(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(54)【発明の名称】繊維状三次元織補強材を有する複合材料部品の修復または製造の復旧
(51)【国際特許分類】
B29C 73/04 20060101AFI20220721BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20220721BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20220721BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
B29C73/04
F02C7/00 E
F02C7/00 D
F01D25/00 X
F01D25/24 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547870
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(85)【翻訳文提出日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 FR2020050298
(87)【国際公開番号】W WO2020169920
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャルラ,マチュー・ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】パイシャン,アドリエン・フランシス
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AD16
4F213AH16
4F213AH31
4F213WA94
4F213WM02
(57)【要約】
複合材料(10)から作製された部品を修復する方法は、
-損傷領域(20)において複合材料を除去することによる凹状セクション(30)の作製と、
-凹状セクションの縁(32、34)から部品(10)の2つの面(11、12)まで延在する溝(110、120)の作製と、
-溝に開口する部品の厚さ内への複数のオリフィス(130)の作製と、
-凹状セクションの形状に対応する形状を有する中央セクション(41、51)と、中央セクション(41、51)から延在する複数の繊維束(420、450)とを含む充填部分繊維プリフォーム(40、50)の三次元織りと、
-繊維束が部品の反対側の面に存在する溝に開口するような、繊維束が存在する部品(10)の面、部品の面に存在する溝、および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスのいずれかへの充填プリフォーム(40、50)のそれぞれの配置と、
-マトリックスの前駆体樹脂による充填繊維プリフォーム(40、50)の含浸と、
-マトリックスによって緻密化された繊維補強材を含む複合材料(60)から作製された充填部分を得るための樹脂のマトリックスへの変換と、
を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維補強材がマトリックスによって緻密化された、複数の縦糸と複数の横糸との間に三次元織を有する前記繊維補強材を具備する複合材料製部品(10)を修復する方法であって、
-部品内の少なくとも1つの損傷領域(20)の識別と、
-複合材料部品の第1の面(11)から前記部品の第2の面(12)まで延在する凹状セクション(30)を形成するための損傷領域(20)において複合材料を除去することによる凹状セクション(30)の作製と、
-凹状セクションの縁部(31、32、33、34、35)から複合材料部品(10)の第1の面(11)上に延在する第1の複数の溝(110)の作製と、
-凹状セクションの縁から複合材料部品の第2の面(12)上に延在する第2の複数の溝(120)の作製と、
-複合材料部品の厚さ内への複数のオリフィス(130)の作製であって、各オリフィスが第1の複数の溝(110)のうちの1つの溝と第2の複数の溝(120)のうちの1つの溝との双方に開口している、複数のオリフィスの作製と、
-凹状セクションの形状に対応する形状を有する中央セクション(71)と、中央セクション(71)から延在する複数の繊維束(720、740、750、770)とを具備する、少なくとも1つの充填部分繊維プリフォーム(70)の三次元織りと、
-部品(10)の凹状セクション(30)によって区切られた複合材料部品の自由体積(37)への前記少なくとも1つの充填部分繊維プリフォーム(70)の中央セクション(71)の配置と、
-前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第1の部分の繊維束が第2の複数の溝(120)のうちの溝に開口するような、部品の第1の面に存在する第1の複数の溝(110)のうちの溝および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスへの前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第1の部分の配置と、
-前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第2の部分の繊維束が第1の複数の溝(110)のうちの溝に開口するような、部品の第2の面に存在する第2の複数の溝(120)のうちの溝および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスへの前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第2の部分の配置と、
-マトリックスの前駆体樹脂による前記少なくとも1つの繊維プリフォーム(70)の含浸と、
