(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-02
(54)【発明の名称】強磁性構成要素を有する耳鼻咽喉(ENT)でナビゲート可能なシェーバ
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20220726BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20220726BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220726BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B6/12
A61B6/03 377
A61B6/00 370
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570847
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2020054417
(87)【国際公開番号】W WO2020240314
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA25
4C093CA15
4C093FF17
(57)【要約】
システムは、医療用プローブと、位置追跡システムと、を含む。医療用プローブは、遠位端と、1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、を含む。医療用プローブは、近位端アセンブリと、1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を更に含む。位置追跡システムは、メモリを含み、当該メモリは、遠位磁気位置センサと近位磁気位置センサとの間の既知の相対位置を示す値を保持するように構成されている。位置追跡システムは、プロセッサを含み、当該プロセッサは、位置追跡システムによって測定される、近位磁気位置センサ及び遠位磁気位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信し、既知の相対位置と推定位置との間の不一致を検出することに応じて、対応アクションを開始するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
医療用プローブであって、
遠位端と、
前記遠位端に連結された1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、
近位端アセンブリと、
前記近位端アセンブリに連結された1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を備える、医療用プローブと、
位置追跡システムであって、
メモリであって、前記遠位磁気位置センサと前記近位磁気位置センサとの間の既知の相対位置を示す値を保持するように構成されている、メモリと、
プロセッサであって、前記位置追跡システムによって測定される、前記近位磁気位置センサ及び前記遠位磁気位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信し、前記既知の相対位置と前記推定位置との間の不一致を検出することに応じて、対応アクションを開始するように構成されている、プロセッサと、を備える、位置追跡システムと、を備える、システム。
【請求項2】
前記遠位端が、前記遠位端と交差する磁場の変化を生じさせる部分を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記磁場の前記変化を生じさせる前記部分が、強磁性材料を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記遠位位置センサが、前記医療用プローブのシャフトに連結され、前記近位磁気位置センサが、前記医療用プローブのハンドルに連結されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記シャフトが回転しており、前記プロセッサが、回転する前記1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサによって生成された値に基づいて、前記不一致を検出するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記既知の相対位置を示す前記値に基づいて、検出された前記不一致を補正するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、検出された前記不一致をユーザに警告するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記既知の相対位置を示す前記値と前記推定位置の値とを比較して、前記不一致を検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記医療用プローブが、耳鼻咽喉(ENT)ツールを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
医療用プローブであって、
遠位端と、
前記遠位端に連結された1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、
近位端アセンブリと、
前記近位端アセンブリに連結された1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を備える、医療用プローブ。
