、結果として生じる前駆体粒状物に組み込まれ、結果として炭化ケイ素含有化合物にも見いだせることから、可能であれば、使用しないものである。しかし、アルカリ金属ドーピングは、本発明に関して一般的に望ましくない。しかし、これが望ましい場合には、適切なアルカリ金属塩、例えばケイ素含有化合物またはアルカリリン酸塩を使用することができる。
【0126】
本発明において、シラン、特にテトラアルコキシシランおよび/またはトリアルコキシアルキルシラン、好ましくはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシランまたはトリエトキシメチルシランが、方法ステップ(i)においてケイ素含有化合物として使用される場合に、これらの化合物が、加水分解により、水性媒体中でオルトケイ酸またはその縮合生成物または高度に架橋されたシロキサンおよび対応するアルコールを与える反応をすることから、良好な結果が得られる。
【0127】
炭素含有化合物に関する限り、方法ステップ(i)において、炭素含有化合物が、糖類、特にスクロース、グルコース、フルクトース、転化糖、マルトース;スターチ;デンプン誘導体および有機ポリマー、特にフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択されることが十分に良好であることが証明されている。方法ステップ(i)において、炭素含有化合物が、水溶液または分散液において使用される場合、本発明に関して特に良好な結果が得られる。
【0128】
特に、炭素含有化合物が、水溶液または分散液で使用される場合、方法ステップ(i)における前駆体粒状物の製造の場合において、炭素含有化合物は、通常、少量の溶媒または分散剤、特に水に導入される。これに関して、炭素含有化合物が、炭素含有化合物の溶液または分散液に基づいて、10~90重量%、特に30~85重量%、好ましくは50~80重量%、より好ましくは、60~70重量%の量の炭素含有化合物を含む溶液中で使用される場合、特に良好な結果が得られる。
【0129】
特に、例えばスクロースの転化を促進し、より良い反応結果を達成するために、例えば触媒、特に酸または塩基を、炭素含有化合物の溶液または分散液に添加することもできる。
【0130】
方法ステップ(i)が実施される温度に関して、方法ステップ(i)が、15~40℃、特に20~30℃、好ましくは20~35℃の範囲内の温度で実施される場合に、十分に良好であることが証明されている。
【0131】
さらに、方法ステップ(ii)において、溶液または分散液の個々の成分の反応、特にゾルからゲルへの熟成の間の縮合反応を促進するために、方法ステップ(i)と比較して温度をわずかに上げることができる。
【0132】
これに関して、方法ステップ(ii)が、20~80℃、特に30~70℃、好ましくは40~60℃の範囲内の温度で実行される場合に、特に良好な結果が得られる。これに関して、方法ステップ(ii)が50℃で実行される場合に特に良好であることが証明されている。
【0133】
方法ステップ(ii)が実施される期間に関しては、これは、それぞれの温度、使用される溶媒、および使用される前駆体化合物に応じて変化し得る。しかし、通常、方法ステップ(ii)は、15分~20時間、特に30分~15時間、好ましくは1時間から10時間、より好ましくは2時間~8時間、特に好ましくは2時間~5時間の間の時間で実施される。
【0134】
ここで、方法ステップ(ii)における個々の成分の相互の量に関する限り、これらはそれぞれの意図する用途に応じて広い範囲で変化し得る。例えば、化学量論的炭化ケイ素または非化学量論的炭化ケイ素の前駆体組成物は、炭化ケイ素合金の製造を意図した組成とは完全に異なる組成物および個々の成分比率を含むものである。
【0135】
また、個々の化合物、特にドーピング試薬または合金化試薬を選択する際には、それらが、炭化ケイ素含有組成物を形成するために生成製造方法において反応することができる炭素源及びケイ素源で均一な粒状物に加工されるように注意する必要がある。
【0136】
特にドーピングおよび/または合金化試薬が、所望の元素が反応性粒子として脱昇華して所望の合金を形成するような方法においてエネルギーの作用下で確実に分解または開裂するようにすることが好ましいと同時に、化合物の残っている成分は可能な限り反応して、気相を介して簡単に除去できる水、CO、CO、HClなどの安定したガス状物質を形成する。さらに、使用される化合物は、使用される溶媒、特にエタノールおよび/または水に十分に高い溶解性を備え、微細な分散液または溶液、特にゾルを形成できるようにする必要があり、溶液の他の成分または分散液、特にゾルは、製造工程において不溶性化合物を形成する。さらに、実行される個々の反応の反応速度は、加水分解、凝縮、および特にゲル化が、粒状物の形成に先立って影響を受けずに進行しなければならないため、互いに調整されなければならない。さらに、形成された反応生成物は、酸化の影響を受けにくく、揮発性であってはならない。
