IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルースター シリコンズ フランス ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエの特許一覧

特表2022-534258シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(54)【発明の名称】シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20220721BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220721BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220721BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20220721BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
B29C64/124
B33Y10/00
B33Y70/00
C08L83/06
C08G59/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570348
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2020064985
(87)【国際公開番号】W WO2020239982
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】1905722
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507208484
【氏名又は名称】エルケム シリコンズ フランス ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】フランセス,ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】テイユ,ペリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】メッフル,ジョフレイ
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AA45
4F213AB04
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL22
4F213WL23
4F213WL25
4J002CP051
4J002FD010
4J002FD200
4J002GB01
4J002GB02
4J002GJ02
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J036AK17
4J036FA03
4J036FA05
4J036GA06
4J036HA02
4J036JA15
(57)【要約】
本発明は、シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法に関する。詳細には、本発明は、光架橋性シリコーン組成物からシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法に関する。本発明は、光架橋性シリコーン組成物にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法であって、以下のステップ:
i.光架橋性シリコーン組成物Yおよび照射源を活用するステップであって、前記光架橋性シリコーン組成物Yが、
a.一般式(I)
【化1】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eは、カチオン重合性および/または架橋性の官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む基であり、前記カチオン重合性および/または架橋性の官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を介してケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧150、好ましくは2000≧a+b≧150である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンAであって、
前記オルガノポリシロキサンAは、カチオン重合および/または架橋しうる官能基を有する少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンAは、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA100g、好ましくは15mmol以下/100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA、
b.任意選択で、一般式(I)
(式中、
a+b≦100、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンBであって、
前記オルガノポリシロキサンBは、カチオン重合および/または架橋しうる官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を有する少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンBは、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンB、
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C、
d.任意選択で充填剤D、
e.任意選択で光増感剤E、および
f.任意選択で光吸収剤F
を含む、ステップ、
ii.前記照射源を使用し、光架橋性シリコーン組成物Yの少なくとも一部に選択的に照射して、前記シリコーンエラストマー物品の一部を形成するステップ、ならびに
iii.ステップii)を十分な回数繰り返して、前記シリコーンエラストマー物品を生成するステップ
を含む、付加製造法。
【請求項2】
前記光架橋性シリコーン組成物Yが、少なくとも75重量%のオルガノポリシロキサンAを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンAが、a=0である式(I)を有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項4】
前記光架橋性シリコーン組成物Yが、1~20重量%の間の前記オルガノポリシロキサンBを含むことを特徴とする、請求項1から3のうち1項に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項5】
基Eの前記カチオン重合性および/または架橋性の官能基がエポキシ官能基であり、好ましくは、オルガノポリシロキサンAおよび/またはオルガノポリシロキサンBの前記基Eが以下の群:
【化2】
から選択されることを特徴とする、請求項1から4のうち1項に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項6】
カチオン性光開始剤Cの量が、前記光架橋性シリコーン組成物Yの0.05~10重量%の間、好ましくは0.1~5重量%の間、さらにより好ましくは0.15~3重量%の間であることを特徴とする、請求項1から5のうち1項に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項7】
前記カチオン性光開始剤Cがオニウム塩から選択され、好ましくは、前記カチオン性光開始剤Cがジアリールヨードニウム塩であることを特徴とする、請求項1から6のうち1項に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項8】
前記光架橋性シリコーン組成物Yが0.1~15重量%の間の充填剤Dを含み、好ましくは、前記充填剤Dがシリカ質材料からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から7のうち1項に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項9】
前記光架橋性シリコーン組成物Yが0.001~0.1重量%の間の光増感剤Eを含み、好ましくは、前記光増感剤Eがナフタレン類、アントラセン類、ピレン類、フェノチアジン類、キサントン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン、カルバゾール類、アントラキノン類、フルオレノン類、アシルホスフィンオキシド類、カンファーキノンおよびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、光増感剤が2-イソプロピルチオキサントンであることを特徴とする、請求項1から8のうち1項に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項10】
前記光架橋性シリコーン組成物Yが0.01~5重量%の間の光吸収剤Fを含み、好ましくは、前記光吸収剤FがTiO、ZnO、ヒドロキシフェニル-s-トリアジン類、ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート類、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から9のうち1項に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項11】
前記照射源がLEDランプ、好ましくは波長355、365、385または405nmを有するLEDランプであることを特徴とする、請求項1から10のうち1項に記載のシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法。
【請求項12】
請求項1から11のうち1項に記載の方法により得られるシリコーンエラストマー物品。
【請求項13】
光架橋性シリコーン組成物Y’であって、
a.一般式(I)
【化3】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eは、カチオン重合性および/または架橋性の官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む基であり、前記カチオン重合性および/または架橋性の官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を介してケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧200、好ましくは2000≧a+b≧200である)
を有する少なくとも75重量%の直鎖オルガノポリシロキサンA’であって、
前記オルガノポリシロキサンA’は、カチオン重合および/または架橋しうる官能基を有する少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンA’は、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100g、好ましくは15mmol以下/100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA’、
b.一般式(I)
(式中、
a+b≦150、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する1~20重量%の間の直鎖オルガノポリシロキサンB’であって、