【請求項11】
前記遠位端が、前記遠位端と交差する磁場の変化を生じさせる部分を備える、請求項10に記載の医療用プローブ。
【請求項12】
前記磁場の前記変化を生じさせる前記部分が、強磁性材料を含む、請求項10に記載の医療用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、侵襲的医療用プローブに関し、具体的には、患者身体内の医療用プローブを追跡するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の器官の腔内部の医療用プローブを追跡するための技術が、特許文献において以前に提案された。例えば、米国特許出願公開第2018/0280049号は、使い捨て可能な耳鼻咽喉(Ear-Nose-Throat、ENT)ツールと、再使用可能ハンドルと、プロセッサと、を含む、医療用デバイスを記載している。ENTツールは、患者のENT器官内で医療処置を実行するように構成されている。再使用可能ハンドルは、使い捨て可能なENTツールを保持して制御するように構成されており、かつ再使用可能ハンドルの第1の位置を示す1つ又は2つ以上の位置信号を生成するように構成される位置センサを含む。プロセッサは、位置センサから位置信号を受信し、位置信号に基づき、患者のENT器官内の使い捨て可能なENTツールの第2の位置を推定するように構成されている。
【0003】
別の例として、米国特許第6,272,371号は、可撓性の細長いプローブを含み、この可撓性の細長いプローブが、対象の身体の中へ挿入するための、可撓性の細長いプローブの遠位端に隣接する遠位部分を有する侵襲的プローブ装置を記載している。遠位部分は、そこに力が加わると所定の湾曲の形態をとる。第1及び第2のセンサが、遠位端に対して既知の位置でプローブの遠位部分に固定され、当該センサは、プローブの屈曲に応じた信号を生成する。信号処理回路は、少なくとも第1のセンサの位置及び配向座標を見つけ、かつプローブの遠位部分の長さに沿った複数の点の場所を判定するために、屈曲部に応じた信号を受信して処理する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、医療用プローブと、位置追跡システムと、を含む、システムを提供する。医療用プローブは、遠位端と、遠位端に連結された1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、を含む。医療用プローブは、近位端アセンブリと、近位端アセンブリに連結された1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を更に含む。位置追跡システムは、メモリを含み、当該メモリは、遠位磁気位置センサと近位磁気位置センサとの間の既知の相対位置を示す値を保持するように構成されている。位置追跡システムは、プロセッサを含み、当該プロセッサは、位置追跡システムによって測定される、近位磁気位置センサ及び遠位磁気位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信し、既知の相対位置と推定位置との間の不一致を検出することに応じて、対応アクションを開始するように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、遠位端は、遠位端と交差する磁場の変化を生じさせる部分を含む。いくつかの実施形態では、磁場の変化を生じさせる部分は、強磁性材料を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、遠位位置センサは、医療用プローブのシャフトに連結され、近位磁気位置センサは、医療用プローブのハンドルに連結される。
【0007】
一実施形態では、シャフトは回転しており、プロセッサは、回転する1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサによって生成された値に基づいて、不一致を検出するように構成されている。
【0008】
別の実施形態では、プロセッサは、既知の相対位置を示す値に基づいて、検出された不一致を補正するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、検出された不一致をユーザに警告するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、既知の相対位置を示す値と推定位置の値とを比較して、不一致を検出するように構成されている。
【0011】
一実施形態では、医療用プローブは、耳鼻咽喉(ENT)ツールを含む。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、患者の器官に医療用プローブを挿入することを含む方法が追加的に提供され、当該医療用プローブは、(a)遠位端と、(b)遠位端に連結された1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、(c)近位端アセンブリと、(d)近位端アセンブリに連結された1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を含む。遠位端は、(i)遠位磁気位置センサと近位磁気位置センサとの間の既知の相対位置を示す値を保持すること、(ii)位置追跡システムによって測定される、近位磁気位置センサ及び遠位磁気位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信すること、及び(iii)既知の相対位置と推定位置との間の不一致を検出することに応じて、対応アクションを開始すること、によって、位置追跡システムを使用して追跡される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、遠位端と、1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、近位端アセンブリと、1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を含む医療用プローブが更に提供される。1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサは、遠位端に連結される。1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサは、近位端アセンブリに連結される。
