(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-02
(54)【発明の名称】超音波増感
(51)【国際特許分類】
A61K 31/197 20060101AFI20220726BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20220726BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220726BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220726BHJP
A61K 31/65 20060101ALI20220726BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220726BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20220726BHJP
A61N 7/00 20060101ALI20220726BHJP
A61N 7/02 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K41/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K31/65
A61K31/519
A61K31/593
A61N7/00
A61N7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570409
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 US2020034944
(87)【国際公開番号】W WO2020243319
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521516260
【氏名又は名称】ソンエーエルエーセンス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート エル.マーカス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C160
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086DA15
4C086DA29
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA55
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C160JJ33
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA47
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
悪性組織のMRI誘導超音波増感集束超音波処置のための改良法が、本明細書中に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の悪性組織内に直接的な細胞傷害効果を選択的に誘発する方法であって、以下:
a) 有効量の5-アミノレブリン酸、又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルをその悪性組織に与え;そして、
b) その組織を、約0.1MHz~約3MHzの周波数にて、約3W/cm
2~約100W/cm
2の超音波ビーム集束の強度にて、集束超音波デバイス(focused ultrasound device)を使用した超音波エネルギーに晒すこと(「超音波処置すること」)、
を含む方法。
【請求項2】
対象の悪性組織内にアポトーシスを選択的に誘発する方法であって、以下:
a) 有効量の5-アミノレブリン酸、又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルをその悪性組織に与え;そして、
b) その組織を、約0.1MHz~約3MHzの周波数にて、約3W/cm
2~約100W/cm
2の超音波ビーム集束の強度にて、集束超音波デバイスを使用した超音波エネルギーに晒すこと(「超音波処置すること」)、
を含む方法。
【請求項3】
前記5-アミノレブリン酸が、γ線照射された5-アミノレブリン酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記悪性組織が、約1分間~約6時間の持続時間にわたり超音波に晒される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記悪性組織が、約1分間~約180分間の持続時間にわたり超音波に晒される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記強度が、約5W/cm
2~約80W/cm
2である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記強度が、約5W/cm
2~約60W/cm
2である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
焦点にて適用されるエネルギーが、10J~2000Jである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
焦点にて適用されるエネルギーが、10J~2000Jである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記5-アミノレブリン酸を与えることと、悪性組織を超音波処置することとの間にインキュベーション期間が存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記インキュベーション期間が、約1時間~約72時間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記インキュベーション期間が、約3時間である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記悪性組織が、腫瘍組織を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍組織が、多形膠芽腫、光学経路神経膠腫、びまん性内在橋膠腫、星状細胞腫、上衣腫、髄芽腫、希突起神経膠腫、血管芽腫、ラブドイド腫瘍、(乳腺腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、転移性悪性黒色腫、及び前立腺癌から選択される)他の癌からの脳転移、髄膜腫、原発性下垂体悪性腫瘍、悪性神経鞘腫瘍、神経線維腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、骨腫瘍、軟部組織肉腫、浸潤性又は転移性扁平上皮癌、唾液腺腫瘍、上咽頭癌腫、口腔、喉頭及び食道腫瘍、尿道癌、尿管癌、腎細胞癌、膀胱癌腫、膀胱上皮内癌腫、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣の転移性癌腫、癌、子宮、子宮頚部、及び子宮癌腫、直腸又は結腸癌、肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、乳癌、胃癌、食道癌、及び結腸癌腫、胆管癌腫、肝癌腫、膵臓の腺癌、黒色腫、浸潤性基底細胞癌腫、他の皮膚癌、肝癌、又は甲状腺癌を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記腫瘍組織が、神経膠芽腫を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記悪性組織が、複数の別個の点にて超音波処置される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記悪性組織を、超音波処置前に核磁気共鳴画像法によって見つけることをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記超音波処置される組織が、悪性組織と非悪性組織を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記超音波処置される組織が、悪性組織と悪性組織周囲のマージン(margin)を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マージンの外縁が、悪性組織から0.2cm~5cmである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マージンの外縁が、悪性組織から1cm~3cmである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記超音波処置される組織が、悪性組織の切除術後の切除位置周囲のマージンを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記マージンの外縁が、悪性組織切除部位から0.2cm~5cmである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記超音波処置される組織が、脳の解剖領域全体を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記脳の解剖領域全体が、側頭葉、頭頂葉、前頭葉、後頭葉、視床、下垂体、脳橋、脳梁、基底神経節、脳幹、脳半球、小脳テント上領域、又は小脳テント下領域である、請求項30に記載の方法。
【請求項26】
前記脳の解剖領域全体が、脳のFLAIR領域である、請求項30に記載の方法。
【請求項27】
前記超音波ビーム集束内の非悪性組織の約25%未満が損傷を受ける、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記超音波ビーム集束内の非悪性組織の約10%未満が損傷を受ける、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記超音波ビーム集束内の非悪性組織の約5%未満が損傷を受ける、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記悪性組織の温度が、超音波処置によって約10℃以下上昇する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記悪性組織の温度が、超音波処置によって約5℃以下上昇する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記悪性組織の温度が、超音波処置によって約2℃以下上昇する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記5-アミノレブリン酸が、対象への、経口製剤の経口投与によって又はi.v.製剤の静脈内投与によって悪性組織に与えられる、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記5-アミノレブリン酸が、静脈内投与によって与えられる、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象がヒトである、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
悪性組織に有効量の5-ALA増強剤(potentiating agent)を与えることを更に含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記増強剤が、ドキシサイクリン、メトトレキサート、ミノサイクリン、及びビタミンD
3又はその誘導体から成る群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
