(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/135 20210101AFI20220727BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20220727BHJP
A61M 60/414 20210101ALI20220727BHJP
A61M 60/804 20210101ALI20220727BHJP
A61M 60/81 20210101ALI20220727BHJP
A61M 60/531 20210101ALI20220727BHJP
A61M 60/546 20210101ALI20220727BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20220727BHJP
【FI】
A61M60/135
A61M60/237
A61M60/414
A61M60/804
A61M60/81
A61M60/531
A61M60/546
A61M25/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563728
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2020054759
(87)【国際公開番号】W WO2020234785
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515250945
【氏名又は名称】マジェンタ・メディカル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フリードランド,オリ
(72)【発明者】
【氏名】ジポリ,ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】スディン,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイミー,アイレット
(72)【発明者】
【氏名】シュワンメンタル,エフド
(72)【発明者】
【氏名】トゥヴァル,ヨシ
(72)【発明者】
【氏名】チュン,タク ジー
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077BB10
4C077CC03
4C077DD10
4C077EE01
4C077FF04
4C077HH03
4C077HH13
4C077JJ08
4C077JJ16
4C267AA08
4C267BB27
4C267CC08
(57)【要約】
【課題】接合部において静脈に流れ込む1つ以上の支流血管を含む対象の静脈系と共に用いるための装置及び方法を記載する。
【解決手段】 血液ポンプカテーテル(70)は、接合部の下流にある下流位置に設置されるように、かつ、静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成された材料(36)を含む。材料は血液出口開口(31)を画定する。血液ポンプ(24)は、接合部に隣接した静脈の領域から血液出口開口(31)を介して血液をポンピングする。血流経路(60)は、上流静脈血流をポンプ(24)によってポンピングすることなく接合部の上流にある上流位置から材料(36)の下流へ誘導する。他の適用例も記載する。
【選択図】
図2E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈と1つ以上の支流血管との接合部において前記静脈に流れ込む前記1つ以上の支流血管を含む対象の静脈系と共に用いるための装置であって、
血液ポンプカテーテルであって、
前記接合部の下流にある下流位置に設置されるように、かつ、前記下流位置で前記静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成された、血液出口開口を画定する材料と、
前記接合部に隣接した前記静脈の領域から、前記材料で画定された前記血液出口開口を介して、血液をポンピングするよう構成された血液ポンプと、
(a)前記接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口と(b)前記材料の下流側に開口する経路出口開口との間を通っている血流経路と、を備える血液ポンプカテーテルを備え、
前記血流経路は、上流静脈血流を前記ポンプによってポンピングすることなく前記上流位置から前記材料の下流へ誘導するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記血液ポンプは細長血液ポンプチューブを備え、前記細長血液ポンプチューブは、前記細長血液ポンプチューブの上流部分内に配置されている血液入口エリアと、前記細長血液ポンプチューブの下流部分内に配置されている血液出口エリアと、血液を前記血液入口エリア内へポンピングし、更に前記細長血液ポンプチューブを介して前記血液出口エリアの外へポンピングするように構成されたインペラと、を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記血液ポンプはフレーム内に配置されたインペラを備え、前記インペラは前記フレーム内で回転することによって血液をポンピングするよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記血液ポンプカテーテルは、静脈に流れ込む1つ以上のリンパ管と共に用いるために構成され、前記血液ポンプカテーテルは、前記静脈内に設置されるよう構成されることで、
前記材料が、前記静脈と前記1つ以上のリンパ管との接合部の下流にある下流位置に設置され、かつ、前記下流位置で前記静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するようになっており、
前記血液ポンプが、前記静脈と前記1つ以上のリンパ管との前記接合部に隣接した前記静脈の領域から、前記材料で画定された前記血液出口開口を介して、血液をポンピングするよう構成され、
前記血流経路が、(a)前記静脈と前記1つ以上のリンパ管との前記接合部に隣接した前記静脈の前記領域の上流にある上流位置に配置された前記経路入口開口と(b)前記材料の前記下流側に開口する前記経路出口開口との間を通るようになっており、
前記血流経路は、上流静脈血流を前記ポンプによってポンピングすることなく前記上流位置から前記材料の前記下流側へ誘導するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記血液ポンプカテーテルは、前記対象の大静脈内に設置されるよう構成されることで、
前記材料が、前記大静脈と前記対象の1つ以上の腎静脈との接合部の下流にある下流位置に設置され、かつ、前記下流位置で前記大静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するようになっており、
前記血液ポンプが、前記大静脈と前記1つ以上の腎静脈との前記接合部に隣接した前記大静脈の領域から、前記材料で画定された前記血液出口開口を介して、血液をポンピングするよう構成され、
前記血流経路が、(a)前記大静脈と前記1つ以上の腎静脈との接合部の上流にある上流位置に配置された前記経路入口開口と(b)前記材料の前記下流側に開口する前記経路出口開口との間を通るようになっており、
前記血流経路は、腎臓下大静脈血流を前記ポンプによってポンピングすることなく前記腎臓下大静脈血流から前記材料の下流へ血流を誘導するように構成されている、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記対象の左心室の機能を支援するように構成された経皮的左心室支援デバイスを更に備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記血液ポンプは細長血液ポンプチューブを備え、前記細長血液ポンプチューブは、前記細長血液ポンプチューブの上流部分内に配置されている血液入口エリアと、前記細長血液ポンプチューブの下流部分内に配置されている血液出口エリアと、血液を前記血液入口エリア内へポンピングし、更に前記細長血液ポンプチューブを介して前記血液出口エリアの外へポンピングするように構成されたインペラと、を画定する、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記細長血液ポンプチューブは、前記血液出口エリアが前記対象の肺動脈内に配置されるように配置されるよう構成され、前記細長血液チューブを介して前記対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記材料から下流に延出し、前記対象の副腎大静脈内に配置されるよう構成された副腎血液入口開口を画定する細長チューブを更に備え、前記細長血液ポンプチューブの前記血液入口エリアは前記副腎血液入口開口の下流に配置されるように構成され、前記細長血液ポンプチューブは副腎大静脈血流から前記対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記対象の肺動脈内へ延出するように構成された細長チューブを更に備え、前記血液ポンプは前記細長チューブを介して前記対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記細長チューブは、前記対象の副腎大静脈内に配置されるよう構成された副腎血液入口開口を画定し、前記血液ポンプは、前記副腎血液入口開口の下流に配置されるように構成され、副腎大静脈血流から前記対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記腎臓下大静脈血流から前記対象の右心房への流れが調節可能であるように、前記血流経路の1つ以上の部分の直径は調節可能である、請求項5に記載の装置。
【請求項13】
前記対象の血圧を検出するように構成された血圧センサと、前記対象の血圧を受信すると共に前記検出された血圧に応じて前記血流経路の前記1つ以上の部分の前記直径を自動的に調節するように構成されたコンピュータプロセッサと、を更に備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記血流経路の前記1つ以上の部分の前記直径は入力に応じて調節されるように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記血流経路は、広い端部及び狭い端部を有するじょうごと、1つ以上のチューブと、を備え、前記じょうごの前記広い端部は前記経路入口開口を画定し、前記じょうごの前記狭い端部は前記1つ以上のチューブ内へ延出している、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記じょうご及び前記1つ以上のチューブは単一の連続した血流経路を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記血流経路を通る流れが調節可能であるように、前記血流経路の1つ以上の部分の直径は調節可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記対象の血圧を検出するように構成された血圧センサと、前記対象の血圧を受信すると共に前記検出された血圧に応じて前記血流経路の前記1つ以上の部分の前記直径を自動的に調節するように構成されたコンピュータプロセッサと、を更に備える、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記血流経路の前記1つ以上の部分の前記直径は入力に応じて調節されるように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
血液ポンプカテーテルであって、
前記血液ポンプカテーテル上に配置され、静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成された、血液出口開口を画定する材料と、
前記材料で画定された前記血液出口開口を介して血液をポンピングするよう構成された血液ポンプと、
(a)前記材料に対して近位の位置に配置された経路入口開口と(b)前記材料に対して遠位の位置に開口する経路出口開口との間を通っている血流経路と、を備える血液ポンプカテーテルを備え、
前記血流経路は、血流を前記ポンプによってポンピングすることなく前記経路入口開口から前記経路出口開口へ誘導するように構成されている、装置。
【請求項21】
主要動脈と、前記主要動脈と1つ以上の分岐動脈との接合部において前記主要動脈から分岐している前記1つ以上の分岐動脈と、を含む対象の動脈系と共に用いるための装置であって、
血液ポンプカテーテルであって、
前記主要動脈と前記分岐動脈との前記接合部の下流にある下流位置に設置されるように、かつ、前記下流位置で前記主要動脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成された、血液入口開口を画定する材料と、
前記主要動脈から前記分岐動脈の方へ前記血液入口開口を介して血液をポンピングするよう構成された血液ポンプと、
前記主要動脈と前記分岐動脈との接合部の上流にある上流位置に配置されるよう構成されたじょうごと、
(a)前記主要動脈と前記分岐動脈との接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口と(b)前記材料の下流側に開口する経路出口開口との間を通っている血流経路と、を備える血液ポンプカテーテルを備え、
前記血流経路は、上流主要動脈血流をポンプによってポンピングすることなく前記上流位置から前記材料の下流へ誘導するように構成されている、装置。
【請求項22】
対象の下行大動脈と共に用いるための装置であって、
血液ポンプカテーテルであって、
前記下行大動脈内に設置されるように、かつ、前記大動脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞することによって前記大動脈を上流区画と下流区画に分離するように構成された、血液出口開口を画定する材料と、
前記下行大動脈を流れる血液を、前記血液出口開口を介して下流方向にポンピングするよう構成された血液ポンプと、
を備える血液ポンプカテーテルを備える装置。
【請求項23】
対象の血管内に設置されるように構成された血液ポンプカテーテルであって、
回転によって血液をポンピングするよう構成されたインペラと、
前記インペラの周りに配置されるよう構成されたインペラ筺体と、
前記インペラ筺体の上流に配置されるように、かつ、前記血管の内壁に接触することによって前記インペラ筺体の長手方向軸を前記血管の局所長手方向軸と少なくとも部分的に位置合わせするように構成された血液ポンプ支持フレームと、
前記インペラ筺体から前記血液ポンプ支持フレームまで延出して、前記血管壁に接触するように、かつ、前記インペラを取り囲む前記血管の領域で前記血管を閉塞するように構成された、血液出口開口を画定する材料と、を備える血液ポンプカテーテルを備え、前記インペラは、前記血液出口開口を介して血液をポンピングするよう構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、以下からの優先権を主張する。
2019年5月23日に出願された、「Blood pumps」と題する、Friedlandに対する米国仮特許出願第62/851,769号。
2019年7月5日に出願された、「Blood pumps」と題する、Friedlandに対する米国仮特許出願第62/870,822号。
2019年8月22日に出願された、「Blood pumps」と題する、Friedlandに対する米国仮特許出願第62/890,177号。
2020年3月2日に出願された、「Blood pumps」と題する、Friedlandに対する米国仮特許出願第62/983,786号。
【0002】
上記で参照した出願の各々は援用により本願に含まれる。
【0003】
本発明のいくつかの適用例は、一般に医療装置に関する。具体的には、本発明のいくつかの適用例は、静脈又は動脈にポンプを設置することに関連した装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
心機能障害又は鬱血性心不全が腎機能障害に進展し、それによって鬱血性心不全の症状が発現又は悪化することはよく見られる。典型的には、心臓収縮期の及び/又は心臓拡張期の心機能障害は体静脈の鬱血を引き起こし、これが腎静脈圧及び間質圧の上昇を生じさせる。圧力上昇は、典型的に腎静脈圧及び間質圧の上昇の結果として発生する腎機能障害及び腎臓の神経ホルモン活性化の双方に起因して、身体による体液貯留を増大させる。これにより生じた体液貯留は、心臓における血液量の過負荷を引き起こすこと及び/又は全身抵抗を増大させることによって、鬱血性心不全を発現又は悪化させる。同様に、腎機能障害及び/又は腎臓の神経ホルモン活性化が心機能障害及び/又は鬱血性心不全に進展することはよく見られる。心機能障害及び/又は鬱血性心不全が腎機能障害及び/又は腎臓の神経ホルモン活性化を招くか、又は、腎機能障害及び/又は腎臓の神経ホルモン活性化が心機能障害及び/又は鬱血性心不全を招くこの病態生理学的なサイクルにおいて、それぞれの機能障害が他の機能障害を悪化させることは心腎臓症候群と呼ばれる。
【0005】
腎静脈圧の上昇は、高窒素血症、並びに、糸球体ろ過率、腎血流量、尿排泄量、及びナトリウム排泄の低減を引き起こすことが実験的に示されている。また、血漿レニン及びアルドステロン、並びにタンパク排泄を増加させることも示されている。また、静脈性鬱血は、3つの異なる経路で貧血の一因となり得る。すなわち、腎臓のエリスロポエチン生成の低減、体液貯留による血液希釈、及び、胃腸の鉄取り込みの低減を招く炎症反応である。
【0006】
機械的には、腎静脈圧の上昇は、嚢内圧力の上昇を引き起こし、その後に間質尿細管周囲圧力(interstitial peritubular pressure)の上昇を引き起こす可能性がある。尿細管周囲圧力の上昇は、ボーマン嚢の圧力を上昇させることによって、尿細管機能に影響を及ぼし(ナトリウム排泄を低減させる)、また、糸球体ろ過に影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
心不全の患者において、腎静脈圧の上昇は、中心静脈(右心房)圧の上昇から生じるだけでなく、腎静脈に直接圧力を加える腹腔内体液滞留(腹水症)からも生じる可能性がある。心不全の患者において、(例えば穿刺及び/又は限外ろ過を用いた)体液除去によって腹腔内圧を低下させると、血漿クレアチニンレベルが低下することが示されている。
【0008】
ウォーキングのような身体活動中の「脚筋ポンプ」の活性化によって生じる静脈還流の増大は、特に心不全の患者において体静脈圧を上昇させ、結果として腎静脈への逆流を生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
典型的に、急性心不全の患者において、体静脈圧の上昇は腎性実質圧力(renal parenchymal pressure)の上昇及び腹腔内圧の上昇を引き起こすが、これらは腎灌流及び腎機能の悪化の一因となり得るファクタである。更に、高い体静脈圧は肺間質液のリンパ排液を妨げ、その結果、急性肺水腫の患者において肺鬱血の悪化と長期化を招く恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のいくつかの適用例によれば、大静脈と腎静脈との接合部に隣接した大静脈の領域の血流が、その接合部の上流及び下流の対象(subject)の大静脈血流から分離される。血液は、ポンプを用いて、接合部に隣接した大静脈の領域から大静脈内の副腎位置へポンピングされる。対象の血液は、ポンプによってポンピングされることなく、ポンプを迂回するように誘導することによって、対象の大静脈内の腎臓下位置から副腎位置へ流れることができる。
【0011】
