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特表2022-534492乳化重合ゴム用の酸化防止剤ブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(54)【発明の名称】乳化重合ゴム用の酸化防止剤ブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/02 20060101AFI20220725BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20220725BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20220725BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
C08L21/02
C08K5/13
C08K5/17
C08K5/524
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570261
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 US2020034224
(87)【国際公開番号】W WO2020242941
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】1907363.4
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521514118
【氏名又は名称】エスアイ グループ スイッツァランド (シーエイチエイエイ) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒル ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ジョーイ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC01W
4J002AC031
4J002AC03W
4J002AC071
4J002AC07W
4J002AC081
4J002AC08W
4J002AC091
4J002AC09W
4J002EJ028
4J002EJ038
4J002EN077
4J002EW066
4J002FD076
4J002FD077
4J002FD078
4J002GJ02
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は安定化組成物に関し、特にゴム及び/又はブタジエン系エラストマーなどのエラストマー材料を安定化させるのに使用することができる安定化組成物に関する。この安定化組成物は、少なくとも1つのホスファイト酸化防止剤を含む第1の安定化成分;少なくとも1つのアミン酸化防止剤を含む第2の安定化成分;及び少なくとも1つのフェノール酸化防止剤を含む第3の安定化成分を含む。エラストマー材料を安定化するための安定化組成物の使用、エラストマー材料及び上記安定化組成物を含む安定化された組成物、安定化組成物を含む実用品もここで開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つのホスファイト酸化防止剤を含む第1の安定化成分;
b.少なくとも1つのアミン酸化防止剤を含む第2の安定化成分;及び
c.少なくとも1つのフェノール酸化防止剤を含む第3の安定化成分、
を含むエラストマー用安定化組成物。
【請求項2】
エラストマーに添加された場合に、100℃、6日間の熱老化期間にわたって、(ASTM D1646に従って測定される)前記エラストマーのムーニー粘度が、いずれのアミン成分をも含まない同じ安定化組成物が同等のw/w量で添加されている同じエラストマーよりも変動しない、請求項1に記載の安定化組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの硫黄含有酸化防止剤を含む第4の安定化成分を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の安定化組成物。
【請求項4】
前記フェノール酸化防止剤が、ヒンダードフェノール酸化防止剤を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項5】
前記フェノール酸化防止剤が、前記安定化組成物中に、前記安定化組成物の約5から約70質量%、前記安定化組成物の約10から約60質量%、前記安定化組成物の約15から約55質量%、前記安定化組成物の約20から約50質量%、又は前記安定化組成物の約20から約40質量%の量で存在する、請求項1から4のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項6】
前記ホスファイト酸化防止剤がトリアリールホスファイトを含み、トリフェニルホスファイトを含んでいてもよく;及び/又は
前記ホスファイト酸化防止剤がノニルフェニルを有さない酸化防止剤である、請求項1から5のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項7】
前記ホスファイト酸化防止剤が前記安定化組成物の約40質量%超の量で存在し;及び/或いは
前記ホスファイト酸化防止剤が前記安定化組成物の約40質量%超から、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90又は約95質量%までの量で存在し;及び/或いは
前記ホスファイト酸化防止剤が前記安定化組成物の約42から約75質量%、前記安定化組成物の約45から約70質量%、又は前記安定化組成物の約50から約65質量%の量で存在する、請求項1から6のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項8】
前記ホスファイト酸化防止剤が50℃以下、任意に30℃以下、任意に25℃以下の温度、大気圧つまり101.325kPaにおいて液体である、請求項1から7のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項9】
前記アミン酸化防止剤が第2級アミンである、請求項1から8のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項10】
前記アミン酸化防止剤が少なくとも1つの芳香族基を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項11】
前記アミン酸化防止剤が4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)及び/又はブチル化オクチル化混合ジフェニルアミンを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項12】
前記アミン酸化防止剤が、前記安定化組成物に前記安定化組成物の約1から約40質量%、前記安定化組成物の約1から約30質量%、前記安定化組成物の約5から約25質量%、又は前記安定化組成物の約7から約20質量%の量で存在する、請求項1から11のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項13】
