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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(54)【発明の名称】センサ信号の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/14 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
G06F17/14 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570841
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020063820
(87)【国際公開番号】W WO2020239500
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】102019208002.2
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ハーン
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB13
(57)【要約】
本発明は、センサ信号(105)の処理方法に関する。この方法は、高速フーリエ変換のための複素回転因子(115)を算出するステップを有する。ここでは、処理ルール(147)と、不揮発性メモリに格納されている予め保持された複素回転因子(145)の全量のうち、予め保持された複素回転因子(145)の少なくとも部分量と、センサ信号(105)から導出された少なくとも1つの信号特性とを用いて、複素回転因子(115)が算出される。この方法は、センサ信号(105)の処理済みバージョン(125)を供給するために、算出された複素回転因子(115)を用いて、センサ信号(105)に対し高速フーリエ変換を実行するステップも有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ信号(105)の処理方法(200)において、
高速フーリエ変換のための複素回転因子(115)を算出するステップ(210)であって、前記複素回転因子(115)を、処理ルール(147)と、不揮発性メモリ又は揮発性メモリ(130)に格納されている予め保持された複素回転因子(145)の全量のうち、予め保持された複素回転因子(145)の少なくとも部分量と、前記センサ信号(105)の特性から導出される少なくとも1つのコンフィギュレーションとを用いて、算出するステップと、
前記センサ信号(105)の処理済みバージョン(125)を供給するために、算出された前記複素回転因子(115)を用いて、前記センサ信号(105)に対し高速フーリエ変換を実行するステップ(220)と、
を有する方法(200)。
【請求項2】
前記算出ステップ(210)において、以下の処理ルール(147)、即ち、
最大所要長さNmax=2Mmax(Mは、正の整数)を有する前記センサ信号(105)の可能な値から成るシーケンスxの高速フーリエ変換について式
【数1】
に従って複素回転因子(115)を算出するために、長さR=Nmax・2-Mの前記センサ信号(105)の実際の値から成るシーケンスxに対し、
【数2】
の予め保持された複素回転因子(145)
【数3】
の前記全量を用いて、
【数4】
の前記複素回転因子(115)
【数5】
が、
【数6】
の予め保持された前記複素回転因子(145)
【数7】
から式
【数8】
に従って算出されることを可能にする処理ルール(147)を用いる、
請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
予め保持された複素回転因子(145)の前記全量を前記不揮発性メモリ(140)又は揮発性メモリ(130)に格納するステップ(205)を有する、
請求項1又は2に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記実行ステップ(220)において、前記高速フーリエ変換は、時間領域から周波数領域への変換であり、前記センサ信号(105)は、センサ(S)に対するインタフェースから読み込み可能であり、前記センサ信号(105)の前記処理済みバージョン(125)は、離散フーリエ変換されたものである、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項5】
前記実行ステップ(220)において、前記高速フーリエ変換は、周波数領域から時間領域への逆変換であり、前記センサ信号(105)は、当該センサ信号(105)のフーリエ変換を表し、前記センサ信号(105)の前記処理済みバージョン(125)は、共役の係数による逆変換を表す、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項6】
前記算出ステップ(210)において、前記予め保持された複素回転因子(145)にアクセスするためのステップ幅を、当該方法(105)の実行時に調整する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項7】
