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特表2022-534619G-CSFタンパク質複合体を用いた治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-02
(54)【発明の名称】G-CSFタンパク質複合体を用いた治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/19 20060101AFI20220726BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220726BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220726BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20220726BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20220726BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220726BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220726BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220726BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220726BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220726BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20220726BHJP
   C07K 14/53 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
A61K38/19
A61K45/00
A61K39/395 Y
A61K47/60
A61K47/61
A61K47/58
A61K47/68
A61P7/00
A61P37/04
A61P7/06
A61P31/00
C07K19/00
C07K14/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571286
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 US2020070101
(87)【国際公開番号】W WO2020243755
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】16/428,351
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506311677
【氏名又は名称】スペクトラム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バート,ガジャナン
(72)【発明者】
【氏名】チャウラ,シャンタ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC07
4C076CC14
4C076CC31
4C076EE02
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE37
4C076EE38
4C076EE41
4C076EE48
4C076EE59
4C076FF34
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA37
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA19
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA551
4C084ZB091
4C084ZB262
4C084ZB321
4C084ZB351
4C085AA33
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB42
4C085DD62
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA10
4H045EA20
4H045EA24
4H045FA10
(57)【要約】
本開示は、損なわれた白血球生成を特徴とするそれを必要とする患者における病気(すなわち好中球減少症)を予防、軽減または治療する方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)を含む治療的有効量のタンパク質複合体を患者に投与することを含む。非ペプチジルポリマーは免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されており、かつ修飾されたhG-CSFはCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含む。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損なわれた白血球生成を特徴とするそれを必要とする患者における病気を予防、軽減または治療するための方法であって、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)を含む治療的有効量のタンパク質複合体であって、前記非ペプチジルポリマーは前記免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されており、かつ前記修飾されたhG-CSFはCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含むタンパク質複合体を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記病気は、造血機能の低下、免疫機能の低下、好中球数の減少、好中球動員の減少、末梢血前駆細胞の動員、敗血症、深刻な慢性好中球減少症、熱性好中球減少症、骨髄移植、感染性疾患、白血球減少症、血小板減少症、貧血、移植時の骨髄生着の促進、放射線治療時の骨髄回復の促進、化学物質もしくは化学療法誘発性骨髄形成不全または骨髄抑制および後天性免疫不全症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記病気は深刻な慢性好中球減少症である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記病気は熱性好中球減少症である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記損なわれた白血球生成は化学療法、放射線療法または特発性血小板減少性紫斑病の結果である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者をアジュバントもしくはネオアジュバント化学療法で治療した後に前記タンパク質複合体を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者をアジュバントもしくはネオアジュバント化学療法で治療した後の1日~5日目に前記タンパク質複合体を投与する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アジュバントもしくはネオアジュバント化学療法はドセタキセルおよびシクロホスファミドの組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質複合体の2回目の用量は、前記タンパク質複合体の1回目の用量を前記患者に投与した後から15日~25日目に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記治療的有効量は25μg/kg、50μg/kg、100μg/kgおよび200μg/kgから選択される単位剤形である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記治療的有効量は0.6mL投与体積中に13.2mgの前記タンパク質複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
治療的有効量の第2の薬剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の薬剤は抗癌剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Cys17における置換はCys17Serである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記Pro65における置換はPro65Serである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記修飾されたヒトG-CSFは配列番号1のポリペプチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫グロブリンFc領域は配列番号2のポリペプチド配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記非ペプチジルポリマーの両端はそれぞれ前記修飾されたヒトG-CSFおよび前記免疫グロブリンFc領域に反応基を介して共有結合により結合されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)前記免疫グロブリンFc領域はアグリコシル化されている、
(b)前記免疫グロブリンFc領域はCH2およびCH3ドメインからなる、
(c)前記免疫グロブリンFc領域はCH2、CH3およびCH4ドメインのうちの1つを含む、
(d)前記免疫グロブリンFc領域はヒンジ領域をさらに含む、あるいは
(e)前記免疫グロブリンFc領域はIgG、IgA、IgD、IgEまたはIgMから誘導された免疫グロブリンFc断片である、
請求項1に記載の方法。
【請求項20】
(a)前記免疫グロブリンFc断片の各ドメインはドメインのハイブリッドであり、各ドメインはIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMからなる群から選択される免疫グロブリンから誘導された異なる由来を有する、
(b)前記免疫グロブリンFc断片は同じ由来を有するドメインを含む単鎖免疫グロブリンからなる二量体または多量体である、
(c)前記免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片である、あるいは
(d)前記免疫グロブリンFc断片はヒトのアグリコシル化IgG4 Fc断片である、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(a)前記非ペプチジルポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、あるいは
(b)前記非ペプチジルポリマーはポリエチレングリコールである、
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリエチレングリコールは3.4kDaの分子量を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記非ペプチジルポリマーの前記反応基はアルデヒド基、マレイミド基およびスクシンイミド誘導体からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
(a)前記アルデヒド基はプロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基である、あるいは
(b)前記スクシンイミド誘導体はスクシンイミジルカルボキシメチル、吉草酸スクシンイミジル、メチル酪酸スクシンイミジル、メチルプロピオン酸スクシンイミジル、ブタン酸スクシンイミジル、プロピオン酸スクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミドまたは炭酸スクシンイミジルである、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(a)前記非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基を有する、
(b)前記非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基およびマレイミド基をそれぞれ有する、あるいは
(c)前記非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基およびスクシンイミド基をそれぞれ有する、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記非ペプチジルポリマーの各端部は前記免疫グロブリンFc領域の前記N末端および前記修飾されたヒトG-CSFのリジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基のN末端、C末端または遊離反応基にそれぞれ結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
化学療法を受けている患者における好中球減少症を治療または予防するための方法であって、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に結合された生理活性ポリペプチドを含むタンパク質複合体を前記患者に投与することを含み、ここでは前記非ペプチジルポリマーは前記免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されている方法。
【請求項28】
前記非ペプチジルポリマーの両端は、反応基を介して前記生理活性ポリペプチドおよび前記免疫グロブリンFc領域にそれぞれ共有結合により結合されている、請求項27に記載の方法、。
【請求項29】
前記免疫グロブリンFc領域は免疫グロブリンである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫グロブリンFc領域はアグリコシル化されている、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記免疫グロブリンFc領域は、CH2、CH3およびCH4ドメインのうちのいずれか1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫グロブリンFc領域はCH2およびCH3ドメインからなる、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記免疫グロブリンFc領域はヒンジ領域をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記免疫グロブリンFc断片の各ドメインはドメインのハイブリッドであり、各ドメインはIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMからなる群から選択される免疫グロブリンから誘導された異なる由来を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記非ペプチジルポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記非ペプチジルポリマーはポリエチレングリコールである、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記生理活性ポリペプチドはG-CSFである、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
化学療法の完了から約6時間以内に前記タンパク質複合体を前記患者に投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
