(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(54)【発明の名称】眼のタンパク質凝集疾患を治療するための薬剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/423 20060101AFI20220722BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20220722BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220722BHJP
A61K 33/42 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A61K31/423
A61P27/12
A61P43/00
A61K33/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570895
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 US2020035592
(87)【国際公開番号】W WO2020243720
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520061480
【氏名又は名称】プレックス ファーマスーティカルズ,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】プラサド,スリドハー・ゴビンダ
(72)【発明者】
【氏名】ピーターマン,マーシャル・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,サントシュ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC41
(57)【要約】
それを必要とする対象において老視または白内障を治療する方法が提供される。本方法は、ヒトα-A-クリスタリンの高分子量凝集体の形成を抑制する化合物を含む、組成物の有効量を対象に投与するステップを要する。これらの化合物のいくつかを用いてトランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシスを予防するかつ/または治療する方法もまた、提供される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において老視または白内障を治療するための方法であって、治療有効量の式(I)
【化1】
{式中、
R
3は、水素、アミノ酸、C
1~10アルキル、C
1~10分枝アルキル、C
1~10ヒドロキシアルキル、C
1~10ハロアルキル、C
2~6アルケニル、C
2~C
6アルキルアリール、C
1~C
6アルキル(C
3~C
6)シクロアルキル、C
1~6アルキルNH、NC
1~
6ジアルキルアミン、C
1~
6,アルキル-ピロリジン、C
1~C
6アルキル-ピペリジン、C
1~
6アルキルモルホリン、プタリジル、
【化2】
[式中、nは、0~6の間の数であり;
R
4およびR
5は、水素、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6ヒドロキシアルキル、C
2~6アルコキシアルキル、アラルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、Wから選択される少なくとも1つの基で場合によって置換される3~6員のシクロアルキル、Wから選択される少なくとも1つの基で場合によって置換される4~6員のヘテロシクリルから独立に選択され、
Wは、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、ハロ、NH
2、C
1~
6アルキルNH、NC
1~6ジアルキルアミン、C
1~6アルコキシ、およびヒドロキシルから選択され;Yは、O、S、またはNR
6(式中、R
6は、水素またはC
1~
6アルキルである)である]からなる群から選択され;
Xは、OまたはNR
6(式中、R
6は、水素またはC
1~6アルキルである)である}
を有する化合物またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
R
3が、アミノ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
4が、水素であり、R
5が、メチルまたはエチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R
3が、C
1~6アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Xが、Nである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Xが、Oである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
R
3が、
【化3】
[式中、nは、0である]である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
R
3が、
【化4】
であり、Xが、Oであり、R
4が、Hであり、R
5が、CH
3である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
R
3が、
【化5】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
化合物が、
【化6】
またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
対象が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
医薬組成物が、局所眼投与用に配合される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
それを必要とする対象において、トランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシスを予防するかつ/または治療する方法であって、治療有効量の式(I)
【化7】
{式中、
R
3は、アミノ酸、C
1~10アルキル、C
1~10分枝アルキル、C
1~10ヒドロキシアルキル、C
1~10ハロアルキル、C
2~6アルケニル、C
2~C
6アルキルアリール、C
1~C
6アルキル(C
3~C
6)シクロアルキル、C
1~
6アルキルNH、NC
1~6ジアルキルアミン、C
1~
6,アルキル-ピロリジン、C
1~C
6アルキル-ピペリジン、C
1~6アルキルモルホリン、プタリジル、
【化8】
[式中、nは、0~6の間の数であり;
R
4およびR
5は、水素、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6ヒドロキシアルキル、C
2~6アルコキシアルキル、アラルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、Wから選択される少なくとも1つの基で場合によって置換される3~6員のシクロアルキル、Wから選択される少なくとも1つの基で場合によって置換される4~6員のヘテロシクリルから独立に選択され、
Wは、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、ハロ、NH
2、C
1~6アルキルNH、NC
1~6ジアルキルアミン、C
1~6アルコキシ、およびヒドロキシルから選択され;Yは、O、S、またはNR
6(式中、R
6は、水素またはC
1~6アルキルである)である]からなる群から選択され;
Xは、OまたはNR
6(式中、R
6は、水素またはC
1~6アルキルである)である}
を有する化合物またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
R
3が、アミノ酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
R
4が、水素であり、R
5が、メチルまたはエチルである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
R
3が、C
1~6アルキルである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
Xが、Nである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
Xが、Oである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
R
3が、
【化9】
[式中、nは、0である]である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
R
3が、
【化10】
であり、Xが、Oであり、R
4が、Hであり、R
5が、CH
3である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
R
3が、
【化11】
である、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
化合物が、
【化12】
またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
対象が、ヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