ホスファイト酸化防止剤のアミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤に対する比率が、
(約35から約70):(約1から約30):(約15から約35);又は
(約45から約65):(約5から約25):(約15から約30);又は
(約50から約65):(約7から約20):(約20から約30)である、
請求項1から12のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項14】
前記安定化組成物におけるホスファイト酸化防止剤のアミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤に対する比率が、
(約35から約70):(約1から約30):(約15から約35):(約0から約20);又は
(約45から約65):(約5から約25):(約15から約30):(約1から約15);又は
(約50から約65):(約7から約20):(約20から約30):(約1から約5)である、請求項3から12のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項15】
50℃以下、任意に30℃以下、任意に25℃以下の温度、大気圧つまり101.325kPaにおいて液体組成物である、請求項1から14のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項16】
エラストマーに添加された場合に、6日間にわたって、(ASTM D1646に従って測定される)前記エラストマーの前記ムーニー粘度が30%未満、25%未満、20%未満、16%未満又は10%未満の最大変動%を有する、請求項1から15のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項17】
エラストマーに添加された場合に、4日後に、(ASTM E313に従って測定される)前記エラストマーの黄色度指数値が、45未満、40未満、37未満、35未満、30未満である、請求項1から16のいずれか1項に記載の安定化組成物。
【請求項18】
エラストマー材料を安定化するための、請求項1から17のいずれか1項に記載の安定化組成物の使用。
【請求項19】
a.エラストマー材料
b.請求項1から17のいずれか1項に記載の安定化組成物
を含む、安定化されたエラストマー組成物。
【請求項20】
前記エラストマー材料が天然ゴム及び/又は合成ゴムを含み;並びに/或いは
前記エラストマー材料が乳化重合生成物である、請求項19に記載の安定化されたエラストマー組成物。
【請求項21】
前記エラストマー材料がブタジエン系エラストマーを含む、請求項19又は請求項20に記載の安定化されたエラストマー組成物。
【請求項22】
前記ブタジエン系エラストマーがスチレン・ブタジエン、ポリブタジエン、ニトリルゴム又はポリクロロプレンの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の安定化されたエラストマー組成物。
【請求項23】
前記安定化組成物が、前記エラストマー材料に約0.01から約5w/w%、約0.05から3w/w%、約0.1から2w/w%、又は約0.2から1w/w%の量で添加される、請求項19から22のいずれか1項に記載の安定化されたエラストマー組成物。
【請求項24】
請求項19から23のいずれか1項の前記安定化されたエラストマー組成物を含む実用品。
【請求項25】
エラストマー材料を用いて作製される物品を安定化する方法であって、請求項1から17のいずれか1項の安定化組成物をエラストマー材料に組み込む又は適用することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2019年5月24日に出願された英国特許出願公開第1907363.4号明細書に対する優先権を主張するものであり、その全体は参照によりここに組み入れられたものとする。
【0002】
本発明は安定化組成物に関する。より詳細には、限定されないが、本発明はポリマーの安定化、特にゴム及び/又はブタジエン系エラストマーなどのエラストマーの安定化に有用な安定化組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマーは多種多様な用途で用いられる。エラストマーは一種のポリマーであり、様々な構造、性質及び用途を有する。すべてがある程度の粘弾性を示し、天然又は合成ポリマーで作製することができる。エラストマーは、高弾性、耐久性及び高強度などの特有の性質により、タイヤ、チューブ、ガスケット及びシールなど、多種多様な用途で用いられる。
エラストマーは、経時的に物理的及び視覚的劣化を受けやすく、これにより性能が劣り、耐用年数が低下する。熱、酸素、オゾン及び放射(例、光)に対する暴露などの要因は、エラストマーを分解する場合があり、例えばエラストマーの軟化又は硬化の結果として、機械的性質を実質的に変化させる。従って、ゴムの粘度は劣化に伴って実質的に変化し得る。エラストマー構造は、最も一般的には鎖の切断及び/又は架橋により分解する。エラストマーの望ましくない匂い、変色及び退色も、劣化の結果として観察され得る。
ポリブタジエン、及び活性な二重結合がより少ないそのコポリマーは、主に鎖の架橋による劣化に影響を受ける。天然ゴム、ポリイソプレン及びイソブチレンイソプレンゴムなど、より大きな基又は電子供与基を有するエラストマーは、鎖の切断による劣化をより受けやすい。
【0004】
ムーニー粘度値は、流動する及び形を保持するエラストマーの能力を推定するのに広く用いられる。確実にエラストマー性を維持するため、ムーニー粘度値が確実に長期にわたって変化、変動しないことが重要である。
従って、鎖の切断及び/又は架橋による劣化効果を最小限にするため、エラストマー材料におけるムーニー粘度を維持することが重要である。エラストマーの変色も劣化の結果として観察することができ、従って色の変化を最小限にすることも重要である。
多くのエラストマー用途のため、貯蔵、処理、その後の適用の間に、エラストマーが特定の性質を保持することが望ましい。より具体的に、エラストマーがそのメルトフロー性であるムーニー粘度を保持し、貯蔵の間、及び貯蔵中の温度変動に長期又は繰り返し暴露する間でも、優れた色安定性を有することが望ましい。
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)及び色安定性(黄色度指数による)などのエラストマー性の保持を助けるため、エラストマーに異なる種類の添加剤を添加することが知られており、特に酸化防止剤を添加することが知られている。
【0005】
米国特許第9309379号明細書は、劣化しやすいエマルジョン粗ゴム(emulsion crude rubber)、合成ラテックス又は天然ゴムラテックスと、アルキルチオメチルフェノール型化合物及びスチレン化ジフェニルアミンの特定の群から選択される混合物を含む安定剤とを含む組成物を記載している。
米国特許第4489099号明細書は、酸化防止安定剤系として、ジラウリルチオジプロピオナートと、t-ブチル-ヒドロキノン(TBHQ)及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素との組合せを利用するチューインガムゴム組成物(ガムベース)を記載している。
