(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-01
(54)【発明の名称】3次元オブジェクトの付加製造の方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/43 20210101AFI20220725BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220725BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220725BHJP
B22F 10/62 20210101ALI20220725BHJP
C22C 1/04 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B22F10/43
B33Y10/00
B22F10/28
B22F10/62
C22C1/04 E
C22C1/04 C
C22C1/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512487
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(85)【翻訳文提出日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 IB2020054217
(87)【国際公開番号】W WO2020225711
(87)【国際公開日】2020-11-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521483607
【氏名又は名称】ズロドウスキ,ルカシュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ズロドウスキ,ルカシュ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA06
4K018AA08
4K018AA15
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA08
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
金属およびそれらの合金からの三次元オブジェクトを付加製造するための方法であって、粉末の形の合金材料の後続の層をレーザービームまたは電子ビームで溶融し、オブジェクト自体と、材料の化学エッチングによってオブジェクト自体から後に除去されるサポート構造材と、を製造するプロセスによる方法において、サポート構造材は、堆積した粉末の層によって画定される平面に平行な方向で測定される、10-12m2より高い透過率を有し、サポート構造材壁の厚さは1mm以下であり、エッチング液は不動態層を処理された材料の表面に単独で形成させる少なくとも1つの成分を含み、エッチング液は媒体中のキャビテーション閾値よりも大きい強度を有する超音波にさらされることを特徴とする、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属およびそれらの合金から三次元オブジェクトを付加製造するための方法であって、粉末の形の合金材料の後続の層をレーザービームまたは電子ビームで溶融し、エッチング液中での材料の化学エッチングによって前記オブジェクトから後に分離されるサポート構造材と共に製造される前記オブジェクトを得るプロセスによる方法において、
前記サポート構造材は、前記堆積された粉末の層によって画定される平面に平行な少なくとも一方向で測定される、10
-12m
2より高い透過率を有し、前記サポート構造材壁の厚さは1mm以下であり、
前記エッチング液は、前記処理される材料の表面に不動態層を形成する効果をそれ単独で有する少なくとも1つの化合物を含み、前記エッチング液は、媒体のキャビテーション閾値よりも大きい強度を有する超音波にさらされる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記サポート構造材が、前記エッチング液の前記成分のうちの1つを含む溶液に浸漬され、次いで、前記エッチング液の前記第2の成分を含む容器に移動されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の溶液は、金属フッ化物、塩化物、または臭化物の水溶液を含み、前記第2の溶液は、酸化性酸を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サポート構造材を前記第1の溶液に浸漬した後、前記溶媒を蒸発させることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サポート構造材が前記第1の成分に浸漬された後、前記第1の成分の余剰分は洗浄液でリンスすることによって除去されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記超音波の強度が5W/m
2よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サポート構造材と前記オブジェクトとの接触面積が、前記オブジェクトよりも大きい気孔率を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
サポート構造材壁間の距離が100μmよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記オブジェクトを直接支持する前記製造されたサポート構造材は、最大20mmの高さを有し、残りの高さは、より大きな厚さとより低い気孔率を有するサポート構造材を形成することによって満たされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記製造された物体および前記サポート構造材が、工業製品レベルのチタン、オーステナイト鋼、高温ニッケル合金、AlSi12シルミンなどの金属材料から作製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記製造されたオブジェクトおよび前記サポート構造材が、少なくとも80原子パーセントのチタンを含む合金から作製され、エッチング剤が1%から4%の濃度のHFおよび2%から7%の濃度のHNO
3の溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記オブジェクトおよび前記サポート構造材が少なくとも80原子パーセントのニッケルおよび鉄を含む合金から作製され、前記エッチング剤が、4%から20%の濃度のHFおよび1%から4%の濃度のHNO
3の溶液であり、好ましくは、前記オブジェクトおよび前記サポート構造材は、少なくとも80原子パーセントのアルミニウムを含む合金から作製され、前記エッチング剤は、50~80℃の温度で10%から50%の濃度のNaOHおよびKOHの溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
金属およびそれらの合金からの三次元オブジェクトを付加製造するための方法であって、粉末の形の前記合金材料の後続の層をレーザービームまたは電子ビームで溶融し、前記材料の化学エッチングによって前記オブジェクトから後に除去されるサポート構造材と共に前記オブジェクトを製造するプロセスによる方法において、前記サポート構造材が、前記堆積した粉末の層によって画定される平面に平行な方向で測定される、10
-12m
2より高い透過率を有し、前記サポート構造材壁の厚さは1mm以下であり、前記エッチングは少なくとも2つの溶液中で行われ、前記第1の溶液は前記材料表面に不動態層を成長させ、前記第2の溶液は前記不動態層を選択的に溶解させる、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記エッチングされる材料はAlSi12アルミニウム合金であり、前記第1の溶液は酸化性酸を含み、前記不動態層は前記エッチングされる材料の酸化物または水酸化物からなり、前記第2の溶液は非酸化性酸を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の溶液は、金属フッ化物、塩化物、または臭化物のアルカリ性溶液を含み、前記第2の溶液は塩酸を含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の溶液は、前記溶液中でエッチングされる前記材料の腐食電位よりもベース材料に対して大きい電気化学電位を有する金属イオンを含み、前記第2の溶液は含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記エッチングされる材料は鋼1.2709であり、前記第1の溶液は銅(II)塩イオンを含み、前記第2の溶液はアンモニウムイオンを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理が、前記第1の溶液および前記第2の溶液において交互に行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記エッチングされた成分が、異なるエッチング液中での処理の間に、1つまたは複数の中和液でリンスされることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的または電気化学的処理によってサポート材の除去が実現される、三次元オブジェクトの付加製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的レーザー溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)などの3D印刷方法により、他の方法では得られない、または経済的に製造できない複合金属合金オブジェクトの製造が可能になる。