(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(54)【発明の名称】プロカスパーゼ‐3の活性化及びがんの治療のための免疫療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20220722BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220722BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20220722BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220722BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220722BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220722BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220722BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220722BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20220722BHJP
C12N 9/64 20060101ALI20220722BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P43/00 111
A61K31/495
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K39/00 H
A61P37/04
C12N5/09
C12N9/64 Z
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570464
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2020035578
(87)【国際公開番号】W WO2020243712
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500436215
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシテイ オブ イリノイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ、ミュン - リュル
(72)【発明者】
【氏名】ラノア、ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ヒャン - ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイガー、マーリーズ
(72)【発明者】
【氏名】モンゴメリー、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲンロザー、ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ティモシー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ボードロー、マシュー
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B050DD11
4B050HH01
4B050KK03
4B050KK18
4B050LL01
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BD27
4B065BD34
4B065BD39
4B065CA44
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC751
4C085AA03
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
血液脳関門を通過するプロカスパーゼ‐3活性化薬であるPAC‐1は、がん細胞の免疫刺激性破壊を誘導する有効なアプローチとして確認されている。PAC‐1は、がん細胞のMLH1の切断を誘導し、MLH1の不活性化は、変異負荷の増加と主要組織適合性複合体(MHC)産物によるネオアンチゲン提示をもたらすことが研究で明らかになっている。ここでは、免疫療法の力をがん治療に効果的に発揮させるためのメカニズムに基づいた戦略を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロカスパーゼ‐3活性化剤;
(b)少なくとも1つの第2の活性剤、ここで該第2の活性剤は、チェックポイント阻害剤、がんワクチン、代謝調節剤、マクロファージ阻害剤、又は免疫刺激剤若しくは調節剤である;及び
(c)任意に、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体
を含む組成物。
【請求項2】
プロカスパーゼ‐3活性化剤がPAC‐1である、請求項1に記載の組成物。
【化1】
【請求項3】
第2の活性剤ががん細胞においてアポトーシスを誘導する効果を有し、PAC‐1が第2の活性剤の効果を相加効果よりも大きい量で増強し、PAC‐1が第2の活性剤に対するがん細胞の脆弱性をプライム化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第2の活性剤が、インドールアミン‐ピロール2,3‐ジオキシゲナーゼ(IDO)、アデノシンA
2A受容体(A2AR)、トランスフォーミング成長因子β(TGF‐β)、C‐X‐Cケモカイン受容体タイプ4(CXCR‐4)、C‐Cケモカイン受容体タイプ4(CCR4)、腫瘍壊死因子受容体(CD27)、インターロイキン2受容体サブユニットβ(CD122)、デスレセプター5(DR5)、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、グルタミナーゼ、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、トール様受容体(TLR)、樹状細胞(DC)、又はそれらの組み合わせを調節する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
第2の活性剤が、ADXS11‐001、ADXS31‐142、AMP‐224、AMP‐514、アテゾリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベバシズマブ、セミプリマブ、BLZ945、BMS‐936559、BMS986016、BMS986156、BMS986205、CB839、CIMAvax、CMP001、CP870893、CPI‐444、CRS207、CV301、DCワクチン、DNX2401、DS‐8273a、デュルバルマブ、エパカドスタット、FAZ053、FPA008、GDC0919、GSK3174998、GVAX、GWN323、IMCgp100、IMP321、イムプリムPGG、インドキシミド、イピリムマブ、JTX‐2011、LAG525、LCL161、LK‐301、LY2157299、LY2510924、LY3022855、MBG453、MEDI0562、MEDI0680、MEDI6469、MEDI9447、MGN1703、モガムリズマブ、MOXR0916、ネオアンチゲンワクチン、NEO‐PV‐01、NIS793、ニボルマブ、NKTR‐214、PBF509、PDR001、ペムブロリズマブ、ペプチドワクチン、ペキシダルチニブ(PLX3397)。PF‐04518600、PF‐3512676、REGN2810、REGN3767、RO7009789、SD101、タリモゲン ラヘルパレプベク、TPIV200/huFR‐1、トレメリムマブ、TroVax、TSR022、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウトミルマブ、バルリルマブ、ビアゲンプマツセル‐L(HS‐110)、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの第2の活性剤が、プログラムされた細胞死タンパク質1(PD‐1)、プログラムされたデスリガンド1(PD‐L1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA‐4)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有‐3(TIM‐3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG‐3)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4又はOX40)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9又は4‐1BB)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)、誘導性T細胞コスティミュレーター(ICOS)、又はこれらの組み合わせを介して免疫応答を調節する少なくとも1つのチェックポイント阻害剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
チェックポイント阻害剤が、抗PD‐1、抗CTLA‐4、又はそれらの組み合わせであり、抗PD‐1がニボルマブ又はペムブロリズマブであり、抗CTLA‐4がイピリムマブ又はトレメリムマブ、又はそれらの組み合わせである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
PAC‐1の濃度が約0.1μM~約50μMであり、第2の活性剤の濃度が約1nM~約100μMである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体を含み、a)担体が、水、緩衝剤、糖類、セルロース、シクロデキストリン、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール、トコフェロール、リポソーム、ミセル、又はそれらの組み合わせを含むか、b)賦形剤が、結合剤、潤滑剤、吸着剤、ビヒクル、崩壊剤、保存剤、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
組成物ががん細胞を選択的に標的とし、がん細胞が、膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、膠芽腫、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、メラノーマ、髄膜腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、骨肉腫、膵臓がん、前立腺がん、腎がん、又は甲状腺がんの細胞であり、ここで、乳がんは任意にトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは任意に非小細胞肺がんであり、腎がんは任意に転移性腎細胞がんである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
がん細胞を、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物の有効量と接触させ、それによってがん細胞の成長又は増殖を阻害することを含む、がん細胞の成長又は増殖を阻害する方法。
【請求項12】
ミスマッチ修復(MMR)タンパク質の抑制、又はカスパーゼ3活性化を媒介としたMutLホモログ1(MLH1)タンパク質の分解によって、がん細胞の成長又は増殖が抑制され、DNAのマイクロサテライト不安定性(MSI)が誘発される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
がん細胞に有効量の請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を接触させることを含む、がん細胞にアポトーシスを誘導する方法であって、がん細胞中のミスマッチ修復(MMR)タンパク質を抑制することによってアポトーシスを誘導する、上記方法。
【請求項14】
MMRタンパク質がMutLホモログ1(MLH1)タンパク質であり、プロカスパーゼ‐3活性化因子を介したカスパーゼ‐3活性化により媒介される、MLH1タンパク質の分解が、がん細胞のアポトーシスを誘導する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
