(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】補助浮遊システムによる風力タービンタワーの保全のための方法
(51)【国際特許分類】
B63B 81/00 20200101AFI20220727BHJP
B63B 75/00 20200101ALI20220727BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20220727BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20220727BHJP
【FI】
B63B81/00
B63B75/00
B63B35/44 Z
F03D13/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570932
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 ES2020070356
(87)【国際公開番号】W WO2020240068
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516180117
【氏名又は名称】エステイコ・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Esteyco S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】セルナ ガルシア-コンデ,ホセ サルスティアノ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア アコン,カルロス
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB79
3H178CC23
3H178DD61X
(57)【要約】
本発明は、海洋構造物(2)の保全のための方法に関する。構造物(2)は、風力タービン(20)と少なくとも1つの垂直シャフト(4)を備える。方法は、補助浮遊システム(1)を用いることを備える。この補助浮遊システム(1)は、海洋構造物(2)の保全の作業により、半ば沈んだままである少なくとも1つの浮遊要素(5)、システム(1)を浮遊している構造(2)に接続する少なくとも1つの結合構造(7)、接触要素(9’)、及び締め付け要素(9’)を備える。締め付け要素は、システム(1)をシャフト(4)に硬く接続することを意図している結合構造(7)に固定される。有利であるように、硬い接続により、海洋構造物(2)の保全のための作業は、作業に関わる保全作業員とシステムに対して効率的且つ安全な方法において、実行され得る。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋構造物(2)に支持されている風力タービン(20)の保全のための方法であって、
前記海洋構造物(2)は、
浮かんでいる、又は海底に固定されることができて、
シャフト(4)及び/又は基礎(3)を備えており、
前記方法は、
1つ以上の浮遊要素(5)と、
前記浮遊要素(5)の少なくとも1つに位置している少なくとも1つのクレーン(12)と、
前記風力タービン(20)及び/又は前記海洋構造物(2)の部品の保管及び/又は修理のための少なくとも1つの作業領域(13)と、
前記海洋構造物(2)に結合するための少なくとも1つの結合構造(7)とを備える補助浮遊システム(1)の使用を含むことを特徴としており、
前記結合構造(7)は、
前記海洋構造物(2)の要素を囲んで閉じるように構成されている多関節の閉リング(8)と、
前記結合構造(7)と前記海洋構造物(2)との間の複数の接触要素(9’)と、
前記接触要素(9’)の位置が調整され得る1つ以上の締め付け要素(9)とを備えており、
前記締め付け要素(9)は、前記接触要素(9’)により、締め付け力を前記海洋構造物(2)に与えるように構成されており、
前記結合構造(7)は、
前記閉リング(8)が開いている開形態と、
前記閉リング(8)が閉じている閉形態と、
前記閉リング(8)が閉じて、前記締め付け要素(9)が締め付け力を前記海洋構造物(2)に与えるように構成されている締め付け形態との少なくとも3つの形態を取ることができて、
前記方法は、
技術的に可能ないずれかの順序において、
前記海洋構造物(2)の位置に対して浮かんでいる前記補助浮遊システム(1)を移送するステップ(a)と、
前記開形態の前記結合構造(7)により、前記補助浮遊システム(1)を前記海洋構造物(2)に近づけるステップ(b)と、
前記閉リング(8)が前記海洋構造物(2)の要素を完全に囲むように、前記結合構造(7)を前記閉形態に配置するステップ(c)と、
前記海洋構造物(2)と前記補助浮遊システム(1)が、運動の6自由度、すなわち上下運動、前後運動、左右運動、ヨー運動、ピッチ運動、及びロール運動において、硬く接続されるようになるため、前記結合構造(7)を前記締め付け形態に配置するように、制御された方法で前記締め付け要素(9)に作用するステップ(d)と、
前記風力タービン(20)及び/又は前記海洋構造物(2)における保全作業を行うように、前記クレーン(12)を用いるステップ(e)と、
前記風力タービン(20)及び/又は前記海洋構造物(2)の部品の保管及び/又は修理のための前記補助浮遊システム(1)の前記作業領域(13)を用いるステップ(f)と、
前記海洋構造物(2)から前記補助浮遊システム(1)を分離して、前記結合構造(7)を前記開形態に配置するステップ(g)とを行うことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記補助浮遊システム(1)は、互いに接続している及び/又は前記結合構造(7)に接続している複数の前記浮遊要素(5)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補助浮遊システム(1)は、バージ状の単一の前記浮遊要素(5)を備えており、
前記クレーン(12)と前記作業領域(13)の両方が前記バージに配置されており、
前記バージは、単一の本体、又は互いに接続されている複数のモジュールの連結によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クレーン(12)は、伸縮式及び/又は折り畳み式のクレーンであって、
前記クレーン(12)は、前記ステップ(d)の後、展開しており、前記ステップ(g)の前に再び折り畳まれることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記作業領域(13)は、前記クレーン(12)の最小行動半径よりも大きい前記クレーン(12)から離れた所定の距離において、少なくとも部分的に位置していることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記作業領域(13)は、前記浮遊要素(5)に対して、少なくとも部分的に自由であるため、