前記算出ステップ(210)において、前記予め保持された複素回転因子(145)から、内挿によって及び/又は幾何学恒等式を用いて、前記複素回転因子(115)を算出する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法(200)のステップを、対応するユニット(110、120)において実行及び/又は制御するように構成された装置(100)。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法(200)のステップを実行及び/又は制御するために構成されたコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載の装置及び方法に関する。本発明の保護対象は、コンピュータプログラムでもある。
【背景技術】
【0002】
例えば、離散フーリエ変換の計算は公知であり、長さN=2(Mは、正の整数)の値のシーケンスについて、高速フーリエ変換方法を実装することができる。例えば、中国特許出願公開第101083643号明細書に開示されているように、プロセッサを用いた高速フーリエ変換において、少ない所要メモリという目標設定を実現することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第101083643号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の開示
このような背景から、本明細書において提示されるアプローチによれば、主請求項に記載の方法及びその方法を用いる装置、さらには、対応するコンピュータプログラムが提示される。従属請求項に記載された構成によって、独立請求項に記載された装置の有利な発展及び改善が可能である。
【0005】
実施形態によれば、特に、センサ信号を処理するために、プロセッサコア又はディジタル信号プロセッサにおける離散フーリエ変換の計算にあたり、高速フーリエ変換(FFT、Fast Fourier Transform)の際の電力消費を低減する方法及び装置を提供することができる。その場合に、例えば、時間領域においては、単に実数値の信号及び複素数値の信号について、フーリエ変換の計算及び逆変換の計算を、揮発性及び不揮発性のメモリと接続されたマイクロコントローラにおいて、最適な手法により実現することができる。特に、この場合、1つのシーケンスの値又は信号値を、元の領域から目標領域へ変換することができ、さらに、目標領域における1つのシーケンスの所与の表現から元の領域に逆変換することができる。高速フーリエ変換のために使用すべきデータを可変データと非可変データとに分割することにより、それらのデータを、可変データのためのメモリ領域である揮発性メモリ内に、及び、非可変データのためのメモリ領域である不揮発性メモリ内に、別個に格納することができる。
【0006】
有利には、実施形態によれば、特に、例えば、計算コスト、コードサイズ、ばらつき等のような基準の最小化など、信号処理のための2つ以上の目標設定を最適化することができ、その場合、計算コスト、プログラムコードのための所要メモリ、可変のデータ及び一定のデータ、並びに、ばらつきに関する要求の最小化を、埋め込み型システムの条件及び制約を考慮しながら行うことができ、それによって、システム全体にとって有利な解決手段を達成することができる。この場合、センサ信号の処理を、特に、揮発性メモリ及び不揮発性メモリと接続された1つのプロセッサコアを少なくとも備えたシステムについて、電力消費並びにメモリの使用及び面積に関して最小の総コストで行うことができる。有利には、例えば、高速フーリエ変換を、プロセッサコア又はディジタル信号プロセッサにおいて最小の電力消費により実装することができ、その場合に、メモリアクセス及び計算サイクルの最小化、並びに、非可変又は一定のデータのためのメモリに対して可変データのためのメモリの使用を実装することができる。しかも、特に、集積回路(ASIC,application specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)又は他の集積回路における実装の場合、変換のために実際に必要とされる面積を最小化することができる。本明細書において示す信号処理を、例えば、元の領域から目標領域への離散フーリエ変換、又は、目標領域から元の領域への逆変換の計算にあたり、揮発性メモリ及び不揮発性メモリと接続されたプロセッサコア又はディジタル信号プロセッサのために適したものとすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここでは、センサ信号の処理方法において、
高速フーリエ変換のための複素回転因子を算出するステップであって、この複素回転因子を、処理ルールと、不揮発性メモリ又は揮発性メモリに格納されている予め保持された複素回転因子の全量のうち、予め保持された複素回転因子の少なくとも部分量と、センサ信号の特性から導出される少なくとも1つのコンフィギュレーションとを用いて、算出するステップと、
