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特表2022-534447パワー半導体モジュールおよびパワー半導体モジュールを形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュールおよびパワー半導体モジュールを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20220722BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20220722BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20220722BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220722BHJP
【FI】
H01L23/40 F
H01L25/04 C
H01L23/46 Z
H02M7/48 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504683
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2020070855
(87)【国際公開番号】W WO2021013956
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】19188379.2
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トッレジン,ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】グラディンガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュダーラー,ユルゲン
【テーマコード(参考)】
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5F136CB06
5F136DA08
5F136DA27
5F136GA01
5F136GA04
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA27
5H770QA37
(57)【要約】
本発明は、断続溶接ステップとシールステップとを含む2ステッププロセスを用いてパワー半導体モジュール(10)に冷却器を提供する方法に関する。本発明はさらに、このような方法に従って形成されたパワー半導体モジュール(10)の構成に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体モジュール(10)に冷却器を提供する方法であって、前記方法は、
a)少なくとも1つの電気回路を担持するための第1の基板面を有しかつ前記第1の基板面の反対側に位置する第2の基板面を有する基板を備えるパワー半導体モジュール(10)を提供するステップを含み、前記第2の基板面は第1のベースプレート面に接続され、前記ベースプレート(14)は、その第1のベースプレート面の反対側に位置し前記冷却器と接触するように適合させた第2のベースプレート面(20)をさらに備え、前記冷却器は、第1のケース部品(28)と第2のケース部品(42)とを備え、前記第2のベースプレート面(20)に、接続領域(24)によって囲まれた冷却領域(22)が設けられ、前記方法はさらに、
b)前記接続領域(24)において前記第1のケース部品(28)を前記第2のベースプレート面(20)に接続するステップを含み、前記第1のケース部品(28)は、前記冷却領域(22)を収容するための少なくとも1つの開口部(30)を備え、前記方法はさらに、
c)前記冷却領域(22)に冷却流体を与えるための冷却チャネルが前記第1のケース部品(28)と第2のケース部品(42)との間に与えられるように、前記第2のケース部品(42)を前記第1のケース部品(28)に接続するステップを含み、
前記方法は、ステップb100)およびc100)のうちの少なくとも一方を含み、
前記ステップb100)に従い、ステップb)は、
b1)前記開口部(30)を完全に取り囲む第1の機械的接続経路(34)に沿い、断続溶接技術によって前記第1のケース部品(28)を前記ベースプレート(14)に溶接するステップと、
b2)前記ベースプレート(14)を前記第1のケース部品(28)に封着するために、前記開口部(30)を完全に取り囲む第1のシール経路(40)に沿ってシール剤(38)を与えるステップとを含み、
前記ステップc100)に従い、ステップc)は、
c1)前記冷却チャネルを完全に取り囲む第2の機械的接続経路(46)に沿い、断続溶接技術によって前記第2のケース部品(42)を前記第1のケース部品(28)に溶接するステップと、
c2)前記第1のケース部品(28)を前記第2のケース部品(42)に封着するために、第2のシール経路(52)に沿ってシール剤(50)を与えるステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記方法は前記ステップb100)およびステップc100)の双方を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb1)およびc1)のうちの少なくとも一方における溶接はレーザ溶接によって実行されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップb1)およびc1)のうちの少なくとも一方における溶接はタック溶接によって実行されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップb1)、b2)、c1)、およびc2)のうちの少なくとも1つは、前記ベースプレート(14)の反対側から実行されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップb)の前に前記冷却領域(22)に冷却構造(26)が設けられること、または、前記ステップb)の後であって前記ステップc)の前に冷却構造(26)が前記冷却領域(22)に装着されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記シール剤(38,50)は接着剤を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のケース部品(28)および前記第2のケース部品(42)のうちの少なくとも一方は、流体入口および流体出口のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