前記作業領域(13)の少なくとも一部の領域は、前記浮遊要素(5)のデッキに位置していないことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(a)及び/又は前記ステップ(b)は、前記補助浮遊システム(1)を曳航することによって、又は前記補助浮遊システム(1)の自己推進移送によって、行われることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記浮遊要素(5)は、流体力学的減衰プレートを備えることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記浮遊要素(5)は、中心において、又は偏心して、バラストで安定し得ることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(d)の後、潮の上昇を相殺するように、少なくとも1つの前記浮遊要素(5)をバラストで安定させる及び/又は潮の下降を相殺するように、少なくとも1つの前記浮遊要素(5)をバラストで不安定にさせるステップ(j)を備える、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記補助浮遊システム(1)の乾舷は、前記補助浮遊システム(1)が、固定された海洋構造物に結合されたままである一方、潮の変化量が乾舷を10cm未満まで減少しないように、潮の変化に対応していることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記補助浮遊システム(1)は、前記補助浮遊システム(1)と前記海洋構造物(2)との間において、1つ以上の近づけるケーブル又は固定するケーブルを備えており、
前記ケーブルの長さは、近づけるステップ(b)の間において、調整されることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記閉リング(8)は、船上陸場構造を備える前記海洋構造物(2)の領域との結合に対して十分な内部空間を保持することを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記締め付け要素(9)は、
関節位置(14)に固定されているレバー(10)を備えており、
前記レバー(10)は前記関節位置(14)に対して回転可能であり、
前記締め付け要素(9)は、
前記レバー(10)の位置に接続されている接触要素(9’)と、
前記レバー(10)の別の位置に接続されている伸縮式及び/又は折り畳み式の油圧シリンダ(11)とを備えており、
前記油圧シリンダ(11)を伸縮する及び/又は折り畳むように作動させることによって、前記レバー(10)は回転を引き起こされて、
前記接触要素(9’)によって与えられる位置及び/又は力は、調整されることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記油圧シリンダ(11)の作用線と前記関節位置(14)との間の距離は、前記接触要素(9’)の作用線と前記関節位置(14)との間の距離より大きいため、
前記レバー(10)の効果によって、前記油圧シリンダ(11)の力Fが、前記力Fより大きい前記接触要素(9’)の力F’を生じることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、
前記ステップ(c)の前において、
補強手段(15)を、前記結合構造(7)が結合される前記海洋構造物(2)の要素に与えるステップ(k)をさらに備えるため、
前記海洋構造物(2)は、前記接触要素(9’)により、前記補助浮遊システム(1)が前記海洋構造物(2)に与え得る力に抵抗し得ることを特徴とする、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記海洋構造物(2)は、モノパイル構造であって、
前記補強手段(15)は、モノパイルの内部をコンクリートで完全に埋めること、又は部分的に埋めることを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記補助浮遊システム(1)は、
前記締め付け要素(9)の締め付け力及び/又は位置を制御及び/又はモニタするための手段、
及び/又は前記閉リング(8)を開閉するための手段を備えることを特徴とする、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記補助浮遊システム(1)は、アクティブな締め付け要素(9)とパッシブな要素の組み合わせを備えることを特徴とする、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記接触要素(9’)は、前記海洋構造物(2)に接触する支持プレート、及び3%より大きい摩擦係数を備えるため、
前記接触要素(9’)を前記海洋構造物(2)に対して締め付けると、前記海洋構造物(2)と前記補助浮遊システム(1)との間において、ソリッドカップリングを生じることをもたらす摩擦力が生じることを特徴とする、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記閉リング(8)は、ガードを備えており、
前記ガードは、前記接触要素(9’)が作動する前において、ステップ(b)又はステップ(c)の間において、前記ガードが前記海洋構造物(2)に接触するような位置にあることを特徴とする、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記クレーン(12)は、無限軌道又は車輪を有する移動型陸上クレーンであって、
前記移動型陸上クレーンは、少なくとも1つの前記浮遊要素(5)に支持されていることを特徴とする、請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記クレーン(12)は、移動型陸上クレーンであって、
前記移動型陸上クレーンは、
少なくとも1つのブーム、カウンタウェイト、及び前記クレーン(12)を作動させるための機器を有する上部本体と、
車輪及び/又は無限軌道によって、前記クレーン(12)を移動させるための手段を有する下部本体とを備えており、
前記補助浮遊システム(1)は、前記クレーン(12)の前記上部本体を備えるだけであることを特徴とする、請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、海洋タワーの保全のため、例えば、沖合の風力タービンタワーの保全のため、補助浮遊システムを用いる方法に関する。したがって、本願の主要分野は、環境保護産業又は再生可能産業、特に海洋風力エネルギーと組み合わせられる民間建設産業、特にタワー建設及び/又は基礎工事と保全産業である。
