(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】高周波アブレーションに使用される導電性部材
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220727BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570278
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 IB2020054881
(87)【国際公開番号】W WO2020234843
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521514244
【氏名又は名称】アブレータス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス デイヴィッド グラハム
(72)【発明者】
【氏名】フレンチ クリストファー ポール ウィックハム
(72)【発明者】
【氏名】ゴッドフレイ ダニエル ピーターソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーゴ スコット
(72)【発明者】
【氏名】ウォーウィック デイヴィッド セイマウアー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK47
(57)【要約】
高周波アブレーションに使用され、対象の肌に沿うように可撓性である導電性パッド(1)などの導電性部材であって、対象の肌に接触するように配置される導電性肌接触層(5)と、導電性肌接触層上の導電性層(4)とを備え、導電性肌接触層(5)および導電性層(4)はいずれも直流電気的信号を伝達する、導電性部材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波アブレーションに使用され、対象の肌に沿うように可撓性である導電性部材であって、対象の肌に接触するように配置される導電性肌接触層と、前記導電性肌接触層上の導電性層とを備え、前記導電性肌接触層および前記導電性層はいずれも直流電気的信号を伝達する、導電性部材。
【請求項2】
前記導電性部材が導電性パッドである、請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記導電性部材が、典型的には前記導電性肌接触層により、前記対象の肌に貼り付くように配置される、請求項1または2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記導電性部材は、ユーザの肌に対して粘着性でない、請求項1または2に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記導電性部材(典型的には前記導電性肌接触層)を、使用時に前記対象の肌に対して保持可能とする取付手段を備える、請求項1から4の何れか一項に記載の導電性部材。
【請求項6】
装着可能に構成され、前記対象の一部に装着可能で、装着されることで、張力印加状態となる加圧部材を備え、前記加圧部材における張力は、前記導電性部材、特に前記導電性肌接触層を前記対象の肌に対して保持するように作用する、請求項1から5の何れか一項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記導電性肌接触層は、5Hz未満、または0周波数(即ち、直流)で、最大2500Ω/cm、2000Ω/cm、1500Ω/cm、または1000Ω/cmの体積抵抗率を有する、請求項1から6の何れか一項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記導電性肌接触層がゲル層を含む、請求項1から7の何れか一項に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記ゲル層は、直流信号を伝達するハイドロゲルを含む、請求項8に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記導電性層は、炭素含有ポリマ混合物などの導電性プラスチック素材を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の導電性部材。
【請求項11】
前記導電性肌接触層上に除去可能な剥離層を備える、請求項1から10の何れか一項に記載の導電性部材。
【請求項12】
前記導電性層の前記導電性肌接触層とは反対側において、前記導電性層上に発泡層を備える、請求項1から11の何れか一項に記載の導電性部材。
【請求項13】
前記発泡層が、介在する接着層により前記導電性層に取り付けられる、請求項12に記載の導電性部材。
【請求項14】
前記接着層が、不織布コア上に、2層の導電性接着剤を含む、請求項13に記載の導電性部材。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の導電性部材と、電極と、高周波成分を有する信号を生成し、前記電極と前記導電性部材との間に前記信号を印加するように、前記電極と前記導電性部材とに結合される高周波源とを備える、高周波アブレーションシステム。
【請求項16】
前記信号は、直流成分を有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記電極は、尖った針を含む、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか一項に記載の高周波アブレーションシステムを使用して対象の組織を切除する方法であって、前記導電性部材を前記対象の肌に貼ることと、前記電極を切除対象の前記組織に隣接して配置することと、前記信号を前記電極から、切除対象の前記組織を通じて送ることとを含み、前記信号は、前記対象を通じて、導電性パッドに戻る、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波アブレーションに使用される導電性部材と、高周波アブレーションシステムと、当該システムを利用する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
