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特表2022-534291非プロトン性極性溶媒中の安定な治療用組成物およびその製造方法
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  • 特表-非プロトン性極性溶媒中の安定な治療用組成物およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(54)【発明の名称】非プロトン性極性溶媒中の安定な治療用組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/04 20060101AFI20220721BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220721BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220721BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220721BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20220721BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20220721BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A61K47/04
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/26
A61K38/26
A61P3/08
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570778
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 US2020035172
(87)【国際公開番号】W WO2020243464
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/855,134
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511176159
【氏名又は名称】ゼリス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ドノヴァン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フー ウェンディ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB11
4C076CC21
4C076DD22Q
4C076DD37R
4C076DD55E
4C076DD67
4C076FF12
4C076FF15
4C076FF36
4C076GG45
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DB35
4C084MA05
4C084MA17
4C084NA03
4C084ZC35
(57)【要約】
本発明は、非プロトン性極性溶媒系に治療剤(活性成分)を溶解することにより、デバイス適合性の、安定な治療用製剤を調製するための、非プロトン性極性溶媒、水、およびイオン化安定化剤の使用に関するものであり、該製剤はその後、該製剤の投与のための様々なデバイス(例えば、ポンプ、注入用セット)と共に使用され得る。特定の態様において、本発明は、1つまたは複数の治療剤を含む製剤、およびそのような製剤を製造する方法に関するものであり、該製剤は、治療剤に物理的および化学的安定性を付与するのに十分な濃度の少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤を含む非プロトン性極性溶媒系、例えばDMSO/水混合物、に溶解された、少なくとも1つの治療剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)治療剤と、
(b)イオン化安定化賦形剤と、
(c)非プロトン性極性溶媒と、
(d)約10% v/v~約50% v/vの水と
を含み、容器および/または注射デバイス流路と適合する、非プロトン性極性溶媒製剤。
【請求項2】
デバイス流路の構成要素が、ゴム、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、アクリルアミド、アクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、多糖、もしくは天然ガム、またはそれらの2つもしくはそれ以上の組み合わせを含む、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
デバイス流路の構成要素が、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、メタアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポリスチレン(PS)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリウレタン、またはそれらのブレンドを含む、請求項2記載の製剤。
【請求項4】
治療剤がペプチドである、請求項1記載の製剤。
【請求項5】
ペプチドまたはその塩が、約0.1 mg/mLから、最大で該ペプチドまたはその塩の溶解限度の量で溶解されている、請求項4記載の製剤。
【請求項6】
ペプチドが、グルカゴンペプチド、グルカゴンアナログ、グルカゴン模倣物、またはその塩である、請求項4記載の製剤。
【請求項7】
イオン化安定化賦形剤が、治療剤の物理的安定性を維持する量で製剤に含まれる、請求項1記載の製剤。
【請求項8】
イオン化安定化賦形剤が、0.01 mM以上、200 mM未満の濃度である、請求項1記載の製剤。
【請求項9】
イオン化安定化賦形剤が無機酸である、請求項1記載の製剤。
【請求項10】
無機酸が、塩酸、硫酸、および硝酸からなる群より選択される、請求項5記載の製剤。
【請求項11】
非プロトン性極性溶媒がDMSOである、請求項1記載の製剤。
【請求項12】
イオン化安定化賦形剤が塩酸であり、かつ非プロトン性溶媒がDMSOである、請求項1記載の製剤。
【請求項13】
含水量が20% v/v~40% v/vである、請求項1記載の製剤。
【請求項14】
約10%未満、約5% w/v未満、または約3% w/v未満の防腐剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項15】
防腐剤がメタクレゾールである、請求項14記載の製剤。
【請求項16】
約10% w/v未満、約5% w/v未満、または約3% w/v未満の二糖をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項17】
二糖がトレハロースである、請求項16記載の製剤。
【請求項18】
約0℃未満の凝固点を有する、請求項1記載の製剤。
【請求項19】
約-20℃未満の凝固点を有する、請求項18記載の製剤。
【請求項20】
約-50℃~約-80℃の凝固点を有する、請求項18記載の製剤。
【請求項21】
容器または注射デバイス流路が、製剤を対象に非経口的に投与することができる注入用セットまたはポンプである、請求項1記載の製剤。
【請求項22】
有効量の請求項1記載の製剤を、その必要がある対象に導入することにより、低血糖症を処置する方法。
【請求項23】
製剤が、注入を通じて対象に導入される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
注入が、ポンプ注入により達成される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ポンプ注入が、持続もしくはボーラスポンプ注入、またはそれらの組み合わせを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤と、少なくとも1つの非プロトン性極性溶媒と、グルカゴンと、10% v/v超~約50% v/vの製剤中含水量をもたらすのに十分な水とを混合する工程であって、それによって、デバイスおよび/または流体流路と適合する安定なグルカゴン製剤を形成する、工程
を含む、安定なグルカゴン製剤を製造する方法。
【請求項27】
含水量が、約15% v/v~約50% v/vである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
含水量が、約20% v/v、約25% v/v、約30% v/v、約35% v/v、約40% w/v、約45% v/v、または約50% v/vである、請求項26記載の方法。
【請求項29】
イオン化安定化賦形剤が、少なくとも1つの無機酸である、請求項26記載の方法。
【請求項30】
無機酸が、塩酸、硝酸、硫酸、またはそれらの組み合わせである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
イオン化安定化賦形剤の濃度が、約0.1 mM~約200 mMである、請求項26記載の方法。
【請求項32】
イオン化安定化賦形剤の濃度が、約1 mM~約20 mMである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
イオン化安定化賦形剤の濃度が、約1 mM~約10 mMである、請求項31記載の方法。
【請求項34】
イオン化安定化賦形剤の濃度が、約4 mM~約9 mMである、請求項31記載の方法。
【請求項35】
非プロトン性溶媒がDMSOである、請求項26記載の方法。
【請求項36】
疾患または障害に罹っているまたは罹りやすい患者に、有効量の請求項1記載の製剤を、診断検査に付属するものとして導入することと、該患者に対して診断検査を行うこととにより、ヒト患者において疾患または身体的障害を診断する方法。
【請求項37】
患者が、アルツハイマー病に罹っているまたは罹りやすい、請求項36記載の方法。
【請求項38】
患者が、成長ホルモン欠乏症に罹っているまたは罹りやすい、請求項36記載の方法。
【請求項39】
患者が、胃腸障害に罹っているまたは罹りやすい、請求項36記載の方法。
【請求項40】
診断検査が、患者の胃腸管の放射線検査である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
製剤が、患者へと静脈内、筋内、または皮内に導入される、請求項36記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照および参照による組み入れ
本発明は、2019年5月31日に出願された米国仮出願番号62/855,134の優先権の恩典を主張し、その開示の全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
A. 発明の分野
本発明は、医学および薬学の分野におけるものである。特定の態様は、概して、哺乳類、特にヒトにおける疾患、障害、および医学的状態を処置、予防および/または診断する上で治療用製剤として使用され得る1つまたは複数の活性な薬学的成分を含む、プラスチックおよび/またはゴム適合性の治療用非プロトン性溶媒製剤に関する。特に、本発明は、非プロトン性極性溶媒系に治療剤(活性な薬学的成分)を溶解することにより、デバイス適合性の、安定な治療用製剤を調製するための、非プロトン性極性溶媒、水、および少なくとも1つのイオン化安定化剤の使用に関するものであり、該製剤はその後、該製剤の投与のための様々なデバイスと共に使用され得る。
【背景技術】
【0003】
B. 関連技術の説明
非プロトン性極性溶媒系(例えば、DMSOベースの溶媒系)中で調製された非経口用製剤は、水を通じた分解経路が存在しないことにより、改善された薬物分子安定性という利益を享受する。加水分解、脱アミド化およびアスパラギン酸異性化を含むこれらの経路は、水ベースの製剤中でのペプチドおよびタンパク質の不安定性の大きな原因であることが知られている。さらに、加水分解はまた、低分子薬の化学的不安定性を促進することも知られている。以前の研究は、水溶液中と比較したDMSO中の低含水量ペプチド・低分子製剤の改善された安定性を示している(例えば、その開示の全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第9,339,545号(特許文献1)および米国特許第10,485,850号(特許文献2)を参照のこと)。
【0004】
しかし、生体適合性の有機溶媒(例えば、DMSO)を使用する際の1つの欠点は、多くの商業的物質、例えばプラスチックが、これらの非水性系に溶解し得るということである。さらに、有機溶媒は、商業的なエラストマー構成要素(例えば、ゴムチューブ)において使用される化合物(例えば、抗酸化物質、可塑剤)の強力な抽出因子であり得る。その結果、多くの市販の容器-施栓システム(CCS)、例えば注入用セットおよびポンプは、溶解、抽出および分解の問題のため、DMSOベースの製剤と適合しない。
【0005】
DMSO適合性のポンプおよび注入用セットを製造する別のアプローチは、特別なDMSO適合性の構成要素を開発することであるが、これは非常に高価であり、長い開発および検証期間を必要とするものである。
【0006】
非プロトン性極性溶媒系により提供される安定性および溶解性を合わせ持ちつつ、様々なデバイス、容器等との適合性も提供する製剤プラットフォームに対する要望が依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9,339,545号
【特許文献2】米国特許第10,485,850号
【発明の概要】
【0008】
発明の簡単な概要
本明細書に記載される態様は、製剤と、物質、デバイス、容器、および/または1つもしくは複数の流路との適合性を改善し、高価な専用の構成要素または流路の必要性を排除するアプローチを提供する。この適合性製剤の商業的重要性は、既製のおよび市販のポンプ、注入用セット、容器等において使用される様々なプラスチックおよびゴム(エラストマー)構成要素と適合するDMSOベースの製剤を実現することである。一般に、生体適合性の有機溶媒(例えば、非プロトン性極性溶媒)から調製される製剤は、しばしば、デバイス、容器および注入用セットにおいて使用されるプラスチック、ゴムおよび他の物質と不適合である。
【0009】