パワー半導体モジュール(10)および冷却器の構成であって、前記パワー半導体モジュール(10)は、少なくとも1つの電気回路を担持する第1の基板面を有しかつ前記第1の基板面の反対側に位置する第2の基板面を有する基板を備え、前記第2の基板面は第1のベースプレート面に接続され、前記ベースプレート(14)は、その第1のベースプレート面の反対側に位置し前記冷却器と接触する第2のベースプレート面(20)をさらに備え、前記第2のベースプレート面(20)に、接続領域(24)によって囲まれた冷却領域(22)が設けられており、前記接続領域(24)において前記冷却器の第1のケース部品(28)が前記第2のベースプレート面(20)に接続されており、前記第1のケース部品(28)は、前記冷却領域(22)を収容するための少なくとも1つの開口部(30)を備え、前記冷却領域(22)に冷却流体を与えるための冷却チャネルが前記第1のケース部品(28)と第2のケース部品(42)との間に与えられるように、前記第2のケース部品(42)が前記第1のケース部品(28)に接続されており、
特徴i)およびii)のうちの少なくとも一方が提供されることを特徴とし、
前記特徴i)に従い、前記開口部(30)を完全に取り囲む第1の機械的接続経路(34)に沿い、断続溶接技術によって前記第1のケース部品(28)が前記ベースプレート(14)に溶接されており、前記ベースプレート(14)を前記第1のケース部品(28)に封着するために、前記開口部(30)を完全に取り囲む第1のシール経路(40)に沿ってシール剤(38)が与えられ、
前記特徴ii)に従い、前記冷却チャネルを完全に取り囲む第2の接続経路(46)に沿い、断続溶接技術によって前記第2のケース部品(42)が前記第1のケース部品(28)に溶接されており、前記第1のケース部品(28)を前記第2のケース部品(42)に封着するために、第2のシール経路(52)の全体に沿ってシール剤(50)が与えられている、構成。
【請求項10】
前記パワー半導体モジュール(10)はトランスファー成形されたモジュールであることを特徴とする、請求項9に記載の構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体モジュールに関する。本発明は特に、冷却器への基板の接続が改善されたパワー半導体モジュールに関する。本発明はさらに、パワー半導体モジュールを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールは、当該技術におけるさまざまな用途において周知である。
一例として、基板上にはんだ付けされた電気回路をハウジング内に配置し、ハウジングに充填した樹脂で電気回路を封止することは、周知である。
【0003】
しかしながら、トランスファー成形され、特に焼結されたパワーモジュールは、パワーモジュールのサイクル信頼性が増していることから、従来の手法の興味深い代案になっている。とはいえ、これは、たとえば共通のベースプレートまたは冷却器上に3相が含まれている場合などは、電気回路の集積をより複雑にする。基板は、次が基板のはんだ付けである場合は、ワイヤボンドで完全に組み立てることができるが、焼結する基板を、焼結前にワイヤボンディングおよびテストすることは、不可能またはほぼ不可能であり、その理由は、焼結方式が基板上に強い圧力を必要とすることにある。この圧力は、典型的にはゴムスタンプで機械的に加えられるが、これはワイヤボンディングを破壊することになる。
【0004】
このため、たとえば6パックモジュールの1段階焼結は、経済的には非常に危険である。好ましい解決策は、トランスファー成形され焼結された3つの異なるハーフブリッジモジュールで作られた6パック構成を目指すことである。
【0005】
しかしながら、トランスファー成形されたモジュールを使用する場合には、考慮すべきさまざまな課題がある。
【0006】
たとえば、Oリングを用いた集積は、Oリングの経年変化等に起因する信頼性の理由から、改善の余地がある。ねじを使用する場合は、保管場所および組み立てラインの部品番号が必要である。さらに、この解決策は、ハーフブリッジモジュールの場合の4つのねじおよびOリング等の、ねじおよびOリングの量のために、ねじおよびOリングのための空間を必要とする。
【0007】
重要なのは、電気回路の集積に使用される方法または技術が、パワーモジュールに損傷を与えてはならないことである。特に、成形材料に損傷を与えないようにするために、温度が225℃を超えないことが好ましい場合がある。さらに、機械的応力を回避しなければならない。
【0008】
さらに、溶接技術による集積化が、漏れを引き起こす小さな亀裂および細孔を生じさせないようにしなければならない。
【0009】
加えて、流体ベースの冷却器の流体筐体は、強固かつ液密でなければならず、同時に、設計は、省スペースかつ低コストでなければならない。
【0010】
DE102016203184A1は、パワーエレクトロニクスユニットと、パワーエレクトロニクスユニットの保護のための第1の金属または第1の金属合金からなる第1の構成要素と、パワーエレクトロニクスユニットの保護のための第2の金属または第2の金属合金からなる第2の構成要素と、金属膜とを含むパワーエレクトロニクスアセンブリを開示しており、この膜は、第1および第2の構成要素を物理的にかつ液密に相互接続する。
