(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(54)【発明の名称】BTK阻害剤の結晶形態
(51)【国際特許分類】
C07D 239/47 20060101AFI20220721BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220721BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220721BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220721BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220721BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220721BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220721BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220721BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220721BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220721BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20220721BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C07D239/47 CSP
A61P37/08
A61P29/00
A61P11/06
A61P37/02
A61P25/00
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P1/04
A61P35/02
A61K31/505
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569267
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 IB2020054752
(87)【国際公開番号】W WO2020234779
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】アングスト,ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】コーディコウスキ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA04
4C086BC42
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA01
4C086ZA66
4C086ZB07
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB27
(57)【要約】
本出願は、様々な無水結晶形態N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド、並びに組成物、この無水結晶形態を製造する方法及び使用する方法に関する。この結晶形態は、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患及び障害の処置で有用である。そのような疾患及び障害として、炎症性障害及び自己免疫性障害、並びに肺及び気道の炎症が挙げられ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約25℃の温度、及び1.5405ÅのX線波長λで測定した場合に、7.8±0.2°2θ、9.2±0.2°2θ、12.0±0.2°2θ、13.6±0.2°2θ、15.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、17.8±0.2°2θ、18.3±0.2°2θ、18.7±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、22.1±0.2°2θ、23.4±0.2°2θ、23.9±0.2°2θ、24.8±0.2°2θ、25.2±0.2°2θ、25.5±0.2°2θ、27.2±0.2°2θ、及び29.6±0.2°2θからなる群から選択される2θに関して1個又は複数個の代表的なピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態。
【請求項2】
X線回折スペクトルは、
図1に示すX線粉末回折スペクトルと実質的に同一である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
加熱速度が10℃/分である示差走査熱量測定(DSC)により測定された示差熱重量プロファイルが、約194℃で始まる単一の吸熱ピークを含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶形態。
【請求項4】
示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは、
図2に示すものと実質的に同一である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項5】
熱重量分析により決定した場合に、分解点は、240℃超であり、且つ乾燥時の重量減少は、40~200℃の範囲で約0.3%である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項6】
熱重量分析(TGA)ダイアグラムは、
図3に示すものと実質的に同一である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項7】
形態Aから本質的になる請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項8】
前記形態は、実質的な相純粋な形態の形態Aである、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項9】
約25℃の温度、及び1.5405ÅのX線波長λで測定された、5.9±0.2°2θ、6.7±0.2°2θ、7.8±0.2°2θ、8.3±0.2°2θ、11.1±0.2°2θ、12.1±0.2°2θ、12.6±0.2°2θ、13.0±0.2°2θ、13.3±0.2°2θ、14.8±0.2°2θ、15.8±0.2°2θ、16.4±0.2°2θ、17.6±0.2°2θ、19.5±0.2°2θ、20.2±0.2°2θ、20.6±0.2°2θ、20.9±0.2°2θ、21.6±0.2°2θ、22.3±0.2°2θ、23.3±0.2°2θ、24.0±0.2°2θ、24.9±0.2°2θ、及び25.3±0.2°2θからなる群から選択される2θに関して1個又は複数個の代表的なピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態。
【請求項10】
X線回折スペクトルは、
図4に示すX線粉末回折スペクトルと実質的に同一である、請求項9に記載の結晶形態。
【請求項11】
加熱速度が10℃/分である示差走査熱量測定により測定された示差熱重量プロファイルが、約170℃(変態Bの融解に対応する)で始まる吸熱ピーク、約175℃(変態Aへの再結晶に対応する)で始まる発熱ピーク、及び約194℃(変態Aの融解に対応する)で始まる吸熱ピークを含むことを特徴とする請求項9に記載の結晶形態。
【請求項12】
示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは、
図5に示すものと実質的に同一である、請求項9に記載の結晶形態。
【請求項13】
熱重量分析により決定した場合に、分解点は、240℃超であり、且つ乾燥時の重量減少は、40~160℃の範囲で約0.2%である、請求項9に記載の結晶形態。
【請求項14】
熱重量分析(TGA)ダイアグラムは、
図6に示すものと実質的に同一である、請求項9に記載の結晶形態。
【請求項15】
形態Bから本質的になる請求項9~14のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項16】
前記形態は、実質的な相純粋形態の形態Bである、請求項9~14のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項17】
請求項1に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項9に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項19】
BTKの阻害により寛解される障害の処置用の薬剤の調製のための請求項1~16のいずれか一項に記載のN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの実質的に相純粋な結晶形態の使用。
【請求項20】
BTKの阻害により寛解される障害の処置の方法であって、そのような処置が必要な患者に、請求項1~16のいずれか一項に記載のN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの実質的に相純粋な結晶形態の有効な量を投与することを含む方法。
【請求項21】
前記BTKの阻害により寛解される障害は、自己免疫障害、炎症性疾患、アレルギー性疾患、気道疾患、例えば、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)、移植拒絶反応;抗体産生、抗原提示、サイトカイン産生、又はリンパ組織形成が異常であるか又は望ましくない疾患;例えば、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(SOJIA)、痛風、尋常性天疱瘡、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎、クリオグロブリン血症、血栓性血小板減少性紫斑病、慢性蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹、誘発性蕁麻疹)、慢性アレルギー(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化症、1型糖尿病、2型糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、膵炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、抗体媒介性移植片拒絶反応(AMR)、移植片対宿主病、B細胞媒介性の超急性の、急性、及び慢性の移植片拒絶反応;血栓塞栓性障害、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、虚血性障害、肺塞栓症;造血臓器の癌、例えば、限定されないが、多発性骨髄腫;白血病;急性骨髄性白血病;慢性骨髄性白血病;リンパ球性白血病;骨髄性白血病;非ホジキンリンパ腫;リンパ腫;真性赤血球増加症;本態性血小板血症;骨髄化生を伴う骨髄線維症;並びにワルデンストレーム病から選択される、請求項20に記載の方法又は請求項19に記載の使用。好ましくは、典型的にはBTKの阻害により寛解される前記疾患又は前記障害は、関節リウマチ;慢性蕁麻疹、好ましくは慢性特発性蕁麻疹;シェーグレン症候群、多発性硬化症、又は喘息から選択される。
【請求項22】
化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aを製造する方法であって、
a)任意選択的に無機塩基の存在下において、非塩素系溶媒中でN-(3-(6-アミノ-5-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドとアクリル酸無水物とを反応させる工程;
及び
b)(例えば、抗溶媒結晶化、冷却結晶化、蒸留手順、又は溶媒の蒸発により)固体として結晶形態Aを単離する工程
を含む方法。
【請求項23】
前記非塩素系溶媒は、酢酸エチルである、請求項22に記載の結晶形態Aを製造する方法。
【請求項24】
形態Aを蒸留により単離する、請求項22又は23に記載の結晶形態Aを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態に関する。本開示はまた、この結晶形態を含む医薬組成物、並びにそのような結晶形態を得る方法、及び典型的にはブルトン型チロシンキナーゼの阻害により寛解される疾患及び障害の処置でそのような結晶形態を使用する方法にも関する。そのような疾患及び障害として、炎症性障害及び自己免疫性障害、並びに肺及び気道の炎症が挙げられ得る。
【0002】
背景
多形は、ある物質の複数種の結晶形態の存在を示す。
【0003】
特定の薬物の活性医薬成分(API)の固体形態は、この薬物の調製のし易さ、吸湿性、安定性、溶解性、貯蔵安定性、製剤化のし易さ、胃腸液中での溶解率、及びインビボでのバイオアベイラビリティの重要な決定因子であることが多い。結晶形態は、同一組成の物質が異なる格子配列で結晶化し、その結果、特定の結晶形態に特有の異なる熱力学的特性及び安定性がもたらされる場合に生じる。結晶形態はまた、同一化合物の異なる水和物又は溶媒和物も含み得る。どの形態が好ましいかの決定では、形態の多数の特性を比較し、多くの物理的特性変数に基づいて好ましい形態を選択する。調製のし易さ、安定性等のある特定の態様が重要視される状況では、ある形態が好ましい可能性があることが十分にあり得る。他の状況では、より高い溶解率及び/又はより優れたバイオアベイラビリティから、別の形態が好ましい場合がある。
【0004】
従って、化学物質が複数種の結晶形態へと結晶化するこの能力は、薬物の有効期間、溶解性、製剤化特性、及び加工特性に大きな影響を及ぼす可能性がある。加えて、薬物の作用は、この薬物の分子の多形による影響を受ける可能性がある。多形が異なると、体内への取り込み率が異なる可能性があり、そのため、生物活性が、所望されているものよりも高くなるか又は低くなる。極端な場合では、望ましくない多形が毒性を示す可能性さえある。製造中に未知の結晶形態が生じると、大きな影響を受ける可能性がある。
【0005】
特定の化合物又は化合物の塩が多形を形成するかどうか、任意のそのような多形が治療用組成物中での商業的使用に適しているかどうか、又はどの型がそのような所望の特性を示すかどうかを、未だ予測することはできない。しかしながら、ある特定の場合には薬物のどの結晶形態が可能であるかを理解することで、研究者は、溶解性、製剤化特性、加工特性、及び有効期間等の化合物の望ましい特性を最大化し得る。新規の薬物の開発の初期にこれらの要因を理解することは、より活性な、より安定した、又はより安価な薬品を意味し得る。
