(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】患者由来ミクロオルガノスフェアのための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20220727BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220727BHJP
C12M 3/00 20060101ALN20220727BHJP
【FI】
C12N5/071
C12Q1/02
C12M3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571518
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2020026275
(87)【国際公開番号】W WO2020242594
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521521792
【氏名又は名称】シリン・シェン
(71)【出願人】
【識別番号】521521806
【氏名又は名称】ジャオウフイ・ワン
(71)【出願人】
【識別番号】521521817
【氏名又は名称】ダニエル・デルバック
(71)【出願人】
【識別番号】521521828
【氏名又は名称】ジェフリー・モッチマン
(71)【出願人】
【識別番号】521521839
【氏名又は名称】デイヴィッド・スー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シリン・シェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオウフイ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・デルバック
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・モッチマン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・スー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA08
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4B065BA30
4B065BC41
4B065BC50
4B065BD21
4B065CA46
(57)【要約】
患者由来ミクロオルガノスフェア(PMOS)を含むミクロオルガノスフェア、PMOSを生成する装置及び方法、並びにPMOSを使用する装置及び方法。更に、個別化療法を含む、それらの患者由来ミクロオルガノスフェアを使用して患者をスクリーニングするための方法及びシステムが本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程、
前記未重合混合物の複数の小滴を形成する工程、及び
前記小滴を重合させて、各々がその中に分配された1~200個の間の解離細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程、
を含む方法。
【請求項2】
解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程、
前記未重合混合物の連続流から、25%未満の寸法ばらつきを有する複数の小滴を形成する工程、及び
前記小滴を加温により重合させて、各々が各患者由来ミクロオルガノスフェア内に分配された1~200個の間の解離細胞を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程
を含む方法。
【請求項3】
解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程、
前記未重合混合物の流れを、前記未重合混合物と非混和性である流体の1つ又は複数の流れと合流させることにより、25%未満の小滴の寸法ばらつきを有する複数の小滴を形成する工程、
前記小滴を重合させて、その中に分配された1~200個の間の解離細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程、及び
前記複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを、非混和性である前記流体から分離する工程
を含む方法。
【請求項4】
前記小滴を形成する前に、前記解離組織試料内の前記細胞を改変する工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の小滴の形成が、25%未満の寸法ばらつきを有する均一寸法の、前記未重合混合物の複数の小滴を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アッセイ前に、更に、様々な起源からの患者由来ミクロオルガノスフェアを容器内にまとめる工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも部分的に透過性の膜により分離されている複数のチャンバーを含む容器内に前記患者由来ミクロオルガノスフェアをアプライして、上清物がチャンバー間を循環できるようする工程を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
更なるアッセイ又は増殖のために、アッセイ後に、1つ又は複数の前記患者由来ミクロオルガノスフェアを回収する工程を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイが、分泌因子及び別の効果を対象に、前記患者由来ミクロオルガノスフェアの上清、環境及び微小環境の1つ又は複数をサンプリングする工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組織試料が、幹細胞でない細胞を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組織試料が、転移性腫瘍からの生検試料を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組織試料が臨床腫瘍試料を含み、更に、前記臨床腫瘍試料が、癌細胞及び間質細胞の両方を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組織試料が、腫瘍細胞、並びに間葉細胞、内皮細胞及び免疫細胞の1つ又は複数を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記解離組織試料と前記流体マトリクス材料との組合せが、前記解離組織試料を前記流体マトリクス材料内に5×10
6細胞/ml未満の密度で分配する工程を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記小滴の形成が、前記未重合混合物の連続流から前記小滴を形成する工程を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記小滴の形成が、前記未重合混合物と非混和性である流体の1つ又は複数の収束流を、前記未重合混合物の流れにアプライする工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記小滴の形成が、前記未重合混合物と非混和性である流体中で前記小滴を形成する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
前記非混和性流体を、前記患者由来ミクロオルガノスフェアから除去する工程を更に含む、請求項3又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記解離組織試料と前記流体マトリクス材料とを組合せることが、前記解離組織試料を、基底膜マトリクスと組合せる工程を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
患者から前記組織試料を摘出してから6時間以内に前記組織試料を前記流体マトリクス材料と組合せる、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイ前に、前記患者由来ミクロオルガノスフェアをマルチウェルプレート内に分注する工程を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
重合が、約35℃超へと前記小滴を加熱する工程を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程、
25%未満の小滴の寸法ばらつきを有する、前記未重合混合物の複数の小滴を形成する工程、
前記小滴を重合させて、その中に分配された1~1000個の間の解離細胞を含む、50~700μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程、及び
前記複数の患者由来ミクロオルガノスフェアをアッセイする又は凍結保存する工程
を含む方法。
【請求項24】
解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程、
前記未重合混合物の複数の小滴を形成する工程、
前記小滴を重合させて、各々が、その中に分配された1~200個の間の解離細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程、及び
前記複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを15日以内に凍結保存する又はアッセイする工程を含み、ミクロオルガノイドをアッセイして、前記患者由来ミクロオルガノスフェア内の前記細胞に対する1つ又は複数の薬剤の効果を決定する、方法。
【請求項25】
解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程、
前記未重合混合物の流れを、前記未重合混合物と非混和性である流体の1つ又は複数の流れと合流させることにより、25%未満の小滴の寸法ばらつきを有する複数の小滴を形成する工程、
前記小滴を加温により重合させて、各々が、その中に分配された1~200個の間の解離細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程、及び
前記患者由来ミクロオルガノスフェアを6代継代する前にアッセイする又は凍結保存することにより、前記患者由来ミクロオルガノスフェア内の前記細胞の不均一性が維持される工程を含み、更にアッセイが、前記患者由来ミクロオルガノスフェア内の前記細胞に対する1つ又は複数の薬剤の効果を決定するためにアッセイする工程を含む、方法。
【請求項26】
前記複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを6代継代する前に凍結保存又はアッセイすることにより、前記患者由来ミクロオルガノスフェア内の前記細胞の不均一性が維持される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
前記小滴を形成する前に、前記解離組織試料内の前記細胞を改変する工程を更に含む、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記小滴の形成が、25%未満の寸法ばらつきを有する均一寸法の、前記未重合混合物の複数の小滴を形成する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
アッセイ前に、様々な起源からの患者由来ミクロオルガノスフェアを容器内にまとめる工程を更に含む、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも部分的に透過性の膜により分離されている複数のチャンバーを含む容器内に前記患者由来ミクロオルガノスフェアをアプライして、上清物がチャンバー間を循環できるようにする工程を更に含む、請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
アッセイに続き、更なるアッセイ又は増殖用に、1つ又は複数の前記患者由来ミクロオルガノスフェアを回収する工程を更に含む、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記複数の患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイが、分泌因子及び別の効果を対象に、前記患者由来ミクロオルガノスフェアの上清、環境及び微小環境の1つ又は複数をサンプリングする工程を含む、請求項23から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記組織試料が、幹細胞でない細胞を含む、請求項23から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組織試料が、転移性腫瘍からの生検試料を含む、請求項23から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組織試料が、臨床腫瘍試料を含み、更に、前記臨床腫瘍試料が、癌細胞及び間質細胞の両方を含む、請求項23から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記組織試料が、腫瘍細胞、並びに間葉細胞、内皮細胞及び免疫細胞の1つ又は複数を含む、請求項23から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記解離組織試料と前記流体マトリクス材料との組合せが、前記解離組織試料を前記流体マトリクス材料内に5×10
6細胞/ml未満の密度で分配する工程を含む、請求項23から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記小滴の形成が、前記未重合混合物の連続流から前記小滴を形成する工程を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項39】
前記小滴の形成が、前記未重合混合物と非混和性である流体の1つ又は複数の収束流を、前記、未重合混合物の流れにアプライする工程を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記小滴の形成が、前記未重合混合物と非混和性である流体中で前記小滴を形成する工程を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項41】
培養前に、前記非混和性流体を、前記患者由来ミクロオルガノスフェアから除去する工程を更に含む、請求項25、39又は40に記載の方法。
【請求項42】
アッセイ前に、前記患者由来ミクロオルガノスフェアを、2~14日の間にわたり培養する工程を更に含む、請求項23から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記患者由来ミクロオルガノスフェアの培養が、前記患者由来ミクロオルガノスフェアを懸濁状態で培養する工程を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記解離組織試料と前記流体マトリクス材料との組合せが、前記解離組織試料を、基底膜マトリクスと組合せる工程を含む、請求項23から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
患者から前記組織試料を摘出してから6時間以内に前記組織試料を前記流体マトリクス材料と組合せる、請求項23から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイ前及び/若しくはアッセイ後、又は凍結保存前及び/若しくは凍結保存後に、前記患者由来ミクロオルガノスフェア中の前記細胞をゲノム解析、トランスクリプトーム解析、エピゲノム解析及び/又は代謝解析する工程を更に含む、請求項23から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイ前に、前記患者由来ミクロオルガノスフェアをマルチウェルプレート内に分注する工程を更に含む、請求項23から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
重合工程が、約35℃超へと前記小滴を加熱する工程を含む、請求項23から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイが、前記患者由来ミクロオルガノスフェアを薬物に曝露させる工程を含む、請求項23から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
アッセイが、前記患者由来ミクロオルガノスフェア中の前記細胞に対する前記1つ又は複数の薬剤の効果を視覚的にアッセイする工程を含む、請求項23から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
アッセイが、前記細胞に対する前記1つ又は複数の薬剤の効果を蛍光アッセイする工程を含む、請求項23から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
複数の凍結保存された患者由来ミクロオルガノスフェアを含む組成物であって、各患者由来ミクロオルガノスフェアが、50μm~500μmの間の直径を有する球形を有し、且つ重合した基材及び前記基材内に分配された、6回未満継代された約1~1000個の間の解離初代細胞を含み、それにより前記患者由来ミクロオルガノスフェア内の前記細胞の不均一性が維持される、前記組成物。
【請求項53】
複数の凍結保存された患者由来ミクロオルガノスフェアを含む組成物であって、各患者由来ミクロオルガノスフェアが、50μm~500μmの間の直径を有する球形を有し、前記患者由来ミクロオルガノスフェアが、25%未満の寸法ばらつきを有し、且つ各患者由来ミクロオルガノスフェアが、重合した基材、及び前記基材内に分配された、6回未満継代された約1~500個の間の解離初代細胞を含み、それにより、前記患者由来ミクロオルガノスフェア内の前記細胞の不均一性が維持される、前記組成物。
【請求項54】
前記初代細胞が原発腫瘍細胞である、請求項52又は53に記載の組成物。
【請求項55】
前記解離初代細胞が、遺伝学的又は生化学的に改変されている、請求項52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
前記複数の凍結保存した患者由来ミクロオルガノスフェアが、25%未満の寸法ばらつきを有する均一寸法を有する、請求項52に記載の組成物。
【請求項57】
前記複数の凍結保存した患者由来ミクロオルガノスフェアが、様々な起源からの患者由来ミクロオルガノスフェアを含む、請求項52から56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
各ミクロオルガノスフェア中の大多数の細胞が、幹細胞でない細胞を含む、請求項52から57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記初代細胞が転移性腫瘍細胞を含む、請求項52から58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