対象の体内組織を切除する方法として、高周波アブレーションが知られている。これは、切除対象組織に、(典型的には)尖った電極を使用して高周波電気信号を印加し、典型的には対象の肌に貼られたパッドなどの導電性部材を通じてリターン電流が収集されるものである。対象の負担を減らし、対象の外傷を防止するため、導電性部材を通過する単位面積当たりの電流を最小限に抑えることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
我々はW02006/082413として発行されたPCT特許出願について把握している。これは、切除対象組織に対する高周波アブレーションによる乾燥効果を抑えるため、高周波信号に直流オフセットをかけて、当該高周波アブレーションシステムを使用することが開示されたものである。そして、別個塗布された(そして「従前」の)導電性ゲルとともに導電性パッドを使用することが言及されている。これは、「バイモーダル電気的組織アブレーション」と称され得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によると、高周波アブレーションに使用され、対象の肌に沿うように可撓性である導電性部材であって、対象の肌に接触するように配置される導電性肌接触層と、導電性肌接触層上の導電性層とを備え、導電性肌接触層および導電性層はいずれも直流電気的信号を伝達する、導電性部材を提供する。
【0005】
このように、導電性肌接触層を導電性部材の一部として設けることで、対象の肌に対する接触が向上する。さらに、導電性肌接触層および導電性層が直流信号を伝達することは、励起信号に直流成分があるバイモーダル電気的組織アブレーションを利用する際に有利である。我々は、先行技術の導電性ゲルを有する先行技術の電極は、直流信号の導電性が低く、バイモーダル電気的組織アブレーションにおいて、直流成分の伝送が有利であることを確認した。直流信号への抵抗を減らすことで、目標の直流電流を実現するのに必要な電圧は低くなる。したがって、対象に生じ得る潜在的なリスク(例えば、不慮の電気筋肉刺激)が低減される。
【0006】
導電性部材は、典型的には導電性肌接触層により対象の肌に張り付くように構成され得る、導電性パッドであり得る。或いは、導電性部材はユーザの肌に貼りつかないものであり得る。その場合、導電性部材は、導電性部材(典型的には導電性肌接触層)を、使用時に対象の肌に対して保持可能とする取付手段、例えば弾性部材、を備え得る。
【0007】
一実施形態において、導電性部材は装着可能に構成され得る。典型的には、導電性部材は対象の一部(典型的には腕または脚)に装着可能で、装着されることで、張力印加状態となる加圧部材を備える。加圧部材における張力は、導電性部材、特に導電性肌接触層を対象の肌に対して保持するように作用し得る。
【0008】
典型的には、導電性部材は、導電性層に結合される、電気的信号用の入力を備える。入力は、導電性層からの導電性突起を含み得る。
【0009】
導電性肌接触層は、5Hz未満、または0周波数(即ち、直流)で、最大2500Ω/cm、2000Ω/cm、1500Ω/cm、または1000Ω/cmの体積抵抗率を有し得る。
【0010】
導電性肌接触層はゲル層を含み得、これは直流信号を伝達するハイドロゲルを含み得る。導電性肌接触層の厚さは0.5から1mmの間であり得る。
【0011】
導電性層は、炭素含有ポリマ混合物などの導電性プラスチック材料を含む。一実施形態において、導電性層は、炭素含有ポリエチレンフィルムを含む。導電性層は、1平方あたり最大300、または250Ωの表面抵抗率を有し得る。導電性層の厚さは、0.1から0.5mmの間であり得る。このような導電性プラスチック材料を使用することで、導電性部材の貯蔵時(特にハイドロゲルが金属電極を腐食させ得る)、および使用時(導電性肌接触層および金属製導電性層との間の界面でガスが発生し得る)のいずれでも、導電性肌接触層と、金属製導電性層との間のあらゆる反応が防止されることを確認した。
【0012】
さらに/あるいは、導電性層は、導電性繊維、金属含有基板、シートメタル箔、導電性メッシュ、金属化繊維、または導電性シリコーンのうちのいずれかを含み得る。
【0013】
導電性部材はさらに、導電性肌接触層が対象の肌に貼られるまで、導電性肌接触層を保護および保持する除去可能な剥離層を、導電性肌接触層上に備え得る。典型的には、剥離層はシリコーンコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)などのシリコーンコーティングされたポリマ材料を含む。
【0014】
導電性部材はさらに、導電性層上、典型的には、導電性層の導電性肌接触層と反対側に発泡層を備え得る。これはその他層に対する支持を提供可能で、あらゆる電気的信号から医療操作者を保護する絶縁を提供する。発泡層は独立気泡ポリエチレンフォームなどの医療用フォームを含み得る。発泡層は、介在する接着剤層により、導電性層に取り付けられ得る。接着層は、不織布コア上に、導電性接着剤を2層含み得る。ゲル層にハイドロゲルが使用される場合、繊維コアを使用することで、ハイドロゲル内の高塩分内容物による金属製基板の腐食を防止することに寄与する。
【0015】
本発明の第2態様によると、本発明の第1の態様に係る導電性部材と、電極と、高周波成分を有する信号を生成し、電極と導電性部材との間に信号を印加するように、電極と導電性部材とに結合される高周波源とを備える、高周波アブレーションシステムが提供される。