【0006】
従って、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドを含む安全で且つ有効な医薬品の確実な製造を可能にする物理化学特性を有する、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの固体形態を提供することが必要とされている。
【0007】
N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドは、2014年11月28日に出願された国際公開第2015/079417号パンフレットの実施例6で最初に開示されており、このパンフレットは、その全体が参照により組み込まれる。N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドは、式(I):
【化1】
の構造を有するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である。
【0008】
しかしながら、国際公開第2015/079417号パンフレットは、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態に関する情報を提供していない。典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患の処置で有用なN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態が発見されている。そのような疾患及び状態として、炎症性障害及び自己免疫性障害、並びに肺及び気道の炎症が挙げられ得る。
【0009】
概要
一態様では、本発明は、遊離形態(即ち非塩形態)でのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの3種の結晶形態を提供する。特定の実施形態では、この遊離形態は、式(I)の化合物の無水形態である。
【0010】
これらの結晶形態の実施形態は、本明細書では形態A、形態B、及び形態Cと命名されている形態を含む。特定の形態を同定するために本明細書で使用されている名称(例えば、「形態A」、又は「形態B」、又は「形態C」)は、類似しているか又は同一の物理的特徴及び化学的特徴を有するあらゆる他の物質に関して限定的であると見なされるべきではなく、むしろ、これらの命名は、本明細書でも提示されているキャラクタリゼーション情報に従って解釈されるべき識別子にすぎないと理解すべきである。
【0011】
一態様では、本発明はまた、(a)N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aの治療上有効な量と、(b)少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。好ましくは、結晶形態Aは、実質的に純粋である。より好ましくは、形態Aは、実質的に相純粋である。
【0012】
一態様では、本発明はまた、(a)N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Bの治療上有効な量と、(b)少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。好ましくは、結晶形態Bは、実質的に純粋である。より好ましくは、形態Bは、実質的に相純粋である。
【0013】
一態様では、本発明はまた、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aを製造する方法であって、
a)任意選択的に無機塩基の存在下において、非塩素系溶媒(non-chlorinated solvent)中でN-(3-(6-アミノ-5-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドとアクリル酸無水物とを反応させる工程;
及び
b)(例えば、抗溶媒結晶化、冷却結晶化、蒸留手順、又は溶媒の蒸発により)固体として結晶形態Aを単離する工程
を含む方法も提供する。
【0014】
一態様では、本発明はまた、BTKにより媒介されるか又はBTKの阻害により寛解される障害の処置の方法であって、そのような処置が必要な患者に、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aの治療上有効な量を投与することを含む方法も提供する。好ましくは、結晶形態Aは、実質的に相純粋である。
【0015】
一態様では、本発明はまた、BTKにより媒介されるか又はBTKの阻害により寛解される障害の処置の方法であって、そのような処置が必要な患者に、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの実質的に相純粋な結晶形態Bの有効な量を投与することを含む方法も提供する。好ましくは、結晶形態Bは、実質的に相純粋である。
【0016】
一態様では、本発明はまた、BTKにより媒介されるか又はBTKの阻害により寛解される障害の処置用の薬剤の調製のためのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aの使用も提供する。好ましくは、結晶形態Aは、実質的に相純粋である。
【0017】
一態様では、本発明はまた、BTKにより媒介されるか又はBTKの阻害により寛解される障害の処置用の薬剤の調製のためのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの実質的に相純粋な結晶形態Bの使用も提供する。好ましくは、結晶形態Bは、実質的に相純粋である。
【0018】
一態様では、本発明はまた、BTKにより媒介されるか又はBTKの阻害により寛解される障害の処置での使用のためのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aも提供する。好ましくは、結晶形態Aは、実質的に相純粋である。
【0019】
一態様では、本発明はまた、BTKにより媒介されるか又はBTKの阻害により寛解される障害の処置での使用のためのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの実質的に相純粋な結晶形態Bも提供する。好ましくは、結晶形態Bは、実質的に相純粋である。
【0020】
従って、本明細書で説明されている式(I)の化合物の結晶形態は、BTKにより媒介されるか又はBTKの阻害により寛解される下記の疾患又は障害の処置で有用である:自己免疫障害、炎症性疾患、アレルギー性疾患、気道疾患、例えば、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)、移植拒絶反応;抗体産生、抗原提示、サイトカイン産生、又はリンパ組織形成が異常であるか又は望ましくない疾患;例えば、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(SOJIA)、痛風、尋常性天疱瘡、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎、クリオグロブリン血症、血栓性血小板減少性紫斑病、慢性蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹、誘発性蕁麻疹)、慢性アレルギー(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化症、1型糖尿病、2型糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病(morbus Crohn)、膵炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、抗体媒介性移植片拒絶反応(AMR)、移植片対宿主病、B細胞媒介性の超急性の、急性、及び慢性の移植片拒絶反応;血栓塞栓性障害、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、虚血性障害、肺塞栓症;造血臓器の癌、例えば、限定されないが、多発性骨髄腫;白血病;急性骨髄性白血病;慢性骨髄性白血病;リンパ球性白血病;骨髄性白血病;非ホジキンリンパ腫;リンパ腫;真性赤血球増加症;本態性血小板血症;骨髄化生を伴う骨髄線維症;並びにワルデンストレーム病。
【0021】
式(I)の化合物の結晶形態は、関節リウマチ;慢性蕁麻疹、好ましくは慢性特発性蕁麻疹;シェーグレン症候群、多発性硬化症、アトピー性皮膚炎、又は喘息の処置で特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本明細書において形態Aと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なXRPDスペクトルを示しており、X軸上で角度2θ(2シータ)を示し、且つY軸上で相対強度を示す。
【
図2】本明細書において形態Aと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なDSCを示す。
【
図3】本明細書において形態Aと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なTGAを示す。
【
図4】本明細書において形態Bと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なXRPDスペクトルを示しており、X軸上で角度2θ(2シータ)を示し、且つY軸上で相対強度を示す。
【
図5】本明細書において形態Bと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なDSCを示す。
【
図6】本明細書において形態Bと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なTGAを示す。
【
図7】本明細書において形態Cと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なXRPDスペクトルを示しており、X軸上で角度2θ(2シータ)を示し、且つY軸上で相対強度を示す。
【
図8】本明細書において形態Cと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なDSCを示す。
【
図9】本明細書において形態Cと命名されている式(I)の化合物の無水結晶形態の例示的なTGAを示す。
【0023】
形態A、B、及びCの各々のXRPDピークのより詳細なリストは、それぞれ下記の表1及び2に記載されており、これらの表では、%相対強度(I/I0×100)も記載されている。X線粉末回折スペクトル又はパターンでは、例えば機器のばらつき(機器間の差違を含む)の結果として、角度2θ(°2θ)で測定された値に固有の変動が存在することを理解すべきである。そのため、XRPDピーク測定値では最大±0.2°2θの変動が存在するが、そのようなピーク値であっても、本明細書で説明されている結晶性物質の特定の固体形態の代表であると考えられるであろうことを理解すべきである。XRPD実験及びDSC/TGA実験からの他の測定値(例えば、相対強度及び含水量)は、例えば、試料の調製及び/若しくは保管、並びに/又は環境条件の結果として変動する可能性があるが、この測定値であっても、本明細書で説明されている結晶性物質の特定の固体形態の代表であると考えられることを理解すべきである。
【0024】
本開示の詳細な説明
定義
本明細書で使用される場合、「約」及び「実質的」という用語は、特徴(例えば、吸熱量、吸熱ピーク、発熱量、ベースラインシフト等)に関して、これらの値が変動する可能性があることを示す。X線回折ピーク位置に関して、「約」又は「実質的」は、典型的なピークの位置及び強度の変動が考慮されることを意味する。例えば、当業者は、ピーク位置(2θ)が多少の装置間変動(典型的には0.2°程度)を示すことを理解するだろう。場合により、この変動は、装置の較正差に応じて0.2°よりも高くなることがある。さらに、当業者は、相対ピーク強度が、装置間変動、並びに結晶化度、好ましい配向、調製された試料表面、及び当業者に既知の他の因子に起因する変動を示し、定性的尺度としてのみ解釈されるべきであることを理解するだろう。DSCの場合、観察される温度の変動は、温度変化の速度、並びに試料の調製技術、及び用いられる特定の機器に依存するだろう。そのため、DSC/TGAサーモグラムに関して本明細書で報告されている吸熱/融点の値は、±5℃変動する可能性がある(それでも、本明細書で説明されている特定の結晶形態の特徴であるとみなされる)。他の特徴(例えば、重量パーセント(重量%)、反応温度)の文脈で使用される場合には、「約」という用語は、±5%の分散を示す。
【0025】
「結晶形態」、又は「結晶変態」、又は「多形形態」、又は「多形」という用語は、本明細書では互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「多形」は、化学組成は同一であるが、結晶を形成する分子、原子、及び/又はイオンの空間的配置が異なる結晶形態を指す。各多形は、熱力学的安定性、物理的パラメータ、X線構造、及び調製方法が異なる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「非結晶」は、分子、原子、及び/又はイオンの、結晶ではない固体形態を指す。非結晶固体は、明確なX線回折パターンを示さない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」は、形態に関して使用される場合には、式(I)の化合物の重量を基準として、この化合物の90重量%超(例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、及び99重量%超、並びに約100重量%)の純度を有する化合物を意味する。残りの物質は、この化合物の他の形態、及び/又は反応不純物、及び/又はその調製から発生する加工不純物を含む。例えば、式(I)の結晶形態は、現時点で既知であり且つ一般的に当該技術分野において受け入れられている手段により測定した場合に、90重量%超の純度を有するという点で実質的に純粋であるとみなされ得、残りの10重量%未満の物質は、式(I)の化合物の他の形態、及び/又は反応不純物、及び/又は加工不純物を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「実質的に相純粋」は、式(I)の化合物の任意の結晶形態に関して使用される場合には、無水基準で式(I)の化合物の重量を基準として、この化合物の約90重量%超(例えば、約90、91、92、93、94、95、96、97、98、及び約99重量%超、並びに約100重量%)の相純度を有する化合物を意味する。「相純粋」又は「相純度」という用語は、本明細書では、式(I)の化合物の特定の固体形態に関する相均一性を指し、その旨が明確に述べられていない限り、必ずしも高度な化学的純度を暗示するものではない。例えば、当該技術分野で既知の1種又は複数種のアプローチを使用して(例えば、特定のスペクトルにおける異なる相に起因する線(ピーク)の特徴の直接比較である外部標準法によるか、又は内部標準法により)定量的な相分析を行なうためにXRPDを使用して、当該技術分野で既知の方法に従って、相純度を決定し得る。しかしながら、相純度のXRPD定量は、非結晶物質の存在により複雑になる可能性がある。従って、相純度の決定に有用であり得る他の方法として、例えば、固体NMR分光法、ラマン分光法、及び/又は赤外分光法が挙げられる。当業者は、これらの方法、及び相純度を決定するためにこれらの追加の(又は代替の)方法をどのように用いるかを容易に理解するだろう。
