(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(54)【発明の名称】抗CD40抗体の安全な投与を提供する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220725BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220725BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20220725BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20220725BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220725BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220725BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220725BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220725BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20220725BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/47
A61K31/495
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C07K16/28
C07K16/46
C12N5/078
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570263
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 IB2020055023
(87)【国際公開番号】W WO2020240434
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ストレイト,マイケル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC20
4B065BB19
4B065CA44
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4C086NA06
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
静脈内投与による抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与のための方法が提供される。抗CD40抗体の静脈内投与による進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療のための方法もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行性固形腫瘍と診断されたヒト対象に対して抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与を提供する方法であって、前記抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を前記対象に静脈内投与することを含み、前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5、及び6の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含み、投与される前記抗体の総投与量は、投与1回当たり、前記対象の体重1kg当たり、50μg/kg~2500μg/kg、好ましくは75μg~2000μg/kgである、方法。
【請求項2】
前記抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖(HC)及び配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
投与1回当たり投与される前記抗CD40抗体の総投与量は、前記対象の体重1kg当たり、75μg/kg、200μg/kg、400μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、1100μg/kg、1200μg/kg、1300μg/kg、1400μg/kg、1500μg/kg、1800μg/kg、若しくは2000μg/kg、又はこれらの間にある任意の投与量である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記医薬組成物の総投与量は、約2時間にわたって前記ヒト対象に静脈内投与され、好ましくは、前記医薬組成物は、前記ヒト対象に繰り返し、より好ましくは2週間に1回静脈内投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗CD40抗体の前記投与の前又は後に治療薬を前記ヒト対象に投与することを更に含み、好ましくは、前記治療薬は、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、解熱薬、H
2-アンタゴニスト、及び制吐薬からなる群に対して選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗CD40抗体と組み合わせて、有効量のセチリジン及びモンテルカストのうちの少なくとも一方を前記対象に投与することによって、輸液関連反応(IRRS)又は掻痒の反応を低減させることを更に含み、好ましくはセチリジン及びモンテルカストは、前記抗CD40抗体の前記投与前3日以内及び前記投与後3日以内に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
投与1回当たり投与される前記抗CD40抗体の総投与量が、前記対象の体重1kg当たり600μg/kgであるとき、前記抗CD40抗体は、約10~16時間、好ましくは約13時間のインビボ半減期を有し、又は投与1回当たり投与される前記抗CD40抗体の総投与量が、前記対象の体重1kg当たり1200μg/kg以上であるとき、前記抗CD40抗体は、約20~28時間、好ましくは24時間のインビボ半減期を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物が前記ヒト対象に繰り返し静脈内投与されるとき、前記ヒト対象は、前記抗CD40抗体の蓄積を有さない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
投与1回当たり投与される前記抗CD40抗体の総投与量が、前記対象の体重1kg当たり約1000~1400μg/kg、好ましくは前記対象の体重1kg当たり1200μg/kgであるとき、前記抗CD40の前記投与は、標的飽和をもたらす、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗CD40抗体の前記投与は、前記ヒト対象の末梢血において、B細胞、T細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞からなる群から選択される1つ以上の細胞の辺縁趨向、及び前記細胞の後続の回復を引き起こす、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗CD40抗体の前記投与は、前記ヒト対象の末梢血において、MCP-1、IP-10、MIP-1β、MIP-1α、及びIL-8からなる群から選択される1つ以上のケモカインの上昇を達成する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗CD40抗体の前記投与は、前記ヒト対象の末梢血において、IFN-γ、TNF-α、及びIL12p70からなる群から選択される1つ以上のサイトカインの上昇を達成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗CD40抗体の前記投与は、末梢血Bリンパ球上の1つ以上の活性化マーカーの増加をもたらし、前記活性化マーカーは、HLA-DR、CD54、CD80、及びCD86からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒト対象は、少なくとも部分奏効を有するか、又は6か月以上の間、疾患が長期的に安定している、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
進行性固形腫瘍と診断されたヒト対象に対する抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与を提供する方法であって、前記抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を前記対象に静脈内投与することを含み、前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5、及び6の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含み、投与される前記抗体の総投与量は、投与1回当たり、前記対象の体重1kg当たり、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、1100μg/kg、1200μg/kgなど、約600μg/kg~約1200μg/kgであり、好ましくは、前記ヒト対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)、膵癌、又は皮膚黒色腫と診断されている、方法。
【請求項17】
前記抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖(HC)及び配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