いくつかの適用例において、そのような方法は、(a)静脈と1つ以上の支流血管(例えば1つ以上の支流静脈)との接合部の下流にある下流位置に下流閉塞要素(材料等)を設置することによって、静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞することと、(b)ポンプを用いて、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域から下流閉塞要素を介して血液をポンピングすることと、(c)上流静脈血流をポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、静脈と支流血管との接合部の上流にある上流位置から閉塞要素の下流へ誘導することと、を含む。
【0012】
典型的に、このような方法は、材料を含む血液ポンプカテーテルを用いて実行される。この材料は、静脈と支流血管との接合部の下流にある下流位置に設置されるように、かつ、その下流位置で静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成されている。この材料は典型的に血液出口開口を画定する。血液ポンプは典型的に、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域から材料で画定された血液出口開口を介して血液をポンピングするよう構成されている。血流経路(すなわち血流チャネル)は典型的に、静脈と支流血管との接合部の上流にある上流位置に配置された入口開口と、材料の下流側に開口する出口開口との間を通っている。血流経路は、上流静脈血流をポンプによってポンピングすることなく上流位置から材料の下流へ誘導するように構成されている。いくつかの適用例において、血流経路はじょうご及び1つ以上のチューブを含む。じょうごは、静脈と支流血管との接合部の上流にある上流位置に配置されるよう構成され、1つ以上のチューブは、じょうごから材料の下流側へ延出するよう構成されている。じょうご及び1つ以上のチューブは、上流静脈血流をポンプによってポンピングすることなく上流位置から材料の下流へ誘導するよう構成されている。
【0013】
一般に、本発明のいくつかの適用例の範囲は、主要静脈(main vein)に流れ込む支流静脈(例えば大静脈(vena cava)に流れ込む腎静脈)を含む対象の静脈系と共に用いられる装置及び方法を含む。典型的に、そのような方法は、主要静脈と支流静脈との接合部に隣接した主要静脈の領域内の血流を、その上流及び下流の主要静脈内の血流から分離することと、ポンプを用いて、静脈と支流静脈との接合部に隣接した主要静脈の領域から支流静脈の下流にある主要静脈内の位置へ血液をポンピングすることと、対象の血液を、ポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、支流静脈の上流にある主要静脈内の位置から支流静脈の下流にある主要静脈内の位置へ流すことと、を含む。本発明のいくつかの適用例の範囲は更に、静脈に流れ込む支流血管(例えばリンパ管)を含む対象の静脈系と共に用いられる装置及び方法を含む。典型的に、そのような方法は、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域内の流れを、その上流及び下流の静脈内の血流から分離することと、ポンプを用いて、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域からその領域の下流にある静脈内の位置へ血液をポンピングすることと、対象の血液を、ポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、支流血管の上流にある静脈内の位置から支流血管の下流にある静脈内の位置へ流すことと、を含む。
【0014】
本発明のいくつかの適用例において、血液ポンプカテーテルは、回転によって血液をポンピングするよう構成されたインペラと、このインペラの周りに配置されるよう構成されたインペラ筺体と、を含む。血液ポンプ支持フレームは典型的に、インペラ筺体の上流に配置されるように、かつ、血管の内壁に接触することによってインペラ筺体の長手方向軸を血管の局所長手方向軸と少なくとも部分的に位置合わせするように構成されている。材料は、インペラ筺体から血液ポンプ支持フレームまで延出して、血管壁に接触するように、かつ、インペラを取り囲む血管の領域で血管を閉塞するように構成されている。いくつかの適用例において、材料は血液出口開口を画定し、インペラは、血液出口開口を介して血液をポンピングするよう構成されている。
【0015】
いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテルは、対象の下行大動脈と共に用いるために構成されている。血液ポンプカテーテルは、下行大動脈内に設置されるように、かつ、大動脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞することによって大動脈を上流区画と下流区画に分離するように構成された材料を含む。材料は典型的に血液出口開口を画定する。血液ポンプ(例えばインペラベース血液ポンプ)は、下行大動脈を流れる血液を、血液出口開口を介して下流方向にポンピングするよう構成されている。
【0016】
一般に、本明細書及び本出願の特許請求の範囲において、「近位」という用語及びそれに関連する用語は、デバイス又はデバイスの一部に関連付けて使用される場合、典型的に、このデバイス又は一部を対象の体内に挿入する際に挿入位置に近い方のデバイス又は一部の端部を意味するように解釈するべきである。「遠位」という用語及びそれに関連する用語は、デバイス又はデバイスの一部に関連付けて使用される場合、典型的に、このデバイス又は一部を対象の体内に挿入する際に挿入位置から遠い方のデバイス又は一部の端部を意味するように解釈するべきである。
【0017】
「下流」及び「上流」という用語並びにそれらに関連する用語は、対象の血管系を流れる順行性血流の方向に対して定義されると解釈するべきである。このため、一例として、副腎大静脈は腎臓下大静脈の下流にあり、下行大動脈は大動脈弓の下流にある。デバイスに関連付けて使用される場合、「上流」という用語は、比較的上流位置に配置されるよう構成されたデバイスの一部を示すと解釈するべきであり、「下流」という用語は、比較的下流位置に配置されるよう構成されたデバイスの一部を示すと解釈するべきである。
【0018】
従って、本発明のいくつかの適用例によれば、静脈と1つ以上の支流血管との接合部において静脈に流れ込む1つ以上の支流血管を含む対象の静脈系と共に用いるための装置が提供される。この装置は、
血液ポンプカテーテルであって、
接合部の下流にある下流位置に設置されるように、かつ、下流位置で静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成された、血液出口開口を画定する材料と、
接合部に隣接した静脈の領域から、材料で画定された血液出口開口を介して、血液をポンピングするよう構成された血液ポンプと、
(a)接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口と(b)材料の下流側に開口する経路出口開口との間を通っている血流経路と、を含む血液ポンプカテーテルを含み、
血流経路は、上流静脈血流をポンプによってポンピングすることなく上流位置から材料の下流へ誘導するように構成されている。
【0019】
いくつかの適用例において、血液ポンプは細長血液ポンプチューブを含み、細長血液ポンプチューブは、細長血液ポンプチューブの上流部分内に配置されている血液入口エリアと、細長血液ポンプチューブの下流部分内に配置されている血液出口エリアと、血液を血液入口エリア内へポンピングし、更に細長血液ポンプチューブを介して血液出口エリアの外へポンピングするように構成されたインペラと、を画定する。
【0020】
いくつかの適用例において、血液ポンプはフレーム内に配置されたインペラを含み、インペラはフレーム内で回転することによって血液をポンピングするよう構成されている。
【0021】
いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテルは、静脈に流れ込む1つ以上のリンパ管と共に用いるために構成され、血液ポンプカテーテルは、静脈内に設置されるよう構成されることで、
材料が、静脈と1つ以上のリンパ管との接合部の下流にある下流位置に設置され、かつ、下流位置で静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するようになっており、
血液ポンプが、静脈と1つ以上のリンパ管との接合部に隣接した静脈の領域から、材料で画定された血液出口開口を介して、血液をポンピングするよう構成され、
血流経路が、(a)静脈と1つ以上のリンパ管との接合部に隣接した静脈の領域の上流にある上流位置に配置された経路入口開口と(b)材料の下流側に開口する経路出口開口との間を通るようになっており、
血流経路は、上流静脈血流をポンプによってポンピングすることなく上流位置から材料の下流側へ誘導するように構成されている。
【0022】
いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテルは、対象の大静脈内に設置されるよう構成されることで、
材料が、大静脈と対象の1つ以上の腎静脈との接合部の下流にある下流位置に設置され、かつ、下流位置で大静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するようになっており、
血液ポンプが、大静脈と1つ以上の腎静脈との接合部に隣接した大静脈の領域から、材料で画定された血液出口開口を介して、血液をポンピングするよう構成され、
血流経路が、(a)大静脈と1つ以上の腎静脈との接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口と(b)材料の下流側に開口する経路出口開口との間を通るようになっており、
血流経路は、腎臓下大静脈血流をポンプによってポンピングすることなく腎臓下大静脈血流から材料の下流へ血流を誘導するように構成されている。
【0023】
いくつかの適用例において、装置は、対象の左心室の機能を支援するように構成された経皮的左心室支援デバイスを更に含む。
【0024】
いくつかの適用例において、血液ポンプは細長血液ポンプチューブを含み、細長血液ポンプチューブは、細長血液ポンプチューブの上流部分内に配置されている血液入口エリアと、細長血液ポンプチューブの下流部分内に配置されている血液出口エリアと、血液を血液入口エリア内へポンピングし、更に細長血液ポンプチューブを介して血液出口エリアの外へポンピングするように構成されたインペラと、を画定する。
【0025】
いくつかの適用例において、細長血液ポンプチューブは、血液出口エリアが対象の肺動脈内に配置されるように配置されるよう構成され、細長チューブを介して対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている。
【0026】
いくつかの適用例において、装置は、材料から下流に延出し、対象の副腎大静脈内に配置されるよう構成された副腎血液入口開口を画定する細長チューブを更に含み、細長血液ポンプチューブの血液入口エリアは副腎血液入口開口の下流に配置されるように構成され、細長血液ポンプチューブは副腎大静脈血流から対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている。
【0027】
いくつかの適用例において、装置は、対象の肺動脈内へ延出するように構成された細長チューブを更に含み、血液ポンプは細長チューブを介して対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている。
【0028】
いくつかの適用例において、細長チューブは、対象の副腎大静脈内に配置されるよう構成された副腎血液入口開口を画定し、血液ポンプは、副腎血液入口開口の下流に配置されるように構成され、副腎大静脈血流から対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている。
【0029】
いくつかの適用例では、腎臓下大静脈血流から対象の右心房への流れが調節可能であるように、血流経路の1つ以上の部分の直径は調節可能である。
【0030】
いくつかの適用例において、装置は、対象の血圧を検出するように構成された血圧センサと、対象の血圧を受信すると共に検出された血圧に応じて血流経路の1つ以上の部分の直径を自動的に調節するように構成されたコンピュータプロセッサと、を更に含む。
【0031】
いくつかの適用例において、血流経路の1つ以上の部分の直径は入力に応じて調節されるように構成されている。
【0032】
いくつかの適用例において、血流経路は、広い端部及び狭い端部を有するじょうごと、1つ以上のチューブと、を含み、じょうごの広い端部は経路入口開口を画定し、じょうごの狭い端部は1つ以上のチューブ内へ延出している。
【0033】
いくつかの適用例において、じょうご及び1つ以上のチューブは単一の連続した血流経路を含む。
【0034】
いくつかの適用例では、血流経路を通る流れが調節可能であるように、血流経路の1つ以上の部分の直径は調節可能である。
【0035】
いくつかの適用例において、装置は、対象の血圧を検出するように構成された血圧センサと、対象の血圧を受信すると共に検出された血圧に応じて血流経路の1つ以上の部分の直径を自動的に調節するように構成されたコンピュータプロセッサと、を更に含む。
【0036】
いくつかの適用例において、血流経路の1つ以上の部分の直径は入力に応じて調節されるように構成されている。
【0037】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、
血液ポンプカテーテルであって、
血液ポンプカテーテル上に配置され、静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成された、血液出口開口を画定する材料と、
材料で画定された血液出口開口を介して血液をポンピングするよう構成された血液ポンプと、
(a)材料に対して近位の位置に配置された経路入口開口と(b)材料に対して遠位の位置に開口する経路出口開口との間を通っている血流経路と、を含む血液ポンプカテーテルを含み、
血流経路は、血流をポンプによってポンピングすることなく経路入口開口から経路出口開口へ誘導するように構成されている。
【0038】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、静脈と支流血管との接合部において静脈に流れ込む支流血管を含む対象の静脈系と共に用いるための方法が提供される。この方法は、
接合部に隣接した静脈の領域の血流を、接合部の上流の静脈内の血流及び接合部の下流の静脈内の血流とは別個の区画に分離することと、
ポンプを用いて、区画から区画の下流へ血液をポンピングすることと、
対象の血液をポンプでポンピングすることなくポンプを迂回するよう誘導することによって、区画の上流の静脈内の位置から区画の下流の位置へ流すことと、
を含む。
【0039】
いくつかの適用例において、区画から区画の下流へ血液をポンピングすることは、細長血液ポンプチューブを介して区画から区画の下流へ血液をポンピングすることを含み、細長血液ポンプチューブは、細長血液ポンプチューブの上流部分内に配置されている血液入口エリアと、細長血液ポンプチューブの下流部分内に配置されている血液出口エリアと、血液を血液入口エリア内へポンピングし、更に細長血液ポンプチューブを介して血液出口エリアの外へポンピングするように構成されたインペラと、を画定する。
【0040】
いくつかの適用例において、区画から区画の下流へ血液をポンピングすることは、インペラを回転させることによって区画から区画の下流へ血液をポンピングすることを含む。
【0041】
いくつかの適用例において、方法は、静脈に流れ込む1つ以上のリンパ管と共に用いるためのものである。方法は、
静脈と1つ以上のリンパ管との接合部に隣接した静脈の領域内の血流を、静脈と1つ以上のリンパ管との接合部に隣接した静脈の領域の下流の静脈内の血流、及び、静脈と1つ以上のリンパ管との接合部に隣接した静脈の領域の上流の静脈内の血流とは別個の区画に分離することと、
ポンプを用いて、区画から区画の下流へ血液をポンピングすることと、
対象の血液をポンプでポンピングすることなくポンプを迂回するよう誘導することによって、区画の上流の静脈内の位置から区画の下流の位置へ流すことと、
を含む。
【0042】
いくつかの適用例において、方法は、対象の腎静脈及び大静脈と共に用いるためのものである。方法は、
大静脈と1つ以上の腎静脈との接合部に隣接した大静脈の領域内の血流を、大静脈区画の下流の大静脈内の血流及び大静脈区画の上流の大静脈内の血流とは別個の大静脈区画に分離することと、
ポンプを用いて、大静脈区画から大静脈区画の下流へ血液をポンピングすることと、
対象の血液をポンプでポンピングすることなくポンプを迂回するよう誘導することによって、大静脈区画の上流の位置から大静脈区画の下流の位置へ流すことと、
を含む。
【0043】
いくつかの適用例において、方法は、経皮的左心室支援デバイスを用いて対象の左心室の機能を支援することを更に含む。
【0044】
いくつかの適用例において、大静脈区画から大静脈区画の下流へ血液をポンピングすることは、細長血液ポンプチューブを介して大静脈区画から大静脈区画の下流へ血液をポンピングすることを含み、細長血液ポンプチューブは、細長血液ポンプチューブの上流部分内に配置されている血液入口エリアと、細長血液ポンプチューブの下流部分内に配置されている血液出口エリアと、血液を血液入口エリア内へポンピングし、更に細長血液ポンプチューブを介して血液出口エリアの外へポンピングするように構成されたインペラと、を画定する。
【0045】
いくつかの適用例において、細長血液ポンプチューブを介して大静脈区画から大静脈区画の下流へ血液をポンピングすることは、細長チューブを介して対象の肺動脈内へ血液をポンピングすることを含む。
【0046】
いくつかの適用例において、方法は、細長血液ポンプチューブを介して対象の副腎大静脈血流から対象の肺動脈内へ血液をポンピングすることを更に含む。
【0047】
いくつかの適用例において、大静脈区画から大静脈区画の下流へ血液をポンピングすることは、細長チューブを介して対象の肺動脈内へ血液をポンピングすることを含む。
【0048】
いくつかの適用例において、方法は、細長チューブを介して対象の副腎大静脈血流から対象の肺動脈内へ血液をポンピングすることを更に含む。
【0049】
いくつかの適用例において、ポンプを迂回するよう血液を誘導することは、血流経路を介してポンプを迂回するよう血液を誘導することを含み、方法は、血流経路の1つ以上の部分の直径を調節することによって対象の右心房への血流を調節することを更に含む。
【0050】
いくつかの適用例において、方法は、対象の血圧を検出することを更に含み、血流経路の1つ以上の部分の直径を調節することは、検出された血圧に応じて血流経路の1つ以上の部分の直径を自動的に調節することを含む。
【0051】
いくつかの適用例において、血流経路の1つ以上の部分の直径を調節することは、入力に応じて血流経路の1つ以上の部分の直径を調節することを含む。
【0052】
いくつかの適用例において、ポンプを迂回するよう血液を誘導することは、血流経路を介してポンプを迂回するよう血液を誘導することを含み、方法は、血流経路の1つ以上の部分の直径を調節することによって血流経路を流れる血流を調節することを更に含む。
【0053】
いくつかの適用例において、方法は、対象の血圧を検出することを更に含み、血流経路の1つ以上の部分の直径を調節することは、検出された血圧に応じて血流経路の1つ以上の部分の直径を自動的に調節することを含む。
【0054】
いくつかの適用例において、血流経路の1つ以上の部分の直径を調節することは、入力に応じて血流経路の1つ以上の部分の直径を調節することを含む。
【0055】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、支流血管と静脈との接合部において静脈に流れ込む支流血管を含む対象の静脈系と共に用いるための方法が提供される。この方法は、
静脈と支流血管との接合部の下流にある下流位置に下流閉塞要素を設置することによって、静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞することと、
ポンプを用いて、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域から下流閉塞要素を介して血液をポンピングすることと、
上流静脈血流をポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、静脈と支流血管との接合部の上流にある上流位置から閉塞要素の下流へ誘導することと、
を含む。
【0056】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、支流血管と静脈との接合部において静脈に流れ込む支流血管を含む対象の静脈系と共に用いるための方法が提供される。この方法は、
接合部に隣接した静脈の領域内の血流を、接合部に隣接した静脈の領域の上流の静脈内の血流、及び、接合部に隣接した静脈の領域の下流の静脈内の血流から分離することと、
支流血管から支流血管の下流の位置へ、第1の流路を介して血液を流すことと、
支流血管の上流の静脈内の位置から支流血管の下流の静脈内の位置へ、第2の流路を介して対象の血液を流すことと、
第1及び第2の流路のうち少なくとも1つを介して血流を制御することと、
を含む。
【0057】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、主要動脈と、この主要動脈と1つ以上の分岐動脈との接合部において主要動脈から分岐している1つ以上の分岐動脈と、を含む対象の動脈系と共に用いるための装置が提供される。この装置は、
血液ポンプカテーテルであって、
主要動脈と分岐動脈との接合部の下流にある下流位置に設置されるように、かつ、下流位置で主要動脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成された、血液入口開口を画定する材料と、
主要動脈から分岐動脈の方へ血液入口開口を介して血液をポンピングするよう構成された血液ポンプと、
主要動脈と分岐動脈との接合部の上流にある上流位置に配置されるよう構成されたじょうごと、
(a)主要動脈と分岐動脈との接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口と(b)材料の下流側に開口する経路出口開口との間を通っている血流経路と、を含む血液ポンプカテーテルを含み、
血流経路は、上流主要動脈血流をポンプによってポンピングすることなく上流位置から材料の下流へ誘導するように構成されている。
【0058】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、主要動脈と、この主要動脈と1つ以上の分岐動脈との接合部において主要動脈から分岐している1つ以上の分岐動脈と、を含む対象の動脈系と共に用いるための方法が提供される。この方法は、
接合部に隣接した主要動脈の領域内の血流を、区画の下流の主要動脈内の血流及び区画内の血流とは別個の区画に分離することと、
ポンプを用いて、主要動脈から分岐動脈へ血液をポンピングすることと、
対象の血液をポンプでポンピングすることなくポンプを迂回するよう誘導することによって、区画の上流にある主要動脈内の位置から区画の下流にある位置へ流すことと、
を含む。
【0059】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、主要動脈と、この主要動脈と1つ以上の分岐動脈との接合部において主要動脈から分岐している1つ以上の分岐動脈と、を含む対象の動脈系と共に用いるための方法が提供される。この方法は、
主要動脈と分岐動脈との接合部の下流にある下流位置に下流閉塞要素を設置することによって、主要動脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞することと、
ポンプを用いて、主要動脈から分岐動脈へ下流閉塞要素を介して血液をポンピングすることと、
上流主要動脈血流をポンプでポンピングすることなくポンプを迂回するよう誘導することによって、主要動脈と分岐動脈との接合部の上流にある上流位置から閉塞要素の下流へ誘導することと、
を含む。
【0060】
また、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の下行大動脈と共に用いるための装置が提供される。この装置は、
血液ポンプカテーテルであって、
下行大動脈内に設置されるように、かつ、大動脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞することによって大動脈を上流区画と下流区画に分離するように構成された、血液出口開口を画定する材料と、
下行大動脈を流れる血液を、血液出口開口を介して下流方向にポンピングするよう構成された血液ポンプと、
を含む血液ポンプカテーテルを含む装置。
【0061】
また、本発明のいくつかの適用例によれば、対象の下行大動脈と共に用いるための方法が提供される。この方法は、
下行大動脈を少なくとも部分的に閉塞する閉塞要素を下行大動脈内に設置することによって、下行大動脈を上流区画と下流区画に分離することと、
ポンプを用いて、上流区画から下流区画へ血液をポンピングすることと、
を含む。
【0062】
更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、
対象の血管内に設置されるように構成された血液ポンプカテーテルであって、
回転によって血液をポンピングするよう構成されたインペラと、
インペラの周りに配置されるよう構成されたインペラ筺体と、
インペラ筺体の上流に配置されるように、かつ、血管の内壁に接触することによってインペラ筺体の長手方向軸を血管の局所長手方向軸と少なくとも部分的に位置合わせするように構成された血液ポンプ支持フレームと、
インペラ筺体から血液ポンプ支持フレームまで延出して、血管壁に接触するように、かつ、インペラを取り囲む血管の領域で血管を閉塞するように構成された、血液出口開口を画定する材料と、含む血液ポンプカテーテルを含み、インペラは、血液出口開口を介して血液をポンピングするよう構成されている。
【0063】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明を図面と共に読むことから、より充分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1A】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図2C】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図2D】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈内に配置された血液ポンプカテーテルの概略図であり、血液ポンプは非軸対称流出チューブを有する。
【
図2E】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈内に配置された血液ポンプカテーテルの概略図であり、血液ポンプは非軸対称流出チューブ及び非軸対称インペラを有する。
【
図2F】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の生体構造なしの
図2Eの血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図3A】本発明のいくつかの別の適用例に従った血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図3B】本発明のいくつかの別の適用例に従った血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図3C】本発明のいくつかの別の適用例に従った血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図3D】本発明のいくつかの別の適用例に従った血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図3E】本発明のいくつかの別の適用例に従った血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図3F】本発明のいくつかの別の適用例に従った血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図3G】本発明のいくつかの別の適用例に従った血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図3H】本発明のいくつかの別の適用例に従った血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図4A】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の腎動脈の近傍で対象の下行大動脈内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図4B】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の腎動脈の近傍で対象の下行大動脈内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図5A】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の下行大動脈(例えば胸部大動脈又は腹部大動脈)内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図5B】本発明のいくつかの適用例に従った、対象の下行大動脈(例えば胸部大動脈又は腹部大動脈)内に設置された血液ポンプカテーテルの概略図である。
【
図6A】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのインペラ又はその一部の概略図である。
【
図6B】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのインペラ又はその一部の概略図である。
【
図6C】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのインペラ又はその一部の概略図である。
【
図6D】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのインペラ又はその一部の概略図である。
【
図6E】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのインペラ又はその一部の概略図である。
【
図6F】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのインペラ又はその一部の概略図である。
【
図6G】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのインペラ又はその一部の概略図である。
【
図6H】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのインペラ又はその一部の概略図である。
【
図7】本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプのフレーム内部に配置されたインペラの概略図である。
【
図8A】本発明のいくつかの適用例に従った、半径方向に制約されていない状態の血液ポンプのインペラ及びフレームの概略図である。
【
図8B】本発明のいくつかの適用例に従った、半径方向に制約された状態の血液ポンプのインペラ及びフレームの概略図である。
【
図8C】従来技術の軸方向インペラベース血液ポンプで用いられる典型的な軸受アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈22内に設置された血液ポンプカテーテル20の概略図である
図1Aから
図1Cを参照する。典型的に、血液ポンプカテーテルは、インペラ筺体26と、このインペラ筺体内部に配置されたインペラ50と、を含む血液ポンプ24を含む。インペラ筺体26(例えば筐体のフレーム34)は、典型的に、(例えば大静脈が腹腔内圧のため内部で虚脱する場合に備えて)大静脈の内壁をインペラから分離することで、大静脈がインペラによって損傷しないように、かつ、インペラが大静脈の内壁からの圧力によって変形しないように機能する。また、典型的には、インペラを貫通する軸方向シャフト92(
図7に示されている)が、インペラ筺体の近位端と遠位端にそれぞれ配置されたラジアル軸受116、118によって支持されている。
【0066】
【0067】
いくつかのそのような適用例では、血液ポンプ支持フレーム32がインペラ筺体26の上流に配置され、大静脈の内壁に接触するよう構成されている。血液ポンプ支持フレーム32は、大静脈の内壁に接触することによって、インペラ筺体26の長手方向軸を、それによりインペラ50を、大静脈の局所長手方向軸と位置合わせするように構成されている。(いくつかの適用例では、血液ポンプ支持フレームはインペラの長手方向軸を大静脈の局所長手方向軸と完全には位置合わせしない場合があることに留意するべきである。しかしながら典型的には、血液ポンプ支持フレームは、この血液ポンプ支持フレームが存在しない場合のインペラの長手方向軸と大静脈の局所長手方向軸との位置合わせよりもインペラの長手方向軸を大静脈の局所長手方向軸と良好に位置合わせした状態に維持する。)典型的に、他の条件が等しければ、インペラ50による血液のポンピングの有効性が大きくなればなるほど、インペラの長手方向軸と大静脈の局所長手方向軸との位置合わせは良好になる。それにもかかわらず、インペラの長手方向軸と大静脈の局所長手方向軸とのわずかな位置ずれ(例えば
図2Eに示されている)があっても、通常はインペラによる血液の有効なポンピングが行われることに留意するべきである。
【0068】
いくつかの適用例において、インペラ筺体26は、材料36(例えば、ポリエステル、ポリウレタン、及び/又は異なるポリマーのような血液不透過性材料)で少なくとも部分的に被覆されている形状記憶要素(ニチノール等)で作製されたフレーム34(例えば剛体又は半剛体のフレーム)を含む。典型的に、このような適用例では、フレーム34の剛性が充分に大きいので、大静脈の内壁がフレーム34に加える圧力によってフレームが変形することはない。典型的に、材料36はインペラ筺体から血液ポンプ支持フレーム32まで延出して、血管壁に接触するように、及び、インペラを取り囲む及び/又はインペラの上流にある血管の領域で血管を閉塞するようになっている。材料は典型的に、インペラ筺体の遠位部分において貫通孔を画定する。材料は、インペラの外側の周囲で血液の逆流を閉塞するが、血液出口開口31として作用する孔によって、インペラ近傍の血管の中央領域で順行性血流を可能とするように構成されている。いくつかの適用例において、インペラ筺体の一部は、例えば以下で
図7を参照して記載するように、インペラ筺体の内側が内側ライニング39によって被覆されている(すなわちライニングされている)。いくつかのそのような適用例では、インペラ筺体の内側ライニングは、少なくとも部分的に材料36と重複する。いくつかの適用例において、内側ライニングは、材料36で画定された血液出口開口を拡張する。
【0069】
典型的に、血液ポンプカテーテル20の外側チューブ77内に駆動ケーブル78が配置されている(駆動ケーブルは例えば
図8Aに示されている)。更に典型的には、駆動ケーブルは、対象の身体外に配置されているモータ79から、インペラが配置されている軸方向シャフト92(
図7に示されている)まで延出している。モータは、駆動ケーブルを介して軸方向シャフトに回転運動を与える(これによってインペラに回転運動を与える)。典型的に、モータはコンピュータプロセッサ10によって制御される。いくつかの適用例において、モータは、圧力センサ75が実行する血圧測定に基づいて制御される。
【0070】
いくつかの適用例では、材料36を上述のように使用すると、インペラを取り囲む血管領域内でインペラが引き起こす乱流によって血液逆流が生じる可能性が低下する。いくつかの適用例において、材料は副腎大静脈を上流区画と下流区画に分離するよう作用し、インペラは血液を上流区画から下流区画へポンピングするよう構成されており、これによって腎静脈の近傍の上流区画内の圧力を低下させる。
【0071】
いくつかの適用例(図示せず)において、血液ポンプ支持フレーム32及びインペラ筺体26のフレーム34は、大静脈の内壁と接触するよう構成された上流部分と、インペラを収容するよう構成された下流部分と、を有する単一のフレームとして形成されている。
【0072】
典型的に、血液ポンプ支持フレームが半径方向に制約されていない構成である場合の血液ポンプ支持フレーム32の最大直径(すなわち、血液ポンプ支持フレーム32の直径が最大である1又は複数の長手方向位置における血液ポンプ支持フレーム32の直径)は、インペラ筺体26のフレーム34が半径方向に制約されていない構成である場合のフレーム34の最大直径(すなわち、フレーム34の直径が最大である1又は複数の長手方向位置におけるフレーム34の直径)の、少なくとも1.1倍(いくつかの適用例では少なくとも1.3倍)である。
【0073】
典型的に、血液ポンプ24は、大静脈と対象の腎静脈25との接合部の下流に設置され、血液を下流方向にポンピングして対象の腎静脈内の圧力を低下させるよう構成されている。いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテル20は閉塞要素40を含み、これは、大静脈と対象の腎静脈との接合部の上流に設置されるよう、かつ、この位置で大静脈を部分的に閉塞するよう構成されている。例えば閉塞要素は、
図1Aに示されているようにバルーン42を含み得る。この代わりに又はこれに加えて、閉塞要素は、
図1Bに示されているように、貫通孔45を画定する血液不透過性材料44を含む。いくつかの適用例では、この材料はフレーム46によって支持されている。典型的に、材料44は、材料の孔を通るある程度の血流が存在するが、材料が存在しない場合に比べて血流が低減するように構成されている。典型的に、閉塞要素は、対象の大静脈と腎静脈との接合部の上流で大静脈を部分的に閉塞するよう構成されている。いくつかの適用例(図示せず)では、上流閉塞要素としてノズルが用いられる。これは例えば、援用により本願に含まれる、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0239998号に記載されている。
【0074】
閉塞要素40は、対象の大静脈を部分的に閉塞することで、下流血液ポンプのポンピングに応じて対象の下半身から対象の心臓の方へ向かう血流が著しく増大しないように、かつ、閉塞要素と下流血液ポンプとの間の大静脈内に、対象の中心静脈圧よりも血圧が低い低圧領域が発生するように構成されている。典型的に、低圧領域を発生させることで腎静脈から大静脈への血流が増大し、これによって腎血圧を低下させると共に腎灌流を増大させる。閉塞要素は大静脈を部分的に閉塞するが全体的には閉塞せず、大静脈内に低圧領域を発生させるが大静脈を流れる相当な血流を可能とするよう構成されていることに留意するべきである。
【0075】
いくつかの適用例では、例えば
図1Cに示されているように、血液ポンプカテーテル20は上流閉塞要素を含まない。上述したように、いくつかの適用例において、材料36は副腎大静脈を上流区画と下流区画に分離するよう作用し、インペラ50は血液を上流区画から下流区画へポンピングするよう構成されており、これによって腎静脈の近傍の上流区画内の圧力を低下させる。いくつかの適用例では、血液ポンプカテーテル20はそれにより、
図1Cに示されているように上流閉塞要素が存在しない場合であっても、腎静脈の近傍の大静脈内に低圧領域を発生させるよう構成されている。典型的に、低圧領域を発生させることで腎静脈から大静脈への血流が増大し、これによって腎血圧を低下させると共に腎灌流を増大させる。
【0076】
