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特表2022-534706挙動予測に基づいたエラー及び整合性の評価
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  • 特表-挙動予測に基づいたエラー及び整合性の評価 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】挙動予測に基づいたエラー及び整合性の評価
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/45 20100101AFI20220727BHJP
【FI】
G01S19/45
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569949
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 DE2020200048
(87)【国際公開番号】W WO2020253922
(87)【国際公開日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】102019208874.0
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クビナ・ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト・ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ボーデンハイマー・ロベルト
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA13
5J062BB01
5J062CC07
5J062FF01
5J062FF02
5J062FF04
(57)【要約】
本発明は、エラー及び信頼性を評価するための方法であって、ポジション値(P-N,P-2,P-1)を獲得し、衛星ナビゲーションシステムを用いた離散的ランタイム測定によって受信手段のクロックエラーを算出するステップ、衛星ナビゲーションシステムの離散的ランタイム測定によって後の時点における第一擬似距離を得るステップ、先行する受信手段の移動パスを再現する軌道に基づいて受信手段の後の時点におけるポジション値(P‘0)を補外し、後の時点以前に算出されたクロックエラーの数に基づいて後の時点の受信手段のクロックエラーを補外するステップ、受信手段の補外されたポジション値(P‘0)と後の時点の衛星ナビゲーションシステムの衛星の位置(S0)との間の距離(r‘0)を割出すステップを包含し、但し、該衛星を用いたポジション割出しが使用に耐え得るか否かの品質基水準は、割出された距離(r‘0)の合計と後の時点のために補外されたクロックエラーを基に第二擬似距離を得るステップ、及び、第二擬似距離を第一擬似距離と比較するステップによって実施される方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラー及び信頼性を評価するための方法であって、以下の:
-ポジション値(P-N,P-2,P-1)を獲得し、衛星ナビゲーションシステムを用いた離散的ランタイム測定によって受信手段のクロックエラーを算出するステップと、
-衛星ナビゲーションシステムの離散的ランタイム測定によって後の時点における第一擬似距離を得るステップと、
-先行する受信手段の移動パスを再現する軌道に基づいて受信手段の後の時点におけるポジション値(P‘0)を補外し、後の時点以前に算出されたクロックエラーの数に基づいて後の時点の受信手段のクロックエラーを補外するステップと、
-受信手段の補外されたポジション値(P‘0)と後の時点の衛星ナビゲーションシステムの衛星の位置(S0)との間の距離(r‘0)を割出すステップとを有し、
該衛星を用いたポジション割出しが使用に耐え得るか否かの品質基水準は、以下のように:
-割出された距離(r‘0)の合計と後の時点のために補外されたクロックエラーを基に第二擬似距離を得るステップと、
-第二擬似距離を第一擬似距離と比較するステップとによって得られる当該方法。
【請求項2】
軌道を、後の時点より以前に衛星ナビゲーションシステムを用いた離散的ランタイム測定によって得られた一定数のポジション値(P-N,P-2,P-1)から形成する、及び/又は、特に好ましくは、カメラ、レーダ及び/又はライダなどの周辺把握センサ類のデータから抽出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該後の時点が、現時点に相当し、過去の、特に好ましくは同じ間隔の、時点においてポジション値(P-N,P-2,P-1)を獲得し、受信手段のクロックエラーを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