治療上有効な量のプロカスパーゼ‐3活性化剤と有効な量の第2の活性剤を、それを必要としている対象に同時又は順次投与することを含む、がんを治療する方法であって、第2の活性剤が免疫療法剤であり、免疫療法剤の効果がプロカスパーゼ‐3活性化剤の投与によって増強される、上記方法。
【請求項16】
プロカスパーゼ‐3活性化因子がPAC‐1である、請求項15に記載の方法。
【化2】
【請求項17】
PAC‐1の濃度が約0.1μM~約50μMであり、第2の活性剤の濃度が約1nM~約100μMである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PAC‐1の濃度が約1μM~約10μMであり、第2の活性剤の濃度が約1nM~約1μMである;又は
PAC‐1の1日あたりの総投与量が約10mg/kg~約125mg/kgであり、第2の活性剤の1日あたりの総投与量が約1mg/kg~約100mg/kgである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第2の活性剤が、チェックポイント阻害剤、がんワクチン、代謝調節剤、マクロファージ阻害剤、免疫刺激剤、又は調節剤;又はそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第2の活性剤が、アテゾリムマブ、アベルマブ、ベバシズマブ、BMS986016、BMS986156、CP870893、デュルバルマブ、FAZ053、GSK3174998、GWN323、IMP321、イピリムマブ、JTX‐2011、LAG525、MBG453、MEDI0562、MEDI0680、MEDI6469、MOXR0916、ニボルマブ、PDR001、ペムブロリズマブ、PF‐04518600、REGN2810、REGN3767、RO7009789、トレメリムマブ、TSR022、ウレルマブ、ウトミルマブ、又はこれらの組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
免疫療法剤がチェックポイント阻害剤であり、チェックポイント阻害剤が、プログラムされた細胞死タンパク質1(PD‐1)、プログラムされたデスリガンド1(PD‐L1)、細胞障害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA‐4)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM‐3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG‐3)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4又はOX40)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9又は4‐1BB)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)、誘導性T細胞コスティミュレーター(ICOS)、又はそれらの組み合わせを介して免疫応答を調節する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
プロカスパーゼ‐3活性化剤がミスマッチ修復(MMR)タンパク質を抑制し、MMRタンパク質がMutLホモログ1(MLH1)タンパク質を含み、プロカスパーゼ‐3活性化剤を介したカスパーゼ‐3活性化により媒介される、MMRタンパク質の分解が、MMRタンパク質の欠損、DNAのマイクロサテライト不安定性(MSI)、ネオアンチゲンの発現、又はそれらの組み合わせを誘導し、それにより免疫治療薬の効果を高め、プロカスパーゼ‐3活性化剤ががんの腫瘍浸潤リンパ球を増加させる、請求項15に記載の方法
【請求項23】
がんが、膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、膠芽腫、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、メラノーマ、髄膜腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、骨肉腫、膵臓がん、前立腺がん、腎がん、又は甲状腺がんであり、乳がんは任意にトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは任意に非小細胞肺がんであり、腎がんは任意に転移性腎細胞がんである、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
化合物PAC‐1と第二の活性剤が対象に同時に投与される;又は
化合物PAC‐1及び第2の活性剤が対象に順次投与され、ここで、化合物PAC‐1が第2の活性剤の前に対象に投与されるか、又は化合物PAC‐1が第2の活性剤の後に対象に投与される、請求項15~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
化合物PAC‐1及び第2の活性剤が、対象に1日1回(q.d.)、1日2回(b.i.d.)、1日3回(t.i.d.)、又は1日4回(q.i.d.)投与され、PAC‐1の1日あたりの総投与量が約1mg/kg~約150mg/kgである;又は
PAC‐1の各投与量は、約70mg、約175mg、約250mg、約375mg、約450mg、約500mg、約625mg、約750mg、又は約1000mgである;
又はPAC‐1の各投与量は、約50mg/m
2~約250mg/m
2である、請求項15~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、PAC‐1及び抗PD‐1抗体を投与することを含み、PAC‐1は、PAC‐1の1日あたりの総投与量が約100mg/kg~約125mg/kgとなるように、21日以上連続して毎日投与され、抗PD‐1抗体は、21日以上連続して2回又は4回投与され、抗PD‐1抗体の投与量は約10mg/kgであり、抗PD‐1抗体の各投与量は別々の日に投与される、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年5月30日に出願された米国仮特許出願第62/854,823号及び2019年12月6日に出願された第62/944,404号の35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)から交付されたグラントNo.R01 CA120439の政府支援を受けて行われたものである。政府はこの発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
免疫療法の成功は、メラノーマ、肺がん、膀胱がんの治療を大きく変え、他のいくつかのタイプの腫瘍にも大きな期待が寄せられている。一部の患者に見られた劇的な結果(例えば、末期の病気であっても持続的な効果が得られた)は、他の難治性のがんにもこのような治療法が有効であるという期待を抱かせた。腫瘍内の変異負荷と免疫チェックポイント阻害剤の効果には明らかな相関関係がある。この見解は、DNAミスマッチ修復欠損やマイクロサテライト不安定性(MSI)を有する患者に対するペムブロリズマブ(PD‐1に対する抗体であるキイトルーダ(Keytruda))の承認に反映されている。残念ながら、変異負荷の少ない多くのがんについては、免疫療法の臨床試験はほとんど期待外れであり、MSIの表現型を持つがんが10%未満であるという事実は、免疫療法の成功を広く拡大する上での課題を示している。膠芽腫(GBM)に対する免疫療法の課題は、ネオアンチゲンの発現が少ないこと、腫瘍内へのT細胞の浸潤がないこと、ほとんどの薬剤が血液脳関門(BBB)を通過するのが難しいことを考えると、さらに重大である。
【0004】
最近の重要な進展として、腫瘍発生の起源にかかわらず、PD‐1阻害(ペムブロリズマブ使用)の臨床効果を示すバイオマーカーとして、DNAマイクロサテライト不安定性(MSI)が臨床承認された。今回の承認は、ミスマッチ修復欠損(dMMR)が固形腫瘍のPD‐1阻害に対する反応を予測するということを示す、注目に値する前臨床及び臨床データに基づいている。dMMR/MSIを有する腫瘍では、100~1000個の体細胞変異が生じることが知られており(MMRが有効ながんと比較して10倍高い、
図1A)、ネオアンチゲンが増加していると推測されるからである。しかし、dMMR/MSIが存在するのは、がんの中でも割合が低く、おそらく10%未満であり、GBMの5%未満を含む。散発的なMSIは、MLH1プロモーターのエピジェネティックなサイレンシングによって引き起こされる。MLH1のサイレンシングは、MMR欠損症のマーカーとして一般的に用いられている。MLH1サイレンシングと体細胞変異の数との相関関係は、多くの研究で証明されており、
図1に示すとおりである。
【0005】
重要なことに、最近の報告(Germano,G.,et al.,Nature 2017,552,116)では、MLH1の不活性化(CRISPR/Cas9ノックアウト経由)が、より高い変異負荷とネオアンチゲンプロファイルの増加につながることが検証されている。このMLH1ノックアウトで誘発された表現型は、マウスにおいて最小限の共感腫瘍を樹立するがん細胞につながることから、免疫応答を高めるにはdMMRで十分であることが示唆されている。さらに、ゲノム上でMLH1をノックアウトすると、免疫チェックポイント阻害剤(すなわち、抗PD‐1+抗CTLA‐4)への反応が劇的に増加する。これらの結果から、MLH1の機能が失われると、変異負荷の増加によって表現型が変化し、最終的には、インビボでのネオアンチゲンの発現、免疫認識、免疫チェックポイント阻害剤に対する感受性の上昇につながることが示唆された。
【0006】
もし、MLH1の機能低下をがん細胞に選択的に誘導できれば、チェックポイント阻害剤やネオアンチゲンペプチドワクチンなどの免疫療法に対する患者の反応性が大幅に向上する可能性がある。刺激的なことに、複数の大規模なプロテオミクス研究により、MLH1はカスパーゼ‐3の最上位の基質であり、6時間後には0%のタンパク質しか残っていないことが明らかになっている。さらに、MLH1は活性型カスパーゼ‐3のみの基質であり、他の活性型カスパーゼ(カスパーゼ‐1,2,6,7,8)によるタンパク質分解は観察されなかった。
【0007】
プロカスパーゼ‐3(PC‐3)がカスパーゼ‐3に切断されることは、アポトーシスの重要な節目となる。このカスパーゼは、何百ものタンパク質基質の加水分解を触媒し、細胞死に導くからである。がんの特徴は、がん細胞が突然変異やアポトーシスタンパク質の調節異常によってアポトーシスを回避する能力を持っていることである。いくつかの抗がん剤の探索戦略は、これらの変異したタンパク質の阻害に焦点を当てている。これを補完するアプローチとして、PC‐3などのプロアポトーシスタンパク質を小分子で活性化する方法がある。PC‐3は、頻繁に変異するタンパク質と比較して、アポトーシスカスケードの下流に位置しており、がんにおけるPC‐3の変異頻度が低いこと、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、膠芽腫(GBM)、膵臓がん、肝臓がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、卵巣がん、結腸がん、骨肉腫、髄膜腫など多くの種類のがんでプロカスパーゼ‐3酵素がしっかりと発現していることに基づいて、低分子を介したPC‐3の活性化が、抗がん剤の戦略として積極的に検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
がんを治療するための既存の免疫療法アプローチでは、ネオアンチゲンの発現量が少ない場合には効果が得られないという問題がある。そこで、がん細胞を選択的に狙い、ネオアンチゲンの発現量を増加させることで、免疫療法によるがん細胞の根絶を可能にする薬剤が求められている。
【0009】
腫瘍におけるプロカスパーゼ‐3からカスパーゼ‐3への選択的な活性化は、MLH1の定量的な切断をもたらし、その結果、dMMR/MSIとなり、それによって免疫療法の効果が著しく向上することになる。PAC‐1は、MSS腫瘍をdMMR/MSI腫瘍に変えるMLH1の切断を含む、がんにおける免疫刺激を選択的に誘導するために本明細書で使用され、それにより腫瘍は免疫療法による治療に対してより感受性が高くなる。PAC‐1による免疫刺激は、ストレス反応の誘導を促進し、それによって腫瘍の微小環境を変化させ、免疫性炎症の程度を高めることが、結果として示唆された。このような結果は、より多くのがん患者に、劇的で持続的な反応という免疫療法の力をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本開示は、以下を含む組成物を提供する。
(a)プロカスパーゼ‐3活性化剤;