【0016】
典型的には、信号は直流成分を有する。したがって、高周波アブレーションシステムは、バイモーダル電気的組織アブレーションに使用され得る。
【0017】
電極は、典型的には金属で、高周波源に電気的通信する尖った針を含み得る。
【0018】
高周波成分は典型的には、300から600kHz(典型には400から500kHz)の範囲内の周波数を有する。信号は、典型的は、20から200ワットの電力を有する。
【0019】
直流成分は、典型的には、最大40ボルト、典型的には0から25ボルトの間の電圧を有する。
【0020】
本発明の第3の態様によると、本発明の第2の態様の高周波アブレーションシステムを使用して対象の組織を切除する方法であって、導電性部材を対象の肌に貼ることと、電極を切除対象の組織に隣接して配置することと、信号を電極から、切除対象の組織を通じて送ることとを含み、信号は、対象を通じて、導電性パッドに戻る、方法が提供される。
【0021】
少なくとも1分、5分、10分、15分または20分、信号が組織に印加され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下に本発明の実施形態を例示的に説明する。説明は以下の添付図面を参照して行う。
【
図1】本発明の実施形態に係る、導電性部材の展開図を示す。
【
図2】
図1の導電性部材の平面図を示し、導電性部材を形成する構成要素の内部配置を示す。
【
図7】
図1の導電性部材の導電性層の平面図を示す。
【
図10】
図1の導電性部材を使用する、本発明に係る高周波アブレーションシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面の
図1から9に、高周波アブレーションで使用される、導電性パッド1の形態の導電性部材が示される。導電性パッド1は、添付図面の
図10では、高周波アブレーションシステムの一部として示されている。導電性パッド1は、可撓性パッドに組み込まれる複数の層を備える。
【0024】
当該層は、
図1の下から上に以下の順番となる。
・発泡層2、
・接着層3、
・導電性層4、
・ゲル層5の形態の導電性肌接触層、
・剥離層6。
【0025】
発泡層2は導電性パッド1の構造を提供するものである。これは、米国ミネソタ州セントポールの、3M Medical Specialities製のproduct9776などの、片面医療用独立気泡ポリエチレンフォームを含む。発泡層は厚さ0.7mmである。これは、角丸長方形の形状を有し、同長方形の一辺に平行に延びるテール部分7を有する。
【0026】
発泡層上に接着層3が設けられる。これは、英国コービーのHi-Bond TapesLtd製のHB350として販売されているテープなどの、両面に導電性接着剤が設けられた導電性不織布の層として設けられる。これも、発泡層2よりは小さいが、角丸長方形を有し、発泡層2のテール部分7内に収まるテール部分8を有する。患者または操作者に対する短絡のあらゆるリスクを避けるため、テール部分7接続周辺領域は、絶縁性材料(典型的にはバッキング層)で完全に覆われる必要がある。接着層は厚さ0.1mmである。
【0027】
接着層上が導電性層4となる。これは、蘭国ヘームスケルクのCaplinq製のLINQSTAT XVCFとして入手可能なフィルムなどの、炭素含有ポリエチレンフィルムを含む。これも角丸長方形を有し、信号発生器(後述)への接続用のタブ9を有する。導電性層4は接着剤層よりも大きいが、発泡層2よりも小さい。導電性層4は厚さ0.2mmである。
【0028】
導電性層4上がゲル層5となる。これは、米国カリフォルニア州フォールブルックのAxelgaard Manufacturing Co,Ltd製のAG625として市販されているものなどの、ハイドロゲルを含む。これにより、導電性パッド1が対象の肌に沿うことができ、対象の肌に対するある程度の粘着性を提供する。ゲル層は、角丸長方形として設けられ、導電性層4より大きいが、発泡層2よりも小さい。ゲル層は厚さ0.7mmである。
【0029】
導電性層4およびゲル層5はともに、直流(0周波数)から最低1MHzまでの周波数範囲で導電性を有する。
【0030】
ゲル層5上に、シリコーンコーティングされたポリエチレンテレフタレートの形態の剥離層6が設けられる。これは、ゲル層5を、それが使用される状態となるまで、保護および保持するものである。シリコーンコーティングにより、剥離層6は容易に除去可能となる。
【0031】
添付図面の
図10に、導電性パッド1の使用が示される。導電性パッド1は、高周波源11および針電極12とともに、高周波アブレーションシステムの一部として使用される。
【0032】
導電性パッド1(剥離層6が除去されている)は、ゲル層5が対象の肌10に粘着されるように、対象の肌10に貼られる。導電性パッド1は、針電極12と同様に、高周波源11に接続される。高周波源11は、針電極12と、導電性パッド1との間の電圧として印加される信号を生成するのに使用される。信号は、20から200Wを供給する、約460kHzの高周波成分を有する。信号は、さらに、0から40ボルトの間の直流成分を有する(導電性パッド1がアノードとなる)。この直流成分は、導電性層4とゲル層5が直流信号を伝達する際に、導電性層4とゲル層5とによって伝達される。
【0033】
一般的に、ハイドロゲルを使用した結果、患者を通じて測定される抵抗は、500Ω未満となる。この抵抗は、1メガΩ/cm2を超え得る、角質のインピーダンスに大きく依存するものである。これを上回るのに、十分な面積のハイドロゲルが使用される。
【0034】
このようにして、ユーザの肌10における切開部13内に針電極12を導入し、対象組織14の切除に使用可能となる。直流成分が、組織アブレーションの脱水効果を抑える。
【国際調査報告】