(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(54)【発明の名称】平衡化された負荷を用いる双極投影型ハプティクス
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/041 422
G06F3/041 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570336
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 US2020034824
(87)【国際公開番号】W WO2020243236
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516245852
【氏名又は名称】タンヴァス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TANVAS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【氏名又は名称】福島 正憲
(72)【発明者】
【氏名】コルゲート,ジェームズ,イー
(72)【発明者】
【氏名】モンデル,シェリフ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,デイヴィッド,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,クレイグ
(57)【要約】
間接ハプティックデバイスは、上面及び下面を有する基板と、上面上に配置された複数のハプティック電極及び複数のアイランド電極とを備える。デバイスは、下面上に配置された複数の送信電極及び複数の受信電極と、位置センサーと、摩擦モジュレーターとを更に備える。デバイスは、ユーザーの四肢のタッチ位置を検出することと、ユーザーの四肢とタッチ面との間の摩擦を変調することとを行うために複数の送信電極に双極電気信号を印加するように構成された制御デバイスを更に備える。複数のハプティック電極のそれぞれは、複数の送信電極のうちの対応する2つに実質的に整列し、この対応する2つに容量結合される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び下面を含むタッチ面を有する基板と、
前記基板の前記上面上に配置された複数のハプティック電極及び複数のアイランド電極と、
前記基板の前記下面上に配置された複数の送信電極及び複数の受信電極と、
前記タッチ面上でのユーザーの四肢の1つ以上のタッチ位置を検出するように構成された位置センサーと、
前記基板に関連し、前記ユーザーの四肢と前記タッチ面との間の摩擦を変調するように構成された摩擦モジュレーターと、
前記位置センサー及び前記摩擦モジュレーターに接続された制御デバイスと、
を備え、
前記制御デバイスは、前記タッチ面上でのユーザーの四肢の1つ以上のタッチ位置を検出することと、前記ユーザーの四肢と前記タッチ面との間の摩擦を変調することとの双方を行うために前記複数の送信電極に双極電気信号を印加するように構成され、
前記複数のハプティック電極のそれぞれは、前記複数の送信電極のうちの対応する2つに実質的に整列し、該対応する2つに容量結合される、間接ハプティックデバイス。
【請求項2】
前記複数の送信電極は、前記複数のハプティック電極のうちの第1のハプティック電極に対応し、該第1のハプティック電極に実質的に整列する第1の対の送信電極、及び前記複数のハプティック電極のうちの第2のハプティック電極に対応し、該第2のハプティック電極に実質的に整列する第2の対の送信電極を含み、前記制御デバイスは、ハプティック応答を生成するために、前記第1の対の送信電極に正の電圧信号を、及び前記第2の対の送信電極に負の電圧信号を印加するように構成される、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項3】
前記制御デバイスは、前記複数の送信電極のうちの第1の送信電極に正の電圧信号を、及び前記複数の送信電極のうちの第2の送信電極に負の電圧信号を印加するように構成され、前記第1の送信電極及び前記第2の送信電極は、第1のハプティック電極に実質的に整列し、前記正の電圧信号及び前記負の電圧信号によって前記第1のハプティック電極に印加される組み合わされた信号は、検知を可能にするために実質的に接地電位電圧に近い、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項4】
前記複数のアイランド電極は、前記間接ハプティックデバイスの他の導電性要素へのいずれのオーミック接続も直接接続も有しない、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項5】
前記複数のハプティック電極は、第1の方向において前記基板の前記上面にわたって横方向に延在し、前記複数の送信電極は、前記第1の方向において前記基板の前記下面にわたって横方向に延在し、前記複数の受信電極は、前記複数の送信電極及び前記複数の受信電極が複数の交点を形成するように、前記第1の方向に実質的に垂直である第2の方向において前記基板の前記上面にわたって横方向に延在し、
前記複数のアイランド電極のそれぞれは、前記複数の交点のうちの1つと前記上面上の前記対応するアイランド電極との間で容量性結合を形成するために、前記複数の交点のうちの1つに前記上面上で整列する、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項6】
前記複数のハプティック電極は、正の極性を有する第1のグループ及び負の極性を有する第2のグループを含み、前記ユーザーの四肢が前記タッチ面に接触するときの該ユーザーの電位電圧は、前記第1のグループのハプティック電極のうちの少なくとも1つの前記正の極性及び前記第2のグループのハプティック電極のうちの少なくとも1つの前記負の極性の双方によって影響を受ける、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項7】
前記ユーザーの電位電圧は、該ユーザーの四肢が前記タッチ面に接触するとき、前記複数のアイランド電極のうちの少なくとも1つの電位電圧に影響を与える、請求項6に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項8】
前記ハプティック電極の電位電圧は、前記ユーザーの四肢が前記タッチ面に接触するとき、該ユーザーの電位電圧に影響を与え、前記ユーザーの電位電圧は、前記ユーザーの四肢が接触した前記複数のアイランド電極のそれぞれの電位電圧に影響を与える、請求項6に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項9】
前記複数のハプティック電極及び前記複数のアイランド電極は、前記間接ハプティックデバイスの他の導電性要素へのいずれのオーミック接続も直接接続も有しない、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項10】
前記複数のハプティック電極は、該複数のハプティック電極のそれぞれが該複数のハプティック電極のうちの他の電極に少なくとも部分的に重積されるように配置される、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項11】
前記制御デバイスは、第1のグループの前記送信電極に正のパルスを、及び第2のグループの前記送信電極に負のパルスを印加するように構成され、前記第1のグループ及び前記第2のグループにおける電極の数は同じである、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項12】
前記基板の前記上面及び前記下面のうちの一方又は双方がエッチングされる、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項13】