センサ信号の処理済みバージョンを供給するために、算出された複素回転因子を用いて、センサ信号に対し高速フーリエ変換を実行するステップと、
を有する方法が提示される。
【0008】
この方法は、例えば、ソフトウェア又はハードウェア又はソフトウェアとハードウェアとの混合形態により、例えば、装置又は制御装置において実装することができる。高速フーリエ変換によって、信号値から成るシーケンスを元の領域から目標領域に変換することができる。元の領域が時間領域である場合には、画像領域は周波数領域である。元の領域が周波数領域である場合には、画像領域は時間領域である。予め保持された複素回転因子の全量を、センサ信号を処理する際に必要とされる信号値から成る最大長のシーケンスから生じさせることができる。不揮発性メモリは、パーマネントメモリ又はパーシステントメモリと称される場合もある。不揮発性メモリを、例えば、EPROM、EEPROM若しくはフラッシュメモリのような少なくとも1つの半導体メモリチップとすることができ、又は、不揮発性ランダムアクセスメモリ(英語では、non-volatile random access memory,NVRAM)とすることができる。算出ステップにおいて、不揮発性メモリに格納されている予め保持された複素回転因子の全量にアクセスすることができ、又は、部分量を読み込むために不揮発性メモリにアクセスすることができる。
【0009】
1つの実施形態によれば、算出ステップにおいて、以下の処理ルール、即ち、
最大所要長さNmax=2Mmax(Mは、正の整数)を有するセンサ信号の可能な値から成るシーケンスxの高速フーリエ変換について式
【数1】
に従って複素回転因子を算出するために、長さR=Nmax・2-Mのセンサ信号の実際の値から成るシーケンスxに対し、
【数2】
の予め保持された複素回転因子
【数3】
の全量を用いて、
【数4】
の複素回転因子
【数5】
が、
【数6】
の予め保持された複素回転因子
【数7】
から式
【数8】
に従って算出されることを可能にする処理ルールを用いる。かかる実施形態によれば、計算コスト及び電力消費を低減することができるという利点がもたらされる。
【0010】
この方法は、予め保持された複素回転因子の全量を不揮発性メモリ又は揮発性メモリに格納するステップも有し得る。この場合、格納ステップを、算出ステップの前に実施することができる。格納ステップを1回又は少なくとも1回、実施することができる。かかる実施形態によれば、計算コスト及び電力消費の低減に加えて、メモリスペース、及び、集積回路又は電子モジュールのために必要とされる設置面積を低減することができるという利点がもたらされる。
【0011】
さらに実行ステップにおいて、高速フーリエ変換を時間領域から周波数領域への変換とすることができる。この場合、センサ信号は、センサに対するインタフェースから読み込み可能である。その際、センサ信号の処理済みバージョンは、離散フーリエ変換されたものであり得る。かかる実施形態によれば、センサ信号について信頼性のある正確な信号解析又は信号評価が可能になるという利点がもたらされる。
【0012】
しかも、実行ステップにおいて、高速フーリエ変換を周波数領域から時間領域への逆変換とすることができる。この場合、センサ信号は、センサ信号のフーリエ変換を表し得る。さらに、この場合、センサ信号の処理済みバージョンは、共役の係数による逆変換を表し得る。かかる実施形態によれば、信号解析即ち信号解釈も、センサ信号の後続処理も、計算コスト、SN比及びレイテンシに関して効率的に実現することができるという利点がもたらされる。
【0013】
1つの実施形態によれば、算出ステップにおいて、予め保持された複素回転因子にアクセスするためのステップ幅を、この方法の実行時に調整することができる。かかる実施形態によれば、以下の利点がもたらされる。即ち、必要とされる因子を実行時に計算する必要がなく、複素因子の部分集合を揮発性メモリに作成することができ、付加的に又は選択的に、種々の長さのシーケンスについて回転因子のいくつものサンプルを予め保持する必要がなく、従って、メモリスペース又は集積回路の面積を節約することができる。
【0014】
さらに同様に算出ステップにおいて、予め保持された複素回転因子から、内挿によって、付加的に又は選択的に幾何学恒等式を用いて、複素回転因子を算出することができる。かかる実施形態によれば、変換を、付加的に又は選択的に逆変換を、効率的に高速にかつエネルギーを節約しながら実行することができるという利点がもたらされる。
【0015】
本明細書において提示されるアプローチによれば、さらに、本明細書において提示される方法の1つの変形実施形態のステップを、対応する機構において実施、制御又は実装するように構成された装置が提供される。装置の形態における本発明のこの変形実施形態によっても、本発明の基礎を成す課題を高速にかつ効果的に解決することができる。
【0016】