(b)少なくとも1つの第2の活性剤、ここで該第2の活性剤は、チェックポイント阻害剤、がんワクチン、代謝調節剤、マクロファージ阻害剤、又は免疫刺激剤若しくは調節剤である;及び
(c)任意に、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体。
様々な実施形態において、プロカスパーゼ‐3活性化剤はPAC‐1である。
【化1】
【0011】
また、本開示は、治療上有効な量のプロカスパーゼ‐3活性化剤と有効な量の第2の活性剤を、それを必要としている対象に同時又は順次投与することを含む、がんを治療する方法であって、第2の活性剤が免疫療法剤であり、第2の活性剤の効果がプロカスパーゼ‐3活性化剤の投与によって増強される方法を提供する。
【0012】
がんを治療する方法のある特定の実施形態は、PAC‐1及び抗PD‐1抗体を対象に投与することを含み、PAC‐1は、PAC‐1の1日あたりの総投与量が約100mg/kg~約125mg/kgとなるように、21日以上連続して毎日投与され、抗PD‐1抗体は、21日以上連続して2回又は4回投与され、抗PD‐1抗体の投与量が約10mg/kgであり、抗PD‐1抗体の各投与量が別々の日に投与される。
【0013】
本開示はまた、医学療法における使用のための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。医学療法は、がん、例えば、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、肺がん、子宮内膜がん、膵臓がん、前立腺がん、リンパ腫、メラノーマ、白血病、多発性骨髄腫、膠芽腫、肝がん、非小細胞肺がん、骨肉腫、髄膜腫、腎がん、転移性腎細胞がん、甲状腺がん、又は結腸がんを治療することができる。本開示の実施形態はまた、哺乳動物の疾患、例えば、ヒトのがんを治療するための医薬の製造のための、本明細書に記載の組成物の使用を提供する。医薬は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、本開示の特定の実施形態又は様々な側面をさらに示すために含まれている。いくつかの例では、本開示の実施形態は、本明細書に提示された詳細な説明と組み合わせて添付の図面を参照することによって最もよく理解することができる。説明及び添付図面は、本開示の特定の具体的な例、又は特定の側面を強調することができる。しかし、当業者であれば、実施例又は側面の一部が、本開示の他の実施例又は側面と組み合わせて使用できることを理解するであろう。
【0015】
【
図1】A)マイクロサテライト不安定性(MSI)及びB)MLH1サイレンシングは、体細胞変異数の増加と強く相関しており、ここでは結腸がんについてVogelstein and co.のデータで示されている(Proc Natl Acad Sci U S A 2015,112,118)。MSS、安定なマイクロサテライト。
【0016】
【
図2】PAC‐1と免疫療法の相乗効果。PAC‐1によって誘導されたカスパーゼ‐3は、がんをさまざまな免疫療法のアプローチに感応させる特定のタンパク質を切断する。
【0017】
【
図3】PAC‐1処理は、アポトーシス死マーカーが存在しない場合にMLH1の切断を引き起こす。細胞株を表示濃度のPAC‐1と72時間インキュベートした後、ウエスタンブロットでMLH1タンパク質レベル、PARP‐1、切断されたPARP‐1(c‐PARP‐1はアポトーシスメーカー)、及びβ‐アクチン(ローディング対照)を分析した。細胞株の種類は、正常な細胞株であるHFF‐1を特に強調して示しており、がん細胞に特異的なMLH1の切断を示している。
【0018】
【
図4】共生腫瘍を持つマウスにPAC‐1を投与すると、腫瘍浸潤リンパ球の数が増加する。A)GL261神経球を同所移植したC57BL/6マウス。腫瘍を10日間定着させた後、マウス(n=3/グループ)にPAC‐1(100mg/kg POx10日)を投与又は非投与し、その後犠牲にした。腫瘍をCD3(茶色)で染色し、T細胞TILを同定した。データは4HPF/マウスあたりの平均CD3
+として示した。倍率はl00x。B)B16F10細胞を皮下移植したC57BL/6マウス。腫瘍を7日間定着させた後、マウス(n=8/グループ)にPAC‐1(100mg/kg IPx2x14日)を投与又は非投与し、その後犠牲にした。腫瘍をCD3(茶色)で染色し、T細胞TILを同定した。データは10HPF/マウスあたりの平均CD3
+として表示。倍率はl00x。
【0019】
【
図5】PD‐L1とMLH1のIHC研究のための検証。(A)ヒトの扁桃腺と(B)イヌのリンパ節での陽性PD‐L1発現。イヌのグリオーマ(C)H&E及び(D)PD‐L1 IHC。E)ヒトU87及び(F‐H)3つのイヌグリオーマ細胞株の核MLH1 IHC。
【0020】
【
図6】PAC‐1と免疫療法との併用による効果を示すグラフ。PAC‐1の投与は1日1回、100mg/kgである。1=ビヒクル+同位体;2=ビヒクル+抗PD‐1+抗CTLA‐4;3=PAC‐1+同位体;4=PAC‐1+抗PD‐1+抗‐CTLA‐4。
【0021】
【
図7】PAC‐1と抗PD‐1抗体を併用することで、K7M2の後期転移モデルにおいて生存期間の延長につながることを示すグラフ。MST=生存期間の中央値。図中、aPD1=抗PD‐1。
【0022】
【
図8】BALB/cマウスにおけるCT‐26_WT皮下モデルの開発。
【0023】
【
図9】BALB/cマウスにおけるCT‐26_WTの2回投与(A)対4回投与(B)後の成長。開いた丸=ビヒクル+抗IgG2A抗体、四角=PAC‐1(100mg/kg)+抗IgG2a抗体、三角=ビヒクル+抗PD‐1 mAb、逆三角形=PAC‐1(100mg/kg)+抗PD‐1 mAb。
【0024】
【
図10】PAC‐1及び抗PDL1 mAbによるBALB/cマウスの治療の分析。開いた丸=ビヒクル+抗IgG2A抗体、四角=PAC‐1(100mg/kg)+抗IgG2a抗体、三角=ビヒクル+抗PD‐1 mAb、逆三角形=PAC‐1(100mg/kg)+抗PD‐1 mAb。
【0025】
【
図11】BALB/CマウスにおけるCT‐26_TdTomato皮下腫瘍モデルの開発。
【0026】
【
図12】A) 治療プロトコルの例。B) PAC‐1で処理したBALB/cマウスの血漿のサイトカインアレイ。
【0027】
【
図13】肺、PBMC、及び脾臓におけるPAC‐1による治療14日後‐腫瘍チャレンジ後の好中球及びマクロファージ集団の分析。開いた円=ビヒクル+抗IgG2A抗体、四角=PAC‐1+抗IgG2a抗体、三角=ビヒクル+抗PD‐1 mAb、逆三角形=PAC‐1+抗PD‐1 mAb。
【0028】
【
図14】コンビナトリアルPAC‐1及び抗PD‐1治療後26日目のBALB/cマウスの肺、PBMC、及び脾臓におけるT細胞、B細胞、及びNK細胞の集団の分析。開いた丸=ビヒクル+抗IgG2A抗体、四角=PAC‐1+抗IgG2a抗体、三角=ビヒクル+抗PD‐1 mAb、逆三角形=PAC‐1+抗PD‐1 mAb。
【0029】
【
図15】BALB/cマウスの肺、PBMC、脾臓における腫瘍チャレンジから26日後の樹状細胞及びCD45
-腫瘍細胞の表面におけるPD‐L1の発現。開いた丸=ビヒクル+抗IgG2A抗体、四角=PAC‐1+抗IgG2a抗体、三角=ビヒクル+抗PD‐1 mAb、逆三角形=PAC‐1+抗PD‐1 mAb。
【0030】
【
図16】C57BL/6マウスにおけるMC38肺転移モデルの開発。1=ビヒクル、2=PAC‐1、3=抗PD‐1、4=PAC‐1+抗PD‐1。PAC‐1は100mg/kgの用量で腹腔内注射で投与し、抗PD‐1は10mg/kgの用量で腹腔内注射で投与した。
【0031】
【
図17】MC38肺転移モデルによる生存曲線。1=ビヒクル、2=PAC‐1、3=抗PD‐1、4=PAC‐1+抗PD‐1。PAC‐1は100mg/kgの用量の腹腔内注射で投与し、抗PD‐1は10mg/kgの用量の腹腔内注射で投与した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本明細書では、低変異負荷の腫瘍を高変異負荷の腫瘍に選択的に変換し、免疫療法の理想的な候補とする、メカニズムに基づく新しい戦略の開発を開示する。この戦略は、腫瘍抑制因子であるMLH1を標的として不活性化することを前提としている。本明細書で開示するように、MLH1のサイレンシングと抗PD‐1抗体への反応には強い相関関係があり、MLH1の遺伝子サイレンシングと腫瘍内の体細胞変異の数との関連性が説得力をもって示され、MLH1機能の喪失によるDNA損傷により高い免疫原性のストレス反応が誘導される。目標は、薬剤を介した腫瘍選択的なMLH1の不活性化により、免疫療法の力と可能性をGBMにもたらすことであった。MLH1はカスパーゼ‐3の主要な細胞基質であり、開示された方法では、PAC‐1と呼ばれる小分子を用いて、腫瘍細胞においてプロカスパーゼ‐3をカスパーゼ‐3に選択的に活性化させることで、MLH1の選択的切断をがん細胞において誘導することができる。
【0033】
PAC‐1は、経口投与可能なBBB浸透性の実験的治療薬で、ヒトのがん患者での安全性が証明されており、現在、GBMに対する臨床評価(放射線及びテモゾロミドとの併用)が行われている。本願の全体的な目的は、GBMの洗練されたモデルにおいて、薬物によるMLH1の切断と免疫療法の、メカニズムに基づく相乗効果を達成することである。中心となる仮説は、薬剤を介したMLH1の切断が、腫瘍選択的なDNA損傷とMSIを誘発し、潜在的なネオアンチゲンの量(及び免疫原性)を増加させるというものであった。さらに、PAC‐1のカスパーゼ‐3誘導活性は、腫瘍内の炎症環境を促進するため、「コールドな」GBM腫瘍を、さまざまな免疫療法の攻撃を受けやすい「ホットな」腫瘍に変える(
図2)。
【0034】
定義
以下の定義は、本明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために含まれている。本明細書では、記載されている用語は、以下の意味を持つ。本明細書で使用される他のすべての用語及び語句は、当業者が理解するであろう通常の意味を有する。このような通常の意味は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 14thEdition,by R.J. Lewis,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,2001などの技術辞書を参照して得ることができる。
【0035】
本明細書における「1つの実施形態」、「ある実施形態」などの表現は、記載されている実施形態が特定の側面、特徴、構造、部分(モイティ)、又は特性を含む可能性があるが、すべての実施形態がその側面、特徴、構造、部分(モイティ)、又は特性を必ずしも含むわけではないことを示している。さらに、このような表現は、本明細書の他の部分で言及されている同じ実施形態を指すことがあるが、必ずしもそうではないこともある。さらに、特定の側面、特徴、構造、部分(モイティ)、又は特性が、ある実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、そのような側面、特徴、構造、部分(モイティ)、又は特性を他の実施形態に影響を与えたり、接続したりすることは、当業者の知識の範囲内である。
【0036】
単数形の「a」(ある、一つの)、「an」(ある、一つの)、「the」(その)は、文脈上明らかに他の指示がない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「化合物」(a compound)と言った場合、それは複数のそのような化合物を包含し、その結果、化合物Xは複数の化合物Xを包含する。さらに、特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように作成することができることに留意されたい。このように、本声明は、本明細書に記載された任意の要素に関連して、「もっぱら」、「唯一」などの排他的な用語を使用すること、及び/又は請求項の要素を記載すること、あるいは「否定的な」制限を使用することの先行的な根拠となることを意図している。
【0037】
用語「及び/又は」は、この用語が関連付けられている項目のいずれか1つ、項目のいずれかの組み合わせ、又は項目のすべてを意味する。「1つ以上」(「一つ又は複数の」)及び「少なくとも1つ」というフレーズは、特にその用法の文脈で読むと、当業者には容易に理解できる。例えば、このフレーズは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、10、100、又は記載された下限値よりも約10倍、100倍、1000倍高い任意の上限値を意味することができる。
【0038】