【背景技術】
【0002】
海洋風力エネルギーの分野において、「大きな改良」保全として一般的に知られている風力タービンの保全作業は、膨大な経済的影響と経済的重要性を有する。この風力タービンの保全作業は、約100メートル以上の非常に高い位置にある風力タービンの重い部品を上昇又は下降させるためのクレーンを必要とする。
【0003】
従来、海洋風力タービンのための「大きな改良」作業は、ジャッキアップ船舶によって、ほぼ独占的に行われている。このジャッキアップ船舶は、船舶の船体を上昇させるため、海底に支持され得る脚部を有する船である。したがって、実際の船舶によって組み込まれるクレーンは、動作し得ると共に、海の運動によって、ほとんど悪影響を及ぼされない。一方、これらの船舶は、非常に希少であり、高価であるため、海洋風力発電所の保全費用を不利にする。
【0004】
海洋構造物において、クレーンを作動させるための従来技術において知られている非常に費用対効果の良い方法は、バージ又はポンツーンにおいて、従来の陸上クレーンを用いることに基づく方法である。一方、この方法は、海洋風力タービンの場合、実行できない。作業高さが大きいため、クレーンを支持するバージの動作が、風力タービンの所定の高さにおいて、動作する必要があるブームの端部において、増大する。これにより、海の状態に関して良好な状態であっても、クレーンの作業が実行できない。上述の課題は、風力タービンの支持構造が固定されていなくて、浮かんでいるとき、大きくなる。
【0005】
本発明は、海洋構造物の保全の作業の間において、新しい補助浮遊システムと対応する使用方法によって、公知のシステムのこれらの限定と欠点を克服することを意図している。この新しい補助浮遊システムと対応する使用方法により、保全クレーンを支持する浮遊要素と、保全が行われる風力タービンを支持する海洋構造物との間の相対運動をなくすことができる。
【発明の概要】
【0006】
上述の従来技術の欠点を克服するため、本発明の目的は、風力タービンタワーのような海洋構造物の保全のための補助浮遊システムを用いる方法を提供することである。この海洋構造物は、浮かんでいる、又は浮かんでいない。上記システムにより、公知のシステムに関して、上述の保全作業が最適化される。
【0007】
上述の目的は、好ましくは、海洋構造物に支持されている風力タービンの保全のための方法によって、行われる。この海洋構造物は、浮かんでいる、又は海底に固定されることができて、シャフト及び/又は基礎を備える。本発明は、特に、好ましくはクレーン作業による大きな高さの部品の保全のための作業に適している。また、本発明により、公知のバージ又は浮遊クレーンシステムの制限が、例えば、風力タービンの保全のための作業の場合、システムの運動の自由度が欠点である、又は好ましくない作業において、克服され得る。
【0008】
有利であるように、本発明の方法は、補助浮遊システムの使用を含む。
この補助浮遊システムは、以下を備える。
1つ以上の浮遊要素。
前記浮遊要素の少なくとも1つに位置している少なくとも1つのクレーン。
前記風力タービン及び/又は前記海洋構造物の部品の保管及び/又は修理のための少なくとも1つの作業領域。
前記海洋構造物に結合するための少なくとも1つの結合構造。
前記結合構造は、以下を備える。
前記海洋構造物、好ましくはシャフト又はタワーの要素を囲んで閉じるように構成されている多関節の閉リング。一方、この閉リングはまた、本発明の範囲から逸脱することなく、基礎の他の要素において、閉じ得る。
前記結合構造と前記海洋構造物との間の複数の接触要素。好ましい実施形態において、少なくとも3つの接触要素は、大きな高さに配置されている。また、少なくとも3つの他の接触要素は、小さな高さに配置されている。したがって、上方の高さの要素の反作用と、下方の高さの要素の反作用との間において、トルクが生じる。また、結合構造と、結合構造が結合される海洋構造物の要素との間のモーメントの伝達が促される。
前記接触要素の位置が調整され得る1つ以上の締め付け要素。前記締め付け要素は、前記接触要素により、締め付け力を前記海洋構造物に与えるように構成されている。
【0009】
好ましくは、海洋構造物に結合するための結合構造は、少なくとも3つの形態を取る。
前記閉リングが開いている開形態。
前記閉リングが閉じている閉形態。
前記閉リングが閉じて、前記締め付け要素が締め付け力を前記海洋構造物に与えるように構成されている締め付け形態。
【0010】
また、本発明の方法は、技術的に可能ないずれかの順序において、以下のステップを行うことを備える。
前記海洋構造物の位置に対して浮かんでいる前記補助浮遊システムを移送するステップ(a)。
前記開形態の前記結合構造により、前記補助浮遊システムを前記海洋構造物に近づけるステップ(b)。
前記閉リングが前記海洋構造物の要素を完全に囲むように、前記結合構造(7)を前記閉形態に配置するステップ(c)。
前記海洋構造物と前記補助浮遊システムが、運動の6自由度(上下運動、前後運動、左右運動、ヨー運動、ピッチ運動、及びロール運動)において、硬く接続されるようになるため、前記結合構造を前記締め付け形態に配置するように、制御された方法で前記締め付け要素に作用するステップ(d)。
前記風力タービン及び/又は前記海洋構造物における保全作業を行うように、前記クレーンを用いるステップ(e)。
前記風力タービン及び/又は前記海洋構造物の部品の保管及び/又は修理のための前記補助浮遊システムの前記作業領域を用いるステップ。
前記海洋構造物から前記補助浮遊システムを分離して、前記結合構造を前記開形態に配置するステップ(g)。
【0011】
本発明の方法の好ましい実施形態において、前記補助浮遊システムは、互いに接続している及び/又は前記結合構造に接続している複数の前記浮遊要素を備える。
【0012】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記補助浮遊システムは、バージ状の単一の前記浮遊要素を備えており、
前記クレーンと前記作業領域の両方が前記バージに配置されており、
前記バージは、単一の本体、又は互いに接続されている複数のモジュールの連結によって形成されている。
この第2の場合、バージは、必要な領域を備えるバージを完成するため、結合構造を備えるように特に形成されている特別なモジュールによって形成され得る。従来又は商用のバージモジュールは、結合構造に結合されている。コスト経済性は、システムに対する特別な要素の数が最小化されるため、達成される。また、従来技術において知られているバージのための標準的なモジュールを補助的に用いることができる。
【0013】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記クレーンは、伸縮式及び/又は折り畳み式のクレーンであって、