前記初代細胞が、癌細胞及び間質細胞の両方を含む、請求項52から58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記初代細胞が、腫瘍細胞、並びに間葉細胞、内皮細胞及び免疫細胞の1つ又は複数を含む、請求項52から58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記初代細胞が、前記重合した基材内に、5×10
6細胞/ml未満の密度で分配される、請求項52から61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記重合した基材が基底膜マトリクスを含む、請求項52から62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
前記重合した基材が合成材料を含む、請求項52から63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
ミクロオルガノイドが、100μm~400μmの間の直径を有する、請求項52から64のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
患者由来ミクロオルガノスフェア当たり1~200個の間の細胞が存在する、請求項52から65のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する装置を操作する方法であって、
解離組織試料と第1の流体マトリクス材料との冷却混合物を含む未重合混合物を第1のポートに受容する工程;
前記未重合混合物と非混和性である第2の流体を第2のポートに受容する工程;
前記未重合混合物の流れを、前記第2の流体の1つ又は複数の流れと組合せて、25%未満でばらつく均一寸法を有する、前記未重合混合物の小滴を形成する工程;及び
前記未重合混合物の前記小滴を重合させて、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程
を含む、前記方法。
【請求項68】
患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する装置を操作する方法であって、
解離組織試料と第1の流体マトリクス材料との冷却混合物を含む未重合混合物を第1のポートに受容する工程;
前記未重合混合物と非混和性である第2の流体を第2のポートに受容する工程;
第1の速度での前記未重合混合物の流れを、第2の速度での前記第2の流体の1つ又は複数の流れと組合せて、25%未満でばらつく均一寸法を有し、50μm~500μmの間の直径である、前記未重合混合物の小滴を形成する工程;及び
前記未重合混合物の前記小滴を重合させて、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程
を含む、前記方法。
【請求項69】
前記未重合混合物を含有する第1のリザーバを前記第1のポートと流体連通させる工程を更に含む、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
前記解離組織試料と前記第1の流体マトリクス材料とを組合せて、前記未重合混合物を形成する工程を更に含む、請求項67から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記未重合混合物を、前記第1のポートと流体連通している第1のリザーバに添加する工程を更に含む、請求項67から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記第2の流体を含有する第2のリザーバを前記第2のポートと流体連通させる工程を更に含む、請求項67から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記第2の流体を、前記第2のポートと流体連通している第2のリザーバに添加する工程を更に含む、請求項67から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記第2の流体を、前記複数の患者由来ミクロオルガノスフェアから分離する工程を更に含む、請求項67から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記解離組織試料が初代細胞を含む、請求項67から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記解離組織試料が原発腫瘍細胞を含む、請求項67から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記解離組織試料が転移性腫瘍細胞を含む、請求項67から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記解離組織試料が、癌細胞及び間質細胞の両方を含む、請求項67から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記解離組織試料が、腫瘍細胞、並びに間葉細胞、内皮細胞及び免疫細胞の1つ又は複数を含む、請求項67から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記流体マトリクス材料が基底膜マトリクス材料を含む、請求項67から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記流体マトリクス材料が合成材料を含む、請求項67から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記第2の流体の受容が、油を受容する工程を含む、請求項67から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記流れの組合せが、第2の流速で移動している前記第2の流体の1つ又は複数の流れを横切って、前記未重合混合物の前記流れを第1の流速で駆動する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項84】
前記第1の流速が、前記第2の流速よりも大きい、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記流れの組合せが、前記第2の流体の前記1つ又は複数の流れもそこに合流する合流点を横切って、前記未重合混合物の前記流れを駆動する工程を含む、請求項67から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記小滴の重合工程が、約30℃超へと前記小滴を加熱する工程を含む、請求項67から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
更に、前記複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを一定分量に分取する工程を含む、請求項67から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
分取工程が、マルチウェルディッシュへと一定分量に分取する工程を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
患者の腫瘍組織を取得する工程;
前記患者の腫瘍組織の採取から2週間以内に、前記患者腫瘍組織から、重合した基材全体に分配された1~200個の間の解離腫瘍細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数のミクロオルガノイドを形成する工程及び少なくともいくつかの患者由来ミクロオルガノスフェアを、前記解離腫瘍細胞が5代を超える継代の前に製剤に曝露する工程により、前記腫瘍が前記製剤に応答するであろうと決定する工程;並びに
前記少なくともいくつかのミクロオルガノイド内の前記細胞に対する前記製剤の効果を測定して、前記決定された効果に基づいて、前記薬物が前記腫瘍を治療するかを決定する工程
を含む方法。
【請求項90】
患者を前記製剤で治療した後に第2の患者腫瘍組織を取得し、前記第2の患者腫瘍組織から第2の複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成し、少なくともいくつかの前記第2の複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを前記製剤に曝露し、前記少なくともいくつかの第2の複数のミクロオルガノイド内の細胞に対する前記製剤の効果を測定することにより、前記腫瘍が前記薬物の1回又は複数回の投与後になおも前記製剤に応答することを決定する工程を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記腫瘍が製剤に応答することの決定が、少なくともいくつかの前記患者由来ミクロオルガノスフェアを、複数の製剤に曝露する工程、及び前記製剤の各々に対して、測定された効果を記録する工程を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
決定が、前記患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイ前に、前記ミクロオルガノイドをマルチウェルプレート内に分注する工程を更に、含む、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記患者に生検を行って、前記患者腫瘍組織を採取する工程を更に含む、請求項89に記載の方法。
【請求項94】
前記患者を前記製剤で治療する工程を更に含む、請求項89に記載の方法。
【請求項95】
前記腫瘍組織を取得する工程と記録する工程との間の時間が、21日未満である、請求項89に記載の方法。
【請求項96】
患者腫瘍組織が、転移性腫瘍からの生検試料を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項97】
前記患者腫瘍組織が、癌細胞及び間質細胞の両方を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項98】
前記患者腫瘍組織が、腫瘍細胞、並びに間葉細胞、内皮細胞及び免疫細胞の1つ又は複数を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項99】
前記複数のミクロオルガノイドの形成が、25%未満の寸法ばらつきを有するミクロオルガノイドを形成する工程を含む、請求項89に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、参照により本明細書にその全体が組み込まれている、2019年5月28日に出願した米国仮特許出願第62/853219号の優先権を主張するものである。
【0002】
参照による組込み
本明細書で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が明確且つ個別に参照によって組み込まれていると示されるのと同程度に参照によって本明細書にその全体が組み込まれている。
【0003】
本明細書に記載される方法、装置及び組成物は、患者由来ミクロオルガノスフェア(PMOS)、並びにPMOSを形成するための方法及び装置、並びにPMOSを使用するための方法及び装置に関する。特に、特定の患者を治療するために効果的であり得る1つ又は複数の製剤を同定するための方法及び装置が、本明細書に記載される。
【背景技術】
【0004】
モデル細胞・組織系は、生物学研究及び医学研究に有用である。最も一般的な実践は、組織から不死化細胞株を導出し、その細胞株を2次元(2D)条件(例えば、ペトリ皿又はウェルプレート)中で培養することである。しかしながら、2D細胞株は、基礎研究にとって非常に有用であるが、療法に対する個々の患者の応答と十分に相関しない。特に、3次元細胞培養モデルは、発生生物学、疾患病理学、再生医療、薬物毒性及び効能試験、並びに個別化医療において特に役立つと判明している。例えば、スフェロイド及びオルガノイドが、研究されている3次元細胞凝集体である。しかしながら、オルガノイドもスフェロイドも、その効果を低下させる制限を有する。
【0005】
多細胞腫瘍スフェロイドは、70年代初期に初めて記載され、非接着条件下での癌細胞株の培養により得られた。スフェロイドは、典型的には癌細胞株から、超低接着プレート中で、自由に浮遊する細胞凝集体として形成される。スフェロイドは、2D細胞培養よりも多くの幹細胞関連特性を維持することが示された。
【0006】
オルガノイドは、主要細胞系譜の細胞へと分化し得る幹細胞集団を含むin vitro由来の細胞凝集体である。オルガノイドは、典型的には1mm超の直径を有し、且つ継代を介して培養される。典型的には、オルガノイド培養は2D細胞培養よりもゆっくりと成長及び増殖(expand)する。臨床試料からオルガノイドを生成するには、開始用の十分な数の生細胞(例えば、数百から数千個)が必要とされるため、低容量試料、例えば生検からのオルガノイドの獲得は難題であることが多く、且つ成功したとしても、適用、例えば薬物試験に向けて培養を増殖させるためにはかなりの時間がかかる。更に、オルガノイドの寸法、形及び細胞数の点でばらつきが大きい。オルガノイドは、望みの細胞型を成長及び発現させるために、複雑な成長因子カクテル及び培養条件を必要とし得る。
【0007】
腫瘍スフェロイドもオルガノイドも、迅速且つ確実なスクリーニング、特に個別化医療、例えば、薬物応答のex vivo試験を行うために最適ではない。例えば、腫瘍学の実践は、最も好都合な転帰を達成するために、相対的な利益をリスクと釣り合わせることに加えて、適切な治療計画を適切な患者と組み合わせるという大きな課題に断続的に直面する。患者由来がんモデル(PDMC)は、より個別化された治療標的の同定及び開発を促進するために、オルガノイド(患者由来オルガノイドを含む)の使用を含み得る。しかしながら、遡及研究は、切除又は生検された患者の腫瘍に由来するオルガノイドが、療法に対する患者の応答と相関することを示したものの、治療の指針とするためにオルガノイドを使用するには主要な制限が存在する。前記のように、オルガノイド、特に、薬物感受性試験用の腫瘍試料からの患者由来オルガノイドの獲得及び増殖には数か月かかり、それは、臨床適用性を下げる。なぜなら、患者は、治療を受けるためにそれほど長くは待てないからである。更に、数十を超える化合物を用いて薬物スクリーニングを行うために必要なオルガノイドの数は、転移性癌又は手術不可能な癌を患う患者由来の組織の、頻繁には唯一の入手可能形態であるコア生検標本からは、臨床的に実行可能な時間枠では得られない。オルガノイドを生検から獲得する際の著しい失敗率もまた、確実な診断アッセイとしてのその使用を妨げる。更に、特に培養時間が長くなり、それゆえ継代数が多いと、オルガノイドの寸法(及び潜在的には応答)の高度のばらつきが存在し得る。
【0008】
患者の転帰との、より優れた相関性ゆえ、PDMCは、RNAi、CRISPRのような創薬及び薬理小分子スクリーニング用のハイスループットスクリーニングプラットフォームとして、2D細胞株を代替するために活用されてもいる。しかしながら、細胞株と比べて、それらのPDMCモデル(スフェロイド及びオルガノイドを含む)は、典型的に増殖及び操作にはるかに時間がかかり、ハイスループット用途には困難且つ高価になる。細胞数を増やすためにこのモデルの増殖にかかる長い時間もまた、プラスチック中で増殖が最も早いクローンを優位にさせ、且つ別のクローンを排除させるため、該モデルを更に均質にさせ、且つ本来の組織組成及びクローン多様性を失わせる。更に、その比較的大きく且つ異質な寸法及び限られた拡散性のため、多くの、自動化された蛍光及びイメージングに基づくリードアウトアッセイのためには困難なものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,516,681号明細書
【特許文献2】米国特許第5,559,022号明細書
【特許文献3】米国特許第4,683,195号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Freshney、Culture of Animal Cells、A Manual of Basic Techniques、第4版、Wiley Liss、John Wiley & Sons、2000年
【非特許文献2】Basic Cell Culture:A Practical Approach、Davis編、Oxford University Press、2002年
【非特許文献3】Animal Cell Culture:A Practical Approach、Masters編、2000年
【非特許文献4】Molecular Cloning A Laboratory Manual(1989年)、第2版、Sambrook、Fritsch及びManiatis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第16章及び第17章
【非特許文献5】DNA Cloning、第I巻及び第II巻、Glover編、1985年
【非特許文献6】Oligonucleotide Synthesis、M. J. Gait編、1984年
【非特許文献7】Nucleic Acid Hybridization、D. Hames & S. J. Higgins編、1984年
【非特許文献8】Transcription and Translation、B. D. Hames & S. J. Higgins編、1984年
【非特許文献9】Culture Of Animal Cells、R. I. Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987年
【非特許文献10】Immobilized Cells And Enzymes、IRL Press、1986年
【非特許文献11】Perbal(1984年)、A Practical Guide To Molecular Cloning
【非特許文献12】Methods In Enzymology(Academic Press, Inc.、N.Y.)
【非特許文献13】Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells、J. H. MillerとM. P. Calos編、Cold Spring Harbor Laboratory、1987年
【非特許文献14】Methods In Enzymology、第154巻及び第155巻、Wu等編、Academic Press Inc.、N.Y
【非特許文献15】mmunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerとWalker編、Academic Press、London、1987年
【非特許文献16】Handbook Of Experimental Immunology、第I巻~第IV巻、D. M. WeirとC. C. Blackwell編、1986年