抗CD40抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5、及び6の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含み、投与される前記抗体の総投与量は、投与1回当たり、対象の体重1kg当たり、50μg/kg~2500μg/kg、好ましくは、75μg/kg~2000μg/kgである、医薬組成物。
【請求項20】
医療における使用のための抗CD40抗体であって、前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5、及び6の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含み、投与される前記抗体の総投与量は、投与1回当たり、対象の体重1kg当たり、50μg/kg~2500μg/kg、好ましくは、75μg/kg~2000μg/kgである、抗CD40抗体。
【請求項21】
進行性固形腫瘍の処置における使用のための抗CD40抗体であって、前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5、及び6の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含み、投与される前記抗体の総投与量は、投与1回当たり、対象の体重1kg当たり、50μg/kg~2500μg/kg、好ましくは、75μg/kg~2000μg/kgである、抗CD40抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表の参照
本出願は、2019年5月22日付で作成されたファイル名「Sequence Listing_688097.0808」のASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出され、10kbのサイズを有する配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
CD40である、48キロダルトンの膜貫通細胞-表面糖タンパク質は、腫瘍壊死因子受容体(tumor necrosis factor receptor、TNFR)スーパーファミリーに属する共刺激受容体である(Elgueta R,et al.Immunol Rev.,2009,229(1):152(-172)。CD40の構成的発現は多様であり、樹状細胞(dendritic cell、DC)、Bリンパ球、及びマクロファージを含む抗原提示細胞(antigen presenting cell、APC)の表面上でこの受容体を検出することができる。更に、CD40は、顆粒球、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、及び上皮細胞で発現される(Korniluk,et al.TumourBiol.,2014,35(10):9447-9457;Peters et al.Semin Immunol.,2009,21(5):293-300)。
【0003】
正常細胞に対する広範な発現と一致して、CD40はまた、非ホジキンリンパ腫及びホジキンリンパ腫、骨髄腫、並びに鼻咽頭、膀胱、頸部、腎臓、及び卵巣を含むいくつかの癌腫を含む広範囲の悪性細胞の膜上に存在する(Eliopoulos AG&Young LS.,Curr.Opin.Pharmacol.,2004,4(4):360-367)。CD40は、単一のリガンド、CD40L(又はCD154)と相互作用し、これは、活性化Tリンパ球、Bリンパ球、血小板、マスト細胞、マクロファージ、好塩基球、ナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞、及び非造血細胞(平滑筋細胞、内皮細胞、及び上皮細胞)によって発現される膜貫通タンパク質である。細胞-細胞相互作用の一部としての、その唯一のリガンドCD40LへのCD40の結合は、TNF受容体活性化因子(又はTRAF)として知られる一連のアダプター分子を含む細胞内シグナル伝達経路を活性化させる。この細胞内シグナル伝達を開始するために、複数のCD40受容体は、細胞膜上にクラスタを形成する必要がある(Peters et al.Semin Immunol.,2009,21(5):293-300)。このCD40のクラスタ化により、複数のTRAFからなる超分子シグナル伝達複合体を組み立てることが可能になり、次いで、核因子κB(NF-κB)を含む下流転写因子の活性化をもたらす(Kornbluth et al.Int.Rev.Immunol.,2012,31(4):279-288)。
【0004】
CD40のシグナル伝達の分子的な結果は、CD40を発現する細胞型及びCD40シグナルが提供される微小環境に依存する(Vonderheide et al.ClinCancerRes.,2013,19(5):1035-1043)。CD40のライゲーション及び架橋は、膜共刺激分子及びMHC分子の上方制御並びに炎症誘発性サイトカインの産生を誘導することによるAPC及び特にDCのライセンシングによる適応免疫応答に必要である。したがって、CD40は、APCの機能的成熟、及び、ひいては抗原特異的Tリンパ球の活性化に関与する(Long et al.Cancer Discov.,2016,6(4):400-13;Moran et al.Curr.Opin.Immunol.,2013,25(2):230-237)。CD40はまた、静止Bリンパ球を活性化することによって、かつこれらの抗原提示機能を増加させることによって体液性免疫において役割を果たす(Vonderheide et al.Clin Cancer Res.,2013,19(5):1035-1043;Wolchok et al.Clin.Cancer Res.,2009,15(23):7412-7420)。更に、CD40は、NK細胞、マクロファージ、及び顆粒球などの細胞傷害性骨髄細胞の刺激による先天性免疫の誘導に関与している(Rakhmilevich et al.Int.Rev.Immunol.,2012,31(4):267-278)。腫瘍の進行並びに腫瘍細胞のアポトーシスの両方を促進する相反する役割は、様々な腫瘍性疾患におけるCD40/CD450Lの経路に起因している(Korniluk et al.Tumour Biol.,2014,35(10):9447-9457)。
【0005】
これらの重要なCD40/CD40L媒介経路は、様々な腫瘍性疾患における腫瘍の進行の促進、並びに腫瘍細胞のアポトーシスの誘導の両方において両面性の役割を有する(Beatty GL,et al.Science,2011,331(6024):1612-1616)。しかしながら、CD40抗体の全身投与は、ショック症候群及びサイトカイン放出症候群などの有害な副作用と関連している(van Mierlo et al.,2002,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:5561-5566;van Mierlo et al.,2004,J Immunol 173:6753-6759)。他の抗CD40抗体及びこれらの産生の例は、例えば、米国特許第9,676,862号に記載されている。
【0006】
上記に鑑みて、改善された抗腫瘍療法、特に、臨床用途に好適な抗CD40アゴニスト抗体が依然として必要とされている。
【0007】
発明の簡単な概要
本発明は、進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療を含む、対象への抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与に関する。
【0008】
1つの一般的な態様では、本発明は、必要とするヒト対象に対して抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与を提供する方法であって、方法は、抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を対象に静脈内投与することを含み、好ましくは、抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3の重鎖相補性決定領域(heavy chain complementarity determining region、HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列、又はそれぞれ配列番号1、2、及び3と少なくとも95%(又は少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%)の配列同一性の配列を含み、軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5、及び6の軽鎖相補性決定領域(light chain complementarity determining region、LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号4、5、及び6と少なくとも95%(又は少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%)の配列同一性の配列を含み、投与される抗体の総投与量は、投与1回当たり、対象の体重1kg当たり、50μg/kg~2500μg/kg、好ましくは75μg~2000μg/kg、任意選択で100μg/kg~1800μg/kg、200μg/kg~1500μg/kg、300μg/kg~1400μg/kg、400μg/kg~1300μg/kg、500μg/kg~1200μg/kg、600μg/kg~1100μg/kg、700~1000μg/kg、800~900μg/kgである、方法に関する。
【0009】
一実施形態では、ヒト対象は、進行性固形腫瘍と診断されている。
【0010】
一実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0011】