典型的に10%含水量の上限を有する低含水量DMSOベースの製剤を凌ぐ本発明の製剤が有する1つの利点は、流動流体路において専用の物質(例えば、プラスチック、ポリマー、エラストマー)を必要としないため、溶媒適合性の注入用セットおよび/または溶媒適合性の流路の製造に伴う開発期間を短縮し、費用を削減することである。そのような適合性物質を導入することは、しばしば、特に規制当局による精査がすでに行われており、商業利用について承認されているデバイスにとって、時間および金銭の面で多大な出費を必要とする。
【0010】
水分の添加により、製剤の全体的安定性は、水を通じた分解経路(例えば、加水分解)の促進のために低下し得る。さらに、非プロトン性極性溶媒、例えばDMSO中でゲル化および凝集する傾向がある一部の分子(例えば、グルカゴン)は、高含水量溶媒ベース製剤中での一定程度の物理的不安定化に対してより敏感であり得る。より高い含水量の製剤中での物理的不安定性を減少させるために、追加のプロトン化(例えば、酸および/または塩基の添加)が必要とされること、そしてこれは化学的分解の速度を上昇させ得ることが発見された。そのため、高含水量製剤は、低含水量~水分不添加(例えば、約10%未満の水)の非水性製剤と同等の長期安定性を示さない場合がある。しかし、用途によっては、異なる安定性プロファイルが十分であり得る。例えば、救急用製剤は、一般に、患者が常にそれらを含む製品を携帯する必要があるので、少なくとも1~2年の室温安定性を必要とする。他方、ポンプベースの送達システムにおいて使用される製剤は、冷蔵庫または冷凍庫で長期間保管され得、ポンプで使用する前に低温保管庫から取り出され得る。したがって、このタイプの製剤は、短期間の室温安定性(1~3ヵ月)およびさらに短期間の高温安定性(例えば、ポンプが患者に装着されている期間、製剤はポンプ内で保管されるので、身体上または体温(35~37℃)で3~7日)を必要とするのみであり得る。後者のタイプの用途において、本明細書に示される高含水量製剤からのデータは、それが商業的に使用される物質、例えばプラスチックおよびエラストマー(ゴム)構成要素との適合性を改善する実現可能なアプローチであることを示している。高含水量(例えば、>10%)の存在下で治療用分子の十分な物理的および化学的安定性を維持する製剤の開発が、本明細書に記載されている。
【0011】
高含水量の非プロトン性極性溶媒ベースの製剤のさらなる利点は、そのような溶媒系により得られる低い凝固点である。例えば、純粋なDMSOは18℃で凍結し、水は0℃で凍結する。しかし、混合して一緒にした場合、DMSOおよび水は、およそ30~35%(w/w)の水添加でおよそ-70℃の最低凝固点を示す混合物を形成する。この低い凝固点の利点は、これらの製剤が、長期保管のために(化学的分解を抑制し得る)冷蔵庫(2~8℃)または冷凍庫(-20℃)内で保管でき、物理的および化学的不安定性を促進し得る凍結解凍サイクルが行われないことである。
【0012】
特定の態様は、(a)治療剤と、(b)イオン化安定化賦形剤と、(c)非プロトン性極性溶媒と、(d)10% v/v超~約50% v/vの水とを含む、非プロトン性極性溶媒製剤に関する。特定の局面において、含水量は、その間のすべての値および範囲を含む、20、25、30、35~40% v/vである。特定の局面において、非プロトン性溶媒製剤は、容器および/またはデバイス流路と適合する。特定の例において、85% v/v超~100% v/vの濃度の非プロトン性極性溶媒は、デバイス流路と不適合である。特定の局面において、非プロトン性極性溶媒は、その間のすべての値および範囲を含む、最大または約85、80、75、70、65、60、55~50% v/vで存在する。特定の局面において、デバイス流路の構成要素は、ゴム、エラストマー、熱可塑性物質、熱硬化性プラスチック、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、アクリルアミド、アクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、多糖、天然ガム、および/または他の溶媒不適合性物質を含み得る。デバイス流路の構成要素は、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、メタアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)、ポリエチレンテレフタレートグルコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール(PCTG)、ポリエチレンテレフタレート(PETE)、ジメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポリスチレン(PS)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリウレタン、またはそれらのブレンドの1つまたは複数を含み得る。
【0013】
特定の局面において、治療剤は、ペプチドまたはその塩である。特定の例において、ペプチドは、時間をかけた、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30時間にわたる、または複数日数の期間にわたる、例えば、1日~1週間(すなわち、1日、2日、3日、4日、5日、6日および最大7日)にわたる(持続的または間欠的な)注入により投与される。ペプチドまたはその塩は、約0.01、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0、5.0 mg/mLから、最大でペプチドまたはその塩の溶解限度の量で溶解され得る。特定の局面において、ペプチドは、グルカゴンペプチド、グルカゴンアナログ、グルカゴン模倣物、またはその塩である。
【0014】
少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤は、治療剤のイオン化を安定化させる量で非プロトン性溶媒に溶解され得る。特定の局面において、イオン化安定化賦形剤は、0.01 mM以上、200 mM未満の濃度である。イオン化安定化賦形剤は、無機酸であり得るがこれに限定されない。無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸から選択され得る。イオン化安定化賦形剤はまた、有機酸(カルボン酸-COOH官能基を有する酸)であり得る。有機酸の非限定的な例は、酢酸、クエン酸およびアミノ酸を含む。特定の局面において、非プロトン性溶媒はDMSOである。特定の局面において、イオン化安定化賦形剤は無機酸であり、非プロトン性溶媒はDMSOである。
【0015】
製剤はさらに、10、5または3% w/v未満の防腐剤を含み得る。特定の局面において、防腐剤はベンジルアルコールである。
【0016】
製剤はさらに、10、5または3% w/v未満の二糖を含み得る。特定の局面において、二糖はトレハロースである。
【0017】
特定の態様において、製剤は、0℃未満、好ましくは-20℃未満、またはより好ましくは-50℃~-70℃の凝固点を有し得る。
【0018】
製剤は、製剤を保管および/または投与する様々なデバイスと適合し得る。非限定的な例は、製剤を対象に非経口投与することができるポンプに接続された注入用セットを含むデバイスを含む。あるいは、デバイスは、患者に直接装着され、外部の注入用セットを必要としないパッチポンプであり得る。
【0019】
特定の態様は、有効量の本明細書に記載される製剤を、その必要がある対象に投与することにより低血糖症を処置する方法に関する。特定の局面において、投与される製剤は、製剤の90%(v/v)超の量で非プロトン性極性溶媒を含む製剤と適合しない構成要素を含むデバイスまたは容器中で提供または保管される。特定の局面において、製剤は、注入により投与される。特定の局面において、投与は、注入用セットと直列に接続され得るポンプを通じた注入による。注入は、持続および/またはボーラスポンプ注入であり得る。
【0020】
特定の態様は、(a)少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤を非プロトン性溶媒と混合して、イオン化安定化賦形剤/非プロトン性溶媒混合物を形成する工程、(b)イオン化安定化賦形剤/非プロトン性溶媒混合物に治療剤を溶解する工程、および(c)イオン化安定化賦形剤/非プロトン性溶媒混合物に水を添加して、10% v/v超~約80% v/v、好ましくは約20% v/v~約50% v/vの含水量とし、デバイス流路適合性の非プロトン性溶媒製剤を形成する工程を含む、グルカゴンペプチドを安定的に製剤化する方法に関する。特定の局面において、イオン化安定化賦形剤は塩酸、硝酸、硫酸またはそれらの組み合わせである。イオン化安定化賦形剤は0.1 mM~200 mMの濃度であり得るが、そうである必要はない。
【0021】
理論に縛られることを望まないが、これらの高含水量の非プロトン性極性溶媒溶液(例えば、DMSOベースの溶液)は、治療剤を非水溶媒分子により優先的に取り囲み、それにより水素結合の形成(非プロトン性極性溶媒は強い水素結合受容体であり、治療剤(例えば、骨格アミン)は水素結合供与体として作用する)を通じて治療剤を強く溶媒和することを提供する。水分は、ペプチドを溶媒和する溶媒分子の一部と置き換わり得るが、治療剤は非水溶媒との優先的な会合を維持し、それによって水を排除し、そのため水は大部分が容器(すなわち、注入用セットまたはポンプ流体路のプラスチックおよびゴム構成要素)と相互作用し得る。非水溶媒と容器の相互作用の減少は、適合性を向上させ、一方、非水溶媒と治療剤の相互作用は、製剤が、対応する水性製剤の安定性を超える許容される物理的および化学的安定性を維持することを可能にする。
【0022】
デバイスとの適合性を向上させるのに必要とされる含水量は、(例えば、デバイスの流体流路を構成する物質に依存して)異なり得る。特定の態様において、含水量は、その間のすべての値および範囲を含む、10%超、例えば約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%および約80%(すべてv/v)であり得る。特定の局面において、含水量は、その間のすべての値および範囲を含む、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%および約45%~約50%(すべてv/v)であり得る。したがって、本明細書で使用される場合、「非プロトン性極性溶媒系」は、10%超から約80%(v/v)の最終含水量となるよう少なくとも1つの非プロトン性極性溶媒(例えば、DMSO)および水を含む。
【0023】
治療用分子は、典型的に、非プロトン性極性溶媒系に溶解される場合、長期的安定性を示すために最適なまたは有益なイオン化プロファイルを必要とする。非プロトン性極性溶媒系に溶解された治療用分子の有益なイオン化プロファイルの維持は、少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤を使用することにより達成され得る。本発明の特定の態様は、非プロトン性極性溶媒系に溶解された少なくとも1つの治療用分子を含む流路適合性の安定な製剤を調製する方法に関する。特定の局面において、治療用分子は、非プロトン性極性溶媒系中での再構成の前に事前に緩衝化水溶液から乾燥されることを必要としない。
【0024】
既存の(例えば、市販の)デバイスを使用する能力および治療用分子(例えば、ペプチド)を緩衝化水溶液から乾燥する必要性を回避する能力は、様々な製品開発段階を通して膨大な時間および費用を節約することができる。
【0025】
非水性非プロトン性極性溶媒(例えば、DMSO)に可溶化された治療剤の安定な溶液は、イオン化安定化賦形剤として機能する特定量の化合物または化合物の組み合わせを添加することにより調製され得る。理論に縛られることを望まないが、イオン化安定化賦形剤は、治療用分子が非プロトン性極性溶媒系において改善された物理的および化学的安定性を示すイオン化プロファイルを有するよう、治療用分子上のイオノゲン基をプロトン化し得る非プロトン性極性溶媒系中のプロトン源(例えば、治療用分子にプロトンを供与し得る分子)として作用し得ると考えられる。あるいは、イオン化安定化賦形剤は、治療用分子が非プロトン性極性溶媒系において改善された物理的および化学的安定性を示すイオン化プロファイルを有するよう、プロトンシンク(例えば、治療用分子からプロトンを受け取り得る/除去し得る分子または部分)として作用し得る。本発明の1つの局面において、非経口注射用の安定な製剤が開示される。あるいは、例えば局所適用を通じた皮膚への経皮送達が、使用され得る。
【0026】
特定の態様は、少なくとも、最大または約0.1 mg/mL、約1 mg/mL、約5 mg/mL、約10 mg/mL、約15 mg/mL、約20 mg/mL、約25 mg/mL、約50 mg/mL、もしくは約100 mg/mL~約150 mg/mL、約200 mg/mL、約300 mg/mL、約400 mg/mL、もしくは約500 mg/mLの濃度の、または治療剤に物理的および化学的安定性を提供する濃度の少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤を含む非プロトン性極性溶媒系における治療剤の溶解限度までのさらに高い濃度の治療剤を含む治療剤の製剤に関する。特定の態様において、治療剤はペプチドである。さらなる局面において、治療剤は低分子である。製剤は、少なくとも、最大または約0.01、0.1、0.5、1、10もしくは50 mM~10、50、75、100、500、1000 mM、または最大で非プロトン性極性溶媒系におけるイオン化安定化賦形剤の溶解限度までの濃度のイオン化安定化賦形剤を含み得る。特定の局面において、イオン化安定化賦形剤の濃度は、約0.1 mM~約100 mM、特に約1 mM~約10 mM、例えば、約1 mM、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mMおよび約10 mMである。特定の態様において、イオン化安定化賦形剤は、適切な無機酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等であり得る。特定の局面において、イオン化安定化賦形剤は、有機酸、例えば、アミノ酸、アミノ酸誘導体、またはアミノ酸もしくはアミノ酸誘導体の塩であり得る(例は、グリシン、トリメチルグリシン(ベタイン)、グリシン塩酸塩、およびトリメチルグリシン(ベタイン)塩酸塩を含む)。さらなる局面において、アミノ酸は、グリシンまたはアミノ酸誘導体トリメチルグリシンであり得る。特定の局面において、ペプチドは、150、100、75、50または25アミノ酸未満である。さらなる局面において、非プロトン性溶媒系は、DMSOを含む。非プロトン性溶媒は、脱酸素化され得る、例えば脱酸素化DMSOであり得る。特定の態様において、製剤は、最初にイオン化安定化賦形剤を非プロトン性極性溶媒系に添加し、その後に治療用分子を添加することにより調製され得る。あるいは、治療用分子が最初に非プロトン性極性溶媒系に可溶化され、その後にイオン化安定化賦形剤が添加され得る。さらなる局面において、イオン化安定化賦形剤および治療用分子は、非プロトン性極性溶媒系に同時に可溶化され得る。特定の局面において、治療剤は、グルカゴン、グルカゴンアナログ、またはその塩である。