【0137】
さらに、溶液または分散液は、少なくとも1つのドーピングおよび/または合金化試薬を含むことが提供され得る。前記溶液がドーピングおよび/または合金化試薬を含む場合、前記溶液または分散液は、ドーピングまたは合金化試薬を、溶液または分散液に基づいて、0.000001~60重量%、特に0.000001~45重量%、好ましくは0.000005~60重量%、より好ましくは0.00001~40重量%の量で含む場合が十分に良好であることが証明されている。
【0138】
前記溶液または分散液がドーパント試薬を含む場合、前記溶液または分散液は、典型的には、溶液または分散液に基づいて、0.000001~0.5重量%、好ましくは0.000005~0.1重量%、より好ましくは0.00001~0.01重量%の量のドーパント試薬を含む。
【0139】
前記溶液または分散液が合金化試薬を含む場合、通常、前記溶液または分散液は、合金化試薬を、溶液または分散液に基づいて、5~60重量%、特に10~45重量%、好ましくは15~45重量%、より好ましくは、20~40重量%の量で含むことが提供される。
【0140】
ここで、ドーピング試薬の化学的性質に目を向けると、適切なドーピング元素から選択することができる。ドーピング試薬またはドーピング元素は、周期表の第3および第5の主族の元素から選択されることが好ましい。ドーピング試薬は、溶媒または分散剤に可溶な元素周期表の第3または第5主族の元素の化合物から選択されることが好ましい。ドーピング試薬は、通常、硝酸、塩化アンモニウム、メラミン、リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、ホウ酸塩、塩化ホウ素、塩化インジウムおよびそれらの混合物から選択される。
【0141】
窒素でドーピングする場合、溶液には硝酸、塩化アンモニウム、またはメラニンが含まれている可能性がある。リンによるドーピングが意図される場合、例えば、リン酸またはリン酸塩またはホスホン酸を使用することができる。
【0142】
ホウ素によるドーピングが意図される場合、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、または三塩化ホウ素などのホウ素塩が使用される。
【0143】
インジウムをドープする場合は、通常、塩化インジウムなどの水溶性インジウム塩をドープ剤として使用する。
【0144】
前記溶液または分散液が合金化試薬を含む場合、合金化試薬は、通常、溶媒または分散剤に溶解するAl、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Zrおよびそれらの混合物から選択される。本発明のより好ましい実施形態によれば、合金化剤は、Al、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Zn、Zrおよびそれらの混合物の塩化物、硝酸塩、酢酸塩、アセチルアセトネートおよびギ酸塩から選択される。
【0145】
必要に応じてドープされる化学量論的炭化ケイ素SiCが得られる場合、第1の方法ステップにおける溶液または分散液が、ケイ素含有化合物を、溶液または分散液に基づいて、10~40重量%、特に12~30重量%、好ましくは15~25重量%、より好ましくは17~20重量%を含むものである。
【0146】
同様に、この実施形態によれば、前記溶液または分散液は、溶液または分散液に基づいて、炭素含有化合物を、6~40重量%、特に8~30重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは12~20重量%の量で含むことが提供され得る。
【0147】
さらに、この実施形態によれば、前記溶液または分散液は、溶液または分散液に基づいて、前記溶媒または分散剤を。20~80重量%、特に30~70重量%、好ましくは40~60重量%、より好ましくは45~55重量%の量で含むことが提供され得る。
【0148】
炭化ケイ素がドープされる場合、前記溶液または分散液は、通常、前記溶液または分散に基づいて、ドーピング試薬を、0.000001~0.5重量%、好ましくは0.000005~0.1重量%、より好ましくは0.00001~0.01重量%の量を含むものである。
【0149】
非化学量論的炭化ケイ素が、特にモル過剰のケイ素で得られる場合、第1の方法ステップ(a)における溶液または分散液が、溶液または分散液に基づいて、12~40重量%、特に15~40重量%、好ましくは18~35重量%、より好ましくは20~30重量%の量で、ケイ素含有化合物を含有する場合に、良好であることが証明された。
【0150】
