(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(54)【発明の名称】真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20220722BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220722BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220722BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20220722BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220722BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220722BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20220722BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220722BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N15/09 110
C12N15/55
C12N9/22
C12N1/21
A61P43/00 105
A61K35/74 A
A61K35/17 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571372
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020035613
(87)【国際公開番号】W WO2020247321
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519357659
【氏名又は名称】シベック バイオテクノロジーズ,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】リンジー エム.リンケ
(72)【発明者】
【氏名】ダーシー モーラ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD02
4B050LL01
4B050LL10
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
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4C087AA01
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4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087BC30
4C087BC34
4C087BC36
4C087BC38
4C087BC52
4C087BC56
4C087BC59
4C087BC61
4C087BC68
4C087BC71
4C087BC76
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB21
(57)【要約】
CRISPR / Casシステムを含む遺伝子編集カーゴを真核細胞に送達するために、侵襲性の非病原性細菌を使用する細菌媒介遺伝子編集送達プラットフォーム。細菌には、遺伝子編集カーゴをコードする原核生物の発現カセットが含まれている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞への細菌の侵入を促進するために少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作された細菌を含む、真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌であって、ここで前記細菌は、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列をコードするプラスミドを含み、そして前記プラスミドはコード化された遺伝子編集システムの1つ又は複数の要素の転写を促進するための原核生物プロモーターを含むことを特徴とする、細菌。
【請求項2】
前記プラスミドが複数のCRISPR関連(Cas)酵素をコードする、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項3】
前記コード化されたCRISPR関連(Cas)酵素がCas9 遺伝子である、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項4】
前記真核細胞が動物細胞である、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項5】
前記真核細胞が分裂細胞又は非分裂細胞である、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項6】
前記浸入因子が、inv、hlyA、HA-1、又はそれらの組み合わせからなる群から選択された遺伝子によってコードされる、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項7】
前記細菌が、Listeria、Yersinia、Rickettsia、Shigella、E. coli、Salmonella、Legionella、Chlamydia、 Brucella、 Neisseria、 Burkolderia、 Bordetella、 Borrelia、 Coxiella、 Mycobacterium、 Helicobacter、 Staphylococcus、 Streptococcus、 Porphyromonas、 Vibrio、 Treponema、 Lactobacillus、 及びBifidobacteriaeから成る細菌群からの細菌である、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項8】
前記細菌が E. coli細菌である、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項9】
前記細菌が、Clostridium difficile、 Escherichia coli、 Clostridium tetani、 Helicobacter pylori、 Fusobacterium nucleatum、 Gardnerella vaginitis、 Porphyromonas gingivalis、 Aggregatibacter actinomycetemcomitans、 Listeria monocytogenes、 Staphylococcus aureus、 Campylobacter jejuni、 Vibrio vulnificus、 Salmonella typhi、 Clostridium botulinum、 Mycobacterium tuberculosis、 Mycobacterium leprae、 Mycobacterium lepromatosis、 Corynebacterium diptheriae、 Klebsiella pneumoniae、 Acinetobacter baumannii、 Streptococcus mutans、グループ B streptococci、 Staphylococcus aureus、 Streptococcus agalactiae、 Streptococcus pneumonia、 Enterococcus spp.、 Enterococcus faecalis、 Listeria、 Yersinia、 Rickettsia、 Shigella、 E. coli、 Salmonella、 Legionella、 Chlamydia、 Brucella、 Neisseria、 Burkolderia、 Bordetella、 Borrelia、 Coxiella、 Mycobacterium、 Helicobacter、 Staphylococcus、 Streptococcus、 Porphyromonas、 Vibrio、 Treponema、Lactobacillus、 及び Bifidobacteriaeから成る群から選択された細菌である、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項10】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターからなる群から選択されたプロモーターである、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項11】
前記侵入因子が、インベイシンタンパク質及び/マタはアリステリオリシンO(LLO)タンパク質である、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項12】
前記スペーサー配列が真核細胞の標的配列にハイブリダイズすることができる、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項13】
真核細胞への細菌の侵入を促進するために少なくとも1つの侵入因子、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列を発現するように操作された細菌を含む、真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項14】
核細胞への細菌の侵入を促進するための1つの侵入因子、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列の1つ又は複数が、細菌の染色体から発現される、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項15】
前記CRISPR関連(Cas)酵素が、細菌の染色体から発現される、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項16】
前記細菌が、1つ又は複数のCRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列をコードするプラスミドを含み、そして前記プラスミドが1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列の転写を促進するための原核生物プロモーターを含む、請求項15に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項17】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターからなる群から選択されたプロモーターである、請求項16に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項18】
前記細菌が、1つ又は複数のスペーサー配列をコードするプラスミドを含み、そして前記プラスミドが、1つ又は複数のスペーサー配列の転写を促進するための原核生物プロモーターを含む、請求項15に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項19】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターからなる群から選択されたプロモーターである、請求項18に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項20】
前記コード化されたCRISPR関連(Cas)酵素がCas9遺伝子である、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項21】
前記染色体が複数のCRISPR関連(Cas)酵素をコードする、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項22】
前記侵入因子が細菌の染色体から発現される、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項23】
前記CRISPR関連(Cas)酵素及び侵入因子が細菌の染色体から発現される、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項24】
前記浸入因子が、inv、hlyA、HA-1、又はそれらの組み合わせからなる群から選択された遺伝子によってコードされる、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項25】
前記細菌が、Listeria、Yersinia、Rickettsia、Shigella、E. coli、Salmonella、Legionella、Chlamydia、 Brucella、 Neisseria、 Burkolderia、 Bordetella、 Borrelia、 Coxiella、 Mycobacterium、 Helicobacter、 Staphylococcus、 Streptococcus、 Porphyromonas、 Vibrio、 Treponema、 Lactobacillus、 及びBifidobacteriaeから成る細菌群からの細菌である、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項26】
前記細菌が E. coli細菌である、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項27】
前記細菌が、Clostridium difficile、 Escherichia coli、 Clostridium tetani、 Helicobacter pylori、 Fusobacterium nucleatum、 Gardnerella vaginitis、 Porphyromonas gingivalis、 Aggregatibacter actinomycetemcomitans、 Listeria monocytogenes、 Staphylococcus aureus、 Campylobacter jejuni、 Vibrio vulnificus、 Salmonella typhi、 Clostridium botulinum、 Mycobacterium tuberculosis、 Mycobacterium leprae、 Mycobacterium lepromatosis、 Corynebacterium diptheriae、 Klebsiella pneumoniae、 Acinetobacter baumannii、 Streptococcus mutans、グループ B streptococci、 Staphylococcus aureus、 Streptococcus agalactiae、 Streptococcus pneumonia、 Enterococcus spp.、 Enterococcus faecalis、 Listeria、 Yersinia、 Rickettsia、 Shigella、 E. coli、 Salmonella、 Legionella、 Chlamydia、 Brucella、 Neisseria、 Burkolderia、 Bordetella、 Borrelia、 Coxiella、 Mycobacterium、 Helicobacter、 Staphylococcus、 Streptococcus、 Porphyromonas、 Vibrio、 Treponema、Lactobacillus、 及び Bifidobacteriaeから成る群から選択された細菌である、請求項13に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項28】
真核細胞への細菌の侵入を促進するために少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作された細菌を含む、真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌であって、ここで前記細菌は、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列をコードするプラスミドを含むことを特徴とする、細菌。
【請求項29】
前記プラスミドがプロモーターを有し、そして前記プロモーターが真核生物プロモーターである、請求項28に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項30】
前記真核生物プロモーターが、CMV、EF1a、CAG、PGK、TRE、又はU6プロモーターから成る群から選択されたプロモーターである、請求項29に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項31】
真核細胞への細菌の侵入を促進するために少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作された細菌を含む、真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌であって、ここで前記細菌は、CRISPR関連(Cas)酵素、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列をコードするプラスミドを含み、そして前記プラスミドはコード化された遺伝子編集システムの1つ又は複数の要素の転写を促進するための原核生物プロモーターを含むことを特徴とする、細菌。