化学療法の完了から約5時間以内に前記タンパク質複合体を前記患者に投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
化学療法の完了から約2時間以内に前記タンパク質複合体を前記患者に投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
化学療法の完了から約1時間以内に前記タンパク質複合体を前記患者に投与する、請求項27に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好中球減少症などの病気を治療または予防するかそれを発症するリスクを減少させるためのタンパク質複合体、医薬組成物およびその使用方法に関する。本タンパク質複合体は、非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc領域に結合されている状態で免疫グロブリンFc領域を非ペプチジルポリマーを介して生理活性ポリペプチドに結合させることにより形成することができる。
【背景技術】
【0002】
好中球減少症は、ほとんどの場合に化学療法治療、薬物有害反応または自己免疫不全に付随する比較的一般的な疾患である。化学療法誘発性好中球減少症は抗癌剤の投与によって引き起こされる共通毒性である。それは生命にかかわる感染症に関連しており、化学療法スケジュールを変更させる場合があり、従って初期および長期臨床結果に影響を与える。熱性好中球減少症は、ドセタキセル、ドキソルビシン、シクロホスファミド(TAC)、ドーズ・デンス(dose-dense)ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)(その後の週1回もしくは週2回のパクリタキセルを含む場合と含まない場合)ならびにドセタキセル+シクロホスファミド(TC)などの骨髄抑制性化学療法レジメンの主要な用量制限毒性である。それは通常、長期入院、広域抗生物質の静脈内投与が必要となり、かなりの罹患率および死亡率を伴う場合が多い。約25%~40%の治療未経験患者は、G-CSF支援がない場合には一般的な化学療法レジメンにより熱性好中球減少症を発症する。
【0003】
現在の治療法は、この病気と闘うために顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)および/または抗生物質を用いる。しかしG-CSFまたはその他のポリペプチド誘導体は、腎臓または肝臓により容易に除去されるように血中のタンパク分解酵素によって容易に変性したり容易に分解されたりする。従ってG-CSF含有薬物の血中濃度および力価を維持するために、このタンパク質薬物を患者に頻繁に投与することが必要であり、これは患者に過剰な苦痛を与える。そのような問題を解決するために、G-CSFをポリエチレングリコール(「PEG」)などの高い溶解性を有するポリマーに化学的に結合させ、それによりその血液安定性を高め、かつ好適な血中濃度をより長期間にわたって維持してきた。
【0004】
しかし、PEGをG-CSFに結合させることにより血液安定性を高めることができるにも関わらず、最適な生理的効果のために必要とされる力価が劇的に減少する。従って、当該技術分野ではこの欠点に対処することが必要である。
【0005】
従って、新しいG-CSF含有タンパク質複合体が安定なままであって患者の予後を劇的に改善することができる新しい製剤および使用方法が強く必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、容易に調製して好中球減少症を発症するリスクのある患者に投与し、かつ最適な治療結果を達成する血清中濃度を維持することができる、G-CSFを含有するより安定なタンパク質複合体を使用する方法に関する。本発明の別の態様は、非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc断片のN末端に部位特異的に結合されている状態で生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片とを非ペプチジルポリマーを介して結合させることにより調製されるタンパク質複合体に関する。
【0007】
一態様では、本開示はそれを必要とする患者における病気を予防、軽減または治療する方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)を含む治療的有効量のタンパク質複合体であって、非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されており、かつ修飾されたhG-CSFがCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含むタンパク質複合体を患者に投与することを含む。
【0008】
当該病気は患者において損なわれた白血球生成を特徴とする。例えば当該病気は、造血機能の低下、免疫機能の低下、好中球数の減少、好中球動員の減少、末梢血前駆細胞の動員、敗血症、深刻な慢性好中球減少症、熱性好中球減少症、骨髄移植、感染性疾患、白血球減少症、血小板減少症、貧血、移植時の骨髄生着の促進、放射線治療時の骨髄回復の促進、化学物質もしくは化学療法誘発性骨髄形成不全または骨髄抑制および後天性免疫不全症候群のうちの1つであってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、当該病気は深刻な慢性好中球減少症であってもよい。いくつかの実施形態では、当該病気は熱性好中球減少症であってもよい。いくつかの実施形態では、損なわれた白血球生成は化学療法、放射線療法または特発性血小板減少性紫斑病の結果であってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者をアジュバントもしくはネオアジュバント化学療法で治療した後に本タンパク質複合体を投与してもよい。いくつかの実施形態では、患者をアジュバントもしくはネオアジュバント化学療法で治療した後の1日~5日の間に本タンパク質複合体を投与してもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントもしくはネオアジュバント化学療法はドセタキセルおよびシクロホスファミドの組み合わせであってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、本タンパク質複合体の2回目の用量は本タンパク質複合体の1回目の用量を患者に投与した後の15日~25日の間に投与してもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、治療的有効量は25μg/kg、50μg/kg、100μg/kgおよび200μg/kgから選択される単位剤形である。いくつかの実施形態では、治療的有効量は0.6mLの投与体積中に13.2mgの本タンパク質複合体である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は治療的有効量の第2の薬剤(例えば抗癌剤)を患者に投与することをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、Cys17における置換はCys17Serであってもよく、Pro65における置換はPro65Serであってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、修飾されたヒトG-CSFは配列番号1のポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域は配列番号2のポリペプチド配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーの両端はそれぞれ、修飾されたヒトG-CSFおよび免疫グロブリンFc領域に反応基を介して共有結合により結合されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、(a)免疫グロブリンFc領域はアグリコシル化されている、(b)免疫グロブリンFc領域はCH2およびCH3ドメインからなる、(c)免疫グロブリンFc領域は、CH2、CH3およびCH4ドメインのうちの1つを含む、(d)免疫グロブリンFc領域はヒンジ領域をさらに含む、あるいは(e)免疫グロブリンFc領域はIgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM由来の免疫グロブリンFc断片であることを特徴としてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、(a)免疫グロブリンFc断片の各ドメインはドメインのハイブリッドであり、各ドメインはIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMからなる群から選択される免疫グロブリンから誘導された異なる由来を有する、(b)免疫グロブリンFc断片は同じ由来を有するドメインを含む単鎖免疫グロブリンからなる二量体または多量体である、(c)免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片である、あるいは(d)免疫グロブリンFc断片はヒトのアグリコシル化IgG4 Fc断片であることをさらに特徴としてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーは、(a)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるか、(b)ポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールは3.4kDaの分子量を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーの反応基はアルデヒド基、マレイミド基およびスクシンイミド誘導体からなる群から選択される。例えばアルデヒド基はプロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基であってもよい。スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルカルボキシメチル、吉草酸スクシンイミジル、メチル酪酸スクシンイミジル、メチルプロピオン酸スクシンイミジル、ブタン酸スクシンイミジル、プロピオン酸スクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミドまたは炭酸スクシンイミジルであってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基を有する。いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基およびマレイミド基をそれぞれ有する。いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基およびスクシンイミド基をそれぞれ有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーの各端部は免疫グロブリンFc領域のN末端および修飾されたヒトG-CSFのリジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基のN末端、C末端または遊離反応基にそれぞれ結合されている。
【0023】
別の態様では、本開示は、化学療法を受けている患者における好中球減少症を治療または予防するための方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されている状態で非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に結合された生理活性ポリペプチドを含むタンパク質複合体を前記患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、生理活性ポリペプチドはG-CSFである。
【0024】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーの両端はそれぞれ、生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域に反応基を介して共有結合により結合されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域は免疫グロブリンである。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域はアグリコシル化されている。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、CH2、CH3およびCH4ドメインのうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域はCH2およびCH3ドメインからなる。免疫グロブリンFc領域はヒンジ領域をさらに含んでいてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc断片の各ドメインはドメインのハイブリッドであり、各ドメインはIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMからなる群から選択される免疫グロブリンから誘導された異なる由来を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、化学療法の完了から約6時間、約5時間、2時間または1時間以内に本タンパク質複合体を患者に投与してもよい。
【0028】
別の態様では、本発明は、生理活性ポリペプチドのインビボでの持続時間および安定性を向上させるための有効成分として本タンパク質複合体を含む医薬組成物における、本タンパク質複合体を調製する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】免疫グロブリンFc領域のN末端反応によって調製した17,65Ser-G-CSF-PEG-Fc複合体のSDS-PAGEおよびウェスタンブロット法の結果を示す。
図1B】免疫グロブリンFc領域のN末端反応によって調製した17,65Ser-G-CSF-PEG-Fc複合体のFc領域N末端結合を分析するためのペプチドマッピングの結果を示す。
図2】統計的に有意である、17,65Ser-G-CSF-PEG-Fc(エフラペグラスチム(EFLAPEGRASTIM))群における深刻な好中球減少症の発生率の低下を示す。
図3】深刻な好中球減少症による入院および/または好中球減少症のための抗感染薬の使用を含む好中球減少症の合併症がエフラペグラスチム群において有意により少ないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
大まかに言うと、本開示は、損なわれた白血球生成を特徴とする病気を有する患者を予防、軽減、予防的治療および治療する方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)などの生理活性ポリペプチドを含む治療的有効量のタンパク質複合体をそのような治療を必要とする患者に投与することを含む。非ペプチジルポリマーは免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合させることができ、かつ修飾されたhG-CSFはCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含む。
【0031】
別の態様では、本開示は、骨髄移植に適格な患者において顆粒球の数を増加させるための方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)を含む治療的有効量のタンパク質複合体であって、非ペプチジルポリマーは免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されており、かつ修飾されたhG-CSFはCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含むタンパク質複合体をそのような治療を必要とする患者に投与することを含む。