この実施形態によれば、前記溶液または分散液は、溶液または分散液に基づいて、6~40重量%、特に8~30重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは 12~20重量%の量の炭素含有化合物を含有することがさらに提供される。
【0151】
さらに、この実施形態によれば、前記溶液または分散液は、溶液または分散液に基づいて、20~80重量%、特に30~70重量%、好ましくは40~60重量%、より好ましくは45~55重量%の量の溶媒または分散剤を含むことが同様に提供され得る。
【0152】
非化学量論的炭化ケイ素をドープする場合、前記溶液または分散液は、溶液または分散液に基づいて、0.000001~0.5重量%、好ましくは0.000005~0.1重量%、より好ましくは0.00001~0.01重量%の量のドーピング試薬を含む場合に、良好であることが十分に証明された。
【0153】
炭化ケイ素合金を製造する場合、第1方法ステップ(a)における溶液または分散液が、溶液または分散液に基づいて、5~30重量%、特に6~25重量%、好ましくは8~20重量%、より好ましくは10~20重量%の量のケイ素含有化合物を含む場合に、十分に良好であることが証明明されている。
【0154】
同様に、この実施形態によれば、前記溶液または分散液が、溶液または分散液に基づいて、5~40重量%、好ましくは6~30重量%、好ましくは7~25重量%、より好ましくは10~20重量%の炭素含有化合物を含む場合が好ましい。
【0155】
さらに、この実施形態によれば、前記溶液または分散液が、溶液または分散液に基づいて、20~70重量%、特に25~65重量%、好ましくは30~60重量%、好ましくは35~50重量%の量の溶媒または分散剤を含むことが好ましい。
【0156】
前記溶液または分散液は、溶液または分散液について、5~60重量%、特に10~45重量%、好ましくは15~45重量%、より好ましくは20~40重量%の量の合金化試薬を含むことが利益的に提供される。
【0157】
前記合金化試薬は、対応する合金化元素の対応する塩化物、硝酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナートおよびギ酸塩から選択されることが特に好ましい。
【0158】
前記方法ステップ(iii)の実施に目を向けると、方法ステップ(iii)において、方法ステップ(ii)からの反応生成物が、50~400℃、特に100~300℃、好ましくは120~150℃、より好ましくは150~200℃の範囲の温度で乾燥される場合が、十分に良好であることが証明されている。
【0159】
これに関連して、方法ステップ(iii)における反応生成物は、1~10時間、特に2~5時間、好ましくは2~3時間乾燥させる場合に十分に良好であることが証明されている。
【0160】
加えて、反応生成物は、特に乾燥工程に続いて、方法ステップ(iii)において粉砕されることが可能である。これに関連して、反応生成物が方法ステップ(iii)において機械的に、特にグラインドによって粉砕される場合が特に好ましい。グラインド工程は、生成的製造プロセスを実行するために要求され、または有益な粒子サイズに特別に調整するために使用される。しかしながら、所望の粒子サイズを設定するために、乾燥工程の間、方法ステップ(ii)からの反応生成物に、例えば攪拌によって機械的に応力をかけることもしばしば十分である。
【0161】
好ましくは、方法ステップ(iii)に続く第4の方法ステップ(iv)は、方法ステップ(iii)において得られた組成物に、還元組成物が得られるように還元熱処理を施すものである。還元処理を施した還元組成物の使用には、多くの可能性のある妨害副生成物がすでに除去されているという利点がある。結果として生じる還元された前駆体粒子は、再び著しくコンパクトであり、炭化ケイ素含有化合物を形成する元素をより高い割合で含んでいる。
【0162】
方法ステップ(iii)に続いて、方法ステップ(iii)で得られた組成物の還元熱処理が行われる場合、方法ステップ(iv)において方法ステップ(iii)で得られた組成物が、700~1,300℃、特に800~1,200℃、好ましくは900~1,100℃の範囲の温度に加熱される場合に、十分に良好であることが証明されている。
【0163】
これに関連して、方法ステップ(iv)で得られた組成物を、1~10時間、特に2~8時間、好ましくは2~5時間加熱する場合に特に良好な結果が得られる。言及された温度範囲および反応時間において、炭素含有前駆体材料の炭化が特に起こり、これは特に金属化合物のその後の還元を著しく促進することができる。
【0164】
一般に、方法ステップ(iv)は、保護ガス雰囲気、特にアルゴンおよび/または窒素雰囲気中で行われる。このようにして、特に炭素含有化合物の酸化が防止される。
【0165】