【請求項32】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターからなる群から選択されたプロモーターである、請求項31に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項33】
前記侵入因子が、インベイシンタンパク質及び/又はリステリオリシンO(LLO)タンパク質である、請求項31に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項34】
前記スペーサー配列が真核細胞の標的配列にハイブリダイズすることができる、請求項31に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項35】
前記CRISPR関連(Cas)酵素が核局在化配列(NLS)を有する、請求項31に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項36】
前記プラスミドが複数のCRISPR関連(Cas)酵素をコードする、請求項31に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項37】
真核細胞への細菌の侵入を促進するために少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作された細菌を含む、真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌であって、ここで前記細菌は、標的真核細胞ゲノムを編集するための遺伝子編集システム及び、遺伝子編集システムの転写を制御するためのプロモーターを発現するように操作されていることを特徴とする、細菌。
【請求項38】
前記遺伝子編集システムが、CRISPR / Cas、エフェクターヌクレアーゼ、Tal-エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、ARCヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、アルゴノートシステムに基づくヌクレアーゼ、TtAgoヌクレアーゼシステム又はそれらの組み合わせから成る群から選択されたシステムである、請求項37に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項39】
前記侵入因子及び/又は遺伝子編集システムの1つ又は複数の要素は、細菌の染色体から発現される、請求項37に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項40】
真核細胞への細菌の侵入を促進するために少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作された細菌を含む、真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌であって、ここで前記細菌は、遺伝子編集システムをコードするプラスミド及び、遺伝子編集システムの転写を制御するプロモーターを含むことを特徴とする、細菌。
【請求項41】
前記プロモーターが原核生物プロモーターである、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項42】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターからなる群から選択されたプロモーターである、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項43】
前記遺伝子編集システムが、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集システムである、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項44】
前記ヌクレアーゼベースの遺伝子編集システムが、CRISPR / Cas、TALEN、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから成る群から選択されたシステムである、請求項43に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項45】
前記真核細胞が動物細胞である、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項46】
前記真核細胞が分裂細胞又は非分裂細胞である、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項47】
前記遺伝子編集システムが、CRISPR / Cas、エフェクターヌクレアーゼ、Tal-エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、ARCヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、アルゴノートシステムに基づくヌクレアーゼ、TtAgoヌクレアーゼシステム又はそれらの組み合わせから成る群から選択されたシステムである、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項48】
前記プラスミドが核局在化シグナル伝達配列をコードしている、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項49】
前記侵入因子が、inv、hlyA、HA-1、又はそれらの組み合わせから成る群から選択された遺伝子によってコードされている、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項50】
前記細菌が、Listeria、Yersinia、Rickettsia、Shigella、E. coli、Salmonella、Legionella、Chlamydia、 Brucella、 Neisseria、 Burkolderia、 Bordetella、 Borrelia、 Coxiella、 Mycobacterium、 Helicobacter、 Staphylococcus、 Streptococcus、 Porphyromonas、 Vibrio、 Treponema、 Lactobacillus、 及びBifidobacteriaeから成る細菌群からの細菌である、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項51】
前記細菌が E. coli細菌である、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項52】
前記細菌が、Clostridium difficile、 Escherichia coli、 Clostridium tetani、 Helicobacter pylori、 Fusobacterium nucleatum、 Gardnerella vaginitis、 Porphyromonas gingivalis、 Aggregatibacter actinomycetemcomitans、 Listeria monocytogenes、 Staphylococcus aureus、 Campylobacter jejuni、 Vibrio vulnificus、 Salmonella typhi、 Clostridium botulinum、 Mycobacterium tuberculosis、 Mycobacterium leprae、 Mycobacterium lepromatosis、 Corynebacterium diptheriae、 Klebsiella pneumoniae、 Acinetobacter baumannii、 Streptococcus mutans、グループ B streptococci、 Staphylococcus aureus、 Streptococcus agalactiae、 Streptococcus pneumonia、 Enterococcus spp.、 Enterococcus faecalis、 Listeria、 Yersinia、 Rickettsia、 Shigella、 E. coli、 Salmonella、 Legionella、 Chlamydia、 Brucella、 Neisseria、 Burkolderia、 Bordetella、 Borrelia、 Coxiella、 Mycobacterium、 Helicobacter、 Staphylococcus、 Streptococcus、 Porphyromonas、 Vibrio、 Treponema、Lactobacillus、 及び Bifidobacteriaeから成る群から選択された細菌である、請求項40に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項53】
医学又は治療への使用のための、請求項1~52のいずれか1項に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項54】
病気の予防又は治療への使用のための、請求項1~52のいずれか1項に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項55】
研究用途への使用のための、請求項1~52のいずれか1項に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項56】
インビトロ、インビボ及び/又はエクスビボへの使用のための、請求項1~52のいずれか1項に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項57】
真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキットであって、
真核細胞への細菌の侵入を促進するための少なくとも1つの侵入因子、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ以上のCRISPRダイレクト反復領域、及び1つ以上のtracr 配列を発現するように操作された細菌;及び
遺伝子編集システムの転写を制御するための1つ又は複数のスペーサー配列及びプロモーターをコードするプラスミド、
を含むキット。
【請求項58】
前記プロモーターが原核生物プロモーターである、請求項57に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項59】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターからなる群から選択されたプロモーターである、請求項58に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項60】
前記浸入因子が、inv、hlyA、HA-1、又はそれらの組み合わせから成る群から選択された遺伝子によってコードされる、請求項57に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項61】
前記CRISPR関連(Cas)酵素及び/又は侵入因子が細菌の染色体から発現される、請求項57に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項62】
前記CRISPR関連(Cas)酵素、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、及び1つ又は複数のtracr配列が細菌の染色体から発現される、請求項57に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項63】
前記プラスミドが細菌とは別にパッケージされている、請求項57に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項64】
真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキットであって、
真核細胞への細菌の侵入を促進するための少なくとも1つの侵入因子、CRISPR関連(Cas)酵素、1つ以上のCRISPRダイレクト反復領域、及び1つ以上のtracr 配列を発現するように操作された細菌;及び
遺伝子編集システムの転写を制御するための1つ又は複数のスペーサー配列及びプロモーターをコードするプラスミド、
を含むキット。
【請求項65】
真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキットであって、
真核細胞への細菌の侵入を促進するための少なくとも1つの侵入因子、CRISPR関連(Cas)酵素、1つ以上のCRISPRダイレクト反復領域、及び1つ以上のtracr 配列を発現するように操作された細菌;及び
1つ又は複数のスペーサー配列のための挿入部位及びスペーサー配列の転写を制御するためのプロモーターを有するプラスミド、
を含むキット。
【請求項66】
前記プロモーターが原核生物プロモーターである、請求項65に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項67】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターからなる群から選択されたプロモーターである、請求項66に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項68】
前記プラスミドがさらに、侵入因子、CRISPR関連(Cas)酵素、1つ以上のCRISPRダイレクト反復領域、又は1つ以上のtracr配列を含む、請求項65に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項69】
前記浸入因子が、inv、hlyA、HA-1、又はそれらの組み合わせから成る群から選択された遺伝子によってコードされる、請求項65に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項70】
前記CRISPR関連(Cas)酵素及び/又は侵入因子が細菌の染色体から発現される、請求項65に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項71】
前記CRISPR関連(Cas)酵素、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、及び1つ又は複数のtracr配列が細菌の染色体から発現される、請求項65に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項72】
前記プラスミドが細菌とは別にパッケージされ、これにより、個別のパッケージングが、遺伝子編集配列のプラスミドへのクローニングを促進する、請求項65に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項73】
少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作された細菌を含む、真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキットであって、前記細菌は、細菌の染色体から遺伝子編集システム又は遺伝子編集システムの一部を発現するよう操作されていることを特徴とするキット。
【請求項74】
真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキットであって、
少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作された細菌、ここで前記侵入因子は真核細胞への細菌の侵入を促進し;及び
遺伝子編集システムをコードするプラスミド及び、遺伝子編集システムの転写を制御するための1つ又は複数のプロモーター、
を含むキット。
【請求項75】
前記プラスミドが細菌とは別にパッケージされ、これにより、個別のパッケージングが、遺伝子編集配列のプラスミドへのクローニングを促進する、請求項74に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項76】
前記遺伝子編集システムの転写を制御するための1つ又は複数のプロモーターが、原核細胞では活性的であるが、しかし真核細胞では活性的ではないプロモーターである、請求項74に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項77】
真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキットであって、
非病原性細菌;及び
侵入因子、遺伝子編集システム、及び遺伝子編集システムの転写を制御するためのプロモーターをコードする1つ又は複数のプラスミド、
を含むキット。
【請求項78】
前記プラスミドが、(a)1つ以上のCRISPR関連(Cas)酵素、(b)任意には、1つ以上の核局在化シグナル伝達配列、(c)1つ以上のtracr配列、及び(d)i)1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、及び(ii)真核細胞内の標的配列にハイブリダイズできる1つ又は複数のスペーサー配列を含む1つ又は複数のCRISPR RNA(crRNA)をコードする、請求項77に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌の調製のためのキット。
【請求項79】
非病原性細菌を含む真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌であって、前記細菌は少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており、そして前記細菌は、遺伝子編集システムをコードする原核生物発現カセット及び遺伝子編集システムの転写を制御するためのプロモーターを有するプラスミドを含むことを特徴とする、細菌。