当業者であれば理解できるように、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す数値を含むすべての数値は近似値であり、すべての場合において「約」という用語によって任意に修正されるものと理解される。これらの値は、本明細書の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。また、これらの値には、それぞれの試験測定で得られる標準偏差に必然的に起因する変動性が本質的に含まれていることも理解される。前置詞「約」を用いて値が近似値として表される場合、「約」という修飾語のない特定の値もまた、さらなる側面を形成することが理解されるであろう。
【0039】
「約」及び「およそ」という用語は、互換的に使用される。両方の用語は、指定された値の±5%、±10%、±20%、又は±25%の変動を指すことができる。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態では、45から55パーセントの変動、又は特定の請求項で別の方法で定義された変動を意味する。整数の範囲では、「約」という用語は、範囲の各端に記載された整数よりも大きい及び/又は小さい1つ又は2つの整数を含むことができる。本明細書で他に示されていない限り、「約」及び「およそ」という用語は、個々の成分、組成物、又は実施形態の機能性の観点から同等である、記載された範囲に近接した値、例えば、重量パーセントを含むことを意図している。「約」及び「およそ」という用語は、この段落で上述したように、記載された範囲の終点を修正することもできる。
【0040】
当業者であれば理解できるであろうが、あらゆる目的、特に書面による説明を提供するという観点から、本明細書に記載されているすべての範囲は、あらゆる可能なサブレンジ及びそのサブレンジの組み合わせ、さらには範囲を構成する個々の値、特に整数値も包含している。したがって、2つの特定の単位の間の各単位も開示されていることが理解される。例えば、10~15が開示されている場合、11、12、13、14も個々に、また範囲の一部として開示される。記載された範囲(例えば、重量パーセント又は炭素基)は、その範囲内の各特定の値、整数、小数、又はアイデンティティーを含む。記載されている任意の範囲は、十分に記述されており、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、又は10分の1に分解することが可能であると容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書に記載されている各範囲は、下位3分の1、中間3分の1、上位3分の1などに容易に分解することができる。また、当業者であれば理解できるように、「~まで」、「少なくとも~」、「~より大きい」、「~未満」、「~超」、「~以上」などのすべての言葉は、記載されている数を含み、そのような言葉は、その後、上述のようにサブレンジに分解することができる範囲を指す。同様に、ここで言及されているすべての比率は、より広い比率の範囲内にあるすべてのサブ比率も含む。したがって、ラジカル、置換基、及び範囲について記載されている特定の値は単なる説明のためのものであり、ラジカル及び置換基について定義された範囲内の他の定義された値又は他の値を排除するものではない。さらに、各範囲の終点は、他の終点との関係においても、他の終点とは独立しても重要であることが理解されるだろう。
【0041】
また、当業者であれば、マーカッシュグループのようにメンバーが共通の方法でグループ化されている場合、本開示は、全体として記載されているグループ全体だけでなく、グループの各メンバーを個別に、及び主グループの可能なすべてのサブグループを包含することを容易に認識するであろう。さらに、すべての目的のために、本開示は、主グループだけでなく、グループメンバーの1つ又は複数を欠いた主グループも包含する。したがって、本開示は、記載されたグループのメンバーのうち、任意の1つ又は複数を明示的に除外することを想定している。したがって、但し書きは、開示されたカテゴリー又は実施形態のいずれかに適用することができ、それにより、例えば、明示的な否定的制限で使用するために、記載された要素、スピーシーズ(種)、又は実施形態のいずれか1つ又は複数が、そのようなカテゴリー又は実施形態から除外され得る。
【0042】
「接触する」とは、例えば、溶液中、反応混合物中、インビトロ(in vitro)、又はインビボ(in vivo)などで、生理学的反応、化学的反応、物理的変化をもたらすために、細胞レベルや分子レベルを含めて、触れる、接触する、又は即時又は近接させる行為を意味する。
【0043】
「有効量」とは、疾患、障害、及び/又は状態を治療するために、あるいは記載された効果をもたらすために有効な量を意味する。例えば、有効量とは、治療対象となる疾患や症状の進行や重症度を軽減するのに有効な量を意味し得る。治療上有効な量を決定することは、特に本明細書の詳細な開示に照らして、当業者の能力の範囲内で十分可能である。有効量」という用語は、本明細書に記載された化合物の量、又は本明細書に記載された化合物の組み合わせの量を含むことが意図されており、例えば、宿主において、疾患若しくは障害を治療若しくは予防するため、又は疾患若しくは障害の症状を治療するために有効な量である。したがって、「有効量」とは、一般に、所望の効果をもたらす量を意味する。
【0044】
また、本明細書で使用する場合、「有効量」や「治療上有効な量」という言葉は、治療対象となる疾患や状態の1つ以上の症状をある程度緩和するのに十分な量の、投与される薬剤又は組成物又は組成物の組み合わせを意味する。その結果、病気の兆候、症状、原因の軽減及び/又は緩和、あるいは生物学的システムのその他の望ましい変化が得られる。例えば、治療用の「有効量」とは、疾患の症状を臨床的に有意に減少させるのに必要な、本明細書に記載された化合物を含む組成物の量である。個々のケースにおける適切な「有効」量は、用量漸増試験などの技術を用いて決定することができる。投与量は、1回又は複数回に分けて投与することができる。しかし、有効量とみなされるものの正確な決定は、患者の年齢、大きさ、疾患の種類又は範囲、疾患の段階、組成物の投与経路、使用された補助療法の種類又は範囲、進行中の疾患プロセス、及び希望する治療の種類(例えば、積極的な治療対従来の治療)を含むが、これらに限定されない、各患者に固有の要因に基づいて行われ得る。
【0045】
用語「治療すること」、「治療する」及び「治療」には、(i)病気、病理学的又は医学的状態が発生するのを防ぐこと(例えば、予防)、(ii)病気、病理学的又は医学的状態を抑制するか、又はその発生を阻止すること、(iii)病気、病理学的又は医学的状態を緩和すること、及び/又は(iv)病気、病理学的又は医学的状態に関連する症状を減少させることが含まれる。したがって、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、予防にまで及ぶことができ、治療される状態又は症状の進行又は重症度を防ぐ、予防、予防する、低下させる、停止させる、又は逆転させることを含むことができる。このように、「治療」という用語は、適切な場合、医学的、治療的、及び/又は予防的な投与を含むことができる。
【0046】
本明細書では、「対象」又は「患者」とは、病気やその他の悪性腫瘍の症状がある、又はそのリスクがある個人(個体)を意味する。患者は、ヒトであっても非ヒトであってもよく、例えば、本明細書に記載されているマウスモデルなど、研究目的で「モデルシステム」として使用される動物系統又は種を含むことができる。同様に、患者は、成人又は少年(例えば、子供)のいずれかを含んでもよい。さらに、患者は、本明細書で企図されている組成物の投与から利益を得ることができる任意の生物、好ましくは哺乳類(例えば、ヒト又は非ヒト)を意味してもよい。哺乳類の例としては、ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、その他の類人猿及びサル類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの農場動物、ウサギ、イヌ、ネコなどの家畜、ラット、マウス、モルモットなどのげっ歯類を含む実験動物など、哺乳類クラスの任意のメンバーが含まれるが、これらに限定されない。非哺乳類の例としては、鳥類、魚類などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される方法の一実施形態では、哺乳類はヒトである。
【0047】
本明細書では、「提供する」、「投与する」、「導入する」という用語は互換的に使用され、本開示の組成物を所望の部位に少なくとも部分的に局在化させる方法又は経路によって対象にその組成物を配置することを意味する。本組成物は、対象の所望の部位への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。
【0048】
本明細書に記載されている組成物は、組成物の安定性と活性を長持ちさせるために、追加の組成物と一緒に投与してもよいし、他の治療薬と併用してもよい。
【0049】
「阻害する」、「阻害すること」、「阻害」という用語は、病気、感染症、状態、又は細胞群の成長又は進行を遅らせること、止めること、又は逆転させることを意味する。阻害は、例えば、治療や接触がない場合に起こる成長や進行と比較して、約20%、40%、60%、80%、90%、95%、又は99%よりも大きくすることができる。
【0050】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は広義の用語であり、通常の意味で使用される。これには、大部分が指定されたものであるが、必ずしも全部が指定されたものではないことなどが、制限されることなく、含まれる。例えば、この用語は、100%完全な数値ではないかもしれない数値を指すことがある。完全な数値は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、又は約20%少なくてもよい。
【0051】
「免疫療法」という用語は、例えば「免疫療法剤」を用いて免疫系を活性化又は抑制することにより病気を治療することを指す。免疫応答を誘発又は増幅するように設計された免疫療法は活性化免疫療法に分類され、低減又は抑制する免疫療法は抑制免疫療法に分類される。免疫療法とは、免疫系を活性化又は抑制することによって病気を治療することである。この免疫療法のうち、免疫反応を誘発・増幅させるように設計されたものは活性化免疫療法に分類され、減少又は抑制する免疫療法は抑制免疫療法に分類される。がん免疫療法は、免疫系を刺激して腫瘍を破壊しようとするものである。
【0052】
「アイソタイプ」という用語は、標的に対する特異性を持たないが、本願で使用される一次抗体のクラス及びタイプと一致する一次抗体である対照を指す。アイソタイプ対照は、非特異的なバックグラウンドシグナルと特異的な抗体シグナルを区別するためのネガティブ対照として使用される。
【0053】
本開示の実施形態
本開示は、以下を含む組成物を提供する。
(a)プロカスパーゼ‐3活性化剤;
(b)少なくとも1つの第2の活性剤であって、該第2の活性剤が、チェックポイント阻害剤、がんワクチン、代謝調節剤、マクロファージ阻害剤、又は免疫刺激剤若しくは調節剤である;及び
(c)任意に、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体。
【0054】
様々な実施形態において、プロカスパーゼ‐3活性化剤はPAC‐1である。
【化2】
【0055】
様々な追加の実施形態において、プロカスパーゼ‐3活性化剤は、米国特許第8,592,584号;同第8,778,945号;同第8,916,705号;又は同第9,249,116号に開示されている化合物であり、それらの式及び化合物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
追加の実施形態では、第2の活性剤は、がん細胞においてアポトーシスを誘導する効果を有し、PAC‐1は、第2の活性剤の効果を相加効果よりも大きい量で増強し、PAC‐1は、第2の活性剤に対するがん細胞の脆弱性をプライム化する。
【0057】
様々な他の実施形態では、組成物(例えば、プロカスパーゼ‐3活性化剤)は、ミスマッチ修復(MMR)タンパク質を抑制する。追加の実施形態では、組成物は、MutLホモログ1(MLH1)タンパク質のカスパーゼ‐3分解の媒介者である。さらなる実施形態では、組成物は、DNAマイクロサテライト不安定性(MSI)を誘導する。さらに他の実施形態では、組成物は、がん細胞を選択的に標的とする。
【0058】
