(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(54)【発明の名称】粘膜付着性ミクロゲル組成物およびそれを使用するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20220725BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220725BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220725BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20220725BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220725BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220725BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220725BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220725BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K47/34
A61K47/36
A61K38/00
A61K45/00
A61K48/00
A61P1/02
A61P29/00
A61K38/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571540
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 US2020035378
(87)【国際公開番号】W WO2020243607
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】517308334
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ ポー エ デ ペイ ドゥ ラドゥール
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビロン,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】デュージー,エバ
(72)【発明者】
【氏名】アギーレ,ガルビネ
(72)【発明者】
【氏名】マッサ,ソランジュ
(72)【発明者】
【氏名】サンタ マリア,ピーター ルーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB23
4C076CC18
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE37
4C076EE38
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA44
4C084DB52
4C084MA05
4C084MA28
4C084MA57
4C084NA03
4C084ZA67
(57)【要約】
活性剤(HB-EGFなど)を含む粘膜付着性ミクロゲル組成物が提供される。本発明の態様は、粘膜付着性機能を有する架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーを含むミクロゲルを含む。また、粘膜付着性ミクロゲル組成物を、例えば治療用途において作製および使用する方法も提供される。一実施形態では、HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲル組成物は、例えば、療法により誘発される口腔粘膜炎状態などの粘膜炎状態の予防または治療のために提供される。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘膜付着性機能を有する架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーを含む粘膜付着性架橋ミクロゲルに装填された治療活性剤を含有する粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物であって、前記架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーが、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位と、オリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位と、メタクリル酸モノマー単位と、ドーパミンアクリルアミドモノマー単位を含む粘膜付着性モノマー単位と、架橋部分を有するコポリマー鎖と、を含む、粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項2】
前記オリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位が、6~10のエチレングリコール部分を含む、請求項1に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項3】
前記組成物が、1つ以上の追加の粘膜付着剤をさらに含有する、先行請求項のいずれか一項に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の追加の粘膜付着剤が、粘膜付着性ポリマー剤である、請求項3に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の追加の粘膜付着剤が、天然由来の粘膜付着性ポリマー剤、合成粘膜付着性ポリマー剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される粘膜付着性ポリマー剤である、請求項4に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項6】
前記天然由来の粘膜付着性ポリマー剤が、多糖類である、請求項5に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項7】
前記多糖類が、デンプン、キトサン、ヘパリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項8】
前記合成粘膜付着性ポリマー剤が、プルロニック(登録商標)である、請求項5~7のいずれか一項に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項9】
前記治療活性剤が、小分子、核酸、ペプチドもしくはポリペプチド、またはタンパク質、あるいはそれらの活性フラグメントを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項10】
前記組成物が、水性洗浄液またはフィルムを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物。
【請求項11】
治療活性剤を対象に送達する方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項12】
前記方法が、対象における口腔粘膜炎の進行を調節する方法であり、前記治療活性剤が、HB-EGF活性剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物を調製する方法であって、
粘膜付着性機能を有する架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーを含む粘膜付着性架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレ
ートポリマーミクロゲルを調製することであって、前記架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーが、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位と、オリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位と、メタクリル酸モノマー単位と、ドーパミンアクリルアミドモノマー単位を含む粘膜付着性モノマー単位と、架橋部分を有するコポリマー鎖と、を含む、調製することと、
前記粘膜付着性架橋ミクロゲルに治療活性剤を装填することと、を含む、方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の粘膜付着性ミクロゲル治療活性剤組成物の投薬量と、
包装と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条(e)に従い、本出願は、2019年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/855,687号の出願日に対する優先権を主張し、その出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
導入
以下の背景技術の考察は、本発明の理解を容易にすることのみを意図している。考察は、言及された題材のいずれかが、本出願の優先日現在の通常の一般的な知識の一部であること、または一部であったことの確認または承認ではない。
【0003】
口腔粘膜炎は、口腔を覆う粘膜(口腔粘膜)の痛みを伴う炎症および潰瘍であり、多くの場合化学療法剤または放射線による治療に起因する口腔粘膜の上皮細胞の損傷と、それに伴うその上皮細胞の分裂および再生に対する抑制効果によって引き起こされる。粘膜炎は、ほとんど場合、頬の角質化していない粘膜、軟口蓋、舌の腹側表面、および口底に影響を及ぼす。放射線療法または化学療法に関連する口腔粘膜炎の発症は、化学療法治療の強度、関与する具体的な化学療法剤、放射線治療の頻度および強度、放射線治療が化学療法と同時であるか否か、放射線増感剤の潜在的使用、ならびに腫瘍の種類および部位に依存する。口腔粘膜炎は、粘膜の不快感を引き起こす軽度の紅斑から深部の重度の口腔内潰瘍にまで及び、頭頸部がん患者の約80%および非頭頸部がん患者の約40%で化学療法および/または放射線療法中に発生し、多くの場合、特定の患者に最適であり得る放射線および/または放射線被曝の頻度が制限される(Georgiou et al.,“Oral Mucositis:understanding the pathology and management,”Hippokratia.2012)16(3):215-6;Scully et al.,“Oral mucositis:a challenging complication of radiotherapy,chemotherapy,and radiochemotherapy:part 1,pathogenesis and prophylaxis of mucositis.”Head Neck.(2003)25(12):1057-70;およびTreister&Sonis“Mucositis:biology and management,”Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg.(2007)15(2):123-9)。年間約40万件の治療により誘発される口腔損傷があり、多くの場合、化学療法、放射線療法、またはその両方の組み合わせを投与した直後に損傷が発生する。これらのモダリティは、白血病、乳がん、頭頸部がんなどのがんの治療に、がんの除去の補助として、または骨髄移植のために使用される(Georgiou et al.)。
【0004】
化学療法、放射線療法、またはその両方の組み合わせを数回受ける患者では、通常、口腔粘膜炎の発症が再発する。深刻な結果には、激しい痛み、深刻な感染症、栄養不良、および長期入院が含まれる。現在、口腔粘膜炎の有効な治療はなく、現在の限られた治療選択肢は、口腔ケア、鎮痛剤および抗炎症剤、例えばベンジダミン、凍結療法、例えば放射線療法の直前の氷片の飲み込み、および口腔内の動的細菌叢に起因し得る二次感染の治療から構成される(Worthington et al.,“Interventions for preventing oral mucositis for patients with cancer receiving treatment,”Cochrane Database Syst Rev.(2006)19(2):CD000978)。表皮細胞増殖因子(KGF)(Palifermin/Kepivanc
e,Amgen)は、代替治療であるが、血液悪性腫瘍以外では有効性が低く、全身投与しなければならない(Elting et al.“Economic impact of palifermin on the costs of hospitalization for autologous hematopoietic stem-cell transplant:analysis of phase 3 trial results,”Biol Blood Marrow Transplant.(2007)13(7):806-13)。口腔粘膜炎の局所治療は存在し、ある程度の緩和をもたらすが、症状の負荷を軽減するだけで、問題の発生を軽減させることはなく、また、粘膜上皮細胞を治癒することもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,831,005号
【特許文献2】米国特許第5,877,278号
【特許文献3】米国特許第5,977,301号
【特許文献4】PCT出願公開第WO/2016/110615号
【特許文献5】PCT出願公開第WO/2019/077404号
【特許文献6】米国特許第10,287,403号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Georgiou et al.,“Oral Mucositis:understanding the pathology and management,”Hippokratia.2012)16(3):215-6
【非特許文献2】Scully et al.,“Oral mucositis:a challenging complication of radiotherapy,chemotherapy,and radiochemotherapy:part 1,pathogenesis and prophylaxis of mucositis.”Head Neck.(2003)25(12):1057-70
【非特許文献3】Treister&Sonis“Mucositis:biology and management,”Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg.(2007)15(2):123-9
【非特許文献4】Worthington et al.,“Interventions for preventing oral mucositis for patients with cancer receiving treatment,”Cochrane Database Syst Rev.(2006)19(2):CD000978
【非特許文献5】Elting et al.“Economic impact of palifermin on the costs of hospitalization for autologous hematopoietic stem-cell transplant:analysis of phase 3 trial results,”Biol Blood Marrow Transplant.(2007)13(7):806-13
【非特許文献6】K.J.Lee Essential Otolaryngology:Head and Neck Surgery,Tenth Edition(McGraw-Hill Education/Medical,10thedition,2012)
【非特許文献7】E.N.Myers Operative Otolaryngology:Head and Neck Surgery:Expert Consult(Saunders,2nd edition,2008)
【非特許文献8】A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition)
【非特許文献9】Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)
【非特許文献10】Methods In Enzymology(S.CoIowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.)
【非特許文献11】Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins(The Taylor&Francis Series in Pharmaceutical Sciences,Lars Hovgaard,Sven Frokjaer,and Marco van de Weert eds.,CRC Press;1st edition,1999)
【非特許文献12】Tangri et.al.“Recent Advances in Oral Mucoadhesive Drug Delivery System:A review,”International Jorrnal of Pharma.Research and Development(2011)3(2):151-162
【非特許文献13】Mackie et al.,“Innovative Methods and Applications in Mucoadhesion Research,”Macromolecular Bioscience(2017)17(8)
【非特許文献14】Kumar et al.,“Mucoadhesive Polymers:Means of Improving the Mucoadhesive Properties of Drug Delivery System,”J.chem.pharm.Res.(2010)2(5):418-32)
【非特許文献15】Takeuchi et al.,“Novel mucoadhesion tests for polymers and polymer-coated particles to design optimal mucoadhesive drug delivery systems,”Adv. Drug Deliver.Rev.(2005)57(11):1583-1594
【非特許文献16】Thongborisute&Takeuchi,“Evaluation of mucoadhesiveness of polymers by BIACORE method and mucin-particle method,”Int J Pharm.(2008)354(1-2):204-9
【非特許文献17】Nguyen et al.(2000)Chem Biol.7(7):463-473
【非特許文献18】Simon et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(20):9367-9371 for descriptions of peptoids
【非特許文献19】“Remington:The Science&Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams & Williams,(1995),the“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)
【非特許文献20】Kibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000
【非特許文献21】Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,HaRBor Laboratory Press 2001)
【非特許文献22】Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons 1999)
【非特許文献23】Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley&Sons 1996)
【非特許文献24】Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press 1999)
【非特許文献25】Viral Vectors(Kaplift&Loewy eds.,Academic Press 1995)
【非特許文献26】Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997)
【非特許文献27】Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle&Griffiths,John Wiley&Sons 1998)
【非特許文献28】Patil et al.(N.Patil,C.Falentin-Daudre,C.Jerome,C.Detrembleur,Polym.Chem.,2015,6,2919-2933.)