これらの方法は、粉末層をレーザーまたは電子ビームで融解させることに基づいている。このプロセスは、製造されるオブジェクトの断面領域の後続の層に関する事前の入力データに従って、粉末の薄層を広げ、その表面にレーザービームを導くことによって実現される。レーザービームパラメータの選択により、粉末層の特定の領域での材料の溶融または焼結が可能になる。この操作は、後続の粉末層に対して繰り返される。通常、工業製品レベルのチタン、TiCP合金、インコネル718および625ニッケル合金、オーステナイト鋼およびマルエージング鋼を含む鋼、ならびにその他の金属合金およびセラミック-金属複合物などの金属粉末が使用される。
【0003】
これらの製造方法の特異性のために、サポート構造材なしで特定の幾何学的形状を得るのは不可能である。サポート構造材の目的は、剛性を維持し、製造されるオブジェクトモデルが製造プロセス中に変形するのを防ぎ、後続の層からの熱放散を可能にすることである。3D印刷プロセスが終了したら、サポート構造材を除去する必要がある。サポート材の除去は、時間がかかり労力を要するプロセスであり、そのため、この手順に対して自動化手法が集中的に開発されている。
【0004】
現在、サポート構造材を除去するための最も単純で最も頻繁に使用される方法は、機械加工と放電加工である。比較的新しい方法は、化学的または電気化学的処理によるサポート構造材の除去である。処理は、製造されたモデルをサポート構造材とともにエッチング液にさらすことに基づいている。通常、酸化性酸の混合物(チタンまたは鋼から製造されたオブジェクトの場合)または濃アルカリ(アルミニウム合金から製造されたオブジェクトの場合)が使用され、反応生成物が使用される溶液に溶解するようになる。サポート材材料はモデル材料と同一であってもよく、こうすることで、それはサポート材と共に溶解し、サイズが縮小されるか、またはサポート材はより低い耐薬品性を有する材料から製造されてもよい。
【0005】
通常、サポート構造材は、点、線、および面に分割して、格子形状にすることができる。製造されたオブジェクトからのサポート構造材の分離を容易にするために、サポート構造材は、通常、台形または三角形の形で製造された一列の歯で仕上げられる。これにより、オブジェクトとの接続ポイントでのサポート材がもろくなり、オブジェクトが簡単に分離できるようにする。点および線形構造は、エッチング液へのアクセスが容易なため、化学的に簡単に除去できる。しかしながら、サポート材機能に関しては、大規模な構造が最適であることが分かっている。それにもかかわらず、そのような構造は、エッチング中の主な問題である。
【0006】
論文「Dissolvable metal supports for printed metal parts, Lefky,2016」によると、サポート材材料が炭素鋼で、製造されたオブジェクトがステンレス鋼で作られたLENS法が使用された。このソリューションは、国際公開第2017143005号特許出願に説明された。この方法は、製造プロセス中に2つ以上の材料を使用する可能性に欠けているため、SLMとEBMの両方で使用することは不可能である。
【0007】
同様の概念が、選択的レーザー溶融法について同じ著者によって提示された(Dissolvable Supports in Powder Bed Fusion-Printed Stainless Steel,Lefky,2017)。この場合、サポート構造材とともにモデル全体の浸炭が使用された。浸炭層はより低い耐食性を示すことが見出されており、選択された試薬でエッチングされた。浸炭の深さは約200マイクロメートルであり、これにより、サポート構造材をその断面積全体にわたって浸炭することが可能になった。それらの断面積に沿ったサポート構造材の化学組成の有意な変化は、モデル自体の寸法(浸炭層の厚さ)の制御された減少を伴うそれらの完全な溶解を可能にした。このソリューションは、国際公開第2018013178号および米国特許第2011256416号の特許公開で詳細に説明されている。これらの発明の主な目的は、化学的または熱化学的処理による材料の表面改質と、それに続く耐薬品性が低下した層の化学的除去である。この方法では、時間のかかる熱処理が必要であり、さらに、プロセス温度(マルエージング鋼の硬化プロセスなど)が浸炭温度よりも低い材料にのみ適用できる。
【0008】
