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特表2022-534753性能および耐用年数を向上させたコーティングされた成形工具
<図1>
  • 特表-性能および耐用年数を向上させたコーティングされた成形工具 図1
  • 特表-性能および耐用年数を向上させたコーティングされた成形工具 図2
  • 特表-性能および耐用年数を向上させたコーティングされた成形工具 図3
  • 特表-性能および耐用年数を向上させたコーティングされた成形工具 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】性能および耐用年数を向上させたコーティングされた成形工具
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/06 20060101AFI20220727BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
C23C14/06 P
C23C14/06 H
C23C16/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570934
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020064966
(87)【国際公開番号】W WO2020239976
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/853,969
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516082866
【氏名又は名称】エリコン サーフェス ソリューションズ アーゲー、 プフェフィコン
【住所又は居所原語表記】Churerstrasse 120 8808 Pfeffikon SZ CH
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】クラメナウアー,ジャーゲン
(72)【発明者】
【氏名】セドラグ,ロビン
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA24
4K029BA54
4K029BA58
4K029BB02
4K029BC01
4K029BD05
4K029CA04
4K029CA13
4K029DA04
4K029DA08
4K029DB03
4K029DB05
4K029DD06
4K029FA05
4K029GA03
4K030AA11
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA44
4K030CA02
4K030CA17
4K030DA02
4K030FA01
4K030JA10
4K030JA17
4K030LA21
(57)【要約】
プラスチック材料またはアルミニウムもしくはアルミニウム合金材料を加工するためのコーティングされた成形工具であって、基材表面(1)を有する基材(10)を備え、基材表面(1)は、1つ以上の層で形成されたコーティング(2)でコーティングされ、コーティング(2)は、水素、酸素、チタン、クロム、および/またはアルミニウムの元素から選ばれる元素を有するSiに対応する元素%の元素組成を有するSi-C-N系層(3)を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料またはアルミニウムもしくはアルミニウム合金材料を加工するためのコーティングされた成形工具であって、基材表面(1)を有する基材(10)を備え、前記基材表面(1)は、1つ以上の層で形成されたコーティング(2)でコーティングされ、前記コーティング(2)は、50<a+b+c≦100、0≦d<60、好ましくは0≦d<50のSiに相当する原子%での元素組成を有するSi-C-N系層(3)を含み、ここで、Xは、水素、酸素、チタン、クロム、および/またはアルミニウムの元素から選ばれる1つ以上の元素である、ことを特徴とする、コーティングされた成形工具。
【請求項2】
Xは、水素、もしくは酸素、または水素および酸素を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項3】
Xは、チタン、もしくはクロム、もしくはアルミニウム、またはチタン、クロムおよび/もしくはアルミニウムの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項4】
Xは、非金属元素である水素および酸素、ならびに金属元素であるチタン、クロム、およびアルミニウムによって構成される元素の群から選ばれる1つ以上の元素であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項5】
前記コーティング(2)は、複数の層で形成されており、Si-C-N系層(3)が最外層として堆積されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項6】