悪性組織に有効量のマイクロバブルを与えることを更に含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記マイクロバブルが、高コントラスト超音波マイクロバブルである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記マイクロバブルが、六フッ化硫黄又はペルフルオロカーボンを含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記5-アミノレブリン酸がコンテナ内に提供され、前記コンテナが機械可読識別子(machine-readable identifier)を更に含み、ここで、前記機械可読識別子が、5-アミノレブリン酸の起源、5-アミノレブリン酸の量、5-アミノレブリン酸が投与されるべき対象、対象向けに規定された集束超音波処置パラメータ、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記集束超音波処置パラメータが、超音波周波数、出力、エネルギー、持続時間、又はそれらの組み合わせを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記集束超音波デバイスが、機械可読識別子をスキャンできる走査素子を含み、ここで、前記集束超音波デバイスの処置パラメータが、前記機械可読識別子に対応して設定される、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記集束超音波デバイスが、機械可読識別子がないときにはロックされる、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記5-ALAの有効量が、約1mg/kg体重~1000mg/kg体重である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記5-ALAの有効量が、約10mg/kg体重~750mg/kg体重である、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記5-ALAの有効量が、約20mg/kg体重~500mg/kg体重である、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ステップa)からb)まで、約1日~約60日の処置間隔で繰り返される、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記超音波曝露時間が、少なくとも1回の休止期間を含む、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記超音波曝露時間が、約10秒~約180秒の超音波処置期間によって区切られた、約10秒~約120秒の休止期間を含む、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記超音波処置期間が約60~約90秒であり、及び前記休止期間が約45~約75秒である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
処置を必要としている対象の処置におけるFUSデバイスとの使用のための剤形であって、前記剤形は、以下:
a) 対象を処置するのに十分な、有効量の5-アミノレブリン酸を含むコンテナ;及び
b) FUSデバイスで読み取り可能な機械可読識別子、
を含み、ここで、前記機械可読識別子が、5-アミノレブリン酸の起源、5-アミノレブリン酸の量、5-アミノレブリン酸が処方された対象、対象向けに規定されたFUS処置パラメータ、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する、剤形。
【請求項53】
前記機械可読識別子が、暗号化され、かつ、FUSを自動的にプログラムするための情報を含む、請求項52に記載の剤形。
【請求項54】
対象の悪性組織を処置するシステムであって、以下:
a) 有効量の5-アミノレブリン酸;及び
b) 集束超音波(FUS)デバイス、
を含むシステム。
【請求項55】
c) 有効量の増強剤及び/又は有効量のマイクロバブル、
を更に含む、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
有効量の5-アミノレブリン酸、有効量の増強剤、及び/又は有効量のマイクロバブルを包含するのに十分なコンテナを更に含み;ここで、前記コンテナがFUSデバイスによって読み取り可能な機械可読識別子を含み;ここで、前記機械可読識別子が、5-アミノレブリン酸の起源、5-アミノレブリン酸の量、5-アミノレブリン酸が処方された対象、対象向けに規定されたFUS処置パラメータ、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する、請求項54又は55に記載のシステム。
【請求項57】
前記機械可読識別子が、暗号化され、かつ、FUSデバイスを自動的にプログラムするための情報を含む、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記FUSデバイスが、機械可読識別子がないときにはロックされる、請求項54~57のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項59】
前記FUSデバイスが、磁気共鳴誘導FUSデバイス(MRgFUS)である、請求項54~58のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本明細書中に提供した開示は、広く医療処置に関する。より特に、開示は超音波及び超音波増感剤を使用した医療処置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ヘマトポルフィリン及びその誘導体は、1942年に優先的に腫瘍細胞で蓄積するとして記載された(H. Auler et al., Z. Krebsforsch. (1942) 53:65-68)。化合物の蛍光特性は、外科助剤及び診断として腫瘍組織を指し示すために用いられる(R. Vanseviciute et al., Medicina (2014) 50:137-43; J. Zhang et al., Acta Pharm Sinica B (2018) 8:137-46)。1972年に、ヘマトポルフィリンが酸素の存在下で光に対して腫瘍細胞を選択的に感作するのに使用され得ることが実証され(「光線力学効果」)、そして、腫瘍のサイズを縮小する、現在、光線力学療法として知られている手法をもたらした(I. Diamond et al., Lancet (1972) 2:1175-77)。ほとんどの生物体においてヘマトポルフィリンはヘムと関連分子に変換される。ヘマトポルフィリンは、鉄の欠乏、又は代謝酵素の機能不全により特定の腫瘍組織内に蓄積すると考えられる(W. Song et al., Anticancer Res (2011) 31:39-46; C.J. Gomer et al., Cancer Res (1979) 39:146-51)。これは、光を使用した腫瘍細胞の選択的破壊を可能にし、そして、健康な近隣の組織を比較的影響を受けないままにする。外因性5-アミノレブリン酸(「5-ALA」)を投与するとき、ヘム経路内の第一関係分子である光増感性ポルフィリン、プロトポルフィリンIXが蓄積して、1時間以内の組織光感作を可能にすることが発見された(C. Perotti et al., Br J Cancer (2004) 90:1660-65)。しかしながら、光線力学療法は、組織の混濁によって制限される:体表又は管腔から接近可能でない有効治療腫瘍には、該腫瘍部位への外科的な接近を必要とする。
【0003】
超音波力学療法(「SDT」)は、超音波増感剤を用いた増感後に集束超音波(FUS)を使用して細胞を破壊する方法である。作用機序は、最終的に決定されていないが、熱的効果及び/又はキャビテーションによって産生される一重項酸素に起因すると考えられる。超音波は、光よりはるかに長距離まで組織を貫通することができ、そして、より多くの身体に非侵襲性治療を利用できるようにする。驚いたことに、プロトポルフィリンIXもまた有効な超音波増感剤であることが発見され(N. Yumita et al., Jpn J Cancer Res (1989) 80(3):219-22)、そうでなければ効力がない状態下で超音波による細胞の破壊を可能にする。一方、作用機序は不明瞭であるが、一重項酸素形成から生じると仮定された。
【0004】
これまで、多くの報告されたインビトロ及びインビボ実験が存在するが、臨床試験結果は存在しない(H. Hirschberg et al., Ther Deliv (2017) 8:331-42)。例えば、N.Yumitaら(前掲)は、ヘマトポルフィリン(10、25又は50μg/mL)と、15、30又は60秒の持続時間にわたる、1.27、2.21又は3.18W/cm2の強度での超音波(1.92MHz)とを使用した、インビトロにおけるマウス肉腫180又はラット腹水肝癌130細胞に対するSDTの効果を調査した。ヘマトポルフィリンは超音波適用15、30又は60秒前に細胞に適用された。Yumitaは、トリパンブル染料排除によって測定した場合、60秒の超音波のみで非常に多くの細胞(肉腫180と腹水肝癌に関してそれぞれ16%と17%)に損傷を与えたと報告した。より高い強度であるほどより多くの細胞に損傷を与えた(2.21W/cm2:71%と75%;3.18W/cm2:79%と86%)。ヘマトポルフィリンが加えられたとき(50μg/mL)、1.27W/cm2又は3.18W/cm2への曝露後に、実質的により多くの肉腫細胞に損傷を与えたが(67%及び98%)、それと同時に、2.21及び3.18W/cm2にて、より多くのAH細胞に損傷を与えた(95%及び96%)。統計的に有意な細胞損傷はまた、3.18W/cm2の超音波強度を用いた25μg/mLのヘマトポルフィリンを使用しても報告されており(98%及び96%)、50μg/mLを使用した細胞破壊と同等であった。
【0005】
N. Yumita et al., Cancer Sci (2004) 95:765-69は、ポルフィマーナトリウム(0、0.5、1.0、2.5、又は5mg/kg、i.v. 超音波の24時間前)と1、2、3、又は5W/cm2の強度にて15分間にわたる1.92MHzの超音波を用いた、乳房の腫瘍を患っている雌Sprague Dawleyラット(7,12-ジメチルベンズ(α)アントラセンの注射によって誘発)の処置を報告した。Yumitaは、ポルフィマーナトリウム(2.5mg/kg以上)と超音波(3W/cm2以上)とを用いたSDT処置が腫瘍増殖を効果的に阻害したこと、並びにより高い処置レベル(3W/cm2にて5mg/kg、又は5W/cm2にて2.5mg/kg)が3W/cm2にて2.5mg/kgを用いた処置と有意差がないことを報告した。
【0006】
W. Songら(前掲)は、約2W/cm2の強度、2分間の持続時間にわたる、100Hzのパルス繰り返し周波数、60%のデューティサイクルを有する1.05MHzの超音波適用の4時間前に適用された5-ALA(1、10、又は50μg/mL)を使用して、インビトロにおけるSAS細胞の反応を調査した。Songは、(0、1、10、及び50μg/mLの5-ALAに関して)89%、88%、75%、及び62%の細胞生存率を報告した;生存率の低下は10及び50μg/mLで統計的に有意であった。Songはまた、超音波を用いた処置がSAS細胞アポトーシス、細胞内の反応性酸素分子種、及び脂質過酸化を増強したこと、並びに10μg/mLの5-ALAの添加がこれらの効果を有意に増強したことを報告した。
【0007】