【請求項80】
前記侵入因子が細菌の染色体上の配列によってコードされている、請求項79に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項81】
前記侵入因子が、inv遺伝子、hlyA遺伝子、HA-1遺伝子又はそれらの組み合わせから成る群から選択される遺伝子によってコードされる、請求項79に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項82】
遺伝子編集カーゴを標的真核細胞に送達する方法であって、下記工程:
請求項1~52のいずれか1項に記載の細菌を提供する工程;及び
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、標的真核細胞と提供された細菌とを接触させる工程、を含んで成る方法。
【請求項83】
遺伝子編集カーゴを標的真核細胞に送達する方法であって、下記工程:
細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており、ここで前記細菌は、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列をコードするプラスミドを含み、そして前記プラスミドは、コードされた遺伝子編集システムの1つ又は複数の要素の転写を促進する原核生物プロモーターを含み;及び
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、標的真核細胞と提供された細菌とを接触させる工程、を含んで成る方法。
【請求項84】
遺伝子編集カーゴを標的真核細胞に送達する方法であって、下記工程:
細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており、ここで前記細菌は、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列をコードするプラスミドを含み、そして前記プラスミドは、コードされた遺伝子編集システムの1つ又は複数の要素の転写を促進するプロモーターを含み;及び
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、標的真核細胞と提供された細菌とを接触させる工程、を含んで成る方法。
【請求項85】
前記侵入因子が、inv遺伝子、hlyA遺伝子、HA-1遺伝子又はそれらの組み合わせから成る群から選択される遺伝子によってコードされる、請求項84に記載の標的真核細胞への遺伝子編集カーゴの送達のための方法。
【請求項86】
前記前記プラスミドが、真核細胞の標的配列にハイブリダイズすることができる1つ又は複数のスペーサー配列、及び任意には、1つ又は複数のNLSをコードする、請求項84に記載の標的真核細胞への遺伝子編集カーゴの送達のための方法。
【請求項87】
前記プロモーターが、原核生物プロモーター及び真核生物プロモーターから成る群から選択されたプロモーターである、請求項84に記載の標的真核細胞への遺伝子編集カーゴの送達のための方法。
【請求項88】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターから成る群から選択されたプロモーターである、請求項87に記載の標的真核細胞への遺伝子編集カーゴの送達のための方法。
【請求項89】
前記真核生物のプロモーターが、CMV、EF1a、CAG、PGK、TRE、又はU6から成る群から選択されたプロモーターである、請求項87に記載の標的真核細胞への遺伝子編集カーゴの送達のための方法。
【請求項90】
前記標的細胞がインビトロで接触され、そして前記標的細胞が、一次細胞、不死化細胞、分裂細胞、非分裂細胞、及び造血幹細胞/前駆細胞から成る群から選択された細胞である、請求項87に記載の標的真核細胞への遺伝子編集カーゴの送達のための方法。
【請求項91】
疾患の研究、特定の遺伝子改変の病因、感染因子、遺伝性疾患、機能的ゲノムスクリーニング、染色体ペインティング、疾患モデルの構築(癌モデルを含む)などの遺伝子編集アプリケーションに、インビトロ選択ライブラリ、ミスマッチ検出ヌクレアーゼアッセイ、高スループットプロファイリングアッセイ、診断、及び関連する次世代配列決定活性での使用のために適用される、請求項87に記載の標的真核細胞への遺伝子編集カーゴの送達のための方法。
【請求項92】
生体系から分離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法であって、下記工程:
生体系から真核細胞を分離する工程;
細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており、そして前記細菌は、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列を発現するよう操作されており;及び
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、単離された真核細胞と提供された細菌とを接触させ、それにより、この方法が、単離された真核細胞ゲノム上の関心領域の挿入、除去、又は置換、及びエクスビボでの標的DNAの修飾を促進にする工程、を含んで成る方法。
【請求項93】
編集された細胞を生きている多細胞生物に再導入する工程をさらに含む、請求項92に記載の生体系から分離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法。
【請求項94】
生体系及び細菌系から単離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法であって、下記工程:
生体系から真核細胞を分離する工程;
細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており、そして前記細菌は、遺伝子編集システム、及び遺伝子編集システムの転写を制御するためのプロモーターをコードし;及び
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、単離された真核細胞と提供された細菌とを接触させ、それにより、この方法が、単離された真核細胞ゲノム上の関心領域の挿入、除去、又は置換、及びエクスビボでの標的DNAの修飾を促進にする工程、を含んで成る方法。
【請求項95】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターから成る群から選択されたプロモーターである、請求項94に記載の生体系から単離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法。
【請求項96】
前記侵入因子が、インベイシンタンパク質及び/又はリステリオリシンO(LLO)タンパク質である、請求項94に記載の生体系から単離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法。
【請求項97】
前記遺伝子編集システムがヌクレアーゼベースの遺伝子編集システムであり、CRISPR/Cas、Talens、及びジンクフィンガーヌクレアーゼから成る群から選択されたシステムである、請求項94に記載の生体系から単離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法。
【請求項98】
前記細菌が、CRISPR関連(Cas)酵素及び単一のガイドRNA(sgRNA)を有するCRISPR-Casシステムをコードするプラスミドを含む、請求項94に記載の生体系及び細菌系から単離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法。
【請求項99】
前記編集された細胞を生きている多細胞生物に再導入する工程をさらに含む、請求項94に記載の生体系から単離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法。
【請求項100】
前記編集された細胞が、目、筋肉、肺、脳、鼻腔、胃腸管、心臓、皮膚、口腔、生殖器組織、血液、又はそれらの任意の組み合わせから成る群から選択された標的組織に戻される、請求項94に記載の生体系から単離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法。
【請求項101】
前記細胞が、それが単離されたものと同じ生物又は同じ種に導入される、請求項94に記載の生体系及び細菌系から単離された真核細胞のエクスビボゲノム編集及び改変の方法。
【請求項102】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であって、下記工程:
生体系からT細胞を分離する工程;
非病原性細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、真核細胞への細菌の侵入を促進するための少なくとも1つの侵入因子、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列を発現するように操作されており;
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、単離されたT細胞と提供された細菌とを接触させ、それにより、この方法が、単離された真核細胞ゲノム上の関心領域の挿入、除去、又は置換、及びエクスビボでの標的DNAの修飾を促進にする工程;及び
編集されたT細胞を生存多細胞生物に再導入する工程、を含む方法。
【請求項103】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であって、下記工程:
生体系からT細胞を分離する工程;
非病原性細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており、そして前記細菌は、遺伝子編集システム及び、単離された真核細胞ゲノム上の目的の領域の挿入、除去、又は置換、及びエクスビボでの標的DNAの修飾を促進するための遺伝子編集システムの転写を制御するプロモーターをコードするプラスミドを含み;
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、単離されたT細胞と提供された細菌とを接触させ、それにより、この方法が、単離された真核細胞ゲノム上の関心領域の挿入、除去、又は置換、及びエクスビボでの標的DNAの修飾を促進にする工程;及び
編集されたT細胞を生存多細胞生物に再導入する工程、を含む方法。
【請求項104】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であって、下記工程:
生体系からT細胞を分離する工程;
非病原性細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており、そして前記細菌は、遺伝子編集システム、及び遺伝子編集システムの転写を制御するプロモーターを発現するように操作されており、ここで前記遺伝子編集システムは、特定の腫瘍抗原を標的とする人工受容体を発現するように編集し;
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、単離されたT細胞と提供された細菌とを接触させ、それにより、この方法が、単離された真核細胞ゲノム上の関心領域の挿入、除去、又は置換、及びエクスビボでの標的DNAの修飾を促進にする工程;及び
編集されたT細胞を生存多細胞生物に再導入する工程、を含む方法。
【請求項105】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であって、下記工程:
生体系からT細胞を分離する工程;
非病原性細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており、そして前記細菌は、遺伝子編集システム及び、遺伝子編集システムの転写を制御するプロモーターをコードするプラスミドを含み、ここで前記遺伝子編集システムは、特定の腫瘍抗原を標的とする人工受容体を発現するように編集し;
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、単離されたT細胞と提供された細菌とを接触させ、それにより、この方法が、単離された真核細胞ゲノム上の関心領域の挿入、除去、又は置換、及びエクスビボでの標的DNAの修飾を促進にする工程;及び
編集されたT細胞を生存多細胞生物に再導入する工程、を含む方法。
【請求項106】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であって、下記工程:
生体系からT細胞を分離する工程;
非病原性細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、少なくとも1つの侵入因子を発現するよう操作されており、そしてプラスミドはCRISPR関連(Cas)酵素及び、単一のガイドRNA(sgRNA)を有するCRISPR-Casシステムをコードし、ここで前記プラスミドは1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、特定の腫瘍抗原を標的とする人工受容体を発現するように編集するために真核細胞の標的配列にハイブリダイズすることができる1つ又は複数のスペーサー配列、及び1つ又は複数のtracr配列を有し;
非病原性細菌の標的細胞への侵入を可能にするのに有効な条件下で、単離されたT細胞と提供された細菌とを接触させ、それにより、この方法が、単離された真核細胞ゲノム上の関心領域の挿入、除去、又は置換、及びエクスビボでの標的DNAの修飾を促進にする工程;及び
編集されたT細胞を生存多細胞生物に再導入する工程、を含む方法。
【請求項107】
真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌を非病原性生成する方法であって、下記工程:
少なくとも1つの原核生物プロモーターの制御下にある少なくとも1つの原核生物発現カセットを含むプラスミドを提供する工程、ここで前記プラスミドは、1つ又は複数のスペーサー配列の挿入部位を含み;
提供されたプラスミドにスペーサー配列を挿入する工程;
細菌を提供する工程、ここで前記細菌は、細菌の染色体上の配列から少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されており;及び
1つ又は複数のスペーサー配列を含むプラスミドで細菌を形質転換する工程、を含む方法。
【請求項108】
前記提供されたプラスミドが、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、又は1つ又は複数のtracr配列をさらに含む、請求項107に記載の真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌を非病原性生成する方法。
【請求項109】
前記提供された細菌が、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、又は1つ又は複数のtracr配列をさらに含む、請求項107に記載の真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌を非病原性生成する方法。
【請求項110】
前記提供された細菌が、CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、又は1つ又は複数のtracr配列をさらに含む、請求項107に記載の真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌を非病原性生成する方法。
【請求項111】
前記CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、又は1つ又は複数のtracr配列が、細菌の染色体上にコードされている、請求項107に記載の真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌を非病原性生成する方法。
【請求項112】
前記細菌が、細菌の染色体上の配列から少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作されている、請求項107に記載の真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌を非病原性生成する方法。
【請求項113】
前記侵入因子が、インベイシンタンパク質及び/又はリステリオリシンO(LLO)タンパク質である、請求項112に記載の真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌を非病原性生成する方法。
【請求項114】
前記細菌が、Listeria、Yersinia、Rickettsia、Shigella、E. coli、Salmonella、Legionella、Chlamydia、 Brucella、 Neisseria、 Burkolderia、 Bordetella、 Borrelia、 Coxiella、 Mycobacterium、 Helicobacter、 Staphylococcus、 Streptococcus、 Porphyromonas、 Vibrio、 Treponema、 Lactobacillus、 及びBifidobacteriaeから成る細菌群からの細菌である、請求項107に記載の真核細胞に遺伝子編集システムを送達するための細菌を非病原性生成する方法。
【請求項115】
CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列、及び、1つ又は複数のtracr配列をコードするプラスミドであって、前記プラスミドが、コードされた遺伝子編集システムの1つ又は複数の要素の転写を促進するための原核生物プロモーターを含むことを特徴とするプラスミド。