前記基材表面(1)は窒化層(4)を含み、その上に前記コーティング(2)が堆積されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項7】
前記コーティング(2)は、前記基材表面(1)および前記Si-C-N系層(3)の間に堆積された硬質薄膜層(5)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項8】
前記硬質薄膜層(5)は、金属窒化物層、または金属酸化物層、または金属酸窒化物層、または金属カルボキシ窒化物層、または金属炭窒化物層であり、前記硬質薄膜層(5)は、式Me(Cに対応する原子%での化学組成を有し、ここで、Meは、クロム、アルミニウム、チタン、バナジウムおよびモリブデンによって構成される元素の群から選択される1つ以上の元素であり、炭素、窒素、および酸素の原子分率v、y、およびzがそれぞれ0≦v≦1、0≦y≦1、0≦z≦1の範囲の値で、v+y+z=1であり、前記金属元素Meの1molに対する前記非金属元素C、N、およびOのmol濃度qが0.76≦q≦1.2の範囲であることを特徴とする、請求項7に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項9】
前記基材表面(1)および前記コーティング(2)の間に接着層(6)が堆積されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項10】
前記Si-C-N系層(3)は、ケイ素、炭素および窒素に加えて、水素および酸素を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具。
【請求項11】
前記Si-C-N系層(3)は、PE-CVD技術を用いて堆積され、前駆体としてSi含有ガスが用いられることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具を製造する方法。
【請求項12】
前記Si含有ガスは、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
シリコン炭窒化物層(3)の堆積の前に、コーティングされる前記基材(10)は、前記コーティング(2)がその上に堆積される前記基材表面(1)を含む窒化物層(4)を形成するためのプラズマ窒化プロセスに供されることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
プラスチック加工作業における、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具の使用。
【請求項15】
プラスチック加工作業は、プラスチック射出成形であることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項16】
アルミニウムまたはアルミニウム合金の加工作業における、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具の使用。
【請求項17】
前記アルミニウムまたはアルミニウム合金の加工処理作業は、アルミニウムダイキャストまたはアルミニウム合金ダイキャストであることを特徴とする、請求項16に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの加工、またはアルミニウムもしくはアルミニウム合金の加工に特に有利な、コーティングされた成形工具に関する。このような加工作業は、例えば、プラスチックの射出成形およびアルミニウム(またはアルミニウム合金)のダイキャストを含み得る。本発明のコーティングされた成形工具は、本分野で知られているコーティングされた成形工具と比較して、より優れた性能を達成しおよび耐用年数を大幅に向上させることができる。
【0002】
本発明の文脈における用語「成形工具」は、加工される材料と接触、例えば、プラスチック加工作業でプラスチック材料と接触したり、またはアルミニウム(もしくはアルミニウム合金)加工作業でアルミニウム(もしくはアルミニウム合金材料)と接触したりするように意図された表面を有する、金型または金型の部品を含む、あらゆる種類の成形工具または成形工具の部品を指すと理解されなければならない。
【背景技術】
【0003】
成形工具の性能を向上させるために、成形工具にコーティングを使用することはすでに知られている。
【0004】
雑誌「Blasformen&Extrusionswerkzeuge」エディション6/2008に掲載された「Extrusion: Beschichtete Dusenoberflachen vermeiden Korrosion und Verschleiss」というタイトルの記事で、プラスチックの押出成形用ノズルの表面に化学ニッケルコーティングを施すと、他のコーティングに比べて耐食性および耐摩耗性の面でかなり有利であることが報告されている。
【0005】