【0027】
本発明の他の態様は、(a)非プロトン性極性溶媒系中での標的治療剤(例えば、ペプチドまたは低分子)の安定化イオン化プロファイルを達成するのに必要とされる適切なイオン化安定化賦形剤(例えば、プロトン濃度)を計算または決定する工程、(b)少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤を非プロトン性極性溶媒系と混合して、工程(a)で決定されたイオン化プロファイルを提供する適切なイオン化環境を得る工程、ならびに(c)治療剤を物理的および化学的に安定化させるために、適切な環境を有する非プロトン性溶媒に標的治療剤を可溶化させる工程を含む、治療剤(例えば、ペプチドまたは低分子)を安定的に製剤化する方法に関する。特定の非限定的な局面において、治療剤は、室温、冷蔵温度(例えば、約2℃~約10℃または約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃もしくは約10℃)、またはゼロ度以下の温度(例えば、約-4℃~約-80℃、または約-4℃、約-10℃、約-15℃、約-20℃、約-25℃、約-40℃、約-45℃、約-50℃、約-60℃、約-70℃もしくは約-80℃)で、少なくともまたは約0.25、0.5、1、2、3、4または5年間、より好ましくは約0.25~約2年間、化学的または物理的に安定である。特定の局面において、非プロトン性極性溶媒系への治療剤の溶解およびイオン化安定化賦形剤の添加は、任意の順でまたは同時に行われ得、したがってイオン化安定化賦形剤が最初に混合され、その後に治療剤が溶解され得、または治療剤が溶解された後にイオン化安定化賦形剤が溶液に添加され得、またはイオン化安定化賦形剤と治療剤が非プロトン性極性溶媒系に同時に添加もしくは溶解され得る。さらなる局面において、非プロトン性極性溶媒への水の添加の順は、治療剤および/またはイオン化安定化賦形剤の添加の前または後に行われ得る。非限定的な例として、限定的な水溶性を有する治療剤の場合、最初に過剰(すなわち、目標/最終製剤濃度を上回る)濃度の治療剤を非プロトン性極性溶媒に溶解させ、その後に、最終組成物または製剤において治療用化合物および水分の目標濃度が達成されるよう水を投入する必要があり得る。イオン化安定化賦形剤は、水の添加の前または後に混合物に添加され得る。いくつかの態様において、イオン化安定化賦形剤の添加は、非プロトン性極性溶媒系への溶解を促進するよう治療剤の添加前に添加され得る。さらなる製剤の構成要素(例えば、防腐剤、界面活性剤等)は、治療剤の添加の前または後のいずれかに製剤に投入され得る。さらなる局面において、構成要素(例えば、治療剤またはイオン化安定化賦形剤)の全量が特定の時点で混合される必要はない、すなわち、1つまたは複数の構成要素の一部が最初に、2番目にまたは同時に混合され、別の部分が別の時点で、最初に、2番目にまたは同時に混合され得る。特定の局面において、治療剤はペプチドであり得、イオン化安定化賦形剤は適切な無機酸、例えば塩酸、硫酸および/または硝酸であり得る。特定の局面において、ペプチドは、200、150、100、75、50または25アミノ酸未満である。溶液に添加される治療剤および/またはイオン化安定化賦形剤の濃度は、その間のすべての値および範囲を含む、0.01、0.1、1、10、100、1000 mM、または最大でその溶解限度の間であり得る。特定の局面において、非プロトン性極性溶媒系は、脱酸素化される。さらなる局面において、溶媒系中の非プロトン性極性溶媒は、DMSOまたは脱酸素化DMSOを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0028】
本発明のさらなる局面において、状態、疾患、障害等を処置または予防する方法であって、その状態、疾患、障害等を処置または予防するのに有効な量の本発明の製剤を、その必要がある対象に投与する工程を含む方法が開示される。任意の適切な用量の治療剤(例えば、タンパク質、ペプチド、または低分子)が、本発明の方法で投与され得る。投与される用量は、当然、既知の要因、例えば、個々の化合物、塩もしくは組み合わせの薬力学的特徴、対象の年齢、健康もしくは体重、症状の性質および程度、薬物および患者の代謝的特徴、同時処置の種類、処置の頻度、または望まれる効果に依存して異なり得る。特定の局面において、有効量のグルカゴンを含む本明細書に記載される製剤を投与することにより、低血糖症が処置され得る。
【0029】
本明細書に記載される安定な製剤は、水性環境下で限定的なまたは乏しい安定性または溶解性を有する任意の治療剤(タンパク質、ペプチド、および/または低分子)の非経口注射に有用である。特定の局面において、本明細書に記載される製剤は、注射可能な製剤として提供される。注射可能な製剤は、患者の表皮、皮膚、皮下または筋内層に投与され得る。特定の局面において、製剤は、皮内投与される。
【0030】
したがって、いくつかの態様において、治療剤もしくはペプチドまたはその塩は、グルカゴン、プラムリンタイド、インスリン、イカチバント、ロイプロリド、LHRHアゴニスト、副甲状腺ホルモン(PTH)、アミリン、ボツリヌストキシン、ヘマタイド、アミロイドペプチド、コレシストキニン、コノトキシン、胃抑制ペプチド、抗体(モノクローナルもしくはポリクローナルであり得る)またはそのフラグメント、免疫原性ペプチド(例えば、ウイルス、細菌、または任意の原核もしくは真核生物もしくはその細胞由来のペプチドまたはペプチド複合体)、インスリン様成長因子、成長ホルモン放出因子、抗菌因子、グラチラマー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-1アゴニスト、エキセナチド、そのアナログ、およびそれらの混合物からなる群より選択される。1つの態様において、ペプチドは、グルカゴンまたはグルカゴンアナログもしくはグルカゴンペプチド模倣体である。別の態様において、ペプチドは副甲状腺ホルモンである。さらに別の態様において、ペプチドはロイプロリドである。さらに別の態様において、ペプチドはグラチラマーである。さらに別の態様において、ペプチドはイカチバントである。さらに別の態様において、第1のペプチドはプラムリンタイドであり、第2のペプチドはインスリンである。さらに別の態様において、第1のペプチドはグルカゴンであり、第2のペプチドはエキセナチドである。他の態様において、本発明にしたがい使用される安定な製剤は、本明細書に記載されるタイプの化合物、例えば、少なくとも1つのペプチド、少なくとも1つの低分子、およびそれらの組み合わせ、の共製剤または混合物を含む。
【0031】
定義
「容器」、「リザーバ」、「注入用セット」、「ポンプ」、「製剤流路」、「流体流路」等の用語は、言い換え可能および等価であると解釈されるべきであり、これらの構成要素は、その構成要素およびそれらの表面と相互作用する可能性のある投与または保管される製剤と直接接触する。これらの用語は、保管(例えば、ポンプリザーバ)および送達(例えば、ポンプおよびポンプに直列に接続された場合の注入用セット内の流体流路)の間に製剤が接触し得る任意かつすべての構成要素を暗示している。「注入用セット」という用語は、本明細書で使用される場合、内蔵されている注入用セット(すなわち、パッチポンプ内に含まれるそれら)およびポンプをポンプ利用者に接続する、通常ポンプに外付けされる完全チューブシステムの両方を含むと解釈され得る。特定の構成において、外部の注入用セットは、カニューレ(例えば、皮下投与用)、粘着マウント、クイックディスコネクト、およびポンプカートリッジコネクタ(例えば、ルアー型コネクタ)を含む。
【0032】
「溶解」という用語は、本明細書で使用される場合、気体、固体または液体状態にある物質が溶媒の溶解成分である溶質になり、溶媒中の気体、液体または固体の溶液を形成するプロセスを表す。特定の局面において、治療剤または賦形剤、例えばイオン化安定化賦形剤は、最大でその溶解限度の量で存在する、または完全に可溶化されている。「溶解」という用語は、気体、液体または固体が溶媒中に組み込まれ、溶液を形成することを表す。
【0033】
「エラストマー」という用語は、本明細書で使用される場合、弾性を有する天然または合成ポリマーを表す。「エラストマー」および「ゴム」という用語は、本明細書で言い換え可能に使用され得る。
【0034】
「賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、安定化、かさ上げの目的で、または最終投薬形態において活性成分に治療的増強を施す、例えば、薬物吸収を促進する、粘性を減少させる、溶解性を増強する、浸透圧を調整する、注射部位の不快感を軽減する、凝固点を下げる、または安定性を増強するために含まれる、医薬の活性または治療用成分と共に製剤化される天然または合成物質(活性成分でない成分)を表す。賦形剤はまた、インビトロ安定性の補助、例えば、予想される貯蔵期間の間の変性または凝集の防止に加えて、製造プロセスにおいても、例えば粉末流動性または非粘着特性を促進することにより、関心対象の活性物質の取り扱いを補助する上で有用であり得る。
【0035】
本発明の文脈における「低分子薬」は、対象に所望の、有益な、および/または薬理学的な効果をもたらし得る生物学的に活性な化合物(およびその塩)である。これらの「低分子薬」は、有機または無機化合物である。したがって、本発明の文脈における低分子薬は、多量体化合物ではない。典型的に、低分子薬は、およそ1000ダルトン未満の分子量を有する。特定の低分子薬は、それらが水の存在下で次第に不安定になるという点で、「水分感受性」である。また、低分子薬と共に使用され得る塩は、当業者に公知であり、無機酸、有機酸、無機塩基、または有機塩基との塩を含む。
【0036】
「治療剤(therapeutic agent)」または「治療剤(therapeutic)」という用語は、タンパク質、ペプチド、低分子薬、およびそれらの薬学的に許容される塩を包含する。有用な塩は、当業者に公知であり、無機酸、有機酸、無機塩基、または有機塩基との塩を含む。本発明において有用な治療剤は、単独であっても他の薬学的賦形剤または不活性成分と組み合わせてであっても、ヒトまたは動物に投与されたときに所望の、有益な、そしてしばしば薬理学的な効果を提供するタンパク質、ペプチド、および低分子化合物である。
【0037】
「ペプチド」および「ペプチド化合物」という用語は、アミド(CONH)または他の連結によって一緒に結合された最大約200アミノ酸残基のアミノ酸またはアミノ酸様(ペプチド模倣物)多量体を表す。特定の局面において、ペプチドは、最大150、100、80、60、40、20、または10アミノ酸であり得る。「タンパク質」および「タンパク質化合物」は、アミド結合によって一緒に結合された200を超えるアミノ酸残基の多量体を表す。本明細書に開示されるペプチドまたはタンパク質化合物のいずれかのアナログ、誘導体、アゴニスト、アンタゴニスト、および薬学的に許容される塩は、これらの用語に含まれる。これらの用語はまた、構造の一部としてD-アミノ酸、修飾、誘導体化、またはDもしくはL構成の天然アミノ酸、および/またはペプチド模倣体の単位を有するペプチド、タンパク質、ペプチド化合物、およびタンパク質化合物を含む。
【0038】
「アナログ(analogue)」および「アナログ(analog)」は、ペプチドまたはタンパク質を参照する場合、そのペプチドもしくはタンパク質の1つもしくは複数のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されている、またはそのペプチドもしくはタンパク質から1つもしくは複数のアミノ酸残基が欠失している、またはそのペプチドもしくはタンパク質に1つもしくは複数のアミノ酸残基が付加されている、またはそのような修飾の任意の組み合わせである、修飾されたペプチドまたはタンパク質を表す。そのようなアミノ酸残基の付加、欠失、または置換は、そのペプチドもしくはタンパク質のN末端および/またはそのペプチドもしくはタンパク質のC末端を含む、そのペプチドを構成する一次構造に沿った任意の点、または複数の点で起こり得る。
【0039】
親ペプチドまたはタンパク質に関連して、「誘導体」は、化学的に修飾された親ペプチドもしくはタンパク質またはそのアナログであって、その親ペプチドもしくはタンパク質またはそのアナログには少なくとも1つの置換が存在しないものを表す。1つのそのような非限定的な例は、共有結合的に修飾された親ペプチドまたはタンパク質である。典型的な修飾は、アミド、炭水化物、アルキル基、アシル基、エステル、ペグ化等である。
【0040】
「単相溶液」は、溶媒または溶媒系(例えば、2つまたはそれ以上の溶媒(例えば、溶媒および共溶媒)の混合物)に溶解された治療剤から調製される溶液であって、その溶液が光学的に透明であると表現できるよう、治療剤が溶媒または溶媒系に完全に溶解しており、粒状物質が視認できないものを表す。単相溶液はまた、「単相系」とも称され得、「二相系」とは、後者が流体中に懸濁化された粒状物質(例えば、粉末)から形成される点で区別される。
【0041】
「阻害」、「減少」、またはこれらの用語の任意のバリエーションは、所望の結果を達成する任意の測定可能な低下または完全な阻害を含む。
【0042】
「有効」もしくは「処置」もしくは「予防」、またはこれらの用語の任意のバリエーションは、所望の、期待される、または意図される結果を達成する上で十分であることを意味する。
【0043】
「化学的安定性」は、治療剤を参照する場合、化学的経路、例えば酸化および/または加水分解および/または断片化および/または他の化学的分解経路により許容可能な比率の分解産物が生じることを表す。特に、本明細書に記載されるタイプの製剤は、その製品の意図された保管温度での少なくとも1年間の保管(例えば、冷蔵保管もしくはゼロ度以下での保管)、または1ヵ月、2ヵ月もしくは好ましくは3ヵ月間の加速条件(25℃/60%相対湿度)下での製品の保管後に約20%以下の分解産物が形成される場合、化学的に安定であるとみなされ得る。いくつかの態様において、化学的に安定な製剤は、その製品の意図された保管温度下での長期間の保管後に形成される30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満の分解産物を有する。
【0044】