血液ポンプカテーテル20は典型的に、心機能障害、鬱血性心不全、低腎血流、高腎血管抵抗、動脈性高血圧、糖尿病、及び/又は腎機能障害を患っている対象に急性治療を行うため、対象の大静脈22内に設置され、そこで操作される。例えば血液ポンプカテーテルは、1時間を超える(例えば1日を超える)期間、1週間未満(例えば4日未満)の期間、及び/又は1時間から1週間の間(例えば1日から4日の間)の期間にわたって、対象の大静脈内に設置され、そこで操作される可能性がある。いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテルは、心機能障害、鬱血性心不全、低腎血流、高腎血管抵抗、動脈性高血圧、糖尿病、及び/又は腎機能障害を患っている対象に長期治療を行うため、対象の大静脈内に長期的に設置される。いくつかの適用例において、治療過程は、数週間、数か月、又は数年にわたって対象に適用され、その間、血液ポンプカテーテルは対象の大静脈内に間欠的に設置され、対象は本明細書に記載されている技法に従って間欠的に治療される。例えば対象は、数日、数週間、又は数か月の間隔で間欠的に治療され得る。
【0077】
図1Aから
図1Bに示されているカテーテルに関して、上流閉塞要素に対して遠位に配置された血液ポンプ24を含むこのようなカテーテルは、例えば大腿静脈のような、大静脈と対象の腎静脈との接合部よりも下方にある静脈から大静脈内へ設置するのに適していることに留意するべきである。しかしながら、本発明の範囲には、ポンプ及び閉塞要素が配置されているが、下流ポンプに対して上流閉塞要素が遠位に配置されたカテーテルが含まれる。このようなカテーテルは典型的に、変更すべきところは変更して、例えば鎖骨下静脈又は頸静脈のような下大静脈よりも上方にある静脈を介して挿入される。同様に、
図1Cで概略的に示されているカテーテルは、変更すべきところは変更して、例えば鎖骨下静脈又は頸静脈のような下大静脈よりも上方にある静脈を介して副腎大静脈内に挿入するよう構成され得る。典型的に、そのような場合、カテーテルのシャフトに対する血液ポンプカテーテルのコンポーネントの配置は、
図1Aから
図1Cに示されているものとは反対方向である。
【0078】
典型的に、血液ポンプカテーテルは蛍光透視撮像のもとで挿入される。あるいは血液ポンプカテーテルは、放射及び/又は造影剤に対する対象の暴露を低減させるように超音波撮像のもとで挿入される。
【0079】
上述したように、典型的には血液ポンプカテーテル20は、心機能障害、鬱血性心不全、低腎血流、高腎血管抵抗、動脈性高血圧、糖尿病、及び/又は腎機能障害を患っている対象の大静脈内に設置される。典型的に、このような対象の大静脈で血液ポンプカテーテルを動作させることは、対象の中心静脈圧が上昇すると共に追加の効果を有するとしても、対象の腎静脈圧力プロファイルの低下及び平坦化を引き起こす。これは例えば、援用により本願に含まれるSchwammenthalに対する米国特許出願公開第2016/0022890号の
図4Bを参照して記載されている。
【0080】
上述の通り、典型的に閉塞要素は、大静脈と対象の腎静脈との接合部の上流で大静脈を部分的に閉塞するよう構成されている。いくつかの適用例において、閉塞要素を拡張させる直径は制御可能である。例えば、バルーンの膨張は制御可能であり、又はフレームは(例えば、フレームを加熱すること又はフレームに電流を印加することによって)拡張可能であり得る。いくつかの適用例において、閉塞要素が大静脈を閉塞する程度は、異なるセンサ(例えば、援用により本願に含まれるSchwammenthalに対する米国特許出願公開第2016/0022890号の
図22Ai-Ciiを参照して記載されているような、流量センサ及び/又は酸素飽和度センサ及び/又は熱流センサ等)からの入力に応答して、及び/又はユーザからの入力に応答して、血圧センサ75が検出する血圧に応じてコンピュータプロセッサ10により制御される。いくつかの適用例において、ポンプ24が腎静脈から血液をポンピングする速度(例えばポンプのインペラ50が回転する速度)、及び/又は閉塞要素が大静脈を閉塞する程度は、異なるセンサ(例えば、援用により本願に含まれるSchwammenthalに対する米国特許出願公開第2016/0022890号の
図22Ai-Ciiを参照して記載されているような、流量センサ及び/又は酸素飽和度センサ及び/又は熱流センサ)からの入力に応答して、及び/又はユーザからの入力に応答して、血圧センサ75が検出する血圧に応じてコンピュータプロセッサ10により制御される。いくつかの適用例において、
図1C及び
図2Cを参照して後述されるような血圧センサは、上述した装置及び方法と共に用いられる。
【0081】
本発明のいくつかの適用例は血液ポンプを参照して記載され、それに従って血液ポンプはインペラを含むが、本発明の範囲は、変更すべきところは変更して、本明細書に記載されているように血液をポンピングするため他の任意のタイプのポンプを用いることを含む。例えば、ローラポンプ、アルキメデススクリューポンプ、遠心ポンプ、空気圧ポンプ、及び/又は圧縮ポンプを用いてもよい。
【0082】
図1Aから
図1Cに関して、本発明の範囲は、同様の装置及び方法を、主要静脈に流れ込む支流静脈を含む対象の任意の静脈系に適用することを含むことに留意するべきである。例えば、同様の技法を肝静脈と大静脈との接合部で適用することも可能である。いくつかの適用例では、概ね同様の装置及び方法が、鎖骨下静脈又は頸静脈内で、静脈と1つ以上のリンパ管との接合部において用いられる。いくつかのそのような適用例において、血液ポンプカテーテル20は、変更すべきところは変更して、リンパ管から静脈内へのリンパ液の流れを増大させるように構成されている。
【0083】
これより、本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈22内に設置された血液ポンプカテーテル70の概略図である
図2A及び
図2Bを参照する。典型的に、血液ポンプカテーテル70は、典型的にインペラ筺体26とインペラ50とを含む血液ポンプ24を含み、これらは全て概ね上述したものと同様である。インペラ筺体26(例えば筐体のフレーム34)は、典型的に、(例えば大静脈が腹腔内圧のため内部で虚脱する場合に備えて)大静脈の内壁をインペラから分離することで、大静脈がインペラによって損傷しないように、また、インペラが大静脈の内壁からの圧力によって変形しないように機能する。また、典型的に、インペラを貫通する軸方向シャフト92(
図7に示されている)が、インペラ筺体の近位端と遠位端にそれぞれ配置されたラジアル軸受116、118によって支持されている。
【0084】
いくつかのそのような適用例では、血液ポンプ支持フレーム32がインペラ筺体26の上流に配置され、大静脈の内壁に接触するよう構成されている。血液ポンプ支持フレーム32は、大静脈の内壁に接触することによって、インペラ筺体26の長手方向軸を、それによりインペラ50を、大静脈の局所長手方向軸と位置合わせするように構成されている。(いくつかの適用例では、血液ポンプ支持フレームはインペラの長手方向軸を大静脈の局所長手方向軸と完全には位置合わせしない場合があることに留意するべきである。しかしながら典型的には、血液ポンプ支持フレームは、この血液ポンプ支持フレームが存在しない場合のインペラの長手方向軸と大静脈の局所長手方向軸との位置合わせよりもインペラの長手方向軸を大静脈の局所長手方向軸と良好に位置合わせした状態に維持する。)典型的に、他の条件が等しければ、インペラ50による血液のポンピングの有効性が大きくなればなるほど、インペラの長手方向軸と大静脈の局所長手方向軸との位置合わせは良好になる。上述したように、それにもかかわらず、インペラの長手方向軸と大静脈の局所長手方向軸とのわずかな位置ずれ(例えば
図2Eに示されている)があっても、通常はインペラによる血液の有効なポンピングが行われることに留意するべきである。
【0085】
いくつかの適用例において、インペラ筺体26は、材料36(例えば、ポリエステル、ポリウレタン、及び/又は異なるポリマーのような血液不透過性材料)で少なくとも部分的に被覆されている形状記憶要素(ニチノール等)で作製されたフレーム34(例えば剛体又は半剛体のフレーム)を含む。典型的に、そのような適用例では、フレーム34の剛性が充分に大きいので、大静脈の内壁がフレーム34に加える圧力によってフレームが変形することはない。典型的に、材料36はインペラ筺体から血液ポンプ支持フレーム32まで延出して、血管壁に接触するように、及び、インペラを取り囲む及び/又はインペラの上流にある血管の領域で血管を閉塞するようになっている。材料は典型的に、インペラ筺体の遠位部分において貫通孔を画定する。材料は、インペラの外側の周囲で血液の逆流を閉塞するが、血液出口開口31として作用する孔によって、インペラ近傍の血管の中央領域で順行性血流を可能とするように構成されている。いくつかの適用例において、インペラ筺体の一部は、例えば以下で
図7を参照して記載するように、インペラ筺体の内側が内側ライニング39によって被覆されている(すなわちライニングされている)。いくつかのそのような適用例では、インペラ筺体の内側ライニングは、少なくとも部分的に材料36と重複する。いくつかの適用例において、内側ライニングは、材料36で画定された血液出口開口を拡張する。
【0086】
典型的に、血液ポンプカテーテル70の外側チューブ77内に駆動ケーブル78が配置されている(駆動ケーブルは例えば
図8Aに示されている)。典型的には、駆動ケーブルは、対象の身体外に配置されているモータ79から、インペラが配置されている軸方向シャフト92(
図7に示されている)まで延出している。モータは、駆動ケーブルを介して軸方向シャフトに回転運動を与える(これによってインペラに回転運動を与える)。典型的に、モータはコンピュータプロセッサ10によって制御される。いくつかの適用例において、モータは、圧力センサ75が実行する血圧測定に基づいて制御される。
【0087】
いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテルは更に、チューブ74内へ延出するじょうご72を含む。じょうごは、大静脈と対象の腎静脈との接合部の上流に設置されるよう構成され、全ての血流を腎臓下大静脈からチューブ74内へ誘導するよう構成されている。次いでチューブ74は、この血液が血液ポンプ24を迂回して(すなわち血液ポンプ24によってポンピングされることなく)副腎位置へ流れるように、血流を腎臓下位置から副腎位置へ誘導する。例えば、チューブ76は、血液ポンプを迂回しながらチューブ74から副腎位置まで延出し得る。
図2Aに血流の矢印で示されているように、これによって血液は、血液ポンプ24によってポンピングされることなく腎臓下大静脈から副腎大静脈へ流れる。これに対して、
図2Bに血流の矢印で示されているように、血液は血液ポンプ24によって、大静脈と腎静脈との接合部に隣接した大静脈の領域から副腎大静脈へポンピングされる。
【0088】
このように、大静脈内で血液ポンプカテーテル70を展開することによって、大静脈と腎静脈との接合部に隣接した大静脈の領域の血流は、腎臓下大静脈血流84及び副腎大静脈血流86とは別個の区画82に分離される。腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、(例えばじょうご72、チューブ74、及びチューブ76を通って流れることにより)受動的に発生する。血液は、血液ポンプを用いて区画82から副腎血流へ能動的にポンピングされる。このようにして、区画82の大静脈内には、対象の中心静脈圧よりも血圧が低い低圧領域が発生する。典型的に、低圧領域を発生させることで腎静脈から大静脈への血流が増大し、これによって腎血圧を低下させると共に腎灌流を増大させる。
【0089】
じょうご72、チューブ74、及びチューブ76の構成の具体例は単なる例示として示されており、本出願の範囲は、変更すべきところは変更して、血液ポンプ24でポンピングすることなく腎臓下大静脈から副腎大静脈へ血液を誘導するための血流経路60(すなわち血流チャネル)の他の任意の構成を用いることを含むことに留意するべきである。典型的に、じょうご72、チューブ74、及びチューブ76は、単一の連続した血流経路の各部分を備える。血流経路は典型的に、大静脈と腎静脈との接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口61と、材料36の下流側に開口する経路出口開口63との間を通っている。典型的に、
図2Aに示されているように、じょうご72は広い端部85と狭い端部87を画定する。じょうごの広い端部は典型的に血流経路への入口開口を画定し、じょうごの狭い端部は1つ以上のチューブ(例えばチューブ74及び76)内へ延出している。
【0090】
典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、血液ポンプカテーテルが存在しない場合の腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流と比べて実質的に変化しない。いくつかの適用例では、血流経路60の1つ以上の部分の直径を制御することで、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流を制御する。例えば、血流経路の1つ以上の部分(例えばじょうご72、チューブ74、及び/又は1つもしくは複数のチューブ76)の直径は、(例えば、これらの要素のうち1つの内部又は外部に配置された膨張可能/収縮可能コンポーネントを用いて)調節され得る。このようにして、例えば右心房に対する前負荷を制御することができる。
【0091】
いくつかの適用例において、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、例えば本明細書に記載されるように実行される圧力測定等の1つ以上の圧力測定に応じて(例えばそれに応じて自動的に)制御される。この代わりに又はこれに加えて、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流を定期的に調節してもよい(例えば上述したように)。例えば、医療従事者(又は別の人物)が、対象の状態の変化に応じて、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流を定期的に調節すればよい(例えば上述したように)。
【0092】
いくつかの適用例では、血流経路60の1つ以上の部分(例えばじょうご72、チューブ74、及びチューブ76)の直径は調節可能でなく、血流経路の少なくとも一部の直径は、(これらのコンポーネントが存在しない場合の血流レベルに比べて)腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流が低減して、右心房に対する前負荷を低減させるようなものである。
【0093】
これより、本発明のいくつかの適用例に従った、血圧測定チューブ71、73を含む血液ポンプカテーテルである血液ポンプカテーテル70の概略図である
図2Cを参照する。また、本発明のいくつかの適用例に従った、血圧測定チューブ73を含む血液ポンプカテーテル20を示す
図1Cも再び参照する。
【0094】
いくつかの適用例において、少なくとも1つの血圧測定チューブ71は、少なくともじょうご72及び/又はチューブ74の外面まで延出するように構成されて、血圧測定チューブの遠位端の開口がじょうご72及び/又はチューブ74の外側にある患者の血流(すなわち腎静脈血流)と直接に流体連通するようになっている。圧力センサ75は、血圧測定チューブ内の血圧を測定する。典型的に、血圧測定チューブ内の血圧を測定することにより、血圧センサは、腎静脈血圧を示すじょうご72及び/又はチューブ74の外側の対象の血圧を測定する。典型的に、血圧測定チューブ71は対象の身体外からチューブの遠位端の開口まで延出し、圧力センサは、例えば対象の身体外のようなチューブの近位端の近くに配置されている。いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサ10は、測定された血圧の指示を受信し、測定された血圧に応じてインペラによる血圧のポンピングを制御する。
【0095】
血液ポンプカテーテル20、血液ポンプカテーテル70、又は血液ポンプカテーテル90(以下で説明する)のいくつかの適用例において、少なくとも1つの血圧測定チューブ73は、少なくとも材料36の外面まで延出するように構成されて、血圧測定チューブの遠位端の開口が材料36の外側にある対象の血流と直接に流体連通するようになっている(例えば副腎大静脈血圧)。圧力センサ75は、血圧測定チューブ内の血圧を測定する。典型的に、血圧測定チューブ内の血圧を測定することにより、血圧センサは、
図1C及び
図2Cに示されている例では副腎大静脈血圧を示す材料36の外側の対象の血圧を測定する。典型的に、血圧測定チューブ73は対象の身体外からチューブの遠位端の開口まで延出し、圧力センサは、例えば対象の身体外のようなチューブの近位端の近くに配置されている。いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサ10は、測定された血圧の指示を受信し、測定された血圧に応じてインペラによる血圧のポンピングを制御する。いくつかの適用例において(例えば血液ポンプカテーテル70と共に使用される場合)、コンピュータプロセッサは、測定された血圧に応じて、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流を(例えば上述したように)調節する。いくつかの適用例において(例えば
図1A及び
図1Bに示されているような血液ポンプカテーテル20と共に使用される場合)、コンピュータプロセッサは、測定された血圧に応じて、閉塞要素40を拡張させる直径を調節する。
【0096】
上述した通り、典型的に、血液ポンプカテーテル20、70、及び90の外側チューブ77内に駆動ケーブル78が配置されている。(駆動ケーブルは例えば
図7Aに示されている)。典型的に、駆動ケーブルは、対象の身体外に配置されているモータ79から、インペラが配置されている軸方向シャフト92まで延出している。モータは、駆動ケーブルを介して軸方向シャフトに回転運動を与える(これによってインペラに回転運動を与える)。いくつかの適用例では、1つ以上の血圧測定チューブ71、73は外側チューブ77内に配置され、血圧測定チューブの長さの少なくとも一部に沿って駆動ケーブルを取り囲んでいる。
【0097】
図1C及び
図2Cに示されているように、血液ポンプカテーテル20又は血液ポンプカテーテル70のいくつかの適用例では、遠位端に外側チューブ77の開口83を画定する少なくとも1つの血圧測定チューブを用いて腎臓下大静脈血圧が測定される。この血圧測定チューブは、対象の身体外から対象の腎臓下大静脈内の外側チューブ77の外面まで延出するように構成されて、血圧測定チューブの遠位端の開口が対象の腎臓下大静脈血流と直接に流体連通するようになっている。圧力センサ75は、血圧測定チューブ内の血圧を測定することによって対象の腎臓下大静脈血圧を測定するよう構成されている。いくつかの適用例では(例えば
図1Aから
図1Cに示されているような血液ポンプカテーテル20と共に使用される場合)、概ね同様の方法で腎静脈圧が測定される(例えば、腎静脈と大静脈との接合部の近傍に配置された開口を画定する血圧測定チューブを用いる)。いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサ10は、測定された血圧の指示を受信し、測定された血圧に応じてインペラによる血圧のポンピングを制御する。いくつかの適用例において(例えば血液ポンプカテーテル70と共に使用される場合)、コンピュータプロセッサは、測定された血圧に応じて、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流を(例えば上述したように)調節する。いくつかの適用例において(例えば
図1A及び
図1Bに示されているような血液ポンプカテーテル20と共に使用される場合)、コンピュータプロセッサは、測定された血圧に応じて、閉塞要素40を拡張させる直径を調節する。
【0098】