これらの化学ニッケルコーティングの最も重要な利点の1つは、それらがコーティングされる工具または部品の表面の輪郭に忠実に堆積され得ることである。それらは、複雑な形状のもの、試錐孔および窪みにも均一にコーティングすることが可能であるはずである。これらのコーティングを堆積する際のプロセス温度は最大で90℃である。また、化学ニッケルコーティングを使用した場合、クロムめっきにより生成されたコーティングを使用した場合と比較して、少なくとも2倍の耐用年数を達成したと報告されている。さらに、ポリプロピレン(PP)ホワイト種のプラスチック成形品をブロー型から取り出す際に生じる通常のトラブルは、このような種類の化学ニッケルコーティング、特に「ケミッシュニッケル-PTFE」と呼ばれるコーティングを使用することで回避され得ることが報告された。
【0006】
2015年9月22日に専門媒体MaschinenMarktのホームページに掲載されたStephane Itasse氏の「Neuartige Beschichtung verzehnfacht Standzeit von Spritzgiesswerkzeug」というタイトル記事では、Oerlikon Balzers社のBalinit Aというコーティングがダイキャスト金型のコーティングに使用され、このコーティングによって耐用年数を10倍にすることができたと報告されている。
【0007】
しかし、生産性、経済性、および製造プロセスの信頼性に対する要求の高まりにより、非常に高い要求を満たすためには、新しい解決策を提供する必要がある。
【0008】
本発明の目的
本発明の目的は、成形作業、好ましくはプラスチック加工作業および/またはアルミニウム加工作業において、生産性、経済性および製造プロセスの信頼性を向上させるための解決策を提供することである。この解決策は、好ましくは、対応する加工作業で使用される成形工具の耐用年数を大幅に増加させるものである。
【0009】
本発明の説明
本発明の目的は、ケイ素、炭素および窒素を主成分とするSi-C-N系層を含むコーティングで基材表面をコーティングすることを含む、成形工具、特に基材を提供することにより達成される。
【0010】
本発明による層の元素組成は、以下のように表され得る:
50<a+b+c≦100、0≦d<60のSi、好ましくは0≦d<50であり、Xは以下の元素の群:H、O;Ti、Cr、Alから選ばれる1つ以上の元素であり得る。0≦d<55であれば好ましい実施形態とすることができ、0≦d<50であればより好ましい実施形態とすることができ、0≦d<45であればさらに好ましい実施形態とすることができ、0≦d<40であればより好ましい実施形態とすることができる。
【0011】
好ましくは、Xは水素、酸素、または水素および酸素を含む。
【0012】
好ましくは、Xは、チタン、もしくはクロム、もしくはアルミニウム、またはチタン、クロム、および/もしくはアルミニウムの組み合わせを含む。
【0013】
好ましい実施形態では、本発明による層の元素組成は、以下:Siのように表され得る。好ましくは、d=e+fである。好ましくは、Yは、水素、酸素、チタン、クロム、またはアルミニウムを含む。好ましくは、Zは、水素、酸素、チタン、クロム、またはアルミニウムを含む。好ましくは、Siは、水素および酸素を含む。
【0014】
好ましい実施形態によれば、Xは、元素HおよびOに対応する。
【0015】
さらに、Si-C-N系層(シリコン炭窒化物系層)にTi、Cr、および/またはAlなどの金属原子をドーピングすることで、コーティングの特性の面でさらなる利点を得ることができる。これらの金属元素は、例えば、TiCl4、AlCr3および/または有機金属前駆体のような典型的なCVD前駆体を用いて、コーティングに組み込まれ得る。
【0016】
好ましい実施形態では、60<a+b+c≦100、0≦d<60の元素組成Siを有する本発明のSi-C-N系層を用いることにより、特に良好な結果が得られ得る。0≦d<55であれば好ましい実施形態とすることができ、0≦d<50であればより好ましい実施形態とすることができ、0≦d<45であればさらに好ましい実施形態とすることができ、0≦d<40であればより好ましい実施形態とすることができる。
【0017】
本発明をより詳細に説明するために、本発明のいくつかの例および好ましい実施形態について説明する。
【0018】
図1図4は、本発明のいくつかの実施例および好ましい実施形態を理解するのに役立つはずである。
【0019】
本発明の以下の説明における例および好ましい実施形態は、本発明を限定するものとして理解されるべきではなく、本発明をよりよく理解するためのショーケースとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による成形工具の基材10の基材表面1上に堆積されたコーティングシステムのアーキテクチャを模式的に示しており、コーティング2は基材表面1上に単層として堆積され、すなわち、コーティング2は1つの層のみで形成され、層はSi-C-N系層3である。
【0021】
図2】本発明による成形工具の基材10の基材表面1上に堆積される本発明の別の実施形態におけるコーティングシステムのアーキテクチャを模式的に示しており、基材表面1上に多層としてコーティング2が堆積され、すなわち、コーティング2は2つ以上の層で形成されており、Si-C-N系層が最上層として堆積され、基材表面1とSi-C-N系層3との間には硬質薄膜層5が堆積されている。
【0022】