還元された前駆体粒状物を得るために、上記の前駆体粒状物の還元熱処理が提供される場合、前駆体化合物は、1,300℃まで、好ましくは1,100℃までの適用温度で蒸発してはならないが、製造中に所望の炭化ケイ素含有化合物に選択的に変換できる化合物を形成するために、還元性熱条件下で選択的に分解しなければならない。
【0166】
上記に代わる代替案において、前駆体粒状物の製造方法は、
(I)第1の方法ステップにおいて、溶液または分散液、特にゾルが、
(A)少なくとも1つのケイ素含有化合物、
(B)少なくとも1つの炭素含有化合物、
(C)少なくとも1つの溶媒または分散剤、および
(D)付加的にドーピングおよび/または合金化試薬、
の成分を含有すること、及び
(II)第1の方法ステップ(i)に続く第2の方法ステップにおいて、溶媒または分散剤が除去される、という方法において実行され得る。
【0167】
これは、意外にも、ゾル-ゲル法を実施することを免除できることが見いだされた。特に、溶媒または分散剤がゾル形成後に例えば真空中で除去される場合、匹敵する前駆体粒状物がしばしば得られる。
【0168】
このようにして得られた前駆体粒状物は、400~800℃の範囲内の温度処理により還元された前駆体粒状物に変換される。溶媒または分散剤を除去してゾル化して得られた前駆体粒子は、ゾル-ゲル法により得られた前駆体粒状物に含まれる元素の百分率分布に対応しており、このように処理することができる。
【0169】
本発明のさらなる主題は、本発明の第2の様相によると、上述の方法によって得られる炭化ケイ素含有材料である。
【0170】
本発明に係る方法によれば、生成的製造により炭化ケイ素を含む物体を製造することができる。しかしながら、同様に、物体または物品が、炭化ケイ素含有材料でコーティングされること、または本発明による方法によって部品を結合することも可能である。
【0171】
本発明による炭化ケイ素含有物体のさらなる詳細については、本発明による方法に関する上記の説明を参照することができ、炭化ケイ素含有物体に関して適宜適用される。
【0172】
最後に、本発明の第3の様相によれば、本発明のさらなる主題は、基板表面上に炭化ケイ素含有材料を部分選択的に堆積するための装置であり、該装置は、
(a)ガス状前駆体材料を分解するため、または液体状または粉末状前駆体材料をガス化および分解するための少なくとも1つの装置であって、前駆体材料が少なくとも1つの炭素源および少なくとも1つのケイ素源を含む装置、
(b)少なくとも1つの粒子ビームを生成するための、および/または、粒子ビームを基板表面に向けるための少なくとも1つの装置、
を具備するものである。
【0173】
本発明に関して、少なくとも1つのケイ素源および少なくとも1つの炭素源を含む前駆体材料のガス分解生成物は、部分選択的に基板表面に局所的に限定され、基板表面上でシリコンが 炭化ケイ素含有材料が堆積するものである。
【0174】
すでに説明したように、本発明による方法は、レーザー溶着溶接として、またはレーザー溶着に基づく方法として実施されることが好ましい。この方法を実施するためには、粉末レーザー溶着溶接に相当する装置を使用することが好ましい。特に、粒子ビームが粉末ビームである場合、本発明において最良の結果が得られる。これにより、比較的大量の材料が短時間で基板表面に堆積され、レーザービームのエネルギーが、たとえばガス状の開始材料よりも固体状の前駆体材料によってはるかによく吸収される。その結果、基板表面の加熱が大幅に回避され、基板表面への炭化ケイ素含有材料の良好な堆積が達成される。
【0175】
本発明に関して、前述のように、開始材料は、粉末状の開始材料を使用することによって最も容易に達成される基板表面の近くでのみ分解されることが好ましい。
【0176】
本発明に関して、粒子ビームを生成し、および/または、粒子ビームを基板表面に向けるための装置は、ノズル、特に固体ノズル、好ましくは粉末ノズルであることが有利である。前述のように、本発明に関して、開始材料または前駆体材料が粉末形態である場合に最良の結果が得られる。
【0177】
本発明に関して、ガス状出発化合物の分解または液体状または粉末状出発材料のガス化および分解のための装置は、高温を発生させる手段、特にレーザー放射を発生させる手段、または 電気アークを発生させる手段を具備することが利益的に提供される。
【0178】
電気アークまたはレーザー放射、好ましくはレーザー放射を使用することにより、開始材料は基板表面の近くで容易に分解することができる。
【0179】
本発明のより好ましい実施形態によれば、ガス状前駆体材料を分解するため、または液体状または粉末状前駆体材料をガス化および分解するための装置は、レーザー放射を生成するための手段を含む。好ましくは、ガス状前駆体化合物の分解または液体もしくは粉末状前駆体材料のガス化および分解のための装置はレーザーである。
【0180】