【0014】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による、ナビゲート可能なシェーバを備える耳鼻咽喉(ENT)モジュールを使用したENT処置の概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、
図1のENT処置において適用されるENTモジュールの概略描写図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、患者の頭部内で
図2のENTモジュールの遠位端を追跡するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概論
いくつかの医療処置は、患者の器官の腔内部で医療用プローブの遠位端をナビゲートすることを必要とする。例えば、耳鼻咽喉(ENT)処置は、患者の頭部の副鼻腔に挿入されたENTでナビゲート可能なシェーバをナビゲートすることを必要とし得る。
【0017】
原則として、プローブの遠位端は、磁気位置追跡システムの複数の位置センサを遠位端に連結することによって、患者身体の内部で追跡され得る。位置測定は、磁気位置追跡システムを使用して、規定の磁場を適用することによって較正され得、プロセッサは、医療処置中に取得される位置信号に基づいて、位置センサの位置を推定し得る。
【0018】
ENTプローブの遠位端に連結される磁気位置追跡システムの複数の位置センサを有するENTプローブを備える装置は、2018年1月2日に出願された「Tracking a Rigid Tool in a Patient Body」という名称の米国特許出願第15/859,969号に記載されており、当該特許出願は、本特許出願を譲受された者に譲渡されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
しかしながら、いくつかの場合では、器官の腔内部の磁場は、いくつかの機構によって、例えばプローブ自体の遠位端の強磁性部分によって歪められる場合がある。磁場に生じる歪みを考慮していない場合、歪みは、患者の器官内での医療用プローブの追跡精度を低下させ得る。更に、回転する遠位端が存在する場合、遠位位置センサの回転は、それ自体により(例えば回転電場により)、又は更には任意の強磁性部分へと、当該遠位位置センサが生成する位置信号を歪ませる場合がある。
【0020】
下で説明する本発明の実施形態は、患者器官の内部で、遠位端と交差する磁場の変化(例えば、歪み)を生じさせる部分を備えるENTツールなどの医療用プローブを追跡するための、改善された技術を提供する。いくつかの実施形態では、開示する医療用プローブの近位端(例えば、ハンドル)は、1つ又は2つ以上の近位位置センサを備え、医療用プローブの遠位端は、1つ又は2つ以上の遠位位置センサを備える。
【0021】
遠位端の強磁性部分によってあまり影響を受けないプローブの部分に取り付けられた、1つ又は2つ以上の近位位置センサは、遠位端の位置及び配向の指示を与える。遠位端に嵌合された1つ又は2つ以上の遠位位置センサは、おそらく歪んだ位置信号を生成し、これは、遠位端の正確な位置追跡を妨げる。
【0022】
医療用プローブは、剛性であるので、遠位位置センサの各々は、処置中に、近位位置センサに対して一定の既知の位置を維持する。いくつかの実施形態では、プロセッサは、複数の位置センサの間の幾何学的に既知の相対位置(すなわち、遠位センサと近位センサとの物理的関係)を使用して、近位センサからの指示と共に、遠位センサによって歪んだ測定を検出し、拘束し、かつ補正して、遠位端の位置及び配向の改善された指示を導出する。
【0023】
一実施形態では、1つ又は2つ以上の近位位置センサの位置に対する1つ又は2つ以上の遠位位置センサの位置は、プロセッサによってアクセスされるメモリに記憶される。
【0024】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、様々なセンサの結果として生じる推定した相対位置とセンサの幾何学的に既知の相対位置とを比較することによって、位置追跡システムによる歪んだ遠位位置測定値を補正するように構成されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、近位位置センサに対する遠位位置センサの既知の位置と推定位置との間の不一致を検出することに応じて、医師に警告することなどの好適な対応アクションを開始するように構成されている。
【0026】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが、上で概略を述べたプロセッサ関連工程及び機能の各々を実施することを可能にする、特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0027】