図3】本発明による成形工具の基材10の基材表面1上に堆積された本発明の別の実施形態におけるコーティングシステムのアーキテクチャを模式的に示しており、コーティング2は基材表面1上に多層として堆積され、すなわち、コーティング2は2つ以上の層で形成され、Si-C-N系層3は最上層として堆積され、基材10は窒化層4を含み、窒化層4は好ましくは基材表面1を形成し、硬質薄膜層5は窒化層4とSi-C-N系層3との間に堆積されている。
【0023】
図4】本発明による成形工具の基材10の基材表面1上に堆積された本発明の別の実施形態におけるコーティングシステムのアーキテクチャを模式的に示しており、コーティング2は接着層6上に多層として堆積され、基材10は窒化層4を含み、窒化層4は、好ましくは基材表面1を形成し、接着層6は、上述のように好ましくは基材表面1を含む窒化層4上に堆積され、Si-C-N系層3が最上層として堆積され、接着層6とSi-C-N系層3との間に硬質薄膜層5が堆積されている。
【0024】
本発明者らは、Si-C-N系層3がコーティング2の最外層として堆積される場合、特にプラスチック加工作業およびアルミニウム加工作業における成形工具の性能および耐用年数の特に良好な改善が達成され得ることを見出した。
【0025】
本発明のSi-C-N系層3は、好ましくは以下を呈するように堆積される:
-アモルファスの層構造、および/または
-液滴がない(液滴は通常、物理的気相成長(PVD)プロセス、特にフィルターを通さないアーク蒸着プロセスで堆積されたコーティングに形成される)、および/または
-高耐食性。
【0026】
好ましくは、本発明のSi-C-N系層3は、上に挙げたすべての特性を同時に呈す。
【0027】
コーティング2の最上層として本発明のSi-C-N系層3を堆積することにより、以下のような付加的な利点を得ることがさらに可能となる:
-加工中のプラスチック材料と接触しても、成形工具の材料が化学反応を起こさない(不活性)、および/または
-加工中の溶融プラスチックに成形工具の材料が付着する傾向が減少する。
【0028】
本発明の好ましい第1の実施形態によれば、コーティング2は1つのSi-C-N系層3のみからなる。この場合、図1に示されるように、Si-C-N系層3を基材表面1上に直接堆積させ得る。基材表面1とコーティング2を構成するSi-C-N系層3との間に、コーティング2の基材表面1への接着性を向上させるための接着層6が追加で堆積され得ることが有益であり得る。
【0029】
この第1の実施形態による成形工具に本発明のコーティングを提供することにより(例えば、図1参照)、以下の利点が得られる:
-プラスチック材料との接触時に不活性(化学反応を起こさない)、ならびに/または
-成形工具の製造に使用される低合金バルク材料(例えば、クロムが5wt.以下のもの)(例えば、熱処理可能な冷間加工用工具鋼1,2311および1,2312などの調質工具鋼、熱間工具鋼1.2343および1.2344などの焼入れ工具鋼、熱処理可能な鋼1,7735、1,8519および1,8550などの窒化鋼)と比較して、改善された耐食性。
【0030】
好ましくは、第1の実施形態は、上に挙げたすべての利点を同時に達成している。
【0031】
本発明のさらに好ましい第2の実施形態によれば、コーティング2は、少なくとも2つの層を含む多層アーキテクチャを有して堆積され、層の1つは、図2に示されるように、最外層、好ましくは最上層として堆積されたSi-C-N系層3である。この場合、図2に示すように、多層アーキテクチャの第1の層5は、基材表面1に直接堆積され得る。図2に示す場合では、第1の層5は、基材表面1とSi-C-N系層3との間に堆積される。この実施形態では、基材表面1とこの実施形態でコーティング2を構成している多層アーキテクチャの第1の層5との間に、接着層6(図2には示されていない)が堆積されることが有益であり得、接着層6は、基材表面1に対するコーティング2の接着性を向上させるために使用される。
【0032】
この第2の実施形態による成形工具に本発明のコーティングを提供することにより(例えば、図2参照)、以下の利点が得られる:
-プラスチック材料との接触時に不活性(化学反応を起こさない)、および/または
-成形工具の製造に使用される低合金バルク材料(例:クロム≦5wt.-%)と比較して耐食性が向上(上記の典型的な成形工具材料の例を参照)、および/または
-コーティング2を形成している多層構造にハードコーティング層(例えば、金属窒化物層)を含めることによって、例えば、コーティング2の第1の層5としてPVD堆積窒化物層を含めることによって、総コーティング硬度が増加する、および/または
-プラスチック中の硬質粒子に関する単位面積あたりの接触圧力の改善。
【0033】
好ましくは、第2の実施形態は、上に挙げたすべての利点を同時に達成している。
【0034】
「接触圧力の改善」という用語をよりよく理解するために、以下の例を説明する:
【0035】