前記双極電気信号は、少なくとも1つの正の信号及び少なくとも1つの負の信号を含み、前記制御デバイスは、該制御デバイスによって印加される前記信号の絶対振幅が実質的に接地電圧付近であるように、前記少なくとも1つの負の信号の振幅及び前記少なくとも1つの正の信号の振幅の前記印加を平衡化するように更に構成される、請求項1に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項14】
上面及び下面を含むタッチ面を有する基板を準備することであって、前記基板の前記上面上に複数のハプティック電極及び複数のアイランド電極が配置され、前記基板の前記下面上に複数の送信電極及び複数の受信電極が配置され、
前記複数の送信電極に双極電気信号を印加することと、
前記双極電気信号を介してユーザーの四肢の1つ以上のタッチ位置を検出することと、
前記複数の送信電極への双極電気信号の印加を介して、前記ユーザーの四肢と前記タッチ面との間の摩擦を変調することと、
を含み、前記複数のハプティック電極のそれぞれは、前記複数の送信電極のうちの対応する2つに実質的に整列し、該対応する2つに容量結合される、方法。
【請求項15】
前記複数のハプティック電極は、第1の方向において前記基板の前記上面にわたって横方向に延在し、前記複数の送信電極は、前記第1の方向において前記基板の前記下面にわたって横方向に延在し、
前記複数の受信電極は、前記複数の送信電極及び前記複数の受信電極が複数の交点を形成するように、前記第1の方向に実質的に垂直である第2の方向において前記基板の前記上面にわたって横方向に延在し、
前記複数のアイランド電極のそれぞれは、前記複数の交点のうちの1つと前記上面上の前記対応するアイランド電極との間で容量性結合を形成するために、前記複数の交点のうちの1つに前記上面上で整列する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記双極電気信号を印加するステップは、第1のグループの前記複数の送信電極に正のパルスを、及び第2のグループの前記複数の送信電極に負のパルスを印加することを更に含み、前記第1のグループ及び前記第2のグループにおける電極の数は同じである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上面及び下面を含むタッチ面を有する基板と、
前記基板の前記上面上に配置された複数のハプティック電極及び複数のアイランド電極であって、該複数のハプティック電極は、第1の方向において前記基板の前記上面にわたって横方向に延在する、複数のハプティック電極及び複数のアイランド電極と、
前記基板の前記下面上に配置された複数の送信電極及び複数の受信電極であって、該複数の送信電極は、前記第1の方向において前記基板の前記下面にわたって横方向に延在する、複数の送信電極及び複数の受信電極と、
前記タッチ面上でのユーザーの四肢の1つ以上のタッチ位置を検出するように構成された位置センサーと、
前記基板に関連し、前記ユーザーの四肢と前記タッチ面との間の摩擦を変調するように構成された摩擦モジュレーターと、
前記位置センサー及び前記摩擦モジュレーターに接続された制御デバイスと、
を備え、
前記制御デバイスは、前記タッチ面上でのユーザーの四肢の1つ以上のタッチ位置を検出することと、前記ユーザーの四肢と前記タッチ面との間の摩擦を変調することとの双方を行うために前記複数の送信電極に双極電気信号を印加するように構成される、間接ハプティックデバイス。
【請求項18】
前記複数のハプティック電極は、第1の方向において前記基板の前記上面にわたって横方向に延在し、前記複数の送信電極は、前記第1の方向において前記基板の前記下面にわたって横方向に延在し、
前記複数のハプティック電極のそれぞれは、前記複数の送信電極のうちの対応する1つに実質的に整列する、請求項17に記載の間接ハプティックデバイス。
【請求項19】
前記複数の送信電極は、第1の方向において前記基板の前記下面にわたって横方向に延在し、前記複数の受信電極は、前記複数の送信電極及び前記複数の受信電極が複数の交点を形成するように、前記第1の方向に実質的に垂直である第2の方向において前記基板の前記上面にわたって横方向に延在し、
前記基板の前記上面は、前記複数の交点のそれぞれに対応する複数の開口を有する、請求項17に記載の間接ハプティックデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年5月28日に出願された米国仮特許出願第62/853,419号及び2020年5月27日に出願された米国非仮特許出願第16/884,932号の利益及び優先権を主張し、これらの出願の開示は、引用することによってその全体が本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、ハプティックデバイスに関し、より詳細には、デバイスのタッチ面の摩擦の変調によってユーザーに間接ハプティックフィードバック及びテクスチャ感覚を提供するハプティックデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野において、人間の指がタッチ面にわたってスライドするにつれて経験される間接ハプティック効果を生成するために、指とその表面との間の摩擦を変調する静電付着(electroadhesion)の技法が知られている。静電付着効果の強度を変動させることによって生成される摩擦の変化は、振動、テクスチャ、エッジ、表面のうねり、及びボールを打つ等のイベントとして体験され得る触知効果を引き起こす。静電付着は、豊富なハプティック感覚を伝達する魅力的な技法である。なぜならば、静電付着は、機械的運動を伴わず(すなわち、固体状態であり)、電力を効率的に使用し、高帯域幅を有し、かつ、表面の異なる領域に局所化できるためである。多くの場合、タッチスクリーン等の透明なタッチ面上で静電付着を利用することが望ましい。これらの応用において、表面にタッチしている各指の位置を測定する手段を有することも望ましい。換言すれば、表面は、タッチスクリーン、トラックパッド、又は他のタッチ入力デバイスとして機能し、同時に、表面にタッチしている各指先にハプティックフィードバックも提供することが望ましい。
【0004】
静電付着は、指先とこの指先がタッチしている表面との間に存在する空隙にわたって作用する電界の形成に依存する。空隙は、皮膚の粗さ(及び場合によっては表面の粗さ)に起因して存在する。すなわち、本当の接触は、ごく少数の点において生じ、一方で、見かけ上の接触面積のうちの大半にわたって2つの表面の間に空気が留まっている。実用時には、水又は皮脂等の他の流体も存在する場合がある。他の流体の存在は、静電付着の発生を妨げない。したがって、本発明者らは、「空隙」という用語を、他の流体がその間隙を部分的に埋め得るという理解をもって使用する。空隙内の電界は、皮膚に含まれる束縛電荷又は分極電荷と表面との間に引力をかける。引力のこの増大は、摩擦の増大を引き起こし、これは別様には摩擦変調とも呼ばれる。所与のシステム構成について、摩擦変調効果の強さは、主に空隙内の電界の強さに依存する。実用的なデバイスにおいて、電界を生成するために可能な限り低い電圧を使用することが望ましい。
【0005】
大まかな目安として、経験的に、指と防眩ガラス等の軽度にテクスチャ加工された表面との間の空隙は、平均して約2ミクロンであることが明らかにされている。このサイズの間隙において、破壊させることなく維持することができる最大電界は、好ましくは約1e8V/mであるが、その数値は、空隙のサイズを含む様々な要因に基づいて変動し得る。この電界強度において、最大の有用な電圧は、好ましくは2e-6m×1e8V/m=200Vであるが、その数値も、同様に空隙のサイズを含む様々な要因に基づいて変動し得る。実用時には、幾分か低い電圧により、安全性及び信頼性のための余裕を提供することができる。解説の目的で、ここでは、空隙にわたって100Vを生成することが望ましいと仮定するが、より低い又はより高い電圧を使用してもよい。
