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特表2022-534667紙パルプ工場からの廃水を処理するため、施設からの水および化学物質を回収するための方法
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  • 特表-紙パルプ工場からの廃水を処理するため、施設からの水および化学物質を回収するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】紙パルプ工場からの廃水を処理するため、施設からの水および化学物質を回収するための方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 9/06 20060101AFI20220727BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20220727BHJP
   C02F 1/469 20060101ALI20220727BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20220727BHJP
   B01D 61/52 20060101ALI20220727BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220727BHJP
   C02F 9/08 20060101ALI20220727BHJP
   C02F 9/14 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C02F9/06
C02F11/00 B
C02F11/00 C
C02F1/469
B01D61/44 500
B01D61/44 520
B01D61/52 500
C02F1/44 F
C02F9/08
C02F9/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565783
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 CL2019050037
(87)【国際公開番号】W WO2020223829
(87)【国際公開日】2020-11-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520020546
【氏名又は名称】インベスティガシオネス・フォレスタレス・ビオフォレスト・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルバロ・マウリシオ・ゴンザレス・ボーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・イグナシオ・ケサダ・レジェス
【テーマコード(参考)】
4D006
4D059
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006KA01
4D006KB13
4D006KB14
4D006KB20
4D006KB30
4D006MA13
4D006MA14
4D006MA15
4D006PA01
4D006PB08
4D059AA30
4D059BC01
4D059BC10
4D059BE01
4D059BE03
4D059BE07
4D059BE38
4D059BE39
4D059BE54
4D059BK17
4D059BK30
4D059EB20
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC08
4D061EA09
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB07
4D061EB13
4D061FA07
4D061FA11
4D061FA13
4D061FA14
4D061FA16
(57)【要約】
本発明は、紙パルプ製造プロセスからの廃水を処理するための施設をアップグレードするための方法であって、水を再使用し化学物質を回収するために廃水から塩が除去される、方法に関する。プロセスは、塩の除去のための第1の透析システム、回収または再濃縮のための第2の処理システム、および任意選択で、再濃縮の後処理を備え、それによって、液体が環境へ解放されるのを防ぐ。第1のシステムでは、可逆型電気透析またはパルス状可逆型電気透析のステップを実行し、廃水の塩を分離し、これらが第2の処理システムに送られて塩を濃縮(再濃縮)し、またはそれらを同じプロセスにとって有益な化学物質へと変換する(回収)。化学物質は、双極性膜または置換を用いる電気透析によって回収されて、同じ施設中で再使用できない再濃縮流を減少させる。最後に、前記流れは、噴霧乾燥、晶析、または蒸発で処理することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙パルプ工場廃水処理施設からの、前記工場への後続の再循環のために有機物および塩がない水の回収のプロセスであって、以下のステップ、すなわち、