いくつかのさらなる実施形態では、MMRタンパク質は、MutLホモログ1(MLH1)タンパク質からなり、プロカスパーゼ‐3活性化剤を介したカスパーゼ‐3活性化によって媒介されるMMRタンパク質(例えば、MLH1タンパク質)の分解が、MMRタンパク質の欠損(すなわち、dMMR)となり、さらにDNAのマイクロサテライト不安定性(MSI)とネオアンチゲンの発現を誘発し、それにより免疫療法の効果を高めることができ、プロカスパーゼ‐3活性化剤は、がんの腫瘍浸潤リンパ球を増加させる。
【0059】
他の追加の実施形態では、少なくとも1つの第2の活性剤は、プログラムされた細胞死タンパク質1(PD‐1)、プログラムされたデスリガンド1(PD‐L1)、細胞障害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA‐4)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM‐3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG‐3)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4又はOX40)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9又は4‐1BB)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)、誘導性T細胞コスティミュレーター(ICOS)、又はこれらの組み合わせを介して免疫応答を調節する少なくとも1つのチェックポイント阻害剤である。
【0060】
様々な追加の実施形態において、第2の活性剤は、インドールアミン‐ピロール2,3‐ジオキシゲナーゼ(IDO)、アデノシンA2A受容体(A2AR)、トランスフォーミング成長因子β(TGF‐β)、C‐X‐Cケモカイン受容体タイプ4(CXCR‐4)、C‐Cケモカイン受容体タイプ4(CCR4)、腫瘍壊死因子受容体(CD27)、インターロイキン2受容体サブユニットβ(CD122)、デスレセプター5(DR5)、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、グルタミナーゼ、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、トール様受容体(TLR)、樹状細胞(DC)、又はそれらの組み合わせを調節する。
【0061】
さらに別の実施形態では、第2の活性剤は、ADXS11‐001、ADXS31‐142、AMP‐224、AMP‐514、アテゾリムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベバシズマブ、セミプリマブ、BLZ945、BMS‐936559、BMS986016、BMS986156、BMS986205、CB839、CIMAvax、CMP001、CP870893、CPI‐444、CRS207、CV301、DCワクチン、DNX2401、DS‐8273a、デュルバルマブ(durvalumab)、エパカドスタット(epacadostat)、FAZ053、FPA008、GDC0919、GSK3174998、GVAX、GWN323、IMCgp100、IMP321、イムプリム(imprime)PGG、インドキシミド(indoximid)、イピリムマブ(ipilimumab)、JTX‐2011、LAG525、LCL161、LK‐301、LY2157299、LY2510924、LY3022855、MBG453、MEDI0562、MEDI0680、MEDI6469、MEDI9447、MGN1703、モガムリズマブ、MOXR0916、ネオアンチゲンワクチン、NEO‐PV‐01、NIS793、ニボルマブ、NKTR‐214、PBF509、PDR001、ペムブロリズマブ、ペプチドワクチン、ペキシダルチニブ(PLX3397)、PF‐04518600、PF‐3512676、REGN2810、REGN3767、RO7009789、SD101、タリモゲン ラヘルパレプベク(talimogene laherparepvec)、TPIV200/huFR‐1、トレメリムマブ(tremelimumab)、TroVax、TSR022、ウロクプルマブ(ulocuplumab)、ウレルマブ(urelumab)、ウトミルマブ(utomilumab)、バルリルマブ(varlilumab)、ビアゲンプマツセル(viagenpumatucel)‐L(HS‐110)、又はこれらの組み合わせである。
【0062】
他の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗PD‐1、抗CTLA‐4、又はそれらの組み合わせであり;抗PD‐1はニボルマブ又はペムブロリズマブであり、抗CTLA‐4はイピリムマブ又はトレメリムマブ、又はそれらの組み合わせである。
【0063】
いくつかの実施形態では、開示された組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、又はそれらの組み合わせを含む。開示された組成物の他の実施形態では、a)担体は、水、緩衝剤、糖、セルロース、シクロデキストリン、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール、トコフェロール、リポソーム、ミセル、又はそれらの組み合わせを含み、又はb)賦形剤は、結合剤、潤滑剤、吸着剤、ビヒクル、崩壊剤、防腐剤、又はそれらの組み合わせを含む。
【0064】
他のさまざまな実施形態では、PAC‐1の濃度は、約0.1μM~約50μMである。他の実施形態では、PAC‐1の濃度は、約0.1μM~約1μM、約1μM~約10μM、約2μM~約15μM、約3μM~約20μM、約4μM~約25μM、約5μM~約30μM、約10μM~約40μM、約15μM~約50μM、又は約0.01μM~約100μMである。
【0065】
追加の実施形態では、第2の活性剤の濃度は、約1nM~約100μMである。他の実施形態では、第2の活性剤の濃度は、約1nM~約100nM、約10nM~約1μM、約100nM~約1μM、約1μM~約5μM、約1μM~約10μM、約5μM~約15μM、約10μM~約20μM、約10μM~約30μM、約15μM~約40μM、約20μM~約50μM、又は、約50μM~約100μMである。
【0066】
さらなる実施形態では、本明細書に開示される組成物は、がん細胞を選択的に標的とし、がん細胞は、膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、膠芽腫、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、メラノーマ、髄膜腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、骨肉腫、膵臓がん、前立腺がん、腎がん、又は甲状腺がんの細胞である。ここで、乳がんは任意にトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは任意に非小細胞肺がんであり、腎がんは任意に転移性腎細胞がんである。
【0067】
本開示はまた、がん細胞を有効量の開示された組成物と接触させ、それによってがん細胞の成長又は増殖を阻害することを含む、がん細胞の成長又は増殖を阻害する方法を提供するものである。他の実施形態では、ミスマッチ修復(MMR)タンパク質を抑制することによって、がん細胞の成長又は増殖を阻害する。さらなる実施形態では、がん細胞の成長又は増殖は、カスパーゼ3の活性化を媒介としたMutLホモログ1(MLH1)タンパク質の分解によって阻害される。さらに他の実施形態では、DNAマイクロサテライト不安定性(MSI)が誘導される。
【0068】
本開示はさらに、がん細胞を有効量の本明細書に開示された組成物と接触させることを含む、がん細胞にアポトーシスを誘導する方法を提供し、それにより、がん細胞におけるミスマッチ修復(MMR)タンパク質を抑制することでアポトーシスが誘導される。他の実施形態では、MutLホモログ1(MLH1)タンパク質の分解が、プロカスパーゼ‐3活性化因子を介したカスパーゼ‐3活性化によって媒介され、それによって、がん細胞にアポトーシスが誘導される。
【0069】
さらに、本開示は、治療上有効な量のプロカスパーゼ‐3活性化因子と有効な量の第2の活性剤を、それを必要としている対象に同時に又は順次投与することを含む、がんを治療する方法を提供し、ここで、第2の活性剤は免疫治療薬であり、第2の活性剤の効果は、プロカスパーゼ‐3活性化因子の投与によって増強されるものである。
【0070】
さらに他の追加の実施形態では、プロカスパーゼ‐3活性化因子がPAC‐1であるか、又はプロカスパーゼ‐3活性化因子が約200~約800、約250~約550、約300~約600、約350~約550、又は約350~約450の分子量を有し、プロカスパーゼ‐3活性化因子がプロカスパーゼ‐3をカスパーゼ‐3に直接活性化させるものである。
【0071】
さらなる実施形態では、第2の活性剤は、チェックポイント阻害剤、がんワクチン、代謝調整剤、マクロファージ阻害剤、免疫刺激剤、又は調整剤;又はそれらの組み合わせを含む。
【0072】
様々な実施形態において、カスパーゼ3によるMutLホモログ1(MLH1)タンパク質の分解は、DNAのマイクロサテライト不安定性(MSI)及びネオアンチゲンの発現を誘導し、それによってがん治療の効果を高める。他の実施形態では、ミスマッチ修復(MMR)タンパク質は、プロカスパーゼ‐3活性化剤によって抑制される。さらなる実施形態では、プロカスパーゼ‐3活性化剤、例えば、PAC‐1は、がん(又はがん細胞)の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を増加させる。
【0073】
他の様々な実施形態では、免疫療法剤はチェックポイント阻害剤であり、チェックポイント阻害剤は、プログラムされた細胞死タンパク質1(PD‐1)、プログラムされたデスリガンド1(PD‐L1)、細胞障害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA‐4)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM‐3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG‐3)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4又はOX40)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9又は4‐1BB)、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)、誘導性T細胞コスティミュレーター(ICOS)、又はこれらの組み合わせを介して免疫応答を調節する。
【0074】
さらに他の様々な実施形態では、第2の活性剤は、アテゾリムマブ、アベルマブ、ベバシズマブ、BMS986016、BMS986156、CP870893、デュルバルマブ、FAZ053、GSK3174998、GWN323、IMP321、イピリムマブ、JTX‐2011、LAG525、MBG453、MEDI0562、MEDI0680、MEDI6469、MOXR0916、nivolumab、PDR001、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、PF‐04518600、REGN2810、REGN3767、RO7009789、トレメリムマブ(tremelimumab)、TSR022、ウレルマブ(urelumab)、ウトミルマブ(utomilumab)、又はこれらの組み合わせである。
【0075】
様々な追加の実施形態では、PAC‐1の濃度は約0.1μM~約50μMであり、第2の活性剤の濃度は約1nM~約100μMである。さらなる実施形態では、PAC‐1の濃度は約1μM~約10μMである。他の実施形態では、第2の活性剤の濃度は、約1nM~約1μMである。
【0076】
様々な実施形態において、当業者であれば容易に認識できるように、本開示全体を通して記載されているPAC‐1及び第2の活性剤の濃度は、例えば、本明細書に記載されている濃度をPAC‐1と第2の活性剤の対応するモル比に変換することにより、PAC‐1と第2の活性剤の比として記載及び解釈することもできる。
【0077】
他の様々な実施形態では、がんは、膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、膠芽腫、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、メラノーマ、髄膜腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、骨肉腫、膵臓がん、前立腺がん、腎がん、又は甲状腺がんである。ここで、乳がんは任意にトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは任意に非小細胞肺がんであり、腎がんは任意に転移性腎細胞がんである。