【0011】
しかしながら、トランスファー成形されたパワー半導体モジュールの一部である基板の接続は依然として課題である。したがって、この点に関して先行技術には改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、先行技術の少なくとも1つの短所を少なくとも一部克服するための解決策を提供することである。特に、本発明の目的は、パワー半導体モジュールを冷却器に簡単なやり方で確実に接続することにより、有効な絶縁を可能にするための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、少なくとも一部、独立請求項1の特徴を有する方法によって達成される。これらの目的はさらに、少なくとも一部、独立請求項9の特徴を有する構成によって達成される。好都合な実施形態は、従属請求項、さらなる説明、および図面において提供され、記載されている実施形態は、単独で、またはそれぞれの実施形態の任意の組み合わせとして、本発明の特徴を、明らかに除外されていない限り、提供することができる。
【0014】
記載されているのはパワー半導体モジュールに冷却器を提供する方法であって、この方法は、
a)少なくとも1つの電気回路を担持するための第1の基板面を有しかつ第1の基板面の反対側に位置する第2の基板面を有する基板を備えるパワー半導体モジュールを提供するステップを含み、第2の基板面は第1のベースプレート面に接続され、ベースプレートは、その第1のベースプレート面の反対側に位置し冷却器と接触するように適合させた第2のベースプレート面をさらに備え、冷却器は、第1のケース部品と第2のケース部品とを備え、第2のベースプレート面に、接続領域によって囲まれた冷却領域が設けられ、この方法はさらに、
b)接続領域において第1のケース部品を第2のベースプレート面に接続するステップを含み、第1のケース部品は、冷却領域を収容するための少なくとも1つの開口部を備え、この方法はさらに、
c)冷却領域に冷却流体を与えるための冷却チャネルが第1のケース部品と第2のケース部品との間に与えられるように、第2のケース部品を第1のケース部品に接続するステップを含み、
この方法は、ステップb100)およびc100)のうちの少なくとも一方を含み、
ステップb100)に従い、ステップb)は、
b1)開口部を完全に取り囲む第1の機械的接続経路に沿い、断続溶接技術によって第1のケース部品をベースプレートに溶接するステップと、
b2)ベースプレートを第1のケース部品に封着するために、開口部を完全に取り囲む第1のシール経路に沿ってシール剤を与えるステップとを含み、
ステップc100)に従い、ステップc)は、
c1)冷却チャネルを完全に取り囲む第2の機械的接続経路(46)に沿い、断続溶接技術によって第2のケース部品を第1のケース部品に溶接するステップと、
c2)第1のケース部品を第2のケース部品に封着するために、第2のシール経路に沿ってシール剤を与えるステップとを含む。
【0015】
このような方法は、特に冷却器をパワー半導体モジュールに提供することに関して、引用された先行技術に勝る重要な利点を提供することができる。特に、記載されているこの方法は、インバータを形成するのに役立ち得る。
【0016】
パワー半導体モジュールに冷却器を提供することに関して、この方法は、冷却器のある部品をパワー半導体モジュールまたはそのベースプレートに接続することを含み得る。たとえば、以下でより詳細に説明するように、パワーモジュールに、したがってそのベースプレートに、冷却流体を与える冷却器筐体を、したがって冷却器の受動部品を、ベースプレートに装着することができるが、ポンプや制御部などのような他の部品について本明細書ではより詳細に説明しない。
【0017】
第1の方法ステップa)に従い、基板とベースプレートとを備えるパワー半導体モジュールが提供される。特に、基板は、基板メタライゼーション上でパワー半導体デバイスを担持するセラミック基板であってもよい。したがって、パワー半導体デバイスは、たとえば、基板メタラーゼーションに固定されてもよく、端子およびそれぞれの配線等の他の部品とともに電気回路を形成してもよい。ベースプレートは、パワー半導体モジュールが所望の態様で機能し得るようにパワー半導体デバイスの冷却効果を提供するために、基板に接続される。
【0018】
したがって、第1のベースプレート面、すなわちベースプレートの第1面が、基板に接続される一方で、第2のベースプレート面、すなわちベースプレートの第2面は、冷却器に、たとえば冷却器筐体に接続されるように適合させたものである。この点に関し、第2のベースプレート面には、接続領域によって囲まれた冷却領域が設けられる。よって、冷却領域は、ベースプレートの有効部分であり、したがって、冷却器によって冷却すべき部分であって、特に冷却器を通して案内される冷却流体に接触させるべき部分である。しかしながら、接続領域は、ベースプレートを冷却器に接続するために設けられており、したがって、この領域をたとえば冷却流体に接触させる必要はなく、接触させることは望ましくない。
【0019】
方法のステップb)に従い、接続領域において、冷却器の第1のケース部品が第2のベースプレート面に接続され、したがって固定される。これは、以下で説明するように溶接によって行われる。第1のケース部品は、たとえば平坦なプレートから形成されてもよく、これは、たとえばエンボス加工のように容易に製造することを可能にする。
【0020】
第1のケース部品は、冷却領域を収容するための少なくとも1つの開口部を備える。言い換えると、第1のケース部品がベースプレートに装着される場合、冷却領域は、露出したままなので、冷却器を通って、たとえば冷却器筐体を通って流れる冷却流体によって冷却することができる。
【0021】