一実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖(heavy chain、HC)及び配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖(light chain、LC)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、投与1回当たりに投与される抗CD40抗体の総投与量は、対象の体重1kg当たり、50μg/kg、75μg/kg、100μg/kg、200μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、1100μg/kg、1200μg/kg、1300μg/kg、1400μg/kg、1500μg/kg、1800μg/kg、2000μg/kg、若しくは2500μg/kg又はこれらの間にある任意の投与量である。
【0013】
一実施形態では、医薬組成物の総投与量は、0分~3時間、好ましくは5分~150分、10分~2時間、15分~90分、20分~1時間、25分~55分、30分~50分、又は35分~45分、又は40分~45分の時間、例えば、約0分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約1時間、約90分、約2時間、約150分、又は約3時間にわたってヒト対象に静脈内投与される。好ましくは、医薬組成物は、1日、1週間、1ヶ月、6ヶ月、1年、2年又はそれ以上の期間にわたって、反復的に、すなわち2回以上、より好ましくは1日1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、6ヶ月ごとに1回などでヒト対象に静脈内投与される。
【0014】
一実施形態では、方法は、抗CD40抗体の投与前、投与後、又は投与と同時に治療薬をヒト対象に投与することを更に含み、好ましくは、治療薬は、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、解熱薬、H2-アンタゴニスト、及び制吐薬からなる群に対して選択される。
【0015】
一実施形態では、医薬組成物は、1mg/mL~100mg/mLの抗CD40抗体、好ましくは10mg/mL~90mg/mL、20mg/mL~80mg/mL、30mg/mL~70mg/mL、40mg/mL~60mg/mL、40mg/mL~50mg/mL、例えば、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、又は100mg/mLの抗CD40抗体及び医薬的に許容される担体を含む。
【0016】
別の一般的な一態様では、本発明は、必要とするヒト対象に対して抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与を提供する方法であって、方法は、抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を対象に静脈内投与することを含み、好ましくは、抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号1、2、及び3と少なくとも95%(又は少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%)の配列同一性の配列を含み、軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5、及び6の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号4、5、及び6と少なくとも95%(又は少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%)の配列同一性の配列を含み、投与される抗体の総投与量は、投与1回当たり、対象の体重1kg当たり、約600μg/kg~900μg/kgであり、好ましくは、ヒト対象は、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer、NSCLC)、膵癌、又は皮膚黒色腫と診断されている、方法に関する。
【0017】
一実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0018】
一実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖(HC)及び配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含む。
【0019】
本発明の一実施形態では、医薬における使用のための、前の実施形態に記載されるような抗CD40抗体が提供される。
【0020】
本発明の更なる実施形態では、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、口腔癌、肝臓癌、黒色腫(皮膚黒色腫を含む)、中皮腫、非小細胞肺癌、非黒色腫皮膚がん、経口癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、肉腫、小細胞肺癌、及び甲状腺癌を含むがこれらに限定されない、進行性固形腫瘍の治療における使用のための前述の実施形態に記載されたような抗CD40抗体が提供される。
【0021】
本発明の更なる実施形態では、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、口腔癌、肝臓癌、黒色腫(皮膚黒色腫を含む)、中皮腫、非小細胞肺癌、非黒色腫皮膚がん、経口癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、肉腫、小細胞肺癌、及び甲状腺癌を含むがこれらに限定されない、進行性固形腫瘍の治療のための薬剤の製造における使用のための前述の実施形態に記載されたような抗CD40抗体が提供される。
【0022】
好ましくは、これらの2つの実施形態では、進行性固形腫瘍の治療は、抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を対象に静脈内投与することを含む、進行性固形腫瘍と診断されたヒト対象に対して上記で定義された抗CD40抗体の投与の工程を含み、投与される抗体の総投与量は、投与1回当たり、対象の体重1kg当たり、50μg/kg~2500μg/kg、好ましくは75μg/kg~2000μg/kgである。
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、下記の説明に述べられている。他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
上述の「発明の概要」及び以降の「発明を実施するための形態」は、添付の図面と併せて読むことでより良好に理解されるであろう。本発明は、図面に示される正確な実施形態に限定されない点が理解される必要がある。
【0025】
本特許又は出願書類は、少なくとも1つのカラー印刷図面を含む。カラー図面を備える、本特許又は特許出願公開の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されるであろう。
【
図1】実施例1における臨床試験の試験設計の図式表現である。IV=静脈内、NSCLC=非小細胞肺癌、q14d=14日ごと、RP2D=第II相推奨用量。
【
図2】コルチコステロイドの事前注入を伴う試験設計及びコホート並びにコルチコステロイドの事前注入を伴わない試験設計及びコホートを示す図である。
【
図3】用量漸増で検閲された、割り当てられた用量当たりの輸液関連反応(infusion-related reactions、IRRs)の発生率のグラフである。
【
図4】時間サイクル1及び2にわたる平均血清濃度を示すグラフである。
【
図5】用量正規化AUC
0~24hを示すグラフである。
【
図6】A~Cは、注入前レベルに正規化された、抗体Aを注入後の末梢血中のB細胞(A)、T細胞(B)、及びNK細胞(C)の割合を示すグラフである(コルチコステロイドなしのコホート)。
【
図7】A~Iは、抗体Aを注入後の末梢血中のサイトカイン/ケモカインレベルを示すグラフである(コルチコステロイドなしのコホート):MCP-1(A)、IP-10(B)、MIP-1β(C)、IFN-γ(D)、MIP-1α(E)、IL-8(F)、TNF-α(G)、IL-6(H)、及びIL12p70(I)。
【
図8】A~Dは、末梢血Bリンパ球における活性化/成熟マーカーの発現を示すグラフである:HLA-DR(A)、CD54(B)、CD80(C)、及びCD86(D)。記号及び直線は、コホート6B拡大のそれぞれの個々の患者を表す(
図2を参照)。注:染色強度における倍率変化(抗体Aの注入24時間後対注入前)を、各マーカーに対して算出し、Log
2スケールに変換した。最終コホート(コルチコステロイドなしの1200μg/kg)における6人の患者のうち、4人の患者が使用可能なデータを有し、それに応じてグラフ化された。
【0026】
発明の詳細な記述
背景技術において、また、本明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載する。これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0027】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。本明細書に引用する全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、参照によってあたかもその全体が本明細書に記載されているものと同様にして組み込まれる。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0029】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの均等物を認識するか、又は確認することができよう。このような均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0030】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上必要としない限り、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、指定の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外するものではないことを意味すると理解されるであろう。本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は、用語「含有する(containing)」又は「含む(including)」に置き換えることができ、又はときに本明細書で使用するとき、用語「有する(having)」に置き換えることもできる。