前記クレーンは、前記ステップ(d)の後、展開しており、前記ステップ(g)の前に再び折り畳まれる。
この可能性は、浮遊システムが浮かんで解放されている(すなわち、海洋構造物に結合されていない)とき、浮遊システムの安定性を助ける及び/又は増大するため、有利である。
【0014】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記作業領域は、前記クレーンの最小行動半径よりも大きい前記クレーンから離れた所定の距離において、少なくとも部分的に位置している。
クレーンの行動半径は、遠く離れすぎている場合だけでなく、近すぎるときも、制限を与える。(この第2の場合は、所定の構成などの最も制限する場合である。クレーンは、前記クレーンに対して近すぎる要素と共に、動作できない。)また、これは、最小寸法をバージに与えることになる。これが非常に大きなバージをもたらすことを防ぐため、バージの運動は避けることが難しい。本発明は、例えば、船舶又は沖合の構造において、ヘリコプタ発着場が有する構造と類似している構造により、「自由な」作業領域を使用することを考慮する。結果として、この構造は、バージ及び水線面積の大きさを増加することなく、クレーンから離れ得る。
前記作業領域は、前記浮遊要素に対して、少なくとも部分的に自由であるため、
前記作業領域の少なくとも一部の領域は、前記浮遊要素のデッキに位置していない。
自由なプラットフォームの利点は、プラットフォームを用いることによって、結果として、浮遊要素の領域を不必要に増加することなく、プラットフォームが最小作業半径の外側にあるように、クレーンの作業領域を遠ざけることができることにある。領域を制限することにより、システム全体と海洋構造物自体の応力が、システム全体と海洋構造物との間の結合において、制限され得る。
【0015】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記ステップ(a)及び/又は前記ステップ(b)は、前記補助浮遊システムを曳航することによって、行われる。
これにより、補助システムの費用が減少し得る。
本発明に記載の補助浮遊システムはまた、自己推進移送され得る一方、作業に対してタグボートを用いる場合、自己推進移送される必要はない。
【0016】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記浮遊要素は、流体力学的減衰プレートを備える。
このプレートの利点は、主に、特に結合のステップ(b)とステップ(c)、及び分離のステップ(g)の間において、浮かんでいる運動を制限するための能力である。
【0017】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記浮遊要素は、中心において、又は偏心して、バラストで安定し得る。
偏心してバラストで安定することの利点は、クレーンが偏心して配置されている好ましい場合、クレーンの重量を相殺することから基本的に構成されている。これにより、結合構造との干渉を防ぐことを促して、クレーンの最小作業半径の外側に結合構造を配置するように、クレーンの作業領域を適切に遠ざけることができる。偏心バラストシステムはまた、相殺される結合構造の重量のような他の偏心重量が存在することを可能にする。
【0018】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記方法は、
前記ステップ(d)の後、潮の上昇を相殺するように、少なくとも1つの前記浮遊要素をバラストで安定させる及び/又は潮の下降を相殺するように、少なくとも1つの前記浮遊要素をバラストで不安定にさせるステップ(j)を備える。
結合構造により、上下運動の間において、海洋構造物とのソリッドカップリングを保つため、伝達される必要がある力は、減少する。この利点は、保全が行われる海洋構造物が浮かんでいるとき、潮が海洋構造物と補助浮遊システムに等しく悪影響を及ぼすため、浮遊構造の場合ではなく、固定された海洋構造物の場合に適用するだけである。代替として、結合構造は、締め付け形態に保たれて、クレーンが、ステップ(e)において、作動するときだけ、上下運動の間において、硬く接続され得る。一方、クレーンが作動しないとき、結合構造は、運動を自由にするように、締め付け力を緩め得る。したがって、上下運動の間において、潮の変化に適応するように、補助浮遊システムと海洋構造物との間の相対運動ができる。
【0019】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記補助浮遊システムの乾舷は、前記補助浮遊システムが、固定された海洋構造物に結合されたままである一方、潮の変化量が乾舷を10cm未満まで減少しないように、潮の変化に対応している。
【0020】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記補助浮遊システムは、前記補助浮遊システムと前記海洋構造物との間において、1つ以上の近づけるケーブル又は固定するケーブルを備えており、
前記ケーブルの長さは、近づけるステップ(b)の間において、調整される。
これらのケーブルは、一般的に、ウインチによって動作している。これは、補助浮遊システムを海洋構造物に近づけるための動作の間において、より大きな制御ができる利点を有する。好ましい実施形態において、ケーブルは、一方の端部において、海洋構造物に固定されている。また、ケーブルの長さは、補助浮遊システムから、ウインチによって調整される。ケーブルはまた、例えば海洋構造物のシャフトを部分的に囲んで、補助浮遊システムに固定されている両方の端部を有する。
【0021】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記閉リングは、船上陸場構造を備える前記海洋構造物の領域との結合に対して十分な内部空間を保持する。
システムの海洋構造物との結合、又は海洋構造物からの分離のための動作の間において、船上陸場への干渉は、発生することが防がれる。
【0022】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記締め付け要素は、以下を備える。
関節位置に固定されているレバーであって、前記レバーは前記関節位置に対して回転可能である。
前記レバーの位置に接続されている接触要素。
前記レバーの別の位置に接続されている伸縮式及び/又は折り畳み式の油圧シリンダ。
前記油圧シリンダを伸縮する及び/又は折り畳むように作動させることによって、前記レバーは回転を引き起こされて、
前記接触要素によって与えられる位置及び/又は力は、調整される。