【請求項116】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターから成る群から選択されたプロモーターである、請求項115に記載のプラスミド。
【請求項117】
CRISPR関連(Cas)酵素、核局在化シグナル(NLS)、1つ又は複数のCRISPRダイレクト反復領域、1つ又は複数のスペーサー配列の挿入部位、及び1つ又は複数のtracr配列をコードするプラスミドであって、前記プラスミドが、コードされた遺伝子編集システムの1つ又は複数の要素の転写を促進するための原核生物プロモーターを含むことを特徴とするプラスミド。
【請求項118】
前記原核生物プロモーターが、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、又はハイブリッドプロモーターから成る群から選択されたプロモーターである、請求項117に記載のプラスミド。
【請求項119】
真核細胞ゲノムを調節又は改変するための細菌を含む組成物であって、前記細菌が、1つ又は複数の原核生物プロモーター、及び少なくとも1つの遺伝子編集システム又は遺伝子編集システムの要素をコードする少なくとも1つの原核生物発現カセットを有する1つ又は複数のプラスミドから構成され、そして前記細菌は少なくとも1つの侵入因子を発現するよう操作されていることを特徴とする組成物。
【請求項120】
前記真核細胞が植物細胞である、請求項1に記載の真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌。
【請求項121】
真核細胞への細菌の侵入を促進するために少なくとも1つの侵入因子を発現するように操作された細菌を含む、真核細胞への遺伝子編集システムの送達のための細菌であって、前記細菌は、真核細胞内に存在する標的原核細胞ゲノムを編集するための遺伝子編集システム及び、遺伝子編集システムの転写を制御するためのプロモーターを発現するように操作されていることを特徴とする細菌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/856,055号の有益性を主張する。
【0002】
本発明は、非病原性細菌送達プラットフォームを使用しての真核細胞への遺伝子編集システムの送達に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子編集は、生物のゲノムにDNAを挿入、削除、変更、又は置換する遺伝子工学の一形態である。ゲノム内の特定の配列の編集は、研究目的だけでなく、特定の遺伝子への変異を標的にするか、又は機能遺伝子を生物に挿入し、そしてそれを標的にして病原性表現型又は遺伝病に関連する欠陥のある遺伝子を置き換えることによる遺伝子治療に使用できる。遺伝子編集への一般的なアプローチは、操作されたヌクレアーゼ又は合成ヌクレアーゼを使用することである。1つの例は、CRISPR(クラスター化された規則的に間隔を空けた短いパリンドローム反復体)/ Cas又はCRISPR/Casシステムであり、これはゲノム編集の分野を急速に進歩させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、侵襲性の非病原性細菌を使用して、CRISPR / Casシステムを含むがこれに限定されない遺伝子編集カーゴを真核細胞に送達する細菌媒介遺伝子編集送達プラットフォームを提供し、ここで、前記細菌は、遺伝子編集カーゴをコードする原核生物発現カセットに関連する原核生物プロモーターを含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの側面によれば、本発明は、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集システムを含む遺伝子編集システムを生成し、そして真核細胞に送達するための方法を提供する。この方法は、真核細胞に侵襲性の非病原性細菌を侵入させる工程を含む。前記細菌は、遺伝子編集システムをコードする原核生物発現カセットを有するプラスミドを含む。原核生物発現カセットは、T7、lacUV5、gapA、T5、recA、Ptac、Patac、pA1、lac、Sp6、araBad、trp、及びハイブリッドプロモーターなどの1つ又は複数の原核生物プロモーターの制御下で作動することができる。これらの原核生物プロモーターは、誘導性、構成的、又はそれらの組み合わせであり得る。プラスミド上に複数のプロモーターが存在する場合、又は細菌内に複数のプラスミドが存在する場合、システム内のプロモーターの相対的活性に基づいて、異なるプロモータータイプを使用することができると考えられる。異なる種類の原核生物プロモーターを使用することにより、転写物のレベルを制御するように転写を調整することができる。細菌に原核生物のプロモーターを使用することにより、遺伝子編集システムの構成要素の転写は、標的の真核細胞ではなく細菌内で起こる。
【0006】
第2の側面によれば、本発明は、真核細胞のゲノムを改変するための細菌を含む組成物を提供する。 細菌は原核生物ベクターを有する。原核生物ベクター(又は複数のベクター)は、プラスミドからの転写を制御するために原核生物プロモーターを使用する、プラスミド又は複数のプラスミドであり得る。1つ又は複数のプラスミドは、(a)少なくとも1つのCRISPR関連(Cas)酵素、(b)少なくとも1つのtracr配列、及び(c)少なくとも1つのCRISPR RNA(crRNA)を有するCRISPR/Casシステムをコードすることができる。crRNAは、(i)少なくとも1つのCRISPRダイレクト反復領域、及び(ii)真核細胞の標的配列にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのスペーサー配列を有することができる。CRISPR/Casシステムをコードするプラスミドは、真核細胞の核への遺伝子編集システムの核移行を促進するために、核局在化シグナル伝達配列を任意に含むことができる。この細菌は、真核細胞に侵入するように操作されている。 本発明のこの第2の側面によれば、細菌は、プログラム可能なヌクレアーゼシステムを生成して、真核細胞の核におけるCRISPR複合活性を指示する。
【0007】
第3の側面によれば、本発明は、侵入因子、インバシンタンパク質(inv遺伝子によりコードされる)及びリステリオリシンO(LLO)タンパク質(hlyA遺伝子によりコードされる)を使用して真核細胞に入ることができる遺伝子編集システム(遺伝子編集カーゴ)を生成及び送達するための細菌送達システムの使用を含む組成物を提供する。細菌システムは、遺伝子編集システムを生成及び/又は真核細胞に送達するように操作されている。遺伝子編集システムを生成及び/又は送達するための細菌細胞の使用を含む組成物は、1つ又は複数の原核生物プロモーターを有する1つ又は複数の原核生物プラスミド、1つ又は複数の真核生物プロモーターを有する1つ又は複数の真核生物プラスミド、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。本発明のこの第3の側面によれば、利用される細菌系は、インバシンタンパク質を発現することによって真核細胞に付着し、そしてLLOタンパク質を発現することによって真核生物のエンドソームを逃れることができ、それにより遺伝子編集カーゴが真核細胞の細胞質に放出されることを可能にし、そして適切な場合、真核細胞の核に移動することを可能にする。
【0008】
第3の側面によれば、本発明は、遺伝子を挿入、除去、又は置換するための真核細胞のインビトロ、インビボ、又はエクスビボ工学のための組成物を提供する。インビトロで使用する場合、遺伝子編集システムを生成及び送達するように操作された細菌システムを使用して、真核細胞ゲノム上の関心領域を挿入、除去、又は置換し、そしてインビトロで標的DNAを改変することができる。例えば、インビトロで(生体系外の生細胞内で)標的DNAに存在するCRISPRモチーフ又はPAM配列は、原核生物プラスミドから生成され、細菌細胞により真核細胞に送達されるCRISPR/Cas遺伝子編集システムによって認識され得る。別の実施形態によれば、インビトロでの標的DNA上のCRISPRモチーフ又はPAM配列は、細菌細胞による送達に続いて、標的真核細胞内の真核生物プラスミドから転写及び翻訳されるCRISPR / Cas遺伝子編集システムによって認識される。これらのゲノム修飾実験は、一次細胞、不死化細胞、分裂細胞、非分裂細胞、及び造血幹細胞/前駆細胞での使用を含むがこれらに限定されない、インビトロで行うことができる。これらのインビトロ遺伝子編集用途は、疾患の研究、特定の遺伝子改変の病因、感染因子、遺伝的障害、機能的ゲノムスクリーニング、染色体ペインティング、疾患モデル(癌モデルを含む)の構築に、インビトロ選択ライブラリー、ミスマッチ検出ヌクレアーゼアッセイ、高スループットプロファイリングアッセイ、診断、及び関連する次世代配列決定活性で使用するために含むが、これらに限定されない。エクスビボでのゲノム編集及び改変のために、真核細胞は生体系から単離され、そして遺伝子編集システムを生成及び送達するように操作された細菌系は、単離された真核細胞ゲノム上の関心領域を挿入、除去、又は置換し、 そしてエクスビボで標的DNAを改変するために使用される。例えば、エクスビボで(生体系から単離された細胞に)存在するCRISPRモチーフ又はPAM配列は、原核生物プラスミドから生成され、そして細菌細胞によりエクスビボで真核細胞に送達されるCRISPR/Cas遺伝子編集システムによって認識され得る。別の実施態様によれば、エクスビボでDNA上に存在するCRISPRモチーフまたはPAM配列は、細菌細胞による送達に続いて、標的真核細胞内の真核生物プラスミドから転写及び翻訳されるCRISPR/Cas遺伝子編集システムによって認識される。場合によっては、本発明は、単離された細胞が処理され、真核細胞が由来する生体系に移植して戻すために標的組織に戻される治療的成功を達成するために使用される。エクスビボ(又はインビトロ)用途の例は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であり、ここで患者の血液に由来するT細胞が抽出され、そして単離されたT細胞のゲノムが編集され、 本発明を使用して特定の腫瘍抗原に標的化された人工受容体を発現する。インビボでのゲノム編集及び改変の場合、遺伝子編集システムを生成及び送達するように操作された細菌システムを使用して、真核生物細胞ゲノム上の関心領域を挿入、除去、又は置換して、生体系内のDNAの特定のゲノム改変を行うことができる。 場合によっては、本発明は、遺伝子編集システムを標的組織(眼、筋肉、肺、脳、鼻腔、胃腸管、心臓、皮膚、口腔、生殖器組織、又は任意のそれらの組み合わせ)に送達するために使用される。例えば、インビボで存在するCRISPRモチーフ又はPAM配列は、原核生物プラスミドから生成され、細菌細胞によってインビボで標的真核細胞に送達されるCRISPR / Cas遺伝子編集システムによって認識され得る。別の実施形態によれば、インビボでDNA上に存在するCRISPRモチーフ又はPAM配列は、細菌細胞による特定の組織への送達に続いて、標的真核細胞内の真核生物プラスミドから転写及び翻訳されるCRISPR / Cas遺伝子編集システムによって認識される。これらのインビボ遺伝子編集用途は、疾患、特定の遺伝子改変の病因、感染因子、遺伝子障害、遺伝子ノックイン及びノックアウト動物の発生(トランスジェニック胚の生成を含む)の研究、病気の治療、病気の予防、及びまれな遺伝子障害の治療を含むが、これらに限定されない。
【0009】
第5の側面によれば、本発明は、遺伝子編集システム(遺伝子編集カーゴ)を生成及び送達するための細菌送達システムの使用を含む組成物を提供し、ここで遺伝子編集システムを含む要素は、 組換えプラスミドからは発現されるか、細菌染色体から発現されるか(細菌染色体に組み込まれる)、又はそれらの任意の組み合わせを使用して発現される。同様に、真核細胞に入り、そして真核細胞のエンドソームから脱出するのに必要な侵入因子(inv及びhlyA)は、組換えプラスミドから発現されるか、細菌染色体から発現されるか、又はそれらの任意の組み合わせを使用して発現される。遺伝子編集システムの任意の構成要素及び細菌の侵入に必要な任意の因子は、1つ又は複数の組換えプラスミド、細菌の染色体、又はそれらの任意の組み合わせから、組み合わせて発現され得る。
【0010】
第6の側面によれば、本発明は、Cas遺伝子、NLS、CRISPRダイレクト反復領域、スペーサー配列(又はスペーサー配列の挿入部位)及びtracr配列のうちの1つ又は複数を含むプラスミドを提供する。これらの要素は、細菌細胞の形質転換時に1つ又は複数の原核生物プロモーターなどによってプラスミドから発現され得る。有利な実施形態によれば、プラスミドは、スペーサー配列(又はスペーサー配列の挿入部位)及び原核生物又は真核生物のプロモーターを含む。
【0011】
本発明をより完全に理解するために、添付の図面に関連して取られた以下の詳細な説明を参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、侵襲性の非病原性細菌を使用して、CRISPR / Casシステムなどの遺伝子編集カーゴを真核細胞に送達する、細菌媒介性遺伝子編集送達システムの図解を提供する図である。細菌は、遺伝子編集カーゴをコードする原核生物発現カセットを含むことができる。
【0013】
【
図2A】
図2は、本発明の1つ又は複数の実施形態において遺伝子編集システムを生成及び送達するために細菌を遺伝子操作するために使用されるプラスミドシステムの一連の図(
図2A、
図2B、及び
図2C)である。
図2Aは、少なくとも1つの原核生物プロモーター、複製起点、選択マーカー、crRNAリーダー、目的の標的DNA遺伝子に相同な少なくとも1つのスペーサー/ crRNA、tracr / tracrRNA、CRISPRダイレクトリピート配列、核局在化シグナル(NLS)、及びCas遺伝子を含むCRISPR媒介遺伝子編集プラスミド(pSiCRISP)の推定配列長を有する概略図である。
【0014】
【
図2B】
図2は、本発明の1つ又は複数の実施形態において遺伝子編集システムを生成及び送達するために細菌を遺伝子操作するために使用されるプラスミドシステムの一連の図(
図2A、
図2B、及び
図2C)である。
図2Bは、少なくとも1つの原核生物プロモーター、複製起点、選択マーカー、受容体媒介エンドサイトーシスのための少なくとも1つの侵入因子(侵入因子A)、及びエンドソーム脱出のための少なくとも1つの侵入因子(侵入因子B))を含む侵入プラスミド(pSiVEC)の推定配列長を有する概略図である。
【0015】
【
図2C】
図2は、本発明の1つ又は複数の実施形態において遺伝子編集システムを生成及び送達するために細菌を遺伝子操作するために使用されるプラスミドシステムの一連の図(
図2A、
図2B、及び
図2C)である。
図2Cは、少なくとも1つの真核生物プロモーター、複製起点、選択マーカー、crRNAリーダー、目的の標的図。 2Cは、少なくとも1つの真核生物プロモーター、複製起点、選択マーカー、crRNAリーダー、目的の標的DNAに相同の少なくとも1つのスペーサー/crRNA、tracr/tracrRNA、CRISPRダイレクト反復配列、核局在化シグナル(NLS)、及びCas遺伝子を含むCRISPR介在遺伝子編集プラスミド(pSiCRISP)の推定配列長を示す概略図である。
【0016】
【
図3】
図3は、pSiCRISP_GFP及びpSiVECで同時形質転換され、そしてPCRスクリーニングされ、そしてPCR用の特定のプライマーを使用して(
図3A)424bp NLS、(
図3B)727bp Cas9、及び(
図3C)201bp inv遺伝子発現カセットのPCR増幅を介して、pSiCRISP_GFP及びpSiVEC成分の存在を検証するためにPCRスクリーニングされたFEC19 E.coliの3つの画像(
図3A、
図3B、及び
図3C)のセットである。
【0017】
【
図4】
図4は、GFPを発現するA549細胞の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
遺伝子編集は、生物のゲノムにDNAを挿入、削除、改変、又は置換する遺伝子工学の一形態である。ゲノム内の特定の配列の編集は、研究目的だけでなく、特定の遺伝子への変異を標的にするか、又は機能遺伝子を生物に挿入し、そしてそれを標的にして病原性表現型又は遺伝病に関連する欠陥のある遺伝子を置換することによる遺伝子治療に使用され得る。遺伝子編集への一般的なアプローチは、操作されたヌクレアーゼ又は合成ヌクレアーゼを使用することである。1つの例は、ゲノム編集の分野を急速に進歩させているCRISPR(クラスター化された規則的に間隔を空けた短いパリンドローム反復体)システムである。
【0019】
CRISPR/CRISPR関連タンパク質(Cas)は、細菌、酵母、Caenorhabditis elegans、Drosophila melanogaster、植物、ゼブラフィッシュ、マウス及びヒト細胞などのさまざまなモデル生物のゲノムを編集するために使用されている(Mali et al. “Cas9 as a versatile tool for engineering biology,” Nat. Methods. 10:957-963 (2013))。CRISPR/Casシステムは、さまざまな送達メカニズム及びベクターを使用してこれらのモデル生物に送達されている。 より具体的には、CRISPR/Casシステムは、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターを含む多数の送達方法を使用して真核細胞に送達されてきた。
【0020】
この分野での進歩にもかかわらず、CRISPR/Casシステムを含む遺伝子編集ヌクレアーゼシステムを標的細胞に効率的にインビトロ及びインビボで送達することは依然として課題である。ヒト及び動物医学における遺伝子編集用途及び治療法の臨床的翻訳を妨げている、現在のCRISPR/Casシステム送達戦略に関連する多くの欠点がある。CRISPR/Casシステムを含む遺伝子編集ヌクレアーゼシステムを標的真核細胞に効率的に送達するための新しい細菌送達プラットフォームを開発し、細胞への取り込みを提供し、そして必要に応じて、一過性の遺伝子編集用途のために宿主ゲノムなしで遺伝子編集ヌクレアーゼシステムの核転座を提供する。