医薬組成物が、局所眼投与用に配合される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、米国特許法第119条下で2019年5月31日出願の、および表題が「Pharmacological Agents for Treating Protein Aggregation Diseases of the Eye」の米国仮出願第62/855,560号の利益を主張し、その開示は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
[0002]本明細書に開示されるのは、2-(3,5-ジクロロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-6-カルボン酸(タファミジス)およびタファミジスのプロドラッグを用いて、老視または白内障眼疾患を治療する方法である。
【背景技術】
【0003】
[0003]白内障は、世界保健機関(WHO)によると、世界的に、特に、低および中所得国において、失明の主な原因(51%)である。この千年紀の初めにまで遡るデータによって、アフリカにおける失明の30~60%および東南アジアにおける失明の60~80%が、白内障に起因し得ることが示された。米国では、白内障を伴う人の現在数は、2億5700万人を超えることが推定されている。失明防止の研究から得られた予測では、その数は、2032年までに3億8500万人に増加し、2050年までに4億5600万人に増加することが推定される。白内障は、眼への光の通過を遮断するまたは変化させる眼の水晶体の濁りである。白内障は、通常、両眼に形成されるが、同じ割合ではない。これらは、ゆっくりとまたは急速に発現することも、ある時点まで進行し、次いで、まったく増悪しないこともある。加齢の他に、他の因子は、白内障を引き起こして形成し得る。眼感染症、いくつかの医薬(例えば、ステロイド)、外傷または激しい暑さまたは放射線への曝露は、白内障を引き起こすおそれがある。非可視の太陽光(UVまたは紫外線と呼ばれる)への過剰な曝露および様々な疾患、例えば、糖尿病または代謝障害はまた、白内障の形成に寄与し得る。
【0004】
[0004]現在利用可能な唯一の治療は、水晶体の外科的抽出および公衆衛生上、大きな負担を与える眼間の水晶体との置換である。白内障手術は、一般に、安全であると考えられているが、著しい合併症がある、すなわち、(i)白内障手術を受けている、米国における患者のうち30~50%が、2年以内に水晶体嚢後部の不透明化を発現し、レーザー治療を要する;(ii)0.8%が、網膜剥離がある;(iii)0.6~1.3%が、角膜浮腫のために入院するまたは角膜移植を要するおよび(iv)約1%が、眼内炎を示す。さらに、世界の開発地域および低開発地域の多くの遠隔地および貧困地域において、人々は、主に、眼のケアへのアクセスの欠如により、依然として、白内障により失明する。
【0005】
[0005]老視は、近くにある物体に焦点を合わせることができなくなる眼の調節能力の喪失である。老視は、45歳を超えると誰もがなり、生活の質に著しい悪影響を及ぼす。老視についての現在の治療には、以下が含まれる。(i)デバイスを利用して、近視力および遠視力を改善するのに役立つが、遠近調節の自然過程を回復させるのに役に立たず、デバイスの常時使用を要する非侵襲的なアプローチ、および(ii)視力の質の低下、後退効果、屈折左右不同症、角膜拡張、および曇りを含めた、主要な合併症を伴う侵襲的外科手技。最も重要なことには、これらの方法のいずれも、老視を後戻りさせることができない。さらに、老視の開始を防止するまたは遅延することができる、治療オプションは存在しない。
【0006】
[0006]眼水晶体の硬直ならびに水晶体嚢の弾性、眼水晶体の寸法、層間の付着の寸法、および毛様体筋(CM)の収縮の変化は、老視についての要因としてすべて提案されている。しかしながら、ヒトおよび非ヒト霊長類研究では、CM機能は、老視の開始を過ぎた後でも、正常であるということが示唆されている。対照的に、ヒト水晶体は、調節力の喪失と直接相関する方式で、年齢による堅さが増す。調節力の喪失は、屈曲性ポリマーから作製された眼内レンズを移植することにより回復することができ、水晶体の屈曲性の回復によって、十分に遠近調節を回復することが示唆される。したがって、水晶体の硬化を予防し得るまたは後戻りし得る薬剤は、老視についての新規の非侵襲的治療のための有望な手段を提供するはずである。
【0007】
[0007]分子レベルで、クリスタリンとして公知のタンパク質は、眼水晶体の硬直において主な役割を果たしている。水晶体クリスタリンは、3つのアイソフォーム、α、β、およびγを含み、眼水晶体タンパク質含量90%を占める。ATP-非依存性シャペロンおよび低分子量熱ショックタンパク質(sHsp)ファミリーのメンバーである、αクリスタリン(crystalline)(AC)は、クリスタリンタンパク質含量の40%を構成する。これは、2つのサブユニット、αA-クリスタリン(AAC)およびαB-クリスタリン(ABC)のヘテロオリゴマーとして存在し、その発現は、眼水晶体に主に限定される。それは、部分的に折り畳まれていない水晶体タンパク質における曝露された高次構造的な特徴を認識し、それを互いに隔離し、それにより、そうでない場合様々な年齢関連の視力障害をもたらすはずである、凝集-傾向の種の母集団を減少させる。
【0008】
[0008]複数の試験によって、ヒト水晶体の硬直とAC機能との間の関連が確立された。動的機械的分析測定は、特に、弾性の500倍から1000倍の低下が観察される水晶体核において、年齢に伴う水晶体の堅さの有意な増加があることが示されている。ほとんどのACが、40~50歳までに高分子量(HMW)凝集体に取り込まれるため、水晶体の堅さのこの増加は、遊離のACシャペロン濃度の年齢に関連する減少と相関する。可溶性ACのHMW凝集体へのこの転換は、おそらく、存在する低レベルの可溶性ACが、シャペロン変性タンパク質に十分でないため、水晶体の堅さが大きく増加することにより付随して起こる。遊離のACシャペロンのその年齢に関連する減少は、水晶体の堅さの原因であり、ヒト水晶体が、加熱を受けて、可溶性ACのHMW凝集体への年齢に関連する転換を模倣し、水晶体の堅さの増加が観察された実験により裏付けられる。同様に、精製された可溶性ACは、シャペロン様活性の喪失と共にUV放射線に曝露される場合、HMW凝集体を形成する。HMW凝集体は、分子間架橋結合、特に、システインスルフヒドリル基(-SH)の酸化をもたらすS-S結合により形成される。このジスルフィド架橋HMW凝集体の形成は、水晶体の堅さおよび遠近調節の振幅の喪失を増加することにおける、主な寄与体であると考えられる。
【0009】
[0009]老視が、世界で失明の主な原因である、年齢関連核(ARN)白内障の最も早期に観察可能な症状であることが示唆されている。ACのシャペロン様活性(CLA)は、水晶体の透明度を維持する上で重要な役割を果たす。AC突然変異または年齢関連一時変異の結果として、AC CLAの減少は、白内障の形成と関連する。小児の失明の最も一般的な形態である、先天性白内障において、白内障によって引き起こされる突然変異の大部分は、ACにおいて同定されている。いくつかのAC突然変異は、ACの溶解性の低下およびシャペロン活性の低下を直接もたらし、ACノックアウト試験が、白内障を早期に開始したマウスにおいて行われた。AC CLAが、アロステリックな機構を通して変調することができるという概念は、試験から最初に導かれ、これらの試験から、陽イオンまたは小分子が、in vitroシャペロンアッセイを用いて、ACにおいてCLAを増加させるまたは減少させることができるということが判明した。したがって、AC CLAの薬理学的調節は、白内障治療および/または予防のための妥当とみなせるアプローチである。
【0010】
[0010]老視において失われた眼の調節能力を保護するおよび回復することができる非侵襲的治療についての必要性を考えるとならびにHMW AC凝集体の形成が、老視の基礎となる主な原因である因子であると仮定すると、HMW AC凝集体の形成を選択的に遅延させ、かつ/または後戻りさせることができる薬剤の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0011]タファミジス(CAP4349;下記の構造を参照のこと)は、トランスサイレチンによって媒介される心筋症(ATT-CM)の治療用に用いられるFDA承認薬である(Falk RH、2019年、Eur Heart J.40巻(12号):1009~1012)。トランスサイレチンアミロイド心筋症は、心筋中のトランスサイレチンアミロイド線維の沈着により引き起こされる。沈着は、野生型または異型トランスサイレチンが、不安定およびミスフォールドになる場合に起こる。タファミジスは、トランスサイレチンに結合し、四量体の解離およびアミロイド形成を防止する。
【0012】
【0013】
[0012]本明細書に記載される通り、本発明者らは、CAP4349が、ヒトACCの凝集を防止するならびに以下に記載される通りACC封入体を溶解することも可能であるということを見出した。やはり本明細書中に記載されるのは、CAP4349のプロドラッグである。プロドラッグは、酵素的反応または化学反応によりまたは2つの組合せによりin vivoで活性親ドラッグに転換される薬理活性がほとんどないまたはまったくない分子である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[0013]したがって、本開示は、対象において老視または白内障を治療するための方法を提供する。本方法は、治療有効量の式(I)
【0015】
【0016】
[式中、R3は、本明細書中で以下に定義される通りである]