【0029】
本明細書で使用される場合、「実質的に化学的に純粋」は、式(I)の化合物の任意の結晶形態に関して使用される場合には、無水基準で式(I)の化合物の重量を基準として、この化合物の約90重量%超(例えば、約90、91、92、93、94、95、96、97、98、及び約99重量%超、並びに約100重量%)の化学的純度を有する化合物を意味する。残りの物質は、他の化合物(例えば、式(I)の化合物の他の立体異性体)、反応不純物、出発物質、試薬、副生成物、並びに/又は特定の結晶形態の調製及び/若しくは単離及び/若しくは精製から生じる他の加工不純物を一般的に含む。例えば、式(I)の化合物の結晶形態は、標準的な且つ当該技術分野で既知の一般的に受け入れられている方法により測定した場合に、約90重量%超の化学的純度を有すると決定されていると、実質的に化学的に純粋であると見なされ得、残りの約10重量%未満は、他の物質(例えば、式(I)の化合物の他の立体異性体、反応不純物、出発物質、試薬、副生成物、及び/又は加工不純物)を構成する。化学的純度を、当該技術分野で既知の方法に従って決定し得、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)、核磁気共鳴(NMR)分光法、又は赤外分光法に従って決定し得る。当業者は、これらの方法、及び化学的純度を決定するためにこれらの追加の(又は代替の)方法をどのように用いるかを容易に理解するだろう。
【0030】
本明細書で使用される場合、「種」という用語は、式(I)の結晶性化合物の1つ又は複数の結晶を説明するための名詞として使用され得る。「種」という用語はまた、式(I)の結晶性化合物の前記1つ又は複数の結晶を環境(例えば、限定されないが、溶液、混合物、懸濁液、又は分散液)に導入し、それにより、より多くの結晶の形成、又は式(I)の結晶性化合物の導入された結晶の成長がもたらされる行為を説明するための動詞としても使用され得る。
【0031】
本発明の化合物の「治療上有効な量」という用語は、対象の生物学的応答又は医学的応答(例えば、酵素若しくはタンパク質の活性の減少若しくは阻害、又は症状の寛解、状態の緩和、疾患の進行の減速若しくは遅延、又は疾患の予防等)を誘発する、本発明の化合物の量を指す。非限定的な一実施形態では、「治療上有効な量」という用語は、対象に投与された場合に、(1)(i)BTKにより媒介されるか、若しくは(ii)BTK活性に関連するか、若しくは(iii)BTKの活性(正常若しくは異常)を特徴とする状態、若しくは障害、若しくは疾患を少なくとも部分的に緩和するか、阻害するか、予防するか、及び/若しくは寛解させるか;又は(2)BTKの活性を減少させるか若しくは阻害するか;又は(3)BTKの発現を減少させるか若しくは阻害するのに有効な、本発明の化合物の量を指す。別の非限定的な実施形態では、「治療上有効な量」という用語は、細胞、又は組織、又は非細胞性生物学的物質、又は培地に投与された場合に、BTKの活性を少なくとも部分的に減少させるか若しくは阻害するか;又はBTKの発現を部分的に若しくは完全に減少させるか若しくは阻害するのに有効な、本発明の化合物の量を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物を指す。好ましくは、この動物は、哺乳動物である。対象は、例えば、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥、及び同類のものを指す。好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0033】
本明細書で使用される場合、対象は、そのような対象が、処置から生物学的に、医学的に、又は生活の質において恩恵を受けるであろう場合には、そのような処置を「必要とする(in need of)」か、又は「必要とする(in need thereof)」。
【0034】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」という用語、及び本発明の文脈(特に特許請求の範囲の文脈)で使用される類似の用語は、別途本明細書中で指示されない限り、又は明らかに文脈と矛盾しない限り、単数と複数との両方を包含すると解釈されるべきである。
【0035】
別途本明細書中で指示されない限り、又は文脈と明確に矛盾しない限り、本明細書で説明されている全ての方法を任意の好適な順序で実施し得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例又は例示的な語(例えば、「等(such as)」)の使用は、単に本発明をさらに明らかにすることを意図したものであり、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「阻害する(inhibit)」、「阻害(inhibition)」、又は「阻害すること(inhibiting)」という用語は、所与の状態、症状、若しくは障害、若しくは疾患の軽減若しくは抑制、又は生物学的活性若しくはプロセスのベースライン活性における有意な減少を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、任意の疾患又は障害の「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、又は「処置(treatment)」という用語は、一実施形態では、この疾患又は障害を寛解すること(即ち、この疾患又はその臨床症状の内の少なくとも1つの発達を遅らせるか又は停止させるか又は低減させること)を指す。別の実施形態では、「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、又は「処置(treatment)」は、患者により認識され得ない場合があるものを含む少なくとも1つの身体パラメータを軽減させるか又は寛解させることを指す。さらに別の実施形態では、「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」又は「処置(treatment)」は、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体パラメータの安定化)、又はその両方で、疾患又は障害を調節することを指す。一実施形態では、「処置する(treat)」又は「処置すること(treating)」は、疾患又は障害の悪化を遅延させることを指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、任意の疾患又は障害の「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」、又は「予防(prevention)」という用語は、この疾患若しくは障害の予防的処置;又はこの疾患若しくは障害の発症を遅延させることを指す。
【0039】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」及び「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを含む組成物は、Xのみからなってもよいし、更なるものを含んでもよい(例えばX及びY)。
【0040】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」という用語は、1つの単位剤形中の固定的組み合わせを指すか、又は式(I)の化合物の結晶形態と、組み合わせパートナー(即ち、免疫治療剤)とが、同時に独立して投与され得るか、若しくは時間間隔内で別個に投与され得、特に、この時間間隔は、この組み合わせパートナーが協同効果(例えば相乗効果)を示すことを可能にする、組み合わせ投与を指す。単一構成成分が、キットで包装され得るか、又は個別に包装され得る。構成成分(例えば粉末又は液体)の1つ又は両方は、投与前に所望の用量に再構成され得るか又は希釈され得る。
【0041】
「同時投与」若しくは「組み合わせ投与」という用語、又は同類のものは、本明細書で利用される場合、必要な単一対象(例えば患者)への選択された組み合わせパートナーの投与を包含することを意味しており、且つ同一の投与経路により又は同時に薬剤が必ずしも投与されない処置レジメンを含むことが意図されている。
【0042】
「医薬組み合わせ」及び「組み合わせ製品」という用語は、互換的に使用され、且つ1つの単位剤形中の固定的組み合わせを指すか、又は2種以上の治療剤が同時に独立して投与され得るか、若しくは時間間隔内で別個に投与され得、特に、この時間間隔は、この組み合わせパートナーが協同効果(例えば相乗効果)を示すことを可能にする、組み合わせ投与のための要素の非固定的組み合わせ若しくはキットを指す。「固定的組み合わせ」という用語は、式(I)の化合物の結晶形態及び組み合わせパートナー(即ち免疫治療剤)が、両方とも単一の物体又は投与量の形態で同時に患者に投与されることを意味する。「非固定的組み合わせ」という用語は、式(I)の化合物の結晶形態及び組み合わせパートナー(即ち免疫治療剤)が、同時に(simultaneously)、同時に(concurrently)、又は具体的な時間制限なしに連続的に、別個の物体として両方とも患者に投与されることを意味しており、そのような投与は、患者の身体中で2種の化合物の治療上有効なレベルを提供する。後者はまた、カクテル療法(例えば3種以上の治療剤の投与)にも当てはまる。好ましい実施形態では、医薬組み合わせは、非固定的組み合わせである。
【0043】
「組み合わせ療法」という用語は、本開示で説明されているBTK関連疾患を治療するための2種以上の治療剤の投与を指す。そのような投与は、固定比の活性成分を有する単一のカプセル等の実質的に同時の様式でのこれらの治療剤の同時投与を包含する。或いは、そのような投与は、各活性成分に関する複数の又は別々の容器(例えば、錠剤、カプセル、粉末、及び液体)での同時投与を包含する。粉末及び/又は液体は、投与前に所望の用量に再構成され得るか又は希釈され得る。加えて、そのような投与はまた、ほぼ同時又は異なる時間のいずれかでの、連続的様式におけるそれぞれのタイプの治療剤の使用も包含する。いずれの場合も、処置レジメンは、本明細書で説明されている状態又は障害の処置において薬物組み合わせの有益な効果を提供することになる。
【0044】
結晶形態:
本開示は、本明細書で説明されており且つキャラクタライズされているN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド(式(I)の化合物)の無水結晶形態に関する。
【0045】
一実施形態では、本開示は、約25℃の温度で測定された、23.9±0.2°2θで(°2θに関して)代表的なピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有するN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態A)を提供する。別の実施形態では、このXRPDパターンは、15.6±0.2°2θ、18.3±0.2°2θ、及び23.4±0.2°2θから選択される1個又は複数個の追加の代表的なピークをさらに含む。先の実施形態の一態様では、このXRPDパターンは、約25℃の温度で測定された、7.8±0.2°2θ、13.6±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、及び29.6±0.2°2θから選択される1個又は複数個の追加の代表的なピークをさらに含む。先の実施形態の一態様では、式(I)の化合物の結晶形態AのXRPDパターンは、約25℃の温度で測定された、9.2±0.2°2θ、12.0±0.2°2θ、17.8±0.2°2θ、18.7±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、25.2±0.2°2θ、及び29.6±0.2°2θから選択される1個、2個、3個、又は4個の代表的なピークをさらに含み得る。そのため、式(I)の化合物の結晶形態AのXRPDパターンは、約25℃の温度で測定した場合に、7.8±0.2°2θ、9.2±0.2°2θ、12.0±0.2°2θ、13.6±0.2°2θ、15.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、17.8±0.2°2θ、18.3±0.2°2θ、18.7±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、22.1±0.2°2θ、23.4±0.2°2θ、23.9±0.2°2θ、24.8±0.2°2θ、25.2±0.2°2θ、25.5±0.2°2θ、27.2±0.2°2θ、及び29.6±0.2°2θから選択される1個又は複数個の代表的なピークを含み得る。結晶形態AのXRPDパターンは、表1に開示されており且つ約25℃の温度で測定されたピークから選択される1個又は複数個(例えば、2個、3個、4個、5個、若しくは6個)の代表的なピークを含み得る。
【0046】
上記実施形態の別の態様では、式(I)の化合物の結晶形態Aは、約25℃の温度で測定した場合に、7.8±0.2°2θ、9.2±0.2°2θ、12.0±0.2°2θ、13.6±0.2°2θ、15.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、17.8±0.2°2θ、18.3±0.2°2θ、18.7±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、22.1±0.2°2θ、23.4±0.2°2θ、23.9±0.2°2θ、24.8±0.2°2θ、25.2±0.2°2θ、25.5±0.2°2θ、27.2±0.2°2θ、及び29.6±0.2°2θからなる群から選択される4個以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。上記実施形態の別の態様では、式(I)の化合物の結晶形態Aは、約25℃の温度で測定された、7.8±0.2°2θ、9.2±0.2°2θ、12.0±0.2°2θ、13.6±0.2°2θ、15.6±0.2°2θ、16.0±0.2°2θ、17.8±0.2°2θ、18.3±0.2°2θ、18.7±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、22.1±0.2°2θ、23.4±0.2°2θ、23.9±0.2°2θ、24.8±0.2°2θ、25.2±0.2°2θ、25.5±0.2°2θ、27.2±0.2°2θ、及び29.6±0.2°2θからなる群から選択される5個以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0047】