例えば、第1の層5が5μmよりも厚く、好ましくは10μmよりも厚く、最上層3よりも硬い場合、第1の層5と共に、最上層3(Si-C-N系層3)のための支持体が与えられる。プラスチックには、例えば、硬質粒子がある。コーティングされた成形工具でプラスチックを成形すると、特に最上層3の下に支持体が存在せず、特にバルク材料の表面硬度が例えば550HVを超えていない場合には、プラスチックの硬質粒子が最上層3でブレーキをかける危険性がある。基材表面の第1の層5および好ましくは追加の窒化層4(図3および/または4および後述の本発明の好ましい第3の実施形態を参照)により、単位面積当たりの接触圧力は、例えばプラスチック成形における硬質粒子に関して改善され得る。
【0036】
本発明のさらに好ましい第3の実施形態によると、基材10の表面に窒化層4が形成されるように、基材表面1が処理され、窒化層4が基材表面1を含むようになる。このようにして、コーティング2は、(図3に示すように)基材表面1を含む窒化層4上に堆積される。コーティング2は、(図4に示すように)基材表面1を含む窒化層4上に堆積される接着層6上に堆積されることが有益であり得る。図4に示した接着層アーキテクチャは、有用で有望であると思われる。
【0037】
この第3の実施形態による成形工具に本発明のコーティングを提供することにより(例えば、図3または図4参照)、以下の利点が得られる:
-プラスチック中の硬質粒子に関する単位面積当たりの接触圧のさらなる向上(図2に示した実施形態と比較してより高い接触圧)、および/または
-通常、コーティングの硬度よりもかなり低い硬度(例えば、鋼の硬度≦550HV)の鋼である成形工具基材に対するコーティングのより良い支持効果を提供することによる、基材-コーティングシステムの機械的安定性の向上、および/または
-高温での機械的強度の向上(500℃まで窒化層4の機械的特性が損なわれず、500℃の使用温度でも高硬度が維持される)、および/または
-クラックの挙動/伸展の改善(バルクへのクラックの伝搬が改善された。クラックは、表面ゾーンでの窒素の貯蔵に関して誘発された内部応力に起因して、ほとんど窒化層4で、好ましくは窒化深度の終わりで停止する。最上層3および第1の層5は、好ましくは表面に平行にクラックを流し、基材を保護する。)
【0038】
好ましくは、第3の実施形態は、上に挙げたすべての利点を同時に達成している。
【0039】
本発明者らは、上述した好ましい第3の実施形態(図3および/または4も参照)のいずれかに従ってコーティングまたは加工およびコーティングされた驚くべき成形工具が、Si-C-N系最外層3と基材表面1との間に堆積された少なくとも1つの耐食層(例えば、良好な耐食性を呈す硬質薄膜層5)を含むコーティング2を堆積させることによって、より大幅に増加した耐用年数を達成できることを見出した(場合によっては、耐食層5は、例えば、Si-C-N系最外層3と接着層6との間、またはSi-C-N系層3と基材表面1を含む窒化層4との間に堆積され得る)。
【0040】
硬質薄膜層5は、金属窒化物層または金属酸化物層または金属酸窒化物層または金属カルボキシ窒化物層または金属炭窒化物層であることが好ましい。硬質薄膜層5は好ましくは、式Me(Cに対応する原子%での化学組成を有し、ここで、Meは、クロム、アルミニウム、チタン、バナジウムおよびモリブデンによって構成される元素の群から選択される1つ以上の元素であり、炭素、窒素、および酸素の原子分率v、y、およびzがそれぞれ0≦v≦1、0≦y≦1、0≦z≦1の範囲の値で、v+y+z=1であり、金属元素Meの1molに対する非金属元素C、N、およびOのmol濃度qが0.76≦q≦1.2の範囲である。
【0041】
耐食層は、窒化クロム層または窒化クロム系層であることが好ましい。本発明の文脈において、窒化クロム系層は、窒化クロムを含む層であり、窒化クロム系層中のクロム含有量と窒素含有量との合計が、窒化クロム系層中に存在するすべての元素を考慮した原子%で50%超を構成する。本発明の文脈で耐食層として使用される窒化クロム層または窒化クロム系層は、単層構造または多層構造を呈すように行われ得る。好ましい実施形態によれば、耐食層は、多層構造を呈する窒化クロム層として行われ、多層構造は、少なくとも2種類の窒化クロム層、好ましくは2つの異なる種類の窒化クロム層、例えば、第1の種類の窒化クロム層および第2の種類の窒化クロム層を含み、2つの種類の窒化クロム層の一方が他方よりも多くの窒素を含み、異なる種類の層が互いに交互に堆積される。
【0042】
耐食層を含む実施形態の好ましい変形例によれば、Si-C-N系層3は、耐食層の上に直接堆積される。
【0043】
耐食層を含む実施形態の好ましい変形例によれば、耐食層は、基材表面1上に直接、または基材表面1を含む窒化層4上に直接、堆積される。
【0044】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、拡散元素として窒素および炭素を有する熱化学系拡散層は耐食層として用いられ得る。
【0045】
熱化学系拡散層を耐食層として使用し、ステンレス鋼またはマルテンサイト鋼を基材材料として使用する好ましい実施形態の一例:
●オーステナイト鋼および非腐食性マルテンサイト鋼の処理のために、熱化学系拡散層を製造するための好ましい変形例は、低温窒化または低温軟窒化または浸炭によるものである(この文脈での低温は、例えば360℃から460℃の範囲内の温度である)。拡散元素NおよびCは、低温で窒素膨張したオーステナイトとマルテンサイトを生成し、それらは孔食を改善する。