さらに方法ステップc)に従い、第2のケース部品が第1のケース部品に接続され、したがって固定され、冷却領域に冷却流体を与えるための冷却チャネルが、第1のケース部品と第2のケース部品との間に設けられる。冷却チャネルは、第1のケース部品と第2のケース部品との間に存在する自由容積であってもよい、または、定められた経路を通して冷却流体を案内する構造を有していてもよい。第1のケース部品と第2のケース部品とが冷却器筐体を形成してもよい。
【0022】
第1のケース部品をベースプレートに固定することおよび第2のケース部品を第2のケース部品に固定することに関し、以下が発生する。
【0023】
この方法は、ステップb100)およびc100)のうちの少なくとも一方を含み、ステップb100)は、第1のケース部品をベースプレートに固定することを定め、ステップc100)は、第2のケース部品を第1のケース部品に固定することを定める。
【0024】
ステップb100)に従い、第1に、開口部を完全に取り囲む第1の機械的接続経路に沿い、断続溶接技術によって第1のケース部品をベースプレートに溶接し、第2に、ベースプレートを第1のケース部品に封着するために、第1のシール経路に沿ってシール剤を与える。
【0025】
したがって、第1のケース部品は機械的接続経路に沿ってベースプレートに完全に溶接されている訳ではなく、第1のケース部品の特定領域のみがベースプレートに溶接され、接続経路の他の領域はベースプレートに溶接されないことがわかる。そのため、このステップは、接続経路を完全に溶接せずに、第1のケース部品をベースプレートに機械的に固定することを可能にする。
【0026】
したがって、第2のステップは特に、シール経路に沿った溶接されていない領域を処理し、ベースプレートを第1のケース部品に封着するシール剤を提供する。したがって、このステップは、冷却領域と接触した冷却流体がベースプレートと第1のケース部分との間から冷却器を出ることで漏れを引き起こすことを回避する。
【0027】
第1のシール経路は、第1の接続経路と同一の経路であってもよく、または異なる経路であってもよい。たとえば、第1のシール経路は第1の接続経路に実質的に平行であってもよく、および/または第1の接続経路内にもしくはその外側に位置していてもよい。
【0028】
対応して、ステップc100)に従い、第1に、冷却チャネルを完全に取り囲む第2の機械的接続経路に沿い、断続溶接技術によって第2のケース部品を第1のケース部品に溶接し、第2に、第1のケース部品を第2のケース部品に封着するために第2のシール経路に沿ってシール剤を与える。
【0029】
したがって、第2のケース部品は機械的接続経路に沿って第1のケース部品に完全に溶接されている訳ではなく、ケース部品の特定領域のみが溶接され、接続経路の他の領域は溶接されないことがわかる。そのため、このステップは、接続経路を完全に溶接せずに、第1のケース部品を第2のケース部品に機械的に固定することを可能にする。
【0030】
第2のステップは特に、接続経路に沿った溶接されていない領域を処理し、第1のケース部品を第2のケース部品に封着するシール剤を提供する。したがって、このステップは、ケース要素間の冷却チャネル内にある冷却流体がベースプレートと第1のケース部分との間から冷却器を出ることで漏れを引き起こすことを回避する。
【0031】
また、第2のシール経路は、第2の機械的接続経路と同一の経路であってもよく、または異なる経路であってもよい。たとえば、第2のシール経路は第2の接続経路に実質的に平行であってもよく、および/または第1の接続経路内にもしくはその外側に位置していてもよい。
【0032】
したがって、この方法は、ベースプレートに対する、したがってパワー半導体モジュールに対する確実で効率的な冷却挙動を可能にする冷却器を、非常に効果的なやり方でパワー半導体モジュールに提供することを可能にする。その理由は、パワー半導体モジュールが非常に効果的なやり方で冷却されるように、使用する冷却流体に基づいた冷却器が、効率的な冷却挙動を有することにある。
【0033】
加えて、溶接ステップにより、ケース部品同士のおよびベースプレートへの信頼性のある機械的接続を実現することができ、これが、長期にわたる信頼性のある構成を保証する。
【0034】
さらに、封止剤を与えることにより、冷却流体が、少なくとも、第1および第2のケース部品で形成された冷却器筐体から冷却器を出ることを確実に回避することができ、それぞれの損傷または冷却能力の低下を回避することができる。
【0035】
冷却器筐体を形成するケースに関して、したがって第1のケース部品および第2のケース部品に関して、ケース部品は金属から形成されてもよい。
【0036】
一例として、ケース部品はアルミニウムから形成されてもよい。一般的に、ケース部品は、同一材料から形成されてもよく、そうすることで溶接状態を向上させてもよい。
【0037】
一般的に、第1のケース部品は底部プレートとして機能してもよく第2のケース部品は冷却チャネルを閉じるためのキャップまたは蓋として機能してもよい。
【0038】
上記方法は、溶接とシールとの2ステップ構成を用いることにより、第1のケース部品をベースプレートに接続し第2のケース部品を第1のケース部品に接続する際の非常に穏やかな条件を可能にする。そのため、溶接ステップに起因する、パワー半導体モジュールに対する熱の影響を、大幅に減じることができる。熱の影響に起因してパワー半導体モジュールの部品が損傷または劣化する恐れを、このようにして回避する、または少なくとも大幅に減じることができる。
【0039】
これらの利点は、たとえば、焼結された基板、または、焼結されたパワー半導体デバイスがその上にある基板について、好ましい場合がある。実際、焼結する基板を、焼結前にワイヤボンディングおよびテストすることは不可能であり、その理由は、焼結方式が、ワイヤボンディングを破壊することになる強い圧力が典型的にはゴムスタンプで基板上に機械的に加えられることを必要とすることにある。
【0040】