上記実施形態のさらに別の態様では、式(I)の化合物の結晶形態Aは、
図1に実質的に示されているXRPDパターンを有する。
【0048】
N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aを、熱的にキャラクタライズし得る。一実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Aは、約194℃(融解に対応する)で始まる単一の吸熱ピークを含む、加熱速度が10℃/分である示差走査熱量測定(DSC)により測定された熱プロファイルを有する。
【0049】
別の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Aは、
図2に実質的に示されているDSCサーモグラムを有する。水和形態は、機器のパラメータに応じて(ピーク形状及びプロファイルに関して)異なるサーモグラムを生じる場合があり、そのため、データが2種の異なる機器で生成されている場合には、同一の物質が、互いに実質的に異なるように見えるサーモグラムを有する場合があることを理解すべきである。
【0050】
別の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Aは、
図3に示されているものと実質的に同一の熱重量分析(TGA)ダイアグラムを有する。TGAによる重量減少は、40~200℃の範囲で約0.3%である。熱分解は、240℃で生じた。
【0051】
さらに別の実施形態では、結晶形態Aは、実質的に純粋である。
【0052】
さらに別の実施形態では、結晶形態Aは、実質的に化学的に純粋である。
【0053】
さらに別の実施形態では、結晶形態Aは、実質的に相純粋である。
【0054】
一実施形態では、本発明は、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aを製造する方法であって、
a)任意選択的に無機塩基の存在下において、非塩素系溶媒中でN-(3-(6-アミノ-5-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドとアクリル酸無水物とを反応させる工程;
及び
b)(例えば、抗溶媒結晶化、冷却結晶化、蒸留手順、又は溶媒の蒸発により)固体として結晶形態Aを単離する工程
を含む方法に関する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Aを製造する方法であって、
(a)任意選択的に塩基の存在下において、非塩素系溶媒中でN-(3-(6-アミノ-5-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドとアクリル酸無水物とを反応させる工程;
(b)水を添加して、水相及び有機相を形成するこの反応をクエンチする工程;
(c)この有機相を分離する工程;
(d)この有機相を酸性溶液で洗浄する工程;
並びに
(e)(例えば、抗溶媒結晶化、冷却結晶化、蒸留手順、又は溶媒の蒸発により)固体として結晶形態Aを単離する工程
を含む方法に関する。
【0056】
先の2つの実施形態の一態様では、本方法の工程(a)を、約20℃~約65℃の温度で実行する。好ましくは、工程(a)を、約40℃~約65℃の温度で実行し、最も好ましくは約50℃の温度で実行する。
【0057】
先の3つの実施形態のさらに別の態様では、前記方法の工程(a)を、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルから選択される非塩素系溶媒中で実行し、好ましくは酢酸エチル中で実行する。
【0058】
先の4つの実施形態のさらに別の態様では、工程(a)を、無機塩基の存在下で実行し、好ましくは炭酸塩塩基の存在下で実行し、より好ましくは炭酸ナトリウムの存在下で実行する。
【0059】
先の5つの実施形態の別の態様では、本方法は、工程(b)の後であるが工程(c)の前に、反応混合物を約50℃~約65℃の温度まで撹拌して加熱すること、及び工程(c)の前に室温まで冷却することからなる工程をさらに含む。この追加の工程は、アクリル酸副生成物をより効率的に除去するのに有用であり得る。
【0060】
先の6つの実施形態の別の態様では、工程(d)で使用される酸性溶液は、pHが約1である。例えば、この酸性溶液は、硫酸溶液(例えば0.05M)である。有機相を酸性溶液で洗浄して、反応混合物から下記の副生成物:
【化2】
を除去する。
【0061】
先の7つの実施形態のさらに別の態様では、形態Aを、抗溶媒結晶化により固体として単離する。抗溶媒とは、式(I)の化合物の溶解度が低い(例えば、0.5mg/mL未満の溶解度、好ましくは0.25mg/mL未満の溶解度)溶媒のことである。本方法での使用のための抗溶媒の非限定的な例は、ヘプタン、ヘキサン、t-ブチルメチルエーテル、トルエン、又はアセトニトリルである。
【0062】
先の7つの実施形態のさらに好ましい態様では、形態Aを、蒸留手順により固体として単離する。
【0063】
本発明はまた、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの形態Aを製造する方法であって、
(a)N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態B;又はN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態C;又は形態B及び形態Cの混合物を、非塩素系溶媒に懸濁させる工程;
並びに
(b)(例えば、抗溶媒結晶化、冷却結晶化、蒸留手順、又は溶媒の蒸発により)固体として形態Aを単離する工程
を含む方法も提供する。
【0064】
本発明はまた、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの形態Aを製造する方法であって、
(a)N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態B;又はN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態C;又は形態B及び形態Cの混合物を、非塩素系溶媒に懸濁させる工程;
並びに
(b)この懸濁液を、少なくとも2週間にわたり室温で平衡化させるか、又はこの懸濁液を、少なくとも1週間にわたり50℃で平衡化させる工程;
並びに
(c)(例えば、抗溶媒結晶化、冷却結晶化、蒸留手順、又は溶媒の蒸発により)固体として形態Aを単離する工程
を含む方法も提供する。
【0065】
先の2つの実施形態の一態様では、非塩素系溶媒は、1,4-ジオキサン、アルコール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、水、ピリジン、ニトロメタン、アニソール、酢酸アルキルから選択される。
【0066】
先の3つの実施形態のさらに別の態様では、結晶形態B、又は結晶形態C、又はこれらの混合物を、非塩素系溶媒に応じて溶解させ得る。そのような場合では、固体として形態Aを単離することは、抗溶媒結晶化、冷却結晶化、蒸留手順、又は溶媒の蒸発を伴う場合がある。他の態様では、形態B、形態C、又はこれらの混合物は、懸濁液のままであり得、この場合では、形態Aは、ろ過により単離される。
【0067】
本発明は、約25℃の温度で測定した場合に、20.9±0.2°2θで(°2θに関して)代表的なピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有するN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態B)をさらに提供する。別の実施形態では、このXRPDパターンは、約25℃の温度で測定した場合に、6.7±0.2°2θ、11.1±0.2°2θ、17.9±0.2°2θ、20.2±0.2°2θ、20.9±0.2°2θ、及び24.0±0.2°2θから選択される1個又は複数個の追加の代表的なピークをさらに含む。先の実施形態の一態様では、結晶形態BのXRPDパターンは、約25℃の温度で測定した場合に、5.9±0.2°2θ、13.0±0.2°2θ、14.8±0.2°2θ、19.0±0.2°2θ、及び22.6±0.2°2θから選択される1個、2個、3個、又は4個の代表的なピークをさらに含み得る。
【0068】
そのため、結晶形態BのXRPDパターンは、5.9±0.2°2θ、6.7±0.2°2θ、7.8±0.2°2θ、8.3±0.2°2θ、11.1±0.2°2θ、12.1±0.2°2θ、12.6±0.2°2θ、13.0±0.2°2θ、13.3±0.2°2θ、14.8±0.2°2θ、15.8±0.2°2θ、16.4±0.2°2θ、17.6±0.2°2θ、19.5±0.2°2θ、20.2±0.2°2θ、20.6±0.2°2θ、20.9±0.2°2θ、21.6±0.2°2θ、22.3±0.2°2θ、23.3±0.2°2θ、24.0±0.2°2θ、24.9±0.2°2θ、及び25.3±0.2°2θから選択される1個又は複数個(例えば、2個、3個、4個、5個、若しくは6個)の代表的なピークを含み得る。結晶形態BのXRPDパターンは、表2に開示されているピークから選択されており且つ表2に開示されているピークから選択される約25℃の温度で測定された1個又は複数個(例えば、2個、3個、4個、5個、若しくは6個)の代表的なピークを含み得る。
【0069】
別の実施形態では、前記形態Bは、約25℃の温度で測定された、5.9±0.2°2θ、6.7±0.2°2θ、7.8±0.2°2θ、8.3±0.2°2θ、11.1±0.2°2θ、12.1±0.2°2θ、12.6±0.2°2θ、13.0±0.2°2θ、13.3±0.2°2θ、14.8±0.2°2θ、15.8±0.2°2θ、16.4±0.2°2θ、17.6±0.2°2θ、19.5±0.2°2θ、20.2±0.2°2θ、20.6±0.2°2θ、20.9±0.2°2θ、21.6±0.2°2θ、22.3±0.2°2θ、23.3±0.2°2θ、24.0±0.2°2θ、24.9±0.2°2θ、及び25.3±0.2°2θからなる群から選択される4個以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0070】
別の実施形態では、前記形態Bは、約25℃の温度で測定された、5.9±0.2°2θ、6.7±0.2°2θ、7.8±0.2°2θ、8.3±0.2°2θ、11.1±0.2°2θ、12.1±0.2°2θ、12.6±0.2°2θ、13.0±0.2°2θ、13.3±0.2°2θ、14.8±0.2°2θ、15.8±0.2°2θ、16.4±0.2°2θ、17.6±0.2°2θ、19.5±0.2°2θ、20.2±0.2°2θ、20.6±0.2°2θ、20.9±0.2°2θ、21.6±0.2°2θ、22.3±0.2°2θ、23.3±0.2°2θ、24.0±0.2°2θ、24.9±0.2°2θ、及び25.3±0.2°2θからなる群から選択される5個以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0071】
さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Bは、
図4に実質的に示されているXRPDパターンを有する。
【0072】
N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Bを、熱的にキャラクタライズし得る。一実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Bは、約170℃(変態Bの融解に対応する)で始まる吸熱ピーク、約175℃(変態Aへの再結晶に対応する)で始まる発熱ピーク、及び約194℃(変態Aの融解に対応する)で始まる発熱ピークを含む、加熱速度が10℃/分であるDSCにより測定された示差熱重量プロファイルを有する。
【0073】
別の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Bは、
図5に実質的に示されているDSCサーモグラムを有する。水和形態は、機器のパラメータに応じて(ピーク形状及びプロファイルに関して)異なるサーモグラムを生じる場合があり、そのため、データが2種の異なる機器で生成されている場合には、同一の物質が、互いに実質的に異なるように見えるサーモグラムを有する場合があることを理解すべきである。
【0074】
別の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Bは、
図6に示されているものと実質的に同一の熱重量分析(TGA)ダイアグラムを有する。TGAによる重量減少は、40~160℃の範囲で約0.2%である。熱分解は、240℃超で生じた。
【0075】
さらに別の実施形態では、結晶形態Bは、実質的に純粋である。
【0076】
さらに別の実施形態では、結晶形態Bは、実質的に化学的に純粋である。
【0077】
さらに別の実施形態では、結晶形態Bは、実質的に相純粋である。
【0078】
一実施形態では、本発明は、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Bを製造する方法であって、
(a)約3日にわたり約40℃の温度にてジクロロメタンに形態Aを懸濁させる工程;
(b)この懸濁液を、約5日にわたり室温で平衡化させる工程;
及び
(c)(例えばろ過により)固体として形態Bを単離する工程
を含む方法に関する。
【0079】
さらに別の実施形態では、本発明は、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Bを製造する方法であって、
a)少なくとも50体積%のジクロロメタンを含む溶媒混合物に変態Aを懸濁させる工程;
b)この懸濁液を、約2週間にわたり約50℃の温度で平衡化させる工程;
c)この懸濁液を、室温まで冷却する工程;
及び
d)(例えばろ過により)この懸濁液から固体を単離する工程
を含む方法に関する。
【0080】
上記実施形態の一態様では、この溶媒混合物は、MeOH/ジクロロメタン50:50(v/v)である。
【0081】