国際公開第2018013178号に説明されているソリューションは、溶液またはサポート構造材内の増感ガスの拡散、および材料自体の内部の合金成分の拡散によっても制限される。第1の制限は、モデル全体、特にサポート構造材内の化学組成の均一な変化を設計することの難しさに起因する。熱化学的処理は、多孔質構造内の拡散によって制限され、したがって、化学組成が変化した均質な層を得るのはより困難である。第2の制限は、問題のモデルの深さに沿った化学組成の変化プロファイルである。層の深さに沿った化学組成の変化は連続的であるため、モデルが作製された後でも、表面層はベース材料とは異なる化学組成を有する。飽和自体の目的はモデルの耐薬品性を低下させることであるため、オブジェクト自体の耐薬品性が低下し、腐食の影響を受けやすくなる。
【0009】
あるいは、エッチング液を使用して、モデルとサポート構造材の両方をエッチングする。サポート構造材の厚さが著しく薄いため、モデル自体よりもはるかに高速でエッチングが行われる(Untersuchungen zum automatisierten Entstutzen SLM-gefertigter Bauteile, Schmithusen, 2017)。このソリューションの場合、問題は、より大きなモデルのサポート構造材のエッチングにおける均一性の欠如である。エッジにあるサポート構造材は、モデルの中心に近いものよりも強力なエッチングを受ける。これは、腐食生成物の除去速度が不均一であり、エッチング媒体がアクセスできるためである。さらに、サポート材のエッチング時間が長くなるため、製造されたオブジェクトの薄い部分が損傷し、エッジが丸められる。その結果、従来のサポート材が使用される一方で、1.5mm未満のモデル部品は、エッチングによって完全に溶解する可能性がある。工業製品レベルのチタンと硝酸およびフッ化水素酸の混合物、シルミンAlSi12と水酸化ナトリウムの溶液、Inconel718と塩酸および塩化鉄(III)などの典型的な、エッチングされる材料とエッチング剤のシステムの反応中は、可溶性金属塩と水素が反応の主な生成物である。水素蒸気の集中的な放出は、溶液をサポート構造材から押し出し、それらの不均一な除去を引き起こす。さらに、シルミンのエッチング中のシリコン堆積物などの固体生成物の形成は、さらにプロセスの不安定性の原因となる。このアプローチの修正については、多くの特許出願に説明されている。
【0010】
国際公開第2018073259号は、より高速でエッチングを受ける選択的レーザー溶融法において樹枝状サポート構造材を形成するための方法を説明している。モデルと直接接触するサポート構造材の一部は、放射状に広がる分岐に分割される。このソリューションのおかげで、サポート構造材のクラウンは、エッチングが行われるためのより高い活性表面を有し、他のソリューションのサポート構造材よりも速い速度で除去される。このソリューションによるサポート構造材の不利な点は、トラスサポート構造材と比較して、剛性が低く、座屈しやすいことである。
【0011】
国際公開第2015197862号は、化学エッチングを考慮してターゲットオブジェクトを拡大する付加製造の方法について説明している。さらに、生成されたサポート構造材は、最終製品よりも高い気孔率を有している。サポート構造材とオブジェクト自体が接触する領域は、特にエッチングの影響を受けやすい。加えて、サポート構造材が除去された後にオブジェクトを除去するための自動システムが説明されている。しかしながら、このソリューションでは、一般的なトラスサポート構造材についてしか説明していない。
【0012】
国際公開第2017143013号は、生成されるオブジェクトの材料よりも低い耐薬品性をサポート構造材が有するような方法での、選択的レーザー溶融法におけるパラメータ選択を説明している。サポート構造材パラメータの変更により、化学的に不安定な相が生成されるか、気孔率が増加する。
【0013】
サポート構造材の化学的除去における多くの重要な進歩にもかかわらず、これらの方法は、それらの低い再現性および不均一なサポート構造材エッチングのために、より広い用途を見出していない。
【発明の概要】
【0014】
本発明による方法は、上に示した問題を解決する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
金属およびそれらの合金からの三次元オブジェクトを付加製造するための方法であって、粉末の形の合金材料の後続の層をレーザービームまたは電子ビームで溶融し、材料の化学エッチングによってオブジェクト自体から後に除去されるサポート構造材と共にオブジェクトを得るプロセスによる方法において、サポート構造材は、堆積した粉末の層によって画定される平面に平行な方向で測定される、10-12m2より高い透過率を有し、サポート構造材壁の厚さは1mm以下であり、エッチング液は処理された材料の表面に不動態層を単独で形成させる少なくとも1つの成分を含み、エッチング液は溶液中のキャビテーション閾値よりも大きい強度を有する超音波にさらされる、ことを特徴とする方法。
【0016】