「物理的安定性」は、治療剤を参照する場合、許容可能な比率の凝集物(例えば、二量体、三量体およびそれより大きな形態)が形成されることを表す。特に、製剤は、その製品の意図された保管温度での少なくとも1年間の保管(例えば、冷蔵保管もしくはゼロ度以下での保管)、または1ヵ月、2ヵ月および好ましくは3ヵ月間の25℃/60%相対湿度下での製品の保管後に約15%以下の凝集物が形成される場合、物理的に安定であるとみなされる。いくつかの態様において、物理的に安定な製剤は、その製品の意図された保管温度下での長期間の保管後に形成される15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満の凝集物を有する。
【0045】
「安定な製剤」は、室温での少なくとも1ヵ月間の保管または冷蔵もしくはゼロ度以下の温度での最大で少なくとも1年間の保管後に治療剤(例えば、ペプチドまたはその塩)の少なくとも約65%が化学的および物理的に安定な状態を維持している製剤を表す。特に好ましい製剤は、これらの保管条件下で少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の化学的および物理的に安定な治療剤が維持されるものである。特に好ましい安定な製剤は、滅菌照射(例えば、ガンマ線、ベータ線、または電子ビーム)後に分解を示さないものである。
【0046】
本明細書で使用される場合、「非経口注射」は、消化管(alimentary canal)以外の経路を通じた治療剤(例えば、ペプチドまたは低分子)の投与 -- 消化管(digestive tract)によらない任意の投与 -- 例えば、静脈内注入、鼻内投与、口腔内投与、経皮投与、または動物、例えばヒトの皮膚もしくは粘膜の1つもしくは複数の層の下でのまたはそれを通じた注射、を表す。標準的な非経口注射は、動物、例えばヒトの皮下、筋内、または皮内組織へと行われる。これらの深い部位は、その組織が、大部分の治療剤、例えば、0.1~3.0 cc(mL)を送達するのに必要とされる注射体積を受容するよう、浅い皮膚部位よりも容易に拡大することから、標的とされる。
【0047】
「皮内」という用語は、表皮、皮膚または皮下の皮膚層への投与を包含する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「非プロトン性極性溶媒」という用語は、酸性水素を含まず、したがって水素結合供与体として作用しない極性溶媒を表す。極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸エチル、n-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、および炭酸プロピレンを含むがこれらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される場合、「非プロトン性極性溶媒系」という用語は、溶媒が単一の非プロトン性極性溶媒(例えば、ニートなDMSO)または2つもしくはそれ以上の非プロトン性極性溶媒の混合物(例えば、DMSOとNMPの混合物)、または少なくとも1つの非プロトン性極性溶媒と別の薬学的に許容される溶媒系の混合物である溶液を表す。さらなる局面において、「非プロトン性極性溶媒系」という用語は、溶媒が、ある量の水分と、例えば水と、約0.1%の水に対する少なくとも約99.9%の非プロトン性溶媒のv/v比から最大で約50%の水に対する少なくとも約50%の非プロトン性溶媒のv/v比で混合された1つまたは複数の非プロトン性極性溶媒である、溶液を表す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「残留水分」は、製造元/供給元による調製後の薬物粉末中の残留水分(典型的には、残留水)を表し得る。典型的な粉末は、多くの場合、最大10%(w/w)の範囲の残留含水量を有する。これらの粉末が非プロトン性極性溶媒系に溶解された場合、粉末中の残留水分は製剤中に組み込まれる。さらに、非プロトン性極性溶媒はまた、一定レベルの残留水分を含み得る。例えば、新たに開封されたボトルのUSP等級のDMSOは、最大0.1%(w/w)の水分を含み得る。残留水分は、水が意図的に、例えば共溶媒として作用するようまたは非プロトン性極性溶媒系の凝固点を低下させるよう製剤に添加される「添加水分」と異なる。水分はまた、イオン化安定化賦形剤の添加時に(例えば、水性ストック溶液からの無機酸(例えば1N HClもしくはH2SO4)の添加を通じて)、または水(例えば、注射用水)の添加を通じて製剤に導入され得る。調製直後の製剤中の総含水量(それ以外のことに言及されていない限り、% v/v)は、残留水分および添加水分の両方からの寄与によるものである。
【0051】
本明細書で使用される場合、「デバイス流路」は、そのデバイスを用いて対象に製剤/溶液/溶媒を投与する間に製剤/溶液/溶媒と接触し得るデバイスの部分を表す。いくつかの局面において、デバイスは、様々な針および/またはチューブを通じて対象に製剤/溶液/溶媒を非経口投与することができるポンプと直列につながれた注入用セットであり得る。他の局面において、デバイスは、患者に直接装着し、ポンプに直列に接続される外部の注入用セットの使用を必要としないパッチポンプであり得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「デバイス流路と適合する製剤/溶液/溶媒」は、製剤/溶液/溶媒がデバイス流路の構成要素と適合することを表す。ある構成要素と適合する製剤/溶液/溶媒の場合、その製剤/溶液は、個々の使用期間および保管条件(例えば、1つの非限定的な例は、オンボディ型(on-body)ポンプおよび/または注入用セットにおける37℃で3日間の使用期間であると考えられる)でその構成要素が製剤/溶液/溶媒と持続的に接触しているときにその構成要素の0.05~5%未満を溶解すると考えられる。溶解しないことに加えて、製剤と適合する構成要素は、指定された使用期間および条件の下で、例えば、25~40℃の温度で12~72時間の期間、製剤と接触しているときに、他の重大な物理的変化(例えば、脱色、透明性の喪失、例えば、透明から部分的に不透明に進行すること、過剰に脆く/柔らかくまたは堅く/硬直的になること)を起こすべきではない。
【0053】
本明細書で使用される場合、「デバイス流路と不適合な製剤/溶液/溶媒」は、製剤/溶液/溶媒がデバイス流路の1つまたは複数の構成要素と不適合であることを意味する。ある構成要素と不適合である製剤/溶液/溶媒の場合、その製剤/溶液/溶媒は、その構成要素が製剤/溶液/溶媒と持続的に接触しているときに、与えられた使用期間および保管条件の間、例えば、25~40℃の温度で12~24時間以内またはそれより早く、その構成要素の少なくとも1~20%を溶解し得る。
【0054】
「約」または「およそ」または「実質的に変化しない」という用語は、当業者に理解されているのと近い意味で定義され、1つの非限定的な態様において、この用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内と定義される。さらに、「実質的に非水性」は、重量または体積で5%、4%、3%、2%、1%未満またはそれより少ない水を表す。
【0055】
「薬学的に許容される」成分、賦形剤または構成要素は、合理的な利益/危険比に見合う、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激およびアレルギー反応)を生じない、ヒトおよび/または動物において使用するのに適したものである。
【0056】
「薬学的に許容される担体」は、本発明の薬化合物を哺乳類、例えばヒトに送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤、またはビヒクルを意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「イオン化安定化賦形剤」は、治療剤のために特定のイオン化状態を確立および/または維持する賦形剤である。特定の局面において、イオン化安定化賦形剤は、適切な条件下で少なくとも1つのプロトンを供与するまたはプロトン源である分子であり得るまたは分子を含む。ブレンステッド・ローリーの定義にしたがい、「酸」は、プロトンを別の分子に供与し得る分子であり、この別の分子は、したがって、供与されたプロトンを受容することにより、塩基に分類され得る。他の局面において、イオン化安定化賦形剤は、適切な条件下で少なくとも1つのプロトンを受容するまたはプロトンシンクである分子であり得るまたは分子を含む。ブレンステッド・ローリーの定義にしたがい、「塩基」は、プロトンを別の分子から受容し得る分子であり、この別の分子は、したがって、受容されるプロトンを供与することにより、酸に分類され得る。本願で使用される場合、および当業者に理解されるように、「プロトン」という用語は、水素イオン、水素カチオン、またはH+を表す。水素イオンは、電子を有さず、典型的にプロトンのみからなる核から構成される(最も一般的な水素同位体は、プロチウムである)。詳細に、プロトンを治療剤に供与し得る分子は、非プロトン性極性溶媒中で完全にイオン化されるか、ほぼイオン化されるか、部分的にイオン化されるか、ほぼ非イオン化されるか、または完全に非イオン化されるかに関わりなく、酸またはプロトン源とみなされる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「無機酸(mineral acid)」は、1つまたは複数の無機化合物に由来する酸である。したがって、無機酸は、「無機酸(inorganic acid)」とも称され得る。無機酸は、単プロトン性または多プロトン性(例えば、二プロトン性、三プロトン性等)であり得る。無機酸の非限定的な例は、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、およびリン酸(H3PO4)を含む。
【0059】
本明細書で使用される場合、「無機塩基(mineral base)」(同等におよび代替的に「無機塩基(inorganic base)」と称され得る)は、1つまたは複数の無機化合物に由来する塩基である。すべてではないが多くの無機塩基は、通常、「強塩基」に分類され、無機塩基の非限定的な例は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)および水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「有機酸」は、酸性を有する(すなわち、プロトン源として機能し得る)有機化合物である。カルボン酸、例えば酢酸またはクエン酸が、有機酸の1つの例である。有機酸の他の公知の例は、アルコール、チオール、エノール、フェノール、およびスルホン酸を含むがこれらに限定されない。有機酸は、単プロトン性または多プロトン性(例えば、二プロトン性、三プロトン性等)であり得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、「有機塩基」は、塩基性を有する(すなわち、プロトン受容体/シンクとして機能し得る)有機化合物である。すべてではないが、多くの有機塩基は、窒素原子を含み(例えば、アミン)、有機塩基の非限定的な例は、アミノ酸(例えば、ヒスチジン、アルギニン、リジン)、ピリジン、イミダゾールおよびトロメタミンを含む。有機塩基は、1分子あたり1つまたは複数のプロトンを受容し得る。
【0062】
「電荷プロファイル」、「電荷状態」、「イオン化」、「イオン化状態」、および「イオン化プロファイル」は、言い換え可能に使用され得、そのペプチドのイオノゲン基のプロトン化および/または脱プロトン化に基づくイオン化状態を表す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「共製剤」は、非プロトン性極性溶媒系に溶解された2つまたはそれ以上の治療剤を含む製剤である。治療剤は、同じクラスに属し得(例えば、2つもしくはそれ以上の治療用ペプチド、例えばインスリンおよびプラムリンタイド、もしくはグルカゴンおよびGLP-1を含む共製剤)、または治療剤は、異なるクラスに属し得る(例えば、1つもしくは複数の治療用低分子および1つもしくは複数の治療用ペプチド分子、例えば、GLP-1およびリソフィリンを含む共製剤)。
【0064】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と組み合わせて使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味も有し得る。
【0065】
「含む(comprising)」(および含む(comprising)の任意の形態、例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する(having)」(および有する(having)の任意の形態、例えば、「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(および含む(including)の任意の形態、例えば、「含む(includes)」および「含む(include)」)または「含む(containing)」(および含む(containing)の任意の形態、例えば、「含む(contains)」および「含む(contain)」)は、包括的かつオープンエンド型であり、追加の、言及されていない要素または方法の工程を除外しない。
【0066】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および実施例は、本発明の具体的態様を示しているものの、例示目的で提供されるにすぎないことが理解されるべきである。加えて、この詳細な説明から、本発明の精神および範囲内での変更および改変が当業者に明らかとなるであろうことが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書に示される具体的態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することにより、より理解され得る。
【0068】
図1】市販の注入用セットのポリカーボネート透明プラスチック製ルアー型フィッティングに対する含水量(% v/v)の効果を示す。含水量は、(100%-DMSO量)で提供され、DMSO量は各バイアルのラベルに提供されている。例えば、60% DMSOと表示されているサンプルの場合、含水量はおよそ40% (v/v)である。インキュベート用オービタルシェーカーにおいて45℃で1週間の後にサンプルを撮影した。0%水分(100% DMSO)において、プラスチック構成要素は溶液に部分的に溶解し、10%水分(90% DMSO)で、透明プラスチックは、溶解はしていないように見えたが、不透明化した。25%水分およびそれ以上では、プラスチック構成要素は、保管期間の終了まで目視で透明であり、溶解しないままであった。