欧州特許第2980146号明細書は、酸化防止剤を含有するジエン系エラストマーを含むエラストマー複合物(elastomer compositing)を記載している。この酸化防止剤は、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(TNPP)及びテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の組合せをTNPPのTMEDAに対する質量比4/1から50/1の範囲で含む。また、このようなエラストマー複合物を含むゴム組成物、このようなエラストマー複合物又はゴム組成物を含むタイヤなどの製造物品、並びに製造方法が開示される。
欧州特許第2159264号明細書は、アクリルゴム組成物及び加硫ゴムを記載しており、加硫ゴムの耐熱性が確保され、特に加熱条件下、加硫ゴムの破断伸び(EB)及び硬さの変化が少ない。アクリルゴム組成物は、カルボキシル基含有アクリルゴムと、カルボキシル基含有アクリルゴム100質量部あたり、カーボンブラック10から100質量部と、アミン酸化防止剤及びフェノール酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つの一次酸化防止剤0.1から15質量部と、リン酸化防止剤及び硫黄酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つの二次酸化防止剤0.1から15質量部とを含む。
国際公開第2015/114131号は、有機ポリマー、特に天然又は合成ゴムを酸化劣化及び損傷に対して安定化させるのに有用な組成物を考察しており、a)ポリ(ジクロロペンタジエン-co-p-クレゾール)(式I);b)式IIの立体障害フェノール;及びc)式IIIのアルキルチオフェノールを含む。
【化1】
【0006】
国際公開第2018/041649号は、原料ゴムに用いられる液体酸化防止組成物を記載し、a)少なくとも1つの芳香族アミン系抗酸化剤5から30質量%;b)少なくとも1つのヒンダードフェノール系抗酸化剤20から70質量%;c)少なくとも1つのホスファイト系抗酸化剤0から40質量%;及びd)101.325kPa下で沸点が185℃より高く、凝固点が-10℃より低い少なくとも1つの溶媒20から40質量%を含む。成分a)、b)、c)又はd)の質量パーセントは酸化防止組成物の総質量に基づいており、成分a)、b)及びc)の混合物は、25℃、101.325kPa下において液体である。
国際公開第2007/050991号は、酸化防止剤と;リン安定剤、酸安定剤及び補助安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤とを含む組成物を記載している。
英国特許第2322374号明細書は、酸化、熱又は光誘起劣化を受けやすい有機材料;ベンゾフラン-2-オン型の少なくとも1つの化合物;有機ホスファイト又はホスホナイトの群の少なくとも1つの化合物;フェノール酸化防止剤の群の少なくとも1つの化合物;及び立体障害アミンの群の少なくとも1つの化合物を含む組成物を記載している。
特開2018-070747号公報は、フェノール酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダードアミン光安定剤で安定化したポリオレフィン樹脂材料を記載している。
特開2003-012900号公報は、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を含む組成物を記載している。
米国特許出願公開第2007/0254990号明細書は、5分を超える酸化誘導時間を有するパイプ被覆樹脂組成物を記載しており、この組成物は、ASTM D1238により測定されるメルトインデックスが1から10グラム/10分であり、分子量分布が2.0から3.0である熱可塑性エチレン-アルファオレフィンコポリマー組成物と;250から2500ppmのヒンダードフェノール酸化防止剤、リン(III)化合物である二次酸化防止剤、及びヒンダードアミン光安定剤を含む酸化防止剤系とを含む。
【発明の概要】
【0007】
産業界において、安定化組成物を改善する必要性が継続してあり、特に長期の保管中、又は保管を繰り返す間に温度変動にさらされるとき、変色、ムーニー粘度変化及び望ましくない匂いを有さない安定化組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、エラストマー用安定化組成物を提供し、これは、
a.少なくとも1つのホスファイト酸化防止剤を含む第1の安定化成分;
b.少なくとも1つのアミン酸化防止剤を含む第2の安定化成分;及び
c.少なくとも1つのフェノール酸化防止剤を含む第3の安定化成分、を含む。
驚いたことに、本発明者は、本発明による安定化組成物が、当技術分野で従来用いられる組成物と比較して、性質を保持するのに優れ、エラストマー、特にブタジエン系エラストマーを用いて作製される物品を安定化するのに非常に効果的であることを見出した。
このエラストマーはブタジエン系でよい。これに関連して、「ブタジエン系」は、エラストマーがモノマー基本単位として、ブタジエン又はブタジエン誘導体、例えばクロロプレンを含むことを意味する。例えば、エラストマーは、ポリブタジエン(BR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレン・ブタジエン(SBR)、ポリクロロプレン(CR)及び/又はこれらの2つ以上の相溶性混合物を含んでよい。
意外にも、本発明の安定化組成物を添加したエラストマー材料が、ムーニー粘度の保持、色性能に関して、業界標準の4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(ロウィノックス(登録商標)520、CAS110553-27-0)で安定化させた同じエラストマー材料の性能を上回り、全体的に匂いが少ないことが見出されている。従って、本発明の安定化組成物を使用して従来の添加剤を置き換えることができる。
【0009】
理論に束縛されるものではないが、本発明の酸化防止剤は安定化された組成物又は物品、例えばエラストマー材料及びその製造物品に対する相乗効果を示すと考えられる。この相乗的なブレンドは、熱老化中のムーニー粘度の保持及び色の保持を著しく改善し、また初期の色を低くするのに重要である。
本発明の安定化組成物は、エラストマーに添加されると、100℃、6日間の熱老化期間にわたって、任意のアミン成分を含まない同じ安定化組成物が同等のw/w量で添加されている同じエラストマーより、(ASTM D1646に従って測定される)エラストマーのムーニー粘度が変動しないようにすることができる。
この加速熱劣化試験は、様々な貯蔵及び輸送条件での数か月をシミュレートするため、高温(100℃)を用いる。これは広く受け入れられたエラストマー用の標準的な品質管理試験である。この加速熱劣化試験は、エラストマーの長期熱及び貯蔵安定性を予測するのに用いられる。
最大変動%(開始ムーニー粘度並びに測定された最高及び/又は最低ムーニー粘度間の差異%として測定される)は、6日間にわたって、30%未満、25%未満、20%未満、16%未満又は10%未満変動するエラストマーの粘度(ASTM D1646に従って測定される)となり得る。
本発明の安定化組成物は、エラストマーに添加されると、(ASTM E313に従って測定される)エラストマーの初期黄色度指数値(0日)を約15未満、約10未満、約8未満にすることができる。
