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特表2022-534484独特の風味が低減された共噴霧マメ科植物タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(54)【発明の名称】独特の風味が低減された共噴霧マメ科植物タンパク質
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20210101AFI20220725BHJP
   A23J 3/14 20060101ALI20220725BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220725BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20220725BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20220725BHJP
【FI】
A23L11/00
A23J3/14
A23L5/00 M
A23K10/30
A23K20/147
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569898
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 FR2020050925
(87)【国際公開番号】W WO2020240144
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】1905754
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】クーリエ、ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】イベール、マティアス
【テーマコード(参考)】
2B150
4B020
4B035
【Fターム(参考)】
2B150AB04
2B150BC06
2B150BD01
2B150BE04
2B150BE10
2B150CE11
2B150DD01
2B150DD11
2B150DD31
2B150DD56
2B150DD57
4B020LB24
4B020LC01
4B020LC02
4B020LG09
4B020LK05
4B020LK09
4B020LK20
4B020LP03
4B020LP09
4B020LP15
4B020LP20
4B035LC01
4B035LC02
4B035LG20
4B035LG34
4B035LK02
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
(57)【要約】
本発明は、マメ科植物タンパク質の分野に関し、具体的にはかかるタンパク質の官能性の改善に関する。本発明は、特にマメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を共噴霧する方法であって、水性溶媒中で、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を溶解させて混合する工程、得られた水性懸濁液を熱処理する工程、熱処理した水性懸濁液を共噴霧することにより乾燥させる工程、を含む方法に関する。これらの様々な工程を実施するとき、本発明の方法では、相乗効果により、かかるタンパク質に関係するエンドウマメの独特の風味を低減することができる。本発明はまた、マメ科植物タンパク質組成物と、少なくとも1つの香味料を含む共噴霧された組成物、並びにヒト又は動物用食品組成物の調製におけるその使用にも関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を共噴霧する方法であって、以下の
1)水性溶媒中で、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を溶解させて混合する工程、
2)前の工程で得られた前記水性懸濁液を熱処理する工程、
3)熱処理した前記水性懸濁液を共噴霧することにより乾燥させる工程、を含む、方法。
【請求項2】
前記香味料を、前記マメ科植物タンパク質組成物の総乾燥重量に対して0.01乾燥重量%~0.5乾燥重量%(乾燥/乾燥)の量で、優先的には0.05乾燥重量~0.2乾燥重量%(乾燥/乾燥)、更により優先的には0.1乾燥重量%(乾燥/乾燥)の量で、前記マメ科植物タンパク質組成物と溶解及び混合することを特徴とする、請求項1に記載の共噴霧方法。
【請求項3】
前記熱処理工程を100℃~160℃の温度で0.01~10秒間行い、続いてすぐに冷却することを特徴とする、請求項1又は2に記載の共噴霧方法。
【請求項4】
前記マメ科植物タンパク質組成物が、マメ科植物タンパク質単離物、好ましくはエンドウマメタンパク質単離物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の共噴霧方法。
【請求項5】
マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって得られる共噴霧組成物。
【請求項6】
マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料からなることを特徴とする、請求項5に記載の共噴霧組成物。