本発明は、約25℃の温度で測定した場合に、5.9±0.2°2θで(°2θに関して)代表的なピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有するN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態C)をさらに提供する。別の実施形態では、このXRPDパターンは、約25℃の温度で測定した場合に、11.9±0.2°2θ、17.0±0.2°2θ、及び19.3±0.2°2θから選択される1個又は複数個の追加の代表的なピークをさらに含む。先の実施形態の一態様では、結晶形態CのXRPDパターンは、約25℃の温度で測定した場合に、12.5±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、18.0±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、21.2±0.2°2θ、23.4±0.2°2θ、及び23.7±0.2°2θから選択される1個、2個、3個、又は4個の代表的なピークをさらに含み得る。
【0082】
そのため、結晶形態CのXRPDパターンは、5.9±0.2°2θ、11.9±0.2°2θ、12.0±0.2°2θ、12.5±0.2°2θ、12.9±0.2°2θ、14.4±0.2°2θ、14.6±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、17.0±0.2°2θ、18.0±0.2°2θ、19.0±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、20.2±0.2°2θ、20.8±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、21.2±0.2°2θ、22.8±0.2°2θ、23.4±0.2°2θ、23.7±0.2°2θ、25.3±0.2°2θ、26.1±0.2°2θ、及び26.9±0.2°2θから選択される1個又は複数個(例えば、2個、3個、4個、5個、若しくは6個)の代表的なピークを含み得る。結晶形態CのXRPDパターンは、表3に開示されているピークから選択されており且つ表3に開示されているピークから選択される約25℃の温度で測定された1個又は複数個(例えば、2個、3個、4個、5個、若しくは6個)の代表的なピークを含み得る。
【0083】
別の実施形態では、前記形態Cは、約25℃の温度で測定された、5.9±0.2°2θ、11.9±0.2°2θ、12.0±0.2°2θ、12.5±0.2°2θ、12.9±0.2°2θ、14.4±0.2°2θ、14.6±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、17.0±0.2°2θ、18.0±0.2°2θ、19.0±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、20.2±0.2°2θ、20.8±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、21.2±0.2°2θ、22.8±0.2°2θ、23.4±0.2°2θ、23.7±0.2°2θ、25.3±0.2°2θ、26.1±0.2°2θ、及び26.9±0.2°2θからなる群から選択される4個以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0084】
別の実施形態では、前記形態Cは、約25℃の温度で測定された、5.9±0.2°2θ、11.9±0.2°2θ、12.0±0.2°2θ、12.5±0.2°2θ、12.9±0.2°2θ、14.4±0.2°2θ、14.6±0.2°2θ、15.3±0.2°2θ、17.0±0.2°2θ、18.0±0.2°2θ、19.0±0.2°2θ、19.2±0.2°2θ、19.9±0.2°2θ、20.2±0.2°2θ、20.8±0.2°2θ、21.0±0.2°2θ、21.2±0.2°2θ、22.8±0.2°2θ、23.4±0.2°2θ、23.7±0.2°2θ、25.3±0.2°2θ、26.1±0.2°2θ、及び26.9±0.2°2θからなる群から選択される5個以上の2θ値(CuKαλ=1.54184Å)を含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0085】
さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Cは、
図7に実質的に示されているXRPDパターンを有する。
【0086】
N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Cを、熱的にキャラクタライズし得る。一実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Cは、90~120℃(変態Cから変態Bへの固体/固体転移に対応する)の小さい発熱ピーク、約171℃(変態Bの融解に対応する)で始まる吸熱ピーク、及び約175℃(変態Aへの再結晶に対応する)で始まる発熱ピーク、及び約195℃(変態Aの融解に対応する)で始まる吸熱ピークを含む、加熱速度が10℃/分であるDSCにより測定された示差熱重量プロファイルを有する。
【0087】
別の実施形態では、式(I)の化合物の結晶形態Cは、
図8に実質的に示されているDSCサーモグラムを有する。水和形態は、機器のパラメータに応じて(ピーク形状及びプロファイルに関して)異なるサーモグラムを生じる場合があり、そのため、データが2種の異なる機器で生成されている場合には、同一の物質が、互いに実質的に異なるように見えるサーモグラムを有する場合があることを理解すべきである。
【0088】
別の実施形態では、結晶形態Cは、
図9に示されているものと実質的に同一の熱重量分析(TGA)ダイアグラムを有する。TGAによる重量減少は、40~150℃の範囲で約0.01%である。熱分解は、240℃超で生じた。
【0089】
さらに別の実施形態では、結晶形態Cは、実質的に純粋である。
【0090】
さらに別の実施形態では、結晶形態Cは、化学的に相純粋である。
【0091】
さらに別の実施形態では、結晶形態Cは、実質的に相純粋である。
【0092】
一実施形態では、本発明は、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Cを製造する方法であって、
a)約3日にわたり約40℃の温度にてジクロロメタンに変態Aを懸濁させる工程;
b)この懸濁液を、室温まで冷却する工程;
c)(例えばろ過により)固体として形態Cを単離する工程
を含む方法に関する。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、化合物N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態Cを製造する方法であって、
a)少なくとも50%のジクロロメタンを含む溶媒混合物に変態Aを懸濁させる工程;
b)この懸濁液を、約4週間にわたり室温で平衡化させる工程;
c)(例えばろ過により)固体として形態Cを単離する工程
を含む方法に関する。
【0094】
上記実施形態の一態様では、この溶媒混合物は、MeOH/ジクロロメタン50:50(v/v)である。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態A、形態B、又はこれらの組み合わせ)の治療上有効な量と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。特定の実施形態では、本発明は、結晶形態Aと、1種又は複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。さらに別の態様では、本発明は、実質的に相純粋の形態の結晶形態Aを含む医薬組成物に関する。さらに別の態様では、本発明は、実質的に相純粋の形態の結晶形態Bを含む医薬組成物に関する。さらに別の実施形態では、本発明は、結晶形態Aを含み、さらにはN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの少なくとも1種の他の固体形態を含む医薬製剤に関する。この実施形態の一態様では、この他の固体形態は、結晶形態Bである。さらに別の実施形態では、この他の固体形態は、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの非結晶形態である。
【0096】
他の実施形態では、本発明は、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態A、形態B、又はこれらの組み合わせ)の治療上有効な量と、1種又は複数種の治療剤とを含む組み合わせ(具体的には医薬組み合わせ)に関する。
【0097】
特定の実施形態では、本発明は、結晶形態Aと、1種又は複数種の治療剤とを含む医薬組み合わせに関する。さらに別の態様では、本発明は、実質的に相純粋の形態の結晶形態Aと、1種又は複数種の治療剤とを含む医薬組み合わせに関する。さらに別の態様では、本発明は、実質的に相純粋の形態の結晶形態Bと、1種又は複数種の治療剤とを含む医薬組み合わせに関する。さらに別の実施形態では、本発明は、結晶形態Aを含み、さらにはN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの少なくとも1種の他の固体形態を含む医薬組み合わせに関する。この実施形態の一態様では、この他の固体形態は、結晶形態Bである。さらに別の実施形態では、この他の固体形態は、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの非結晶形態である。
【0098】
別の実施形態では、本発明は、本明細書で説明されている医薬組み合わせであって、治療剤は、免疫抑制剤若しくは免疫調節剤、又は他の抗炎症剤(例えば、同種移植片若しくは異種移植片の急性若しくは慢性の拒絶反応、又は炎症性障害若しくは自己免疫性障害の処置若しくは予防用の抗炎症剤)、又は化学療法剤(例えば悪性細胞抗増殖剤)の群から独立して選択される、医薬組み合わせを提供する。例えば、式(I)の化合物の結晶形態を、下記と組み合わせて使用し得る:カルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリンA若しくはFK 506;mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、AP23464、AP23675、AP23841、TAFA-93、バイオリムス-7、若しくはバイオリムス-9;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えば、ABT-281、ASM981等;副腎皮質ステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン(azathioprene);メトトレキサート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸若しくはミコフェノール酸塩;ミコフェノール酸モフェチル;15-デオキシスペルグアリン、又はその免疫抑制相同体、免疫抑制類似体、若しくは免疫抑制誘導体;PKC阻害剤、例えば、国際公開第02/38561号パンフレット若しくは同第03/82859号パンフレットで開示されているPKC阻害剤、例えば、実施例56若しくは70の化合物;JAK3キナーゼ阻害剤、例えば、N-ベンジル-3,4-ジヒドロキシ-ベンジリデン-シアノアセトアミドα-シアノ-(3,4-ジヒドロキシ)-]N-ベンジルシンナムアミド(Tyrphostin AG 490)、プロジギオシン 25-C(PNU156804)、[4-(4’-ヒドロキシフェニル)-アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン](WHI-P131)、[4-(3’-ブロモ-4’-ヒドロキシルフェニル)-アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン](WHI-P154)、[4-(3’,5’-ジブロモ-4’-ヒドロキシルフェニル)-アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン]WHI-P97、KRX-211、遊離形態若しくは薬学的に許容される塩形態(例えば一クエン酸塩)(CP-690,550とも称される)での3-{(3R,4R)-4-メチル-3-[メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミノ]-ピペリジン-1-イル}-3-オキソ-プロピオニトリル、又は国際公開第04/052359号パンフレット若しくは同第05/066156号パンフレットで開示されている化合物;スフィンゴシン-1-ホスフェート受容体調節剤、例えばFTY720(フィンゴリモド)、若しくは国際公開第2005/000833号パンフレットで開示されている化合物;免疫抑制モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体(例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD52、CD58、CD80、CD86)若しくはそのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調節化合物、例えば、CTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部を有する組換え結合分子若しくはその変異体、例えば、非CTLA4タンパク質配列に結合したCTLA4の少なくとも細胞外部分若しくはその変異体、例えば、CTLA4Ig(例えばATCC 68629と命名されている)若しくはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えば、LFA-1アンタゴニスト、ICAM-1アンタゴニスト若しくはICAM-3アンタゴニスト、VCAM-4アンタゴニスト、若しくはVLA-4アンタゴニスト;又は化学療法剤、例えば、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチナム、ドキソルビシン、若しくは5-フルオロウラシル;又は抗感染剤。式(I)の化合物に対するさらなる組み合わせパートナーは、下記から選択され得る:PI3K阻害剤(例えば、パン、又はアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ選択的)、TNF阻害剤、IL1ベータ阻害剤、IL17阻害剤、及びIL6受容体又はIL受容体の阻害剤。
【0099】
一実施形態では、本発明は、必要な対象の、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害を処置する方法であって、必要な対象に、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態A、形態B、又はこれらの組み合わせ、好ましくは形態A)の治療上有効な量を、単独で又は1種若しくは複数種の治療剤と組み合わせて投与することを含む方法に関する。
【0100】
別の実施形態では、本発明は、必要な対象の、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害(例えば、炎症性障害及び自己免疫性障害、並びに肺及び気道の炎症)を処置する方法であって、前記対象に、本明細書で説明されている医薬組成物を、単独で又は1種若しくは複数種の治療剤と組み合わせて投与することを含む方法に関する。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、必要な対象の、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害(例えば、炎症性障害及び自己免疫性障害、並びに肺及び気道の炎症)を処置する方法であって、前記対象に、本明細書で説明されている医薬組み合わせを投与することを含む方法に関する。
【0102】
一実施形態では、本発明は、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害(例えば、炎症性障害及び自己免疫性障害、並びに肺及び気道の炎症)の処置のための、単独での又は1種若しくは複数種の治療剤との組み合わせでのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態A、形態B、又はこれらの組み合わせ、好ましくは形態A)の使用に関する。
【0103】
さらに別の実施形態では、本発明は、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害(例えば、炎症性障害及び自己免疫性障害、並びに肺及び気道の炎症)の処置での使用のためのN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態A、形態B、又はこれらの組み合わせ、好ましくは形態A)に関する。
【0104】
さらに別の実施形態では、本発明は、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害の処置での使用のための、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態A、形態B、又はこれらの組み合わせ、好ましくは形態A)と、1種又は複数種の治療剤との組み合わせに関する。
【0105】
一実施形態では、本発明は、本明細書で説明されている処置の方法、使用、使用のための化合物、又は使用のために組み合わせであって、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害は、炎症性障害及び自己免疫性障害、並びに肺及び気道の炎症から選択される、処置の方法、使用、使用のための化合物、又は使用のために組み合わせに関する。より具体的には、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害は、下記から選択される:自己免疫障害、炎症性疾患、アレルギー性疾患、気道疾患、例えば、喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)、移植拒絶反応;抗体産生、抗原提示、サイトカイン産生、又はリンパ組織形成が異常であるか又は望ましくない疾患;例えば、関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎(SOJIA)、痛風、尋常性天疱瘡、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎、クリオグロブリン血症、血栓性血小板減少性紫斑病、慢性蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹、誘発性蕁麻疹)、慢性アレルギー(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎)、アテローム性動脈硬化症、1型糖尿病、2型糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、膵炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、抗体媒介性移植片拒絶反応(AMR)、移植片対宿主病、B細胞媒介性の超急性の、急性、及び慢性の移植片拒絶反応;血栓塞栓性障害、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、虚血性障害、肺塞栓症;造血臓器の癌、例えば、限定されないが、多発性骨髄腫;白血病;急性骨髄性白血病;慢性骨髄性白血病;リンパ球性白血病;骨髄性白血病;非ホジキンリンパ腫;リンパ腫;真性赤血球増加症;本態性血小板血症;骨髄化生を伴う骨髄線維症;並びにワルデンストレーム病。好ましくは、典型的にはBTKの阻害により寛解される疾患又は障害は、関節リウマチ;慢性蕁麻疹、好ましくは慢性特発性蕁麻疹;シェーグレン症候群、多発性硬化症、又は喘息から選択される。
【0106】
本明細書で説明されている結晶形態Aは、有利な特性を有することが分かっている。
【0107】
式(I)の化合物の形態Aは、最も安定した形態である。形態Aは、高レベルの%RHに曝露された場合に、及び長期にわたるストレス条件の曝露時に、物理的に安定であった。形態Aはまた、非塩素系溶媒(例えば、ジクロロメタン及びクロロホルム以外の溶媒)中の懸濁液でも安定である。
【0108】
非吸湿性挙動に起因して、本発明の形態Aの物理化学的特性は、周囲大気の相対湿度に関係なく保存されており、そのため、前記形態Aを含む医薬品のより容易でより信頼性のある製造プロセス及びより容易な貯蔵が促進される。加えて、結晶形態Aは、厳しい温度及び/又は湿度ストレス条件に曝された場合か又は様々な溶媒中で長期にわたりスラリー化された場合であっても、この結晶形態Aの結晶構造が保存される。
【0109】
クロロホルム溶媒及びジクロロメタン溶媒は、変態B及び/又は変態Cの形成をもたらすことが分かった。
【0110】
変態Cは準安定の形態であり、なぜならば、変態Cは、室温で又は50℃で加熱されることにより、変態Bへと変化するからである。
【0111】
変態Bは170℃まで安定であるが、変態Bは170℃超で変態Aに変化する。
【0112】
医薬組成物、投与量、及び投与
一実施形態では、本明細書で説明されているN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態を、単独で使用し得るか、又は医薬組成物であって、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤も含み、少なくとも2種以上の薬学的に許容される賦形剤を含むことが多い医薬組成物へと製剤化し得る。いくつかの適切な賦形剤が、本明細書で開示されている。本出願の趣旨及び範囲を逸脱することなく、当該技術分野で既知である他の賦形剤を使用し得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を利用する。
【0114】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、当業者に既知であるだろうありとあらゆる溶媒、担体、希釈剤、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤、抗酸化剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩類、薬物安定剤、結合剤、添加剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素、及び同類のもの、並びにこれらの組み合わせを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照されたい)。従来の賦形剤が本活性成分に不適合である場合を除いて、任意の治療用組成物又は医薬組成物での任意の従来の賦形剤の使用が本出願により企図されていることを理解すべきである。
【0115】
本医薬組成物を、経口投与、非経口投与、及び直腸投与等の特定の投与経路のために製剤化し得る。加えて、本発明の医薬組成物を、固体形態(例えば、限定されないが、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、若しくは坐剤)、又は液体形態(例えば、限定されないが、液剤、懸濁剤、又は乳剤)で調合し得る。本医薬組成物は、滅菌等の従来の製薬操作に付され得、並びに/又は従来の不活性希釈剤、滑沢剤、担体、若しくは緩衝剤、並びにアジュバント(例えば、溶媒、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、及び緩衝液等)を含み得る。
【0116】
典型的には、本医薬組成物は、少なくとも1種の賦形剤と一緒に本活性成分を含む錠剤又はカプセル剤であり、この賦形剤として、
a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、及び/又はグリシン;
b)滑沢剤、例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウム若しくはカルシウム塩、及び/又はポリエチレングリコール;
が挙げられ、錠剤の場合には、
c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン;
も挙げられ、必要に応じて、
d)担体、例えば、共溶媒和物質(例えば、キャプチゾール(captisol)、PEG、グリセリン、シクロデキストリン、若しくは同類のもの)を含む水性ビヒクル;
e)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸若しくはそのナトリウム塩、又は発泡性混合物;
並びに/又は
f)吸収剤、着色剤、香料、及び甘味料
が挙げられる。
【0117】
錠剤は、当該技術分野で既知の方法に従って、フィルムコートされ得るか又は腸溶コートされ得る。
【0118】
好ましくは、本化合物又は本組成物は、経口投与用に調製されており(例えば、錠剤又はカプセル剤)、医薬品の単位用量の保存及び/又は投与に適したマルチドーズ形式で任意選択的に包装されている。好適な包装の例として、密封金属箔、単位用量容器(例えばバイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
錠剤は、本活性成分を、錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物で含み得る。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム;顆粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、又はアカシア;並びに滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクである。錠剤は、コーティングされていないか、又は胃腸管中での崩壊及び吸収を遅延させ、それによってより長期間にわたる持続作用をもたらすように、既知の技術によってコーティングされている。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の時間遅延物質を用い得る。経口使用のための製剤は、本活性成分が不活性な固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、若しくはカオリン)と混合されている硬ゼラチンカプセル剤としてか、又は本活性成分が水若しくは油性媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油)と混合されている軟ゼラチンカプセル剤として提供され得る。
【0120】
本発明は、水がある特定の化合物の分解を促進する場合があることから、活性成分として本発明の化合物を含む無水の医薬組成物及び剤形をさらに提供する。
【0121】
本発明の無水の医薬組成物及び剤形は、無水成分又は低水分含有成分、及び低水分条件又は低湿度条件を使用して調製され得る。無水の医薬組成物が調製され、その無水の性質が維持されるように保存され得る。従って、無水組成物は、水への暴露を予防することが知られる物質を使用して、この組成物が好適な処方集のキットに含まれ得るよう好ましくは包装されている。好適な包装の例として、密封金属箔、プラスチック、単位用量容器(例えばバイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
本発明は、活性成分としての本発明の化合物が分解することになる速度を低下させる1種又は複数種の薬剤を含む医薬組成物及び剤形をさらに提供する。そのような薬剤(本明細書では「安定剤」と称される)として、アスコルビン酸、pH緩衝液、又は塩緩衝液等の抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明の医薬組成物又は組み合わせは、約50~70kgの対象に対して約1~1000mgの活性成分、又は約1~500mg、若しくは約1~250mg、若しくは約1~150mg、若しくは約0.5~100mg、若しくは約1~50mgの活性成分の単位投与量であり得る。好ましくは、本発明の医薬組成物又は組み合わせは、約10mg、約25mg、又は約50mgの単位投与量であり得る。化合物、医薬組成物、又はその組み合わせの治療上有効な投与量又は量は、対象の種、体重、年齢、及び個々の状態、処置される障害若しくは疾患、又はその重症度に依存する。通常の技術を有する医師、臨床医、又は獣医は、障害又は疾患の進行を予防するか、処置するか、又は阻害するのに必要な、活性成分の各々の有効な量を容易に決定し得る。
【0124】
上記に引用された投与量特性は、有利には哺乳動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、サル)、又はそれらの単離された臓器、組織、及び調製物を使用して、インビトロ試験及びインビボ試験によって実証可能である。本発明の化合物は、インビトロにおいて溶液(例えば、好ましくは水溶液の形態)で、インビボにおいて経腸的、非経口的、有利には静脈内に、例えば懸濁液として又は水溶液として、適用され得る。インビトロでの投与量は、約10-3モル~10-9モル濃度の間の範囲であり得る。インビボでの治療上有効な量は、投与経路に応じて、約0.1~500mg/kg又は約1~100mg/kgの範囲であり得る。好ましくは、インビボでの治療上有効な量は、1日当たり約10mg~約200mgの範囲であり、例えば、1日当たり約10mg、約20mg、約25mg、約35mg、約50mg、約100mg、又は約200mgの範囲である。好ましくは、インビボでの治療上有効な量は、1日に1回、約10mg、約35mg、約50mg、又は約100mgから選択される。同様に、好ましくは、インビボでの治療上有効な量は、1日に2回、約10mg、約25mg、約50mg、又は約100mgから選択される。
【0125】