後の時点の受信手段のポジション値(P‘0)を補外するために、ポジション値差(u‘0)が、以前に得られたポジション値(P-N,P-2,P-1)のポジション値差(u-1,u-2)から割出されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
慣性モデル、慣性センサ手段(IMU)の測定、オドメトリセンサ類の測定、及び/又は、衛星ナビゲーションのダブル測定もベースとして受信手段のポジション値(P‘0)を補外することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該受信手段の時計エラーの補外が、温度測定や、クロックドリフト及び/又は時計用水晶に関する保存されている情報にも基づいていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該受信手段の時計エラーの補外が、クロックエラーと等価である距離値として実行されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
受信手段の補外されたポジション値(P‘0)と衛星(S0)の位置との間の距離(r‘0)の割出しが、衛星シグナルによって伝達されるその衛星の天体暦データからの衛星の位置(S0)を基に実行されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第二擬似距離と第一擬似距離との比較に、差の割出しが包含されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
基準値に対して相対的に小さな差の値が、高い品質水準に、そして、大きな差の値が、低い品質水準に割り当てられることにより、相当する品質水準が定められることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
間接的に受診されたシグナルに関するチェックが実行されるが、品質水準の急速な変化は、間接的なシグナル受信の間接的な証拠として評価されることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行するための制御装置。
【請求項13】
メモリとプロセッサーを有しているが、その際、上記方法は、コンピュータープログラムとして、該メモリ内に実装され、該コンピュータープログラムが、該メモリから、該プロセッサーにロードされた際に、該プロセッサーが、該方法を実行することができる様に構成されていることを特徴とする請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
該コンピュータープログラムが、あるコンピューター上、又は、上記の手段のうちの一つにおいて実行された場合に、上記方法の全てのステップを実行するためのプログラムコード手段を包含していることを特徴とする請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
コンピューターによって読み取り自在なデータメディア上にセーブされ、あるデータ処理手段上において実行される場合、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行するプログラムコードを包含していることを特徴とするコンピュータープログラム・プロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置測定、並びに、該方法を実行する制御手段、及び、コンピュータープログラムにおける挙動予測に基づいたエラー及び整合性の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の絶対的地理的位置は、今日、グローバル・サテライト・ナビゲーション・システム(GNSS)の受信手段を用いて割出され、これを以下、GNSS測定と記述する。更に、車両の相対的な動きは、車両に搭載されている慣性(IMU)センサやオドメトリ(ODO)センサを用いて割出される。
【0003】
第一に、該GNSSシステムは、コードレンジングとも呼ばれるランタイム測定により受信手段の位置の測定を可能にする。第二に、ドップラーシフトにより、受信手段の速度の測定を可能にする。