【非特許文献29】Sunavala-Dossabhoy G,Abreo F,Timiri Shanmugam PS,Caldito G.Histopathologic grading of oral mucositis.Oral Dis.2015;21(3):355-60
【発明の概要】
【0007】
活性剤(HB-EGFなど)を含む粘膜付着性ミクロゲル組成物が提供される。本発明の態様は、粘膜付着性機能を有する架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーを含むミクロゲルを含む。また、粘膜付着性ミクロゲル組成物を、例えば治療用途において作製および使用する方法も提供される。一実施形態では、HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲル組成物は、例えば、療法により誘発される口腔粘膜炎状態などの粘膜炎状態の予防または治療のために提供される。
【0008】
定義
「創傷」は、上皮、結合組織、および筋肉組織を含む器官または組織の構造の破壊または断絶である。創傷の例としては、創傷、打撲傷、潰瘍、床擦れ、かすり傷、裂傷、切り傷、刺し傷、乾癬性創傷、鼓膜穿孔、角膜剥離および破壊、ならびに火傷が挙げられるが、これらに限定されない。創傷は、放射線療法または化学療法によって生じ得る。この創傷は、上皮を破壊する潰瘍または粘膜炎または炎症の形態をとり得る。「局所的」適用は、活性成分の非全身的局部投与を指し、粘膜、特に口腔内、例えば、対象の口内の粘膜への当該組成物の適用を含む。
【0009】
「対象」という用語は、脊椎動物および無脊椎動物の両方を含み、ヒトを含む哺乳動物ならびにチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種を含む非ヒト霊長類;マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、およびチンチラなどの実験動物;イヌおよびネコなどの飼育動物;ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、およびウシなどの家畜動物;鶏、七面鳥、および他のキジ類の鳥、アヒル、ガチョウなどを含む、飼育、野生、および狩猟の鳥などの鳥などの非ヒト哺乳動物を含むが、これらに限定されない。実施形態では、本明細書で使用される「対象」(代替として本明細書で「患者」と呼ばれる)という用語は、治療、観察、または実験の対象物であった、ヒトを含む哺乳動物などの動物を指す。
【0010】
本明細書における対象の「治療」または疾患または状態について対象を「治療する」ことは、創傷治癒の障害または遅延などの疾患または状態の臨床症状を軽減または緩和することを意味する。
【0011】
化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせの後、最中、または前に、治癒を「促進する」、「増強する」、または「改善する」とは、一般に、口腔内の創傷が治癒する速度を上げるか、または創傷の治癒中または治癒後の口腔粘膜炎創傷または壊死組織の重症度を軽減することを意味する。
【0012】
本明細書で「薬物」または「活性剤」と交換可能に呼ばれる「治療活性剤」という語句は、対象に投与されたときに有益な薬理学的効果を示し、ひいてはこの薬理学的効果の利益を受ける状態の治療に使用することができる化合物を説明する。「有効量」または「治療的有効量」は、所望の治療効果を提供する治療活性剤の量を意味する。治療的有効量は、対象の臨床的に有意な応答を改良、すなわち、改善または提示すことができる。代替として、治療的有効量は、宿主の臨床的に有意な状態を改善するのに十分である。
【0013】
「上皮」は、血管および他の小腔の内膜を含む、身体の内面および外面の被膜を指す。上皮は、少量のセメント物質によって接合された細胞からなる。上皮は、深層の数および表層細胞の形状に基づいて種類に分類される。本文脈では、上皮は、食道および中咽頭を含む口腔を覆う細胞の表層を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「口腔粘膜」という用語は、頬粘膜、歯槽粘膜、口底、舌、特に舌の背側および腹側表面、硬口蓋および軟口蓋、口蓋垂、口蓋舌筋および口蓋咽頭筋、後咽頭壁を含む後中咽頭壁、下咽頭、および上部食道を意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「約」または「おおよそ」は、所与の値または範囲の50パーセント以内、好ましくは20パーセント以内、より好ましくは5パーセント以内を意味する。
【0016】
別の値と「実質的に異なる」値は、2つの値の間に統計的に有意な差異があることを意味し得る。当技術分野で知られている任意の好適な統計的方法を使用して、差異が有意であるか否かを評価することができる。
【0017】
「統計的に有意な」差異は、有意性が少なくとも90%の信頼区間で、より好ましくは95%の信頼区間で決定されることを意味する。
【0018】
「薬理学的に許容可能な賦形剤または担体」は、任意選択的に本発明の組成物に含まれてもよく、かつ患者に有意な有害毒性効果を引き起こさない賦形剤を指す。
【0019】
「薬理学的に許容可能な塩」には、アミノ酸塩、塩化物塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物塩、および硝酸塩などの無機酸で調製された塩、または前述のもののうちのいずれかの対応する無機酸形態から調製された塩、例えば、塩酸塩、またはリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩、サリチル酸塩およびステアリン酸塩、ならびにエストル酸塩(estolate)、グルセプト酸塩、およびラクトビオン酸塩などの有機酸で調製された塩が含まれるが、これらに限定されない。同様に、薬理学的に許容可能なカチオンを含有する塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(置換アンモニウムを含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
活性剤(HB-EGFなど)を含む粘膜付着性ミクロゲル組成物が提供される。本発明の態様は、粘膜付着性機能を有する架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーを含むミクロゲルを含む。また、粘膜付着性ミクロゲル組成物を、例えば治療用途において作製および使用する方法も提供される。一実施形態では、HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲル組成物は、例えば、療法により誘発される口腔粘膜炎状態などの粘膜炎状態の予防または治療のために提供される。
【0021】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明が、説明される特定の実施形態に限定されず、したがって、当然ながら変動してもよいことを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語が、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0022】
値の範囲が提供される場合、別途文脈が明確に指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1の値までの各介在値およびその記載の範囲の任意の他の記載の値または介在値が、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立してより小さな範囲に含まれてもよく、また、記載の範囲において任意の具体的に除外された限界を条件として、本発明に包含される。記載の範囲が限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0023】
ある特定の範囲が本明細書において提示され、数値の前に「約」という用語が前に置かれる。「約」という用語は、本明細書において、その用語が前に置かれる正確な数、ならびにその用語が前に置かれる数に近い数またはおおよそその数である数に対する文字通りの支持を提供するために使用される。数が具体的に列挙された数に近いまたはおおよそそうであるか否かを決定する際に、近くまたはおおよその列挙されない数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数と実質的に同等を提供する数であり得る。
【0024】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されているものと類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験にも使用することができるが、代表的な例証的方法および材料がここに説明される。
【0025】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、刊行物の引用に関連する方法および/材料を開示かつ説明するように参照により明細書に組み込まれる。いずれの刊行物の引用も、出願日前のその開示のためであり、本発明が先行発明のためにそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される発行日は、実際の発行日とは異なる場合があり、個別に確認する必要があり得る。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」が、文脈が別途明確に指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲が、いずれの任意選択の要素も除外するように作成され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記載は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連して「単独」、「のみ」などのような排他的な用語を使用する、または「否定的な」制限を使用するための先行詞としての役割を果たすことを意図する。
【0027】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明および例証される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、または特徴と組み合わせられ得る別個の成分および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0028】
装置および方法が、文法的な流動性のために、機能的な説明によって説明されるが、特許請求の範囲が、明示的に米国特許法第112条に従って策定されない限りは、決して「手段」または「工程」の限定事項の構成によって必然的に限定されると解釈してはならず、均等論のもとで特許請求の範囲によって提供される定義の意味および同等物の全範囲が認められるべきであり、特許請求の範囲が明示的に米国特許法第112条に従って策定されている場合には、米国特許法第112条に従うすべての法的な同等物が認められるべきであることを、明示的に理解すべきである。
【0029】
本発明の実施は、別途示されない限り、当技術分野の技能の範囲内で、医学、薬理学、化学、生化学、分子生物学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。そのような技術は、文献で完全に説明されている。例えば、K.J.Lee Essential Otolaryngology:Head and Neck Surgery,Tenth Edition(McGraw-Hill Education/Medical,10thedition,2012);E.N.Myers Operative Otolaryngology:Head and Neck Surgery:Expert Consult(Saunders,2nd edition,2008);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Methods In Enzymology(S.CoIowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);およびPharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins(The Taylor&Francis Series in Pharmaceutical Sciences,Lars Hovgaard,Sven Frokjaer,and
Marco van de Weert eds.,CRC Press;1st edition,1999)を参照されたい。
【0030】
