(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-02
(54)【発明の名称】皮脂耐性が改善されたブロック共重合体
(51)【国際特許分類】
C08G 63/91 20060101AFI20220726BHJP
C08G 63/08 20060101ALI20220726BHJP
C08L 87/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C08G63/91
C08G63/08
C08L87/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570404
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 FR2020050888
(87)【国際公開番号】W WO2020240132
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】テステュー, ブランディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ピノー, クエンタン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002CF192
4J002GB01
4J002GC00
4J002GP00
4J002GQ00
4J029AB01
4J029AC03
4J029AE01
4J029AE04
4J029EG06
4J029JE162
4J029JE192
4J029JE202
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの剛性ブロックおよび少なくとも1つの可撓性ブロックを含むブロック共重合体の調製における、ブロック共重合体の皮脂耐性を増大するためのPCLの使用に関する。本発明はまた、剛性ブロックと、100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、少なくとも50重量%のPCLを含む可撓性ブロックとを含むことを特徴とする皮脂耐性ブロック共重合体;前記共重合体を合成する方法;ならびにまた、この種の皮脂耐性共重合体を含む組成物および物品も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの剛性ブロックおよび少なくとも1つの可撓性ブロックを含むブロック共重合体の調製における、ブロック共重合体の皮脂耐性を増強するためのポリカプロラクトン(PCL)の使用。
【請求項2】
PCLは、100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、可撓性ブロックの少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも99重量%を占める、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
共重合体の剛性ブロックが、ポリウレタン(PU)、ポリエステル(PES)、および/またはポリアミド(PA)をベースとし、好ましくはPAをベースとする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
剛性ブロックが、以下のポリアミド:PA12、PA11、PA1010、PA6、PA6/12のうちの少なくとも1つ、および/または以下のポリアミドモノマー:11、54、59、510、512、513、514、516、518、536、64、69、610、612、613、614、616、618、636、104、109、1010、1012、1013、1014、1016、1018、1036、10T、124、129、1210、1212、1213、1214、1216、1218、1236、12Tおよびこれらの混合物またはこれらのコポリアミドのうちの少なくとも1つを含むPAをベースとする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
可撓性ブロック(BS)が、PCLに加えて、ポリエーテル;ポリエステル;ポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン;ポリオレフィン;ポリカーボネート;およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリマーを含み、好ましくは、可撓性ブロックが、ポリエーテルを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
PCLは、前記可撓性ブロックの100%を占める、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
PCLは、100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、可撓性ブロックの50~100重量%、好ましくは80~100重量%を占め、その引張機械的性質を損なうことなく前記ブロック共重合体の皮脂耐性を増強するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の剛性ブロックおよび可撓性ブロックを有する共重合体におけるPCLの使用。
【請求項8】
PCLは、100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、可撓性ブロックの50~100重量%、好ましくは80~100重量%、好ましくは90~100重量%を占め、前記ブロック共重合体の皮脂耐性を増強し、共重合体が皮脂と接触する際の前記共重合体の破断点伸びを増強するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の剛性ブロックおよび可撓性ブロックを有する共重合体におけるPCLの使用。
【請求項9】
100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、少なくとも50重量%のPCL、好ましくは50~100重量%のPCL、好ましくは50~90重量%、好ましくは50重量%超のPCL、好ましくは少なくとも55重量%のPCL、好ましくは少なくとも60重量%のPCL、好ましくは少なくとも65重量%のPCL、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは80~90重量%のPCLを含む剛性ブロックおよび可撓性ブロックを含むことを特徴とする、皮脂耐性ブロック共重合体。
【請求項10】
剛性ブロックが、PAをベースとし、好ましくは以下のポリアミド:PA12、PA11、PA1010、PA6、PA6/12のうちの少なくとも1つ、および/または以下のポリアミドモノマー:11、54、59、510、512、513、514、516、518、536、64、69、610、612、613、614、616、618、636、104、109、1010、1012、1013、1014、1016、1018、1036、10T、124、129、1210、1212、1213、1214、1216、1218、1236、12Tおよびこれらの混合物またはこれらのコポリアミドのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の共重合体。
【請求項11】
可撓性ブロック(FB)が、PCLに加えて、以下のポリマー:ポリエーテル;ポリエステル;ポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン;ポリオレフィン;ポリカーボネート;およびこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、可撓性ブロックが、ポリエーテルブロックを含む、請求項9または10に記載の共重合体。
【請求項12】
少なくとも1つの剛性ブロック、特にポリアミドと、主にPCLから構成される、すなわち、可撓性ブロックの総重量に対して50重量%超のPCLを含む少なくとも1つの可撓性ブロックとの重縮合を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載のブロック共重合体を合成する方法。
【請求項13】
熱可塑性ポリマーマトリックスで希釈された、請求項9から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの共重合体を含むことを特徴とする、皮脂耐性ポリマー組成物。
【請求項14】
前記ポリマーマトリックスが、ポリオレフィン、ポリアミド、フルオロポリマー、飽和ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン樹脂、PMMA、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体、ポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体、ポリアミドブロック、ポリエーテルブロックおよびポリエステルブロックを有する共重合体、エチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、エチレンおよびビニルアルコール(EVOH)の共重合体、ABS、SAN、ASA、ポリアセタール、ポリケトン、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1つのホモポリマーまたは共重合体熱可塑性ポリマーを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