典型的に、所与の回転速度でインペラを回転させる動力を供給するために必要な電力量と、インペラが発生する圧力差との間には、ある関係が存在する。(典型的に、インペラは、材料36の下流の大静脈領域に血圧をポンピングすることによって材料36の上流の大静脈領域の圧力を低下させ、これにより上流領域の血圧を低下させると共に、上流領域と下流領域との間の圧力差を発生させる。)いくつかの適用例では、(a)所与の回転速度でインペラを回転させるために必要なモータによる電力消費と(b)インペラが発生する圧力差との間の関係が既知となるように、較正測定を実行する。
【0099】
いくつかの適用例では、例えば、遠位端に外側チューブ77の開口83を画定する血圧測定チューブを用いて、及び/又は大静脈内の腎臓下位置に配置された圧力センサ(例えば圧電圧力センサ及び/又は光学センサ)を用いて、インペラ50及び被覆材料36の上流の血圧を測定する。いくつかのそのような適用例では、次いで、(a)測定された上流の血圧と、(b)その時点で所与の回転速度でインペラを回転させるのに必要なモータによる電力消費と、(c)所与の回転速度でインペラを回転させるのに必要なモータによる電力消費とインペラが発生する圧力差との所定の関係と、に基づいて、インペラ50及び被覆材料36の下流の血圧をコンピュータプロセッサによって計算する。いくつかの適用例では、インペラの回転速度を一定の速度に維持しながら上述の技法を実行する。この代わりに又はこれに加えて、インペラの回転速度を変動させ、上述の計算においてインペラの回転速度の変動を考慮に入れる。
【0100】
典型的に、材料36の血液出口開口31は既知の断面積を有する。いくつかの適用例では、インペラによって発生した決定された圧力差及び開口の既知の断面積に基づいて、インペラによって発生した血液出口開口を通る流れが決定される。いくつかの適用例において、そのような流れの計算は、この計算が実行される血液ポンプカテーテル(又は血液ポンプカテーテルの種類)に固有の流れ抵抗のようなファクタを考慮に入れるため、較正パラメータを組み込んでいる。
【0101】
いくつかの適用例において、血圧を測定するための上述の装置及び方法は、変更すべきところは変更して、
図1Aから
図1Cを参照して上述した血液ポンプカテーテル20と共に、
図2Aから2Fを参照して上述した血液ポンプカテーテル70と共に、
図3Aから
図3Bを参照して後述する血液ポンプカテーテル90と共に、及び/又は、
図4Aから
図4Bを参照して後述する血液ポンプカテーテル20と共に、使用される。
【0102】
これより、本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈22内に設置された血液ポンプカテーテル70の概略図である
図2Dを参照する。血液ポンプは非軸対称流出チューブ76を有する。
図2Dに示されているような血液ポンプカテーテル70は、
図2Aから
図2Cを参照して図示及び記載されているものと概ね同様である。しかしながら、
図2Aから
図2Cに示されている例の血液ポンプカテーテルは、血液ポンプカテーテルの長手方向軸の各側に配置された、チューブ74から副腎位置まで血液ポンプ24を迂回しながら延出する2つのチューブ76を含んでいた。これに対して、
図2Dに示されている例の血液ポンプカテーテルは、本発明のいくつかの適用例に従って、血液ポンプカテーテルの長手方向軸の一方側に配置された、チューブ74から副腎位置まで血液ポンプ24を迂回しながら延出する1つだけのチューブ76を含む。他の点では、
図2Dに示されている血液ポンプカテーテル70は、
図2Aから
図2Cを参照して図示及び記載されているものと概ね同様である。いくつかの適用例(図示せず)では、血液ポンプカテーテルは、血液ポンプカテーテルの長手方向軸の周りの各位置に配置された、チューブ74から副腎位置まで血液ポンプ24を迂回しながら延出する3つ以上のチューブ76を含む。
【0103】
これより、本発明のいくつかの適用例に従った、対象の大静脈22内に設置された血液ポンプカテーテル70の概略図である
図2Eを参照する。血液ポンプは、非軸対称流出チューブ76及び非軸対称血液ポンプ24を有する。また、本発明のいくつかの適用例に従った、対象の生体構造なしの
図2Eの血液ポンプカテーテルの概略図である
図2Fも参照する。
図2Dを参照して上述したように、いくつかの適用例において血液ポンプカテーテルは、血液ポンプカテーテルの長手方向軸の一方側に配置された、チューブ74から副腎位置まで血液ポンプ24を迂回しながら延出する1つだけのチューブ76を含む。いくつかのそのような適用例において、血液ポンプ24は、図示のように、血液ポンプカテーテルの長手方向軸の反対側で非軸対称の位置付けに配置されている。他の点では、
図2E及び
図2Fに示されている血液ポンプカテーテル70は、
図2Aから
図2Dを参照して図示及び記載されているものと概ね同様である。
【0104】
いくつかの適用例において、
図2Aから
図2Eを参照して上述されているような技法は血液ポンプ24が存在しない場合に実行される。すなわち、血液ポンプ24が存在しない場合、大静脈と腎静脈との接合部に隣接した大静脈の領域内の血流は、腎臓下大静脈血流84及び副腎大静脈血流86とは別個の区画82に分離される。いくつかのそのような適用例では、腎静脈から副腎大静脈血流86への血流に影響を与えることなく、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は受動的に(例えば上述したように)制御される。この代わりに又はこれに加えて、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流に影響を与えることなく、腎静脈から副腎大静脈血流86への血流は受動的に制御される。
【0105】
図2Aから
図2Eに関して、本発明の範囲は、同様の装置及び方法を、主要静脈に流れ込む支流静脈を含む対象の任意の静脈系に適用することを含むことに留意するべきである。例えば、同様の技法を肝静脈と大静脈との接合部で適用することも可能である。典型的に、そのような方法は、主要静脈と支流静脈との接合部に隣接した主要静脈の領域内の血流を、その上流及び下流の主要静脈内の血流から分離することと、ポンプを用いて、静脈と支流静脈との接合部に隣接した主要静脈の領域から支流静脈の下流にある主要静脈内の位置へ血液をポンピングすることと、対象の血液を、ポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、支流静脈の上流にある主要静脈内の位置から支流静脈の下流にある主要静脈内の位置へ流すことと、を含む。いくつかのそのような適用例では、鎖骨下静脈又は頸静脈内の静脈とリンパ管との接合部において、概ね同様の装置及び方法が用いられる。いくつかのそのような適用例において、血液ポンプカテーテル70は、変更すべきところは変更して、リンパ管から静脈内へのリンパ液の流れを増大させるように構成されている。一般に、本発明のいくつかの適用例の範囲は更に、静脈に流れ込む支流血管(例えばリンパ管)を含む対象の静脈系と共に用いられる装置及び方法を含む。典型的に、そのような方法は、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域内の流れを、その上流と下流の静脈内の血流から分離することと、ポンプを用いて、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域からその領域の下流にある静脈内の位置へ血液をポンピングすることと、対象の血液を、ポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、支流血管の上流にある静脈内の位置から支流血管の下流にある静脈内の位置へ流すことと、を含む。
【0106】
いくつかの適用例において、そのような方法は、静脈と支流血管との接合部の下流にある下流位置に下流閉塞要素(材料36等)を設置することによって、静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞することと、ポンプを用いて、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域から下流閉塞要素を介して血液をポンピングすることと、上流静脈血流をポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、静脈と支流血管との接合部の上流にある上流位置から閉塞要素の下流へ誘導することと、を含む。典型的に、このような方法は、材料36を含む血液ポンプカテーテル(血液ポンプカテーテル70等)を用いて実行される。材料36は、静脈と支流血管との接合部の下流にある下流位置に設置されるように、かつ、その下流位置で静脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成されている。この材料は血液出口開口31を画定する。血液ポンプ24は典型的に、静脈と支流血管との接合部に隣接した静脈の領域から材料で画定された血液出口開口を介して血液をポンピングするよう構成されている。血流経路60は典型的に、静脈と支流血管との接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口61と、材料36の下流側に開口する経路出口開口63との間を通っている。いくつかの適用例において、血流経路は、じょうご72及び1つ以上のチューブ(例えばチューブ74及び76)を含む。じょうご72は、静脈と支流血管との接合部の上流にある上流位置に配置されるよう構成され、1つ以上のチューブ74、76は、じょうごから材料の下流側へ延出するよう構成されている。じょうご及び1つ以上のチューブ(又は代替的な血流経路)は、上流静脈血流をポンプによってポンピングすることとなく上流位置から材料の下流へ誘導するよう構成されている。典型的に、
図2Aに示されているように、じょうご72は広い端部85と狭い端部87を画定する。じょうごの広い端部は典型的に血流経路への入口開口を画定し、じょうごの狭い端部は1つ以上のチューブ(例えばチューブ74及び76)内へ延出している。
【0107】
これより、本発明のいくつかの別の適用例に従った、血液ポンプカテーテル70の概略図である
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、
図3F、
図3G、及び
図3Hを参照する。
図3Aから
図3Hを参照して図示及び記載される血液ポンプカテーテル70は、以下に記載する相違点を除いて、
図2Aから
図2Fを参照して記載されているものと概ね同様である。
図3Aから
図3Hに示されているように、血液ポンプカテーテルは
図2E及び
図2Fに示されているものと概ね同様の設計を有することに留意するべきである(すなわち、(a)1つだけのチューブ76が血液ポンプカテーテルの長手方向軸の一方側に配置され、チューブ74から副腎位置まで血液ポンプ24を迂回しながら延出する。(b)血液ポンプ24は、血液ポンプカテーテルの長手方向軸の反対側で非軸対称の位置付けに配置されている)。しかしながら、本出願の範囲は、変更すべきところは変更して、
図3Aから
図3Hを参照して記載される血液ポンプカテーテル70の特徴部を、
図2Aから
図2Dを参照して上述した血液ポンプカテーテル70の設計のうちいずれか1つと組み合わせることを含む。
【0108】
次に
図3Aを参照すると、いくつかの適用例では、細長チューブ109がフレーム34から対象の肺動脈110まで延出して、血液出口開口31が肺動脈に配置されるようになっている。(いくつかの適用例では、材料36が血液出口開口を画定し、細長チューブは、材料が画定する血液出口開口から肺動脈内に配置された血液出口開口まで延出することに留意するべきである。)チューブ109は典型的に血液不透過性材料で作製される。例えばチューブ109は、ポリウレタン、ポリエステル、及び/又はシリコーンを含み得る。この代わりに又はこれに加えて、チューブは、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商用))で作製される。血液ポンプカテーテルは、区画82から対象の肺動脈内へ血液を直接ポンピングするよう構成されている。このようにして血液ポンプカテーテルは、対象の右心房に対する前負荷を増大することなく腎静脈圧を低下させる。
図2Aから
図2Fの記載によれば、典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は細長チューブを迂回する。典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、血流経路60(例えばじょうご72、チューブ74、及び1又は複数のチューブ76)を通って流れることにより受動的に発生する。
【0109】
図3Bを参照すると、いくつかの適用例において、細長チューブ109は、副腎大静脈血流86内に配置されて副腎血液入口開口112を画定する部分111を含む。インペラ50及びフレーム34は、典型的に副腎血液入口開口の下流に配置され、インペラは、区画82から細長チューブ109内へ血液をポンピングすることに加えて、副腎大静脈血流から細長チューブ109内へ血液入口開口112を介して血液をポンピングするように構成されている。
図3Aを参照して記載した通り、典型的に、細長チューブ109はフレーム34から対象の肺動脈110まで延出して、血液出口開口31が肺動脈内に配置されるようになっている。
図3Bに構成されているような血液ポンプカテーテル70は、典型的に、(区画82から血液をポンピングすることで)腎静脈圧を低下させるように、かつ、副腎大静脈血流から肺動脈へ血液をポンピングすることで対象の右心機能を支援するように構成されている。
図2Aから
図2Fの記載によれば、典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は細長チューブを迂回する。典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、血流経路60(例えばじょうご72、チューブ74、及び1つ又は複数のチューブ76)を通って流れることにより受動的に発生する。
【0110】
図3Cを参照すると、いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテル70を用いて腎静脈圧を低下させること(更に、任意選択として、
図3Bを参照して記載したように右心機能を支援すること)に加えて、対象の左心機能を支援するため、対象の左心室114内に左心室支援デバイス113が配置されている。いくつかの適用例において、左心室支援デバイスは、Tuvalに対する米国特許出願公開第16/750,354号(2020年1月23日に出願され、「Distal tip element for a ventricular assist device」と題する)、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0209758号、及び/又はTuvalに対する米国特許出願公開第2019/0175806号に記載されているような左心室支援デバイスである。これらの出願は全て援用により本願に含まれる。いくつかの適用例において、左心室支援デバイスは、Abiomed(登録商標)(米国マサチューセッツ州)によって製造された左心室支援デバイスを含み、例えば、Impella2.5(登録商標)、ImpellaCP(登録商標)、Impella5.5(登録商標)、及び/又はImpella5.0(登録商標)である。左心室支援デバイス113は
図3Bに示されている血液ポンプカテーテル70の例と組み合わせて使用されるように示されているが、本出願の範囲は、左心室支援デバイス113を本明細書に記載されている血液ポンプカテーテル70の例のうち任意のものと組み合わせて使用することを含むことに留意するべきである。
【0111】
次に
図3Dを参照すると、いくつかの適用例では、インペラ50とフレーム34の代わりに、細長血液ポンプチューブ104(典型的にはインペラを含む)が被覆材料36の血液出口開口内に配置されている。典型的に、被覆材料36及び/又は内側ライニング39(
図7)は、細長血液ポンプチューブの外面に密封して結合されている。例えば細長血液ポンプチューブは、Abiomed(米国マサチューセッツ州)により製造されたImpellaRP(登録商標)を含み得る。典型的に、細長血液ポンプチューブは、(細長血液ポンプチューブの上流部分内に配置された)血液入口エリア105を含み、このエリア105は、被覆材料36及び/又は内側ライニング39(
図7)に対して低い(すなわち上流の)位置に配置されている。インペラ106(典型的に、血液入口エリアに対して遠位に極めて近接して配置されている)は、血液を区画82から血液入口エリア内へポンピングし、更に細長血液ポンプチューブを介して、血液出口エリア107(細長血液ポンプチューブの下流部分内に配置されている)の外へポンピングする。
図3Aに示されている例では、血液出口エリアは副腎大静脈内に配置され、血液が副腎大静脈血流86内へポンピングされるようになっている。
図2Aから
図2Fの記載によれば、典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は細長血液ポンプチューブを迂回する。典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、血流経路60(例えばじょうご72、チューブ74、及び1又は複数のチューブ76)を通って流れることにより受動的に発生する。
【0112】
図3Eを参照すると、いくつかの適用例において、細長血液ポンプチューブ104は、血液入口エリア105及びインペラ106が副腎大静脈内に置かれるように配置されている。いくつかのそのような適用例では、強化チューブ115(例えば、形状記憶材料(例えばニチノール)フレーム及び/又は形状記憶材料(例えばニチノール)編組で支持されたポリマーにより作製されたチューブ)が、被覆材料36及び/又は内側ライニング39(
図7)の出口開口から細長血液ポンプチューブの血液入口エリアまで延出し、被覆材料36及び/又は内側ライニング39と細長血液ポンプチューブの血液入口エリアとの間のシールを形成する。このように、インペラ106は、区画82から血液入口エリア105内へ血液を引き入れる。典型的に細長血液ポンプチューブは、血液入口エリアから、対象の肺動脈110内に配置された血液出口エリア107まで延出している。いくつかの代替的な適用例(図示せず)では、細長血液ポンプチューブ自体が被覆材料36の上流から肺動脈110まで延出している(すなわち強化チューブ115は存在しない)。細長血液ポンプチューブは、区画82から対象の肺動脈内へ血液をポンピングするように構成されている。このようにして、血液ポンプカテーテル70は、対象の右心房に対する前負荷を増大することなく腎静脈圧を低下させる。
図2Aから
図2Fの記載によれば、典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は細長血液ポンプチューブを迂回する。典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、血流経路60(例えばじょうご72、チューブ74、及び1又は複数のチューブ76)を通って流れることにより受動的に発生する。
【0113】
次に
図3Fを参照すると、いくつかの適用例において、強化チューブ115は、副腎大静脈内に配置されている血液入口開口117を画定する。インペラ106及び血液入口エリア105は、典型的に血液入口開口117の下流に配置され、インペラは、細長血液ポンプチューブ104内へ血液をポンピングすることに加えて、副腎大静脈血流から細長血液ポンプチューブ104内へ血液入口開口117を介して血液をポンピングするように構成されている。
図3Eを参照して記載した通り、典型的に、細長血液ポンプチューブ104は副腎大静脈から対象の肺動脈110まで延出して、血液出口エリア107が肺動脈内に配置されるようになっている。
図3Fに構成されているような血液ポンプカテーテル70は、典型的に、(区画82から血液をポンピングすることで)腎静脈圧を低下させるように、かつ、副腎大静脈血流から肺動脈へ血液をポンピングすることで対象の右心機能を支援するように構成されている。
図2Aから