S. Suehiro et al., J Neurosurg (2018) 129:1416-28は、3分間20%のデューティサイクルを使用し、5-ALA(1mM)及び2W/cm2の超音波(3MHz)を使用し、U87及びU251神経膠腫細胞、及びU251Oct-3/4神経膠腫幹様細胞を用いたインビトロ試験を報告した。Suehiroは、超音波のみでU87及びU251Oct-3/4を有意な程度まで破壊したが、U251細胞ではそうでなかったと報告した。5-ALA(1mM)と組み合わせた超音波は、試験したすべての腫瘍細胞に対して実質的に細胞傷害性であり(しかし、正常対照細胞に対してはそうではない)、3つのケースのすべてにおいて超音波のみに比べてより効果的であった。Suehiroはまた、3週間にわたり毎週反復した、5-ALA(100mg/kg)及び超音波(2.2MHz、0.5又は2.0W/cm2、3分間にわたる20%のデューティサイクル)を用いて処置された、ヒトU87神経膠腫細胞又はU251Oct-3/4神経膠腫幹様細胞を注射した免疫不全BALB/cヌードマウスも使用した。Suehiroは、SDT処置が処置マウスの生存を有意に改善したと報告した。
【0008】
J.Y. Kou et al., Cell Death Dis (2017) 8:e2558は、10分間の持続時間にわたる、強度0.4W/cm2の超音波(1.0MHz)に晒された、超音波増感剤としてベルベリンを使用した(30μg/mL)、(マクロファージと泡沫細胞になるように誘導された)ヒトTHP-1単球に対するインビトロ研究を報告した(他の濃度、強度、及び持続時間もまた試みられたが、組み合わせはなかった)。Kouは、処置がマクロファージにおける自食作用を誘発し、コレステロール流出が増大したことを報告した。
【0009】
M. Nonaka et al., Anticancer Res (2009) 29:943-50は、Wistarラットに注入され、そして、ローズ・ベンガル(50mg/kg、i.v. 処置の10分前)と超音波(25W/cm2にて1MHz、5分間、10mmの開頭手術によって脳表面に直接適用されたトランスデューサーを用いる)で処置されたC6ラット神経膠腫細胞を使用した。神経膠腫細胞を欠いている対照群もまた、0、10又は50mg/kgのローズ・ベンガルと25及び110W/cm2の超音波にて試験された。Nonakaは、正常脳組織を有するラットがローズ・ベンガルの有無にかかわらず25W/cm2にて病巣を示さなかったと報告した。110W/cm2にて3分間の超音波のみで処置した正常脳組織を有するラットは、6匹のラットのうちの2匹で、及びその強度で5分間処置した6匹のラットのうち5匹で凝固壊死を示した。ローズ・ベンガル(10又は50mg/kg)と110W/cm2にて3分間の超音波で処置したラットすべて病巣を示した(各群に関して5/5)。ローズ・ベンガルが(10又は50mg/kg)と110W/cm2にて5分間の超音波で処置したラットもまた病巣を示した(10mg/kgにて6/7;50mg/kgにて6/6)。
【0010】
T. Ohmura et al., Anticancer Res (2011) 31:25274-33は、Wistarラットに注入され、そして、5-ALA(100mg/kg、超音波処置の3時間前に経口投与された)と、10mmの開頭手術によって脳表面に直接適用された超音波トランスデューサーを用いた10W/cm2にて5分間の超音波1.04MHzを用いて処置されたC6ラット神経膠腫細胞を使用した。正常脳組織を有するラットはまた、1.04MHz、10、15、20又は25W/cm2にて5分間の超音波でも処置された。Ohmuraは、15、20又は25W/cm2の超音波を受けた正常脳組織を有するラットが超音波集束領域にて壊死を示したことを報告した。SDTを用いて処置された神経膠腫細胞を有するラットは、5-ALA又は超音波のみを受けたラットに比べて有意に小さい腫瘍を示した。
【0011】
E-J Jeong et al., Ultrasound Med Biol (2012) 38:2143-50は、5-ALA (60mg/kg)又はRadachlorin(40mg/kg);及び1.0MHz、2.65W/cm2にて20分間の超音波(16分間の超音波と、それに続く3分間の中断と、それに続く更に4分間の超音波)で処置したC6神経膠腫細胞を接種したSprague Dawleyラットを使用した。Jeongは、SDTを受けたラットが対照群よりサイズが有意に小さい腫瘍を示したと報告した。
【0012】
Y Li et al., PLoS One (2015) 10:e0132074は、5-ALA(250mg/kg i.v.、超音波の8時間前)と、10日間にわたり毎日、8分間、100Hzのパルス繰り返し、10%の負荷時間率、1.0MHz、2.5W/cm2の超音波で毎日処置した、BALB/cヌードマウスのラット骨肉腫UMR-106細胞を使用した。Liは、超音波のみを受けたマウスが、対照又は5-ALAのみを受けたマウスより小さい腫瘍体積を示し、及びSDTを受けたマウスが、他のすべての群より有意に小さい小さな腫瘍体積を示したと報告した。
【0013】
超音波力学療法の更なる進歩は、増感剤の改善、悪性組織に関する選択性の向上、全身に及ぶ分散、又は超音波に対する感度に焦点が当てられることが多かった。Woodburnら、US20010002251は、SDT増感剤としてテキサフィリンの使用を開示した。Sandersonらは、疾患組織を示すための染料として、及びSDT又はPDTのための増感剤としてテトラスルファモイルフタロシアニン及びナフタロシアニン誘導体(GB2343186)、並びにテトラスルファモイルフタロシアニン及びナフタロシアニン(GB2343186)の使用を開示した。Alfheim et al., US 6498945; Lawandy, US 5817048; Iger, WO 1998/052610; Lewis et al., US 20090275548A1; 及びWang et al., US 20190070296A1もまた参照のこと。しかしながら、これまで、超音波力学療法は、ヒトにおける使用に関して監督官庁によって承認されていない。
【発明の概要】
【0014】
簡単な概要
安全かつ有効な超音波力学療法が本明細書で提供される。
【0015】
一態様は、対象の悪性組織内に直接的な細胞傷害効果を選択的に誘発する方法であって、該方法は:有効量の5-アミノレブリン酸をその悪性組織に与え;そして、その組織を約3W/cm2~約100W/cm2の超音波ビーム集束の強度にて、約0.1MHz~約3MHzの周波数にて、集束超音波デバイス(focused ultrasound device)を使用した超音波エネルギーに晒すこと(「超音波処置すること」)、を含む。
【0016】
別の態様は、対象の悪性組織内にアポトーシスを選択的に誘発する方法であって、該方法は:有効量の5-アミノレブリン酸をその悪性組織に与え;そして、その組織を約3W/cm2~約100W/cm2の超音波ビーム集束の強度にて、約0.1MHz~約3MHzの周波数にて、集束超音波デバイスを使用した超音波エネルギーに当てて超音波処置すること、を含む。
【0017】
別の態様は、処置を必要としている対象の処置におけるFUSデバイスとの使用のための剤形であって、対象を処置するのに十分な有効量の5-アミノレブリン酸を含むコンテナ;及びFUSデバイスで読み取り可能な機械可読識別子(machine-readable identifier)、を含む剤形であり、ここで、該機械可読識別子は、5-アミノレブリン酸の起源、5-アミノレブリン酸の量、5-アミノレブリン酸が処方された対象、対象向けに規定されたFUS処置パラメータ、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する。
【0018】
別の態様は、対象の悪性組織を処置するシステムであって、該システムは:有効量の5-アミノレブリン酸;及び集束超音波(FUS)デバイス、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、(a)処置なし(実線の円);(b)5-ALAのみを用いた処置(四角);(c)集束超音波のみを用いた処置(三角);(d)5-ALAと集束超音波とを用いた処置、最高脳温度は32℃に制限された(逆三角);(e)5-ALAと集束超音波とを用いた処置、最高脳温度は37℃に制限された(ダイヤ);及び(f)16サイクル(それぞれ85秒の実施、60秒の休息)の5-ALAと集束超音波とを用いた処置、最高脳温度は37℃に制限された(白抜きの円)、から得られたマウスに移植されたC6神経膠腫の腫瘍増殖の阻害を示す。
【0020】
【
図2】
図2は、(a)処置なし;(b)5-ALAのみを用いた処置;(c)集束超音波のみを用いた処置;(d)5-ALAと集束超音波とを用いた処置、最高脳温度は32℃に制限された;(e)5-ALAと集束超音波とを用いた処置、最高脳温度は37℃に制限された;及び(f)16の複数の点にて5-ALAと集束超音波とを用いた処置、最高脳温度は37℃に制限された、による移植C6神経膠腫瘍細胞を有するマウスの生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
一態様は、対象の悪性組織内に直接的な細胞傷害効果を選択的に誘発する方法であって、有効量の5-アミノレブリン酸をその悪性組織に与え;そして、その組織を約3W/cm2~約100W/cm2の超音波ビーム集束の強度にて、約0.1MHz~約3MHzの周波数にて、集束超音波デバイスを使用した超音波エネルギーに晒すこと(「超音波処置すること」)、による。直接的な細胞傷害効果としては、細胞のアポトーシス、壊死、及び/又は物理的な破壊の誘発が挙げられる。有効量の5-ALAは標準的な方法によって測定できる。一般に、有効量は、正常組織を実質的に染色すること又は容認できないレベルの毒性を誘発することなしに、処置されるべき悪性組織を実質的に染色するのに十分な量である。いずれかの特定の理論に拘束されることなしに、組織の超音波処置がキャビテーション及び(その崩壊が組織内に約300nm~700nmの波長を有する光子を作り出す)マイクロバブルを引き起こし、そしてこれらの光子がプロトポルフィリンIXを活性化し、組織破壊につながる、と考えられる。
【0022】
値域が本明細書中に与えられる場合、(別段明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1までの)その範囲の上限と下限の間に挟まれた値のそれぞれ、並びに述べられた範囲内の述べられたその他の値又は挟まれた値が開示の範囲内に包含されると理解される。これらのより狭い範囲の上限及び下限は、独立してより狭い範囲内に含まれ得、それもまた、述べられた範囲内のいずれかの特別に除外された限度を条件として、開示の範囲内に包含される。述べられた範囲が限度の一方又は両方を含む場合、含まれた限度のいずれか又は両方を除いた範囲もまた開示に含まれる。
【0023】
本明細書中に開示したすべての範囲はまた、任意の若しくはすべての可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせを包含する。あらゆる列挙範囲が、十分記載されていると認識され得、そして、少なくとも等しい2分の1、3分の1、5分の1、10分の1などに分割された同じ範囲を可能にする。制限されることのない例として、本明細書中で考察される各範囲は、下から3分の1、中央の3分の1、上から3分の1などに容易に分割できる。当業者には明らかなように、「最大」、「少なくとも」、「超」、「未満」などのすべての言語は、列挙された数字を含み、かつ、先に述べたとおり、その後に部分範囲に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者には明らかなように、範囲には個々の数字のそれぞれが含まれる。よって、例えば、1~3個の物品を有する群とは、1、2、又は3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5個の物品を有する群は、1、2、3、4、又は5個の物品を有する群を指す、などである。
【0024】
(明確にするために、別々の実施形態との関連で記載される)開示の特定の特徴はまた、一つの実施形態に組み合わせて提供され得ることは理解される。逆に、(簡潔さのために、一つの実施形態との関連で記載される)開示の様々な特徴はまた、別々に又は任意の好適な部分組み合わせで提供されてもよい。開示に関係する実施形態のすべての組み合わせが、本開示によって特異的に包含され、そして、ありとあらゆる組み合わせが個別かつ明確に開示されたかのと全く同じように本明細書中に開示される。加えて、様々な実施形態とその要素のあらゆる部分組み合わせもまた、本開示によって特異的に包含され、そして、ありとあらゆる斯かる部分組み合わせが個別かつ明確に本明細書中に開示されたのと全く同じように本明細書中に開示される。