【0004】
センサフュージョンの一環として、より精度が高く、より多くの利用可能な位置測定を得るために、GNSS、IMU及びODO測定を融合することが可能である。センサフュージョンは、通常、カルマンフィルタや粒子フィルタによって実現される。
【0005】
GNSS測定のエラー検知を実行するためには、「Receiver Autonomous Integrity Monitoring(RAIM)」や「Fault Detection and Exclusion(FDE)」と言った既知の方法が存在している。これらの方法は、GNSS測定中、通常、最低限必要な四つ以上の利用可能な衛星信号が提供されていると言う事実を、応用している。障害を検出し排除する(Fault Detection and Exclusion)には、少なくとも六機の衛星を使用できる必要がある。他には、「Code Minus Carrier」や「Double-Delta Correlator」と言った、GNSSマルチパスを検出するための方法が既知である。
【0006】
車両内でのGNSS測定においては、従来の技術によって認識できない突発的なエラーは、必然的に発生する。その結果、GNSSを用いて割出された位置の信頼性は、限定的なものとなり、よってその整合性も限定的なものとなる。
【0007】
以下、ポジションの割出しのみならず、速度や加速の測定と言った解釈も含まれる位置測定においては、緩慢に変化するエラーと急速に変化するエラーが発生する。急速に変化する測定エラーの原因としては、第一に、特に受信手段が動いている場合、Non-Line-of-Sight(NLOS)と呼ばれる無線シグナルの伝播パスが挙げられ、第二には、異常に急速なクロックドリフトなど、偶発的なハードウェアやソフトウェアのエラーなどGNSS衛星内のエラーも、挙げられる。
【0008】
上記のNLOSシグナルは、受信手段の直接的周辺部における、例えば、建物などでの無線シグナルの反射と拡散によって発生する。望まれないNLOSシグナルと望まれるダイレクトな「Line-of-Sight(LOS)」シグナルとのオーバーラップ形態は、多種あり、分類することができる。この様なオーバーラップ形態の多くは、多重波伝播(マルチパス)と言う用語を用いれば説明できる。
【0009】
フィルタリング・メソッドを組み合わせる場合、それぞれ関与しているセンサのエラーが、誤った位置測定の要因となりうる。この場合、GNSSのNLOSシグナルに加え、慣性センサ手段のドリフトやオフセット、並びに、オドメトリのオフセットなども、エラーの要因として挙げることができる。特に、カルマンフィルタを対策として用いる場合、望まれない経時的なエラーの伝播が見られる。
【0010】
上述のGNSSエラー検出手段であるRAIMとFDEは、原則的に、GNSSシグナルの分離された観察に限定されている、即ち、同様なエラー(Common Mode Failure)の検出に限定されている。また、RAIMとFDEは、複数の衛星に不具合がある場合、検出に弱点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
よって本発明は、位置測定において、エラー及び整合性の改善された評価を達成すると言う課題に端を発している。この際好ましくは、GNSS測定における急速に変化するエラー、特に、マルチパス伝播、及び/又は、慣性センサ手段、乃至、オドメトリの測定におけるエラーを認識し、これにより、割出された車両ポジションの信頼性を高めることが達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、上記目的は、独立請求項に記載されている特徴によって達成される。尚、好ましい発展形態は、従属請求項の対象である。請求項も、明確な参照により、その部分に関して、明細の内容の一部とする。
本発明のある観点によれば、位置測定において、エラー及び整合性を評価するための方法は、ポジション値を保存し、受信手段のクロックエラーを、衛星ナビゲーションシステムを用いた時間離散的ランタイム測定によって算出することを包含している。該ポジション値は、好ましくは、各々の測定値用に、GNSSシグナルのランタイムの測定と光速との乗算により割出される三次元の座標系における位置データを包含している。ポジション値の履歴は、後のプロセスステップにおいて用いる事ができる様に、好ましくは、保存される。
【0013】