【0021】
本発明は、真核細胞のゲノム統合なしに、任意の真核細胞(分裂及び非分裂)におけるゲノム編集成分の組織特異的送達及び細胞内化を提供するための、CRISPRシステムを含む遺伝子編集システムのための新規細菌送達プラットフォームを提供する。
【0022】
遺伝子編集アプローチは、一般的に、ヌクレアーゼベースのシステム(すなわち、CRISPR/Cas)を使用して、感染症、慢性非感染症、及びその他の遺伝性疾患の予防を含む幅広い遺伝子編集用途に効果的に対処することを特徴としている。一般的に、これらのヌクレアーゼは、ゲノム内の目的の位置に部位特異的二本鎖切断を作成する。誘導された二本鎖切断は、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え(HR)によって修復され、ゲノムに標的変異をもたらす。ヌクレアーゼベースの遺伝子編集システムの例は、CRISPRシステムである。他の例は、以下を含むが、これらのみには限定されない:転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、ARCヌクレアーゼ、アルゴノートシステムに基づくヌクレアーゼ、TtAgoヌクレアーゼシステム、及びその他のホーミングエンドヌクレアーゼ。
【0023】
CRISPRシステムは2つの重要な成分で構成されている。 最初の成分は、CRISPR RNA(crRNA)とtracrRNAの融合を表す単一のガイドRNAオリゴヌクレオチド(sgRNA)又はガイドRNA(gRNA)である。2番目の成分はCasヌクレアーゼである。 組み合わされたこれらの2つの成分は、SGRNA / gRNA及びCRISPR関連プロテアーゼ/ヌクレアーゼを表す。プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が標的DNA分子のゲノム遺伝子座に存在する場合、CasヌクレアーゼはgRNAによってそのPAM遺伝子座に向けられ、そしてDNAにおける部位特異的二本鎖切断が起こり、安定した遺伝子編集イベントが誘導される。この遺伝子編集イベントは、永続的な遺伝子ノックアウト(遺伝子除去)又はノックイン(遺伝子挿入)を引き起こす可能性がある。
【0024】
CRISPR/Casシステムは、I、II、及びIIIの3つの主要なタイプに分類される。遺伝子編集のメカニズムは3つのタイプ間で異なるが、3つすべてが真核細胞に適用されると考えられている。真核生物で最も一般的に使用されているCRISPR/CasシステムはタイプIIであり、単一のCasタンパク質、つまりCas9を必要とする。 CRISPR/Casと同様に、他の遺伝子編集システムは、望ましい遺伝子変異又はゲノム修飾イベントを提供する。
【0025】
これらの遺伝子編集ヌクレアーゼタンパク質及び遺伝子編集システムは、臨床及び研究発見用途に提供することが困難であった。例えば、CAS9タンパク質のサイズが大きく、Cas9の正電荷、及びsgRNAの強い負電荷のため、Cas9/sgRNA複合体の宿主真核細胞への、及び細胞膜を通過する効果的な同時送達は、以前のシステムでは困難であった。Cas9、sgRNA、及びCas9/sgRNA複合体は、送達ビヒクルなしでは細胞膜の脂質二重層を通過できない。CRISPR/Cas遺伝子編集を実現する1つの方法は、プラスミドを使用してsgRNAと共にCas9タンパク質を送達することである。sgRNA足場と共にsgRNAは、Cas9カセットと共にプラスミドに組み込まれる。プラスミドはまた、核に送達される遺伝子編集成分の核局在化シグナル(NLS)を含むことができる。例えば、sgRNA及びCas9タンパク質は、転写のために両方が細胞質から核に移動できるようにするためにNLSを必要とする場合がある。本発明は、真核細胞への送達に使用される細菌細胞内の遺伝子編集システムの発現を駆動するために、原核生物プロモーターを有するプラスミドを使用する。本発明では、原核生物プロモーターを使用して遺伝子編集システムの発現を駆動するプラスミド(すなわち、ダイレクト反復配列、tracr/tracrRNA、スペーサー、Cas9、及びNLS)を非病原性細菌細胞に形質転換する。さらに、細菌細胞は侵襲性になるように操作されており、受容体を介したエンドサイトーシスを介して真核細胞に侵入することができる。細菌とプラスミドの組み合わされたコンストラクトは、特定の実施形態によれば原核生物プロモーターの制御下で発現される遺伝子編集カーゴと共に、真核細胞に送達される細菌媒介遺伝子送達システムを構成する。
【0026】
本明細書で教示される細菌媒介遺伝子編集送達プラットフォームは、他の遺伝子編集送達方法と比較した場合、多くの利点を提供する。まず、システムは一時的な送達を容易にする。細菌送達プラットフォームは、目的の編集イベントを迅速に達成し、オフターゲット編集を最小限に抑え、DNA特異性を高め、細胞内のCRISPR/Cas9又はその他のヌクレアーゼ編集システムの長期化による望ましくない結果を減ずる。
【0027】
第2に、システムは非免疫原性である。 細菌細胞は、抗原提示細胞の認識を回避するように操作されており、システムは宿主に免疫又は他のサイトカイン応答を誘発しない。対照的に、抗体はナノ粒子のような他の送達媒体に対して形成することができる。そして、リポソームとウイルスベクターは免疫応答を誘発する可能性がある。
【0028】
第3に、システムは統合されていない。 特定の実施形態によれば、遺伝子編集成分の発現は、原核生物のプロモーターのみに由来する。これは、宿主ゲノムの統合を阻害し、CRISPR/Cas9又は他のヌクレアーゼ編集システムの制御された送達を提供し、宿主への発癌及び他の望ましくない副作用のリスクを排除する。しかしながら、このシステムは、真核生物のプロモーターを有するプラスミドを使用し、非病原性細菌をプラスミドの送達媒体として使用し、それが次に標的細胞で転写される可能性があると考えられる。第4に、システムは非常に安定している。送達プラットフォームは、血清、プロテアーゼ、及びヌクレアーゼへの曝露によって阻害されないため、細菌ビヒクルは、それらの標的部位に到達するまで安定したままであることができる。他の非ウイルスベクターとは異なり、当社の細菌送達プラットフォームは、食細胞クリアランスによって排除されないため、その安定性にさらに貢献する。
【0029】
第5に、システムは大きなペイロード送達容量を可能にする。 細菌送達プラットフォームは、酵素のサイズが大きいにもかかわらず、Cas9などのCas酵素を効果的に送達することがでる。他の非ウイルスベクターは、標的組織に十分なCas9濃度を送達するのに苦労するが、本明細書で教示されるシステムは、受容体媒介エンドサイトーシスを介して機能し、送達される遺伝子編集システムを含む細菌ビヒクルの効果的な細胞内化及びエンドソーム放出をもたらす。
【0030】
第6に、システムは大きな治療ウィンドウを提供する。 細菌送達プラットフォームは、毒性を誘発することなく遺伝子編集効果を達成するために、さまざまな投与量で投与することができルーム。
【0031】
第7に、システムは効率的な送達を可能にする。 送達プラットフォームは、受容体を介したエンドサイトーシスを介して真核細胞に効率的に侵入し、宿主エンドソームから効率的に脱出して、遺伝子編集システムの送達を促進することができる。
【0032】
これまで、標的細胞への遺伝子編集及びCRISPR/Casシステムの効率的なインビボ送達は課題であった。CRISPR/Cas送達の現在の戦略は、主に機械的アプローチ(エレクトロポレーション、流体力学的注射、マイクロインジェクション)とウイルスベクター送達(レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス)に基づいている。これらの方法の多くは、動物や人間の患者の臨床応用のために簡単に翻訳することはできない。リポソーム及びナノ粒子などの非ウイルス送達法も使用されている。しかしながら、治療効果を達成するには、CRISPR/Casシステムをより効率的且つ具体的に提供して、全身投与、不要な組織への輸送、及び宿主の統合による望ましくない副作用や安全性の懸念を回避する必要がある。
【0033】
ウイルスベクターは、インビトロ及びインビボでCRISPR/Cas9システムの送達に使用されてきたが、宿主のゲノム統合による発癌のリスク、挿入サイズの制限、望ましくない免疫応答の刺激、及び 大規模生産の困難性による発癌のリスクは、それらのさらなる用途を厳しく制限する。大量生産が困難であるため、今後の用途が大幅に制限される。ウイルスベクター送達を使用した宿主ゲノムの統合は、Cas9タンパク質又は他のヌクレアーゼの高レベルで長期の発現をもたらし、宿主におけるより高いオフターゲット効果及び強力な免疫応答に寄与する可能性がある。CRISPR/Cas用の代替の非ウイルス送達システムが緊急に必要とされている。非ウイルスベクターは、CRISPR/Cas9送達のもう1つの潜在的なオプションである。これらには、リポソーム、ナノ粒子、エクソソーム、微小胞、細胞透過性ペプチド(CPP)、及びその他の脂質、ポリマー、及び脂質ナノ粒子が含まれるが、これらに限定されない。インビトロでのそれらの有用性にもかかわらず、複雑な生理学的条件は、インビボでこれらの非ウイルス送達アプローチを使用することへの障壁を作り出す。
【0034】
本発明は、原核生物発現カセットを含む侵襲性の非病原性細菌を使用して真核細胞に遺伝子編集又はCRISPR / Casシステムを送達して、送達前にそれらの遺伝子の発現を駆動するシステム及び方法を提供する。言い換えれば、本発明では、侵襲性及び非病原性の両方であり、細菌の侵襲性を付与する原核生物プロモーターによって駆動されるプラスミドを含み、それによってそれらが真核細胞に入ることを可能にする細菌が利用される。
【0035】
原核生物の発現カセットを含む細菌を使用する利点は、必要な遺伝子編集カーゴ(オリゴヌクレオチド及びヌクレアーゼタンパク質)が細菌によってのみ発現されることである。 それらは、送達前に再起因によって生成される。細菌細胞が取り込まれ、宿主の真核細胞の細胞質に取り込まれると、遺伝子編集遺伝子及びタンパク質を含むプラスミドは、ポリメラーゼの制限のために真核細胞で発現することができなくなる。これにより、これらの遺伝子編集遺伝子及びタンパク質、その他のプラスミドDNAが宿主のゲノムに組み込まれるのを防ぐ。ゲノム統合は、とりわけこれらの遺伝子の発現を制御できないこと、発癌、及び毒性を含む有害な副作用に関連しているため、これは利点である(Kim S et al. 2014. Highly efficient RNA-guided genome editing in human cells via delivery of purified Cas9 ribonucleoproteins. Genome Research 24:1012-1019)。遺伝子編集イベント(標的化されたDNA修飾)は、すべての細胞集団を通じて永続的な遺伝子修飾を推進するために、DNAのコピーごとに1回だけ発生する必要がある。従って、場合によっては、遺伝子編集成分(Cas9及びsgRNA)が宿主細胞のゲノムに組み込まれていない遺伝子編集システムを一時的に導入するための送達システムを使用することが有利である。統合的遺伝子編集アプローチ(すなわち、ウイルスベクター送達)では、遺伝子編集成分(Cas9及びsgRNA)が標的細胞ゲノムに統合されているため、DNA変異はDNAのすべてのコピーで発生し続ける。標的細胞ゲノムへの統合を回避することにより、遺伝子編集成分の制御された発現が提供され、標的細胞における毒性及び標的外突然変異誘発がさらに制限される。
【0036】
本発明は、細菌が真核細胞に入り、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集カーゴ(例えば、CRISPR、タレンズ、ジンクフィンガーが例である)を真核細胞に送達することを可能にする侵入因子(例えば、inv及びhlyA)を含む細菌を使用する。真核生物のプロモーターを含むプラスミドを含む細菌を使用すると、真核細胞内で遺伝子編集システムを備えたプラスミドが送達され、遺伝子編集カーゴが作成されるシステムが実現する。原核生物のプロモーターを使用するシステムは、遺伝子編集システムの転写及び発現の部位として細菌を含む。本明細書では、両方の送達経路(例えば、原核生物プロモーター及び真核生物プロモーターを使用する)が企図されるが、原核生物プロモーターを使用するシステムは、システムが標的細胞に組み込まれないことを保証することを含む、いくつかの重要な利点を提供する。
【0037】
本発明は、広範囲の用途を見出すであろう。例えば、診断では、遺伝性疾患に関連するゲノム変異を検出したり、臓器移植前に拒絶マーカーを検出したりする。本発明は、真核細胞内に存在する感染性因子からの外来DNAが突然変異、癌治療のためのCAR-T適用、DNA修飾が感染性表現型の低下に関連している場合、疾患の予防、DNA変異が望ましくない遺伝的表現型に関連している場合の遺伝性疾患(すなわち、嚢胞性線維症、ハンチントン病、脆弱なX症候群、鎌状細胞貧血、家族性高コレステロール血症)の治療、及び生理学的効果に影響を与える機能的遺伝子又は遺伝子配列を特定することが重要な場合、ゲノムワイドな遺伝子スクリーニングのために使用され得る。
【0038】
本発明はさらに、生細胞における染色体ペインティングの方法を提供する。このシステムは、生細胞のクロマチンダイナミクスを検出する方法としてCRISPRイメージングを実施するために使用できる。緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカーに融合した触媒的に不活性なdCas9(ヌクレアーゼデッドCas9はDNAに結合するが、結合したDNAを切断できない)を使用して、研究者はdCas9を生細胞の蛍光顕微鏡と互換性のあるカスタマイズ可能なDNAラベラーに変えた 。あるいは、CRISPR gRNAをタンパク質相互作用RNAアプタマーに融合させることもでき、このアプタマーは、蛍光タンパク質でタグ付けされた特定のRNA結合タンパク質(RBP)を動員して、標的ゲノム遺伝子座を可視化する。さらなる用途には、動物が遺伝子改変されて標的遺伝子型または表現型を生成するトランスジェニック動物を生成する能力が含まれ、これは、例えば、遺伝学や病気の研究などの科学研究用途に有用であり、又は例えば、特定の病気に耐性のある農業動物又は特定の病気又は障害に耐性のある農業種(植物)を生成するのに有用である。
【0039】
図1は、CRISPR/Casシステムなどの遺伝子編集カーゴを真核細胞に送達するために、侵襲性の非病原性細菌を使用した細菌媒介遺伝子編集送達システムのグラフ表示を示している。例示的なシステムでは、細菌は、遺伝子編集カーゴをコードする原核生物発現カセットを含む。非限定的な例として提供される、CRISPR/Cas9遺伝子編集カーゴを生成して哺乳類細胞に送達するシステムの能力の表現が描かれている。この図は、真核細胞の遺伝子編集を送達及び実行するプロセスの複数の工程を経て進行する、細菌を介した遺伝子編集送達システムの操作を示している。
【0040】
第1に、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)配列、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)、少なくとも1つのCRISPRダイレクト反復配列、核局在化シグナル(NLS)、及び少なくとも1つのスペーサー配列、遺伝子―編集プラスミドの全ての部分は、細菌(侵襲性細菌送達媒体)内で転写される。このような転写は、標的真核細胞に入る前に起こり得る。細菌内では、tracrRNAはcrRNAのダイレクト反復にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含む成熟したシングルガイドRNA(sgRNA)に処理され、Cas9RNA転写物が活性酵素に翻訳される。これらの成分(Cas9酵素及び成熟sgRNA)は、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムを構成する。細菌は、オプションで、組換えプラスミド又は細菌染色体のいずれかから、RNaseIIIのrnc遺伝子を発現させることができまる。第2に、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムを生成する細菌ビヒクルは、インベーシンタンパク質などの侵入因子によって哺乳類細胞を標的とし、受容体介在性エンドサイトーシス(RME)によって細胞に取り込まれる。第3に、エンドソームは、LLOなどのエンドソーム放出のための第2の侵入因子によって分解され、NLSによって誘導されて真核細胞核への移行のためにsgRNA(成熟crRNA:tracrRNA複合体)及びCas9酵素を放出する。第4に、核内に入ると、sgRNAは、crRNAとプロトスペーサーDNAとの間のヘテロ二本鎖形成を介して、プロトスペーサーと下流のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)からなるDNA標的にCas9を誘導する。第5に、Cas9はPAMの上流の標的DNAの切断を介して、プロトスペーサー内に二本鎖切断を作成する。6番目の最後の工程では、標的DNAが永続的に変更される。この図は、この細菌プラットフォームを適応させて、真核細胞の核内でCRISPR複合体活性を生成、送達、及び指示して、標的遺伝子編集を行うためのプロセス例を記載する。
【0041】
図2A及び2Bは、本発明の1つ又は複数の実施形態において遺伝子編集システムを生成及び送達するために細菌を遺伝子操作するために使用されるプラスミドシステムの図を提供する。