【0032】
さらに別の態様では、本開示は、患者において幹細胞生成を増加させるための方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)を含む治療的有効量のタンパク質複合体であって、非ペプチジルポリマーは免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されており、かつ修飾されたhG-CSFはCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含むタンパク質複合体をそのような治療を必要とする患者に投与することを含む。
【0033】
さらに別の態様では、本開示は、化学療法を受けているものまたは他の患者への幹細胞のドナーであるものを含むそれを必要とする患者において造血前駆細胞の数を増加させるための方法を提供する。本方法は非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)を含む治療的有効量のタンパク質コンジュゲートであって、非ペプチジルポリマーは免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されており、かつ修飾されたhG-CSFはCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含むタンパク質コンジュゲートを患者に投与することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、治療される病気は、造血機能の低下、免疫機能の低下、好中球数の減少、好中球動員の減少、末梢血前駆細胞の動員、敗血症、深刻な慢性好中球減少症、骨髄移植、感染性疾患、白血球減少症、血小板減少症、貧血、移植時の骨髄生着の促進、放射線治療時の骨髄回復の促進、化学物質もしくは化学療法誘発性骨髄形成不全または骨髄抑制および後天性免疫不全症候群を含む。一実施形態では、当該病気は骨髄抑制、好中球減少症または好ましくは熱性好中球減少症である。
【0035】
別の態様では、本開示は、骨髄抑制性抗癌剤を受けている非骨髄性悪性腫瘍を有する患者において好中球減少症(例えば、熱性好中球減少症)によって現されるような感染を予防、軽減、予防的治療および治療するための方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)を含む治療的有効量のタンパク質複合体であって、非ペプチジルポリマーは免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されており、かつ修飾されたhG-CSFはCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含むタンパク質複合体を患者に投与することを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、損なわれた白血球生成は化学療法、放射線療法、アジュバントもしくはネオアジュバント化学療法または特発性血小板減少性紫斑病の結果である。特定の実施形態では、アジュバントもしくはネオアジュバント化学療法はドセタキセルおよびシクロホスファミドの組み合わせである。他の実施形態では、治療的有効量は12.5μg/kg、25μg/kg、50μg/kg、100μg/kgおよび200μg/kgから選択される単位剤形である。特定の実施形態では、本方法論は、治療的有効量の抗癌剤などの第2の薬剤を患者に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、修飾されたG-CSFはCys17における置換によるものであり、その置換はCys17Serである。他の実施形態では、Pro65における置換はPro65Serである。
【0037】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域は配列番号1のポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾されたG-CSFは配列番号2のポリペプチド配列を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、本方法に用いられるタンパク質複合体は、(a)免疫グロブリンFc断片の各ドメインはドメインのハイブリッドであり、各ドメインはIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMからなる群から選択される免疫グロブリンから誘導された異なる由来を有する、(b)免疫グロブリンFc断片は同じ由来を有するドメインを含む単鎖免疫グロブリンからなる二量体または多量体である、(c)免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片である、あるいは(d)免疫グロブリンFc断片はヒトのアグリコシル化IgG4 Fc断片であることを含む。
【0039】
特定の実施形態では、非ペプチジルポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態では、非ペプチジルポリマーはポリエチレングリコールである。
【0040】
別の態様では、本開示は、化学療法を受けている患者における好中球減少症を治療または予防するための方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されている状態で非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に結合された修飾されたG-CSFを含むタンパク質複合体を前記患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーの両端はそれぞれ、生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域に反応基を介して共有結合により結合されている。好ましい実施形態では、免疫グロブリンFc領域はアグリコシル化されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、化学療法の完了から約5時間、2時間、1時間または30分以内にG-CSF複合体組成物を患者に投与する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明は、免疫グロブリンFc領域がCH2、CH3およびCH4ドメインのうちの1つを含むタンパク質複合体を提供する。例えば、免疫グロブリンFc領域はCH2およびCH3ドメインを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域はヒンジ領域をさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc領域はIgG、IgA、IgD、IgEまたはIgMから誘導された免疫グロブリンFc断片である。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc断片の各ドメインはドメインのハイブリッドであり、かつ各ドメインがIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMからなる群から選択される免疫グロブリンから誘導された異なる由来を有する。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc断片は同じ由来を有するドメインを含む単鎖免疫グロブリンからなる二量体または多量体である。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片である。
【0044】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸およびそれらの組み合わせのうちの1つであってもよく、好ましくは非ペプチジルポリマーはポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーは3.4kDaのポリエチレングリコールである。
【0045】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーの反応基はアルデヒド基、マレイミド基およびスクシンイミド誘導体のうちの1つであってもよい。アルデヒド基はプロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基であってもよい。スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルカルボキシメチル、吉草酸スクシンイミジル、メチル酪酸スクシンイミジル、メチルプロピオン酸スクシンイミジル、ブタン酸スクシンイミジル、プロピオン酸スクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミドまたは炭酸スクシンイミジルであってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基を有する。いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基およびマレイミド基をそれぞれ有する。いくつかの実施形態では、非ペプチジルポリマーは両端に反応基としてアルデヒド基およびスクシンイミド基をそれぞれ有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明は、非ペプチジルポリマーの各端部が免疫グロブリンFc領域のN末端および生理活性ポリペプチドのリジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基のN末端、C末端または遊離反応基にそれぞれ結合されているタンパク質複合体を提供する。
【0048】
別の態様では、本開示は、化学療法を受けている患者における好中球減少症を治療または予防するための方法を提供する。本方法は、非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されている状態で非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に結合された生理活性ポリペプチドを含むタンパク質複合体を前記患者に投与することを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、生理活性ポリペプチドはホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、増殖因子、転写因子、血液凝固因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質および受容体のうちの1つであってもよい。いくつかの実施形態では、生理活性ポリペプチドはG-CSFである。
【0050】
別の態様では、本開示は本タンパク質複合体を調製する方法も提供する。本方法は、
(a)両端に反応基を有する少なくとも1つの非ペプチジルポリマー、少なくとも1つの生理活性ポリペプチドおよび少なくとも1つの免疫グロブリンFc領域を共有結合により結合させてタンパク質複合体を調製する工程、および
(b)非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合されている状態で共有結合させた生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域を本質的に含む(a)で調製したタンパク質複合体を単離する工程
を含む。
【0051】
本発明の具体的な一実施形態は、工程(a)が、
(a1)非ペプチジルポリマーの一端を免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドに共有結合により結合させてコンジュゲートを調製する工程、および
(a2)工程(a1)で調製したコンジュゲートを単離し、かつ単離したコンジュゲートの非ペプチジルポリマーの他端を免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドのうちの他方に共有結合により結合させる工程
を含む調製方法を提供する。
【0052】
本発明の別の具体的な実施形態は、工程(a1)において生理活性ポリペプチドと非ペプチジルポリマーとの反応モル比が1:1~1:30の範囲内であり、かつ免疫グロブリンFc断片と非ペプチジルポリマーとの反応モル比が1:1~1:20の範囲内である調製方法を提供する。
【0053】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a1)を4.0~9.0のpH条件下で行う調製方法を提供する。
【0054】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a1)を4.0℃~25℃の温度で行う調製方法を提供する。
【0055】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a1)において免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの反応濃度が0.1mg/mL~100mg/mLの範囲内である調製方法を提供する。
【0056】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a2)においてコンジュゲートと免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドとの反応モル比が1:0.1~1:20の範囲内である調製方法を提供する。
【0057】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a2)を4.0~9.0のpH条件下で行う調製方法を提供する。
【0058】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a2)を4.0℃~25℃の温度で行う調製方法を提供する。
【0059】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a2)において免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの濃度が0.1mg/mL~100mg/mLの範囲内である調製方法を提供する。
【0060】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a1)および工程(a2)を還元剤の存在下で行う調製方法を提供する。
【0061】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、還元剤がシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)、水素化ホウ素ナトリウム、ホウ酸ジメチルアミンおよびホウ酸ピリジンからなる群から選択される調製方法を提供する。
【0062】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(a2)において陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィおよびサイズ排除クロマトグラフィからなる群から選択される単一もしくは組み合わせた精製方法によって単離を行う調製方法を提供する。
【0063】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、陰イオン交換クロマトグラフィ樹脂の官能基が第四級アンモニウム(Q)、第4級アミノエチル(QAE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ポリエチレンアミン(PEI)、ジメチルアミノメチル(DMAE)およびトリメチルアミノエチル(TMAE)からなる群から選択されるいずれか1つである調製方法を提供する。