本発明の安定化組成物は、エラストマーに添加されると、4日後に、(ASTM E313に従って測定される)エラストマーの黄色度指数値を45未満、40未満、37未満、35未満、30未満にすることができる。
【0010】
以下の段落において、商品名アミノックス(登録商標)、アノックス(登録商標)、BLE(登録商標)、DURAZONE(登録商標)、FLEXZONE(登録商標)、ロウィノックス(登録商標)、NAUGALUBE(登録商標)、ナウガード(登録商標)、NAUGAWHITE(登録商標)、NOVAZONE(登録商標)、オクタミン(登録商標)、WESTON(登録商標)により指定される化合物は、SI Group USA(USAA),LLC、4 マウンテンビューテラス、スイート200、ダンベリー、CT06810から入手できる。
ホスファイト酸化防止剤は周囲条件において液体でよい。アミン酸化防止剤は周囲条件において液体でよい。ホスファイト酸化防止剤及びアミン酸化防止剤のどちらも周囲条件において液体であるのが好ましい。しかし、一部の例では、液体ホスファイト酸化防止剤を固体アミン酸化防止剤とブレンドすることにより、周囲条件において液体である本発明による安定化組成物を作製することができる。
固体ホスファイト酸化防止剤を液体アミン酸化防止剤とブレンドすることにより、周囲条件において液体である本発明による安定化組成物を作製することもできる場合がある。
「周囲条件」については、我々は好ましくは50℃以下の温度、より好ましくは30℃以下の温度、最も好ましくは25℃以下の温度、大気圧つまり101.325kPaを意味する。例えば、「周囲条件」は25℃の温度及び大気圧を意味することができる。
安定化組成物は周囲条件において液体であることが好ましい。
【0011】
本発明の安定化組成物に提供されるホスファイト酸化防止剤は、安定化組成物が上記のように周囲条件において液体であるように選択される。これは、周囲条件でそれ自体液体である個別のホスファイト酸化防止成分を選択することにより達成されることが多い。
ホスファイト酸化防止剤は有機ホスファイト酸化防止剤を含んでよい。
ホスファイト酸化防止剤は、トリアリールホスファイト、トリアルキルホスファイト及び/又はアルキルアリールホスファイトを含んでよい。
ホスファイト酸化防止剤は、トリアリールホスファイト、任意にトリフェニルホスファイトを含んでよい。
ホスファイト酸化防止剤は、1つ又は複数の式Iのトリアリールホスファイトを含んでよい:
【化2】
式中、R1、R2及びR3は独立して式IIのアルキル化アリール基から選択される:
【化3】
式中、R4、R5及びR6は、独立して水素及びC1-C20アルキルからなる群から選択され、ただしR4、R5及びR6の少なくとも1つは水素ではない。
4、R5及びR6は、独立して水素及びC1-C10アルキルからなる群から選択されてよく、ただしR4、R5及びR6の少なくとも1つは水素ではない。
4、R5及びR6は、独立して水素及びC1-C6アルキルからなる群から選択されてよく、ただしR4、R5及びR6の少なくとも1つは水素ではない。
1-C6アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及び/又はこれらの異性体、例えばイソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチル及び/又はネオペンチルから選択されてよい。
4、R5及びR6の少なくとも1つは、tert-ブチル及び/又はtert-ペンチルからなる群から選択されてよい。
【0012】
1つ又は複数のトリアリールホスファイトは式(III)の構造を有してよい:
【化4】
式中、R7、R8及びR9は、独立してメチル及びエチル基から選択され、nは0、1、2又は3である。
1つ又は複数のトリアリールホスファイトは、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスファイト;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト;ビス(4-tert-ブチルフェニル)-2,4-ジ-tert-ブチルフェニルホスファイト;ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-tert-ブチルフェニルホスファイト;トリス(4-tert-ペンチルフェニル)ホスファイト;トリス(2,4-ジ-tert-ペンチルフェニル)ホスファイト;ビス(4-tert-ペンチルフェニル)-2,4-ジ-tert-ペンチルフェニルホスファイト;ビス(2,4-ジ-tert-ペンチルフェニル)-4-tert-ペンチルフェニルホスファイト;及び/又はこれらのブレンドからなる群から独立して選択されてよい。
1つ又は複数のトリアリールホスファイトは、トリス(4-tert-ペンチルフェニル)ホスファイト;トリス(2,4-ジ-tert-ペンチルフェニル)ホスファイト;ビス(4-tert-ペンチルフェニル)-2,4-ジ-tert-ペンチルフェニルホスファイト;ビス(2,4-ジ-tert-ペンチルフェニル)-4-tert-ペンチルフェニルホスファイト;及び/又はこれらのブレンドからなる群から独立して選択されてよい。
ホスファイト酸化防止剤は、上記のようにトリアリールホスファイトのブレンドを含んでよい。ホスファイト酸化防止剤は、少なくとも2つの異なるトリアリールホスファイト、少なくとも3つの異なるトリアリールホスファイト又は少なくとも4つの異なるトリアリールホスファイトのブレンドを含むのが好ましい。
【0013】
本発明による特に好ましいホスファイト酸化防止剤は、2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェニル及び4-(1,1-ジメチルプロピル)フェニル混合ホスファイト(mixed 2,4-bis(1,1-dimethylpropyl)phenyl and 4-(1,1-dimethylpropyl)phenyl phosphite)(WESTON(登録商標)705、CAS939402-02-5)を含む。
本発明者は、ホスファイト酸化防止剤が1つ又は複数のトリアリールホスファイトを含むとき、特定の利点が実現することを見出した。特に、他の公知のホスファイト酸化防止剤、特にテトラC12-15アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)(CAS96152-48-6)などのアルキルアリールホスファイトと比べて、エラストマー加工条件下、エラストマーと組み合わされると、トリアリールホスファイトははるかに安定し、加水分解を受けにくいことが見出されている。国際公開第2018/041649号において、酸化防止組成物の重要成分は溶媒であり、確実に酸化防止剤、特にホスファイト酸化防止剤が、原料ゴムの製造中に加水分解しないように用いられる。反対に、本発明の安定化組成物はエラストマー加工条件下で安定しており、従って任意の溶媒が無くても調製することができる。
【0014】
ホスファイト酸化防止剤はノニルフェニルを含まない酸化防止剤でよい。
ホスファイト酸化防止剤はトリアルキルホスファイト、例えばDOVERPHOS(登録商標)LGP-11(Dover Chemicalsから入手できる)を含んでよい。