【0023】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記油圧シリンダの作用線と前記関節位置との間の距離は、前記接触要素の作用線と前記関節位置との間の距離より大きいため、
前記レバーの効果によって、前記油圧シリンダの力Fが、前記力Fより大きい前記接触要素の力F’を生じる。
【0024】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記方法は、
前記ステップ(c)の前において、
補強手段を、前記結合構造が結合される前記海洋構造物の要素に与えるステップ(k)をさらに備えるため、
前記海洋構造物は、前記接触要素により、前記補助浮遊システムが前記海洋構造物に与え得る力に抵抗し得る。
【0025】
したがって、システムは、上記システムを用いるために予め形成されている海洋構造物に対してだけでなく、上記システムを用いるために予め形成されていない一方、補助浮遊システムの結合構造が伝達し得る力に抵抗するように適切に補強されている構造にも適用できる。
【0026】
別の好ましい実施形態において、
前記海洋構造物(2)は、モノパイル構造であって、
前記補強手段(15)は、モノパイルの内部をコンクリートで完全に埋めること、又は部分的に埋めることを含む。
この埋めることは、好ましくは、海洋構造物による接触要素の支持領域において、行われると共に、結合構造の接触要素の2つ高さと一致する2つの高さにおいて、モノパイルの内部を完全に埋めること、又は環状に埋めることであってもよい。モノパイルと風力タービンタワーとの間の遷移部を備えるモノパイルの場合、上記補強手段は、同様の方法で、遷移部に取り付けられ得る。この種類の補強は、既存の構造において、タワーに対する点検口、又はモノパイル若しくは遷移部への別の適切な経路により、コンクリートを簡単に注入することによって、実行することが非常に容易である利点を有しており、簡単であると共に費用対効果の良い方法において、頑強な補強を、補助浮遊システムの結合に対して与えられる領域にもたらす。他の実施形態において、従来技術において知られている他の補強手段は、金属又は他の種類であってもよいと共に、結果として、本発明の範囲から逸脱することなく、用いられ得る。
【0027】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記補助浮遊システムは、
前記締め付け要素の締め付け力及び/又は位置を制御及び/又はモニタするための手段、
及び/又は前記閉リングを開閉するための手段を備える。
リングを開閉するための手段は、例えば、リングの中央部に固定されている一端、及びリングの外側部に固定されている他端を有する油圧アクチュエータを備えてもよい。したがって、この油圧アクチュエータは、伸ばされるとき、リングを徐々に閉じるため、外側部を付勢して、引き込まれるとき、リングを開くため、逆の作用を生じる。
【0028】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記補助浮遊システムは、アクティブな締め付け要素とパッシブな要素の組み合わせを備える。
本発明の範囲において、パッシブな要素は、締め付け手段を欠いている接触要素であると分かる一方、パッシブな方法において、反作用として、力を海洋構造物に与える。アクティブな要素を用いることは、結合構造の締め付け力を調整できることに対して必須である。一方、一部のパッシブな要素との組み合わせは、必要なアクティブな要素の数と、結果として、システムの費用とを減らし得る。
【0029】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記接触要素は、前記海洋構造物に接触する支持プレート、及び3%より大きい摩擦係数を備えるため、
前記接触要素を前記海洋構造物に対して締め付けると、前記海洋構造物と前記補助浮遊システムとの間において、ソリッドカップリングを生じることをもたらす摩擦力が生じる。
特に、閉リングが、海洋構造物のシャフト、又は海洋構造物の他の垂直要素を囲むとき、上記摩擦は、上下運動の間において、垂直方向の力を伝達すること、及び硬い接続ができることに対して有利である。したがって、クレーンが動作する方法のステップ(e)の間において、締め付け要素によって、大きな力が、接触要素と海洋構造物との間において、作用して、相対垂直運動を防ぐために十分な摩擦力を生じる。一方、クレーンが動作しないとき、上記力は、減少し得る、又は緩和し得るため、潮に適応するように、摩擦力を減少して、相対垂直運動ができる。(この力は、固定された海洋構造物に作用するだけであり、潮が海洋構造物と補助浮遊システムに等しく悪影響を及ぼすため、浮かんでいる海洋構造物に必要ではない。)
【0030】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記補助浮遊システムの前記閉リングは、ガードを備えており、
前記ガードは、前記接触要素が作動する前において、ステップ(b)又はステップ(c)の間において、前記ガードが前記海洋構造物に接触するような位置にある。
一方、上記ガードは、例えば、2つの船舶の間において、又は船舶と固定要素との間において、衝撃を減衰することを意図している柔軟要素であると分かる。
【0031】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記クレーンは、無限軌道又は車輪を有する移動型陸上クレーンであって、
前記移動型陸上クレーンは、少なくとも1つの前記浮遊要素に支持されている。
海洋風力タービンの保全のために一般的に用いられる海洋クレーンの代わりに陸上クレーンを使用できることは、大きなコスト経済性を示す。
【0032】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、
前記クレーンは、移動型陸上クレーンであって、
前記移動型陸上クレーンは、
少なくとも1つのブーム、カウンタウェイト、及び前記クレーンを作動させるための機器を有する上部本体と、
車輪及び/又は無限軌道によって、前記クレーンを移動させるための手段を有する下部本体とを備えており、
前記補助浮遊システムは、前記クレーンの前記上部本体を備えるだけである。
したがって、クレーンの重量は減少する。また、本発明の方法の間において、クレーンが移動する必要がない場合、下部本体をなくすことができる。この実施形態において、補助浮遊システムは、クレーンの上記上部本体の接続のためのアンカリング手段を備える必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
上述及び他の特徴と利点は、本発明の詳細な説明から、また添付図面に関する好ましい実施形態から分かる。
【
図2a】
図2aは、海洋構造物に固定されていない本発明の補助浮遊システムの締め付け要素の詳細図を示す。
【
図2b】