を有する化合物、またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
【0017】
[0014]本開示はまた、治療有効量の式(I)を有する化合物またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を用いて、トランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシスを予防するおよび/または予防するための方法を提供し、R3は、本明細書中で以下に定義される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】[0015]
図1Aは、例化合物CAP4349(タファミジス)によりヒトACCのUVによって誘導される凝集の阻害を示すSDS-PAGEゲルを示す図である。
【
図1B】[0016]
図1Bは、例化合物CAP4349(タファミジス)によりヒトACCのUVによって誘導される凝集の阻害を示すグラフである。
【
図2A】[0017]
図2Aは、用量依存的方式でCAP4349-Mの存在下でAACによりリゾチームの遅延された凝集を示す一組の動態曲線を示す図である。
【
図2B】[0018]
図2Bは、凝集の開始から43分で測定された、異なる濃度のCAP4349-Mの存在下での、AACによりリゾチームの凝集の累積的な減少を示す棒グラフである。これらのバーは、平均相対吸光度±SDを示す(n=3または4)。
【
図2C】
図2Bは、凝集の開始から43分で測定された、異なる濃度のCAP4349-Mの存在下での、AACによりリゾチームの凝集の累積的な減少を示す棒グラフである。これらのバーは、平均相対吸光度±SDを示す(n=3または4)。
【
図3A】[0019]
図3Aは、例化合物CAP4349によって与えられた、ヒト水晶体上皮細胞の、熱によって誘導される細胞死からの保護を示すグラフである。
【
図3B】[0020]
図3Bは、例化合物CAP4349によって与えられた、ヒト水晶体上皮細胞の、UVによって誘導される細胞死の保護を示すグラフである。
【
図4A】[0021]
図4Aは、例化合物CAP4349による治療後の凝集された緑色蛍光タンパク質(GFP)によってタグされたACC変異(R116C)タンパク質の溶解を示す一組の免疫蛍光画像である。
図3Aはまた、染色用のP62/SQSTM1抗体を用いて、凝集された変異ACCによる自己貪食誘導ユビキチン-結合タンパク質p62の局在化が示される。
【
図4B】[0022]
図4Bは、GFP蛍光により測定される通りACCおよびp62の封入体を溶解することにおいて、例化合物CAP4349の増加量の効果を示す棒グラフである。
【
図5A】[0023]
図5Aは、例化合物CAP4349が、ウシ眼水晶体タンパク質の高分子量凝集体の形成を防止する能力を示す、明視野画像およびグラフである。
【
図5B】[0024]
図5Aは、例化合物CAP4349が、ヒト眼水晶体タンパク質の高分子量凝集体の形成を防止する能力を示す、明視野画像である。
【
図6】[0025]
図7は、一連の写真およびグラフである。これらの写真は、125μM CAP4349(またはビヒクル)により前処置されたおよびUV光で照射されたまたは照射されなかったブタ水晶体を示す。代表的な暗視野および明視野画像が示される。グラフは、暗視野画像から得られた中央ピクセル強度±SDおよびp値(t検定)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0026]本開示は、CAP4349(タファミジス)が、ヒトACCの凝集を防止するならびにACC封入体を溶解する能力を記載する。タファミジスは、成人におけるトランスサイレチンによって媒介されるアミロイドーシス(ATTR-CM)によって引き起こされる心疾患(心筋症)の治療用のFDA承認薬でる。白内障に類似して、ATTR-CMはまた、それらの正常な機能を妨げる身体の臓器および組織中のアミロイドと呼ばれる特異的なタンパク質の異常な沈着の蓄積によって特徴付けられる、緩徐な進行性の状態である。薬理学的に、タファミジスは、シャペロンのように働き、トランスサイレチン(TTR)の正確に折り畳まれた四量体の形態を安定化し、それにより、その解離を抑制する。ATTR-CMに罹患している人々において、トランスサイレチンの個別のモノマーは、四量体から外れて落ち、ミスフォールドし、凝集体を形成する。
【0020】
[0027]本明細書に記載される通り、CAP4349は、ヒトACCの凝集をも防止するならびにACC封入体を溶解することが可能であるということが見出された。この観察に基づいて、本明細書に開示されるのは、CAP4349またはそのプロドラッグを対象に投与するステップによる老視または白内障を治療するための方法である。プロドラッグは、生物活性化合物の化学修飾により創出された不活性化合物である。プロドラッグは、極性の官能基およびエステルまたはアミドリンカーとの水素結合をマスクして、親油性を高めることにより、化合物の透過性を高めるために最も一般的に用いられる。上記で述べた通り、プロドラッグは、酵素的反応または化学反応によりまたは2つの組合せにより、in vivoで活性親ドラッグに転換される。
【0021】
[0028]より詳細には、本技術の第一の態様では、それを必要とする対象において老視または白内障を治療するための方法が提供される。本方法は、治療有効量の式(I)
【0022】
【0023】
{式中、
R3は、水素、アミノ酸、C1~10アルキル、C1~10分枝アルキル、C1~10ヒドロキシアルキル、C1~10ハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~C6アルキルアリール、C1~C6アルキル(C3~C6)シクロアルキル、C1~6アルキルNH、NC1~6ジアルキルアミン、C1~6,アルキル-ピロリジン、C1~C6アルキル-ピペリジン、C1~6アルキルモルホリン、プタリジル(pthalidyl)、
【0024】
【0025】
[式中、nは、0~6の間の数であり;
R4およびR5は、水素、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C2~6アルコキシアルキル、アラルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、Wから選択される少なくとも1つの基で場合によって置換される3~6員のシクロアルキル、Wから選択される少なくとも1つの基で場合によって置換される4~6員のヘテロシクリルから独立に選択され、
Wは、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、ハロ、NH2、C1~6アルキルNH、NC1~6ジアルキルアミン、C1~6アルコキシ、およびヒドロキシルから選択され;Yは、O、S、またはNR6(式中、R6は、水素またはC1~6アルキルである)である]からなる群から選択され;
Xは、OまたはNR6(式中、R6は、水素またはC1~6アルキルである)である}
を有する化合物、またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
【0026】
[0029]本開示はまた、式(I)を有する化合物を含むプロドラッグおよびトランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシスを予防するかつ/または治療する方法を提供する。
【0027】
[0030]したがって、本技術の第2の態様において、本明細書中で提供されるのは、それを必要とする対象においてトランスサイレチン(TTR)関連アミロイドーシスを治療するための方法である。本方法は、治療有効量の式(I)
【0028】
【0029】
{式中、
R3は、アミノ酸、C1~10アルキル、C1~10分枝アルキル、C1~10ヒドロキシアルキル、C1~10ハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~C6アルキルアリール、C1~C6アルキル(C3~C6)シクロアルキル、C1~6アルキルNH、NC1~6ジアルキルアミン、C1~6,アルキル-ピロリジン、C1~C6アルキル-ピペリジン、C1~6アルキルモルホリン、プタリジル、
【0030】
【0031】
[式中、nは、0~6の間の数であり;
R4およびR5は、水素、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C2~6アルコキシアルキル、アラルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、Wから選択される少なくとも1つの基で場合によって置換される3~6員のシクロアルキル、Wから選択される少なくとも1つの基で場合によって置換される4~6員のヘテロシクリルから独立に選択され、
Wは、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、ハロ、NH2、C1~6アルキルNH、NC1~6ジアルキルアミン、C1~6アルコキシ、およびヒドロキシルから選択され;Yは、O、S、またはNR6(式中、R6は、水素またはC1~6アルキルである)である]からなる基から選択され;
Xは、OまたはNR6(式中、R6は、水素またはC1~6アルキルである)である}
を有する化合物またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
化合物および定義
[0031]本明細書で使用される場合、用語「ハロ」および「ハロゲン」とは、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)、およびヨウ素(ヨード、-I)から選択される原子を意味する。