溶接プロセスを特に接着プロセスと組み合わせることは、パワーモジュールの機能に影響せず、Oリングおよびねじを用いることなく漏れ耐性を有する容器を作製することを可能にする。その結果、信頼性が高く温度定格が高いコンパクトな解決策が得られる。
【0041】
パワー半導体モジュールの構成要素に対する温度の影響は、ステップb1)、b2)、c1)、およびc2)のうちの少なくとも1つを、好ましくはこれらのステップのすべてを、ベースプレートの反対側から実行することにより、さらに減じることができる。したがって、主な熱の影響は、パワー半導体モジュールの反対側から導入され、パワー半導体デバイス等のパワー半導体モジュールの構成要素を劣化させる恐れをさらに大幅に減じることができる。さらに、このステップは、以下で説明するようなトランスファー成形されたモジュールを用いることを可能にする。
【0042】
特に、この方法がステップb100)およびステップc100)の双方を含むことがとりわけ好ましいであろう。とりわけ、本実施形態に従うと、他の部分に対する溶接に起因する温度の影響を大幅に減じることができる。その理由として、溶接を最小に減じることができるのでこれがパワー半導体モジュールに加えられる熱も減じることが挙げられる。
【0043】
さらに、ステップb1)およびc1)のうちの少なくとも一方、好ましくはステップb1)およびc1)の双方における溶接は、レーザ溶接によって行われてもよい。特にレーザ溶接により、溶接対象の部品に対する、したがってパワー半導体モジュールに対する温度の影響を大幅に減じることができる。その理由として、レーザ溶接を用いるときに生じる温度を、250℃未満、または225℃未満にさえ保つことができることが、挙げられる。このため、パワー半導体デバイスの損傷等の、パワー半導体モジュールの部品の損傷を、防止する、または少なくとも減じることができ、先に述べたようなモジュールを確実なやり方で実現することができる。
【0044】
上記溶接ステップに関して、ステップb1)およびc1)のうちの少なくとも一方、好ましくはステップb1)およびc1)の双方における溶接は、タック溶接によって実行されてもよい。タック溶接は、当該技術におけるさまざまな技術分野において広く知られている溶接技術である。詳しくは、タック溶接は、先行技術に従うと、一時的な手段として、構成要素を溶接中に適切な位置で位置合わせされ離隔された状態で保持するために使用することができるプロセスである。しかしながら、本発明では、タック溶接を、各部品を別の部品に強固に固定するために使用してもよい。シール剤が後で与えられるので接続経路全体を溶接する必要はなく、いずれにしても明らかに十分な機械的強度が実現される。
【0045】
したがって、タック溶接は、本発明において溶接ステップの主要な部分である機械的安定性を提供する安全な方法である。
【0046】
ステップb)の前に冷却領域に冷却構造が設けられてもよく、または、ステップb)の後であってステップc)の前に冷却構造が冷却領域に装着されてもよい。この実施形態に従うと、冷却器の冷却効率をさらに改善することができる。その主な理由として、冷却流体の影響により冷却することができるベースプレートの表面を大幅に増加できることが挙げられる。
【0047】
たとえば、設けてもよい冷却構造は、ベースプレートに固定された冷却ピンを用いて形成されてもよく、または、ベースプレートの一部であってもよくしたがってベースプレートと一体的に形成されてもよい。
【0048】
この実施形態に従うと、第1のケース部品は、冷却構造を収容するように適合させた開口部を有していてもよい。さらに、第1のケース部品と第2のケース部品との間の距離として、冷却構造を配置するのに十分なスペースが存在するように冷却構造の長さよりも長い距離を選択してもよい。
【0049】
さらに、シール剤は接着剤を含んでいてもよい。この実施形態は、冷却器をパワー半導体デバイスに固定するための、特に確実で有効な手段を可能にする。その理由として、封止剤が、ベースプレートを第1のケース部品に対して、および/または第1のケース部品を第2のケース部品に対して有効にかつ確実に封着するという目的を達成するだけでないことが挙げられる。加えて、封止材料はさらに、ベースプレートを第1のケース部品に、および/または第1のケース部品を第2のケース部品に機械的に固定することを補助することができる。したがって、特にタック溶接が実行される場合、形成される溶接ポイント等の溶接領域の量または面積を特に減じることができ、熱の影響はさらに減じられる。しかしながら、それでもなおこの構成の機械的安定性および信頼性は低下しない。よって、特に有利な相乗効果を得ることができる。
【0050】
さらに、第1のケース部品および第2のケース部品のうちの少なくとも一方は、流体入口および流体出口のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。したがって、この実施形態は、第1のケース部品および第2のケース部品の構成を、流体ベースの冷却器として、非常に効率的で簡易なやり方で使用することを可能にする。この点に関し、上記入口および出口の双方が、第1のケース部品もしくは第2のケース部品に設けられてもよく、または、上記入口および出口のうちの一方が第1のケース部品に設けられ上記入口および出口のうちの他の部分が上記入口および出口のうちの他の部分に設けられてもよい。しかしながら、空間が理由で、上記入口および出口の双方が、一種のキャップともみなし得る第2のケース部品に設けられることが好ましいであろう。
【0051】
上記詳細な説明からわかるように、提案している発明は、特定の実施形態において、3つのシングルハーフブリッジモジュール等のモジュールを、第1のケース部品としての共通の金属フレームに、溶接技術によって組み込み、次に、Oリングおよびねじを使用せずに流体タブのような冷却チャネルを作製するために第2のケース部品としてのカバーを第1のケース部品に溶接することを可能にする。したがって、簡単に冷却器をパワー半導体モジュールに設けることができる特に簡易な構成を提供することができる。