【請求項7】
ヒト又は動物の食品組成物の調製における、請求項5又は6に記載の共噴霧組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マメ科植物タンパク質、特にマメ科植物タンパク質単離物、更により具体的にはエンドウマメタンパク質単離物の分野に関する。本発明は特に、前述のタンパク質の官能性、特に独特の風味の改善の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの1日当たりのタンパク質必要量は、食物摂取量のうちの12~20%である。これらのタンパク質は、動物由来の製品(肉、魚、卵、乳製品)によっても、植物系の食品(穀物、マメ科の植物、海藻)によっても得られる。
【0003】
しかしながら、先進国では、タンパク質摂取は主に動物由来のタンパク質によりなされる。しかし、数多くの研究により、動物由来のタンパク質を過剰摂取し、植物性タンパク質の摂取が不足することは、がん及び心血管疾患を増加させる原因の1つであることが示されている。
【0004】
更に、動物性タンパク質は、特に乳又は卵からのタンパク質に関してアレルゲン性の点、及び集約農業の有害な影響に関連して環境上の点の両方で、多くの欠点を有する。
【0005】
したがって、有益な栄養特性及び機能特性を有するが、動物由来の化合物の欠点は有しない、植物由来の化合物に対し、製造業者からの需要が高まっている。
【0006】
大豆は、動物性タンパク質に代わる主要な植物である。しかしながら、大豆の使用は、特定の欠点を呈する。大豆種子の由来は、多くの場合、遺伝子組み換え農産物(GMO)ではなく、そのタンパク質の産生は、溶媒を使用する脱油工程を用いて進められる。
【0007】
1970年代以降、特に欧州、主にフランスでは、動物及びヒトの食物摂取のための動物タンパク質に対する代替的なタンパク質資源として、特にエンドウマメを含む豆類植物の開発が劇的に進められている。用語「エンドウマメ」は、本明細書においてその最も広く許容される使用法により考慮され、特に、その品種の通常の使用目的(ヒトの食品、動物用飼料及び/又は他の用途)を問わず、「丸エンドウマメ」の全ての野生品種、並びに「丸エンドウマメ」及び「しわのあるエンドウマメ」の全ての変異品種を含む。これらの種子は、非GMOであり、かつ溶媒を使用する脱油工程を必要としない。
【0008】
エンドウマメは約27重量%のタンパク質を含有する。エンドウマメタンパク質、主にエンドウマメグロブリンは、長年にわたって工業的に抽出及び利用されてきた。エンドウマメタンパク質を抽出するための方法の一例として、欧州特許第1400537号に言及することができる。このプロセスでは、エンドウ粉を得るために、種子を水の非存在下で粉砕する(「乾式製粉」と呼ばれるプロセス)。次いで、この粉を水に懸濁させて、タンパク質を抽出する。
【0009】
マメ科植物タンパク質、特にエンドウマメタンパク質には、多くの場合、官能特性が変わりやすいという問題がある。実際、それらは、それらが消費されるときに、「エンドウマメ感(pea)」、「豆臭さ(beany)」、又は「青臭さ(vegetable)」とも言われる独特の風味を与えることが特に知られており、それはある種の食品において不利である可能性がある。
【0010】
この独特の風味は、リポキシゲナーゼによるマメ科植物種子内部の脂質の酸化によって引き起こされ、ヘキサナールなどのアルデヒド及びケトン様の分子の出現を生じる。
【0011】
更に、マメ科植物タンパク質はまた、多くの場合、苦味又は苦さを与える原因となる。この味は、主にサポニンの存在によって生じると思われている。
【0012】
これらのマメ科植物タンパク質の使用者はこれらの独特の風味の問題を認識しており、主に香味料を使用することによる配合の方策を開発してきた。
【0013】
引用できる一例としてはRHODIAの国際公開第2019/048564号の特許出願があり、この出願は、バニラ香味料の使用によって高タンパク質飲料又はクリームなどの最終食品中の苦味を低減することを教示している。しかしながら、この解決策は、製造業者が配合の調製に、タンパク質に加えて更に香味料を添加しなければならず、これにより作業がより複雑となり、また、配合自体が、全体として特に香味の添加ではなく、マスキング剤として機能する配合であることから、部分的にしか機能しない。
【0014】
実際、示された配合では、スクラロース、高甘味度甘味料又はフルクトースなどの非タンパク質化合物が20%~50%である。この配合は、独特の風味の感知を制限することによって機能するが、高カロリー摂取の一因となり、かつ最終製品のラベルで言及する義務を生じさせる。
【0015】
国際公開第2019/048804号には、改善された官能特性を有するマメ科植物タンパク質をベースとした食品、例えば、レディ・トゥ・ドリンク飲料を得るための別の解決策が記載されている。この解決策は、選択された化合物であるクエン酸ナトリウムを使用して食品を製造する特定の方法に基づいている。この場合も、この解決策では製造業者はこの特定の化合物を使用しなければならない。
【0016】
したがって、その独特の風味が改善され、特にその「エンドウマメ感」の特徴が低減され、また、過度に煩雑でなく、及び/又は複雑な配合がなく、簡単かつすぐに使用できる新規なマメ科植物タンパク質組成物、特にマメ科植物タンパク質単離物を提案することを目的とする。