【0006】
100Vは、便利な値である。なぜならば、数百ボルト以下の電圧を切り換えるための集積回路を構築するのに使用され得る多くのシリコンプロセスが存在するためである。しかしながら、設計を複雑化させ、かつ、より高い電圧を要求する傾向がある他の要因が存在する。
【0007】
第1の複雑化の要因は、絶縁最上層が要望されることであり、これは、多くの場合、タッチスクリーンの長寿命を確実にするための要件である。タッチ面が導通している場合、空隙は、特に水の存在下では、接触点によって短絡する傾向がある。加えて、システムが透明である必要がある場合、透明導体を過度な摩耗及び摩損に晒すことなく上面上にこの透明導体を配置することは困難である。これらの理由で、静電付着システムは、典型的には、導体に、耐久性がある絶縁層をコーティングする。しかしながら、この層は、空隙と電気的に直列である。したがって、印加電圧のうちの一部は絶縁層にわたって降下し、それゆえ、空隙に印加すべき利用可能な電圧が低下する場合がある。
【0008】
材料特性、電界強度、及び厚さだけでなく周波数に応じて、絶縁層の電気インピーダンスは、複素リアクタンス、抵抗、又はこれら双方の組み合わせによって構成され得る。しかしながら、この複雑なインピーダンス挙動は、より複雑度が低い線形のキャパシタンスモデル及び線形の抵抗モデルによって表すことができる。説明の目的で、絶縁層は、本明細書において専ら直列線形キャパシタンスとして記載されるが、本発明は、その事例に限定されない。C_iが絶縁層の集中キャパシタンスであり、かつC_gapが空隙の集中キャパシタンスである場合、空隙にわたって100Vの電圧降下を生成するのに必要であり得る印加電圧は、以下のとおりである。
V_applied=[(C_i+C_gap)/C_i]*100ボルト
【0009】
例えば、C_i=C_gapである場合、V_appliedは200Vとなる。一般に、C_iの値が大きくなると、動作電圧が低くなる。これは、より薄い絶縁体は高い比誘電率を有することと一致する。例えば、絶縁層が6ミクロン厚で、かつ3の比誘電率を有する場合、絶縁層は、2ミクロンの空隙(1の比誘電率を有すると想定した場合)と同じキャパシタンスを有する。
【0010】
上記から、絶縁層は、実用上の設計において非常に薄くしてもよい(ただし、層の抵抗が十分に低いか又は比誘電率が十分に高い場合、より厚くてもよい)ことが明らかである。絶縁層が薄い場合、第2の実用上の問題は、砂の粒が、下にある電極を損傷させ得るように表面にわたって引きずられること等に起因して、かき傷が生じ得るということである。この問題に対する部分的な解決策は、絶縁層が極めて耐傷性であることを確実にすることである。しかしながら、この解決策のみに頼ることはできない場合がある。別の解決策(先の発明(米国特許第10,120,447号並びに米国特許出願第15/178,283号及び同第15/606,440号。これらは、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)において記載されている)は、より深層の、より保護された層に配置される電極の別のセットへの容量性結合を介して導電層(電極のセットにパターニングされている場合がある)をアクティベートすることである。米国特許第10,210,447号の
図6に示されているような典型的な実施形態において、電極の双方のセットが同じガラスシート上にパターニングされている。すなわち、「ハプティック電極」は、タッチ面上にあり、上記で言及された薄い絶縁層によって覆われ、「送信電極」は、下面上にあり、ガラスシートの全体厚さによって保護される。従前では、この配置は、ハプティック電極及び送信電極の形状をほぼ同じとすることができ、電極を、ガラスシートを通した容量性結合が最大化されるようにほぼ整列した状態とすることができることから、「鏡像配置」電極と記載されてきた。この配置の利点は、ハプティック電極がかき傷によって損傷したとしても、依然として送信電極に結合することによってハプティック電極をアクティベートすることができるということである。
【0011】
送信電極からハプティック電極へのキャパシタンスも空隙キャパシタンスと電気的直列であり、それにより更なる電圧降下が引き起こされる。しかしながら、この電圧降下を推定する前に、以下の1つの更なる問題、すなわち、双極動作に対処しなければならない。
【0012】
特許文献1は、ハプティック電極が、タッチ面上に置かれた指が2つ以上の電極を覆うようなパターンにおいて配置されるアーキテクチャを記載している。これらの電極が身体の接地点に対して逆極性に駆動される場合、空隙にわたる電圧降下は、身体の接地点への結合の強度には比較的依存しない。換言すれば、十分に接地された身体も、不十分に接地された身体も、同じ強度のハプティクスを感じるはずである。これは、完全な強度のハプティクスを伝達するために身体が十分に接地されていることを要求した従来技術に優る大きな進歩であった。
【0013】
上記で提示された着想は、従来技術において利用可能であり、実用的な静電付着デバイスを作成するために使用することができる。しかしながら、必要とされているものは、これを、タッチ面と相互作用している複数の指先の位置を測定及び追跡する能力であるマルチタッチ検知と組み合わせる手段である。実用的なマルチタッチセンサーは、指先ではない水滴や掌等のものを識別できるべきである。従来技術は、様々な手法を提案しているが、それらのうちのいずれも、その大半が相互キャパシタンス測定に基づく現行技術水準のタッチセンサーと同程度にロバストであるとは証明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【0015】
本発明は、非常にロバストなマルチタッチ検知、及び同時に、非常にロバストな静電付着ベースハプティクスを提供する統合されたシステムである。相互キャパシタンスに基づくタッチセンサーと同様に、本発明は、送信電極(Tx)のセット、受信電極(Rx)のセット及び各Tx-Rx交点に対応する測定に基づいており、タッチ位置をそこから抽出することができる2次元画像をもたらす。しかしながら、その詳細は、このセンサーシステムを静電付着ベースハプティクスと統合する必要性によって非常に異なる。
【0016】
本発明の例示的な実施形態において、上面及び下面を含むタッチ面を有する基板と、基板の上面上に配置された第1のセットの電極と、基板の下面上に配置された第2のセットの電極とを備える間接ハプティックデバイスが提供される。デバイスは、タッチ面上でのユーザーの四肢の1つ以上のタッチ位置を検出するように構成された位置センサーと、基板に関連し、ユーザーの四肢とタッチ面との間の摩擦を変調するように構成された摩擦モジュレーターとを更に備える。加えて、位置センサー及び摩擦モジュレーターに制御デバイスが接続され、制御デバイスは、タッチ面上でのユーザーの四肢の1つ以上のタッチ位置を検出することと、ユーザーの四肢とタッチ面との間の摩擦を変調することとの双方を行うために第2のセットの電極に双極電気信号を印加するように構成される。
【0017】
本発明の例示的な実施形態において、上面及び下面を含むタッチ面を有する基板を準備することを含む方法が提供され、第1のセットの電極が基板の上面上に配置され、第2のセットの電極が基板の下面上に配置される。この方法は、第2のセットの電極への双極電気信号の印加を介してタッチ面上でのユーザーの四肢の1つ以上のタッチ位置を検出することと、第2のセットの電極への双極電気信号の印加を介して、ユーザーの四肢とタッチ面との間の摩擦を変調することとを更に含む。
【0018】
本発明の上記の特徴及び利点は、以下の図面と併せた以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】ハプティック電極及び検知電極を有するタッチパネルの上面図である。
【
図1B】ハプティック電極及び検知電極を有するタッチパネルの底面図である。
【