【0031】
本明細書で使用するとき、「からなる(consising of)」は、特許請求の範囲の要素において指定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書で使用するとき、「から本質的になる(consising essentially of)」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップは除外しない。本発明の態様又は実施形態に関連して本明細書で使用するとき、本開示の範囲を変化させるために、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び「有する」という上記用語のいずれかを、用語「からなる」又は「から本質的になる」に置き換えることができる。
【0032】
本明細書で使用するとき、複数の列挙された要素間の接続的な用語「及び/又は」は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、本発明の方法による抗CD40抗体を投与される予定か、又は投与されている、がんと診断された又は疑いがある、哺乳類対象、好ましくはヒトを指す。がんの診断は、臨床的診断検査、対象の理学的検査、又は特定の疾患を有する対象を診断するための任意の他の認められた方法に従って臨床医により行うことができる。
【0034】
本明細書で使用する際、CD40は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーに属し、免疫系において中心的な役割を果たす、細胞表面に発現する糖タンパク質を指す。CD40は、様々な免疫細胞、例えばB細胞、樹状細胞、単球、及びマクロファージなどにおいて発現され、プロフェッショナルAPCは、CD40を介したシグナル伝達が起こるときに活性化される(Tasci et al.,Cell.Mol.Life.Sci.,2001,(58):4-43によって概説されている)。CD40の発現は、多くの正常細胞並びにBリンパ腫、固形腫瘍、黒色腫、及び癌腫などの腫瘍細胞で発生する。CD40の活性化は、抗腫瘍応答を誘発するのに有効であり、CD40の活性化は、少なくとも免疫活性化のメカニズム、CD40陽性腫瘍への直接的アポトーシス効果、並びに抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)及び補体依存性細胞傷害性(complement dependent cytotoxicity、CDC)を引き起こす体液性応答の刺激によって、腫瘍成長の障害に寄与することが十分に確立されている。
【0035】
本明細書で使用される「CD40」は、本明細書で定義されるようなヒトCD40タンパク質及び/又はその天然バリアントに対して構造的同一性及び/又は機能的同一性を有する任意の天然タンパク質又は合成タンパク質を含む。好ましくは、CD40は、UniProtアクセッション番号P25942及びGenBankアクセッション番号AAH12419などのヒトCD40である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「抗CD40抗体」は、天然リガンドCD40Lに結合し、その効果を増強するIgG1サブタイプのアゴニスト性ヒトモノクローナル抗体(monoclonal antibody、mAb)、又はその抗原結合フラグメントを指す。本発明のアゴニスト性CD40抗体は、(1)腫瘍細胞上に発現されたCD40受容体との結合によって直接的な抗腫瘍効果を誘導し、(2)DCの「ライセンシング」及び細胞傷害性T細胞(cytotoxic T-cell、CTL)の活性化、並びに(3)NK細胞などの細胞傷害性骨髄細胞又は腫瘍マクロファージの活性化によって間接的な抗腫瘍効果を誘導し得る。好ましい実施形態では、抗CD40抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、それぞれ配列番号1、2、及び3の重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号1、2、及び3と少なくとも95%(又は少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%)の配列同一性の配列を含み、軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号4、5、及び6の軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列又はそれぞれ配列番号4、5、及び6と少なくとも95%(又は少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%)の配列同一性の配列を含む。別の好ましい実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。別の好ましい実施形態では、抗CD40抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖(HC)及び配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含む。
【0037】
本発明で使用することができる追加の抗CD40抗体又はその抗原結合フラグメントは、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第9,676,862号に記載されたものを含む。
【0038】
抗CD40抗体は、ハイブリドーマ産生を含むがこれらに限定されない、モノクローナル抗体を調製するための、本開示を考慮して当該技術分野において既知の任意の方法によって調製することができる。例えば、抗CD40抗体は、組み換えDNA技術を使用して、哺乳類細胞株(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary、CHO)細胞株)中で産生させることができる。特に、本発明に有用な抗CD40抗体の生成方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第9,676,862号に更に記載されている。
【0039】
「安全」という用語は、用量、投与レジメン、治療、又は抗CD40抗体を用いた方法に関する場合、標準治療又は改正されたFederal Food,Drug,and Cosmetic Actに従って別の対照薬と比べて、治療中に発生した有害事象(AE又はTEAEと称される)が許容可能な頻度及び/又は許容可能な重症度である、良好なリスク:ベネフィット比を指す(secs.201-902,52 Stat.1040 et seq.,as amended;21U.S.C.§§321-392)。特に、本発明の抗CD40抗体による用量、投与レジメン又は治療に関連する安全性は、有害事象が抗CD40抗体の使用による可能性がある、可能性が高い、又は非常に高いと考えられる場合、抗体の投与に関連する有害事象の許容される頻度及び/又は許容される重症度を指す。安全性は、多くの場合、所望の効果を得るのに必要な、活性医薬成分の最大認容用量又は最適用量を決定する、毒性試験によって測定される。安全性を調べる試験はまた、薬物への暴露がもたらし得る、任意の潜在的な有害な影響の特定を求めるものである。
【0040】
本明細書で使用される場合、特に断りがない限り、用語「臨床的に証明された」(独立して、又は用語「安全」を修飾するために使用される)は、臨床試験によって証明されており、臨床試験が、米国食品医薬品局、欧州医薬品審査庁(European Medicines Evaluation Agency、EMEA)、又は対応する国家規制機関の承認基準を満たしていることを意味するものとする。本発明において、臨床試験は、進行期の固形腫瘍を有する患者においてCD40を標的とするアゴニスト性ヒトモノクローナル抗体である、抗体Aの安全性、薬物動態、及び薬力学の第I相非盲検試験である。
【0041】
本明細書で使用するとき、語句「有害事象」、「治療下で発現した有害事象」、及び「有害反応」は、医薬組成物又は治療薬の投与に関連する又はこれらに起因する、あらゆる悪影響がある、好ましくない、意図しない、又は望ましくない徴候又は転帰を意味する。しかしながら、異常な値又は観察結果は、治験責任医師によって臨床的に有意であると見なされない限り、有害事象として報告されない。本明細書で使用するとき、有害事象を指す場合、「臨床的に明らかな」とは、当業者に許容される基準を使用して、医師又は治験責任医師によって決定されるような臨床的に有意であることを意味する。有害事象の悪影響がある又は望ましくない結果がこのような重症度レベルに達すると、規制当局は、この医薬組成物又は治療薬が提案される用途に対して許容されないと判断する場合がある。抗CD40抗体の静脈内投与の状況で使用される場合の有害事象又は反応の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。鼻炎、帯状疱疹、及び水疱性鼓膜炎などの感染及び侵襲;咳、咽頭刺激、及び中咽頭痛などの呼吸器、胸部、及び縦隔の障害;下痢及び鼓腸などの胃腸障害;頭痛及びめまいなどの神経系障害;貧血症及びリンパ節症などの血液及びリンパ系障害;背部痛、早産、注入反応、局所注射部位反応性、悪性疾患、及びアナフィラキシー又は血清病型反応。
【0042】
