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特表2022-534711術後癒着を防止するグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤
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  • 特表-術後癒着を防止するグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤 図1
  • 特表-術後癒着を防止するグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤 図2
  • 特表-術後癒着を防止するグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤 図3
  • 特表-術後癒着を防止するグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】術後癒着を防止するグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/12 20060101AFI20220727BHJP
   A61L 31/00 20060101ALI20220727BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A61L31/12
A61L31/00
A61L31/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570000
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 TR2020050466
(87)【国際公開番号】W WO2020242424
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】2019/08285
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512081166
【氏名又は名称】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YEDITEPE UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】サヒン フィクレッティン
(72)【発明者】
【氏名】アイサン ムスタファ エルハン
(72)【発明者】
【氏名】デミール オカン
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA14
4C081AC16
4C081BA17
4C081CE11
4C081CF21
4C081DA15
4C081DC12
(57)【要約】
本発明は、処置された組織と器官との間に発生する術後癒着を防止するために開発されたグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤に関する。本発明の目的は、術後癒着を防止するために、人体に最も多く存在する生体分子の1つであるグリセロールと、創傷治癒に好影響を与えることが知られている五ホウ酸ナトリウムとの混合物を含む製剤を提供することにある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤であって、グリセロール及び五ホウ酸ナトリウムの混合物を含み、あらゆる種類の外科手術の結果、手術部位で処置される組織と器官との間の癒着を防止するために使用されるグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤。
【請求項2】
1%~10%の範囲の濃度のグリセロールを含む請求項1に記載のグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤。
【請求項3】
1%~10%の範囲の濃度の五ホウ酸ナトリウムを含む請求項1に記載のグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤。
【請求項4】
グリセロール及びホウ酸ナトリウムを混合すると懸濁液を形成することができる不活性で生体適合性のある液体を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤。
【請求項5】
前記グリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤が組み込まれた溶液が、術者の手又は手術中に使用される手術器具が接触する表面に噴霧され、少なくとも1分間手を介して軽い摩擦を加えることによって前記製剤とこれらの表面との完全な接触が確保されるように適用される請求項1に記載のグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置された組織と器官との間に発生する術後癒着を防止するために開発されたグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に対して何らかの外科手術を行った後、手術部位で切断された組織が治癒する際に、その部位又はその近傍に位置する器官(臓器)と組織との間で、初期には線維化、後期にはコラーゲン組織の蓄積により癒着が起こる。生じたコラーゲン組織及びこのコラーゲン組織に依存する癒着量は、外科手術の規模及び時間、環境が感染しているか否か、異物(人工物)が使用されたか否か、出血量、患者の免疫反応力等の多くのパラメータによって変化する。しかしながら、癒着はどのような手術の後にも必ず発生する。
【0003】
術後癒着は、どのような外科手術の後でも深刻な問題である。腸閉塞の最も多い原因、腹部手術後の二次開腹の最も多い原因、そして女性不妊症の最も多い原因は、術後癒着である。この深刻な問題を解決するために、多くの研究が行われている。文献にある研究では、内容物の異なる液状又は可溶性のゲル状物質及び経時的に吸収される活性物質が手術部位に配置されるが、決定的な問題解決には至っていない。
【0004】
先行技術で行われた応用例では、液体材料又は可溶性固体材料は、媒体から十分に吸収されないため、それらは生体に自然な異物反応を誘発することによって癒着を引き起こす。これらは、接触した組織を直接的に損傷するか、又はそれに含有される活性物質が癒着形成の防止に不十分であるかのいずれかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、術後癒着を防止することであり、そのために、人体に最も多く存在する生体分子の1つであるグリセロールと、創傷治癒に好影響を与えることが知られている五ホウ酸ナトリウムとの混合物を含む製剤を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該製剤は、手術部位で発生する過剰な線維化やコラーゲン産生を阻害し、創傷治癒を促進する作用をすることが意図されている。
【0007】
本発明の目的を達成するために開発された「術後癒着を防止するグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤」は、添付の図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、グリセロールの式の図である。
図2図2は、五ホウ酸ナトリウムの式の図である。
図3図3は、本発明の液体が手術されたラット上に塗布されず、強い癒着がある場合の図である。
図4図4は、本発明の液体が手術されたラット上に塗布され、癒着が見られない場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のグリセロール及び五ホウ酸ナトリウムをベースとする製剤は、あらゆる種類の外科手術の結果、手術部位で処置される組織と器官との間の癒着を防止するために使用される。本発明の範囲内で記載されたこの製剤は、人体内で最も豊富な生体分子の1つであるグリセロールと、創傷治癒に好影響を与えることが知られている五ホウ酸ナトリウムとの混合物である。これらの2つの物質は、その生体適合性と、過剰な線維化及びコラーゲン産生を阻害することによる創傷治癒への好影響とにより、術後癒着を防止する。
【0010】
本発明の範囲内で論じられるグリセロールは、トリグリセリドと呼ばれるエステルの主成分であり、トリグリセリドは、ヒト、動物及び植物に最も多く存在する生体分子である。もう1つの成分である五ホウ酸ナトリウムは、ホウ素をベースとする化合物である。ホウ素は原子番号5、原子量10.8の非金属元素であり、ホウ素は周期表で生命の主要元素である炭素原子の隣に位置しているため、ホウ素は、物理的性質及び化学的性質がこの原子に非常によく似ている。ホウ素は非常に安定した原子であるため、自然界ではフリーで存在することはなく、一般にOと結合して形成されるホウ酸塩という形態で存在する。ホウ酸塩は無臭の白色結晶であり、水にすぐ溶解する。最も単純なホウ酸塩は、酸化ホウ素(B)及びホウ酸(HBO)である。
【0011】
本発明の製剤は、濃度1%~10%のグリセロールと濃度1%~10%の五ホウ酸ナトリウムとを生理食塩水又は他の不活性で生体適合性のある液体に懸濁させたものである。本発明の範囲内で特に好ましい製剤は、1%のグリセロール及び3%の五ホウ酸ナトリウムから構成される。本発明の製剤を含む懸濁液は、あらゆる外科手術の後に、外科手術が行われ、術者(外科医)の手又は手術中に使用される外科器具が接触する表面に噴霧され、少なくとも1分間手を介して軽い摩擦を加えることによって当該製剤とこれらの表面との完全な接触が確保される。その後、通常の手技により、術者が適切と考える方法で創部が閉鎖される。当該製剤は、約48~72時間、それが接触する組織の表面に層を形成し、これにより、一方では、これらの表面と周辺組織の接触を防止し、他方では、これらの表面の創傷治癒を促進し、過剰な線維化及びコラーゲン組織の産生を阻害することにより、術後癒着の形成を防止する。
【0012】
ラットを用いて実施した実験では、ラットの盲腸組織に癒着モデルを適用したところ、図3に見られるように、盲腸は腹膜網組織に癒着した。しかしながら、本発明の製剤を塗布したラットでは、盲腸組織への癒着が見られないことが確認された(図4)。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】