ホスファイト酸化防止剤は、アルキルアリールホスファイト、例えばトリス(トリデシル)ホスファイト(WESTON(登録商標)TTDP、CAS25488-25-3)を含んでよい。
具体的及び非限定的な例として、ホスファイト酸化防止剤は、例えば2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェニル及び4-(1,1-ジメチルプロピル)フェニル混合ホスファイト(WESTON(登録商標)705(CAS939402-02-5);トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(WESTON(登録商標)TNPP、CAS26523-78-4);トリス(トリデシル)ホスファイト(WESTON(登録商標)TTDP、CAS25488-25-3);トリラウリルホスファイト(WESTON(登録商標)TLP、CAS3076-63-9);トリイソデシルホスファイト(WESTON(登録商標)TDP、CAS25448-25-3);フェニルジイソデシルホスファイト(WESTON(登録商標)PDDP、CAS25550-98-5);ジフェニルイソデシルホスファイト(WESTON(登録商標)DPDP、CAS26544-23-0);トリイソオクチルホスファイト(TOP、CAS25103-12-52);トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト(CAS78-42-2);2-エチルヘキシルフェニルホスファイト混合エステル(mixed 2-ethylhexyl phenyl phosphite ester)(WESTON(登録商標)EHDP、CAS15647-8-2);トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト(WESTON(登録商標)430、CAS36788-39-3);ポリ4,4’イソプロピリデンジフェノールC12-15アルコールホスファイト(WESTON(登録商標)439、CAS96152-48-6);ポリマー液体ホスファイト(DOVERPHOS(登録商標)LGP-11、Dover Chemicalsから入手できる);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル)アルキル(C13)ホスファイト;並びに/又はこれらの2つ以上の相溶性混合物の1つ又は複数を含んでよい。
ホスファイト酸化防止剤は、2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェニル及び4-(1,1-ジメチルプロピル)フェニル混合ホスファイト(WESTON(登録商標)705、CAS939402-02-5)及び/又はトリス(トリデシル)ホスファイト(WESTON(登録商標)TTDP、CAS25488-25-3)を含んでよい。
ホスファイト酸化防止剤は、2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェニル及び4-(1,1-ジメチルプロピル)フェニル混合ホスファイト(WESTON(登録商標)705、CAS939402-02-5)を含んでよい。
【0015】
ホスファイト酸化防止剤は、安定化組成物の約20から約95質量%、安定化組成物の約25から約90質量%、安定化組成物の約30から約85質量%、安定化組成物の約35から約70質量%、又は安定化組成物の約50から約65質量%の量で存在してよい。
ホスファイト酸化防止剤は、安定化組成物の約40質量%超の量で存在するのが好ましい。例えば、ホスファイト酸化防止剤は、安定化組成物の40質量%超から、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90又は約95質量%までの量で存在してよい。
ホスファイト酸化防止剤は、安定化組成物の約41、約42、約45又は約50質量%から約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90又は約95質量%の量で存在してよい。例えば、ホスファイトは安定化組成物の約42から約75質量%、安定化組成物の約45から約70質量%、又は安定化組成物の約50から約65質量%の量で存在してよい。
ホスファイト酸化防止剤は、50℃以下、任意に30℃以下、任意に25℃以下の温度、大気圧つまり101.325kPaにおいて液体でよい。ホスファイト酸化防止剤は、25℃の温度、大気圧つまり101.325kPaにおいて液体でよい。
【0016】
安定化成分(b)は1つ又は複数のアミン酸化防止剤を含む。
具体的及び非限定的な例として、アミン酸化防止剤は、例えば4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(ナウガード(登録商標)445、CAS10081-67-1);ブチル化オクチル化混合ジフェニルアミン(ナウガード(登録商標)PS30、CAS68411-46-1);オクチル化ジフェニルアミン(オクタミン(登録商標)、CAS101-67-7);ノニル化ジフェニルアミン(NAUGALUBE(登録商標)438L、CAS122-39-4);重合1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(ナウガード(登録商標)Q、CAS26780-96-1);N,N-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(FLEXZONE(登録商標)4L、CAS3081-14-9);アセトンジフェニルアミン(アミノックス(登録商標)、CAS68412-48-6);ジフェニルアミンとアセトンの反応物(BLE(登録商標)、CAS112-39-4);1,4-ベンゼンジアミンのN,N’-フェニル及びトリル混合誘導体(NOVAZONE(登録商標)AS、CAS68953-84-4);ベンゼンアミン,N-フェニル-,2,4,4-トリメチルペンテンとの反応物(benzamine, N-phenyl-, reaction products with 2,4,4-trimethylpentene)(イルガノックス(登録商標)5057、CAS68411-46-1(BASFから入手できる));N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(サントフレックス(登録商標)6PPD、CAS793-24-8(イーストマンから入手できる));N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD、CAS74-31-7);N-イソプロピル-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン(IPPD、CAS101-72-4);2,4,6-トリス-(N-1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミノ)-1,3,5-トリアジン(DURAZONE(登録商標)37、CAS121246-28-4);N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(サントフレックス(登録商標)77PD、CAS3081-14-9(イーストマンから入手できる);並びに/又はこれらの2つ以上の相溶性混合物を含んでよい。