本明細書で使用するとき、「治療」又は「治療する」は、治療的処置を指す。治療を必要としている個体としては、障害又は障害の兆候を有するとして診断された対象が挙げられる。治療され得る対象としては、障害を有する傾向があるもの又は障害に対し感受性を有するもののうち、かかる障害が予防され得るものも挙げることができる。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能であろうと又は検出不可能であろうと、症状の緩和、疾患の程度の軽減、安定した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患の進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的であろうと又は全体的であろうと)が挙げられる。有益な臨床結果としては、治療を受けた対象における、例えば、B細胞又は樹状細胞の増殖の低減、炎症性サイトカイン、接着分子、プロテアーゼ、免疫グロブリン、これらの組み合わせの減少、抗炎症性タンパク質の産生増大、自己反応性細胞数の低減、免疫寛容の増強、自己反応性細胞の生存阻害、及び/又はCD40/CD40L媒介経路によって媒介された1種以上の症状の低減が挙げられる。臨床応答は、磁気共鳴映像(magnetic resonance imaging、MRI)スキャン、X線透視撮影、コンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)スキャン、フローサイトメトリー、又は蛍光標示式細胞分取器(fluorescence-activated cell sorter、FACS)分析、組織診断、肉眼所見、及びELISA、RIA、及びクロマトグラフィーなどにより検出可能な変化を含むがこれらに限定されない血液化学法などといった、スクリーニング技術を使用して、評価され得る。
【0043】
用語「有効性」及び「有効な」とは、投与量、投与レジメン、治療又は方法の文脈において本明細書で使用するとき、特定の投与量、投与、治療レジメンの有効性を意味する。有効性は、本発明の薬剤に応答した、疾患の経過中の変化に基づいて測定され得る。例えば、本発明の抗CD40抗体(例えば、抗体A)は、治療されている障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標において改善、好ましくは持続的な改善を引き起こすのに十分な量及び時間で対象に投与される。その治療の量及び時間が十分であるかどうかを判定するために、対象の病気、疾患又は病状の程度を反映する様々な指標が評価され得る。かかる指標には例えば、疾患重症度、症状、又は対象の障害の発現についての、臨床的に認識されている指標が含まれる。改善度は全体的に医師により判定され、医師はこの判定を、徴候、症状、生検、又は他の検査結果に基づいて行うことができ、また対象に対して行うアンケート、例えば所与の疾患に関して開発された生活の質に関する質問票などを採用することもできる。例えば、本発明の抗CD40抗体は、進行性固形腫瘍に関連する対象の状態の改善を達成するために投与され得る。
【0044】
進行性固形腫瘍の疾患評価には、全ての対象に対するコンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴映像法(MRI)及び前立腺癌を有する対象に対する骨スキャンが含まれる。病害応答は、固形腫瘍における反応評価基準(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors、RECIST)v1.1に従って、かつ免疫関連の反応基準(Immune-Related Response Criteria、irRC)に従って評価される。前立腺癌臨床試験ワーキンググループ3(Prostate Cancer Clinical Trials Working Group、PCWG3)基準35を使用して、前立腺癌を有する対象に対する病害応答を評価する。
【0045】
本明細書で使用される場合、進行性固形腫瘍は、他の解剖学的部位に広く広がっているか、又はもはや治療に応答しない悪性固形新生物を指す。本明細書で使用される場合、蓄積は、抗CD40抗体の反復投与により蓄積及び増加する薬物動態測定によって測定された血液循環中の抗CD40抗体の量を指す。
【0046】
本明細書で使用するとき、「μg/kg」単位での抗CD40抗体の投与量は、抗体が投与される対象の体重1キログラム当たりの抗CD40抗体のマイクログラム単位の量を指す。
【0047】
ある一般的な態様では、本発明は、それを必要とする対象、好ましくはヒト対象に対して、抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な静脈内投与を提供する方法に関する。好ましくは、対象は、転移性又は切除不能である任意のタイプの進行性又は難治性の固形悪性腫瘍と診断されている。上記の疾患の例としては、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、口腔癌、肝臓癌、黒色腫(皮膚黒色腫を含む)、中皮腫、非小細胞肺癌、非黒色腫皮膚がん、経口癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、肉腫、小細胞肺癌、及び甲状腺癌を含むがこれらに限定されない。
【0048】
一実施形態では、対象に対する抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は対象、好ましくはヒト対象における進行性固形腫瘍の安全な治療を提供する方法は、抗CD40抗体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を対象に静脈内投与することを含み、投与される抗CD40抗体の総投与量は、投与1回当たり、対象の体重1kg当たり、50μg/kg~2500μg/kg、好ましくは75μg/kg~2000μg/kg mg/kg、任意選択的には100μg/kg~1800μg/kg、200μg/kg~1500μg/kg、300μg/kg~1400μg/kg、400μg/kg~1300μg/kg、500μg/kg~1200μg/kg、600μg/kg~1100μg/kg、700~1000μg/kg、800~900μg/kgである。
【0049】
静脈内投与は、静脈内に直接投与することを指す。静脈内投与は、注射によって(例えば、より高圧で注射器を用いて)、又は注入によって(例えば、重力による圧力を使用して)行うことができる。静脈内投与は、典型的には、薬物又は治療薬が血液循環によって運ばれるため、体中に薬物又は治療薬を送達するための最も迅速な方法である。抗CD40抗体の投与が静脈内投与を介する場合、静脈内注入又は注射によって投与してもよく、好ましくは注入を介する。例えば、投与1回当たり対象に投与される抗CD40抗体の総投与量は、30分、60分、90分、120分、150分、又は180分などの約30分~180分、好ましくは60分~120分、任意選択的に90分~120分の期間にわたって静脈内注入によって投与することができる。任意選択的に、総投与量は、0分~3時間、好ましくは5分~150分、10分~2時間、15分~90分、20分~1時間、25分~55分、30分~50分、又は35分~45分、又は40分~45分の期間、例えば、約0分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約1時間、約90分、約2時間、約150分、又は約3時間にわたって静脈内注入によって投与することができる。
【0050】
投与1回当たりの抗CD40抗体の総投与量は、臨床試験において求めたときに静脈内投与により安全な投与及び/又は安全な治療を提供するように選択される。本発明の実施形態によれば、医薬組成物が静脈内投与される場合、投与1回当たりの投与される抗CD40抗体の総投与量は、例えば、50μg/kg、75μg/kg、100μg/kg、200μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1000μg/kg、1100μg/kg、1200μg/kg、1300μg/kg、1400μg/kg、1500μg/kg、1800μg/kg、若しくは2000μg/kg、又はこれらの間にある任意の投与量である。
【0051】
抗CD40抗体の総投与量は、1日、1週間、1ヶ月、6ヶ月、1年、2年又はそれ以上の期間にわたって、1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、6ヶ月に1回などで投与することができる。例えば、75μg/kg~2000μg/kgの抗CD40抗体の総投与量は、1回の静脈内注射によって、投与1回当たり(例えば、少なくとも1日の間に1日に1回)、すなわち、0分~3時間、好ましくは5分~150分、10分~2時間、15分~90分、20分~1時間、25分~55分、30分~50分、又は35分~45分、又は40分~45分の時間、例えば、約0分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約1時間、約90分、約2時間、約150分、又は約3時間、投与されてもよい。それぞれ75μg/kg~2000μg/kgの総投与量での抗CD40抗体の複数回の投与をそれを必要とする対象に投与することができる。
【0052】
本発明の方法での使用に好適な医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化されている。静脈内投与に好適な製剤の例としては、液剤、懸濁剤、乳剤、及び注射又は注入用に医薬的に許容される担体内に溶解又は懸濁され得る乾燥製品が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、本発明の方法での使用のための抗CD40抗体を含む医薬組成物は、液剤として製剤化されている。
【0053】
本発明で使用される医薬組成物に含まれる抗CD40抗体の濃度は多様であってもよい。典型的には、抗CD40抗体の濃度は、1mg/mL~100mg/mL、好ましくは、10mg/mL~90mg/mL、20mg/mL~80mg/mL、30mg/mL~70mg/mL、40mg/mL~60mg/mL、40mg/mL~50mg/mLであり、例えば、1mg/mL、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、若しくは100mg/mL、又はこれらの間の任意の濃度である。一実施形態では、抗CD40抗体の濃度は、10mg/mL~30mg/mL、例えば、20mg/mLである。一実施形態では、好ましくは、抗CD40抗体の濃度は、20mg/mL~60mg/mL、例えば、40mg/mLである。
【0054】