【0025】
悪性組織
悪性組織は、典型的に腫瘍性又は癌性であるが、一般に、5-ALAを取り込むこと及びプロトポルフィリンIXを蓄積することができるあらゆるタイプの組織、例えば良性腫瘍又は他の好ましくない増殖であってもよい。集束超音波は、間に挟まれた組織を通り抜けることができ、そしてそれは、そうでなければ接近不可能な場所に位置する悪性組織の処置を可能にする。こうした理由で、開示の方法は、例えば、(低及び高悪性神経膠芽腫を含めた)多形膠芽腫、光学経路神経膠腫、びまん性内在橋膠腫、星状細胞腫、上衣腫、髄芽腫、希突起神経膠腫、血管芽腫、ラブドイド腫瘍、(例えば、これだけに限定されるものではないが、乳腺腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、転移性悪性黒色腫、及び前立腺癌を含めた)他の癌からの脳転移、髄膜腫、原発性下垂体悪性腫瘍、悪性神経鞘腫瘍、及び神経線維腫、などの頭蓋内腫瘍のタイプを処置するのに有用である。他の悪性組織としては、これだけに限定されるものではないが、新生物、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫などが挙げられる。白血病及びリンパ腫としては、例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、例えば、成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫が挙げられる。他の腫瘍としては、これだけに限定されるものではないが、幼児期の固形腫瘍、例えば、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、骨腫瘍、及び軟部組織肉腫など;成人の一般的な固形腫瘍、例えば、頭頚部癌(例えば、浸潤性又は転移性扁平上皮癌、唾液腺腫瘍、上咽頭癌腫、口腔、喉頭及び食道腫瘍)など;泌尿生殖器癌(例えば、尿道、尿管、腎細胞、膀胱癌腫及び膀胱上皮内癌腫、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣の局所進行性若しくは転移性癌腫、癌、子宮、子宮頚部、及び子宮癌腫)、直腸及び結腸癌;(中皮腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫を含めた)肺癌;乳癌;胃、食道、及び結腸癌腫、胆管癌腫、肝癌腫、及び膵臓の腺癌;黒色腫、浸潤性基底細胞癌腫、及び他の皮膚癌;胃癌、脳癌、肝癌、及び甲状腺癌が挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、悪性組織は、多形膠芽腫、光学経路神経膠腫、びまん性内在橋膠腫、星状細胞腫、上衣腫、髄芽腫、希突起神経膠腫、血管芽腫、ラブドイド腫瘍、他の癌(例えば、乳腺腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、転移性悪性黒色腫、又は前立腺癌など)からの脳転移、髄膜腫、原発性下垂体悪性腫瘍、悪性神経鞘腫瘍、神経線維腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、骨腫瘍、軟部組織肉腫、浸潤性又は転移性扁平上皮癌、唾液腺腫瘍、上咽頭癌腫、口腔、喉頭及び食道腫瘍、尿道癌、尿管癌、腎細胞癌、膀胱癌腫、膀胱上皮内癌腫、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣の転移性癌腫、癌、子宮、子宮頚部、子宮癌腫、直腸又は結腸癌、肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、乳癌;胃癌、食道癌、及び結腸癌腫、胆管癌腫、肝癌腫、膵臓の腺癌、黒色腫、浸潤性基底細胞癌腫、他の皮膚癌、肝癌、並びに甲状腺癌である。いくつかの実施形態において、悪性組織は、多形膠芽腫、星状細胞腫、上衣腫、髄芽腫、希突起神経膠腫、血管芽腫、又はラブドイド腫瘍である。いくつかの実施形態において、悪性組織は多形膠芽腫である。
【0027】
5-アミノレブリン酸
5-ALAは、任意の薬学的に許容される製剤で提供され得、遊離酸、薬学的に許容される塩、又は薬学的に許容されるエステルとして提供されてもよい。製剤、Gliolan(登録商標)は市販品である。
【0028】
活性物質の塩、エステル、アミド、プロドラッグ及び他の誘導体は、合成有機化学の当業者に知られている及び、例えばMarch (1992) Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure, 4th Ed. N.Y. Wiley-Interscienceによって記載されている標準手法を使用して調製され得る。薬学的に許容される塩は、親化合物の生物学的効果と特性を保有し、かつ、生物学的に又はその他で好ましくないものではない塩である。5-ALAは、アミノ及び/又はカルボキシル基の存在下で酸性及び/又は塩基性塩を形成することができる。例えば、WO87/05297に記載のとおり、多くのそうした塩が当該技術分野で知られている。薬学的に許容される酸付加塩は無機酸と有機酸を用いて形成され得る。それから塩が誘導され得る無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。それから塩が誘導され得る有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基と有機塩基を用いて形成され得る。それから塩が誘導され得る無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられる。そこから塩が誘導され得る有機塩基としては、例えば、一級、二級、及び三級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン、塩基イオン交換樹脂など、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンなどが挙げられる。薬学的に許容されるエステルとしては、酸性基の水素をアルキル基で置き換えることによって、例えば、酸性基をアルコール又はハロアルキル基と反応させることによって、得られたものが挙げられる。エステルの例としては、これだけに限定されるものではないが、-C(O)OH基の水素がアルキルで置換されて、-C(O)O-アルキルを形成するものが挙げられる。
【0029】
いくつかの実施形態において、5-ALAは、γ線照射によって滅菌される(US6335465を参照のこと、その全体を参照により本明細書に援用する)。5-ALA製剤は、経口的、静脈内、くも膜下腔内、又は腫瘍内に投与され得る。いくつかの実施形態において、5-ALAは静脈内投与によって投与される。いくつかの実施形態において、γ線照射された5-ALAは静脈内投与によって投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、100、120、125、150、175、200、300、400、500、600、750、又は少なくとも約1000mg/kgの投薬量で投薬される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、約1000、900、800、700、600、500、400、300、250、200、180、175、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、又は20mg/kg以下の投薬量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、約0.5~約250mg/kgの投薬量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、1~150mg/kgの投薬量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、5~90mg/kgの投薬量で投与される。いくつかの実施形態において、5-ALAは、10~40mg/kgの投薬量で投与される。
【0030】
必要とされる5-ALAの有効量は、当業者に既知の標準方法によって決定できる。例えば、本明細書中の実施例1に記載のように、当業者は、マウス又は他の実験室モデル対象に腫瘍組織を移植し、そして、様々な量の5-ALAやFUSを用いて該対象を処置し得る。
図1に示したとおり、ラットは、20mg/kgの5-ALAを用いて処置され、次に、20分間6.9W/cm
2、13.8W/cm
2、27.6W/cm
2、又は55.2W/cm
2にて超音波処置される。結果は、13.8W/cm
2の超音波処置が腫瘍温度を32℃まで約2℃上げたことを示す。27.6W/cm
2の超音波処置は腫瘍温度を約37℃まで上げた。55.2W/cm
2にて超音波処置されたラットは、組織損傷を患った。無処置対照群は32±10mm
3の正規化腫瘍体積を示し、その一方で、5-ALAのみ及びFUSのみの群は24±6mm
3の正規化腫瘍体積を示した。すべての実験群が、対照動物と比較して阻害された腫瘍増殖を示し(
図1を参照のこと)、生存を改善した(
図2を参照のこと)。腫瘍内の複数の点で超音波処置された群(MP群)は、対象の50%が60日間を超えて生き残る生存の最大延長を示した。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は1mg/kg~1,000mg/kgである。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は5mg/kg~750mg/kgである。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は10mg/kg~750mg/kgである。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は20mg/kg~500mg/kgである。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は40mg/kg~500mg/kgである。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は10mg/kg~40mg/kgである。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は10mg/kg~20mg/kgである。
【0031】
いくつかの実施形態において、インキュベーション期間には、悪性組織によって取り込まれ、そしてプロトポルフィリンIXに変換されるのに5-ALAにとって十分な時間を可能にするための、5-ALAの投与~悪性組織の超音波処置が含まれる。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は、少なくとも約30分間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも約14時間、少なくとも約15時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、又は少なくとも約24時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は、72時間、約72時間未満、約60時間未満、約48時間未満、約36時間未満、約24時間未満、約22時間未満、約20時間未満、約18時間未満、約16時間未満、約15時間未満、約14時間未満、約13時間未満、約12時間未満、約11時間未満、約10時間未満、約9時間未満、約8時間未満、約7時間未満、約6時間未満、約5時間未満、約4時間未満、又は約3時間未満である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は1~72時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は2~48時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は3~36時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は4~24時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は4~18時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は4~24時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は4~18時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は約6時間である。