図2】45℃で2週間の保管後のDMSO-H2O混合物を充填した事前充填可能な注射システム(UniJect(商標);Becton-Dickenson)デバイスに対する効果を示す。プラスチックは、100%、95%および90%添加水分で、目視で不透明となり、25%、50%および100%添加水分で、目視で透明であった。
【発明を実施するための形態】
【0069】
発明の詳細な説明
水溶液として調製される場合、標準的な低分子、ペプチド、およびタンパク質分子は、複数の物理的および化学的分解経路の影響を受け得る。これらの治療用分子の多くにとって、水により触媒、媒介および/または促進される分解経路(例えば、加水分解、ラセミ化、脱アミド化)は、回避することができず、その結果、分子は十分に安定化され得ない。したがって、多くの治療剤は、非経口注射用の安定な溶液として調製することができず、代わりに、使用直前に再構成される粉末として調製される。
【0070】
多くの治療用分子が水中で示す物理的および/または化学的不安定性に対処するため、治療剤が生体適合性の非水性液、例えば、非プロトン性極性溶媒(例えば、DMSO)に溶解された製剤が調製され得る。以前の非水性製剤は、少なくとも部分的に、製剤の含水量を制限することで、水を介した分解経路を阻害することにより物理的および化学的安定性を促進するという前提に基づいている。これらの公知の製剤の多くは、その含水量を最大で10% (w/w)に制限している。
【0071】
多くの共通の分解経路、特に水が関与するそれらを阻害するための非水性治療用製剤を調製する上での非プロトン性極性溶媒の使用は、可溶化または溶解された治療用分子の安定性を大きく改善し得る。しかし、当技術分野で開示されている組成物および方法には問題が依然として残されている。特に、非プロトン性極性溶媒への治療用分子の直接溶解は、大部分の治療用分子の安定な組成物を調製する上で適切なアプローチではない。様々な治療剤は、DMSOに直接溶解された場合、例えば5 mg/mLの濃度のグルカゴンは、室温での保管で1日以内に不溶性の凝集物を形成し得る。グルカゴンおよびDMSOのみを含む組成物の場合、5 mg/mLはおよそ0.45%(w/w)のペプチド化合物に対応し、このことは、比較的低い濃度でさえも、非プロトン性極性溶媒系への直接溶解は、それ単独では、治療用分子の物理的凝集および/またはゲル化を防ぐことができないことを示している。さらに、非プロトン性極性溶媒系中で不溶性の凝集物を形成しないかもしれない治療用分子は、それにもかかわらず、非プロトン性極性溶媒系に直接可溶化された場合、化学的分解を受けやすい場合がある。
【0072】
理論に縛られることを望まないが、非プロトン性極性溶媒系において製剤化された場合に増強されたまたは最適な安定性および溶解性を示すために、治療用分子は、特定のイオン化プロファイルを必要とし得ると考えられる。イオン化プロファイルは、治療用分子のイオノゲン基のプロトン化および/または脱プロトン化を通じて獲得される電荷状態である。例えば、治療用ペプチドを構成するイオノゲン性アミノ酸残基(例えば、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸)のプロトン化は、溶液中の分子に、全体として正の電荷を付与し得る。あるいは、イオノゲン性アミノ酸残基の脱プロトン化は、溶液中の分子に、全体として負の電荷を付与し得る。本明細書で使用される非限定的な例においては、プロトン化された(すなわち、正に荷電した)分子が記載されるが、治療用ペプチド分子内のイオノゲン性アミノ酸残基の脱プロトン化もまた本発明の範囲内であるとみなされる。正に荷電したペプチド分子の間の比較的長距離の静電気的反発は、物理的凝集および/またはゲル化をもたらし得る短距離の疎水性相互作用を阻害し得る。したがって、十分なプロトン化(すなわち、最適なまたは有益なイオン化プロファイル)の非存在下で、非プロトン性極性溶媒系に溶解された治療用分子は、物理的に不安定であり、可溶性および/または不溶性の凝集物を形成し得る。したがって、非プロトン性極性溶媒系中の活性剤に改善された物理的および/または化学的安定性のためのイオン化プロファイルを付与することができるイオン化安定化賦形剤として機能するのに十分な濃度の少なくとも1つの賦形剤を含めることが必要となり得る。溶液に添加されるイオン化安定化賦形剤の適切な濃度は、イオン化安定化賦形剤の化学構造、活性剤の化学構造、薬剤の濃度、使用される溶媒系、共溶媒の存在、ならびに追加の賦形剤または製剤の構成要素の存在およびそれらの各々の濃度を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存する。
【0073】
特定の組成物および方法は、治療用分子に最適なイオン化プロファイルを、それらが非プロトン性極性溶媒系に可溶化される前に確立するよう設計される。例えば、供給元/製造元からのペプチド粉末は最初に、緩衝化水溶液に溶解され、その緩衝化水性ペプチド溶液のpHが個々のペプチドに最適な安定性および溶解性のそれに設定される。ペプチドはその後、粉末中でのペプチド分子のイオン化プロファイルが、乾燥される以前の水溶液中のペプチド分子のイオン化プロファイルとほぼ同等となり得るよう、水溶液か(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥を通じて)ら乾燥され粉末にされる。その後、そのペプチド粉末が非プロトン性極性溶媒系に可溶化された場合、ペプチド分子のイオン化プロファイルは粉末中のペプチド分子のイオン化プロファイルとほぼ同等となり得る。したがって、非プロトン性極性溶媒系中のペプチド分子のイオン化プロファイルは、緩衝化水溶液中のペプチド分子のイオン化プロファイルとほぼ同等である。
【0074】
非プロトン性極性溶媒に可溶化される前にその分子のイオン化プロファイルを最適化し、pH記憶を与えるために緩衝化水溶液から治療用分子を乾燥する必要性は、多くの場合、製剤製造工程に、時間および金銭の両面で大きな追加コストを課す。特に、乾燥プロセスは、治療用分子に様々な負荷をかけることが周知であり、治療用分子を保護するのに十分な量の追加の賦形剤(例えば、凍結保護剤、例えばトレハロースおよびスクロース、ならびに/または界面活性剤、例えばポリソルベート80)が水溶液中に含まれなければならず、そのため製剤のコストおよび複雑性が増大する。さらに、乾燥プロセス(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥)は、多くの場合、そのプロセスが最初に開発される初期研究開発の間に、研究スケールで、およびその後の、そのプロセスがスケールアップされ商業スケールのバッチを製造することができる機器および設備に移される製造スケールの間に、の両方において、与えられた治療用分子に対して最適化されなければならない。その結果、乾燥プロセスの初期開発および与えられた治療用分子に対する最適化の組み合わせは、該方法の移行および製造プロセスにおける追加工程の組み込みの両方に付随する時間およびコストも加わり、非常に高価となり得る。理論に縛られることを望まないが、治療用分子の適切または最適なイオン化プロファイルを達成するために十分な量の少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤を提供することにより、同じ電荷極性を有する(すなわち、負または正に荷電した)治療用分子の間の静電気的反発は、その規模が、(例えば、凝集をもたらす分子間の短距離の疎水性相互作用を通じた)物理的分解を防ぐのに十分となり得ると考えられる。このことは、特に溶液中の分子の濃度が高くなる場合に、溶液中で凝集する傾向を示す分子にとって特に重要である。さらに、治療剤のイオン化(すなわち、プロトン化または脱プロトン化)の程度を制御および最適化することにより、例えば、過剰なプロトン化は分解反応、例えば酸化(例えば、メチオニン残基の酸化)および断片化(例えば、ペプチド骨格の切断)を通じて化学的不安定化を促進し得るため、化学的分解が最小化され得る。したがって、いくつかの治療用分子に対して、物理的および/または化学的分解反応が最小化されるよう、プロトン化または脱プロトン化を通じて最適または有益なイオン化プロファイルが達成され得る。治療用ペプチドの場合、安定化に必要とされるイオン化(すなわち、プロトン化または脱プロトン化)の程度、したがって溶液中で必要とされるイオン化安定化賦形剤の量は、とりわけ、その一次構造(すなわち、アミノ酸配列)および溶液中のペプチド濃度に依存し得る。
【0075】
イオン化安定化賦形剤として機能する各分子は、与えられた溶媒系内で、治療用分子および/または追加の薬物物質/粉末状構成要素(例えば、塩、対イオン、緩衝分子等)にプロトンを供与する、またはそれらからプロトンを受容する一定の傾向を示し得、プロトンを供与する傾向は、その分子の相対酸性強度として表され得、プロトンを受容する傾向は、その分子の相対塩基性強度として表され得る。非限定的な例として、固定濃度のプロトン供与分子の場合(および、単純化すると、この例において単プロトン性分子のみを想定すると)より高い酸性強度を有する分子は、より弱い酸よりも高い程度に治療用分子をプロトン化し得る。したがって、治療用分子に適したまたは最適なイオン化プロファイルを達成するのに必要とされる、与えられたプロトン供与分子(イオン化安定化賦形剤)の濃度は、その酸性強度に逆比例し得る。本発明のこれらおよび他の非限定的な局面が、本明細書で議論される。
【0076】
特定の局面において、非プロトン性極性溶媒は、製剤の調製前に脱酸素化され得る。非プロトン性極性溶媒を脱酸素化するまたは非プロトン性極性溶媒から酸素を除去するために(例えば、脱気または脱酸素化)、多くの異なる技術が本発明の文脈において使用され得る。例えば、脱酸素化は、液体のみにより、液体および他の溶質分子(例えば、ミセル、シクロデキストリン等)により、または他の溶質分子のみにより、のいずれかにより液体非プロトン性極性溶媒に溶解されている酸素を除去し得るが、これらに限定されないことが想定される。脱酸素化技術の非限定的な例は、非プロトン性極性溶媒を減圧下におくことおよび/もしくは液体を加熱して溶解しているガスの溶解度を下げること、分留、膜脱気、不活性ガスによる置換、還元剤の使用、凍結-脱気-解凍サイクル、またはエアロック付き容器での長期保管を含む。1つの態様において、非プロトン性極性溶媒は、真空脱気により脱酸素化される。別の態様において、非プロトン性極性溶媒は、脱気装置を用いて脱酸素化される。1つの例において、脱気装置は、トレイ型またはカスケード型の脱気装置である。別の例において、脱気装置は、スプレー型脱気装置である。さらに別の態様において、非プロトン性極性溶媒は、気体-液体分離膜を用いて脱酸素化される。1つの例において、非プロトン性極性溶媒は、気体-液体分離膜および減圧を用いて脱気される。1つの態様において、非プロトン性極性溶媒中の酸素を置換または減少させるために、液体を通じて非酸素ガス(例えば、N2)が噴出される。1つの例において、非プロトン性極性溶媒を通じて噴出されるガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、不活性ガス、および/または水素ガス、好ましくは窒素ガスである。別の例において、ガスは、ガスストリップ塔を用いて、非プロトン性極性溶媒を通じて噴出される。さらに別の態様において、非プロトン性極性溶媒は、1つまたは複数の還元剤を用いて脱酸素化される。還元剤の非限定的な例は、亜硫酸アンモニウム、水素ガス、活性脱酸金属、銅、錫、カドミウム、ウッドメタル合金(50%ビスマス、25%鉛、12.5%錫、および12.5%カドミウム)等を含む。さらに別の態様において、非プロトン性極性溶媒は、凍結-脱気-解凍サイクルにより脱気される(例えば、少なくとも1、2、3、またはそれ以上のサイクルが使用され得る)。1つの例において、凍結-脱気-解凍サイクルは、液体窒素下での非プロトン性極性溶媒の凍結、真空の適用、およびその後の温水中での溶媒の解凍を含む。1つの態様において、非プロトン性極性溶媒は、スチール、ガラスまたは木製容器内での長期保管により脱酸素化される。別の態様において、非プロトン性極性溶媒は、脱酸素化の間、音波処理、超音波処理、または攪拌される。
【0077】
処理または脱酸素化されると、非プロトン性極性溶媒は、0.1 mM未満の溶解酸素、好ましくは0.05 mM未満の溶解酸素を有し得る。当業者に公知の方法が、任意の与えられた非プロトン性極性溶媒中の溶解酸素の量を決定するために使用され得る(例えば、溶解酸素メーターまたはプローブデバイス、例えばVernier(Beaverton, Oregon, USA)により市販されている溶解酸素プローブが使用され得る)。
【0078】
特定の局面において、本願に開示される製剤は、不活性ガス雰囲気下で調製および/または密封され得る。一般的な方法は、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)のヘッドスペースを提供するよう一次容器封止システム(例えば、バイアル)を埋め戻すことを含む。二次容器封止システム(例えば、密封されたホイルポーチ)もまた、不活性ガス環境下で密封され得る。
【0079】
I. 製剤
本発明の製剤は、容器および/または流体流路と適合する少なくとも1つのイオン化安定化賦形剤を含む非プロトン性極性溶媒系中に存在する治療剤を含む。治療剤は、高レベルの水分を有する非プロトン性極性溶媒系に溶解(例えば、完全にもしくは部分的に可溶化)または懸濁(完全にもしくは部分的に)され得る。
【0080】
いくつかの態様において、治療剤は、「ニート」な、すなわち、水以外の共溶媒を含まない非プロトン性極性溶媒中に存在する。他の態様において、治療剤は、2つまたはそれ以上の非プロトン性極性溶媒の混合物かつ10% v/v超の含水量(moisture content)または含水量(water content)である溶媒系(すなわち、非プロトン性極性溶媒系)中に存在する。例は、10% (v/v)超の総含水量のDMSOおよびNMPの75/25 (% v/v)混合物である。しかし、いくつかの態様において、共溶媒が使用され得、1つまたは複数の非プロトン性極性溶媒が共溶媒と混合される。共溶媒の非限定的な例は、(水を明示的に除くと)エタノール、プロピレングリコール(PG)、グリセロール、およびそれらの混合物を含む。共溶媒は、約0.1% (w/v)~約50% (w/v)、例えば、約0.1%、約0.5%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、または約40% (w/v)の範囲の量で製剤中に存在し得る。いくつかの態様において、共溶媒は、約10% (w/v)~約50% (w/v)、約10% (w/v)~約40% (w/v)、約10% (w/v)~約30% (w/v)、約10% (w/v)~約25% (w/v)、約15% (w/v)~約50% (w/v)、約15% (w/v)~約40% (w/v)、約15% (w/v)~約30% (w/v)、または約15% (w/v)~約25% (w/v)の範囲の量で製剤中に存在する。