【0078】
いくつかの様々な実施形態では、化合物PAC‐1と第2の活性剤は、対象に同時に投与される。さらに他の実施形態では、化合物PAC‐1及び第2の活性剤は、対象に順次投与される。追加の実施形態では、化合物PAC‐1は、第2の活性剤の前に対象に投与される。さらなる実施形態では、化合物PAC‐1は、第2の活性剤の後に対象に投与される。
【0079】
さらに、本開示は、がんの治療に使用するための医薬品を調製するための組成物を提供し、この組成物は以下を含む。
(a)化合物PAC‐1;
(b)少なくとも1つの第2の活性剤であって、該第2の活性剤が、チェックポイント阻害剤、がんワクチン、代謝調節剤、マクロファージ阻害剤、又は免疫刺激剤若しくは調節剤である;及び
(c)任意に、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、又はそれらの組み合わせ;ここで、がんがそれによって治療される。
【0080】
追加の実施形態では、PAC‐1の濃度は約0.1μM~約500μMであり、第2の活性剤の濃度は約1nM~約1000μMである。さらに他の追加の実施形態では、第2の活性剤は、アテゾリムマブ、アベルマブ、ベバシズマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、トレメリムマブ、ウレルマブ、ウトミルマブ、又はそれらの組み合わせである。さらに別の実施形態では、がんは、リンパ腫、メラノーマ、白血病、多発性骨髄腫、膠芽腫、膵臓がん、肝臓がん、非小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん、結腸がん、骨肉腫、又は髄膜腫である。
【0081】
様々な実施形態において、化合物PAC‐1及び第2の活性剤は、対象に1日1回(q.d.)、1日2回(b.i.d.)、1日3回(t.i.d.)、又は1日4回(q.i.d.)投与され、PAC‐1の1日あたりの総投与量は、約1mg/kg~約150mg/kg、約10mg/kg~約125mg/kg、又は約5mg/kg~約250mg/kgである。他の実施形態では、PAC‐1(又は第2の活性剤)の各投与量は、約10mg、約25mg、約50mg、約60mg、約70mg、約75mg、約175mg、約250mg、約375mg、約450mg、約500mg、約625mg、約750mg、約1000mg、又は、約10mg~約2000mgである。さらなる実施形態では、PAC‐1(又は第2の活性剤)の各投与量は、約50mg/m2~約250mg/m2、又は約10mg/m2~約500mg/m2である。いくつかの他の実施形態では、第2の活性剤の1日あたりの総投与量は、約1mg/kg~約100mg/kg、又は約5mg/kg~約150mg/kgである。
【0082】
いくつかの実施形態では、がんの治療を必要とする患者に投与される組成物は、PAC‐1及びα‐PD‐1を含み、PAC‐1の投与量が約100mg/kg~約150mg/kg(又は約125mg/kg)であり、α‐PD‐1の投与量が約150マイクログラム~約250マイクログラム(又は約200マイクログラム)である;様々な実施形態では、患者の生存期間が対照と比較して延長される。
【0083】
本開示では、体積、質量、パーセンテージ、比率などの変数に、範囲、限界、及び偏差を提供している。当業者であれば、「数1」から「数2」のような範囲は、整数と分数を含む連続した数の範囲を意味することが理解できる。例えば、1~10は、1、2、3、4、5、...9、10を意味する。これはまた、1.0、1.1、1.2.1.3、・・・、9.8、9.9、10.0を意味し、また、1.01、1.02、1.03などを意味する。また、開示された変数が「数値10」未満の数値である場合は、上述したように数値10未満の整数及び小数を含む連続的な範囲を意味する。同様に、開示された変数が「数値10」よりも大きい数である場合、それは数値10よりも大きい整数及び小数を含む連続的な範囲を意味する。これらの範囲は、その意味が上述されている用語「約」によって修飾することができる。
【0084】
結果と考察
チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法は、特定のがん(メラノーマ、NSCLC、尿路上皮など)に対して有効な治療法となっており、一部のがん患者に持続的な反応を誘発することができる。現在、免疫チェックポイント阻害剤と低分子薬剤を組み合わせた数十の臨床試験が進行中である。プロカスパーゼ‐3を直接活性化することで、DNAミスマッチ修復の鍵となるタンパク質MLH1の切断が促進され、その結果、T細胞が標的とする潜在的なネオアンチゲンが増加することで、免疫チェックポイント阻害剤の効果が劇的に高まるというメカニズム仮説が、ここに記載されているように検討されている。
【0085】
取り組みの背景 免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法には大きな期待が寄せられているが、多くの臨床試験では奏効率の低さや失敗例が問題となっている。最近の重要な進展は、腫瘍発生の起源に関わらず、PD‐1阻害(ペムブロリズマブ使用)の臨床効果を示すバイオマーカーとして、DNAのマイクロサテライト不安定性(MSI)が臨床承認されたことである。この承認は、ミスマッチ修復欠損(dMMR)が固形がんのPD‐1阻害に対する反応を予測することを示す注目に値する前臨床及び臨床データに基づいている。これは、dMMR/MSIを有する腫瘍には100s‐1000sの体細胞変異があり(MMR陽性のがんに比べて10倍高い、
図1A)、おそらくネオアンチゲンのレベルが上昇し、T細胞の浸潤が促進されることが知られているからである。しかし、dMMR/MSIが存在するのは、全がんの中でも割合が低く、おそらく10%以下であろう。散発的なMSIは、MLH1プロモーターのエピジェネティックなサイレンシングによって引き起こされ、MLH1サイレンシングはMMR欠損のマーカーとして一般的に使用されている。MLH1サイレンシングと体細胞変異の数との相関関係は、多くの研究で証明されており、
図1に力強く示されている。
【0086】
がん細胞に選択的に誘導されるMSIは、免疫チェックポイント阻害剤(PD‐1やCTLA‐4を標的としたものなど)に対する患者の反応を大幅に上昇させる。複数の大規模なプロテオミクス研究により、MLH1はカスパーゼ‐3の最上位の基質であり、6時間後には0%のタンパク質しか残っていないことが明らかになっている(比較としてMEK1/2は同時点で70%残っている)。さらに、MLH1は活性型カスパーゼ‐3のみの基質となり、他の活性型カスパーゼ(カスパーゼ‐1、2、6、7、8)によるタンパク質分解は観察されなかった。このデータは、腫瘍内のPC‐3を選択的に活性化することで、MLH1が定量的に切断され、dMMR/MSIが生じ、その結果、
図2に模式的に示したように、免疫チェックポイント阻害剤の効果が顕著に高まることを示唆している。
【0087】
作用のメカニズム。 本開示では、PAC‐1を用いてがんにおけるMLH1切断を選択的に誘導することで、免疫チェックポイント阻害剤による治療の影響をより受けやすくすることができることを示している(
図2)。さらに、PAC‐1による治療は、ストレス反応を誘導し、それによって腫瘍の微小環境を変化させ、免疫炎症の程度を高める。このような結果は、免疫療法の力、すなわち劇的で持続的な反応を、さらにより多くのがん患者にもたらすものである。要約すると、カスパーゼ3によるMLH1の切断と不活性化は、自然免疫系を刺激し、点変異とインデル(新しいオープンリーディングフレームに由来するネオアンチゲン)の両方を引き起こし、免疫原性を持つことになる。このように、この化学的に誘導されたMLH1の分解は、抗がん剤による免疫反応を促進する。
【0088】
結果。 結腸がん細胞株のMSS/MSIステータスが報告されており(Ahmed,D.,et al.,Oncogenesis 2013,2,e71)、MSS結腸がん細胞株であるHT‐29の選択が可能となった。これまで、MLH1の切断に着目した研究では、広範囲に高レベルのアポトーシス細胞死を誘導する戦略(スタウロスポリンを用いたものなど)を利用してきた。HT‐29細胞を亜致死量のPAC‐1で処理した。
図3に示すように、HT‐29細胞をPAC‐1で処理すると、PC‐3の活性化とMLH1の切断が誘導されたが、これらの時間と濃度ではPARP‐1の切断はほとんど起こらなかった。この結果は、MLH1がカスパーゼ‐3の優れた基質であることをさらに立証するものである。重要なことは、これらの実験で用いたPAC‐1の濃度は、ヒトのがん患者において数週間にわたって持続可能なものであるということである(450mgで、C
min=3.2μM、C
max=7.8μM)。
【0089】
また、単剤のPAC‐1がTIL(CD3
+細胞)の数を増加させることを示す、同系のGL261及びB16F10マウスモデルでの実験も行われた(
図4)。
【0090】
PAC‐1に関する多くのデータは、PAC‐1がインビボでがんを誘発しないことを示唆している。これは、a)がんのペットイヌの治療、そのうちの何匹かはPAC‐1で6ヶ月超、治療され、治療終了後12ヶ月超、二次悪性腫瘍がない状態を維持している、b)84日間の連続治療イヌ研究を含む、ラット及び研究イヌでの詳細なIND対応の毒性研究、c)ヒトの臨床試験からのデータによって確認されている。複数の患者がPAC‐1を臨床試験の2カ月の期間を超えて服用しており、そのうち2匹は10カ月以上服用しているが(1匹は毎日450mgを服用)、悪影響はない。なお、抗がん剤は二次がんを誘発する可能性があり、例えば、ベムラフェニブ単剤で治療を受けた患者のほぼ1/3が二次悪性腫瘍を発症している。しかし、今のところPAC‐1ではこのような現象は見られない。PAC‐1ががん細胞で選択的にPC‐3の切断を誘導するように、その結果生じるカスパーゼ‐3活性ががん細胞で選択的にMLH1の切断を誘導するはずである。体質的ミスマッチ修復欠陥(CMMRD)と呼ばれるがんになりやすい症候群であるターコット(Turcot)症候群は、MMR遺伝子のバイアレリック生殖細胞変異と相関しており、その結果、若くしてGBMが発症することは注目に値する。ターコット症候群やその他のCMMRD症候群(リンチ症候群など)では、MMRタンパク質の機能維持が重要であることが指摘されており、MLH1の切断・消失を非標的・汎生物的に誘導することは、実行可能な治療戦略ではないことを示唆している。しかし、PAC‐1を用いた戦略では、がん細胞(GBMを含む)でPC‐3が過剰発現していることが周知であることを利用して、腫瘍では標的となるMLH1の切断を引き起こし、正常細胞のMMRタンパク質は影響を受けずに動作する。
【0091】
医薬品製剤
本明細書に記載されている化合物及び組成物は、例えば、化合物を薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又はキャリアと組み合わせることによって、治療用の医薬組成物を調製するために使用することができる。化合物は、塩又は溶媒和物の形でキャリアに加えてもよい。例えば、化合物が十分に塩基性又は酸性であり、安定した無毒の酸又は塩基の塩を形成する場合、化合物を塩として投与することが適切であり得る。薬学的に許容される塩の例は、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸で形成される有機酸付加塩であり、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α‐ケトグルタル酸塩、及びβ‐グリセロリン酸塩である。また、塩酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、炭酸塩などの適切な無機塩を形成することができる。
【0092】
薬学的に許容される塩は、当技術分野でよく知られている標準的な手順を用いて、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を適切な酸と反応させて、生理学的に許容されるイオン化合物を提供することにより、得ることができる。また、カルボン酸のアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウムなど)又はアルカリ土類金属(カルシウムなど)の塩も同様の方法で得ることができる。
【0093】
本明細書に記載されている式の化合物は、医薬組成物として製剤化し、様々な形態でヒト患者などの哺乳類宿主に投与することができる。その形態は、選択された投与経路、例えば、経口又は静脈内、筋肉内、局所、又は皮下の経路による非経口投与に特に適合させることができる。