-マトリックスによって緻密化された繊維補強材を具備する複合材料から作製される充填部分であって、凹状セクションによって画定される体積を占める前記充填部分を得るためのマトリックスへの樹脂の変換と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
-複合材料部品の第1の面の側の凹状セクションの形状に対応する形状を有する中央セクション(41)と、中央セクション(41)から延在する複数の繊維束(42、43、44、45、46、47)とを具備する第1の充填部分繊維プリフォーム(40)の三次元織りと、
-複合材料部品の第2の面の側の凹状セクションの形状に対応する形状を有する中央セクション(51)と、中央セクション(51)から延在する複数の繊維束(52、53、54、55、56、57)とを具備する第2の充填部分繊維プリフォーム(50)の三次元織りと、
-第1のプリフォームの繊維束が第2の複数の溝(120)のうちの溝に開口するような、凹状セクション(30)によって区切られ且つ部品(10)の第1の面(11)および繊維束(42、43、44、45、46、47)の側に存在する複合材料部品の自由体積(37)の一部への、部品の第1の面に存在する第1の複数の溝(110)のうちの溝への、および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスへの、第1の充填部分繊維プリフォーム(40)の中央セクション(41)の配置と、
-第2のプリフォームの繊維束が第1の複数の溝(110)のうちの溝に開口するような、凹状セクション(30)によって区切られ且つ部品(10)の第2の面(12)および繊維束(52、53、54、55、56、57)の側に存在する複合材料部品の自由体積(37)の別の部分への、部品の第2の面に存在する第2の複数の溝(120)のうちの溝への、および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスへの、第2の充填部分繊維プリフォーム(50)の中央セクション(51)の配置と、
を備える、請求項1に記載の修復方法。
【請求項3】
凹状セクション(30)の作製が、それぞれが第1および第2の傾斜部(310、311、340、341)を具備する対向する縁部(31、34)の形成を備え、第1の充填部分繊維プリフォーム(40)の中央セクション(41)が、対向する縁部(31、34)の第1の傾斜部(310、340)の間に画定された凹状セクション(30)の体積(37)の一部に相補的な幾何学的形状を有し、第2の充填部分繊維プリフォームの中央セクションが、対向する縁部(31、33)の第2の傾斜部(311、331)の間に画定された凹状セクションの体積の他の部分に相補的な幾何学的形状を有する、請求項2に記載の修復方法。
【請求項4】
凹状セクション(30)が、多角形形状を有し、第1の複数の溝(110)のうちの溝が、複合材料部品(10)の第1の面(11)上の凹状セクションによって形成された多角形の頂点からそれぞれ延在し、第2の複数の溝(120)のうちの溝が、複合材料部品の第2の面(12)上の凹状セクション(30)によって形成された多角形の頂点からそれぞれ延在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1および第2の複数の溝(110、120)が、それぞれ、複合材料部品(20)の第1および第2の面(11、12)上にそれぞれ開口する凹状セクション(30)の縁部から延在する主溝(1201、1202、1203、1204、1205、1206)と、各主溝から延在する副溝(1211、1212、1213、1214、1215、1216)とを備え、複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスの少なくとも一部が、第1の複数の溝(110)のうちの副溝および第2の複数の溝(120)のうちの副溝の双方に開口する、請求項3または4に記載の修復方法。
【請求項6】
第2の繊維プリフォーム(50)の中央セクション(51)への、第1の充填部分繊維プリフォーム(40)の繊維束(42、43、44、45、46、47)の導入と、第1の繊維プリフォーム(40)の中央セクション(41)への、第2の充填部分繊維プリフォーム(50)の繊維束(52、53、54、55、56、57)の導入と、をさらに備える、請求項2~4のいずれか一項に記載の修復方法。
【請求項7】
繊維補強材がマトリックスによって緻密化された、複数の縦糸と複数の横糸との間に三次元織を有する前記繊維補強材を具備する複合材料製部品(10)であって、マトリックスによって緻密化された前記繊維補強材が、複合材料部品の第1の面(11)から前記部品の第2の面(12)まで延在する少なくとも1つの凹状セクション(30)を含み、複合材料製の充填部分(60)が、前記少なくとも1つの凹状セクション(30)によって区切られた複合材料部品の自由体積(37)内に存在し、複合材料部品が、第1の面(11)上に開口する凹状セクション(30)の縁部から前記部品の第1の面(11)上に延在する第1の複数の溝(110)と、第2の面上に開口する凹状セクションの縁部から前記部品の第2の面(12)上に延在する第2の複数の溝(120)とを具備し、複合材料部品が、複合材料部品(10)の厚さ内に延在する複数のオリフィス(130)であって、各オリフィスが第1の複数の溝(110)のうちの1つの溝と第2の複数の溝(120)のうちの1つの溝との双方に開口している、複数のオリフィスをさらに備え、充填部分(60)が、凹状セクション(30)の体積(37)内に存在する中央セクション(71)を具備する少なくとも1つの充填部分繊維プリフォーム(70)と、中央セクションから延在する複数の繊維束(720、740、750、770)と、を備え、前記少なくとも1つのプリフォームの中央セクションが三次元織を有し、前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第1の部分の繊維束が、第2の複数の溝のうちの溝(120)に開口するように、前記少なくとも1つの繊維プリフォームの繊維束の第1の部分が、複合材料部品(10)の第1の面(11)に存在する第1の複数の溝(110)のうちの溝および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスに存在し、前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第2の部分の繊維束が、第1の複数の溝(110)のうちの溝に開口するように、前記少なくとも1つの繊維プリフォームの繊維束の第2の部分が、複合材料部品の第2の面(12)に存在する第2の複数の溝(120)のうちの溝および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスに存在することを特徴とする、部品。