他の実施形態では、本明細書における上記の実施形態に係る少なくとも1種の結晶形態(例えば、形態A、形態B、又はこれらの混合物、好ましくは形態A)と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0126】
従って、本開示のある実施形態では、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの結晶形態(形態A又は形態B、好ましくは形態A)は、実質的に相純粋の形態で提供される。実質的に相純粋な形態のN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドのこの結晶形態(形態A又は形態B)を使用して、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る医薬組成物を調製し得る。
【0127】
組み合わせ:
本発明の式(I)の化合物の結晶形態(例えば、形態A若しくは形態B、又はこれらの混合物、好ましくは形態A)を、1種若しくは複数種の他の治療剤と同時に投与し得るか、又はこの治療剤の前に投与し得るか、又はこの治療剤の後に投与し得る。本発明の結晶形態を、同一の若しくは異なる投与経路により個別に投与し得るか、又は他の薬剤と同一の医薬組成物中で一緒に投与し得る。
【0128】
式(I)の化合物の結晶形態を、唯一の活性成分として投与してもよいし、他の薬物と一緒に(例えば他の薬物に対するアジュバントとして)投与してもよく、この他の薬剤として例えば下記が挙げられる:免疫抑制剤若しくは免疫調節剤、又は他の抗炎症剤(例えば、同種移植片若しくは異種移植片の急性若しくは慢性の拒絶反応、又は炎症性障害若しくは自己免疫性障害の処置若しくは予防用の抗炎症剤)、又は化学療法剤(例えば悪性細胞抗増殖剤)。例えば、式(I)の化合物の結晶形態を、下記と組み合わせて使用し得る:カルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリンA若しくはFK 506;mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、AP23464、AP23675、AP23841、TAFA-93、バイオリムス-7、若しくはバイオリムス-9;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えば、ABT-281、ASM981等;副腎皮質ステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキサート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸若しくはミコフェノール酸塩;ミコフェノール酸モフェチル;15-デオキシスペルグアリン、又はその免疫抑制相同体、免疫抑制類似体、若しくは免疫抑制誘導体;PKC阻害剤、例えば、国際公開第02/38561号パンフレット若しくは同第03/82859号パンフレットで開示されているPKC阻害剤、例えば、実施例56若しくは70の化合物;JAK3キナーゼ阻害剤、例えば、N-ベンジル-3,4-ジヒドロキシ-ベンジリデン-シアノアセトアミド α-シアノ-(3,4-ジヒドロキシ)-]N-ベンジルシンナムアミド(Tyrphostin AG 490)、プロジギオシン 25-C(PNU156804)、[4-(4’-ヒドロキシフェニル)-アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン](WHI-P131)、[4-(3’-ブロモ-4’-ヒドロキシルフェニル)-アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン](WHI-P154)、[4-(3’,5’-ジブロモ-4’-ヒドロキシルフェニル)-アミノ-6,7-ジメトキシキナゾリン]WHI-P97、KRX-211、遊離形態若しくは薬学的に許容される塩形態(例えば一クエン酸塩)(CP-690,550とも称される)での3-{(3R,4R)-4-メチル-3-[メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミノ]-ピペリジン-1-イル}-3-オキソ-プロピオニトリル、又は国際公開第04/052359号パンフレット若しくは同第05/066156号パンフレットで開示されている化合物;スフィンゴシン-1-ホスフェート受容体調節剤、例えばFTY720(フィンゴリモド)、若しくは国際公開第2005/000833号パンフレットで開示されている化合物;免疫抑制モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体(例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD52、CD58、CD80、CD86)若しくはそのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調節化合物、例えば、CTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部を有する組換え結合分子若しくはその変異体、例えば、非CTLA4タンパク質配列に結合したCTLA4の少なくとも細胞外部分若しくはその変異体、例えば、CTLA4Ig(例えばATCC 68629と命名されている)若しくはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えば、LFA-1アンタゴニスト、ICAM-1アンタゴニスト若しくはICAM-3アンタゴニスト、VCAM-4アンタゴニスト、若しくはVLA-4アンタゴニスト;又は化学療法剤、例えば、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチナム、ドキソルビシン、若しくは5-フルオロウラシル;又は抗感染剤。式(I)の化合物に対するさらなる組み合わせパートナーは、下記から選択され得る:PI3K阻害剤(例えば、パン、又はアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ選択的)、TNF阻害剤、IL1ベータ阻害剤、IL17阻害剤、及びIL6受容体又はIL受容体の阻害剤。
【0129】
治療キット
一実施形態では、本発明は、2種以上の別個の医薬組成物を含むキットであって、これらの医薬組成物の内の少なくとも1種は、式(I)の化合物の結晶形態(形態A、形態B、又はこれらの混合物、好ましくは形態A)を含む、キットを提供する。一実施形態では、このキットは、容器、分割されたボトル、又は分割された金属箔の袋等の、前記組成物を別々に保持するための手段を含む。そのようなキットの一例は、錠剤、カプセル剤、及び同類のものの包装に概して使用されているようなブリスターパックである。
【0130】
本発明のキットを、様々な剤形(例えば、経口及び非経口)で投与するために、別個の組成物を様々な投与間隔で投与するために、又は互いに対して別個の組成物を漸増するために、使用し得る。服薬遵守を助けるために、本発明のキットは、典型的には、投与に関する指示書を含む。
【0131】
本発明の組み合わせ療法では、式(I)の化合物の結晶形態(即ち、形態A、形態B、又はこれらの混合物、好ましくは形態A)と、他の治療剤とを、同一か又は異なる製造業者により製造し得、及び/又は製剤化し得る。さらに、式(I)の化合物の結晶形態と、他の治療剤とを、(i)この組み合わせ製品を医師に渡す前に(例えば、式(I)の化合物の結晶形態と、他の治療剤とを含むキットの場合);(ii)投与直前に医師自身により(又は医師の指導の下に);(iii)患者自身において、例えば、式(I)の化合物の結晶形態及び他の治療剤の連続投与の最中に、組み合わせ療法へとまとめ得る。
【0132】
従って、本発明は、BTKの阻害により寛解される疾患(例えば、自己免疫疾患、抗炎症性疾患、呼吸器系の疾患)を処置するための、本明細書で説明されている結晶形態(即ち、即ち、形態A、形態B、又はこれらの混合物、好ましくは形態A)の使用であって、この薬剤は、別の治療剤と一緒の投与用に調製されている、使用を提供する。本発明はまた、BTKの阻害により寛解される疾患(例えば、自己免疫疾患、抗炎症性疾患、呼吸器系の疾患)を処置するための治療剤の使用であって、この薬剤は、式(I)の化合物の結晶形態と共に投与される、使用も提供する。
【0133】
本発明はまた、BTK阻害により寛解される疾患を処置する方法での使用のための式(I)の化合物の結晶形態(即ち、即ち、形態A、形態B、又はこれらの混合物、好ましくは形態A)であって、式(I)の化合物の結晶形態は、別の治療剤と一緒の投与用に調製されている、結晶形態も提供する。本発明はまた、BTKの阻害により寛解される疾患を処置する方法での使用のための別の免疫治療剤であって、この他の治療剤は、式(I)の化合物の結晶形態と一緒の投与用に調製されている、別の免疫治療剤も提供する。本発明はまた、BTKの阻害により寛解される疾患を処置する方法での使用のための式(I)の化合物の結晶形態であって、この式(I)の化合物の結晶形態は、別の治療剤と共に投与される、結晶形態も提供する。本発明はまた、BTKの阻害により寛解される疾患を処置する方法での使用のための別の治療剤であって、この他の治療剤は、式(I)の化合物の結晶形態と共に投与される、別の治療剤も提供する。
【0134】
本発明はまた、BTKの阻害により寛解される疾患(例えば、自己免疫疾患、抗炎症性疾患、呼吸器系の疾患)を処置するための式(I)の化合物の結晶形態の使用であって、患者は、別の治療剤で既に(例えば24時間以内に)処置されている、使用も提供する。本発明はまた、BTKの阻害により寛解される疾患(例えば、自己免疫疾患、抗炎症性疾患、呼吸器系の疾患)を処置するための別の治療剤の使用であって、患者は、式(I)の化合物の結晶形態で既に(例えば24時間以内に)処置されている、使用も提供する。
【0135】
結晶形態N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドの調製:
結晶形態を、様々な方法(例えば、適切な溶媒からの結晶化又は再結晶化、昇華、融解物からの成長、別の相からの固体変換、超臨界流体からの結晶化、及びジェット噴霧)により調製し得る。溶媒又は溶媒混合物からの結晶形態の結晶化又は再結晶化の技術として、例えば、溶媒の蒸発、溶媒又は溶媒混合物の温度低下、分子及び/又は塩の過飽和溶媒混合物の結晶播種、溶媒混合物の凍結乾燥、並びに溶媒混合物への抗溶媒(カウンター溶媒(countersolvent))の添加が挙げられる。本明細書で説明されている結晶形態を調製する例示的な方法が、下記に詳細に記載されている。
【0136】
薬物の結晶(多形を含む)、調製方法、及び薬物結晶のキャラクタリゼーションは、Solid-State Chemistry of Drugs,S.R. Byrn,R.R. Pfeiffer,and J.G. Stowell,2nd Edition,SSCI,West Lafayette,Indiana(1999)で考察されている。
【0137】
溶媒を用いる結晶化技術の場合、溶媒の選択は、典型的には、1つ又は複数の因子(例えば、化合物の溶解度、結晶化技術、及び溶媒の蒸気圧)に依存する。溶媒の組み合わせを用い得、例えば、化合物を第一の溶媒に溶解させて溶液を得、続いて、抗溶媒を添加して、この溶液中の化合物の溶解度を低下させて結晶を形成させ得る。抗溶媒とは、この化合物の溶解度が低い溶媒のことである。
【0138】
結晶を調製する一方法では、化合物を適切な溶媒に懸濁させ及び/又はスラリー化させてスラリーを得、このスラリーを加熱して溶解を促進させ得る。「スラリー」という用語は、本明細書で使用される場合、化合物の飽和溶液であって、所与の温度で、この化合物及び溶媒の不均一な混合物を得るために、この化合物の追加の量も含み得る飽和溶液を意味する。これは、懸濁液とも称される。
【0139】
種結晶を、任意の結晶化混合物に添加して、結晶化を促進し得る。播種を用いて、特定の多形の成長を制御し得るか、又は結晶性生成物の粒度分布を制御し得る。従って、必要な種の量の算出は、例えば“Programmed Cooling of Batch Crystallizers,”J.W. Mullin and J.Nyvlt,Chemical Engineering Science,1971,26,369-377で説明されているように、利用可能な種のサイズ、及び平均的な生成物粒子の所望のサイズに依存する。一般的に、バッチ中の結晶の成長を効率的に制御するためには、サイズが小さい種が必要である。サイズが小さい種を、大きい結晶の篩い分け、粉砕、若しくは微粒子化により生成し得るか、又は溶液の微小結晶化により生成し得る。結晶の粉砕又は微粒子化により、所望の結晶形態の結晶化度の変化(即ち、非結晶又は別の多形への変化)が起きないように注意しなければならない。
【0140】
冷却した結晶化混合物を、真空下でろ過し得、単離された固体を、冷再結晶溶媒等の適切な溶媒で洗浄して窒素パージ下で乾燥させて、所望の結晶形態を得ることができる。単離された固体を、適切な分光技術又は分析技術(例えば、固体核磁気共鳴、示差走査熱力測定、X線粉末回折、又は同類のもの)で分析して、生成物の好ましい結晶形態の形成を保証し得る。得られた結晶形態は、結晶化手順で最初に用いられた化合物の重量を基準として、典型的には約70重量%超の単離収率の量で生成され、好ましくは90重量%超の単離収率の量で生成される。必要に応じて、この生成物を共粉砕し得るか、又はメッシュスクリーンに通して生成物の塊を除去し得る。
【0141】
或いは、結晶形態を、N-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドを調製するための最終プロセスの反応媒体から直接調製し得る。このことを、例えば、最終プロセス工程において、溶媒又は溶媒の混合物であって、これからN-(3-(6-アミノ-5-(2-(N-メチルアクリルアミド)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミドが結晶化され得る溶媒又は溶媒の混合物を用いることにより達成し得る。加えて、結晶形態を、蒸留技術又は溶媒添加技術により得ることができる。
【0142】
下記で簡単に考察する方法に加えて、本明細書で説明されている物質の内のいずれかのキャラクタリゼーションに様々な分析方法を使用し得ることを理解すべきである。
【0143】
下記の非限定的な例は、本開示の例示である。
【実施例】
【0144】
実施例1:無水結晶形態Aの調製
【化3】