【非特許文献17】R. Mahesparan、Extracellular matrix-induced cell migration from glioblastoma biopsy specimens in vitro. Acta Neuropathol(1999年)97:231~239頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、切除又は生検から患者由来組織モデル(例えば、腫瘍モデル及び/又は非腫瘍組織モデル)を生成するための方法、組成物及び装置が必要である。特に、例えば、生検獲得から7~10日以内に完了し得る18ゲージコア生検のような単一生検から、予測可能且つ臨床上重要な特性を有する多数の患者由来組織モデルを可能にし得る方法及び装置を提供することが有用であろう。それが、堅牢且つ確実な試験を可能にし、患者に特異的な療法に導くうえでの遅延を最小限に抑えるであろう。更に、高度に並行的なやり方で素早く増殖可能な患者由来モデルを生成することも有用であり、ハイスループットスクリーニング用途に向けて、より小さく且つより均一な寸法を有するユニット、ユニット当たり細胞数のより優れた制御性、及びより優れた拡散性(例えば、表面積対体積率の上昇を介して)を生み出す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示内容の要約
患者由来ミクロオルガノスフェア(PMOS)、PMOSを生成する装置及び方法、並びにPMOSを使用する装置及び方法が本明細書に記載される。更に、個別化療法を含む、それらの患者由来ミクロオルガノスフェアを使用して患者をスクリーニングするための方法及びシステムが本明細書に記載される。
【0013】
概して、患者に由来する細胞、例えば、患者の小生検(例えば、治療の指針になるクイック診断用)から、切除された原発腫瘍又は機能不全臓器の一部を含む、切除された関係する組織(例えば、ハイスループットスクリーニング用)から、及び/又は患者由来異種移植片(PDX)及びオルガノイドを含む、すでに確立されたPDMC(例えば、ハイスループットスクリーニング用のミクロオルガノスフェア生成目的)から抽出した細胞を含有する患者由来ミクロオルガノスフェアを形成及び増殖させる方法及び装置が、本明細書に記載される。
【0014】
それらのPMOSは、正常である初代細胞(例えば、正常臓器組織)又は腫瘍組織から形成され得る。例えば、いくつかの変形形態では、それらの方法及び装置が、癌性腫瘍生検組織からPMOSを形成し得て、検査される該特定腫瘍組織を使用して、選択され得るオーダーメード治療を可能にする。驚くべきことに、それらの方法及び装置は、単一組織生検から、該生検を患者から摘出して数時間以内に、数百、数千、更には数万(例えば、500、750、1000、2000、5000、10,000以上)のPMOSの形成を可能にする。患者生検から解離した初代細胞は、ミクロオルガノスフェアを形成するために、流体マトリクス材料(fluid matrix material)、例えば、基質基底膜マトリクス(例えば、MATRIGEL)と組合せてもよい。得られる複数の患者由来ミクロオルガノスフェアは、定義済みの範囲の寸法(例えば、10μm~700μmの間、及びその間の任意の部分範囲の直径)、並びに初代細胞の初期数(例えば、1~1000個の間、及び特に、より少ない細胞数、例えば、1~200個の間)を有し得る。細胞の数及び/又は直径は、例えば、+/-5%、10%、15%、20%、25%、30%等以内に制御され得る。それらのPMOSは、本明細書に記載されるように形成された場合、非常に高い生存率(>75%、>80%、>85%、>90%、>95%)を有し、且つ形成後最初の1~10日以内(例えば、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、7日以内、8日以内、9日以内、10日以内等)を含む、非常に短期間以内は、使用及び試験用に安定である。このため、潜在的に膨大な数の、患者特異的且つ生体関連のPMOSを用いた迅速試験が可能になり、患者の治療、例えば、癌治療計画の開発及び展開において重要な時間を節約し得る。本明細書に記載されるPMOSは、生検が由来する組織環境、例えば、3次元(3D)腫瘍微小環境を再現し、且つその組織環境に相当する3D細胞構造を迅速に形成する。本明細書に記載されるPMOSは、「小滴」とも呼ばれる。各PMOSは、例えば、流体マトリクス材料の一部として、成長因子、及び元来の組織(例えば、腫瘍)環境を模倣し得る構造タンパク質(例えば、コラーゲン、ラミニン、ニドゲン等)を含んでもよい。実質的に任意の腫瘍組織を含む、実質的に任意の初代細胞組織を使用し得る。
【0015】
例えば、現在までのところ、試験したすべての型及び部位の腫瘍が、PMOSの産生に成功した(例えば、現在の成功率100%、n=32、肝臓、腹膜及び横隔膜を含む、原発部位又は転位部位由来の結腸、食道、皮膚(メラノーマ)、子宮、骨(肉腫)、腎臓、卵巣、肺、及び乳腺の癌を含む)。ミクロオルガノスフェアの効果的な生成に使用される組織型は、別の部位から転移したものでもよい。いくつかの変形形態では、本明細書に記載されるPMOSを、細針吸引法(FNA)又は循環腫瘍細胞(CTC)、例えば、液体生検から成長させてもよい。増殖及び成長は、典型的に、わずか3~4日のうちに認められ、PMOSは、数か月の間、維持及び継代可能であるか、又は凍結保存してもよく、及び/又は直ちにアッセイに使用してもよい(例えば、最初の7~10日以内)。
【0016】
特に、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する方法が、本明細書に記載される。概して、それらの方法は、解離した初代組織細胞(癌/異常組織、正常組織等を含むがそれらに限定されない)を、液体マトリクス材料と組合せて、未重合材料を形成する工程、次いで該未重合材料を重合させて、典型的には直径が約1000μm未満(例えば、約900μm未満、約800μm未満、約700μm未満、約600μm未満、特に約500μm未満)であり、その中に該解離した初代組織細胞が分配されたミクロオルガノスフェアを形成する工程を含む。解離細胞の数は、前記所定の範囲内(例えば、約1~約500個の間の細胞、約1~200個の間の細胞、約1~150個の間の細胞、約1~100個の間の細胞、約1~75個の間の細胞、約1~50個の間の細胞、約1~30個の間の細胞、約1~20個の間の細胞、約1~10個の間の細胞、約5~15個の間の細胞、約20~30個の間の細胞、約30~50個の間の細胞、約40~60個の間の細胞、約50~70個の間の細胞、約60~80個の間の細胞、約70~90個の間の細胞、約80~100個の間の細胞、約90~110個の間の細胞等、約1個の細胞、約10個の細胞、約20個の細胞、約30個の細胞、約40個の細胞、約50個の細胞、約60個の細胞、約70個の細胞等を含む)にあり得る。これらの方法のいずれかは、本明細書に記載されるように、反復可能な寸法(例えば、狭い寸法分布を有する)のミクロオルガノスフェアを産生するために構成され得る。
【0017】
解離細胞は新鮮に生検されてもよく、機械的解離及び/又は化学的解離(例えば、1つ又は複数の酵素、例えば、コラゲナーゼ、トリプシン等の使用による酵素的解離(enzymatic disaggregation))を含む、任意の適切なやり方で解離され得る。解離細胞は、場合により、処理、選択及び/又は改変されてもよい。例えば、1つ又は複数の特性(例えば、寸法、形態等)を有する細胞を同定及び/又は単離するために、細胞をソーティング又は選択してもよい。細胞を、選択を援助するために使用され得る(例えば1つ又は複数のマーカーで)標識してもよい。いくつかの変形形態では、マイクロ流体セルソーティング、蛍光活性化セルソーティング、磁気活性化セルソーティング等を含むがそれらに限定されない公知のセルソーティング技術により、細胞をソーティングしてもよい。代替的には、ソーティングせずに細胞を使用してもよい。
【0018】
いくつかの変形形態では、解離細胞を、1つ又は複数の薬剤を用いた処理により改変してもよい。例えば、細胞を遺伝子改変してもよい。いくつかの変形形態では、細胞を、CRISPR-Cas9又は別の遺伝子編集技術を使用して改変してもよい。いくつかの変形形態では、細胞を、プラスミド、RNA、siRNA等によるトランスフェクションを含む、任意の適切な方法(例えば、エレクトロポレーション、セルスクイージング、ナノ粒子インジェクション、マグネトフェクション、化学トランスフェクション、ウイルストランスフェクション等)によりトランスフェクトしてもよい。代替的には、改変せずに細胞を使用してもよい。
【0019】
1つ又は複数の追加材料を、解離細胞及び流体(例えば液体)マトリクス材料と組合せて、未重合混合物を形成してもよい。例えば、未重合混合物は、支持細胞を含む、追加の細胞又は組織型を含み得る。該追加の細胞又は組織は、異なる生検(例えば、異なる解離組織からの初代細胞)及び/又は培養細胞に由来し得る。該追加細胞は、例えば、免疫細胞、間質細胞、内皮細胞等であり得る。該追加材料は、培地(例えば、増殖培地、凍結培地等)、成長因子、支持体ネットワーク分子(例えば、コラーゲン、糖タンパク質、細胞外マトリクス等)等を含み得る。いくつかの変形形態では、該追加材料が、薬物組成物を含み得る。いくつかの変形形態では、未重合混合物が、解離組織試料(例えば初代細胞)と流体マトリクス材料とのみを含む。
【0020】
本方法は、単一組織生検から迅速に複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成し得るため、生検当たり、約500個超の患者由来ミクロオルガノスフェアが形成されることになる(例えば、約600個超、約700個超、約800個超、約900個超、約1000個超、約2000個超、約2500個超、約3000個超、約4000個超、約5000個超、約6000個超、約7000個超、約8000個超、約9000個超、約10,000個超、約11,000個超、約12,000個超等)。生検は、標準寸法生検、例えば、18G(例えば、14G、16G、18G等)コア生検であり得る。例えば、生検により摘出され、且つ複数の患者由来ミクロオルガノスフェアの形成に使用される組織の容積は、インチ径が約1/32~1/8の間でインチ長が約3/4インチ~1/4インチの(生検針を用いて採取した)小さな円柱形、例えば、約1/16インチ径で1/2インチ長の円柱形であり得る。生検は、針生検、例えばコア針生検により採取してもよい。いくつかの変形形態では、生検を、細針吸引法で採取してもよい。使用可能な別の型の生検は、薄片生検、パンチ生検、切開生検、切除生検等を含む。典型的には、単一患者の生検からの材料を使用して、前記の複数(例えば、約2000個超、約5000個超、約7500個超、約10,000個超等)の患者由来ミクロオルガノスフェアを生成してもよい。前記のようなこの多数の高度に規則的な(寸法、細胞数等)ミクロオルガノスフェアを生成するために構成され得る装置を使用して(本明細書に記載される)、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成してもよい。いくつかの変形形態では、それらの方法及び装置が、複数のミクロオルガノスフェアを急速度で生成し得る(例えば、1分当たり約1個超のミクロオルガノスフェア、10秒当たり約1個超のミクロオルガノスフェア、5秒当たり約1個超のミクロオルガノスフェア、2秒当たり約1個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約1個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約2個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約3個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約4個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約5個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約10個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約50個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約100個超のミクロオルガノスフェア、1秒当たり約125個超のミクロオルガノスフェア等)。
【0021】
例えば、いくつかの変形形態では、未重合混合物を、未重合材料と非混和性である材料(例えば液体材料)と組合せることにより、それらの方法を行ってもよい。本方法及び本装置は、少なくとも部分的に、未重合混合物(及び/又は解離組織及び流体マトリクス)並びに未重合混合物と非混和性である材料(例えば、疎水性材料、油等)の1つ又は複数の流れを制御することにより、ミクロオルガノスフェアの寸法及び/又は細胞密度を制御し得る。例えば、いくつかの変形形態では、マイクロ流体装置を使用してそれらの方法を行ってもよい。いくつかの変形形態では、複数のミクロオルガノスフェアが、並行して形成されてもよい(例えば、並行して2個、並行して3個、並行して4個等)。従って、同じ装置が、同じ未重合材料源、又は同じ解離初代組織源、及び/又は流体マトリクス源と連結され得る複数の平行流路を含んでもよい。
【0022】
未重合材料は、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するために、様々な異なる方法で重合可能である。いくつかの変形形態では、本方法が、温度の変化によりミクロオルガノスフェアを重合させる工程を含んでもよい(例えば、閾値超、例えば、約20℃超、約25℃超、約30℃超、約35℃超への昇温)。
【0023】
重合したら、患者由来ミクロオルガノスフェアを、例えば培養により増殖させてもよく、及び/又は培養前若しくは培養後のいずれかにアッセイしてもよく、及び/又は培養前若しくは培養後のいずれかに凍結保存してもよい。患者由来ミクロオルガノスフェアは、任意の適切な期間にわたり培養可能であるが、特に、1日~10日の間(例えば、1日~9日の間、1日~8日の間、1日~7日の間、1日~6日の間、3日~9日の間、3日~8日の間、3日~7日の間等)にわたり培養してもよい。いくつかの変形形態では、患者由来ミクロオルガノスフェアを6代経過前に凍結保存又はアッセイしてもよく、それにより、患者由来ミクロオルガノスフェア内の細胞の不均一性を維持することができ、継代数を限定することにより、分裂の速い細胞が分裂の遅い細胞をしのぐのを防ぐことができる。
【0024】
概して、同一患者の生検が、多数(例えば、2,000個超、3,000個超、4,000個超、5,000個超、6,000個超、7,000個超、8,000個超、9,000個超、10,000個超等)の細胞を提供し得るため、患者由来ミクロオルガノスフェアの一部を凍結保存し(例えば半分超)、一部を培養及び/又はアッセイしてもよい。本明細書でより詳細に記載するように、凍結保存した患者由来ミクロオルガノスフェアは、貯蔵してもよいし、後に使用(例えば、アッセイ、継代等)してもよい。
【0025】
従って、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する方法等の方法が、本明細書に記載される。例えば、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する方法は、解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程;該未重合混合物の複数の小滴を形成する工程;及び該小滴を重合させて、各々がその中に分配された1~200個の間の解離細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程を含み得る。
【0026】
例えば、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する方法は、解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程;該未重合混合物の連続流から、25%未満の寸法ばらつきを有する複数の小滴を形成する工程;及び該小滴を加温により重合させて、各々が各患者由来ミクロオルガノスフェア内に分配された1~200個の間の解離細胞を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程を含み得る。
【0027】
いくつかの変形形態では、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための本明細書に記載される方法は、解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程;該未重合混合物の流れを、該未重合混合物と非混和性である流体の1つ又は複数の流れと合流させることにより、25%未満の寸法ばらつきを有する複数の小滴を形成する工程; 該小滴を重合させて、その中に分配された1~200個の間の解離細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程;及び該複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを、非混和性である該流体から分離する工程を含み得る。
【0028】
これらの方法のいずれかは、小滴を形成する前に、解離組織試料内の細胞を改変する工程を含み得る。
【0029】
複数の小滴の形成は、約25%未満の寸法ばらつき(例えば、約20%未満の寸法ばらつき、約15%未満の寸法ばらつき、約10%未満の寸法ばらつき、約8%未満の寸法ばらつき、約5%未満の寸法ばらつき等)を有する均一寸法の、未重合混合物の複数の小滴を形成する工程を含み得る。該寸法ばらつきは、寸法ばらつきの狭い分布と記載することもできる。例えば、寸法の分布は、小さい標準偏差(例えば、15%以下の標準偏差、12%以下の標準偏差、10%以下の標準偏差、8%以下の標準偏差、6%以下の標準偏差、5%以下の標準偏差等)を有する患者由来ミクロオルガノスフェア寸法分布(例えば、ミクロオルガノスフェア直径に対する形成されたミクロオルガノスフェアの数)を含み得る。
【0030】
これらの方法のいずれかは更に、患者由来ミクロオルガノスフェアをプレーティング又は分配する工程を含み得る。例えば、いくつかの変形形態では、本方法が、アッセイ前に、様々な起源からの患者由来ミクロオルガノスフェアを容器内にまとめる工程を含み得る。例えば、ミクロオルガノスフェアを、マルチウェルプレート内に配置してもよい。従って、これらの方法のいずれかは、患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイ前に、患者由来ミクロオルガノスフェアをマルチウェルプレート内に分注する工程を含み得る。ウェル当たり、1つ又は複数(又はいくつかの変形形態では等量)の患者由来ミクロオルガノスフェアを含めてもよい。いくつかの変形形態では、容器内への患者由来ミクロオルガノスフェアのアプライすることが、少なくとも部分的に透過性の膜により分離されている複数のチャンバー内にオルガノスフェアを配置して、上清物(supernatant material)がチャンバー間を循環できるようにする工程を含み得る。これにより、患者由来ミクロオルガノスフェアが、同じ上清を共有し得る。
【0031】