図2bは、浮遊システムが固定される海洋構造物に固定されている本発明の補助浮遊システムの締め付け要素の詳細図を示す。
【
図3a】
図3aは、好ましい実施形態において、本発明のシステムの開形態の閉リングを示す。
【
図3b】
図3bは、好ましい実施形態において、本発明のシステムの閉形態の閉リングを示す。
【
図4】
図4は、伸縮式風力タービンタワーの保全に対して適用される本発明のシステムの第1の好ましい実施形態を示す。
【
図5】
図5は、浮遊要素がバージの形態で構成されている本発明のシステムの第2の好ましい実施形態の図を示す。
【
図6】
図6は、浮遊要素がバージの形態で構成されている本発明のシステムの第2の好ましい実施形態の図を示す。
【
図7】
図7は、浮遊要素がバージの形態で構成されている本発明のシステムの第2の好ましい実施形態の図を示す。
【
図8】
図8は、海洋構造物がモノパイル構造であり、好ましくは該モノパイルの内部を完全に埋める、又は部分的に埋める補強手段を備える本発明の第3の好ましい実施形態を示す。
【
図9】
図9は、システムの浮遊要素がバージの形態で構成されている
図5~7に対応する本発明のシステムの第2の好ましい実施形態の図を示す。
【
図10】
図10は、システムの浮遊要素がバージの形態で構成されている
図5~7に対応する本発明のシステムの第2の好ましい実施形態の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の異なる好ましい実施形態に関する詳細な記載は、
図1~10に基づいて、以下に説明される。上記記載は、限定することなく、請求された発明を示すように提供されている。
【0035】
図1は、風力タービン(20)を支持する海洋構造物(2)と共に、本発明の補助浮遊システム(1)の平面図を示す。上記海洋構造物(2)は、基礎(3)とタワー又はシャフト(4)とを備える。この実施形態において、補助浮遊システム(1)は、少なくとも1つの浮遊要素(5)を備える。(すなわち、
図1の実施例において、3つの上記要素(5)を示す。)補助浮遊システム(1)は、好ましくは保全のための作業の間において、海洋構造物(2)に結合される。(一方、本発明の所定の実施形態において、海洋構造物(1)を取り付ける、又は所定の沖合の位置に向けて運ぶような他の方法で用いることもできる。)
【0036】
システム(1)の浮遊要素(5)は、接続要素(6)(例えばトラス又は格子ジブ)によって、好ましくは、海洋構造物(2)の少なくとも1つの要素を囲むために意図している、例えばシャフト(4)の周りに配置されている結合構造(7)に接続されている。したがって、結合構造(7)と接触する位置又は領域は、海洋構造物(2)に固定するための手段を与える。したがって、浮遊システム(1)は、上述の作業の間において、位置を保持する。好ましくは、結合構造(7)は、シャフト(4)の周りに閉リング(8)を形成する。この閉リング(8)は、円形であってもよい、又は例えば湾曲している、若しくは多角形である他の閉形状を有してもよい。
【0037】
結合構造(7)と海洋構造物(2)との間の接触の位置又は領域に関して、本発明のシステムは、1つ以上の締め付け要素(9)を備える。接触要素及び締め付け要素は、結合構造(7)に固定されており、好ましくは、閉リング(8)に沿って配置され得る。上記締め付け要素(9)は、油圧シリンダのようなアクティブなアクチュエータを備える。このアクティブなアクチュエータにより、例えば、システムが、結合構造(7)によって、海洋構造物(2)に結合されるとき、締め付け力が海洋構造物に生じると共に、上記システム(1)の位置が海洋構造物(2)に固定され得る、又はある程度固定され得る。結合構造(7)と海洋構造物(2)との間の硬い取り付けにより、両方の構造の間の相対運動が削減される、又は十分に制限され得る。これに関連して、結果として、発明の範囲から外れることなく、材料の弾性変形のような所定の態様が小さな相対運動をもたらし得ることが分かる。いずれかの場合、結合構造(7)と海洋構造物(2)との間の硬い取り付けにより、常に、相対並進運動が50cm未満に制限されると共に、相対回転運動が、ロール方向又はピッチ方向において、2度未満に制限されると共に、ヨー方向において、5度未満に制限され得る。
【0038】
底部が固定されている基礎(3)において、海洋構造物(2)の運動は実質的にゼロである。それによって、結合に関して、硬いこと、又はある程度硬いことは、上記運動が海洋構造物(2)及び結合構造(7)の両方に対して実質的にゼロであると解釈される。一方、浮かんでいる海洋構造物(2)において、これは、運動が一般的にあるため、起こらない。この場合、ある程度硬い結合又は硬い結合は、海洋構造物(2)と結合構造(7)との間において、実質的にゼロ相対運動であると分かる。
【0039】
締め付け要素(9)は、一般的に、電気機械式、油圧式、空気圧式、又は同様のシステムによって、展開し得るアームのようなアクティブな要素を備える。これにより、接触要素(9’)の位置が調整されて、海洋構造物(2)に接触するまで、海洋構造物(2)に近づき得る。締め付け要素(9)はまた、浮遊システム(1)に関して、例えば海洋構造物(2)の運動を制限する、又は妨げる止め具として構成されているパッシブな要素を備えてもよい。このパッシブな要素は、閉リング(8)に対する海洋構造物(2)の位置が変わらないように保つ。
【0040】
本発明のシステム(1)はまた、任意で、締め付け要素(9)を海洋構造物(2)に完全に固定するより前のステップの間において、使用することに適している接触要素(9’)を備えてもよい。上記接触要素(9’)は、締め付け要素(9)自体に設けられる、又は設けられていなくてもよいと共に、好ましくはシャフト(4)との自由な滑り接触を与えることに適している。したがって、接触要素(9’)により、締め付け要素(9)を海洋構造物(2)に硬く取り付けるより前のステップにおいて、上記シャフト(4)と補助浮遊システム(1)との間の相対垂直運動ができる。したがって、結合構造(7)は、接触要素(9’)により、海洋構造物(2)の水平の位置の変化に対する物理的な停止をもたらして、(例えば風、波などにより)上記構造が維持し得る考えられる勾配を制限して、好ましくは滑り接触によって、上記構造物(2)が安定性を保つ。これにより、実質的に垂直軸に沿う海洋構造物(2)の自由運動ができる。上述の海洋構造物(2)の自由運動は、摺動、ロール回転、無限軌道、又はいずれかの既知の技術によって、実行され得る。これにより、シャフト(4)の表面にわたる接触要素(9’)の間において、独立した十分な自由相対運動ができる。
【0041】
したがって、接触要素(9’)は、補助浮遊システム(1)とシャフト(4)との間の他の相対運動、すなわち(好ましくは1m以下の)相対水平運動と、(好ましくは10度以下の)ロール運動及び/又はピッチ運動の間の相対回転と、(好ましくは20度未満の)ヨー運動の間の相対回転とを妨げる及び/又は制限する。一方、本発明の新規の方法において、締め付け要素(9)は、保全作業の間、海洋構造物(2)と浮遊システム(1)との間の相対垂直運動を妨げること、又は制限することを担っている。