この目的において、装置は、信号若しくはデータを処理するための少なくとも1つの計算ユニット、信号若しくはデータを格納するための少なくとも1つのメモリユニット、センサからセンサ信号を読み出すための又はアクチュエータにデータ信号若しくは制御信号を送出するための、センサ又はアクチュエータのための少なくとも1つのインタフェース、及び/又は、通信プロトコルに埋め込まれているデータを読み込む又は送出するための少なくとも1つの通信インタフェースを有し得る。計算ユニットは、例えば、信号プロセッサ、ディジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラ又はこれらに類するものとすることができ、この場合、メモリユニットは、フラッシュメモリ、EEPROM又は磁気メモリユニットとすることができる。通信インタフェースは、データを無線及び/又は有線により読み込む又は送出するように構成することができ、この場合、有線のデータを読み込む又は送出することができる通信インタフェースは、それらのデータを、例えば電気的に又は光学的に、対応するデータ伝送ラインから読み込むことができ、又は、対応するデータ伝送ラインに送出することができる。
【0017】
本明細書における装置とは、センサ信号を処理し、それに依存して制御信号及び/又はデータ信号を送出する電気的装置のことであると解することができる。この装置は、ハードウェア及び/又はソフトウェアにより構成可能なインタフェースを有し得る。ハードウェアによる構成の場合、インタフェースは、例えば、装置の種々の機能を含むいわゆるシステムASICの一部分とすることができる。ただし、このインタフェースは、固有の集積回路であるように、又は、少なくとも部分的に個別の構成要素から成るようにすることも可能である。ソフトウェアによる構成の場合、インタフェースは、ソフトウェアモジュールとすることができ、これは、例えば、マイクロコントローラ上に他のソフトウェアモジュールと共に設けられている。
【0018】
以下のようなプログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムも有利であり、即ち、このプログラムコードは、半導体メモリ、ハードディスク記憶装置又は光学記憶装置のような機械可読の担体又は記憶媒体に記憶可能であり、特に、このプログラム製品又はプログラムがコンピュータ又は装置において実行されたときに、これまでに説明した実施形態による方法のステップを実施、実装及び/又は制御するために用いられる。
【0019】
本明細書において提示されるアプローチの実施例が図面に示されており、これについて、以下の記載において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】1つの実施例による装置を示す概略図である。
図2】1つの実施例による処理方法を示すフローチャートである。
図3】1つの実施例によるプロセスの概略的な流れ図を示す図である。
図4】1つの実施例による回転因子に関する概略的なグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好適な実施例の以下の説明においては、それぞれ異なる図面に描かれて同様に作用する要素に対し、同一又は類似の参照符号が用いられており、その場合にはそれらの要素について繰り返し説明はしない。
【0022】
図1には、1つの実施例による装置100が概略的に示されている。装置100を処理装置100と称することもできる。装置100は、センサ信号105を処理するように構成されている。装置100は、プロセッサコア、ディジタル信号プロセッサ若しくはこれらに類するものとして構成されており、又は、プロセッサコア、ディジタル信号プロセッサ若しくはこれらに類するものの一部として構成されている。センサ信号105は、センサSから供給された信号を表し、この信号は、検出された測定量を表す。センサSは、例えば、マイクロフォン、慣性測定ユニット(IMU,inertial measurement unit)、又は、他の何等かの種類の1次元若しくは多次元の検出装置とすることができる。
【0023】
装置100は、算出装置110及び実行装置120を有する。算出装置110は、高速フーリエ変換のための複素回転因子115を算出するように構成されている。その場合に、この算出装置110は、処理ルール147と、不揮発性メモリ140に格納されている予め保持された複素回転因子145の全量のうち、予め保持された複素回転因子145の少なくとも部分量と、少なくとも1つのコンフィギュレーション又はセンサ信号105から導出された信号特性とを用いて、複素回転因子115を算出するように構成されている。そのために、算出装置110は、センサ信号105を読み込むように構成されている。この場合、算出装置110は、センサSから、又は、センサSと信号伝送可能に接続された他の装置から、特に揮発性メモリ130から、センサ信号105を読み込むように構成されている。さらに、算出装置110は、不揮発性メモリ140から、予め保持された複素回転因子145及び処理ルール147を読み込むように構成されている。これに加えて、算出装置110は、少なくとも1つの信号特性をセンサ信号105から導出するように、又は、センサ信号105から導出された少なくとも1つの信号特性を読み込むように、構成されている。さらに、可能な構成によれば、算出装置110は、不揮発性メモリ140内の予め計算された値ではなく、新たな回転因子を揮発性メモリ130に格納し、そのようにすることによって、より長い長さを有する正変換及び逆変換を計算することができる。