これらの方法のいずれかでは、患者由来ミクロオルガノスフェアをアッセイし得る。アッセイは、概して、薬物組成物が患者由来ミクロオルガノスフェアの細胞に対して効果を有するかどうか(及びいくつかの場合は何の効果を有するか)を決定するために、個々の患者由来ミクロオルガノスフェアを条件(例えば薬物組成物)に曝露する工程又は処理する工程を含み得る。アッセイは、患者由来ミクロオルガノスフェアのサブセットを(個別に又は集団で)、1つ又は複数の濃度の薬物組成物に曝露する工程、及び患者由来ミクロオルガノスフェアを既定期間(分、時間、日等)にわたり曝露したままにする工程、及び/又は曝露してから薬物組成物を除去する工程、次いで患者由来ミクロオルガノスフェアを所定の期間にわたり培養する工程を含み得る。その後、特に、患者由来ミクロオルガノスフェア中の細胞に対する毒性、又は患者由来ミクロオルガノスフェア中の細胞の形態及び/若しくは増殖の変化を含む、任意の効果を同定するために、患者由来ミクロオルガノスフェアを調べてもよい。いくつかの変形形態では、アッセイが、患者由来ミクロオルガノスフェア内の生細胞又は固定細胞を(例えば免疫細胞染色により)標識する工程を含み得る。細胞は、手動又は自動でアッセイ(例えば検査)され得る。例えば、自動リーダ装置を使用して細胞を調べて、任意の毒性(細胞死)を決定してもよい。いくつかの変形形態では、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイが、分泌因子及び別の効果を対象に、患者由来ミクロオルガノスフェアの上清、環境及び微小環境の1つ又は複数をサンプリングする工程を含み得る。これらの変形形態のいずれかでは、更なるアッセイ、増殖、又は後の検査のための保存(例えば、凍結保存、固定等)のために、アッセイ後に患者由来ミクロオルガノスフェアを回収してもよい。
【0032】
述べたように、実質的に任意のアッセイを使用できる。例えば、本明細書に記載されるPMOSを使用して、ゲノムマーカー、トランスクリプトームマーカー、プロテオームマーカー、又はメタゲノムマーカー(例えばメチル化)をアッセイし得る。従って、本明細書に記載されるこれらの組成物及び方法のいずれかを、例えばエクソソームを含む、1つ又は複数のマーカー及び生物学的/生理的経路を同定又は検査するために使用してもよく、それは、患者の治療のための薬物及び/又は療法の同定を援助し得る。
【0033】
任意の適切な組織試料を使用できる。いくつかの変形形態では、該組織試料が、転移性腫瘍からの生検試料を含み得る。例えば、組織試料は、臨床腫瘍試料を含んでもよく、該臨床腫瘍試料は、癌細胞及び間質細胞の両方を含んでもよい。いくつかの変形形態では、該組織試料が、腫瘍細胞、並びに間葉細胞、内皮細胞及び免疫細胞の1つ又は複数を含む。
【0034】
本明細書に記載される方法のいずれかは、初めに、任意の適切な濃度で、組織生検からの解離細胞を流体マトリクス材料の全体に均一に、又はいくつかの変形形態では不均一に分配する工程を含み得る。例えば、いくつかの変形形態では、本明細書に記載される方法が、解離組織細胞が流体マトリクス材料内に1×107細胞/ml未満(例えば、9×106細胞/ml、7×106細胞/ml、5×106細胞/ml、3×106細胞/ml、1×106細胞/ml、9×105細胞/ml、7×105細胞/ml、5×105細胞/ml等未満)の密度で分配されるように、解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せる工程を含み得る。
【0035】
概して、小滴の形成は、未重合混合物の連続流から小滴を形成する工程を含み得る。例えば、小滴の形成は、未重合混合物と非混和性である流体の1つ又は複数の収束流を、未重合混合物の流れにアプライする工程を含み得る。該流れを、マイクロ流体デバイス、例えば、その中へと未重合混合物と非混和性流体とが相互作用する複数の収束流路を有する装置中で組合せて、精密に制御された容積を有する小滴を形成してもよい。いくつかの変形形態では、非混和性物質の過剰下に該小滴が形成(例えばピンチオフ)され、該小滴は、同時に及び/又は続いて重合され、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成してもよい。例えば、流れが合流する領域を構成して、小滴が形成された後に未重合混合物を、例えば、加熱により重合させてもよく、及び/又は下流の領域を構成して、小滴が形成されて非混和性物質により包囲された後に未重合混合物を重合させてもよい。いくつかの変形形態では、非混和性物質を、未重合材料の重合を促進する温度に加熱(又はその代わりに冷却)し、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成させる。例えば、重合は、小滴を35℃超に加熱する工程を含み得る。
【0036】
従って、それらの方法のいずれかでは、小滴の形成は、未重合混合物と非混和性である流体中で小滴を形成する工程を含み得る。更に、それらの方法のいずれかは、該非混和性流体を、患者由来ミクロオルガノスフェアから分離する工程を含み得る。例えば、それらの方法のいずれかは、該非混和性流体を、患者由来ミクロオルガノスフェアから除去する工程を含み得る。概して、非混和性流体は、特に、疎水性材料、又は未重合(例えば水性)材料と非混和性である別の材料を含む、液体(例えば、油、ポリマー等)を含み得る。
【0037】
流体マトリクス材料は、合成又は非合成の未重合基底膜材料であり得る。いくつかの変形形態では、該未重合基底材料が、高分子ハイドロゲルを含み得る。いくつかの変形形態では、流体マトリクス材料が、マトリゲルを含み得る。従って、解離組織試料と流体マトリクス材料との組合せは、解離組織試料を、基底膜マトリクスと組合せる工程を含み得る。
【0038】
組織試料は、患者から組織試料を摘出してから6時間以内又はそれより早く(例えば、約5時間以内、約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内等)、流体マトリクス材料と組合せてもよい。
【0039】
更に、患者由来ミクロオルガノスフェアをアッセイ又は保存する方法が、本明細書に記載される。例えば、方法は、解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程;25%未満の寸法ばらつきを有する、該未重合混合物の複数の小滴を形成する工程; 該小滴を重合させて、その中に分配された1~1000個の間の解離細胞を含む、50~700μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程;及び該複数の患者由来ミクロオルガノスフェアをアッセイ又は凍結保存する工程を含み得る。
【0040】
いくつかの変形形態では、方法は、解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程;該未重合混合物の複数の小滴を形成する工程;該小滴を重合させて、各々がその中に分配された1~200個の間の解離細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程;及び該複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを、15日以内に凍結保存又はアッセイする工程を含み得て、ここで、ミクロオルガノイドをアッセイして、患者由来ミクロオルガノスフェア内の該細胞に対する1つ又は複数の薬剤の効果を決定する。
【0041】
例えば、方法は、解離組織試料と流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程;該未重合混合物の流れを、該未重合混合物と非混和性である流体の1つ又は複数の流れと合流させることにより、25%未満の小滴の寸法ばらつきを有する複数の小滴を形成する工程; 該小滴を加温により重合させて、各々がその中に分配された1~200個の間の解離細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程;及び該患者由来ミクロオルガノスフェアを6代継代する前にアッセイする又は凍結保存することにより、該患者由来ミクロオルガノスフェア内の該細胞の不均一性が維持される工程を含み、更に、ここで、アッセイが、該患者由来ミクロオルガノスフェア内の該細胞に対する1つ又は複数の薬剤の効果を決定するためにアッセイする工程を含む。
【0042】
これらの方法のいずれかでは、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを6代継代する前に凍結保存又はアッセイすることにより、患者由来ミクロオルガノスフェア内の細胞の不均一性が維持される。これらの方法のいずれかは更に、小滴を形成する前に、解離組織試料内の細胞を改変する工程を含んでもよい。
【0043】
小滴の形成は、約25%未満(例えば、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約7%未満、約5%未満等)の寸法ばらつきを有する均一寸法の、未重合混合物の複数の小滴を形成する工程を含み得る。
【0044】
それらの方法のいずれかは、前記のように、適切な期間にわたり患者由来ミクロオルガノスフェアを培養する工程を含み得る(例えば、アッセイ前に患者由来ミクロオルガノスフェアを2~14日の間にわたり培養する工程)。例えば、それらの方法は、培養前に、患者由来ミクロオルガノスフェアから非混和性流体を除去する工程を含み得る。いくつかの変形形態では、患者由来ミクロオルガノスフェアの培養が、患者由来ミクロオルガノスフェアを懸濁状態で培養する工程を含む。
【0045】
概して、患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイは、患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイ前及び/若しくはアッセイ後、又は凍結保存前及び/若しくは凍結保存後に、患者由来ミクロオルガノスフェア中の細胞をゲノム解析、トランスクリプトーム解析、エピゲノム解析及び/又は代謝解析する工程を含み得る。それらの方法のいずれかは、患者由来ミクロオルガノスフェアを薬物(例えば薬物組成物)に曝露することにより患者由来ミクロオルガノスフェアをアッセイする工程を含み得る。
【0046】
それらの方法のいずれかでは、アッセイが、患者由来ミクロオルガノスフェア中の細胞に対する1つ又は複数の薬剤の効果を、手動及び/又は自動のいずれかにより視覚的にアッセイする工程を含み得る。それらの方法のいずれかは、視覚化のために、患者由来ミクロオルガノスフェア中の細胞を標識又はラベリングする工程を含み得る。例えば、アッセイは、細胞に対する1つ又は複数の薬剤の効果を蛍光アッセイする工程を含み得る。
【0047】
本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェアはそれ自体、新規であり、且つ組成物として特徴づけられ得る。例えば、組成物は、凍結保存された複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを含んでもよく、ここで、各患者由来ミクロオルガノスフェアは、50μm~500μmの間の直径を有する球形を有し、且つ重合した基材、及び該基材内に分配された、6回未満継代された約1~1000個の間の解離初代細胞を含み、それにより該患者由来ミクロオルガノスフェア内の細胞の不均一性が維持される。
【0048】
更に、凍結保存された複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを含む組成物が、本明細書に記載され、ここで、各患者由来ミクロオルガノスフェアは、50μm~500μmの間の直径を有する球形を有し、該患者由来ミクロオルガノスフェアは、25%未満の寸法ばらつきを有し、且つ各患者由来ミクロオルガノスフェアは、重合した基材、及び該基材内に分配された、6回未満継代された約1~500個の間の解離初代細胞を含み、それにより該患者由来ミクロオルガノスフェア内の細胞の不均一性が維持される。
【0049】
初代細胞は、原発腫瘍細胞であり得る。例えば、解離初代細胞は、遺伝子改変又は生化学改変されていてもよい。複数の凍結保存した患者由来ミクロオルガノスフェアは、25%未満の寸法ばらつきを有する均一寸法を有し得る。いくつかの変形形態では、複数の凍結保存した患者由来ミクロオルガノスフェアが、様々な起源からの患者由来ミクロオルガノスフェアを含み得る。それらのミクロオルガノスフェアのいずれかでは、各ミクロオルガノスフェア中の大多数の細胞が、幹細胞でない細胞を含み得る。いくつかの変形形態では、初代細胞が、転移性腫瘍細胞を含む。初代細胞は、癌細胞及び間質細胞の両方を含み得る。いくつかの変形形態では、初代細胞が、腫瘍細胞、並びに間葉細胞、内皮細胞及び免疫細胞の1つ又は複数を含む。
【0050】
初代細胞は、重合した基材内に、例えば、5×107細胞/ml、1×107細胞/ml、9×106細胞/ml、7×106細胞/ml、5×106細胞/ml、1×106細胞/ml、9×105細胞/ml、7×105細胞/ml、5×105細胞/ml、1×105細胞/ml等の密度で分配され得る。
【0051】
概して、重合した基材は、基底膜マトリクス(例えばマトリゲル)を含み得る。いくつかの変形形態では、重合した基材が、合成材料を含む。
【0052】
ミクロオルガノイドは、50μm~1000μmの間、更に好ましくは50μm~700μmの間、更に好ましくは50μm~500μmの間、50μm~400μmの間、50μm~300μmの間、50μm~250μmの間等の直径を有し得る(例えば、約500μm未満、約400μm未満、約300μm未満、約250μm未満、約200μm未満等)。
【0053】
述べたように、本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェアは、各患者由来ミクロオルガノスフェア中に初めに任意の適切な数の初代組織細胞、例えば、約200個未満の初代細胞、更に好ましくは約150個未満の初代細胞、更に好ましくは約100個未満の初代細胞、更に好ましくは約75個未満の初代細胞、約50個未満の細胞、約30個未満の細胞、約25個未満の細胞、約20個未満の細胞、約10個未満の細胞、約5個未満の細胞等を含み得る。いくつかの変形形態では、各患者由来ミクロオルガノスフェアが、約1~500個の間の細胞、約1~400個の間の細胞、約1~300個の間の細胞、約1~200個の間の細胞、約1~150個の間の細胞、約1~100個の間の細胞、約1~75個の間の細胞、約1~50個の間の細胞、約1~30個の間の細胞、約1~25個の間の細胞、約1~20個の間の細胞等を含む。
【0054】
更に、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための装置、及び患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するためのそれらの装置を操作する方法が、本明細書に記載される。例えば、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する装置を操作する方法であって、解離組織試料と第1の流体マトリクス材料との冷却混合物(chilled mixture)を含む未重合混合物を第1のポートに受容する工程;該未重合混合物と非混和性である第2の流体を第2のポートに受容する工程; 該未重合混合物の流れを、該第2の流体の1つ又は複数の流れと組み合わせて、25%未満でばらつく均一寸法を有する、該未重合混合物の小滴を形成する工程;及び該未重合混合物の該小滴を重合させて、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程を含む方法が、本明細書に記載される。
【0055】
患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する装置を操作する方法は、解離組織試料と第1の流体マトリクス材料との冷却混合物を含む未重合混合物を第1のポートに受容する工程;該未重合混合物と非混和性である第2の流体を第2のポートに受容する工程; 第1の速度での該未重合混合物の流れを、第2の速度での該第2の流体の1つ又は複数の流れと組合せて、25%未満でばらつく均一寸法を有し、50μm~500μmの間の直径である、該未重合混合物の小滴を形成する工程;及び該未重合混合物の該小滴を重合させて、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する工程を含み得る。
【0056】
それらの方法のいずれかは、未重合混合物を含有する第1のリザーバを第1のポートと流体連通させる工程を含み得る。例えば、本方法は、解離組織試料と第1の流体マトリクス材料とを組合せて、未重合混合物を形成する工程を含み得る。いくつかの変形形態では、本方法が、未重合混合物を、第1のポートと流体連通している第1のリザーバに添加する工程を含む。それらの方法は、第2の流体を含有する第2のリザーバを第2のポートと流体連通させる工程を含み得る。それらの方法のいずれかは、第2の流体を、第2のポートと流体連通している第2のリザーバに添加する工程を含み得る。いくつかの変形形態では、第2の流体の受容が、油を受容する工程を含む。
【0057】
概して、それらの方法は、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアから第2の流体(例えば非混和性流体)を分離する工程を含み得る。この流体は、手動又は自動で分離され得る。例えば、第2の(非混和性)流体は、洗浄、ろ過、又は他の任意の適切な方法により除去され得る。
【0058】
流れの組合せは、第2の流速で移動している第2の流体の1つ又は複数の流れを横切って、未重合混合物の流れを第1の流速で駆動する工程を含み得る。いくつかの変形形態では、第1の流速が、第2の流速よりも大きい。材料(例えば未重合混合物)の流速若しくは量のいずれか一方、又は材料(例えば未重合混合物)の流速及び量の両方は、第2の流体よりも小さくあり得るため、未重合混合物は、本明細書に記載される、精密に制御された小滴中に封入されてから、例えば第2の流体内で重合され得ることになる。
【0059】
いくつかの変形形態では、流れの組合せが、第2の流体の1つ又は複数の流れもそこに合流する合流点を横切って、未重合混合物の流れを駆動する工程を含む。小滴の重合は、未重合材料が重合する温度超(例えば、約25℃超、約30℃超、約35℃超等)へと小滴を加熱する工程を含み得る。
【0060】
これらの方法のいずれかは、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを、一定分量に分取する工程、例えば、マルチウェルディッシュへと一定分量に分取する工程を含み得る。
【0061】
更に、それらの患者由来ミクロオルガノスフェアを使用して患者を治療する方法、及びそれらの患者由来ミクロオルガノスフェアをアッセイする方法が、本明細書に記載される。例えば、方法は、腫瘍から患者の生検を取得する工程;該生検の採取から2週間以内に、該患者の生検から、重合した基材全体に分配された1~200個の間の解離腫瘍細胞を含む、50~500μmの間の直径を有する複数のミクロオルガノスフェアを形成する工程及び少なくともいくつかの該患者由来ミクロオルガノスフェアを、該解離腫瘍細胞が5代を超える継代の前に製剤に曝露する工程により、該腫瘍が該製剤に応答するであろうと決定する工程;並びに少なくともいくつかの該ミクロオルガノスフェア内の該細胞に対する該製剤の効果を測定して、該決定された効果に基づいて、該薬物が該腫瘍を治療するかを決定する工程を含み得る。
【0062】
いくつかの変形形態では、これらの方法が、患者を製剤で治療した後に第2の患者生検を取得し、前記第2の患者腫瘍組織から第2の複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成し、少なくともいくつかの前記第2の複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを、前記製剤に曝露し、前記少なくともいくつかの第2の複数のミクロオルガノスフェア内の細胞に対する前記製剤の効果を測定することにより、前記腫瘍が前記薬物の1回又は複数回の投与後になおも前記製剤に応答することを決定する工程を含み得る。