図2Aは、少なくとも1つの原核生物プロモーター、複製起点、選択マーカー、crRNAリーダー、対象の標的DNA遺伝子に対して相同の少なくとも1つのスペーサー/crRNA、CRISPRダイレクト反復配列、NLS、及びCas遺伝子を含む、CRISPRを介した遺伝子編集プラスミド(pSiCRISP)の推定配列長を含む概略図である。遺伝子編集システムを提供するpSiCRISPプラスミドに加えて、このシステムは、細菌が真核細胞に侵入することを可能にする成分を必要とする。
図2Bは、少なくとも1つの原核生物プロモーター、複製起点、選択マーカー、受容体を介したエンドサイトーシスの少なくとも1つの侵入因子(侵入因子A)、及びエンドソーム脱出のための少なくとも1つの侵入因子(侵入因子B)を含む侵入プラスミド(pSiVEC)の推定配列長を示す概略図である。 これらの2つのプラスミドシステムは、細菌に同時形質転換することができる。 本発明の別の実施形態によれば、これらの2つのプラスミドの成分は、細菌の形質転換のために単一の組換えプラスミドに組み合わされ得る。 本発明の別の実施形態によれば、これらの2つのプラスミドの成分は、細菌の染色体から発現され得る。
【0042】
用語集:
本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、技術用語又は科学用語が本明細書で異なって定義されない限り、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0043】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、任意の実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。「含む(comprises)」及び/又は「含むcomprising」」という用語は、本明細書に使用される場合、記載された特徴、整数、工程、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、但し、1つ又は複数の他の機能、整数、工程、操作、要素、成分、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことができることが、さらに理解されよう。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連するリストされたアイテムの1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。製品、組成物、及び方法を定義するために使用される場合、「本質的にから成る」とは、本質的に重要な他の構成要素又は工程を除外することを意味するものとする。従って、記載された成分から本質的に成る組成物は、微量の汚染物質及び薬学的に許容される担体を排除しないであろう。「から成る」とは、他の成分または工程の微量元素以上を除外することを意味するものとする。
【0044】
本明細書で交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。従って、この用語には、以下を含むが、これらに限定されない:一本鎖、二本鎖、又は多本鎖のDNA又はRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、又はプリン及びピリミジン塩基、又は他の天然、化学的又は生化学的に修飾された、非天然、又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマー。「オリゴヌクレオチド」は、一般に、一本鎖又は二本鎖DNAの約5~約100のヌクレオチドのポリヌクレオチドを指す。しかしながら、本開示の目的のためには、オリゴヌクレオチドの長さに上限はない。オリゴヌクレオチドは「オリゴマー」又は「オリゴ」としても知られており、遺伝子から単離するか、又は当技術分野で知られている方法によって化学的に合成することができる。「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、記載されている実施形態に適用可能である場合、一本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。「核酸」、「ポリヌクレオチド」又は「オリゴヌクレオチド」という用語は、DNA分子、RNA分子、又はそれらの類似体を指す。本明細書で使用される場合、「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、cDNA、ゲノムDNA又は合成DNAなどのDNA分子、及びガイドRNA、メッセンジャーRNA又は合成RNAなどのRNA分子を含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書で使用される場合、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖及び二本鎖の形態を含む。
【0045】
「ゲノムDNA」は、細菌、ウイルス、真菌、古細菌、植物又は動物のゲノムのDNAを含むが、これらに限定されない、生物のゲノムのDNAを指す。
【0046】
DNAの「操作」には、DNAの結合、一方の鎖のニッキング、又はDNAの両方の鎖の劈開(すなわち、切断)、又は、DNA又はdnaに関連するポリペプチドの修飾(たとえば、アミド化、メチル化など)が含まれる。DNAを操作すると、DNAによってコードされるRNA又はポリペプチドの発現を抑制、活性化、又は調節(増加又は減少)させることができる。
【0047】
「遺伝子編集」とは、細胞のゲノムに存在する遺伝情報を変化させる工程を指す。この遺伝子編集は、ゲノムDNAを操作することによって実行され、遺伝情報の変更をもたらす。このような遺伝子編集は、編集されたDNAの発現に影響を与える場合と影響を与えない場合がある。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ガイドRNA」という用語は、一般に、Casタンパク質に結合し、そしてCasタンパク質を標的ポリヌクレオチド(例えば、DNA)内の特定の位置に標的化するのを助けることができるRNA分子(又は集合的にRNA分子の群)を指す。ガイドRNAは、crRNAセグメント及びtracrRNAセグメントを含むことができる。 本明細書で使用される場合、「crRNA」又は「crRNAセグメント」という用語は、ポリヌクレオチド標的化ガイド配列、ステム配列、及び任意には、5 ’オーバーハング配列を含むRNA分子又はその一部を指す。本明細書で使用される場合、「tracrRNA」又は「tracrRNAセグメント」という用語は、タンパク質結合セグメントを含むRNA分子又はその一部を指す(例えば、タンパク質結合セグメントは、例えば、CRISPR関連タンパク質、例えばCas9と相互作用することができる)。「ガイドRNA」という用語は、crRNAセグメント及びtracrRNAセグメントが同じRNA分子内に位置する単一のガイドRNA(sgRNA)を包含する。「ガイドRNA」という用語はまた、集合的に、2つ以上のRNA分子のグループを含み、ここで、crRNAセグメント及びtracrRNAセグメントは、別個のRNA分子に位置する。オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの文脈における「修飾」という用語は、以下を含むが、それらだけには限定されない:(a)末端修飾、例えば、5 '末端修飾又は3'末端修飾、(b)塩基の置換、挿入、または除去を含む、核酸塩基(又は「塩基」)修飾、(c)2 ‘、3'、及び/又は4 ’位置での修飾を含む糖修飾、及び(d)ホスホジエステル結合の修飾又は置換を含む骨格修飾。「修飾ヌクレオチド」という用語は、一般的に、ヌクレオチドホスフェートを含む、塩基、糖、及びホスホジエステル結合又は骨格部分のうちの1つ又は複数の化学構造に修飾を有するヌクレオチドを指す。
【0049】
本明細書でより一般的に使用される場合、「修飾」は、未修飾リボヌクレオチド、すなわちアデノシン、グアノシン、シチジン、及びウリジンリボヌクレオチドに見られるものとは異なる化学部分又は化学構造の一部を指す。「修飾」という用語は、変更のタイプを指す場合がある。例えば、「同じ修飾」は同じタイプの修飾を意味し、そして「修飾ヌクレオチドは同じ」は、修飾ヌクレオチドが同じタイプの修飾を有するが、塩基(A、G、C、Uなど)は異なる場合があることを意味する。同様に、「2つの修飾」を持つアダプターは、2つのタイプの修飾を持つガイドRNAであり、同じヌクレオチドにある場合とない場合があり、各タイプはアダプター内の複数のヌクレオチドに現れる場合がある。同様に、「3つの修飾」を有するアダプターポリヌクレオチドは、3つのタイプの修飾を有するアダプターであり、これは、同じヌクレオチドにある場合もそうでない場合もあり、それぞれのタイプは、複数のヌクレオチドに現れる場合がある。
【0050】
「ドナーポリヌクレオチド」は、標的ポリヌクレオチドへの挿入を目的としたヌクレオチドポリマー又はオリゴマーである。ドナーポリヌクレオチドは、天然又は修飾ポリヌクレオチド、RNA-DNAキメラ、又は一本鎖又は二本鎖のいずれかのDNAフラグメント、又はPGR増幅ssDNA又はdsDNAフラグメントであり得る。dsDNAフラグメントは一般的にssDNAよりもヌクレアーゼ分解に対して耐性があるため、完全に二本鎖のドナーDNAは、安定性が向上する可能性があるため有利である。用語「xA」、「xG」、「xC」、「xT」、又は「x(A、G、C、T)」及び「yA」、「yG」、「yC」、「yT」、又は「 y(A、G、C、T)」は、ヌクレオチド、核酸塩基、又は核酸塩基類似体を指す(Krueger et al., “Synthesis and Properties of Size-Expanded DNAs: Toward Designed, Functional Genetic Systems” , Acc. Chem. Res. 2007, 40, 141-150 (2007);その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0051】
本明細書で使用される場合、「標的ポリヌクレオチド」又は「標的」という用語は、標的核酸配列を含むポリヌクレオチドを指す:標的ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であり得、特定の実施形態によれば、二本鎖DNAである。特定の実施形態によれば、標的ポリヌクレオチドは一本鎖RNAである。本明細書で使用される「標的核酸配列」又は「標的配列」は、CRISPR / Casシステム又は他の遺伝子編集システムを使用して結合、ニック、又は切断したい特定の配列又はその相補体を意味する。
【0052】
「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイゼーション」という用語は、完全にまたは部分的に相補的なポリヌクレオチド鎖が適切なハイブリダイゼーション条件下で一緒になって、2つの構成鎖が水素結合によって結合される二本鎖構造または領域を形成するプロセスを指す。本明細書で使用される場合、「部分的ハイブリダイゼーション」という用語は、二本鎖構造又は領域が1つ又は複数のバルジ又はミスマッチを含む場合を含む。水素結合は通常、アデニンとチミン、又はアデニンとウラシル(AとT又はAとU)、又はシトシンとグアニン(CとG)の間に形成されるが、他の非標準的な塩基対が形成される場合がある(たとえば、Adams el 21 5 al., The Biochemistry of the Nucleic Acids, 11th ed., 1992を参照のこと)。修飾ヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションを可能にするか又は促進する水素結合を形成し得ることが企図される。「ハイブリダイズ可能」又は「相補的」又は「実質的に相補的」とは、核酸(例えば、RNA)が非共有結合を可能にする、すなわちワトソンクリック塩基対及び/又はG/U塩基対を形成し、温度と溶液のイオン強度の適切なインビトロ及び/又はインビボ条件下で、配列特異的、逆平行の方法で(すなわち、核酸が相補的核酸に特異的に結合する)別の核酸に「アニーリングし」、又は「ハイブリダイズする」ことを可能にするヌクレオチドの配列を含むことを意味する。当技術分野で知られているように、標準的なワトソンクリック塩基対形成には、チミジン(T)とのアデニン(A)対形成、ウラシル(U)とのアデニン(A)対形成、及びシトシン(C)とのグアニン(G)対形成が含まれる。さらに、2つのRNA分子(例えば、dsRNA)間のハイブリダイゼーションのために、グアニン(G)塩基対とウラシル(U)とのハイブリダイゼーションも当技術分野で知られている。例えば、G/U塩基対形成は、mRNAのコドンとのtRNAアンチコドン塩基対形成の文脈における遺伝暗号の縮退(すなわち、冗長性)に部分的に関与している。本開示の文脈において、ガイドRNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)のグアニン(G)は、ウラシル(U)に相補的であると見なされ、逆もまた同様である。そのため、ガイドRNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)を特定のヌクレオチド位置でG/U塩基対にすることができる場合、その位置は非相補的であるとは見なされず、代わりに補完的であると見なされる。
【0053】
ハイブリダイゼーション及び洗浄条件はよく知られており、そして以下に例示されている: Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (1989), particularly Chapter 11 and Table 11.1 therein; and Sambrook, J. and Russell, W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (2001)。温度及びイオン強度の条件が、ハイブリダイゼーションの「緊縮性」を決定する。
【0054】
ハイブリダイゼーションには、2つの核酸に相補的な配列が含まれている必要があるが、塩基間のミスマッチが発生する可能性がある。2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適切な条件は、核酸の長さ及び相補性の程度に依存し、これらは当技術分野で周知の変数である。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、それらの配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値が大きくなる。相補性の短いストレッチ(例えば、35以下、30以下、25以下、22以下、20以下、又は18ヌクレオチド以下の相補性)を有する核酸間のハイブリダイゼーションの場合、ミスマッチの位置が重要になる( Sambrook et al., 上記, 11.7-11.8を参照のこと)。典型的には、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは少なくとも約10のヌクレオチドである。 ハイブリダイズ可能な核酸の例示的な最小の長さは次の通りである:少なくとも約15のヌクレオチド; 少なくとも約20のヌクレオチド; 少なくとも約22のヌクレオチド; 少なくとも約25のヌクレオチド; 及び少なくとも約30のヌクレオチド。さらに、当業者は、相補領域の長さ及び相補性の程度などの要因に従って、必要に応じて温度及び洗浄液の塩濃度を調整できることを認識するであろう。
【0055】
ポリヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズ可能又はハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸の配列に対して100%相補的である必要はないことが当技術分野で理解されている。さらに、ポリヌクレオチドは、介在するセグメント又は隣接するセグメントがハイブリダイゼーションイベント(例えば、ループ構造又はヘアピン構造)に関与しないように、1つ又は複数のセグメントにわたってハイブリダイズすることができる。ポリヌクレオチドは、それらが標的とされる標的核酸配列内の標的領域に対して少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%の配列相補性を含み得る。例えば、アンチセンス化合物の20のヌクレオチドのうちの18が標的領域に相補的であり、従って、特異的にハイブリダイズするであろうアンチセンス核酸は、90パーセントの相補性を表すであろう。この例では、残りの非相補的ヌクレオチドは、クラスター化されるか、又は相補的ヌクレオチドが散在している可能性があり、互いにまたは相補的ヌクレオチドに隣接している必要はない。核酸内の核酸配列の特定のストレッチ間の相補性パーセントは、BLASTプログラム(基本的なローカルアラインメント検索ツール)及び当技術分野で知られているPowerBLASTプログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol., 1990, 215, 403- 410; Zhang and Madden, Genome Res., 1997, 7, 649-656)を使用して、又はSmith及びWatermanのアルゴリズム(Adv. Appl. Math., 1981, 2, 482-489)を使用するデフォルト設定を用いるGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for 35 Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison Wis.)を使用して、日常的に決定され得る。
【0056】