アミン酸化防止剤は、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(ナウガード(登録商標)445、CAS10081-67-1)及び/又はブチル化オクチル化混合ジフェニルアミン(ナウガード(登録商標)PS30、CAS68411-46-1)を含んでよい。
アミン酸化防止剤は、ブチル化オクチル化混合ジフェニルアミン(ナウガード(登録商標)PS30、CAS68411-46-1)を含んでよい。
ブチル化オクチル化混合ジフェニルアミン(ナウガード(登録商標)PS30、CAS68411-46-1)は液体アミン酸化防止剤であり、特に本発明による液体ブレンドの作製を容易にする。
アミン酸化防止剤は、安定化組成物の約1から約40質量%、安定化組成物の約1から約30質量%、安定化組成物の約5から約25質量%、又は安定化組成物の約7から約20質量%の量で存在してよい。
【0017】
アミン酸化防止剤は第2級アミンでよい。
アミン酸化防止剤は芳香族アミンでよい。
アミン酸化防止剤は一般式-R-NH-R’を有してよく、任意にR及び/又はR’基は芳香族である。R及びR’は同一でも異なってもよい。
アミン酸化防止剤は、一般式R-NH-R’-NH-Rを有してよく、任意にR’は芳香族であり、並びに/或いはR基は芳香族及び/又はアルキルである。R及びR’は同一でも異なってもよい。
アミン酸化防止剤は、少なくとも1つの芳香族基、又は少なくとも2つの芳香族基を含んでよい。
アミン酸化防止剤は、単一の化合物又は2つ以上の化合物のブレンドを含んでよい。
アミン酸化防止剤は、全窒素含有量が少なくとも3.5w/w%又は少なくとも4w/w%でよい。
【0018】
安定化成分(c)は、1つ又は複数のフェノール酸化防止剤を含む。
フェノール酸化防止剤は、単一の化合物又は2つ以上の化合物のブレンドを含んでよい。
フェノール酸化防止剤は、任意に置換されてよい。
フェノール酸化防止剤は、セミヒンダード及び/又はヒンダードフェノール酸化防止剤を含んでよい。
フェノール酸化防止剤は、ヒンダードフェノール酸化防止剤を含んでよい。
本明細書では、「ヒンダード」について、我々は好ましくはフェノール酸化防止剤が、芳香環に関してフェノール性-OH基に対する両オルト位に置換ヒドロカルビル基を含むことを意味しており、これらの置換基のそれぞれがC1及び/又はC2位、好ましくはC1位で分岐する。
本明細書では、「セミヒンダード」について、我々は好ましくはフェノール酸化防止剤が、芳香環に関してフェノール性-OH基に対するオルト位に少なくとも1つの置換ヒドロカルビル基を含むことを意味しており、1つの置換基又は各置換基がC1及び/又はC2位、好ましくはC1位で分岐する。
【0019】
フェノール酸化防止剤は、置換されたフェノール基、好ましくは2か所、この場合好ましくはフェノールの-OH基に対するオルト位が置換されたフェノール基を含んでよい。
フェノール基上の該置換基又は各置換基は、アルキル基、任意に分岐鎖アルキル基、任意にt-ブチルを含んでよい。
フェノール酸化防止剤は、フェノールの-OH基に対するメタ位及びパラ位で更に置換されてよい。
フェノール酸化防止剤は、複数のフェノール基を含んでよい。
具体的及び非限定的な例として、フェノール酸化防止剤は、3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートのC13-C15直鎖及び分岐アルキルエステル(アノックス(登録商標)1315、CAS171090-93-0);オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(アノックス(登録商標)PP18、CAS2082-79-3);イソオクチル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ナウガード(登録商標)PS48、CAS125643-61-0);メチル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(CAS6386-38-5);ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(アノックス(登録商標)20、CAS6683-19-8);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、CAS128-37-0);ブチル化ヒドロキシエチルベンゼン(BHEB、CAS4130-42-1);ブチル化オクチル化フェノール(アノックス(登録商標)T、CAS12674-05-4);スチレン化フェノール(ナウガード(登録商標)SP、CAS61788-44-1);スチレン化p-クレゾール(ナウガード(登録商標)431、CAS1817-68-1);ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9側鎖アルキルエステル(イルガノックス(登録商標)1135、CAS125643-61-0(BASFから入手できる));2,2-メチレンビス(6-ノニル-p-クレゾール)(NAUGAWHITE(登録商標)、CAS7786-17-6);4-sec-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(CAS17540-75-9);2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール(ロウィノックス(登録商標)624、CAS1879-09-0);混合tert-ブチル化フェノール(イソノックス(登録商標)133、CAS60083-44-5(SI Group Inc.、2750ボールタウンロード、スケネクタディ、NY12301、米国から入手できる));4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)(CAS118-82-1);メチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(PPベース、CAS6386-38-5);2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)-フェノール(CAS134701-20-5);並びに/又はこれらの2個以上の相溶性混合物を含んでよい。
フェノール酸化防止剤は、3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(アノックス(登録商標)1315、CAS171090-93-0)及び/又はイソオクチル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートのC13-C15直鎖及び分岐アルキルエステル(ナウガード(登録商標)PS48、CAS125643-61-0)を含んでよい。
【0020】
フェノール酸化防止剤は、安定化組成物の約5から約70質量%、安定化組成物の約10から約60質量%、安定化組成物の約15から約55質量%、安定化組成物の約20から約50質量%、又は安定化組成物の約20から約40質量%の量で存在してよい。
フェノール酸化防止剤は、50℃以下、任意に30℃以下、任意に25℃以下の温度、大気圧つまり101.325kPaにおいて液体であるように選択されてよい。フェノール酸化防止剤は、25℃の温度、大気圧つまり101.325kPaにおいて液体でよい。