【0081】
なおさらに、本発明の製剤は、(少なくとも1つの)イオン化安定化賦形剤に加えて1つまたは複数の他の賦形剤を含み得る。いくつかの態様において、他の賦形剤は、糖、塩、デンプン、糖アルコール、抗酸化物質、キレート剤、および防腐剤から選択される。適切な糖賦形剤の例は、トレハロース、グルコース、スクロース等を含むがこれらに限定されない。安定化賦形剤に適したデンプンの例は、ヒドロキシエチルデンプン(HES)を含むがこれに限定されない。安定化賦形剤に適した糖アルコール(ポリオールとも称される)の例は、マンニトールおよびソルビトールを含むがこれらに限定されない。適切な抗酸化物質の例は、アスコルビン酸、システイン、メチオニン、モノチオグリセロール、チオ硫酸ナトリウム、スルファイト、BHT、BHA、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸プロピル、N-アセチル-L-システイン(NAC)、およびビタミンEを含むがこれらに限定されない。適切なキレート剤の例は、EDTA、EDTA二ナトリウム塩(エデト酸二ナトリウム)、酒石酸およびその塩、グリセリン、ならびにクエン酸およびその塩を含むがこれらに限定されない。適切な無機塩の例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、および酢酸亜鉛を含むがこれらに限定されない。適切な防腐剤の例は、ベンジルアルコール、メチルパラベン、メタクレゾール、プロピルパラベン、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。追加の製剤の構成要素は、局所麻酔剤、例えば、リドカインまたはプロカインを含む。いくつかの態様において、追加の安定化賦形剤は、約0.01% (w/v)~約60% (w/v)、約1% (w/v)~約50% (w/v)、約1% (w/v)~約40% (w/v)、約1% (w/v)~約30% (w/v)、約1% (w/v)~約20% (w/v)、約5% (w/v)~約60% (w/v)、約5% (w/v)~約50% (w/v)、約5% (w/v)~約40% (w/v)、約5% (w/v)~約30% (w/v)、約5% (w/v)~約20% (w/v)、約10% (w/v)~約60% (w/v)、約10% (w/v)~約50% (w/v)、約10% (w/v)~約40% (w/v)、約10% (w/v)~約30% (w/v)、または約10% (w/v)~約20% (w/v)の範囲の量で製剤中に存在する。いくつかの態様において、追加の安定化賦形剤は、約、最大、または少なくとも0.01、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60% (w/v)の量で製剤中に存在する。
【0082】
II. 治療剤
本発明の文脈における治療剤は、ペプチドまたはタンパク質化合物、低分子薬、ならびにそれらの薬学的に許容されるアナログおよび/または塩を含む。当業者は、特定の疾患または状態の処置にどの治療剤が適するかを知っており、そして疾患または状態の処置のために本明細書に記載される製剤中の有効量の治療剤を投与することができるであろう。
【0083】
本発明の文脈において使用され得るペプチドおよびタンパク質(ならびにそれらの塩)の非限定的な例は、グルカゴン、プラムリンタイド、インスリン、ロイプロリド、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、副甲状腺ホルモン(PTH)、アミリン、アンギオテンシン(1~7)、ボツリヌストキシン、ヘマタイド、アミロイドペプチド、胃抑制ペプチド、抗体(モノクローナルもしくはポリクローナルであり得る)またはそのフラグメント、免疫原性ペプチド(例えば、ウイルス、細菌、または原核もしくは真核生物もしくはその細胞由来のペプチドまたはペプチド複合体)、インスリン様成長因子、成長ホルモン放出因子、抗菌因子、グラチラマー、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-1アゴニスト、エキセナチド、そのアナログ、アミリンアナログ(プラムリンタイド)、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。いくつかの好ましい局面において、治療剤は、グルカゴン、インスリンおよび/またはプラムリンタイドである。本発明の組成物および方法において有利に使用され得るそのようなペプチド、タンパク質、ペプチド複合体およびそれらの誘導体のさらなる適切な例は、本明細書に提供される情報および当技術分野において容易に入手可能な情報に基づき、当業者に知られているであろう。
【0084】
本発明の文脈において使用され得る低分子薬(およびその塩)の非限定的な例は、エピネフリン、ベンゾジアゼピン、レボチロキシン、カテコールアミン(catecholemines)、「トリプタン」、スマトリプタン、ノバントロン、化学療法用低分子(例えば、ミトキサントロン)、コルチコステロイド系低分子(例えば、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)、免疫抑制性低分子(例えば、アザチオプリン、クラドリビン、シクロホスファミド一水和物、メトトレキサート)、抗炎症性低分子(例えば、サリチル酸、アセチルサリチル酸、リソフィリン、ジフルニサル、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチレート、ベノリレート、フルフェナム酸、メフェナム酸、メクロフェナム酸、トリフルム酸(triflumic acid)、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、アルクロフェナク、フェンチアザク、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、フェンブフェン、スプロフェン、インドプロフェン、チアプロフェン酸、ベノキサプロフェン、ピルプロフェン、トルメチン、ゾメピラク、クロピナク、インドメタシン、スリンダク、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アザプロパゾン、フェプラゾン、ピロキシカム、イソキシカム)、神経学的障害を処置するために使用される低分子(例えば、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン、タクリン、メトリホネート、リバスチグミン、セレギリン、イミプラミン、フルオキセチン、オランザピン、セルチンドール、リスペリドン、バルプロ酸セミナトリウム、ガバペンチン、カルバマゼピン、トピラメート、フェニトイン)、癌を処置するために使用される低分子(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、テモゾロミド、イマチニブ、ボルテゾミブ)、スタチン(例えば、アトルバスタチン、アムロジピン、ロスバスタチン、シタグリプチン、シンバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン)および他のタキサン誘導体、結核を処置するために使用される低分子(例えば、リファンピシン)、低分子抗真菌剤(例えば、フルコナゾール)、低分子抗不安剤および低分子抗けいれん剤(例えば、ロラゼパム)、低分子抗コリン作動剤、(例えば、アトロピン)、低分子β-アゴニスト薬(例えば、硫酸アルブテロール)、低分子マスト細胞安定化剤およびアレルギーを処置するために使用される低分子剤(例えば、クロモリンナトリウム)、低分子麻酔剤および低分子抗不整脈剤(例えば、リドカイン)、低分子抗生剤(例えば、トブラマイシン、シプロフロキサシン)、低分子抗片頭痛剤(例えば、スマトリプタン)、ならびに低分子抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン)を含むがこれらに限定されない。好ましい態様において、低分子は、エピネフリンである。
【0085】
本発明の治療剤は、疾患の予防、診断、軽減、処置、または治癒のために皮内投与され得る。本発明にしたがい製剤化され得るおよび本発明にしたがう送達システムで用いられ得るタンパク質およびタンパク質性化合物の例は、生物学的活性を有するまたは疾患もしくは他の病的状態を処置するために使用され得るタンパク質を含む。
【0086】
上記のペプチド、タンパク質、および低分子薬の各々は、周知であり、様々な製造元および提供元から市販されている。さらに、投薬製剤中のペプチド、タンパク質、または低分子薬の量は、現在受け入れ可能な量、対象/患者の要求(例えば、年齢、健康、体重、性質および症状の程度)等に依存して様々であり得、そのような量は、容易に入手可能な情報に基づき薬学および薬理学分野の当業者により容易に決定され得る。
【0087】
製造元または商業的提供元により提供される治療剤は、典型的に、本明細書に記載される製剤に溶解させるための粉末として提供される。溶解させるための粉末化された薬剤を形成するために、多くの公知技術が使用され得る。
【0088】
任意の適切な用量のペプチドまたはペプチド群が、本発明の安定な製剤において製剤化され得る。一般に、ペプチド(または、2つもしくはそれ以上のペプチドを含む態様においては、各ペプチド)は、約0.1 mg/mLから、最大でそのペプチドまたはペプチド群の溶解限度までの範囲の量で製剤中に存在する。特定のそのような態様において、用量は、約0.1 mg/mL~約500 mg/mL、または最大で約200 mg/mL、約250 mg/mL、約300 mg/mL、約350 mg/mL、約400 mg/mL、約450 mg/mL、もしくは約500 mg/mLである。いくつかの態様において、ペプチドは、約2 mg/mL~約60 mg/mLの範囲の量で製剤中に存在する。他の態様において、ペプチドは、約3 mg/mL~約50 mg/mLの範囲の量で製剤中に存在する。さらに他の態様において、ペプチドは、約5 mg/mL~約15 mg/mLの範囲の量で製剤中に存在する。さらに他の態様において、ペプチドは、約0.1 mg/mL~約10 mg/mL(例えば、約0.5 mg/mL、約1 mg/mL、約2 mg/mL、約2.5 mg/mL、約3 mg/mL、約4 mg/mL、または約5 mg/mL)の範囲の量で製剤中に存在する。さらに他の態様において、ペプチドは、約1 mg/mL~約50 mg/mLの範囲の量で製剤中に存在する。繰り返しになるが、ペプチドの用量が、使用されるペプチドおよび処置される疾患、障害または状態に依存して様々であり得ることは、本明細書に提供されるおよび関連技術において容易に入手可能な情報に基づき、当業者に直ちに明らかになるであろう。
【0089】
いくつかの態様において、本発明の製剤はさらに、抗酸化物質を含む。他の態様において、製剤はさらに、キレート剤を含む。さらに他の態様において、本発明の製剤はさらに、防腐剤、糖(例えば、単糖、二糖もしくは多糖)、糖アルコール、ポリオール、界面活性剤および/または塩を含む。
【0090】
III. 治療方法
別の局面において、本発明は、疾患、状態、または障害を処置するために、その疾患、状態、または障害を処置、軽減、または予防するのに効果的な量の本明細書に記載される安定な製剤中の治療剤を対象に投与することにより疾患、状態、または障害を処置する方法を提供する。
【0091】
いくつかの態様において、本発明の治療方法は、低血糖症を有する対象に、低血糖症を処置するのに効果的な量の本明細書に記載される安定な製剤中の低血糖症治療剤を投与することにより低血糖症を処置することを含む。いくつかの態様において、対象は、グルカゴンを含む安定な製剤を投与される。特定の局面において、低血糖症は、糖尿病または非糖尿病関連疾患、状態、および障害により引き起こされ得る。
【0092】
低血糖症に関してthe American Diabetes Association and the Endocrine Societyのワークグループにより報告されたように(Seaquist, et al, (2013), Diabetes Care, Vol 36, pages 1384-1395)、低血糖症の症状に関する血糖の閾値は(他の応答の中でも)直近の先行する低血糖症の後にはより低い血漿グルコース濃度側に、および糖尿病が十分に制御されていないおよび低血糖症を頻発しない患者においてはより高い血漿グルコース濃度側に移行するため、糖尿病における低血糖症を定義する血漿グルコース濃度の単一の閾値は、典型的には指定されていない。
【0093】
しかしながら、患者および介護者の双方の注意を低血糖症に関連する潜在的危害に向ける警告値を定義することができる。低血糖症の危険のある患者(すなわち、スルホニル尿素、グリニドおよびインスリンで処置される患者)は、自身によりモニタリングされる血漿グルコース - または持続グルコースモニタリングされる皮下グルコース - の濃度が ≦ 70 mg/dL(≦3.9 mmol/L)で、低血糖症を発症する可能性を警告されるべきである。それは非糖尿病個体および糖尿病が十分管理されている個体の両方における症状に関する血糖の閾値よりも高いので、それは通常、臨床的な低血糖エピソードを予防する時間を与え、低グルコースレベルにおけるモニタリングデバイスの限定的な精度に対してある程度のマージンを提供する。
【0094】
重度の低血糖症の状態は、炭水化物、グルカゴンを能動的に投与する、または他の是正措置を行なうために他者の補助を必要とするイベントである。血漿グルコース濃度は、イベントの間に利用可能でないかもしれないが、正常への血漿グルコースの復帰後の神経学的回復は、このイベントが低い血漿グルコース濃度により誘導されたことの十分な証拠とみなされる。典型的に、これらのイベントは、≦50 mg/dL(2.8 mmol/L)の血漿グルコース濃度で起こり始める。裏付けのある有症状性の低血糖症は、低血糖症の典型的症状に≦70 mg/dL(≦3.9 mmol/L)の測定された血漿グルコース濃度が付随するイベントである。無症状性の低血糖症は、低血糖症の典型的症状が付随しないが、≦70 mg/dL(≦3.9 mmol/L)の測定された血漿グルコース濃度が付随するイベントである。推定有症状性低血糖症は、低血糖症に典型的な症状に血漿グルコース測定が付随しないが、≦70 mg/dL(≦3.9 mmol/L)の測定された血漿グルコース濃度により引き起こされたと考えられるイベントである。偽低血糖症は、糖尿病を有する人が、低血糖症の典型的症状のいずれかを報告すると共に、測定された血漿グルコース濃度が>70 mg/dL(>3.9 mmol/L)であるがそのレベルに近づいているイベントである。
【0095】