100%を占める組成物の総重量に対して、1~99重量%、好ましくは1~40重量%の前記共重合体、および1~99重量%、好ましくは60~99重量%の前記マトリックスポリマーを含む、請求項13および14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
請求項9から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの共重合体から、または請求項13から15のいずれか一項に記載の組成物から、射出成形、オーバーモールディング、押出、共押出、熱間圧縮成形またはマルチショット射出成形によって得られる物品。
【請求項17】
請求項9から11のいずれか一項に記載の共重合体の粉末から、または請求項13から15のいずれか一項に記載の組成物の粉末から、3Dプリンティングによって得られる物品。
【請求項18】
物品が、
- 履物物品または物品要素、特にスポーツ用履物、履物底、特に内底、中板もしくは本底などのスポーツ履物底、またはスキーブーツ;
- スポーツ物品または物品要素、例えばラケット、ボール、または浮き;
- 衣類の物品もしくは物品要素、アクセサリー物品もしくは物品要素、または個人防護用具の物品もしくは物品要素、例えば手袋、ヘルメット、救命胴衣、もしくはバックパック;
- 光学物品または物品要素:眼鏡の縁、鼻当てまたはノーズピースの構成要素、フレームの保護要素;
- 自動車、鉄道または航空機の物品または物品要素:室内装飾要素、レール足裏、タイヤ、車輪、ハンドル、シート要素、子供用カーシート部品;
- 構造的、パディングもしくは減衰物品または物品要素、特に輸送手段によって生じるような衝撃および/または振動を減衰するための部品、カーペット、スポーツマット、スポーツ床または地面被覆、下敷き、膜、ハンドル、特にドアハンドル;
- 保育用、または玩具の、またはベビーカー、乳母車、もしくはベビーキャリア用の部品のための物品または物品要素;
- 医療用物品または物品要素:貼付剤、薬物送達システム、センサ、添え木、装具、頸部装具、ドレッシング、特に抗菌性フォームドレッシング;
- 電気および/もしくは電子物品または物品要素:ヘッドセット、イヤホン、Bluetooth(登録商標)装身具または時計、ディスプレースクリーン、接続された時計、接続された眼鏡、インタラクティブゲームコンポーネントまたはデバイス、GPS、接続された履物、生物活性モニタまたはセンサ、インタラクティブベルトまたはブレスレット、トラッカー、ポケットスキャナまたはパームトップ、位置センサ、視覚補助装置、オーディオ機器部品、断熱および/または防音部品
である、請求項16および17のいずれかに記載の物品。
【請求項19】
物品が、請求項9から11のいずれか一項に記載の共重合体から、または請求項13から15のいずれか一項に記載の組成物から製造されたケーシングまたは保護ケーシングを含む電気または電子物品であり、前記物品が、好ましくは、ポータブルコンピュータ、携帯電話またはタブレットである、請求項16から18のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、改善された皮脂耐性を示す剛性ポリアミドブロックおよび可撓性ブロックを有する熱可塑性樹脂ポリマーエラストマー(TPE)、ブロック共重合体に関する。
【0002】
それらは、より長い期間もしくはより短い期間、または繰返し皮膚と接触する可能性のある任意の機器で興味深いものである。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性樹脂エラストマーは、独自の性質の組合せを示す材料の部類を構成する。これらの材料は、弾性特性を有しつつ、可撓性および強度の両方を有するように配合することができる。特に有利な点として、これらの材料はまた、それらの熱可塑性樹脂の性質により、溶融状態で処理することもできる。さらに、それらの架橋ゴムの対応物とは異なり、熱可塑性樹脂エラストマーは、リサイクルおよび再処理することができる。
【0004】
熱可塑性樹脂エラストマーは、数多くの用途で使用されている。TPE材料は、例えば、成形することができ、またオーバーモールドすることができ、既存の成形品上にさらなる層を形成することを可能にする。熱可塑性樹脂エラストマーは、その可撓性および弾性の性質により、材料が連続的にもしくは繰返し変形する、または他の可動部品と接触する用途で一般的に使用される。
【0005】
皮脂耐性は、ハンドル、ボタン、または物品、例えば電子機器、ITおよび/または電話通信物品のための保護要素など、人体と恒久的または繰返し接触する物品を製造するために使用される熱可塑性樹脂エラストマー組成物の重要な性質である。皮脂と繰返し接触すると、特定のエラストマーに染みまたは変色が引き起こされるだけでなく、機械的性質が失われ、変形または膨潤を引き起こすことさえある。人間の皮膚は皮脂を分泌し、皮脂はポリマー鎖を侵して分子量を減少させることが公知である。さらに、人工皮脂が皮膚に塗布されている場合がある。これは、飽和および不飽和脂肪酸などの天然および人工の化学物質で構成されており、例としてオレイン酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸が挙げられる。
【0006】
熱可塑性樹脂エラストマー組成物は、特定の用途で皮脂と繰返し接触する場合、依然として劣化しやすいことが判明している。
【0007】
例えば、特に電子機器市場において、皮膚接触物品へのTPEの使用に対する妨げの1つは、それらの皮脂耐性の低さである。原因は、可撓性ブロック、特にPTMGなどのポリエーテルブロックであり、これらは本質的に親油性である。これらの共重合体は、しばしば非常に高いポリエーテル含有量を有するため、最も影響を受ける等級は、主に可撓性ブロックを含むブロック共重合体を有する可撓性のものである。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、改善された皮脂耐性を示す熱可塑性樹脂ポリマーエラストマー組成物(略して「TPE」)を提供することである。
【0009】
出願人は、可撓性ブロックとしてポリカプロラクトンを使用すると、皮脂に対して特に耐性があるTPEの全範囲が得られることを発見している。これには、ショアD硬さが50shD未満、好ましくはショアD硬さが40ショアD未満の最も可撓な等級が含まれる。
【0010】
本発明で得られたTPEは、予想外に、可撓性ポリエーテルブロックをベースとするTPEに匹敵する、非常に良好な引張機械的性質-ヤング率および切断時の変形(伸び)(ISO規格 527-2:2012-1Aに準拠)-をさらに有し、唯一の相違は、本発明によるTPEの場合、これらの機械的性質が、皮脂との長期のおよび/または繰返しの接触後でさえも保持されることである。
【0011】
実際、可撓性ブロックで使用されるPCLの特定のレベルを超えると、皮脂と接触するこれらのTPEの切断時の変形(伸び)(ISO規格 527-2:2012-1Aに準拠して測定)の改善が観察される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
したがって、本発明は、ブロック共重合体の皮脂耐性を増強するための、剛性ブロックおよび可撓性ブロックを有する前記ブロック共重合体を調製する際のポリカプロラクトン(略してPCL)の使用を提供する。
【0013】
ポリカプロラクトンは、疎水性および生分解性の合成脂肪族ポリエステルである。この半結晶性ポリマーは、非毒性である。
【0014】
ポリカプロラクトン(PCL)とは、より具体的には、2つ、3つ、または4つの官能性、好ましくはポリオールを有し、400~10,000g/molの範囲内の数平均モル質量Mnを有するポリカプロラクトンを指す。
【0015】
本発明の意味でのポリカプロラクトンは、有利には開始剤のヒドロキシル基でイプシロン-カプロラクトンを開環させることによる付加重合によって生成される、ポリカプロラクトンポリオールである。
【0016】
カプロラクトン、より具体的にはイプシロン-カプロラクトンは、市販されているラクトンである。反応は、100~230℃の範囲内の温度で、好ましくは触媒の存在下で実施される。特許文献US3021309およびUS3021317は、これらの種類の環状エステル重合反応を記載している。イプシロン-カプロラクトンは、6-ヒドロキシカプロン酸で置き換えられてもよい。
【0017】
開始剤として使用できるポリオールは、一般式:R-(OH)x[式中、Rは、1つまたは2つの芳香族環を有する芳香族炭化水素基、4~37個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、1~30個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族基、200~6000g/molの平均分子量を有するポリエステルポリオール残留物、または200~6000g/molの平均分子量を有するポリアルキレングリコール残留物を表し、xは、2~4の整数を表す。]で表すことができる。