【0052】
加えて、温度の影響を減じることができ、それにより、たとえばモジュールのパワー半導体デバイスに悪影響が及ぶ恐れを減じることができる。
【0053】
この方法のさらに他の利点および技術的特徴については、本構成、図面、および以下の説明を参照されたい。
【0054】
さらに記載されているのは、パワー半導体モジュールおよび冷却器の構成であり、パワー半導体モジュールは、少なくとも1つの電気回路を担持する第1の基板面を有しかつ第1の基板面の反対側に位置する第2の基板面を有する基板を備え、第2の基板面は第1のベースプレート面に接続され、ベースプレートは、その第1のベースプレート面の反対側に位置し冷却器と接触する第2のベースプレート面をさらに備え、第2のベースプレート面に、接続領域によって囲まれた冷却領域が設けられており、接続領域において冷却器の第1のケース部品が第2のベースプレート面に接続されており、第1のケース部品は、冷却領域を収容するための少なくとも1つの開口部を備え、冷却領域に冷却流体を与えるための冷却チャネルが第1のケース部品と第2のケース部品との間に与えられるように、第2のケース部品が第1のケース部品に接続されており、
特徴i)およびii)のうちの少なくとも一方が提供されることを特徴とし、
特徴i)に従い、開口部を完全に取り囲む第1の機械的接続経路に沿い、断続溶接技術によって第1のケース部品がベースプレートに溶接されており、ベースプレートを第1のケース部品に封着するために、開口部を完全に取り囲む第1のシール経路に沿ってシール剤が与えられ、
特徴ii)に従い、冷却チャネルを完全に取り囲む第2の接続経路に沿い、断続溶接技術によって第2のケース部品が第1のケース部品に溶接されており、第1のケース部品を第2のケース部品に封着するために、第2のシール経路の全体に沿ってシール剤が与えられている。
【0055】
このような構成は、先行技術の解決策に勝る重要な利点を提供することができる。さらに、記載されている構成は、インバータを含み得るまたはインバータを形成し得る。さらに、このような構成は、上記方法に従って形成されてもよい。
【0056】
詳細には、第1の機械的接続経路および/または第2の機械的接続経路に沿った溶接は、タック溶接等の断続方式で実行されるので、パワー半導体モジュールに対する、特にパワー半導体デバイスに対する熱の影響を大幅に減じることができる。この構成はこのようにして生産性を改善する。
【0057】
パワー半導体モジュールは、複数のパワー半導体デバイスを含む。このようなパワー半導体デバイスは、一般的には、当該技術において知られているように形成されてもよく、とりわけ、MOSFETおよび/またはIGBTのようなトランジスタまたはスイッチを含み得るものであり、および/または複数の半導体デバイスは非限定的にダイオードを含み得る。パワー半導体デバイスは、それぞれ相互接続されてもよく、したがって、リードフレームのそれぞれの領域と、たとえばその上のパワー半導体デバイスをはんだ付けまたは焼結することにより、ガルバニック接触のように電気的に接触させてもよい。
【0058】
パワー半導体モジュールの、特にパワー半導体デバイスの穏やかな作動条件を可能にするために、パワー半導体デバイスは、ベースプレートによって冷却器に接続され熱的に結合される。したがって、冷却器は、ベースプレートから、したがってパワー半導体デバイスから熱を放散させる役割を果たす。
【0059】
したがって、冷却器の長期にわたり安定して信頼性のある構成を提供することができ、これが安全な作動挙動を可能にする。その理由として、流体ベースの冷却器が効果的な冷却能力を有することが挙げられる。
【0060】
ベースプレートの材料は、選択された溶接技術に適している必要があり、かつ、冷却回路に設置された場合のガルバニック腐食保護のためのニッケルのようなコーティングが不要な表面仕上げを有する必要もある。このような材料の一例として、アルミニウム部分が冷却媒体に接触する銅/アルミニウムベースプレート、または、たとえば溶接領域のみにおいてアルミニウムが多いAlSiCベースプレートを挙げることができる。
【0061】
さらに、パワー半導体モジュールはトランスファー成形されたモジュールであってもよい。本実施形態に従うと、重要で有利な効果を実現することができる。
【0062】
この点に関して、トランスファー成形されたパワー半導体モジュールは、従来のゲルまたは樹脂封止方式の興味深い代案になっており、その理由は、ハウジングが不要なのでコストについて利点があること、パワー半導体デバイスおよびそれぞれの接続の硬質成形低CTE封止を提供することが可能であることによるサイクル信頼性、低湿吸収および蒸気拡散が実現されることによる環境保護、ならびに振動、衝撃および取扱特性や反りの減少にある。
【0063】
パワー半導体モジュールは、ハーフブリッジとも呼ばれる3つのパワー半導体ハーフブリッジモジュールで作られたインバータを形成する3相モジュールであってもよい。また、本実施形態は、とりわけ冷却器への基板の接続が課題である先行技術に係る3相モジュールに関して、記載した利点を特に有効に示し得る。
【0064】
上述のようなインバータを形成する3相モジュールに関しては、以下に注目することができる。
【0065】
3相マシンを駆動する2レベルトラクションインバータでは、6つの機能半導体スイッチが必要である。たとえば、電気自動車用のトラクションインバータに注目すると、先行技術は、共通のベースプレートまたは冷却器に3つの個々の相を統合した6パックモジュールを備えることが多い。この設計の典型的なモジュールは、3相ピンフィンベースプレートに基づくものであり、プラスチックフレームがベースプレートに接着されている。
【0066】
3つの個々の成形モジュールに基づいた3相成形モジュールを、したがって1相当たり1つのハーフブリッジモジュールを、実現することが好ましい。そうすると、これらの成形モジュールを、成形後に冷却器システムに装着する必要がある。