上に要約したように、粘膜付着性ミクロゲル組成物が提供される。本発明の様々な態様をさらに説明する際に、粘膜付着性ミクロゲル組成物の実施形態を最初にさらに詳細に再考察し、その後、組成物を作製および使用する方法の実施形態を再考察し、また、組成物を含むキットの実施形態を再考察する。
【0031】
粘膜付着性ミクロゲル組成物
上に要約したように、粘膜付着性ミクロゲル組成物が提供される。本発明のミクロゲル組成物は粘膜付着性であるため、ミクロゲル組成物は、例えば、長期間、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上などの、0.5時間以上、界面力によって対象の粘膜層に付着することができる。ミクロゲル組成物の粘膜付着特性は、任意の便利なプロトコル、例えば、引張強度を決定する方法、剪断応力を決定する方法、付着重量方法、蛍光プローブ方法、フローチャネル方法、機械的分光方法、落下液膜方法、金コロイド染色方法、粘度計方法、目分量(thumb)方法、付着数、電気コンダクタンス、膨潤特性、インビトロ薬物放出研究、粘膜保持性(mucoretentability)研究などのインビトロ/エクスビボ方法において評価してもよい。また、ミクロゲル組成物の粘膜付着特性は、インビボ方法、例えば、放射性同位体の使用、ガンマシンチグラフィ
ーの使用、薬剤シンチグラフィーの使用、電子常磁性共鳴(EPR)オキシメトリーの使用、X線研究、単離ループ技術を使用して評価してもよい(Tangri et.al.“Recent Advances in Oral Mucoadhesive Drug Delivery System:A review,”International Jorrnal of Pharma.Research and Development(2011)3(2):151-162)。粘膜付着特性を評価する方法は、Mackie et al.,“Innovative Methods and Applications in Mucoadhesion Research,”Macromolecular Bioscience(2017)17(8)にも記載されている。また、ミクロゲル組成物の粘膜付着特性は、BIACORE(登録商標)集積チップ(IC)媒介プロトコルを使用して、例えば、Kumar et al.,“Mucoadhesive Polymers:Means of Improving the
Mucoadhesive Properties of Drug Delivery System,”J.chem.pharm.Res.(2010)2(5):418-32)に記載されているように評価してもよい。そのようなアッセイでは、ポリマー(粉末)をICの表面に固定化し、その後、ムチン溶液をICの表面を通過させる。これにより、ポリマー表面の相互作用とともにムチンの相互作用が生じる。ポリマー-ムチンの相互作用は、ムチンがポリマー表面に結合したときの屈折率の変化を測定する表面プラズモン共鳴(SPR)と呼ばれる光学現象によって測定される。Takeuchi et
al.,“Novel mucoadhesion tests for polymers and polymer-coated particles to design optimal mucoadhesive drug delivery systems,”Adv. Drug Deliver.Rev.(2005)57(11):1583-1594およびThongborisute&Takeuchi,“Evaluation of mucoadhesiveness of polymers
by BIACORE method and mucin-particle method,”Int J Pharm.(2008)354(1-2):204-9も参照されたい。原子間力顕微鏡(AFM)アッセイを使用して、本発明の実施形態による粘膜付着性ミクロゲル組成物は、記載のアッセイの付着チャネルにおける付着性の増加を示す表面に関して粘膜接着特性を示す。引張強度(インストロン)の結果によって、フィルム形態のミクロゲルが、表面の間にヒトの唾液を使用して、ブタの粘膜の2つの表面間の付着を増加させるという証拠も提供される。
【0032】
本発明の粘膜付着性架橋ミクロゲルは、粘膜付着性機能を有する架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーを含む。「ミクロゲル」は、本説明の意味において、ミクロゲル粒子の水性分散液の形態、またはミクロゲル粒子を含むフィルムの形態の組成物であり、ミクロゲル粒子は、例えば、乾燥状態で100nm~500nm(すなわち、2重量%未満の水を含有する)、例えば、350~450nm、いくつかの事例では375~425nm、例えば、約400nmで変動するサイズを有する球状粒子の形態の架橋ポリマーである。フィルムが存在する場合、フィルムは、いくつかの事例では10~500ミクロン、例えば100~400ミクロンの範囲で変動する厚さを有し得る。本発明のミクロゲルは、1つの種類のみの架橋コポリマーを含んでもよい。ミクロゲル中のコポリマーの架橋密度は、粒子体積内で変動してもよく、それによって、2つの部分を含む「コアシェル」構造が生成され、2つの部分のうちの1つは、他方の部分よりも低い架橋密度を有する。架橋ポリマーは、ミクロゲル粒子の全体積内で一定の架橋速度を有し得る。他の事例では、架橋密度は、粒子の表面でより高くまたはより低くなり得る。
【0033】
本発明の実施形態によるミクロゲルは、粘膜付着性機能を有する少なくとも1つの架橋ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートポリマーを含み、架橋ポリマ
ーは、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、例えば、6~10のエチレングリコール部分を含むオリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、メタクリル酸モノマー単位、粘膜付着性モノマー単位、および架橋部分を有する、コポリマー鎖を含む。
【0034】
ある実施形態によると、ミクロゲルの架橋ポリマーは、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、例えば、4~10のエチレングリコール部分を含むオリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、メタクリル酸モノマー単位、および粘膜付着性機能モノマー単位を有する、コポリマー鎖を含む。モノマー単位は、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、7~9のエチレングリコール部分を有するオリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、およびメタクリル酸であり得る。オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートモノマー単位はまた、8~9のエチレングリコール部分を有し得る。
【0035】
粘膜付着性機能モノマー単位は、粘膜付着性機能を有するモノマーに由来し得る。そのようなモノマーは、ドーパミン、チオール化ポリマー(チオマー)、レクチンなどであるがこれらに限定されない、様々な異なる粘膜付着性機能を有してもよい。いくつかの事例では、粘膜付着性機能モノマーは、ドーパミンアクリルアミドである。
【0036】
コポリマー鎖は、任意の便利な架橋剤から誘導する架橋で連結され得る。「架橋」は、コポリマー鎖を一緒に連結する部分(分子の部分)である。この架橋は、架橋ポリマーの重合プロセス中にモノマーと混合される「架橋剤」分子または架橋剤から誘導する。用いられ得る好適な架橋剤の例としては、1~10、例えば4~5のエチレングリコール単位を含むオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、グリセロール1,3-ジグリセロレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、N,N-ジビニルベンゼン、Ν,Ν’-メチレンビスアクリルアミド、N,N-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、アリルジスルフィド、ビス(2-メタクリロイル)オキシエチルジスルフィド、およびN,N-ビス(アクリロイル)シスタミンが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態によると、架橋剤は、ジ(メタ)アクリレート末端基と、(CH2-CH2-0)n-CH2-CH2-からなる群において選択される部分とを有し、式中、nは0~6、-NH-CH2NH-、およびそれらの混合物である。架橋剤は、例えば、Ν,Ν’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコール)ジメタクリレート、またはオリゴ(エチレングリコール)ジアクリレートである。いくつかの事例では、架橋剤は、例えば、3つのモノマー単位の総モル数の1~5モル%を表す。
【0037】
いくつかの事例では、架橋ポリマーは、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、8~9のエチレングリコール部分を含むオリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位、ジ(メタ)アクリレート末端基ならびに-CH2-CH2-、nが4~5である-(CH2-CH2-0)n-CH2-CH2-、および-NH-CH2-NH-からなる群において選択される部分を含むリンカーと、を含む。ミクロゲルの内部構造は、使用する架橋剤に依存し得る。例えば、分子量が1000g/モル未満の活性物質は、NH-CH2-NH-ブリッジを有するコポリマーにカプセル化され得、分子量が1,000~4,000g/モルの活性物質は、-CH2-CH2-ブリッジを有するコポリマ
ーにカプセル化され得、分子量が4,000~10,000g/モルの活性物質は、nが4~5のブリッジである-(CH2-CH2-0)n-CH2-CH2-を有するコポリマーにカプセル化され得る。
【0038】
一実施形態によると、本発明のミクロゲルは、
-ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、
-6~10のエチレングリコール部分、例えば、7~9のエチレングリコール部分を含み、8~9のエチレングリコール部分を含む、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、
-(メタ)アクリル酸モノマー、および
-粘膜付着性機能を有するコモノマー、の水相沈殿重合によって、
架橋剤の存在下で得ることができる。
【0039】
初期のモノマー混合物中に、ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートは、例えば、モノマーの総モル数の50モル%~90モル%で存在してもよく、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートは、好ましくは、モノマーの総モル数の5~50モル%で存在してもよく、(メタ)アクリル酸モノマーは、好ましくは、モノマーの総モル数の0.1モル%~20モル%、例えば、0.1~5モル%の範囲で存在してもよく、粘膜付着性機能を有するモノマー、例えば、ドーパミンアクリルアミドは、モノマーの総モル数の0.1モル%~20モル%、例えば、0.1~5モル%の範囲で存在してもよく、これらの含有物の合計は100%に等しい。ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(a)とオリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(b)とのモル比(a:b)は変動してもよく、いくつかの事例では、1:1~20:1、5:1~10:1の範囲である。本発明の意味の範囲内で、「間」という表現は、それに続く数値的限界を除外する。一方、「・・・~・・・の範囲」という表現は、記載の限界を含む。
【0040】
本発明の架橋ポリマーを調製するために使用されるモノマージ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートは、例えば、3つのモノマーの総モル数の80~90モル%を表し、オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートモノマーは、好ましくは、モノマーの総モル数の5~15モル%を表し、メタクリル酸は、好ましくは、モノマーの総モル数の0.1~10モル%を表し、これらの3つの含有物の合計は100%に等しい。(メタ)アクリル酸モノマーは、以下の式を有し得、
CR1R2=CR3R4