【0018】
開始剤の例としては、レゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびエチレンとこれらとの付加生成物、ジメチロールベンゼン、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトール;平均分子量が200~6000g/molで、ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸もしくはドデカン二酸から形成されるポリエステルポリオールまたは脂肪酸ダイマー、およびジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオールまたは1,6-ヘキサンジオール;平均分子量が200~6000g/molのポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコール;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダム共重合体またはブロック共重合体;ならびにエチレンオキシドおよびテトラヒドロフランのランダム共重合体またはブロック共重合体が挙げられる。
【0019】
ポリカプロラクトンポリオールは、好ましくは、少なくとも2つの末端ヒドロキシル基を含む。
【0020】
好ましい開始剤ポリオールは、特に、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリテトラメチレングリコール、脂肪酸ダイマージオール、または少なくとも1つの脂肪酸ダイマージオールを含むポリエステルから選択されるものである。
【0021】
本発明での使用に特に好適なPCLポリオールはまた、Ingevity製のCAPAシリーズまたはCroda製のPriplast XLシリーズから選択してもよい。Priplast XLは、特に特許文献US2016/0229946に記載されている。
【0022】
PCLは、100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、可撓性ブロックの少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも99重量%を好ましくは占める。
【0023】
PCLは、好ましくは、前記可撓性ブロックの100%を占める。
【0024】
PCLは、100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、可撓性ブロックの50~100重量%、好ましくは80~100重量%を有利に占める。これらの比率において、本発明による剛性ブロックおよび可撓性ブロックを含む共重合体におけるPCLの使用は、その引張機械的性質を損なうことなく、前記ブロック共重合体の皮脂耐性を増強する。
【0025】
本発明の別の特に有利な実施形態によれば、PCLは:
- 前記ブロック共重合体の皮脂耐性、および
- 皮脂と接触した際の前記共重合体の破断点伸び
の両方を強化するための、剛性ブロックおよび可撓性ブロックを含む共重合体で使用され、PCLは、100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、可撓性ブロックの50~100重量%、好ましくは80~100重量%、好ましくは90~100重量%を占める。
【0026】
本発明はまた、100%を占める可撓性ブロックの総重量に対して、少なくとも50重量%のPCL、好ましくは50~100重量%のPCL、好ましくは50~90重量%、好ましくは50重量%超のPCL、好ましくは少なくとも55重量%のPCL、好ましくは少なくとも60重量%のPCL、好ましくは少なくとも65重量%のPCL、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは80~90重量%のPCLを含む、剛性ブロックおよび可撓性ブロックを含むことを特徴とする、皮脂耐性ブロック共重合体も提供する。
【0027】
本発明によるブロック共重合体は、熱可塑性樹脂エラストマーポリマー(TPE)を意味すると理解され、これは、「硬質」または「剛性」のブロックまたはセグメント(やや熱可塑性樹脂の挙動を伴う)および「可撓性」または「柔軟性」のブロックまたはセグメント(ややエラストマー性の挙動を伴う)を交互に含む。ガラス転移温度(Tg)が低い場合、ブロックは、「可撓性」であると言われる。低いガラス転移温度は、15℃未満、好ましくは0℃未満、有利には-15℃未満、より有利にはさらに-30℃未満、場合により-50℃未満のガラス転移温度Tgを意味すると理解される。
【0028】
有利には、前記少なくとも1つのブロック共重合体は、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリアミドブロック、ポリウレタンブロック、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つのブロックを含む。
【0029】
本発明による共重合体において企図され得る軟質または可撓性ブロックとは、特に、PCLに加えて、以下のポリマー:ポリエーテル;ポリエステル:ポリジメチルシロキサンすなわちPDMSなどのポリシロキサン;ポリオレフィン;ポリカーボネート;およびこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含むものを意味する。可撓性ブロックは、例えば、仏国特許文献FR2941700の32頁3行目~38頁23行目に記載されている。本発明は、可撓性ブロックがPCLに加えて少なくとも1つの他のポリマーを含む場合、ポリエーテルを好む。例として、ポリエーテルは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(1,2-プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3-プロピレングリコール)(PO3G)、ポリ(テトラメチレングリコール)(PTMG)、およびこれらの共重合体または混合物から選択される。
【0030】
本発明による共重合体中の剛性ブロックは、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、またはこれらのポリマーの混合物をベースとすることができる。これらのブロックは、特に仏国特許出願FR2936803に記載されている。剛性ブロックは、好ましくはポリアミド系である。
【0031】
剛性ブロックおよび可撓性ブロックを有する共重合体の例として、(a)ポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体(COPEまたはコポリエーテルエステルとしても公知である)、(b)ポリウレタンブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体(熱可塑性樹脂ポリウレタンの略語であるTPUとしても公知である)ならびに(c)ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体(IUPACに準拠してPEBA、またはポリエーテル-ブロック-アミドとしても公知である)をそれぞれに挙げることができる。
【0032】
好ましくは、前記少なくとも1つのブロック共重合体(A)は、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロック(PEBA)を有する共重合体を含む。
【0033】
ポリアミド(略してPA)ブロックは、ホモポリアミドまたはコポリアミドを含んでもよい。本発明の組成物において想定され得るポリアミドブロックは、特に出願FR0,950,637の27頁、18行目~31頁、14行目で定義されているものである。NF EN ISO規格 1874-1:2011は、ポリアミドの命名法を定義している。
【0034】
ポリアミドの本明細書における「モノマー」という用語は、「反復単位」を意味すると考えられるべきである。ポリアミドの繰返し単位が、二酸とジアミンの組合せからなる場合は独特であることに留意されたい。モノマーに対応すると考えられるのは、等モル量のジアミンの組合せおよび二酸の組合せ、すなわち「ジアミン-二酸」または「XY」対である。これに対する理論的根拠は、個体二酸または個体ジアミンが、それ自体では重合できない単なる構造単位であるということである。
【0035】
本発明によるブロック共重合体において、PAブロックは、好ましくはカルボン酸末端を有し、それゆえ二酸PAと称される。したがって、硬質ブロックHB(本明細書ではPA)および軟質ブロック(SB)の間の結合は、概してエステル結合である。ジカルボン鎖末端を含むポリアミドブロックは、例えば、連鎖を制限するジカルボン酸の存在下でのポリアミド前駆体の縮合により生じる。
【0036】
これらのPAブロックの組成物には、3種類のポリアミドを使用することができる。
【0037】