本発明での使用のための医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容される担体、例えば、医薬品製造、特に抗体医薬品製造の分野で広く用いられているものを更に含む。本明細書で使用するとき、用語「担体」は、任意の賦形剤、希釈剤、緩衝剤、安定化剤、又は医薬製剤に関する技術分野で周知の他の材料を指す。特に、医薬的に許容される担体は非毒性であり、活性成分の有効性を妨害しないものである必要がある。医薬的に許容される担体としては、当該技術分野において既知である医薬組成物での使用に好適な賦形剤及び/又は添加剤が挙げられ、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」19th ed.,Williams&Williams,(1995)」及び「Physician’s Desk Reference」52nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998)」に列挙されている。
【0055】
本発明の実施形態によれば、本発明での使用のための医薬組成物は、抗CD40抗体及び医薬的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、医薬的に許容される担体は、L-ヒスチジン及び/又はグリシンなどの1種以上のアミノ酸、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロースなどの1種以上の炭水化物、ポリソルベート20、ポリソルベート80などの1種以上の界面活性剤、及びD-ソルビトールなどの1種以上のアルコールを含む。好ましくは、医薬組成物は、5~6、好ましくは、5.1~5.9、5.2~5.8、5.3~5.7、5.4~5.6、5.4~5.5のpH、例えば、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、若しくは6.0のpH、又はこれらの間の任意の値のpHを有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、本発明における使用のための医薬組成物は、L-ヒスチジン及びグリシンなどの1つ以上のアミノ酸を含む。アミノ酸は、1mM~40mM、1mM~20mM、5mM~35mM、10mM~30mM、15mM~25mM、若しくは20mM~40mM、又は0.50%~2.00%(重量/体積)(w/v)、好ましくは0.75%(w/v)~1.75%(w/v)、1.00%(w/v)~1.50%(w/v)若しくは1.00%(w/v)~1.25%(w/v)の濃度で存在し得る。例えば、医薬組成物は、1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、若しくは40mM、又はこれらの間の任意の濃度でL-ヒスチジン又はグリシンを含み得る。別の例では、医薬組成物は、0.50%(w/v)、0.75%(w/v)、1.00%(w/v)、1.25%(w/v)、1.50%(w/v)、1.75%(w/v)、若しくは2.00%(w/v)、又はこれらの間の任意の濃度でL-ヒスチジン又はグリシンを含み得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明での使用のための医薬組成物は、1%~10%(重量/体積)(w/v)、5%~10%(w/v)、8%~9%(w/v)、1.5%(w/v)~9.5%(w/v)、2%(w/v)~9%(w/v)、2.5%(w/v)~8.5%(w/v)、3%(w/v)~8%(w/v)、3.5%(w/v)~7.5%(w/v)、4%(w/v)~7%(w/v)、4.5%(w/v)~6.5%(w/v)、5%(w/v)~6%(w/v)、又は5%(w/v)~5.5%(w/v)の濃度で、スクロース、グルコース、セロビオース、又はトレハロースなどの少なくとも1つの糖を含む。例えば、医薬組成物は、1%(w/v)、1.5%(w/v)、2%(w/v)、2.5%(w/v)、3%(w/v)、3.5%(w/v)、4%(w/v)、4.5%(w/v)、5%(w/v)、5.5%(w/v)、6%(w/v)、6.5%(w/v)、7%(w/v)、7.5%(w/v)、8%(w/v)、8.5%(w/v)、9%(w/v)、9.5%(w/v)、若しくは10%(w/v)、又はこれらの間の任意の濃度でスクロース、セロビオース、及び/又はトレハロースを含んでもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明での使用のための医薬組成物は、0.01%(w/v)~0.10%(w/v)、0.01%(w/v)~0.08%(w/v)、0.02%(w/v)~0.05%(w/v)、0.02%(w/v)~0.09%(w/v)、0.03%(w/v)~0.08%(w/v)、0.04%(w/v)~0.07%(w/v)、又は0.05%(w/v)~0.06%(w/v)の濃度でポリソルベート80(PS80)又はポリソルベート20(PS20)などの少なくとも1種の界面活性剤を含む。例えば、ポリソルベート20及び/又はポリソルベート80の濃度は、0.01%(w/v)、0.02%(w/v)、0.03%(w/v)、0.04%(w/v)、0.05%(w/v)、0.06%(w/v)、0.07%(w/v)、0.08%(w/v)、0.09%(w/v)、若しくは0.1%(w/v)、又はこれらの間の任意の濃度であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明での使用のための医薬組成物は、0.01%(w/v)~0.10%(w/v)、0.01%(w/v)~0.08%(w/v)、0.02%(w/v)~0.05%(w/v)、0.02%(w/v)~0.09%(w/v)、0.03%(w/v)~0.08%(w/v)、0.04%(w/v)~0.07%(w/v)、又は0.05%(w/v)~0.06%(w/v)の濃度で、マンニトール、キシリトール、又はD-ソルビトールなどの少なくとも1種のポリオールを含む。例えば、マンニトール、キシリトール、又はD-ソルビトールの濃度は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、若しくは0.1%(w/v)、又はこれらの間の任意の濃度であってよい。
【0060】
本発明での使用のための抗CD40抗体を含む医薬組成物は、本開示に鑑みて当該技術分野において既知の任意の方法によって調製することができる。例えば、抗CD40抗体を、1つ以上の医薬的に許容される担体と混合して、溶液を得ることができる。溶液は、対象に投与されるまで、-40℃±10℃~-70℃±20℃(マイナス40℃±10℃~マイナス70℃±20℃)の範囲の制御された温度で、かつ、適切なバイアル瓶中での遮光下で、凍結液体として保存することができる。
【0061】
本発明の実施形態によれば、注入前及び注入後支持療法などの支持療法が、抗CD40抗体の投与に加えて、進行性固形腫瘍の治療に使用され得る。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、抗CD40抗体の投与前に注入前投薬を受ける。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、抗CD40抗体の投与後に注入後投薬を受ける。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、抗CD40抗体の投与と同時に支持療法薬を受ける。これらの投薬の例としては、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、解熱薬、H2-アンタゴニスト、及び制吐薬が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、対象は、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、解熱薬、H2-アンタゴニスト、及び制吐薬の全てを受ける。任意選択的に、対象は、抗ヒスタミン薬、解熱薬、H2-アンタゴニスト、及び制吐薬を受ける。更に任意選択で、対象は、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、解熱薬、H2-アンタゴニスト、及び制吐薬から選択される1つ以上を受ける。
【0062】
好適なコルチコステロイドの例としては、デキサメタゾン及びメチルプレドニゾロンが挙げられる。デキサメタゾンは、20mgで投与され、メチルプレドニゾロンは80mgで投与され得る。好適な抗ヒスタミン薬の例としては、ジフェニルヒドラミン及びセチリジンが挙げられる。セチリジンは、10mgで投与することができる。好適な解熱薬の例としては、アセトアミノフェン(パラセタモール)が挙げられる。アセトアミノフェンは、650~1000mgの用量で投与され得る。好適なH2-アンタゴニストの例としては、ラニチジンが挙げられる。ラニチジンは、50mgで投与され得る。好適な制吐薬の例としては、オンダンセトロンが挙げられる。オンダンセトロンは8mgで投与され得る。
【0063】
本発明の実施形態によれば、様々な因子を分析して、本明細書に記載のものなどの臨床試験によって、特定の投与量の抗CD40抗体が安全な静脈内投与を提供するかどうかを判定することができる。例えば、特定の投与量の静脈内投与される抗CD40抗体の安全性は、免疫原性試験(例えば、抗CD40抗体に対する抗体の産生を測定すること)によって、対象における用量制限毒性(dose limiting toxicity、DLT)を判定することによって、血清タンパク質(例えば、サイトカイン、ケモカイン、及び炎症性タンパク質)などの血液バイオマーカーに対する効果をタンパク質プロファイリングによって判定することによって、薬物動態試験(例えば、濃度時間曲線下面積(area under the concentration time curve、AUC)及び実測最高濃度(Cmax)によって評価することができる。静脈内投与される抗CD40抗体の安全性はまた、対象の理学的検査;局所注射部位反応、全身注射関連反応、及び他のアレルギー反応の所見;心電図;臨床検査;バイタルサイン;並びに輸液関連反応(IRRS)などの他の有害事象のモニタリングによってモニタリングすることもできる。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療は、対象から得た試料における抗CD40抗体に対する抗体の量を測定することによって判定される。抗CD40抗体に対する抗体の量は、本開示に鑑みて当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、ELISAによって測定することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療は、終末相半減期、標的飽和、濃度時間曲線下面積(AUC)、及び実測最高濃度(Cmax)などの薬物動態パラメータを評価することによって判定される。