【0064】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、陽イオン交換クロマトグラフィ樹脂の官能基はメチルスルホン酸(S)、スルホプロピル(SP)、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)およびポリアスパラギン酸からなる群から選択されるいずれか1つである調製方法を提供する。
【0065】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、疎水性クロマトグラフィ樹脂の官能基がフェニル、オクチル、(イソ)プロピル、ブチルおよびエチルからなる群から選択されるいずれか1つである調製方法を提供する。
【0066】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、アフィニティクロマトグラフィ樹脂の官能基がタンパク質A、ヘパリン、ブルー、ベンズアミジン、金属イオン(コバルト、ニッケルおよび銅)、および本タンパク質複合体の構成要素の一部または全体に対する抗体からなる群から選択されるいずれか1つであり、非ペプチジルポリマーの両端が免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドにそれぞれ結合されている調製方法を提供する。
【0067】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、サイズ排除クロマトグラフィの樹脂がSuperdex、Sephacryl、SuperposeおよびSephadexからなる群から選択される調製方法を提供する。
【0068】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィおよびサイズ排除クロマトグラフィからなる群から選択される単一もしくは組み合わせた方法によって工程(b)のタンパク質複合体を単離する工程を行う調製方法を提供する。
【0069】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、陰イオン交換クロマトグラフィ樹脂の官能基が第四級アンモニウム(Q)、第4級アミノエチル(QAE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ポリエチレンアミン(PEI)、ジメチルアミノメチル(DMAE)およびトリメチルアミノエチル(TMAE)からなる群から選択されるいずれか1つである調製方法を提供する。
【0070】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、陽イオン交換クロマトグラフィ樹脂の官能基がメチルスルホン酸(S)、スルホプロピル(SP)、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)およびポリアスパラギン酸からなる群から選択されるいずれか1つである調製方法を提供する。
【0071】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、疎水性クロマトグラフィ樹脂の官能基がフェニル、オクチル、(イソ)プロピル、ブチルおよびエチルからなる群から選択されるいずれか1つである調製方法を提供する。
【0072】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、アフィニティクロマトグラフィ樹脂の官能基がタンパク質A、ヘパリン、ブルー、ベンズアミジン、金属イオン(コバルト、ニッケルおよび銅)、本タンパク質複合体の構成要素の一部または全体に対する抗体からなる群から選択されるいずれか1つであり、非ペプチジルポリマーの両端が免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドにそれぞれ結合されている調製方法を提供する。
【0073】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、サイズ排除クロマトグラフィの樹脂がSuperdex、Sephacryl、SuperposeおよびSephadexからなる群から選択される調製方法を提供する。
【0074】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、工程(b)が、タンパク質複合体を構成している非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域が免疫グロブリンFc領域のN末端を介して結合されている状態のタンパク質複合体を単離するためのものである調製方法を提供する。
【0075】
本発明のさらに別の態様は、
(a’)4.0~9.0のpH条件下で、非ペプチジルポリマーの一端を免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドに共有結合により結合させてコンジュゲートを調製する工程、
(b’)工程(a’)で調製したコンジュゲートを単離し、かつ4.0~9.0のpH条件下で、単離したコンジュゲートの非ペプチジルポリマーの他端を免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドのうちの他方に共有結合により結合させる工程、および
(c’)非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合されている状態で共有結合させた生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域を本質的に含む工程(b’)で調製したタンパク質複合体を単離する工程
を含む、位置特異的タンパク質複合体を調製する方法を提供する。
【0076】
特に、非ペプチジルポリマーと免疫グロブリンFc領域のN末端との結合における反応速度にとって重要な条件はpHであり、部位特異的結合は中性のpH未満、すなわちpH7.0未満のpH値で良好に生じ得る。
【0077】
非ペプチジルポリマーを免疫グロブリンFc領域のN末端に結合させる工程は中性のpH未満のpH値で行い、好適にはタンパク質の第三級構造または活性を変性させない弱酸性から酸性のpHで行うが、それらに限定されない。非限定的な例として、本発明で使用される免疫グロブリンFc領域は配列番号2のアミノ酸配列を有し、それは約pH8.2の弱塩基性条件においてN末端特異性を有することが確認された(実施例5)。
【0078】
すなわち、一般的な免疫グロブリンFc領域を使用する場合、免疫グロブリンFc領域のN末端と非ペプチジルポリマーとの特異的結合の反応速度は中性のpH未満のpHで増加する。但し、より低いpH感受性を有するように突然変異されている免疫グロブリンFc領域を使用する場合、その結合の反応速度は当該条件に限定されなくてもよい。
【0079】
本発明のさらに別の態様は、
(a’)非ペプチジルポリマーの一端を免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドのうちのいずれか一方に共有結合により結合させてコンジュゲートを調製する工程であって、ここでは生理活性ポリペプチドと非ペプチジルポリマーとの反応モル比が1:1~1:30の範囲内であり、かつ免疫グロブリンFc領域と非ペプチジルポリマーとの反応モル比が1:1~1:20の範囲内であり、還元剤が1mM~100mMの範囲で含まれており、かつ当該反応を4.0~9.0のpH条件下、4.0℃~25℃の温度で行い、かつ免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの反応濃度が0.1mg/mL~100mg/mLの範囲内である工程、
(b’)工程(a’)で調製したコンジュゲートを単離し、かつ単離したコンジュゲートの非ペプチジルポリマーの他端を免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドのうちの他方に共有結合により結合させる工程であって、ここではコンジュゲートと免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドとの反応モル比が1:0.1~1:20の範囲内であり、還元剤が1mM~100mMの範囲で含まれており、かつ当該反応を4.0~9.0のpH条件下、4.0℃~25℃の温度で行い、かつ免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの反応濃度が0.1mg/mL~100mg/mLの範囲内である工程、および
(c’)非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合されている状態で共有結合させた生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域を本質的に含む工程(b’)で調製したタンパク質複合体を単離する工程
を含む、本タンパク質複合体を調製する方法を提供する。
【0080】
本発明のさらに別の具体的な実施形態は、90%以上のN末端選択性を有する本タンパク質複合体を調製するための方法を提供する。
【0081】
本発明のさらに別の態様は、生理活性ポリペプチドのインビボでの持続時間および安定性を向上させるための有効成分として本タンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。
【0082】
本発明の具体的な一実施形態は、90%以上の量で本タンパク質複合体を含む組成物を提供する。
【0083】
本発明のさらに別の態様は、本組成物の送達のための調製物を含む医薬品容器である。例示的な医薬品容器としては、注射器、シリンジ、バイアル、点滴ボトル、アンプルまたはカルプル(carpoule)、例えば針保護システムを備えたシリンジまたは注射ペン内にあるカルプルが挙げられる。一実施形態によれば、本発明は、内面を有する壁および内面を有するシールアセンブリを有する容器を含む注射器であって、当該壁およびシールアセンブリの内面は製剤が充填された閉鎖された無菌リザーバーを画定している注射器を提供する。
【0084】
注射器は、貯蔵状態ではシールアセンブリを部分的にのみ貫通して配置され、かつ送達状態ではシールアセンブリの内面を通って無菌リザーバーの中に配置される先端を有する清潔なシースのない硬い瓶針を含む流体送達システムも備えていてもよい。さらに注射器は瓶針を貯蔵状態から送達状態に移動させるように構成されたアクチュエータを備えていてもよい。一実施形態では、当該瓶の壁は硬い壁であっても柔らかい壁であってもよく、シールアセンブリはシールアセンブリの内面を画定する内面を有する柔らかい単一の壁であってもよい。柔らかい単一の壁は、開口部を横切って配置され、かつ当該瓶の壁に固定して取り付けられたセプタムを画定していてもよい。あるいは、当該瓶の壁は穴を画定していてもよく、単一の柔らかい壁はその穴に沿って移動可能な栓を画定していてもよい。そのような場合、当該瓶の壁はその栓に対向する閉鎖端およびその中にその栓が配置されている開放端を画定していてもよい。さらなる代替物として、当該瓶の壁は、穴の第1の端部と流体通信している開口部と共に穴を画定していてもよく、単一の柔らかい壁は開口部を横切って配置され、かつ当該瓶の壁に固定して取り付けられたセプタムを画定しており、当該瓶はその穴の第2の端部内に配置され、かつその穴に沿って移動可能な栓をさらに含む。
【0085】
本発明のさらに別の態様は、それを必要とする患者における神経障害を治療、改善または予防する方法に関する。そのような神経障害は慢性脊髄損傷、パーキンソン病、または脳性麻痺などの神経発達障害に関連していてもよい。本方法は、神経障害およびその管理に関連してそれを必要とする患者に治療的有効用量を投与することを含む。
【0086】
本発明のさらに別の態様は、骨髄移植に関する治療における上に記載されている本組成物の使用を提供する。本方法は、骨髄移植および幹細胞の動員に関連してそれを必要とする患者に治療的有効用量を投与することを含む。
【0087】
定義
本明細書で使用される「タンパク質複合体」または「複合体」という用語は、少なくとも1つの生理活性ポリペプチド、その両端に反応基を有する少なくとも1つの非ペプチジルポリマーおよび少なくとも1つの免疫グロブリンFc領域が共有結合により互いに結合されている構造を指す。さらに、生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域から選択される2つの分子のみが共有結合により互いに結合されている構造は、それを「複合体」と区別するために「コンジュゲート」と呼ぶ。
【0088】
本発明のタンパク質複合体は、PEGがその両端において修飾されたG-CSFおよび免疫グロブリンFc領域にそれぞれ反応基を介して共有結合により結合されているタンパク質複合体であってもよい。
【0089】
本明細書で使用される「生理活性ポリペプチド」、「生理活性タンパク質」、「活性タンパク質」または「タンパク質薬物」という用語は、インビボにおいて生理的事象に対していくつかの種類の拮抗活性を有するポリペプチドまたはタンパク質を指し、これらの用語は同義で使用することができる。
【0090】
本明細書で使用される「非ペプチジルポリマー」という用語は、ペプチド結合を除く任意の共有結合により互いに結合されている2つ以上の繰り返し単位を含む生体適合性ポリマーを指すが、それに限定されない。
【0091】
本明細書で使用される「免疫グロブリンFc領域」という用語は、重鎖および軽鎖の可変領域を除く免疫グロブリン分子の領域、すなわち免疫グロブリンの重鎖定常領域1(CH1)および軽鎖定常領域1(CL1)を指す。免疫グロブリンFc領域は重鎖定常領域におけるヒンジ領域をさらに含んでもよい。特に、本発明の免疫グロブリンFc領域はFc領域の一部または全てを含む断片であってもよく、本発明では免疫グロブリンFc領域は免疫グロブリン断片と同義で使用することができる。
【0092】
天然のFcは重鎖定常領域1のAsn297位に糖鎖を有するが、大腸菌由来の組換えFcはアグリコシル化形態として発現される。Fcからの糖鎖の除去により、重鎖定常領域1に対するFcγ受容体1、2および3ならびに補体(clq)の結合親和性が低下し、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性または補体依存性細胞毒性が減少または喪失する。
【0093】
本明細書で使用される「免疫グロブリン定常領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域、重鎖定常領域1(CHI)および軽鎖定常領域(CL)を除く重鎖定常領域2(CH2)および重鎖定常領域3(CH3)を含む(または重鎖定常領域4(CH4)を含む)Fc断片を指してもよく、重鎖定常領域にあるヒンジ領域をさらに含んでもよい。さらに、本発明の免疫グロブリン定常領域は、天然のタンパク質と実質的に同様またはそれよりも良好な生理的機能を有する限り、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域を除く重鎖定常領域1(CH1)および/または軽鎖定常領域(CL)を含むFc領域の一部または全てを含む拡張された免疫グロブリン定常領域であってもよい。
【0094】
一方、免疫グロブリン定常領域はヒトまたはウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物由来であってもよく、好ましくはヒト由来であってもよい。さらに免疫グロブリン定常領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgMあるいはそれらの組み合わせまたはそれらのハイブリッド由来、好ましくはヒト血液中でそれらのうち最も豊富であるIgGまたはIgM由来、最も好ましくはリガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが知られているIgG由来の定常領域から選択されてもよい。本発明では免疫グロブリンFc領域は、同じ由来のドメインの単鎖免疫グロブリンからなる二量体または多量体であってもよい。
【0095】
本明細書で使用される「組み合わせ」という用語は、二量体または多量体を形成するために同じ由来の単鎖免疫グロブリン定常領域(好ましくはFc領域)をコードするポリペプチドが異なる由来の単鎖ポリペプチドに結合されていることを意味する。すなわち、二量体または多量体はIgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD FcおよびIgE FcのFc断片からなる群から選択される2つ以上の断片から調製されていてもよい。