【請求項8】
充填部分(60)が、凹状セクション(30)の体積(37)の一部に存在する中央セクション(41、51)と、中央セクションから延在する複数の繊維束(42、43、44、45、46、47、52、53、54、55、56、57)とをそれぞれ具備する第1および第2の充填部分繊維プリフォーム(40、50)を備え、各プリフォームの中央セクションが、三次元織を有し、第1のプリフォームの繊維束が第2の複数の溝(120)のうちの溝に開口するように、第1の繊維プリフォーム(40)の繊維束(42、43、44、45、46、47)が、複合材料部品(10)の第1の面(11)に存在する第1の複数の溝(110)のうちの溝内および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィス内に存在し、第2のプリフォームの繊維束が第1の複数の溝(110)のうちの溝に開口するように、第2の繊維プリフォーム(50)の繊維束(52、53、54、55、56、57)が、複合材料部品の第2の面(12)に存在する第2の複数の溝(120)のうちの溝内および複数のオリフィス(130)のうちのオリフィス内に存在する、請求項7に記載の部品。
【請求項9】
凹状セクション(30)が、それぞれが第1および第2の傾斜部(310、311、340、341)を具備する対向する縁部(31、34)を備え、第1の充填部分繊維プリフォーム(40)の中央セクション(41)が、対向する縁(31、34)の第1の傾斜部(310、340)の間に画定された凹状セクション(30)の体積(37)の一部に相補的な幾何学的形状を有し、第2の充填部分繊維プリフォームの中央セクションが、対向する縁(31、33)の第2の傾斜部(311、331)の間に画定された凹状セクションの体積の他の部分に相補的な幾何学的形状を有する、請求項8に記載の部品。
【請求項10】
凹状セクション(30)が、多角形形状を有し、第1の複数の溝(110)のうちの溝が、複合材料部品(10)の第1の面(11)上の凹状セクションによって形成された多角形の頂点からそれぞれ延在し、第2の複数の溝(120)のうちの溝が、複合材料部品の第2の面(12)上の凹状セクション(30)によって形成された多角形の頂点からそれぞれ延在する、請求項9に記載の部品。
【請求項11】
第1および第2の複数の溝(110、120)が、それぞれ、複合材料部品(20)の第1および第2の面(11、12)上にそれぞれ開口する凹状セクション(30)の縁部から延在する主溝(1201、1202、1203、1204、1205、1206)と、各主溝から延在する副溝(1211、1212、1213、1214、1215、1216)とを含み、複数のオリフィス(130)のうちのオリフィスの少なくとも一部が、第1の複数の溝(110)のうちの副溝および第2の複数の溝(120)のうちの副溝の双方に開口する、請求項9または10に記載の部品。
【請求項12】
第1の充填部分繊維プリフォーム(40)の繊維束(42、43、44、45、46、47)が、第2の繊維プリフォーム(50)の中央セクション(51)に延在し、第2の充填部分繊維プリフォーム(50)の繊維束(52、53、54、55、56、57)が、第1の繊維プリフォーム(40)の中央セクション(41)に延在する、請求項6~9のいずれか一項に記載の部品。
【請求項13】
前記部品が、航空機ガスタービンエンジンのケーシングに対応する、請求項7~12のいずれか一項に記載の部品。
【請求項14】
請求項13に記載のケーシングを有する航空機ガスタービンエンジン。
【請求項15】
請求項14に記載の1つまたはいくつかのエンジンを備える航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスによって緻密化された三次元織によって得られた繊維補強材を具備する複合材料製部品の修復に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元織によって得られた補強材を具備する複合材料部品は、繊維補強材が二次元繊維層の積層またはドレープによって得られる複合材料部品と比較して、「層間剥離不能」性質を有するという利点を有する。
【0003】
二次元繊維層から製造された複合材料部品は、層が分離可能であり、したがって損傷した場合に新しい健全な層と交換されることができることから、容易に修復可能である。複合材料部品を修復するための解決策の例は、特に米国特許出願公開第2015/0185128号明細書、米国特許出願公開第2012/0080135号明細書および米国特許出願公開第2007/0095457号明細書に記載されている。これらの既知の解決策は、複合材料部品の損傷領域または復旧される領域に予備含浸繊維パッチを貼り付けることからなり、パッチは、1つ以上の繊維層からなるものとすることができる。しかしながら、この種の解決策は、貼り付けられたパッチの層間剥離のリスクを示し、したがって、材料がその「層間剥離不能」性質を失うことから、三次元繊維補強材を有する複合材料部品の修復には望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0185128号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0080135号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0095457号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、材料によって最初に提示される層間剥離に対する耐性を変えない三次元繊維補強材を有する複合材料部品を修復する解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、繊維補強材がマトリックスによって緻密化された、複数の縦糸と複数の横糸との間に三次元織を有する前記繊維補強材を具備する複合材料製部品を修復する方法であって、