血清試料を分析して、本開示に鑑みて当該技術分野において既知の任意の方法により抗CD40抗体の濃度を求める。次いで、例えば、非区画解析(non-compartment analysis、NCA)によって薬物動態パラメータを分析して、薬物動態パラメータ、例えば、AUC、Cmax、終末相半減期(T1/2)、静脈内投与後の総全身クリアランス(CL)、終末期における分布容積(Vz)、生物学的利用能(CL/F)にわたる総全身クリアランス、及び生物学的利用能にわたる終末期における分布容積(Vz/F)を計算する。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療は、血清濃度の急速な低下を伴う標的媒介性ドラッグディスポジションを示す。例えば、抗CD40抗体の半減期は、投与1回当たりに投与される抗CD40抗体の総投与量が、対象の体重1kg当たり約600μg/kgの場合、約10~16時間、好ましくは約13時間であり、又は抗CD40抗体投与1回当たりに投与される抗CD40抗体の総投与量が、対象の体重1kg当たり1200μg/kg以上の場合、約20~28時間、好ましくは24時間である。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療は、対象の体重1kg当たり、1000μg/kg~1400μg/kg、1050μg/kg~1350μg/kg、1100μg/kg~1300μg/kg、1150μg/kg~1250μg/kg、又は1150μg/kg~1200μg/kgの濃度での標的飽和を達成する。例えば、飽和濃度は、1000μg/kg、1050μg/kg、1100μg/kg、1150μg/kg、1200μg/kg、1250μg/kg、1300μg/kg、1350μg/kg、若しくは1400μg/kg、又はこれらの間の任意の投与量であり得る。
【0068】
本発明の実施形態によれば、平均Cmax及びAUC0~24hの増加は、1200μg/kg未満の用量で用量比例より大きく、1200μg/kg以上の用量で用量比例である。いくつかの実施形態では、抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療は、CD40受容体占有率を評価することによって判定される。例えば、抗CD40抗体の注入後の末梢血中のB細胞、T細胞、及びNK細胞の割合は、注入前レベルに対して正規化されたものとして測定される。本発明の実施形態によれば、B細胞、T細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞の用量非依存的な辺縁趨向は、抗CD40抗体の注入後に達成される一方、用量依存的なB細胞の回復は、競合の抗CD40アゴニスト抗体に関する観察結果と一致して達成される。NK細胞及びT細胞は、注入後の末梢血において数が減少し、試験されたT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞は後で完全に回復される。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療は、MCP-1、IP-10、MIP-1β、MIP-1α、IFN-γ、TNF-α、IL12p70、IL-2、IL-6、IL-8、及びIL-12を含むがこれらに限定されない血清サイトカイン及びケモカインのパネルを測定することによって評価される。これらのデータは、抗CD40抗体の注入後の細胞数及び/又は活性化状態におけるPDの変化を実証するためのB細胞、T細胞、骨髄、及びNK区画のフローサイトメトリー試験を補完する。本発明の実施形態によれば、抗CD40抗体の注入後、末梢ケモカイン(MCP-1、IP-10、及びMIP-1β)が末梢血において顕著であり、注入の1~4時間後にピーク化する。これは骨髄細胞活性化と一致し、サイトカイン(IFN-γ、TNF-α及びIL12p70)及びケモカイン(MIP-1α及びIL-8)もまたより小さい程度であるが観察され、他のCD40アゴニスト抗体によるサイトカインストームの誘導に関連しているIL-6のレベルは、注入後、多くない。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗CD40抗体の臨床的に証明された安全な投与及び/又は進行性固形腫瘍の臨床的に証明された安全な治療は、HLA-DR、CD54、CD80、及びCD86などの細胞表面活性化マーカーのフローサイトメトリーなどであるが、これに限定されない、適切な方法論を使用して、血液試料中のAPC/DCのライセンシング及び組み合わせられたB細胞とT細胞のサブセットの活性化を測定することによって評価される。本発明の実施形態によれば、これらの活性化マーカーは、抗CD40抗体の抗CD40抗体の注入後に活性化B細胞及び単球において増加する。
【0071】
略語:
β-hCG β-ヒト線毛性性腺刺激ホルモン
ADA 抗薬物抗体
ADCC 抗体依存性細胞媒介細胞傷害性
AE (治験治療下で発現した)有害事象
ALT アラニントランスアミナーゼ
抗HCV 抗肝炎C抗体
APC 抗原提示細胞
AST アスパラギン酸トランスアミナーゼ
AUC 血清濃度対時間曲線下面積
BLRM ベイズロジスティック回帰モデル
CI 信頼区間
Cmax 最大実測血清濃度
CR 完全奏功
CRF (複数の)症例記録表(本試験に適した紙又は電子形態)
CRS サイトカイン放出症候群
CT コンピュータ断層撮影
CTCAE 有害事象共通用語基準
DC 樹状細胞
DLT 用量制限毒性
DOR 奏効期間
ECG 心電図
ECOG 米国東海岸癌臨床試験グループ
eDC 電子データ収集
EWOC 過投与対照による漸増
FcγR Fcγ受容体
FSH 卵胞刺激ホルモン
GCP 医薬品の臨床試験の実施基準
GLP 医薬品安全性試験実施基準
HBsAg B型肝炎表面抗原
hCD40tg ヒトCD40-トランスジェニック
HIV ヒト免疫不全ウイルス
ICF インフォームドコンセントフォーム
ICH 医薬品規制調和国際会議
IEC 独立倫理委員会
IRB 治験審査委員会
irCR 免疫関連完全奏効
irRC 免疫関連反応基準
IRRs 輸液関連反応(IRRS)
IT 腫瘍内
IV 静脈内
LLOQ 定量下限値
MAD 最大用量
mCRM 改正連続再評価法
MRI 磁気共鳴映像法
MTD 最大耐量
NCI 国立癌試験所
NK ナチュラルキラー
NSCLC 非小細胞肺癌
ORR 客観的奏効率
PCWG 前立腺癌臨床試験ワーキンググループ
PD 薬力学
PFS 無増悪生存期間
PK 薬物動態
POM 作用機序の検証
PQC 製品品質に対する苦情
PR 部分奏効
RBC 赤血球
RECIST 固形腫瘍における反応評価基準
RP2D 第II相推奨用量
SC 皮下
SET 安全性評価チーム
SUSAR 予期せぬ重篤な副作用の疑い
TEAE 治験治療下で発現した有害事象
Tmax 最大実測血清濃度の時間
TRAF 腫瘍壊死因子受容体活性化因子
Vd 分布容積
WBC 白血球
【実施例】
【0072】
実施例1:進行期の固形腫瘍を有する患者における抗体Aの安全性、薬物動態、及び薬力学の第I相非盲検試験
抗体Aは、CD40を標的とするアゴニスト性ヒトモノクローナル(IgG1)抗体であって、進行期の固形腫瘍の治療のために調査される。この第I相非盲検試験は、進行期の固形腫瘍を有する患者においてIV注入として投与された抗体Aの安全性、薬物動態、及び薬力学を評価し、第II相推奨用量(recommended Phase 2 dose、RP2D)及びスケジュールを確立するように設計されている。試験の第2部では、追加の安全データが生成されることとなり、抗体Aの治療有効性は、失敗したか、又は承認された有効療法に適格ではない非小細胞肺癌(NSCLC)、膵癌、及び皮膚黒色腫を有する対象の拡大コホートにおいて調査されることとなる。
【0073】
試験設計の概要
第1部、用量漸増:75μg/kgから始まる漸増する抗体Aの用量は、第II相推奨用量(RP2D)を決定するために、進行期の固形腫瘍を有する対象における改正連続再評価法(modified continual reassessment method、mCRM)の設計において調査される。用量は、半対数的な(3.2倍)の用量増分以下だけ増加される。抗体Aの最大耐量(maximum-tolerated dose、MTD)及び/又はRP2Dが定義されるまで、あるいは最大用量(maximum-administered dose、MAD)に達するまで、用量漸増が続くこととなる。
【0074】
・ MTDは、DLT評価期間中にEWOC原理を用いて、統計モデル(BLRM)によって誘導されたPK/PD及び安全性データの評価から明らかになる最も高い抗体Aの用量である。
・ MADは、投与される抗体Aの最大用量として定義される。
・ RP2Dは、ベイジアンロジスティック回帰モデル(Bayesian Logistic Regression Model、BLRM)に従って、利用可能な全てのPK/PD、安全性、及び有効性データのレビュー後に決定されることとなる。
【0075】
第2部、用量拡大:抗体Aは、それぞれ、安全性及びPK/薬力学(pharmacodynamic、PD)特性を更に特徴付けるために、かつNSCLC、膵癌、及び皮膚黒色腫を有する対象におけるこの薬剤の有効性を評価するために、約30人の対象の拡大コホートにおいてRP2Dで投与されることとなる。
【0076】
第2部(用量拡大)は、RP2D決定後に開始して、(1)選択された疾患集団における抗体Aの安全性及びPK/PD特性に関する追加情報を収集し、(2)NSCLC、膵癌、及び皮膚黒色腫を有する対象における試験薬の臨床活性を評価することとなる。拡大コホートは、各々約30人の対象からなる。
【0077】
バイオマーカー下位試験:追加のバイオマーカーを評価して、腫瘍における先天性免疫応答及び適応免疫応答に対する抗体Aの影響を定義する。
【0078】
【0079】
対象
対象は年齢18歳以上でなければならず、米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group、ECOG)の一般状態スコアが0又は1でなければならない。