a)残留有機物を粗く除去するために、前記廃水処理施設中で事前に物理的および生物学的に処理した廃水を、電気凝固、化学的凝固、光酸化、電解酸化、化学酸化、浮遊および/もしくはろ過、遠心分離、またはサイクロン分離から選択される3次処理システムに流して、化学的酸素要求量で測定して100ppm未満の低有機含有量の廃水(1)を得るステップと、
b)ステップ(a)で得られた前記廃水(1)を、ろ過システム(2)を通して流し、3次処理からの残留浮遊物質を含まない廃水(3)を生成するステップと、
c)ステップ(b)で得られた浮遊物質を含まない前記廃水(3)の一部を、濃縮物(7)の分離および透析済み廃水(13)としての水の回収のために、パルス状可逆型電気透析または可逆型電気透析から選択される第1の透析システム(EDR、4)を通して流すステップと、
d)ステップ(c)で得られた前記濃縮物(7)を、化学物質(9、17)の回収および/または紙パルプ製造プロセスにとって有益でない塩の含有量を有する再濃縮排出流(10)としての塩の再濃縮のために、第2の処理システム(8)を通して流すステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
ステップ(d)において、前記第2の処理システム(8)が、従来型電気透析(ED)、双極性電気透析(BPED)または置換(EDM)から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(d)の後に、
e)ステップ(d)で得られた前記再濃縮排出流(10)を、乾燥システム(11)に向けて流し、それを必要とする別の用途で再使用される凝縮物(14)および可溶性塩である固体副産物(12)を得て、環境への液体排出を防ぐステップ
をさらに含む、請求項1および2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(a)の前の処理が粒子状物体を除去し、pHを調整し、処理する前記廃水から有機物の一部を除去するために実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
EDR(4)に入る前に、自浄型ディスクフィルタ、カートリッジ型フィルタまたはマルチメディアフィルタから選択されるろ過システム(2)が前記ステップ(b)で使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ステップ(c)において、濃縮ゾーンまたは区画(I)に対応する前記第1の透析システムEDR(4)の第2のゾーンに動くイオンの除去のために、残留浮遊物質を含まない前記廃水(3)の一部が、透析ゾーンまたは区画(II)の中へと前記第1の透析システムEDR(4)に入る、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記濃縮ゾーン(I)から前記濃縮流(7)と再循環流(5)に分割される流れが前記第1の透析システムEDR(4)から得られ、前記再循環流(5)が前記濃縮ゾーン(I)へと前記第1の透析システムEDR(4)に再循環され、これが、透析流(6)と呼ばれる残留浮遊物質を含まない前記廃水(3)の他の部分と混合されて、前記濃縮ゾーン(I)中の過飽和および塩の被覆形成を回避する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記透析済み廃水流(13)が前記第1の透析システムEDR(4)からの前記透析ゾーン(II)から得られ、前記透析流(13)が冷却塔(15)に運ばれて、生水処理施設を通過後に前記紙パルプ製造プロセスへと再循環されることになる透析および冷却された廃水流(16)が得られる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記乾燥システム(11)が、蒸発装置、噴霧乾燥機、または晶析装置から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項10】
前記乾燥システム(11)から得られる前記濃縮物(14)が、前記冷却塔(15)に入る前に、前記第1の透析システムEDR(4)の前記透析ゾーン(II)から来る前記透析液廃水流(13)と混合される、請求項3および8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第2の処理システム(8)から得られる前記液体副産物流(9、17)および排出再濃縮流(10)、ならびに前記乾燥システム(11)の中でステップ(e)の後に得られる前記固体副産物(12)が、前記第2の処理システム(8)の中で使用される手順に依存する、請求項3に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第2の処理システム(8)が従来型EDに対応し、前記液体副産物流(9)がその再処理のために浮遊物質を含まない前記廃水(3)と混合されるように戻る透析廃水を含み、前記固体副産物(12)が最大濃度で前記処理済み廃水中に存在する塩に対応する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第2の処理システム(8)がBPEDに対応する場合に、前記副産物液体流が前記濃縮流(7)からの前記塩の前記分離から来る前記ソーダ(9)および酸(17)を含み、これらは、化学的入力として、紙パルプの製造のための前記プロセスに戻され、固体副産物(12)が最大濃度の前記処理済み廃水中に存在する塩に対応し、前記酸副産物(17)が、前記製造プロセスに戻される場合に前記3次処理の凝固ステップの前に、処理される前記廃水のpH調整のステップに運ばれる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第2の処理システム(8)がEDMに対応するとき、前記液体副産物流(9)が、化学的入力として、紙パルプの製造の前記プロセスに戻る硫酸ナトリウムを含み、塩の前記排出再濃縮流(10)が塩化物塩に対応し、前記固体副産物(12)が最大濃度の塩化物塩に対応する、請求項11に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃水、特に紙パルプ工場からもたらされる廃水の処理に関し、ここでは、化学物質が前記廃水から回収され、処理済みの水の再使用または再循環が行われる。
【背景技術】
【0002】
現在は、紙パルプ工場における紙パルプ工場の廃水処理施設からの水の回収は、高い含有量の有機物および塩が廃水中に存在することによって制限される。再循環した場合、廃水中に含有される有機物が最終製品の特性を変質させて、漂白用化学物質の消費を増加させる一方で、塩は、システム中の処理不可能な要素として蓄積し、装置中にスケールおよび腐食をもたらすことになる。
【0003】
廃水処理施設からの水の処理および再循環は、従来技術で以前に示唆されている。
【0004】
特許文献1は、回収ボイラの静電気集塵装置からの灰の処理のための、電気膜(EM)プロセスの使用を開示する。より具体的には、プロセスは、希釈した灰の変容のための双極性膜を用いた電気透析の使用、または、単価膜を用いた電気透析を使用する塩の選択的な分離からなる。この文書は、高い有機物の負荷を有する、紙パルプ製造プロセスの廃水処理施設から来る流れの処理を意図しておらず、電気凝固または浮遊法と合わせた凝固、逆電気透析(EDR)、従来型電気透析(ED)または双極性電気透析(BPED)または置換(EDM)、噴霧乾燥などといった様々な技術の混合も言及しない。したがって、本文書は、液体排出を放出しないように廃水処理施設をアップグレードできるとは述べていない。
【0005】
同様に、非特許文献1は、クラフト工場における溶液回路への再循環のため、酸性漂白濾液からの部分流からの塩化物の選択的除去のための、単価膜を用いた電気透析の使用法を示している。したがって、この出版物は、紙パルプ製造プロセスのための廃水処理施設をアップグレードすることはカバーしておらず、化学物質回収のための、電気凝固または浮遊法と合わせた凝固、逆電気透析(EDR)、および双極性膜電気透析(BPED)または置換(EDM)などといった技術の組合せもカバーしない。また、部分流を処理することにより、全体的な廃水処理が依然として存在するために、出版物は、「液体排出ゼロ」ということについては言及しない。
【0006】
他方で、特許文献2は、プロセスの流れをアップグレードすることを意図し、紙パルプ工場を含むバイオマス処理工場からの副産物を最大限回収するためにラインをアップグレードすることを述べている。こうした副産物の回収は、バイオマスから副産物の蒸気が得られる生物精製の概念に関係し、水回路を閉じることおよび「液体排出ゼロ」には関係しない。従来型の廃水処理施設をアップグレードすることについて、何ら言及がないが、水流のアップグレードの記載では、全く一般的なことである。記載されるプロセスは、イオン放射、バイオマスの糖化、有機塩の生成のため双極性膜を用いた電気透析、および流れから塩を分離するための従来型または可逆型電気透析といったステップを含み、同じプロセス中の再循環または再使用のための浄水ではなくむしろ副産物の分離を明らかに重要視する。その文書の強調点は、生物精製に対応し、「液体排出ゼロ」のための廃水処理施設のアップグレードではなく、言うまでもなく、プロセスの最後の廃水放出を回避するための噴霧乾燥機または晶析装置の使用ではないことと解釈することができる。
【0007】
最後に、非特許文献2では、EDRを使用した紙パルプ工場からの廃水の再使用を調べている。この出版物は、本発明に最も近い従来技術である。しかし、本出版物は、有機物の除去のための前処理として酸化アルミニウムを用いた化学的凝固の使用を述べるだけであって、双極性膜電気透析(BPED)または置換(EDM)を使用した、除去物の再濃縮または有益な化学物質の回収のための透析の第2のステップへは言及していない。廃水放出を回避するための噴霧乾燥または晶析の使用にはやはり言及がない。したがって、この文書は、本発明の不完全な形に対応し、水の回収にだけ焦点が合っており、第2の処理ステップにおける後続の化学物質の回収には焦点が合っておらず、液体排出ゼロにも焦点が合っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第5567293号明細書