【0032】
増強剤
いくつかの実施形態において、方法は更に、例えば、プロトポルフィリンIX及び/又は5-ALAの取り込み又は蓄積を促進するか、或いはプロトポルフィリンIX及び/又は5-ALAが代謝される速度を減速させる、などによって、5-ALAの治療効果を高める増強剤(potentiating agent)を投与することを含む。これにより、増強剤は、所定の効果を得るのに必要である5-ALAの量を低減し得るか、又は所定の量の5-ALAから得られる効果を増強するか、或いは中間で所定の効果と量の任意の組み合わせをとり得る。好適な増強剤としては、例えば、これだけに限定されるものではないが、メトトレキサート、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、ビタミンD3、及びその誘導体が挙げられる。例えば、D.-F. Yang et al., J Formos Med Assoc (2014) 113(2):88-93; M.-J. Lee et al., PLoS ONE (2017) 12(5):e0178493; 及びE.V. Maytin et al., Isr J Chem (2012) 52(8-9):767-75を参照のこと。いくつかの実施形態において、増強剤は、メトトレキサート、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、ビタミンD3、及びその誘導体から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、増強剤はメトトレキサートである。いくつかの実施形態において、増強剤はドキシサイクリンである。いくつかの実施形態において、増強剤はミノサイクリンである。いくつかの実施形態において、増強剤はビタミンD3である。いくつかの実施形態において、2種類以上の増強剤の組み合わせが使用される。いくつかの実施形態において、メトトレキサート、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、及びビタミンD3のうちの2種類以上の組み合わせが使用される。
【0033】
増強剤は、5-ALAと同時に、又は超音波処置前のその他の時に投与される。増強剤を投与するのに最適な時間は、増強剤又は剤の組み合わせの選択により変化し得る。いくつかの実施形態において、増強剤は、5-ALAと同時に投与される。いくつかの実施形態において、増強剤は、5-ALAと同じ製剤で投与される。いくつかの実施形態において、増強剤は、いろいろな時間に投与される。いくつかの実施形態において、増強剤は、5-ALA投与前に投与される。いくつかの実施形態において、増強剤は、最初の超音波処置の少なくとも約30分前、少なくとも約1時間前、少なくとも約2時間前、少なくとも約3時間前、少なくとも約4時間前、少なくとも約5時間前、少なくとも約6時間前、少なくとも約7時間前、少なくとも約8時間前、少なくとも約9時間前、少なくとも約10時間前、少なくとも約11時間前、少なくとも約12時間前、少なくとも約13時間前、少なくとも約14時間前、少なくとも約15時間前、少なくとも約16時間前、少なくとも約18時間前、少なくとも約20時間前、少なくとも約24時間前、少なくとも約36時間前、少なくとも約48時間前、少なくとも約3日前、少なくとも約4日前、少なくとも約5日前、又は少なくとも約6日前に投与される。いくつかの実施形態において、増強剤は、最初の超音波処置の8日前、7日前、6日前、5日前、4日前、84時間前、72時間前、約72時間未満前、約60時間未満前、約48時間未満前、約36時間未満前、約24時間未満前、約22時間未満前、約20時間未満前、約18時間未満前、約16時間未満前未満、約15時間未満前、約14時間未満前、約13時間未満前、約12時間未満前、約11時間未満前、約10時間未満前、約9時間未満前、約8時間未満前、約7時間未満前、約6時間未満前、約5時間未満前未満、約4時間未満前、約3時間未満前に投与される。いくつかの実施形態において、増強剤投与期間は、超音波処置の1~72時間前である。いくつかの実施形態において、増強剤投与期間は、超音波処置の2時間~5日前である。いくつかの実施形態において、増強剤投与期間は、超音波処置の18時間~4日前である。いくつかの実施形態において、増強剤投与期間は、超音波処置の24時間~4日前である。いくつかの実施形態において、増強剤投与期間は、超音波処置の24~48時間前である。いくつかの実施形態において、増強剤投与期間は、超音波処置の48~96時間前である。いくつかの実施形態において、増強剤投与期間は、超音波処置の4~18時間前である。
【0034】
投与される増強剤の量は、当業者によって決定され、一般に、選択される(単数若しくは複数の)増強剤又は得るべき促進効果の程度に依存する。適切な方法としては、例えば、これだけに限定されるものではないが、超音波処置又は光線力学処置のいずれかと共に、各種量の5-ALA及び/又は増強剤を使用して細胞殺滅の程度を測定するための、細胞培養アッセイ、及び/又はモデル動物又は外植組織を用いたインビボ実験が挙げられる。例えば、D.-F. Yang et al., J Formos Med Assoc (2014) 113(2):88-93; M.-J. Lee et al., PLoS ONE (2017) 12(5):e0178493; 及びE.V. Maytin et al., Isr J Chem (2012) 52(8-9):767-75を参照のこと。
【0035】
使用される増強剤の量は、容認できない毒性が得られる量より少なく、かつ、促進効果を得るのに必要とされる5-ALAの量を減少させるのに十分に大きい。例えば、当業者は、
比較のベースラインとして一連の5-ALA量を使用して殺滅される悪性組織又は細胞の量又は数を測定し、次に、様々な濃度又は量の増強剤と組み合わせた同量の5-ALAを使用して殺滅される悪性組織又は細胞の量又は数を測定し得る。或いは、当業者は、様々な濃度又は量の増強剤の存在下で同じレベルの殺滅を生じさせるのに必要とされる5-ALAの量を測定し得る。殺滅される悪性組織又は細胞の量又は数は、細胞カウント、腫瘍体積の計測、生体染料の排除、及び医療研究に一般的に使用される他の技術によって測定され得る。増強剤を用いて得られる効果は、ベースライン基準から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%の効果の増大又は5-ALA用量の減少である。いくつかの実施形態において、増強剤を用いて得られる効果は、殺滅の程度に関するベースライン基準から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、100、120、125、150、175、200、300、400、500%の効果の増大である。いくつかの実施形態において、増強剤を用いて得られる効果は、ベースライン殺菌速度を得るのに必要とされる5-ALA量の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98%又は99%の減少である。
【0036】
増強剤の量は、増強剤単独での使用のために通常又は典型的に処方される量より多いか、同等であるか、又は少ない可能性がある。上限は、単独で又は5-ALAと組み合わせて、容認できない毒性が得られる量である。下限は、計測可能な促進効果を得るのに必要とされる量であり、典型的な用量の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、100、120、125、150、175、又は200%であり得る。例えば、これだけに限定されるものではないが、メトトレキサートは、超音波処置の24時間~72時間前に約7.5mg~10mgの経口単回投与として投与され得;ドキシサイクリンは、超音波処置の2~4日前から始まる、200mgの初期負荷用量で始まる、100mgの用量のBIDにて投与され得;ミノサイクリンは、超音波処置の2~4日前から始まる、50~100mgの用量のBIDにて投与され得;ビタミンD3は、超音波処置の2~4日前、10,000~100,000IU/日の用量にてコレカルシフェロールとして投与され得る。
【0037】
マイクロバブル
マイクロバブル(ミクロスフェアとしても知られている)は、約1~5μm程度の直径を有するガス入りの球である。それらのエコー源性特性が周辺組織から液体の入った血管を区別する助けとなるため、それらは、医療用超音波検査法の造影剤として使用されることもある。例えば、P.A. Dijkmans et al., Eur J Cardiology (2004) 5:245-56を参照のこと。ガスは、空気、窒素、六フッ化硫黄、又はペルフルオロカーボン、例えば、オクタフルオロプロパンなどであることが多い。マイクロバブルの外殻は、多くの場合、アルブミン、ガラクトース、脂質、又は高分子である。超音波音響場において、マイクロバブルは、低出力にて線形振動を受け、より高出力にて非線形振動を受け、そして高出力での裂創につながる。マイクロバブルが共鳴する周波数は、コア内のガスの選択、及び外殻の機械的特性によって主に決定される。2種類以上の異なるタイプのマイクロバブルの混合物が使用され得る。本開示の方法の実施において、マイクロバブルは、他の形で得られるであろうより低い音響出力でのキャビテーション(結果として、標的細胞の死滅)を引き起こすのに使用され得る。いくつかの実施形態において、マイクロバブルの有効量が悪性組織に対して与えられる。
【0038】
マイクロバブルの有効量は、殺害の程度に関するベースライン基準から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、100、120、125、150、175、200、300、400、500%、悪性組織に対する5-ALAやFUSの直接的な細胞傷害効果を増強するのに十分な量である。或いは、マイクロバブルの有効量は、ベースライン基準から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%、5-ALA用量やFUS用量を減少させるのに十分な量として表現され得る。
【0039】
マイクロバブルは、当該技術分野で知られている方法によって調製し得るか、又は商業的供給元から入手し得る。好適なマイクロバブルとしては、これだけに限定されるものではないが、高コントラスト超音波マイクロバブル、例えば、Definity(登録商標) ペルフルトレン脂質マイクロバブル(Lantheus Medical Imaging, N.Billerica MA)、Levovist(登録商標)脂質/ガラクトースミクロスフェア(Schering)、Optison(登録商標)マイクロバブル(GE Healthcare)、Lumason(登録商標)マイクロバブル (Bracco Imaging, Monroe Township, NJ)などが挙げられる。いくつかの実施形態において、マイクロバブルは高コントラスト超音波マイクロバブルである。いくつかの実施形態において、マイクロバブルは、六フッ化硫黄又はペルフルオロカーボンを含む。いくつかの実施形態において、ペルフルオロカーボンは、オクタフルオロプロパン又はペルフルオロヘキサンである。いくつかの実施形態において、マイクロバブルは、空気又は窒素を含む。いくつかの実施形態において、マイクロバブル外殻はアルブミンを含む。いくつかの実施形態において、マイクロバブルは、Definity(登録商標)ペルフルトレン脂質マイクロバブル、Levovist(登録商標)脂質/ガラクトースミクロスフェア、Optison(登録商標)マイクロバブル、又はLumason(登録商標)マイクロバブルである。