【0024】
この場合、FFTの長さは、一般に1つのコンフィギュレーションであるということに留意されたい。FFTの長さは、信号に関して所望の認識を得ることができるように、信号の解析に基づき選択することができる。例えば、最大サンプリングレートの設定、又は、信号振幅を求めるべき隣り合う周波数の間隔の設定を行うことができる。ここで、FFTは、離散周波数について複素振幅を送出し、それにより、周波数領域において十分に詳細な表現により内挿を計算することができる。
【0025】
実行装置120は、算出装置110によって算出された複素回転因子115を用いて、センサ信号105に対し高速フーリエ変換を実行するように構成されている。この場合、実行装置120は、センサ信号105と、算出装置110によって算出された複素回転因子115とを用いて、センサ信号105の処理済みバージョンを処理済みセンサ信号125の形態において生成して供給するように構成されている。
【0026】
少なくとも算出装置110は、不揮発性メモリ140にアクセスするように構成されている。不揮発性メモリ140には、予め保持された複素回転因子145と処理ルール147とが格納されている。同様に、少なくとも算出装置110は、センサ信号105が一時記憶可能であるようにして、揮発性メモリ130にアクセスするように構成されている。
【0027】
1つの実施例によれば、揮発性メモリ130及び/又は不揮発性メモリ140は、装置100の一部として構成されている。この場合には、揮発性メモリ130及び不揮発性メモリ140は、算出装置110及び/又は実行装置120と、信号伝送可能に接続されている。
【0028】
処理ルール147は、高速フーリエ変換のための複素回転因子115の算出を実行するためのプログラムコードを表すものである。算出装置110は、1つの実施例によれば、以下の処理ルール147を用いるように構成されている。即ち、この処理ルール147は、最大所要長さNmax=2Mmax(Mは、正の整数)を有するセンサ信号105の可能な値から成るシーケンスxの高速フーリエ変換について式
【数9】
に従って複素回転因子115を算出するために、長さR=Nmax・2-Mのセンサ信号105の実際の値から成るシーケンスxに対し、
【数10】
の予め保持された複素回転因子145
【数11】
の全量を用いて、
【数12】
の複素回転因子115又は
【数13】
が、
【数14】
の予め保持された複素回転因子145又は
【数15】
から、式
【数16】
に従って算出されることを可能にする又は引き起こすものである。
【0029】
1つの実施例によれば、算出装置110は、特に、センサ信号105の実際の値から成るシーケンスについての、算出の実行時又はランタイムに、予め保持された複素回転因子145にアクセスするためのステップ幅を調整するようにも構成されている。付加的に又は選択的に、算出装置110は、1つの実施例によれば、予め保持された複素回転因子145から、内挿によって及び/又は幾何学恒等式を用いて、複素回転因子145を算出するように構成されている。
【0030】
実行装置120は、1つの実施例によれば、高速フーリエ変換を正変換及び/又は逆変換として実行するように構成されている。換言すれば、実行装置120は、この場合、時間領域から周波数領域若しくは画像領域への変換即ち正変換として、及び/又は、周波数領域若しくは画像領域から時間領域への逆変換として、高速フーリエ変換を実行するように構成されている。正変換の場合、センサ信号105は、センサSに対するインタフェース、ここでは揮発性メモリ130から読み込み可能であり、処理済みセンサ信号125は、離散フーリエ変換されたものである。逆変換の場合、センサ信号105は、離散フーリエ変換されたものの形態において発生し、処理済みセンサ信号125は、共役の係数による逆変換の結果を表す。
【0031】
図2には、1つの実施例による処理方法200のフローチャートが示されている。方法200は、センサ信号を処理するために実施することができる。この場合、方法200は、図1による装置と協働させて又はこの装置を用いて実施することができる。
【0032】
処理方法200によれば、算出ステップ210において、高速フーリエ変換のための複素回転因子が算出される。その際に算出ステップ210において、処理ルールと、不揮発性メモリに格納されている予め保持された複素回転因子の全量のうち、予め保持された複素回転因子の少なくとも部分量と、センサ信号から導出された少なくとも1つの信号特性とを用いて、複素回転因子が算出される。次に実行ステップ220においては、算出ステップ210において算出された複素回転因子を用いて、センサ信号に対し高速フーリエ変換が実行され、それにより、センサ信号の処理済みバージョンが供給される。
【0033】
特に、算出ステップ210及び実行ステップ220を、順次繰り返して又は連続的に、実行することができる。
【0034】