式中、R1、R2、R3、およびR4は、水素、ハロゲン、または炭化水素基を表し、4つの基のうちの少なくとも1つは、-COOHまたは-COO-M+基を含み、M+は、カチオンを表す。(メタ)アクリル酸モノマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、およびメタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸、イタコン酸、またはアクリル酸からなる群から選択され得る。メタクリル酸が、いくつかの事例において存在する。
【0041】
一実施形態では、ジエチレングリコールメタクリレートモノマー単位のモル分率は、80モル%~90モル%、例えば、82モル%~86モル%であり、オリゴエチレングリコールメタクリレートモノマー単位のモル分率は、5モル%~15モル%、例えば、7モル%~11モル%であり、(メタ)アクリル酸モノマー単位のモル分率は、2モル%~8モル%、例えば、3モル%~7モル%であり、粘膜付着性を有するモノマー単位、例えば、ドーパミンアクリルアミドモノマー単位のモル分率は、2モル%~8モル%、例えば、3モル%~7モル%であり、架橋のモル分率は、1~3モル%であり、モル分率は架橋ポリマーにおけるモル分率である。
【0042】
本明細書に記載の粘膜付着性ミクロゲルには、1つ以上の活性剤が装填されている。
【0043】
本発明の実施形態による粘膜付着性ミクロゲルを生成するために粘膜付着性機能を有するモノマー成分を組み込むことによって適合され得るミクロゲルおよびその製作に関するさらなる詳細は、公開されたPCT出願公開第WO/2016/110615号およびWO/2019/077404号ならびに米国特許第10,287,403号に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
活性剤が装填された粘膜付着性ミクロゲル
粘膜付着性ミクロゲルには、活性剤が装填されている。「装填された」とは、ミクロゲル粒子がある量の活性剤を含むことを意味する。したがって、ある量の活性剤がミクロゲル粒子に存在し、ミクロゲル粒子に捕捉されていると見なすことができる。「捕捉」という用語は、活性剤がミクロゲルのポリマーネットワーク内に位置することを意味する。架橋ポリマーのネットワークは、分子の周囲にバリアを形成し得、これは、ネットワークのいくらかの物理的変化、例えば、pH変動トリガー、温度変動トリガー、または溶媒変動トリガーによって抑制され得る。捕捉された有機分子は、共有結合で架橋ポリマーに連結されなくてもよい。捕捉された活性剤は、有機分子の-OH基のC=C結合と架橋ポリマーのエチレングリコール部分との間に会合され得る、架橋ポリマーとの静電相互作用、ファンデルワールス結合、または水素結合を有し得る。ミクロゲル粒子に装填される活性剤の量は変動してもよいが、いくつかの事例では、ミクロゲル中の活性剤の架橋ポリマーに対する重量比は、250マイクログラム/mg~10mg/mgである。いくつかの事例では、活性物質の架橋ポリマーに対する重量比は、10mg/mgより低く、かつ250マイクログラム/mg、350マイクログラム/mg、400マイクログラム/mg、450マイクログラム/mg、500マイクログラム/mg、550マイクログラム/mg、600マイクログラム/mg、650マイクログラム/mg、700マイクログラム/mg、750マイクログラム/mg、800マイクログラム/mg、850マイクログラム/mg、900マイクログラム/mg、および1mg/mgからなる群において選択される下限より高い。一実施形態によると、活性物質の架橋ポリマーに対する重量比は、550マイクログラム/mgより高い。
【0045】
様々な異なる活性剤をミクロゲル粒子に装填してもよい。いくつかの事例では、活性剤は、小分子である。目的の天然由来または合成の小分子化合物には、有機分子などの多数の化学的分類、例えば、分子量が50を超え、かつ約2,500ダルトン未満の小有機化合物が含まれる。化合物は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合のための官能基を含み得、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基、好ましくは、官能化学基のうちの少なくとも2つを含み得る。候補薬剤は、環状炭素もしくは複素環式構造、および/または上記の官能基のうち1つ以上で置換された芳香族もしくは多環芳香族構造を含み得る。目的の小分子には、ニキビ減少薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗腫瘍薬、抗血管新生薬、抗不整脈薬、抗パーキンソン薬、抗凝固薬、抗けいれん薬、抗がん薬、抗アレルギー薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬、抗片頭痛薬、抗精神病薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、胆汁酸封鎖剤、ビスホスホネート、骨吸収阻害剤、気管支拡張薬、脂質低下薬、心血管薬、中枢神経系薬、キレート剤、コレステロール吸収阻害剤、避妊薬、鬱血除去剤、皮膚病薬、診断用薬、放射性医薬品、利尿薬、去痰薬、アルコール、タバコ、および違法薬物依存症の治療に使用される薬、フィブリン酸薬、胃腸薬、一般麻酔剤、成長ホルモン、ヘパリン、ヘパリン拮抗薬、ハーブ製品、免疫剤、免疫抑制剤、変力剤、インターフェロン、マスト細胞安定化剤、口、鼻、および喉の薬、筋肉弛緩薬、栄養製品、眼科薬、抗生物質、プロバイオティクス、精神療法薬、放射線剤、呼吸器薬、性ホルモン、殺精子剤、スタチン、血栓溶解薬、甲状腺薬、膣調剤、ビタミンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの事例では、活性剤は、核酸活性剤である。核酸活性剤は様々であり得、限定されないが、目的のポリペプチドをコードする核酸が含まれ、その核酸はベクター中に存在し得る。様々なベクター(例えば、ウイルスベクター、細菌ベクター、または真核生物および原核生物の宿主において複製することができるベクター)を、本発明に従って使用することができる。真核生物および原核生物の宿主において複製することができる多数のベクターが当技術分野で知られており、市販されている。いくつかの事例では、本発明に従って使用されるそのようなベクターは、細菌の複製起点と、目的のDNAに作動可能に連結された真核生物プロモーターとから構成される。核酸阻害剤、例えば、DNA、RNA(例えば、RNAi薬剤)、キメラRNA/DNA、タンパク質核酸、および他の核酸誘導体もまた目的のものである。
【0047】
いくつかの事例では、活性剤は、ペプチドまたはポリペプチド活性剤である。ポリペプチド活性剤は、対象に投与すると、所望の活性を示すポリペプチドである。本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、全長タンパク質、ならびに所望の活性を示すその部分またはフラグメントを指す。この用語には、天然由来のタンパク質のバリエーションも含まれ、そのようなバリエーションは、以下でより詳細に説明するように、天然由来のタンパク質と相同または実質的に類似しており、天然由来のタンパク質、ヒトタンパク質、マウスタンパク質、またはTIMPタンパク質を自然に発現するいくつかの他の種からのタンパク質である。目的のポリペプチドは、アミノ酸配列の長さおよび分子量の点で変動してもよい。いくつかの事例では、ポリペプチドは、長さが175~350、例えば、200~250の範囲であり、約200~225のアミノ酸残基を含む。本明細書に記載のポリペプチドは、必要に応じて、天然の供給源から、例えば、精製技術を介するか、化学的に合成されるか、または組換えプロトコルを使用して生成されて得てもよい。
【0048】
「ペプチド」、「オリゴペプチド」、および「ポリペプチド」という用語は、アミノおよび/またはイミノ分子を含む化合物を含むがこれらに限定されない、天然由来または合成のアミノ酸ポリマーまたはアミノ酸様分子を含む任意の化合物を指す。「ペプチド」、「オリゴペプチド」、または「ポリペプチド」という用語の使用によって特定のサイズが暗示されることはなく、これらの用語は交換可能に使用される。定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、置換された連結を有するポリペプチド、ならびに天然由来および非天然由来(例えば、合成)の両方の当技術分野で知られている他の修飾が含まれる。したがって、合成オリゴペプチド、二量体、多量体(例えば、タンデムリピート、線形結合ペプチド)、環化、分岐分子などが定義に含まれる。この用語には、1つ以上のペプトイド(例えば、N-置換グリシン残基)および他の合成アミノ酸またはペプチドを含む分子も含まれる。(例えば、米国特許第5,831,005号、同第5,877,278号、および同第5,977,301号;Nguyen et al.(2000)Chem Biol.7(7):463-473;ならびにSimon et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(20):9367-9371 for descriptions of peptoids参照)。本発明での使用に好適なペプチドの非限定的な長さには、3~5残基の長さ、6~10残基(またはそれらの間の任意の整数)の長さ、11~20残基(またはそれらの間の任意の整数)の長さ、21~75残基(またはそれらの間の任意の整数)の長さ、75~100(またはそれらの間の任意の整数)、または100残基を超える長さが含まれる。典型的には、本発明で有用なポリペプチドは、意図された用途に好適な最大長さを有し得る。好ましくは、ポリペプチドは、約3~100残基の長さである。一般に、当業者は、本明細書の教示を考慮して最大長さを容易に選択することができる。さらに、本明細書に記載されるようなペプチドおよびポリペプチド、例えば合成ペプチドは、標識または他の化学部分などの追加の分子を含んでもよい。
【0049】
したがって、ポリペプチドまたはペプチドの言及はまた、1つ以上の非天然由来のアミ
ノ酸を含む本発明のアミノ酸配列の誘導体を含む。第1のポリペプチドまたはペプチドは、(i)第2のポリペプチドまたはペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドに由来する第1のポリヌクレオチドによってコードされる場合、あるいは(ii)本明細書に記載の第2のポリペプチドまたはペプチドに対して配列同一性を示す場合に、第2のポリペプチドまたはペプチドに「由来する」。配列(またはパーセント)同一性は、以下に説明するように決定され得る。好ましくは、誘導体は、それらが由来する配列に対して、少なくとも約50%パーセント、より好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは約約85%~99%(またはそれらの間の任意の値)の同一性を示す。そのような誘導体は、ポリペプチドまたはペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含み得る。
【0050】
アミノ酸誘導体はまた、ポリペプチドまたはペプチドが所望の活性を維持する(例えば、上皮細胞増殖および創傷治癒を促進する)限り、欠失、付加、および置換(一般に本質的に保存的)などの天然配列への修飾を含み得る。これらの修飾は、部位特異的変異などによる意図的なものであってもよく、タンパク質を生成する宿主の変異またはPCR増幅によるエラーなどによる偶発的なものであってもよい。
【0051】
「フラグメント」とは、無傷の全長配列および構造の一部のみからなる分子を意図する。フラグメントは、ポリペプチドのC末端欠失、N末端欠失、および/または内部欠失を含み得る。特定のタンパク質またはポリペプチドの活性フラグメントは、一般に、全長分子の少なくとも約5~14の連続するアミノ酸残基を含むが、全長分子の少なくとも約15~25の連続するアミノ酸残基を含んでもよく、全長分子の少なくとも約20~50、60~90、またはそれ以上の連続するアミノ酸残基、または5のアミノ酸と全長配列の間の任意の整数を含み得るが、当該フラグメントが、本明細書に定義されるように、HB-EGF活性などの生物学的活性を保持している場合に限る(例えば、EGF受容体に結合して活性化し、上皮細胞増殖および/または創傷治癒を促進する能力)。
【0052】