【特許文献2】米国特許第9637802号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/014781号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】P. Pfromm、Tsai、およびHenryによる出版物(「Electrodialysis for Bleach Effluent Recycling in Kraft Pulp Production: Simultaneous Control of Chloride and other Non-Process Elements」、The Canadian Journal of Chemical Engineering、Vol. 77、1999年)
【非特許文献2】ChenおよびHoranの出版物(「The Treatment of a High Strength Pulp and Paper Mill Environmental Technology」Vol. 19、1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、最小限の液体排出または液体排出なしを達成するために、これらの目的を達成するのに一緒に働く異なる技術を用いた廃水を完全に再循環する方策を使用して、プロセスのためまたは他の産業のために有益な水および化学物質を回収するため、紙パルプ工場廃水処理施設をアップグレードするためのプロセスが必要である。こうして、本発明では、「液体排出ゼロ」という表現は、水域の中へ廃水を廃棄することがない、水回路の完全な閉鎖として理解されたい。
【0011】
本発明では、「アップグレード」などといった用語は、実施することが可能な機能を拡張するため、廃水処理施設に新しいユニットを追加することとして理解されたい。この場合、それは、紙パルプ工場製造プロセスおよび灌漑の両方、または他の関連する行為における生水として再使用するための廃水の処理であり、同じ施設または他の産業で有益な化学物質の回収である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一緒に働く水処理技術の適切な選択を通して、紙パルプ工場の廃水からの完全な水回収を達成することができる。
【0013】
通常では、紙パルプ産業の廃水処理施設では、粒子状物質の分離、pH調整、および有機化合物の粗い除去のための生物学的処理のために、機械的処理が使用される。これらの有機化合物の留分は扱いにくく、生物学的方法では除去するのが不可能であるが、廃水が大洋に放出されるときに、環境規制に応じた問題を表すことはない。廃水が川または他の水域の中に放出されるとき、有機物の量および廃水の色により大きな制約がある場合、いくつかの国では反対のことが起こる。加えて、いくつかの場合では、真水の入手しやすさが工場の製造を制限する可能性がある。したがって、環境問題および製造にとっての水の入手しやすさに対処するのに、回路閉鎖は魅力的な代替手段となる可能性がある。
【0014】
機械的および生物学的プロセス(1次および2次処理)による従来型廃水処理の後の、残りの扱いにくい有機物は、3次処理によって除去される。これは、一般的に、凝固剤および凝集剤を使用する化学的凝固システムとそれに続く浮遊およびろ過からなる。こうして、存在する有機物および色のほとんどが除去され、真水の水域の中に放出するための環境基準を満たす。しかし、この水の回収およびその製造プロセスの中への再循環は、脱塩した水の再循環を実現するために無機塩を分離して、付着物の発生、処理不可能な品目の腐食、および/または蓄積を回避する追加システムを必要とする。
【0015】
こうして、以下の発明は、従来型の1次、2次、および3次処理によって事前処理された廃水から無機塩を分離するために、中核プロセスとして、パルス状逆電気透析(pEDR)(WO2019014781)または逆電気透析(EDR)、好ましくはpEDRを使用して、紙パルプ工場で無機塩の再使用を可能にすることを提案する。以降では、従来型の可逆型電気透析とパルス状可逆型電気透析の両方を言うためにEDRが使用される。2次前処理は、曝気ラグーン、活性汚泥、嫌気性処理などといった既存の生物学的処理システムを通した廃水の通過を考え、その後に、3次処理、好ましくは、電気凝固ステップ、または化学的凝固、光酸化、電解酸化、化学酸化、浮遊および/もしくはろ過、遠心分離、またはサイクロン分離が続く。有機物およびカルシウム、マグネシウム、鉄、またはアルミニウムなどといった汚染要素の除去は、EDRの次のステップを続けるためにやはり必要である。これらのイオンの値がEDRによって必要とされる入力値を超える場合、従来型処理での前処理または調整を使用して、これらの汚染要素の臨界濃度値を下げなければならない。