【0032】
[0032]単独でまたは例えば、「ハロアルキル」のような、より大型の部分の一部として用いられる用語「アルキル」とは、別段規定がない限り、1~10個の炭素原子を有する、飽和の一価の直鎖または分枝状の炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどが含まれる。「一価の」とは、ある時点で残りの分子に結合されることを意味する。
【0033】
[0033]単独でまたはより大型の部分の一部として用いられる用語「シクロアルキル」とは、本明細書に記載される通り、別段規定がない限り、3~10個の炭素環原子を有する飽和の環式脂肪族単環式、二環式または三環式環系を意味する。単環式シクロアルキル基には、それだけには限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、およびシクロオクチルが含まれる。二環式シクロアルキル基には、例えば、別のシクロアルキル基と縮合されるシクロアルキル基、例えば、デカリンまたはアリール基(例えば、フェニル)またはヘテロアリール基と縮合されるシクロアルキル基、例えば、テトラヒドロナフタレニル、インダニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン、および5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリンなどが含まれる。三環式環系の一例は、アダマンタンである。二環式シクロアルキル基のための結合点が、シクロアルキル部分上でもよく、安定構造をもたらすアリール基(例えば、フェニル)またはヘテロアリール基上でもよいことが理解される。規定される場合、シクロアルキルにおける任意選択の置換基が、任意の置換可能な位置で存在し得、例えば、シクロアルキルが結合される位置が含まれるということがさらに理解される。
【0034】
[0034]用語「ヘテロシクリル」とは、N、O、およびSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子を含有する、4-、5-、6-および7-員の飽和のまたは部分的に不飽和の複素環を意味する。用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環」、「複素環式基」、「複素環式部分」、および「複素環式ラジカル」は、同義的に用いることができる。ヘテロ環は、安定構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子でその側基に結合することができる。かかる飽和のまたは部分的に不飽和の複素環式ラジカルの例には、それだけには限らないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、オキセタニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、モルホリニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロピリジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、およびテトラヒドロピリミジニルが含まれる。ヘテロシクリル基は、単環式または二環式であり得る。別段規定がない限り、二環式ヘテロシクリル基には、例えば、別の不飽和の複素環式ラジカルまたは芳香環もしくはヘテロアリール環と縮合される、不飽和のまたは飽和の複素環式ラジカル、例えば、クロマニル、2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシニル、テトラヒドロナフチリジニル、インドリノニル、ジヒドロピロロトリアゾリル、イミダゾピリミジニル、キノリノニル、ジオキサスピロデカニルなどが含まれる。二環式ヘテロシクリル基についての結合点が、安定構造をもたらすヘテロシクリル基または芳香環でもよいことが理解される。規定される場合、ヘテロシクリル基における任意選択の置換基が、任意の置換可能な位置で存在し得、例えば、ヘテロシクリルが結合される位置が含まれるということがやはり理解される。
【0035】
[0035]本明細書で使用される場合、単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる、用語「アリール」とは、炭素原子の環のみを含む、6~14員の芳香環を意味する。アリール環は、単環式、二環式、または三環式であり得る。限定しない例には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラセニルなどが含まれる。規定される場合、アリール基における5つの任意選択の置換基が、任意の置換可能な位置で存在し得るということがやはり理解される。一実施形態では、アリール基は、非置換または一置換もしくは二置換である。
【0036】
[0036]「ヘテロアリールアルキル」、「ヘテロアリールアルコキシ」、または「ヘテロアリールアミノアルキル」のように、単独でまたはより大型の部分の一部として用いられる用語「ヘテロアリール」とは、N、O、およびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む5~10-員の芳香ラジカルを意味し、例えば、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、およびプテリジニル(pteridinyl)が含まれる。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「芳香族複素環」と同義的に用いることができる。本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアル-(heteroar-)」はまた、芳香族複素環が、1つまたは複数のアリール環と縮合される基が含まれ、ラジカルまたは結合点は、芳香族複素環上である。限定されない例には、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、キナゾリニル、およびキノキサリニルが含まれる。ヘテロアリール基は、単環式または二環式であり得る。規定される場合、ヘテロアリール基における任意選択の置換基が、任意の置換可能な位置で存在し得、例えば、ヘテロアリールが結合される位置が含まれるということが理解される。
【0037】
[0037]本明細書で使用される場合、用語「対象」および「患者」は、同義的に用いることができ、治療を必要とする哺乳動物、例えば、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコなど)、農業用家畜(例えば、雌ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を意味する。一般に、対象は、治療を必要とするヒトである。
【0038】
[0038]本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」とは、研究者、獣医師、医師または他の臨床医により探索されているそれを必要とする対象の生物学的または医学応答を誘発する医薬組成物の量を意味する。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0039】
[0039]鏡像異性の形態およびジアステレオマーの形態を含めた、本化合物のすべての立体異性体(例えば、様々な置換基において不斉炭素により存在し得るもの)は、本技術の範囲内で考えられる。本技術の化合物の個別の立体異性体は、例えば、(例えば、ある特定の活性を有する純粋なまたは実質的に純粋な光学異性体として)他の異性体が実質的になくても、例えば、ラセミ体としてまたはすべての他の、もしくは他の選択される、立体異性体と混合してもよい。本技術の不斉中心は、1974年の国際純正および応用化学連合(IUPAC)の勧告により定義された通り、SまたはR立体配置を有し得る。ラセミの形態は、物理的方法、例えば、ジアステレオマー誘導体の分別再結晶、分離もしくは結晶化またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離などにより分解することができる。個別の光学異性体は、それだけには限らないが、従来の方法、例えば、光学活性な酸による塩の形成、その後の結晶化などを含めた、任意の適当な方法によりラセミ体から得ることができる。
【0040】
[0040]例えば、本技術の化合物のある特定の鏡像異性体が望ましい場合、これは、不斉合成により、または不斉補助剤による誘導により調製することができ、得られたジアステレオマー混合物は、分離され、補助基は、切断されて、純粋な所望の鏡像異性体を生成する。あるいは、分子が、塩基性官能基、例えば、アミノなど、または酸性官能基、例えば、カルボキシルなどを含有する場合、ジアステレオマー塩は、適切な光学活性酸または塩基によって形成され、その後、ジアステレオマーを分割し、したがって、当技術分野で周知の分別再結晶またはクロマトグラフ的な手段、および純粋な鏡像異性体のその後の回収により形成される。
【0041】