第1の種類によれば、ポリアミドブロックは、少なくとも1つの(脂肪族、脂環式または芳香族)ジカルボン酸、より具体的には4~36個の炭素原子を有するジカルボン酸、好ましくは6~18個の炭素原子を有するジカルボン酸と、より具体的には、2~36個の炭素原子を有するジアミン、好ましくは6~12個の炭素原子を有するジアミンから選択される少なくとも1つの(脂肪族、脂環式または芳香族)ジアミンとの縮合により生じる。
【0038】
脂肪族二酸の例としては、ブタン二酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ミリスチン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、および二量化脂肪酸が挙げられる。
【0039】
脂環式二酸の例としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0040】
芳香族二酸の例としては、テレフタル酸(T)、イソフタル酸(I)、および5-スルホイソフタル酸のナトリウム、カリウム、またはリチウム塩が挙げられる。
【0041】
脂肪族ジアミンの例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレン-1,10-ジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0042】
脂環式ジアミンの例としては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACMまたはPACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACMまたはMACM)、および2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、およびピペラジン(Pip)が挙げられる。
【0043】
有利には、本発明による共重合体は、PA 44、PA 46、PA 49、PA 410、PA 412、PA 413、PA 414、PA 416、PA 418、PA 436、PA 64、PA 66、PA 69、PA 610、PA 612、PA 613、PA 614、PA 616、PA 618、PA 636、PA 94、PA 96、PA 910、PA 912、PA 913、PA 914、PA 916、PA 918、PA 936、PA 104、PA 106、PA 109、PA 1010、PA 1012、PA 1013、PA 1014、PA 1016、PA 1018、PA 1036、PA 10T、PA 10I、PA BMACM4、PA BMACM6、PA BMACM9、PA BMACM10、PA BMACM12、PA BMACM13、PA BMACM14、PA BMACM16、PA BMACM18、PA BMACM36、PA PACM4、PA PACM6、PA PACM9、PA PACM10、PA PACM12、PA PACM13、PA PACM14、PA PACM16、PA PACM18、PA PACM36、PA Pip4、PA Pip6、PA Pip9、PA Pip10、PA Pip12、PA Pip13、PA Pip14、PA Pip16、PA Pip18および/またはPA Pip36、ならびにこれらの共重合体をベースとする少なくとも1つのPAブロックを含む。
【0044】
第2の種類によれば、ポリアミドブロックは、4~36個の炭素原子を有するジカルボン酸の存在下で、1つまたは複数のアルファ,オメガ-アミノカルボン酸および/または6~12個の炭素原子を有する1つまたは複数のラクタムの縮合により生じる。
【0045】
ラクタムの例としては、カプロラクタム、エナントラクタム、およびラウロラクタムが挙げられる。
【0046】
アルファ,オメガ-アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸が挙げられる。
【0047】
有利には、第2の種類のポリアミドブロックは、ポリアミド11、ポリアミド12またはポリアミド6から作製される。
【0048】
第3の種類によれば、ポリアミドブロックは、第1の種類の少なくとも1つのモノマーと第2の種類の少なくとも1つのモノマーとの縮合により生じる。換言すれば、ポリアミドブロックは、少なくとも1つのアルファ,オメガ-アミノカルボン酸(またはラクタム)と、少なくとも1つのジアミンおよびジカルボン酸との縮合により生じる。
【0049】
この場合、PAブロックは、
- X個の炭素原子を有する1つまたは複数の脂肪族、脂環式または芳香族ジアミンと;
- Y個の炭素原子を有する1つまたは複数のジカルボン酸と;
- ラクタムおよびZ個の炭素原子を有するアルファ,オメガ-アミノカルボン酸から選択される1つまたは複数のコモノマー{Z}との;
- ジカルボン酸から選択される連鎖制限剤または構造単位として使用される過剰な二酸の存在下での
重縮合によって調製される。
【0050】
連鎖制限剤として、ジアミンの化学量論に対して過剰に導入される、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸を使用することが有利である。
【0051】
コポリアミドの1つの変異体によれば、連鎖制限剤の任意の存在下で、ポリアミドブロックは、少なくとも2つの異なるアルファ,オメガ-アミノカルボン酸の縮合、または6~12個の炭素原子を有する少なくとも2つの異なるラクタムの縮合、または1つのラクタムと同じ数の炭素原子を有しない1つのアミノカルボン酸との縮合により生じる。
【0052】
ポリアミドブロックの例としては、以下のポリアミド(コポリアミド)によって形成されるものが挙げられる:
- 6がカプロラクタムを示し、12がラウロラクタムを示す、PA 6/12。
- 11が11-アミノウンデカン酸を示し、12がラウロラクタムを示す、PA 11/12。
- 6がカプロラクタムを示し、11が11-アミノウンデカン酸を示す、PA 6/11。
- 6がカプロラクタムを示し、6.6がヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との縮合により生じるモノマーを示す、PA 6/6.6。
【0053】
さらなる例としては、PA 1010/11、PA 610/11、PA 1012/11、PA 1010/11/12、PA 610/1010/11、PA 610/612/11、PA 610/612/1010、PA 11/636、PA 11/1036およびPA 1010/1036が挙げられる。
【0054】
本発明における好ましいポリアミドブロックの例としては、以下の分子:PA12、PA11、PA1010、PA610、PA6、PA6/12のうちの少なくとも1つを含むもの、および/または以下のモノマー:6、11、12、11、54、59、510、512、513、514、516、518、536、64、69、610、612、613、614、616、618、636、104、109、1010、1012、1013、1014、1016、1018、1036、10T、124、129、1210、1212、1213、1214、1216、1218、1236、12Tのうちの少なくとも1つを含むもの、ならびにこれらの混合物またはコポリアミドが挙げられる。
【0055】
ポリアミドブロックの数平均モル質量Mnは、好ましくは、400~20,000g/mol、好ましくは500~10,000g/mol、より好ましくは600~5000g/molの範囲内である。
【0056】
本発明によるTPEにおいて企図され得る可撓性または軟質ブロックとは、特に、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリジメチルシロキサンすなわちPDMSブロックなどのポリシロキサンブロック、ポリオレフィンブロック、ポリカーボネートブロックおよびこれらの混合物から選択されるものを意味する。可撓性ブロックは、好ましくは、ポリエーテルブロックを含む。
【0057】
本発明の意味でのポリエーテル(以下、PEと略記する)ブロックは、ポリアルキレンエーテルポリオール、特にポリアルキレンエーテルジオールなどのポリオキシアルキレンを意味すると理解される。本発明の共重合体のPEブロックは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(1,2-プロピレングリコール)(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリヘキサメチレングリコール、ポリ(1,3-プロピレングリコール)(PO3G)、ポリ(3-アルキルテトラヒドロフラン)、特にポリ(3-メチルテトラヒドロフラン(ポリ(3MeTHF))、およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの分子を含む。また、上記の少なくとも2つの種類のPEの鎖を含む、交互の、ランダムまたはブロック「コポリエーテル」タイプのPEブロックを企図することも可能である。
【0058】
ポリエーテルブロックはまた、ビスフェノール類、例えばビスフェノールAのエトキシ化によって得られるブロックを含んでもよい。これらの後者の製品は、特許EP613919に記載されている。
【0059】