【0094】
本明細書に記載されている化合物は、不活性な希釈剤や同化可能な食用キャリアなど、薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせて全身に投与することができる。経口投与の場合、化合物をハードシェル又はソフトシェルのゼラチンカプセルに封入したり、錠剤に圧縮したり、又は患者の食事に直接組み込んだりすることができる。また、化合物を1つ以上の賦形剤と組み合わせて、摂取可能な錠剤、頬側の錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハーなどの形で使用することもできる。このような組成物及び製剤は、典型的には、少なくとも0.1%の活性化合物を含む。組成物及び製剤の割合は様々であり、好都合には、所定の単位剤形の重量に対して、約0.5%から約60%、約1%から約25%、又は約2%から約10%である場合がある。そのような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な投与量レベルが得られるようなものであることができる。
【0095】
錠剤、トローチ、ピル、カプセルなどには、トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチンなどの結合剤、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤などの1種又は2種以上を配合することができる。また、ショ糖、果糖、乳糖、アスパルテームなどの甘味料、ペパーミント、ウィンターグリーンオイル、チェリーフレーバーなどの香料を加えてもよい。単位剤形がカプセルである場合、上記のタイプの材料に加えて、植物油やポリエチレングリコールなどの液状の担体を含んでいてもよい。他の様々な材料は、コーティングとして、又はその他の方法で固体単位剤形の物理的形態を変更するために存在してもよい。例えば、錠剤、ピル、又はカプセルは、ゼラチン、ワックス、シェラック、又は砂糖などでコーティングされていてもよい。シロップやエリキシルは、活性化合物、甘味料としてのスクロースやフルクトース、防腐剤としてのメチルパラベンやプロピルパラベン、色素、チェリーやオレンジフレーバーなどの香料を含んでいてもよい。単位剤形の調製に使用される材料は、薬学的に許容され、採用される量において実質的に非毒性でなければならない。さらに、活性化合物は、徐放性製剤及び装置に組み込むことができる。
【0096】
活性化合物は、輸液又は注射により静脈内又は腹腔内に投与することができる。活性化合物又はその塩の溶液は、任意に非毒性の界面活性剤と混合して水に調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、又はそれらの混合物、あるいは薬学的に許容される油で調製することができる。通常の保管・使用環境下では、製剤には微生物の繁殖を防ぐために防腐剤を含ませることができる。
【0097】
注射や輸液に適した医薬品の剤形には、任意にリポソームに封入された、無菌の注射用又は輸液用の溶液又は分散液の即席の調製に適合した活性成分を含む無菌の水溶液、分散液、又は無菌の粉末が含まれ得る。最終的な剤形は、無菌で、流動性があり、製造及び保管の条件下で安定していなければならない。液体キャリア又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性のグリセリルエステル、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成、分散液の場合は必要な粒子径の維持、あるいは界面活性剤の使用によって維持することができる。また、各種抗菌及び/又は抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより、微生物の作用の防止をもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、緩衝剤、塩化ナトリウムなどを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長時間の吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及び/又はゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤によってもたらされ得る。
【0098】
滅菌注射剤は、必要な量の活性化合物を適切な溶媒に入れ、必要に応じて上述の様々な成分を加え、その後任意にフィルター滅菌して調製することができる。滅菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、その調製方法には、真空乾燥や凍結乾燥技術が含まれ、活性成分の粉末に加えて、溶液中に存在する任意の追加の所望の成分が得られる。
【0099】
局所投与の場合、化合物は、例えば液体の場合に、純粋な形で適用することができる。しかし、一般的には、活性剤を組成物又は製剤として、例えば、固体、液体、ゲルなどであり得る皮膚科学的に許容される担体と組み合わせて皮膚に投与することが望ましいだろう。
【0100】
有効な固体担体としては、タルク、クレー、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉末固体が挙げられる。有用な液体担体には、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール、グリコール、又は水‐アルコール/グリコール混合物が含まれ、これらの中に化合物を有効なレベルで溶解又は分散させることができ、任意に非毒性の界面活性剤の助けを借りることができる。また、特定の用途に応じて、香料や追加の抗菌剤などのアジュバントを加えて特性を最適化することもできる。得られた液体組成物は、吸収パッドから塗布したり、包帯やその他のドレッシングに含浸させたり、ポンプ式やエアゾール式の噴霧器を使って患部にスプレーしたりすることができる。
【0101】
また、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸の塩やエステル、脂肪アルコール、変性セルロース、変性鉱物材料などの増粘剤を液体キャリアと一緒に使用することで、使用者の皮膚に直接塗布するための、スプレッド可能なペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することができる。
【0102】
活性剤を皮膚に送達するための皮膚科学的組成物の例は、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第4,992,478号(Geria)、同第4,820,508号(Wortzman)、同第4,608,392号(Jacquetら)、同第4,559,157号(Smithら)を参照のこと。そのような皮膚科用組成物は、そのような組成物の成分を本明細書に記載された化合物で任意に置き換えることができる、又は本明細書に記載された化合物を組成物に加えることができる、本明細書に記載された化合物と組み合わせて使用することができる。
【0103】
本明細書に記載されている組成物の有用な投与量は、動物モデルにおけるインビトロの活性とインビボの活性を比較することによって決定することができる。マウスやその他の動物における有効な投与量をヒトに外挿する方法は、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第4,938,949号(Borchら)を参照のこと。治療に用いるのに必要な化合物又はその活性塩若しくは誘導体の量は、選択された特定の化合物又は塩だけでなく、投与経路、治療される状態の性質、及び患者の年齢と状態によっても異なり、最終的には付添いの医師又は臨床医の判断に委ねられることになる。
【0104】
しかし、一般的には、好適な投与量は、1日あたり体重に対して約0.5~約100mg/kgの範囲、例えば、約10~約75mg/kg、例えば、1日あたりレシピエントの体重1kgあたり3~約50mg、好ましくは6~90mg/kg/日の範囲、最も好ましくは15~60mg/kg/日の範囲になる。
【0105】
化合物は、好都合には単位剤形で製剤化され、例えば、単位剤形あたり5~1000mg、好都合には10~750mg、最も好都合には50~500mgの活性成分を含む。一実施形態では、本開示は、このような単位剤形で製剤化された本開示の化合物を含む組成物を提供する。
【0106】
化合物は、例えば、単位剤形あたり5~1000mg/m2、好都合には10~750mg/m2、最も好都合には50~500mg/2mの活性成分を含む単位投与量で投与するのが便利である。望ましい投与量は、好都合には、1回の投与でもよいし、例えば1日2回、3回、4回、又はそれ以上の分割投与として、適切な間隔で分割して投与してもよい。分割投与自体は、さらに分割して、例えば、いくつかの離散的な緩い間隔での投与に分割してもよい。
【0107】
望ましい投与量は、好都合には、1回の投与でも、適切な間隔で投与される分割投与でもよい。分割投与は、例えば、吸入器からの複数回の吸入や、複数の点眼薬の眼への塗布など、ゆるやかに間隔をあけた複数回の投与に分けて行うことができる。
【0108】
本明細書に記載されている化合物は、有効な抗腫瘍剤であり、免疫療法単独又は他のがん治療と比較して、高い効力及び/又は毒性の低減を有する。
【0109】
本開示は、哺乳類のがんを治療する治療方法を提供し、この治療方法は、がんを有する哺乳類に、本明細書に記載の化合物又は組成物の有効量を投与することを含む。哺乳類には、霊長類、ヒト、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ヤギ、ウシ、脊椎動物などが含まれる。がんとは、様々なタイプの悪性新生物、例えば、結腸がん、乳がん、卵巣がん、骨肉腫、メラノーマ、白血病などを指し、一般的には、望ましくない細胞増殖、例えば、無秩序な成長、分化の欠如、局所組織への侵入、転移などを特徴とする。
【0110】
本開示の化合物ががんを治療する能力は、当技術分野でよく知られているアッセイを用いて決定することができる。例えば、治療プロトコルの設計、毒性の評価、データ分析、腫瘍細胞の死滅の定量化、及び移植可能な腫瘍スクリーンの使用の生物学的意義などが知られている。さらに、化合物のがん治療能力は、以下に述べるような試験を用いて決定することができる。
【0111】
以下の例は、上記の開示を説明するためのものであり、その範囲を狭めるように解釈されてはならない。当業者であれば、実施例が、本開示を実施し得る他の多くの方法を示唆していることを容易に認識するであろう。また、本開示の範囲内にとどまりながら、多数の変形及び変更を行うことができることを理解すべきである。
【実施例】
【0112】
例1 4T1有効性モデルの実験手順
試薬。以下の抗体はBio X Cell社から購入した:抗マウスCTLA‐4モノクローナル抗体(9H10)、抗マウスPD‐1モノクローナル抗体(RMP1‐14)、ラットIgG2aアイソタイプ対照(2A3)、ポリクローナルSyrianハムスターIgG。
【0113】
細胞株。4T1ネズミ乳がん細胞株は、ATCCから入手し、10%FBS、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを含む完全なRPMI1640で、CO2インキュベーター中37℃で培養した。
【0114】
4T1同所性腫瘍モデル。すべての実験手順は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。6‐8週齢の雌のBALB/cマウスをCharles River社から購入し、7日間馴致した。マウスをi.p.キシラジン(16mg/kg)及びケタミン(100mg/kg)で軽く鎮静した。鎮静後、冷やしたHBSS中の4T1細胞100μL(1,000万個細胞/mL)をマウスの右第2乳腺に注入した。1週間後に同所性の成長腫瘍ができた。4T1細胞の接種から12日後、腫瘍を持つマウスを、ビヒクル+アイソタイプ、ビヒクル+抗PD‐1/抗CTLA‐4、PAC‐1+アイソタイプ、PAC‐1+抗PD‐1/抗CTLA‐4の4つの治療群に無作為に割り付けた(n=6)。PAC‐1はHPβCDに配合した(200mg/mLのHPβCDに10mg/mL、pH5.5)。
【0115】
すべての抗体は,滅菌したPBS(pH7.0)で適切な濃度に希釈した。ビヒクル又は100mg/kg PAC‐1を5日間連続で3週間腹腔内投与した。アイソタイプ又は10mg/kgの抗PD‐1+10mg/kgの抗CTLA‐4抗体を、腫瘍移植後13日目、16日目、20日目、23日目にPAC‐1の4時間後に腹腔内投与した。腫瘍の測定は、ノギスを用いて2日又は3日ごとに行い、腫瘍体積は(0.5×l×w