コードレンジングや擬似距離などとも呼ばれるランタイム測定は、衛星アンテナの相中心のGNSSシグナルの出力と受信アンテナの相中心における該シグナルの受信までにかかる時間の差が測定されると解釈されることが好ましい。光速と乗算することにより、双方の間隔が得られるが、衛星と受信手段の時計が同期されていないため、かなりの不正確さを内包している。GNSSシグナルは、キャリアシグナルと該衛星の天体暦データに加えて、受信手段側も有しているコードであり、該受信手段が、それによって衛星から受信した該コードと同期するようにシフトされるコードも包含している。このシフトが、測定されたランタイムに相当する。
【0014】
一般的に、擬似距離とは、決定的な不正確さファクタが含まれている場合、測定によって得られる衛星と受信手段との間の距離である。光速が、大きな値を有しているため、ランタイム測定では、非常に小さなクロックエラーでも、多大な誤差になり、これは、時間離散的ランタイム測定によって得られたポジション値においても同様である。数学的には、時点iにおける擬似距離PRは、PR_i=r_i+e_RecClock_i+e_other_i+e_MP_iと記述できるが、式中、r_iは、衛星と受信手段の実際の距離、e_RecClock_iは、受信手段クロックエラー、e_other_iは、電離層、ノイズ、衛星クロックエラーなど他のエラー、そして、e_MP_iは、マルチパス乃至NLOSエラーなど、急速に変化するエラーをそれぞれ示しているが、これらは、時点iにおける値である。「e_RecClock」エラーは、毎擬似距離測定後に受信手段において数学的に算出、乃至、推定される。エラー項は、正の値も、負の値も取り得る。
【0015】
本発明に係る方法の更なるステップは、後の、好ましくは、最新の時点の第一擬似距離の衛星ナビゲーションシステムを用いた離散的ランタイム測定による推定を包含している。クロックエラーは、四機のGNSS衛星を用いる事が出来る限り、例えば、既知の方法によって割出されることができる。クロックエラーは、好ましくは、クロックエラーに相当する時間差と光速との乗算によって距離に換算される。要するに、第一擬似距離は、測定によって得られた比較値として用いられることができる。
【0016】
比較を可能にするため、第二擬似距離である予測値が、用意される。この際、後の時点が、割り当てられている受信手段のポジション値は、軌道を基に補外される、即ち、該軌道を1タイムステップ分、理論的に継続する。該軌道は、継続的に、又は、離散した時点の先行する受信手段の移動パスを再現する。更に、後の時点のクロックエラーも、クロックエラーのそれまでの経過から補外される。これは、一定数の、後の時点以前に算出されたクロックエラーを基に実行されるが、その数は、可変乃至一回確定されていることができる。
【0017】
加えて、本方法は、受信手段の補外されたポジション値と衛星ナビゲーションシステムの衛星の位置との間の距離の割出しも包含している。補外されたポジション値の根拠は、上述の如く、離散的ランタイム測定によって得られたポジション値である。要するに、補外されたポジション値、即ち、後の時点に割り当てられている推定されたポジション値は、その他端が、例えば、伝達された天体暦データから既知な衛星である実際の距離の一端を、形成している。該衛星とは、好ましくは、直接的シグナル伝達に用いることができる衛星から任意に選択された衛星のことである。
【0018】
受信手段の補外されたポジション値と衛星の位置との間の距離から第一擬似距離用の比較値を得るため、補外されたクロックエラー、即ち、後の時点に割り当てられている推定されたクロックエラーが、割出された距離に加算される。この際、上述の如く、補外されたクロックエラーは、距離として表現されることが、理に適っている。この様にして得られた第二擬似距離は、第一擬似距離と比較される。
【0019】
言い換えれば、本発明に係る方法では、受信手段ポジションと受信手段のクロックエラーの推定値乃至それらの予測が、形成され、それに帰属する擬似距離が算出される。予測された擬似距離は、測定された擬似距離と、簡潔、リーズナブル、且つ、効率の良い方法で、固有の衛星のランタイム測定のエラーと信頼性に改善された品質水準を得、且つ、特に好ましくは、急速に変化するエラーを認識するために比較される。該方法は、好ましくは、衛星ナビゲーションシステムの他の衛星に対しても反復される。
【0020】
従来のFDE法の場合とは異なり、本発明に係る方法におけるエラー評価及び信頼性評価は、計算労力を低減するために、複数の衛星のデータを用いて受信手段の位置が算出されるポジション比較システムの実行前に実行される。
【0021】
「Code-Minus-Carrier」のメソッドとは対照的に、エラー評価及び信頼性評価は、例えば、多重波伝播のみによる、又は、直接的なシグナルパスに加えて発生するマルチパス伝播などと言ったNLOS伝播パスのエラータイプとは無関係である。