「切断(cleavage)」又は「切断(cleaving)」という用語は、ポリヌクレオチドのリボシルホスホジエステル骨格における共有結合ホスホジエステル結合の切断を指す。「切断(cleavage)」又は「切断(cleaving)」という用語は、一本鎖切断及び二本鎖切断の両方を包含する。二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断イベントの結果として発生する可能性がある。 切断により、平滑末端又は粘着末端のいずれかが生成される可能性がある。
【0057】
「CRISPR関連タンパク質」又は「Casタンパク質」という用語は、野生型Casタンパク質、そのフラグメント、又はその変異体(ミュータント)又は変異体(バリアント)を指す。「Cas変異体(ミュータント)」又は「Cas変異体(バリアント)」という用語は、野生型Casタンパク質のタンパク質又はポリペプチド誘導体、例えば、1つ又は複数の点突然変異、挿入、欠失、切断、融合タンパク質、又はそれらの組み合わせを有するタンパク質を指す。特定の実施形態によれば、「Cas変異体(ミュータント)」又は「Cas変異体(バリアント)」は、Casタンパク質のヌクレアーゼ活性を実質的に保持する。特定の実施形態によれば、「Cas変異体(ミュータント)」又は「Cas変異体(バリアント)」は、一方又は両方のヌクレアーゼドメインが不活性であるように変異されている。特定の実施形態によれば、「Cas変異体(ミュータント)」又は「Cas変異体(バリアント)」は、ヌクレアーゼ活性を有する。 特定の実施形態によれば、「Cas変異体(ミュータント)」又は「Cas変異体(バリアント)」は、その野生型対応物のヌクレアーゼ活性の一部又は全てを欠いている。
【0058】
「gRNA機能」を有する合成ガイドRNAは、Casタンパク質との会合などの天然に存在するガイドRNAの機能、又はCasタンパク質との会合においてガイドRNAによって実行される機能の1つ又は複数を有するものである。特定の実施形態によれば、機能性は、標的ポリヌクレオチドの結合を含む。特定の実施形態によれば、機能性は、Casタンパク質又はgRNA:Casタンパク質複合体を標的ポリヌクレオチドに標的化することを含む。特定の実施形態によれば、機能性は、標的ポリヌクレオチドをニッキングすることを含む。 特定の実施形態によれば、機能性は、標的ポリヌクレオチドを切断するためにgRNA:Casシステム内で作用することを含む。特定の実施形態によれば、機能性は、Casタンパク質との会合又は結合を含む。特定の実施形態によれば、機能性は、操作されたCasタンパク質を有する人工CRISPR/Casシステムを含む、Casタンパク質を有するCRISPR/CasシステムにおけるガイドRNAの他の既知の機能である。特定の実施形態によれば、機能性は、天然のガイドRNAの他の任意の機能である。 合成ガイドRNAは、天然に存在するガイドRNAよりも多かれ少なかれgRNA機能を持っている可能性がある。 特定の実施形態によれば、合成ガイドRNAは、1つの特性に関してより大きな機能性を有し得、そして別の特性に関してより小さな機能性を有し得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、配列の「セグメント」という用語は、完全な配列よりも小さい配列の任意の部分(例えば、ヌクレオチド部分配列又はアミノ酸部分配列)を指す。ポリヌクレオチドのセグメントは、任意の長さ、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、75、100、150、200、300又は500のヌクレオチド以上の長さであり得る。ガイド配列の一部は、ガイド配列の約50%、40%、30%、20%、10%、例えば、ガイド配列の3分の1、又はそれより短い、例えば、7、6、5、4、3又は2のヌクレオチドの長さであり得る。
【0060】
分子の文脈における「由来する」という用語は、親分子又はその親分子からの情報を使用して単離又は作製された分子を指す。例えば、Cas9シングルミュータントニッカーゼとCas9ダブルミュータントヌルヌクレアーゼは、野生型Cas9タンパク質に由来する。
【0061】
2つ以上のポリヌクレオチド(又は2つ以上のポリペプチド)の文脈における「実質的に同一」という用語は、配列比較アルゴリズムを使用して、又は視覚的検査によって、最大の対応のために比較及び整列された場合、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約90-95%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%以上 ヌクレオチド(又はアミノ酸)配列の同一性を有する配列又は部分配列を指す。好ましくは、ポリヌクレオチド間の「実質的な同一性」は、少なくとも約50のヌクレオチド長、少なくとも約100のヌクレオチド長、少なくとも約200のヌクレオチド長、少なくとも約300のヌクレオチド長、少なくとも約500のヌクレオチド長のポリヌクレオチド、又は全体長のポリヌクレオチドの領域にわたって存在する。好ましくは、ポリペプチド間の「実質的な同一性」は、ポリペプチドの領域にわたって、少なくとも約50のアミノ酸残基の長さ、少なくとも約100のアミノ酸残基の長さ、又はポリペプチドの全長にわたって存在する。
【0062】
本明細書に開示されるように、いくつかの範囲の値が提供される。その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各介在値もまた、具体的に企図されることが理解される。記載された範囲に含まれるそれぞれのより小さな範囲又は介在する値もまた、具体的に企図される。「約」という用語は、一般的に、示された数値のプラスマイナス10%を指す。例えば、「約10%」は9%から11%の範囲を示し、「約20」は18~22を意味する。 「約」の他の意味は、四捨五入などの文脈から明らかである可能性があるため、例えば、「約1」は、0.5~1.4を意味する場合もある。
【0063】
特定のRNAを「コード化」するDNA配列は、RNAに転写されるDNA核酸配列である。DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されるRNA(mRNA)をコードし得るか、又はDNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRNA(例えば、tRNA、rRNA、又はガイドRNA;「非コード」RNA又は「ncRNA」とも呼ばれる)をコードし得る。「タンパク質コード配列」又は特定のタンパク質又はポリペプチドをコードする配列は、mRNA(DNAの場合)に転写され、そして適切な調節配列の制御下に置かれた場合、インビトロ又はインビボでポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)ポリペプチドに翻訳される核酸配列である。コード配列の境界は、5 '末端(N末端)の開始コドンと3`末端(C末端)の翻訳終止ナンセンスコドンによって決定される。コード配列には、原核生物又は真核生物のmRNAからのcDNA、原核生物又は真核生物のDNAからのゲノムDNA配列、及び合成核酸が含まれ得るが、これらだけには限定されない。転写終結配列は通常、コード配列の3‘側に位置する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼに結合し、下流(3 ’方向)のコード配列又は非コード配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本発明を定義するためには、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3”末端で結合され、バックグラウンドより上で検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基又は要素を含むように上流(5 ’方向)に延びる。プロモーター配列内には、転写開始部位と、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインがある。本開示に記載されるように、誘導性プロモーターを含む様々なプロモーターを使用して、ベクターを駆動することができる。
【0065】
プロモーターは、構成的に活性なプロモーター(すなわち、構成的に活性(「オン」)状態にあるプロモーター)であり得る、それは、誘導性プロモーター(すなわち、その状態、活性(「オン」)又は非活性(「オフ」)が、外部刺激(例えば、特定の温度、化合物、又はタンパク質の存在)によって制御されるプロモーター)であり得る。
【0066】
従来技術において、Casタンパク質の発現に適したプロモーターがウイルスに由来する場合(従って、ウイルスプロモーターと呼ぶことができる)、細菌においてCas9タンパク質を発現するために使用されるプロモーターもまた好ましい。ある細菌でCas9の発現を促進することが知られているプロモーターを使用して、異なる(種の)細菌に由来するCas9タンパク質の発現を促進することも可能である。このような場合、当該プロモーターはCas9タンパク質に関して異種であると言われている。「原核生物プロモーター」という用語は、配列の転写のために細菌内で活性であるプロモーターを指す。ファージRNAポリメラーゼを発現するように細菌をさらに操作することができるため、ファージプロモーターの使用が容易になる。特定の側面によれば、ファージプロモーターの使用は、細菌を駆動して毒性遺伝子を発現させるのに有益である可能性がある。例えば、ファージプロモーターを使用し、それを毒性遺伝子の上流に配置することにより、例えば、細菌に大量の、そしておそらく毒性のある量の遺伝子編集ヌクレアーゼを作ることを可能にするか、又は強制することができる。
【0067】
侵襲性微生物:
本明細書で使用される場合、微生物、例えば、細菌又は細菌治療粒子(BTP)を指す場合の「侵襲性」という用語は、少なくとも1つの分子、例えば、RNA又はRNAをコードするDNA分子を標的細胞に送達することができる微生物を指す。侵襲性微生物は、細胞膜を通過することができ、それによって前記細胞の細胞質に入り、その内容物の少なくとも一部、例えば、RNA又はRNAをコードするDNAを標的細胞に送達することができる微生物であり得る。標的細胞への少なくとも1つの分子の送達の工程は、好ましくは、侵入装置を有意に改変しない。
【0068】
本明細書で使用される場合、「トランスキングダム」という用語は、細菌(又は別の侵襲性微生物)を使用して核酸を生成し、そしてホストゲノム統合なしで処理するための標的組織内で核酸を細胞内に送達する送達システムを指す(すなわち、王国全体:原核生物から真核生物へ、又は門を越えて:無脊椎動物から脊椎動物へ)。
【0069】
侵襲性微生物には、例えば真核細胞膜などの細胞膜を横断して細胞質に入るなどによって、少なくとも1つの分子を標的細胞に自然に送達することができる微生物、並びに自然においては侵襲性ではなく、そして 侵襲的であるように、例えば、遺伝的に改変されている微生物を含む。別の好ましい実施形態によれば、自然において侵襲性ではない微生物は、細菌又はBTPを「侵入因子」又は「細胞質標的化因子」とも呼ばれる「侵入因子」に連結することによって、侵襲性になるように改変することができる。本明細書で使用される場合、「侵入因子」は、非侵襲性細菌又はBTPによって発現されると、細菌又はBTPを侵襲性にする因子、例えば、タンパク質又はタンパク質の群である。本明細書で使用される場合、「浸潤因子」は「細胞質標的化遺伝子」によってコードされる。 侵襲性微生物は、一般的に、例えば、以下に、当技術分野で説明されてきた:米国特許公開番号第 US 20100189691 A1号及び第US20100092438 A1号 、及び Xiang, S. et al., Nature Biotechnology 24, 697 - 702 (2006)。それぞれは、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれている。
【0070】
好ましい実施形態によれば、本出願の例で教示されるように、侵襲性微生物は大腸菌である。しかしながら、追加の微生物が、遺伝子編集カーゴの送達のためのトランスキングダム送達媒体として機能するように潜在的に適合され得ることが企図される。これらの非毒性で侵襲性の細菌及びBTPは、侵襲性を示すか、又は侵襲性を示すように改変され、さまざまなメカニズムを介して宿主細胞に侵入する可能性がある。特殊なリソソーム内の細菌又はBTPの破壊を通常もたらすプロフェッショナル食細胞による細菌又はBTPの取り込みとは対照的に、侵襲性細菌又はBTP株は非食細胞の宿主細胞に侵入する能力を有している。そのような細胞内細菌の自然発生例は、Yersinia、 Rickettsia、 Legionella、 Brucella、 Mycobacterium、 Helicobacter、 Coxiella、 Chlamydia、 Neisseria、 Burkolderia、 Bordetella、 Borrelia、 Listeria、 Shigella、 Salmonella、 Staphylococcus、 Streptococcus、 Porphyromonas、 Treponema、及びVibrioであるが、しかし、この特性は、侵入関連遺伝子の伝達によるプロバイオティクスを含む、E. coli、Lactobacillus、Lactococcus 又は Bifidobacteriaeなどの他の細菌又はBTPにも伝達することができまる(P. Courvalin, S. Goussard, C. Grillot-Courvalin, C.R. Acad. Sci. Paris 318, 1207 (1995))。トランスキングダム送達ビヒクルとしての使用のための候補体として追加の細菌種を評価する際に考慮又は対処すべき要因は、以下を含む:候補の病原性又はその欠如、標的細胞に対する候補細菌の向性、又はあるいは遺伝子編集カーゴを標的細胞の内部に送達するように細菌を操作できる程度、および候補細菌が宿主の自然免疫を誘発することによって提供する可能性のある相乗的価値。
【0071】
コロニーは、すべて単一の母細胞に由来する微生物の目に見える塊状物として定義される。従って、コロニーは、すべて遺伝的に類似した細菌のクローンを構成する。
【0072】
プロモーター:
遺伝子発現調節要素の中で、プロモーターが中心的な役割を果たしている。プロモーター分子に沿って、転写機構が組み立てられ、転写が開始される。この初期段階は、タンパク質生産の後続の段階に比べて律速となることがよくある。プロモーターでの転写開始は、いくつかの方法で調節され得る。例えば、プロモーターは、特定の化合物又は外部刺激の存在によって誘導され、特定の発達段階中に遺伝子を発現し、又は構成的に遺伝子を発現し得る。従って、導入遺伝子の転写は、コード配列を異なる調節特性を有するプロモーターに作動可能に連結することによって調節され得る。従って、プロモーターなどの調節要素は、トランスジェニック生物の価値を高める上で極めて重要な役割を果たす。
【0073】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼ及び関連するシグマ因子及びアクチベータータンパク質などの他のタンパク質の認識及び結合に関与して、作動可能に連結された遺伝子の転写を開始するポリヌクレオチド分子を指す。プロモーターは、遺伝子のゲノムコピーの5‘非翻訳領域(5’UTR)から単離することができる。あるいは、プロモーター分子は、人工的及び合成的に生成され得るか、又は改変されたDNA配列を含み得る。プロモーターは、作動可能に連結された転写可能なポリヌクレオチド分子の発現を調節するための調節要素として使用することができる。プロモーター自体は、作動可能に連結された遺伝子の転写に影響を与えるシス要素又はエンハンサードメインなどの副要素を含み得る。
【0074】
原核生物では、プロモーターは転写開始部位から上流の-10及び-35の位置にある2つの短い配列で構成されている。 シグマ因子は、プロモーターへのRNAP結合を強化するのに役立つだけでなく、RNAPがどの遺伝子を転写するかを標的にするのにも役立つ。-10での羽生烈は、プリブノーボックス又は-10要素と呼ばれ、通常、6つのヌクレオチドTATAATで構成される。 プリブノーボックスは、原核生物で転写を開始するために絶対に不可欠である。-35での他の配列(-35要素)は通常、6つのヌクレオチドTTGACAで構成されている。その存在は非常に高い転写率を可能にする。上記のコンセンサス配列は両方とも、平均して保存されているが、ほとんどのプロモーターで無傷では見つからない。平均して、各コンセンサス配列の6つの塩基対のうち3つだけが任意のプロモーターに見られる。上記のプロモーター配列は、原核生物のRNAポリメラーゼと相互作用するsigma-70タンパク質によってのみ認識されることに注意してください。原核生物のRNAポリメラーゼと他のシグマ因子との複合体は、まったく異なるコアプロモーター配列を認識する。
【0075】
多くの調節要素はシス(「シス要素」)で作用し、そしてDNAトポロジーに影響を及ぼし、RNAポリメラーゼのDNAテンプレートへのアクセスを選択的に許可又は制限する、又は転写開始部位での二重螺旋の選択的開放を促進する局所コンフォメーションを生成すると考えられている。シス要素は、特定のコード配列に関連する5‘UTR内に存在し、プロモーター及びプロモーター調節配列(誘導性エレメント)内にしばしば見られる。シス要素は、BLASTプログラムを使用して標的配列又は標的モチーフとして既知のシス要素を使用して同定することができる。ポリヌクレオチドコード配列に関連する5’UTRのシス作用要素の例には、プロモーター及びエンハンサーが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
原核生物では、mRNAの翻訳はUTG、GTG、又はまれにUUGで始まり、通常はリボソーム結合部位(RBS; Shine and Dalgarno, PNAS 71:1342-1346, 1974)に特徴的な配列が先行する。RBSはAGが豊富で、通常、開始コドンの6~12bp前に見られる。RBSは、細菌における効率的なmRNA翻訳に必要であると考えられる。