[0041]化合物は、本明細書に記載される通り、置換基または官能基部分の任意の数で置換することができるということが理解される。一般に、用語「場合によって」によって先行してもしなくても、用語「置換される」および本技術の式中に含まれる置換基は、ある特定の置換基のラジカルを有する所与の構造における水素ラジカルの置換を意味する。任意の所与の構造中の1つを超える位置が、ある特定の群から選択される1つを超える置換基で置換することができる場合、その置換基は、あらゆる位置で同じでも異なっていてもよい。本明細書で使用される場合、用語「置換される」は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが考えられる。広範な態様において、許容される置換基には、有機化合物の非環式および環式、分枝状および非分枝状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。本技術の目的のために、ヘテロ原子、例えば、窒素は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書中に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容される置換基を有し得る。さらに、本技術は、有機化合物の許容される置換基により任意の方式で限定されることを目的としない。本技術によって想定される置換基および変数の組合せは、好ましくは、例えば、神経変性障害の治療に有用な、安定した化合物の形成をもたらすものである。用語「安定した」とは、本明細書で使用される場合、製造を可能にするのに十分な安定性を有するおよび検出するのに十分な期間、好ましくは、本明細書中で詳述される目的のために有用であるのに十分な期間、本化合物の完全性を維持する化合物を好ましくは意味する。
プロドラッグ
[0042]プロドラッグは、化学反応、例えば、加水分解またはリン酸化によって、活性型に転換されなければならない薬理学的に不活性な薬剤である。プロドラッグ戦略は、極性の官能基およびエステルまたはアミド部分との水素結合をマスクして、親油性を高めることにより、化合物の透過性を高めるために最も一般的に用いられる。受動拡散および輸送体によって媒介される方法による透過性は、プロドラッグアプローチにより調節されている。タファミジス(CAP4349)のようなカルボキシル基を有する薬物の場合において、プロドラッグは、カルボキシル基のエステルまたはアミドへの転換により得ることができる。薬物を含むカルボキシル基の場合、単純なアルキルエステルは、受動拡散の透過性を高めるために好ましいこともある。エチルエステルは、このタイプの最も一般的なプロドラッグである。他のプロモイエティには、アリール、ジオールを有する二重エステル(double ester)、環式カルボネート、およびラクトンが含まれる。これらのプロモイエティすべては、本明細書中で、タファミジス(CAP4349)のプロドラッグとして考えられる。二重エステルは、第2のエステルを通したエステラーゼによる認識を高めるために調製される。環式カルボネートプロドラッグ(例えば、レナンピシリン)は、細胞エステラーゼにより非生産的な代謝を回避するために、血漿中で不安定であるように設計される。血液由来の酵素により血液または血漿を加水分解するプロドラッグは、有効成分の経口バイオアベイラビリティおよび体循環を増加させるために有益である。二重エステルおよび環式カルボネートプロドラッグは、この目的のために設計される。ラクトンプロドラッグは、特定のターゲッティングのために開発される。
模範的な化合物の定義
[0043]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、R3は、アミノ酸である。
【0042】
[0044]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、R4は、水素であり、R5は、メチルまたはエチルである。
[0045]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、R3は、C1~6アルキルである。
【0043】
[0046]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、Xは、Nである。
[0047]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、Xは、Oである。
[0048]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、R3は、
【0044】
【0045】
[式中、nは、0である]である。
[0049]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、R3は、
【0046】
【0047】
であり、Xは、Oであり、R4は、Hであり、R5は、CH3である。
[0050]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、R3は、
【0048】
【0049】
である。
[0051]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、化合物は、
【0050】
【0051】
またはその溶媒和物もしくは薬学的に許容されるその塩である。
[0052]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、対象は、ヒトである。
[0053]一実施形態では、2つの態様のそれぞれにおいて、医薬組成物は、局所眼投与用に配合される。
【0052】
[0054]例えば、R4およびR5について置換することができる置換基の代替を含む、本明細書中に記載される化合物のすべてにおいて、置換は、一般に、互いに独立に、構造式(I)に関連して記載される群の間から選択される。
【0053】
[0055]当業者は、本明細書中に記載されるプロドラッグの多くが、互変異性、立体配座異性、幾何異性および/または光学異性の現象を示し得るということを理解している。例えば、プロドラッグは、1つもしくは複数の不斉中心および/または二重結合を含むことができ、結果として、立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、鏡像異性体およびジアステレオマー(diasteromer)およびそれらの混合物、例えば、ラセミ混合物などとして存在し得る。別の例として、プロドラッグは、エノール形、ケト形およびそれらの混合物を含めた、いくつかの互変異性型において存在し得る。
本技術が、プロドラッグの任意の互変異性型、立体配座異性型、光学異性型および/または幾何異性型、ならびにこれらの様々な異なる異性型の混合物を包含することを理解するべきである。
医薬組成物
[0056]様々な置換基の性質に応じて、本明細書中に記載されるプロドラッグは、塩の形態であり得る。かかる塩には、医薬用用途に適した塩(「薬学的に許容される塩」)、獣医用用途に適した塩などが含まれる。かかる塩は、当技術分野で周知の通り、酸または塩基に由来し得る。
【0054】
[0057]一実施形態では、塩は、薬学的に許容される塩である。一般に、薬学的に許容される塩は、親化合物の所望の薬理活性の実質的に1つまたは複数を保持する塩であり、これらは、ヒトへの投与に適している。薬学的に許容される塩には、無機酸または有機酸により形成される酸付加塩が含まれる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するために適した無機酸には、例としておよび限定せずに、ハロゲン化水素酸(hydrohalide acid)(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するために適した有機酸には、例としておよび限定せずに、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンジル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸など)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタリンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸など)、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などが含まれる。
【0055】
[0058]薬学的に許容される塩はまた、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオン)または有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン、モルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)による配位により置き換えられる場合に形成される塩が含まれる。
【0056】
[0059]本明細書中に記載されるプロドラッグ、ならびにそれらの塩はまた、当技術分野で周知の通り、水和物、溶媒和物およびN-オキシドの形態であり得る。別段詳細に示されない限り、表現「プロドラッグ」は、かかる塩、水和物、溶媒和物および/またはN-オキシドを包含することを意図している。特に模範的な塩には、それだけに限らないが、一および二ナトリウム塩、一および二カリウム塩、一および二リチウム塩、一および二アルキルアミノ塩、一マグネシウム塩、一カルシウム塩およびアンモニウム塩が含まれる。
【0057】
[0060]任意の所与の場合に投与される化合物の実際の量は、医師が、関連する状況、例えば、状態の重症度、患者の年齢および体重、患者の全身的な身体状態、状態の原因、および投与の経路を考慮することにより決定される。
【0058】