【0016】
EDRでの透析後は、分離した塩の再使用および回収できない塩を再濃縮することにより得られる排出流の容積の低減のための後処理が続く。この再濃縮排出流は、好ましくは、晶析装置/蒸発装置、または噴霧乾燥機もしくは機械的蒸発装置に送られて、残留廃水を完全に処理して、排出流をできるだけ減らす、または、水域の中へのその排出を完全に回避する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】紙パルプ工場で「液体排出ゼロ」を実現するために廃水処理施設をアップグレードするプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、紙パルプ工場廃水処理施設からの水回収のプロセスであって、以下のステップ、すなわち
a)残留有機物を粗く除去するために、廃水処理施設中で事前に物理的および生物学的に処理した廃水を、電気凝固、化学的凝固、光酸化、電解酸化、化学酸化、浮遊および/またはろ過、遠心分離、またはサイクロン分離から選択される3次処理システムに流して、化学的酸素要求量で測定して(100ppm未満の)低い有機物量を有する廃水(1)を得るステップと、
b)ステップ(a)で得られた廃水(1)を、安全のためにろ過システム(2)を通して流し、3次処理からの残留浮遊物質を含まない廃水(3)を生成するステップと、
c)ステップ(b)で得られた浮遊物質を含まない廃水(3)の部分を、濃縮物(7)の分離および透析済み廃水(13)としての水の回収のために、パルス状可逆型電気透析または可逆型電気透析から選択される第1の透析システム(EDR、4)を通して流すステップと、
d)ステップ(c)で得られた濃縮物(7)を、化学物質(9、17)の回収および/または紙パルプ製造プロセスにとって有益でない塩の含有量を有する再濃縮排出流(10)としての塩の再濃縮のために、従来型電気透析(ED)、双極性電気透析(BPED)または置換(EDM)を使用する第2の処理システム(8)を通して流すステップと、
e)任意選択で、ステップ(d)で得られた再濃縮排出流(10)を、乾燥システム(11)を通して流し、同じ紙パルプ製造プロセスで、または必要とされる別の用途で再使用される凝縮物(14)および固体副産物(12)を得て、環境への液体排出を防ぐステップと、
f)任意選択で、ステップcで得られた透析済み廃水(13)およびステップ(e)で得られた凝縮物(14)を、冷却塔(15)を通して流し、紙パルプ製造プロセスが必要とする場合に産業施設に供給する水の温度を制御するステップと
を含むプロセスに関する。
【0019】
図1は、廃水(1)の処理を示しており、廃水(1)は、沈殿物および有機物の除去のため従来型3次処理によって事前に処理されており、そのため、廃水流(1)の品質は、汚染要素、pH、温度、および有機物に関して第1の透析システム(4)への入力要件と一致している。ここで、これらの事前処理は、電気凝固、化学的凝固、光酸化、電解酸化、化学酸化、ならびに、浮遊および/もしくはろ過、遠心分離、またはサイクロン分離といった、1つまたは複数の事前処理システムから選択される。従来型EDまたは他の膜を用いた方法と比較して堅牢で効率的であるために、EDR可逆型電気透析が第1の透析システム(4)として好ましい。それによって、本発明のシステムは、既に稼働している廃水処理施設に結合することができる。「機械的蒸気圧縮(MVC)」などといった他の回収方法は、活性汚泥または従来型廃水処理施設などといった廃水処理用インフラストラクチャが設置されてないときに好ましい場合がある。
【0020】
第1の透析システムEDR(4)は、自浄型ディスクフィルタ、カートリッジ型フィルタまたはマルチメディアフィルタから選択され、3次廃水処理から残留浮遊物質の通過を防止するろ過システム(2)を用いた事前処理を必要とする場合がある。好ましくは、無機物の負荷を増やさない事前処理が使用される。というのは、それによって、所望の透析レベルに達するため第1の透析システムEDR(4)において要求されるステップ数が増加し、その結果、EDR施設(4)および後段の回収または乾燥プロセス(8、11)のサイズおよび動作のコストが増加するためである。
【0021】
(残留浮遊物質を含まない)フィルタ済み廃水(3)の部分が、具体的には透析ゾーン(区画II)の中の第1の処理または透析システムEDR(4)に入り、ここで、イオンが除去される。これらのイオンは、主に無機塩であるが、濃縮ゾーン(区画I)に向けて移動し、再循環される濃縮流(5)を通して同じセルに向けて戻されて、回収を最大化させる。こうして、濃縮物(7)の小さい流れが、プロセスの第2の処理システム(8)へと流れる。この点で、透析流(6)を通して残留浮遊物質を含まない廃水(3)の部分を再合流させ、区域Iの中の過飽和および塩の被覆形成を回避することが必要であり、ここで、区画Iに入る前に、前記透析流(6)は、再循環する濃縮流(5)と混ぜ合わされる。