本発明によるサポート構造材は、エッチング液との反応で除去される。エッチング液によるこれらの構造材のオブジェクト浸透全体におけるサポート構造材の均一なエッチングのための条件。経済的に好ましいソリューション、すなわち、オブジェクトがまだ作業プレート上にある間にサポート構造材をエッチングで取り除くことを考慮に入れると、エッチング液によるサポート構造材の浸透の方法を提供する必要がある。粉末堆積面に垂直な方向の流れは、常に一方側の作業プレートおよびもう一方側の製造されたオブジェクトによって制限される。したがって、エッチング液に対するサポート構造材の透過率の重要な条件は、粉末堆積面に垂直な方向の透過率である。
【0017】
本発明によるサポート構造材壁の厚さは、1mm以下である。サポート構造材のエッチング速度は、それらの壁の厚さに直接依存し、必ずしも構造材自体の寸法に依存するわけではない。例えば、直径1mm、壁厚100μmの円筒形サポート構造材は、直径200μmの中実円筒構造と同じ速度でエッチングを受ける。同時に、円筒構造ははるかに高い剛性を維持する。
【0018】
本発明によるエッチング液は、処理される材料上に不動態層を形成させる少なくとも1つの成分を含む。化学的研磨と同様に、サポート構造材の化学的除去に供される材料は、2つの異なる方法でエッチングされ得る。最初に、材料の表面にピットが生じ、2番目に、表面の不規則性が平準化される。材料を均一に溶解するには、不動態層の再構築を可能にする成分の存在が必要である。
【0019】
本発明によるエッチング液は、所与の材料のキャビテーション閾値よりも高い強度の超音波で励起される。溶液がサポート構造材に十分に浸透し、エッチング中に生成されたガスを首尾よく除去するのを助けるために、溶液内のキャビテーションが必要である。
【0020】
超音波励起自体が化学二重層(溶液に沈められた固体の表面のイオン層)の特性を変化させ、多数の化学反応の速度を上げるので有益である。一方、キャビテーションの閾値を下回ると、超音波はエッチング液によるサポート構造材の浸透にほとんど影響を与えない。
【0021】
有利には、エッチング液は少なくとも2つの成分からなり(composed of)、そのうちの1つが存在しないと、サポート構造材材料との反応が起こらず、サポート構造材がエッチング液成分の1つを含む溶液に浸漬され、その後、オブジェクトは、エッチング液の2番目の成分を含む容器に移動される。サポート構造材材料との化学反応は、溶液成分が混合されるときに起こり、この場合、それは、第2の成分がサポート構造材の内部に拡散する間にサポート構造材の内部で起こる。これにより、製造されたオブジェクトの溶解が減少するように、2つのエッチング液成分の一時的な分離が可能になる。サポート構造材の表面積が大きく、サポート構造材の間の距離が短いため、サポート構造材は、オブジェクト自体よりもはるかに高い液体保持傾向を特徴とする。最初の段階では、オブジェクトがサポート構造材とともに第1の成分を含む溶液に浸漬される。エッチング液の第2の成分が欠けているため、材料はエッチングを受けない。続いて、オブジェクトはサポート構造材とともに、溶液の第2の成分を含む容器に移動される。サポート構造材の内部を通る溶液の第2の成分の拡散中に、第1の溶液成分との混合が起こり、反応がサポート構造材材料で始まる。製造されたオブジェクトの第1の成分が少量であるため、化学反応および材料のエッチングは起こらない。
【0022】
有利には、サポート構造材は、金属フッ化物、塩化物、または臭化物を含む水溶液に浸漬され、次に酸化性酸を備えた容器に移される。
【0023】
有利には、サポート構造材は、金属フッ化物、塩化物、または臭化物を含む水溶液に浸漬され、次に溶質が蒸発され、サポート構造材が酸化性酸を備えた容器に移される。
【0024】
有利には、サポート構造材は、金属フッ化物、塩化物、または臭化物を含む水溶液に浸漬され、次に洗浄液でリンスされ、次に酸化性酸を備えた容器に移される。
【0025】
多くの金属材料は、強酸化性酸およびハロゲン化物イオンとの同時反応の結果としてエッチングを受ける。成分の1つを除去すると、経済的に実現可能な時間内に材料が溶解しにくくなる。この効果は、サポート構造材の選択的エッチングのために本発明に従って有利に使用される。サポート構造材は、溶解した金属ハロゲン化物を含む溶液に浸漬される。続いて、溶媒が蒸発し、製造されたオブジェクトおよびハロゲン化物に浸漬されたサポート構造材の表面に塩の層が残る。製造されたオブジェクトの塩層は、溶液でリンスすることによって除去され、同時に、サポート構造材の浸透のための溶液の容量が限られているため、サポート構造材の内部の塩は完全にはリンスされない。続いて、塩が除去され、塩をまだ含んでいるサポート構造材と共に製造されたオブジェクトは、第2のエッチング液に移される。第2の成分がサポート構造材に浸透した結果、サポート構造材成分との反応が起こり、それらは溶解する。そのような溶液の例は、工業製品レベルのチタンのエッチングのための第1の溶液におけるNaF、および第2の溶液におけるHNO3の使用である。