-部品内の少なくとも1箇所の損傷領域の識別と、
-凹状セクションの製作であって、複合材料部品の第1の面から前記部品の第2の面まで延在する凹状セクションを形成するための損傷領域において複合材料を除去することによる凹状セクションの製作と、
-凹状セクションの縁から複合材料部品の第1の面上に延在する第1の複数の溝の製作と、
-凹状セクションの縁から複合材料部品の第2の面上に延在する第2の複数の溝の製作と、
-複合材料部品の厚さ内への複数のオリフィスの製作であって、各オリフィスが第1の複数の溝のうちの1つの溝と第2の複数の溝のうちの1つの溝との双方に開口している、複数のオリフィスの製作と、
-複合材料部品の凹状セクションの形状に対応する形状を有する中央セクションと、中央セクションから延在する複数の繊維束とを備える、少なくとも1つの充填部分繊維プリフォームの三次元織りと、
-凹状セクションによって区切られた複合材料部品の自由体積への充填部分繊維プリフォームの中央セクションの配置と、
-前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第1の部分が、第2の複数の溝のうちの溝に開口するような、部品の第1の面に存在する第1の複数の溝のうちの溝および複数のオリフィスのうちのオリフィスへの前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第1の部分の配置と、
-前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第2の部分が第1の複数の溝のうちの溝に開口するような、部品の第2の面に存在する第2の複数の溝のうちの溝および複数のオリフィスのうちのオリフィスへの前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第2の部分の繊維束の配置と、
-マトリックスの前駆体樹脂による前記少なくとも1つの繊維プリフォームの含浸と、
-マトリックスによって緻密化された繊維補強材を含む複合材料から作製される充填部分であって、凹状セクションによって画定される体積を占める前記充填部分を得るためのマトリックスへの樹脂の変換と、
を備えることを特徴とする、方法を提案する。
【0007】
繊維束によって部品に機械的に取り付けられた三次元織による中央セクションを有する少なくとも1つのプリフォームを含む充填部分を使用することによって、層間剥離に対する高い耐性を有する修復を行うことが可能である。したがって、本発明にかかる複合材料部品の損傷領域の修復は、特に堅牢である。
【0008】
本発明の方法の第1の特徴によれば、修復方法は、
-複合材料部品の第1の面の側の凹状セクションの形状に対応する形状を有する中央セクションと、中央セクションから延在する複数の繊維束とを具備する第1の充填部分繊維プリフォームの三次元織りと、
-複合材料部品の第2の面の側の凹状セクションの形状に対応する形状を有する中央セクションと、中央セクションから延在する複数の繊維束とを具備する第2の充填部分繊維プリフォームの三次元織りと、
-第1のプリフォームの繊維束が第2の複数の溝のうちの溝に開口するような、凹状セクションによって区切られ且つ部品の第1の面および繊維束の側に存在する複合材料部品の自由体積の一部への、部品の第1の面に存在する第1の複数の溝のうちの溝への、および複数のオリフィスのうちのオリフィスへの、第1の充填部分繊維プリフォームの中央セクションの配置と、
-第2のプリフォームの繊維束が第1の複数の溝のうちの溝に開口するような、凹状セクションによって区切られ且つ部品の第2の面および繊維束の側に存在する複合材料部品の自由体積の別の部分への、部品の第2の面に存在する第2の複数の溝のうちの溝への、および複数のオリフィスのうちのオリフィスへの、第2の充填部分繊維プリフォームの中央セクションの配置と、
を備える。
【0009】
本発明の方法の第2の特徴によれば、凹状セクションの製作は、それぞれが第1および第2の傾斜部を含むいくつかの対向する縁の形成を備え、第1の充填部分繊維プリフォームの中央セクションは、対向する縁の第1の傾斜部の間に画定された凹状セクションの体積の一部に相補的な幾何学的形状を有し、第2の充填部分繊維プリフォームの中央セクションは、対向する縁の第2の傾斜部の間に画定された凹状セクションの体積の他の部分に相補的な幾何学的形状を有する。これは、充填部分と、修復される部品の複合材料構造との間の接合界面に対する機械的負荷の伝達を最適化することを可能にする。
【0010】
本発明の方法の第3の特徴によれば、凹状セクションは多角形形状を有し、第1の複数の溝のうちの溝は、複合材料部品の第1の面上の凹状セクションによって形成された多角形の頂点からそれぞれ延在し、第2の複数の溝のうちの溝は、複合材料部品の第2の面上の凹状セクションによって形成された多角形の頂点からそれぞれ延在する。これは、各充填部分繊維プリフォームのバランスのとれた取付構成を得ることを可能にし、したがって修復される複合材料部品上の充填部分の保持を強化することを可能にする。
【0011】