【0067】
上記構成のさらに他の利点および技術的特徴については、本方法、図面、および以下の説明を参照されたい。
【0068】
本発明の上記およびその他の局面は、以下で説明する実施形態から明らかでありこれらの実施形態を参照しながら明らかにされるであろう。実施形態に開示されている個々の特徴は、単独でまたは組み合わせとして本発明のある局面を構成することができる。異なる実施形態の特徴をある実施形態から別の実施形態に引き継ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】パワー半導体モジュールのある実施形態を示す図である。
図2】第1のケース部品のある実施形態を示す図である。
図3】溶接ステップ後にパワー半導体モジュールに固定された第1のケース部品の構成を示す図である。
図4】シールステップ後にパワー半導体モジュールに固定された第1のケース部品の構成を示す図である。
図5】第2のケース部品のある実施形態を示す図である。
図6】溶接ステップ後に第1のケース部品に固定された第2のケース部品の構成を示す図である。
図7】シールステップ後に第1のケース部品に固定された第2のケース部品の構成を示す図である。
図8】冷却構造を有するベースプレートの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
実施形態の説明
図1は、以下でより詳細に示すように、本発明に係る方法を使用することによって冷却器を設ける必要があるパワー半導体モジュール10を示す。
【0071】
パワー半導体モジュール10は基板を備え、基板は、少なくとも1つの電気回路を担持する第1の基板面を有し、かつ第1の基板面の反対側に位置する第2の基板面を有し、第2の基板面は第1のベースプレート面に接続されている。パワー半導体モジュール10はトランスファー成形されたモジュールなので、パワー半導体モジュール10の電気回路は、基板上で焼結されていてもよく図1には示されていないパワー半導体デバイスを含む。このため、電気回路を封止する成形材料16が示されている。しかしながら、電気回路に外側から接触するための端子18が成形材料16から突出するものとして示されている。
【0072】
ベースプレート14は第2のベースプレート面20を備え、第2のベースプレート面20は、冷却器と、特に冷却器筐体と接触するように適合させたものであり、冷却器筐体は、冷却チャネルを含み、したがってベースプレート14に冷却流体を与える。このため、冷却器、より詳細には冷却器筐体は、第2のベースプレート20に接続される。
【0073】
第2のベースプレート面20に、接続領域24によって囲まれた冷却領域22が設けられている。冷却領域22は冷却流体と接触するように適合させたものであり、接続領域24は冷却器筐体に固定されるように適合させたものである。
【0074】
複数の冷却ピン27から形成された冷却構造26が冷却領域22に設けられていることがさらに示されている。これは、図8においてより詳細に示される。
【0075】
このようなパワー半導体モジュール10は、たとえばハーフブリッジモジュールであってもよく、たとえば車両に必要とされることが多い3相インバータの一部であってもよい。
【0076】
冷却器をパワー半導体モジュール10に与えるために、接続領域24において冷却器の第1のケース部品28を第2のベースプレート面20に接続する。冷却器22の作動状態において冷却構造26を有効にするために、第1のケース部品28は、冷却領域22を、したがって冷却構造26を収容し取り囲むための開口部30を備える。
【0077】
このような第1のケース部品28は図2に示されている。第1のケース部品28は3つの開口部30を含み3つの開口部30を3つのハーフブリッジモジュール等の3つのパワー半導体モジュール10を収容するように適合させてもよいことが示されている。さらに、冷却器およびパワー半導体モジュール10の構成を支持体に固定するための孔32が示されている。
【0078】
図3は、第1のステップ、すなわち断続溶接ステップによってパワー半導体モジュール10またはそのベースプレート14に固定された第1のケース部品28の平面図を示す。このステップは、タック溶接プロセスおよび/またはレーザ溶接によって行われてもよい。
【0079】
より詳細には、開口部30を完全に取り囲む第1の機械的接続経路34に沿い、断続溶接技術によって第1のケース部品28がベースプレート14に固定されている様子が示されている。このため、たとえばスポットの形態の溶接領域36が形成されている。
【0080】
図4は、ベースプレート14を第1のケース部品28に封着するために、開口部30を完全に取り囲んでいる第1のシール経路40に沿って接着剤等のシール剤38が設けられていることがわかる、第1のケース部品28の他の図を示す。
【0081】
このような各溶接構造の構成が、シール構造とともに、すべての開口部30、したがってすべてのパワー半導体デバイス10の各々に対応して示されている。
【0082】
冷却器筐体を形成するために、さらに第2のケース部品42が第1のケース部品28に接続される。言い換えると、第1のケース部品28と第2のケース部品42とが冷却器筐体を形成する。図5において、第2のケース部品42が、冷却流体を冷却器を通して案内するための入口および出口の役割を果たし得る2つの開口部44を含むことが示されている。第1のケース部品28および第2のケース部品42は、溶接を強化するために同じ材料から形成されてもよい。
【0083】
より詳細には、図6に示されるように、第1のケース部品28と第2のケース部品42との間に冷却流体とともに冷却領域22が設けられるように、第2のケース部品42が第1のケース部品28に固定されている。これは、冷却チャネルを完全に取り囲む第2の機械的接続経路46に沿い、断続溶接技術により第1のケース部品28に第2のケース部品42を溶接することによって実現される。また、このステップは、タック溶接プロセスおよび/またはレーザ溶接によって実現されてもよい。しかしながら、一般的に、この溶接ステップは、摩擦攪拌接合(friction stir welding)、レーザ溶接、および冷間金属トランスファー(cold transfer)によって実行されてもよく、その理由は、第1のケース部品28をベースプレート14に固定する溶接ステップと比較して、最大温度および機械的応力に関する要件の難易度が低いことにある。