したがって、治療活性剤には、ホルモン、受容体、サイトカイン、造血因子、成長因子、抗肥満因子、栄養因子、抗炎症因子、タンパク質、ポリペプチド、抗体、酵素などが含まれる。目的のポリペプチド/タンパク質活性剤には、オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、表皮成長因子、血小板由来成長因子、ヘパリン結合表皮成長因子、プロラクチン、ルリベリン、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン-2、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンジオテンシン、チロトロピン放出ホルモン、腫瘍壊死因子、神経成長因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、ヘパリナーゼ、骨形態形成タンパク質、hANP、グルカゴン様ペプチド、インターロイキン-11、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン、酵素、サイトカイン、モノクローナル抗体、ワクチンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
本発明の活性剤が装填された粘膜付着性ミクロゲルは、
-装填されていないミクロゲル粒子の分散液を水中で調製する工程と、
-活性剤の溶液を調製する工程と、
-分散液および溶液を混合して、活性剤をミクロゲル粒子にカプセル化する工程と、
-活性剤が装填されたミクロゲル粒子を回収する工程と、に従って調製され得る。
【0054】
装填されていないミクロゲル粒子は、例えば、水相中で、架橋剤の存在下で、上述のモノマーを、40℃~90℃、例えば、約70℃の温度で接触させる工程を含む、沈殿重合
方法によって調製される。本発明のプロセスは、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)などの界面活性剤の存在を必要とせず、重合は、水溶性ラジカル開始剤、例えば、過硫酸カリウム(KPS)の添加によって開始してもよい。
【0055】
活性剤分子は、前の工程において水性分散液の形態であるミクロゲル、または上記の説明に従ってフィルムの形態で調製されたミクロゲルにカプセル化され得る。活性物質溶液と装填されていないミクロゲル分散液との混合工程は、好ましくは、装填されていないミクロゲル粒子の体積相転移温度よりも高い温度で加熱する工程と、装填されたミクロゲルの得られた分散液を周囲温度(25℃)で冷却する工程とを含む。
【0056】
活性剤の供給溶液は、決定された量の活性物質を、水などの適切な溶媒またはアルコールなどの水と混和性のある溶媒に溶解することによって得ることができる。アルコールは、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコールであり得る。イソドデカン、イソヘキサデカン、またはデカメチルシクロペンタシロキサンなどの他の溶媒も使用することができる。水に可溶または混和性である極性溶媒は、ミクロゲルへの活性物質の装填量を高めるために特に有利であり得る。溶媒中の決定された量の活性物質の完全な溶解は、周囲温度から、装填されていないミクロゲル粒子の体積相転移温度を超える温度までの温度で実行することができる。
【0057】
特定の実施形態では、水中の装填されていないミクロゲル粒子の分散液(0.1~10mg粒子/mL水)は、プロセス温度で加熱される。溶媒(0.5~125mMまたは0.5~2.5mM)中の活性剤の溶液もこのプロセス温度で加熱され、次いで、同じ温度を維持しながら撹拌下で、装填されていないミクロゲル粒子水性分散液と混合される。プロセス温度は、装填されていないミクロゲル粒子のVPTTよりも高いまたは低い温度であり得、粒子はそれぞれ崩壊または膨潤状態にある。例えば、プロセス温度は、VPTTよりも10℃以上、例えば、15℃以上、またはVPTTよりも10℃以下、例えば、15℃以下である。本発明によるミクロゲルを得るために、溶媒の除去およびミクロゲル粒子に捕捉されていない活性物質分子の除去が続いて実行され得る。捕捉されていない活性分子の除去は、濾過および/または遠心分離によって実行され得る。
【0058】
実施形態では、粘膜付着性ミクロゲルは、活性剤に対して高い捕捉効率を示す。捕捉効率(EE%)は、装填されたミクロゲルに捕捉されている活性剤の重量と、供給溶液に含有されている活性剤の量との比率として定義される。捕捉効率(EE%)は、上記で定義したように、捕捉物質量(A)と供給物質量(B)との比率A/Bとしても定義され得る。「供給溶液中の活性剤の量」(以下の説明では「供給活性剤量」とも呼ばれる)は、活性物質を捕捉するために使用される装填されていないミクロゲル粒子1mg当たりの供給溶液中の活性剤の重量(pgまたはmg)である。供給活性剤量の単位は、より短い方式で「mg/mg」または「マイクログラム/mg」と記してもよい。実施形態は、活性剤の高い捕捉効率EE%を可能にし、これは、(ミクロゲル粒子の水性分散液の形態で、または組み立てミクロゲル粒子のフィルムの形態で)装填されていないミクロゲル粒子と混合される非常に高い割合の活性剤の初期量が、ミクロゲル粒子内にうまく捕捉されることを意味する。いくつかの事例では、EE%は、供給物質中の活性剤の量が500マイクログラム/(lmgの装填されていないミクロゲル)~10mg/(lmgの装填されていないミクロゲル)の場合、50%、60%、70%、80%、90%、95%の群において選択される上限よりも高い。いくつかの事例では、捕捉効率(EE%)は、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%からなる群において選択される下限から100%の上限までの範囲である。
【0059】
いくつかの事例では、本発明の活性剤が装填された粘膜付着性ミクロゲルは、ミクロゲルからのそれらの活性剤ペイロードの連続放出を提供し、その放出は、6時間以上、例え
ば、12時間以上観察することができ、24時間以上またはさらに48時間以上も含まれる。この時間の終わりに、放出は、停止し得、活性剤の最大総放出パーセンテージは、100%未満であり、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、および95%からなる群から選択される値よりも大きい。
【0060】
本発明の実施形態による粘膜付着性ミクロゲルを生成するために粘膜付着性機能を有するモノマー成分を組み込むことによって適合され得るミクロゲルおよびその加工に関するさらなる詳細は、公開されたPCT出願公開第WO/2016/110615号および第WO/2019/077404号ならびに米国特許第10,287,403号に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
ヘパリン結合表皮成長因子(HB-EGF)粘膜付着性ミクロゲル
いくつかの実施形態では、粘膜付着性ミクロゲルに装填される活性剤は、HB-EGF活性剤である。HB-EGF活性剤は、所望のHB-EGF活性を示す化合物である。HB-EGFの膜固定型および可溶性形態を含む、HB-EGFの未成熟プロタンパク質形態およびプロタンパク質のタンパク質分解処理によって生成されるHB-EGFの様々な活性形態、ならびにHB-EGF生物学的活性を保持(例えば、上皮細胞増殖および創傷治癒の促進)するそれらの生物学的活性フラグメント、変異体、類似体、および誘導体、を含む、HB-EGFの任意の形態を本発明の実施に使用してもよい。本発明の方法で使用するためのHB-EGFは、天然のものでるか、組換え技術によって得られるか、または合成的に生成されてもよく、任意の供給源からのものであってもよい。代表的なヒトHB-EGF配列は、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)データベースに列挙されており、多くの異なる種のHB-EGF配列が含まれる。例えば、以下のNCBIエントリを参照されたい。
受託番号:L17032、L1703、NP_001936、NM_001945、NP_037077、NP_990180、NP_001137562、NP_034545、NP_001104696、NP_001093871、XP_003829241、XP_005425426、NP_001244398、XP_014126447、XP_014131937、XP_013998941、XP_005523504、XP_005617336、XP_005617335、XP_005617334、XP_005617333、XP_848614、XP_013914901、XP_013821061、XP_013809984、XP_005382088、XP_005382087、XP_005503713、XP_005327340、XP_005356014、XP_005238935、XP_013047270、XP_012996694、XP_010869528、XP_005065318、XP_003477196、XP_012956154、XP_004841917、XP_004744871、XP_012875794、XP_004696718、XP_004652486、XP_002937773、XP_004610052、XP_004586534、XP_004586533、XP_012697566、XP_003782186、XP_012604548、XP_004686855、XP_012501863、XP_012501862、XP_012501861、XP_004397849、XP_002190931、XP_004280331、XP_003756676、XP_004643289、XP_004477893、XP_003266511、XP_012327017、XP_012006016、XP_012006015、XP_012006014、XP_012006013、XP_004008912、XP_011714646、NP_001158639、NP_001273220、これらの配列のすべて(本出願の出願日までに入力されたもの)は、参照により本明細書に組み込まれる。これらの配列のいずれか、またはその生物学的活性フラグメント、またはそれに対して少なくとも約70~100%の配列同一性、この範囲内の任意のパーセント、例えば、それに
対して70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を含む、配列を含む、その変異体は、本明細書に記載のHB-EGFを含む組成物を生成するために使用され得る。加えて、HB-EGFは、グリコシル化またはリン酸化などの翻訳後修飾を含んでもよい。HB-EGFの任意の供給源を利用して本発明を実施することができるが、好ましくは、特に治療を受けている対象がヒトである場合、HB-EGFはヒト供給源に由来する。本発明の実施形態で用いられ得るHB-EGF活性剤およびその調製に関する追加の詳細は、米国公開特許出願第2017/0232065号および同第2018/0256684号に提供され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
薬学的組成物
上記のような活性剤が装填された粘膜付着性ミクロゲルを、1つ以上の追加の成分と組み合わせて、対象への送達に好適な薬学的組成物を生成してもよい。活性剤が装填された粘膜付着性ミクロゲルは、任意選択的に1つ以上の薬理学的に許容可能な賦形剤を含む薬学的組成物に製剤化され得る。例示的な賦形剤には、炭水化物、無機塩、抗菌剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。具体的な炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類、およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールが含まれる。賦形剤にはまた、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせなどの無機塩または緩衝剤が含まれ得る。本発明に好適な抗菌剤の非限定的な例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール(thimersol)、およびそれらの組み合わせが含まれる。抗酸化剤は、酸化を防止するために使用され、それによって、活性剤(例えば、HB-EGF)または調製物の他の成分の劣化を防ぐ。本発明で使用に好適な抗酸化剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。例示的な界面活性剤には、「Tween20」および「Tween80」などのポリソルベート、ならびにF68およびF88などのプルロニック(登録商標)(BASF,Mount Olive,New Jersey);ソルビタンエステル;レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(但し、好ましくはリポソーム形態ではない)、脂肪酸および脂肪酸エステルなどの脂質;コレステロールなどのステロイド;EDTAなどのキレート剤;ならびに亜鉛および他のそのような好適なカチオンが含まれる。使用され得る酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるこれらの酸が挙げられる。好適な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フメリ酸カリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