【0063】
腫瘍が製剤に応答することの決定は、少なくともいくつかの患者由来ミクロオルガノスフェアを、複数の製剤に曝露する工程、及び該製剤の各々に対して、測定された効果を記録する工程を含み得る。いくつかの変形形態では、決定が、患者由来ミクロオルガノスフェアのアッセイ前に、ミクロオルガノスフェアをマルチウェルプレート内に分注する工程を更に含み得る。
【0064】
これらの方法のいずれかは、患者に生検を行って、患者生検を採取する工程(或いは患者からの組織試料又は患者由来の組織若しくは細胞の試料を採取する工程)、及び/又は患者を製剤で治療する工程、又は患者の治療において医師を援助する工程(例えば、どの製剤が効果的であるかに関して医師にアドバイスする工程)を含み得る。概して、生検を取得する工程と記録する工程との間の時間は、約21日未満であり得る(例えば、約15日未満、約14日未満、約13日未満、約12日未満、約11日未満、約10日未満、約9日未満、約8日未満、約7日未満等)。
【0065】
本発明の新規の特徴は、以下の特許請求の範囲における特徴により記載される。本発明の特徴及び利点の理解は、本発明の原理を利用する例示的実施形態を記載する以下の詳細な説明の参照により深まる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】ミクロオルガノスフェア当たり単一の解離初代組織細胞を含むように本明細書に記載の通り形成した、形成後1日間培養(
図1A)、形成後3日間培養(
図1B)、及び形成後7日間培養(
図1C)した患者由来ミクロオルガノスフェアを示す図である。細胞は、結腸直腸癌(CRC)組織に由来する。
【
図2】ミクロオルガノスフェア当たり5個の解離初代組織細胞を含むように本明細書に記載の通り形成した、形成後1日間培養(
図2A)、形成後3日間培養(
図2B)、及び形成後7日間培養(
図2C)した、患者由来ミクロオルガノスフェアを示す図である。細胞は、結腸直腸癌(CRC)組織に由来する。
【
図3】ミクロオルガノスフェア当たり20個の解離初代組織細胞を含むように本明細書に記載の通り形成した、形成後1日間培養(
図3A)、形成後3日間培養(
図3B)、及び形成後7日間培養(
図3C)した、患者由来ミクロオルガノスフェアを示す図である。
図1A~
図1C及び
図2A~
図2Cのように、細胞は、結腸直腸癌(CRC)組織に由来する。
【
図4】ミクロオルガノスフェア当たり10個の解離初代組織細胞を含むように本明細書に記載の通り形成した患者由来ミクロオルガノスフェアの例を示す図である。
図4Aは形成直後のミクロオルガノスフェアを示す(低倍率)。
図4Bは、
図4Aのミクロオルガノスフェアのいくつかの、2日間培養後に撮影した高倍率視野を示す。
図4Cは、3日間培養後のミクロオルガノスフェアを示す。
図4Dは、4日間培養後のミクロオルガノスフェアを示す。
図4Eは、5日間培養後のミクロオルガノスフェアを示す。
【
図5】正常マウス肝臓の肝細胞から本明細書に記載の通り形成した、形成後1日間(
図1A)、形成後10日間(
図1B)培養したミクロオルガノスフェアの例を示す図である。マウス肝細胞は、正常(例えば非疾患)マウス肝臓から採取する。
【
図6】本明細書に記載されるように初代組織(例えば生検)試料から患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する方法を示す図である。
【
図7】
図7Aは、アセンブリの一部であるマイクロ流体チップを含む、本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための装置の一例を模式的に示す図である。
図7Bは、
図7Aに示される装置のマイクロ流体チップ部分の一例の斜視図である。
図7Cは、
図7Aに示されるような、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための装置用のマイクロ流体アセンブリの部分を模式的に示す図である。
【
図8】
図7Aに示されるような装置を使用して形成された複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを示す画像の一例を示す図であり、該装置から一定分量で分取する前に、非混和性流体(例えば油)を含有する流路内に懸濁させた、重合直後の患者由来ミクロオルガノスフェアを示す。
【
図9】
図7Cに示される装置と類似する、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための装置用のマイクロ流体アセンブリ原型の部分の画像を示す図であり、患者由来ミクロオルガノスフェアの形成を示す。
【
図10】重合直後の本明細書に記載される複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを示す図である。該患者由来ミクロオルガノスフェアは、非混和性流体中に懸濁してある。
【
図11】形成直後且つ非混和性流体(例えば油)中に懸濁状態の複数の患者由来ミクロオルガノスフェアの別の例を低倍率(
図11A)及び高倍率(
図11B)で示す図である。
【
図12】患者由来ミクロオルガノスフェアの形成から数時間以内に、非混和性流体から分離した後の複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを低倍率(
図12A)及び高倍率(
図12B)で示す図である。
【
図13】本明細書に記載されるように形成された複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを示す画像の別の例を示す図である。
【
図14】例示的な生検試料から形成された複数の患者由来ミクロオルガノスフェアからの直径の寸法分布を示すグラフである。
【
図15】解離組織生検試料と流体マトリクス材料とから形成された複数の患者由来ミクロオルガノスフェアの重合後の一例の低倍率視野及び高倍率視野を示す図である。
図15Aは、未染色画像であり、
図15Bは、ミクロオルガノスフェア中の解離細胞が生きていることを示すために、オルガノスフェアをトリパンブルーで染色した。
【
図16】
図15A~
図15Bに示される例と類似する別の例であり、それぞれ、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアの一例の低倍率視野及び高倍率視野を示す図である。
図16Aは、未染色画像であり、
図16Bは、ミクロオルガノスフェア中の解離細胞がミクロオルガノスフェア内で生存し続ける(例えば生存中である)ことを示すために、オルガノスフェアをトリパンブルー(矢印)で染色した。
【
図17】複数の患者由来ミクロオルガノスフェアをアッセイする方法の一例を示す図であり、この例では、多数の製剤に対する薬物応答プロファイルを決定するために、患者腫瘍生検から形成した。例証される方法は、生検から結果まで2週間未満(例えば約1週間)かかる。
【
図18】治療方法の一部としての複数の患者由来ミクロオルガノスフェアの形成及び使用を含む、患者を治療するための方法の一例を模式的に示す図である。
【
図19】治療方法の一部としての複数の患者由来ミクロオルガノスフェアの迅速な形成及びアッセイの複数の反復を含む、患者を治療するための方法の一例を模式的に示す図である。
【
図20】本明細書に記載される複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための装置の部分の一変形形態を模式的に示す図である。
【
図21】
図20に示される装置と類似する、複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための装置を操作する方法を模式的に示す図である。
【
図22】薬物耐性を同定するために本明細書に記載される複数の患者由来ミクロオルガノスフェアを使用する方法の妥当性確認の一例を示す図である。
図22Aは、従来の(「2D」)腫瘍細胞アッセイ法の使用を示し、薬物耐性を予測する。
図22Bは、薬物耐性をアッセイするための、本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェア法の一例の使用を示し、薬物感受性を予測する。
図22C及び
図22Dは、患者由来ミクロオルガノスフェアに基づく方法が、従来の培養細胞とは異なり、腫瘍の実際の応答(薬物応答性)を正確に予測したことを示す。
【
図23】薬物耐性を同定するための本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェアの使用を妥当性確認する別の例を示す図である。オキサリプラチンとイリノテカンの両方に対して予測された薬物応答が、それらの薬物での治療後の実際の腫瘍応答と一致することを示す。
【
図24】本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェアを使用した薬物スクリーニングの一例を示す図である。そのスクリーニングでは、単一腫瘍生検が、複数のほぼ同じミクロオルガノスフェアを大量に非常に素早く(例えば2週間未満以内)生成することができ、多数の製剤(例えば、27製剤を示す)に対して並行して素早く試験することができる。
【
図25】マウス肝組織から形成された、300μmの直径及びオルガノスフェア当たり1個の細胞を有するマウス肝臓ミクロオルガノスフェアの例を示す図である。
図25Aは、1日目のミクロオルガノスフェアを示し、
図25Bは、10日目のミクロオルガノスフェアを示す。
【
図26】
図25A~
図25Bに示されるマウス肝臓ミクロオルガノスフェアと類似する、部分肝切除マウス肝組織から形成された、300μmの直径及びオルガノスフェア当たり25個の細胞を有するマウス肝臓ミクロオルガノスフェアの例を示す図である。
図26Aは、1日目のミクロオルガノスフェアを示し、
図26Bは、10日目のミクロオルガノスフェアを示す。
【
図27】ヒト肝組織から形成されたヒト肝臓ミクロオルガノスフェアの例を示す図である。
図27Aは、40細胞/小滴で播種した1日目のミクロオルガノスフェアを示す。
図27B及び
図27Cは、18日目のミクロオルガノスフェアを示す。
図27Bにおいて、ミクロオルガノスフェアが肝細胞様の構造であり、
図27Cは、胆管細胞様のミクロオルガノスフェアを示す。
【
図28】患者由来異種移植片腫瘍株から生成された、300μmの直径及びオルガノスフェア当たり1個の細胞を有するミクロオルガノスフェアの例を示す図である。
図28Aは、1日目のミクロオルガノスフェアを示し、
図28Bは、3日目のミクロオルガノスフェアを示し、
図28Cは、5日目のミクロオルガノスフェアを示し、
図28Dは、7日目のミクロオルガノスフェアを示す。
【
図29】患者由来異種移植片モデルから生成された、300μmの直径及びオルガノスフェア当たり5個の細胞を有するミクロオルガノスフェアの例を示す図である。
図29Aは、1日目のミクロオルガノスフェアを示し、
図29Bは、3日目のミクロオルガノスフェアを示し、
図29Cは、5日目のミクロオルガノスフェアを示し、
図29Dは、7日目のミクロオルガノスフェアを示す。
【
図30】オキサリプラチンに対する、結腸直腸癌患者由来オルガノイドから形成された、従来のオルガノイドの応答とミクロオルガノスフェアの応答とを比較するグラフであり、従来のオルガノイド及びミクロオルガノスフェアの匹敵する応答を示す。
【
図31】SN38(7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン)に対する、2つの結腸直腸癌患者由来異種移植片モデルから形成された、従来のオルガノイドの応答とミクロオルガノスフェアの応答とを比較するグラフであり、匹敵する応答を示す。
【
図32】5-FU(フルオロウラシル)に対する、結腸直腸癌患者由来異種移植片モデルから形成された、従来のオルガノイドの応答とミクロオルガノスフェアの応答とを比較するグラフであり、匹敵する応答を示す。
【
図33】マウス肝臓ミクロオルガノスフェアを使用した毒性アッセイの例を示す図である。
図33Aは、マウス肝臓ミクロオルガノスフェア中の組織の寸法が、対照群では、比較的大きいことを示す(矢印で示す)。それに対して、アセトアミノフェン(10mM)処理群を示す
図33Bでは、大部分のミクロオルガノスフェア中の組織がより小さく、且つ多くの死細胞を含有する。
【
図34】ヒト肝臓ミクロオルガノスフェアを使用した毒性アッセイの例を示す図である。
図34Aは、対照群で観察された典型的なヒト肝臓ミクロオルガノスフェアを、組織構造(矢印で示す)を含めて示す。
図34Bは、アセトアミノフェン(10mM)処理群のミクロオルガノスフェアを示し、異常組織構造(矢印)及び破片を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
概して、患者由来ミクロオルガノスフェア、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための方法及び装置、並びに患者由来ミクロオルガノスフェアを使用するため、例えば、組織(癌組織を含むがそれらに限定されない)の応答をアッセイするための方法及び装置が、本明細書に記載される。
【0068】
本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェアは、典型的には、基材内に分配された解離初代細胞から形成された球である。それらの患者由来ミクロオルガノスフェア(「PMOS」又は「オルガノスフェア」)は、約50μm~約500μmの間(例えば、約50μm~約400μmの間、約50μm~約300μmの間、約50μm~約250μmの間等)の直径を有し得て、初めに、基材内に分配された約1個~1000個の間の解離初代細胞(例えば、約1個~750個の間、約1個~500個の間、約1個~400個の間、約1個~300個の間、約1個~200個の間、約1個~150個の間、約1個~100個の間、約1個~75個の間、約1個~50個の間、約1個~40個の間、約1個~30個の間、約1個~20個の間等)を含み得る。
【0069】
驚くべきことに、その小さい寸法(頻繁には約50~250μmの間)及び低い細胞密度(例えば、頻繁にはミクロオルガノスフェア当たり100細胞未満)にもかかわらず、それらのミクロオルガノスフェアは、直ちに使用可能であるか、又は非常に短期間(例えば、14日以下、10日以下、7日以下、5日以下等)培養してもよく、且つミクロオルガノスフェア内の細胞の生存を可能にしながらも、腫瘍組織を含む、それらの抽出元の組織の特性の全部ではないが多くを維持し得る。ミクロオルガノスフェア内の細胞の生存率は目立って高く、且つミクロオルガノスフェアは、複数の継代数を通して何日間(又は何週間)も培養可能であり、その間に、細胞は、分裂し、集塊形成し、親組織と似た構造を形成する。同じく驚くべきことに、いくつかの変形形態では、ミクロオルガノスフェア内の、解離組織からの細胞が、最小のミクロオルガノスフェア内部にさえも形態構造を形成する。いくつかの用途では、そのような構造の存在は、それらのミクロオルガノスフェアの有用性に必要でないが(例えば、実質的な構造再組織化が起こる前に使用され得る)、いくつかの変形形態では、特に有用であり得る。
【0070】
ミクロオルガノスフェアを形成及び使用するための本明細書に記載される方法及び装置は、単一生検から多数(例えば、10,000個超)の患者由来ミクロオルガノスフェアを創生するために使用し得る。それらのミクロオルガノスフェアは、薬物組成物のスクリーニングに使用でき、どの療法が、生検を採取した患者に対して効果的に適用できるかを予測し得る。それは、例えば、健常正常組織及び/又は癌(例えば腫瘍)組織からの、薬物又は別の化学組成物に対する毒性スクリーニングにおいて有用であり得る。特に、患者由来ミクロオルガノスフェア、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための方法及び装置、並びに患者由来ミクロオルガノスフェアを試験するための方法及び装置は、薬物療法を行う前に、患者(例えば癌患者)を効果的に治療し得る1つ又は複数の薬物組成物を同定するためのスクリーニングに使用可能である。それは、例えば、さもないと何か月もの、その患者にとって効果的でない可能性がある化学療法を受ける前に、癌患者の非常に迅速なスクリーニングを可能にし得る。
【0071】
従って、患者特異的単一生検(又は他の適切な組織/細胞源)を使用したハイスループット薬物スクリーニング法(及びその方法を行うための装置)が、本明細書に記載される。解離し、基底膜マトリクス(例えばマトリゲル)中に懸濁させた患者由来腫瘍試料から形成され得る、小滴を形成した患者由来ミクロオルガノスフェアが、本明細書に記載される。該ミクロオルガノスフェアは、マイクロ流体マイクロウェルアレイ上にパターン化し、インキュベートし、薬剤化合物を添加することができる。このミニチュア化アッセイは、腫瘍試料の使用を最大限にし、コア生検から、試料当たりはるかに低コストでより多くの薬剤化合物のスクリーニングを可能にする。
【0072】
患者由来がんモデル(PDMC)、例えば、細胞株、オルガノイド及び患者由来異種移植片(PDX)は、新規治療薬の同定及び開発を促進するための「標準」前臨床モデルとして、ますます受け入れられつつある。例えば、癌患者由来の細胞株及びオルガノイドの大規模薬物スクリーニングが、多数の潜在的治療薬に対する感受性を同定するために使用されている。PDXもまた、薬物応答を予測して新規な薬物の組合せを同定するために使用される。プレシジョンメディシン戦略が、これらの様々なPDMCモデルの探究を介して開発中であるものの、その効果的な使用には実質的な障壁が存在する。例えば、患者由来オルガノイド(PDO)は、患者腫瘍の描写において最も正確であると見られている。なぜなら、オルガノイドの表現型及び遺伝子型のプロファイリングが、患者の元々の腫瘍と高度の類似性を頻繁に示すことが研究により示されたからである。あいにく、少なくとも2つの制限が、治療の指針になるPDOの使用を妨げる。第一に、開発及びオルガノイドでの薬物感受性の試験には数か月かかり、臨床適用性を低下させる。第二に、臨床上重要な18ゲージコア生検から得られるオルガノイドの数は、ハイスループット薬物スクリーニングを行うために十分でない。理想的には、単一コア生検から7~10日以内にアッセイを行うべきである。本明細書に記載されるミクロオルガノスフェア、並びにミクロオルガノスフェアを生成及び使用する方法は、これら臨床上の制限に取り組み得る。
【0073】
本開示の主題の1つ又は複数の実施形態の詳細を本文書に記載する。本文書に記載される実施形態に対する改変、及び別の実施形態が、本文書中で提供される情報の論考後に当業者には明白になる。本文書中で提供される情報、特に、記載される例示的実施形態の具体的な詳細は、主として明確な理解のために提供されており、そこから不必要な限定が、解釈されるべきでない。矛盾する場合には、定義を含めた、本文書の明細書が照合する。
【0074】
本明細書で使用する用語は、当業者には十分に理解されていると思われるが、本開示の主題の説明を容易にするために、本明細書に定義を記載する。
【0075】
異なる定義がない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本開示の主題が帰属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと類似又は同等の任意の方法、装置及び材料が、本開示の主題の実践又は試験において使用できるが、代表的な方法、装置及び材料をここで記載する。