【0096】
本明細書で使用される「ハイブリッド」という用語は、異なる由来の2つ以上の免疫グロブリン定常領域をコードする配列が免疫グロブリン定常領域(好ましくはFc領域)の単鎖中に存在することを意味する。本発明では様々なハイブリッド形態が可能である。例えばハイブリッドドメインは、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE FcおよびIgD FcのCH1、CH2、CH3およびCH4からなる群から選択される1~4つのドメインからなっていてもよく、かつヒンジ領域をさらに含んでいてもよい。
【0097】
IgGはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブクラスに分けてもよく、本発明はそれらの組み合わせまたはハイブリッドを含んでもよい。IgG2およびIgG4サブクラスが好ましく、補体依存性細胞毒性(CDC)などのエフェクター機能を滅多に有しないIgG4のFc領域が最も好ましい。
【0098】
免疫グロブリン定常領域は、天然の形態と同程度であるかそれによりも多いまたは少ない程度にグリコシル化形態を有していてもよく、あるいは脱グリコシル化形態であってもよい。免疫グロブリン定常領域のグリコシル化または脱グリコシル化の増加または減少は典型的な方法、例えば化学的方法、酵素的方法または微生物を用いる遺伝子操作方法により達成してもよい。本明細書では脱グリコシル化する場合、免疫グロブリン定常領域に結合している補体(Clq)は有意に減少した状態になり、抗体依存性細胞毒性または補体依存性細胞毒性が減少または除去され、それによりインビボにおいて不必要な免疫応答を誘導しない。これに関連して、脱グリコシル化もしくはアグリコシル化免疫グロブリン定常領域は薬物担体という目的により一致している。従って免疫グロブリンFc領域は、より具体的にはヒトIgG4から誘導されたアグリコシル化Fc領域、すなわちヒトIgG4由来のアグリコシル化Fc領域であってもよい。ヒト由来のFc領域は、ヒトの体内において抗原として機能し、かつ抗原に対する新しい抗体の産生などの望ましくない免疫応答を引き起こす場合がある非ヒト由来のFc領域よりも好ましい。
【0099】
さらに本発明の免疫グロブリン定常領域は、天然のアミノ酸配列だけではなくその配列誘導体(突然変異体)も含む。アミノ酸配列誘導体は、それが1つ以上のアミノ酸残基の欠失、挿入、保存もしくは非保存置換またはそれらの組み合わせにより野生型アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有することを意味する。例えば結合のために重要であることが知られているIgG Fc中の214~238、297~299、318~322または327~331位にあるアミノ酸残基は、修飾のために好適な部位として使用してもよい。ジスルフィド結合を形成することができる部位を除去するか、天然のFcからいくつかのN末端アミノ酸を除去するか、あるいはメチオニンを天然のFcのN末端に付加することにより調製される誘導体などの様々な誘導体を使用してもよい。さらに補体結合部位、例えばClq結合部位またはADCC部位を除去してエフェクター機能を取り除いてもよい。免疫グロブリン定常領域の配列誘導体を調製する技術は、国際特許公報の国際公開第97/34631号および国際公開第96/32478号に開示されている。
【0100】
当該分子の活性を変化させないタンパク質もしくはペプチド分子におけるアミノ酸置換は当該技術分野でよく知られている(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,ニューヨーク,1979)。最も一般的な置換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Nal、Ala/GluおよびAsp/Gly間で両方向に生じる。任意にアミノ酸は、リン酸化、硫酸化、アクリル化(acrylation)、グリコシル化、メチル化、ファルネシル化、アセチル化またはアミド化などにより修飾されていてもよい。
【0101】
上記免疫グロブリン定常領域誘導体は、本発明の免疫グロブリン定常領域と同等の生物活性を有するが、熱、pHなどに対する免疫グロブリン定常領域の向上した構造的安定性を有する誘導体であってもよい。さらに免疫グロブリン定常領域は、ヒトまたはウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物から単離された天然の種類から得てもよく、あるいは形質転換された動物細胞または微生物から得られたそれらの組換え型または誘導体であってもよい。本明細書では、それらは全免疫グロブリンをヒトまたは動物生物から単離し、かつそれらをタンパク分解酵素で処理することにより天然の免疫グロブリンから得てもよい。パパインは天然の免疫グロブリンを消化してFabおよびFc領域にし、ペプシン処理によりpF’cおよびF(ab)2断片が生成される。これらの断片を例えばサイズ排除クロマトグラフィに供してFcまたはpF’cを単離してもよい。
【0102】
好ましくは、ヒト由来の免疫グロブリン定常領域は微生物から得られる組換え免疫グロブリン定常領域であってもよい。
【0103】
本発明のタンパク質複合体は、[生理活性ポリペプチド/非ペプチジルポリマー/免疫グロブリンFc領域]の単位構造の1つ以上を含んでいてもよく、ここでは全ての構成要素は共有結合により直線状に結合されていてもよい。非ペプチジルポリマーはその両端に反応基を有していてもよく、かつ生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域にそれぞれ反応基を介して共有結合により結合されている。すなわち、生理活性ポリペプチドおよび非ペプチジルポリマーの少なくとも1つのコンジュゲートは1つの免疫グロブリンFc領域に共有結合により結合されており、それにより免疫グロブリンFc領域によって媒介されている生理活性ポリペプチドの単量体、二量体または多量体を形成している。従って、インビボ活性および安定性の向上はより有効に達成することができる。
【0104】
非ペプチジルポリマーの両端にある反応基は、好ましくは反応性アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基およびスクシンイミド誘導体からなる群から選択される。スクシンイミド誘導体は、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチル、吉草酸スクシンイミジル、メチルブタン酸スクシンイミジル、メチルプロピオン酸スクシンイミジル、ブタン酸スクシンイミジル、プロピオン酸スクシンイミジル、N-ヒドロキシスクシンイミドまたは炭酸スクシンイミジルであってもよい。特に非ペプチジルポリマーが両端に反応性アルデヒド基を有する場合、それは最小の非特異的反応によりその端部の両方を生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンと結合させるのに有効である。アルデヒド結合による還元的アルキル化によって生成された最終生成物は、アミド結合により結合された場合よりもさらに安定である。
【0105】
本発明の非ペプチジルポリマーの両端にある反応基は互いに同じであっても異なっていてもよい。非ペプチドポリマーは両端にアルデヒド反応基を有していてもよく、あるいは一端にアルデヒド基および他端にマレイミド反応基または一端にアルデヒド基および他端にスクシンイミド反応基を有していてもよいが、それらに限定されない。
【0106】
例えば非ペプチドポリマーは、一端にマレイミド基および他端にアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を有していてもよい。また非ペプチドポリマーは、一端にスクシンイミジル基および他端にプロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を有していてもよい。その両端に反応性ヒドロキシ基を有するポリエチレングリコールを非ペプチジルポリマーとして使用する場合、ヒドロキシ基は公知の化学反応により様々な反応基に対して活性化されてもよく、あるいは修飾された反応基を有する市販されているポリエチレングリコールを本発明のタンパク質複合体を調製するために使用してもよい。
【0107】
生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域が非ペプチジルポリマーを介して結合されている場合、非ペプチジルポリマーの端部の両方のそれぞれが、免疫グロブリンFc領域のN末端および生理活性ポリペプチドのリジン残基、ヒスチジン残基またはシステイン残基のN末端(アミノ末端)、C末端(カルボキシ末端)または遊離反応基に結合してもよい。
【0108】
本明細書で使用される「N末端」という用語はペプチドのN末端を指し、ここは本発明の目的のために非ペプチジルポリマーを含むリンカーを結合させることができる部位である。N末端の例としては、N末端の遠位端にあるアミノ酸残基だけでなくN末端の近くにあるアミノ酸残基も挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、遠位端から1番目~20番目のアミノ酸残基を含めてもよい。
【0109】
本発明の非ペプチジルポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸)およびPLGA(ポリ乳酸-グリコール酸)などの生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、特にポリエチレングリコールであるが、それらに限定されない。当該技術分野でよく知られており、かつ当該技術分野の技量の範囲内で容易に調製されるその誘導体も本発明の非ペプチジルポリマーに含められる。非ペプチジルポリマーは1kDa~100kDa、特に1kDa~20kDaの範囲の分子量を有していてもよい。
【0110】
本発明の生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、増殖因子、転写因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質または受容体、細胞表面抗原、受容体拮抗薬およびそれらの誘導体または類似体などの様々な生理活性ポリペプチドによって例示することができる。
【0111】
具体的には、生理活性ポリペプチドとしては、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロンおよびインターフェロン受容体(例えば、インターフェロン-α、-βおよび-γ、可溶性1型インターフェロン受容体)、コロニー刺激因子、インターロイキン(例えば、インターロイキン-1、-2、-3、-4、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、-18、-19、-20、-21、-22、-23、-24、-25、-26、-27、-28、-29、-30など)およびインターロイキン受容体(例えばIL-1受容体、IL-4受容体など)、酵素(例えば、グルコセレブロシダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、α-ガラクトシダーゼ-A、アガルシダーゼα,β、α-L-イズロニダーゼ、ブチリルコリンエステラーゼ、キチナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、イミグルセラーゼ、リパーゼ、ウリカーゼ、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ、中性エンドペプチダーゼ、ミエロペルオキシダーゼなど)、インターロイキンおよびサイトカイン結合タンパク質(例えば、IL-18bp、TNF結合タンパク質など)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー阻害物質、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、形質転換増殖因子、α-1抗トリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質-E、エリスロポエチン、グリコシル化エリスロポエチン、アンジオポエチン、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IXおよびXIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、表皮増殖因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨増殖因子、骨刺激タンパク質、カルシトニン、インスリン、オキシントモジュリン、グルカゴン、グルカゴン誘導体、グルカゴン様ペプチド、エキセンディン(エキセンディン-4)、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子(例えば、神経成長因子、毛様体神経栄養因子、軸索形成因子-1、脳性ナトリウム利尿ペプチド、グリア細胞株由来神経栄養因子、ネトリン、好中球阻害因子、神経栄養因子、ニュールツリンなど)、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様増殖因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オータキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体(例えば、TNFR(P75)、TNFR(P55)、IL-1受容体、VEGF受容体、B細胞活性化因子受容体など)、受容体拮抗薬(例えば、ILl-Raなど)、細胞表面抗原(例えば、CD2、3、4、5、7、11a、11b、18、19、20、23、25、33、38、40、45、69など)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFd)ならびにウイルス由来ワクチン抗原が挙げられる。
【0112】
具体的には、本発明の生理活性ポリペプチドは顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチンまたはそれらの修飾型であってもよい。好ましい実施形態では、当該ポリペプチドはG-CSFである。
【0113】
本発明では、抗体断片は特異的な抗原に結合する能力を有するFab、Fab’、F(ab’)、FdまたはscFvであってもよく、好ましくはFab’である。Fab断片は軽鎖の可変領域(VL)および定常領域(CL)と重鎖の可変領域(VH)および第1の定常領域(CH1)とを含む。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシル末端にあるヒンジ領域からの1つ以上のシステイン残基を含むいくつかのアミノ酸残基の付加の点でFab断片とは異なる。Fd断片はVHおよびCH1ドメインのみからなる断片であり、F(ab’)2断片はジスルフィド結合または化学反応のいずれかによりFab’断片の2つの分子の結合により生成される。scFv断片は、VLおよびVHドメインのみがペプチドリンカーにより互いに結合されている単一のポリペプチド鎖である。
【0114】
さらに本発明のタンパク質複合体は、ウシの成長ホルモンまたはブタの成長ホルモンなどの動物成長ホルモンの長時間作用性タンパク質製剤およびインターフェロンなどの動物疾患の治療または予防のための長時間作用性タンパク質製剤の開発において使用してもよい。
【0115】
本発明の別の態様は本発明のタンパク質複合体を調製する方法を提供する。特に本発明は、(a)両端に反応基を有する少なくとも1つの非ペプチジルポリマー、少なくとも1つの生理活性ポリペプチドおよび少なくとも1つの免疫グロブリンFc領域を共有結合により結合させてタンパク質複合体を調製する工程、および(b)非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合されている状態で共有結合させた生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域を本質的に含む(a)で調製したタンパク質複合体を単離する工程を含む、位置特異的タンパク質複合体を調製する方法を提供する。