本発明の方法の第4の特徴によれば、第1および第2の複数の溝は、それぞれ、複合材料部品の第1および第2の面上にそれぞれ開口する凹状セクションの縁から延在する主溝と、各主溝から延在する副溝とを備え、複数のオリフィスのうちのオリフィスの少なくとも一部は、第1の複数の溝のうちの副溝および第2の複数の溝のうちの副溝の双方に開口する。したがって、各充填部分繊維プリフォームについての「雪片」の形態の取り付けネットワークを形成することが可能であり、したがって、修復される複合材料部品上の充填部分の保持を強化することができる。
【0012】
本発明の方法の第5の特徴によれば、後者は、第2の繊維プリフォームの中央セクションへの第1の充填部分繊維プリフォームの繊維束の導入と、第1の繊維プリフォームの中央セクションへの第2の充填部分繊維プリフォームの繊維束の導入と、をさらに備える。これは、複合材料部品上の繊維プリフォームの保持をさらに強化し、充填部分の強度を向上させることを可能にする。
【0013】
本発明の1つの目的はまた、繊維補強材がマトリックスによって緻密化された、複数の縦糸と複数の横糸との間に三次元織を有する前記繊維補強材を具備する複合材料から作製された部品であって、マトリックスによって緻密化された繊維補強材が、複合材料部品の第1の面から前記部品の第2の面まで延在する少なくとも1つの凹状セクションを含み、複合材料から作製された充填部分が、前記少なくとも1つの凹状セクションによって区切られた複合材料部品の自由体積内に存在し、複合材料部品が、第1の面上に開口する凹状セクションの縁から前記部品の第1の面上に延在する第1の複数の溝と、第2の面上に開口する凹状セクションの縁から前記部品の第2の面上に延在する第2の複数の溝とを備え、複合材料部品が、複合材料部品の厚さ内に延在する複数のオリフィスであって、各オリフィスが第1の複数の溝のうちの1つの溝と第2の複数の溝のうちの1つの溝との双方に開口している、複数のオリフィスをさらに備え、充填部分が、凹状セクションの体積内に存在する中央セクションを備える少なくとも1つの充填部分繊維プリフォームと、中央セクションから延在する複数の繊維束と、を備え、前記少なくとも1つのプリフォームの中央セクションが三次元織を有し、前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第1の部分の繊維束が、第2の複数の溝のうちの溝に開口するように、前記少なくとも1つの繊維プリフォームの繊維束の第1の部分が、複合材料部品の第1の面に存在する第1の複数の溝のうちの溝および複数のオリフィスのうちのオリフィスに存在し、前記少なくとも1つのプリフォームの繊維束の第2の部分の繊維束が、第1の複数の溝のうちの溝に開口するように、前記少なくとも1つの繊維プリフォームの繊維束の第2の部分が、複合材料部品の第2の面に存在する第2の複数の溝のうちの溝および複数のオリフィスのうちのオリフィスに存在することを特徴とする、部品である。
【0014】
本発明の部品の第1の特徴によれば、充填部分は、凹状セクションの体積の一部に存在する中央セクションと、中央セクションから延在する複数の繊維束とをそれぞれ具備する第1および第2の充填部分繊維プリフォームを備え、各プリフォームの中央セクションは、三次元織を有し、第1のプリフォームの繊維束が第2の複数の溝のうちの溝に開口するように、第1の繊維プリフォームの繊維束は、複合材料部品の第1の面に存在する第1の複数の溝のうちの溝内および複数のオリフィスのうちのオリフィス内に存在し、第2のプリフォームの繊維束が第1の複数の溝のうちの溝に開口するように、第2の繊維プリフォームの繊維束は、複合材料部品の第2の面に存在する第2の複数の溝のうちの溝内および複数のオリフィスのうちのオリフィス内に存在する。
【0015】
本発明の部品の第2の特徴によれば、凹状セクションは、それぞれが第1および第2の傾斜部を具備する少なくとも2つの対向する縁部を備え、第1の充填部分繊維プリフォームの中央セクションは、対向する縁部の第1の傾斜部の間に画定された凹状セクションの体積の一部に相補的な幾何学的形状を有し、第2の充填部分繊維プリフォームの中央セクションは、対向する縁部の第2の傾斜部の間に画定された凹状セクションの体積の他の部分に相補的な幾何学的形状を有する。
【0016】
本発明の部品の第3の特徴によれば、凹状セクションは、多角形形状を有し、第1の複数の溝のうちの溝は、複合材料部品の第1の面上の凹状セクションによって形成された多角形の頂点からそれぞれ延在し、第2の複数の溝のうちの溝は、複合材料部品の第2の面上の凹状セクションによって形成された多角形の頂点からそれぞれ延在する。
【0017】
本発明の部品の第4の特徴によれば、第1および第2の複数の溝は、それぞれ、複合材料部品の第1および第2の面上にそれぞれ開口する凹状セクションの縁部から延在する主溝と、各主溝から延在する副溝とを備え、複数の孔のうちのオリフィスの少なくとも1つの部分は、第1の複数の溝のうちの副溝および第2の複数の溝のうちの副溝の双方に開口する。
【0018】
本発明の部品の第5の特徴によれば、第1の充填部分繊維プリフォームの繊維束は、第2の繊維プリフォームの中央セクションに延在し、第2の充填部分繊維プリフォームの繊維束は、第1の繊維プリフォームの中央セクションに延在する。
【0019】
本発明の部品の第6の特徴によれば、部品は、航空機ガスタービンエンジンのケーシングに対応する。この場合、本発明の1つの目的はまた、本発明にかかるケーシング、例えばファンケーシングを有する航空機ガスタービンエンジン、ならびにこれらの航空機エンジンの1つ以上を備える航空機である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ファンケーシングを備える航空機エンジンの斜視図である。
【
図2A】
図1のエンジンのファンケーシング上の衝突領域の平面図である。
【
図2B】