【0076】
用語「未重合混合物」は、本明細書で、解離組織試料及び第1の流体マトリクス材料を含む、生体関連物質を含む組成物に関して使用する。該流体マトリクス材料は、典型的には、その中に分散した解離組織(細胞)に対する支持体又は支持体ネットワークを形成するために重合し得る材料である。いったん重合すると、該重合材料は、ハイドロゲルを形成し得て、及び/又は細胞に加えて、生体適合性媒体を形成するタンパク質を含み得る。本開示の主題に従う使用に向けて適切な生体適合性媒体は、典型的には、ゲル、半固体又は液体、例えば、室温(例えば25℃)での低粘性液体であって、且つ細胞、組織、タンパク質及び興味ある他の生体物質向けの3次元基質として使用され得る任意の生体適合性材料から形成され得る。本開示の主題に従う生体適合性媒体を形成するために使用できる例示的材料は、コラーゲン、フィブリン、キトサン、MATRIGEL(商標)(BD Biosciences社、San Jose、カリフォルニア)、ポリエチレングリコール、化学架橋性又は光架橋性のデキストランを含むデキストラン等、並びに電界紡糸した生物ブレンド、合成ブレンド又は生物合成ブレンド(biological-synthetic blend)を含むポリマー及びハイドロゲルを含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、生体適合性媒体が、ハイドロゲルからなる。
【0077】
用語「ハイドロゲル」は、本明細書で、ポリマー鎖の3次元ネットワークを含む2成分ゲル又は多成分ゲルに関して使用し、そのネットワークでは、水が分散媒として作用してポリマー鎖間の空間を充填する。本開示の主題に従って使用するハイドロゲルは、概して、その構造の用途に基づいて、ミクロオルガノスフェアの形成に使用されるパラメータ、並びに選択されたハイドロゲルが、生物懸濁液中に組み込まれた、構造内に配置される生体物質(例えば細胞)の挙動及び活性に及ぼす効果を考慮しつつ、特定用途用に選択される。本開示の主題の例示的ハイドロゲルは、アルギン酸塩、コラーゲン(I型コラーゲン及びVI型コラーゲンを含む)、エラスチン、ケラチン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、ポリラクチド、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリコライド(polycolide)、ポリジオキサノン、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ペプチド配列、タンパク質及び誘導体、オリゴペプチド、ゼラチン、エラスチン、フィブリン、ラミニン、ポリメタクリレート、ポリアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ無水物、ポリアミノ酸、炭水化物、多糖及び改質多糖、並びにそれらの誘導体及びコポリマー、同様に無機材料、例えば、生体活性ガラスのようなガラス、セラミックス、シリカ、アルミナ、方解石、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、骨、並びに前期のすべての組合せを含むがそれらに限定されない高分子材料からなり得る。
【0078】
更に、本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアを産生するために使用するハイドロゲルに関して、いくつかの実施形態では、ハイドロゲルが、アガロース、アルギン酸塩、I型コラーゲン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば、Pluronic(登録商標)F127(BASF Corporation社、Mount Olive、N.J.))、シリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、及びポリウレタンからなる群から選択される材料からなる。いくつかの実施形態では、ハイドロゲルが、アルギン酸塩からなる。
【0079】
本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、生体関連物質をも含み得る。表現「生体関連物質」は、本明細書に定義される生体適合性媒体内に包含可能であり、且つ、続いて生体システムと相互作用できる及び/又は生体システムに影響を及ぼせる材料を記載し得る。例えば、いくつかの実装形態では、生体関連物質が、本方法及び本組成物(例えば、ミクロオルガノスフェアを分離及び精製するため)において使用され得るミクロオルガノスフェアを産生するための未重合材料の一部として組合せることができる磁気ビーズ(即ち、それ自体が磁性であるか、又は鉄粒子のような、磁場に対して反応する材料を含有するビーズ)である。別の例として、別の実装形態では、生体関連物質が、解離組織試料(例えば生検)材料に加えて、追加の細胞を含んでもよい。未重合混合物中で、解離組織試料と追加の生体関連物質とは、均一混合として又は分散混合(例えば、形成されたミクロオルガノスフェアのコア内のみ又は外部領域内のみを含む、ミクロオルガノスフェアの片方の半分上又は他方の部分上)として存在する。いくつかの変形形態では、未重合材料内の追加の生体関連物質が、例えば、ミクロオルガノスフェアを形成する小滴の重合前に、懸濁液中の解離組織試料と共に懸濁状態であり得る。
【0080】
いくつかの変形形態では、解離組織試料(例えば生検)材料と共に含まれ得る生体関連物質が、前脂肪細胞、間葉系幹細胞(MSC)、内皮前駆細胞、T細胞、B細胞、肥満細胞及び脂肪組織マクロファージ、並びに間質血管細胞群内に見出される小血管又は微小血管断片を含む、多数の細胞型を含有してもよい。
【0081】
概して、本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアに含まれる解離組織試料、例えば生検材料に関して、それらの組織は、患者からの、典型的には生検により採取した任意の適切な組織であり得る。非生検組織が使用可能であるが、概して、それらの組織(及び得られる解離細胞)は、前記のように患者生検から、例えば針生検により採取した初代細胞であり得る。組織は、健常組織生検又は癌(腫瘍)細胞生検からであり得る。解離細胞は、本開示の主題のミクロオルガノスフェア内へと、そのミクロオルガノスフェアの用途に基づいて組み込まれ得る。例えば、関連組織(例えば解離生検組織)は、典型的には、その組織又は臓器(又は腫瘍等)内に一般的に見出される細胞を含み得る。その点で、本開示の主題のミクロオルガノスフェア内に組み込まれ得る例示的な関連細胞は、神経細胞、心筋細胞、筋細胞、胆管細胞、膵腺房細胞、ランゲルハンス島、骨細胞、肝細胞、クッパー細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、内皮細胞、脂肪細胞、前脂肪細胞、胆管上皮細胞等を含む。それらの組織型は、技術分野で公知の従来技術により解離し得る。適切な生検組織は、骨髄、皮膚、軟骨、腱、骨、筋(心筋を含む)、血管、角膜、神経、脳、胃腸、腎臓、肝臓、膵臓(島細胞を含む)、肺、脳下垂体、甲状腺、副腎、リンパ、唾液分泌、卵巣、精巣、子宮頚管、膀胱、子宮内膜、前立腺、外陰部及び食道の組織に由来し得る。正常組織又は疾患(例えば癌)組織を使用し得る。いくつかの変形形態では、組織が、それらの正常組織のいずれかにできる腫瘍を含む腫瘍組織から生じてもよい。
【0082】
ミクロオルガノスフェアを形成したら、凍結保存及び/又は培養してもよい。培養ミクロオルガノスフェアは、懸濁液中に、静的(例えば、ウェル、バイアル等)又は動的(in motion)(例えば、回転若しくは撹拌)のいずれか一方で維持できる。ミクロオルガノスフェアは、公知の培養技術を使用して培養し得る。例示的技術は、特に、Freshney、Culture of Animal Cells、A Manual of Basic Techniques、第4版、Wiley Liss、John Wiley & Sons、2000年;Basic Cell Culture:A Practical Approach、Davis編、Oxford University Press、2002年;Animal Cell Culture:A Practical Approach、Masters編、2000年;並びに米国特許第5,516,681号明細書及び米国特許第5,559,022号明細書に見出される。
【0083】
いくつかの変形形態では、ミクロオルガノスフェアは、流体疎水性材料(例えば油)のような非混和性物質中での、解離組織試料と流体マトリクス材料との未重合混合物(例えば、いくつかの変形形態では冷却混合物)の小滴の形成により形成される。例えば、ミクロオルガノスフェアは、小滴を形成するために未重合材料の流れを非混和性物質の1つ又は複数の流れと組合せることにより形成され得る。該小滴中に存在する細胞の密度は、未重合材料中の解離材料(例えば細胞)の希釈により決定できる。ミクロオルガノスフェアの寸法は、形成された該小滴の寸法と相関し得る。概して、ミクロオルガノスフェアは、安定した形状を有する球状構造である。
【0084】
本開示の主題の実践は、異なる指定がない限り、当該分野の技術範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の従来技術を使用できる。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual(1989年)、第2版、Sambrook、Fritsch及びManiatis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第16章及び第17章;米国特許第4,683,195号明細書;DNA Cloning、第I巻及び第II巻、Glover編、1985年;Oligonucleotide Synthesis、M. J. Gait編、1984年;Nucleic Acid Hybridization、D. Hames & S. J. Higgins編、1984年;Transcription and Translation、B. D. Hames & S. J. Higgins編、1984年;Culture Of Animal Cells、R. I. Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987年;Immobilized Cells And Enzymes、IRL Press、1986年;Perbal(1984年)、A Practical Guide To Molecular Cloningを参照;Methods In Enzymology(Academic Press, Inc.、N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells、J. H. MillerとM. P. Calos編、Cold Spring Harbor Laboratory、1987年;Methods In Enzymology、第154巻及び第155巻、Wu等編、Academic Press Inc.、N.Y.;Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerとWalker編、Academic Press、London、1987年;Handbook Of Experimental Immunology、第I巻~第IV巻、D. M. WeirとC. C. Blackwell編、1986年を参照。
【0085】
本明細書で使用する薬物組成物は、任意の薬物、薬物希釈液、製剤、多剤(例えば複数有効成分)を含む組成物、製剤、薬剤形(drug form)、薬物濃縮物、併用療法等を含み得る。いくつかの変形形態では、製剤が、1つの薬物と1つ又は複数の不活性成分との混合物を含む剤形に関する。
【0086】
本明細書で使用する用語「継代」は、ミクロオルガノスフェア内の細胞の平均倍加数に関し得る。従来の継代数は、ある培養容器から別の培養容器への細胞の移動又は継代培養に関するが、ミクロオルガノスフェア内の細胞は、同じミクロオルガノスフェア内に安定に維持され得て、増殖及び分裂し続け得る。従って、本明細書で使用する継代数は、典型的には、生検組織に由来する、ミクロオルガノスフェア内の解離細胞の平均倍加数に関する。集団倍加数は、細胞集団が、単離以来(例えば、新鮮に解離した生検組織からのミクロオルガノスフェアの形成以来)経過したおよその倍加数である。概して、本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、ミクロオルガノスフェア内のいくつか又はすべての細胞の増殖、例えば倍加と比べて短期間、培養可能である(例えば、10代未満、9代未満、8代未満、7代未満、6代未満、5代未満、4代未満、3代未満等)。
【0087】
培養の間、ミクロオルガノスフェア中の、解離生検組織からの細胞は、ミクロオルガノスフェア内で凝集、集塊形成又は集合し得る。細胞の凝集体は、高度に組織化され得て、一定の形態を形成し得て、又は集塊形成若しくは互いに接着した細胞の集団であり得る。その構成は、起源の組織を反映し得る。いくつかの変形形態では、ミクロオルガノスフェアは単一の細胞型を含有し得るが(同型)、より典型的には、それらのミクロオルガノスフェアは、2つ以上の細胞型を含有し得る(異型)。
【0088】
述べたように、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するために使用する(例えば生検)組織(例えば解離組織)は、正常若しくは健常な生体組織、又は疾患若しくは病気を患う生体組織、例えば腫瘍由来の組織若しくは体液に由来し得る。ミクロオルガノスフェア中で使用する組織は、免疫系の細胞、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、多形核白血球、マクロファージ及び樹状細胞を含み得る。細胞は、幹細胞、前駆細胞又は体細胞であり得る。組織は、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞、又はマウス、ラット、ウサギ等のような動物からの細胞であり得る。
【0089】
概して、それらの組織(及び得られる細胞)は、ミクロオルガノスフェアを形成するための生検から採取され得る。従って、組織は、生検、摘出標本、吸引、ドレナージ、又は細胞含有体液のいずれかに由来し得る。適切な細胞含有体液は、血液、リンパ液、皮脂液、尿、脳脊髄液又は腹腔液のいずれかを含む。例えば、播種性転移、卵巣癌又は結腸癌の患者では、細胞を、腹水から単離し得る。同じく、子宮頸癌の患者では、子宮頸癌細胞を、例えば、移行帯の大切除によるか、又は錐体生検により、子宮頸部から採取し得る。典型的には、そのようなミクロオルガノスフェアは、起源の組織又は体液中に存在する複数の細胞型を含有する。細胞は、継代培養の中間ステップなしに被験者から直接に得てもよく、又は初代培養を産生するためにまず中間的な培養ステップを経てもよい。生体組織及び/又は細胞含有体液から細胞を収穫するための方法は、技術分野では周知である。例えば、生体組織から細胞を得るために使用する技術は、R. Mahesparanが記載する技術を含む(Extracellular matrix-induced cell migration from glioblastoma biopsy specimens in vitro. Acta Neuropathol(1999年)97:231~239頁)。
【0090】
概して、細胞をまず互いに解離又は分離してからミクロオルガノスフェアを形成する。細胞の解離は、技術分野では公知の任意の従来の手段により行い得る。好ましくは、細胞を、機械的及び/又は化学的に、例えば酵素処理により処理する。「機械的」は、関連細胞間の結合を、例えば、メス若しくはハサミを使用するか、又はホモジナイザーのような機械を使用して破壊する手段を含む。「酵素的」は、関連細胞間の結合を破壊する、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、DNAse及び/又はヒアルロニダーゼのいずれかを含む1つ又は複数の酵素により細胞を処理する手段を含む。1つ又は複数の酵素は、異なる反応条件下、例えば、37℃の水浴中での又は室温でのインキュベーションで使用し得る。
【0091】
解離組織は、死細胞及び/又は死につつある細胞及び/又は細胞破片を除去するために処理してもよい。そのような死細胞及び/又は死につつある細胞の除去は、当業者には公知の任意の従来手段、例えば、ビーズ法及び/又は抗体法を使用して行い得る。例えば、アポトーシス細胞又は死細胞では、ホスファチジルセリンが細胞膜の内葉から外葉へと再分配されることが公知である。アネキシンV-ビオチン結合、その後の磁性ストレプトアビジンビーズへのビオチンの結合は、生細胞からのアポトーシス細胞の分離を可能にする。同じく、細胞破片の除去は、当該分野の任意の適切な技術、例えばろ過により達成できる。
【0092】
流体マトリクス材料と組合せる前に、解離細胞を担体材料中に懸濁してもよく、及び/又は流体マトリクス材料を、担体材料と呼んでもよい。いくつかの変形形態では、該担体材料が、重合及びミクロオルガノスフェアの形成前に、細胞懸濁液中での細胞の沈降を遅らせる粘度を有する材料であり得る。担体材料は、解離した生検組織細胞を、重合まで懸濁液中に懸濁したままにさせるために十分な粘度を有し得る。その達成に必要とされる粘度は、様々な粘度での沈降率のモニタリング、及びミクロオルガノスフェア形成装置への細胞懸濁液のロードと、細胞を含む未重合材料の小滴の重合によるミクロオルガノスフェアの形成との間の、見込まれる時間遅延のために適切な沈降率をもたらす粘度の選択により、当業者によって最適化され得る。いくつかの変形形態では、細胞を懸濁状態及び/又は望みどおりの分配状態に保つために、低粘度の材料を使用する場合でさえも、未重合材料を、装置により流動させても撹拌してもよい。
【0093】
前記のように、いくつかの変形形態では、解離組織試料と流体マトリクス材料とを含む未重合混合物が、1つ又は複数の成分、例えば生体関連物質を含んでもよい。例えば、含まれ得る生体関連物質は、細胞外マトリクスタンパク質(例えばフィブロネクチン)、薬物(例えば小分子)、ペプチド、又は抗体(例えば、細胞の生存、増殖又は分化のいずれかを調節するため)、及び/又は特定の細胞機能の阻害剤のいずれかを含んでもよい。そのような生体関連物質は、例えば、細胞死の低下及び/又は細胞増殖/複製の活性化により細胞生存率を高めるため、又はin vivo環境を模倣するために使用してもよい。生体関連物質は、以下の成分、つまり血清、インターロイキン、ケモカイン、成長因子、グルコース、生理食塩、アミノ酸及びホルモンの1つ又は複数を含み得るか、又は模倣し得る。例えば、生体関連物質は、流体マトリクス材料中で1つ又は複数の薬剤を補足し得る。いくつかの変形形態では、流体マトリクス材料が、合成ゲル(ハイドロゲル)であり、且つ1つ又は複数の生体関連物質で補足されていてもよい。いくつかの変形形態では、流体マトリクス材料が天然ゲルである。従って、ゲルは、1つ又は複数の細胞外マトリクス成分、例えば、コラーゲン、フィブリノーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリン、アルギン酸塩、アガロース及びキトサンのいずれかからなり得る。例えば、マトリゲルは、細胞の生存率、増殖、発生及び遊走のために重要である生体活性ポリマーを含む。例えば、マトリクス材料は、1型コラーゲン、例えばラット尾部から得られる1型コラーゲンを含むゲルであり得る。該ゲルは、純粋1型コラーゲンゲルであってもよく、又は別の細胞外マトリクスタンパク質のような別の成分に加えて1型コラーゲンを含有するゲルであってもよい。合成ゲルは、自然界に天然には存在しないゲルに関し得る。合成ゲルの例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)のいずれか由来のゲルを含む。