【0116】
本発明の免疫グロブリンFc領域は、二量体の形態またはホモ二量体もしくはヘテロ二量体の形態であってもよい。従って、本発明のタンパク質複合体を構成している免疫グロブリンFc領域は1つまたは2つ以上のN末端を含んでいてもよい。従って免疫グロブリンFc領域は、N末端を介して少なくとも1つの非ペプチジルポリマーに結合されていてもよい。特に本発明の免疫グロブリンFc領域はホモ二量体の形態であってもよく、従って免疫グロブリンFc領域のホモ二量体に含まれている2つのN末端を介して1つまたは2つの非ペプチジルポリマーに結合されている。この点に関しては、非ペプチジルポリマーはそれぞれ生理活性ポリペプチドに結合し、それにより本タンパク質複合体を形成してもよい。
【0117】
従って本発明のタンパク質複合体は、1つまたは2つ以上の非ペプチジルポリマー、1つまたは2つ以上の生理活性ポリペプチドおよび1つまたは2つ以上の免疫グロブリンFc領域を共有結合により結合させることにより調製してもよい。
【0118】
工程(a)では、3つの構成要素間の共有結合は連続的または同時に生じてもよい。例えば、生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域がそれぞれ非ペプチジルポリマーの両端に結合されている場合、生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域のいずれか一方を最初に非ペプチジルポリマーの一端に結合させてもよく、次いで他方を非ペプチジルポリマーの他端に結合させてもよい。この方法は、所望のタンパク質複合体以外の副生成物の生成が最小限に抑えられ、かつ本タンパク質複合体が高純度で調製されるという点で有利である。
【0119】
従って工程(a)は、
(i)免疫グロブリンFc領域の特異的部位または生理活性ポリペプチドを非ペプチジルポリマーの一端に共有結合により結合させること、
(ii)反応混合物からのコンジュゲートであって、免疫グロブリンFc領域の特異的部位または生理活性ポリペプチドを非ペプチジルポリマーに結合させることにより調製したコンジュゲートを均一に単離すること、
(iii)生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc領域の特異的部位を単離したコンジュゲートの非ペプチジルポリマーの他端に結合させてタンパク質複合体を生成すること
を含んでもよい。
【0120】
一方、本発明において工程(a)は、(a1)非ペプチジルポリマーの一端を免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドのうちのいずれか一方に共有結合により結合させてコンジュゲートを調製すること、および(a2)工程(a1)で調製したコンジュゲートを単離し、かつ単離したコンジュゲートの非ペプチジルポリマーの他端を生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域のうちの他方に共有結合により結合させること
を含む。
【0121】
具体的には、工程(a)は、(a1’)非ペプチジルポリマーの一端を免疫グロブリンFc領域に共有結合により結合させてコンジュゲートを調製すること、および(a2’)(a1’)で調製したコンジュゲートを単離し、かつ単離したコンジュゲートの非ペプチジルポリマーの他端を生理活性ポリペプチドに共有結合により結合させることを含んでもよい。
【0122】
あるいは工程(a)は、(a1’’)非ペプチジルポリマーの一端を生理活性ポリペプチドに共有結合により結合させてコンジュゲートを調製すること、および(a2’’)工程(a1’’)で調製したコンジュゲートを単離し、かつ単離したコンジュゲートの非ペプチジルポリマーの他端を免疫グロブリンFc領域に共有結合により結合させることを含んでもよい。
【0123】
本発明の工程(a1)(a1’)または(a1’’)では、生理活性ポリペプチドと非ペプチジルポリマーとの反応モル比は1:1~1:30の範囲であってもよく、かつ免疫グロブリンFc領域と非ペプチジルポリマーとの反応モル比は1:1~1:20の範囲であってもよい。
【0124】
具体的には工程(a1’)では、免疫グロブリンFc領域と非ペプチジルポリマーとの反応モル比は、1:1~1:20の範囲、特に1:1~1:15、1:1~1:10または1:1~1:4の範囲であってもよい。工程(a1’’)では、生理活性ポリペプチドと非ペプチジルポリマーとの反応モル比は1:1~1:30の範囲、特に1:1~1:15または1:1~1:10の範囲であってもよい。調製収率およびコストは反応モル比に応じて最適化してもよい。
【0125】
本発明では、工程(a1)、(a1)または(a1’’)は4.0~9.0のpH条件下で行ってもよく、工程(a1)、(a1’)または(a1’’)は4.0℃~25℃の温度で行ってもよく、かつ工程(a1)(a1’)または(a1’’)では、免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの反応濃度は0.1mg/mL~100mg/mLの範囲であってもよい。
【0126】
本発明の工程(a2)、(a2’)または(a2’’)では、コンジュゲートと免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドとの反応モル比は、1:0.1~1:20の範囲、特に1:0.2~1:10の範囲であってもよい。具体的には工程(a2’)では、コンジュゲートと生理活性ポリペプチドとの反応モル比は1:0.1~1:20の範囲であってもよく、かつ工程(a2’’)では、コンジュゲートと免疫グロブリンFc領域との反応モル比は1:0.1~1:20の範囲であってもよい。調製収率およびコストは反応モル比に応じて最適化してもよい。
【0127】
本発明では、工程(a2)、(a2’)または(a2’’)は4.0~9.0のpH条件下で行ってもよく、工程(a2)、(a2’)または(a2’’)は4.0℃~25℃の温度で行ってもよく、工程(a2)、(a2’)または(a2’’)では、免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの反応濃度は0.1mg/mL~100mg/mLの範囲であってもよい。
【0128】
一方、本発明の調製方法は、
(a’)非ペプチジルポリマーの一端を免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドのうちのいずれか一方に共有結合により結合させてコンジュゲートを調製する工程であって、生理活性ポリペプチドと非ペプチジルポリマーとの反応モル比は1:1~1:30の範囲内であり、免疫グロブリンFc領域と非ペプチジルポリマーとの反応モル比は1:1~1:20の範囲内であり、還元剤は1mM~100mMの範囲で含まれており、当該反応を4.0~9.0のpH条件下、4.0℃~25℃の温度で行い、かつ免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの反応濃度は0.1mg/mL~100mg/mLの範囲内である工程、
(b’)工程(a’)で調製したコンジュゲートを単離し、かつ単離したコンジュゲートの非ペプチジルポリマーの他端を免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドのうちの他方に共有結合により結合させる工程であって、コンジュゲートと免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドとの反応モル比は1:0.1~1:20の範囲内であり、還元剤は1mM~100mMの範囲で含まれており、当該反応を4.0~9.0のpH条件下、0℃~25℃の温度で行い、かつ免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの濃度は0.1mg/mL~100mg/mLの範囲内である工程、および
(c’)限定されるものではないが非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合されている状態で共有結合させた生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域を本質的に含む工程(b’)で調製したタンパク質複合体を単離する工程
を含む、位置特異的タンパク質複合体を調製する方法であってもよい。
【0129】
本発明の工程(a1)、工程(a1’)、工程(a1’’)、工程(a2)、工程(a2’)および工程(a2’’)における反応は必要であれば、反応に関与する非ペプチジルポリマーの両端にある反応基の種類を考慮して還元剤の存在下で行ってもよい。本発明の還元剤はシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)、水素化ホウ素ナトリウム、ホウ酸ジメチルアミンまたはホウ酸ピリジンであってもよい。この点に関しては、還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム)の濃度、反応溶液の温度およびpHならびに当該反応に関与している生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域の総濃度は、生成収率および純度の点で重要である。高純度の均質な複合体の生成を最大化するために、当該条件の様々な組み合わせが必要とされる。調製される生理活性ポリペプチドの特徴に従って様々な条件が可能であり、限定されるものではないが、還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム)は1mM~100mMの範囲で含まれていてもよく、反応溶液は0℃~25℃の温度および4.0~9.0のpH条件下にあってもよく、かつ反応タンパク質の濃度(当該反応時に含まれる免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドの濃度)は5mg/mL~100mg/mLの範囲であってもよい。
【0130】
一方、工程(a2)、工程(a2’)および工程(a2’’)におけるコンジュゲートの分離は必要であれば、分離したコンジュゲートのために必要とされる純度、疎水性、分子量および電荷などの特性を考慮してタンパク質分離で使用される一般的な方法から選択される方法によって行ってもよい。例えばこの分離は、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィまたはイオン交換クロマトグラフィなどの様々な公知の方法を適用して行ってもよく、必要であれば複数の異なる方法を組み合わせで使用して、より高い純度でコンジュゲートを精製する。
【0131】
調製される生理活性ポリペプチドの特徴に従って様々な条件が可能である。但し、非ペプチジルポリマーに結合されている免疫グロブリンFc領域または生理活性ポリペプチドコンジュゲートを分離するために、サイズ排除クロマトグラフィが一般に行われる。さらなるスケールアップおよび所望の位置以外の位置での非ペプチジルポリマーの結合によって生成される異性体または調製中に生成される少量の変性した形態の分離のために、アフィニティクロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィまたはイオン交換クロマトグラフィも使用してもよい。
【0132】
本発明では、工程(b)は必要であれば、最終的に高純度で複合体を精製するために疎水性、分子量および電荷などの特性を考慮して、タンパク質分離で使用される一般的な方法から選択される方法によって行ってもよい。例えばこの分離は、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィまたはイオン交換クロマトグラフィなどの様々な公知の方法を適用して行ってもよく、かつ必要であれば複数の異なる方法を組み合わせで使用して、より高い純度で複合体を精製する。生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよびFc定常領域からなる所望の複合体の特徴に従って様々な分離条件が可能である。但し、生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンFc領域がそれぞれ非ペプチジルポリマーの両端に結合されている複合体を分離するために、サイズ排除クロマトグラフィが一般に行われる。さらなるスケールアップならびに所望の位置以外の位置での生理活性ポリペプチドまたは免疫グロブリンFc領域と非ペプチジルポリマーとの結合によって生成される異性体もしくは副反応生成物または調製中に生成される少量の変性した形態、未反応の生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域の有効な分離のために、疎水性クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィまたはアフィニティクロマトグラフィを組み合わせで使用してもよい。特に、疎水性クロマトグラフィおよびイオン交換クロマトグラフィを組み合わせで使用してもよく、複数の疎水性クロマトグラフィまたは複数のイオン交換クロマトグラフィも可能である。調製される複合体に従って、イオン交換クロマトグラフィまたは疎水性クロマトグラフィを単独で使用してもよい。
【0133】
本発明では、イオン交換クロマトグラフィは、帯電したタンパク質を帯電したイオン樹脂固定化クロマトグラフィカラムに特定のpHで通してタンパク質の移動速度の差によりタンパク質を分離することによりタンパク質を分離するものであり、それは陰イオン交換クロマトグラフィまたは陽イオン交換クロマトグラフィであってもよい。
【0134】
陰イオン交換クロマトグラフィは陽イオン樹脂を使用するものであり、対応する陰イオン交換クロマトグラフィを構成している樹脂の官能基は、第四級アンモニウム(Q)、第4級アミノエチル(QAE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ポリエチレンアミン(PEI)、ジメチルアミノメチル(DMAE)およびトリメチルアミノエチル(TMAE)からなる群から選択されるいずれか1つであってもよいが、それらに限定されない。
【0135】
さらに、陽イオン交換クロマトグラフィは陰イオン樹脂を使用ものであり、対応する陽イオン交換クロマトグラフィを構成している樹脂の官能基はメチルスルホン酸(S)、スルホプロピル(SP)、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)およびポリアスパラギン酸からなる群から選択されるいずれか1つであってもよいが、それらに限定されない。
【0136】
本発明では、疎水性クロマトグラフィを構成している樹脂の官能基はフェニル、オクチル、(イソ)プロピル、ブチルおよびエチルからなる群から選択されるいずれか1つであってもよいが、それらに限定されない。
【0137】
本発明では、サイズ排除クロマトグラフィを構成している樹脂の官能基はSuperdex、Sephacryl、SuperposeおよびSephadexからなる群から選択されるいずれか1つであってもよいが、それらに限定されない。
【0138】
さらに本発明におけるアフィニティクロマトグラフィは、リガンドが固定化されている樹脂においてタンパク質とそのタンパク質と相互作用することができるリガンドとの相互作用によって生じるタンパク質の移動速度の差によってタンパク質を分離するものである。アフィニティクロマトグラフィを構成している樹脂の官能基は、タンパク質A、ヘパリン、ブルー、ベンズアミジン、金属イオン(コバルト、ニッケルおよび銅)、および非ペプチジルポリマーの両端が免疫グロブリンFc領域および生理活性ポリペプチドにそれぞれ結合されているタンパク質複合体の構成要素の全体および一部に対する抗体からなる群から選択されるいずれか1つであってもよいが、それらに限定されない。
【0139】