図1C】ハプティック電極及び検知電極を有するタッチパネルの側面図である。
【
図3】指の位置に近い領域における電位及びキャパシタンスの部分図である。
【
図4】Hx電極対が互いにより深く重積されているタッチパネルの別の例示的な配置の図である。
【
図5】より薄い電極を伴う、Hx電極及びTx電極の重積に対する更に別の例示的な手法の図である。
【
図6】タッチパネル上の電極の上方及び電極の近くの様々な点への指の配置の効果の図である。
【
図7】本開示によるタッチパネルの別の例示のレイアウトである。
【
図8】本開示によるタッチパネルの更に別の例示のレイアウトである。
【
図9A】本開示の1つの実施形態による、ガード電極を有するタッチパネルの図である。
【
図9B】同様に本開示の1つの実施形態による、ガード電極を有するタッチパネルの図である。
【
図11】タッチパネルの1つの例示の構成の図である。
【
図12】タッチパネルの別の例示の構成の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1A、
図1B及び
図1Cは、第1の実施形態の構成を示している。この実施形態において、4つのタイプの電極が、1枚のガラス10のために提供され、その上に配設される。タッチ面18から離れたガラス10の下側16上に、送信(Tx)電極12及び受信(Rx)電極14が配置される。ガラス10の上側(タッチ側)18上に、ハプティック(Hx)電極20及びアイランド(Is)電極22が配置される。他の構成が可能であることに留意されたい。例えば、複数のタイプの電極のそれぞれを、異なる層上に配置してもよく、層は、異なる基板上に配設してもよく、それらの基板は、更なる処理ステップにおいて組み立て(例えば、積層)してもよい。基板は、ガラスである必要はなく、プラスチック、セラミック、又は天然材料等の他の絶縁又は半導電性材料であってもよい。代替的な構成が、本文書において後述される。
【0021】
この実施形態において、Txライン12及びHxライン14は、ガラス基板の1次元にわたって横方向に延在してもよく、整列され、実質的に類似の形状を有する。電極は、基板にわたって横方向に延在する必要はなく、局所化されたパッチ又はジグザグ等の異なる形態を取ってもよい。この実施形態において、Txライン12とHxライン14の容量性結合を最大化するために、Txライン12は、下側16の面積のうちの大半を占め、一方、Hxライン14は、上側18の面積のうちの大半を占める。好ましい実施形態において、ガラス基板10は、0.7mm以下の厚さ、好ましくは0.4mm以下の厚さであってもよく、ガラス基板10の比誘電率は、少なくとも3であるが、より高い、例えば6以上の比誘電率が好ましい。
【0022】
この実施形態において、Rxライン14は、Txライン12に垂直に走っていてもよく、実質的に同じ導電層から形成されてもよく、この同じ導電層は、45オーム/スクエア(ops:ohms per square)の抵抗率を有する酸化インジウムスズ(ITO)であってもよい。他の導体及び他の抵抗率を使用してもよい。Txライン12とRxライン14が交差する場合、接続性を確実にするために導電ブリッジ24を形成してもよい。ブリッジ24は、連続する電極上にポリマーのパッチを、次にポリマー上に金属のストリップを配置することや、不連続の電極の両側を接続すること等の、当該技術分野において既知の技法を使用して形成してもよい。好ましい実施形態において、Rx電極14は連続しており、Tx-Rx交点26ごとに2つのブリッジ24が(
図2に示されるように)形成される。2つ以上のブリッジの使用により、抵抗が低下し、信頼性が高まる。加えて、各Tx-Rx交点26において、Txライン12とRxライン14の双方が、交点26に整列してガラス10の反対側上に配設されるアイランド(Is電極)22に対する有意な容量性結合を行うのに十分な面積を有するべきである。好ましい実施形態において、Is電極22は、中心ハブから延びる8つのスポークからなる「アスタリスク」形状を有するが、多様な他の形状を使用してもよい。下層のRx電極14は、スポークのうちの4つに整列してもよく、一方、下層のTx電極12は、残りの4つのスポークに重なる。この配置は、Txライン12及びRxライン14の双方から対応するIs電極22への容量性結合を確実にし、その利点は、以下で論述される。
【0023】
好ましい実施形態において、Is電極22は、Hx電極20の領域内にそれぞれ配設される。この実施形態において上側18上にブリッジは必要とされない。なぜならば、全てのHx電極20及びIs電極22が、同じ導電シートから形成されるためであり、同じ導電シートは、150opsの抵抗率を有するITOであってもよいが、より低い又はより高い値も使用してもよい。電極のパターニングは、フォトリソグラフィ、スクリーン印刷(screen printing)、又はレーザーアブレーション等の、当該技術分野において既知の技法によって達成してもよい。
【0024】
好ましい実施形態において、近傍のHx電極20同士の間の距離(当該技術分野において消去ライン幅としても知られている)は、近傍のTx電極12同士の間の距離よりも大きい。例えば、近傍のHx電極20同士の間の距離は、200ミクロンであってもよく、一方、近傍のTx電極12同士の間の距離は、60ミクロンであってもよい。近傍のHx電極20同士の間の距離が近傍のTx電極12同士の間の距離以下である実施形態を含めて、他の距離を同様に使用してもよい。また、近傍の電極同士の間の全てのITOをなくすのではなく、典型的には小パッチの形態である、ある程度の量のITOは、消去ラインの視認性を最小化するために維持してもよい。
【0025】
図3は、指28の位置に近い、好ましい実施形態の領域における電位及びキャパシタンスの部分図である。
図3は、単に解説のためのものであり、縮尺に関して正確ではなく、実際のシステムにおいて現れる容量性結合の全てを示しているわけではないことに留意することが重要である。本開示の重要な概念はハプティクス及び検知に関するものなので、
図3は、それらを明らかにするためにここで使用される。
図3は、2つのTx電極12(n及びn+1と付番される)を示しており、それらの双方が紙面内に延びる。また、紙面の左から右に延在する単一のRx電極14(番号m)が示されている。実用時には、Tx電極12及びRx電極14は、同じ平面上にあってもよく、又は、異なる平面上にあってもよい(例えば、Rx電極14がTx電極12の下方又は上方の平面上にある)。同様に、Tx電極12に整列し、実質的にTx電極12と同じ形状である2つのHx電極20(n及びn+1と付番される)が示されている。しかしながら、各Hx電極20内には多数のアイランド(Is)電極22が位置しており、それらのうちの2つが示されている(n×m及びn+1×mと付番される)。Hx電極20及びIs電極22の双方が、他のHx電極20及びIs電極22、身体、並びに電気サブシステムの残りの部分からだけでなく、Tx電極12及びRx電極14からも、電気的かつ導電的に絶縁、又は離隔されることが留意されるべきである。これは、Hx電極20及びIs電極22が他の導電性素子に対するオーミック接続も直接接続も作成せず、代わりに電気的に浮遊したままであることを意味する。したがって、任意の所与の電位を想定するために、Hx電極20及びIs電極22は、局所的容量性結合を介して付近の素子(Tx電極12/Rx電極14、他のHx電極20/Is電極22、指28等)とのみ相互作用することができる。また、
図3は、指28が双方のHx電極20と相互作用しているが、一方のIs電極22と、他方に比べてはるかに強く相互作用している位置にある指28を示している。同様に、
図3において、2つの高電圧レールと、一方のTx電極12を正の電圧に接続するスイッチ、及び他方のTx電極14を負の電圧に接続するスイッチとが示されている。多数の関連するキャパシタンスが示され、ハプティクス及び検知の論述において参照される。
【0026】