前記オルガノポリシロキサンB’は、カチオン重合および/または架橋しうる官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を有する少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンB’は、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB’100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンB’、ならびに
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C
を含む光架橋性シリコーン組成物Y’。
【請求項14】
前記オルガノポリシロキサンA’が、a=0である式(I)を有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項13に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’。
【請求項15】
基Eの前記カチオン重合性および/または架橋性の官能基がエポキシ官能基であり、好ましくは、前記オルガノポリシロキサンA’および/またはオルガノポリシロキサンB’の前記基Eが以下の群:
【化4】
から選択されることを特徴とする、請求項13または14に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’。
【請求項16】
前記カチオン性光開始剤Cの量が、0.05~10重量%の間、好ましくは0.1~5重量%の間、より好ましくは0.15~3重量%の間であることを特徴とする、請求項13から15のうち1項に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’。
【請求項17】
前記カチオン性光開始剤Cがオニウム塩から選択され、好ましくは、前記カチオン性光開始剤Cがジアリールヨードニウム塩であることを特徴とする、請求項13から16のうち1項に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’。
【請求項18】
0.1~15重量%の間の充填剤Dをさらに含み、好ましくは、前記充填剤Dがシリカ質材料により構成される群から選択されることを特徴とする、請求項13から17のうち1項に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’。
【請求項19】
0.001~0.1重量%の間の光増感剤Eをさらに含み、好ましくは、前記光増感剤Eがナフタレン類、アントラセン類、ピレン類、フェノチアジン類、キサントン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン、カルバゾール類、アントラキノン類、フルオレノン類、アシルホスフィンオキシド類、カンファーキノンおよびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記光増感剤が2-イソプロピルチオキサントンであることを特徴とする、請求項13から18のうち1項に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’。
【請求項20】
0.01~5重量%の間の光吸収剤Fを含み、好ましくは、光吸収剤FがTiO、ZnO、ヒドロキシフェニル-s-トリアジン類、ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート類、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13から19のうち1項に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’。
【請求項21】
シリコーンエラストマーから作製される物品を製造するための、請求項13から20のうち1項に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’の使用。
【請求項22】
請求項13から20のうち1項に記載の光架橋性シリコーン組成物Y’を架橋させることにより得られるシリコーンエラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法に関する。詳細には、本発明は、光架橋性シリコーン組成物からシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法に関する。本発明は、光架橋性シリコーン組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]昨今、付加製造は重要性が非常に高まっており、見込みのある商業用途が数多くあることから驚くべき成長の可能性を有している。その使用を一般化させるには、付加製造機械で使用可能な材料の範囲を拡大することが不可欠である。
【0003】
[0003]特に、印刷材料としてのシリコーンは、その柔軟性、生体適合性、電気および電子部品のための絶縁特性、ならびに良好な耐化学性、耐温度性および耐候性などの多数の利点により、付加製造に最も有望な材料の1つである。
【0004】
[0004]付加製造技術の中では、タンク内光重合(液槽光重合)について言及がなされうる。この技術により、連続する層で物体を製造することが可能となり、各層は、製造される物体の横断面を表す。これは、タンク内の光架橋性組成物を、所望の位置で選択的に架橋させることを可能にする照射源の使用に基づく。次いで組成物は固化して薄い架橋した層を形成し、いくつかの架橋した層を重ねることにより物体が製造されうる。
【0005】
[0005]レーザー光造形(SLA)印刷、デジタルライトプロセッシング(DLP)3D印刷、および連続液界面生成(continuous liquid interface production)(CLIP)などの各種方法が、タンク内光重合に使用される。
【0006】
[0006]SLA法は、照射源としてのレーザーの使用に基づく。レーザーは光架橋性組成物の表面に集中され、3D物体の横断面をなぞる。一般的に、ガルバノメーターと呼ばれる、一方はX軸上で他方はY軸上の、高速で稼働する2つのモーターが、レーザービームを印刷領域に指向させ、それによりその過程で組成物を固化させる。この方法において、物体は一連の点および線に、層ごとに分解される。この技術は、例えば文書WO2015/197495に記載されている。
【0007】
[0007]DLP法では、デジタルスクリーンプロジェクターが、光架橋性組成物の表面全体にわたって各層の単一の像を投影する。プロジェクターはデジタルスクリーンを有するため、各層の像は一連の正方画素であり、ゆえに各層はボクセルと呼ばれる小さな長方形の塊から構成される。この技術は、例えば文書WO2016/181149に記載されている。DLP法は、各層がレーザーで描画される代わりに一斉に曝露されるため、一部の部品についてより速い印刷時間を実現することを可能にする。SLA法よりは速いものの、DLP法は、大きな部品の印刷であれ、より小さいが多数の細部を有するいくつかの部品の印刷であれ、解像度と表面仕上げの質との間で折り合いをつけることを伴う。
【0008】
[0008]近年、別のタンク内光重合技術も開発されている:連続液界面生成(CLIP)。この技術も、光架橋性組成物を選択的に架橋させるための照射源の使用に基づく。しかし、前の2つの技術とは異なり、CLIP法は、液界面が常時存在するおかげで、層ごとに、しかし連続して実施される。ゆえにCLIP法は、SLAまたはDLP法よりもかなり速い印刷を可能にする。この技術は、例えば文書WO2014/126837に記載されている。
【0009】
[0009]文書US2017/0312729は、光架橋してエラストマーになりうる液体シリコーン組成物を使用するタンク内光重合法について記載している。この組成物は、アルケニル基を含むシロキサン、水素化物を含むシロキサン、および光活性化(photoactivable)触媒を含む。この組成物は、重付加反応により架橋可能である。重付加に基づくこの技術に関する問題点は、反応触媒作用が瞬間的ではなく、生成物がしばしば硬化後ステップ、すなわち後処理加熱ステップを必要とするという点である。
【0010】
[0010]他の種類のシリコーン組成物も架橋してエラストマーになりうる。文書WO2003/016403は、アクリル酸官能性を含む光架橋性シリコーン組成物について記載している。しかし、この反応は周囲の空気中の酸素により阻害されるため、この種類の組成物はタンク内架橋法全てに適合するわけではない。
【0011】
[0011]UV光および水架橋(moisture crosslinking)の両方を可能にする化学官能基を含む、「二重硬化」型のシリコーンエラストマー組成物も、文献、例えば文書US7105584に記載されている。しかし、二重硬化組成物は深さ方向の架橋に困難を示し、さらに、水架橋(humidity crosslinking)から生じる揮発性生成物が用途の範囲を限定する。ゆえに、これらをタンク光重合法において活用することはより困難である。
【0012】
[0012]ゆえに、シリコーンエラストマー物品を生成するための、改善されたタンク光重合法を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2015/197495
【特許文献2】WO2016/181149
【特許文献3】WO2014/126837
【特許文献4】US2017/0312729
【特許文献5】WO2003/016403
【特許文献6】US7105584
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[0013]これに関連して、本発明は、以下の目的のうちの少なくとも1つを満足させることを目的とする。
[0014]本発明の不可欠な目的のうちの1つは、シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法(methode de fabrication additive)(additive manufacturing method)を提供することである。
【0015】
[0015]本発明の不可欠な目的のうちの1つは、タンク内光重合によりシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法を提供することである。
[0016]本発明の不可欠な目的のうちの1つは、硬化後ステップを必要としないタンク内光重合によりシリコーンエラストマー物品を生成するための、付加製造法を提供することである。
【0016】
[0017]本発明の不可欠な目的のうちの1つは、容易に実施されうる、シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法を提供することである。
[0018]本発明の不可欠な目的のうちの1つは、良好なエラストマー特性および良好な機械的特性を有するシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法を提供することである。
【0017】
[0019]本発明の不可欠な目的のうちの1つは、光架橋性シリコーン組成物からシリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法を提供することである。
[0020]本発明の不可欠な目的のうちの1つは、シリコーンエラストマーにおいて光架橋可能なシリコーン組成物性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
[0021]本発明は第一に、シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法であって、以下のステップ:
i.光架橋性シリコーン組成物Yおよび照射源を活用するステップであって、前記光架橋性シリコーン組成物Yが、
a.一般式(I)
【0019】