●上記の熱化学系拡散層の上に、Si-C-N系層3を含むことで、以下の改善が達成される:
o耐食性のさらなる向上、および/または
oプラスチック材料中の硬質粒子に関する単位面積当たりの接触圧の改善(窒化ゾーンの高硬度が550HV超であることが原因)、および/または
o熱機械系拡散層上に設けられたコーティング(例えば、Si-C-N系層3)に対して、コーティングよりも好ましくはかなり低い硬度を有するスチール基材と比較して、より良い支持を与えることによる機械的安定性の向上。
【0046】
熱機械系拡散層が耐食層として使用され、熱処理可能な鋼、炭素鋼、表面硬化鋼、窒化鋼または熱間加工鋼が基材として使用される好ましい実施形態の別の例:
●このような低合金鋼を処理する場合、熱化学系拡散層を生成するための好ましい変形例は、Fe(N、C)窒化物層、好ましくはイプシロン窒化物層を腐食保護層として用いた軟窒化、または複合イプシロン窒化物を腐食保護層として用いた後酸化を伴う軟窒化である。Si-C-N層は、イプシロンナイトライド複合体上に直接堆積させるのが好ましい。腐食保護層としてマグネタイトを使用するのは唯一任意である。
●上記の熱化学系拡散層の上に、Si-C-N系層3を含むことで、以下の改善が達成される:
o耐食性のさらなる向上、および/または
oプラスチック材料中の硬質粒子に関する単位面積当たりの接触圧の改善(窒化ゾーンの高硬度が550HV超であることが原因)、および/または
o熱機械系拡散層上に設けられたコーティング(例えば、Si-C-N系層)に対して、コーティングよりも好ましくはかなり低い硬度を有するスチール基材と比較して、より良い支持を与えることによる機械的安定性の向上、ならびに/または
o高温での機械的強度の向上、ならびに/または
oクラック挙動/伸展の改善(窒化層が、表面ゾーンに蓄積された窒素によって発生する誘発された内部応力によってクラックプロセスを停止させるという利点により、バルク材へのクラックの伝播を改善する)、ならびに/または
o成形工具材料が溶融プラスチックおよびアルミニウムと銅などの非鉄金属に付着する傾向を減少させる。
【0047】
好ましくは、上述の実施形態は、上に挙げたすべての改善を同時に達成する。本発明者らは、プラズマ加速化学蒸着(PE-CVD)技術(これらの技術は、プラズマ支援化学蒸着(PA-CVD)技術としても知られている)を使用して堆積されたSi-C-N系層3が、工具性能および耐用年数の改善に特に有益であることを発見した。
【0048】
本発明のSi-C-N層3のPE-CVD堆積には、SiおよびCを含むガスが用いられ得る。例えば、ガス状態のヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)が前駆体として使用され得、ガス状態の窒素がSi-C-N系層を形成するための反応性ガスとして使用され得る。このようにして堆積されたSi-C-N層は、特に低い表面粗さを呈す。例えば、一例では、本発明のコーティングは図1に示すようなアーキテクチャを示し、基材表面1がコーティング前に算術平均粗さRa=0.01μmを呈し、コーティング後に得られた算術平均粗さはRa=0.04μmであった、ここで、Si-C-N系層3は、上記の方法としてPE-CVDを使用することにより、総層厚が8μmで製造された。さらなる一例では、本発明のコーティングは図1に示すようなアーキテクチャを示し、また、基材表面1がコーティング前に算術平均粗さRa=0.01μmを呈し、コーティング後に得られた算術平均粗さはRa=0.02~0.03μmであった、ここで、Si-C-N系層3は、上記のようなPE-CVD法を使用することにより、総層厚が2~3μmで製造された。
【0049】
しかし、本発明のSi-C-N層の堆積は、上述の方法に限定されない。本発明のSi-C-N層は、例えば、任意のPVD法または反応性PVD法によっても堆積され得、例えば以下の方法である:
-シリコン、炭素、および窒素を含むターゲットを、アルゴンを含む雰囲気または窒素-アルゴンを含む雰囲気でスパッタリングする方法、あるいは
-シリコンおよび炭素を含むターゲットを、窒素を含む雰囲気中でスパッタリングまたはアーク蒸着する方法。
【0050】
ただし、上述の方法はすべて例示であり、本発明のSi-C-N層の堆積に使用され得る方法を限定するものではないと理解すべきである。
【0051】
成形工具のより優れた性能を達成するために、本発明によるコーティングされた、または処理されかつコーティングされた成形工具は、好ましくは、所望の表面品質を達成するために後処理され得る。この点に関するいくつかの好適な後処理は、例えば以下の通りである:
-1200番台以上の砥粒を用いた研磨、および/または
-ガラスビーズブラスト、および/または
-ダイヤモンドペーストによる研磨。
【0052】
本発明による成形工具の性能および耐用年数を向上させるために使用されるコーティングシステムのアーキテクチャおよび元素組成の選択は、以下に応じて選択され得る:
-プラスチック加工作業の種類、および/または、加工されるプラスチック材料の種類
あるいは
-アルミニウム加工作業の種類、および/または、加工されるアルミニウム合金の種類。
【0053】
本発明の実施例1:
【0054】