図2Fの記載によれば、典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は細長血液ポンプチューブを迂回する。典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、血流経路60(例えばじょうご72、チューブ74、及び1又は複数のチューブ76)を通って流れることにより受動的に発生する。
【0114】
次に
図3Gを参照すると、いくつかの適用例において、血液入口開口117は対象の右心室119内に配置され、インペラ106及び血液入口エリア105は血液入口開口の下流に配置されている。インペラは、細長血液ポンプチューブ104内へ血液をポンピングすることに加えて、右心室から細長血液ポンプチューブ104内へ血液入口開口117を介して血液をポンピングするように構成されている。典型的に、細長血液ポンプチューブ104は右心室から対象の肺動脈110まで延出して、血液出口エリア107が肺動脈に配置されるようになっている。
図3Gに構成されているような血液ポンプカテーテル70は、典型的に、(区画82から血液をポンピングすることで)腎静脈圧を低下させるように、かつ、右心室から肺動脈へ血液をポンピングすることで対象の右心機能を支援するように構成されている。
図2Aから
図2Fの記載によれば、典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は細長血液ポンプチューブを迂回する。典型的に、腎臓下大静脈血流84から副腎大静脈血流86への血流は、血流経路60(例えばじょうご72、チューブ74、及び1つ又は複数のチューブ76)を通って流れることにより受動的に発生する。
【0115】
次に
図3Hを参照すると、いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテル70は、(例えば
図3Dから
図3Gを参照して記載した例のうち任意のものに従った)細長血液ポンプチューブ104を含み、血液ポンプカテーテルは、(例えば
図3Cを参照して上述したように)対象の左心機能を支援するため、対象の左心室114内に展開されている左心室支援デバイス113と共に使用される。いくつかの適用例において、左心室支援デバイスは、Tuvalに対する米国特許出願公開第16/750,354号(2020年1月23日に出願され、「Distal tip element for a ventricular assist device」と題する)、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0209758号、及び/又はTuvalに対する米国特許出願公開第2019/0175806号に記載されているような左心室支援デバイスである。これらの出願は全て援用により本願に含まれる。いくつかの適用例において、左心室支援デバイスは、Abiomed(登録商標)(米国マサチューセッツ州)によって製造された左心室支援デバイスを含み、例えばImpella2.5(登録商標)、ImpellaCP(登録商標)、Impella5.5(登録商標)、及び/又はImpella5.0(登録商標)である。左心室支援デバイス113は
図3Fに示されている血液ポンプカテーテル70の例と組み合わせて使用されるように示されているが、本出願の範囲は、左心室支援デバイス113を本明細書に記載されている血液ポンプカテーテル70の例のうち任意のものと組み合わせて使用することを含むことに留意するべきである。
【0116】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、対象の腎動脈94の近傍で対象の下行大動脈80内に設置された血液ポンプカテーテル90の概略図である
図4A及び
図4Bを参照する。血液ポンプカテーテル90の構造は、
図2Aから
図2Fを参照して上述した血液ポンプカテーテル70のものと概ね同様である。しかしながら、血液ポンプカテーテル90の血液ポンプ24は典型的に、以下で詳述するように組織(腎臓等)の灌流を増大するため、血液を上流方向にポンピングするよう構成されている。
【0117】
典型的に、血液ポンプカテーテル90は、典型的にインペラ筺体26とインペラ50とを含む血液ポンプ24を含み、これらは全て概ね上述したものと同様である。インペラ筺体26(例えば筐体のフレーム34)は、典型的に、大動脈の内壁をインペラから分離することで、大動脈がインペラによって損傷しないように、また、インペラが大動脈の内壁からの圧力によって変形しないように機能する。また、典型的に、インペラを貫通する軸方向シャフト92(
図7に示されている)が、インペラ筺体の近位端と遠位端にそれぞれ配置されたラジアル軸受116、118によって支持されている。
【0118】
いくつかのそのような適用例では、血液ポンプ支持フレーム32がインペラ筺体26の上流に配置され、大動脈の内壁に接触するよう構成されている。血液ポンプ支持フレーム32は、大動脈の内壁に接触することによって、インペラ筺体26の長手方向軸を、それによりインペラ50を、大動脈の局所長手方向軸と位置合わせするように構成されている。(いくつかの適用例では、血液ポンプ支持フレームはインペラの長手方向軸を大動脈の局所長手方向軸と完全には位置合わせしない場合があることに留意するべきである。しかしながら典型的には、血液ポンプ支持フレームは、この血液ポンプ支持フレームが存在しない場合のインペラの長手方向軸と大動脈の局所長手方向軸との位置合わせよりもインペラの長手方向軸を大動脈の局所長手方向軸と良好に位置合わせした状態に維持する。)典型的に、他の条件が等しければ、インペラ50による血液のポンピングの有効性が大きくなればなるほど、インペラの長手方向軸と大動脈の局所長手方向軸との位置合わせは良好になる。上記のように、それにもかかわらず、インペラの長手方向軸とこれが配置されている血管の局所長手方向軸とのわずかな位置ずれ(例えば
図2Eに示されている)があっても、通常はインペラによる血液の有効なポンピングが行われることに留意するべきである。
【0119】
いくつかの適用例において、インペラ筺体26は、材料36(例えば、ポリエステル、ポリウレタン、及び/又は異なるポリマーのような血液不透過性材料)で少なくとも部分的に被覆されている形状記憶要素(ニチノール等)で作製されたフレーム34(例えば剛体又は半剛体のフレーム)を含む。典型的に、このような適用例では、フレーム34の剛性が充分に大きいので、大動脈の内壁がフレーム34に加える圧力によってフレームが変形することはない。典型的に、材料36はインペラ筺体から血液ポンプ支持フレーム32まで延出して、血管壁に接触するように、及び、インペラを取り囲む及び/又はインペラの上流にある血管の領域で血管を閉塞するようになっている。材料は典型的に、インペラ筺体の遠位部分において貫通孔を画定する。この孔は、インペラによる血液のポンピング中に血液入口開口98として作用するよう構成されている。いくつかの適用例において、インペラ筺体の一部は、例えば以下で
図7を参照して記載するように、インペラ筺体の内側が内側ライニング39によって覆われている(すなわちライニングされている)。いくつかのそのような適用例では、インペラ筺体の内側ライニングは、少なくとも部分的に材料36と重複する。いくつかの適用例において、内側ライニングは、材料36で画定された血液入口開口を拡張する。
【0120】
典型的に、血液ポンプカテーテル90の外側チューブ77内に駆動ケーブル78が配置されている(駆動ケーブルは例えば
図8Aに示されている)。典型的には、駆動ケーブルは、対象の身体外に配置されているモータ79から、インペラが配置されている軸方向シャフト92(
図7に示されている)まで延出している。モータは、駆動ケーブルを介して軸方向シャフトに回転運動を与える(これによってインペラに回転運動を与える)。典型的に、モータはコンピュータプロセッサ10によって制御される。いくつかの適用例において、モータは、圧力センサ75が実行する血圧測定に基づいて制御される。
【0121】
いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテルは更に血流経路60を含む。いくつかの適用例において、血流経路60は、チューブ74内へ延出するじょうご72を含む。じょうごは、大動脈と対象の腎動脈との接合部の上流に設置されるよう構成され、全ての血流を副腎大動脈からチューブ74内へ誘導するよう構成されている。次いでチューブ74は、この血液が血液ポンプ24を迂回して(すなわち血液ポンプ24によってポンピングされることなく)腎臓下位置へ流れるように、血流を副腎大動脈位置から腎臓下大動脈位置へ誘導する。例えば、1つ以上のチューブ76は、血液ポンプを迂回しながらチューブ74から腎臓下位置まで延出し得る。
図4Aに血流の矢印で示されているように、これによって血液は、血液ポンプ24によってポンピングされることなく副腎大動脈から腎臓下大動脈へ流れる。これに対して、
図4Bに血流の矢印で示されているように、血液は血液ポンプ24によって腎臓下大動脈から腎動脈94へポンピングされる。典型的に、腎動脈への血液のポンピングは腎灌流を増大させる。
【0122】
このように、血液ポンプカテーテル90を展開することによって、大動脈と腎動脈との接合部に隣接した大動脈の領域内の血流は、副腎大動脈血流95及び腎臓下大動脈血流99とは別個の区画97に分離される。副腎大動脈血流95から腎臓下大動脈血流99への血流は、(例えば血流経路60を通って流れることにより)受動的に発生する。血液は、血液ポンプを用いて腎臓下大動脈血流99から区画97へ能動的にポンピングされる。
【0123】
じょうご72、チューブ74、及びチューブ76の構成の具体例は単なる例示として示されており、本出願の範囲は、変更すべきところは変更して、血液ポンプ24でポンピングすることなく副腎大動脈血流から腎臓下大動脈血流へ血液を誘導するための血流経路の他の任意の構成を用いることを含むことに留意するべきである。いくつかの適用例において、じょうご72、チューブ74、及びチューブ76は、単一の連続した血流経路の各部分を備える。血流経路は典型的に、大動脈と腎動脈との接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口61と、材料36の下流側に開口する経路出口開口63との間を通っている。典型的に、じょうご72は広い端部85と狭い端部87を画定する。じょうごの広い端部は典型的に血流経路への入口開口を画定し、じょうごの狭い端部は1つ以上のチューブ(例えばチューブ74及び76)内へ延出している。
【0124】
典型的に、副腎大動脈血流95から腎臓下大動脈血流99への血流は、血液ポンプカテーテルが存在しない場合の副腎大動脈血流95から腎臓下大動脈血流99への血流と比べて実質的に変化しない。いくつかの適用例では、血流経路の1つ以上の部分の直径を制御することで、副腎大動脈血流95から腎臓下大動脈血流99への血流を制御する。例えば、血流経路の1つ以上の部分(例えばじょうご72、チューブ74、及び/又は1つもしくは複数のチューブ76)の直径は、(例えば、これらの部分のうち1つの内部又は外部に配置された膨張可能/収縮可能コンポーネントを用いて)調節され得る。このようにして、例えば下半身に対する血液供給を制御することができる。
【0125】
図4Aから
図4Bに関して、本発明の範囲は、同様の装置及び方法を、分岐動脈(典型的に組織を供給する)に流れ込む主要動脈を含む対象の任意の動脈系に適用することを含むことに留意するべきである。例えば、同様の技法を大動脈と肝動脈(肝臓を供給する)との接合部で適用することも可能である。典型的に、そのような方法は、主要動脈と分岐動脈との接合部に隣接した主要動脈の領域内の血流を、その上流及び下流の主要動脈内の血流から分離することと、ポンプを用いて、主要動脈から主要動脈と分岐動脈との接合部に隣接した主要動脈の領域へ血液をポンピングすることで、組織の灌流を増大させることと、対象の血液をポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、分岐動脈の上流にある主要動脈内の位置から分岐動脈の下流にある主要動脈内の位置へ流すことと、を含む。いくつかの適用例において、そのような方法は、主要動脈と分岐動脈との接合部の下流にある下流位置に下流閉塞要素(例えば材料36)を設置することによって、主要動脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞することと、ポンプ(例えば血液ポンプ24)を用いて、主要動脈と分岐動脈との接合部に隣接した主要動脈の領域から下流閉塞要素を介して血液をポンピングすることによって、組織の灌流を増大させることと、上流主要動脈血流をポンプでポンピングすることなく、ポンプを迂回するよう誘導することによって、主要動脈と分岐動脈との接合部の上流にある上流位置から閉塞要素の下流へ誘導することと、を含む。典型的に、材料36を含む血液ポンプカテーテル90のような血液ポンプカテーテルが用いられる。材料36は、主要動脈と分岐動脈との接合部の下流にある下流位置に設置されるように、かつ、その下流位置で主要動脈を流れる血流を少なくとも部分的に閉塞するように構成されている。この材料は血液入口開口98を画定する。血液ポンプ24は典型的に、主要動脈から主要動脈と分岐動脈との接合部に隣接した主要動脈の領域の方へ血液入口開口を介して血液をポンピングするよう構成されている。血流経路60は典型的に、主要動脈と分岐動脈との接合部の上流にある上流位置に配置された経路入口開口61と、材料36の下流側に開口する経路出口開口63との間を通っている。いくつかの適用例において、血流経路は、じょうご72及び1つ以上のチューブ(例えばチューブ74及び76)を含む。じょうご72は、主要動脈と分岐動脈との接合部の上流にある上流位置に配置されるよう構成され、1つ以上のチューブ74、76(又は代替的な血流経路)は、じょうごから材料の下流側へ延出するよう構成されている。じょうご及び1つ以上のチューブ(又は代替的な血流経路)は典型的に、上流主要動脈血流をポンプによってポンピングすることとなく上流位置から材料の下流へ誘導するよう構成されている。典型的に、じょうご72は広い端部85と狭い端部87を画定する。じょうごの広い端部は典型的に血流経路への入口開口を画定し、じょうごの狭い端部は1つ以上のチューブ(例えばチューブ74及び76)内へ延出している。
【0126】
これより、本発明のいくつかの適用例に従った、対象の下行大動脈80内に設置された血液ポンプカテーテル20の概略図である
図5Aから
図5Bを参照する。典型的に、血液ポンプカテーテル20は概ね上述した通りであり、典型的にインペラ筺体26とインペラ50とを含む血液ポンプ24を含み、これらは全て概ね上述したものと同様である。インペラ筺体26(例えば筐体のフレーム34)は、典型的に、大動脈の内壁をインペラから分離することで、大動脈がインペラによって損傷しないように、また、インペラが大動脈の内壁からの圧力によって変形しないように機能する。また、典型的に、インペラを貫通する軸方向シャフト92(
図7に示されている)が、インペラ筺体の近位端と遠位端にそれぞれ配置されたラジアル軸受116、118によって支持されている。
【0127】
いくつかのそのような適用例では、血液ポンプ支持フレーム32がインペラ筺体26の上流に配置され、大動脈の内壁に接触するよう構成されている。血液ポンプ支持フレーム32は、大動脈の内壁に接触することによって、インペラ筺体26の長手方向軸を、それによりインペラ50を、大動脈の局所長手方向軸と位置合わせするように構成されている。(いくつかの適用例では、血液ポンプ支持フレームはインペラの長手方向軸を大動脈の局所長手方向軸と完全には位置合わせしない場合があることに留意するべきである。しかしながら典型的には、血液ポンプ支持フレームは、この血液ポンプ支持フレームが存在しない場合のインペラの長手方向軸を大動脈の局所長手方向軸との位置合わせよりもインペラの長手方向軸を大動脈の局所長手方向軸と良好に位置合わせした状態に維持する。)典型的に、他の条件が等しければ、インペラ50による血液のポンピングの有効性が大きくなればなるほど、インペラの長手方向軸と大動脈の局所長手方向軸との位置合わせは良好になる。
【0128】
いくつかの適用例において、インペラ筺体26は、材料36(例えば、ポリエステル、ポリウレタン、及び/又は異なるポリマーのような血液不透過性材料)で少なくとも部分的に被覆されている形状記憶要素(ニチノール等)で作製されたフレーム34(例えば剛体又は半剛体のフレーム)を含む。典型的に、そのような適用例では、フレーム34の剛性が充分に大きいので、大動脈の内壁がフレーム34に加える圧力によってフレーム34が変形することはない。典型的に、材料36はインペラ筺体から血液ポンプ支持フレーム32まで延出して、血管壁に接触するように、及び、インペラを取り囲む及び/又はインペラの上流にある血管の領域で血管を閉塞するようになっている。材料は典型的に、インペラ筺体の遠位部分において貫通孔を画定する。材料は、インペラの外側の周囲で血液の逆流を閉塞するが、血液出口開口31として作用する孔によって、インペラ近傍の血管の中央領域で順行性血流を可能とするように構成されている。いくつかの適用例において、インペラ筺体の一部は、例えば以下で
図7を参照して記載するように、インペラ筺体の内側が内側ライニング39によって被覆されている(すなわちライニングされている)。いくつかのそのような適用例では、インペラ筺体の内側ライニングは、少なくとも部分的に材料36と重複する。いくつかの適用例において、内側ライニングは、材料36で画定された血液出口開口を拡張する。
【0129】
典型的に、血液ポンプカテーテル90の外側チューブ77内に駆動ケーブル78が配置されている(駆動ケーブルは例えば
図8Aに示されている)。典型的には、駆動ケーブルは、対象の身体外に配置されているモータ79から、インペラが配置されている軸方向シャフト92(
図7に示されている)まで延出している。モータは、駆動ケーブルを介して軸方向シャフトに回転運動を与える(これによってインペラに回転運動を与える)。典型的に、モータはコンピュータプロセッサ10によって制御される。いくつかの適用例において、モータは、圧力センサ75が実行する血圧測定に基づいて制御される。被覆材料36は実質的に下行大動脈を2つの区画に分離し、血液ポンプは上流区画から下流区画へ血液をポンピングする。このようにして、血液ポンプは典型的に大動脈血流を増大させる及び/又は左心室後負荷を低減させる。
【0130】
図5Aを参照すると、いくつかの適用例において、血液ポンプは、大腿動脈のような下行動脈よりも下方にある動脈を介して下行大動脈内に挿入される。この代わりに又はこれに加えて、
図5Bに示されているように、血液ポンプは、例えば橈骨動脈又は鎖骨下動脈のような下行大動脈よりも上方にある大動脈を介して下行大動脈内に挿入される。いくつかの適用例において、血液ポンプカテーテルは、変更すべきところは変更して、下行大動脈でなく対象の大動脈弓内に挿入される。
【0131】
いくつかの適用例において、インペラ50、インペラ筺体26、フレーム34、及び/又は本明細書に記載されている血液ポンプカテーテルの他のコンポーネントは、Tuvalに対する米国特許出願公開第16/750,354号(2020年1月23日に出願され、「Distal tip element for a ventricular assist device」と題する)、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0209758号、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0239998号、及び/又はTuvalに対する米国特許出願公開第2019/0175806号(これらの出願は全て援用により本願に含まれる)に記載されているコンポーネントと同様の特徴を有する。例えば、これらの特徴のうちいくつかは
図6Aから
図8Cを参照して後述される。
【0132】
次に、本発明のいくつかの適用例に従ったインペラ50及びその一部の概略図である
図6Aから
図6Cを参照する。典型的に、インペラは、中心軸ばね54の周りに巻かれた少なくとも1つの外側らせん細長要素52を含み、らせん細長要素によって画定されるらせん形が中心軸ばねと同軸であるようになっている。典型的に、インペラは2つ以上のらせん細長要素(例えば、
図6Aから