【化1】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eは、カチオン重合性および/または架橋性の官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む基であり、カチオン重合性および/または架橋性の官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を介してケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧150、好ましくは2000≧a+b≧150である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンAであって、
前記オルガノポリシロキサンAは、カチオン重合および/または架橋しうる官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンAは、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA100g、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA、
b.任意選択で、一般式(I)
(式中、
a+b≦100、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンBであって、
前記オルガノポリシロキサンBは、カチオン重合および/または架橋しうる官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンBは、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンB、
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C、
d.任意選択で充填剤D、
e.任意選択で光増感剤E、および
f.任意選択で光吸収剤F
を含む、ステップ、
ii.照射源を使用し、光架橋性シリコーン組成物Yの少なくとも一部に選択的に照射して、シリコーンエラストマー物品の一部を形成するステップ、ならびに
iii.ステップii)を十分な回数繰り返して、シリコーンエラストマー物品を生成するステップ
を含む、付加製造法に関する。
【0020】
[0022]長鎖、すなわち少なくとも150のシロキシル単位を有し、かつカチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量が小さい直鎖オルガノポリシロキサンAの存在により、タンク内光重合によってシリコーンエラストマー物品を製造することが可能となる。直鎖オルガノポリシロキサンAにより、良好なエラストマー特性、特に高い破断伸びを得ることが可能となる。
【0021】
さらに、この付加製造法は実施するのが容易であり、硬化後ステップ、すなわち後処理加熱ステップを必要としない。
[0023]本発明は、本出願に記載される方法により得られるシリコーンエラストマーから作製される物品にも関する。
【0022】
[0024]本発明は、
a.一般式(I)
【0023】
【化2】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eは、カチオン重合性および/または架橋性の官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む基であり、カチオン重合性および/または架橋性の官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を介してケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧200、好ましくは2000≧a+b≧200である)
を有する少なくとも75重量%の直鎖オルガノポリシロキサンA’であって、
前記オルガノポリシロキサンA’は、カチオン重合および/または架橋しうる官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンA’は、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100g、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA’、
b.一般式(I)
(式中、
a+b≦150、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する1~20重量%の間(entre 1 et 20% en poids)(between 1 and 20% in weight)の直鎖オルガノポリシロキサンB’であって、
前記オルガノポリシロキサンB’は、カチオン重合および/または架橋しうる官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンB’は、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB’100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、の直鎖オルガノポリシロキサンB’、ならびに
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C
を含む光架橋性シリコーン組成物Y’にも関する。
【0024】
[0025]本発明は、シリコーンエラストマー物品の付加製造のための光架橋性シリコーン組成物Y’の使用にも関する。
[0026]最後に、本発明は光架橋性シリコーン組成物Y’を架橋させることにより得られるシリコーンエラストマーにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法
[0027]まず本発明は、シリコーンエラストマー物品を生成するための付加製造法であって、以下のステップ:
i.光架橋性シリコーン組成物Yおよび照射源を活用するステップであって、前記光架橋性シリコーン組成物Yが、
a.一般式(I)
【0026】
【化3】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eは、カチオン重合性および/または架橋性の官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む基であり、カチオン重合性および/または架橋性の官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を介してケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧150、好ましくは2000≧a+b≧150である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンAであって、
前記オルガノポリシロキサンAは、カチオン重合および/または架橋しうる官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンAは、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA100g、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA、
b.任意選択で、一般式(I)
(式中、
a+b≦100、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンBであって、
前記オルガノポリシロキサンBは、カチオン重合および/または架橋しうる官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンBは、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンB、
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C、
d.任意選択で充填剤D、
e.任意選択で光増感剤E、および
f.任意選択で光吸収剤F
を含む、ステップ、
ii.照射源を使用し、光架橋性シリコーン組成物Yの少なくとも一部に選択的に照射して、シリコーンエラストマー物品の一部を形成するステップ、ならびに
iii.ステップii)を十分な回数繰り返して、シリコーンエラストマー物品を生成するステップ
を含む、付加製造法に関する。
【0027】
[0028]一般的に、全ての付加製造法は、物体を描写することが可能なコンピューターデータソースまたはコンピュータープログラムである共通の出発点を有する。このコンピューターデータソースまたはコンピュータープログラムは、実在のまたは仮想の物体に基づいていてよい。例えば、実在の物体が3Dスキャナーを使用してスキャンされ、得られたデータがコンピューターデータソースまたはコンピュータープログラムを生成するために使用されてよい。代わりに、コンピューターデータソースまたはコンピュータープログラムがゼロから設計されてもよい。
【0028】
[0029]コンピューターデータソースまたはコンピュータープログラムは通常、光造形(STL)形式ファイルに変換されるが、その他のファイル形式も使用可能である。ファイルは概して、物体を数百の、数千の、さらには数百万の「層」に分割するため、ファイルおよび任意選択でユーザー入力を使用する3D印刷ソフトウェアによって読み込まれる。通常、3D印刷ソフトウェアは例えばG-コードの形態で命令を機械に転送し、これが3Dプリンターによって読み込まれ、次いで、通常は層ごとに物体を製造する。
【0029】
[0030]有利には付加製造法は、特にレーザー光造形(SLA)印刷、デジタルライトプロセッシング(DLP)、または連続液界面生成(つまりCLIP)によるタンク内光重合付加製造法である。これらの技術およびそれに関連する器材は、適切な技術および対応する3Dプリンターを選択する方法を知る当業者に周知である。これらの技術および器材は、例えば以下の文書:WO2015/197495、US5236637、WO2016/181149およびWO2014/126837に記載されている。
【0030】
[0031]照射源は、光架橋性シリコーン組成物Yを光架橋させることが可能な照射源であってよい。有利には、照射源は光源、好ましくは紫外(UV)、可視、または赤外(IR)光源である。一般的に、UV光源は波長200~400nmの間を有し、可視光源は400~700nmの間を有し、IR光源は波長700nm超、例えば700nm~1mmの間、または700~10,000nmの間を有する。光源はランプでもレーザーでもよい。好ましくは、照射源はUVランプ、UVレーザー、可視光ランプ、可視光レーザー、IRランプおよびIRレーザーから選択される。使用可能な照射源の中では、シリコーン組成物の光重合反応に通常使用される水銀ランプについて言及がなされうる。方法の特定の実施形態において、照射源はLEDランプ、好ましくは波長355、365、385または405nmを有するLEDランプである。
【0031】
[0032]照射源の出力は、少なくとも、1、10または50mW/cm2であってよい。これは1~1000mW/cm2の間、好ましくは10~500mW/cm2の間、より好ましくは50~200mW/cm2の間であってよい。
【0032】
[0033]特定の実施形態において、照射侵入深さ(Dp)は500μm未満であり、好ましくは、侵入深さは50~500μmの間、より好ましくは100~400μmの間である。
【0033】
[0034]特定の実施形態において、方法は二重硬化型の組成物を活用しない。特に、方法は重付加により架橋されうる組成物を活用しない。
[0035]特定の実施形態において、方法は硬化後ステップを実施しない。
【0034】
[0036]好ましくは、光架橋性シリコーン組成物Yはタンク内で活用され、シリコーンエラストマー物品が支持体、好ましくは移動する支持体上で生成される。支持体は任意の種類の支持体であってよい。有利には、支持体は、移動するプラットフォームなどの3Dプリンターのプラットフォーム、または光架橋性シリコーン組成物Yの既に架橋した1つもしくは複数の層である。
【0035】
[0037]方法の第1の実施形態によれば、付加製造法は層ごとに実施され、各層は印刷される物体の横断面を表す。この第1の実施形態は、レーザー光造形(SLA)印刷、およびデジタルライトプロセッシング(DLP)に特に好適である。この第1の実施形態において、照射ステップii)は以下の下位ステップ:
a.光架橋性シリコーン組成物Yの層を支持体に堆積させるステップ、
b.照射源を層に選択的に照射して、生成されるシリコーンエラストマー物品の第1の横断面を形成するステップ、
c.ステップb)で生成された第1の横断面に、光架橋性シリコーン組成物Yのさらなる層を堆積させるステップ、および
d.さらなる層に選択的に照射して、生成されるシリコーンエラストマー物品のさらなる横断面を形成するステップ
を含んでいてよい。
【0036】
[0038]ステップa)において光架橋性シリコーン組成物Y層が堆積する支持体は、任意の種類の支持体であってよい。好ましくは、これは移動する支持体である。有利には、支持体は、移動するプラットフォームなどの3Dプリンターのプラットフォームである。支持体は、光架橋性シリコーン組成物Yの既に架橋した1つまたは複数の層を含んでいてもよい。
【0037】
[0039]好ましくは、ステップd)において、形成されるさらなる横断面は、ステップb)において形成されるシリコーンエラストマー物品の第1の横断面に接着する。
[0040]有利には、光架橋性シリコーン組成物Yの層の厚さは0.1~500μmの間、好ましくは5~400μmの間、好ましくは10~300μmの間、より好ましくは10~100μmの間である。
【0038】
[0041]特定の実施形態において、光架橋性シリコーン組成物Y層の照射時間は少なくとも0.001秒である。好ましくは、照射時間は0.001秒~1時間の間、より好ましくは0.01秒~5分の間である。
【0039】
[0042]これらの様々な設定は、意図される結果に従って調節されてよい。
[0043]光架橋性シリコーン組成物Yの層を堆積させるステップは、支持体を移動させることにより、または新たな光架橋性シリコーン組成物Y層を堆積させるブレード、もしくはドクターブレードを使用して実施されてよい。
【0040】
[0044]好ましくは、照射源がレーザーである場合(例えば、SLA法)、レーザーは選択的照射をもたらすように、生成されるシリコーンエラストマー物品の横断面をなぞり、照射源がランプである場合(例えば、DLP法)、光架橋性組成物Yの表面全体に投影されるのは横断面の単一の像である。
【0041】
[0045]この第1の実施形態において、2つの代案が可能である。付加製造は表を上にして、または逆転されて実施されてよい。これら2つの変形形態は、文書US5236637に記載されている。
【0042】
[0046]この第1の実施形態の第1の代案において、付加製造は表を上にして実施される。光架橋性シリコーン組成物Yはタンク内に含まれ、照射源は光架橋性シリコーン組成物Y表面に集中される。照射される層は、支持体と光架橋性シリコーン組成物Yの表面との間の層である。この第1の代案では、光架橋性シリコーン組成物Yの層を堆積させるステップが、層の厚さに等しい間隔分だけ支持体をタンク内に下降させることにより実施される。次いでブレード、またはドクターブレードが、光架橋性シリコーン組成物Yの表面をさらってよく、これにより表面をならすことが可能となる。
【0043】
[0047]この第1の実施形態の第2の代案において、付加製造は逆転される。タンクは透明な底および非接着性の表面を含み、照射源はタンクの透明な底に集中される。ゆえに、照射される層は、タンクの底と支持体との間に位置する層である。この場合、光架橋性シリコーン組成物Y層の堆積は、光架橋性シリコーン組成物Yがそれ自体をタンク底と支持体との間に挿入させるように、支持体を上昇させることにより実施される。タンク底と支持体との間隔は、層の厚さに相当する。
【0044】
[0048]有利には、付加製造法は、付加製造が表を上にして実施される、タンク内デジタルライトプロセッシング(DLP)光重合による付加製造法である。光架橋性シリコーン組成物Y層の堆積は、層の厚さに等しい間隔分だけ支持体をタンク内に下降させることにより実施され、ブレード、またはドクターブレードが、光架橋性シリコーン組成物Yの表面をさらう。
【0045】
[0049]方法の第2の実施形態によれば、付加製造法は連続して実施される。この第2の実施形態は、文書WO2014/126837に記載されている連続液界面生成(CLIP)による生成に特に好適である。この第2の実施形態において、照射ステップii)は、同時に起こる以下の下位ステップ
a.照射源を、光架橋性シリコーン組成物Yの少なくとも一部に選択的に照射して、シリコーンエラストマー物品の一部を形成するステップ、および
b.ステップa)で形成されたシリコーンエラストマー物品の一部を、照射軸に沿って照射源から離すように移動させるステップ
を含みうる。
【0046】
[0050]有利には、ステップa)において、シリコーンエラストマー物品の一部は支持体上で形成され、ステップb)の間、同時に移動されるのは支持体である。
[0051]好ましくは、この第2の実施形態において、付加製造は逆転される。タンクは透明な底を含み、照射源はタンクの透明な底に集中される。酸素透過性の膜のおかげで、光重合は光架橋性シリコーン組成物Yと支持体との界面でのみ起こり、タンクの底と界面との間の光架橋性組成物Yは光重合しない。ゆえに、光架橋性組成物Yに照射し、同時に、形成されたシリコーンエラストマー物品の一部をタンクから移動させることにより、シリコーンエラストマー物品が形成される連続的な液界面を維持することができる。
【0047】
[0052]シリコーンエラストマー物品が得られると、未架橋の光架橋性シリコーン組成物Yを除去するために、シリコーンエラストマー物品をすすぐことができる。
[0053]シリコーンエラストマー物品が得られると、物品表面の質を改善するためにさらなるステップを実施することもできる。例えば、サンドブラストは目に見える明確な層を減少させるか除去するための既知の方法である。滑らかな外観を実現するために、加熱またはUV線により架橋可能なLSRまたはRTVシリコーン組成物でシリコーンエラストマー物品を吹き付けするかコーティングすることも使用可能である。得られた物品の表面処理をレーザーで実施することもできる。
【0048】
[0054]医学的用途においては、得られたシリコーンエラストマー物品を滅菌することができる。物品の滅菌は、例えば温度100℃超で、乾燥雰囲気下で、または蒸気を有するオートクレーブ内で加熱により実施されうる。滅菌は、エチレンオキシドとともにガンマ線によっても、または電子ビームによっても実施されうる。
【0049】
[0055]本発明は、本出願に記載される方法により得られるシリコーンエラストマーから作製される物品にも関する。
[0056]得られるシリコーンエラストマー物品は、単純な形状を有する物品でも複雑な形状を有する物品でもよい。物品は、例えば、シリコーン型、マスク、パイプ、心臓、腎臓、前立腺などの解剖模型(機能的または非機能的)、外科医もしくは教職のための模型、矯正具、義歯、アライナー、マウスガードなどの補綴、または長期インプラント、補聴器、ステント、喉頭インプラントなどの様々なクラスのインプラントであってよい。
【0050】
[0057]得られるシリコーンエラストマー物品は、ロボット工学用のジャック、封止材、自動車もしくは航空産業用の機械部品、電子機器用の部品、部品を包むための部品、防振材、衝撃遮断材または遮音材であってもよい。
【0051】
[0058]光架橋性シリコーン組成物Y
[0059]方法において活用される光架橋性シリコーン組成物Yは、
a.一般式(I)
【0052】
【化4】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eは、カチオン重合性および/または架橋性の官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む基であり、カチオン重合性および/または架橋性の官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を介してケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧150、好ましくは2000≧a+b≧150である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンAであって、
前記オルガノポリシロキサンAは、カチオン重合および/または架橋しうる官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンAは、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA100g、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA、
b.任意選択で、一般式(I)
(式中、
a+b≦100、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンBであって、
前記オルガノポリシロキサンBは、カチオン重合および/または架橋しうる官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンBは、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンB、
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C、
d.任意選択で充填剤D、
e.任意選択で光増感剤E、ならびに
f.任意選択で光吸収剤F
を含む。
【0053】
[0060]「光架橋性シリコーン組成物Yを活用すること」により、光架橋性シリコーン組成物Yを使用することが意図される。この光架橋性シリコーン組成物Yは、当業者に既知の方法に従って調製されてよい。有利には、光架橋性シリコーン組成物Yは、例えば手動でまたは高速ミキサーで、全ての成分を混合することにより調製される。成分が混合されると、光架橋性シリコーン組成物Yを脱気することができる。
【0054】
[0061]オルガノポリシロキサンAのカチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量は、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA100g(inferieure ou egale a 18 mmol/100g d’organopolysiloxane A)(less than or equal to 18 mmol/100 g of organopolysiloxane A)、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA100gである。カチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量は、例えば0.5~18の間のmmol/オルガノポリシロキサンA100g、または1~15の間のmmol/オルガノポリシロキサンA100gであってよい。
【0055】
[0062]特定の実施形態において、式Aのオルガノポリシロキサンは、a+b≧200、好ましくは1000≧a+b≧200である、式(I)のオルガノポリシロキサンである。
【0056】
[0063]オルガノポリシロキサンAは、シロキシル単位D:R SiO2/2およびD:ERSiO2/2からなる群から選択されるシロキシル単位「D」、ならびにシロキシル単位M:ER SiO1/2からなる群から選択されるシロキシル単位「M」からなる。記号RおよびEは先に記載されている通りである。
【0057】
[0064]直鎖オルガノポリシロキサンAは、好ましくはカチオン重合性および/または架橋性の官能基を含む2つの基Eを含む。
[0065]有利には、オルガノポリシロキサンAは、a=0である式(I)を有するオルガノポリシロキサンである。そうするとカチオン重合性および/または架橋性の官能基を含む基Eは鎖の末端となり、オルガノポリシロキサンAはx≧150、好ましくはx≧200の一般式MDxMを有しうる。
【0058】
[0066]オルガノポリシロキサンAは、25℃で1~100,000mPa.sのオーダーの、一般的に25℃で10~70,000mPa.sのオーダーの、好ましくは25℃で10~30,000mPa.sのオーダーの、さらにより好ましくは25℃で500~20,000mPa.sのオーダーの絶対粘度を有する油であってよい。