【0094】
患者由来ミクロオルガノスフェア
患者由来ミクロオルガノスフェアの例を、
図1A~
図1C、
図2A~
図2C、
図3A~
図3C及び
図4A~
図4Eに示す。例えば、
図1A~
図1Cは、ミクロオルガノスフェア当たり単一の細胞を有するミクロオルガノスフェアを示す。図示するように、ミクロオルガノスフェアはすべて、およそ同じ寸法、例えば直径約300μmである。
図1Bは、同時に形成された3日培養後のミクロオルガノスフェアを示す。細胞は、寸法が拡大し、いくつかの場合、倍加及び/又は増殖する。
図1Cに示すように7日間培養までには、細胞は複数回倍加し、細胞の集塊又は集団を示す。
【0095】
同様の結果を
図2A~
図2C及び
図3A~
図3Cに示し、それぞれ、ミクロオルガノスフェア当たり5個の細胞又はミクロオルガノスフェア当たり20個の細胞から形成されたミクロオルガノスフェアを示す。
図4A~
図4Eでは、ミクロオルガノスフェアを形成直後及び5日間培養後に示し、5日後にはほぼ同じミクロオルガノスフェア(例えば同じ直径を有する)が各々、ミクロオルガノスフェア当たり10個の細胞を含む。
図4Aでは、形成直後の0日目のミクロオルガノスフェアを示し、なおも非混和性流体、この場合は油により包囲されている。ミクロオルガノスフェアから非混和性流体を取り除き、洗浄して5日間培養する。
図4Bは、2日後のミクロオルガノスフェアを示し、
図4Cは、3日後のミクロオルガノスフェアを示し、
図4D及び4Eはそれぞれ、4日目及び5日目のミクロオルガノスフェアを示す。
図4A~
図4Eは、ミクロオルガノスフェア内の、生検からの解離組織(細胞)が生存可能であり、且つほぼすべてのミクロオルガノスフェア内で、同等の速度で増殖することを示す。より詳細に記載するように、それらのミクロオルガノスフェアは、平均的寸法の単一の生検からさえも大量に形成され得て、且つ著しい数の生細胞を含む数百個又は数千個(例えば、500個、750個、1000個、2000個、5000個、10,000個以上)のミクロオルガノスフェアをもたらし得て、複数の迅速アッセイを並行して行うことを可能にする。
【0096】
図5A及び
図5Bは、マウス肝臓から解離した生検から本明細書に記載されるように形成したミクロオルガノスフェアの例を示し、例えば、重合した流体マトリクス材料(この例ではマトリゲル)内に分配されたマウス肝細胞を示す。例えば約300μmの直径を有する球へと形成された各ミクロオルガノスフェアは、重合マトリクス材料503を含み、その中に指定数の肝細胞507が分散している。
図5Aでは、生検、解離及びミクロオルガノスフェアの形成から1日後のミクロオルガノスフェアを示す。次いでそれらのミクロオルガノスフェアを、10日間培養し、その間、細胞(肝細胞)は、生存し続けて増殖し、多くの場合は複数回倍加し、
図5Bに示すような構造505を形成する。
【0097】
ミクロオルガノスフェアは、概して、解離した、例えば、生検組織(例えば細胞)を、一定又は既知の細胞数及び/又は濃度(細胞/ml又は細胞/mm3)で、ミクロオルガノスフェア内に含み得る。前記のように、このマトリクス材料は、天然ポリマー、例えば、アルギン酸塩、アガロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、エラスチンの1つ若しくは複数、又は合成ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリアクリルアミドの1つ若しくは複数であり得る。有機合成ポリマー及び無機合成ポリマーの両方とも使用可能である。
【0098】
いくつかの変形形態では、ミクロオルガノスフェア内に初めに含まれる細胞数は、1個の細胞~数百個までの間で選択してもよい。特に、いくつかのアッセイ(例えば薬物毒性アッセイ)では、約1~75個の間又は約1~50個の間(例えば、より小さい細胞数)を含むと有益であり得る。ミクロオルガノスフェア当たりの細胞数は、使用者が設定又は選択し得る。後記のいくつかの変形形態では、装置が、各ミクロオルガノスフェア中に含まれる、初代組織からの細胞数を設定するための1つ又は複数の制御を含む。細胞数は、使用者がミクロオルガノスフェアをいかに使用する意図であるかに基づいて選択又は設定可能である。例えば、細胞数が非常に少ないミクロオルガノスフェア(例えばミクロオルガノスフェア当たり1細胞、ミクロオルガノスフェア当たり1~5細胞等)は、クローン多様性(例えば腫瘍不均一性)の研究に特に適切であり得る。各ミクロオルガノスフェアは、単一の細胞から増殖するため、どのクローンが薬物耐性であるかを観察でき、且つそれらの特異的ミクロオルガノスフェアを、特定クローンに関するゲノム(変異)多様性を特定するために(例えばゲノムシーケンシングにより)調査し得る。ミクロオルガノスフェア当たりの低程度から中程度までの細胞数(例えば、約3~30個の間の細胞、5~30個の間の細胞、5~25個の間の細胞、5~20個の間の細胞、10~25個の間の細胞等)は、特に、毒性試験を含む迅速薬物試験に有用であり得る。なぜなら、それらのミクロオルガノスフェアは、典型的に増殖が速いからである。ミクロオルガノスフェア当たりの多い細胞数(例えば約20~100個の間の細胞、例えば、30~100個の細胞、40~100個の細胞、50個超の細胞等)は、各ミクロオルガノスフェア内で組織組成を模倣するために特に適切であり得る。なぜなら、そのミクロオルガノスフェアは、潜在的に上皮(又は癌等の)細胞及び間葉(又は間質、免疫、血管等の)細胞を含む異なる系譜を含有し得るからである。
【0099】
ミクロオルガノスフェアは、含まれる細胞数に見合う任意の適切な寸法で形成できる。例えば、寸法は、直径約20μmの小ささから500μmまで(例えば、平均で50μm又は100μm、例えば約100~200μmの間等)であり得る。いくつかの変形形態では、寸法が約300μmであり、その各ミクロオルガノスフェア中に約10~50個の間の細胞(例えば、約10~30個の間の細胞)が含まれている。細胞数及び寸法は、変更可能及び/又は制御可能である。いくつかの変形形態では、細胞数及び/又はミクロオルガノスフェアの寸法を、ミクロオルガノスフェア形成装置を用いて1つ又は複数の制御によって設定し得る。例えば、ミクロオルガノスフェアの寸法及び/又はミクロオルガノスフェア内の細胞の密度は、流速及び/又は解離組織試料(例えば生検からの細胞)の濃度の調整によって調整可能である。
【0100】
図1A~5Bに示すように、本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、培養後でさえも、ミクロオルガノスフェアの全容積にわたり、生細胞及び健常細胞が可能である。ミクロオルガノスフェアの寸法及び/又はミクロオルガノスフェア中に含まれるべき細胞数は、ミクロオルガノスフェアがどのように期待されるか、又はどのような使用を意図されているのかに基づいて選択され得る。例えば、生検材料の細胞間の関係を調べるためにミクロオルガノスフェアを使用する変形形態では、複数の細胞を有するミクロオルガノスフェアを形成してもよく、且つ長期間(例えば1週間以上まで)培養してもよい。
【0101】
本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェアは、解離組織試料、例えば生検試料を、ミクロオルガノスフェアを形成するために制御されたやり方で重合可能な流体マトリクスと組合せることにより生成してもよい。
図6は、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する一方法を示す。場合により、方法は、患者から試料を採取する工程、例えば患者組織から生検を採取する工程(601)を含んでもよい。前記のように、かかる生検は、例えば、生検針又は生検パンチを使用して採取され得る。例えば、生検は、その摘出のために患者組織に挿入される14ゲージ、16ゲージ、18ゲージ等の針を用いて採取可能である。患者から組織を摘出後、材料を解離するために、機械的及び/又は化学的のいずれか一方で組織を処理し得る。解離した細胞は、記載の患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するために直ちに使用してもよく、いくつかの変形形態では、すべて又はいくつかの細胞を、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション等による細胞の遺伝子改変(603)を介して改変してもよい。
【0102】
生検材料からの解離組織試料は、流体(例えば液体)マトリクス材料と組合せて、未重合混合物を形成してもよい(605)。その未重合混合物は、未重合状態に保たれ得るため、解離組織からの細胞は、混合物内で懸濁状態を維持し得ることになる。いくつかの変形形態では、例えば室温以下(例えば1~25℃の間)で冷却し続けることにより、細胞が懸濁された未重合状態のままであり得る。
【0103】
次いで未重合混合物は、小滴として、例えば非混和性物質、例えば油中へと、小滴の寸法、従って形成される患者由来ミクロオルガノスフェアの寸法の形成を制御するやり方で分配され得る(607)。例えば、未重合材料の流れを、非混和性物質(例えば油)の1つ又は複数の(例えば2つの合流する)流れへと組合せることにより均一寸法の小滴が形成され得るため、未重合材料の小滴が、非混和性物質と交差する際にいかに形成されるかを、2つの流れの流速及び/又は圧力が決定し得る。非混和性物質中で患者由来ミクロオルガノスフェア(PMOS)を形成するために、小滴が重合され得る(609)。いくつかの変形形態では、非混和性物質を、未重合混合物(例えば、未重合材料中の流体マトリクス材料)が重合する温度まで加熱又は加温してもよい。患者由来ミクロオルガノスフェアが形成されたら、非混和性流体から分離してもよく、例えば、PMOSを洗浄して非混和性流体を除去し(611)、培養培地中に配置して、患者由来ミクロオルガノスフェア内の細胞を増殖させてもよい。患者由来ミクロオルガノスフェアは、任意の望ましい時間にわたり培養してもよく、又は凍結保存及び/若しくは直ちにアッセイしてもよい。いくつかの変形形態では、患者由来ミクロオルガノスフェアを、短期間(例えば、1~3日の間、1~4日の間、1~5日の間、1~6日の間、1~7日の間、1~8日の間、1~9日の間、1~10日の間、1~11日の間、1~14日の間等)培養してもよい。それにより、解離した生検組織に由来する細胞が、5代若しくは6代まで増殖及び/又は分裂(例えば倍加)可能になる。培養後、細胞の凍結保存(615)若しくはアッセイ(617)のいずれか一方を行うか、又は凍結保存(615)及びアッセイ(617)の両方を行ってもよい。使用可能なアッセイの例も、本明細書に記載される。
【0104】
本明細書に記載されるこれらの方法及び装置のいずれかでは、重合後にミクロオルガノスフェアを、非混和性流体(例えば油)から回収してもよい。例えば、いくつかの変形形態では、ミクロオルガノスフェアを、乳化破壊及び/又は解乳化により回収してもよく、例えば、乳化小滴を形成する工程、及び該小滴形成後いかなる油(及び別の混入物)も除去するためにミクロオルガノスフェアを回収する工程により回収してもよい。それが、非混和性流体によって阻害されることのない、重合小滴(ミクロオルガノスフェア)内での細胞の増殖を可能にし得る。
【0105】
本明細書に記載される方法及び装置は、未重合混合物を、非混和性流体(例えば、油又は別の疎水性材料)の1つ又は複数の流れへと流入させる工程により、複数の小滴、従って複数のミクロオルガノスフェアを形成する方法を示すが、いくつかの変形形態では、本明細書に記載されるような小滴寸法制御を可能にし得る別の方法により小滴を形成してもよい。例えば、いくつかの変形形態では、小滴が、印刷(例えば、表面への小滴の印刷)により形成され得る。それが、乳化/解乳化する追加回収工程の必要性を軽減又は除外し得る。例えば、小滴は、表面、例えば平面又は形状面上に印刷及び重合させ得る。それらの変形形態のいずれかでは、圧力、音、電荷等を使用して小滴を分注してもよい。いくつかの変形形態では、小量の未重合混合物を表面上、空気中、及び/又は液体媒体(非混和性流体を含む)中へと放出するように適合させた自動ディスペンサ(例えばピペッティング装置)を使用して小滴を形成してもよい。
【0106】
患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための方法は、自動化されてもよく、1つ又は複数の装置を使用して行ってもよい。特に、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成する方法は、患者由来ミクロオルガノスフェアの寸法(従って、細胞の密度又は数)の選択及び/又は制御を可能にする装置により行ってもよい。例えば、
図7Aは、記載される患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するための装置700の一例を示す。
【0107】
図7Aでは、装置が、典型的に、解離組織試料と流体マトリクス材料との未重合混合物(すでに組合せ済み)を注入するための注入口を含む、又は例えば保持液中の解離組織試料と流体マトリクス材料とを別個に受容し得る。いくつかの変形形態では、装置が、未重合混合物を保持するための保持チャンバー706、及び/又は解離組織(例えば生検)試料及び流体マトリクス材料を保持するための保持チャンバー(図示せず)を含む。チャンバーから流出して装置に流入する流速を制御及び/又は加速するために、それらの保持チャンバーの一部又は全部を加圧してもよい。装置は、未重合混合物を受容してもよく、又は成分を受容して混合してもよい。いくつかの変形形態では、装置が、未重合混合物中の細胞の濃度を制御し得て、望みの密度を達成するために、混合物を希釈し得る(例えば、更なる流体マトリクス材料の添加により)。例えば、装置は、未重合混合物中の細胞の密度(例えば光学密度)を読み取るためのセンサー(例えば光学式リーダ)を含み得る(図示せず)。該センサーは更に、未重合混合物中の細胞の希釈を自動的又は半自動的に(例えば、使用者に対する指示により)制御する制御装置724と連結され得る。装置は更に、未重合混合物を受容するためのポートを含み得る。該ポートは、バルブを含み得るか、又はバルブと連結可能であり、該バルブが、制御装置724(又は別個の制御装置)により制御されてもよい。未重合混合物及び/又はXXXを保持するチャンバーは、
【0108】
装置700は、非混和性流体を保持及び/又は受容するためのチャンバー708及び/又はポートを含み得る。いくつかの変形形態では、非混和性流体が、加圧チャンバー中に保持され得るため、流速を制御できることになる。加圧チャンバーのいずれかは、制御装置724によって制御可能であり、該制御装置は、圧力、従って装置を通過する流れを制御するために1つ又は複数のポンプ726を使用し得る。装置を通過する流れを監視するために、1つ又は複数の圧力センサー及び/又は流量センサーが、システムに含まれていてもよい。
【0109】
図7Aでは、装置全体700がハウジング702に包囲されていてもよく、又は装置の一部704がハウジングに包囲されていてもよい。いくつかの変形形態では、該ハウジングが、例えば、非混和性流体及び/又は未重合混合物の添加用に、装置への1つ又は複数の開口部又は入口部を含んでもよい。
【0110】
述べたように、それらの装置700のいずれかは更に、製造方法のすべての部分又は主要部分をモニタリングするために、1つ又は複数のセンサー728を含んでもよい。いくつかの変形形態では、該センサーが、光学センサー、機械センサー、電圧センサー及び/又は抵抗センサー(又は静電容量センサー又はインダクタンスセンサー)、力センサー等を含み得る。それらのセンサーは、患者由来ミクロオルガノスフェアの形成を含む、アセンブリの進行中の操作を監視するために使用され得る。装置700は更に、非混和性流体若しくは未重合混合物(若しくは流体マトリクス材料)のいずれか一方、又は非混和性流体及び未重合混合物(及び流体マトリクス材料)の両方ともの温度を制御するために、1つ又は複数の温度調節器/温度調整装置718を含んでもよい。
【0111】
それらの装置のいずれかは更に、
図7C及び
図9において以下に例証される監視可能である(例えば、1つ又は複数のセンサーを使用)1つ又は複数の小滴形成アセンブリ720を含んでもよい。小滴ミクロオルガノスフェア形成アセンブリは、ディスペンサ(例えばPMOSディスペンサ)722を含み得る(又はディスペンサ(例えばPMOSディスペンサ)722と連結され得る)。該ディスペンサは、例えば、マルチウェルプレート716へと分注してもよい。
【0112】
概して、小滴ミクロオルガノスフェア形成アセンブリ720は、1つ又は複数のマイクロ流体チップ730、又は未重合混合物の流れを形成及び制御して実際の小滴を形成する構造を含み得る。
図7Bは、患者由来ミクロオルガノスフェアを形成するためのマイクロ流体チップ730の一例を示す。
図7Bでは、チップ730が、ミクロオルガノスフェアを形成するための一対の並列構造を含む。
図7Cは、PMOSを形成するマイクロ流体チップの小滴形成領域を示し、「+」合流点又は交差点の領域737を流路出口741へと(この例では、直角として)開放する未重合流路出口741及び非混和性流体出口743、743'を含む。いくつかの変形形態では、非混和性流体流路からの入口が、未重合材料との角度(及び交差点)に対して斜めであってもよい。
図7Cでは、この記載中の、寸法を示すすべての図面のように、該寸法は、特に指定しない限り、例示的にすぎず限定的であるとは意図されない。
【0113】
図7Bでは、マイクロ流体チップ730が、チップに入る非混和性流体用の注入口(入口ポート)733を含む(例えば、
図7Aに示す注入口ポート又は貯蔵チャンバーから)。チップに入る第2の注入口ポート735は、未重合材料を受容するために構成され得て、半蛇行性経路を下って、未重合材料を合流点領域へと輸送する。同じく、非混和性流体用の注入口ポートが、前記の、非混和性流体チャンバーからの出口又は注入口と確実に連結され得る。
【0114】
チップに入る、未重合材料用の注入口ポート735は、注入口275を接続する配送路741を通過して合流点領域へと連結されてもよい(
図7Cに図示)。同じく、非混和性流体用の注入口733は、合流点領域737へと向かう2つ(以上)の接続路743、743'に接続してもよい。合流点領域737を離れる流路は、例えば、培養及び/又はアッセイに向けて、ミクロオルガノスフェアを1つ又は複数のチャンバーへと分注するために、(非混和性流体中の)形成されたミクロオルガノスフェアを、流路を下って、ディスペンサ(図示せず)に接続してもよい出口731へと渡し得る。
【0115】
図7B及び
図7Cに示す例では、形成された、重合するとミクロオルガノスフェアになり得る小滴が、装置から分注される前に(図示せず)、温度制御された長いマイクロ流体環境を下方へ輸送され得る。例えば、
図8は、各々が既定の数の細胞805を含有する複数のミクロオルガノスフェア803を含有する、透明に示された流路領域839(例えば、
図7Bの要素739)の一例を示す。
【0116】