【0017】
Lanらの論文「Solid dispersion-based spray-drying improves solbility and mitigates beany flavor of pea protein isolate」(Food Chemistry,2018)には、この件に関するいくつかの最近の研究が示されている。Lanのチームは、エンドウマメタンパク質とグアーガム又はマルトデキストリンの水性分散液の噴霧乾燥からなる「固体分散体噴霧」と呼ばれる方法を開発した。マルトデキストリン又はグアーガムの最小含有量10%(乾燥/乾燥)でもって得られたエンドウマメタンパク質単離物は、その揮発性化合物の含有量がより低いために、「エンドウマメ」の独特の風味が少ない。文書仏国特許出願公開第2942585(A1)号には、エンドウマメタンパク質と可溶性植物繊維の造粒組成物が記載されており、ここでの植物繊維もまたマルトデキストリンである。
【0018】
それでもなお、ここでのマルトデキストリンの含有量もまた高すぎて、エンドウマメタンパク質単離物に、非タンパク質由来の化合物をサプリメントとしてそのように多量に有することは望ましくない。本発明に例示するように、この含有量を低下させると、前述のマスキング効果が消失する。更に、マルトデキストリンはほとんど無味無臭であって香味料の定義を満たさず、このことは、香味料の規制リストに含まれていないという事実によって確認される。
【0019】
他の方策は、原材料を加工することから構成されており、例えば、Jiangらの文書、Faba bean flavor and technological property improvement by thermal pre-treatment,LWT-Food Science and Technology,68(2016),295~305がある。この文書は、ソラマメタンパク質の特性を保持するための特定のマイクロ波処理の使用を教示している。しかしながら、このタイプのマイクロ波処理は、工業規模ではまだ開発されていない。
【0020】
文書国際公開第03/082026(A1)号には、独特の風味がなく吸水率の低い多糖類を更に含むタンパク質単離物を生産する方法が記載されており、タンパク質を多糖類でコーティングすることによって単離物にこれら2つの特性が提供される。
【0021】
したがって、その独特の風味がエンドウマメの独特の風味を低減することによって改善され、過度に煩雑でなく、及び/又は複雑な配合がなく、簡単かつすぐに使用でき、同時に使用される非タンパク質由来の化合物の量も最小化する、従来の組成物の欠点を有しない新規なマメ科植物タンパク質組成物、特にマメ科植物タンパク質単離物を開発する必要性がある。
【0022】
特定の製造方法を使用して独特の風味が改善されたエンドウマメタンパク質組成物が、国際公開第2019/053387(A1)号に記載されている。
【0023】
多くの研究の後に、本出願人は、この目標が、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を共噴霧する特定の方法を実施することによって達成され得ることを明らかにした。
【発明の概要】
【0024】
本発明の第1の態様によれば、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を共噴霧する方法を提案し、方法は以下の
1)水性溶媒中で、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を溶解させて混合する工程、
2)前の工程で得られた水性懸濁液を熱処理する工程、
3)熱処理した水性懸濁液を共噴霧することにより乾燥させる工程、を含む。
【0025】
第2の態様によれば、マメ科植物タンパク質組成物、優先的にはマメ科植物タンパク質単離物と少なくとも1つの香味料を含む共噴霧組成物を提案し、ここで、当該組成物は本発明の方法に従って得ることができる。
【0026】
本発明の最後の態様によれば、この共噴霧組成物のヒト又は動物の食品を目的とした組成物の調製における使用を提案する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を共噴霧する方法に関し、方法は以下の
1)水性溶媒中で、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を溶解させて混合する工程、
2)前の工程で得られた水性懸濁液を熱処理する工程、
3)熱処理した水性懸濁液を共噴霧することにより乾燥させる工程、を含む。
【0028】
全く驚くべき方式で、マメ科植物タンパク質組成物を少なくとも1つの香味料と混合し、次いで熱処理工程を行い、続いて共噴霧するという本発明の方法によって、当該マメ科植物組成物の独特の風味を低減することを可能にする。
【0029】
マメ科植物、特にエンドウマメタンパク質組成物を使用する場合のエンドウマメの独特の風味のこの低減は、3つの特徴の組合せ、すなわち、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料の混合、熱処理工程及び共噴霧工程の相乗的な様式で得られる。実際、これらの3つの特徴の組合せによって、これらの特徴を単独で行って得られる低減の合計よりも、マメ科植物、特にエンドウマメの独特の風味をより大きく低減することができる。