図6Cに示されているような3つのらせん細長要素)を含む。いくつかの適用例において、らせん細長要素と中心軸ばねは、例えばニチノール等の形状記憶合金のような形状記憶材料で作製される。典型的に、らせん細長要素と中心軸ばねの各々は、それらの間に材料(例えば、ポリウレタン及び/又はシリコーン等のエラストマ)のフィルム56を支持している。いくつかの適用例において、材料のフィルムは、例えばこの材料のフィルムを強化するため、内部に埋め込まれたニチノール片を含む。説明の目的のため、
図6Aではインペラは材料なしで示されている。
図6B及び
図6Cはそれぞれ、らせん細長要素とばねとの間に材料が支持されているインペラの図を示す。
【0133】
らせん細長要素の各々は、らせん細長要素からばねまで延出しているフィルムと共に、インペラ羽根を画定する。らせん細長要素は羽根の外縁を画定し、軸ばねはインペラの軸を画定する。典型的に、材料のフィルムはばねに沿って延出してばねを覆っている。いくつかの適用例では、例えば、援用により本願に含まれるSchwammenthalに対する米国特許出願公開第2016/0022890号に記載されているように、らせん細長要素に縫合糸(suture)53(例えば
図6B及び
図6Cに示されているポリエステル縫合糸)が巻かれている。典型的に、縫合糸は、材料(典型的にはポリウレタン又はシリコーン等のエラストマである)のフィルムと、らせん細長要素(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の接合を促進するよう構成されている。いくつかの適用例では、ばね54に縫合糸(例えばポリエステル縫合糸であるが、図示されていない)が巻かれている。典型的に、縫合糸は、材料(典型的にはポリウレタン又はシリコーン等のエラストマである)のフィルムと、ばね(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の接合を促進するよう構成されている。
【0134】
図6Cの拡大
図AとBは、らせん細長要素52に縫合糸を結び付ける2つの代替的な方法を示す。いくつかの適用例では、拡大
図Aに示されているように、縫合糸はらせん細長要素の外面に結び付けられる。あるいは、拡大
図Bに示されているように、らせん細長要素は外面に溝48を画定し、これらの溝内に縫合糸が埋め込まれる。溝内に縫合糸を埋め込むことによって、縫合糸は通常インペラの外側形状を拡大させず、インペラの外側形状はらせん細長要素の外面によって画定される。
【0135】
典型的に、ばね54及びらせん細長要素52の近位端は、相互にインペラの長手方向軸から同様の半径方向距離に配置されるように、インペラの近位ブッシング(すなわちスリーブ軸受)64から延出している。同様に、典型的には、ばね54及びらせん細長要素52の遠位端は、相互にインペラの長手方向軸から同様の半径方向距離に配置されるように、インペラの遠位ブッシング58から延出している。典型的に、インペラのばね54、並びに近位ブッシング64及び遠位ブッシング58は、それらの内部に内腔62を画定する(
図6Cに示されている)。
【0136】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、血液ポンプカテーテル20、70、又は90のフレーム34内に配置されたインペラ50の概略図である
図7を参照する。いくつかの適用例では、フレーム34の少なくとも一部の内部で、内側ライニング39がフレームをライニングしている。それぞれの適用例に従って、内側ライニングは、ライニングしているフレーム部分において被覆材料36と部分的に又は完全に重複する。
図7に示されている適用例では、内側ライニングはフレームの円筒部38の内側をライニング(すなわち被覆)し、被覆材料36はフレームの円筒部を被覆していない。このような適用例では、内側ライニングは血液ポンプの血液入口開口又は血液出口開口を拡張する。
【0137】
図7に示されている通り、典型的に、インペラ50の外縁と内側ライニング39との間には、インペラの羽根幅(span)が最大である位置においてもギャップGが存在する。いくつかの適用例では、インペラが血液を効率的にポンピングするため、インペラの羽根の外縁と内側ライニング39との間のギャップは比較的小さいことが望ましい。しかしながら、例えば溶血のリスクを低減するため、インペラの羽根の外縁と内側ライニング39との間のギャップは、フレーム34内でのインペラの回転中ずっと実質的に一定に維持されることも望ましい。
【0138】
いくつかの適用例では、インペラ及びフレーム34が双方とも半径方向に制約されていない構成に配置されている場合、インペラの羽根幅が最大である位置におけるインペラの外縁と内側ライニング39との間のギャップGは、0.05mmより大きい(例えば0.1mmより大きい)、及び/又は1mmより小さい(例えば0.4mmより小さい)。例えば、ギャップGは0.05~1mm、又は0.1~0.4mmである。いくつかの適用例では、インペラが半径方向に制約されていない構成に配置されている場合、インペラの外径が最大である位置におけるインペラの外径は、7mmより大きい(例えば8mmより大きい)、及び/又は10mmより小さい(例えば9mmより小さい)。例えば、この外径は7~10mm、又は8~9mmである。いくつかの適用例では、フレーム34が半径方向に制約されていない構成に配置されている場合、フレーム34の円筒部38の内径(フレームの一方側における内側ライニング39の内側からフレームの反対側における内側ライニングの内側まで測定される)は、7.5mmより大きい(例えば8.5mmより大きい)、及び/又は10.5mmより小さい(例えば9.5mmより小さい)。例えば、この内径は7.5~10.5mm、又は8.5~9.5mmである。いくつかの適用例では、フレームが半径方向に制約されていない構成に配置されている場合、フレーム34の円筒部38の外径は8mmより大きい(例えば9mmより大きい)、及び/又は13mmより小さい(例えば12mmより小さい)。例えば、この外径は8~13mm、又は9~12mmである。
【0139】
典型的に、軸方向シャフト92は、インペラの内腔62を通ってインペラ50の軸を貫通している。更に典型的には、軸方向シャフトは剛体であり、例えば剛体チューブである。いくつかの適用例では、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。軸方向シャフト自体は、近位ラジアル軸受116と遠位ラジアル軸受118によって半径方向に安定している。(
図7では、遠位ラジアル軸受118は遠位端要素108の下に配置されているので見えないことに留意するべきである。しかしながら他の図では、例えば
図1Aから
図1C、
図2Aから
図2E、及び
図4Aから
図4Bに示されている実施形態では、遠位ラジアル軸受は見える)。また、軸方向シャフトは、インペラが画定する内腔62を貫通することにより、フレーム34の内面に対してインペラを半径方向に安定させるので、インペラの回転中、インペラの羽根の外縁とフレーム34の内面との間の比較的小さいギャップ(例えば上述したようなギャップ)であっても維持されるようになっている。
【0140】
再び
図6Aから
図6Cを参照すると、いくつかの適用例において、インペラは、中心軸ばね54から外側のらせん細長要素52まで延出している複数の細長要素67を含む。細長要素は典型的に可撓性であるが、細長要素が画定する軸に沿って実質的に非伸縮性である。更に典型的には、インペラに力が作用して、らせん細長要素が半径方向外側に動くことで、(細長要素が存在しない場合の)らせん細長要素と中心軸ばねとの間の分離が細長要素の長さよりも大きくならない限り、細長要素の各々は、らせん細長要素に力を加えないように構成されている。例えば細長要素は、糸(ポリエステル、及び/又は別のポリマー、又は繊維を含む天然材料等)、及び/又はワイヤ(ニチノールワイヤ、及び/又は異なる合金もしくは金属で作製されたワイヤ)を含み得る。
【0141】
いくつかの適用例において、細長要素67は、らせん細長要素(インペラ羽根の外縁を画定する)を中心軸ばねに対して所与の距離内に維持する。このようにして、細長要素は、インペラの回転中にインペラに加わる力によってインペラの外縁が半径方向外側に押しやられるのを防ぐように構成されている。細長要素はこれにより、インペラの回転中にインペラの羽根の外縁とフレーム34の内側ライニング39との間のギャップを維持するように構成されている。典型的に、インペラでは2つ以上(例えば3つ以上)及び/又は7つ以下(例えば3つ以下)の細長要素67が用いられ、細長要素の各々は典型的に二重になっている(すなわち、中心軸ばね54から外側らせん細長要素52へ半径方向に延出し、次いでらせん細長要素から中心軸ばねへ戻っている)。いくつかの適用例では、複数の細長要素が1本の糸又は1本のワイヤから形成され、各細長要素はばねかららせん細長要素へ延出し、次いでばねへ戻っている。これについては以下で詳述する。
【0142】
いくつかの適用例において、インペラは以下のように製造される。ニチノール等の形状記憶材料のチューブから、近位ブッシング64、遠位ブッシング58、及びらせん細長要素52を切断する。チューブの切断と形状記憶材料の形状設定は、典型的に、例えばSchwammenthalに対する米国特許出願公開第2016/0022890号に記載されているのと概ね同様の技法を用いて、らせん細長要素が形状記憶材料によって画定されるように実行される。典型的に、切断及び形状設定したチューブ内にばね54を挿入して、ばねが少なくとも近位ブッシングから遠位ブッシングまでチューブの長さに沿って延出するようにする。いくつかの適用例において、ばねは、軸方向に圧縮した状態で切断及び形状設定したチューブ内に挿入され、近位ブッシングと遠位ブッシングに半径方向の力を加えることでチューブに対して所定位置に保持されるよう構成されている。この代わりに又はこれに加えて、ばねの各部分を近位及び遠位ブッシングに溶接する。いくつかの適用例において、ばねはニチノール等の形状記憶材料のチューブから切断される。いくつかのそのような適用例において、ばねは、半径方向に制約されていない構成(典型的にインペラの動作中にばねが配置される)に配置されている場合、ばねの巻線と隣接した巻線との間には実質的にギャップが存在しないように構成されている。
【0143】
いくつかの適用例において、上述のように切断及び形状設定したチューブ内にばね54を挿入した後、上述した細長要素67を、ばねとらせん細長要素のうち1つ以上との間に延出するよう設置する。これは例えば以下のように行われる。ばね及びブッシングにより画定された内腔に、マンドレル(例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及び/又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)マンドレル)を挿入する。次いで、糸又はワイヤを、(a)マンドレルかららせん細長要素のうち第1のものへ延出させ、(b)らせん細長要素のうち第1のものからマンドレルへ戻し、(c)マンドレルに巻き、更に、らせん細長要素のうち第2のものへ延出させ、(d)らせん細長要素のうち第2のものからマンドレルへ戻す等とすることによって装着する。一度、糸又はワイヤをマンドレルかららせん細長要素の各々へ延出させてから戻したら、糸又はワイヤの端部を、例えば相互に結ぶことによって相互に結合させる。いくつかの適用例では、インペラ製造の次の段階で、材料(典型的にはポリウレタン又はシリコーン等のエラストマである)のフィルムと、らせん細長要素(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の接合を促進するため、らせん細長要素に縫合糸53(例えばポリエステル縫合糸)を巻く。いくつかの適用例では、ばね54に縫合糸(例えばポリエステル縫合糸であるが、図示されていない)を巻く。典型的に、縫合糸は、インペラ製造の次の段階で、材料(典型的にはポリウレタン又はシリコーン等のエラストマである)のフィルムと、ばね(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の接合を促進するよう構成されている。
【0144】
典型的に、この段階で、
図6Aに示されているような構造59が組み立てられている。この構造は、近位ブッシング及び遠位ブッシング、らせん細長要素、並びにばね(更に、任意選択的に細長要素及び縫合糸)を画定する、切断及び形状設定したチューブを含む。この構造を、フィルム56を画定する材料に浸す。いくつかの適用例において、組み立てられた構造は、ばね及びブッシングで画定された内腔内にマンドレルを配置した状態で材料に浸されるが、
図6Aにはマンドレルが図示されていないことに留意するべきである。典型的に、フィルムを作製する材料はシリコーン及び/又はポリウレタン(及び/又は同様のエラストマ)であり、組み立てられた構造は、材料が未硬化の液体状態である間に材料に浸される。この後、例えば材料を乾燥させることで固まるように硬化させる。材料が一度乾燥したら、マンドレルは典型的にブッシング及びばねで画定された内腔から除去される。
【0145】
上述したプロセスの結果として、典型的に、材料の連続したフィルムが、らせん細長要素の各々とばねとの間に延出すると共に、ばねの長さに沿って延出して、ばねが内部に埋め込まれたチューブを画定する。らせん細長要素の各々からばねまで延出しているフィルムの各部分は、インペラ羽根を画定する。インペラが細長要素67を含む適用例では、細長要素は典型的にフィルムのこれらの部分に埋め込まれている。
【0146】
典型的に、インペラ50は、半径方向に制約された構成である状態で対象の身体内へ挿入される。半径方向に制約された構成では、らせん細長要素52と中心軸ばね54は双方とも軸方向に長くなり、半径方向に制約される。典型的に、材料(例えばシリコーン及び/又はポリウレタン)のフィルム56は、らせん細長要素と軸方向支持ばね(双方とも材料のフィルムを支持している)の形状変化と一致するように形状が変化する。典型的に、ばねを用いてフィルムの内縁を支持することにより、フィルムの内縁が接合する大きい表面積がばねによって与えられるので、フィルムは破損又は倒壊することなく形状を変化させることができる。いくつかの適用例では、ばねを用いてフィルムの内縁を支持すると、ばねを軸方向に長くすることによってばね自体の直径を縮小できるので、例えば剛体シャフトを用いてフィルムの内縁を支持する場合に比べて小さい直径までインペラを半径方向に制約することができる。
【0147】
いくつかの適用例において、インペラ50の近位ブッシング64は、軸方向シャフト92に対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにこのシャフトに結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。いくつかの適用例において、インペラを対象の身体内に挿入するため又はインペラを対象の身体外へ引き出すためにインペラが半径方向に制約される場合、遠位ブッシングが軸方向シャフトに沿って遠位方向にスライドすることにより、インペラは軸方向に長くなる。対象の身体内で解放された後、
図6Aから
図6Cに示されているように、インペラは半径方向に制約されていない構成(典型的にインペラの動作中にインペラが配置される)になる。
【0148】
説明の目的のため、いくつかの図においてインペラ50は、
図6Aから
図6Cに関して図示及び記載されているインペラの特徴部の全てを含まずに図示されていることに留意するべきである。本出願の範囲は、
図6Aから
図6Cに関して図示及び記載されている特徴部のうち任意のものを備えたインペラを、本明細書に記載されている装置及び方法のうち任意のものと組み合わせて使用することを含む。
【0149】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、インペラ50又はその一部の概略図である
図6D、
図6E、及び
図6Fを参照する。上述したように、いくつかの適用例においてインペラ50は縫合糸53を含む。縫合糸53は、らせん細長要素52に巻かれ、材料(典型的にはポリウレタン又はシリコーン等のエラストマである)のフィルムと、らせん細長要素(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の接合を促進するよう構成されている。
【0150】
縫合糸53の代わりに又は縫合糸53に加えて、いくつかの適用例では、
図6Dに示されているように、コイル68がらせん細長要素に巻かれている(又はらせん細長要素上に配置されている)。例えば、密に巻いたコイル(例えば密に巻いたニチノールコイル)を、らせん細長要素の各々に巻く(又はらせん細長要素の各々の周りに配置する)ことができる。コイルは典型的に、材料とらせん細長要素との間の界面において材料が接合する表面積を拡大することにより、材料のフィルムとらせん細長要素との間の接合を促進する。いくつかの適用例において、構造59はモジュール式に形成されている(例えば
図6Fを参照して後述するように)。いくつかのそのような適用例では、インペラの近位ブッシング及び遠位ブッシングに細長要素を結合する前に、(例えば、細長要素上にコイル全体を単一動作でスライドさせることによって)細長要素52の各々の周りにコイルを配置する。
【0151】
更に、縫合糸53の代わりに又は縫合糸53に加えて、いくつかの適用例では、
図6Eに示されているように、スリーブ69がらせん細長要素の周りに配置されている。例えば、このようなスリーブはポリエステル等のポリマーで作製され得る。スリーブは典型的に、材料とらせん細長要素との間の界面において材料が接合する表面積を拡大することにより、材料のフィルムとらせん細長要素との間の接合を促進する。いくつかの適用例において、スリーブは、細長要素を作製する典型的に比較的高い剛性を有する(典型的にニチノールである)材料と、フィルム56を作製する典型的に比較的低い剛性を有するエラストマである材料との間の仲介物として機能する。スリーブはこれにより、材料が乾燥した場合に材料とらせん細長要素との結合の強度を向上させる。いくつかの適用例において、スリーブ69は構造59に適用される。いくつかのそのような適用例では、スリーブをらせん細長要素52の周りに配置可能とするため、スリーブに長手方向スリットが形成されている。らせん細長要素52の周りに配置した後、スリットを閉じる(例えばスリットを閉じた状態に縫合又は接着することによって)。いくつかの適用例では、構造59はモジュール式に形成されている(例えば
図6Fを参照して後述するように)。いくつかのそのような適用例では、インペラの近位ブッシング及び遠位ブッシングに細長要素を結合する前に、細長要素52の周りにスリーブを配置する。
【0152】
更に、縫合糸53の代わりに又は縫合糸53に加えていくつかの適用例では、細長要素52は、丸い(例えば円形の)断面を有するような形状であり、これは
図6Fの右部分に示されている(丸い断面を有する細長要素の断面図を示す)。
図6Fの左部分は、細長要素が丸くない断面(例えば方形又は矩形の断面)を有する場合の、フィルム56の材料が結合された細長要素52の断面図を示す。図示のように、フィルムを作製する材料(例えばシリコーン及び/又はポリウレタン)は、丸くない断面を有する細長要素のコーナで薄い層を形成することがある。これに対して、
図6Fの左部分で示されているように細長要素が丸い断面を有する場合、材料は典型的に、細長要素との界面において実質的に均一な厚さを有する層を形成する。従って、いくつかの適用例において細長要素は丸い断面を有する。
【0153】
いくつかの適用例において、近位及び遠位ブッシング64、58並びに細長要素52は、例えば上述したように合金チューブから切断される。そのような適用例では、チューブを切断した後、細長要素は典型的に丸くない縁部を有する。従っていくつかの適用例では、チューブを切断した後に、例えば研削、サンドブラスト、タンブリング仕上げ、エッチング、プラズマ、表面帯電を用いて、及び/又は細長要素に丸い縁部を加えることによって、細長要素の縁部を丸くする。あるいは、近位及び遠位ブッシング並びに細長要素をモジュール式に形成し、その後、相互に結合することも可能である(例えば溶接及び/又はかしめによって)。いくつかのそのような適用例では、近位及び遠位ブッシングに結合された細長要素は丸い断面を有する。