薬学的組成物中の活性剤、例えば、HB-EFGの量は、多くの要因に応じて変動する
が、組成物が単位剤形または容器(例えば、バイアル)中にある場合、最適には、治療的有効用量である。治療的有効用量は、どの量が臨床的に所望のエンドポイントをもたらすかを決定するために、増加する量の組成物を繰り返し投与することによって実験的に決定することができる。
【0064】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の性質および機能ならびに組成物の特定の必要性に応じて変動する。典型的には、任意の個々の賦形剤の最適量は、日常的な実験、すなわち、様々な量の賦形剤(少量から多量までの範囲)を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを調査することによって決定され、次いで、有意な副作用のない状態で最適な性能が達成される範囲を決定する。しかしながら、一般に、賦形剤は、約1重量%~約99重量%、好ましくは約5重量%~約98重量%、より好ましくは約15~約95重量%の賦形剤の量で組成物中に存在し、30重量%未満の濃度が最も好ましい。これらの前述の薬学的賦形剤は、他の賦形剤とともに、“Remington:The Science&Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams & Williams,(1995),the“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998),およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd
Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0065】
組成物は、例えば、経口、局所、または局部送達のための液体薬学的組成物、溶液、および懸濁液を含むすべての種類の製剤を包含する。いくつかの事例では、組成物は、口内洗浄液またはスプレー製剤である。
【0066】
いくつかの事例では、組成物は、1つ以上の追加の粘膜付着性成分を含んでもよい。そのような事例では、ミクロゲルは、1つ以上の追加の粘膜付着性ポリマー剤と組み合わされ得るが、共有結合されない。目的の追加の粘膜付着性成分には、天然由来または合成のポリマー剤であり得る粘膜付着性ポリマー剤が含まれるが、これらに限定されない。したがって、粘膜付着性ポリマー剤には、天然由来の粘膜付着性ポリマー剤、合成粘膜付着性ポリマー剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものが含まれる。天然由来の薬剤には、多糖類、例えば、デンプン、キトサン、ヘパリン、ポリマーなどが含まれるが、これらに限定されない。非天然由来の薬剤には、プルロニック(登録商標)(すなわち、ポロクサマー)、ポリマー、ペプチド、ペプトイドなどが含まれるが、これらに限定されない。存在する場合、そのような追加の粘膜付着性ポリマー剤の量は、いくつかの事例では、全溶液の1%~50%の範囲で変動してもよい。
【0067】
本明細書の組成物は、任意選択的に、必要に応じて、1つ以上の追加の活性剤を含んでもよい。例えば、粘膜付着性組成物は、例えば、上述のように、化学療法または放射線療法の前、最中、および/または後に口腔および中咽頭を治療するための他の薬物などの1つ以上の追加の活性剤と組み合わせてもよい。例えば、HB-EGFと、術後創傷を治療するための1つ以上の他の薬物、例えば、限定されないが、鎮痛剤、麻酔剤、抗生物質、抗炎症剤、新生上皮付着を増加させる物質、または他の成長因子、または創傷治癒を促進する他の薬剤とを含む調製物を調製して使用してもよい。代替として、そのような薬剤は、HB-EGFを含む組成物とは別の組成物に含有され、HB-EGFを含む組成物と同時、前、または後に同時投与されてもよい。
【0068】
方法
本発明の態様は、活性剤が装填された粘膜付着性ミクロゲル(例えば、HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲル)などの粘膜付着性ミクロゲルを対象に投与する方法を
さらに含む。一般に、本発明の方法は、例えば、上述のように、例えば、薬学的組成物の形態で、ある量の粘膜付着性ミクロゲルを対象の位置に送達することを含む。いくつかの事例では、方法は、例えば、組成物およびその中のミクロゲル粒子が口腔および中咽頭のうちの1つ以上の両方と接触するように、組成物を、それを必要とする対象に組成物を経口投与することを含む。方法を実施する際に、組成物による治療の少なくとも1つの治療的有効なサイクルが対象に投与される。所与の治療サイクルは、1つ以上の投薬量の投与を含んでもよく、投薬量は、処方された投薬計画に従って投与され得、これは、例えば、1日、一日以上、1週間以上につき1~4回で変動してもよい。
【0069】
上述のように、いくつかの事例では、活性剤は、HB-EGFである。いくつかの事例では、HB-EGFを含む粘膜付着性ミクロゲル組成物による治療の少なくとも1つの治療的有効なサイクルは、それを必要とする対象、例えば、療法により誘発される、例えば、放射線療法または化学療法に関連する口腔粘膜炎の治療/予防を必要とする対象、DNA損傷が根本的な原因である口腔上皮疾患の治療/予防のための治療を必要とする対象、上部気道消化管粘膜炎の治療/予防を必要とするか、またはDNA損傷が根本的な原因である対象に投与される。そのような実施形態の例では、方法は、対象の口腔粘膜炎を調節する方法であり、調節することは、粘膜炎の発生を予防するか、または、例えば、粘膜炎の重症度を軽減することによって粘膜を治療することで、粘膜炎からの回復を増強することを意味する。
【0070】
「治療的有効な治療サイクル」とは、投与されたときに、化学療法、放射線療法、またはその両方の組み合わせを受けている個人の治療に関して肯定的な治療応答をもたらす治療サイクルを意図する。いくつかの実施形態では、化学療法、放射線療法、またはその両方の組み合わせの後に適用された場合に創傷治癒および上皮再生を改善するHB-EGFを含む組成物による治療サイクルが目的のものである。創傷治癒および上皮再生の改善は、測定された口腔内の総上皮面積に関連して評価されるように、口腔内の創傷が治癒する速度、もしくは口腔内の上皮層が再生する速さ、またはケラチン層の厚さによって評価されるように、ケラチノサイトが口腔内で成長する速さを増加させることを含み得る。創傷治癒および上皮再生の改善はまた、口腔内で発症し得る創傷の深さまたはサイズを減少させること、発症する創傷(粘膜炎潰瘍)の数を減少させること、または創傷の重症度を軽減させること、または残存瘢痕またはケロイドまたは壊死性組織形成の程度を低下させることを含んでもよい。加えて、治療的有効な用量または量は、術後の出血を減少または予防し得る。
【0071】
ある特定の実施形態では、HB-EGFおよび/または1つ以上の他の治療活性剤、例えば、他の成長因子または創傷を治療するための薬物もしくは薬剤、または他の薬品を含む、複数の治療的有効用量の組成物が投与される。本発明の組成物は、典型的には、必ずしもそうではないが、経口的に、経上皮注射を介して、局所的に、または局部的に投与される。
【0072】
HB-EGFおよび/または1つ以上の他の治療活性剤を含む組成物は、口腔内または創傷に隣接する創傷の表面に直接投与され得る。例えば、組成物は、局所ペーストとして、組成物を創傷に噴霧することによって投与され得る。組成物はまた、創傷被覆材に添加され得る。代替として、組成物は、洗浄、うがい、またはすすぎとして経口投与されてもよい。特定の組成物および適切な投与方法は、上皮再生および創傷治癒を必要とする部位に、活性剤、例えば、HB-EGFを標的化するように選択される。
【0073】
HB-EGFおよび/または1つ以上の他の治療活性剤を含む組成物の薬学的調製物は、液体または半固体、溶液または懸濁液、乳濁液、シロップ、クリーム、軟膏、ローション、パッチ、錠剤、カプセル、粉末、ゲル、マトリクス、坐剤などであり得る。HB-E
GFおよび他の薬剤を含む薬学的組成物は、当技術分野で知られている任意の医学的に許容可能な方法に従って、同じまたは異なる投与経路を使用して投与されてもよい。
【0074】
別の実施形態では、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、1回以上の化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせの前に、放射線療法または化学療法に関連する口腔粘膜炎の発症を予防または軽減することを意図して予防的に投与される。そのような予防的使用は、放射線療法または化学療法に関連する口腔粘膜炎の状況をもたらす創傷の治癒を損なうまたは遅らせる状態に苦しむ対象にとって特に価値があり、また別様に創傷治癒が損なわれない対象にとっても価値があるであろう。
【0075】
別の実施形態では、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、同時に、例えば、1回以上の化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが対象に適用されるときと同時に、放射線療法または化学療法に関連する口腔粘膜炎の発症を予防または軽減することを意図して投与される。いくつかの実施形態では、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物の同時投与の後に、化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが完了した後に、規定された治療計画に従って、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物の1回以上の投与が続く。
【0076】
別の実施形態では、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、a)1回以上の化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせの前に、b)同時に、例えば、1回以上の化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが対象に適用されるときと同時に、ならびに/あるいはc)化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが完了した後に投与される。
【0077】
別の実施形態では、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、a)1回以上の化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせの前に、およびb)同時に、例えば、1回以上の化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが対象に適用されるときと同時に投与される。
【0078】
別の実施形態では、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、a)同時に、例えば、1回以上の化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが対象に適用されるときと同時に、およびb)化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが完了した後に投与される。
【0079】
別の実施形態では、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、a)1回以上の化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせの前に、b)化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが完了した後に投与される。
【0080】
別の実施形態では、HB-EGFおよび/または他の薬剤を含む薬学的組成物は、化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせが完了した後にのみ投与される。
【0081】
当業者は、HB-EGFがどの状態を効果的に治療することができるかを理解するであろう。投与される実際の用量は、対象の年齢、体重、および全身状態、ならびに治療される状態の重症度、医療専門家の判断、および投与される組成物または複合体に応じて変動する。治療有効量は、当業者によって決定することができ、各特定の場合の特定の要件に合わせて調整される。投与される組成物または複合体内のHB-EGFの量は、HB-EGFの特定の形態(例えば、成熟HB-EGFまたはプロHB-EGF)の効力、創傷治癒および上皮再生に対するその効果の大きさ、ならびに投与経路に依存する。