N-(3-(6-アミノ-5-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ピリミジン-4-イル)-5-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-シクロプロピル-2-フルオロベンズアミド(国際公開第2015/079417号パンフレットで開示されている中間体10)と、炭酸ナトリウムとを、酢酸エチルに懸濁させ、50℃まで加熱した。この懸濁液に、無水アクリル酸の酢酸エチル溶液(20%w/w)を添加した。この反応混合物を、50℃で約30分にわたり撹拌した。水の添加後、この反応混合物を、65℃で約30分にわたり撹拌した。その後、相を60℃で分離し、水相を除去する。有機相を0.05Mの硫酸で洗浄し、水相を60℃で除去した。その後、有機相を水で洗浄し、水相を60℃で除去した。最終の有機相を、低粒子ろ過により処理した。内部温度60℃にて、蒸留を減圧下で行なって溶媒混合物の一部を除去し、同時に酢酸エチルを添加して、溶媒のレベルをほぼ一定に保った。これにより、含水量が減少した。(任意選択的に、この溶液に、酢酸エチル中の形態Aの種懸濁液を添加する)。この懸濁液を、少なくとも15分にわたり撹拌した。その後、60℃の内部温度でのさらなる蒸留を減圧下で行なって溶媒混合物の一部を除去し、同時に酢酸エチルを添加して、溶媒のレベルをほぼ一定に保った。
【0145】
この懸濁液を、60℃で30分にわたり撹拌し、200分で30℃まで冷却し、30℃で30分にわたり撹拌した。30℃の内部温度にて、最終蒸留を減圧下で行ない、同時に酢酸エチルを添加して、溶媒のレベルをほぼ一定に保った。30℃での120分間の撹拌後、この懸濁液を300分内で0℃まで冷却し、0℃で少なくとも240にわたり撹拌した。生成物を遠心分離により単離し、フィルタケーキを酢酸エチルで2回洗浄する。単離された湿潤生成物を、真空下で40℃にて、乾燥オーブン中のトレイ上で乾燥させた。結晶形態Aを得た。変態Aを、HR-XRPD、LCMS、TGA、及びDSCによりキャラクタライズした。
【0146】
実施例2:無水結晶形態Cの調製
変態A(実施例1)を、3日にわたり50℃でジクロロメタンに懸濁させた。その後、この懸濁液を、Buchnerフィルタでろ過した。固体をろ別により回収し、一晩室温にて真空(200mbar)下で乾燥させて、変態Cを得た。変態Cを-20℃で保存して、さらなる変化を防止した。
【0147】
実施例3:無水結晶形態Bの調製
変態C(実施例2)を室温で放置し、変態Bへの変化をHR-XRPDでモニタリングし、この変化は5日後に完了した。
【0148】
変態B及びCを、HR-XRPD、LCMS、TGA、及びDSCによりキャラクタライズした。
【0149】
実施例4:高分解能粉末X線回折
固体を、乳棒により乳鉢中で細かく粉砕した。この化合物を、8mmのホウ素ガラスキャピラリ(0.3mm直径)に充填し、回折計中に注意深く置いた。
【0150】
LynxEye固体検出器を備えたBruker D8 Advanceシステムにより、296Kで、HR-XRPDパターンを収集した。このデータの収集に使用した放射線は、ゲルマニウム結晶により単色化されたCuKα1(λ=1.54056Å)であった。回折データを、変態Aに関しては範囲4~50°2θで収集し、変態B及びCに関しては3~41.5°2θの範囲で収集した。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
実施例5:示差走査熱量測定(DSC)
融解特性を、DSCサーモグラムから得、熱流束DSC822e機器(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)で記録した。DSC822eを、インジウムの小片(融点156.6℃;ΔH=28.45J/g)により、温度及びエンタルピーに関して校正した。試料を、標準的な40μlアルミニウムパンに封入し、ピンホールを開けるか又は密封し、2℃/分、5℃/分、10℃/分、又は20℃/分の加熱速度にて-20℃から300℃へとDSC中で加熱した。測定中に、50ml/分の流速での乾燥N2ガスを使用して、このDSC装置をパージした。
【0155】
同一の装置で、循環DSCを実施した。試料を、標準的な40μlアルミニウムパンに封入し、ピンホールを開け、20℃から195℃へとDSC中で加熱し、195℃から-20℃へと冷却し、-20℃から300℃へと再度加熱した。この加熱及び冷却の速度は、10℃/分であった。この方法による測定試料温度の精度は約±1℃以内であり、融解熱を約±5%の相対誤差内で測定し得る。
【0156】
変態A、B、及びCのDSC測定を、オープンパン及び密封パン中において様々な加熱速度で-20~300℃にて実施した。
【0157】
変態A、B、及びCに関してオープンパン中で記録されたDSCトレースを、それぞれ
図2、
図5、及び
図8で報告する。DSCトレースで観察された発熱/吸熱事象の開始温度を、それぞれ表4、表5、及び表6で報告する。
【0158】
DSC測定の両方のセットでは、加熱速度を上昇させることにより、より高温への熱的事象の一般的なシフトが観察され、この事象の広がりも観察された。
【0159】
変態AのDSC曲線は、オープンパン及び密閉パンそれぞれにおいて、範囲193~195℃で開始融解温度を示した。変態BのDSC測定では、170~180℃での吸熱/発熱事象は、変態Bの融解及びAへの再結晶化と関連し得た。
【0160】
変態CのDSCトレースでは、170~180℃での吸熱/熱的事象の存在は、加熱により変態Cが変態Bへと変化されることを裏付けた。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
実施例6:熱重量分析(TGA):
結晶からの溶媒又は水の喪失に起因する質量減少を、TGA/SDTA(単一示差熱分析)及びTGMS(質量分析法を併用する熱重量分析)により決定した。TGA/DSC 3+ STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH,Switzerland)中での加熱中に試料重量をモニタリングすることにより、重量対温度曲線が得られた。TGA/DSC 3+を、インジウム及びアルミニウムの試料により、温度に関して校正した。試料(約2mg)を、100μLのアルミニウム製るつぼへと秤量して密封した。シールにピンホールを開け、このるつぼを、10℃/分の加熱速度にて25℃から300℃へとTGA中で加熱した。乾燥N2ガスを使用してパージした。TGA試料から出てくるガスを、質量分析計Omnistar GSD 301 T2(Pfeiffer Vacuum GmbH,Germany)で分析した。後者は、四重極型質量分析計であり、0~200amuの温度範囲で質量を分析する。温度を摂氏(℃)で報告し、重量減少を%で報告する。
【0165】
変態AのTGA/SDTA分析(
図3)から、範囲40~200℃で0.3%の質量減少が明らかとなり、このことは、変態Aが無水であることを示した。SDTA曲線での190℃付近での吸熱ピークは、化合物の融解に起因する可能性があった。240℃超で熱分解が発生した。
【0166】
図3.変態AのTGA/SDTA分析(10℃/分の加熱速度)。0.3%の質量減少を、範囲40~200℃で記録した。240℃超で熱分解が発生した。
【0167】
変態BのTGA/SDTA分析(
図6)から、範囲40~160℃で0.2%の質量減少が明らかとなった。従って、変態Bは無水であった。SDTA曲線中において160℃超で発生している事象は、変態Bの融解及び変態Aへの再結晶化、続いて変態Aの最終的な融解に起因する。240℃超で熱分解が発生した。
【0168】
図6.変態BのTGA/SDTA分析(10℃/分の加熱速度)。0.2%の質量減少を、範囲40~160℃で記録した。240℃超で熱分解が発生した。
【0169】
変態CのTGMS分析(
図9)から、範囲40~150℃で0.01%の質量減少が明らかとなり、このことは、変態Cが無水結晶相であることを示した。240℃超で熱分解が発生した。
【0170】
図9.変態CのTGA/SDTA(20A)及びTGMS(20B)分析(10℃/分の加熱速度)。0.01%の質量減少を、範囲40~150℃で記録した。240℃超で熱分解が発生した。
【0171】
実施例4:物理化学的安定性の比較
変態A、B、及びCを、下記のストレス条件に曝した:
・ 1ヶ月にわたり密閉バイアル中で80℃;
・ 1ヶ月にわたりオープンバイアル中で80℃/75%RH:
・ 3日にわたり密閉バイアル中で100℃。
【0172】
その後、固体を、HR-XRPD、TGMS、及びHPLCアッセイにより分析して、潜在的な固相変化、乾燥時の減少、及び化学的純度を評価した。
【0173】
安定性試験の完了時に、全ての固体を、HR-XRPD、TGMS、及びHPLCアッセイにより分析した。物理化学的安定性試験の結果を、表7で報告すする。
【0174】
HPLC条件
自動サンプラー温度:15℃
カラム:Waters Sunfire C18(100×4.6mm;3.5μm).
カラム温度:35℃
フローセル:10mmパス
勾配:移動相A:水中の0.1%のTFA
移動相B:アセトニトリル中の0.1%のTFA
流速:1.0ml/分
【0175】
【0176】
実行時間:11分
【0177】
【0178】
1ヶ月にわたる80℃への曝露、及び3日にわたる100℃への曝露の後、変態Cは変態Bへと変化した。変態A及びBのXRPDパターンは、変化しなかった。対照的に、変態Cは、3種全ての試験条件下で変態Bへと変化した。
【0179】
TGMS分析は、顕著な吸湿を全く示さず、従って、固体は吸湿性ではなかった。
【0180】
試料の化学的純度は、100%に近い回収値により示されるように、3日又は1ヶ月にわる高温及び高RHレベルへの曝露の影響を受けなかった。
【0181】
実施例5:吸湿性試験
変態Aの吸湿
変態Aの吸湿性を、24時間にわたる25℃での80%及び92%RHへの固体物質の曝露により評価した。その後、固体をHT-XRPDにより分析して結晶相の任意の変化を評価し、TGMSにより分析して吸湿を決定した。
【0182】
変態Aは、24時間にわたる80及び92%RHへの曝露後に、物理的に安定であった。TGMS分析から、両方の試料に関して0.2%の質量減少が明らかになった。従って、変態Aは非吸湿性と見なされることができた。
【0183】
25℃及び40℃での変態Aの水分収着等温線
動的蒸気収着(DVS):水分収着等温線を、Surface Measurement Systems(London,UK)のDVS-1システムで収集した。典型的な試料サイズは、5~10mgの固体物質であった。相対湿度プロファイルは、1回のステップ当たり10%RHレベルの上昇で40→0→95→0→95→40%であった。重量平衡時間は、1回の相対湿度ステップ当たり最小60分及び最大6時間の保持時間に設定され、且つdm/dt 0.002%/分であった。
【0184】
動的蒸気収着(DVS)測定を、10%RHのステップにおけるRHプロファイル40→0→95→0→95→40%で、25℃及び40℃にて変態Aに対して実行した。
【0185】
変態Aは、25℃及び40℃の両方で有意な水蒸気の取り込みを示さなかった。95%RHでは、最も高い質量変化は、25℃及び40℃それぞれで0.4%及び0.3%であった。収着サイクル及び脱着サイクルは可逆性であり、DVS測定では、水和物形成の兆候は得られなかった。DVS測定後に回収された固体は、変態Aのままであった。
【0186】
変態B及びCのDVS測定
変態B及びCに対して実行したDVS測定から、変態Aに関して収集したものと同様の結果が得られた。両方の結晶相とも、有意な水蒸気の取り込みを示さなかった。95%RHで記録された最も高い質量増加は、両方の相とも0.3%であった。
【0187】
変態BのXRPDパターンは、DVS測定後に変化しなかった。対照的に、変態CのDVS測定後に回収された固体は、おそらく25℃での変態CからBへの自発的変換に起因して、変態B及びCの混合物であった。
【0188】
実施例5:溶媒中での安定性
溶媒中での変態Aの安定性
変態Aの懸濁液を、23種の選択された溶媒で調製し、4週間にわたり室温(RT)で平衡化させ、2週間にわたり50℃で平衡化させた。平衡化時間の完了時に、固体を液相から分離し、周囲条件及び真空下(5mbar/50℃)で乾燥させ、HT-XRPDで分析した。
【0189】
懸濁液が溶解した場合には、真空下での蒸発(最初は200mbar/RT、次いで5mbar/50℃)により溶媒を除去した。同一条件下で、液相も蒸発させた。残留する固体を、HT-XRPDで分析した。
【0190】
RT及び50℃で実施した溶媒平衡化実験の実験詳細及び結果を、それぞれ表8及び表9に見出し得る。
【0191】
【0192】
【0193】
溶媒中での変態B及びCの安定性
変態B及びCの懸濁液を、15種の選択された溶媒で調製し、2週間にわたりRTで平衡化させ、1週間にわたり50℃で平衡化させた。平衡化時間の完了時に、固体を液相から分離し、周囲条件及び真空下(5mbar/50℃)で乾燥させ、HT-XRPDで分析した。
【0194】
懸濁液が溶解した場合には、真空下での蒸発(最初は200mbar/RT、次いで5mbar/50℃)により溶媒を除去した。同一条件下で、液相も蒸発させた。残留する固体を、HT-XRPDで分析した。
【0195】
変態Bに対してRT及び50℃で実施した溶媒平衡化実験の実験詳細及び結果を、それぞれ表10及び表11で報告する。
【0196】
変態Cに対してRT及び50℃で実施した溶媒平衡化実験の実験詳細及び結果を、それぞれ表12及び表13で報告する。
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
実施例6:造粒シミュレーション実験下での安定性
固体が十分に濡れるまで、多形形態Aに造粒溶媒を添加した。この懸濁液を、各添加の間にVortexで撹拌した。この懸濁液を、真空下で乾燥させた。残留する固体形態を単離し、結晶化度をXRPD及び/又はDSCで分析した。試験した造粒溶媒は、水、エタノール、2-プロパノール、アセトン、ベンジルアルコールであった。結晶化度の変化を観察しなかった。
【0202】
実施例7:圧縮下での安定性
多形形態A 100~300mgを、液圧プレス(平板の直径 13mm)により、10トンで5分にわたり圧縮した。次いで、試料をXRPD及びDSCで分析して、発生したあらゆる多形変化を確認した。この分析から、物質に変化がないことが明らかになった。
【0203】
式(I)の化合物の変態Aが最も安定した形態であることを発見した。
変態Aは、高レベルの%RHに曝露された場合に、及び長期にわたるストレス条件の曝露時に、物理的に安定であった。変態Aは、圧縮下及び造粒シミュレーション実験下で安定であった。変態Aは、クロロホルム及びジクロロメタン等の塩素系溶媒を除くか又は50体積%超の塩素系溶媒(例えばジクロロメタン及び/又はクロロホルム)を含む溶媒の混合物を除くほとんどの溶媒で、安定である。
【0204】
クロロホルム溶媒及びジクロロメタン溶媒等の塩素系溶媒は、変態B及びCの形成が引き起こされることが分かった。
変態B及びCは両方とも、準安定の形態であり、なぜならば、変態Cは、室温で又は50℃での加熱により、変態Bへと変化し、変態Bは、170℃超で変態Aへと変化するからである。
【国際調査報告】