安定化組成物におけるホスファイト酸化防止剤のアミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤に対する比率は、(約35から約70):(約1から約30):(約15から約35);(約45から約65):(約5から約25):(約15から約30);又は(約50から約65):(約7から約20):(約20から約30)でよい。
追加の酸化防止剤、例えばヒドロキシルアミン又はその前駆体、ラクトンラジカル捕捉剤、アクリラートラジカル捕捉剤、UV吸収剤及び/又はキレート剤を安定化組成物に含んでよい。
本発明による安定化組成物は、エラストマー材料を安定化するのに特に効果的である。例えば酸化、熱及び/又は放射(例えば光)誘起劣化に対してエラストマー材料を安定化することができる。
【0021】
本発明による安定化組成物は、少なくとも1つの硫黄含有酸化防止剤を含む第4の安定化成分を更に含んでよい。
例えば、安定化組成物は、
a.少なくとも1つのホスファイト酸化防止剤を含む第1の安定化成分;
b.少なくとも1つのアミン酸化防止剤を含む第2の安定化成分;
c.少なくとも1つのフェノール酸化防止剤を含む第3の安定化成分;任意に、
d.少なくとも1つの硫黄含有酸化防止剤を含む第4の安定化成分、を含んでよい。
硫黄含有酸化防止剤は1つ又は複数のチオエーテル基を含んでよい。
硫黄含有酸化防止剤は1つ又は複数のチオエステル基を含んでよい。
硫黄含有酸化防止剤は硫黄含有フェノール酸化防止剤を含んでよい。
硫黄含有酸化防止剤は、周囲条件において液体でよい。
具体的及び非限定的な例として、硫黄含有酸化防止剤は、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(ロウィノックス(登録商標)520、CAS110553-27-0);2,2’チオジエチレンビス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](アノックス(登録商標)70、CAS41484-35-9);ジラウリルチオジプロピオナート(ナウガード(登録商標)DLTDP、CAS123-28-4);ジステアリルチオジプロピオナート(ナウガード(登録商標)DSTSP、CAS693-36-7);ジトリデシルチオジプロピオナート(ナウガード(登録商標)DTDTDP、CAS10595-72-9);ペンタエリスリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオナート)(ナウガード(登録商標)412S、CAS29598-76-3);2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(イルガノックス(登録商標)1726、CAS110675-26-8(BASFから入手できる));及び/又はこれらの2つ以上の相溶性混合物を含んでよい。
硫黄含有酸化防止剤は、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(ロウィノックス(登録商標)520、CAS110553-27-0)及び/又はジトリデシルチオジプロピオナート(ナウガード(登録商標)DTDTDP、CAS10595-72-9)を含んでよい。
【0022】
硫黄含有酸化防止剤は、安定化組成物の約0から約50質量%、安定化組成物の約1から約40質量%、安定化組成物の約2から約30質量%、安定化組成物の約2から約20質量%、又は安定化組成物の約2から約10質量%の量で存在してよい。
安定化組成物におけるホスファイト酸化防止剤のアミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤に対する比率は、
(約35から約70):(約1から約30):(約15から約35):(約0から約20);
(約45から約65):(約5から約25):(約15から約30):(約1から約15);又は
(約50から約65):(約7から約20):(約20から約30):(約1から約5)でよい。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、エラストマー材料を安定化するための安定化組成物の使用を提供する。
エラストマーは非晶質ポリマーであり、ガラス転移温度が周囲温度未満、好ましくは使用温度未満である。低いガラス転移温度のため、エラストマーは高弾性のように優れた粘弾性、高い耐衝撃性等を有する。
エラストマーは熱可塑性又は熱硬化性、加硫又は未加硫であることができる。
エラストマー材料は、天然ゴム、合成ゴム、及び/又は耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などのエラストマーとプラスチックのブレンドを含んでよい。
エラストマーはブタジエン系でよい。上記の概略のように、これに関して、「ブタジエン系」は、エラストマーがモノマー基本単位として、ブタジエン又はブタジエン誘導体、例えばクロロプレンを含むことを意味する。例えば、エラストマーはポリブタジエン(BR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレン・ブタジエン(SBR)、ポリクロロプレン(CR)及び/又はこれらの2つ以上の相溶性混合物を含んでよい。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、
a.エラストマー材料
b.本発明による安定化組成物
を含む安定化されたエラストマー組成物を提供する。
安定化されたエラストマー組成物は、ゴムなどのエラストマー材料を安定化するのに好適であり得る。
ゴムは天然ゴム、合成ゴム、及び/又はこれらの組合せを含んでよい。
エラストマー材料は乳化又は溶液重合の生成物でよい。
エラストマー材料は、最終用途に上記安定化処理を組み込んだ後、架橋されてもされなくてもよい。
安定化されたエラストマー組成物は、エラストマー材料及び本発明の安定化組成物と組み合わせるのに好適な任意の材料を更に含んでよい。
具体的及び非限定的な例として、エラストマーは天然ポリイソプレン(シス-1,4-ポリイソプレン、天然ゴム(NR));ガタパーチャ(トランス-1,4-ポリイソプレン);合成ポリイソプレン;ポリブタジエン(ブタジエンゴム(BR));ポリクロロプレン(CR);ブチルゴム(イソブチレン及びイソプレンのコポリマー、IIR);ハロゲン化ブチルゴム;スチレン・ブタジエン(スチレン及びブタジエンのコポリマー、SBR)、ニトリルゴム(ブナNゴム(NBR));水素化ニトリルゴム(HNBR)並びに/又はこれらの2つ以上の相溶性混合物を含んでよい。
エラストマーは、スチレン・ブタジエン(SBR);ニトリルゴム(NBR);ポリブタジエン(BR);ポリクロロプレン(CR)の少なくとも1つを含む乳化重合によるものでよい。
エラストマーは、ビルディングブロックの1つとしてブタジエンを含んでよい。他の好適なビルディングブロックコモノマーは、スチレン、アクリロニトリル、エチレン又はプロピレンでよい。
エラストマーは、メタロセンを含む異なる触媒系を使用してよい。
【0025】
また本発明は、本明細書に記載される安定化されたエラストマー組成物を含む実用品に関する。
本発明による安定化組成物を約0.01から約5w/w%、約0.05から3w/w%、約0.1から約2w/w%、又は約0.2から約1w/w%の量でエラストマー材料に添加してよい。