本発明では工程(b)は、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域が免疫グロブリンFc領域のN末端を介して互いに結合されているタンパク質複合体を単離するものである。
【0140】
本発明のさらに別の態様は、90%以上のN末端選択性を有するタンパク質複合体を調製するための方法を提供する。具体的には、本発明の方法によって調製されるタンパク質複合体は、非ペプチジルポリマーの一端を、限定されるものではないが90%以上、より詳細には95%以上、さらにより詳細には98%以上、なおさらにより詳細には99%以上のN末端選択性で免疫グロブリンFc領域のN末端に結合させることができるものであればよい。
【0141】
本明細書で使用される「90%以上のN末端選択性で結合させる」という用語は、本発明に係る一連の反応によって得られたタンパク質複合体画分の精製により調製されるタンパク質複合体の90%以上において、非ペプチジルポリマーが位置特異的にFc領域のN末端に結合されていることを意味する。本明細書で使用される「90%以上」という用語はv/v、w/wおよびピーク/ピークを指してもよいが、特定の単位に限定されない。位置特異的にFc領域のN末端に結合された非ペプチジルポリマーを含むタンパク質複合体の収率は、反応条件、非ペプチジルポリマーの反応器などによって異なってもよい。
【0142】
本発明の実施例では、90%以上のN末端選択性を有するタンパク質複合体を、様々な生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよびFc複合体の調製により本発明に係る方法によって調製することができることを確認した。
【0143】
本医薬組成物は、限定されるものではないが90%以上、より詳細には95%以上、さらにより詳細には98%以上、なおさらにより詳細には99%以上の量で生理活性ポリペプチド-非ペプチジルポリマー-免疫グロブリンFc領域のN末端を含むタンパク質複合体を含んでいてもよい。本明細書で使用される「90%以上」という用語はv/v、w/wおよびピーク/ピークを指してもよいが、特定の単位に限定されない。
【0144】
本医薬組成物は薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでいてもよい。
【0145】
本発明の医薬組成物は経口、経皮、皮下、静脈内および筋肉内経路などの様々な経路を介して、好ましくは注射製剤の形態で投与してもよい。さらに本発明の医薬組成物は、哺乳類へのその投与後に有効成分の速放、持続放出または遅延放出を提供するために当該技術分野で知られている方法によって製剤化してもよい。当該製剤は錠剤、丸剤、粉末、小袋、エリキシル剤、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル、軟もしくは硬ゼラチンカプセル、無菌注射溶液または無菌粉末であってもよい。好適な担体、賦形剤および希釈液の例としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油が挙げられる。本医薬組成物は充填剤、抗凝固剤、滑沢剤、湿潤剤、着香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含んでいてもよい。
【0146】
本発明のタンパク質複合体の実際の投与用量は、治療される疾患の種類、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度ならびに有効成分としての生理活性ポリペプチドの種類などのいくつかの関連因子によって決定してもよい。本発明のタンパク質複合体は優れた血中持続時間およびインビボ効力を有するので、本発明のタンパク質複合体を含むペプチド薬物の投与用量および頻度を著しく減少させることができる。
【0147】
本発明のさらに別の態様は、90%以上の量で上記方法に従って調製されるタンパク質複合体を含むタンパク質複合体の集団を提供する。本明細書で使用される「複合体の集団」および「集団」という用語は同義で使用することができ、非ペプチジルポリマーがFc領域のN末端に結合されているタンパク質複合体および/または非ペプチジルポリマーがFc領域のN末端以外の領域に結合されているタンパク質複合体を含むタンパク質複合体群を指す。
【0148】
当該集団は、非ペプチジルポリマーがFc領域のN末端に結合されているタンパク質複合体または非ペプチジルポリマーがFc領域のN末端以外の領域に結合されているタンパク質複合体のみを含んでいてもよい。具体的には、当該集団に含まれている非ペプチジルポリマーがFc領域のN末端以外の領域に結合されているタンパク質複合体の割合は90%以上、より詳細には95%以上、さらにより詳細には98%以上、なおさらにより詳細には99%以上であってもよいが、それらに限定されない。本明細書で使用される「90%以上」という用語はv/v、w/wおよびピーク/ピークを指してもよいが、特定の単位に限定されない。
【0149】
本発明の目的のために当該集団は、不純物、未反応物質などをその調製されるタンパク質複合体から除去することにより、非ペプチジルポリマーがFc領域のN末端以外の領域に結合されているタンパク質複合体を増加した割合で含む集団を指してもよい。さらに当該集団は、限定されるものではないが90%以上のN末端選択性を有するタンパク質複合体を調製するための方法によって調製されたものを指してもよい。当該集団は本発明の方法によって効率的に精製してもよい。
【0150】
本発明は特に、非ペプチジルポリマーを介して免疫グロブリンFc領域に共有結合させた修飾されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG-CSF)を含む治療的有効量のタンパク質複合体を患者に投与することによる、患者の白血球生成、すなわちその数の上昇を必要としているか幹細胞生成を増加させることを必要としている、それを必要とする患者の予防、軽減または治療における上記タンパク質複合体の使用であって、非ペプチジルポリマーが免疫グロブリンFc領域のN末端に部位特異的に結合されており、かつ修飾されたhG-CSFがCys17およびPro65のうちの少なくとも1つに置換を含む上記タンパク質複合体の使用に関する。そのような方法論は、ドセタキセル、ドキソルビシン、シクロホスファミド(TAC)、ドーズ・デンスドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)(その後の週1回もしくは週2回のパクリタキセルを含む場合と含まない場合)およびドセタキセル+シクロホスファミド(TC)を含む化学療法剤またはレジメンとの組み合わせであってもそうでなくもよい。それにも関わらず、本発明に記載されている方法論は、そのようなレジメンを受けている患者に優れた臨床および副作用結果を与える。好ましい実施形態では、エフラペグラスチムを13.2mg/0.6mL(3.6mgのG-CSFを含有)の一定用量で投与する。一実施形態では、TCを各サイクルの1日目に静脈内(IV)に投与する。従ってドセタキセルを75mg/mでIV注入により投与し、かつ(ii)シクロホスファミドを600mg/mでIV注入により投与する。各治療サイクルは21日であり、最大4サイクルの化学療法を行う。あらゆるサイクルの1日目(前のサイクルの22日目)にフルドーズ化学療法を開始するために、患者はANC≧1.5×10/Lおよび血小板数≧100×10/Lを示さなければならない。他の実施形態では、各サイクルの2日目、すなわちTC化学療法から約24時間(±2時間)後にエフラペグラスチムを投与してもよい。
【0151】
ここに提供されている実施例は単に例示のためのものであり、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例
【0152】
実施例1:インターフェロンα(IFNα)-PEG-免疫グロブリンFcのN末端領域の複合体の調製
【0153】
1-1 IFNα-PEGコンジュゲートの調製
3.4kDaの分子量およびその両端にアルデヒド反応基を有するポリエチレングリコール(PEG)であるALD-PEG-ALD(IDB社、韓国)を100mMのリン酸緩衝液に溶解した5mg/mLのヒトインターフェロンα-2b(hIFNα-2b、分子量:19kDa)に1:5~1:10のhIFNα:PEGのモル比で添加した。そこに還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN、Sigma社)を20mMの最終濃度で添加し、ゆっくり撹拌しながら4℃~8℃で約1時間反応させた。PEGがインターフェロンαのアミノ末端に選択的に結合されており、かつPEGおよびインターフェロンαが1:1の比で互いに結合されているコンジュゲートを得るために、反応混合物をSP HP(GE healthcare社、米国)陰イオン交換クロマトグラフィに供して高純度でIFNα-PEGコンジュゲートを精製した。
【0154】
1-2 IFNα-PEG-Fc複合体の調製
実施例1-1で精製したIFNα-PEGコンジュゲートを免疫グロブリンFcのN末端プロリン残基に結合させるために、免疫グロブリンFc断片を1:1~1:4のIFNα-PEGコンジュゲート:免疫グロブリンFcのモル比で添加して反応させた。反応溶液を100mMのリン酸緩衝液(pH5.5~6.5)として調製し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN、Sigma社)を20mM~50mMの最終濃度で還元剤として添加した。それらをゆっくり撹拌しながら4℃~8℃で約12時間~16時間反応させた。
【0155】
1-3 IFNα-PEG-Fc複合体の単離および精製
実施例1-2の結合反応の後に未反応物質および副生成物を除去し、かつこのようにして生成したIFNα-PEG-Fcタンパク質複合体を精製するために、反応混合物を10mMのTris(pH7.5)に緩衝液交換し、次いでSource Q(GE healthcare社、米国)陰イオン交換クロマトグラフィカラムに通して未反応Fcを除去してIFNα-PEG-Fcタンパク質複合体画分を得た。詳細には、反応溶液を10mMのTris(pH7.5)で平衡化させたSource Qカラムに注加し、このカラムを50mMの塩化ナトリウム(NaCl)を含有する20mMのTris(pH7.5)緩衝液を用いるイソクラティック溶媒洗浄に供して不純物を除去した。次いで、IFNα-PEG-Fcタンパク質複合体を150mMの塩化ナトリウム(NaCl)を含有する緩衝液の濃度勾配により溶離した。得られたIFNα-PEG-Fcタンパク質複合体画分中には少量の未反応Fcおよびインターフェロンα二量体が不純物として存在していた。それらの不純物を除去するために、Source iso(GE healthcare社、米国)疎水性クロマトグラフィをさらに行った。詳細には、Source iso(GE healthcare社、米国)を約1.3Mの硫酸アンモニウムを含有する20mMのリン酸カリウム(pH6.0)緩衝液で平衡化させ、次いでそこに精製したIFNα-PEG-Fcタンパク質複合体画分を注加した。最後に、高純度IFNα-PEG-Fcタンパク質複合体を20mMのリン酸カリウム(pH6.0)緩衝液の直線濃度勾配により精製した。調製したIFNα-PEG-Fcタンパク質複合体のFc領域のN末端選択性をペプチドマッピングにより調べ、その選択性が90%以上であることが分かった。
【0156】
実施例2:ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)-PEG-Fc複合体の調製
【0157】
天然のG-CSFの17および65位のアミノ酸をセリンに置き換えて調製した誘導体(17,65-G-CSF)を用いて、17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体を調製し、次いで精製した。
【0158】
2-1 17,65SG-CSF-PEGコンジュゲートの調製
3.4kDaの分子量およびその両端にアルデヒド反応基を有するポリエチレングリコール(PEG)であるALD-PEG-ALD(IDB社、韓国)を100mMのリン酸緩衝液に溶解した5mg/mLの17,65S-G-CSF(分子量:18kDa)に1:5~1:10のG-CSF:PEGのモル比で添加した。そこに還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN、Sigma社)を20mMの最終濃度で添加し、ゆっくり撹拌しながら4℃~8℃で約1時間反応させた。PEGがヒト顆粒球コロニー刺激因子のアミノ末端に選択的に結合されており、かつPEGおよびG-CSFが1:1の比で互いに結合されているコンジュゲートを得るために、反応混合物をSP HP(GE healthcare社、米国)陽イオン交換クロマトグラフィに供して、高純度で17,65SG-CSF-PEGコンジュゲートを精製した。
【0159】
2-2 17,65G-CSF-PEG-Fc複合体の調製
実施例3-1で精製した17,65G-CSF-PEGコンジュゲートを免疫グロブリンFcのN末端に結合させるために、免疫グロブリンFc断片を1:1~1:4の17,65Ser-G-CSF-PEGコンジュゲート:免疫グロブリンFcのモル比で添加して反応させた。反応溶液を100mMのリン酸緩衝液(pH5.5~6.5)として調製し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3、Sigma社)を20mMの最終濃度で還元剤として添加した。これらをゆっくり撹拌しながら4℃~8℃反応させた。
【0160】
2-3 17,65Ser-G-CSF-PEG-Fc(または17,65SG-CSF-PEG-Fc)複合体の単離および精製
実施例3-2の結合反応後に未反応物質および副生成物を除去し、かつこのようにして生成した17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体を精製するために、反応混合物を2MのNaClを含有する10mMのTris(pH8.0)に緩衝液交換し、次いでSource Phenylカラムに通した。不純物を除去するために、17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体を20mMのTris(pH8.0)緩衝液の濃度勾配により精製した。得られた17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体画分中には少量の未反応免疫グロブリンFcおよび17,65G-CSF二量体が不純物として存在していた。それらの不純物を除去するために、Q HP(GE healthcare社、米国)陰イオンクロマトグラフィをさらに行った。Q HP(GE healthcare社、米国)を20mMのTris(pH8.0)緩衝液で平衡化させ、次いでそこに精製した17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体画分を注加した。最後に高純度17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体を、1Mの塩化ナトリウムを含有する20mMのTris(pH8.0)緩衝液の直線濃度勾配により精製した。調製した17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体のFc領域のN末端選択性をペプチドマッピングにより調べ、その選択性が90%以上であることが分かった。
【0161】
実施例3:異なる反応基を有するPEGを用いたタンパク質複合体の調製
【0162】
3-1 17,65SG-CSF-PEGコンジュゲートの調製
3.4kDaの分子量およびその両端にα-メチルブタン酸スクシンイミジル(SMB)反応基を有するポリエチレングリコール(PEG)であるSMB-PEG-SMB(Nektar社、米国)を、20mMのリン酸緩衝液(pH8.0)に溶解した10mg/mLの17,65SG-CSF(分子量18kDa)に1:3のG-CSF:PEGのモル比で添加し、ゆっくりと撹拌しながら室温で約30分間反応させた。PEGが17,65SG-CSFのアミノ末端に選択的に結合されており、かつPEGおよび17,65SG-CSFが1:1の比で互いに結合されているコンジュゲートを得るために、反応混合物をSP HP(GE healthcare社、米国)陽イオン交換クロマトグラフィに供した。