[0061]患者は、錠剤、液体、カプセル、粉末などの任意の許容される形態で、化合物を経口投与される、または他の経路は、特に、患者が悪心に苦しむ場合、望ましいこともあるまたは必要であり得る。かかる他の経路は、例外なく、送達の経皮的、非経口、皮下、鼻腔内、インプラントステントを介して、くも膜下腔内、硝子体内、眼への局所、眼に戻す、筋肉内、静脈内、および直腸内モードを含むことができる。さらに、配合物は、所与の期間にわたって活性化合物を遅延放出するよう設計することも、療法中に所与の時間に放出される薬物の量を慎重に制御するよう設計することもできる。
【0059】
[0062]いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるその担体において、式(I)を有する少なくとも1種の化合物を含む、医薬組成物が提供される。語句「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤、または賦形剤が、配合物の他の成分と適合性がなくてはならず、そのレシピエントに有害でないことを意味する。
【0060】
[0063]本技術の医薬組成物は、固体、溶液、乳剤、分散体、パッチ、ミセル、リポソームなどの形態で用いることができ、得られた組成物は、経腸または非経口適用に適した有機もしくは無機担体または賦形剤との混合物として、有効成分として、本技術の1種または複数の化合物を含有する。本開示の化合物は、例えば、錠剤、ペレット、カプセル、坐剤、溶液、乳剤、懸濁液、および使用に適した任意の他の形態用の通常の非毒性の、薬学的に許容される担体と合わせることができる。用いることができる担体には、グルコース、乳糖、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンのり、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイド状シリカ、バレイショデンプン、尿素、中鎖トリグリセリド(medium chain length triglyceride)、デキストラン、および固体、半固形、または液体の形態で、製剤を製造する上での使用に適した他の担体が含まれる。さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤および着色剤ならびに香料は、用いてもよい。本化合物は、方法または疾患状態に対する所望の効果をもたらすのに十分な量で、医薬組成物中に含まれる。
【0061】
[0064]医薬組成物は、無菌の注射用懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、適当な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、公知の方法に従って配合することができる。無菌の注射用製剤はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中で、無菌の注射溶液または懸濁液であり得る。無菌の、固定油は、溶媒または懸濁化剤として、従来の方法で使用される。この目的のために、任意の無菌性の(bland)固定油は、合成のモノまたはジグリセリド、脂肪酸(オレイン酸を含む)、ゴマ油、ヤシ油、ラッカセイ油、綿実油のような天然に存在する植物油など、またはオレイン酸エチルなどのような合成の脂肪ビヒクルを含めて使用することができる。緩衝液、保存剤、抗酸化剤などは、必要に応じて組み込むことができる。
【0062】
[0065]本技術の化合物はまた、直腸投与用の坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、式(I)を有する化合物を、常温で固体であるが、直腸腔で液化し、かつ/または溶解して薬物を放出する、適当な非刺激性の賦形剤、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールの合成グリセリドエステルと混合することにより調製することができる。
【0063】
[0066]本開示の化合物を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒剤、乳剤、硬質もしくは軟質カプセル、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤として、経口使用に適した形態であり得る。経口使用を目的とした組成物は、医薬組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法に従って調製することができ、かかる組成物は、薬学的に優雅なおよび味の良い製剤を提供するために、甘味剤、例えば、スクロース、乳糖、もしくはサッカリンなど、矯味剤、例えば、ハッカ、ウインターグリーンまたはサクランボの油など、着色剤および保存剤からなる群から選択される1種または複数の薬剤を含有することができる。非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物としての技術化合物を含有する錠剤はまた、公知の方法により製造することもできる。用いられる賦形剤は、例えば、(1)不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなど;(2)顆粒化剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプンまたはアルギン酸など;(3)結合剤、例えば、トラガカントゴム、トウモロコシデンプン、ゼラチンまたはアラビアゴムなど、および(4)潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどであり得る。錠剤は、コーティングしなくてもよく、胃腸管中で崩壊および吸収を遅延させ、それにより、より長い期間にわたって、持続作用を提供するために、公知の技法によりコーティングしてもよい。例えば、時間遅延材料、例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリルなどは、使用することができる。
【0064】
[0067]いくつかの場合では、経口使用のための配合物は、硬ゼラチンカプセルの形態であってもよく、本化合物は、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合される。これらもやはり、軟ゼラチンカプセルの形態であってもよく、本技術化合物は、水または油性媒体、例えば、ラッカセイ油、流動パラフィンまたはオリーブ油と混合される。
【0065】
[0068]本技術の化合物は、局所的使用に適した形態の医薬組成物として、例えば、油性懸濁液として、水性液体もしくは非水性液体中の溶液または懸濁液として、または水中油型または油中水型液状乳剤として投与することもできる。
【0066】
[0069]医薬組成物は、有効成分として、治療有効量の本技術による少なくとも1種の化合物、または薬学的に許容されるその塩を、従来の眼科的に許容される医薬賦形剤と合わせることによりおよび局所的な眼への使用に適した単位剤形の調製により調製することができる。治療的に効率的な量は、一般に、液剤中で、約0.001~約5%(w/v)の間、好ましくは、約0.001~約2.0%(w/v)である。
【0067】
[0070]眼科用途のため、好ましくは、溶液は、主要なビヒクルとして生理的食塩溶液を用いて調製される。かかる点眼剤のpHは、適切な緩衝系によって4.5~8.0の間で好ましくは維持すべきであり、中性pHが好ましいが、必須ではない。本配合物は、従来の薬学的に許容される保存剤、安定剤および界面活性剤を含有することもできる。
【0068】
[0071]本技術の医薬組成物中に用いることができる好ましい保存剤としては、以下に限定されないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀が挙げられる。
【0069】
[0072]好ましい界面活性剤は、例えば、ツイーン80である。同様に、様々な好ましいビヒクルは、本技術の眼科用調製物中に用いることができる。これらのビヒクルとしては、以下に限定されないが、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースシクロデキストリンおよび精製水が含まれる。
【0070】
[0073]張度調整剤は、必要とされるまたは好都合な場合に添加することができる。それらとしては、以下に限定されないが、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリン、または任意の他の適当な眼科的に許容される張度調整剤が含まれる。
【0071】
[0074]pHを調整するための様々な緩衝液および手段は、結果として得られた調製が眼科的に許容される限り使用することができる。したがって、緩衝液としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびホウ酸緩衝液が含まれる。酸または塩基は、必要とされる場合、これらの配合物のpHを調整するために使用することができる。
【0072】
[0075]同じ方式で、本技術における使用のための眼科的に許容される抗酸化剤としては、以下に限定されないが、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチルヒドロキシトルエンが含まれる。
【0073】
[0076]眼科用調製物中に含むことができる他の賦形剤成分はキレート化剤である。好ましいキレート化剤はエデト酸二ナトリウム(edentate disodium)であるが、他のキレート化剤も、適切にまたはそれと併せて使用することができる。
【0074】
[0077]本技術の活性化合物の実際の用量は、特定の化合物、および処置される状態に依存し;適切な用量の選択は、十分に熟練技術者の知識の範囲内である。