さらに、低血糖症関連自律神経不全症(HAAF)が、開示される発明により処置され得る適応症に含まれる。Philip E. Cryer, Perspectives in Diabetes, Mechanisms of Hypoglycemia-Associated Autonomic Failure and Its Component Syndromes in Diabetes, Diabetes, Vol. 54, pp. 3592-3601 (2005)に記載されるように、「直近の先行する医原性低血糖症は、(インスリン減少なしおよびグルカゴン増加なしの状況下で一定レベルのその後の低血糖症に対するエピネフリン反応を減少させることによる)不完全なグルコースカウンターレギュレーションおよび(一定レベルのその後の低血糖症に対する交感神経副腎髄質系反応およびそれにより生じる神経原性症状反応を減少させることによる)低血糖症無知覚の両方を、したがって低血糖症の危険なサイクルを引き起こす。」HAAFは、1型および進行型2型糖尿病を有する者に影響する。さらに、本開示の発明はまた、膵島細胞移植後の患者において低血糖症を処置し得る。
【0096】
本発明の製剤はまた、広義には過剰なインスリンにより引き起こされる低い血中グルコースレベルの状態および影響を表す高インスリン性低血糖症の処置に使用され得る。重篤であるが典型的に一過性である高インスリン性低血糖症の最も一般的なタイプは、1型糖尿病患者における外因性インスリンの投与により引き起こされる。このタイプの低血糖症は、医原性低血糖症と定義され得、1型および2型糖尿病の血糖管理における制限要因である。夜間低血糖症(夜間低血糖)は、外因性インスリンを摂取した患者において生じる一般的なタイプの医原性低血糖症である。しかし、高インスリン性低血糖症はまた、例えば、先天性高インスリン血症、インスリノーマ(インスリン分泌性腫瘍)、運動誘発性低血糖症および反応性低血糖症において、内因性インスリンによっても引き起こされ得る。反応性低血糖症は、非糖尿病性低血糖症であり、食事後に - 典型的に食後4時間以内に起こる低い血糖に起因する。反応性低血糖症はまた、食後低血糖症とも称され得る。反応性低血糖症の症状および兆候は、空腹感、薄弱、震え、眠気、発汗、錯乱および不安を含み得る。胃手術(例えば、肥満手術)は、術後に食物が小腸へと素早く通過しすぎ得るため、1つの可能性のある要因である(肥満手術後低血糖症(PBH))。さらなる要因は、身体が食物を分解することを困難にする酵素欠乏、またはホルモンであるエピネフリンに対する感受性亢進を含む。
【0097】
いくつかの態様において、本発明の安定な製剤を用いて処置される疾患、状態、または障害は、糖尿病状態である。糖尿病状態の例は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、前糖尿病、高血糖症、低血糖症、および代謝症候群を含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、疾患、状態、または障害は、糖尿病関連低血糖症、運動誘発性低血糖症、および肥満手術後低血糖症、または本明細書に記載されるおよび当業者に公知の他のタイプの低血糖症を含むがこれらに限定されない低血糖症である。いくつかの態様において、疾患、状態、または障害は、糖尿病である。
【0098】
いくつかの態様において、本発明の治療方法は、糖尿病を処置するのに効果的な量の本明細書に記載される安定な製剤中の治療剤を、糖尿病を有する対象に投与することにより、糖尿病を処置することを含む。いくつかの態様において、対象には、インスリンを含む安定な製剤が投与される。いくつかの態様において、対象には、プラムリンタイドを含む安定な製剤が投与される。いくつかの態様において、対象には、インスリンおよびプラムリンタイドを含む安定な製剤が投与される。いくつかの態様において、対象には、エキセナチドを含む安定な製剤が投与される。いくつかの態様において、対象には、グルカゴンおよびエキセナチドを含む安定な製剤が投与される。
【0099】
特定の局面において、エピネフリンが、アナフィラキシーの危険のあるまたはアナフィラキシーが疑われる対象に投与され得る。エピネフリンは、食物、薬物および/または他のアレルゲン、アレルゲン免疫療法、診断検査物質、昆虫による刺創および咬傷、ならびに突発性または運動誘発性アナフィラキシーを含むがこれらに限定されない複数の原因に起因し得るI型アレルギー反応の緊急処置として指定されている。
【0100】
疾患、状態、または障害(例えば、糖尿病状態、低血糖症、またはアナフィラキシー)を処置するための本明細書に記載されるペプチドまたは低分子薬の投与用量は、当業者により実施される用量および日程計画にしたがう。本発明の方法において使用されるすべての薬理学的薬剤の適切な用量に関する一般的なガイドラインは、Goodman and Gilman's, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 11th Edition, 2006, 前記、およびPhysicians' Desk Reference (PDR)、例えばその第65(2011)または第66(2011)版, PDR Network, LLCに提供されており、その各々が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に記載される疾患、状態、または障害を処置するためのペプチド薬の適切な用量は、組成物の製剤化、患者の反応、状態の重篤度、対象の体重、および処方医の判断を含む様々な要因にしたがい異なり得る。記載される製剤の有効用量は、医学的に有効な量のペプチド薬を送達する。用量は、個々の患者により必要とされる場合または医師により決定される場合、時間とともに増加または減少され得る。
【0101】
有効量または用量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、これらの用量を送達する製剤は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の低分子、ペプチド、またはペプチドアナログ(ペプチドアナログが明示的に除外されない限り、集合的に「ペプチド」)を含み得、各ペプチドは、製剤中に約0.1 mg/mLから、最大でそのペプチドの溶解限度の濃度で存在する。この濃度は、好ましくは、約1 mg/mL~約100 mg/mLである。特定の局面において、濃度は、約1 mg/mL、約2 mg/mL、約2.5 mg/mL、約3 mg/mL、約4 mg/mL、約5 mg/mL、約7.5 mg/mL、約10 mg/mL、約15 mg/mL、約20 mg/mL、約25 mg/mL、約30 mg/mL、約35 mg/mL、約40 mg/mL、約45 mg/mL、約50 mg/mL、約55 mg/mL、約60 mg/mL、約65 mg/mL、約70 mg/mL、約75 mg/mL、約80 mg/mL、約85 mg/mL、約90 mg/mL、約95 mg/mL、または約100 mg/mLである。低分子の濃度は、医療関係者に公知であり、本明細書に提供される開示を用いて、例えば、その間のすべての値および範囲を含む、0.01 mg/ml~500 mg/ml、または約1、2、2.5、3、4、5、10、25、50、75、100、200、500~約1000 mgの用量で、確立および実施され得る。
【0102】
本発明の製剤は、(例えば、注射によるまたは注入による)皮下、皮内、筋内、鼻内、口腔内、経皮、または静脈内投与を含むがこれらに限定されない、非経口投与で使用され得る。いくつかの態様において、製剤は、皮下投与される。製剤はまた、経皮的に、例えば、組成物を皮膚に局所適用(例えば、組成物を皮膚上に拡散させるまたは組成物を皮膚パッチに充填し、その皮膚パッチを皮膚に貼付する)することにより、送達され得る。
【0103】
本開示の製剤は、任意の適切なデバイスを用いて注入によりまたは注射により投与され得る。例えば、本発明の製剤は、シリンジ(例えば、事前充填済シリンジ)、ペン注射デバイス、自動注射デバイス、またはポンプデバイス内に入れられ得る。いくつかの態様において、注射デバイスは、多用量注射ポンプデバイスまたは多用量自動注射デバイスである。製剤は、注射デバイス、例えば自動注射器を作動させたときに、ペプチド薬を送達するよう針から容易に流出することができるような様式でデバイス内に存在する。適切なペン/自動注射デバイスは、Becton-Dickenson、Swedish Healthcare Limited(SHL Group)、YpsoMed Ag等により製造されるペン/自動注射デバイスを含むがこれらに限定されない。適切なポンプデバイスは、Tandem Diabetes Care, Inc.、Delsys Pharmaceuticals等により製造されるポンプデバイスを含むがこれらに限定されない。
【0104】
いくつかの態様において、本発明の製剤は、バイアル、カートリッジ、または事前充填済シリンジにて投与準備完了状態で提供される。
【0105】
いくつかの態様において、安定な製剤は、低血糖症の処置のための医薬を製剤化するために使用される。いくつかの態様において、安定な製剤は、グルカゴンまたはその塩(例えば、グルカゴン酢酸塩)を含む。いくつかの態様において、安定な製剤は、グルカゴンおよびエキセナチドを含む。
【0106】
いくつかの態様において、安定な製剤は、糖尿病の処置のための医薬を製剤化するために使用される。いくつかの態様において、安定な製剤は、インスリンを含む。いくつかの態様において、安定な製剤は、エキセナチドを含む。いくつかの態様において、安定な製剤は、プラムリンタイドを含む。いくつかの態様において、安定な製剤は、インスリンおよびプラムリンタイドを含む。
【0107】
さらなる態様において、本発明により提供される製剤は、特定の診断手順で使用され得る。特定のそのような態様において、本発明のグルカゴン含有製剤は、1つまたは複数の診断手順の前に、それに付属するものとして、その一部として、またはそれと組み合わせて、哺乳類、例えばヒトまたは脊椎動物に投与され得、それによって、疾患または障害に罹っているまたは罹りやすい患者において疾患または障害を診断する方法を提供する。本発明のグルカゴン含有製剤が適切に使用され得るそのような診断手順の非限定的な例は、アルツハイマー病(その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,727,041号を参照のこと)および成長ホルモン欠乏症(米国特許第5,065,747号を参照のこと;Boguszewski, C.L., Endocrine 57: 361-363 (2017)、およびYuen, K.C.J., ISRN Endocrinology, vol. 211, Article ID 608056, pp. 1-6 (2011), doi:10.5402/2011/608056も参照のこと;これらすべての開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を診断する方法を含む。そのような使用のさらなる例は、特定の放射線学的診断手順、特に、消化器病状態(その非限定的な例は、腸閉塞、虫垂炎、バレット食道、セリアック病、癌、肝硬変、クローン病、憩室炎、憩室症、潰瘍、胆石、胃脱出症、胃炎、胃食道逆流症、肝炎(A/B/C)、裂孔ヘルニア、炎症性腸障害、ヘルニア、刺激性腸症候群、膵炎、肛門周囲裂、潰瘍性大腸炎等を含む。)の診断において使用される手順におけるもの、成人患者において胃腸管の器官および結合組織の動きを一時的に抑制する胃腸系の放射線学的試験の間、を含む(例えば、https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=8c8acad6-44cc-43aa-966b-027e053be8f5においてアクセス可能な、グルカゴン凍結乾燥物の製品ラベル(NDCコード63323-185-03)を参照のこと;Glucagon in Gastroenterology, J. Picazo, ed., Lancaster, England: MTP Press Ltd. (1979), 特に第3~7章, pp. 39-120もまた参照のこと;その開示は、参照により本明細書に組み入れられる)。そのような診断方法において、本発明のグルカゴン含有製剤は、障害に罹っているまたは罹りやすい患者に対して、患者体内へのそのような製剤の任意の適切な導入方法、例えば本明細書に記載されるものにより、例えば約0.2 mg~約0.75 mgの用量で診断検査(例えば放射線学的手順)の約1~10分前に静脈内に、または約1 mg~約2 mgの用量で診断検査(例えば、放射線学的手順)の約5~15分前に筋内もしくは経皮的に、投与される。本発明の製剤の他の適切な治療的および診断的使用方法は、当技術分野で入手可能な情報に照らして、本明細書に含まれる開示に基づき、通常の知識を有する医師または薬剤師に直ちに知られるであろう。
【0108】
IV. キット/容器
キットもまた、本発明の特定の局面において使用されることが想定される。例えば、本発明の製剤は、容器を含み得るキットに含まれ得る。1つの局面において、例えば、製剤は、製剤を再構成または希釈する必要なく対象に投与するまたは対象に投与するよう構成されたデバイスに組み込まれる用意ができている容器内に含まれ得る。すなわち、投与される製剤は、この容器内で保管され得、必要なときに直ちに使用することができる。容器は、デバイスであり得る。デバイスは、シリンジ(例えば、事前充填済シリンジ)、ペン注射デバイス、自動注射デバイス、製剤をくみ上げもしくは投与することができるデバイス(例えば、自動もしくは非自動外部ポンプ(例えば、パッチポンプ、もしくは外部の注入用セットを必要とするポンプ)、移植可能なポンプ)または灌流バッグであり得る。適切なペン/自動注射デバイスは、Becton-Dickenson、Swedish Healthcare Limited(SHL Group)、YpsoMed Ag等により製造されるペン/自動注射デバイスを含むがこれらに限定されない。適切なポンプデバイスは、Tandem Diabetes Care, Inc.、Delsys Pharmaceuticals等により製造されるポンプデバイスを含むがこれらに限定されない。適切な注入用セットは、Tandem Diabetes Care, Inc.、Medtronic、Disetronic、YpsoMed Ag、 Unomedical A/S等により製造/流通/販売されるものを含むがこれらに限定されない。
【実施例
【0109】
本開示のいくつかの態様は、具体的実施例によりさらに詳細に記載される。以下の実施例は、例示を目的として提供されるものであり、いかなる様式によっても本発明を限定することは意図されていない。例えば、当業者は、過度の実験を行うことなく、本質的に同じ結果を得るために変更または改変することができる様々な決定的でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0110】