【0163】
3-2 17,65SG-CSF-PEG-Fc複合体の調製
実施例7-1において精製した17,65SG-CSF-PEGコンジュゲートを免疫グロブリンFcのN末端以外の領域に結合させるために、免疫グロブリンFc断片を1:4~1:8の17,65SG-CSF-PEGコンジュゲート:免疫グロブリンFcのモル比で添加して反応させた。これらを20mMのリン酸緩衝液(pH5.5~6.5)中でゆっくりと撹拌しながら室温で約2時間反応させた。
【0164】
3-3 17,65SG-CSF-PEG-Fc複合体の単離および精製
実施例7-2の結合反応後に未反応物質および副生成物を除去し、かつこのようにして生成した17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体を精製するために、反応混合物をQ HP(GE healthcare社、米国)陰イオン交換クロマトグラフィカラムに通し、このようにして未結合Fcを除去し、17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体画分を得た。この反応溶液を20mMのTris(pH8.0)緩衝液で平衡化させたQ HPカラムに注加し、17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体を1Mの塩化ナトリウム(NaCl)を含有する緩衝液の濃度勾配により精製した。得られた17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体画分中には少量の未反応の免疫グロブリンFcおよび17,65SG-CSF二量体が不純物として存在していた。これらの不純物を除去するために、Source iso(GE healthcare社、米国)疎水性クロマトグラフィをさらに行った。最後にSource iso(GE healthcare社、米国)を用いて、高純度17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体を1.2Mの硫酸アンモニウムを含有する50mMのTris(pH7.5)緩衝液の直線濃度勾配により精製した。調製した17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体のFc領域のN末端選択性をペプチドマッピングにより調べ、その選択性が90%以上であることが分かった。
【0165】
実施例4:異なる反応基を有するPEGを用いたタンパク質複合体の調製
【0166】
本発明者らによって以前に提出された韓国特許出願第10-2012-0111537号のFacVII誘導体であるFacVII-ATKAVCを用いて、FacVII-ATKAVC-PEG-Fc複合体を調製した。
【0167】
4-1 PEG-Fc複合体の単離および精製
最初に、マレイミド-10kDaのPEG-アルデヒド(NOF社、日本)のアルデヒド反応基を免疫グロブリンFc断片のN末端に結合させるために、免疫グロブリンFc領域およびマレイミド-10kDaのPEG-アルデヒドを100mMのリン酸緩衝液(pH5.5~6.5)中で1:1のモル比で混合し、そこに還元剤である20mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3、Sigma社)を10mg/mLのタンパク質濃度で添加した。それらを低い温度(4℃~8℃)で約2時間反応させた。モノペグ化免疫グロブリンFc断片(マレイミド-10kDaのPEG-Fc)を得るために、Source Q(GE healthcare社、米国)陰イオンクロマトグラフィを行い、20mMのトリス緩衝液(pH7.5)中の塩化ナトリウムの濃度勾配により溶離を行った。
【0168】
4-2 FacVII-ATKAVC-PEG-Fc複合体の調製
C末端を還元するために0.5mM~2mMのトリフェニルホスフィン-3,3’,3’’-トリスルホン酸トリナトリウム塩水和物を還元剤として添加して、FacVII-ATKAVCを10mMのグリシルグリシン緩衝液(pH5.5)中、室温で約2時間反応させた。C末端が還元されたFacVII-ATKAVCおよびモノペグ化免疫グロブリンFc断片(マレイミド-10kDaのPEG-Fc)を1:4~1:20のモル比で混合し、50mMのトリス緩衝液(pH7.5)中に1mg/mL~2mg/mLの総タンパク質濃度でこれらを室温で約2時間反応させた。
【0169】
4-3 FacVII-ATKAVC-PEG-Fc複合体の単離および精製
実施例8-2の反応溶液をSource Q陰イオンクロマトグラフィに供し、FacVII-ATKAVC-10kDaのPEG-Fc複合体を20mMのトリス緩衝液(pH7.5)中の塩化ナトリウムの濃度勾配により溶離した。FacVII-ATKAVC-PEG-Fc複合体のFacVIIを活性化させるために、この反応は0.1MのTris-HC1緩衝液(pH8.0)中で約4mg/mLのFacVIIの条件下、低温(4℃~8℃)で約18時間行った。最後に、高純度FacVIIa-ATKAVC-PEG-Fcを10mMのグリシルグリシン緩衝液(pH5.5)中にSuperdex200を用いるサイズ排除クロマトグラフィ(GE healthcare社、米国)により精製した。調製したFacVIIa-ATKAVC-PEG-Fcタンパク質複合体のFc領域のN末端選択性をペプチドマッピングにより調べ、その選択性が90%以上であることが分かった。
【0170】
実施例5:異なる分子量を有するPEGを用いたタンパク質複合体の調製
【0171】
実施例5-2と同じように、10kDaの分子量およびその両端にアルデヒド反応基を有するポリエチレングリコールであるALD-PEG-ALD(Nektar社、米国)を使用してインスリン-10kDaのPEGコンジュゲートを精製した。精製したインスリン-10kDaのPEGコンジュゲートを約5mg/mLの濃度まで濃縮し、次いでこれを使用して実施例2-3と同じようにインスリン-10kDaのPEG-Fcタンパク質複合体を調製して精製した。
【0172】
実施例6:タンパク質複合体の純度の評価
【0173】
6-1 タンパク質複合体の識別
上記実施例で調製したタンパク質複合体を、4%~20%勾配ゲルおよび12%ゲルを用いる非還元SDS-PAGEにより分析した。免疫グロブリンFcおよび生理活性ポリペプチドに対する抗体を用いた個々のタンパク質複合体のSDS-PAGE分析およびウェスタンブロット分析を行った。図1に示すように、カップリング反応によりIFNα-PEG-Fc(A)、hGH-PEG-Fc(B)、17,65SG-CSF-PEG-Fc(C)、インスリン-PEG-Fc(D)、EPO-PEG-Fc(E)、CA-エキセンディン-4-PEG-Fc(F)およびFacVII-PEG-Fc(G)の生成に成功した。
【0174】
6-2 タンパク質複合体の純度の評価
上記実施例で調製したタンパク質複合体、すなわちIFNα-PEG-Fc(A)、hGH-PEG-Fc(B)、17,65SG-CSF-PEG-Fc(C)、インスリン-PEG-Fc(D)、EPO-PEG-Fc(E)およびCA-エキセンディン-4-PEG-Fc(F)をHPLCを用いて、サイズ排除クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィまたはイオン交換クロマトグラフィにそれぞれ供した。それらは各分析において95%以上の高純度に対応する単一のピークを示した。
【0175】
6-3 タンパク質複合体の部位選択性の調査
実施例で調製したタンパク質複合体、すなわちIFNα-PEG-Fc(A)、hGH-PEG-Fc(B)、17,65SG-CSF-PEG-Fc(C)、インスリン-PEG-Fc(D)およびEPO-PEG-Fc(E)をそれぞれプロテアーゼを用いるペプチドマッピング分析(逆相クロマトグラフィ)に供した。90%以上の高い選択性で免疫グロブリンFc領域のN末端を介して結合されたタンパク質複合体が調製されたことを確認した。
【0176】
実施例7:Fc結合位置に応じた複合体の有効性の比較
実施例で調製したタンパク質複合体、すなわちCA-エキセンディン-4-PEG-Fc、17,65SG-CSF-PEG-FcおよびEPO-PEG-Fcをそれぞれインビトロおよびインビボ有効性試験に供した。以下の表に示すように、FcのN末端(プロリン)への結合は他の領域(例えばリジン)への結合よりも良好な有効性を示した。
【表1】
【0177】
表1に示すように、CA-エキセンディン-PEG-Fc位置異性体間のインビトロ活性の比較により、免疫グロブリンFc断片のN末端への特異的結合により調製した本発明のCA-エキセンディン-PEG-Fc複合体が免疫グロブリンFc領域の別の位置への結合により調製したCA-エキセンディン-PEG-Fc複合体よりも6倍高い効力を有することが分かった。
【表2】
【0178】
表2に示すように、17,65SG-CSF-(N末端)-PEG-(N末端)Fc-実験群S-G-CSF-PEG-Fc位置異性体間のインビトロ活性の比較により、免疫グロブリンFc断片のN末端への特異的結合により調製した本発明の17,65SG-CSF-(N末端)-PEG-(N末端)Fc-実験群S-G-CSF-PEG-Fc複合体が、免疫グロブリンFc領域の別の位置への結合により調製した17,65SG-CSF-(N末端)-PEG-(N末端)Fc-実験群S-G-CSF-PEG-Fc複合体と比較して約67%上昇した力価を有することが分かった。
【0179】
一方、本発明のタンパク質複合体、特にEPO-PEG-Fc位置異性体のインビボ活性を調べるために正常赤血球マウスアッセイを行って、正常赤血球マウスへのEPO-PEG-Fcの皮下注射後に網状赤血球レベルを測定した。
【表3】
【0180】
表3に示すように、EPO-PEG-Fc位置異性体間のインビボ活性の比較により、免疫グロブリンFc断片のN末端への特異的結合により調製した本発明のEPO-PEG-Fc複合体が、免疫グロブリンFc領域の別の位置への結合により調製したEPO-PEG-Fc複合体と比較して約40%上昇した力価を有することが分かった。
【0181】
これらの結果は、生理活性ポリペプチド、非ペプチジルポリマーおよび免疫グロブリンFc領域を含むタンパク質複合体を結合部位として免疫グロブリンFc断片の特異的部位を用いて調製した場合に、当該タンパク質複合体が生理活性ポリペプチドの向上したインビボ活性を示すことを示唆している。
【0182】
実施例8:ドセタキセルおよびシクロホスファミド(TC)を受けている乳癌患者における化学療法誘発性好中球減少症の管理におけるペグフィルグラスチム(PEGFILGRASTIM)に対する17,65SG-CSF-PEG-Fcタンパク質複合体(エフラペグラスチム)の無作為化ヒト臨床試験
【0183】
ドセタキセルおよびシクロホスファミド(TC)によるアジュバントもしくはネオアジュバント化学療法の候補である乳癌を有する患者における一定用量のエフラペグラスチム(13.2mg/0.6mL、3.6mgのGCSF当量)の有効性および安全性を評価するために、406人の患者において非盲検の実薬対照ヒト研究を行った。
【0184】
適格な患者を以下の2つの治療群、すなわち(a)エフラペグラスチム群:エフラペグラスチム13.2mg/0.6mL(3.6mgのG-CSFを含有)の一定用量、および(b)ペグフィルグラスチム群:ペグフィルグラスチム6mg/0.6mL(6.0mgのG-CSFを含有)の一定用量に1:1で無作為化した。従って、TCを各サイクルの1日目に静脈内に(IV)投与し、すなわち(i)実施医療機関の標準治療に従ってドセタキセルを75mg/mでIV注入し、(ii)実施医療機関の標準治療に従ってシクロホスファミドを600mg/mでIV注入した。各治療サイクルは21日間であり、最大で4サイクルの化学療法を行った。任意のサイクルの1日目(前のサイクルの22日目)にフルドーズ化学療法を開始するために、患者はANC≧1.5×10/Lおよび血小板数≧100×10/Lを有していなければならない。
【0185】
エフラペグラスチムまたはペグフィルグラスチムを各サイクルの2日目、すなわちTC化学療法から約24時間(±2時間)後に投与した。ペグフィルグラスチムを製造業者の処方情報(化学療法サイクルごとに皮下に6mgを1回)に従って投与するものとした。
【0186】
全ての組み入れおよび除外基準を満たしている患者をエフラペグラスチム群またはペグフィルグラスチム群のいずれかに無作為化し、研究治療(TC)およびその後のエフラペグラスチムまたはペグフィルグラスチムのいずれかによる24(±2)時間の治療を4サイクルで行った。研究治療薬の最後の投与から35(±5)日目に、治療終了時(EOT)来院を行った。サイクル1の間に、化学療法前の1日目および次いで4日目から15日目まで、または好中球減少症から回復するまで毎日1回CBC試料を採取した。サイクル2~4では、1日目の投与前および次いで4、7、10および15日目(各採取で±1日)にCBC試料を採取した。治療終了時来院の際にもCBCを採取した。サイクル1において2日目、4日目および5日目、次いでサイクル3において2日目、4日目および7日目に、集団PKのためにスパースPK試料を採取した。各サイクルにおいて化学療法投与前、治療終了時ならびに6および12ヶ月目に免疫原性試料を採取した(長期安全性)。
【0187】
研究薬物の少なくとも1回の投与を受け、かつ当該研究を中断しなかった患者は、研究治療の最後の投与後に長期安全性について追跡調査している。長期安全性は、3ヶ月目および9ヶ月目の電話による有害事象(AE)評価と6ヶ月目および12ヶ月目のAE評価および免疫原性採血のための来院とを含んでいた。サイクル1におけるDSNは、深刻な好中球減少症の投与後日数として定める。
【0188】
閾値未満のANCの最初の発症から深刻な好中球減少症(ANC<0.5×10/L)の投与後日数として定められたサイクル1における深刻な好中球減少症(DSN)の持続期間の主要評価項目のために有効性分析を行った。それらの結果から、ペグフィルグラスチム群における0.35(±0.68)日の平均DSNと比較して、エフラペグラスチム群の平均DSNは0.20(±0.50)日であることが分かった。エフラペグラスチム群とペグフィルグラスチム群との平均DSNの差は-0.15日であり、対応する95%CIは統計分析計画において指定されているようなパーセンタイル法を用いて(-0.264、-0.032)であった。主要評価項目のために事前に指定された基準を用いて、ペグフィルグラスチム群に対するエフラペグラスチム群は、ペグフィルグラスチム(95%CIの上限<0.62日、p<0.0001)よりも劣らない(良好または同じ位に有効な)DSNを提供することが実証された。これらの結果は、サイクル1におけるペグフィルグラスチム(95%CIの上限<0、p=0.038)を超えるエフラペグラスチムの統計学的優位性も実証し、これは深刻な好中球減少の発生率がエフラペグラスチム群において有意により低いことを示している(図2および図3)。一方、有害事象の発生率は治療群の間でほぼ同等であり、そのほとんどが化学療法(TC)投与に関連しているとみなした。
【0189】
本明細書において提供されている実施例は、生理活性ポリペプチドのインビボでの持続時間を引き延ばし、かつ同時にインビボ活性(効力)を増加または維持するためのPEG部分を介して免疫グロブリンFc領域に結合されたG-CSFタンパク質複合体の優位性を支持している。
【0190】
上記記載に基づいて、本発明はその技術的趣旨または必須の特性を変えることなく異なる特定の形態で実施できることが当業者によって理解されるであろう。従って当然のことながら、上記実施形態は限定的なものではなく、全ての態様において例示的なものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に先行する記載ではなく添付の特許請求の範囲によって定められ、従って特許請求の範囲の境界および限界に含まれる全ての変形および修正またはそのような境界および限界の均等物は特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。

図1A
図1B
図2
図3
【国際調査報告】