この安定化組成物の割合は、貯蔵及び輸送中、安定化されたエラストマー組成物に必要な保護を提供するのに重要である。貯蔵安定組成物は、長期の貯蔵、例えば40℃で1年までの貯蔵期間にわたってムーニー粘度変化がわずかであることを必要とする。
安定化組成物は重合中又は重合後に添加されてよい。
安定化組成物は重合後に添加されるのが好ましい。
【0026】
本発明の第4の態様によれば、エラストマー材料を使用して作製される物品を安定化するプロセスを提供し、このプロセスは本発明の安定化組成物をエラストマー材料に組み込む又は適用することを含む。
明確にするために記すと、本発明の安定化組成物に関するすべての特徴も、必要に応じて、安定化されたエラストマー組成物、安定化された物品、及び物品を安定化するプロセスに関連し、逆も同じである。
以下、下記の非限定的な例を参照して本発明をより具体的に説明する。
【0027】
実施例
表1は安定化組成物で用いられた異なる安定化成分に関する詳細の概要である。以降、安定化成分は単に「略記」列に挙げる名前を用いて言及される。
【表1】



表1の記号:
成分A ホスファイト酸化防止剤
成分B アミン酸化防止剤
成分C フェノール酸化防止剤
成分D 硫黄含有酸化防止剤
当業者に明らかなように、本発明の必要な成分として定義される成分カテゴリA、B、C、Dの1つ又は複数に特定の材料(例えば、ロウィノックス(登録商標)520、CAS110553-27-0)が含まれ得る。従って、ロウィノックス(登録商標)520を本発明による成分C及び/又は成分Dとして認識することができる。
【0028】
表2は調製された様々な安定化組成物を示す。表中の%量は、安定化組成物全体の質量%、及び安定化組成物の適用量(質量部(phr))である。
【表2】
実施例A、B、C及びDは任意のアミン成分を含まない比較例であり、実施例Dは業界標準を表す。実施例1~10は本発明に一致する。
【0029】
サンプル調製
酸化防止剤の様々な混合物を表2にまとめた組成に従って調製した。各実施例の酸化防止剤ブレンド(約60g)を融解し、一緒に混合した。その後、この混合物を70℃に加熱し、オレイン酸を添加し、一緒に混合した。続いて、混合物にゆっくりとKOH溶液(13.3w/w%)(約48g)を添加し、高速で撹拌して、完全な混合及びエマルションの形成を確実に行った。その後、混合速度を低下させ、高温脱イオン水約152gを添加した。得られた酸化防止剤エマルションは固形分が約20w/w%であった。
実施例は、ESBRに様々な安定化組成物を利用することにより実現することができる安定性を示す。
ESBRラテックスに酸化防止剤エマルションを添加した。撹拌後、ESBRラテックスサンプルを標準的な塩-酸凝固系を用いて凝固させた。より具体的に、サンプルを2%塩化カルシウムで凝固させた。その後、ラテックスを2%塩化カルシウム溶液に滴下し、ゴムを新鮮な水に移した。ゴムをしぼりながら3回洗浄した。その後、ゴムを真空オーブン中、16時間、50℃で乾燥させた。その後、HAAKE(登録商標)密閉式混合機を105℃で2分間使用して、任意の残りの水を除去した。2ロールミルを使用して、エラストマーをより均一にした。
エラストマーを100℃でオーブン老化させ、測定結果を4日間(黄色度指数)及び6日間(ムーニー粘度)、24時間ごとに記録した。
【0030】
試験条件
色安定性
まず、サンプルを100℃で5分間、圧縮型に配置した。得られるESBRシートは1mm厚であった。比色計を用いて変色を黄色度指数(YI)で測定した。約4gのエラストマーを各YI測定のために採取した。YI値を0時間、その後24時間ごとに記録し、ASTM E313で定義されるように測定した。5つの測定結果の平均を取った。YI値が低いほど、組成物の変色は少ない。結果を表3に示す。
【表3】

安定化組成物A及びBは、アミン酸化防止剤を利用していない比較例を表す。実施例DはL520を含む業界標準を表す。
結果から、本発明に従って安定化組成物で安定化されたESBRサンプル(実施例1~6)は、業界標準より変色しないことがわかる。
本発明に従って安定化組成物で安定化されたESBRサンプルは、0日目の初期黄色度指数が低く、4日目の黄色度指数値が低い。
従って、本発明と一致する安定化組成物を用いたESBRサンプルは、色の保持が優れており、色が変化することなく長く貯蔵できる。
【0031】
ムーニー粘度
ムーニー粘度試験のため、各実施例につき約20gのサンプルを採取した。ムーニー粘度を標準方法ASTM D1646、(1+4)T100℃を用いて測定した。ムーニー粘度値を0時間、その後24時間ごとに記録した。
【表4】

*ESBRの架橋開始日。架橋による劣化が鎖の切断より優勢であると、ムーニー粘度の全体的な増加が予期される。ESBRの劣化は架橋に左右される。
エラストマー構造は主に、鎖の切断及び架橋の2つの異なる劣化メカニズムにより分解する。一般的に、鎖の切断作用は劣化プロセスの初期に起こり、ムーニー粘度を低下させ得る。架橋は一般的にプロセスの後期に起こり、ムーニー粘度を増加させる。実施例8は他の実施例より初期の鎖の切断がやや高いが、その後比較例と比べて、2日目から6日目に見られるように、ムーニー粘度の変動が相対的に小さいことが理論付けられる。
経時的にムーニー粘度値の変動が小さいと、エラストマーの構造的完全性が明示され、劣化は最小限である。
本発明による実施例では、ムーニー粘度が同等の負荷で比較例より優れており、より低い負荷レベルで比較例と同等であるか、比較例より優れている。
従って、本発明に従って安定化組成物を含む実施例は、明らかにムーニー粘度の保持に優れており、比較例A~Dを上回っている。これらの安定化組成物は、より良好な貯蔵安定性能を有し、物理的性質の保持に優れている。
本発明による実施例は、0日間から6日間のムーニー粘度の変動度が小さい。結果からわかるように、本発明による実施例の最大変動%は、比較例より著しく小さい。
従って、本発明に従って安定化組成物を含む実施例は、明らかにムーニー粘度の保持に優れ、変化が小さく、比較例A~Dを上回っている。
【0032】
実施例9及び10のサンプルをムーニー粘度試験のために採取した。ムーニー粘度値は標準方法ASTM D1646、(1+4)T100℃を用いて測定する。ムーニー粘度値は、0時間、その後12、24、36及び72時間で記録する。
【表5】

実施例9及び10のどちらも本発明に従って安定化組成物を含む。実施例10は0から72時間のムーニー粘度の変動度が著しく小さい。
結果からわかるように、成分Dを安定化組成物に添加すると、安定が著しく増し、ムーニー粘度の変動が低下する。従って、本発明に従って4成分の安定化組成物を含む実施例(実施例10)は、明らかにムーニー粘度の保持に優れ、変化が小さい。この安定化組成物は、より良好な貯蔵安定性能を有し、物理的性質の保持に優れている。
エラストマー加工業者(elastomer converter)は、一般的に大量生産のためにエラストマーの加工条件を規格化するため、ムーニー粘度の変化は最終物品の性質を変動させ、品質が一致せず、これは望ましくない。
加速熱劣化試験は、様々な保管及び輸送条件中のムーニー粘度の変化をシミュレーションする。これは、エラストマー生産者にエラストマーがどれだけ安定しているかを示す。
従って、本発明に従って安定化組成物を用いる際の安定増加及びムーニー粘度の変動低下は、ユーザに有益であり、製品品質をより均一にする。
【国際調査報告】