開示される技術は、関与するプローブの位置を追跡する際の精度を損なうことなく、強磁性部分を備える医療用プローブの磁気位置追跡を可能にすることによって、低侵襲医療処置の向上した品質を可能にする。
【0028】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、ナビゲート可能なシェーバを備えるENTモジュール28を使用した耳鼻咽喉(ENT)処置の概略描写図である。いくつかの実施形態では、ENTモジュール28を備えるENTシステム20は、患者22の1つ又は2つ以上の副鼻腔48から感染症を処置するなどの、ENT処置を実施するように構成されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、ENTモジュール28は、医師24が患者22の鼻26の中へ挿入するシェーバツールをその遠位端に備える(シェーバツールは示さず)、ENT遠位端38を備える。モジュール28は、医師24が患者22の頭部41内の遠位端38をナビゲートするのを支援するように構成された、遠位端38の近位端に連結されたハンドヘルド近位端アセンブリ30を更に備える。
【0030】
一実施形態では、システム20は、頭部41内の、及びその近傍の複数の位置センサの位置を追跡するように構成された、磁気位置追跡システムを更に備える。磁気位置追跡システムは、磁場発生器44と、下の
図2に示される複数の位置センサと、を備える。位置センサは、下で説明するように、磁場発生器44によって生成された外部磁場を検知することに応じて、位置信号を生成し、それによって、プロセッサ34が、各センサの位置を推定することを可能にする。
【0031】
この位置検知方法は、様々な医療用途で、例えばBiosense Webster社(Irvine、CA)によって生産されるCARTO(商標)システムで実施されており、また、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号において、国際公開第96/05768号において、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号において詳細に記載されており、これらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
システム20は、フレーム46に固定された磁場発生器44を備える位置特定パッド40を更に備える。
図1に示される例示的な構成では、パッド40は、5つの磁場発生器44を備えるが、代替的に、任意の他の好適な数の発生器44を備え得る。パッド40は、発生器44が頭部41の外部の固定された既知の位置に位置決めされるように、患者22の頭部41の下に配置された枕(図示せず)を更に備える。
【0033】
いくつかの実施形態では、システム20は、コンソール33を備え、当該コンソールは、メモリ49と、頭部41の周囲の空間内の規定の作業容積内に磁場を生成するために、ケーブル37を介して好適な信号で磁場発生器44を駆動するよう構成された駆動回路42と、を備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、コンソール33は、プロセッサ34、典型的に汎用コンピュータを備え、当該汎用コンピュータは、ケーブル32を介して連結された複数の磁気センサ(下の
図2に示す)を有するENTモジュール28からの信号を受信するための、並びに本明細書で説明するシステム20の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインターフェース回路を備える。
【0035】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、各位置センサの位置を推定するように構成されている。プロセッサ34は、センサの推定位置に基づいて、磁気位置追跡システムの座標系の遠位端38の位置及び配向を導出するように構成されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、インターフェース(図示せず)を介して、外部のコンピュータトモグラフィ(computerized tomography、CT)システム(図示せず)を使用して取得された、頭部41のそれぞれのセグメント化された二次元(two-dimensional、2D)スライスを表すCT画像などの、1つ又は2つ以上の解剖学的画像を受信するように構成されている。「セグメント化された」という用語は、CTシステムにおいて、組織のそれぞれの減衰を測定することによって、各スライスにおいて識別される様々なタイプの組織を表示することを指す。
【0037】
コンソール33は、コンソールの操作を制御するための入力デバイス39と、ユーザディスプレイ36とを更に備え、ユーザディスプレイ36は、プロセッサ34から受信したデータ(例えば、画像)を表示するように、及び/又は、入力デバイス39を使用してユーザ(例えば、医師24)によって挿入された入力を表示するように、構成されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、画像35などのCT画像から1つ又はモードスライスを選択し、選択されたスライスをユーザディスプレイ36に表示するように構成されている。
図1の実施例において、画像35は患者22の1つ又は2つ以上の洞48の前断面図を示す。
【0039】
図1は、簡潔性及び明瞭性のために、本開示の技術に関する要素のみを示す。システム20は、典型的に、開示する技術に直接関連しない追加のモジュール及び要素を備えており、したがって、それらは、