【0040】
マイクロバブルは、対象の系におけるマイクロバブルの半減期によって5-ALA及び/又は増強剤と一緒に投与され得る。一般に、多くのマイクロバブル剤は、ヒト循環内で非常に短い半減期を有するので、従って、超音波処置の直前に典型的には投与される。投与される量と投与方法は、コントラスト増強超音波での超音波検査法を目的としたマイクロバブルを投与するとき、当業者によって使用される量及び様式に類似する。投与される量は、コントラスト増強超音波での超音波検査剤として使用するために使用又は推奨される量の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、140、150、160、180、200、250、300、350、又は400%である。投与される量は、コントラスト増強超音波での超音波検査剤として使用するために使用又は推奨される量の500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、75、70、60、50、45、40、35、30、25、又は20%以下である。
【0041】
集束超音波
悪性組織は、集束超音波(FUS)デバイスを使用して集束超音波エネルギーに晒される(「超音波処置される」)。好適なデバイスとしては、Exablate(登録商標) Model 4000 Type-2システム(Insightec, Dallas TX)、などが挙げられる。Type-2は、低出力にて「バースト超音波処置」を作り出すような短持続時間のデューティサイクルを使用する超音波処置モード(すなわち、集束超音波圧力波送達モード)で作動し得る専用の1000エレメントトランスデューサーを有する。このバースト超音波処置モードは、超音波誘発キャビテーションよりはるかに低いエネルギーレベルにてマイクロバブルと併せて使用されるとき、デバイスが安定したキャビテーションを引き起こすことを可能にする。マイクロバブルの振動は、一時的かつ可逆的な、良好な標的化を誘発したが、しかし、安定した血液脳バリアの破壊を引き起こす。Exablate(登録商標)デバイスの顕著な特徴は、それが安全かつ有効なBBB破損を確実にするためにリアルタイムで音響フィードバックを観察する能力である。Exablate(登録商標)デバイスは、磁気共鳴誘導集束超音波(MRgFUS)デバイスであり、したがって、それは手順の安全を評価及び観察するためにリアルタイムMR画像化を利用する。
【0042】
超音波周波数は、少なくとも約0.1MHz、少なくとも約0.2MHz、少なくとも約0.25MHz、少なくとも約0.3MHz、少なくとも約0.4MHz、少なくとも約0.45MHz、少なくとも約0.5MHz、少なくとも約0.55MHz、少なくとも約0.6MHz、少なくとも約0.65MHz、少なくとも約0.7MHz、少なくとも約0.75MHz、少なくとも約0.8MHz、少なくとも約0.85MHz、少なくとも約0.9MHz、少なくとも約0.95MHz、少なくとも約1MHz、少なくとも約1.1MHz、少なくとも約1.5MHz、少なくとも約2.0MHz、少なくとも約2.1MHz、少なくとも約2.2MHz、少なくとも約2.3MHz、少なくとも約2.4MHz、少なくとも約2.5MHz、少なくとも約2.75MHz、少なくとも約3.0MHz、少なくとも約3.5MHz、少なくとも約4.0MHz、少なくとも約4.5MHz、少なくとも約5.0MHz、少なくとも約6.0MHz、少なくとも約7.0MHz、少なくとも約8.0MHz、少なくとも約9.0MHz、又は少なくとも約10.0MHzである。超音波周波数は、約20MHz以下、約15MHz以下、約10MHz以下、約9.0MHz以下、約8.0MHz以下、約7.0MHz以下、約6.0MHz以下、約5.0MHz以下、約4.0MHz以下、約3.0MHz以下、約2.8MHz以下、約2.6MHz以下、約2.5MHz以下、約2.4MHz以下、約2.3MHz以下、約2.2MHz以下、約2.1MHz以下、又は約2.0MHz以下である。
【0043】
超音波ビーム集束にて、集束超音波強度は、少なくとも約1W/cm2、少なくとも約1.5W/cm2、少なくとも約2.0W/cm2、少なくとも約2.5W/cm2、少なくとも約3.0W/cm2、少なくとも約3.5W/cm2、少なくとも約4.0W/cm2、少なくとも約4.5W/cm2、少なくとも約5.0W/cm2、少なくとも約6.0W/cm2、少なくとも約7.0W/cm2、少なくとも約8.0W/cm2、少なくとも約9.0W/cm2、少なくとも10.0W/cm2、少なくとも約15W/cm2、少なくとも約20W/cm2、少なくとも約25W/cm2、少なくとも約30W/cm2、少なくとも約35W/cm2、少なくとも約40W/cm2、少なくとも約45W/cm2、少なくとも約50W/cm2、少なくとも約60W/cm2、少なくとも約70W/cm2、少なくとも約75W/cm2; 少なくとも約80W/cm2、少なくとも約90W/cm2、少なくとも約100W/cm2、少なくとも約120W/cm2、少なくとも約125W/cm2、少なくとも約130W/cm2、少なくとも約140W/cm2、少なくとも約145W/cm2、少なくとも約150W/cm2、又は少なくとも約200W/cm2である。超音波ビーム集束にて、集束超音波強度は、約200W/cm2未満、約150W/cm2未満、約125W/cm2未満、約100W/cm2未満、約98W/cm2未満、約95W/cm2未満、約92W/cm2未満、約90W/cm2未満、約89W/cm2未満、約88W/cm2未満、約87W/cm2未満、約86W/cm2未満、約85W/cm2未満、約84W/cm2未満、約83W/cm2未満、約82W/cm2未満、約81W/cm2未満、約80W/cm2未満、約75W/cm2未満、約70W/cm2未満、約68W/cm2未満、約67W/cm2未満、約65W/cm2未満、約66W/cm2未満、約64W/cm2未満、約63W/cm2未満、約62W/cm2未満、約61W/cm2未満、約60W/cm2未満、約58W/cm2未満、約55W/cm2未満、約54W/cm2未満、約53W/cm2未満、約52W/cm2未満、約51W/cm2未満、約50W/cm2未満、約45 W/cm2未満、約40W/cm2未満、約35W/cm2未満、又は約30W/cm2未満である。いくつかの実施形態において、集束超音波強度は、空間ピーク時間平均強度(ISPTA)である。
【0044】
超音波力学処置中に適用されるFUSエネルギーは、組織を除去するためにFUSを使用するときのエネルギー量より一般的に少なく、超音波処置前にマイクロバブルが投与されるとき、さらに低減され得る。いくつかの実施形態において、適用されるFUSエネルギーは、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、75、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、又は2000ジュールである。いくつかの実施形態において、適用されるFUSエネルギーは、5000、4000、3000、2500、2250、2000、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1250、1200、1150、1100、1050、1000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、又は250J以下である。いくつかの実施形態において、適用されるFUSエネルギーは、10Jと2000Jの間ある。いくつかの実施形態において、適用されるFUSエネルギーは、20J~1500Jである。いくつかの実施形態において、適用されるFUSエネルギーは、50J~1250Jである。いくつかの実施形態において、適用されるFUSエネルギーは、100J~1250Jである。いくつかの実施形態において、適用されるFUSエネルギーは、250J~1250Jである。いくつかの実施形態において、適用されるFUSエネルギーは、500J~1250Jである。
【0045】
超音波処置の持続時間は、対象、悪性組織の特定のタイプ及び病期、悪性組織の位置と量、並びに悪性組織が5-ALAを取り込む及びプロトポルフィリンIXを蓄積する程度によって変動する。いくつかの実施形態において、悪性組織は、複数の点、例えば、腫瘍内の複数の点で超音波処置される。本明細書中に使用される場合、「点」とは、FUSの焦点、及びFUSによって影響を受ける組織を取り巻く点を指す。悪性組織の至る所に分布する点を超音波処置することによって、当業者は、腫瘍体積の至る所により均一な、かつ、定常的な効果を実現し得る。これはまた、当業者が低出力を使用することを可能にし、そしてそれは、温度(そしてそれで、周囲の正常組織に起こり得るリスク)が上昇する可能性を低減した。いくつかの実施形態において、悪性組織は、FUSにすべての悪性組織が一緒に晒される個々の点にて超音波処置される。いくつかの実施形態において、点は重なっている。点は、同時、個別、又は群で超音波処置される。例えば、16点を標的化することを含めた処置において、全16点が同時に超音波処置され得るか、或いはその点が連続して、又はランダムな順番で、又は例えば、2つずつ若しくは3つずつ、又は他のサイズの群で超音波処置され得る。群が超音波処置された場合、その群は、物理的にグループ化され得るか、又は隣接しない領域に分配され得る。いくつかの実施形態において、悪性組織は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、25、又は30個の個々の点にて、又は1~30のいずれかの値にて超音波処置される。いくつかの実施形態において、悪性組織は、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10以下の個々の点にて超音波処置される。
【0046】
いくつかの実施形態において、超音波処置持続時間は、少なくとも約20秒、少なくとも約30秒、少なくとも約45秒、少なくとも約1分、少なくとも2分、少なくとも約3分、少なくとも約4分、少なくとも約5分、少なくとも約6分、少なくとも約7分、少なくとも約8分、少なくとも約9分、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約60分、少なくとも約75分、少なくとも約90分、少なくとも約105分、少なくとも約120分、少なくとも約135分、少なくとも約150分、少なくとも約165分、少なくとも約180分、少なくとも約195分、少なくとも約210分、少なくとも約230分、少なくとも約245分、少なくとも約260分、少なくとも約275分、少なくとも約300分、少なくとも約330分、又は少なくとも約360分である。いくつかの実施形態において、超音波処置持続時間は、約360分未満、約330分未満、約300分未満、約290分未満、約280分間未満、約270分未満、約260分未満、約250分未満、約240分未満、約230分未満、約220分未満、約210分未満、約200分未満、約195分未満、約190分未満、約185分未満、約180分未満、約170分未満、約160分未満、約150分未満、約140分未満、約130分未満、約120分未満、約110分未満、約100分未満、約90分未満、約80分未満、約70分未満、約60分未満、約50分未満、約40分未満、約30分未満、約20分未満、又は約10分未満である。
【0047】