【0042】
同様に、発明の実施形態において、海洋構造物(2)は船上陸場を有する。閉リング(8)の形状により、上記船上陸場への干渉が防がれ得る。したがって、上記形状は、システム(1)を固定することを促すと共に、保全作業を改善させるため、海洋構造物(2)の形状特性に適応し得る。
【0043】
図2a~2bは、締め付け要素(9)の考えられる実施形態を示す。上記要素は、レバー(10)に結合している少なくとも1つの接触要素(9’)を備える。このレバー(10)は、油圧シリンダ(11)によって、作動し得る。この実施形態において、結合構造(7)がシャフト(4)に接して閉じるとき、レバー(10)は、該シャフト(4)に接触するまで、作動して、浮遊システム(1)が海洋構造物(2)に硬く結合されるまで、上記作動とレバー(10)の展開を保つ。この実施例において、すべての締め付け要素(9)は、アクティブな形態(油圧シリンダ(11)により、対抗する力を与えるレバー(10)の形態)を取る。または、レバー(10)とパッシブな要素の組み合わせが用いられ得る。上記レバー(10)は、シャフト(4)により、パッシブな要素に対して力を与える。本発明の異なる実施形態において、レバー(10)の作動は、そのままの位置で、又は遠隔制御手段により、行われ得る。同様に、レバー(10)と油圧シリンダ(11)との間の接続は、1つ以上の関節位置(14)によって、間接接合され得る。
【0044】
本発明の考えられる実施形態において、少なくとも3つの接触要素(9’)は、結合構造(7)の第1の高さにおいて、用いられる。また、少なくとも3つの接触要素(9’)は、結合構造(7)の第2の高さにおいて、用いられる。したがって、閉リング(8)は、2つの支持レバーにより、構成されており、海洋構造物(2)と補助浮遊システム(1)との間の相対的な勾配によって生じるモーメントを吸収する能力を改善する。同様に、上記リング(8)は、ピン、共働取り付け部、電気機械的システム、若しくは他の既知の手段により、閉じるための異なる機構、又は海洋構造物(2)の周りの位置を保持するための異なる機構を有してもよい。
【0045】
図3a~3bの実施例において、結合構造(7)は、金属格子構造によって、形成されている。また、上記結合構造(7)は、海洋構造物(2)に対して配置すること及び/又は取り除くことを促すため、(図示しない)開閉サブシステムと、任意で、海洋構造物(2)におけるシステム(1)の折り畳み及び/又は展開のための1つ以上のアクチュエータとを備える。上記アクチュエータは、遠隔で作動し得る、又は作動しない。また、異なる実施形態において、アクチュエータは、延びるとき、及び縮むとき、力を与え得る伸縮式油圧シリンダを備えてもよい。代替的に、アクチュエータはまた、機械式アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、ロープによって作動する運搬ロープ、又はウインチなどのような従来技術において知られている異なる種類の手段を備えてもよい。リング(8)を開閉するための手段は、上記リング(8)の中央部に固定されている一端、及び外側部に固定されている他端を有する油圧アクチュエータから構成され得る。したがって、油圧アクチュエータは、伸ばされるとき、リング(8)を閉じるため、外側部を付勢して、引き込まれるとき、リングを開くため、逆の作用を生じる。
【0046】
図3aは、開形態の閉リング(8)の平面図を示す。閉リングは、中央セクタと、それぞれの関節位置において、中央セクタに接続される2つの外側セクタとを有する。
図3bに示すように、関節位置における外側セクタを回転することによって、閉形態のリングが配置され得る。
【0047】
上述のように、結合構造(7)は、好ましくは、モジュール式である、又は調節できるため、該構造物(2)を予め修正する、又は追加手段若しくは基礎構造を該構造物(2)に与える必要なく、異なる寸法及び/又は特性の海洋構造物(2)及び/又はシャフト(4)に適応し得る。例えば、モジュールは、長さ及びシャフト(4)に対する距離を調整するため、結合構造(7)の格子ジブに追加されて、又は格子ジブから取り除かれて、シャフト(4)自体が変更される必要があることを防ぐ。別の方法、又は相補的な方法において、締め付け要素(9)及び/又は接触要素(9’)の位置及び/又は寸法は、変更され得る、又は調整され得る。したがって、同じ補助浮遊システム(1)は、異なる直径のシャフト(4)、又は可変直径、異なる断面(例えば六角形又は円形)、若しくは異なる寸法(例えば異なる辺心距離又は直径)のシャフト(4)を有する海洋構造物(2)の保全に対して用いられ得る。
【0048】
図1に示すように、また
図4の側面図における、本発明のシステム(1)の好ましい実施形態において、上記システムは、好ましくは該システムの作業領域(13)に配置されている保全作業クレーン(12)を備える。作業領域(13)は、浮遊要素(5)自体に位置し得る、又はその目的で取り付けられている付属構造に位置し得る。作業領域(13)は、同様に、好ましくは、海洋構造物(2)の部品(例えば風力タービン(20)のタービン又はブレードの部品)の保管及び/又は修理のために用いられる。本発明の異なる実施形態において、上記作業領域(13)は、浮遊要素(5)に関して、高い領域及び/又は自由な領域であってもよい。
【0049】
好ましくは、(陸上の建設作業に一般的に用いられる移動型商用クレーン又は無限軌道のクレーンであると理解されている)陸上クレーン(12)は、海洋クレーンが用いられるより、費用対効果が良い。浮遊システム(1)を海洋構造物(2)に硬く結合することにより、システムの運動を制限して、非常に高い位置で作業するとしても、例えば、風力タービン(20)の保全のための作業において起こるような保全作業の間において、クレーンの作業を促すということの結果として、陸上クレーン(12)が考えられる。異なる実施形態において、クレーン(12)は、折り畳み式及び/又は伸縮式のクレーンであってもよく、好ましくは、浮遊システム(1)と海洋構造物(2)との間の硬い結合より前のステップにおいて、折り畳まれたままである(
図5)。上記結合が行われるとき、上記クレーンは、安全な方法で展開し得る。したがって、高い位置における保全作業は、安全な方法で行われ得る。
【0050】
図5~7は、本発明の第2の好ましい実施形態を示す。補助浮遊システム(1)の浮遊要素(5)がバージの形態の単一の支持ブロックをまとめる。クレーン(12)と作業領域(13)の両方が、バージに配置されている。