ポリエーテルブロックはまた、エトキシ化第一級アミンを含むこともできる。エトキシ化第一級アミンの例としては、下記式:
[式中、mおよびnは、1から20の間であり、xは、8から18の間である。]
の製品が挙げられる。これらの製品は、CECA製のNoramox(登録商標)ブランドおよびClariant製のGenamin(登録商標)ブランドで市販されている。
【0060】
ブロックSBは、好ましくは、PCLに加えて、PTMGを含む。
【0061】
本発明の意味でのポリエステル(以下、PESと略記する)ブロックは、通常、ジカルボン酸とジオールの間の重縮合によって生成されるポリエステルを意味すると理解される。好適なカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族酸を除いて、ポリアミドブロックを形成するために使用される上記のものが挙げられる。好適なジオールとしては、直鎖脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの分岐ジオール、3-メチルペンタングリコール、1,2-プロピレングリコール、ならびに1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの環状ジオール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0062】
「ポリエステル」という用語はまた、脂肪酸ダイマーをベースとするPES、より具体的には、Croda製のPriplast(登録商標)系列の製品、またはOleon製のNouracid(登録商標)系列の製品も意味する。
【0063】
また、上記の少なくとも2つの種類のPESの鎖を含む、交互の、統計的な、またはブロック「コポリエステル」タイプのPESブロックを想定することも可能である。
【0064】
本発明の目的では、ポリシロキサン(以下、PSiと略記する)ブロックは、官能化シランの重合によって得られ、ケイ素原子が酸素原子を介して互いに結合している主単位(シロキサン結合-Si-O-Si-)、炭素原子を介して前記ケイ素原子に直接結合している置換されていてもよい炭化水素基の繰返しから本質的になり、直鎖または環状、分岐または架橋構造の任意の有機ケイ素ポリマーまたはオリゴマーを意味すると理解される。最も一般的な炭化水素基は、アルキル基、特にC1~C10基、および特にメチル、フルオロアルキル基、アリール基、および特にフェニル、ならびにアルケニル基、および特にビニルであり;直接または炭化水素基を介してのいずれかで、シロキサン鎖に結合し得る他の種類の基は、特に水素、ハロゲン、および特に塩素、臭素またはフッ素、チオール、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン(またはポリエーテル)基、および特にポリオキシエチレンならびに/またはポリオキシプロピレン、ヒドロキシルまたはヒドロキシアルキル基、置換または非置換アミン基、アミド基、アシルオキシまたはアシルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキルアミノまたはアミノアルキル基、第四級アンモニウム基、両性またはベタイン基、アニオン基、例えばカルボキシレート、チオグリコレート、スルホスクシネート、チオ硫酸塩、ホスフェートおよび硫酸塩、ならびにこれらの混合物であり、当然この列挙は、決して網羅的ではない(「有機修飾」シリコーン)。
【0065】
好ましくは、前記ポリシロキサンブロックは、ポリジメチルシロキサン(以下では、PDMSブロックと略記する)、ポリメチルフェニルシロキサンおよび/またはポリビニルシロキサンを含む。
【0066】
本発明の目的では、ポリオレフィン(以下では、POと略記する)ブロックという用語は、モノマーとしてアルファ-オレフィンを含む任意のポリマー、すなわち、オレフィンのホモポリマーまたは少なくとも1つのアルファ-オレフィンの共重合体および少なくとも1つの他の共重合性モノマーの共重合体を意味し、有利にはアルファ-オレフィンは、2~30個の炭素原子を有する。
【0067】
アルファ-オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-テトラコセン、1-ヘキサコセン、1-オクタコセン、および1-トリアコンテンが挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独で使用しても2つ以上の混合物として使用してもよい。
【0068】
例としては、
- エチレンホモポリマーおよび共重合体、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、ならびにメタロセン触媒によって得られるポリエチレン、
- プロピレンホモポリマーおよび共重合体、
- 本質的にアモルファスまたはアタクチックポリ-α-オレフィン(APAO)、
- エチレン/α-オレフィン共重合体、例えばエチレン/プロピレン、EPR(エチレン-プロピレン-ゴム)エラストマーならびにEPDM(エチレン-プロピレン-ジエン)エラストマー、およびポリエチレンとEPRまたはEPDMの混合物、
- スチレン/エチレン-ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)およびスチレン/エチレン-プロピレン/スチレン(SEPS)ブロック共重合体;
- エチレンと不飽和カルボン酸の塩またはエステル、例えば、アルキルが、24個までの炭素原子を含むことが可能である、アルキル(メタ)アクリレート、飽和カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニルまたはプロピオネート、およびジエン、例えば、1,4-ヘキサジエンまたはポリブタジエンから選択される少なくとも1つの生成物との共重合体
が挙げられる。
【0069】
本発明の有利な実施形態によれば、前記少なくとも1つのポリオレフィンブロックは、ポリイソブチレンおよび/またはポリブタジエンを含む。
【0070】
特に有利な一実施形態によれば、本発明によるブロック共重合体は、少なくとも1つの可撓性ポリオレフィンブロック(POブロック)およびポリアミドならびにポリエーテルの両方を含む少なくとも1つの親水性硬質ブロック(以下では、hHBと略記する)、例えばポリエーテルアミドブロック、ポリエーテルエステルアミドブロックおよび/またはポリエーテルアミドイミドブロックなどを含む。前記POブロックは、酸、アルコールまたはアミン末端基を含むポリオレフィンを好ましくは含む。好ましくは、POブロックは、高分子量ポリオレフィンを熱分解して、より低質量で官能化されたポリオレフィンを形成することによって得られる(参照方法:特開平03-62804号公報)。hHBブロックに関してはまた、第四級アミンタイプならびに/またはリン誘導体のカチオン性ポリマー;および/またはスルホネート基を含み、ポリオールと反応することができる修飾二酸タイプのアニオン性ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーも含み得る。次いで有機塩の添加が、hHBブロックの調製において、またはPOブロックとhHBブロックとの間の反応中に想定され得る。US6552131は、POブロックおよびhHBブロックを含む共重合体の合成および様々な可能な構造を記載しており、当然、後者が本発明による方法で想定されることが可能である。
【0071】
本発明の目的では、ポリカーボネートブロック(以下、PCブロックと略記する)という用語は、より具体的には、任意の脂肪族ポリカーボネートを意味する。脂肪族ポリカーボネートは、例えば、DE2546534およびJP1009225に記載されている。このようなホモポリマーまたは共重合ポリカーボネートは、文献US471203にも記載されている。特許出願WO92/22600およびWO95/12629は、ポリカーボネートブロックを含む共重合体とともにそれを合成する方法も記載している。これらの文献に記載されているブロック(およびそれらの合成)は、本発明によるPCブロック共重合体の合成に完全に企図され得る。好ましくは、本発明による共重合体のポリカーボネートブロックは、下記式:
[式中、aは、2~300の整数であり;同一でも異なってもよいR1およびR2は、2~18個の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖の、脂肪族鎖もしくは脂環式鎖を表し、またはポリオキシアルキレン基を表し、またはポリエステル基を表す。]を有する。
【0072】
R1およびR2がヘキシレン、デシレン、ドデシレン、1,4-シクロヘキシレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキシレンまたはポリオキシエチレン基から選択されるポリカーボネートが好ましい。
【0073】