【0030】
本発明において、「共噴霧」とは、マメ科植物タンパク質組成物を香味料と一緒に噴霧することを意味すると理解される。言い換えれば、マメ科植物タンパク質組成物と香味料は噴霧の前に同じ溶液中に存在する。
【0031】
本発明において、用語「タンパク質組成物」とは、抽出及び精製によって得られる組成物を意味し、当該組成物が、タンパク質、ペプチド結合を介して一緒に連結されたアミノ酸残基の配列からなる1つ以上のポリペプチド鎖から形成された高分子を含むものとして理解される。エンドウマメタンパク質の特定の文脈において、本発明は、より具体的にはグロブリン(エンドウマメタンパク質の約50~60%)に関する。エンドウマメグロブリンは、主にレグミン、ビシリン及びコンビシリンの3種類のサブファミリーに分類される。
【0032】
本発明において、「マメ科植物」とは、マメ目の双子葉植物の科を意味すると理解される。マメ科は、種の数がラン科及びキク科に次いで3番目に多い顕花植物科である。マメ科には約765属、19,500種超が含まれる。ダイズ、莢豆(beans)、エンドウ、ヒヨコマメ、ソラマメ(faba bean)、ピーナッツ、栽培レンズマメ、栽培アルファルファ、様々なクローバー、ソラマメ(broad bean)、イナゴマメ及び甘草を含む、いくつかのマメ科の植物は、重要な作物植物である。
【0033】
本発明において、「香味料」とは、一緒になって「独特の風味」として知られるものを形成する味及び臭いの知覚を変えることができる任意の化合物を意味すると理解される。規則1334/20082によって定義される欧州規制では、香味料は、「そのようなものとして消費されることを意図していない製品であり、臭い及び/又は味を付与又は改変するために食品に添加されるもの」と理解される(EC規則1334/2008の条項3.a)。本発明において有用な香味料は、マメ科植物タンパク質組成物の「エンドウマメ」の特徴を低減する能力を有する。
【0034】
香味料は、次の成分、すなわち香味物質、香味調製物、香喫味料、熱プロセス香味料、香味前駆体、及びその他の香味料に由来するか、又はそれらからなる。
【0035】
本発明の文脈において、香味料とは、優先的には香味物質を意味すると理解される。香味物質とは、「香味特性を有する定義された化学物質」(EC規則1334/2008の条項3.bに定義される)である。
【0036】
天然香味物質とは、「野菜、動物、又は微生物由来の材料から適切な物理的、酵素的又は微生物処理によって得られた、未加工の状態のもの、又は添付書類IIに列記された従来の食品調製プロセスの1つ以上によってヒトの消費のために加工された後のもののいずれか」(EC規則1334/2008の条項3.c)である。
【0037】
天然香味物質は、天然に存在し、天然で同定されている物質に対応する。香味物質はまた、「未加工」の天然素材以外の天然素材に由来してもよく、したがって、分子を合成してそれを再現した物質であってもよい。天然で同定されていない他の分子もまた、天然分子よりも強力な味を有し得る。
【0038】
本発明の方法は、単一の香味料又は香味料の混合物である少なくとも1つの香味料を使用する。
【0039】
したがって、本発明の方法は、水性溶媒中で、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を溶解させて混合する工程1)を含む。
【0040】
マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料の混合は、2つの水性溶媒において別々に行ってその後に混合しても、水性溶媒に一緒に分散させる前に行ってもよい。
【0041】
1つの特定の実施形態によれば、水性溶媒は、好ましくは水である。
【0042】
溶解温度は優先的には10℃~40℃、優先的には20℃~30℃である。溶解のpHは好ましくは4~9、更により優先的には6~8、更により優先的には7である。
【0043】
溶解時間は均質な溶液を得るために選択される。溶解時間は、好ましくは1~60分、優先的には2~30分、更により優先的には3~10分で選択される。
【0044】
少なくとも1つの香味料を、マメ科植物タンパク質組成物の総乾燥重量に対して5重量%未満(乾燥/乾燥)、又は、更には1重量%未満(乾燥/乾燥)、具体的には0.01~1重量%(乾燥/乾燥)の量で、マメ科植物タンパク質組成物に混合して溶解させる。有利には、少なくとも1つの香味料を、0.01~0.5重量%(乾燥/乾燥)の量で、優先的には0.05~0.2重量%(乾燥/乾燥)、更により優先的には0.1重量%(乾燥/乾燥)の量で、マメ科植物タンパク質組成物に混合して溶解させる。
【0045】
これらの少量の香味料の使用は、マメ科植物タンパク質組成物の総乾燥重量に対して5重量%未満(乾燥/乾燥)、更には1重量%未満(乾燥/乾燥)、具体的には0.01~1重量%(乾燥/乾燥)、例えば0.01~0.5重量%(乾燥/乾燥)、優先的には0.05~0.2重量%(乾燥/乾燥)、更により優先的には0.1重量%(乾燥/乾燥)の量に混合物中の量を維持して、方法の最後に粉末中にサプリメントとして存在する非タンパク質由来の化合物の割合を好ましく抑えることに有利であることから、特に興味深い。