【0026】
好ましくは、製造されたオブジェクトおよびサポート構造材は、工業製品レベルのチタン、オーステナイト鋼、高温ニッケル合金、シルミンAlSi12などの金属材料から作製される。
【0027】
好ましくは、製造されたオブジェクトおよびサポート構造材は、少なくとも80原子パーセントのチタンを含む合金から作製され、エッチング剤は、1%から4%の濃度のHFおよび2%から7%の濃度のHNO3の溶液である。
【0028】
好ましくは、製造されたオブジェクトおよびサポート構造材は、少なくとも80原子パーセントのニッケルおよび鉄を含む合金から作製され、エッチング剤は、4%から20%の濃度のHClおよび1%から4%の濃度のFeCl3の溶液である。
【0029】
好ましくは、製造されたオブジェクトおよびサポート構造材は、少なくとも80原子パーセントのアルミニウムを含む合金から作製され、エッチング剤は、50~80℃の温度で10%~50%の濃度のNaOHまたはKOHの溶液である。
【0030】
金属およびそれらの合金からの三次元オブジェクトを付加製造するための方法であって、粉末の形の合金材料の後続の層をレーザービームまたは電子ビームで溶融し、オブジェクト自体と、材料の化学エッチングによってオブジェクト自体から後に除去されるサポート構造材と、を製造するプロセスによる本発明の別の方法は、サポート構造材が、堆積した粉末の層によって画定される平面に平行な方向で測定される、10-12m2より高い透過率を有し、サポート構造材壁の厚さは1mm以下であり、エッチングは少なくとも2つの溶液中で行われ、第1の溶液は材料表面に不動態層を成長させ、第2の溶液は不動態層を選択的に溶解させる、という点で優れている。
【0031】
本発明による方法では、2つの溶液が使用される。第1の溶液中では、サポート構造材上に不動態層が生成され、第2の溶液中では、前記層は、ベース材料を溶解することなく除去され、その結果、材料の特定の厚さを除去する。この方法は、自己制限の能力を有する金属の表面、すなわち、特定の厚さの層が形成され、時間の経過に伴い無視できるほどにしか成長しない表面での化学反応を使用する。例えば、酸のセットの影響下で、特定の厚さの酸化物層が形成され、層の厚さは時間とともに安定する。第2の溶液中では、酸化物層がベース材料の損傷なく除去される。この手順を繰り返して、各サイクルで適切に特定の厚さの材料を除去することができる。
【0032】
有利には、溶液中での処理は、材料の特定の層の除去を伴う交互方式で実行される。これにより、特定の厚さの材料とサポート構造材を多段階プロセスで除去できる。
【0033】
有利には、第1の溶液は、溶液中で処理される材料の電位よりも高い電気化学電位を有する金属イオンを含む。これにより、交換反応が処理された材料の表面で起こり、表面を異なる化学的性質を持つ金属で覆い、金属が別の溶液に移動されると、そこで堆積された材料の選択的エッチングが行われる。複数の交換サイクルを実行することで、材料とサポート構造材の特定の層を均一に除去できる。
【0034】
有利には、オブジェクトおよびサポート構造材は、溶液中での処理の間にリンスされる。
【0035】
本発明によれば、サポート構造材は、腐食生成物の除去を可能にする透過率によって特徴付けられる。あるいは、本発明によるサポート構造材は、より迅速に製造される従来の固体サポート構造材とともに使用され得る。このような場合、可溶性のサポート構造材はモデルと直接接触し、従来のシステムを使用して作業プレートから支持される。これにより、サポート構造材を簡単に除去することができ、粉末の消費量を減らすことができる。
【0036】
サポート構造材の透過率を計算するために、文献に説明されている手順を使用することができる(The influence of pore size variation on the pressure drop in open-cell foams, Skibinski, 2015)。
【0037】
本発明による方法は、製造されたオブジェクトの材料の損失を最小限に抑えて、サポート構造材の制御された除去を可能にする。現在の最新技術に関連して、それは、サポート構造材の製造のための条件、エッチング液の選択、およびその励起の方法を同時に決定する。
【0038】
本発明による方法は、以下の実施例により詳細に説明される。
【実施例】
【0039】
実施例1