超音波処置は、連続的であり得るか又は周期的であり得る。周期的な超音波処置において、集束超音波への曝露の期間(「超音波処置期間」)は、超音波処置なしの、休止期間を伴って点在する。いくつかの実施形態において、超音波処置は、少なくとも1回の休止期間を含む。ある実施形態において、超音波処置期間と休止期間はそれぞれ独立に、少なくとも約5秒、少なくとも約10秒、少なくとも約15秒、少なくとも約20秒、少なくとも約25秒、少なくとも約30秒、少なくとも約35秒、少なくとも約40秒、少なくとも約45秒、少なくとも約50秒、少なくとも約55秒、少なくとも約60秒、少なくとも約65秒、少なくとも約70秒、少なくとも約75秒、少なくとも約80秒、少なくとも約85秒、少なくとも約90秒、少なくとも約95秒、少なくとも約100秒、少なくとも約105秒、少なくとも約110秒、少なくとも約115秒、少なくとも約120秒、少なくとも約125秒、少なくとも約130秒、少なくとも約140秒、少なくとも約150秒、少なくとも約160秒、少なくとも約165秒、少なくとも約170秒、少なくとも約175秒、又は少なくとも約180秒である。ある実施形態において、超音波処置期間と休止期間は、それぞれ独立に、約600秒未満、約500秒未満、約400秒未満、約300秒未満、約250秒未満、約240秒未満、約220秒未満、約200秒未満、約180秒未満、約170秒未満、約160秒未満、約150秒未満、約140秒未満、約130秒未満、約120秒未満、約110秒未満、約100秒未満、約95秒未満、約90秒未満、約85秒未満、約80秒未満、約75秒未満、約70秒未満、約65秒未満、約60秒未満、約55秒未満、又は約50秒未満である。
【0048】
開示の方法において、超音波集束に存在する非悪性組織に影響せずに、悪性組織が選択的に破壊される。いくつかの実施形態において、超音波集束に存在する非悪性組織の約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満が損傷される。いくつかの実施形態において、超音波集束に存在する非悪性組織の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、又は約25%が損傷される。組織損傷の量は、当業者に知られている方法を使用して、例えば、MRIを使用して、測定される。いくつかの実施形態において、悪性組織の温度は、15℃以下、14℃以下、13℃以下、12℃以下、11℃以下、10℃以下、9℃以下、8℃以下、7℃以下、6℃以下、5℃以下、4℃以下、3℃以下、2℃以下、又は1℃以下上昇する。
【0049】
超音波は、悪性組織に焦点を合わせ得るか、又は悪性組織を含めたより広い体積に焦点を合わせ得る。5-ALAを用いた処置は、悪性組織がFUSに対してより感受性を有する状態にし、そして、フォーカスボリューム(focus volume)に含まれる非悪性組織が必要以上に損傷されることなく、悪性組織を破壊することを可能にする。例えば、腫瘍とその周囲の体積が超音波処置され得る。加えて、当業者は、脳の解剖領域全体、例えば、これだけに限定されるものではないが、側頭葉、頭頂葉、前頭葉、後頭葉、視床、下垂体、脳橋、脳梁、基底神経節、脳幹、脳半球全体、小脳テント上領域、小脳テント下領域など、を超音波処置できる。加えて、当業者は、脳のFLAIR領域(流体減衰反転回復法-脳内の液体からのシグナルを取り除くように設計されたMRI技術)の一部又は全部を超音波処置できる。本開示の方法はまた、結果的に生じた腫瘍腔を処置して、切除術によって取り除かれなかったわずかな悪性細胞を排除するために、腫瘍の外科切除とも併用され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、腫瘍の位置は、核磁気共鳴画像法(MRI)を使用して見つけられる。いくつかの実施形態において、腫瘍は、X線画像を使用して見つけられる。いくつかの実施形態において、腫瘍が超音波処置される。いくつかの実施形態において、腫瘍と腫瘍の周囲の体積が超音波処置される。いくつかの実施形態において、腫瘍と腫瘍表面から0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、又は8cmまで拡張されたマージン(margin)が超音波処置される。いくつかの実施形態において、脳の解剖領域全体が超音波処置を受ける。いくつかの実施形態において、側頭葉、頭頂葉、前頭葉、後頭葉、視床、下垂体、脳橋、脳梁、基底神経節、脳幹、脳半球全体、小脳テント上領域、又は小脳テント下領域が超音波処置される。いくつかの実施形態において、脳のFLAIR領域が超音波処置される。いくつかの実施形態において、2カ所以上の解剖学的領域が超音波処置される。いくつかの実施形態において、腫瘍は切除され、残留悪性組織又は細胞を排除するために腫瘍腔が超音波処置される。いくつかの実施形態において、腫瘍腔は0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、又は8cmの深さまで超音波処置される。
【0051】
いくつかの実施形態において、5-ALAの投与と悪性組織の超音波処置を含む、開示の方法は、処置間隔で又は少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約7日、少なくとも約8日、少なくとも約9日、少なくとも約10日、少なくとも約12日、少なくとも約14日、少なくとも約15日、少なくとも約16日、少なくとも約18日、少なくとも約20日、少なくとも約21日、少なくとも約24日、少なくとも約25日、少なくとも約26日、少なくとも約28日、少なくとも約30日、少なくとも約35日、少なくとも約40日、少なくとも約45日、少なくとも約50日、少なくとも約55日、少なくとも約60日、少なくとも約65日、少なくとも約70日、少なくとも約75日、少なくとも約80日、少なくとも約85日、又は少なくとも約90日で繰り返される。いくつかの実施形態において、処置反復間隔は、約120日未満、約110日未満、約100日未満、約90日未満、約80日未満、約70日未満、約60日未満、約50日未満、約40日未満、約30日未満、約20日未満、約14日未満、約10日未満、約7日未満、約6日未満、約5日未満、約4日未満、約3日未満、又は約2日未満である。
【0052】
開示の対象は、哺乳類であり、そしてそれは、ヒト、ヒト以外の哺乳類、例えば、コンパニオン動物、例えばイヌ、ネコ、ラットなど、又は家畜、例えばウマ、ロバ、ラバ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、若しくはウシなど、である。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0053】
別の態様は、対象の悪性組織内でアポトーシスを選択的に誘発する方法であって、該悪性組織に有効量の5-アミノレブリン酸を与え、そして先に記載した方法とパラメータを使用して、約0.1MHz~約3MHzの周波数にて、約3W/cm2~約100W/cm2の超音波ビーム集束の強度にて、集束超音波デバイスを使用してその組織を超音波処置すること、による方法である。
【0054】
剤形とシステム
超音波処置が処置医師以外の人によって行われることが起こり得る。リスクを最小にし、かつ、処置が適切に行われることを保障するために、一態様は、処置される対象に対して集束超音波デバイス運転を合わせるための剤形である。いくつかの実施形態において、5-ALA製剤は機械可読識別子を含むコンテナ内に提供され、ここで、該識別子はコンテナの内容物、製剤の起源、製剤の量、製剤が投与されるべき対象、(例えば、超音波周波数、出力、エネルギー、持続時間、又はそれらの組み合わせを指定する)対象に処方された集束超音波処置、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する。機械可読識別子は、部外秘の患者情報を保存するために暗号化され得る。いくつかの実施形態において、コンテナは、5-アミノレブリン酸の有効量、増強剤の有効量、及び/又はマイクロバブルの有効量を含むのに十分である。いくつかの実施形態において、機械可読識別子は、バーコード、QRコード、又はRFIDデバイスである。いくつかの実施形態において、集束超音波デバイスは、機械可読識別子を読み取るデバイスを含む。いくつかの実施形態において、機械可読識別子は暗号化される。いくつかの実施形態において、FUSデバイスは、適切な機械可読識別子がないときにはロックされる。いくつかの実施形態において、FUSデバイス処置パラメータは、機械可読識別子を介してプログラムされる。
【0055】
特定の実施形態
いくつかの実施形態において、対象の悪性組織内に直接的な細胞傷害効果を選択的に誘発する方法であって、有効量の5-アミノレブリン酸、又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルをその悪性組織に与え;そして、その組織を、約0.1MHz~約3MHzの周波数にて、約3W/cm2~約100W/cm2の超音波ビーム集束の強度にて、集束超音波デバイスを使用した超音波エネルギーに晒すこと(「超音波処置すること」)、を含む方法、が提供される。
【0056】
いくつかの実施形態において、対象の悪性組織内にアポトーシスを選択的に誘発する方法であって、有効量の5-アミノレブリン酸、又は薬学的に許容されるその塩若しくはエステルをその悪性組織に与え;そして、その組織を、約0.1MHz~約3MHzの周波数にて、約3W/cm2~約100W/cm2の超音波ビーム集束の強度にて、集束超音波デバイスを使用した超音波エネルギーに晒すこと(「超音波処置すること」)、を含む方法、が提供される。
【0057】
いくつかの実施形態において、5-アミノレブリン酸は、γ線照射された5-アミノレブリン酸である。ある実施形態において、悪性組織は、約1分間~約6時間の持続時間にわたり超音波に晒される。ある実施形態において、悪性組織は、約1分間~約180分間の持続時間にわたり超音波に晒される。
【0058】
いくつかの実施形態において、強度は、約5W/cm2~約80W/cm2である。いくつかの実施形態において、強度は、約5W/cm2~約60W/cm2である。ある実施形態において、強度は、約5W/cm2~約50W/cm2である。いくつかの実施形態において、焦点にて適用されるエネルギーは、10J~2000Jである。いくつかの実施形態において、焦点にて適用されるエネルギーは、10J~2000Jである。
【0059】
ある実施形態において、5-アミノレブリン酸を与えることと、悪性組織を超音波処置することとの間にインキュベーション期間が存在する。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は、約1時間~約72時間である。いくつかの実施形態において、インキュベーション期間は、約3時間である。
【0060】
いくつかの実施形態において、悪性組織は腫瘍組織を含む。いくつかの実施形態において、腫瘍組織は、多形膠芽腫、光学経路神経膠腫、びまん性内在橋膠腫、星状細胞腫、上衣腫、髄芽腫、希突起神経膠腫、血管芽腫、ラブドイド腫瘍、(乳腺腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、転移性悪性黒色腫、及び前立腺癌から選択される)他の癌からの脳転移、髄膜腫、原発性下垂体悪性腫瘍、悪性神経鞘腫瘍、神経線維腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、骨腫瘍、軟部組織肉腫、浸潤性又は転移性扁平上皮癌、唾液腺腫瘍、上咽頭癌腫、口腔、喉頭及び食道腫瘍、尿道癌、尿管癌、腎細胞癌、膀胱癌腫、膀胱上皮内癌腫、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣の転移性癌腫、癌、子宮、子宮頚部、及び子宮癌腫、直腸又は結腸癌、肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、乳癌、胃癌、食道癌、及び結腸癌腫、胆管癌腫、肝癌腫、膵臓の腺癌、黒色腫、浸潤性基底細胞癌腫、他の皮膚癌、肝癌、又は甲状腺癌を含む。
【0061】
ある実施形態において、腫瘍組織は、神経膠芽腫を含む。ある実施形態において、悪性組織は、複数の別個の点にて超音波処置される。いくつかの実施形態において、悪性組織は、超音波処置前に核磁気共鳴画像法によって見つけられる。
【0062】