実施例1:DMSO含有製剤に対する注入用システムの適合性
本発明のDMSO含有製剤および組成物に対する特定の注入用システム/セットの適合性の初期研究において、市販の注入用セット(Cleo, Ypsomed)の硬質プラスチック部分(すなわち、ポンプコネクタ)を、0% DMSO(純水)~100% DMSO(ニートDMSO)の範囲の様々なDMSOおよび水の混合物に浸漬させた。インキュベート用オービタルシェーカーにおいて45℃で1週間の後にサンプルを撮影した。この実施例では追加の製剤構成要素(例えば、活性成分)を含めなかったことに留意されたい。
【0111】
図1は、注入用システムのコネクタの構造的完全性 - 本発明の特定の製剤に対するこの構成要素の、したがって注入用システム全体の適合性の尺度 - に対するDMSO含量(% v/v)の効果を示している。注入用セットの硬質プラスチック部分は、ポリカーボネート製であり、現実世界の使用条件下で試験された場合にDMSOと不適合であることが観察された注入用セットの唯一の部分であった。75%(v/v)DMSO(すなわち、25%(v/v)水)またはそれ未満において、この注入用セットの構成要素は、視覚的に、溶媒系と適合していた(すなわち、プラスチックは透明かつ溶解しないままであった)。90%(v/v)DMSO(すなわち、10%(v/v)水)において、この構成要素は、変色(すなわち、不透明化)を示し、100% DMSOにおいて、この構成要素は、浸漬後10分で溶解し始めた。
【0112】
より高含水量で調製されたDMSOベースの溶液に対する改善された視覚的な適合性はさらに、異なる市販のプラスチックベースの送達システムであるUniJect(商標)注射システム(Becton Dickinson)を用いてさらに示された。これらの事前充填済シリンジデバイスは、第三世界各国における使用のために安価に設計されている、単一のプラスチック片から成型された注射器である。初期安定性研究(示さず)は、高DMSO濃度製剤(すなわち、>90%(v/v))がこの注射システムと適合せず、加速保管の間にDMSOベースの製剤がプラスチックの変色(不透明化)および層間剥離を促進したことを示した。しかし、その後の適合性試験は、本発明にしたがう一定範囲の添加水量を有するDMSO溶液を用いて行った。この研究において、UniJect(商標)デバイスを、DMSO-H2O混合物で満たし、45℃での2週間の保管後に撮影した。図2に示されるように、UniJect(商標)デバイスは、100%、95%および90%DMSOを含む溶液(これらの溶液は0%、5%および10%の添加水分(v/v)を含むことに留意されたい)中で変色し、不透明となった。25%添加水分(または75%DMSO)において、プラスチックは、外見上100%水(または0%DMSO)サンプルと同様に、透明に見えた。これに対して、プラスチックは、75%、50%および0%DMSO(それぞれ、25%、50%および100%添加水分に対応)で視覚的に透明であった。
【0113】
まとめると、これらの研究の結果は、高含水量(moisture content)(例えば、高含水量(water content))DMSO含有製剤、特に75%DMSO (v/v)濃度またはそれ以下の製剤は、すべてではないが大部分のプラスチック含有市販注射システムと適合すると考えられることを示している。
【0114】
実施例2:高含水量製剤中でのグルカゴンの保管安定性
実施例1に記載される結果に基づき、DMSOベースの治療用グルカゴン製剤と共にプラスチック含有注入用システムを使用することを可能にするよう、高含水量製剤中での特定の治療用化合物、例えばグルカゴン、の安定性を試験することが関心対象となった。
【0115】
高含水量グルカゴンベース製剤を用いた安定性研究は、製剤中での物理的不安定性(すなわち、フィブリル形成および/またはゲル化)を抑制するために追加の酸が必要とされ得ることを示した。5 mg/mLグルカゴン製剤の場合、物理的安定性は、製剤に追加される酸濃度に関連することが観察された。グルカゴン製剤は、ガラスバイアル内で、(様々な溶液中水濃度を有する)DMSO中5 mg/mLとなるよう調製し、様々な濃度の無機酸(例えば、HClまたはH2SO4;本研究においては、HClを使用した)も溶液中に存在するようにした。45℃のガラスバイアル中でのグルカゴン製剤の3週間の保管の後、バイアルを、バイアルの内容物のゲル化または凝集の存在について目視試験した。これらの研究の結果が表1に示されており、ここでチェックマークはサンプルが物理的に安定であったこと(すなわち、ゲル化または凝集の視覚的観察がなかったこと)を示し、「X」はサンプル内でゲル化および/または凝集が観察されたことを示す。これらの初期研究は、高含水量を有する物理的に安定なグルカゴン製剤が調製できることを示している。
【0116】
(表1)種々の含水量(moisture content)(含水量(water content))(DMSOとのv/v)および無機酸濃度(3 mM~7 mM)での5 mg/mLグルカゴン製剤の物理的安定性
【0117】
物理的に安定な(すなわち、非ゲル化)製剤の化学的安定性に関する以前の研究は、DMSO/ペプチド(例えば、グルカゴン)製剤中の高レベルの水分の存在がペプチドの化学的分解を促進することを示した。米国特許第9,649,364号(その開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)で議論されているように、イオン化安定化賦形剤(例えば、プロトン供与体)の添加がゲル化を阻害するために必要とされ、この安定化効果は、比較的短距離の疎水性相互作用の形成(すなわち、フィブリル化およびゲル化を促進すると考えられる隣接分子の疎水性領域の整列)を阻害する、正に荷電した隣接分子間の静電気的反発の増加に起因すると考えられる。
【0118】
理論に縛られることを望まないが、高レベルの水分の添加は、DMSOベースのペプチド製剤に複数の脱安定化効果を与えると考えられる。これらは、以下を含む(がこれらに限定されない):(1)より高い含水量は、疎水性相互作用を促進し得(すなわち、より高い水分は隣接する分子の疎水性領域をひとまとめにし得)、それによりゲル化およびフィブリル化がもたらされる;ならびに(2)より高い水分は、水ベースの製剤の不安定性の原因である脱安定化加水分解反応(例えば、断片化、脱アミド化、およびアスパラギン酸異性化)を促進し始め得る。第1の経路は、(米国特許第9,649,364号に記載されるのと同様に)イオン化安定化賦形剤の導入を通じたより多くのプロトン(すなわち、酸、特に無機酸、例えば硫酸、塩酸および/または硝酸)の添加を介して阻害され得る。プロトン濃度の増加は、隣接ペプチド分子間の静電気的反発の強度を増強し得ると考えられる。しかし、より多くのプロトンの添加はまた、多くの水を介した分解反応も触媒し、ペプチドの化学的分解を促進する。したがって、当技術分野で公知のように、ペプチド含有溶液への水の添加は、ペプチドの不安定化を促進し得る。しかし、低温(すなわち、冷蔵温度)で許容可能な長期的安定性を示す製剤はそれでも、上昇温度(例えば、37℃)への暴露が比較的短い(≦1週間)場合、ポンプベースの製品における使用に適し得る。
【0119】
様々な含水量および無機酸濃度を含むグルカゴン製剤を調製し、保管時の物理的および化学的の両方の安定性について試験した。サンプル製剤は、30~40%(v/v)の含水量(moisture content)(含水量(water content))を含むDMSO中にグルカゴン粉末を5 mg/mL濃度となるよう溶解させることによって調製した。さらに、フィブリル化/ゲル化を阻害し、物理的安定性を促進するよう、5~9 mMの酸濃度(HCl)範囲を製剤に含めた。この溶液を2 mLガラスバイアルに充填し、密封し、5℃または25℃/60%RHのいずれかの安定性チャンバー内で逆さにして保管した。純粋なDMSOはおよそ18.5℃の凝固点を有するが、製剤の高い含水量は、その溶液が5℃で固化しないよう凝固点を低下させる。製剤の物理的および化学的安定性を、8週間(56日間)の保管の後に評価した。物理的安定性は目視により評価し(フィブリルの形成または溶液のゲル化について観察し)、化学的安定性は、グルカゴン安定性表示法(米国特許第9,649,364号を参照のこと)を用いてUHPLC-UV(280 nm)により評価した。
【0120】
8週時点で、すべての製剤の目視検査は、外見上粒状物質を含まない透明で無色の溶液を明らかにした。いずれのサンプルにおいても、フィブリル化またはゲル化は観察されなかった。
【0121】
化学的安定性の結果が、表2に示されており、データは、示された温度下でのUHPLCを通じたグルカゴンピークのパーセント純度を示している(各サンプルにつきn=1)。これらの結果は、5℃で(凍結しなかった)溶液が優れた安定性を発揮することを示している。
【0122】
(表2)高含水量グルカゴン製剤の保管時の化学的安定性
【0123】
5℃で、含水量および酸量の増加は、グルカゴンペプチドの若干の分解を促進するように見えたが、すべてのサンプル間の測定されたピーク純度の差は≦1%のばらつきであった。25℃で、酸および水分の影響はより大きくなり、両方の構成要素が分解を促進した。しかし、すべての製剤が、室温での1ヵ月の使用期間とより長期間の冷蔵条件下での保管を合わせた期間、許容可能な物理的および化学的安定性を有するように見えた。
【0124】
これらの研究を拡張し、それらを実施例1で得られた注入用システムに関する情報を結びつけるために、3つの異なる5 mg/mLグルカゴン製剤を調製し、デバイス内に製剤を充填するための内部プラスチックリザーバを含む開発中のパッチポンプへの導入について評価した。1つの低含水量(「製剤1」)および2つの高含水量製剤(「製剤2」および「製剤3」)。これらの製剤は、表3に示される構成要素を含むものであった。「製剤1」の含水量は<1.5% (v/v)であり、製剤2および3は、それぞれ、35% (v/v)および50% (v/v)含水量で調製した。
【0125】
(表3)パッチポンプ送達システムにおける評価のための試験グルカゴン製剤
【0126】
別々のポンプのプラスチックベースの流体リザーバにおよそ1.5 mLの各々の製剤を充填し、1日あたり500μL(0.5 mL)の一定注入速度で3日間かけて送達した。患者により装着された場合の体表面温度をシミュレートするため、3日間の送達期間の間、ポンプを35℃のオーブンに入れた。各注射器について、送達された流体を、UHPLCにより分析するためにガラスバイアルに収集した。
【0127】
ポンプに製剤1(低含水量製剤)を充填してから30分以内に、ポンプがこれ以上動作しないことを示すシステムエラーが発生した。ポンプの試験は、この製剤がポンプ内で漏出した(すなわち、リザーバのプラスチック構成要素を溶解することにより流路内に穴を形成させた)ことを明らかにした。これに対して、両方の高含水量製剤(2および3)を充填したポンプは、ポンプ内での漏出を示さず、3日間の期間にわたって期待通りに機能した。
【0128】
対照として、同じ条件下でサンプルをガラスバイアル中でも保管した。各製剤につき、3本のバイアルおよび2つのパッチポンプサンプルを試験した。結果を表4に示す。
【0129】
(表4)グルカゴン/DMSO製剤のバイアルおよびポンプ(オンボディ型注射器)サンプルの化学的安定性
【0130】
これらの結果は、ペプチドの安定性が、ポンプ内の流体接触路(例えば、プラスチックおよびゴム構成要素)により負の影響を受けず、両方の製剤がガラスバイアルとポンプの間で同等の安定性を発揮することを示している。データは、高DMSO量(>90% (w/w))製剤といくつかのポンプベースの送達システムの不適合性を示しつつ、市販のポンプを通じた送達のための高含水量DMSOベース製剤の有効性を示している。まとめると、これらの研究は、高い使用時安定性および市販のポンプとの適合性と共に、冷蔵条件下で優れた長期保管安定性を発揮する高含水量DMSO/グルカゴン製剤を調製することができることを示している。
【0131】
実施例3:高含水量製剤中のグルカゴンの長期保管安定性
高含水量グルカゴン製剤の長期保管安定性を実証するために、30~50% (v/v)の水分を含むDMSOベースのペプチド製剤を調製した。グルカゴンの濃度は、評価したすべての製剤において5 mg/mLとした。物理的安定性を維持するために、硫酸(6 mMまたは7 mMのいずれか)をサンプルに含めた。
【0132】
サンプルを、2R ISOガラスバイアル中、2~8℃または-20℃のいずれかで、1年以上(398日)保管し、その後に物理的および化学的安定性について特徴づけた。物理的安定性は、不溶性粒状物質の形成を含むフィブリル化および/またはゲル化の兆候についてサンプルを目視で試験することにより評価した。化学的安定性(すなわち、グルカゴンピーク純度)は、実施例2に記載される安定性表示UHPLC法を用いて試験した。結果を表5に示す。
【0133】
(表5)示された保管条件下での398日間の後のサンプルのUHPLCデータ(グルカゴンピーク純度)(N=1)
【0134】
いずれの条件下でもすべてのサンプルが凍結せず、保管期間を通じて液体状態を維持した。サンプル製剤において、物理的不安定性(例えば、ゲル化、沈殿)の兆候は観察されなかった。UHPLC分析は、これらのサンプルが、評価された水分範囲で化学的安定性を維持していたことを示した。冷蔵温度(2~8℃)で保管されたサンプルでは、含水量および酸の両方を増加させた場合に化学的安定性の低下が観察されたが、全体的なグルカゴン純度は1年超の保管後も95%超と良好に維持されていた。
【0135】
先行する実施例のそれらと合わせて、これらの結果は、冷蔵およびゼロ度以下の両方の条件下で優れた長期保管安定性を発揮する高含水量DMSO/グルカゴン製剤を調製することができることを示している。
【0136】
本願で開示され特許請求される組成物および/または方法はすべて、本開示に照らせば、過度の実験を行うことなく製造および実施することができる。本開示の組成物および方法はいくつかの態様の観点で記載されているが、本開示の構想、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物および方法に対してならびに方法の工程においてまたは工程の順序においてバリエーションが適用され得ることが当業者に明らかであろう。より具体的に、本明細書に記載される薬剤は、化学的および生理学的の両面で関連する特定の薬剤で置き換えられ得、それでも同一または類似の結果を達成され得ることが明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲および構想の範囲内であるとみなされる。
図1
図2
【国際調査報告】