図6Eを参照して上述したように、いくつかの適用例では、近位ブッシングに細長要素を結合する前、及び/又は遠位ブッシングに細長要素を結合する前に、細長要素上にスリーブ69を配置する。
【0154】
いくつかのそのような適用例では、代替的な又は追加的な技法を用いて、材料のフィルムとらせん細長要素との間の接合を促進する。例えば、らせん細長要素の外面を粗くするため、表面処理(研削、サンドブラスト、タンブリング仕上げ、エッチング、プラズマ、表面帯電等)を用いて、らせん細長要素を処理することができる。
【0155】
図6Aから
図6Fの上記の記載によれば、本発明のいくつかの適用例では、近位端及び遠位端に第1及び第2のブッシング64、58を有する構造を形成することによってインペラ50が製造される。第1及び第2のブッシングは、少なくとも1つの細長要素52によって相互に接続されている。少なくとも1つの細長要素は、少なくとも部分的に構造を軸方向に圧縮することで、半径方向に拡張すると共に少なくとも1つのらせん細長要素を形成するように作製されている。少なくとも1つのらせん細長要素にエラストマ材料を結合して、少なくとも1つのらせん細長要素がこれに結合されたエラストマ材料と共にインペラの羽根を画定するようになっている。典型的に、この結合は、少なくとも1つのらせん細長要素の半径方向外側縁部の周りに材料の層が配置されるように実行される。材料の層は、インペラ羽根の有効縁部(すなわち、インペラの血液ポンピング機能が実質的に有効でなくなる縁部)を形成する。更に典型的には、この方法は、インペラ羽根の有効縁部からの突出を生じないように、少なくとも1つのらせん細長要素に対するエラストマ材料の接合を向上させるステップを実行することを含む。例えば、らせん細長要素の半径方向外側縁部から突出しないように、少なくとも1つのらせん細長要素により画定された溝内に縫合糸53を配置すればよい。縫合糸は、少なくとも1つのらせん細長要素に対するエラストマ材料の接合を向上させるよう構成されている。この代わりに又はこれに加えて、少なくとも1つのらせん細長要素の周りに密に巻いたコイル68を配置して、コイルの半径方向外側縁部に沿ってエラストマ材料が実質的に平滑な層を形成するようにしてもよい。コイルは、少なくとも1つのらせん細長要素に対するエラストマ材料の接合を向上させるよう構成されている。更に、この代わりに又はこれに加えて、少なくとも1つのらせん細長要素の周りにスリーブ69を配置して、スリーブの半径方向外側縁部に沿ってエラストマ材料が実質的に平滑な層を形成するようにしてもよい。スリーブは、少なくとも1つのらせん細長要素に対するエラストマ材料の接合を向上させるよう構成されている。いくつかの適用例では、少なくとも1つのらせん細長要素に丸い断面を与えて、エラストマ材料とらせん細長要素との界面においてエラストマ材料が実質的に均一な厚さを有する層を形成するようになっている。上述したように、典型的には、インペラの羽根の外縁と内側ライニング39(
図7に示されている)との間のギャップGは比較的小さいことが望ましい。従って、インペラ羽根の有効縁部からの突出は存在しないことが望ましい。そのような突出は、インペラの血液ポンピング機能の有効性を増大させることなく、インペラ羽根の外縁との間のギャップの一部を占有する(このため、より大きいギャップが必要となる)からである。
【0156】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、らせん細長要素52の各々とばね54との間に延出している細長要素67の概略図である
図6G及び
図6Hを参照する。いくつかの適用例において、各ループ状細長要素67は、らせん細長要素の各々とばねとの間に延出している。典型的に、ループ状細長要素は、予め規定された長さを有すると共に(実質的に)非伸縮性である閉じたループである。ループ状細長要素の長さは典型的に、(インペラ羽根の外縁を画定する)らせん細長要素を中心軸ばねに対して所与の距離内に維持し、これによって、上述のように、インペラの回転中にインペラの羽根の外縁とフレーム34の内面との間のギャップを維持するように、予め規定されている。いくつかの適用例では、
図6G及び
図6Hの拡大部に示されているように、各らせん細長要素の周りにループ状細長要素の第1の端部を巻き付けることによってインペラが形成される。この後、近位及び遠位ブッシング64、58内に、並びにループ状らせん細長要素の第2の端部内に、ばね54を挿入する。
【0157】
いくつかの適用例では、
図6G及び
図6Hで示されているように、ばね54の長手方向中心位置において、ばねはチューブ88(すなわち巻線が存在しない)を画定するような形状である。典型的に、ループ状細長要素の第2の端部は、ばねの長手方向中心位置でチューブに巻き付いている。典型的に、これにより、ループ状細長要素の第2の端部がばねの巻線に巻き付いている場合と比べて、ループ状細長要素が裂けるリスクが低減する。いくつかの適用例(図示せず)では、チューブに溝が画定され、ループ状細長要素の第2の端部はこの溝内に保持されるよう構成されている。
【0158】
いくつかの適用例では、
図6Gの拡大部で示されているように、ループ状細長要素は、らせん細長要素の本体に巻き付けられる。
図6Gの拡大
図AとBは、ループ状細長要素をらせん細長要素の本体に巻き付ける2つの代替的な方法を示している。いくつかの適用例では、拡大
図Aで示されているように、ループ状細長要素はらせん細長要素の外面に巻き付けられる。あるいは、拡大
図Bで示されているように、らせん細長要素は外面に溝48を画定し、ループ状細長要素はこの溝48に巻き付けられる(溝内に埋め込まれるように)。溝内にループ状細長要素を埋め込むことによって、ループ状細長要素は通常インペラの外側形状を拡大させず、インペラの外側形状はらせん細長要素の外面によって画定される。
【0159】
いくつかの適用例では、
図6Hの拡大部で示されているように、らせん細長要素は、相互に極めて近接して配置された2つの孔91を画定するような形状であり、これらの孔を通してループ状細長要素を巻き付けることができる。
図6Hの拡大
図A及びBは、孔91を通してループ状細長要素を巻き付ける2つの代替的な方法を示している。いくつかの適用例では、拡大
図Aで示されているように、ループ状細長要素は、らせん細長要素の外面に孔91を通して巻き付けられる。あるいは、拡大
図Bで示されているように、らせん細長要素は外面に溝48を画定し、ループ状細長要素は孔91を通して溝48に巻き付けられる(溝内に埋め込まれるように)。溝内にループ状細長要素を埋め込むことによって、ループ状細長要素は通常インペラの外側形状を拡大させず、インペラの外側形状はらせん細長要素の外面によって画定される。
【0160】
次に、本発明のいくつかの適用例に従った、それぞれ半径方向に制約されていない状態と半径方向に制約された状態である血液ポンプカテーテル20、70、又は90のインペラ50及びフレーム34の概略図である
図8A及び
図8Bを参照する。インペラ及びフレームは典型的に、対象の身体内へのインペラ及びフレームの経カテーテル挿入中は半径方向に制約された状態に配置され、血液ポンプカテーテルの動作中は半径方向に制約されていない構成に配置される。上述した通り、典型的に、フレーム34から被覆材料36が延出している。しかしながら、説明の目的のため、
図8Aから
図8Bではフレーム及びインペラは被覆材料36なしで示されている。
図8Bで示されているように、フレーム及びインペラは典型的にデリバリーカテーテル143によって半径方向に制約された構成に維持される。
【0161】
また、従来技術の軸方向インペラベース血液ポンプで用いられる典型的な軸受アセンブリを示す
図8Cも参照する。
図8Cは、本明細書に記載されている本発明の適用例のいくつかの基準として機能する目的のために示されている。
図8Cで示されているように、軸受アセンブリは典型的に、ラジアル軸受(楕円200で示されている)及びスラスト軸受(円202で示されている)を含む。ラジアル軸受は、インペラの軸を所与の半径方向位置に維持することによってインペラの半径方向の運動を低減させるよう構成されている。インペラが血液を第1の方向にポンピングすることに応答して、インペラに作用する力は典型的にインペラを第1の方向とは反対の方向に移動させる。スラスト軸受の目的は、そのようなインペラの運動に対抗し、インペラの軸方向位置を維持することである。
図8Cに示されている例では、インペラが血液を矢印204の方向にポンピングすることに応答して、インペラは矢印206の方向に押され、スラスト軸受はこの運動に対抗する。典型的に、摩擦力が加わるため、軸受は著しい量の加熱と摩耗を受ける。スラスト軸受は通常、著しい加熱と摩耗にさらされる。これは、スラスト軸受に加わる摩擦力が典型的に、ラジアル軸受よりも、接触面積が小さい対向表面上に広がることに起因する。
【0162】
上述した通り、典型的に、軸方向シャフト92はインペラの内腔62を通ってインペラ50の軸を貫通している。典型的に、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるように結合要素65を介してシャフトに結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。軸方向シャフト自体は、近位ラジアル軸受116と遠位ラジアル軸受118によって半径方向に安定している。
【0163】
典型的に、フレーム34の結合部30は、例えばスナップ式の結合及び/又は溶接によって近位ラジアル軸受116に結合されている。典型的に、フレーム34の遠位端では、遠位ラジアル軸受118の外面によって画定された溝内に遠位支柱接合部33が設置されており、この溝は遠位支柱部分の形状と一致するような形状である。図示されているように、遠位端要素108の近位端は典型的に、遠位ラジアル軸受118の外側の周りで遠位支柱部分を閉じた構成に保持する。いくつかの適用例において、デバイスは、遠位ラジアル軸受から遠位に延出している遠位拡張部121を含む。典型的に、拡張部は、シャフト92の遠位端が進入する遠位端要素の領域を補強するように構成されている。
【0164】
上述したように、軸方向シャフト92は、近位ラジアル軸受116と遠位ラジアル軸受118によって半径方向に安定している。また、軸方向シャフトは、インペラが画定する内腔62を貫通することにより、フレーム34の内面に対してインペラを半径方向に安定させるので、上述したように、インペラの回転中、インペラの羽根の外縁とフレーム34の内面又は内側ライニング39との間の比較的小さいギャップ(例えば上述したようなギャップ)であっても維持されるようになっている。いくつかの適用例において、軸方向シャフト92はステンレス鋼で作製され、近位軸受116及び/又は遠位軸受118は硬化鋼で作製される。典型的に、インペラとフレームを対象の身体内へ挿入する目的でインペラとフレームを圧縮する(すなわち半径方向に制約する)場合、インペラが軸方向に長くなるようにインペラの遠位ブッシング58は軸方向シャフトに沿って遠位方向にスライドするよう構成されており、一方で、近位ブッシングは軸方向シャフトに対して軸方向に固定された位置を維持する。より一般的には、インペラは、遠位ブッシングが軸方向シャフト上でスライドすると共に近位ブッシングが軸方向シャフトに対して軸方向に固定された位置を維持することによって、半径方向に制約された構成から半径方向に制約されていない構成に、及びその逆に変化する。
【0165】
典型的に、インペラ自体はラジアル軸受又はスラスト軸受内に直接配置されることはなく、軸受116及び118は軸方向シャフトに対するラジアル軸受として作用する。典型的に、血液ポンプカテーテルは、対象の身体内に配置されるよう構成されると共にインペラの回転で発生する推力に対抗するよう構成されたスラスト軸受を含まない。いくつかの適用例では、対象の身体外に(例えばモータユニット内に)1つ以上のスラスト軸受が配置され、インペラの回転により発生した推力に対する対抗は、対象の身体外に配置されたこの1つ以上のスラスト軸受によってのみ与えられる。いくつかの適用例では、数学的要素及び/又は磁気的要素が、インペラを所与の軸方向位置範囲内に維持するよう構成されている。例えば、駆動ケーブルの近位端に配置された磁石が、インペラを所与の軸方向位置範囲内に維持するように構成され得る。
【0166】
本発明のいくつかの代替的な適用例では、スラスト軸受を用いてインペラの軸方向位置を維持し、このスラスト軸受を、対象の血液と接触しないようにインペラの近位にある血液ポンプカテーテルの部分内に配置する。例えばスラスト軸受は、インペラの駆動シャフトが配置されている外側チューブ内に配置することができる。この代わりに又はこれに加えて、スラスト軸受を対象の身体外に配置してもよい。いくつかのそのような適用例では、スラスト軸受が対象の身体外に配置されているので、スラスト軸受の寸法は、小さい解剖学的部位内で展開する必要によって制約されない。従ってそのような場合には、スラスト軸受の2つの対向表面間の接触面積は典型的に20平方ミリメートルよりも大きい。いくつかの適用例(図示せず)では、スラスト軸受はインペラの遠位に、対象の血液と接触して配置されて、スラスト軸受が対象の血液で冷却されるようになっている。
【0167】
典型的に、コンピュータプロセッサによって実行される本明細書に記載されている動作は、コンピュータプロセッサと通信している実際の物理的物品(physical article)であるメモリの物理的状態を変換して、使用されているメモリの技術に応じて異なる磁極や電荷等を有するようにする。コンピュータプロセッサ10は典型的に、専用コンピュータを生成するようにコンピュータプログラム命令を用いてプログラムされたハードウェアデバイスである。例えば本明細書に記載されている技法を実行するようにプログラムされた場合、コンピュータプロセッサ10は典型的に、専用の血液ポンプコンピュータプロセッサとして作用する。
【0168】
本発明の範囲は、本明細書に記載されている装置及び方法のうち任意のものを、以下の適用例(全て援用により本願に含まれる)のうち1つ以上に記載されている装置及び方法のうち任意のものと組み合わせることを含む。
【0169】
2020年1月23日に出願された、「Distal tip element for a ventricular assist device」と題する、Tuvalに対する米国特許出願公開第16/750,354号。
【0170】
以下からの優先権を主張する、2019年1月10日に出願された「Ventricular assist device」と題するTuvalに対する国際出願PCT/IB2019/050186号(WO19/138350号として公開されている)の継続出願である、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0209758号。
2018年1月10日に出願された、「Ventricular assist device」と題する、Sohnに対する米国仮特許出願62/615,538号。
2018年5月2日に出願された、「Ventricular assist device」と題する、Sohnに対する米国仮特許出願62/665,718号。
2018年6月7日に出願された、「Ventricular assist device」と題する、Tuvalに対する米国仮特許出願62/681,868号。及び
2018年9月6日に出願された、「Ventricular assist device」と題する、Tuvalに対する米国仮特許出願62/727,605号。
【0171】
2016年11月23日に出願されたTuvalに対する米国仮特許出願62/425,814号からの優先権を主張する、2017年11月21日に出願された「Blood pumps」と題するTuvalに対する国際特許出願PCT/IL2017/051273号(WO18/096531号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0269840号。
【0172】
2016年10月25日に出願されたTuvalに対する米国特許出願公開第62/412,631号、及び、2017年8月10日に出願されたTuvalに対する米国特許出願公開第62/543,540号からの優先権を主張する、2017年10月23日に出願された「Ventricular assist device」と題するTuvalに対する国際出願PCT/IL2017/051158号(WO18/078615号として公開されている)の継続出願である、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0175806号。
【0173】
2016年9月29日に出願されたTuvalに対する米国仮特許出願62/401,403号からの優先権を主張する、2017年9月28日に出願された「Blood vessel tube」と題するTuvalに対する国際特許出願PCT/IL2017/051092号(WO18/061002号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalに対する米国特許出願公開第2019/0239998号。
【0174】
2015年5月18日に出願された「Blood pump」と題するSchwammenthalに対する米国仮特許出願62/162,881号からの優先権を主張する、2016年5月18日に出願された「Blood pump」と題するSchwammenthalに対する国際特許出願PCT/IL2016/050525号(WO16/185473号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalに対する米国特許出願公開第2018/0169313号。
【0175】
2014年5月19日に出願された「Blood pump」と題するSchwammenthalに対する米国仮特許出願62/000,192号からの優先権を主張する、2015年5月19日に出願された「Blood pump」と題するSchwammenthalに対する国際特許出願PCT/IL2015/050532号(WO15/177793号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalに対する米国特許出願公開第2017/0100527号。
【0176】
(a)2013年3月13日に出願された「Renal pump」と題するSchwammenthalに対する米国仮特許出願61/779,803号、及び、(b)2013年12月11日に出願された「Renal pump」と題するSchwammenthalに対する米国仮特許出願61/914,475号からの優先権を主張する、2014年3月13日に出願された「Renal pump」と題するSchwammenthalに対する国際特許出願PCT/IL2014/050289号(WO14/141284号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalに対する米国特許第10,039,874号。
【0177】
2013年12月11日に出願された「Curved catheter」と題するTuvalに対する米国仮特許出願61/914,470号からの優先権を主張する、2017年9月19日に発行された「Curved catheter」と題するTuvalに対する米国特許9,764,113号。及び、
【0178】
2012年6月6日に出願された「Prosthetic renal valve」と題するTuvalに対する米国仮特許出願61/656,244号からの優先権を主張する、2013年6月6日に出願された「Prosthetic renal valve」と題するTuvalに対する国際特許出願PCT/IL2013/050495号(WO13/183060号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalに対する米国特許9,597,205号。
【0179】
本発明が上記で具体的に図示し記載したものに限定されないことは、当業者には認められよう。本発明の範囲は、当業者が前述の記載を読む際に想起する、上述の様々な特徴部の結合(combination)及び小結合(subcombination)の双方、並びに従来技術に存在しないそれらの変形及び変更を含む。
【国際調査報告】