図5,6は、クレーン(12)が、折り畳まれている伸縮式ブームを有する場合の正面図と平面図を示す。この場合は、補助浮遊システム(1)が独立して浮かんでいる状態に対して好ましいと共に、(例えばステップ(a)において、)海洋構造物(2)から分離している。この状態の間において、クレーン(12)のブームとフックは、浮かんでいるときの上記システム(1)の運動の考えられる影響を軽減するように、補助浮遊システム(1)の固定要素に固定されるための暫定的な要素を有してもよい。
【0051】
同様に、本発明の異なる実施形態において、浮遊要素(5)は、波によって生じる好ましくない運動を減少及び減衰させるため、流体力学的減衰プレート、例えば上下運動プレートを備えてもよい。同様に、システム(1)の上記浮遊要素(5)は、浮力、及び結果として、海洋構造物(2)の安定性を制御するための追加手段を与えるため、バラストで安定し得る。したがって、浮遊要素(5)は、上記浮遊要素(5)の内側と浮遊要素(5)が浮かんでいる水塊との間において、水流ができる及び/又は水流を制御するように、水中の本体(すなわち、水と接触して沈んでいる浮遊本体の一部)に配置されている1つ以上のバラスト調整手段を備えてもよい。このバラスト調整手段により、調整される動作ができて、海洋構造物(2)に向けて運ぶ状態のアセンブリの減衰と固有振動数を修正する。バラスト調整手段は、保全作業の間において、浮遊システム(1)と海洋構造物(2)アセンブリの潮の影響を制限する。この能力は、特に、システム(1)が重い機器(例えば、風力タービン(20)のブレード)を偏心して保持する作業において、有利である。これにより、水平状態を変える。浮遊要素(5)を偏心してバラストで安定することの結果として、システムは、システム(1)を海洋構造物(2)の沖合の位置に向けて運ぶステップより前において、保全作業の間において、上記機器の不安定な影響を相殺し得る。同様に、バラスト手段は、潮の相殺手段として用いられて、水が取り入れられ得る、又は浮遊要素(5)から排出され得る。このバラストは、例えば、固定されている風力タービン(20)の保全において、システム(1)が海洋構造物(2)に結合されるとき、潮の動作を相殺するように用いられ得る。
【0052】
バラスト調整手段は、好ましくは、調整され得る及び/又は遠隔で作動し得る開口部を有するゲート、及び/又は水を取り除く、若しくは水を取り入れるためのポンプを備える。調整ゲートの開口部により、システムの浮遊要素(5)の充填の高さ、及び/又は水の出入り高さが定められ得る。実際には、これは、効果的な水線面積及び/又は喫水を調整することと同等である。したがって、海洋構造物(2)の移送又は保全の作業の異なるステップにおいて、上記浮遊要素(5)、及び/又は浮遊要素(5)が海洋構造物(2)と共に形成するアセンブリの振動周期を間接的に制御することができる。
【0053】
浮遊要素(5)は、従来技術において知られている異なる材料、好ましくはコンクリート及び/又は金属材料を用いて製造され得る。また、混合構造も用いられて、浮遊要素(5)の下部をコンクリートで製造して、残りを鉄で製造する。さらに、既成タンクの建造に対して一般的に用いられる方法と同様の既成コンクリート技術が用いられ得る。
【0054】
浮遊要素(5)の構成はまた、全体の大きさを調整するため、モジュール式であってもよい。上記浮遊要素(5)を形成するために用いられ得る部品又はモジュールは、複数の形状を形成し得る。したがって、寸法は、好ましくは、移送と再使用を促すため、コンテナに配置され得るように(標準的なコンテナの寸法を越えることなく)定められている。上記モジュールは、浮遊要素(5)を形成するように、底部と高い位置の両方において、互いに取り付けられ得る。
【0055】
好ましくは、浮遊要素(5)と、海洋構造物(2)に結合するための結合構造(7)とによって形成されているアセンブリは、流体力学的に自立している。したがって、上記浮遊要素(5)と結合構造(7)の質量の分布、及び浮遊の中心は、開閉サブシステム(10)が開いている(すなわち、システム(1)が海洋構造物(2)から分離している)とき、浮遊要素(5)が直立位置で平衡を保つように定められている。
【0056】
本発明の別の好ましい実施形態において、保全のための方法は、追加のステップを備えてもよい。この追加のステップにおいて、補強手段(15)が、結合構造(7)が結合される海洋構造物(2)の要素に取り付けられる。したがって、海洋構造物(2)は、接触要素(9’)により、補助浮遊システム(1)が海洋構造物に与え得る力に抵抗できる。
【0057】
図8は、モノパイル海洋構造物(2)を示す。また、補強手段(15)は、好ましくは、モノパイルの内部をコンクリートで完全に埋めること、又は部分的に埋めることから構成されている。この埋めることは、好ましくは、接触要素(9’)の接触の領域において、行われると共に、結合構造(7)の接触要素(9’)の2つ高さと一致する2つの高さにおいて、モノパイルの内部を完全に埋めること、部分的に埋めること、又は環状に埋めることであってもよい。モノパイルと海洋構造物(2)との間の遷移部を備えるモノパイルの場合、上記補強手段は、同様の方法で、遷移部に取り付けられ得る。他の実施形態において、従来技術において知られている他の補強手段は、金属又は他の種類であってもよいと共に、結果として、本発明の範囲から逸脱することなく、用いられ得る。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態において、クレーン(12)は、少なくとも1つのブーム、カウンタウェイト、クレーンを作動させるための機器、及び車輪及び/又は無限軌道によって、クレーンを移動させるための手段を備える下部本体を有する移動型陸上クレーンである。補助浮遊システム(1)は、クレーン(12)の上部本体を備えるだけである。(したがって、クレーンの重量は減少する。)また、保全のための方法の間において、クレーンが移動する必要がない場合、下部本体をなくすことができる。この実施形態において、補助浮遊システム(1)は、クレーン(12)の上記上部本体の接続のためのアンカリング手段を備える必要がある。
図4において、上述の実施形態を示す。例えば
図5~7と対照的に、クレーンの上部本体だけが用いられることを示す。
図5~7において、(車輪を有する下部本体を含む)両方の本体を有する陸上クレーンが用いられる。
【0059】
最後に、
図9~10は、
図5~7に対応する本発明の補助浮遊システム(1)の好ましい実施形態の異なる図を示す。浮遊要素(5)は、バージの形態で構成されている。
【符号の説明】
【0060】
1 補助浮遊システム
2 海洋構造物
3 基礎
4 シャフト
5 浮遊要素
6 接続要素
7 結合構造
8 結合構造の閉リング
9 締め付け要素
9’ 接触要素
10 レバー
11 油圧シリンダ
12 作業クレーン
13 作業領域
14 関節位置
15 補強手段
20 風力タービン
【国際調査報告】