【0022】
尚、ここで言う「受信手段」は、車両、乃至、車両内に配置されている、乃至、組み込まれている受信手段であることが好ましい。
【0023】
軌道は、一定数の、後の時点より以前に衛星ナビゲーションシステムを用いた離散的ランタイム測定によって得られたポジション値から形成される、及び/又は、周辺把握センサ、特に好ましくは、カメラ、レーダ、及び/又は、ライダのデータから抽出される。既知の絶対ポジションを始点とし、動きを捕捉することにより、継続することが可能であるため、周辺把握センサの使用も可能である。
【0024】
尚、該「後の時点」は、現時点に相当していることが好ましい。ポジション値の獲得と受信手段のクロックエラーの算出は、前の時点、即ち、後の時点よりも過去に実行される。これらの時点は、好ましくは、均一な間隔を有している、即ち、離散的ランタイム測定は、好ましくは、後の時点もそれぞれ、それ以前の時点から、同じ時間、離れている。要するに後の時点は、一連の測定時点から特定のタクト後の次のステップであることが好ましい。尚、該タクトは、受信手段の走査速度に相当していることが好ましい。
【0025】
ある好ましい実行形態によれば、後の時点の受信手段のポジション値を補外するため、一つのポジション値差が、以前に得られたポジション値のポジション値差から割出される。要するに、それから後の時点のポジション値を推定するために、あるポジション値から他のポジション値への変化を観察する。
【0026】
慣性モデル、慣性センサ手段(IMU)の測定、オドメトリセンサ類の測定、及び/又は、衛星ナビゲーションのダブル測定もベースとする受信手段のポジション値の補外も、好ましい実行形態であると言える。慣性センサ手段は、通常、加速とヨーレートを測定するセンサ類を包含し、一方、オドメトリは、駆動システムのデータ、例えば、車輪回転数、及び/又は、操舵の動きを測定することにより、位置測定を可能にしている。
【0027】
受信手段のクロックエラーの補外では、ある好ましい実行形態によれば、温度測定や、クロックドリフト及び/又は時計用水晶に関する保存されている情報も考慮するが、これにより、クロックエラーを、より正確に割出すことができる。
【0028】
尚、受信手段のクロックエラーの補外は、既に上述した如く、クロックエラーと等価である距離値として実行されることが好ましい。
【0029】
ある好ましい実行形態によれば、受信手段の補外されたポジション値(P‘0)と衛星(S0)の位置との間の距離(r‘0)の割出しは、衛星シグナルによって伝達される該衛星の天体暦データからの衛星の位置を基に実行される。
【0030】
好ましくは、第二擬似距離と第一擬似距離との比較には、差の割出しが包含される。差の値は、変数として保存される、乃至、出力されることができる、又は、好ましくは、直接的に、それにより、割出された衛星のランタイム測定の誤り率、又は、信頼性に対応するための更なる対策の出発点として使用されることができる。差の値が大きい場合は、例えば、差し当たってその衛星を受信手段の位置の割出しから除外することが理に適っている。
【0031】
好ましくは、基準値に対して相対的に小さな差の値は、高い品質水準に、そして、大きな差の値は、低い品質水準に割り当てられることにより、相当する品質水準が定められる。これにより、品質に対する定まった尺度を提供する事が出来る。
【0032】
ある好ましい実行形態によれば、例えば、マルチパス伝播に起因し、間接的に受診されたシグナルに関するチェックが実行されるが、品質水準の急速な変化は、間接的なシグナル受信の間接的な証拠として評価される。
【0033】
本発明の更なる観点によれば、上述の方法を実行するために構成された制御手段が提供される。
【0034】
該制御手段は、好ましくは、メモリとプロセッサーを有しているが、その際、上記方法は、コンピュータープログラムとして、該メモリ内に実装され、該コンピュータープログラムが、該メモリから、該プロセッサーにロードされた際に、該プロセッサーが、該方法を実行することができる様に構成されている。
【0035】
該制御手段のコンピュータープログラムは、好ましくは、該コンピュータープログラムが、あるコンピューター上、又は、上記の手段のうちの一つにおいて実行された場合に、上記方法の全てのステップを実行するためのプログラムコード手段を包含している。
【0036】