【0046】
香味料は、食品業界で入手可能な様々な香味料のリストから選択される。この1つは、バニラ、イチゴ、又はカラメル香味料のリストから優先的に選択される。優先的には、バニラ香味料が好ましい。
【0047】
香味料は、脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式及び/又はテルペン化合物を含み得る。脂肪族化合物の中では、それらは、炭化水素、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコール、エステル、酸、アミン、スルフィド、チオール、及びチオエステルから選択することができる。香味料としてはまた、環式誘導体(シクロテン類)及び芳香族(フェノール類)が挙げられる。複素環は、ピラジン類、ラクトン類、オキサゾール類、チアゾール類、ピロール類、ピリジン類、ピラン類、ピリミジン類、及びそれらの縮合誘導体であってもよい。テルペンは、モノテルペン及びセスキテルペンであってもよい。好ましくは、香味料は、芳香族化合物及び複素環類から選択される。
【0048】
香味料はまた、例えば、Lesaffreによって販売されているSpringer(登録商標)Mask101のような食品業界で入手可能な様々な風味マスキング剤のリストから優先的に選択されてもよい。風味マスキング化合物は、望ましくない特徴を遮蔽、マスキング、又は改変するその特異な能力によって選択される香味料であることが知られている。したがって、上述の香味料はまた、これらの機能を有してもよい。
【0049】
風味マスキング剤は、脂肪酸、カルボニル官能基を含む化合物、スルフィドを含む化合物、スイートブラウン香味料(sweet brown flavors)、エステル化合物、ラクトン化合物又はジュース派生物、好ましくはスイートブラウン香味料から選択されてもよい。脂肪酸は、次の酸、すなわち、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、オクタン酸、9-デセン酸、及びヘキサン酸から選択されてもよい。カルボニル官能基を含む化合物は、次の化合物、すなわち、アセトイン、アセチルプロピオニル、2-ヘプタノン、2-ノナノン、2-ウンデカノン、及びシス-4-ヘプテナールから選択されてもよい。スルフィドを含む化合物は、次の化合物、すなわち、ジメチルスルフィド及びジメチルトリスルフィドから選択されてもよい。スイートブラウン香味料は、次の化合物、すなわち、マルトール、バニリン、シクロペンテノロン、フラネオール、バニラ抽出物、バニラ誘導体、カラメル抽出物、及びコンデンスミルク誘導体から選択されてもよい。エステル化合物は、次の化合物、すなわち、カプリン酸エチル、ドデカン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、及びオレイン酸エチルから選択されてもよい。ラクトン化合物は、次の化合物、すなわち、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、γ-ウンデカラクトン、及びマソイアラクトンから選択されてもよい。ジュース派生物は、次の果汁派生物、すなわち、イチゴ、キュウリ、リンゴ、チェリー、キウイ、及びアプリコットから選択されてもよい。好ましくは、風味マスキング剤はスイートブラウン香味料を含み、それはエンドウマメタンパク質の独特の風味のマスキングに特に効果的である。
【0050】
優先的には、本発明に有用な香味料は、元のマメ科植物タンパク質組成物には見られない。
【0051】
特定の実施形態によれば、マメ科植物タンパク質組成物はタンパク質単離物である。任意の市販のマメ科植物タンパク質単離物は、本発明の方法を実行するための基準には十分である。マメ科植物タンパク質単離物はまた、文書欧州特許第1 909 593号又は国際公開第2015/071499号に記載されているものなどの従来技術の既知の方法によって得ることができる。
【0052】
好ましい実施形態によれば、マメ科植物タンパク質組成物は、エンドウマメ、ルパンマメ、及びソラマメから選択されるマメ科植物タンパク質単離物である。好ましくは、マメ科植物タンパク質組成物はエンドウマメタンパク質単離物である。
【0053】
用語「エンドウマメ」は、本明細書においてその最も広く許容される使用法により考慮され、特に、その品種の通常の使用目的(ヒトの食品、動物用飼料及び/又は他の用途)に関わらず、「丸エンドウマメ」の全ての野生品種、並びに「丸エンドウマメ」及び「しわのあるエンドウマメ」の全ての変異品種を含む。
【0054】
本出願において、用語「エンドウマメ」は、エンドウ属、より具体的には、サティバム(sativum)及びエスティバム(aestivum)種に属するエンドウマメ品種を含む。
【0055】
優先的には、本発明のマメ科植物タンパク質組成物は、その組成物の総固形分に対して、80重量%超、優先的には85重量%超、更により優先的には90重量%超の総タンパク質含有量を有する。
【0056】
総タンパク質含有量は、当業者に公知の任意の技術によって測定される。好ましくは、全窒素(%/粗製品)を測定して、その結果に係数6.25を乗算する。この方法はケルダール法である。植物タンパク質の分野におけるこの周知の方法論は、タンパク質が平均で16%の窒素を含有するという観察に基づく。
【0057】