【0022】
第2の処理システム(8)は、選択されるプロセスに依存して、最大限の残りの廃水の回収および/または化学物質の回収を可能にする。このプロセスは、従来型電気透析(ED)、双極性膜電気透析(BPED)、または置換を用いた電気透析(EDM)からなってよい。液体副産物(9、17)の流れおよび再濃縮排出流(10)は、この第2の処理システム(8)から、紙パルプ製造プロセスで有益でない塩を用いて得られる。得られる液体副産物(9、17)は、選択されるプロセス(8)にやはり依存する。従来型EDを使用する場合では、得られた液体副産物(9)は透析済み水であってよく、これは、再処理のために浮遊物質を含まない廃水(3)と再混合することができる。BPEDを使用するとき、得られた液体副産物は、濃縮流(7)からの塩の解離からのソーダ流(9)および酸(17)からなり、これは、化学的入力として、廃水処理プロセスまたは紙パルプ製造に戻されることになる。EDMが使用される場合、得られた液体副産物(9)は、硫酸ナトリウムであり、これは、化学的入力として、紙パルプ製造プロセスに戻すことができる。各々の場合について、再濃縮排出流(10)は、任意選択で、水域の中への液体廃棄物の廃棄を回避するために、晶析装置、蒸発装置、噴霧乾燥機から選択される乾燥システム(11)による乾燥ステップへと送ることができる。濃縮物(14)は、区画IIから来る透析済み廃水(13)と混合することができ、再循環の前に廃水温度を下げる必要がある場合、冷却塔(15)に送られる。他方で、乾燥システム(11)から固体副産物(12)が得られる。この固体副産物(12)は、その組成が第2の処理システム(8)で使用されるプロセス(ED、BPED、またはEDM)に依存する可溶性塩である。従来型EDおよびBPEDでは、固体副産物(12)の組成は、この第2の処理システム(8)を使用して最大限に濃縮された処理済み廃水中に存在する塩からなる。BPEDの使用によって、選択される乾燥システム(11)を通した乾燥ステップのサイズの減少がもたらされることになる。というのは、塩の部分は、得られる液体副産物(9、17)の中に、製造プロセスに戻される化学的入力へと変換され、乾燥システム(11)中で乾燥される塩の数を減少させることになるためである。他方で、使用される技術がEDMである場合、再濃縮排出流(10)は主に塩化物塩からなる。というのは、得られる液体副産物(9)の無機含有物の部分(硫酸ナトリウム)は紙パルプ製造プロセスに戻される一方で、固体副産物(12)は最大限に濃縮された塩化物塩からなるためである。EDMを用いて廃水から有用な塩を回収することによって、乾燥システム中で乾燥される量が減少する(11)。こうして、BPEDおよびEDMの使用は、濃縮流(7)を処理するより持続可能な方法を表す。最後に、透析および冷却された廃水(16)が生水処理施設に送られて、紙パルプ製造プロセスに再度入り、固体副産物(12)は、同じ紙パルプ製造または適宜別の産業もしくは用途で再使用することができる。これによって、システムからの液体の排出がなくなる。
【0023】
(実施例)
本発明を用いて、Kraftプロセスの最終廃水の少なくとも85%を回収することが可能である。すべての実施例で、廃水が化学的凝固または電気凝固、浮遊およびろ過または遠心分離の3次処理を既に通過しており、第1の透析システムEDR(4)の入力要件を満たしていると仮定される。廃水は、第1の透析システムEDR(4)の前に、3次処理から残された可能性がある浮遊物質(3)を除去する効果的なろ過システム(2)を通過することも仮定される。
【0024】
EDRを用いた第1の透析システム(4)では、廃水の特性に依存して、廃水からの水の85~95%を回収することができ、主な制限は、廃水中に含まれる元素のタイプおよび入力pHである。たとえば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、およびマンガンを多く含む廃水は回収を制限する。というのは、これらの塩が沈殿して、濃縮区画I中のシステム、または第2の処理システム(8)で表面を覆う可能性があるためである。以下の段落中に記載される実施例では、50ppm未満のカルシウムおよびマグネシウム濃度、および、不安定な動作期間に1ppmを超えることがない、各々0.1ppm未満のAl、Fe、およびMn濃度を有する廃水が使用される。こうして、第1の透析システムEDR(4)の中で、90%の回収が推定される。主に、アルカリ性媒体中では有機物がコロイド形態で存在し、そのために5から最大で8の範囲での、わずかに酸性のpHが好ましく、pHはやはり重要である。
【0025】
EDR(4)中の透析レベルが、同じ紙パルプ工場で再使用するために得られる水の品質を決定する。透析済み水の伝導率は、フィルタ済み廃水の入力伝導率および第1の透析システムEDR(4)中のステップの数に依存して、通常は、およそ50~400μS/cmである。こうして、約2,000μS/cmの伝導率を有する廃水が、3ステップの第1の透析システムEDR(4)に入る場合、得られる水は、各ステップについて伝導率の55%の減少を考慮して、およそ180μS/cmの伝導率を有することになり、このステップ毎の伝導率の減少は、EDR供給業者によって使用される膜およびスペーサのタイプにしたがって変化する可能性がある。品質要件は、各施設によって規定されることになる。