図1のエンジンのファンケーシング上の衝突領域の半径方向断面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態にかかるファンケーシングの凹状セクションの作製を示す平面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態にかかるファンケーシングの凹状セクションの作製を示す半径方向断面図である。
【
図4A】凹状セクションの周りの溝のファンケーシングの両面に対する形成を示す一方の面を表す平面図である。
【
図4B】凹状セクションの周りの溝のファンケーシングの両面に対する形成を示す半径方向断面図である。
【
図5A】
図4Aおよび
図4Bの溝に開口するファンケーシング内の複数のオリフィスの形成を示す面を表す平面図である。
【
図5B】
図4Aおよび
図4Bの溝に開口するファンケーシング内の複数のオリフィスの形成を示す半径方向断面図である。
【
図6A】充填部分の繊維プリフォームのセットアップを示す外面を表す平面図である。
【
図6B】充填部分の繊維プリフォームのセットアップを示す内面を表す底面図である。
【
図6C】充填部分の繊維プリフォームのセットアップを示す半径方向断面図である。
【
図7A】
図6Aの繊維プリフォームの繊維束の配置を示す外面を表す平面図である。
【
図7B】
図6Aおよび
図6Bの各繊維プリフォームの繊維束の配置を示す半径方向断面図である。
【
図8A】ファンケーシング内の充填部分の完成を示す外面を表す平面図である。
【
図8B】ファンケーシング内の充填部分の完成を示す半径方向断面図である。
【
図9】本発明の別の実施形態にかかる充填部分の繊維プリフォームを示す断面図である。
【
図10】
図9のプリフォームの繊維束の配置を示す半径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、一般に、補強材がマトリックスによって緻密化された、三次元織を有する繊維補強材を具備する複合材料から作製された任意の部品に適用される。
【0022】
本発明は、航空機ガスタービンエンジンのファンケーシングへのその適用の非限定的な枠組の中で以下に説明される。本発明はまた、例えばOGVまたはベーン間プラットフォームとも呼ばれるガイドベーンなどの航空機エンジンの他の複合材料部品にも適用される。
【0023】
そのようなエンジンは、
図1に非常に概略的に示すように、ガス流の流れ方向の上流から下流に、エンジンの入口に配置されたファン1と、圧縮機2と、燃焼室3と、高圧タービン4と、低圧タービン5とを備える。
【0024】
エンジンは、エンジンの異なる要素に対応するいくつかの部分を備えるケーシング内に収容される。したがって、ファン1は、回転形状を有するファンケーシング10によって囲まれている。
【0025】
ファンケーシング10は、ここでは有機マトリックスを有する複合材料、すなわち繊維補強材、例えば、エポキシド、ビスマレイミドまたはポリイミドなどのポリマーマトリックスによって緻密化された炭素、ガラス、アラミドまたはセラミック繊維補強材から作製される。繊維補強材は、一体に三次元織によって得られた帯状の繊維テクスチャから作製され、テクスチャは、支持ツール上に巻回されることによって成形される。このようして構成された繊維補強材は、次いで、マトリックスによって緻密化される。そのようなケーシングの製造は、特に米国特許第8322971号明細書に記載されている。複合材料から作製されたファンケーシング10は、エンジンの吸気流路を画定する内面11と、外面12とを含む。
【0026】
図1、
図2A、および
図2Bでは、ケーシング10は、例えばケーシングの内面11に突出したブレード屑から生じる損傷領域20を有する。
【0027】
本発明の修復方法によれば、ケーシングは、影響を受けた複合材料を除去し、修復のための領域を準備するために、損傷領域20において機械加工される。複合材料の除去は、少なくとも損傷していると識別された領域を覆うケーシングの所定の表面上で、ケーシングの厚さ全体にわたって行われる。
図3Aおよび
図3Bに示すように、ケーシング10の内面11および外面12の双方に開口する凹状セクション30がこのようにして得られる。
【0028】
本明細書に記載の例では、本発明の特定の特徴によれば、凹状セクションは、共通の頂点を有する2つのプリズム形状または高さhの傾斜部をそれぞれ含む縁部31~36を有する多角形形状に機械加工される。より具体的には、縁部31~36は、それぞれ、縁部32および34についてそれぞれ
図3Bに示す傾斜部320および340のような第1の傾斜部と、縁部32および34についてそれぞれ
図3Bに示す傾斜部321および341のような第2の傾斜部とを含む。縁部は、
図3Bのような階段形状または滑らかな輪郭で機械加工されることができる。各角状隆起部は、
図3Bには示されていないフィレットrを有する。傾斜部およびフィレットrの高さhは、損傷領域20の直径Dおよび修復される複合材料の厚さEに基づいて決定される。高さhは、好ましくは、E/3<h<2E/3となるように決定される。フィレットrは、好ましくは、D/5<r<5Dとなるように決定される。
【0029】
凹状セクション30は、以下に説明するように、充填部分によって占められるように意図された材料37の自由体積を画定する。
【0030】
凹状セクション30が作製されると、複合材料ケーシングの内面11上に延在する第1の複数の溝110が、凹状セクションの縁部31から36まで機械加工される。同様に、複合材料ケーシングの外面12上に延在する第2の複数の溝120が、凹状セクションの縁部31から36まで機械加工される。溝110および120は、複合材料部品の表面に作製される。本明細書に記載の例では、本発明の特定の特徴によれば、複数の溝のそれぞれは、
図4Bに示す複数の溝120の主溝1201~1206のような主溝を備え、主溝は、