実験では、工業製品レベルのチタン(TiCP)とシルミンAlSi12の2つの材料を使用した。これらの材料の両方から、一辺の長さが20mmの立方体の形をしたオブジェクトが製造され、堆積した粉末層によって決定される平面に平行な壁で、高さ10mmのサポート材上に配置された。サポート構造材は、TiCPの場合は400mm/秒の速度で50Wの出力、AlSi12の場合は600mm/秒および60W、つまりそれぞれ90および120マイクロメートルのレーザービームを1回通過させることによって決定される幅の平行板で構成された。サポート構造材には、気孔率11%のTiCP合金と気孔率9%のAlSi12合金を使用した。板間の距離は500μmに設定された。サポート構造材の透過率は5*10-7m2であると計算された。調製したAlSi12合金モデルをサポート構造材と共に、最初に蒸留水中の超音波浴で洗浄し、続いて反応チャンバに入れ、そこで10%NaOH溶液の形のエッチング剤を添加した。エッチングは、モデルを分離するのに必要な最小時間で80°Cの温度で実行され、この時間は、20kHzの周波数で0.5W/cm2の超音波強度で8分であった。製造されたオブジェクトの質量損失は0.21gであった。
【0040】
完成したTiCP合金モデルをサポート構造材と共に、最初に蒸留水中の超音波浴で洗浄し、続いて反応チャンバに入れ、1.3%HFおよび9%HNO3溶液の形のエッチング剤を添加した。エッチングは、モデルを分離するのに必要な最小時間で80°Cの温度で実行され、この時間は、20kHzの周波数で0.3W/cm2の超音波強度で6分であった。製造されたオブジェクトの質量損失は0.51gであった。
【0041】
比較のために、同じ立方体モデルを同じ材料から作成したが、異なる点は、サポート構造材が標準的な方法で、つまり壁が互いに交差するように配置され、壁間の距離が同じ、つまり500μmに保たれているということである。TiCP合金モデルの場合、最小エッチング時間は20分で、製造されたオブジェクトの重量が4.2g減少し、AlSi12合金オブジェクトの場合、最小エッチング時間は96分で、製造されたオブジェクトの重量が2.61g減少した。両方の実験は、20kHzの周波数で0.5W/cm2の超音波強度で実施された。
【0042】
実施例2
具現化の別の実施例では、一辺が20mmの立方体がTiCPから製造された。直径500μm、気孔率12%のポール形状のサポート構造材が、40Wおよび500mm/秒のパラメータで製造された。サポート材間の距離は200μmであり、計算された透過率は10-9m2であった。重要なのは、低い透過率の値は、サポート構造材間の焼結粉末の堆積の結果だったことである。次に、オブジェクトを蒸留水で10分間、続いて周波数20kHzで超音波強度0.5W/cm2で、1.3%HFおよび9%HNO3の溶液中で3分間2回リンスし、これにより、サポート構造材を完全にエッチングすることができた。
【0043】
実施例3
具現化の別の実施例では、一辺が20mmの立方体がTiCPから製造された。直径500μm、気孔率0.5%のポール形状のサポート構造材が、50Wおよび500mm/秒のパラメータで製造された。サポート材間の距離は200μmであり、計算された透過率は10-9m2であった。重要なのは、低い透過率の値は、サポート構造材間の焼結粉末の堆積の結果だったことである。次に、オブジェクトを蒸留水で10分間、続いて周波数20kHzで超音波強度0.5W/cm2で、1.3%HFおよび9%HNO3の溶液中で3分間4回リンスし、これにより、サポート構造材を完全にエッチングすることができた。
【0044】
実施例4
本発明の具現化の別の実施例は、AlSi12からの熱機関の部品である。直径500μm、気孔率12%のポール形状のサポート構造材が、40Wおよび500mm/秒のパラメータで製造された。サポート材間の距離は2000μmであり、計算された透過率は10-5m2であった。次に、オブジェクトを蒸留水で10分間、続いて10%KCIO4の溶液でそれぞれ3分間、そして5%HCl溶液で3分間リンスした。最後の2つのステップは、20kHzの周波数で0.5W/cm2の超音波強度で5回繰り返された。
【0045】
実施例5
本発明の具現化の別の実施例は、TiCPからの熱機関の部品である。直径500μm、気孔率2%のポール形状のサポート構造材が、60Wおよび500mm/秒のパラメータで製造された。サポート材間の距離は1000μmであり、計算された透過率は10-5m2であった。次に、オブジェクトを蒸留水で10分間、続いて10%NaFの溶液で10分間リンスした後、それを373Kの温度で4時間乾燥させた。次に、オブジェクトを蒸留水で1分間リンスし、9%HNO3の溶液に移し、そこで、20kHzの周波数で0.5W/cm2の超音波強度で6分間リンスした。
【0046】
実施例6
本発明の具現化の別の実施例は、1.2709鋼で作られた、一辺が20mmの立方体である。直径2mm、壁厚100μm、気孔率2%の円筒形のサポート構造材が、30Wおよび125mm/秒のパラメータで製造された。サポート材間の距離は1000μmであり、計算された透過率は2*10-7m2であった。次に、オブジェクトを蒸留水で10分間、続いて5%CuSO4の溶液中で12分間、そして5%NH4Clおよび5%HCl中で2分間リンスした。最後の2つのステップは、20kHzの周波数で0.5W/cm2の超音波強度で10回繰り返された。
【国際調査報告】