1つの実施例によれば、処理方法200は、予め保持された複素回転因子の全量を不揮発性メモリに格納するステップ205も有する。この場合、格納ステップ205を、算出ステップ210の前に少なくとも1回、実施することができる。
【0035】
図3には、1つの実施例によるプロセス300の概略的な流れ図が概略的に示されている。プロセス300は、回転因子の算出を含めて高速フーリエ変換に関するものである。プロセス300は、図2の方法に関連している。
【0036】
第1のブロック302は、高速フーリエ変換(FFT)を表す。FFTに対する入力矢印304は、長さNの複素数値を表す。FFTの枠内の第1の矢印306は、条件、正確には、群:=2^|及びバタフライグラフ:=2^(k-1-|)を表す。第1の矢印306に続く第2のブロック308は、個数kの反復[k回の反復]を有する第1のループを表す。第2のブロック308又は第1のループの中に第3のブロック310が配置されており、これは、群[群]に対する第2のループを表す。第3のブロック310又は第2のループの中に第2の矢印312が配置されており、これは、回転因子(twiddle factor)の取得を表す。第2の矢印312には、注釈ブロック314が併記されており、これは、最大FFT長に対して現在のFFT長について代替のステップ幅を使用することを表す。さらに、第3のブロック310又は第2のループの中に第4のブロック316が配置されており、これは、バタフライグラフ[バタフライグラフ]のための第3のループを表す。第4のブロック316又は第3のループの中に配置されている第3の矢印318は、複素バタフライグラフが計算されることを表す。第2のブロック308又は第1のループの中に、ただし、第3のブロック310又は第2のループの外側に、第4の矢印320が配置されている。第4の矢印320は、条件、正確には、群=群*2及びバタフライグラフ=バタフライグラフ/2を表す。FFTの出力矢印322は、長さNの複素FFTを表す。
【0037】
図4には、1つの実施例による回転因子145に関する概略的なグラフ400が示されている。回転因子145は、複素回転因子である。回転因子145は、特に、図1による装置及び/又は図2による方法において使用される。正確には、回転因子145は、予め保持された複素回転因子145である。概略的なグラフ400は、フェーザ図の形態で描かれている。この場合、縦座標には、虚数部Imが書き込まれており、横座標には、実数部Reが書き込まれている。回転因子145は、指針として書き込まれている。
【0038】
単に例示として複数の指針のうち、第1の指針441と第2の指針442とが詳細に明示されている。第2の指針442は、Nの回転因子
【数17】
を表す。第1の指針441は、
【数18】
の回転因子
【数19】
を表す。
【0039】
以下においては、これまでに説明した図面を参照しながら、本発明の実施例及び実施例の基礎をまとめて、換言すれば手短に、説明する。
【0040】
方法200は、長さN=2(Mは、正の整数)の元の領域におけるシーケンスx={x(0)...x(N-1)}について、元の領域から画像領域への離散フーリエ変換又は画像領域から元の領域への逆変換を計算する場合に、揮発性メモリ130及び不揮発性メモリ140と接続されたプロセッサコア又はディジタル信号プロセッサのために適している。離散フーリエ変換は、回転因子と称する値
【数20】
による式
【数21】
を有する。長さN=2のシーケンスxの高速フーリエ変換のために、
【数22】
の複素回転因子
【数23】
が必要とされ、ここで、
【数24】
である。
【0041】
かかる回転因子を不揮発性メモリ140に格納すると、それによって、その都度必要とされる三角関数の評価のために、回転因子
【数25】
のための計算コストが削減される。方法200は、特に、以下のようにして回転因子のために式を利用することに基づくものであり、即ち、最大所要長さNmax=2Mmaxについて、総ての
【数26】
の複素回転因子145
【数27】
が不揮発性メモリ140に格納される。長さR=Nmax・2-M(Mは、正の整数)のシーケンスxについてフーリエ変換を計算するために、
【数28】
の複素回転因子115
【数29】
を、
【数30】
の複素回転因子145
【数31】
から、
【数32】
によって算出する。
【0042】
1つの有利な実装によれば、回転因子のシーケンスの要素へアクセスするためのステップ幅を実行時に整合させることができる。このようにすることによって、必要とされる回転因子を実行時に計算する必要がなく、又は、
【数33】
の複素回転因子145
【数34】
の部分集合だけを揮発性メモリ130(RAM)に作成するとよく、又は、種々の長さのシーケンスについて回転因子をいくつも予め保持する必要がなく、従って、メモリスペース又は集積回路の面積を節約することができる。
【0043】
サイズが制限されている集積回路(ASIC)における実装の場合、回転因子145を不揮発性メモリ140(ROM)に予め格納しておくことによって、回転因子145を予め保持するために必要とされる面積をさらに低減することができる。
【0044】