[0078]本技術の点眼用配合物は、眼への適用を容易にするために、計量された適用に適した形態で、例えば、点滴注入器を備えた容器で、好都合には包装される。滴下適用(dropwise application)に適した容器は、通常、適当な不活性の、非毒性のプラスチック材料で作られ、一般に、溶液を約0.5~約15mlの間で含有する。1つのパッケージは、1回または複数回の単位投与量を含有することができる。特に、保存剤の入っていない溶液は、約10回、好ましくは、約5回までの単位投与量を含有する再密封できない容器にしばしば配合され、典型的な単位投与量は、1~約8滴まで、好ましくは、1~約3滴までである。1滴の体積は、通常、約20~35μlである。
【0075】
[0079]当業者に明らかである通り、個々の異性型は、従来の方式で、それらの混合物の分離により得ることができる。例えば、ジアステレオ異性体(diastereoisomeric isomer)の場合では、クロマトグラフ分離は、使用することができる。
【0076】
[0080]本技術はまた、白内障および老視または白内障の治療または予防用の医薬キットを提供する。患者は、ヒトまたは動物の患者であり得る。キットは、式(I)を有する少なくとも1種の化合物の薬学的に有効な量を含有するパッケージ中の個別の投与量のある特定の量を含む。本キットは、キットの使用のための指示をさらに含むことができる。個別の投与量のその特定の量は、約1~約100回の個別の用量を含有することができる。
【0077】
[0081]現在記載される技術およびその利点は、次の例を参照することにより、より良く理解される。これらの例は、本技術の特定の実施形態を記載するために提供される。これらの特定の例を提供することにより、それは、本技術の範囲および精神を制限することを意図しない。現在記載される技術の完全な範囲が、本明細書に添付される特許請求の範囲およびこれらの特許請求の範囲の任意の変更、修正、または相当物により定義される対象を包含することが当業者により理解される。
【実施例】
【0078】
実施例1:例化合物CAP4349(タファミジス(Tafamids))によるAACの凝集の防止
[0082]CAP4349が、濃度依存的な様式で、UVによって誘導される凝集からhAACを保護することが決定された。タファミジス(CAP4349-M)のメグルミン塩を、SDS/PAGEおよび吸収度を用いて、hAAC凝集を防止するその能力について試験した。
【0079】
[0083]CAP4349-M(メグルミン塩、0~1000μM)を含むまたは含まない、hAACを、UV光に15分間曝露し、4~20%勾配のSDS-PAGEゲルで分析した。CAP4349-Mによって、hAAC凝集の用量依存的な予防が実証され、これは、SDS-PAGEゲルで凝集されたおよび凝集されない形態のバンドの強度から明らかである(
図1A)。
【0080】
[0084]別の試験では、CAP4349-Mを含むまたは含まない、hAACを、UV光に60分間曝露し、得られた凝集を、吸収度により測定した。これらの結果を、吸収度の変化の平均百分率±SD(n=3または4)に関して、
図1Bに示す。hAAC凝集の応答の最大半減である、EC
50値は、19.7(±1.4)μMであることが決定した。
【0081】
実施例2:例化合物CAP4349は、用量依存的な方式でhAACのシャペロン様活性(CLA)を増強する
[0085]UV光、酸化、糖化、架橋、およびタンパク質分解による翻訳後修飾は、AACのCLAおよび標的タンパク質の凝集を防止するその能力に影響を及ぼし得る。これらの修飾によって、他の水晶体クリスタリンを凝集させ、これは、結果として、水晶体の混濁を発生させ、白内障を発生させる。CAP4349がhACCの凝集を防止してから、AACのCLA活性に対するCAP4349の効果を、(i)モデルクライアントタンパク質としてのリゾチーム、および(ii)生理学的に関連性のあるレンズタンパク質としてのウシγ-クリスタリン(BGC)によるin vitroシャペロンアッセイを用いて評価した。
【0082】
[0086]リゾチームの熱によって誘導される凝集:還元剤(DTT)および熱(37℃)の存在下で、リゾチームは、変性および凝集を起こす。AACのCLA活性は、熱およびDTTによって誘導される凝集に対するリゾチームを防止することができる(Robey、R.L.ら(1997年)、Journal of Heterocyclic Chemistry、34巻:(2号)413~428頁)。ACCが、熱およびDTTによって誘導される凝集に対してリゾチームを保護する能力に対するCAP4349の効果を検査するために、AAC(250μg/ml)を、CAP4349-Mの様々な濃度で混合し、室温で1時間インキュベートし、その後、リゾチーム(500μg/ml)を加えた。凝集反応を、10mM DTTを加えることにより、37℃で開始した。凝集を、400nmにおける吸収度の測定によって、光散乱の変化としてモニターした。CAP4349の存在下で、AACは、凝集からのリゾチームの保護の増加を実証したことが判明した。この効果は、用量依存的であった(
図2A)。これらの結果によって、CAP4349は、AACとの相互作用後、そのCLAを増加することが示唆される。
【0083】
[0087]BGCのUVによって誘導される凝集:UV放射線への曝露は、白内障の形成への要因である。試験によって、in vitroにおけるレンズγ-クリスタリン(GC)のUV放射線への曝露によって、光凝集およびHMW凝集体の形成をもたらすことが示された(Gilbert、Adam M.ら、(2007年)、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、17巻(5号):1189~1192)。AACは、GCの熱およびUVによって誘導される凝集を防止する(Horowitz J.(1992年)、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 89巻:10449~10453)。したがって、生理学的に関連性のあるクライアントタンパク質、例えば、GCの凝集を防止するAACの能力に対するCAP4349の効果を検査した。CAP4349は、用量依存的な方式でUVによって誘導されるBGC凝集に対するAACにより提供される保護を増加させることが判明し(
図2B)、AACとのCAP4349の相互作用は、クライアントタンパク質、レンズγ-クリスタリンによってそのCLAを増強することが示唆される。
【0084】
[0088]ACCのCLAを増強することにおけるCAP4349(EC
50)の効力の決定:AAC(250μg/ml)を、CAP4349-Mの様々な濃度で混合し、室温で1時間インキュベートし、その後、精製されたBGC(500μg/ml)を加えた。凝集反応を、反応混合物をUVB放射線に曝露することにより開始した。凝集を、t=0、15、30および45分での600nmにおける吸収度を測定することにより、光散乱の変化についてモニターした。3通りまたは4通りのウェルから得られた平均吸収百分率±SDを、グラフにプロットした(
図2C)。EC
50値を、64.8(±1.3)μMとして算出し、これは、AACの存在下でBGC凝集の最大半減応答をもたらすCAP4349-M濃度の濃度である。
【0085】
実施例3:例化合物CAP4349によるヒト水晶体上皮細胞の熱およびUVによって誘導される細胞死の保護
[0089]細胞AC機能の尺度としての、ストレスからのヒト水晶体上皮細胞の保護における、CAP4349の効力:無傷のヒト水晶体を加熱することにより、可溶性ACのHMW凝集体への転換を劇的に促進し、ACは、熱応力によって誘導される細胞死からヒト水晶体上皮(HLE)細胞を保護することを担う(Peschek Jら(2009年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.106巻(32号):13272~13277)。UVストレス後のHLE細胞の生存はまた、AC活性に依存する(Kumar P.ら、(2007年)Biochem.J.、408巻:251~258頁)。熱またはUV曝露後の細胞-生存アッセイを測定するためのアッセイを、ACシャペロン活性についての潜在的な代理として開発した。HLE細胞系SRA 01/04細胞を、CAP4349で2時間プレインキュベートし、次いで、熱(50℃ 40m間)またはUV光(48秒)に曝露した。結果では、CAP4349が、用量依存的な方式で、熱によって誘導されるおよびUVによって誘導される細胞死から細胞を保護することが示され(
図3Aおよび
図3B)、CAP4349の存在下でのAACのCLAの増加は、ストレスからHLE細胞を保護することが可能であるということが示唆される。CAP4349は、普通の条件下で生存度を変更しない。
【0086】
実施例4:例化合物CAP4349は、AACの細胞凝集体を減少させる
[0090]CAP4349の細胞効果を、AAC凝集についての自動化高-含量アッセイを用いて評価した。AAC(R116C)-GFPは、p62陽性封入体(p62は、いくつかのタンパク質凝集疾患においてユビキチン化した凝集体と共存することが知られる)を形成することが報告されている(Neal R,ら(2010年)Mol.Vis.16巻:2137~2145.)。実験を、CAP4349が、HeLa細胞中のAACおよびp62の共存に対する任意の効果を有するかどうかを決定するために行った。結果では、HeLa細胞中のAAC(R116C)-GFPの凝集体が、p62と共存したことおよびこれらの凝集体が、CAP4349による治療後に減少したことが示された(
図4A)。凝集体形成のこの減少は、統計的に有意であることが判明した(
図4B)。
【0087】
実施例5:CAP4349は、UV放射線に曝露した場合、ウシおよびヒト水晶体可溶性抽出物の凝集を防止する