【0082】
本明細書に記載されるように調製されたHB-EGFを含む組成物(ここでも、好まし
くは薬学的調製物の一部として提供される)は、単独で、または放射線療法もしくは化学療法に関連する口腔粘膜炎の状況で創傷を治療するための1つ以上の他の治療活性剤、例えば、限定されないが、鎮痛剤、麻酔剤、抗生物質、抗炎症剤、新血管形成を減少させる物質、新生上皮付着を増加させる物質、または他の成長因子、または創傷治癒を促進する他の薬剤、または臨床医の判断、患者のニーズなどに応じて、様々な投薬スケジュールに従って特定の状態または疾患を治療するために使用される他の薬品と組み合わせて投与され得る。具体的な投薬スケジュールは、当業者によって知られているか、または日常的な方法を使用して実験的に決定することができる。例示的な投薬スケジュールには、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、毎月2回、毎月1回、およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない、1日に複数回の投与が含まれるが、これらに限定されない。好ましい組成物は、1日1回以下の投与を必要とするものである。
【0083】
HB-EGFを含む組成物は、他の薬剤の前、同時、または後に投与され得る。他の薬剤と同時に提供される場合、HB-EGFは、同じまたは異なる組成物中に提供され得る。したがって、HB-EGFおよび1つ以上の他の薬剤は、同時療法によって個人に提示され得る。「同時療法」とは、物質の組み合わせの治療効果が治療を受けている対象に引き起こされるような、対象への意図された投与である。例えば、同時治療は、HB-EGFを含む薬学的組成物の用量と、口腔内の創傷を治療するための別の成長因子または薬物などの少なくとも1つの他の薬剤を含む薬学的組成物の用量とを投与することによって達成され得、これらは、特定の投薬計画に従って、組み合わせて治療的有効用量を含む。同様に、HB-EGFおよび1つ以上の他の治療活性剤は、少なくとも1つの治療用量で投与され得る。別々の薬学的組成物の投与は、これらの物質の組み合わせの治療効果が治療を受けている対象に引き起こされる場合に限り、同時にまたは異なるときに(すなわち、順次、どちらの順番でも、同じ日に、または異なる日に)実行され得る。
【0084】
キット
本発明はまた、例えば上述のように、粘膜付着性ミクロゲル組成物を保持する1つ以上の包装、例えば容器を含むキットを提供する。粘膜付着性ミクロゲル組成物は、例えば、上述のように、所望の任意の種類の治療活性剤を含んでもよい。いくつかの事例では、キットは、HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲル組成物、および任意選択的に、例えば、化学療法もしくは放射線療法、またはその両方の組み合わせの前、最中、および/または後の口腔および中咽頭の創傷などの所与の状態を治療するための1つ以上の他の薬物、例えば、限定されないが、鎮痛剤、麻酔剤、抗生物質、抗炎症剤、新血管形成を減少させる物質、新生上皮付着を増加させる物質、または他の成長因子、または創傷治癒を促進する他の薬剤を含む。容器は、ガラスまたはプラスチックを含む様々な材料から形成され得る。容器は、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈注射用溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。
【0085】
キットはまた、本明細書に記載の放射線療法および化学療法に関連する口腔粘膜炎に起因する口腔内の創傷または口腔咽頭創傷のケア方法を説明する書面による指示を含む添付文書を含み得る。添付文書は、未承認のドラフト添付文書であり得るか、または食品医薬品局(FDA)または他の規制機関によって承認された添付文書であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1A】
図1Aは、ドーパミンアクリルアミドの生成のための合成スキームを提供する。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施形態による粘膜付着性ミクロゲルの生成に使用される試薬の構造を提供する。
【
図1C】
図1Cは、本発明の実施形態による粘膜付着性ミクロゲルの生成に使用される試薬の構造を提供する。
【
図1D】
図1Dは、粘膜付着性ミクロゲルの走査電子顕微鏡写真を提供する。
【
図2A】
図2Aは、本発明のある実施形態による、HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲルの概略図を提供する。
【
図2B】
図2Bは、本発明のある実施形態による、HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲルのSEM画像を提供する。
【
図2C】
図2Cは、
図2Aに示すHB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲルの放出データを示すグラフを提供する。
【
図3】ミクロゲル送達を伴うHB-EGFは、放射線により誘発される粘膜炎から口腔を保護する。
【
図4】ミクロゲル送達を伴うHB-EGFは、放射線により誘発される粘膜炎から口腔を保護する。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、限定としてではなく、例証として提供される。
【0088】
実験
以下の実施例は、当業者に本発明の作製方法および使用方法について完全な開示および説明を提供するように提示されており、本発明者が彼らの発明と見なす範囲を制限することを意図するものではなく、また、以下の実験が実行されたすべてまたは唯一の実験であることを表すことも意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確保するための努力が払われているが、いくつかの実験誤差および偏差を考慮するべきである。別途指示のない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0089】
分子および細胞の生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,HaRBor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons 1999);Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley&Sons 1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press
1999);Viral Vectors(Kaplift&Loewy eds.,Academic Press 1995);Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997);およびCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle&Griffiths,John Wiley&Sons 1998)などの標準的なテキストに見出され、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。本開示で言及されている、または本開示に関連する方法のための試薬、クローニングベクター、細胞、およびキットは、BioRad,Agilent Technologies、Thermo Fisher Scientific、Sigma-Aldrich、New England
Biolabs(NEB)、Takara Bio USA,Inc.などの供給業者、ならびに、例えば、Addgene,Inc.、American Type Culture Collection(ATCC)などのレポジトリから入手可能である。
【0090】
I.粘膜付着性ミクロゲルの製作
A.ドーパミン-アクリルアミド(DA)の合成
ドーパミン-アクリルアミド(DA)を、Patil et al.(N.Patil,C.Falentin-Daudre,C.Jerome,C.Detrembleur,Polym.Chem.,2015,6,2919-2933.)により記載される手順に従って、いくつかの修飾を含めて合成および特徴化した。簡単に説明すると、31.6mmolのNa
2B
4O
7・10H
2Oおよび47.2mmolのNa
2CO
3を、475mLの「Milli-Q」グレードの水に溶解し、溶液を1時間窒素バブリングにより脱気した。15.8mmolの塩酸ドーパミンを窒素雰囲気下で添加し、混合物を30分間撹拌し続けた。次いで、溶液を0℃に冷却し、63.2mmolの塩化アクリロイルを滴加した。溶液をpH9を超えて維持するために、84.9mmolのNa
2CO
3を添加し、溶液を室温で12時間撹拌した。その後、HCIを酸性化溶液のpHが1~2になるように添加し、開放容器内で1時間撹拌し続けた。混合物を酢酸エチルで5回抽出し、抽出から得られた茶色がかった有機溶液を収集し、Na
2SO
4で乾燥させた。その後、溶液の体積を回転蒸発によって低減させ、DAをヘキサンで沈殿させた。形成された懸濁液を、結晶化を助けるために冷蔵庫で一晩保存した。最後に、懸濁液の濾過によって得られた固体を、真空オーブン内で室温で一晩乾燥させた。合成を
図1Aに示す。
【0091】
B.DA系ミクロゲルの合成
ミクロゲルを、250mLの3つ口丸底フラスコでの沈殿重合によって合成した。簡単に説明すると、83.90mmolのMeO
2MA(ジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)、0.573mmolのOEGMA
7-8(オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)、0.117mmolのOEGDA
4-5(ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート)、および57.5gの「Milli-Q」グレードの水を250mLの3つ口丸底フラスコに入れた。構造については
図1Bを、合成概略図については
図1Cを参照されたい。反応器の内容物を150rpmで撹拌し、窒素で45分間パージして、室温で酸素を除去した。次いで、2mLの「Milli-Q」グレードの水に溶解した0.305mmolのMAA(メタクリル酸)および2mLのエタノールに溶解した3モル%のDAをジャケット付きガラス反応器に添加し、混合物を70℃に加熱した。開始剤(2.5mLの脱気水に溶解した14.3mgのペルオキシ二硫酸カリウム(KPS))を添加した後、6時間撹拌しながら窒素雰囲気下で重合反応を続けた。
【0092】
その後、撹拌を維持しながら反応混合物を25℃に冷却し、最終分散液を「Milli-Q」グレードの水を用いた数回の遠心分離-再分散サイクル(10,000rpm、30分)によって精製した。遠心分離後、上澄みを廃棄して粘膜付着性ミクロゲルを得た。
【0093】
図1Dは、上述のように調製された凍結乾燥粘膜付着性ミクロゲルの走査電子顕微鏡写真を提供する。
図1Dでは、左パネルの赤い矢印は、材料の付着フックを示し、中央のパネルはフックの近接を示し、右パネルの水和ヒドロゲルは円形構造を示す。
【0094】
II.HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲルの生成
上述のように生成された精製粘膜付着性ミクロゲルを、100μg/mlのヒトHB-EGFと組み合わせた。得られた混合物を数時間維持し、カプセル化効率は93%であることが観察された。得られたミクロゲルの概略図を
図2Aに提供し、得られたミクロゲルのAFM画像を
図2Bに示す。得られたミクロゲルを、質量分析によって決定されるように、30分で5μg/mlのHB-EGFを放出することができた(
図2Cを参照)。
【0095】
III.HB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲルの有効性
上記IIで生成されたHB-EGFが装填された粘膜付着性ミクロゲル製剤がインビボで送達されること、および製剤が放射線により誘発される口腔粘膜炎の予防に有効である
ことを示す研究が行われた(
図3および4を参照)。
【0096】