この図示された好ましい実施形態において、身体電位及びデバイス電位(様々なTx電極、Rx電極、Hx電極、及びIs電極の電位を含む)は双方とも同じ局所アース接地を基準とすることに留意されたい。しかしながら、この構成は、例示のためにすぎず、本発明の必要条件ではない。他の実施形態において、デバイスは、例えば絶縁変圧器又はローカルバッテリー電力源等の既知の技法を使用することによって、局所アース接地からガルバニック絶縁してもよく、それゆえ、全てのデバイス電位は、身体、又は他の何らかの点の電位を基準としてもよい。加えて、身体電位は、追加のガルバニック(直接)接続又は強力な容量性結合接続を介して局所接地電位に保持しても保持しなくてもよい。実際、本明細書において開示される検知及び静電付着駆動技法に対する1つの利点は、この技法が、身体及びデバイスの双方の様々な接地条件に対してロバストであるということである。
【0027】
強力な静電付着効果を達成するために、Hx電極20電位と人体電位との間の差は、好ましくは可能な限り大きく、空隙にわたって最大可能電界を作成する。この例示的な事例では、人体電位は、局所アース接地に近いものと仮定され、これは、C_bodyが放電状態であることを意味し、一方、各Hx電極20は、その関連付けられたTx電極12の電位に可能な限り近い。図示された構成において、Tx_nは、局所アース接地を基準として+Voボルトに設定され、一方、Tx_n+1は-Voボルトに設定される。指28がない場合、ハプティック電極が以下の電位を達成することを示すことができる。
Hx_n=[C_z/(C_z+2*C_HH)]*Vo
Hx_n+1=-Hx_n
【0028】
ハプティック電極電位を最大化するために、各Hx電極20とその鏡像配置Tx電極12との間のキャパシタンスであるC_zを最大化し、近傍のHx電極20同士の間の相互キャパシタンスであるC_HHを最小化することが望ましい場合がある。前者は、より幅広かつより長いHx(及びTx)電極を使用し、より大きい比誘電率を有するより薄いガラス基板を使用することを提案する。後者は、近傍のHx電極20同士の間のより幅広の消去ラインを提案する。加えて、近傍のTx電極12同士の間の消去ライン幅がより狭い(すなわち、Tx電極12がHx電極20よりも幅広である)場合、Tx電極12は、遮蔽効果を有することになり、C_HHが一層低下する。これは、簡略化された解析であり、関与し得る他の要因が存在する。例えば、他のTx電極12に他の電圧が印加される場合があり、このことが、ひいては、Hx電極20の電圧に影響を与え得る。
【0029】
指28が双方のHx電極20の上方に位置する場合、指28は、追加の相互キャパシタンス(すなわち、追加C_HH)として機能することができ、Hx電圧を更に低下させることができる。指の半分がHx電極20の各極性を覆う場合、ハプティック電極が以下の電位を達成することを示すことができる。
Hx_n=[C_z/(C_z+2*C_HH+0.5*C_HF)]*Vo
Hx_n+1=-Hx_n
【0030】
ハプティック電極電位を最大化するために、Hx電極20のセット全体と指との間のキャパシタンスであるC_HFを最小化することが望ましい場合がある。しかしながら、静電付着効果もC_HFの大きさに依存することが理解されるべきである。したがって、所与のタッチパネル設計についてC_HFの最適値が存在し得る。C_HFは、Hx電極及びIs電極を覆う絶縁層の厚さ、組成、又は粗さを変更することによって調整することができる。代替的に、C_HFは、Hx電極20及びIs電極22自体を変更することによって調整してもよい。例えば、導体の連続シートからこれらの電極を形成する代わりに、これらの電極は、導体のグリッドから、又は多くの小孔を有するシートから形成してもよい。導体の面密度は、さらに、できるだけ最も均一な電界強度を確実にするためにHx電極又はIs電極上の位置に従って調整することができる。更に別の代替形態として、Hx電極20及びIs電極22は、異なる部分が異なる電位を達成するように細分化してもよい。これによって、例えば、タッチ面上の指の位置にかかわらず、均一な静電付着強度の達成を助けることができる。
【0031】
好ましい実施形態において、Hx(及びTx)電極は、5mm幅であり、タッチ面の全長にわたるが、0.1mmほどの幅の狭い電極又は20mmほどの幅の広い電極を使用してもよく、Hx電極20同士の間の消去ライン幅は、200ミクロンであるが、10ミクロンほどの狭い幅又は1mmほどの広い幅を使用してもよく、Tx電極12同士の間の消去ライン幅は、60ミクロンであるが、10ミクロンほどの狭い幅又は1mmほどの広い幅を使用してもよい。ガラス厚さは、0.4mmであることが好ましいが、0.025mm~3mmの厚さを使用してもよい。また、ガラス比誘電率は、6~7であるが、3~80の比誘電率を使用してもよい。実際、基板は、全くガラスでなくてもよく、プラスチック、サファイア、又はセラミック等の別の誘電材料であってもよい。
【0032】
双極ハプティクス及び身体の電位
一般に、身体の電位は、アース接地の電位ではない場合があり、これは、C_bodyは放電されていないことを意味する。摩擦帯電(triboelectrification)等の外部因子が身体の電位に影響を与える場合があるが、簡略化するために、これらの要因はここでは無視する。より重要なのは、Hx電極20自体がデバイス接地を基準とした身体の電位に影響を与える場合があるということである。Hx電極20を覆う絶縁体は典型的には非常に薄いので、面にタッチしている指(又は他の身体部位)28はそれらの電極に強力に結合される場合がある。指28が単一のHx電極20のみに強力に結合された場合、身体の電位は、Hx電極20の電位に従う傾向にある。身体の電位がアース接地、ひいてはデバイス接地に弱く結合される状況では、これによって、身体とHx電極20との間の電位差は小さくなり、ハプティック効果は弱くなる。デバイス接地がアース接地から完全に離隔されている条件では、これは、身体とHx電極20との間に電位差を残さず、実質的に全くハプティック効果をもたらさない。これらの理由(及び検知を含む他の理由)で、Hx電極20は、ここで説明される双極方式で動作することが好ましい。その上、Hx電極20は、指28が常に2つ以上のHx電極20にタッチするに構成してもよい。この目標を達成する様々な電極幾何形状がある。
図1Aは、Hx電極20が、ストリップであるが、指28が常に2つ以上のHx電極20にタッチすることになるように十分に薄い、好ましい実施形態を示している。
図4は、Hx電極20対が、指が各極性のHx電極20対を覆うことを確実にする程度まで更に一層、互いにより深層に重積されている、別の例示の配置を示している。3列の深層に重積された双極電極が示されている。白色の「プラス」は、アイランド電極22であり、Hx(及び図示されていないが、「鏡像配置」されるTx)電極20は、対になって配置される。この画像において、淡灰色の電極(図示せず)の下のTx電極12は、は、一方の極性でアクティベートされ、濃灰色の電極(図示せず)の下のTx電極12は、逆極性でアクティベートされる。他のHx電極20の下のTx電極12は、デバイス接地電位に保持される。電極の重積は、Hx対20上の任意の場所に置かれた指28が各極性の概ね同じ面積を覆う可能性が高いことを確実にするように意図され、それゆえ、身体電位が2つの極性の平均近くに維持される。これは、画像内の円30によって示されており、これは、指先の接触が8mm径を有することを表している(Is電極22は、この実施形態において5mmグリッド上に展開されている)。見て取ることができるように、指28の下の各極性(淡灰色及び濃灰色)の量は、略等しく、これは、ほとんどの指位置についても同様である。
【0033】
図5は、Hx電極20及びTx電極12の重積に対する異なる例示の手法を示しており、これは、より薄い電極を伴う。この実施形態において、アイランド電極22は
図1及び