図1から、及び対応する説明から意図的に省略されている。
【0040】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行するように、かつソフトウェアによって処理されるか、又は別様に使用されるデータをメモリ49に格納するようにプログラムされ得る。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードされてもよく、又は光学的、磁気的、若しくは電子的メモリ媒体など、非一時的な有形媒体上に提供されてもよい。代替的に、プロセッサ34の機能のいくつか又は全ては、専用の又はプログラマブルデジタルハードウェア構成要素によって実行され得る。具体的には、下で更に説明するように、プロセッサ34は、開示するステップをプロセッサ34が実行することを可能にする、
図3に含まれる本明細書に開示する専用のアルゴリズムを実行する。
【0041】
強磁性構成要素を有するENTのナビゲート可能なシェーバ
図2は、本発明の一実施形態による、
図1のENT処置において使用されるENTモジュール28の概略描写図である。
【0042】
いくつかの実施形態では、ENTモジュール28は、ハンドヘルド近位端アセンブリ30の上の既知の位置に連結された、1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサ、本実施例では、50及び52で表される2つのセンサを備える。遠位端38は、例えばシャフト58の縦軸56に沿って、遠位端38の上の既知の位置で連結された、1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサ、本実施例では、51、53、及び55で表される3つのセンサを備える。示される実施形態では、ナビゲーションシェーバのシャフト58は、強磁性材料を含む。
【0043】
本開示の文脈では、「既知の位置」という用語は、システム20の規定の座標系に対するセンサ50及び52の実際の位置を指す。
【0044】
一実施形態では、例えば
図2に示されるように、遠位端38は、直線形態を有し得る。センサ50及び52に対する遠位位置センサ51、53、55の幾何学的に既知の位置は、一組のベクトル70によって画定され得、センサ55と50の間の、そのうちの1つのベクトルが
図2に示されている。
【0045】
他の実施形態において、既知の相対位置を得るために、任意の他の好適な定義及び測定が適用されてもよい。例えば、遠位端が湾曲形状又は不定形状を有する場合、湾曲形状に沿った遠位センサの相対位置は、遠位位置をより良好に推定するために使用され得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、近位センサ50及び52に対する遠位位置センサ51、53、及び55の既知の相対位置は、システム20のメモリ49に記憶されている。既知の相対位置は、例えば、ENTモジュール製造業者によって提供され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、ENT処置中に、磁場発生器44は、磁場線62によって示される磁場60を印加する。プロセッサ34は、位置センサ51、53、及び55から受信された信号に基づいて、磁気位置追跡システムの座標系で、遠位位置センサ51、53、及び55の各々の位置を推定する。
【0048】
しかしながら、シャフト58の強磁性材料のため、(
図2において破線で示す)シャフトの近傍の磁場線62は、湾曲した磁場線72へと局所的に歪む。近位位置センサ50及び52は、歪んだ磁場線72に影響を受けず、したがって、それらの位置は、システム20によって正確に測定される。
【0049】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、推定した遠位位置に基づいて、センサ50及び52の測定位置に対するセンサ51、53、及び55のそれぞれの推定位置を計算するように構成されている。推定した相対位置は、例えば、ENTモジュール28の幾何学形状から分かるベクトル70として定義され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、ベクトル70などの所与の既知のベクトルと、誤っている対応する推定したベクトルとの間に不一致が存在するかどうかを判定するための閾値を、ベクトル70’などの歪んだ線72のため、センサ55の位置が55’として誤って推定されたものとして(メモリ49に、又はプロセッサ34のメモリに)記憶する。閾値の実施例は、ノルム||70-71’||に等しい距離71などのノルム、及び/又は角度であり得る。不一致を判定する閾値は、既知のベクトルのうちの少なくとも2つの間で異なり得るか、又は代替的に、全ての既知のベクトルについて同様であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、ツール38は、初期不一致レベルを最小にするために、典型的に処置を実行する前に、1つ又は2つ以上の規定の磁場に関して較正される。
【0052】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、ノルム||70-71’||が所与の閾値を超える値を有する場合などの、推定距離と既知の距離との間の不一致を検出した場合に、対応アクションを開始し得る。
【0053】