2)の式を用いて算出した。4T1細胞の接種後30日目に、マウスを犠牲にした。その後、腫瘍を摘出し、その質量を測定した。すべての統計解析は、対を成さない両側スチューデント検定を用いて行い、p値<0.05を統計的に有意とした(
図6参照)。
【0116】
例2 腫瘍の研究。
PAC‐1で処理したGL261腫瘍では、免疫細胞の浸潤が増加している。PAC‐1ががん細胞においてカスパーゼ‐3を介したMLH1の切断を誘導することを示すデータに加えて、PAC‐1と免疫療法戦略(チェックポイント阻害剤及びネオアンチゲンワクチンを含む)との相乗的な組み合わせを支持する他の多くの証拠がある:1)PAC‐1で処理したがん細胞の転写プロファイルでは、TNFα、自然免疫系のアゴニストであるIL‐1β、IL‐8などの主要な遺伝子が上昇しており、抗PD‐1療法への抵抗性に関連するマーカーの上昇は見られなかった(IPRES:例.CCL2,CCL7,CCL8,CCL13など)。2)別のグループの研究によると、PAC‐1は免疫サイトカインTRAILとの併用試験により、培養中の外因性細胞死を促進し得る。3)PAC‐1は、免疫システムが損なわれていないインビボ環境、例えば同系マウス(EL4、K7M2、GL261)(
図7)及びラット(9L)モデル、及びイヌのがん患者に有効である。4)MDアンダーソンのGandhiグループ(Blood 2015,125,1126)は、PAC‐1及び誘導体がPMBCに対して最小限の毒性を有することを示している。5)PAC‐1は、INDを可能にするラット及びイヌの研究において非常に高用量で使用された場合でも、(マウス、ラット、イヌ、又はヒトにおいて)骨髄抑制を誘発することは観察されていない。6)PAC‐1はがん細胞に選択的にDNAダメージを与え、カスパーゼ‐3の活性化がゲノムの著しい不安定性をもたらし得るという研究結果をさらに検証する。PAC‐1が免疫反応を刺激する可能性を探る手始めとして、単剤のPAC‐1がTIL(CD3
+細胞)の数を増加させることを示した同系のGL261マウスモデルを使った実験が行われた(
図4)。
【0117】
イヌの神経膠腫における免疫チェックポイントの関連性。最近の研究では、様々なイヌの腫瘍タイプにおいてPD‐L1の発現が確認されている。しかし、イヌの神経膠腫におけるPD‐L1については、発表された研究はない。アーカイブされたイヌの神経膠腫を用いて、市販のマウスモノクローナル抗ヒトPD‐L1抗体(Abcam,clone ABM4E54)の交差反応性を検証したところ(
図5)、腫瘍の75%にPD‐L1が発現していることが明らかになった。この頻度は、ヒトのGBMでは初発及び再発サンプルのそれぞれ88%及び72%にPD‐L1が同定されているのと同等である。PD‐L1に加えて、抗体は、ヒト及びイヌのグリオーマ細胞株において、核標的であるMLH1と交差反応することが確認されており、PAC‐1治療後のMLH1の切断を定量的に評価することができる。
【0118】
例3 PAC‐1と同系結腸がんモデル(CT‐26細胞)における免疫療法。
図8は、BALB/cマウスにおけるCT‐26 WT皮下疾患モデルの開発を示す。0日目に、BALB/cマウスに1x10個の
6CT‐26_WT細胞を皮下注射した。様々な日間隔で、選択したマウスに、表1に示すように、空のビヒクル、PAC‐1(100mg/kg)、抗PD‐1抗体(10mg/kg;2回投与)、抗PD‐1抗体(10mg/kg;4回投与)、又はPAC‐1(100mg/kg)と抗PD‐1抗体(10mg/kg;)の組み合わせを注射(i.p.)した。
【0119】
【0120】
図9は、単一の薬剤であるPAC‐1が、BALB/cマウスにおけるsc CT‐26_WTの成長を制御する上で、大きなバリエーションを示している。さらに、PAC‐1と抗PD‐1 mAbの組み合わせは、ビヒクル+抗IgG対照と比較して、BALB/cマウスにおけるCT‐26_WTの成長を有意に減少させた。
図10は、PAC‐1と抗PD‐1モノクローナル抗体(mAb)の組み合わせが、対照マウス(空のビヒクル+抗IgG抗体を注射)と比較して、BALB/cマウスにおけるCT‐26_WT細胞の成長を減少させたことを示している。この併用療法におけるPAC‐1の相対的な貢献度は、抗PD‐1 mAbの投与量を4回から2回に減らすと、より顕著になる。これらの実験は、14日目と21日目がTIL分析を行うのに適した時期であることも示している。
【0121】
図11は、BALB/cマウスにおけるCT‐26_TdTomato皮下腫瘍モデルの開発を示している。CT‐26_TdTomato細胞1x10
6個をマウスの後脇腹の皮下に接種した。接種から10日後(腫瘍体積約150mm
3)、マウスに以下の処置を施した。
グループ1:3匹のマウス‐ビヒクル+ラットIgGアイソタイプmAb(10mg/kg)
グループ2:3匹のマウス‐PAC‐1(125mg/kg)+ラットIgGアイソタイプmAb(10mg/kg)
グループ3:3匹のマウス‐ビヒクル+抗PD1 mAb(10mg/kg)
グループ4:3匹のマウス‐PAC‐1(125mg/kg)+抗PD1 mAb(10mg/kg)
【0122】
グループ4(PAC‐1+抗PD1 mAb)のBALB/Cマウスは、PAC‐1の連続投与と抗PD1の2回投与を5日間行った後、CT‐26‐TdTを拒絶することができた。47日目の時点で、マウスはまだ腫瘍がないように見える。抗PD1投与群は、抗PD1 mAbを3回注射した後、腫瘍を除去することができた。47日目に、マウスはまだ腫瘍がないように見える。47日目に、まだ腫瘍がないマウスに1x106CT‐26_TdTomato細胞を再チャレンジした。再チャレンジ後、腫瘍体積の有意な増加は見られなかった。
【0123】
図12Aは、PAC‐1が免疫原性を有し、マクロファージの分化、B細胞及びT細胞の増殖を促進するサイトカインの増加をもたらすことを示すサイトカインアレイを示す。
図12Bに示すように、後眼窩採血により約100ulの血液をヘパリン化バイアルに採取した。白血球を8000gで10分間遠心分離し、血漿/suptを新しいチューブに移した。サイトカインアレイは、2‐3匹のマウスからのプールされたサンプルを用いて、4つのグループで実施した。
非腫瘍担持+ビヒクル
非腫瘍担持+PAC‐1(5回投与)
腫瘍担持+ビヒクル
腫瘍担持+PAC‐1(5回投与)
【0124】
信号はImageJを用いて定量化した。データは、プロットに示すように、PAC‐1/ビヒクル平均ピクセル密度の比を計算することによって正規化された。
【0125】
図13は、腫瘍チャレンジ後14日目に、PAC‐1処理後の肺腫瘍微小環境において、好中球及びマクロファージが増加しているように見えることを示している。26日目には、腫瘍微小環境におけるマクロファージ及び樹状細胞の集団は減少している。
【0126】
図14は、PAC‐1と抗PD‐1のコンビナトリアル治療後26日目の肺腫瘍微小環境におけるCD4
+T
h細胞の増加を示している。肺のFoxP3
+T
regsの割合は、併用療法を行ったグループで最も低かった。
【0127】
図15は、腫瘍チャレンジ後26日目に樹状細胞とCD45
-(腫瘍)細胞のPD‐L1発現が増加し、T細胞の疲弊に寄与した可能性を示している。
【0128】
例4 PAC‐1と同系結腸がんモデル(MC‐38細胞)における免疫療法。
図16は、C57BL/6マウスにおけるMC‐38転移モデルの開発と、PAC‐1と抗PD‐1抗体の併用による治療を示している。MC‐38細胞を1x10
6細胞/マウスで尾静脈から注入した。PAC‐1は100mg/kg(i.p.)、抗PD‐1は10mg/kgをMC38注入後23日間にわたって注射した。PAC‐1/抗PD‐1を組み合わせて注射したマウスの体重は、約24日目から始まって32日目まで増加し、著しい体重回復を示した。
【0129】
図17は、MC‐38細胞でチャレンジした後に、空のビヒクル対照、PAC‐1、抗PD‐1抗体、又はPAC‐1と抗PD‐1抗体の組み合わせを注射したマウスの生存曲線を示している。これらの結果から、PAC‐1と抗PD‐1抗体の両方を注射したマウスでは、約32日後に安定した生存確率が得られることがわかる。
【0130】
例5 医薬品の剤形。
以下の製剤は、本明細書に記載されている式の組成物、本明細書に具体的に開示されている組成物、又はその薬学的に許容される塩(以下、「組成物X」と呼ぶ)の治療的又は予防的な投与に使用することができる代表的な医薬品剤形を例示している。
【0131】
(i)錠剤1 mg/錠
「組成物X」 100.0
ラクトース 77.5
ポビドン 15.0
クロスカルメロースナトリウム 12.0
微結晶セルロース 92.5
ステアリン酸マグネシウム 3.0
300.0
【0132】
(ii)錠剤2 mg/錠
「組成物X」 20.0
微結晶セルロース 410.0
デンプン 50.0
デンプングリコール酸ナトリウム 15.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
500.0
【0133】
(iii)カプセル mg/カプセル
「組成物X」 10.0
コロイド状二酸化ケイ素 1.5
ラクトース 465.5
プレジェル化デンプン 120.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
600.0
【0134】
(iv)注射1(1mg/mL) mg/mL
「組成物X」(遊離酸形) 1.0
二塩基性リン酸ナトリウム 12.0
一塩基性リン酸ナトリウム 0.7
塩化ナトリウム 4.5
1.0N 水酸化ナトリウム溶液 q.s.
(pHを7.0~7.5に調整)
注入用の水 q.s. ad 1mL
【0135】
(v)注射2(10mg/mL) mg/mL
「組成物X」(遊離酸形) 10.0
一塩基性リン酸ナトリウム 0.3
二塩基性リン酸ナトリウム 1.1
ポリエチレングリコール400 200.0
0.1N水酸化ナトリウム溶液 q.s.
(pHを7.0~7.5に調整)
注入用の水 q.s. ad 1mL
【0136】
(vi)エアロゾル mg/缶
「組成物X」 20
オレイン酸 10
トリクロロモノフルオロメタン 5,000
ジクロロジフルオロメタン 10,000
ジクロロテトラフルオロエタン 5,000
【0137】
(vii)局所ゲル1 wt.%
「組成物X」 5%
カルボマー934 1.25%
トリエタノールアミン q.s.
(pHを5~7に調整)
メチルパラベン 0.2%
精製水 q.s.100gまで
【0138】
(viii)局所ゲル2 wt.%
「組成物X」 5%
メチルセルロース 2%
メチルパラベン 0.2%
プロピルパラベン 0.02%
精製水 q.s.100gまで
【0139】
(ix)局所軟膏 wt.%
「組成物X」 5%
プロピレングリコール 1%
無水軟膏ベース 40%
ポリソルベート80 2%
メチルパラベン 0.2%
精製水 q.s.100gまで
【0140】
(x)局所クリーム1 wt.%
「組成物X」 5%
ホワイト蜜蝋 10%
流動パラフィン 30%
ベンジルアルコール 5%
精製水 q.s.100gまで
【0141】
(xi)局所クリーム2 wt.%
「組成物X」 5%
ステアリン酸 10%
モノステアリン酸グリセリル 3%
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 3%
ソルビトール 5%
パルミチン酸イソプロピル 2%
メチルパラベン 0.2%
精製水 q.s.100gまで
【0142】
これらの製剤は、薬学の分野でよく知られている従来の手順で調製することができる。上記の医薬組成物は、有効成分「組成物X」の量や種類を変えるために、よく知られた医薬技術に従って変化させることができることが理解されるであろう。エアゾール製剤(vi)は、標準的な計量用量エアゾールディスペンサーと組み合わせて使用することができる。さらに、特定の成分と比率は例示のためのものである。対象となる剤形の望ましい特性に応じて、成分を適切な同等物と交換したり、割合を変えたりしてもよい。
【0143】
以上、開示された実施形態及び例を参照して具体的な実施形態を説明してきたが、このような実施形態は例示に過ぎず、本開示の範囲を限定するものではない。以下の特許請求の範囲に定義されているような広い側面での開示から逸脱することなく、当技術分野における通常の技術に従って、変更及び修正を行うことができる。
【0144】
すべての出版物、特許、及び特許文書は、参照により個別に組み込まれているかのように、本明細書に組み込まれている。本開示と矛盾する制限は、そこから理解されるべきではない。本開示は、様々な具体的かつ好ましい実施形態及び技術を参照して説明してきた。しかし、本開示の精神及び範囲内にとどまりながら、多くの変形及び修正を行うことができることを理解すべきである。
【国際調査報告】