【0059】
[0067]本発表におけるくだんの粘度は全て、「ニュートン性」と呼ばれる25℃での絶対粘度規模、すなわち、測定粘度が速度勾配とは無関係となるのに十分な小ささのせん断速度勾配で、Brookfield粘度計を用いてそれ自体は既知の方式で測定される絶対粘度に相当する。
【0060】
[0068]光架橋性シリコーン組成物Yは、光架橋性シリコーン組成物Yの総重量に対して少なくとも70重量%、好ましくは70~99重量%の間、より好ましくは75~90重量%の間のオルガノポリシロキサンAを含みうる。光架橋性シリコーン組成物Yは、少なくとも75重量%のオルガノポリシロキサンAを含みうる。
【0061】
[0069]光架橋性シリコーン組成物Yは、一般式(I)
(式中、
a+b≦100、好ましくは1≦a+b≦100である)
の直鎖オルガノポリシロキサンBを含みえて、
前記オルガノポリシロキサンBは、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する。
【0062】
[0070]直鎖オルガノポリシロキサンBは、オルガノポリシロキサンAよりも短い鎖、およびより高いモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する。これにより、方法の終わりに得られるシリコーンエラストマー物品の機械的特性を改善しつつ、良好なエラストマー特性を維持することが可能となる。実際に、得られるシリコーンエラストマー物品の破断係数および硬さが増大し、一方で高い破断伸びが維持される。
【0063】
[0071]オルガノポリシロキサンBのカチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量は、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB100g、好ましくは50mmol以上/オルガノポリシロキサンB100g、より好ましくは80mmol以上/オルガノポリシロキサンB100gである。オルガノポリシロキサンBのカチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量は、例えば20~500の間のmmol/100g、または50~250の間のmmol/オルガノポリシロキサンB100gであってよい。
【0064】
[0072]オルガノポリシロキサンBは、シロキシル単位D:R SiO2/2およびD:ERSiO2/2からなる群から選択されるシロキシル単位「D」、ならびにシロキシル単位M:ER SiO1/2からなる群から選択されるシロキシル単位「M」からなる。記号RおよびEは先に記載されている通りである。
【0065】
[0073]直鎖オルガノポリシロキサンBは、好ましくはカチオン重合性および/または架橋性の官能基を含む2つの基Eを含む。
[0074]特定の実施形態において、オルガノポリシロキサンBは、a+b≦75、好ましくは1≦a+b≦75である式(I)のオルガノポリシロキサンである。
【0066】
[0075]有利には、オルガノポリシロキサンBは、a=0である式(I)を有するオルガノポリシロキサンである。そうするとカチオン重合性および/または架橋性の官能基を含む基Eは鎖の末端となり、オルガノポリシロキサンBはx≦100、好ましくはx≦75の一般式MDxMを有しうる。
【0067】
[0076]オルガノポリシロキサンBは、25℃で1~100,000mPa.sのオーダーの、一般的に25℃で5~70,000mPa.sのオーダーの、好ましくは25℃で10~1,000mPa.sのオーダーの絶対粘度を有する油であってよい。
【0068】
[0077]光架橋性シリコーン組成物Yは、光架橋性シリコーン組成物Yの総重量に対して1~20重量%の間、好ましくは5~15重量%の間のオルガノポリシロキサンBを含みうる。
【0069】
[0078]基Eのカチオン重合性および/または架橋性の官能基は、好ましくはエポキシ、ビニルオキシ、オキセタンおよびジオキソラン官能基の中から選択される。有利には、基Eのカチオン重合性および/または架橋性の官能基は、エポキシまたはビニルオキシ官能基、好ましくはエポキシ官能基である。
【0070】
[0079]基Eのカチオン性経路による重合性および/または架橋性の官能基がエポキシ官能基である場合、オルガノポリシロキサンAおよび/またはオルガノポリシロキサンBの基Eは、好ましくは以下の群から選択される:
【0071】
【化5】
波線は、基Eがオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合している箇所を表す。
【0072】
[0080]基Eのカチオン性経路による重合性および/または架橋性の官能基がビニルオキシ官能基である場合、オルガノポリシロキサンAおよび/またはオルガノポリシロキサンBの基Eは、式(II)のものである:
-G-O-CH=CH(II)
(式中、Gは2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を表す)。
【0073】
[0081]好ましくは、ビニルオキシ基は以下の群から選択される:
-(CH-O-CH=CH
-O-(CH-O-CH=CH、および
-(CH-O-R11-O-CH=CH(式中、R11はC~C12分岐鎖または直鎖アルキレン、およびC~C12アリーレン、好ましくはフェニレンから選択される二価の基であり、アリーレンは任意選択で、1つ、2つまたは3つのC~Cアルキル基で置換されている)。
【0074】
[0082]好ましくは、オルガノポリシロキサンAおよび/またはオルガノポリシロキサンBは、式(III)のものである:
【0075】
【化6】
(式中、Rは先に記載されている通りであり、R1は好ましくはメチル基である)。
【0076】
オルガノポリシロキサンAの場合、b≧150、好ましくはb≧200であり、オルガノポリシロキサンBの場合、b≦100、好ましくはb≦75である。
[0083]有利には、カチオン性光開始剤Cは、オニウム塩から、好ましくはジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、アルコキシピリジニウム塩、トリアリールスルホニウム(triarylesulfonium)塩、スルホニウム塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、カチオン性光開始剤Cはジアリールヨードニウム塩である。
【0077】
[0084]オニウム塩については、UV線吸収に関与するのはカチオン性部分であり、一方、アニオン性部分は、形成される酸の強度、およびその結果、重合の開始速度を決定する。その求核特性が弱いほど、光分解反応は速くなる。ゆえにカチオン性光開始剤に使用される各種対イオンは、その反応性に従って分類されうる(徐々に低下):(CB>SbF >>AsF >PF >BF 。オニウム塩はホウ酸オニウムであってよい。ホウ酸オニウムは、文書US7041710B2に記載されているものから選択されてよい。
【0078】
[0085]オニウム塩は好ましくはホウ酸ヨードニウムである。有利には、ホウ酸ヨードニウムは以下から選択される:
A)そのホウ酸塩のカチオン性実体が以下から選択されるもの:
式(IV)オニウム塩、
[(R-I-(R(IV)
[式中、
- 基Rは、同一または異なっており、C~C20アリール基、または5~15の環原子を有するヘテロアリール基を表し、
- R基は、同一または異なっており、Rと同じ定義を満たすか、またはC~C30分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、またはC~C30分岐鎖もしくは直鎖アルケニル基を表し、
前記基RおよびRは任意選択で、1または数個の:
i)C~C30分岐鎖または直鎖アルキル基、
ii)OR12基、
iii)ケトン基-(C=O)-R12
iv)エステルまたはカルボン酸基-(C=O)-O-R12
v)メルカプトSR12基、
v)メルカプトSOR12基、
vii)任意選択で、1もしくは数個のC~C30分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、OR12基、-CN基、および/または-(C=O)-O-R12基で置換された、C~C30分岐鎖または直鎖アルケニル基
(R12は、水素原子、C~C25分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C~C30アリール基、または、アルキル部分がC~C25分岐鎖もしくは直鎖であり、アリール部分がC~C30であるアルキルアリール基からなる群から選択される基である)、
viii)ニトロ基、
ix)塩素原子、
x)臭素原子、および/または
xi)シアノ基、
で置換されており、
- nは1~v+1の範囲の整数であり、vはヨウ素の原子価であり、
- mは0~v-1の範囲の整数であり、n+m=v+1である]、および
B)そのアニオン性ホウ酸塩実体が式(V)を有するもの:
[BZ (V)
(式中、
- aおよびbは0≦a≦3、1≦b≦4などの整数であり、a+b=4であり、
- Z記号は、同一であっても異なっていても:
i)0≦a≦3で、塩素および/もしくはフッ素から選択されるハロゲン原子、または
ii)0≦a≦2で、OH官能基
を表し、
- R基は、同一であっても異なっていても:
i)nが1~20の間の整数である、-CF、-OCF、-NO、CN、-SO14、-O(C=O)-R14、-O-C2n+1、および-CF2n+1などの少なくとも1つの電子求引性基で置換された、もしくは少なくとも2つのハロゲン原子、特にフッ素で置換されたフェニル基、または
ii)任意選択で少なくとも1つのハロゲン原子、特にフッ素原子、または-CF、-OCF、-NO、CN、-SO14、-O(C=O)-R14、-O-C2n+1、および-CF2n+1などの電子求引性基で置換された、ビフェニル、ナフチルなどの少なくとも2つの芳香環を含むアリール基
を表し、
14は-O-C2n+1であり、-C2n+1において、nは1~20の間の整数である)。
【0079】
[0086]ホウ酸アニオンは、好ましくは[B(C、[(CBF、[B(CCF、[B(COCF、[B(C(CF、[B(C、[CBF、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0080】
[0087]特定の実施形態によれば、ホウ酸ヨードニウムは、式(VI)の化合物から選択される:
【0081】
【化7】
(式中、
- 記号RおよびRは同一または異なっており、それぞれが、10~30の炭素原子、好ましくは10~20の炭素原子、さらにより好ましくは10~15の炭素原子、さらにより好ましくは10~13の炭素原子、さらにより好ましくは12の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖アルキル基を表し、
- cおよびc’は、1~5の範囲の、同一または異なる整数であり、好ましくはcおよびc’は1に等しく、
- Z、a、Rおよびbは式(V)で先に記載されている通りである)。
【0082】
[0088]特定の実施形態によれば、ホウ酸ヨードニウムは、式(VII)の化合物から選択される:
【0083】
【化8】
(式中、
- 記号RおよびRは同一または異なっており、それぞれが、10~30の炭素原子を有する、好ましくは10~20の炭素原子、さらにより好ましくは10~15の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖アルキル基を表す)。
【0084】
[0089]好ましい実施形態によれば、ホウ酸ヨードニウムは、式(VIII)の化合物から選択される。
【0085】
【化9】
[0090]オニウム塩は、悪臭の害を回避するためGuerbetアルコールと組み合わせて使用されうる。Guerbetアルコールは、式(IX)のものであってよい:
-CH(CHOH)-R10(IX)
(式中、