図4Bに示す副溝1211~1216のような副溝によって延長される。主溝は、凹状セクションの縁の1つと連続する一端から、1つ以上の副溝が凹状セクションの外側に向けられた方向にも延在する反対側の他端まで、凹状セクションの外側に延在する。主溝および副溝は、複合材料部品の両面に対称的に形成され、すなわち、部品の一方の面上の複数の溝のうちの1つの溝は、部品の他方の面上に存在する複数の溝のうちの1つの溝と一直線上にある。
【0031】
ここで説明する例では、ケーシングの両面に存在する複数の溝のそれぞれは、主溝によって形成された6本の主枝と、副溝によって形成された各主枝の端部にある3本の副枝とを有する雪片形状を有する。各主溝を延在する副溝の数は、0~10の間で変化することができる。
【0032】
溝が作製されると、複合材料部品の厚さ内に複数のオリフィスが形成され、各オリフィスは、第1の複数の溝のうちの1つの溝と第2の複数の溝のうちの1つの溝との双方に開口している。より具体的には、本明細書に記載の例では、
図5Aおよび
図5Bに示すように、外面12に存在する副溝1211~1216に18個のオリフィス130が形成され、内面11に存在する対応する副溝に開口している。ここで説明する例では、複数のオリフィス130は、凹状セクション30の中心と同心円に沿って分布しており、その直径D
130は、修復される欠陥の直径Dに基づいて、D<D
130<5Dとなるように決定される。
【0033】
上述した様々な機械加工動作の後、部品10の表面が洗浄されて脱脂される。洗浄の目的は、部品の表面を汚染する可能性のある塵埃および全ての不純物を除去することであり、洗浄は、特に乾燥および脱油された送風によって行われることができる。表面の脱脂は、エタノールまたはイソプロパノール型溶媒を用いて行われることができる。
【0034】
さらに本発明の修復方法によれば、第1および第2の繊維プリフォームは、三次元織によって製造される。
図6A、
図6Bおよび
図6Cに示すように、第1および第2の同一のプリフォーム40、50が製造され、それぞれが中央セクション41、51を備え、そこから複数の繊維束42~47、52~57が延在している。第1のプリフォーム40の中央セクション41は、ケーシング10の内面11側の凹状セクション30の形状に対応する形状を有し、中央セクション41は、凹状セクション30によって画定された自由体積37の半分を充填するように意図されている。第2のプリフォーム50の中央セクション51は、ケーシング10の外面12側の凹状セクション30の形状に対応する形状を有し、中央セクション51は、自由体積37の残りの半分を充填するように意図されている。繊維束42~47および52~57は、束に一体にまとめられた中央セクション41および51からそれぞれ導出された連続糸からなる。ここで説明する例では、繊維束42~47および52~57は、それぞれ、複数の溝110および120の主溝に配置されるように意図された主束420~470および520~570を含み、これらの主束は、次に、以下に説明されるように、副溝ならびにオリフィス130に配置されるように意図された副束421~471および521~571にそれぞれ細分される。第1および第2のプリフォームの中央セクションは、第1の複数の糸層、例えば縦糸と、第2の複数の糸層、例えば横糸との間の三次元織によって得られる。「三次元織」または「3D織」とは、ここでは、第1の複数の糸層のうちの糸の少なくともいくつかが、第2の複数の糸層のうちの糸をいくつかの層上でまたは逆に結合する製織モードを意味する。充填部分繊維プリフォームの三次元織は、縦糸および横糸のいくつかの層を有する連動型織によって行われることができる。連動織による三次元織は、各縦糸が横糸のいくつかの層を互いに接続する織りであり、縦糸の経路は同一である。中央セクションのプリズム形状の輪郭は、縦糸および横糸の1つまたはいくつかの層の追加/除去によって得られる。他の三次元織りモード、例えば、多繻子または多平織を有する多層織などが想定されることができる。この種の織物は、米国特許出願公開第2010/0144227号明細書に記載されている。中央セクションから延在する繊維束は、三次元織(例えば、編組)または二次元織で一体に織られた連続糸に対応することができる。繊維束の糸はまた、巻回するかまたは緩ませたままにすることによって一体にまとめられることができる。
【0035】
図6A~
図6Cに示すように、第1および第2の充填部分繊維プリフォーム40および50は、中央セクション41および51を凹状セクション30の体積37内に配置し、束を主溝内におよび副束へのそれらの分岐を副溝内に配置することによって、外面12側および内面11側にそれぞれ配置される。
【0036】
このようにして繊維プリフォーム40および50がセットアップされると、繊維束、ここでは副束421~471および521~571は、
図7A、
図7Bおよび
図7Cに示すようにオリフィス130内に導入される。
【0037】
本明細書に記載の例では、本発明の特定の特徴によれば、第1のプリフォーム40の繊維束、ここでは副束421~471は、オリフィス130を通過した後、内面11上に現れ、この面に存在する溝に沿って延び、第2の繊維プリフォーム50の中央セクション51内に導入される(
図7B)。同様に、第2のプリフォーム50の繊維束、ここでは副束521~571は、オリフィス130を通過した後、外面12上に現れ、この面に存在する溝に沿って延び、第1の繊維プリフォーム40の中央セクション41内に導入される。
【0038】
次いで、2つの繊維プリフォーム40および50は、マトリックスによって緻密化される。プリフォームの緻密化は、マトリックスを構成する材料によって、それらの体積の全部または一部におけるそれらの多孔性を充填することで構成される。マトリックスは、それ自体公知の方法で液体プロセスによって得られることができる。
【0039】
液体プロセスは、マトリックスの材料の有機前駆体を含有する液体組成物によってプリフォームを含浸することで構成される。有機前駆体は、通常、必要に応じて溶媒に希釈された樹脂などのポリマーの形態である。複合材料部品および充填部分プリフォームは、密閉式に閉鎖されることができる金型内に配置され、金型は、部品の元の金型または修復される部品の領域の形状を復旧するのみの部分的な金型に対応することができる。次いで、液体マトリックス前駆体、例えば樹脂は、ハウジング全体に注入されて、プリフォームの繊維部分全体に含浸する。