優先的には、本発明のマメ科植物タンパク質組成物は、その組成物の総重量に対して、80重量%超、優先的には85重量%超、更により優先的には90重量%超の固形分含有量を有する。
【0058】
含水量を測定するための任意の方法を使用してこれらの固形分を定量することができ、乾燥による水の減少を評価する重量法が好ましい。
【0059】
この重量法は、既知の重量の試料の既知の量を加熱して蒸発した水の量を測定することで構成される。プロトコルは、以下の通りである。
-最初に試料を秤量して、質量m1をグラム単位で測定し、
-水が完全に蒸発して試料の質量が安定するまで、試料を加熱チャンバ内に置いて水を蒸発させる。好ましくは、温度は、大気圧又は約1013hPaで105℃であり、
-最終試料を秤量して、質量m2をグラム単位で測定する。
次いで、次の式、(m2/m1)×100を用いて固形分を決定する。
【0060】
本発明の方法はまた、工程1)で得られた水性懸濁液を熱処理する工程2)を含む。
【0061】
熱処理工程は、有利には、100℃~160℃の温度で0.01~10秒、優先的には5~8秒行って、続いてすぐに冷却する。
【0062】
これらの温度を得るための当業者に公知の任意の機器を使用することができる。しかしながら、蒸気噴射ノズル又はプレート式熱交換器の使用が好ましい。
【0063】
本発明の方法は、熱処理した水性懸濁液を噴霧乾燥する工程3)を含む。
【0064】
特定の実施形態によれば、熱処理した水性懸濁液の噴霧は、80%超、優先的には90%超の固形分が得られるように行われる。
【0065】
本発明において、噴霧とは、それを熱風の流れに通すことによって、液体を脱水して粉末の形態にする任意の方法を意味すると理解される。液体を、優先的には、ノズルシステムを使用して微細な液滴に分散することによって、熱風中に分散させる。
【0066】
本発明の方法の工程3)によれば、優先的には、乾燥生成物を入力内に再循環させて造粒し、したがって粒径を増加させることができる、いわゆる「マルチエフェクト」又は「マルチステージ」アトマイザーシステムで噴霧を行う。
【0067】
アトマイザーの空気入口温度は、優先的には180℃~240℃であり、優先的には190℃~220℃、更により優先的には200℃~210℃である。
【0068】
アトマイザーの空気出口温度は、優先的には60℃~110℃であり、優先的には70℃~100℃、更により優先的には80℃~90℃である。
【0069】
この工程3)の後に粉末が得られ、それは香味料と共噴霧されたタンパク質組成物に対応する。
【0070】
特定の実施形態によれば、本発明の方法によって得られる組成物は、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料からなる。言い換えれば、この実施形態によれば、本発明の方法は、水性溶媒に加えて、1つのマメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料のみを使用する。
【0071】
この特定の実施形態の変形例によれば、本発明の方法は以下の
1)水性溶媒中で、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を溶解させて混合する工程、
2)前の工程で得られた水性懸濁液を熱処理する工程、
3)熱処理した水性懸濁液を共噴霧することにより乾燥させる工程、からなる。
【0072】
この特定の実施形態によれば、工程3)の後に回収された粉末は、マメ科植物タンパク質組成物と香味料からなる。したがって、マルトデキストリン及び/又はグアーガムなど何ら他の化合物を含まない。
【0073】
上述のように、本発明の方法は、マメ科植物の独特の風味、特にエンドウマメの独特の風味を低減することによって、マメ科植物タンパク質組成物の官能特性を改善することができるため、特に有益である。
【0074】
マメ科植物、特にエンドウ豆の独特の風味のこの低減は、3つの特徴、すなわち、マメ科植物タンパク質組成物中への少なくとも1つの香味料の混合、続く熱処理工程及び共噴霧工程の組合せによって相乗的な様式で得られる。実際、これらの3つの特徴の組合せによって、これらの特徴を単独で行って得られる低減の合計よりも、マメ科植物、特にエンドウマメの独特の風味をより大きく低減することができる。
【0075】
このように、本出願人は、食品の調製中に容易かつ直接使用することができる、マメ科植物の独特の風味が低減されたマメ科植物タンパク質組成物、特にエンドウマメの独特の風味が低減されたエンドウマメ単離物を提供するための革新的な方法を開発した。有益なことに、これにより、マメ科植物由来の植物性タンパク質が一般に有する不利な点を低減しながら、動物性タンパク質の一部を置き換えることができる。
【0076】
本発明の別の態様によれば、マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を含む共噴霧組成物を提案する。
【0077】
マメ科植物タンパク質組成物と香味料は先に定義された通りである。
【0078】
マメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を含む共噴霧組成物は、上記の方法に従って得ることができる。
【0079】