【0077】
ゲノムDNA配列内のプロモーター領域を予測するには、少なくとも2種類の情報が役立つ。第1に、プロモーターは、転写因子結合部位や様々な既知のプロモーターモチーフなどのそれらの配列「内容」に基づいて同定され得る(Stormo, Genome Research 10: 394-397, 2000)。このようなシグナルは、TATAボックスや転写因子(TF)結合部位などのプロモーターに関連する部位を特定するコンピュータープログラムによって特定される場合がある。第2に、プロモーターは、それらの「位置」、すなわち、既知又は疑わしいコード配列(ストーモ)へのそれらの近接性に基づいて同定され得る。原核生物のプロモーターは、通常、コード配列の転写又は翻訳開始コドンから5 '方向に約1~500の塩基対に及ぶDNAの領域内に見られる。従って、プロモーター領域は、コード配列の翻訳開始コドン又は転写開始部位を特定し、開始コドンを超えて5 '方向に移動してプロモーター領域を特定することによって同定することができる。
【0078】
プロモーター配列は、TATAボックス及び他の既知の転写因子結合部位モチーフなどの一般的なプロモーター配列特性の存在について分析することができる。これらのモチーフは、すべての既知のプロモーターに常に見られるわけではなく、全てのプロモーターが機能するために必要なわけではないが、存在する場合、DNAのセグメントがプロモーター配列であることを示す。
【0079】
プロモーターの活性または強度は、導入遺伝子を含む細胞の増殖において特定の期間中に特異的に蓄積されるmRNA、tRNA、dsRNA、miRNA、rRNA、又はタンパク質の量に関して測定することができる。商業的に重要なタンパク質、又は反応を触媒して商業的に重要な化合物を生成するためのタンパク質を生成するために、強化されたレベルのmRNA生成が必要となる場合がある。商業的に重要なタンパク質のコード配列は、当業者によって同定することができ、本発明のプロモーターと共に使用して、mRNA及びタンパク質レベルの産生をもたらすことができる。プロモーターの活性の又は強度は、例えば、プロモーターの制御下で化合物の解毒を可能にする遺伝子で形質転換された後、細胞が選択圧下で増殖する場合の増強された細胞増殖の観点から測定することもできる。
【0080】
ハイブリッドプロモーターは、あるプロモーターの-35領域及び別のプロモーターの-10領域を有するプラスミド上の細菌又は発現カセットを操作することによって生成されるプロモーターとして定義される。
【0081】
選択マーカー:
本明細書で使用される場合、「マーカー」という用語は、その発現又はその欠如が何らかの方法でスクリーニング又はスコアリングされ得る任意の転写可能なポリヌクレオチド分子を指す。本発明の実施に使用するためのマーカー遺伝子は、以下を含むが、それらだけには限定されない:β-グルクロニダーゼをコードする転写可能なポリヌクレオチド分子(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,599,670号に記載されているGUS)、緑色蛍光タンパク質及びその変異体(米国特許第5,491,084号及び米国特許第6,146,826号に記載されているGFP、RFPなど、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)、又は抗生物質耐性を与えるタンパク質。
【0082】
カナマイシン(nptII)、ハイグロマイシンB(aph IV)、ストレプトマイシン又はスペクチノマイシン(aad、spec/strep)、及びゲンタマイシン(aac3及びaacC4)に対する耐性を付与するタンパク質をコードするものを含む、有用な抗生物質耐性マーカーが当技術分野で知られている。有利なポジティブ選択マーカーはhisD(ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ)である。Salmonella typhimuriumのhisD遺伝子は、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼをコードする。これは、L-ヒスチジノールからL-ヒスチジンへの2段階のNAD '依存性酸化を触媒しる。ヒスチジンを欠き、ヒスチジノールを含む培地では、hisD産物を発現する細胞のみが生存する。
【0083】
「選択可能なマーカー」という用語には、形質転換細胞を同定ま他派選択する手段として分泌を検出することができる分泌可能なマーカーをコードする遺伝子も含まれる。例には、触媒的に検出できる分泌可能な酵素をコードするマーカーが含まれる。他の可能な選択可能なマーカー遺伝子は、当業者には明らかであろう。
【0084】
特定の実施形態によれば、選択可能なマーカーの使用は、hisD、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)、ルシフェラーゼ(LUX)、又は抗生物質耐性コード配列(aadA)であり得る。特定の実施形態によれば、選択可能なマーカーは、カナマイシン、ストレプトマイシン及び/又はスペクチノマイシン耐性マーカーである。抗生物質及び除草剤に対する耐性を提供するコード配列の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20080305952号及び第20080280361号に見出すことができる。
【0085】
細胞形質転換:
「形質転換」という用語は、受容体宿主への核酸の導入を指す。「宿主」という用語は、原核細胞、特に細菌細胞を指す。本明細書で使用される場合、「形質転換された」という用語は、構築物などの外来ポリヌクレオチド分子が導入された細胞又は生物を指す。導入されたポリヌクレオチド分子は、導入されたポリヌクレオチド分子がその後の子孫に受け継がれるように、又は自己複製ユニットとして細胞質にとどまることができるように、受容体細胞又は生物のゲノムDNAに組み込まれ得る。「トランスジェニック」又は「形質転換された」細胞又は生物には、細胞又は生物の子孫も含まれる。「トランスジェニック」という用語は、1つ又は複数の異種ポリ核酸分子を含む細胞又は他の生物を指す。
【0086】
異種のポリ核酸分子を細胞に導入する方法はたくさんある。この方法は、一般的に、適切な宿主細胞を選択し、組換えベクターで宿主細胞を形質転換し、そして形質転換された宿主細胞を取得する工程を含む。異種ポリ核酸分子を原核生物に導入するための適切な方法には、とりわけ、凍結融解(熱ショック)、三親交配、及びエレクトロポレーションが含まれる。これらの方法は、原核生物の形質転換の当業者に知られている。
【0087】
キット:
本発明の方法を実施するためのキットがさらに提供される。 「キット」とは、少なくとも1つの試薬、例えば、本発明の遺伝子編集細菌を含む任意の製造(例えば、パッケージ又は容器)を意味する。キットは、本発明の方法を実行するためのユニットとして宣伝、配布、又は販売することができる。さらに、キットには、キットとその使用方法を説明する添付文書が含まれている場合がある。キット試薬のいずれか又はすべては、密封された容器又はポーチなどの外部環境からそれらを保護する容器内に提供され得る。
【0088】
本発明の化合物に関する「投与」という用語及びその変形(例えば、化合物の「投与」)は、治療を必要とする対象のシステムに化合物を導入することを意味する。本発明の化合物が1つ又は複数の他の活性剤(例えば、AIVワクチンなど)と組み合わせて提供される場合、「投与」及びその変異体はそれぞれ、化合物及び他の薬剤の同時且つ連続的な導入を含むと理解される。
【0089】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、指定された成分を指定された量で含む製品、並びに指定された成分を指定された量で組み合わせることから直接的又は間接的に生じる任意の製品を含むことを意図している。
【0090】
本明細書で使用される「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められている組織、システム、動物又はヒトにおいて生物学的又は医学的応答を誘発する活性化合物又は薬剤の量を意味する。ウイルス感染に関して、有効量は、臨床疾患、臨床症状、ウイルス力価又は対象からのウイルス排出によって証明されるように、又は動物間の感染を予防又は軽減する能力対象から証明されるように、疾患の発症を予防するか、又は疾患の重症度を軽減するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態によれば、有効量は、臨床的疾患及び/又は症状の発症を遅らせるために、又は疾患を予防するために十分な量である。いくつかの実施形態によれば、有効量は、ウイルス力価を低下させ、及び/又はウイルス排出を減少させるのに十分な量である。有効量は、1回又は複数回の用量で投与することができる。
【0091】
有益な又は望ましい臨床結果は、以下のいずれか1つ又は複数を含むが、但し、それらだけには限定されない:1つ又は複数の症状の緩和、ウイルス感染の程度の減少、ウイルス感染の安定した(すなわち、悪化しない)状態、拡散の防止又は遅延( 例えば、ウイルス感染の脱落)、ウイルス感染の進行の予防、遅延又は減速、及び/又は体重/体重増加の維持。本発明の方法は、治療のこれらの態様のいずれか1つ又は複数を企図している。
【0092】
「医薬上許容される」成分は、合理的な利益/リスク比に見合った過度の有害な副作用(毒性、刺激、及びアレルギー反応など)なしに、ヒト及び/又は動物での使用に適した成分である。
【0093】
「安全で有効な量」とは、本発明の方法で使用した場合に合理的な利益/リスク比に見合った過度の有害な副作用(毒性、刺激、又はアレルギー反応など)なしに望ましい治療反応をもたらすのに十分な成分の量を指す。
【0094】
用途全体で使用される場合、「a」及び「an」という用語は、文脈が明確に別のことを指示しない限り、参照される成分又は工程の「少なくとも1つ」、「少なくとも最初の」、「1つ以上」、又は「複数」を意味するという意味で使用される。例えば、「細胞」という用語は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、「及び」、「又は」、及び「前記用語によって接続される要素の全て又は任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0095】
上記の利点、及び前述の説明から明らかにされた利点は、効率的に達成される。本発明の範囲から逸脱することなく上記の構造に特定の変更を加えることができるので、前述の説明に含まれる、又は添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく例示として解釈されることが意図される。
【0096】
本出願で引用されたすべての参考文献は、本明細書と矛盾しない範囲で参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0097】
上記の利点、及び前述の説明から明らかにされた利点は効率的に達成され、本発明の範囲から逸脱することなく上記の構造に特定の変更を加えることができるので、
前述の説明に含まれる、又は添付の図面に示されるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されることが意図されている。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載の本発明の一般的及び特定の特徴の全て、および言語の問題としてそれらの間にあると言える本発明の範囲のすべての陳述を網羅することを意図していることも理解されたい。これで、本発明が説明された。
【0098】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を説明する目的で与えられており、いかなる方法でも本発明を限定することを意味するものではない。以下の実施例は、本明細書に記載の方法と共に、好ましい実施形態を代表するものであり、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものとして意図されたものではない。特許請求の範囲によって定義される本発明の精神の範囲内に含まれるその中の変更及び他の用途は、当業者に生じるであろう。
【実施例】
【0099】
実施例1-遺伝子編集活動を指示することができるpSiCRISPプラスミドを含む侵襲性細菌の生成:
緑色蛍光タンパク質(GFP)のcrRNAを発現するCRISPR複合体指向プラスミドを表すpSiCRISP_GFPプラスミドを合成し、大腸菌(FEC19)に形質転換した。EC19細菌を、インベーシンを介した受容体を介したエンドサイトーシス及びLLOを介したエンドソーム放出のために、それぞれinv及びhlyA遺伝子を含むpSiVECとの同時形質転換を介して、真核細胞に浸潤するようにさらに操作した。pSiCRISP-GFP及びpSiVECを含む得られたFEC19コロニーを、選択のために適切な抗生物質を含むブレインハートインフュージョン(BHI)寒天培地にプレートした。得られたFEC19細菌コロニー(A、B、C、D、E、F、及びGとして識別)をPCRでスクリーニングし、本発明の側面の構成を検証する方法として、FEC19細菌内のpSiCRISP及びpSiVECプラスミドの形質転換が成功したことを実証した。Cas9遺伝子とNLSに特異的なpSiCRISP_GFP配列、及びinv遺伝子に特異的なpSiVEC配列を、PCRアッセイで特定のプライマーを使用して増幅した。424bpの生成物を増幅するプライマー(
図3A)を使用して、NLSの存在を確認し(コロニーA、D、E、F、及びGでスクリーニングされた)、727bpの生成物を増幅するプライマー(
図3B)を使用して、Cas9遺伝子の存在を確認し(コロニーA、B、C、D、EおよびFでスクリーニングされた)、また、201bpの生成物を増幅するプライマー(
図3C)を使用して、inv遺伝子の存在を確認した(コロニーA、D、E、及びFでスクリーニングされた)。図では、1kbのラダーが参照として使用されている。Cas9及びFEC19 + pSiCRISP_GFP(pSiCRISP_GFPで形質転換されたFEC19)のNLS配列は、両方ともコロニーD、E、及びFに存在していた。Inv配列は、テストしたすべてのコロニーに存在していた。inv及びCas9とNLSの両方(コロニーD、E、及びF)のPCRによって陽性となった各コロニーについて、単一の陽性クローンを配列検証して、pSiCRISP_GFP及びpSiVECの存在を確認し、増殖させた。この実験は、遺伝子編集プラスミド(pSiCRISP)を含み、さらに標的細胞侵入のための侵入因子を含むプラスミド(pSiVEC)を含む大腸菌(FEC19)の生成を示している。D、E、及びFの細菌ストックは、選択用の適切な抗生物質を含むBHI培地で生成され、波長600nm(OD600)で測定された光学密度が1.0に等しくなるまで増殖した。これらのFEC19 + pSiCRISP_GFP + pSiVECストック(D、E、F)を、20%グリセロール中で-80℃で凍結した。各ストックからの単一の凍結アリコートを、プレート列挙のために解凍した。簡単に説明すると、1 mLのアリコートを5000xgで5分間遠心分離し、細胞を1mLのBHIに再懸濁した。得られた細菌懸濁液を段階的に希釈し、抗生物質を含むBHI寒天上に3回プレートした。各希釈でのコロニー数を平均して、全体的なコロニー形成単位(CFU)/ mLを計算し、FEC19 + pSiCRISP_GFP + pSiVECのストックの実行可能な濃度を表した。このシステムにより、定量化された生きた接種材料を将来のすべてのアッセイで直接使用できるようになった。
【0100】
実施例2:哺乳類細胞株におけるFEC19 + pSiCRISP + pSiVECによるCRISPRを介した遺伝子編集:
GFPを安定して発現するヒト肺胞基底上皮(A549)細胞を、10%ウシ胎児血清、2mMのGlutaMAX、100U/mLのペニシリン、及び100g/mLのストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において、37℃で、5%CO
2のインキュベーション下で維持した。pSiCRISP_GFPプラスミドを含む侵襲性(pSiVECで形質転換)FEC19細菌を、RMEを介してA549細胞に侵入し、目的の遺伝子GFPをノックアウトするために必要なCRISPRを介した遺伝子編集カーゴを送達できる。この実験には、pSiVECプラスミドがGFPを標的とするショートヘアピンRNA(shRNA)を発現する陽性対照処理(FEC19 + pSiVEC_shGFP)が含まれる。A549細胞でGFPを標的とするshRNAを使用したGFPのノックダウンが予想され、以前に実証されているため、この陽性対照処理が含まれている。この浸潤アッセイは、以下の工程を含む。まず、A549細胞を固定濃度で黒色の24ウェルプレートに播種する。細菌の侵入の日に、以下の4つのFEC19ストックを解凍する:1)FEC19 + pSiCRISP_GFP + pSiVEC、2)FEC19 + pSiCRISP_GFP(非侵襲的)、3)FEC19 + pSiCRISP_scramble(スクランブル/ナンセンスcrRNAを発現)+ pSiVEC、及び4 )FEC19 + pSiVEC_shGFP(GFPのためのshRNAを発現する)。FEC19細菌ストックを、DMEMで1x10
7CFU/mL~1X10
5CFU/mLまで1:10に段階的に希釈する。A549細胞を1mLの各FEC19処理と共に2時間インキュベートし、続いてDMEMですすぎ、未結合のFEC19細菌を除去する。Nexcelom Celigoを使用して、GFP発現を72時間の時間経過で定量化し、侵入の直前にT0を読み取る。
図4は、未処理のA549細胞と比較して、処理後0、24、48、及び72時間の4つのFEC19処理の1つで1x10
7CFU/mLとのインキュベーション後にGFPを発現するA549細胞の割合を示す。
【国際調査報告】