[0091]上記の実施例において、CAP4349は、UVによって誘導される凝集から組換えhAACを保護し、クライアントタンパク質においてそのCLAを促進することが示された。次に、CAP4349が、より複雑なおよび生理学的に関連性のある系においてUVによって誘導される不透明化を防止する能力を検査した。ウシおよびヒト水晶体ライセートは、AACならびに複数の内因性クライアントタンパク質を含有し、そのすべては、イオン、レドックス対および抗酸化剤の生理学的に関連性のある環境における生理学的な割合で存在する。CAP4349は、用量依存的な方式で、ウシ(
図5A)およびヒト(
図5B)ライセートを、UVによって誘導される不透明化から保護した。
【0088】
実施例6:CAP4349は、水晶体の透明度を高め、ex vivoでUVによって誘導される白内障の形成を遅延する
[0092]ブタ水晶体を、125μM CAP4349(またはビヒクル)で前処置し、UV照射した(またはUV照射しなかった)。ブタ水晶体(Sierra for Medical Science、Inc.、Whittier、CA)は、白内障のex vivoモデルで以前に用いられている(Raju, M.(2014年)Biochemistry、53巻(16号):2615~2623.)。CAP4349は、ex vivoでブタ水晶体のUVによって誘導される不透明化を防止することが判明した(
図6)。CAP4349が、不透明化から完全な無傷の水晶体を保護する能力は、化合物が、白内障のin vivo動物モデルにおいて、そうすることができるということが強力に示唆されている。
【0089】
実施例7:CAP4349のプロドラッグ
[0093]CAP4349のメグルミン塩についての最大の溶解性は、0.0323mg/mlである(Drug bank:https://www.drugbank.ca/salts/DBSALT002673)。局所眼科薬は、一般に、2~5%の範囲でバイオアベイラビリティを示す(Gower NJDら、(2016年)、BMC Ophthalmol.16巻:11頁)。したがって、水晶体中のメグルミンを配合したCAP4349の最大濃度は、約5μMであるはずであり、これは、hACC凝集の防止のためのそのEC50値(19.5μM)を下回る。したがって、水溶解性およびバイオアベイラビリティを改善するために、本開示は、CAP4349のプロドラッグを提供する。
【0090】
[0094]1種のホスフェートプロドラッグおよびCAP4349の1種のメグルミン塩を、例として、以下に示されるスキーム1を用いて調製した。これらの化合物は、それぞれ、CAP4357およびCAP4350(CAP4349のメグルミン塩)と称される。
【0091】
【0092】
[0095]タファミジス、CAP4349(308mg)のDMF(10mL)溶液に、K2CO3(220mg)およびKI(132mg)を加え、その後、撹拌しながらジ-tert-ブチルクロロメチルホスフェートを室温で加えた。反応混合物を、70℃で2時間撹拌した。反応を、氷で急冷し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を、水で洗浄し、その後、チオ硫酸ナトリウムの1%水溶液で洗浄し、最後に、ブラインで洗浄し、中間体t-ブチルによって保護されたホスフェートを生成した。t-ブチルによって保護されたホスフェート中間体を、保護基をTFAで切断し、その後、水およびTHFの存在下でNaHCO3で処置し、白色固体として、CAP4357の二ナトリウム塩をもたらすことによる、2つのステップで二ナトリウム塩に転換した。CAP4357は、25mg/mlの水溶解性を実証し、これを、5%水性(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(HPBCD))中に配合される場合、40mg/mlまで増加させた。これは、水性およびHPBCD溶解性で、それぞれ774-倍および1,238-倍の増加を表す。
【0093】
[0096]CAP4349中に存在する酸性基は、眼に存在する酵素により実薬に転換することができる追加のプロモイエティの導入に適している(Azema, Joelleら、Bioorganic & Medicinal Chemistry、14巻(8号)、2006年、p.2569~2580;Jerzy Golikら、Bioorg.Med.Chem.Lett.6巻(15号)、1996年、p.1837~1842;A.Mantylaら、Tetrahedron Lett.43巻、2003年、p.3793~3794;および53.Jeffrey Pら、J.Med.Chem.、42巻、(16号)、1999年、p.3094~3100)。
【0094】
[0097]CAP4349のプロドラッグの設計についての一般的な戦略を、スキーム2に示す。
【0095】
【0096】
[0098]いくつかのプロドラッグを、表1中で以下に示される通り、上記スキームを用いて合成した。
【0097】
【0098】
上記化合物についての分光学的(NMR)データを、次において示す。
CAP4354:1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.32 (br s, 1H), 8.17 - 8.14 (m, 3H), 7.83 (d, J = 10 Hz, 1H), 7.56 (br s, 1H), 6.05 (s, 2H), 2.64 (m, 1H), 1.22 (s, 6H).
CAP4355:1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.38 (br s, 1H), 8.24 - 8.23 (m, 3H), 7.83 (d, J = 10 Hz, 1H), 7.56 (br s, 1H), 5.24 (s, 2H), 2.26 (s, 3H).
CAP4356:1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.32 (br s, 1H), 8.17 - 8.14 (m, 3H), 7.88 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.56 (br s, 1H), 6.05 (s, 2H), 4.29 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 1.34 (t, J = 7Hz, 3H).
CAP4357:1H NMR (500 MHz, DMSO): δ 8.38 (br s, 1H), 8.18 (d, J = 5Hz, 2H), 8.09 (d, J = 10 Hz, 1H), 8.01 (d, J = 10 Hz, 1H), 7.98 (br t, J = 5Hz, 1H), 4.45 (d, J = 5Hz, 2H).
CAP4358:1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.31 (br s, 2H), 8.09 - 8.07 (m, 6H), 7.72 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.52 (br s, 2H), 4.53 - 4.51 (m, 6H), 3.86 - 3.90 (m, 6H).
CAP4359:1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.32 (br s, 1H), 8.17 - 8.14 (m, 3H), 7.82 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.56 (br s, 1H), 6.05 (s, 2H), 2.39 (t, J = 7Hz, 2H), 1.73 - 1.64 (m, 2H), 0.96 (t, J = 6.5Hz, 3H).
実施例8:プロドラッグの活性代謝産物への転換の酵素的評価
[0099]プロドラッグ設計における最重要なステップは、所与の医学的適用の治療的な必要性を満たすために、効率的なおよび/または制御された方式で、プロドラッグの活性種への転換を保証する、活性化機構の組み込みである。プロドラッグのin vitro生体内活性化を、組換えヒトカルボキシルエステラーゼおよびホスファターゼ酵素を用いて検査する。すべての代謝安定性実験を、96穴プレートフォーマットで3回行った。これらの試験を行うための方法は、公知である。例えば、米国特許第9,402,912号および第9,402,913号、ならび米国特許出願公開第2014/0256651号、第2014/0256612号、および第2014/0256660号を参照のこと、そのそれぞれの内容は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
他の実施形態
[0100]本明細書に開示された、すべての特徴は、任意の組合せで合わせることができる。本明細書に開示された各特徴は、同じ、等価な、または類似の目的を果たす代替的な特徴により置き換えることができる。したがって、別段明確に示されない限り、開示される各特徴は、等価なまたは類似の特徴の一般的なシリーズの一例のみである。
【0099】
[0101]上記の説明から、当業者は、本技術の必須の特徴を、容易に確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、様々な使用および状態にそれを適応するために、本技術の様々な変化および修正がなされ得る。したがって、他の実施形態はまた、次の特許請求の範囲内である。
【国際調査報告】