本発明の組成物は、エンドウマメの独特の風味が低減され、したがって、それが組み込まれた食品の官能特性を改善することができ、したがって、当該製品は消費者の口の中でより無味無臭であることから、有益である。
【0080】
有益なことに、本発明の共噴霧組成物は特に、このタイプのタンパク質を使用する欠点を低減しながら、植物性タンパク質で食品組成物中の動物性タンパク質の部分を置き換えることができる。
【0081】
本発明の最後の態様によれば、ヒト又は動物の食品組成物の調製における先に定義されたマメ科植物タンパク質組成物と少なくとも1つの香味料を含む共噴霧組成物の使用を提案する。
【0082】
ヒトの食品を意図した組成物における本発明の使用は、それが添加されたもののエンドウマメの独特の風味を低減し、したがって消費者によって知覚される官能的感覚を改善することができるため、有益である。
【0083】
本発明は、以下の非限定的実施例によって更に良好に理解されるであろう。
【実施例
【0084】
実施例1:本発明によるマメ科植物タンパク質組成物と香味料の共噴霧のための方法の実行。
【0085】
この実施例では、以下の製品を使用する。
-マメ科植物タンパク質組成物:Roquette Freresにより製造及び販売されているNutralys(登録商標)S85Fエンドウマメタンパク質単離物。
-香味料:バニリン系風味マスキング剤。
【0086】
10%固形分を含む2つの混合物を、下に記載の比率で20℃で蒸留水を用いて生成する。
-混合物A(対照):100%のNutralys(登録商標)S85F。
-混合物B:99.9%のNutralys(登録商標)及び0.1%の香味料。
【0087】
2つの混合物をpH7で30分間撹拌する。
【0088】
次いで、混合物A及びBを、140℃で10秒間熱処理工程を行う。混合物Bの一部にはこの熱処理工程を行わず、混合物B’を構成する。
【0089】
次いで、混合物A、B、及びB’を、195℃の空気入口温度及び90℃の空気出口温度の、単動式NUBILOSA噴霧乾燥機タイプLTC-Qで噴霧する。このようにして得られた粉末A、B、及びB’を、官能試験のために回収する。
【0090】
得られた異なる粉末の官能試験を、パネルの助けを借りて、以下のプロトコルに従って行う。
【0091】
このパネルは、2~4年のトレーニングを受けた30人からなる。異なる粉末の性能を、感度、一致、及び再現性の観点から頻繁に検証する。
【0092】
食味検査のマトリックスは、液浸ミキサーを使用して均質化したEvian(登録商標)水中4重量%のそれぞれの粉末の懸濁液からなり、下に列記する。
-マトリックス1:Nutralys(登録商標)
-マトリックス2:Nutralys(登録商標)+0.1重量%の香味料
-マトリックス3:粉末A
-マトリックス4:粉末B’
-マトリックス5:粉末B
【0093】
食味検査の条件は次の通りであり、すなわち、個々のストール、白色の壁、静かな雰囲気、赤い照明、昼前、3桁でコードされた製品、ランダムな順序での提示、口腔を洗う/すすぐためのリンゴ及び/又は水の使用である。
【0094】
使用する方法論は、「ブロックプロファイリング」と呼ばれる。この方法は定量的記述分析(QDA)と称され、パネリストは、各製品(マトリックス)を強度スケール(0~10)で、例えば、味、独特の風味、又は特定の特徴に対応する様々な指標についてスコアリングする。
【0095】
「C」として特定される対照は常に最初に提示され、また、2つのセッションのうちの1つで盲検化される。
【0096】
パネリストは、ブロックで食味検査を行い、彼らは、第1ブロックのそれぞれの製品を(「C」から始めて)個々に評価し(指標:ノーズクリップをしての塩味、苦み、渋み、砂っぽさ)、次いで、彼らは、第2ブロックの全ての製品を分析する(指標:エンドウマメ、だし汁、クルミ、アーモンド)。最後に、彼らは、第3ブロックで検査を繰り返す(指標:ジャガイモ、穀物)。製品を、10回の評価に達するまで複数のセッションで評価する。次いで、これらの10回の評価の算術平均を、各指標について計算する。
【0097】
結果を、エンドウマメの独特の風味及び塩味のテースティングについて下の表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
マトリックス1のNutralys(登録商標)S85F及びマトリックス2のNutralys(登録商標)S85Fと香味料との混合物は加熱と噴霧をせず、それぞれ対照及び比較としての役目を果たした。
【0100】
エンドウマメの独特の風味について、表2の結果は、エンドウマメタンパク質単離物への単なる香味料の添加(マトリックス2)は、対照と比較して、エンドウマメの独特の風味をわずかに低減させることを示している。マトリックス3から、エンドウマメタンパク質単離物単独の噴霧は、対照と比較してエンドウマメの独特の風味を低減し、この低減がマトリックス2で観察されたものと同等であることも観察される。
【0101】
逆に、マトリックス4の結果は、エンドウマメタンパク質単離物と香味料との共噴霧を行っても、エンドウマメの独特の風味の低減につながらないことを示している。反対に、後者は、対照と比較した場合、更に大きい。したがって、エンドウマメタンパク質単離物+香味料の混合物に対して共噴霧のみを行うと、エンドウマメの独特の風味の望ましくない増強につながる。
【0102】