図4に示された同じ5mmピッチであるものの、Hx電極20及びTx電極12は2.5mmピッチである。これには2倍のTxライン12が必要となるが、この設計は、指28が両極性の略等しい部分と接触することを確実にすることに加えて、別の利点を有する。第2の利点は、各Rx(図示されていないが、図面において垂直に走っている)電極14が、1つの極性のみに応答することである。それゆえ、(以下で論述されるような)差動信号をもたらすのではなく、この方式は、それぞれが接地に対する単一の方向において変動する信号をもたらす。代替的には、2つの近傍のRxライン14をともに接続することができ、本開示において論述される平衡検知方法を適用することができる。
【0034】
これらのような重積された幾何形状(及びここで当業者には明らかであるはずの多くの変形形態)及び双極動作を用いると、身体電位は、デバイス接地に近い、2つのHx電極20の電位の中間にあることが保証される。本質的に、身体は、2つの逆極性のHx電極20によって仮想デバイス接地近くに、能動的に保持される。仮想接地という用語は、ここでは、身体が低インピーダンスのシンク又は源として使用されることを示すのではなく、2つのHx電極20によって平均して単に影響を受けないことを示すのに使用される。言い換えれば、双極ペアとしてHx電極20を動作させることは、デバイス及びデバイス接地に対する身体電位への全体効果を相殺、又は平衡化する機能を担う。
【0035】
双極検知
検知は、Txライン12からRxライン14に送信された信号を測定することによって実行される。解説の目的で、電圧が単一のTxライン12に印加され、単一のRxライン14において測定が行われる事例を検討する。好ましい実施形態において、ハプティクスに使用される同じ電圧レールがこの目的にも使用されるが、他の電圧も使用してもよい。測定は、Tx電極12とRx電極14との間の相互キャパシタンスC_TRに部分的に起因するが、本発明において、C_TRは、指の存在によって影響を受けない。したがって、本発明は、相互キャパシタンスの既知の技法に基づかない。その代わりに、本発明は、次のように機能することができる。電圧がTxライン12に印加されると、これにより、鏡像配置Hxライン20の電位が、既に論述されたように変動する。そのHx電極20内に存在するIs電極22も、Hx電極20及び下層のTx電極12の双方と結合することによりHx電極20の電位に近い電位を達成する。各Is電極22は、容量性結合C_RIに起因して下層のRx14電極の電位にも影響を及ぼす。所与のIs電極22(例えば、Is_n×m)に部分的に又は全体に指が置かれる場合、Is電極22の電位は影響を及ぼされ、このことは、ひいては、Tx_n、Rx_mに関連する測定値に影響を及ぼす。換言すれば、Is電極22に対する指の効果が信号を作成する。
【0036】
本発明において、パネル上のシグナリングは、Tx電極12を双極方式でパルス駆動することによって制御することができる。これは、各測定において、正の方向においてパルス駆動する1つ以上のTx電極12、及び負の方向において同時にパルス駆動する等しい数のTx電極12が存在することを意味する。好ましい実施形態において、正の及び負のTx電極12は、隣接しており(Tx_nが正の向きである場合、Tx_n-1は負の向きである)、検知パルスは、順次Tx電極12を通して循環し、各パルスごとにRxライン14に対する測定が行われる。
【0037】
測定に対する双極パルスの効果は、タッチパネルのレイアウトに依存する。例えば、
図1に示されたパネル設計を検討する。信号の双極性に起因して、Is_n×m及びIs_n+1×mからの影響は相殺されるか、又は平衡化される。パネルにタッチしている指先が存在しない場合、キャパシタンス負荷は平衡化され、いずれのRxライン14に対しても信号はほとんど又は全く測定されない。指先がパネルに接触すると、指先の下にあるIs電極22は、より重い負荷を受け、負荷の不平衡化が、タッチされたIs電極22の下のRxライン14上に信号をもたらす。
【0038】
アイランド電極22 Is_n×mの真上を覆うように中心が合わされた指先と、Tx_n 12上の正のパルス及びTx_n-1 12上の負のパルスからなる検知信号とを検討する。非常に薄い絶縁層に起因して、指は、Is_n×m電極22に対する強力な容量性結合を有し、その電位に実質的な影響を及ぼす。上記で論述されたように、双極作動は、指をデバイス接地近くに維持し、それゆえ、指は、Is電極22を仮想デバイス接地に向けて引き寄せる傾向がある。この事例では、Is_n×mは正の向きにパルス駆動されるTx_n電極12の真上を覆うので、負荷は、負の向きのTx_n-1 12パルスの方に不平衡になり、Rx_m電極14は、負の信号を受信する。順序的に次の周期で、Tx_n 12は、負の向きにパルス駆動される電極であり、Rx_m電極14は、負荷の不平衡化に起因して正の信号を受信する。
【0039】
ここで、2つの隣接するIs電極22(Is_n-1×m及びIs_n×m)に等しく負荷をかける指先を検討する場合、Rx_m 14上の予想される出力信号は異なる。この事例では、Rx_m電極14は、Tx_n-1及びTx_nペア12がアクティベートされるとゼロ信号を受信するが、Tx_n-2及びTx_n-1ペア12がアクティベートされ、かつ同様にTx_n及びTx_n+1ペア12もアクティベートされると信号を受信する。
【0040】
2つの上記で言及した事例の中間にある指先は、これらの2つの信号タイプの組み合わせを呈し、その位置は、2つの負荷条件間の内挿を通じて推測することができる。
【0041】
図6は、指先28がRx電極14の方向に沿って一つのIs電極22から別のIs電極22にスライドする時結果として生じる信号がいかに変化し得るかの例を示している。この図において、Is_n-1×mからIs_n+2×m 22までの4つの電極のアレイが示されている。電極の各ペアの上方かつ左側のTx電極(図示せず)は、負の向きにパルス駆動され、その上方かつ右側のTx電極(図示せず)は、正の向きにパルス駆動される、と仮定すると、電極の各ペアの下には、Rx_m 14上で測定される予想信号を表す矢印32が中心合わせされる。
図6において示される第1の例(円で囲んだ「A」によって参照される)において、指28(角丸長方形として示される)は、電極Is_n×m 22の上方で中心を合わせされ、その電極に重く負荷をかけている。Is_n-1×m 22が負の向きにパルス駆動され、かつIs_n×m 22が正の向きにパルス駆動される場合、結果として得られるRx_m 14信号は、強い負の信号である。次のステップにおいてIs_n×m 22が負の向きにパルス駆動され、かつIs_n+1×m 22が正の向きにパルス駆動される場合、結果として得られるRx_m 14信号は強い正の信号である。次のステップにおいてIs_n+1×m 22が負の向きにパルス駆動され、かつIs_n+2×m 22が正の向きにパルス駆動される場合、結果として得られるRx_m 14信号はゼロに維持される。これらの信号は、この図において下向き(負)矢印及び上向き(正)矢印によって示される。
【0042】
図6に示される第2の例~第4の例(円で囲んだ「A」、「B」、及び「C」によって参照される)は、異なる指先位置を与えられると信号がどのように生じるかを大まかに示している。この図示において、いずれの電極が負に駆動され、いずれの電極が正に駆動されるかについての選択は、信号に対して実質上の効果を有することが明確に見て取られる。したがって、ハプティクスと同様、検知のために双極パルスを使用することである、本発明の趣旨から逸脱することなくパネルにタッチしている指先又は他の身体部位(例えば、掌)に関するより多くの情報を得るために異なる双極配置を選択することが可能である。例えば、いくつかの状況において、正の向きの電極及び負の向きの電極を、互いに隣接させるのではなく、1つの電極の分だけ間隔を置くことが望ましい場合がある。これは、或る特定の状況において信号を強調し得る。シグナリングシーケンスのための代替的な選択も本発明の一部であることが理解されるべきである。
【0043】
代替的なパネルレイアウト