【0084】
再び、上記第1のケース部品28をベースプレート14に固定する溶接ステップに関して、ベースプレート14の材料として、熱的性能、信頼性、耐食性、および溶接性を、最も上手く併せ持つことができるものが選択されてもよい。後者のポイントの関連性が高いであろう。脆い金属間相を回避するためには、溶接界面における、したがって接続領域24における、ベースプレート14の材料もアルミニウムであってもよい。これらの制約すべてを考慮すると、取り得る選択肢は、アルミニウムで被覆された銅プレート、または、溶接が実行される領域、したがって接続領域である領域がアルミニウムを多く含むAlSiCベースプレート14の可能性がある。
【0085】
第1のケース部品28への第2のケース部品42のこの溶接ステップも、たとえばこれもスポットとして形成される溶接領域48を形成する。
【0086】
図7に示されるように、さらに他のステップに従い、第1のケース部品28を第2のケース部品42に封着するために、第2のシール経路52に沿ってシール剤50が与えられる。このステップの実行後、パワー半導体モジュールに冷却器筐体が与えられる。
【0087】
再び図2を参照して、第1のケース部品28は、先に示したように第1のケース部品28を第2のケース部品42に固定した場合に冷却チャネルを形成し得る高位部29を含むことがわかる。この場合、第1のケース部品28は、第2のケース部品42によって閉じられた一種の冷却タブを形成してもよい。
【0088】
要約すると、好ましい実施形態に従い、トランスファー成形および焼結された基板を用いて、たとえば3つの分離したハーフブリッジモジュールに基づく電気自動車のための6パックインバータを製造するための解決策が得られる。これは、溶接技術と接着技術とを組み合わせることで実現される。溶接は、ループ形状の経路に沿った断続的なラインである、および/または、すなわち個々のラインセグメントもしくは単にスポットからなるものであってもよい。このような技術はタック溶接において使用される。タック溶接は、ある部品の装着中に実行される一時的な溶接として使用されることが多い。これは通常、実際の溶接の開始前に、寸法の安定性を保証するために行われる。上記提案されている解決策において、パワー半導体モジュール10としての3つのハーフブリッジモジュールの、第1のケース部品28としての共通金属フレームへの機械的一体化は、2つのステップで行われる。
【0089】
第1のステップに従い、温度を225℃未満に保つことおよび機械的応力を避けることを可能にするレーザ溶接またはその他任意の溶接により、溶接が実行される。このプロセスの目的は、部品を適切に整列させること、および、パワーモジュールベースプレート14とフレームまたは第1のケース部品との間の機械的接合を提供することである。
【0090】
第2のステップに従い、作動流体と温度等の境界条件とに適合する適切な接着剤が、ハーフブリッジベースプレート14と金属カバーとの間の界面に沿って投与される。このプロセスの目的は、接着された部品間に漏れ耐性を提供することである。接着材料の例として、一般的に、シリコーン、エポキシド、ポリイミド、アクリル、およびウレタンがある。
【0091】
次に、同じ2ステッププロセスを繰り返してフレームが接合部を覆うようにするが、相違点は、このような場合は異なる溶接技術を使用できる点であり、その理由は、温度の制約がベースプレートをフレームに接合する場合よりも厳しくないことにある。
【0092】
概して、本発明は、溶接プロセスの良好な機械的安定性という利点をシール剤の高い漏れ耐性と組み合わせる。これにより、溶接のみを使用する場合の溶接不良に起因する漏れを回避することができる。
【0093】
さらに、Oリングおよびねじを回避することにより、特に高い漏れ耐性および容易な製造プロセスを得ることができる。
【0094】
本発明は図面および上記記載において詳細に示され説明されているが、このような図示および説明は、例示または具体例であって限定するものではないとみなされねばならず、本発明は開示されている実施形態に限定されない。開示されている実施形態のその他の変形は、当業者が、クレームされている発明を実施する際に、図面、本開示、および添付の請求項の検討を通して理解および実施することができる。請求項において、「備える(comprising)」という用語は他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外しない。単に特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、そのことがこれらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示唆する訳ではない。請求項におけるいかなる参照符号も範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0095】
参照符号のリスト
10 パワー半導体モジュール
14 ベースプレート
16 成形材料
18 端子
20 第2のベースプレート面
22 冷却領域
24 接続領域
26 冷却構造
27 冷却ピン
28 第1のケース部品
29 高位部
30 開口部
32 孔
34 第1の接続経路
36 溶接領域
38 シール剤
40 第1のシール経路
42 第2のケース部品
44 開口部
46 第2の接続経路
48 溶接領域
50 シール剤
52 第2のシール経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】