図3に示すように、ミクロゲル送達を伴うHB-EGFは、口腔内の重症の放射線により誘発される粘膜炎を予防する。放射線後8日目の舌(上段)および頬粘膜(下段)の盲検化された組織病理学的採点(Sunavala-Dossabhoy G,Abreo F,Timiri Shanmugam PS,Caldito G.Histopathologic grading of oral mucositis.Oral Dis.2015;21(3):355-60)。状態毎に≧3の動物、エリア毎に≧3のスライド。HB-EGF+ミクロゲルは、重症(グレード3以上)の症例を示さなかった。n/aは、アーチファクトに起因して病理学者がスライドを評価できなかったときを表す。
【0097】
図4に示すように、通常の状態、治療なしの放射線のみ、およびHB-EGFミクロゲルで治療された放射線における、放射線後9日目の背側舌表面(上段)である。放射線のみは、完全な潰瘍を伴う上皮の欠如を示す(赤い矢印)。床または口(下段)では、HB-EGFミクロゲルで処理されたマウスは、放射線のみと比較して上皮の保護(黒い矢印)を示す。
【0098】
HB-EGFミクロゲルは、重度の口腔粘膜炎(グレード3以上)を経験しなかった唯一の治療群であった。また、おそらく潤滑の増加に起因して、製剤自体が対照よりも有益であること、およびHB-EGF製剤の組み合わせが製剤単独よりもさらに有益であることも示した。これらの結果によって、優れたインビボ応答を有する製剤を使用して、薬物を標的に送達することができることが示される。
【0099】
V.生体内分布
PET CTスキャンを実行し、HB-EGFをCu64で標識化して、その生体内分布を評価した。結果を
図5に示す。群Aは、Cu64-HB-EGF溶液であり、Cu64で標識化された唯一のHB-EGFであり、溶液(ゾル)の形態で局部的に(マウスの口)に投与された。群Bでは、Cu64-HB-EGFが粘膜付着性ミクロゲルにカプセル化され、24時間後にマウスに経口投与された。両方の群は、30分、1時間、2時間、3時間、および4時間でPET CTスキャンを受けた。Cu64信号を、マウス画像の体を上部(U)と下部(L)の関心領域(ROI)に分割することによって測定した。信号が上部ROIからの場合、その信号は、化合物が上部消化管に保持されたことを示す。信号が下部ROIからの場合、その信号は、化合物が腎臓および膀胱にあることを示し、排除を示す。群Aの吸収および排除は、Cu64-HB-EGFを口腔内に保持する群Bと比較してはるかに高速であり、全身吸収を回避することがミクロゲルの粘膜付着特性を証明する。4時間でも、ミクロゲルでカプセル化されたcu64-HBEGFは、下部ROIで非常に少量を示し、上部ROIからの強い信号は、標識化された生成物の高い保持および低い排除を示す。
【0100】
前述の実施形態のうちの少なくともいくつかでは、ある実施形態で使用される1つ以上の要素は、そのような置換が技術的に実行可能でない場合を除いて、別の実施形態で交換可能に使用することができる。特許請求される主題の範囲から逸脱することなく、上述の方法および構造に対して、他の様々な省略、追加、および修正を行ってもよいことを、当業者によって理解されたい。そのようなすべての修正および変更は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、主題の範囲内に入ることが意図されている。
【0101】
一般に、本明細書で、特に添付の特許請求の範囲で使用される用語(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)は、一般に「オープン」な用語として意図されている(例えば、「含む」という用語は、「含むがこれに限定されない」と解釈され、「有する」という用語
は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は「含むがこれに限定されない」などと解釈されるべきである)。導入された請求項の列挙の具体的な数が意図されている場合、そのような意図は、請求項に明示的に列挙され、そのような列挙がない場合、そのような意図は存在しないことが当業者によってさらに理解される。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の列挙を導入するための導入句「少なくとも1つ」および「1つ以上」の使用を含み得る。しかしながら、そのような句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の列挙の導入が、そのように導入された請求項の列挙を含む任意の特定の請求項を、そのような列挙を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではなく、同じ請求項が「1つ以上」または「少なくとも1つ」という導入句、および「a」または「an」などの不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」は「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味するように解釈されるべきである)を含むときであっても、同じことが、請求項の列挙を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。加えて、導入された請求項の列挙の具体的な数が明示的に列挙されている場合でも、当業者は、そのような列挙が少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語を含まない「2つの列挙」だけの列挙は、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)。さらに、「A、B、およびCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した規則が使用される事例では、一般に、そのような構成は、当業者がその規則を理解するという意味で意図される(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に有するシステムなどを含むであろうが、これらに限定されない)。「A、B、またはCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した規則が使用される事例では、一般に、そのような構成は、当業者がその規則を理解するという意味で意図される(例えば、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に有するシステムなどを含むであろうが、これらに限定されない)。説明、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する事実上任意の離接語および/または句が、用語のうちの1つ、用語のうちのいずれか、または両方の用語を含む可能性を企図するために理解されるべきであることが当業者によってさらに理解される。例えば、「AまたはB」という句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0102】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して説明される場合、当業者は、それによって、本開示が、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群に関しても説明されることを認識するであろう。
【0103】
当業者によって理解されるように、記述された説明を提供することに関してなど、あらゆる目的のために、本明細書に開示されたすべての範囲はまた、ありとあらゆる可能な部分範囲およびそれらの部分範囲の組み合わせを包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲を少なくとも2等分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解することを十分に説明し、かつ可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で考察する各範囲は容易に、下部3分の1、中部3分の1、上部3分の1などに分解され得る。当業者にも理解されるように、「~まで」、「少なくとも」、「~より大きい」、「~より小さい」などのすべての言葉は、列挙された番号を含み、上述のように後で部分範囲に分解され得る範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3の冠詞を有する群は、1、2、または3の冠詞を有する群を指す。同様に、1~5の冠詞を有する群は、1、2、3、4、または5の冠詞を有する群などを指す。
【0104】
前述の発明は、理解を明確にする目的で例証および実施例としていくらか詳細に説明されてきたが、本発明の教示を考慮すると、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、ある特定の変更および修正を行ってもよいことが当業者には容易に明らかである。
【0105】
したがって、前述のものは、単に本発明の原理を例証しているにすぎない。当業者は、本明細書に明示的に説明または示されていないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨および範囲に含まれる様々な配置を考案することができることが理解されるであろう。さらに、本明細書に列挙されるすべての例および条件付き言語は、主に、読者が本発明の原理および発明者が技術の促進に寄与する概念の理解を助けることを意図しており、そのような具体的に列挙された例および条件に限定されないものとして解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにそれらの具体的な例を列挙する本明細書のすべての記載は、それらの構造的および機能的同等物の両方を包含することが意図される。加えて、そのような同等物には、現在知られている同等物および将来開発される同等物の両方、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された任意の要素が含まれることが意図される。さらに、本明細書に開示されるものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているか否にかかわらず、公衆に捧げられることを意図するものではない。
【0106】
したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、かつ説明される例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。特許請求の範囲では、米国特許法第112条(f)または米国特許法第112条(6)は、正確な句「~のための手段」または正確な句「~のための工程」が、特許請求の範囲におけるそのような制限の開始時に列挙されている場合にのみ、特許請求の範囲の制限のために発動されると明示的に定義され、そのような正確な句が特許請求の範囲の制限で使用されない場合、米国特許法第112(f)または米国特許法第112(6)は発動されない。
【受託番号】
【0107】
L17032、L1703、NP_001936、NM_001945、NP_037077、NP_990180、NP_001137562、NP_034545、NP_001104696、NP_001093871、XP_003829241、XP_005425426、NP_001244398、XP_014126447、XP_014131937、XP_013998941、XP_005523504、XP_005617336、XP_005617335、XP_005617334、XP_005617333、XP_848614、XP_013914901、XP_013821061、XP_013809984、XP_005382088、XP_005382087、XP_005503713、XP_005327340、XP_005356014、XP_005238935、XP_013047270、XP_012996694、XP_010869528、XP_005065318、XP_003477196、XP_012956154、XP_004841917、XP_004744871、XP_012875794、XP_004696718、XP_004652486、XP_002937773、XP_004610052、XP_004586534、XP_004586533、XP_012697566、XP_003782186、XP_012604548、XP_004686855、XP_012501863、XP_012501862、XP_012501861、XP_004397849、XP_002190931、XP_004280331、XP_003756676、XP_004643289、XP_004477893、XP_003266511、XP_012327017、XP_012006016、XP_012006015、XP_012006014、XP_012006013、XP_004008912、XP_011714646、
NP_001158639、NP_001273220
【国際調査報告】