記号RおよびR10は同一または異なっており、それぞれが、4~12の炭素原子を有するアルキル基を表し、Guerbetアルコールは総数10~20の炭素原子を有する)。
【0086】
[0091]特定の実施形態において、カチオン性光開始剤Cは、以下のオニウム塩の中から選択される:
A)そのカチオン性実体が以下から選択されるもの:
式(X)オニウム塩、
[(R19)-I-(R20)](X)
[式中、
基R19は式(XI)を有する基であり、
【0087】
【化10】
- 基R19は、3~8位のうちの1つにおける結合によりヨウ素原子に結合しており、そうするとこの位置に存在するR21~R26置換基は存在せず、
- 存在する置換基R21~R26は、同一または異なっており、水素原子、またはC~C12分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、またはケトン基-(C=O)-R15、または-OR15基を表し、
- R15は、水素原子、C~C25分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C~C25分岐鎖もしくは直鎖ハロアルキル基、C~C30アリール基、または、アルキル部分がC~C25分岐鎖もしくは直鎖であり、アリール部分がC~C30であるアルキルアリール基からなる群から選択される基であり、前記アリール基および前記アルキルアリール基は、任意選択で1または数個のハロゲン原子で置換されており、
- R20基は、C~C20アリール基、またはアルキル部分がC~C25分岐鎖もしくは直鎖であり、アリール部分がC~C30であるアルキルアリール基を表し、
基R20は任意選択で、1または数個の:
i)C~C30分岐鎖または直鎖アルキル基、
i)C~C30分岐鎖または直鎖ハロアルキル基、
iii)OR16基、
iv)ケトン基-(C=O)-R16
v)エステルまたはカルボン酸基-(C=O)-O-R16
(R16は、水素原子、C~C25分岐鎖もしくは直鎖アルキル基、C~C25分岐鎖もしくは直鎖ハロアルキル基、C~C30アリール基、または、アルキル部分がC~C25分岐鎖もしくは直鎖であり、アリール部分がC~C30であるアルキルアリール基からなる群から選択される基である)
iv)ニトロ基、
vii)ハロゲン原子
で置換されている]、および
B)そのアニオン性実体が、SbF 、AsF 、PF 、ClOまたは式(V)のホウ酸塩から選択されるもの;
[BZ (V)
(式中、Z、a、Rおよびbは式(V)で先に記載されている通りである)。
【0088】
[0092]好ましくは、
19基は3位における結合によりヨウ素原子に結合しており、そうするとR21基は存在せず、
- R22はメチル基に相当し、
- R23は水素原子、メトキシ基、ブトキシ基、またはベンジルオキシ基に相当し、
- R24は水素原子に相当し、
- R25は水素原子、ベンジルオキシ基、メトキシ基、ブトキシ基、またはエトキシ基に相当し、
- R26はH、ベンジルオキシ基、またはメトキシ基に相当し、
基R20はフェニル基、p-メチルフェニル基、またはナフチル基を表す。
【0089】
[0093]ホウ酸アニオンは、好ましくは[B(C、[(CBF、[B(CCF、[B(COCF、[B(C(CF、[B(C、[CBF、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0090】
[0094]有利には、式(X)を有するオニウム塩は式(XII)を有する化合物であり、
【0091】
【化11】
アニオン性実体はSbF 、PF 、および[B(Cから選択される。
【0092】
[0095]特定の実施形態において、カチオン性光開始剤Cは以下のオニウム塩の中から選択される:
A)そのカチオン性実体が以下から選択されるもの:
式(XIII)オニウム塩、
【0093】
【化12】
(式中、
- 置換基R31、R32およびR33は同一または異なっており、それぞれがH、C~C12分岐鎖もしくは直鎖、-O-R35、-CN、または-(C=O)-O-R35アルキル基を表し、
- R34は-O-R35を表し、
35はHおよびC~C12分岐鎖または直鎖アルキルから選択される基である)、および
B)そのアニオン性実体が、SbF 、AsF 、PF 、ClOまたは式(V)のホウ酸塩から選択されるもの
[BZ (V)
(式中、Z、a、Rおよびbは式(V)で先に記載されている通りである)。
【0094】
[0096]「5~15の環原子を有するヘテロアリール」により、5~15の環原子を有し、1または数個の縮合環を含み、環のうちの少なくとも1つが芳香族であり、環原子のうちの少なくとも1つがN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、芳香族多価不飽和環系が意図される。
【0095】
[0097]本発明によれば、「ハロゲン原子」により、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される原子が意図される。
[0098]本発明によれば、「ハロアルキル」により、1または数個のハロゲン原子で置換されたアルキル基が意図される。
【0096】
[0099]特定の実施形態によれば、カチオン性光開始剤Cの量は、光架橋性シリコーン組成物Yの総重量に対して0.05~10重量%の間、好ましくは0.1~5重量%の間、より好ましくは0.15~3重量%の間である。
【0097】
[0100]特定の実施形態によれば、光架橋性シリコーン組成物Yは、好ましくは、白金、パラジウム、ルテニウムまたはロジウムベースの触媒を不含である。「不含」により、光架橋性シリコーン組成物Yが、組成物の総重量に対して0.1重量%未満の、好ましくは0.01重量%未満の、より好ましくは0.001重量%未満の、白金、パラジウム、ルテニウムまたはロジウムベースの触媒を含むことが意図される。
【0098】
[0101]光架橋性シリコーン組成物Yは充填剤Dを含みうる。充填剤Dにより、方法が実施されると得られるシリコーンエラストマー物品の機械的特性を改善しつつ、良好なエラストマー特性を維持することが可能となる。特に充填剤Dにより、得られるシリコーンエラストマー物品の破断係数を改善しつつ、高い破断伸びを維持することが可能となる。
【0099】
[0102]任意選択で、提供される充填剤Dは、好ましくは無機充填剤である。充填剤Dは、0.1μm未満の平均粒子(pitem)直径を有する非常に微粉化された製品であってよい。充填剤Dは特にシリカ質であってよい。シリカ質材料に関しては、これらは補強性または半補強性充填剤の役割を果たすことができる。補強性シリカ質充填剤は、コロイド状シリカ、燃焼および沈殿シリカ粉末またはこれらの混合物から選択される。これらの粉末は一般的に、0.1μm(マイクロメートル)未満の平均粒子(pitem)サイズ、および30m/g超、好ましくは30~350m/gの間のBET比表面積を有する。珪藻土または粉砕石英などの半補強性シリカ質充填剤も使用可能である。これらのシリカは、それ自体として、またはこの目的に通常使用される有機ケイ素化合物で処理された後に組み込まれてよい。これらの化合物には、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンなどのメチルポリシラザン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシランなどのクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどのアルコキシシランがある。非シリカ質無機材料に関しては、これらは半補強性または増量性無機充填剤として作用しうる。単独で、または混合物として使用可能な、このような非シリカ質充填剤の例は、任意選択で有機酸または有機酸エステルで表面処理された炭酸カルシウム、焼成粘土、ルチル型酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコン、またはマグネシウムの酸化物、各種形態のアルミナ(水和または非水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウムおよびガラスマイクロビーズである。これらの充填剤は粗く、一般的に、0.1μm超の平均粒子直径、および一般的に30m/g未満の比表面積を有する。これらの充填剤は、この目的に通常使用される各種有機ケイ素化合物を用いての処理により表面改質されていてよい。重量の観点からは、光架橋性シリコーン組成物Yの全ての構成成分に対して0.1重量%~50重量%、好ましくは1重量%~20重量%の充填剤量を活用することが好ましい。
【0100】
[0103]有利には、光架橋性シリコーン組成物Yは、0.1~15重量%の間、好ましくは1~12%の間の充填剤Dを含む。
[0104]光架橋性シリコーン組成物Yは光増感剤Eを含んでいてよい。光増感剤Eは照射からエネルギーを吸収し、それをエネルギーまたは電子としてカチオン性光開始剤Cに渡す。有利には、光増感剤はカチオン性光開始剤Cよりも長い波長の照射エネルギーを吸収し、これにより光開始剤カチオン性Cが活性化される波長よりも長い波長を有する照射源を使用することが可能となる。光増感剤Eを使用することは、照射源としてのLEDランプ、例えば波長355、365、385または405nmを有するLEDランプの使用に特に好適である。
【0101】
[0105]有利には、光増感剤Eは、ナフタレン類、アントラセン類、ピレン類、フェノチアジン類、キサントン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン、カルバゾール類、アントラキノン類、フルオレノン類、アシルホスフィンオキシド類、カンファーキノンおよびこれらの混合物から選択される。
【0102】
[0106]特定の実施形態によれば、光増感剤Eは、アントラセン、ナフタレン、ペリレン、ピレン、フェノチアジン、9,10-フェナントレンキノン(henantrenequinone)、ビアントロン、アントロン、9-ブトキシアントラセン、1-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、1-エチル-9-エトキシアントラセン、1-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンゾフェノンおよびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、光増感剤Eは2-イソプロピルチオキサントンである。
【0103】
[0107]光架橋性シリコーン組成物Yは、光架橋性シリコーン組成物Yの総重量に対して0.001~1重量%の間、好ましくは0.002~0.5重量%の間、さらにより好ましくは0.005~0.1重量%の間の光増感剤Eを含みうる。光架橋性シリコーン組成物Yは、0.001~0.1重量%の間の光増感剤Eを含みうる。
【0104】
[0108]光架橋性シリコーン組成物Yは光吸収剤Fを含みうる。光吸収剤Fにより、架橋性シリコーン組成物Y層への照射侵入を減少させ、ゆえに得られるシリコーンエラストマー物品の解像度を改善することが可能となる。光吸収剤Fにより、エラストマーシリコーンY層への照射侵入深さ(Dp)を制御することが可能となる。
【0105】
[0109]光架橋性シリコーン組成物Yは、光架橋性シリコーン組成物Yの総重量に対して0.01~5重量%の間の光吸収剤Fを含み、好ましくは、光吸収剤Fは、TiO、ZnO、ヒドロキシフェニル-s-トリアジン類、ヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート類、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0106】
[0110]光架橋性シリコーン組成物Yは、有機または無機色素Gも含みうる。
[0111]光架橋性シリコーン組成物Yは、エポキシ官能基および/またはビニルオキシ官能基を含む少なくとも1つの有機化合物Hも含みうる。
【0107】
[0112]光架橋性シリコーン組成物Yは、25℃で1~100,000mPa.sのオーダーの、一般的に25℃で10~50,000mPa.sのオーダーの、好ましくは25℃で100~15.000mPa.sのオーダーの絶対粘度を有しうる。