一方、エンドウマメタンパク質単離物と香味料との共噴霧の前に熱処理工程を行うことにより(マトリックス5)、エンドウマメの独特の風味が、対照と比較して約16%低減され、またエンドウマメタンパク質単離物と香味料の混合物の共噴霧のみの実施(マトリックス4)と比較して約22%低減される。大変驚くべきことに、この低減は、香味料を添加して共噴霧を行わなかった場合(マトリックス2)、又はエンドウマメタンパク質単離物単独で噴霧した場合(マトリックス3)で観察されたものよりも更に大きい。
【0103】
これらの結果は、エンドウマメ単離物の独特の風味の低減に対する本発明の香味料の添加、熱処理及び共噴霧の工程の実施の相乗効果を明確に実証している。
【0104】
塩味に関しては、結果は、エンドウマメタンパク質単離物への香味料の添加(マトリックス2)によりこの味が増強されることを示している。マトリックス3からはまた、エンドウマメタンパク質単離物単独の噴霧は、対照と比較してこの塩味を低減することも観察される。
【0105】
同様に、マトリックス4の結果は、エンドウマメタンパク質単離物と香味料の共噴霧を行うことにより、塩味が増強されることを示している。
【0106】
一方、非常に驚くべきことに、エンドウマメタンパク質単離物と香味料の共噴霧の前に熱処理工程を行うことにより(マトリックス5)、甘さが、対照と比較して約7%低減され、エンドウマメタンパク質単離物と香味料の共噴霧のみの実施(マトリックス4)と比較して約17%低減される。
【0107】
これらの結果は、エンドウマメ単離物の塩味の低減に対する本発明の香味料の添加、熱処理及び共噴霧の工程の実施の相乗効果を明確に実証している。
【0108】
結論として、本発明の共噴霧方法は、エンドウマメの独特の風味及び塩味を低減することによって、タンパク質単離物、特にエンドウマメタンパク質単離物の官能性を改善することができる。
【0109】
比較実施例2:マメ科植物タンパク質組成物とマルトデキストリンの共噴霧のための方法の実行。
【0110】
この実施例は、Lanらの論文「Solid dispersion-based spray-drying improves solubility and mitigates beany flavor of pea protein isolate」(Food Chemistry、2018)に記載されたマルトデキストリンをエンドウマメタンパク質分離物と共噴霧する効果に焦点をあてることを目的とする。更に、Lanらとは違って、得られた粉末を官能性について試験する。
【0111】
この例では、以下の製品を使用する。
-エンドウマメタンパク質単離物:Roquette Freresによって製造及び販売されているNutralys(登録商標)S85F製品。
-エンドウマメマルトデキストリン:同様にRoquette Freresによって製造及び販売されているD.E.(デキストロース当量)が17のKLEPTOSE(登録商標)LINECAPS製品。
【0112】
10%固形分を含む2つの混合物を、以下に記載の比率で20℃で蒸留水を用いて生成する。
-混合物1:100%Nutralys(登録商標)S85F、
-混合物2:95%のNutralys(登録商標)S85F及び5%のエンドウマメマルトデキストリン。
【0113】
2つの混合物をpH7で少なくとも30分間撹拌する。
【0114】
次いで、混合物を、140℃で10秒間熱処理した後、195℃の空気入口温度及び90℃の空気出口温度のNUBILOSA噴霧乾燥機タイプLTC-Qで噴霧した。
【0115】
混合物1及び2からそれぞれ得られた粉末1及び2を官能試験のために回収する。
【0116】
官能試験は実施例1と同じプロトコルに従って実施する。
【0117】
したがって、食味検査のマトリックスは同様に、液浸ミキサーを使用して均質化されたEvian(登録商標)水中4重量%のそれぞれの粉末の懸濁液からなる。
【0118】
パネルによる官能性試験の結果を下の表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
Lanらの論文において、マルトデキストリンは、混合物中に10重量%(乾燥/乾燥)の濃度で存在する。
【0121】
表2のマトリックス2の結果は、5重量%(乾燥/乾燥)というより少ない量のマルトデキストリンでは、先に熱処理工程を行っても、共噴霧により対照と比較してエンドウマメの独特の風味が低減されないことを示している。反対に、後者では更に約16%増強されている。
【0122】
同じ結論が苦味でも得られる。
【0123】
したがって、結果は、Lanらの記載よりも低い濃度では、エンドウマメタンパク質単離物とマルトデキストリンとの共噴霧によるエンドウマメの独特の風味の低減に対する効果は観察されないことを示している。
【0124】
これらの結果は、本発明の方法が、特に、エンドウマメタンパク質単離物の独特の風味、特にエンドウマメの独特の風味を低減することによって、官能特性を改善するために特に有益であるという事実を強化している。
【0125】
先の香味料の代わりに他の香味料を使用して他の試験も行った。この方法を特にマルトール系香味料で実施したが、特性は等しく改善される。また、Cleartaste香味料(MycoTechnology Inc)及びVanifolia(Solvay)を用いても試験したが、各試験においてもまた、これらの特性は改善される。
【国際調査報告】