上記のブロック共重合体が、全体として少なくとも1つの剛性ポリアミドブロックおよび少なくとも1つの可撓性ブロックを含む場合、PCLを含む少なくとも1つの可撓性ブロックおよび少なくとも1つの剛性ブロックが存在するという条件で、本発明が実際に本明細書に記載されているブロックから選択される2つ、3つ、4つ(または、さらにそれ以上)の異なるブロックを含むすべての共重合体を含むことは明らかである。本発明による共重合体において、有利には、可撓性ブロック(FB)は、PCLに加えて、可撓性ブロックの総重量に対して、以下のポリマー:ポリエーテル;ポリエステル;ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン;ポリオレフィン;ポリカーボネート;およびこれらの混合物のうちの少なくとも1つを、少ない重量比(50重量%未満)で含む。
【0074】
可撓性ブロックは、好ましくはポリエーテルを含む。
【0075】
可撓性ブロックにおけるこれらの比率の結果として、本発明による共重合体は、皮脂に対して耐性であり、また、皮脂との長期の/繰返しの接触後でさえも保持される非常に良好な引張機械的性質(ヤング率および切断時の変形)も示す。
【0076】
有利には、本発明による共重合体は、3つの異なる種類のブロック(本発明の本明細書では「トリブロック」と称する)を含むセグメント化ブロック共重合体を含み、これは、上記で定義されたように、少なくとも1つのPCLブロック、少なくとも1つの(他の)可撓性ブロックおよび少なくとも1つの剛性ブロックの縮合により生じる。
【0077】
剛性ブロックおよび軟質ブロックの両方が、有利には、再生可能な材料および/または化石起源の材料に由来し得る。前記剛性ブロックおよび/または軟質ブロックは、有利には、少なくとも部分的に再生可能な材料に由来する。本発明の特に有利な一実施形態によれば、ポリアミドブロックおよび/またはポリエーテルブロックおよび/またはポリエステルブロックおよび/またはポリシロキサンブロックおよび/またはポリオレフィンブロックおよび/またはポリカーボネートブロックは、完全に再生可能な材料に由来する。
【0078】
再生可能な起源の材料は、生体材料とも呼ばれ、大気からの光合成によって新しく(人間の時間尺で)固定されたCO2から炭素が発生する有機材料である。陸上では、このCO2は植物によって捕捉または固定される。海洋では、CO2は細菌またはプランクトンによって捕捉または固定され、光合成に至る。生体材料(100%天然起源の炭素)は、10-12超の14C/12C同位体比を有し、典型的には1.2×10-12程度であるが、一方化石材料はゼロ比を有する。これは、14C同位体が大気中で形成され、次いで数十年未満の時間尺で光合成によって取り込まれるためである。14Cの半減期は、5730年である。したがって、光合成に由来する材料、すなわち一般に植物は、必然的に同位体14Cの最大含有量を有する。
【0079】
生体材料含有量またはバイオカーボン含有量は、ASTM規格 D 6866(ASTM規格 D 6866-06)およびASTM規格 D 7026(ASTM規格 D 7026-04)の適用によって求められる。ASTM規格 D 6866は、「Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis」を対象とするが、一方ASTM規格 D 7026は、「Sampling and Reporting of Results for Determination of Biobased Content of Materials via Carbon Isotope Analysis」を対象とする。第2の規格は、第1の規格を第1段落で参照している。
【0080】
第1の規格は、試料の14C/12C比を測定し、それを100%再生可能な起源の基準試料の14C/12C比と比較して、試料中の再生可能な起源のCの相対比率を求める試験について記載している。この規格は、14C年代測定と同一の概念に基づくが、年代測定の方程式を適用していない。
【0081】
このように計算された比率は、「pMC」(percent Modern Carbon)と呼ばれる。分析中の材料が生体材料および化石材料(放射性同位体を有しない)の混合物である場合、得られるpMC値は、試料中に存在する生体材料の量と直接相関する。14C年代測定に使用される参照値は、1950年代から始まる値である。この年は、この年以降に大量の同位体を大気中に導入した、大気中の核実験の存在を考慮して選択された。1950年参照は、pMC値100に対応する。熱核実験のため、保持される現在の値は、約107.5(補正値0.93に対応)である。したがって、現在の植物の放射性炭素のシグネチャは、107.5である。したがって、54pMCおよび99pMCのシグネチャは、それぞれ50%および93%の試料中の生体材料の量に対応する。
【0082】
ASTM規格 D 6866は、14C同位体含有量を測定するための3つの手法を提案している:
- LSC(液体シンチレーション計数)スペクトロメトリー。この手法は、14Cの崩壊により生じる「ベータ」粒子をカウントするものである。公知の質量(公知のC原子の数)の試料からのベータ照射が、特定の時間測定される。この「放射能」は、14Cの原子数に比例し、したがってこれを求めることができる。試料中に存在する14Cはβ-照射を放出し、液体閃光物質(シンチレータ)と接触すると光子を生成する。これらの光子は、異なるエネルギー(0から156keVの間)を有し、いわゆる14Cスペクトルを形成する。この方法の2つの変異体によれば、分析は、好適な吸収溶液中の炭素含有試料によって事前に生成されたCO2、または炭素含有試料をベンゼンに事前に変換した後のベンゼンのいずれかに関する。したがって、ASTM規格 D 6866では、このLSC法に基づいてAおよびCの2つの方法が提供されている。
- AMS/IRMS(同位体放射性質量分析と組み合わせた加速質量分析)。この手法は、質量分析に基づいている。試料は、グラファイトまたはCO2ガスに還元され、質量分析計で分析される。この手法では、加速器および質量分析計を使用して、14Cを12Cイオンから分離し、2つの同位体の比を求める。
【0083】
本発明による共重合体は、少なくとも部分的に生体材料から生じ、したがって、少なくとも1.2×10-14の14C含有量に対応する、少なくとも1%の生体材料含有量を有する。
【0084】
本発明はまた、少なくとも1つの剛性ブロック、特にポリアミドと、主にPCLから構成される、すなわち、可撓性ブロックの総重量に対して50重量%超のPCLを含む少なくとも1つの可撓性ブロックとの重縮合を含む、本発明によるブロック共重合体を合成する方法も提供する。
【0085】
本発明の目的のための熱可塑性樹脂エラストマーは、以下の一般式:
-[HB-SB]n-
[式中、
・ HBすなわち硬質ブロックは、ポリアミド(ホモポリアミドもしくはコポリアミド)もしくはポリウレタンもしくはポリエステル、またはこれらのブロックの混合物、好ましくはポリアミドを含むブロックを表し、以下では独立してHBブロックと略記する;
・ SBすなわち軟質ブロックは、ポリカプロラクトン(PCL)ならびに、ポリエーテル(PEブロック)、ポリエステル(PESブロック)、ポリジメチルシロキサン(PDMSブロック)、ポリオレフィン(POブロック)、ポリカーボネート(PCブロック)および/もしくはガラス転移温度が低い他の任意のポリマー、または交互の、ランダムもしくはブロック共重合体の形態のこれらの混合物から選択される他のポリマーをベースとするブロックを表す。好ましくは、SBは、エチレンオキシド単位を含むポリエーテルを完全にまたは部分的にベースとするブロックである。
・ nは、前記共重合体の単位-HB-SB-の反復単位の数を表す。nは、1~60、好ましくは5~30、またはより良くはさらに6~20の範囲内である。]
による、硬質ブロック(HB)および軟質ブロック(SB)の交互の配列を含むブロック共重合体である。
【0086】
本発明によるブロック共重合体を合成するための方法は、前記硬質ブロックHBを前記軟質ブロックSB、より具体的にはPCLに結合させるための任意の手段を使用する。Handbook of Condensation Thermoplastic Elastomers(Stoyko Fakirox編、Wiley-VCH、Weinheim、2005)の第9章に記載されているように、溶液中、固体状態で、もしくは界面手法を介して、または複数のこれらの方法を組み合わせることによってなど、いくつかの手段が考えられる。
【0087】
本発明による硬質ブロックおよび可撓性ブロックをベースとするTPEは、反応性末端を有する硬質ブロック(HB)と、相補的な反応性末端を有する軟質ブロック(SB)との、例えばイソシアネートまたはカルボン酸鎖末端を有するHBと、アルコール鎖末端を有するSBとのバルク重縮合により生じる。
【0088】
例えば、PA、PEおよびPCLブロックとの共重合体であるPEBA-PCLは、本発明による皮脂耐性が改善されたPEBAであり、カルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックHBと、アルコール鎖末端を有するポリエーテルブロックSBおよびPCLブロックとの重縮合により生じる。
【0089】
産業界において、HBをSBに結合する方法は、2つの主要工程または単一の主要工程のいずれかで実行される。
【0090】