基材として、ウィンドウプロファイルの押し出し用の湿式較正用キャリバーが使用された。
【0055】
使用した基材は、熱間加工工具鋼1.2311および1.2316であった。
【0056】
基材は、本発明によるコーティングプロセスを行うための真空コーティングデバイスのコーティングチャンバーの内部に導入された。コーティングは、窒化クロムの第1の層5と、Si-C-N系層3である第2の層の2つの層を含む基材上に堆積された。第1の層5は、加工される材料と接触することを意図したキャリバーの表面に直接堆積された。Si-C-N系層3と接触する接触材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)であった。
【0057】
窒化クロム層(以下、CrN層ともいう)は、好ましくは反応性カソードアーク蒸着タイプの物理的気相成長(PVD)技術を使用して堆積された。硬質材料のコーティング(窒化クロム)は、好ましくはPVDシステム(アークPVDまたはマグネトロンPVDシステム)で行われる。第1層5の蒸着のために、クロムターゲットを窒素含有雰囲気中で蒸発させ、バイアス電圧、好ましくは少なくとも50Vのバイアス電圧、好ましくは最大300ボルトのバイアス電圧、好ましくは50~300Vのバイアス電圧をキャリバーに印加した。
【0058】
第1の層5(この例では:反応性カソードアークPVDによって堆積された窒化クロム層)の堆積前および堆積中に以下のプロセスステップが実施された。
【0059】
1.高真空に排気
2.400℃までの熱放射による加熱
3.アルゴンイオン/金属イオン衝撃によるスパッタ洗浄
4.反応性カソードアーク蒸着プロセスにおいて、クロムターゲットをカソードとして動作させ、このステップの間では、プロセス/反応性ガスとして窒素アルゴンガス混合流を使用し、基材にバイアス電圧を印加する。
【0060】
第2の層3は、PE-CVDを用いて最外層として堆積された。第2の層3の堆積は、好ましくは、プラズマ窒化システムで実行される。第2の層の堆積には、ガス状態のHMDSOを前駆体として使用し、コーティングチャンバー内に窒素ガスを導入し、堆積温度(堆積プロセス中にコーティングされる基材表面の温度)を360℃、好ましくは380℃および450℃、好ましくは480℃の間の値に維持した。
【0061】
第1の層5の堆積後、第2の層(この例では:PE-CVDにより堆積されたSi-C-N系層の堆積中3)に、以下のプロセスステップを行った:
【0062】
5.クロムターゲットのスイッチを切り、コーティングチャンバー内に入るガスの流れを止め、コーティングチャンバー内を真空にする。
【0063】
6.コーティングチャンバー内に水素、窒素、およびアルゴンの混合ガス流(H、N、Arの混合ガス流)を入れる。
【0064】
7.基材のバイアス電圧を500V~600Vの範囲の値まで上昇させて、基材(サンプルまたは成形工具)に直接グロー放電を起動する。
【0065】
8.HMDSOの蒸発装置を起動し、H、N、およびArの混合ガス流に5%のHMDSOを添加する。
【0066】
このようにして堆積された第2の層は、SiタイプのSi-C-N系層3となり、Xは水素(H)と酸素(O)の元素であり、係数dは、Si-C-N系層3中のH含有量とO含有量の合計を原子%で表したものに相当する。したがって、このタイプのSi-C-N系層3の元素組成は、以下のように表され得る:
【0067】
Sid1d2、ここで、d1+d2=d
【0068】
本実施例の試験では、得られたSi-C-N系層の組成は具体的に以下の通りである:
Si2829121912
【0069】
CrN層は、この例では、多層構造Cr/CrN/Cr/CrN...を有し、6~8μmの多層構造の層厚を有するか、または8~10μmの多層構造の層厚を有するように堆積された(そのようなCrN層または他の種類の第1の層の好ましい厚さの範囲は:1~10μmである)。
【0070】
好ましくは、非常に良好な接着強度を有する約8μm超の層厚は、好ましくは約480℃で成形工具の基材10上に堆積され得る(図1参照)。これらの層の硬度は、好ましくは5000HV0.1のオーダーである。
【0071】
約2μmの厚さの層の耐食性は、好ましくは、塩水噴霧試験において144~188hである。この好ましい実施形態の試験されたアーキテクチャは、図1に記載される。厚い層の耐食性は、少なくとも2μmの厚さの層と同程度であると考えられ、好ましくは、それはより耐食性が高いが、現在試験中である。
【0072】
多層構造を有するCrN層の好ましい実施形態によれば、層の積層は、好ましくは常にCrから始まり、続いてCrN、そしてこれらの積層を例えば5つ重ねることである。CrとCrNの比率は、好ましくは1/5である。
【0073】
本実施例では、Si-C-N系層3を1~2μmの層厚で堆積したが、このようなSi-C-N系層の好ましい層厚の範囲は1~10μmである。
【0074】
そうしてコーティングされたキャリバーは、48時間使用しても腐食の兆候は見られなかった。
【0075】
本願の基礎となる2019年5月29日からの優先出願US62/853,969の説明およびクレームは、好ましくは本願の不可欠な部分を形成するものとする。
【0076】