【0080】
第1部:転移性又は切除不能である任意のタイプの進行性又は難治性の固形悪性腫瘍を有する対象は、第1部の登録に適格である。対象は、全ての標準的な治療選択肢を受けたか、又は追加の標準治療選択肢にもはや適格ではない。
【0081】
第2部:組織学的に又は細胞学的に確認されたNSCLC、膵癌、又は皮膚黒色腫を有する対象は、第2部の登録に適格である。対象コホートは、例えば、以下を含む。
【0082】
コホート2A:
・ 組織学的に又は細胞学的に確認されたNSCLC
・ IV期疾患
・ 承認された全身療法の少なくとも2種の治療歴を有し、そのうちの1種の療法は白金含有レジメンである必要がある
・ RECISTv1.1による少なくとも1つの測定可能な腫瘍病変
【0083】
コホート2B:
・ 組織学的に又は細胞学的に確認された膵臓の腺癌
・ 切除不能疾患、局所的進行(ステージIII)疾患、又は転移(IV期)疾患
・ 承認された全身療法の少なくとも1種の治療歴
・ RECISTv1.1による少なくとも1つの測定可能な腫瘍病変
【0084】
コホート2C:
・ 組織学的に又は細胞学的に確認された皮膚黒色腫
・ 切除不能(III期)疾患又は転移(IV期)疾患
・ 承認された全身療法の少なくとも1種の治療歴
・ RECISTv1.1による少なくとも1つの測定可能な腫瘍病変
【0085】
第2部の試験は進行中である。
【0086】
試験薬剤
抗体Aは、凍結乾燥ケーキとして又は凍結液体として供給される。製剤は、20mg/mL又は40mg/mLの抗体Aを含有する。
【0087】
投与量及び投与
用量は、75μg/kgの開始用量から漸増されることとなる。投与は、IV注入によるものである。投与の初期スケジュールは、28日サイクルの14日ごと(Q14d)(1日目及び15日目)である。投与は、最初に2時間にわたるIV注入によるものである。
【0088】
注入前及び注入後の推奨支持療法
抗体Aの各注入前に、対象は、表1に記載されるように注入前の投薬を受けることとなる。
【0089】
【表1】
IV=静脈内
a安全性評価チーム(Safety Evaluation Team、SET)によって明示的に義務付けられていない場合、任意
【0090】
コルチコステロイドの事前注入を伴う試験設計及びコホート及びコルチコステロイドの事前注入を伴わない試験設計及びコホートが
図2に示されている。
【0091】
抗体Aの各注入後、以前の投与中又は投与後の抗体A関連毒性を経験した対象は、表2に記載されるように、注入後の投薬を服用しなければならない。
【0092】
【表2】
IV=静脈内
aJNJ-64457107関連毒性の症状がない場合、注入後の投薬は、注入の終了後最大48時間与えられてもよい。
b治験責任医師は、更なるコルチコステロイドの支持が必要である場合、臨床判断を使用する必要がある。
c第1の用量の試験薬の投与から12時間後に経口又はIV開始。JNJ-64457107投与後48時間に限定することが推奨される。
【0093】
評価
安全性の評価
安全性の評価は、各時点での、有害事象報告の医学的検討及び臨床検査試験の結果、心電図(ECG)、バイタルサイン測定値、理学的診察、ECOGの一般状態スコア、及び他の安全評価に基づく。
【0094】
薬物動態及び免疫原性
試験に参加している全ての対象について、血液又は血清試料を使用して、PK並びに抗体Aの免疫原性を評価した。抗体Aの血清濃度の測定(およそ5mLの測定)及び抗抗体A抗体(組み合わせられたPK及び免疫原性試料に対しておよそ7.5mL、それ以外の免疫原性試料単独に対して5mL)の評価のために静脈血を収集することとなる。静脈血試料を収集し、PK及び免疫原性試料の両方が収集された場合、各時点に対して、各血清試料を3等分したアリコート(PK、抗抗体A抗体、及びバックアップ用に各1つ)に分割し、その他、PK試料のみが収集された場合は、各時点に対して、2等分したアリコートに分割される。
【0095】
治験依頼者により、又はその監督下で血清試料を分析して、検証されている特異的かつ感受性の高いアッセイ法を用いて抗体Aの濃度を決定する。治験依頼者により、又は治験依頼者の監督下で検証済みのMescoScale Discovery(MSD)Platformアッセイ法を用いて抗体Aに対する抗体の検出及び特性評価を行うこととなる。抗体Aに対する抗体を検出するために採取された全ての試料を抗体Aの血清濃度についても評価することで抗体データの解釈が可能となる。
【0096】
バイオマーカー
抗体Aの作用の分子モードを調査するために、かつ療法に対する応答を予測することができると考えられるバイオマーカーを調査するためにバイオマーカーが評価される。この試験のためのバイオマーカーの目的は、CD40受容体占有率、先天性免疫応答、CD40活性化マーカー、Fc依存性エフェクター機能、及び腫瘍組織でのCD40発現の試験を包含している。任意選択的なバイオマーカーの下位試験は、抗体Aを組み込んだ薬物の組み合わせ機会を特定する目的で、CD40エンゲージメント後の免疫細胞の変化を評価するために、薬物前生検及び薬物後生検を使用することとなる。
【0097】
有効性評価
有効性評価は、全ての対象に対するコンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴映像法(MRI)及び前立腺癌を有する対象に対する骨スキャンが含まれることとなる。病害応答は、固形腫瘍における反応評価(RECIST)v1.1基準に従って、かつ免疫関連の反応基準(irRC)に従って評価されることとなる。前立腺癌臨床試験ワーキンググループ3(PCWG3)基準35を使用して、前立腺癌を有する対象に対する病害応答を評価することとなる。受容体占有率を含むPKとPDとの間の関係を調査し、別個の報告で報告することとなる。
【0098】
統計的方法
データは、記述統計量を使用して要約される。連続変数は、必要に応じて観測結果数、平均値、標準偏差、中央値、及び範囲を使用して要約される。カテゴリ値は、必要に応じて観測結果数及び百分率を使用して要約される。時間-事象エンドポイントの分布は、カプランマイヤー法を使用して推定される。
【0099】
結果
人口統計及び内訳:年齢18~80歳(中央値59)の95人の患者が、コルチコステロイドありの7個のコホート(n=50、75μg/kg~2000μg/kg)及びステロイドなしの5個のコホート(n=45、75μg/kg~1200μg/kg)に登録され、1~26(中央値3)周期の抗体A(
図2)を受けた。ほとんどの患者は、進行性疾患(n=62、76%)のために中止されている。
【0100】
安全性の結果
表3に示すように有害事象(adverse event、AE)の大部分はグレード1(G1)又は2(G2)であり、グレード3(G3)以上のAEを有する患者の数は限られていた。
【0101】
【0102】
図3に示すように、輸液関連反応(IRRs)は、患者の51%で報告された(G1~G2:50%、G3:1%)。最も一般的なIRR(>10%)は掻痒(31%)、発疹(15%)、冷感(13%)、及び潮紅(12%)であった。高い掻痒発生に基づいて、新しい投薬前計画を実施した。セチリジン及びモンテルカストは、各抗体A注入の3日前から最大3日後に事前投薬/事後投薬として投与され、IRRを有意に減少させたことが示され、掻痒が報告されなかった。
【0103】
2つの用量制限毒性(DLT)、すなわち、コルチコステロイドありの1200μg/kgにおいて5日間の継続的なG3の頭痛、及びコルチコステロイドなしの1200μg/kgにおいてG3のALT/AST+G2のビリルビン増加が報告された。
【0104】
薬物動態の結果
抗体Aの予備的なPKは、血清濃度の急速な低下を伴う標的媒介性ドラッグディスポジションを示すように思えた(半減期:600μg/kgで約13時間、用量≧1200μg/kgで約24時間)(
図4)。複数の隔週投与後に蓄積は観察されなかった。限定されたデータに基づいて、標的飽和は約1200μg/kgで認められた。平均C
max及びAUC
0~24hの増加(
図5)は1200μg/kg未満の用量で用量比例より大きく、1200μg/kg以上の用量で用量比例であった。免疫原性データは、抗体Aに対する抗体の低い発生率を示した(約10.5%)。
【0105】
薬力学的結果
B細胞、T細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞の用量依存的な辺縁趨向を、抗体Aの注入後に観察し、用量依存的なB細胞の回復は競合抗CD40アゴニスト抗体の観察と一致した。NK細胞及びT細胞は、最低用量(75μg/kg)を除いて、試験した全ての用量での注入後に末梢血中で減少し、両方のレベルは、試験8日目に完全に回復した。
図6A~
図6Cを参照されたい。
【0106】
末梢ケモカイン(MCP-1、IP-10、及びMIP-1β)は、末梢血において顕著であり、注入の1~4時間後にピーク化する。これは骨髄細胞活性化と一致する。サイトカイン(IFN-γ、TNF-α及びIL12p70)及びケモカイン(MIP-1α及びIL-8)もまたより小さい程度であるが観察された。他のCD40アゴニスト抗体によるサイトカインストームの誘導に関連しているIL-6のレベルは、抗体Aの注入後、多くなかった。
図7A~
図7Iを参照。
【0107】
末梢B細胞の表現型染色は、他のアゴニスト抗体からのデータと一致する活性化/成熟マーカー(HLA-DR、CD54、CD80、及びCD86)の蛍光強度の増加を示した(
図8A~
図8D)。
【0108】
臨床活性の結果
臨床活性の早期兆候は、腎細胞癌を有する患者及び6ヶ月以上の長期安定性疾患を有する10人の患者における部分奏効を含んでいた。
【0109】
考察
CD40アゴニスト抗体Aは、好ましいPK及びPD特性を有する扱いやすい安全性プロファイルを有する。予備的な抗体AのPKは、中程度の変動性で1200μg/kg以上の用量で線形比例及び用量比例する。抗体Aは、選択されたケモカイン、特にMCP-1及びIP-10のレベルの増加、並びに注入後のB細胞、T細胞、及びNK細胞の辺縁趨向をもたらし、後続の回復を伴った。残りの末梢B細胞は、活性化/成熟マーカーの増大を示した。
【0110】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、具体的な説明によって定義された本発明の趣旨と範囲内の変更をカバーすることが意図されていることが理解される。
【配列表】
【国際調査報告】