上記で言及されたように、双極パルス駆動の効果は、パネルのレイアウトに依存する。
図1のレイアウトの代わりに、
図7に示される代替的なレイアウトを使用してもよい。重要な相違は、
図1では全てのTx 12が全てのRx 14に結合されていた一方で、
図7では1つおきのTx 12が1つおきのRx 14に結合することである。したがって、一対の双極パルスが2つの近傍のTxライン12(例えば、下側の2つの影付き線)に送達される場合、正の向きのパルスは、主にRxライン14の半分に結合し、その一方で、負の向きのパルスは、主にRxライン14の他方の半分に結合する。なお、ここではアイランド電極22は、正方形グリッドではなくダイヤモンド形状であるが、他の配置を使用してもよい。
図1に見られるようなアイランド電極22間の同じ又は同様の中心間距離を維持するために、Tx電極12及びRx電極14の双方のピッチを、2の平方根分の1程度に低減してもよい。したがって、このパネルは、およそ41%多く、Tx電極12、Rx電極14及びHx電極20を有し得る。しかしながら、これは、レイアウトの単なる1つの例であり、他の多くのパネルレイアウトが本発明の趣旨内で可能であることが当業者には明らかであろう。1つの更なる例として、
図1Bに示された電極のような、ただし、Rx電極14の2倍の数である、Tx電極12の配置を使用することが可能である。各Rx電極14は、1つおきのTx電極12に結合するように構成してもよい。このようにして、各Rx電極14は、両極性ではなく、単一の極性にのみ結合する。
【0044】
各Rxライン14に対して独立した測定を行う代わりに、差動測定を行うことも可能である。例えば、Rx_i及びRx_i+2について別個の測定を行う代わりに、Rx_i+2-Rx_iを測定することが可能である。これには、2つの利点がある。すなわち、読み取られる必要があるチャネルの数を削減することと、コモンモード雑音を除去することである。
【0045】
図7のレイアウトはTx電極12とHx電極20との間の「鏡像配置」関係を維持していたが、これは必要ではない。例えば、
図8に示されるように、各Hx電極20は、実際に2つのTx電極12にわたることができる。このパネル設計を用いると、検知は、
図6における検知とほとんど同じように機能し得る。すなわち、双極パルスは、共通のHx電極20を共有する2つの近傍のTx電極12に印加される。Hx電極20がほぼ接地電位に維持される一方で、アイランド電極22は、容量性結合C_TIに起因して下層のTx電極12の方向において依然として浮遊する。特に、指28は接地電位Hx電極20に強力に結合されているので、アイランド22を覆うように置かれた指28はアイランド22を接地に向けて引き戻す。代替形態として、Is電極22を完全に除去し、Hx電極20における開口(例えば、円形穴、アスタリスク形状、又はスリットでもよい)(図示せず)に置き換えてもよい。この設計において、Tx電極12において始端する力線の一部は、Rx電極14に戻って結合する前にタッチ面の上方に投影される。開口の上方に置かれた指は、それらの力線を逸らすように働き、Rx電極14において受信される信号の測定可能な変化を生み出す。ハプティクスを作成するために、4つのTx電極12が使用されるが、他の数のTx電極12を使用してもよい。所与のHx 20の下の2つのTx電極12は、同じ極性において動作し、一方、近傍のHx 14の下の2つのTx電極12は、逆極性において動作する。
【0046】
好ましい実施形態は、タッチパネル10の一方の側から反対側に走る長いストリップのような形状であるTx電極12及びHx電極14を伴うが、必ずしもそうである必要はない。本発明は、電極を双極方式で動作させることができる限り、多様な電極形状を許容することが可能である。例えば、蛇行形状である電極、及び一方の側から反対側に延在するのではなく、パネルの密集領域を占める電極を使用することが望ましい場合がある。これは、例えば、ハプティック領域を局所化する際に有用である。
【0047】
双極検知及び作動の更なる利点
双極検知及びハプティックシグナリングの使用は、デバイスによる外界への放射エミッション(radiated emission:放射妨害波)に対しても劇的な影響を有する。このことは、この放射エミッションが付近の回路又は無線受信機の忠実度又は信頼度に影響を与え得る場合、非常に望ましい。所与の電気導体の電磁エミッション能力は、その導体に現在印加されている電流又は電圧の量だけでなく、導体の長さ及び幾何形状によっても左右される。本発明、及び好ましい実施形態の場合、近傍のラインは、同一に近い幾何形状及び電気的過渡応答を共有する。これが、パネル上の双極シグナリングが放射エミッションを低減する理由である。それは、Txライン12及びHxライン14の対が逆極性及び同様の強度において駆動されるためで、それらのエミッションが本質的に互いを平衡化することを意味する。これは、特に遠電界において特に当てはまるが、効果は、パネル及び電極自体の付近で依然として顕著であり、かつ影響力を有する。この平衡化を達成するために、正の信号及び負の信号の可能な限り多くの態様を平衡化することが役に立つ。例えば、正の電力レール及び負の電力レールを整合させることができ、信号をオン及びオフに切り替えるスルーレートを整合させることができる。加えて、各々のTxライン12の総抵抗及びキャパシタンスを、他の各々のTxライン12の総抵抗及びキャパシタンスに整合させることができ、同様に、各々のRxライン14の総抵抗及びキャパシタンスを、他の各々のRxライン14の総抵抗及びキャパシタンスに整合させることができる。
【0048】
双極シグナリングの別の利点は、それが、デバイス漏れ電流とも呼ばれる意図しないタッチ電流についてユーザーに与える更なる安全性である。この電流は、デバイスとの通常の触知接触下でデバイスとユーザーとの間で流れてアース接地に戻る意図しない電流と定義される。国際安全性規格は、医療デバイス、消費者デバイス等の様々なタイプの製品におけるこのタッチ電流の波形制限(振幅及び周波数の双方)を規定しており、これらの規格を遵守することによって、市場に出回る大半の製品が使用しても安全であるとみなされる。双極検知及びハプティックシグナリングは、意図しない静電付着タッチ電流を非常に低いレベルに低減する。これは、やはり、信号の平衡化の性質と、デバイスが身体電位を仮想デバイス接地付近に残す傾向があるということ、に起因する。これは、タッチ電流が身体を通って局所アース接地に戻るための電流経路は存在しないことを意味する。本質的には、これは、デバイスによって身体に印加される任意の正の電流は、接触点においてデバイスによって同様に印加される対応する負の電流によって同時に平衡化されることを意味する。これによって、身体内を移動する電流の全体振幅、及び電流が取ることができる可能性がある電流経路は制限される。
【0049】
双極作動の別の利点は、高電圧双極作動信号を、それらが双極検知信号と完全に相殺され得るように、配置できるということである。双極作動信号を、それらが身体に対して有する効果を平衡化するように幾何学的に構成することができ、その結果、身体を仮想接地に保持することができるのと全く同様に、それらは、本発明の検知回路内のTx電極12及びRx電極14に対するそれらの効果を平衡化するように幾何学的に構成することもできる。このように、より高い電圧のハプティック作動回路は、より低い電圧の検知回路との相互作用を有しないことになる。作動回路により、検知回路は、影響を受けないままになる。これにより、より少数の高電圧回路を作動のために使用し、それと同時に、より多数の低電圧回路を検知のために使用することが可能になり得る。これにより、他の利点のうち、コスト、複雑度、及び電力消費の低減がもたらされ得る。この実施形態において、Rx電極14は、
図1Bにおけるものと同様に構成することができ、一方で、裏側Hx電極20が、Tx電極12に置き換わり得る。これらの裏側Hx 20は、元のTx電極12と同じように