さらに、前記装置は、保護ガス雰囲気を生成する手段を備えることが通常提供される。大気酸素によるガス状分解生成物の望ましくない酸化を防止するために、本発明による方法は、通常、不活性ガス雰囲気中で行われる。装置の一部、特に基板を含む部分が保護ガス雰囲気を含むことも可能である。あるいは、より好ましくは、粒子ビーム、例えば粉末ビームが、保護ガスによって囲まれ、これによって、保護ガス雰囲気が局所的に、特に開始材料のガス化および分解の領域で生成される。
【0181】
さらなる詳細については、本発明による装置に関して適宜適用される、本発明のさらなる態様に関する上記の説明を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0182】
図1図1は、本発明による方法を実施するための本発明による装置であって、レーザービームに対して横方向に配置された粉末状供給装置を示したものである。
図2図2は、同軸に配置された粉末状供給装置を備えた本発明による装置1の断面図である。
図3図3において、図3(a)は、生成された3次元物体の形での本発明による方法の結果の例を示し、図3(b)は、接合工程としての本発明による方法の実行の結果の例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0183】
本発明の主題は、例として、そして図の説明によって非限定的に示される。
【実施例
【0184】
図1は、前駆体材料のガス化および/または分解のための装置、特にレーザービーム3を発生させるための装置2を有する本発明による装置を示す。さらに、装置1は、気体、液体、または固体の前駆体材料5から粒子流を生成するための少なくとも1つの装置4を含む。粒子ビームは、粉末状前駆体材料によって形成されることが好ましい。しかしながら、すべての前駆体材料は、少なくとも1つのケイ素源および1つの炭素源、ならびに場合によっては合金化元素またはドーピング元素またはそれらの化合物を常に含むという共通点がある。
【0185】
レーザービーム3と前駆体材料5の粒子ビームは、レーザービーム3が基板表面7のすぐ近くで粒子ビームに当たるように、基板8の表面7に向けられる。その結果、粒子ビームに含まれる前駆体物質5が分解またはガス化して分解され、それによって、基板表面7に炭化ケイ素含有材料6の層の形で所望の炭化ケイ素材料として堆積される反応性領域が得られる。
【0186】
炭化ケイ素含有材料の層6の厚さは、0.01~5mm、特に0.5~2mm、好ましくは0.1~1mmの間であることが好ましい。
【0187】
したがって、装置1を用いた本発明による方法は、炭化ケイ素含有材料の層6の部分選択的かつ局所的に鋭く制限された塗布を可能にする。基板8または装置2および4の移動、特に動きによって、多層構造を有する三次元物体を得ることができるか、または基板表面7が、所望の方法において、炭化ケイ素含有材料6の層で被覆することができる。
【0188】
図2は、本発明による装置1の別の設計例を示す。特に、図2は、装置1の断面を示している。前記装置1は、ガス状、液体または粉末状前駆体材料5のガス化および/または分解のための装置2を含み、好ましくは、開始材料のガス化および/または分解のための装置2は、レーザービームを生成するための装置の形で設計される。
【0189】
装置1はさらに、特に気体状、液体状または粉末状の出発材料、特に粉末の開始材料から粒子ビームを発生させるための装置4を含む。図2に示す実施形態では、装置2および4は、好ましくは移動可能に設計され、特に移動可能に設計されたノズルヘッド内に一体化されている。
【0190】
前駆体材料5、特に粒子ビーム5からの粒子ビームは、レーザービーム3を囲み、基板8の表面7に衝突する直前にレーザービームを横切り、これにより、前駆体材料が分解され、炭化ケイ素含有材料6が基板表面7に堆積される。
【0191】
前記装置1は、保護ガス雰囲気、特に保護ガス流10を生成するための手段9、特にノズルをさらに有するものである。保護ガス流10は、前駆体材料5の粒子ビームを周囲に位置しまたは包囲し、これによって、保護ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気において開発材料の分解を可能にする。
【0192】
最後に、図3は、本発明による装置1及び本発明による方法の様々な可能な適用を示している。特に、図3(a)に示すように、炭化ケイ素含有材料6の層を繰り返し適用することにより、三次元物体を得ることができる。同様に、炭化ケイ素含有材料6を塗布することにより、それらの表面、特にそれらの表面7a,7bを介して、構成要素、特に基板8aおよび8bを接合することも可能である。
【符号の説明】
【0193】
1 装置
2レーザービーム発生装置
3 レーザービーム
4 粒子ビーム発生装置
5 前駆体材料
6 炭化ケイ素含有材料
7 基板表面
8 基板
図1
図2
図3
【国際調査報告】