1工程でも2工程でも、触媒の存在下で操作することが有利である。触媒は、特にエステル化によって、ポリアミドブロックおよび軟質ブロックの結合を促進する任意の製品である。エステル化触媒は、有利には、チタン、ジルコニウム、およびハフニウム、またはリン酸もしくはホウ酸などの強酸によって形成される群から選択される金属の誘導体である。以下の特許:US4,331,786、US4,115,475、US4,195,015、US4,839,441、US4,864,014、US4,230,838およびUS4,332,920、WO04,037898、EP1262527、EP1270211、EP1136512、EP1046675、EP1057870、EP1155065、EP506495、およびEP504058に記載されている触媒を使用することができる。
【0091】
第1の実施形態では、本発明の方法は2つの主要工程を含む。第1の工程(I)では、少なくとも1つの硬質ブロックHB(例えば、PA)が調製され、第2の工程(II)では、前記少なくとも1つの硬質ブロックHB(例えば、PA)が、好ましくは触媒の存在下および減圧下で、少なくとも1つのブロックSBと反応する。
【0092】
前記工程(I)は、ポリアミドブロックを生成するための当業者に公知の任意の手段、例えば、ポリアミド前駆体と、鎖制御因子としてのジカルボン酸またはジアミンとの間の重縮合反応による手段を含んでもよい。この場合工程Iは、いくつかのサブ工程に分かれる:
・ (I-1)少なくとも1種のPA前駆体および少なくとも1種の鎖制御因子、例えば二酸を含む混合物を反応器(例えばオートクレーブ)に投入する。
前記鎖制御因子は、好ましくは、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびこれらの混合物から選択される。
・ (I-2)前記混合物を180~350℃、好ましくは200~300℃、好ましくは230~290℃の範囲内の温度に加熱する段階。
場合により水を混合物に加えて、熱伝導を改善し、および/または、特に、例えばラクタム12の開環のために十分な圧力に到達させることができる。
・ (I-3)I-1で導入されたすべての材料を流体状態、すなわち、均一な混合物が存在するのに十分な低粘度の状態にするのに十分な時間、混合物の温度が一定に保たれ、この温度が、180~350℃、好ましくは200~300℃、好ましくは230~290℃の範囲内である高温等温段階。
高温等温段階の期間は、概して、15分~5時間、好ましくは30分~4時間、好ましくは30分~3時間の範囲内である。
この高温等温段階の間に、例えば、1から40barの間の圧力が反応器内で発達する。圧力は好ましくは30barを超えないが、この最大圧力は反応器およびそれが構築される方法に依存する。
・ (I-4)その間に前記混合物が大気圧に戻る、混合物の膨張(圧力の低下)によって、および/または蒸留によって、水を除去する段階。これは、段階I-1、I-2、および/または1-3の間に場合により添加される水、またはこれらの段階の間に形成される水である;次いで、
・ (I-5)ポリアミドブロックの形態で混合物の重合が完了するまで不活性ガスでパージする。
パージ時間は、数分~数時間、好ましくは5分~5時間、好ましくは30分~3時間、好ましくは1時間~2時間の範囲内であり得る。
【0093】
工程Iは、以下のサブ工程のうちの1つまたは複数をさらに含んでもよい:
・ (I-6)必要に応じて重合の収率を増加させるために、減圧下、例えば500mbar未満、好ましくは100mbar未満に維持する任意の工程。
・ (I-7)硬質ブロックHB、例えばPAブロックを回収する任意の工程。
【0094】
HBブロックの形成に必要なすべての出発物質は、例えば、例として上記の方法の工程I-1の場合のように、当業者が適切であると考える順序で、開始時に反応器に装填することができるが、当然、サブ工程I-1~I-7のいずれかの間に、1つまたは複数の出発物質を導入することを考えることが可能である。
【0095】
この主要工程Iの温度は、180~350℃、好ましくは200~300℃、またはより良くはさらに230~290℃の範囲内である。
【0096】
前記少なくとも1つの硬質ブロックHB(例えば、PAブロック)は、その後の使用のために押し出され、反応器に貯蔵され、または以下に記載される工程IIの実施のために、別の反応器に移されてもよい。
【0097】
工程(II)は、以下のサブ工程を含む:
・ (II-1)反応器内で、少なくとも1つの軟質ブロックSBの量の少なくとも一部を、工程Iで形成されたHBブロックと接触させ、必要に応じて、得られた混合物の温度を調整し、その温度を180~350℃、好ましくは200~300℃、好ましくは200~260℃の範囲内にする;
・ (II-2)共重合の間に反応器内に形成された水を除去するために、窒素で(または別の不活性ガスで)および/またはわずかに減圧された圧力、例えば500mbar未満、好ましくは100mbar未満下でパージする任意の工程;
・ (II-3)適切に前記少なくとも1つのブロックSBの残りの部分を導入する任意の工程。
【0098】
各工程の温度および期間は、副反応を最小限にしながら重縮合反応性を最適化するように、当業者によって容易に調整することができる。この主要工程IIの温度は、同様に180~350℃、好ましくは200~300℃、またはより良くはさらに200~260℃の範囲内である。
【0099】
第2の実施形態では、本発明の方法は、硬質ブロック(例えば、PAブロック)の形成に必要な出発物質と同じように、前記少なくとも1つの軟質ブロックが主要工程Iの間に、すなわち、工程I-1~I-7中間体のいずれかの間に直接導入されることを特徴とする単一の主要工程を含む。この実施形態では、主要工程IおよびIIは実際には同時に実行され、したがって時間を節約するが、一方、2つの主要工程の実施形態では、工程IおよびIIは連続して実行される。
【0100】
しかしながら、本発明の方法は、好ましくは、第1の実施形態による2つの工程の方法であり、これは、1つの工程の方法が、エステル化交換および/またはエステル化交換/アミド化などの多数の副反応を引き起こすリスクを伴うからである。
【0101】
これらの実施形態(1つの工程または2つの工程の)に関係なく、本発明の方法は、ブロック共重合体を完成および回収する最終工程IIIを含む。この工程IIIは、少なくとも2つのサブ工程を含む。:
・ (III-1)得られた共重合体の粘度を調整する:所望の粘度、すなわち共重合体の所望のモル質量が達成されるまで、反応器内の圧力を高真空下で低下させる。「所望のモル質量」は、10,000~100,000g/molの範囲内、好ましくは15,000~50,000g/molの範囲内、好ましくは20,000g/mol~40,000g/molの範囲内の数平均モル質量を意味すると理解される。このサブ工程中の圧力は、好ましくは100mbar未満、好ましくは50mbar未満、好ましくは10mbar未満、より好ましくは1mbar未満である。
共重合体のモル質量の増加、したがって媒体の粘度の増加は、例えば、溶融ポリマーがスターラーに及ぼすトルクの値の変化を測定することによって、または所定の撹拌速度でのスターラーで消費される電力を測定することによって求められる。
・ (III-2)例えばペレットの形態または他の任意の形態の前記ブロック共重合体を押し出し、回収する。
(III-3)ペレットをベーキングし、残留水分含有量を0.1重量%未満に減少させる任意の工程。
【0102】
各工程の撹拌速度は、媒体のレオロジーおよびスターラーの性質に応じて最適化される。
【0103】
圧力の低下は、徐々にまたは段階的に行うことができる。圧力の最大低下の程度は、存在する化学種の性質、その親水性または疎水性、およびその反応性に依存する。
【0104】
加水分解に反応しやすい触媒のために、触媒は、工程Iおよび/またはIIのうちの1つの間に、好ましくはサブ工程IIのうちの1つの間に添加されてもよい。
【0105】
本発明は、熱可塑性樹脂ポリマーマトリックスで希釈された、上記で定義された本発明による少なくとも1つのブロック共重合体を含むことを特徴とする皮脂耐性ポリマー組成物をさらに提供する。前記ポリマーマトリックスは、ポリオレフィン、ポリアミド、フルオロポリマー、飽和ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン樹脂、PMMA、熱可塑性樹脂ポリウレタン(TPU)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体、ポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体、ポリアミドブロック、ポリエーテルブロック、およびポリエステルブロックを有する共重合体、エチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、エチレンおよびビニルアルコール(EVOH)の共重合体、ABS、SAN、ASA、ポリアセタール、ポリケトンならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1つのホモポリマーまたは共重合熱可塑性樹脂ポリマーを有利には含む。前記組成物は、100%を占める組成物の総重量に対して、1~99重量%、好ましくは1~40重量%の前記共重合体、および1~99重量%、好ましくは60~99重量%の前記マトリックスポリマーを好ましくは含む。
【0106】