図1Aにおいて上側Hx電極20と相互作用することができる。その場合、裏側Hx電極20同士の間に直接、追加の低電圧Tx電極12を配置してもよく、検知ノード及びIs電極は、Hx電極20同士の間にある、Tx 12及びRx 14の新たな交点26に再配置することができる。
【0050】
自己キャパシタンス検知
静電付着ハプティクス及び個々のTx-Rx交点26の状態の検知の双方の制御のために上記で説明された技法は、自己キャパシタンス検知と組み合わせてもよい。通常、自己キャパシタンスは、電極交点26ではなく個々の電極(例えば、Tx電極12)の状態を測定する手段として使用される。典型的な実施態様において、電流が測定及び積分され、関連する電荷が推定されると同時に、電圧が電極にかけられる。印加電圧に対する電荷の比としてキャパシタンスが推定され、キャパシタンスは、人間の指等の、付近の導電物体の存在に依存することになる。自己キャパシタンスは、マルチタッチ検知の場合には問題となることが知られているが、タッチの状態に関する何らかの情報を集めるためには高速かつ効率的な方法である。自己キャパシタンスは、大きくかつ物体からアース接地に十分に結合されている人体、小さくかつ結合が不十分である水滴といった物体を明確化するのにも非常に有用である。多くの場合、自己キャパシタンスは、相互キャパシタンス測定と併せて使用される。
【0051】
本発明において、双極自己キャパシタンス測定は、ここまでで説明された双極測定を補い得るか、又は更にはその代わりとなり得る。シグナリングは、説明されたものと同様であるが、測定は、Rx電極14上で受信された信号ではなく、Tx電極12上の電流の積分値に対して行われる。自己キャパシタンス測定及び相互キャパシタンス測定の双方のために電極の同じセットを使用することができ、又は代替的には、各機能ごとに異なる電極を使用してもよい。例えば、自己キャパシタンス電極と相互キャパシタンス電極を交番させてもよい。Tx電極12上の電流の積分値を測定する代わりに、信号が特定のTx電極12に送信されるとき全てのRx電極14にわたる信号を総和することによって自己キャパシタンスを推定することができる。
【0052】
ガード電極
好ましい実施形態において、基板10の下側16に電気信号が導入され、それと同時に、上側上の電極(Hx 20、Is 22)が容量結合される。典型的には、電気信号は、フレックスケーブルを介して導入されるが、他のタイプのコネクタを使用してもよい。フレックスケーブルがTx電極12及びRx電極14にアタッチされる点から下側信号を分配するために、導電性トレースを使用してもよい。これらのトレースは、それ自体、放射エミッションの源である。エミッションを制限するために、上側の周縁部の回りにガード電極38(
図9A及び
図9Bに示される)を配置してもよく、このガード電極38は、下側16上の接地電極に容量結合され得る。接地電極38は、導電性トレースが占める面積を除いて下側16の周縁部のうちの大半を占める大きいものとすることができる。
【0053】
上側ガード電極38の更なる利点は、上側ガード電極38が、パネル上の他の場所で見出されるものと同じ全体光学スタックアップを維持するということである。換言すれば、Hx電極20及びIs電極22を画定する消去ラインを除いて、上側導電層18は均一である。
【0054】
パネル構成
本発明において考慮される電極配置及び絶縁層を有するハプティックタッチパネルを製造する多くの可能な方法が存在する。本発明は、以下の4つの主要コンポーネント、すなわち、Rx電極14のためのパターニング済み導電層1、Tx電極12のためのパターニング済み導電層2、Hx電極20及びIs電極22のためのパターニング済み導電層3、並びにHx電極20及びIs電極22を覆う保護誘電体に依拠する。これらの層は、
図10に示されるような応用及び顧客の需要に応じて、インデックスマッチング層、バッファ層、反射防止層、疎油性層等の他の層とともに、1つ以上の基板上にあることができる。なお、
図10には、全ての可能な構成は含まれていない。例えば、1つの可能な構成は、疎油性ではなく親油性である最上層を含む。疎油性コーティングはタッチ面に対する身体の油分の移動を制限し得る一方で、親油性コーティングは、これらの油分の移動を促進し、更には面にわたる油分の拡散も行い得る。
【0055】
好ましい実施形態において、基板10は、ガラスであり、上(タッチ)面がエッチングされる。エッチング又はテクスチャ加工された基板の使用により、印加電圧、接触面積、及び誘電体層の厚さを同じに保ちながら、ハプティック強度の増大がもたらされ得る。テクスチャ加工された基板の使用の代替形態として、基板の上にテクスチャを付与することができる。例えば、Hx電極20及びIs電極22の上方の絶縁層にナノ粒子を添加してもよく、又は、例えばプラズマエッチングを使用して絶縁層自体を的確にテクスチャ加工することができる。テクスチャ加工されたタッチ面の更なる利点は、テクスチャ加工されたタッチ面が、高温及び低温並びに高湿及び低湿を含む全ての環境条件にわたってハプティック均一性を確実にし得るということである。
【0056】
上記で言及されたように、
図10は、全ての可能な構成及びデバイスを構築する方法を網羅しているわけではない。例えば、透明、半透明、又は不透明を問わず、剛性若しくは可撓性プラスチック又は他の任意のタイプの基板を、ガラス又はフィルム基板のいずれかの代わりに又はいずれかと組み合わせて、使用することができる。自動車に応用した場合の頭部衝撃又は他の市場における安全性の懸念について重要である耐スポーリング(Anti-spalling)を、デバイスの基板又はデバイス自体をディスプレイにオプティカルボンディングするか、又はこれを取り付け面にボンディングすることによって達成することができる。上(タッチ面)がフィルム(可撓性)又は剛性のプラスチック基板のいずれかである場合、自動車用の頭部衝撃仕様は、容易に達成される。
【0057】
ここで説明される好ましい実施形態は、OGS+(ワンガラスソリューション+)構成と称され、
図11において示されている。しかしながら、基板10は、ガラスである必要はなく、プラスチック、皮革、木、布等の任意の絶縁性又は半導電性材料であってもよく、ハプティック電極20がタッチ面上に、かつRx電極14及びTx電極12が反対面上に置かれる。
図11は、ガラス基板上の単なる1つの可能なOGS+スタックアップ(すなわち、層のセット)を示している。誘電体ハードコーティング層40が最上層であり、Hx電極20及びIs電極22を含むパターニング済みITO層42がそれに続く。次の層は、ガラス層44であり、次いで、黒色境界46である。Tx電極12及びRx電極14を含む第2のパターニング済みITO層48が次に続く。その層に、ポリマー絶縁層50、ジャンパー及び金属トレース52、次いでパッシベーション層54が続く。
【0058】
可撓性デバイス、3D若しくは2.5D形状、又は耐スポーリングが必要とされる応用の場合、上側はフィルムで作製してもよい。フィルムは、PET、PEN、PC、COC、COP、PMMA等としてもよく、導電層42及び誘電体ハードコーティング40(
図12)を有することになる。ここでも、指紋防止層及びAR層等の他のコーティングを追加してもよい。下側電極は、ガラス上に配置してもよく、又は、同様にフィルム56上に配置し、フィルム-フィルム構成をもたらしてもよい。
【0059】
上記の構成は、布、皮革、薄いガラス(0.2mm厚以下)等の他の材料にも適用できることが理解される。また、複雑な3次元形状を有するデバイスを製造するためのインサート成形製造又は他の同様のプロセスにおいてハプティックフィルム/Tanvasセンサーを使用することができる。
【0060】
本発明の或る特定の例示的な実施形態が上記で説明されたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲において記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、それらの実施形態に変更及び修正を行うことができることを理解するであろう。
【国際調査報告】