データを、揮発性の値と不揮発性の値とに分割することにより、提案された実装によって、電力消費を有利に低減することができ、その理由は、回転因子を不揮発性メモリ140から読み出すプロセスは、揮発性メモリ130から読み出すプロセスよりもわずかな電力消費しか必要としないからである。プログラムコード又は処理ルール147及び回転因子145を不揮発性メモリ140に格納することによって、総電力消費は、有利なものとなる。
【0045】
さらなる有利な実装によれば、R=Nmax・2(Mは、正の整数)のシーケンスについての変換又は逆変換にあたり、その場合に必要とされる回転因子115の計算を、既存の回転因子145から、内挿又は三角恒等式の利用によって行うことができる。
【0046】
本明細書において提示されたアプローチにおいて有利であることは、標準プロセッサコアを利用可能であることであり、回転因子のためのメモリを、RAM又はROMとすることができ、目標とするアプリケーションは、音声信号処理又は他のアナログ信号の処理である。
【0047】
1つの実施例に、第1の特徴と第2の特徴との「及び/又は」結合が含まれている場合には、このことを、その実施例が、1つの実施形態によれば、第1の特徴も第2の特徴も含み、他の実施形態によれば、第1の特徴のみ又は第2の特徴のみを有する、というように解釈することができる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ信号(105)の処理方法(200)において、
高速フーリエ変換のための複素回転因子(115)を算出するステップ(210)であって、前記複素回転因子(115)を、処理ルール(147)と、不揮発性メモリ(140)又は揮発性メモリ(130)に格納されている予め保持された複素回転因子(145)の全量のうち、予め保持された複素回転因子(145)の少なくとも部分量と、前記センサ信号(105)の特性から導出される少なくとも1つのコンフィギュレーションとを用いて、算出するステップと、
前記センサ信号(105)の処理済みバージョン(125)を供給するために、算出された前記複素回転因子(115)を用いて、前記センサ信号(105)に対し高速フーリエ変換を実行するステップ(220)と、
を有する方法(200)。
【請求項2】
前記算出ステップ(210)において、以下の処理ルール(147)、即ち、
最大所要長さNmax=2Mmax(Mは、正の整数)を有する前記センサ信号(105)の可能な値から成るシーケンスxの高速フーリエ変換について式
【数1】
に従って複素回転因子(115)を算出するために、長さR=Nmax・2-Mの前記センサ信号(105)の実際の値から成るシーケンスxに対し、
【数2】
の予め保持された複素回転因子(145)
【数3】
の前記全量を用いて、
【数4】
の前記複素回転因子(115)
【数5】
が、
【数6】
の予め保持された前記複素回転因子(145)
【数7】
から式
【数8】
に従って算出されることを可能にする処理ルール(147)を用いる、
請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
予め保持された複素回転因子(145)の前記全量を前記不揮発性メモリ(140)又は揮発性メモリ(130)に格納するステップ(205)を有する、
請求項1又は2に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記実行ステップ(220)において、前記高速フーリエ変換は、時間領域から周波数領域への変換であり、前記センサ信号(105)は、センサ(S)に対するインタフェースから読み込み可能であり、前記センサ信号(105)の前記処理済みバージョン(125)は、離散フーリエ変換されたものである、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項5】
前記実行ステップ(220)において、前記高速フーリエ変換は、周波数領域から時間領域への逆変換であり、前記センサ信号(105)は、当該センサ信号(105)のフーリエ変換を表し、前記センサ信号(105)の前記処理済みバージョン(125)は、共役の係数による逆変換を表す、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項6】
前記算出ステップ(210)において、前記予め保持された複素回転因子(145)にアクセスするためのステップ幅を、当該方法(200)の実行時に調整する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項7】
前記算出ステップ(210)において、前記予め保持された複素回転因子(145)から、内挿によって及び/又は幾何学恒等式を用いて、前記複素回転因子(115)を算出する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法(200)のステップを実行るために構成されたコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【請求項10】
請求項に記載の機械可読記憶媒体備えている装置(100)。
【国際調査報告】