本発明による共重合体は、安定剤、可塑剤、潤滑剤、天然または有機充填剤、染料、顔料、真珠層、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、共重合体の粘度を変更する薬剤、および/またはすでに引用され、熱可塑性樹脂ポリマーの当業者に周知の他の任意の添加剤もしくはアジュバントを添加することができる。
【0107】
本発明は、本発明による少なくとも1つの共重合体または本発明による組成物から、射出成形、オーバーモールディング、押出、共押出、熱間圧縮成形またはマルチショット射出成形によって得られる物品をさらに提供する。
【0108】
本発明は、本発明による共重合体の粉末または本発明による組成物の粉末から3Dプリンティングによって得られる物品をさらに提供する。
【0109】
本発明による組成物から得られた物品は、有利には、ISO規格 527-2:2012-1Aに準拠して測定して、500MPa未満、好ましくは10~200MPaの範囲内、好ましくは20~100MPaの引張弾性率を有する。
【0110】
本発明は、皮膚と接触する、または皮膚と繰返し接触する可能性のある任意の物品に関する。
【0111】
本発明は、特に以下:
- 履物物品または物品要素、特にスポーツ用履物、履物底、特に内底、中板もしくは本底などのスポーツ履物底、またはスキーブーツ;
- スポーツ物品または物品要素、例えばラケット、ボール、または浮き;
- 衣類の物品もしくは物品要素、アクセサリー物品もしくは物品要素、または個人防護用具の物品もしくは物品要素、例えば手袋、ヘルメット、救命胴衣、もしくはバックパック;
- 光学物品または物品要素:眼鏡の縁、鼻当てまたはノーズピースの成分、フレームの保護要素;
- 自動車、鉄道もしくは航空機の物品または物品要素:室内装飾要素、レール足裏、タイヤ、車輪、ハンドル、シート要素、子供用カーシート部品;
- 構造的、パディングもしくは減衰物品または物品要素、特に輸送手段によって生じるような衝撃および/または振動を減衰するための部品、カーペット、スポーツマット、スポーツ床または地面被覆、下敷き、膜、ハンドル、特にドアハンドル;
- 保育用、玩具の、またはベビーカー、乳母車、もしくはベビーキャリア用の部品の物品または物品要素;
- 医療用物品または物品要素:貼付剤、薬物送達システム、センサ、添え木、装具、頸部装具、ドレッシング、特に抗菌性フォームドレッシング;
- 電気および/もしくは電子物品または物品要素:ヘッドセット、イヤホン、Bluetooth(登録商標)装身具または時計、ディスプレースクリーン、接続された時計、接続された眼鏡、インタラクティブゲームコンポーネントまたはデバイス、GPS、接続された履物、生物活性モニタまたはセンサ、インタラクティブベルトまたはブレスレット、トラッカー、ポケットスキャナまたはパームトップ、位置センサ、視覚補助装置、オーディオ機器部品、断熱および/または防音部品;
を提供する。
【0112】
本発明による共重合体は、接続されたブレスレット、またはシェルもしくはIT、オーディオもしくは携帯電話機器の外部ケーシングなどの大量市場の電気および電子機器(以下「E&E」)の分野で特に興味深い。
【0113】
したがって、本発明は、上記の本発明による共重合体から、または本発明による組成物から製造されたケーシングまたは保護ケーシングを含む電気または電子物品をさらに提供し、前記物品は、好ましくは、ポータブルコンピュータ、携帯電話またはタブレットである。
【実施例】
【0114】
皮脂耐性試験を、以下のTPE試料に実施した。
- Cp1:PA12/PTMG、それぞれのモル質量は600/2000
- Cp2:PA12/PTMG、850/2000
- Ex1:PA12/PCL、600/2000
- Ex2:PA12/PCL-PTMG-PCL、600/2000、PCL-PTMG-PCLトリブロックは、それぞれのモル質量
500-1000-500を含む
- Cp3:PA11/PTMG(850/2000)
- Ex3:PA11/PCL-PTMG-PCL、850/2000、実験室試料
- Ex4:PA11/PCL-PTMG-PCL、850/2000、パイロットプラント試料
- Ex5:PA11/PCLおよび脂肪酸ダイマーをベースとするポリエステル、850/2000、ポリエステルは82%のPCLおよび18%の脂肪酸ダイマー(18%再生可能C)を含む
- Ex6:PA11/PCLおよび脂肪酸ダイマーをベースとするポリエステル、850/3000、ポリエステルは90%のPCLおよび10%の脂肪酸ダイマーを含む
- Ex7:PA11/PCL、850/2000、実験室試料
- Ex8:PA11/PCL、850/2000、パイロットプラント試料
- Ex9:PA11/PCL-PTMG-PCL、850/3000、PCL-PTMG-PCLトリブロックは、それぞれのモル質量500-2000-500を含む、実験室試料
【0115】
すべての試験で使用される連鎖移動剤は、アジピン酸である。
【0116】
皮脂耐性試験
使用する皮脂は、Interchimによって供給された合成皮脂である。
【0117】
下記表1の場合の試料は、100×100×2mmの小板である。100×100×2mmの小板を4つに切断し、ペトリ皿に置き、60℃で液化皮脂で覆う。
【0118】
下記表2の場合の試料は、μ-DSMで射出成形されたダンベルである:60℃で同量の合成液化皮脂(約0.13g)を、試験標本の有効な領域に塗布する。
【0119】
いずれの場合も、同じ所定の量の皮脂を試料の表面に広げ、コンディショニング後に除去する。この操作を、各試料について3つの小板またはダンベルで繰り返す。
【0120】
皮脂耐性を、23℃および50%RHのオーブンで7日間コンディショニングした後に測定する。このように曝露した試料を、洗浄後に計量し、試験中の試料の「質量取得」すなわち重量増加(%)を計算する。どのような視覚的変化でもまた記録する。
【0121】
表2の場合、皮脂に曝露していないダンベルを23℃および50%RHのオーブンで7日間コンディショニングした。これらの対照により、共重合体の水分獲得がそれらの重量増加(%)に及ぼすごくわずかな影響を評価することができた。
【0122】
下記表1は、5日間および7日間の曝露後の様々な重量増加を表す。
【0123】
上記表1のPA12をベースとするブロック共重合体の場合、最大の質量取得である14~17%は、可撓性PTMGポリエーテルブロックをベースとするPEBAによって達成されることに留意されたい。PEBAが(ポリアミドに比例して)ポリエーテルに富むほど、ますます皮脂を吸収することに留意されたい(Cp1の重量増加は、Cp2の重量増加よりも大きい)。可撓性ブロックをポリカプロラクトンで完全に置き換えると(Ex1)、皮脂の吸収が大幅に減少する(7日間の曝露後の重量増加は4.7%)。Ex2のPCL-PTMG-PCLトリブロック(それぞれのモル質量500-1000-500で)に基づく部分的な置換えも、PEBAの皮脂耐性を改善する(7日間の曝露後の重量増加は12.3%)。
【0124】
上記表2のPA11をベースとするブロック共重合体の場合、最大の質量取得はPTMGをベースとする等級(Cp3)の場合であることに留意されたい。PCLを含む他のすべての試料は、5.3%未満の皮脂吸収を示す。可撓性ブロックをPCLで完全に置き換えると、皮脂の質量取得が大幅に減少(3分の1)する(Ex7およびEx8の場合、吸収は1.7~1.8%に減少する)。部分的な置換えでは、例Ex3およびEx4の場合、可撓性ブロックの総重量に対して少なくとも50%のPCLを含むが、皮脂吸収は3.3~3.5%に減少する。PCLおよび脂肪酸ダイマーをベースとするポリエステルの可撓性ブロック(Ex5およびEx6)により、皮脂の吸収を大幅に減少させることができる(Cp3に対して少なくとも2分の1)。Ex6で得られた最良の結果(Ex6:Ex5の2.6%に対して2.1%の質量取得)は、より高いPCL含有量(82%に対して90%)だけでなく、より高いモル質量(Ex5の2000g/molに対してEx6の場合はMn=3000g/mol)によっても説明でき、Ex6の共重合体は、Ex5の共重合体(70%)よりも可撓性ブロックが豊富である(78%)。
【0125】
機械的性質
上記表2のPA11をベースとするブロック共重合体試料の機械的性質は、皮脂への曝露前後の引張試験で特徴づけられた。下記表3は、ISO規格 527-2:2012-1Aに準拠して測定された、ヤング率(MPa)および切断時の変形(伸び)εR(%)の値をまとめたものである。このことから、共重合体がPCLに富むほど、皮脂に曝露された後も材料の機械的性質がますます保持されることが明らかである。反対に、PTMGをベースとする共重合体Cp3の場合、皮脂吸収が引張強度に悪影響を及ぼし:モジュラスが25%低下し、切断時の変形がほぼ100%低下するのが観察される。
【0126】
表3では、皮脂と接触して配置された、可撓性ブロックが主にPCLをベースとする本発明のブロック共重合体(本発明のEx3、Ex5、Ex7、Ex8)について、破断点伸びεR(%)が増加することも観察される。
【0127】
前記材料が皮脂と接触している際に、少なくとも50%のPCLと混合されたこれらのTPE材料の破断点伸びを改善するこの効果は、本発明の共重合体で観察される全く予期しない利点である。
【国際調査報告】