いくつかの実施形態において、超音波処置される組織は、悪性組織と非悪性組織を含む。いくつかの実施形態において、超音波処置される組織は、悪性組織と悪性組織周囲のマージンを含む。いくつかの実施形態において、マージンの外縁は、悪性組織から0.2cm~5cmである。いくつかの実施形態において、マージンの外縁は、悪性組織から1cm~3cmである。いくつかの実施形態において、超音波処置される組織は、悪性組織の切除術後の切除位置周囲のマージンを含む。いくつかの実施形態において、マージンの外縁は、悪性組織切除部位から0.2cm~5cmである。
【0063】
いくつかの実施形態において、超音波処置される組織は、脳の解剖領域全体を含む。いくつかの実施形態において、脳の解剖領域全体とは、側頭葉、頭頂葉、前頭葉、後頭葉、視床、下垂体、脳橋、脳梁、基底神経節、脳幹、脳半球、小脳テント上領域、又は小脳テント下領域である。いくつかの実施形態において、脳の解剖領域全体とは、脳のFLAIR領域である。
【0064】
ある実施形態において、超音波ビーム集束内の非悪性組織の約25%未満が損傷を受ける。ある実施形態において、超音波ビーム集束内の非悪性組織の約10%未満が損傷を受ける。ある実施形態において、超音波ビーム集束内の非悪性組織の約5%未満が損傷を受ける。いくつかの実施形態において、悪性組織の温度は、超音波処置によって約10℃以下上昇する。いくつかの実施形態において、悪性組織の温度は、超音波処置によって約5℃以下上昇する。いくつかの実施形態において、悪性組織の温度は、超音波処置によって約2℃以下上昇する。
【0065】
いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、5-アミノレブリン酸は、対象への、経口製剤の経口投与によって又はi.v.製剤の静脈内投与によって悪性組織に提供される。いくつかの実施形態において、5-アミノレブリン酸は、対象への静脈内投与によって悪性組織に提供される。
【0066】
いくつかの実施形態において、方法は、悪性組織に有効量の5-ALA増強剤を提供することを更に含む。いくつかの実施形態において、増強剤は、ドキシサイクリン、メトトレキサート、ミノサイクリン、及びビタミンD3又はその誘導体から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、方法は、悪性組織に有効量のマイクロバブルを提供することを更に含む。いくつかの実施形態において、マイクロバブルは、高コントラスト超音波マイクロバブルである。いくつかの実施形態において、マイクロバブルは、六フッ化硫黄又はペルフルオロカーボンを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、5-アミノレブリン酸はコンテナ内に提供され、該コンテナは機械可読識別子を更に含み、ここで、該機械可読識別子は、5-アミノレブリン酸の起源、5-アミノレブリン酸の量、5-アミノレブリン酸が投与されるべき対象、対象向けに規定された集束超音波処置パラメータ、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する。いくつかの実施形態において、集束超音波処置パラメータは、超音波周波数、出力、エネルギー、持続時間、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、集束超音波デバイスは、機械可読識別子をスキャンできる走査素子を含み、ここで、集束超音波デバイスの処置パラメータは機械可読識別子に対応して設定される。いくつかの実施形態において、集束超音波デバイスは、機械可読識別子がないときにはロックされる。
【0068】
いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は、約1mg/kg体重~1000mg/kg体重である。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は、約10mg/kg体重~750mg/kg体重である。いくつかの実施形態において、5-ALAの有効量は、約20mg/kg体重~500mg/kg体重である。
【0069】
いくつかの実施形態において、ステップa)からb)まで、約1日~約60日の処置間隔で繰り返される。いくつかの実施形態において、超音波曝露時間は、少なくとも1回の休止期間を含む。いくつかの実施形態において、超音波曝露時間は、約10秒~約180秒の超音波処置期間によって区切られた、約10秒~約120秒の休止期間を含む。いくつかの実施形態において、超音波処置期間は約60~約90秒であり、及び休止期間は約45~約75秒である。
【0070】
いくつかの実施形態において、処置を必要としている対象の処置におけるFUSデバイスとの使用のための剤形であって、対象を処置するのに十分な有効量の5-アミノレブリン酸を含むコンテナ;及びFUSデバイスで読み取り可能な機械可読識別子、を含む剤形を提供し、ここで、該機械可読識別子は、5-アミノレブリン酸の起源、5-アミノレブリン酸の量、5-アミノレブリン酸が処方された対象、対象向けに規定されたFUS処置パラメータ、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する。いくつかの実施形態において、機械可読識別子は、暗号化され、かつ、FUSを自動的にプログラムするための情報を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、対象の悪性組織を処置するシステムであって、有効量の5-アミノレブリン酸と集束超音波(FUS)デバイスを含むシステムが提供される。いくつかの実施形態において、システムは、有効量の増強剤及び/又は有効量のマイクロバブルを更に含む。いくつかの実施形態において、システムは、有効量の5-アミノレブリン酸、有効量の増強剤、及び/又は有効量のマイクロバブルを包含するのに十分なコンテナを更に含み;ここで、該コンテナはFUSデバイスによって読み取り可能な機械可読識別子を含み;ここで、該機械可読識別子は、5-アミノレブリン酸の起源、5-アミノレブリン酸の量、5-アミノレブリン酸が処方された対象、対象向けに規定されたFUS処置パラメータ、識別コード若しくはシリアル番号、又はそれらの組み合わせを識別する。いくつかの実施形態において、機械可読識別子は、暗号化され、かつ、FUSを自動的にプログラムするための情報を含む。いくつかの実施形態において、FUSは、機械可読識別子がないときにはロックされる。いくつかの実施形態において、FUSデバイスは、磁気共鳴誘導FUSデバイス(MRgFUS)である。
【実施例】
【0072】
以下の調製と実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、そして実施することを可能にするために示す。それらは本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単に、本発明の範囲を説明するもの及び代表するものとみなされるべきである。
【0073】
実施例1
処置手法
雄Wistarラットに、脳の右皮質内への注射によって4×105個のC6神経膠腫瘍細胞の注射を与えた。注射後7日目、処置の3時間前に、ラットに、経口的に、5-アミノレブリン酸(20mg/kg又は0mg/kg、Levulan(登録商標), DUSA Pharmaceuticals, Wilmington, MA)を投与した。
【0074】
ラットを麻酔し、そして、直径25mmの球状に湾曲したトランスデューサー(共振周波数f0=1.06MHz、焦点番号=0.8)を有するMRI誘導集束超音波システム(「FUS」、RK300, FUS Instruments, Toronto, Canada)内にセットした。次に、ラットを伴ったFUSを、7 Telsa MRIシステム(Brucker BioSpec 70/30 USR, Bruker Ltd., Milton, Ontario, Canada)内に挿入した。脳腫瘍にてFUSデバイスを正確に狙うために、MRIを使用した。次に、ラットを、20分間にわたる4つの空間ピーク時間平均強度(ISPTA)(6.9W/cm2、13.8W/cm2、27.6W/cm2、又は55.2W/cm2)のうちの1つにて超音波処置した。一群(N=6)を、20分間にわたり27.6W/cm2にて周期的に超音波処置し、85秒の16回の超音波処置期間に分割し、60秒の休止期間によって区切られた(複数の点、又は「MP」群)。MP群では、腫瘍内の16個の個々の点を超音波処置した。対照群(それぞれN=5)には、FUSなしの5-ALA、5-ALAなしのFUS処置、又は5-ALAもFUS処置もなし、を与えた。腫瘍温度を、磁気共鳴温度計を使用して超音波処置中に観察した。正規化腫瘍体積を、注射後の7、14、21、28、及び35日目にMRIによって計測した。
【0075】
結果
13.8W/cm
2の超音波処置が腫瘍温度を32℃まで約2℃上げた。27.6W/cm
2の超音波処置は腫瘍温度を約37℃まで上げた。55.2W/cm
2にて超音波処置されたラットは、組織損傷を患ったので、安楽死させた。無処置対照群は32±10mm
3の正規化腫瘍体積を示し、その一方で、5-ALAのみ及びFUSのみの群は24±6mm
3の正規化腫瘍体積を示した。すべての実験群が、阻害された腫瘍増殖を示し(
図1を参照のこと)、生存を改善した(
図2を参照のこと)。MP群は、生存の最大延長を示した。
実施例2
【0076】
5-ALA及びMRgFUSを用いた処置の安全性と耐容性を実証するために、この実験を実施した。
【0077】
処置手法
以下の評価基準を満たすヒト対象を選択する:(a) 反復神経膠腫の存在(WHOグレード3又は4);(b) Stuppプロトコールを使用した処置前;及び(c) 計画された腫瘍の切除術。Stuppプロトコールは、6週間の放射線療法にわたり毎日、テモゾロマイド(75mg/m2体表面積)を伴った、合計60Gyの、6週間にわたる月曜日から金曜日までの2Gyの放射線療法と、それに続く、放射線療法完了後のそれぞれ28日サイクルの5日間にわたる6サイクルのテモゾロマイド(150~200mg/m2)である(R. Stupp et al., New Engl J Med (2005) 352:987-96)である。
【0078】
各対象を、対象の計画される開頭手術の2~4週間前に、以下の表1に規定される量にて静脈内5-ALA及びMRgFUSを用いて処置する。各対象では、FUSを、増強及び非増強領域を含めた腫瘍の半分に焦点を合わせる。処置を、用量レベル1を用いて最初に実施し、そして、対象を用量制限毒性(DLT)について検討する。DLTが観察されない場合、対象の次のコホートを用量レベル2にて処置する。DLTが観察されない限り、この増大は各コホートについて繰り返す。1つのDLTが観察された場合、追加の3人の対象の拡大を伴って、その用量レベルを次のコホートで繰り返す。2つ以上のDLTが観察された場合、事前の用量レベルを最大耐性用量として示す。
【0079】
【0080】
結果
腫瘍を、切除術前に定期的にMRI又はX線画像化によって観察する。腫瘍切除術に続いて、切除した腫瘍を、サイズの縮小又は組織のグレードを含めて、超音波処置した半分と超音波処置していない半分との差について調べる。
【0081】
本明細書中に示した一般的方法の考察は、説明目的のみを意図している。他の代替法及び代替手段は、この開示の見直しにより当業者には明らかであり、本出願の要旨及び範囲の中に含まれるものとする。
【0082】
この明細書を通じて、様々な特許、特許出願、及び他のタイプの公表物(例えば、雑誌記事、電子データベース入力など)が参照される。本明細書中に引用したすべての特許、特許出願、及び他の公表物の開示は、それぞれ個々の公表物又は特許出願が参照によって援用されるべく特異的かつ個別に示された場合と同程度に、それらの全体として参照により本明細書に援用する。
【0083】
本明細書中に引用したいずれの参考文献も先行技術を構成するものであると認めるものではない。参考文献の議論は、その発明者らが何を主張しているかを述べ、出願人は引用した文献の正確さと適切性に異議を申し立てる権利を保有する。学術雑誌記事、特許文献、及び教科書を含めたいくつかの情報源が本明細書で参照されるが;この参照が、これらのいずれかの文献が当該技術分野の一般的な共通の知識の一部を形成する認めることとはならないことは、明確に理解されよう。
【国際調査報告】