【0108】
[0113]有利には、方法において活用される光架橋性シリコーン組成物Yは、
a.一般式(I)
【0109】
【化13】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eはエポキシ官能基を含む基であり、エポキシ官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基によりケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧150、好ましくは2000≧a+b≧150である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンAであって、
前記オルガノポリシロキサンAは、エポキシ官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンAは、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA100g、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA100gのモル含量のエポキシ官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA
b.任意選択で、一般式(I)
(式中、
a+b≦100、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する少なくとも1つの直鎖オルガノポリシロキサンBであって、
前記オルガノポリシロキサンBは、エポキシ官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンBは、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB100gのモル含量のエポキシ官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンB
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C、
d.任意選択で充填剤D、
e.任意選択で光増感剤E、ならびに
f.任意選択で光吸収剤F
を含む。
【0110】
[0114]光架橋性シリコーン組成物Y’
[0115]本発明は、
a.一般式(I)
【0111】
【化14】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eは、カチオン重合性および/または架橋性の官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む基であり、カチオン重合性および/または架橋性の官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を介してケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧200、好ましくは2000≧a+b≧200である)
を有する少なくとも75重量%の直鎖オルガノポリシロキサンA’であって、
前記オルガノポリシロキサンA’は、カチオン重合および/または架橋しうる官能基を有する少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンA’は、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100g、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA’、
b.一般式(I)
(式中、
a+b≦150、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する1~20重量%の間の直鎖オルガノポリシロキサンB’であって、
前記オルガノポリシロキサンB’は、カチオン重合および/または架橋しうる官能基、好ましくはエポキシまたはビニルオキシ官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンB’は、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB’100gのモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンB’、ならびに
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C
を含む光架橋性シリコーン組成物Y’にも関する。
【0112】
[0116]光架橋性シリコーン組成物Y’は、光重合により架橋されてシリコーンエラストマーとなることができる。
[0117]オルガノポリシロキサンA’のカチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量は、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100g、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100gである。カチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量は、例えば0.5~18の間のmmol/オルガノポリシロキサンA100g、または1~15の間のmmol/オルガノポリシロキサンA’100gであってよい。
【0113】
[0118]特定の実施形態において、式A’のオルガノポリシロキサンは、1000≧a+b≧200である式(I)のオルガノポリシロキサンである。
[0119]オルガノポリシロキサンA’は、シロキシル単位D:R SiO2/2およびD:ERSiO2/2からなる群から選択されるシロキシル単位「D」、ならびにシロキシル単位M:ER SiO1/2からなる群から選択されるシロキシル単位「M」からなる。記号RおよびEは先に記載されている通りである。
【0114】
[0120]直鎖オルガノポリシロキサンA’は、好ましくはカチオン重合性および/または架橋性の官能基を含む2つの基Eを含む。
[0121]有利には、オルガノポリシロキサンA’は、a=0である式(I)を有するオルガノポリシロキサンである。そうするとカチオン重合性および/または架橋性の官能基を含む基Eは鎖の末端となり、オルガノポリシロキサンAはx≧200の一般式MDxMを有しうる。
【0115】
[0122]オルガノポリシロキサンA’は、25℃で1~100,000mPa.sのオーダーの、一般的に25℃で10~70,000mPa.sのオーダーの、好ましくは25℃で10~30,000mPa.sのオーダーの、さらにより好ましくは25℃で500~20,000mPa.sのオーダーの絶対粘度を有する油であってよい。
【0116】
[0123]光架橋性シリコーン組成物Y’は、光架橋性シリコーン組成物Y’の総重量に対して少なくとも75重量%、好ましくは75~99重量%の間、より好ましくは75~90重量%の間のオルガノポリシロキサンA’を含む。
【0117】
[0124]直鎖オルガノポリシロキサンB’は、オルガノポリシロキサンA’よりも短い鎖、およびより高いモル含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する。これにより、光重合の終わりに得られるシリコーンエラストマーの機械的特性を改善しつつ、良好なエラストマー特性を維持することが可能となる。実際に、得られるシリコーンエラストマーの破断係数および硬さが増大し、一方で高い破断伸びが維持される。
【0118】
[0125]オルガノポリシロキサンB’のカチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量は、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB’100g、好ましくは50mmol以上/オルガノポリシロキサンB’100g、より好ましくは80mmol以上/オルガノポリシロキサンB’100gである。オルガノポリシロキサンB’のカチオン重合性および/または架橋性の官能基のモル含量は、例えば20~500の間のmmol/100g、または50~250の間のmmol/オルガノポリシロキサンB’100gであってよい。
【0119】
[0126]オルガノポリシロキサンB’は、シロキシル単位D:R SiO2/2およびD:ERSiO2/2からなる群から選択されるシロキシル単位「D」、ならびにシロキシル単位M:ER SiO1/2からなる群から選択されるシロキシル単位「M」からなる。記号RおよびEは先に記載されている通りである。
【0120】
[0127]直鎖オルガノポリシロキサンB’は、好ましくはカチオン重合性および/または架橋性の官能基を含む2つの基Eを含む。
[0128]特定の実施形態において、オルガノポリシロキサンB’は、a+b≦75、好ましくは1≦a+b≦75である式(I)のオルガノポリシロキサンである。
【0121】
[0129]有利には、オルガノポリシロキサンB’は、a=0である式(I)を有するオルガノポリシロキサンである。そうするとカチオン重合性および/または架橋性の官能基を含む基Eは鎖の末端となり、オルガノポリシロキサンB’はx≦100、好ましくはx≦75の一般式MDxMを有しうる。
【0122】
[0130]オルガノポリシロキサンB’は、25℃で1~100,000mPa.sのオーダーの、一般的に25℃で5~70,000mPa.sのオーダーの、好ましくは25℃で10~10,000mPa.sのオーダーの絶対粘度を有する油であってよい。
【0123】
[0131]光架橋性シリコーン組成物Y’は、光架橋性シリコーン組成物Y’の総重量に対して1~20重量%の間、好ましくは5~15重量%の間のオルガノポリシロキサンB’を含む。
【0124】
[0132]基Eのカチオン重合性および/または架橋性の官能基は、好ましくはエポキシ、ビニルオキシ、オキセタンおよびジオキソラン官能基の中から選択される。有利には、基Eのカチオン重合性および/または架橋性の官能基は、エポキシまたはビニルオキシ官能基、好ましくはエポキシ官能基である。
【0125】
[0133]基Eのカチオン性経路による重合性および/または架橋性の官能基がエポキシ官能基である場合、オルガノポリシロキサンA’および/またはオルガノポリシロキサンB’の基Eは、好ましくは以下の群から選択される:
【0126】
【化15】
波線は、基Eがオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合している箇所を表す。
【0127】
[0134]基Eのカチオン性経路による重合性および/または架橋性の官能基がビニルオキシ官能基である場合、オルガノポリシロキサンA’および/またはオルガノポリシロキサンB’の基Eは、式(II)のものである:
-G-O-CH=CH(II)
(式中、Gは2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基を表す)。
【0128】
[0135]好ましくは、ビニルオキシ基は以下の群から選択される:
-(CH-O-CH=CH
-O-(CH-O-CH=CH、および
-(CH-O-R11-O-CH=CH(式中、R11はC~C12分岐鎖または直鎖アルキレン、およびC~C12アリーレン、好ましくはフェニレンから選択される二価の基であり、アリーレンは任意選択で、1つ、2つまたは3つのC~Cアルキル基で置換されている)。
【0129】
[0136]好ましくは、オルガノポリシロキサンA’および/またはオルガノポリシロキサンB’は、式(III)のものである:
【0130】
【化16】
(式中、Rは先に記載されている通りであり、R1は好ましくはメチル基である)。
【0131】
オルガノポリシロキサンA’の場合、b≧150、好ましくはb≧200であり、オルガノポリシロキサンB’の場合、b≦100、好ましくはb≦75である。