一実施形態では、対応アクションを適用する際に、プロセッサ34は、ENT処置を遅延させるために、医師24に、例えばディスプレイ36に警告メッセージを表示し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、遠位センサ51、53、及び55の歪んだ位置測定を補正した後に、例えばユーザディスプレイ36に、歪んだ位置測定がうまく補正され、それにより、医師24がENT処置を続行することができる旨のメッセージを表示する。
【0055】
システムENTモジュール28の構成は、概念の明瞭性のために、一例として表されている。他の実施形態では、医療的要件、制限的要件、又は技術的要件などの様々な要件を満たすために、任意の代替の構成、例えば遠位位置センサ及び近位位置センサの数が使用され得、位置センサの各組の間の距離及び方向は、変動し得る。
【0056】
図3は、本発明の一実施形態による、患者の頭部41内の
図2のENTモジュール28の遠位端38を追跡するための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。本方法は、物理的測定ステップ100から開始し、例えば、技術者は、ENT処置を実行する前に、ENTモジュール28を通じて、上で
図2に表したベクトル70などの、近位位置センサ50及び52の位置に対する遠位位置センサ51、53、及び53の位置を幾何学的に測定する。いくつかの実施形態では、技術者又は別のユーザは、ベクトル70をコンソール33のメモリ49に記憶する。
【0057】
ツールナビゲーションステップ102で、医師24は、ENT遠位端38に嵌合されたナビゲーションシェーバを患者の頭部41に挿入し、位置追跡システムによって測定された信号に基づいて、プロセッサ34からセンサ51、53、及び55の推定位置を受信する。
【0058】
比較工程104で、プロセッサ34は、専用の開示するアルゴリズム、計算されたベクトル70’、及び測定されたベクトル70を使用して(すなわち、遠位位置と近位位置とを比較して)、近位センサに対する遠位センサの位置に関連する不一致がある(例えば、1つ又は2つ以上の規定の閾値を超えている)かどうかを検出する。
【0059】
他の実施形態では、プロセッサ34は、既知のベクトルと推定したベクトルとを比較するのではなく、任意の他の好適な技法を使用して、センサ51、53及び55の測定された遠位位置と推定した相対位置とを比較し得る。
【0060】
不一致検出ステップ106で、プロセッサ34は、メモリ49に記憶された測定された(すなわち、既知の)相対的な位置の値のいずれかと、位置追跡システムによって測定されたセンサ51、53、及び55の位置に基づいて取得された推定した相対的な位置の値との間の不一致を確認する。
【0061】
いかなる不一致も検出されなかった場合、本方法は、ナビゲーション完了ステップ108に進み、ナビゲーション完了ステップ108では、プロセッサ34又は医師24は、医師24がナビゲート可能なシェーバを適用して、ENT処置を実施し得るように、ENT遠位端38が頭部41内の標的位置に位置付けられているかどうかを確認する。
【0062】
不一致が検出された場合、本方法は、対応アクションステップ112にルーティングされ、対応アクションステップ112では、プロセッサ34は、検出された不一致を医師24に通知し、随意に、上で
図2において説明したように、センサ51によって実行される歪んだ位置測定を補正するなどの、1つ又は2つ以上の補正アクションを実行する。
【0063】
他の実施形態では、プロセッサ34は、好適なメッセージを表示することによって、ユーザにアクションを提案し得、及び/又は医師24は、ステップ112で実行される対応アクションの一部として、処置を終了して、患者22の身体からENT遠位端38を後退させるように決定し得る。
【0064】
プロセッサ34が、センサ51、53、及び55によって実行された歪んだ位置測定を補正する場合、本方法は、検出ステップ106に戻り、検出ステップ106では、プロセッサ34は、ステップ106で検出された全ての不一致が補正されたか、例えば現在、規定の閾値よりも低いかどうかを確認する。
【0065】
全ての不一致が補正された場合、本方法は、ナビゲーション完了ステップ108にルーティングされて、ENT遠位端38が標的位置に位置付けられているかどうか、又は本方法がナビゲーションステップ102にループバックするかどうかを確認する。
【0066】
ナビゲーションが終了した場合、本方法は、本方法を終了するENT処置ステップ110にルーティングされる。ステップ110で、ナビゲート可能なシェーバは、頭部41(例えば、副鼻腔48)の標的位置に位置付けられ、医師24は、副鼻腔48の感染している部分を除去するためにENTでナビゲート可能なシェーバを適用するなどの、ENT処置を実施し得る。
【0067】
本明細書で説明する実施形態は、主にENT処置に対処するが、本明細書に説明される方法及びシステムはまた、強磁性材料を含む医療用デバイスの位置及び/又は配向を磁気的に追跡することを必要とする、耳鼻咽喉学、心臓学、又は神経学などの他の用途でも使用することができる。
【0068】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記の明細書に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれる文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
医療用プローブであって、
遠位端と、
前記遠位端に連結された1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、
近位端アセンブリと、
前記近位端アセンブリに連結された1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を備える、医療用プローブと、