この説明で説明されるように、1つの主な目的は、プラスチックおよびアルミニウムの加工産業で使用される工具に層を堆積することである。具体的には、これまでに「窒化層上に直接Si-C-N系層」を360℃~480℃の適用温度範囲で定性することが検討されてきた。PE-CVDまたはPA-CVDは、Si-C-N層の堆積のための好ましい技術であり得る。ガラスビーズまたはダイヤモンドペーストで層を処理することが好ましい場合がある。前述の実施形態の1つで述べたように、最初に2つの異なるプラントで堆積プロセスを行い、例えばPVDシステム(アークPVDまたはマグネトロンPVDシステム)で硬質材料のコーティング(窒化クロム)を堆積させ、その後、プラズマ窒化システムでSi-C-Nの堆積を行うことが好ましい。図4に示した上述の接着層のアーキテクチャは、有用で有望であり得る。
【0077】
上述した図1~4のコーティングシステムは、その特性、特に耐食性、高硬度、および非導電性により、精密部品の興味深い応用分野を切り開くこともできる。例えば、金属部品、ステンレス鋼部品、および鋳造部品の加工性能を向上させたり、ならびに特に本発明のSi-C-N系層の電気絶縁性を利用して、電子機器用の金属部品の性能を向上させたりすることができる。
【0078】
特許請求の範囲とは関係なく、次の項目にも保護が求められる。
【0079】
プラスチック材料またはアルミニウムもしくはアルミニウム合金材料を加工するためのコーティングされた成形工具であって、基材表面1を有する基材10を備え、基材表面1は、1つ以上の層で形成されたコーティング2でコーティングされ、コーティングは、50<a+b+c≦100、0≦d<50、好ましくは0≦d<50のSiに相当する原子%での元素組成を有するSi-C-N系層3を含み、ここで、Xは、非金属元素である水素および酸素、ならびに金属元素であるチタン、クロム、およびアルミニウムによって構成される元素の群から選択される1つ以上の元素であることを特徴とする、コーティングされた成形工具。
【0080】
コーティングは、複数の層で形成されており、Si-C-N系層3が最外層として堆積されていることを特徴とする、先行パラグラフに記載のコーティングされた成形工具。
【0081】
基材表面1は窒化層4を含み、その上にコーティング2が堆積されていることを特徴とする、先行パラグラフのいずれか1つに記載のコーティングされた成形工具。
【0082】
コーティング2は、基材表面1およびシリコン炭窒化物層3の間に堆積された硬質薄膜層5を含むことを特徴とする、先行パラグラフのいずれか1つに記載のコーティングされた成形工具。
【0083】
硬質薄膜層5は、金属窒化物層、または金属酸化物層、または金属酸窒化物層、または金属カルボキシ窒化物層、または金属炭窒化物層であり、層は、式Me(Cに対応する原子%での化学組成を有し、ここで、Meは、クロム、アルミニウム、チタン、バナジウムおよびモリブデンによって構成される元素の群から選択される1つ以上の元素であり、炭素、窒素、および酸素の原子分率v、y、およびzがそれぞれ0≦v≦1、0≦y≦1、0≦z≦1の範囲の値で、v+y+z=1であり、金属元素Meの1molに対する非金属元素C、N、およびOのmol濃度qが0.76≦q≦1.2の範囲であることを特徴とする、先行パラグラフに記載のコーティングされた成形工具。
【0084】
基材表面1およびコーティング2の間に接着層6が堆積されていることを特徴とする、先行パラグラフのいずれか1つに記載のコーティングされた成形工具。
【0085】
Si-C-N系層3は、ケイ素、炭素および窒素に加えて、水素および酸素を含むことを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載のコーティングされた成形工具。
【0086】
シリコン炭窒化物層は、PE-CVD技術を用いて堆積され、前駆体としてSi含有ガスが用いられることを特徴とする、先行パラグラフのいずれか1つに記載のコーティングされた成形工具を製造する方法。
【0087】
Si含有ガスは、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)であることを特徴とする、先行パラグラフに記載の方法。
【0088】
シリコン炭窒化物層3の堆積の前に、コーティングされる基材10は、コーティング2がその上に堆積される基材表面1を含む窒化層4を形成するためのプラズマ窒化プロセスに供されることを特徴とする、2つの先行パラグラフのいずれか1つに記載の方法。
【0089】
プラスチックの加工作業における、先行パラグラフのいずれか1つに記載のコーティングされた成形工具の使用。
【0090】
プラスチックの加工作業は、プラスチック射出成形であることを特徴とする、先行パラグラフに記載の使用。
【0091】
アルミニウムまたはアルミニウム合金の加工作業における、先行パラグラフのいずれか1つに記載のコーティングされた成形工具の使用。
【0092】
プラスチックの加工作業は、アルミニウムダイキャストまたはアルミニウム合金ダイキャストであることを特徴とする、先行パラグラフに記載の使用。

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】