[0137]特定の実施形態によれば、カチオン性光開始剤Cの量は、光架橋性シリコーン組成物Yの総重量に対して0.05~10重量%の間、好ましくは0.1~5重量%の間、より好ましくは0.15~3重量%の間である。カチオン性光開始剤Cは、光架橋性シリコーン(silicon)組成物Yについて先に記載されている通りである。
【0132】
[0138]特定の実施形態によれば、光架橋性シリコーン組成物Y’は、好ましくは、白金、パラジウム、ルテニウムまたはロジウムベースの触媒を不含である。「不含」により、光架橋性シリコーン組成物Y’が、組成物の総重量に対して0.1重量%未満の、好ましくは0.01重量%未満の、より好ましくは0.001重量%未満の、白金、パラジウム、ルテニウムまたはロジウムベースの触媒を含むことが意図される。
【0133】
[0139]光架橋性シリコーン組成物Y’は充填剤Dを含みうる。充填剤Dにより、架橋後に得られるシリコーンエラストマーの機械的特性を改善しつつ、良好なエラストマー特性を維持することが可能となる。実際に、得られるシリコーンエラストマーの破断係数が増大し、一方で高い破断伸びが維持される。充填剤Dは、光架橋性シリコーン組成物Yについて先に記載されている通りであってよい。光架橋性シリコーン組成物Y’は、光架橋性シリコーン組成物Y’の全ての構成成分に対して1重量%~50重量%の間、好ましくは1重量%~20重量%の間を含みうる。
【0134】
[0140]有利には、光架橋性シリコーン組成物Y’は、0.1~15重量%の間、好ましくは1~12%の間の充填剤Dを含む。
[0141]光架橋性シリコーン組成物Y’は光増感剤Eを含んでいてよい。光増感剤Eは照射からエネルギーを吸収し、それをエネルギーまたは電子としてカチオン性光開始剤Cに渡す。有利には、光増感剤はカチオン性光開始剤Cよりも長い波長の照射エネルギーを吸収し、これにより光開始剤カチオン性Cが活性化される波長よりも長い波長を有する照射源を使用することが可能となる。光増感剤Eは、光架橋性シリコーン(silicon)組成物Yについて先に記載されている通りである。光架橋性シリコーン組成物Y’は、光架橋性シリコーン組成物Y’の総重量に対して0.001~0.5重量%の間、好ましくは0.005~0.1重量%の間の光増感剤Eを含みうる。光架橋性シリコーン組成物Y’は、0.001~0.1重量%の間の光増感剤Eを含みうる。
【0135】
[0142]光架橋性シリコーン組成物Y’は光吸収剤Fを含みうる。光吸収剤Fにより、架橋性シリコーン組成物Y’層への照射侵入を減少させ、ゆえに照射を改善することが可能となる。光吸収剤Fにより、光架橋性シリコーンエラストマーY’層への照射侵入深さ(Dp)を制御することが可能となる。光架橋性シリコーン組成物Y’は、光架橋性シリコーン組成物Y’の総重量に対して0.01~5重量%の間の光吸収剤Fを含みうる。光吸収剤Fは、光架橋性組成物Yについて記載されている通りであってよい。
【0136】
[0143]光架橋性シリコーン組成物Y’は、有機または無機色素Gも含みうる。
[0144]光架橋性シリコーン組成物Y’は、エポキシ官能基および/またはビニルオキシ官能基を含む少なくとも1つの有機化合物Hも含みうる。
【0137】
[0145]光架橋性シリコーン組成物Y’は、25℃で1~100,000mPa.sのオーダーの、一般的に25℃で10~50,000mPa.sのオーダーの、好ましくは25℃で100~15,000mPa.sのオーダーの絶対粘度を有しうる。
【0138】
[0146]有利には、光架橋性シリコーン組成物Y’は、
a.一般式(I)
【0139】
【化17】
(式中、各基Rは、独立に1~30の炭素原子を含む一価の基であり、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキルおよび6~12の炭素原子を有するアリールから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリルおよびフェニル基から選択され、
Eはエポキシ官能基を含む基であり、エポキシ官能基は、2~20の炭素原子および任意選択で1または数個のヘテロ原子、好ましくは酸素を含む二価の基によりケイ素原子に結合しており、
各基Xは独立にRまたはEであり、
a+b≧200、好ましくは2000≧a+b≧200である)
を有する少なくとも75重量%の直鎖オルガノポリシロキサンA’であって、
前記オルガノポリシロキサンA’は、エポキシ官能基を有する少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンA’は、18mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100g、好ましくは15mmol以下/オルガノポリシロキサンA’100gのモル含量のエポキシ官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンA’、
b.一般式(I)
(式中、
a+b≦150、好ましくは1≦a+b≦100である)
を有する1~20重量%の間の直鎖オルガノポリシロキサンB’であって、
前記オルガノポリシロキサンB’は、エポキシ官能基を含む少なくとも2つの基Eを有し、
前記オルガノポリシロキサンB’は、20mmol以上/オルガノポリシロキサンB’100gのモル含量のエポキシ官能基を有する、直鎖オルガノポリシロキサンB’、ならびに
c.少なくとも1つのカチオン性光開始剤C
を含む。
【0140】
[0147]本発明は、シリコーンエラストマー物品の付加製造のための光架橋性シリコーン組成物Y’の使用にも関する。有利には、付加製造は、タンク内光重合により、好ましくはレーザー光造形(SLA)、デジタルライトプロセッシング(DLP)3D印刷、または連続液界面生成(つまりCLIP)により実施される。
【0141】
[0148]本発明は、光架橋性シリコーン組成物Y’を架橋させることにより得られるエラストマーシリコーンにも関する。
【実施例
【0142】
[0149]使用される基本材料
油A1:モル質量44,000g/mol、粘度9,150mPa.sおよび油A1 100gあたりのエポキシ官能基のモル含量4.55mmolを有する、式MEpoxyDxMEpoxy、x=590の、エポキシ官能基を有するオルガノポリシロキサン、
油A2:モル質量17,200g/mol、粘度1,000mPa.sおよび油A2 100gあたりのエポキシ官能基のモル含量11.53mmolを有する、式MEpoxyDxMEpoxy、x=227の、エポキシ官能基を有するオルガノポリシロキサン、
油A3:モル質量41,600g/mol、粘度5,000mPa.sおよび油A3 100gあたりのエポキシ官能基のモル含量21.64mmolを有する、式MD530Epoxy Mの、エポキシ官能基を有するオルガノポリシロキサン、
カチオン性光開始剤C:オクチルドデカノール中の、式(VI)を有するカチオン性光開始剤、
【0143】
【化18】
光増感剤E:ITXイソプロピルチオキサントン(CAS番号5495-84-1)、
油B:モル質量1,950g/mol、粘度50mPa.sおよび油B 100gあたりのエポキシ官能基のモル含量102.6を有する、式MEpoxy21Epoxyの、エポキシ官能基を有するオルガノポリシロキサン、
充填剤D1:オクタメチルテトラシロキサンで処理された焼成シリカ(pyrogenic silica)、
充填剤D2:非処理シリカ(A200)、
光吸収剤F:TiO(KronoClean7000)。
【0144】
[0150]これらの製品を用いて様々な組成物が調製された。量は全て、組成物の総重量に対する重量パーセンテージとして表される。
【0145】
[0151]組成物1~9および比較組成物1
[0152]手動でまたは高速ミキサーで全ての成分を混合することにより、組成物1~9および比較組成物1を調製した。次いでバキュームベルを使用して、5~10分間組成物を脱気した。組成物それぞれの一部を2mm厚の型に入れ、UVランプを備えるコンベアからなる実験装置に通し、架橋後の機械的試験に使用される板を得た。
【0146】
[0153]実験装置の操作条件:
i.速度:10m/分
ii.ランプ:H-バルブ、通常の水銀スペクトル出力を生成する中圧水銀蒸気バルブ、
iii.出力:15A
iv.不活化生成物なし
v.1ラン
[0154]ASTM D412基準-方法Aに従って、500mm/分で、INSTRON5544動力計でこれらの組成物の機械的特性を測定した。
【0147】
[0155]様々な組成物および機械的試験の結果を表1に示す。
[0156]
【0148】
【表1】
[0157]
[0158]これらの結果は、本発明による組成物1~9全てが、約100%、またはそれを超える高い破断伸びを示すエラストマーであることを示す。これらの結果は、良好なエラストマー特性を実現するために、低含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有する長鎖オルガノポリシロキサンを含む組成物を使用することが必要であることも示す。実際に、高含量のカチオン重合性および/または架橋性の官能基を有するオルガノポリシロキサンが使用された場合、破断伸びは非常に低く、ゆえにオルガノポリシロキサンは良好なエラストマー特性を有しない(比較組成物1)。
【0149】
より高いモル含量のカチオン重合性および/もしくは架橋性の官能基を有する、より短い油Bを添加する(組成物4~7)か、または充填剤を添加する(組成物8~9)と、得られるエラストマーの機械的特性を改善しつつ、良好なエラストマー特性を維持することが可能となる。これは、これらの組成物では破断係数および硬さが改善され、かつ破断伸びが高いままであるためである。
【0150】
[0159]組成物10~12
[0160]全ての成分を混合することにより組成物10~12を同様に調製し、次いで得られた組成物を脱気した。組成物10の場合、照射は水銀UVランプを用いて、組成物11および12の場合、波長365nmを有するLEDランプを用いて実施した。
【0151】
[0161]UV水銀ランプ照射下での、および365nmでの反応性を、以下のように光DSC(Metler Toledo LA 61310)により測定した:1%に設定したHamamatsu LC8-02ランプによる、安定化の1分後の試料への照射。365nm UV LED範囲での照射には、Hamamatsu A9616-07フィルターを配置する(これらの条件下で測定された365nmでのUV線量:0.5mW/cm).
[0162]様々な組成物および機械的試験の結果を表2に示す。
【0152】
[0163]
【0153】
【表2】
[0164]これらの結果は、本発明による組成物を架橋させるために様々な種類の照射を使用することが可能であることを示す。365nm波長を有するLEDによる照射の場合、架橋反応を起こすために光増感剤を使用することが必要である(組成物11および12)。
【0154】
[0165]組成物13~16
[0166]全ての成分を混合することにより組成物13~16を同様に調製し、次いで得られた組成物を脱気した。
【0155】
[0167]曝露時間を1秒または3秒に設定し、UV源の出力をこの固定された照射時間で変動させることにより、光線侵入の効果的な深さ(組成物が架橋する深さ)を測定した。膜が形成されると、各組成物について、UV線量に相関して形成される層の深さを決定することが可能となるマイクロメーターを使用して、効果的な深さを測定する。
【0156】
[0168]様々な組成物および得られた結果を表3に示す。
[0169]
【0157】
【表3】
[0170]これらの結果は、架橋深さを適応させることが可能であることを示す。
【0158】
組成物に光吸収剤Fを添加すると、光線侵入を減少させ、ゆえにより良好な印刷解像度を得ることが可能となる。これにより、3D印刷に適合し、良好な印刷解像度を有する配合物を得ることが可能となる。
【0159】
[0171]さらに、先に記載される方法に従って、組成物13の機械的特性も測定した。結果を表4に示す。
[0172]
【0160】
【表4】
[0173]これらの結果は、良好な機械的特性および良好な解像度を有するエラストマー部品を印刷するための、3D印刷に適合する配合物を得ることが可能であることを示す。
【国際調査報告】