位置追跡システムであって、
メモリであって、前記遠位磁気位置センサと前記近位磁気位置センサとの間の既知の相対位置を示す値を保持するように構成されている、メモリと、
プロセッサであって、前記位置追跡システムによって測定される、前記近位磁気位置センサ及び前記遠位磁気位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信し、前記既知の相対位置と前記推定位置との間の不一致を検出することに応じて、対応アクションを開始するように構成されている、プロセッサと、を備える、位置追跡システムと、を備える、システム。
(2) 前記遠位端が、前記遠位端と交差する磁場の変化を生じさせる部分を備える、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記磁場の前記変化を生じさせる前記部分が、強磁性材料を含む、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記遠位位置センサが、前記医療用プローブのシャフトに連結され、前記近位磁気位置センサが、前記医療用プローブのハンドルに連結されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記シャフトが回転しており、前記プロセッサが、回転する前記1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサによって生成された値に基づいて、前記不一致を検出するように構成されている、実施態様4に記載の装置。
【0070】
(6) 前記プロセッサが、前記既知の相対位置を示す前記値に基づいて、検出された前記不一致を補正するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサが、検出された前記不一致をユーザに警告するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、前記既知の相対位置を示す前記値と前記推定位置の値とを比較して、前記不一致を検出するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記医療用プローブが、耳鼻咽喉(ENT)ツールを備える、実施態様1に記載のシステム。
(10) 方法であって、
患者の器官に医療用プローブを挿入することであって、前記医療用プローブが、
遠位端と、
前記遠位端に連結された1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、
近位端アセンブリと、
前記近位端アセンブリに連結された1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を備える、挿入することと、
位置追跡システムを使用して前記遠位端を追跡することであって、
前記遠位磁気位置センサと前記近位磁気位置センサとの間の既知の相対位置を示す値を保持すること、
前記位置追跡システムによって測定される、前記近位磁気位置センサ及び前記遠位磁気位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信すること、及び
前記既知の相対位置と前記推定位置との間の不一致を検出することに応じて、対応アクションを開始すること、によって、追跡することと、
を含む、方法。
【0071】
(11) 前記遠位端が、前記遠位端と交差する磁場の変化を生じさせる部分を備える、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記磁場の前記変化を生じさせる前記部分が、強磁性材料を含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記遠位位置センサが、前記医療用プローブのシャフトに連結され、前記近位磁気位置センサが、前記医療用プローブのハンドルに連結されている、実施態様10に記載の方法。
(14) 前記不一致を検出することが、回転しているシャフトに連結されている前記1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサによって生成された値に基づいて、前記不一致を検出することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記対応アクションを開始することが、前記既知の相対位置を示す前記値に基づいて、検出された前記不一致を補正することを含む、実施態様10に記載の方法。
【0072】
(16) 前記対応アクションを開始することが、検出された前記不一致をユーザに警告することを含む、実施態様10に記載の方法。
(17) 前記不一致を検出することが、前記既知の相対位置を示す前記値と前記推定位置の値とを比較することを含む、実施態様10に記載の方法。
(18) 前記医療用プローブが、耳鼻咽喉(ENT)ツールを備え、前記磁気位置センサが、前記ENTツールの縦軸に沿って連結されている、実施態様10に記載の方法。
(19) 医療用プローブであって、
遠位端と、
前記遠位端に連結された1つ又は2つ以上の遠位磁気位置センサと、
近位端アセンブリと、
前記近位端アセンブリに連結された1つ又は2つ以上の近位磁気位置センサと、を備える、医療用プローブ。
(20) 前記遠位端が、前記遠位端と交差する磁場の変化を生じさせる部分を備える、実施態様19に記載の医療用プローブ。
【0073】
(21) 前記磁場の前記変化を生じさせる前記部分が、強磁性材料を含む、実施態様19に記載の医療用プローブ。
【国際調査報告】