【0026】
第2の処理システム(8)には大きい違いがある。ここでは、第1のEDR透析システム(4)から来る濃縮物の処理にしたがって、別個の実施例に記載されることになるいくつかの代替策がある。
【0027】
(実施例1)
第1の透析システムEDR(4)から来る濃縮流(7)の処理では、第2の処理システム(8)の中で双極性膜電気透析(BPED)を使用したソーダ(9)および酸の混合物(17)(主に、硫酸および塩酸)の生産が企図される。この変形形態は、ろ過システム(2)の前のステップとして3次処理で電気凝固プロセスが使用されるときに、特に魅力的である。電気凝固では、この処理後、第1の透析システムEDR(4)に入る前のわずかに酸性のpH流を得るために、廃水pHのpH調整が必要である。そのため、BPEDで発生する酸性流(17)は、電気凝固を用いる3次処理の前に、同じ廃水処理中のpHを調整するのに特に有用である。他方で、BPEDで得られる液体副産物としてのソーダ(9)を、紙パルプ製造プロセスに送ることができる。
【0028】
この場合には、すべての流れがpH調整に送られる場合に、後続の蒸発は必要でない。というのは、大部分の不純物はBPEDセルの酸区画中に残り、酸性流(17)を通してpH調整に向けられ、これが電気凝固プロセスに戻され、そこで塩は、回路中に塩が蓄積するのを避けて沈殿されるためである。この酸性流(17)は、濃縮流(7)から来る塩の部分を含むことになる。これらの塩の含有物は、第2の処理システム(8)中のBPEDで得られる回収に依存することになる。塩が廃水に還流するのを避けるために、最大限可能な回収が好ましい。廃水中で、pH調整にとって酸(17)が過剰生産される場合、この酸は、紙パルプ工場中の他の目的のために使用することができる。さもなければ、それは、乾燥システム(11)を使用して固体へと固めることができる。
【0029】
(実施例2)
第1の透析システムEDR(4)から来る濃縮流(7)の処理は、第2の処理システム(8)の中の置換を用いた電気透析(EDM)を使用して実行することができ、ここでは、硫酸塩(主に、NaSO)を塩化物塩から選択的に分離することができる。塩化物塩のこの再濃縮物(10)は、(300,000ppmの程度の可溶性を有して)高度に可溶性である。したがって、これらの再濃縮塩(10)を含む流れは、小さい流れである(全廃水の1%未満)。第2の処理システム(8)から得られる液体副産物流(9)の中の硫酸塩を紙パルプ製造プロセスに戻すことができる一方で、再濃縮塩流(10)中の塩化物塩を有する小さい流れは、必要な場合に、それが廃水として排出されるのを回避するため、蒸発、噴霧乾燥、または晶析を使用する乾燥システム(11)に送ることができる。
【0030】
(実施例3)
第1の透析システムEDR(4)から来る濃縮流(7)は、スケールの形成を防ぐために、酸およびスケール防止剤を使用して、第2の処理システム(8)中で従来型EDを用いて再濃縮することができる。この方法は、蒸発、噴霧乾燥または晶析による乾燥システム(11)における乾燥ステップで好適な再濃縮塩流(10)を得るための最も簡単な方法である。しかし、実施例1および2の方法が好ましい。というのは、それらはより持続可能と考えられるためである。得られる他の液体副産物(9)は、脱塩した廃水に対応し、これは、再処理される浮遊物質を含まない廃水流(3)と組み合わせて上流に送ることができる。
【0031】
本発明の利点
本発明のプロセスを適用することによって、従来技術で現在開発されてきたものと比較できる、以下の利点を達成することができる。
- 渇水の期間の間に使用する水の回収
- 水域への廃水の排出を防止し、製造プロセスにおける「液体排出ゼロ」を実現する
- 水域への排出に関する制限的な環境基準の準拠
- 廃水処理または紙パルプ工場にとって有用な化学物質の回収
- 製造される製品のトン当たりの水消費の減少
- ウォーターフットプリント(製造される製品の量当たりに使用される水の量)の減少
【符号の説明】
【0032】
1 廃水
2 ろ過システム
3 浮遊物質を含まない廃水、フィルタ済み廃水、浮遊物質を含まない廃水流、懸濁固体
4 第1の透析システム、EDR、EDR施設
5 再循環流、再循環される濃縮流
6 透析流
7 濃縮物、濃縮流
8 第2の処理システム、回収プロセス
9 液体副産物、化学物質、液体副産物流、ソーダ、ソーダ流
10 再濃縮排出流、排出再濃縮流、再濃縮物、再濃縮塩、再濃縮塩流
11 乾燥システム、乾燥プロセス
12 固体副産物
13 透析済み廃水、透析液廃水流
14 凝縮物、濃縮物
15 冷却塔
16 透析および冷却された廃水流
17 液体副産物、化学物質、液体副産物流、酸、酸副産物、酸の混合物、酸性流
図1
【国際調査報告】