【0040】
前駆体の有機マトリックスへの変換、すなわちその重合は、任意の溶媒の除去およびポリマーの架橋の後、一般に金型の加熱による熱処理によって行われ、プリフォームは、依然として金型内に保持されている。有機マトリックスは、特に、例えば販売されている高性能エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂から、または炭素もしくはセラミックマトリックスの液体前駆体から得られることができる。
【0041】
炭素またはセラミックマトリックスの形成の場合、熱処理は、使用される前駆体および熱分解条件に応じて、有機マトリックスを炭素またはセラミックマトリックスに変換するために有機前駆体を熱分解することで構成される。例えば、液体炭素前駆体は、フェノール樹脂などの比較的高いコークス含有量を有する樹脂とすることができるが、液体セラミック前駆体、特にSiCは、ポリカルボシラン(PCS)またはポリチタノカルボシラン(PTCS)またはポリシラザン(PSZ)タイプの樹脂とすることができる。含浸から熱処理までのいくつかの連続サイクルが実行されて、所望の程度の緻密化を達成することができる。
【0042】
充填部分プリフォームの緻密化は、RTM(樹脂トランスファー成形)と呼ばれる周知のトランスファー成形プロセスによって行われることができる。RTMプロセスによれば、修復される部品は、製造される部品の形状を有する金型内に充填部分プリフォームとともに配置される。熱硬化性樹脂は、プリフォームを含む内部空間に注入される。樹脂による補強材の含浸を制御および最適化するために、樹脂が注入される場所とそれを排出するためのオリフィスとの間のこの内部空間に圧力勾配が一般に確立される。
【0043】
使用される樹脂は、例えば、エポキシ樹脂とすることができる。RTMプロセスに適した樹脂は周知である。それらは、好ましくは、繊維へのそれらの注入を容易にするために低粘度を有する。樹脂の温度クラスおよび/または化学的性質の選択は、部品が受けなければならない熱機械的応力に基づいて決定される。樹脂が補強材全体に注入されると、RTMプロセスによる熱処理によって重合される。
【0044】
充填部分プリフォームに注入される樹脂は、好ましくは、複合材料部品を製造するために使用されるものと同一である。しかしながら、修復される部品に既に存在するマトリックスと適合する架橋および/または重合温度レベルを有する異なる樹脂を修復に使用することが可能である。
【0045】
注入および重合の後、部品またはその一部は脱型される。最後に、部品は、修復された部分の表面を部品の無傷の表面の残りの部分とともに滑らかにするために、軟質研磨材によるサンディングによって、好ましくはGRIT220などの研磨紙による手動サンディングによって、バリ取りされることができる。次いで、マトリックスによって緻密化された2つの繊維プリフォーム40および50に対応する繊維補強材からなる充填部分60を含む複合材料部品、ここではファンケーシング10が得られる。
【0046】
上述した例では、充填部分の繊維補強材は、第1および第2の繊維プリフォームから得られる。しかしながら、本発明によれば、充填部分の繊維補強材は、単一の繊維プリフォームから得られることもできる。
図9は、前述の第1および第2の繊維プリフォーム40および50の代わりに充填部分を形成するために使用されることができる繊維プリフォーム70を示している。繊維プリフォーム70は、一体に製造される、すなわち、凹状セクション30、溝110および120(主溝および副溝)、ならびにオリフィス130の形成後に、
図5Aおよび
図5Bに示すようにケーシング10の修復される領域への一体化を可能にする形状および寸法を有する。
【0047】
より具体的には、繊維プリフォーム70は、凹状セクション30の形状に対応する形状を有する中央セクション71を備え、中央セクション71は、凹状セクション30によって画定された自由体積37(
図5B)の全体を充填するように意図されている。繊維プリフォーム70はまた、複数の溝110および120の主溝内に配置されるように意図された繊維束720、740、750および770を備え、これらの主束は、その後、副溝内およびオリフィス130内に配置されるように意図された副束にそれぞれ細分される。プリフォーム70は、三次元織りによって得られる。
【0048】
図10に示すように、充填部分繊維プリフォーム70は、中央セクション71を凹状セクション30の体積37に配置することによってセットアップされ、中央セクションは、体積37への配置を可能にするために変形されることができる。繊維束は、主溝内に配置され、プリフォーム40および50について既に上記説明したように、副溝内で副束に分岐される。
【0049】
このようにして繊維プリフォーム70がセットアップされると、
図10に表されるように、繊維束、ここでは束720、740、750および770がオリフィス130内に導入される。
【0050】
本明細書に記載の例では、本発明の特定の特徴によれば、プリフォーム70の繊維束の第1の部分、ここでは束720および750は、オリフィス130を通過した後、内面11上に現れ、この面に存在する溝に沿って延び、繊維プリフォーム70の中央セクション71内に導入される。同様に、プリフォーム70の繊維束の第2の部分、ここでは束740および770は、オリフィス130を通過した後、外面12上に現れ、この面に存在する溝に沿って延び、繊維プリフォーム70の中央セクション71内に導入される。
【0051】
次いで、繊維プリフォーム70の緻密化は、第1および第2の繊維プリフォーム40および50について上述したものと同じ方法で行われ、簡略化のためにここでは再び繰り返されない。
【国際調査報告】