本発明の更なる観点によれば、あるコンピュータープログラム・プロダクトは、コンピューターによって読み取り自在なデータメディア上にセーブされ、あるデータ処理手段上において実行される場合、上記方法のうちの一つを実行するプログラムコードを包含している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】空間軸X,Y平面上の二次元の、受信手段と衛星の動き及び特定の時点におけるそれらの間隔を概略的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の上記の特性、特徴、長所、並びに、それをどのようにして達成するのかと言った形態と方法は、図面によってさらに詳しく説明される実行例の以下の記述によってさらに明確かつ的確に理解できるであろう。
【0039】
図1は、空間軸X,Y平面上の二次元の、受信手段と衛星の動き及び特定の時点におけるそれらの間隔の例示を概略的に描写したものであるが、その動きは、受信手段の動きとして描かれている。符号は、それぞれ、時間インデックスiを包含しているが、iは、スキャン時点を示している。また、-N,-2及び-1は、測定が実行される過去の対応する時点を表している。それらに対して後の時点は、現時点であり、i=0と表される。示されている衛星は、任意の衛星の象徴であり、異なる時点「i」において、それぞれポジションS-N,S-2,S-1,S0を取る。
【0040】
ポジション値は、受信手段ポジションに対応しているが、Pは、P-N,P-2,P-1によって記述される。これらは、例えば、NAVSTAR GPS,Galileo,GLONASS又はBeidouと言った衛星ナビゲーションシステムによる離散的ランタイム測定によって得られる。u-(N-1)までに対応するベクトルu-1,u-2は、それぞれ二つのポジション値の差を示す位置変位を表している。位置変位から位置変位へにおいては、本実行形態では、受信手段と衛星の間の距離r-N,r-2,r-1も変化する。後の時点i=0に対しても、ポジション値P0と衛星までの距離r0が求められ、その自転において測定されたクロックエラーΔt0の加算から第一擬似距離が、測定された距離として割出される。
【0041】
その時点までの位置変位から論理的な継続によって、次の、即ち、最新の、乃至、その時点の走査時点の位置変位用の推定値u‘0が、推定される。推移履歴を用いて推定値、ここではそれらに共通してアポストロフィをつけて示している受信手段の最新のポジション値P‘0が、得られる。その際、付加的情報として車両の慣性モデル、慣性センサ手段の測定、オドメトリセンサ類の測定、及び、衛星ナビゲーションのダブル測定も使用される。
【0042】
受信手段のクロックエラー、言い換えれば、該時計と衛星時計との時間差に対しても、推定が実行される。この際、対応する時間差Δt‘0を補外するするために、最後に計られたクロックエラーの履歴が、参照される、但し、これは、後の計算を容易にするために、距離等価として表される。付加的に、補外においては、クロックドリフトや時計用水晶、温度測定に関する保存されている情報も考慮される。
【0043】
続いて、これらの推定された情報から、衛星と受信手段間の実際の距離r‘0が、算出されるが、「実際の距離」と言う用語は、該距離が、クロックエラーや電離層エラー、その他のエラーを含んでおらず、この距離が、二点間の間隔として算出されると解釈されるべきである。同様に推定されたクロックエラーΔt‘0の加算により、第二擬似距離が、提供される。推定された、即ち、第二擬似距離を得るためには、クロックエラーΔt‘0に加えて、他のエラーの値も、場合によっては、他のエラー値、例えば、電離層エラーも含んでいる第一擬似距離と適合させるために、加算されることができる。第一と第二擬似距離の差の値は、クロックエラーΔt‘0のみが加算される場合、即ち|(r‘0+Δt‘0)-(r0+Δt0)|の場合には、例えば、衛星シグナルのマルチパス伝播を原因として急速に変化する、即ち、それがある場合、測定された距離が、補外や推定によって得られた距離から急激に逸脱するようなエラーに関する情報も、含んでいる。一般的にこの差の値の大きさは、逆に、測定の信頼性を示すが、これは、タイムステップが多いほど、より良好に機能する。
【0044】
要するに、差の値の大きさは、特定の衛星におけるランタイム測定のエラーと信頼性の品質水準である。本方法を複数回反復することによって、又は、推定のために使用したタイムステップ乃至側手の数を増やすことによって、その信頼性を高めることができるが、本質的には、必要とされる計算能力と照らし合わせて妥協点を見つけることが理に適っている。
【0045】
該方法、乃至、これに対応する制御装置は、車両、ドローン、航空機、船舶など、任意のシステムにおいて使用可能である。
図1
【国際調査報告】