図9では、合流領域937が、前記のように形成されているため、未重合混合物911を有する流路が、未重合混合物と非混和性である流体、例えば油を有する1つ又は複数(例えば2つ)の流路909と交差することになる。未重合混合物が、第1の速度で第1の流路911から流出するべく加圧されるため、交差流路909、909'中を流動する非混和性流体が、定義された量の未重合混合物を通過させて、出口流路939へと渡される小滴903を形成するためにピンチオフさせる。従って、いくつかの変形形態では、例えば直径<1mmの細かく刻んだ(例えば解離させた)臨床(例えば生検又は切除)組織試料を、未重合混合物を形成するために、温度感受性ゲル(即ちマトリゲル、4℃)と混合してもよい。この未重合混合物を、容積及び材料組成が均一である小滴(例えば油中水滴)を生成し得るマイクロ流体デバイスに配置してもよい。同時に、解離腫瘍細胞をその小滴中に分配してもよい。未重合材料中のゲルは、(例えば37℃で)加熱すると凝固し得て、結果として生じる患者由来ミクロオルガノスフェアが形成され得る。いくつかの変形形態では、この方法を、組織(例えば生検材料)から、10,000個超(例えば、20,000個超、30,000個超、40,000個超、50,000個超、60,000個超、70,000個超、80,000個超、90,000個超、100,000個超)の均一小滴(患者由来ミクロオルガノスフェア)を産生するために使用してもよい。これらの患者由来ミクロオルガノスフェアは、従来の3D細胞培養技術と両立可能である。
図10は、前記のように形成された、非混和性物質1008(例えば油)中に懸濁させた複数の患者由来ミクロオルガノスフェア1005を示す。
【0117】
前記の例示的マイクロ流体チップでは、合流点を、マイクロ流体のフロー集束が、制御可能な寸法のミクロオルガノスフェアを形成するT合流点又はX合流点として示す。いくつかの変形形態では、マイクロ流体チップというよりはむしろ、例えば、非混和性流体への及び/又は固体基質若しくはゲル基質へのロボット式マイクロピペッティングにより、小滴が形成されてもよい。その代わりに、いくつかの変形形態では、未重合材料の小滴が、マイクロキャピラリ生成により、必要な寸法及び再現性で形成されてもよい。未重合材料から、指定の寸法範囲及び再現性でミクロオルガノスフェアを形成するための代案的に使用可能な技術の別の例は、例えば、音響効果、磁性体、慣性、エレクトロウェッティング又は重力のような外力を介したコロイド操作を含み得る。
【0118】
図11A及び
図11Bは、前記のように形成された油中の患者由来ミクロオルガノスフェアの例を示す。単一生検試料由来のこれらの患者由来ミクロオルガノスフェア内の細胞は、
図15A~
図15B及び
図16A~
図16Bに示す生体色素染色により見られるように、生存可能である。例えば、
図12A~
図12Bは、(
図11A~
図11Bに示すミクロオルガノスフェアと同じく)腫瘍細胞を有するミクロオルガノスフェアを示し、そのミクロオルガノスフェアは、非混和性物質(例えば油)を除去するために洗浄してもよい。その非混和性物質は、ミクロオルガノスフェア内の細胞が損なわれないように、ミクロオルガノスフェア形成後は比較的すぐに除去してもよい。
【0119】
これらの例では、ゲル小滴を、油相から回収して、例えばPFO(ペルフルオロオクタノール)及び遠心分離を介してPBS中に再懸濁する。それによって、非混和性流体を、ミクロオルガノスフェアから分離できる。従って、腫瘍ベースミクロオルガノスフェアを含めた、それらのミクロオルガノスフェアは、前記の
図1A~
図1C、
図2A~
図2C、
図3A~
図3C及び
図4A~
図4E並びに
図13に示すように、順調に増殖できる。これは重要な改善であるが、なぜなら、薬物スクリーニングは、患者の転帰を予測するために、患者腫瘍由来のその特性を維持する、生存且つ増殖中の原発腫瘍細胞を用いて行う必要があるからである。これらのミクロオルガノスフェアの数と均一性の大きさが、後記するように、スクリーニングを可能にすると同様に確実にもする。
【0120】
本明細書に記載されるマイクロ流体チップ又はマイクロ流体デバイスのいずれかでは、流路がコーティングされていてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスの流路が、疎水性材料でコートされていてもよい。
【0121】
概して、本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、直径が高度に均一であり、且つ例えば直径の非常に小さい寸法ばらつきを有し得る。それを、例えば、小滴の直径寸法の一例の分布を示す
図14に例証する。
【0122】
述べたように、
図15A~
図15Bは、本明細書に記載されるように形成されたミクロオルガノスフェアを示し、
図16A~
図16Bでは、それらのミクロオルガノスフェアを、トリパンブルーで染色して(矢印)、ミクロオルガノスフェアが生きていることを示す。このやり方で小滴として形成されるミクロオルガノスフェアは、成長因子、及び組織がそこから生じた生物学的環境を模倣するマトリクスを含有してもよい。患者試料(例えば生検試料)は、組織獲得から数時間以内に、(数百、数千、又は数万のミクロオルガノスフェアを含む)ミクロオルガノスフェアへと形成され得る。ミクロオルガノスフェアは、ミクロオルガノスフェア当たりわずか1個又は4~6個の間の細胞(例えば、腫瘍をサンプリングした場合は癌細胞)、又は数百もの細胞を有してもよい。これらの方法は、現在までのところ試験した実質的にすべての型の癌及び非癌組織に対して(n=20)機能することが示され、結腸、食道、メラノーマ、子宮、肉腫、腎臓、肝臓、卵巣、肺、横隔膜、腹膜、肺縦隔(mediastinal lung)、乳腺の癌組織を含む。ミクロオルガノスフェアは、任意の望みの期間にわたり培養可能であり、典型的にはわずか3~4日で増殖及び成長を示す。ミクロオルガノスフェアは、数か月にわたり維持及び継代可能である。より詳細に後記するように、ミクロオルガノスフェアは、組織(例えば生検)の採取からわずか4~6日以内に、数千の薬物組成物をスクリーニングするために使用できる。
【0123】
本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、その形成後の任意の時点において、例えば凍結保存によりバンク化し得る。腫瘍ミクロオルガノスフェアは、複数の異なる患者から採取してもよく、且つ毒性及び/又は効能を特定する目的で、多数の製剤をスクリーニングするために個別又は集団として使用し得る。非腫瘍細胞(健常組織)を、並行して生検、貯蔵及び/又はスクリーニングしてもよい。従って、これらの方法及び装置は、ハイスループットスクリーニングを可能にし得る。いくつかの変形形態では、ミクロオルガノスフェアを形成して、2回継代(例えば2回の倍加)してから、凍結保存してもよい。述べたように、薬効、薬物応答、バイオマーカ、プロテオーム信号、ゲノム信号等をアッセイするために使用可能である数百、数千、又は数万のミクロオルガノスフェアを生成する目的で、正常、健常組織を、それら同様のミクロオルガノスフェアを形成するために使用してもよい。
【0124】
それらのミクロオルガノスフェアは、生物学的に重要なやり方で生き残り、特に薬物応答に関して、臨床的及び生理学的に重要なデータを提供可能にすることが特に重要であり、
図22A~
図22D及び
図23A~
図23Dで記載する。特に、本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、組織抽出物/生検由来の細胞を非常に良好に増殖させ、特にオルガノイド又はスフェロイドと比べてより代表的なデータを提供する。特定の理論に拘束されることなく、それは、細胞が、ミクロオルガノスフェア中ではより強制的な細胞密度を有し得て、信号を共有しながら、互いに阻害することのないコミュニケーションを細胞に可能にするためかもしれない。ミクロオルガノスフェアは更に、非常に大きな表面積対体積率を有し、ミクロオルガノスフェア内への、成長因子の伝達、及び別の信号の浸透をより容易にする(例えば、ミクロオルガノスフェアはあまり拡散律速でない)。
【0125】
アッセイ
本明細書に記載される患者由来ミクロオルガノスフェアは、様々な異なるアッセイで使用でき、特に、正常組織及び/又は異常(例えば癌)組織に対する毒性を含む、製剤の効果を決定するために使用できる。例えば、薬物スクリーニングは、マルチウェル(例えば96ウェル)プレートの全ウェル又は一部のウェルへのミクロオルガノスフェアのアプライを含み得る。代替的には、カスタムプレートを使用してもよい(例えば、10,000マイクロウェルアレイを100×100ウェルで形成してもよい)。ミクロオルガノスフェア(例えばゲル小滴)は、複数のマイクロウェルアレイ中へと、又はいくつかの変形形態ではマイクロウェルアレイ上へとアプライして、培養培地を加えてインキュベートしてもよい。ミクロオルガノスフェアは、3~5日にわたって培養してもよい。いくつかの変形形態では、次いで、5日目に、ウェル(例えばマイクロリアクター)に、薬物パネル(drug panel)の効果を調べるために、例えば、FDA承認の抗癌剤のセットに基づく薬剤化合物を添加してもよい。例えば、試験対象薬物は、癌研究、創薬及び配合剤研究を可能にする意図の147剤からなる、米国立癌研究所(癌治療・診断部門(11))のスクリーニングに基づいてもよい。7日目に、ミクロオルガノスフェアは、標準的な蛍光顕微鏡検査法を介して撮像可能であり、薬物応答に基づいてランク付けしてもよい。
【0126】
【0127】
この例では、スクリーニングアッセイを自動化し得る。自動化は、スクリーニングされる薬物の数を数個から数百個に増やし得る反復可能且つ自動のワークフローを可能にする。
図17A~17Eが、このワークフローの一例を示す。
図17Aでは、腫瘍生検を採取し、前記のように複数(例えば>10,000個)のミクロオルガノスフェアを形成する(
図17Aでは、ミクロオルガノスフェアを形成する合流点領域を示す)。その後、ミクロオルガノスフェアを回収して洗浄してもよい(例えば、ミクロオルガノスフェアをその中で形成させた非混和性(例えば油)材料を除去するために)。次いで、ミクロオルガノスフェアを、1つ又は複数のマイクロウェルプレート中にプレーティングし得る。
図17Cに示すように、ミクロオルガノスフェアを、1世代又は2世代以上(例えば1継代又は2継代以上)にわたり培養してもよい。それは、0日目から3日目、4日目又は5日目に起こることを示す。その後、
図17Dに示すように、例えば、薬物を、レプリカントウェル(replicant well)のサブセットにアプライすることにより、ミクロオルガノスフェアをスクリーニングし得る。その後、
図17Eに示すように、7日目に、薬効を同定するために、ミクロオルガノスフェア中の細胞を、撮像及び/又は自動若しくは手動で採点し得る(例えば、薬物スクリーニング及び増殖プロファイリング)。
【0128】
図17A~17Eに示すワークフローは、統合型デバイスがミクロオルガノスフェアを増殖、添加及び/又は再検討するために使用されることを可能にし得る。一例示的デバイスでは、新鮮に生検又は切除した患者腫瘍試料を解離して、ミクロオルガノスフェアを形成するための試薬を含むゲル中に播種してもよい(前記のように)。形成されたミクロオルガノスフェアの一部は凍結保存し得る。残りは回収して、直前に記載の薬物試験又はスクリーニングに向けてマイクロウェルプレート中に播種するまでインキュベートし得る。ミクロオルガノスフェアを用いて、増殖及び生存率のアッセイを行い、撮像及び追跡してもよい。患者の腫瘍に対して効果的な治療薬を同定するために、薬物処理に対するその応答、例えば、IC-50、細胞傷害性及び増殖曲線を測定し得る。
【0129】
本明細書に記載される方法及び装置は、再現性を含む多数の利点を有する。試料調製プロセスは、マイクロ流体試料分配により自動化でき、診断検査及び手動ピペッティング用の専門スタッフの必要性を軽減し得る。それは、臨床環境では特に有益であり得る。更に、それは、信号小滴(signal droplet)間の均一性を可能にし、アッセイの感度を高める。加えて、それらのアッセイは、ミクロオルガノスフェアの生成にかかる時間を最小限に抑え得る。予備データに基づくと、これらの方法は、100,000個超のマトリゲル-腫瘍小滴(ミクロオルガノスフェア)のライブラリーを、約15分未満のうちに生成できる。これらの方法は更に、高度に拡張可能であり、複数の患者生検を並行して走らせるために多重化可能である。
【0130】
最終的に、これらの方法は、適応性があり別の技術と両立可能である。研究用ツールとして、小滴ベースのマイクロ流体は、概して、広範囲のハイドロゲル材料、例えばアガロース、アルギン酸塩、PEG及びヒアルロン酸と相溶性である。開始ゲル組成物それ自体は、ミクロオルガノスフェアの増殖に同伴し促進するために、容易に改変可能である。更に、マイクロ流体デバイスの寸法の変更により、小滴寸法を調整できる。全体として、ゲル材料組成物及びマイクロリアクタ寸法の豊富な選択が可能になる。
【0131】
例えばミクロオルガノスフェアを使用する、本明細書に記載されるミニチュア化アッセイは、患者腫瘍生検を最大限にし、より多くの薬剤化合物のスクリーニングを可能にする。例えば、600μLの腫瘍試料を、容積が約4mLである約143,000個の個々のマイクロリアクタに分配できる。組織試料の最大化により、複数の実験的反復を調べることができ、検定力が高まる。これらの技術は、腫瘍内不均一性、薬物摂動(drug perturbation)の検査を可能にし得て、まれな細胞的事象、例えば薬物耐性を同定し得る。ミクロオルガノスフェアは、概して、単一細胞RNAトランスクリプトーム解析及びエピジェネティックプロファイリングを含めたダウンストリームアッセイと両立可能である。加えて、ミクロオルガノスフェアによって提供される、組織(例えば生検)試料効率の最大化により、将来の新薬アッセイ、及び/又は遺伝子スクリーニングを含む確証解析に向けて、ミクロオルガノスフェアの一部を貯蔵してもよい(例えば、バイオバンキング用の凍結保存により)。
【0132】
例えば、
図18及び
図19は、ミクロオルガノスフェアを含む、本明細書に記載される方法及び装置を使用する治療方法の例を示す。プレシジョンメディシン及び個別化医療を対象に、これらの方法及び装置は、臨床転帰及び薬物応答を改善するために、適切な薬物の選択に向けた臨床指標として使用できる。一実施形態として、転移性癌と診断された患者から、病理組織学用、及び本明細書に記載されるように生検から形成される複数のミクロオルガノスフェアのスクリーニング用に生検を採取する。7~10日以内には、最も効果的な標準治療を同定するために、該生検からスクリーニングを行い得るため、該患者は、14日ごろには治療を開始できる。
【0133】
その一例を
図18に示す。この例では、腫瘍が0日目に同定され得て(例えばCTスキャンにより)(1801)、生検を5日目に採取し(1805)、同じ日に数百、数千、又は数万のミクロオルガノスフェアを形成し得て、1~5日にわたり培養可能であり、使用され得る1つ又は複数の薬物組成物を同定するためにスクリーニングできる(1805)。この同一工程(ミクロオルガノスフェアの形成及びスクリーニング)を、疾患進行を通じた複数の臨床決定時点において、プレシジョンメディシンの指針に使用し得る。この例では、同定された1つ又は複数の薬物組成物を使用する療法が、14日目に開始可能であり(1809)、後に、腫瘍が治療に対して応答することを確認するために(1811)、治療過程において患者をモニタリングしてもよい(例えば、約90日目のフォローアップCTスキャン)。応答すれば、療法を継続し(1813)、進行中の経過を監視し得る(1815)。
【0134】
述べたように、アッセイ目的でのミクロオルガノスフェアの使用は、治療過程において、治療経過の間、複数時点で繰り返し得る。それを
図19に示す。例えば、患者を、切除可能な原発腫瘍と最初に診断した際(1907)、最も効果的なネオアジュバント療法を特定するために(1921)、この技術(例えば、ミクロオルガノスフェアの生成及びスクリーニング(1905))を使用し得る。従って、生検が採取可能であり、数百、数千、又は数万のミクロオルガノスフェアを形成し得て、潜在的な薬物組成物のパネルを用いてスクリーニングし得る。原発腫瘍を切除したら(1923)、この技術(1905')は、アジュバント療法を選択すべきであるか及びどのアジュバント療法を選択すべきであるかを示唆し得る(1925)。原発腫瘍の外科切除後に再発又は転移が起きた場合(1927)、同じ技術(例えば、新鮮な生検からのミクロオルガノスフェアの生成及びスクリーニング(1905''、1905'''、1905''''))を、第一選択療法(1929)、第二選択療法(1931)及び第三選択療法(1933)を含む、標準治療の指針に使用してもよい。患者がやがて、すべての標準治療に対して耐性又は抵抗性になった場合、抵抗性腫瘍を治療するための適応外薬を同定するために(1935)、この技術(1905''''')を行ってもよい。この技術は更に、特異的治療用の患者を同定するために、コンパニオン診断としても使用できる。最後に、この技術は、スクリーニング、ゲノムプロファイリング、新薬創出、薬物試験及び臨床試験デザイン用の、オルガノスフェアベースのリビング癌バンクの確立に向けて、患者由来ミクロオルガノスフェアを導出及び維持するために使用し得る。
【0135】
これらの技術、及び膨大な数のミクロオルガノスフェアの生成は、スクリーニングから、無理なく素早い結果を提供するために、比較的低侵襲的に行い得るため(例えば切除又は生検により)、これらの方法は、標準治療に容易に適応可能である。例えば、組織(例えば生検)入力からの細胞物質の容積がかなり小さく、例えば、10μL~5mlの間の容積に解離され得る。
【0136】
概して、本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアの、スクリーニングへの使用は、自動又は手動で行い得る。共焦点顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、液体レンズ、ホログラフィ、ソナー、明視野・暗視野結像、レーザ、平面状レーザシートの1つ又は複数によるイメージングを含む実質的に任意のスクリーニング技術が、画像ベース解析のハイスループット実施形態を含めて(例えば、コンピュータビジョン及び/又は監視ありモデル若しくは監視なしモデル、例えばCNNを使用)、使用可能である。ダウンストリームスクリーニングは、培養培地のサンプリング、及び/又はミクロオルガノスフェアからの細胞を用いた遺伝子スクリーニング若しくはタンパク質スクリーニング(例えば、scRNA-seq、ATAC-seq、プロテオミクス等)を含み得る。
【実施例】
【0137】
図20及び
図21は、本明細書に記載される複数のミクロオルガノスフェアを形成するための装置の別の一例を示す。
図20では、装置が、複数のミクロオルガノスフェアを形成する合流点を含み得て、その合流点へと、非混和性物質(例えば油)(2002)を装置のリザーバ及び/又はポート(2004)に添加し得る。同じく、未重合材料(2006)(この例では、解離生検細胞及び流体マトリクス材料を含む)を、装置のリザーバ又はポート(2008)に添加し得る。いくつかの変形形態では、第2又は追加の材料(例えば、生物活性剤)を、第3のポートセット(2010)を介して添加してもよい。これらの成分を、非混和性物質中の、ミクロオルガノスフェアへと重合され得る小滴を形成する合流点(前記の合流点と同様)で組合せてもよい。
図20では、相応する入力及び出力を有する3つ(以上)の並行する合流点を示す。
【0138】
図21は、
図20に示す装置を使用してミクロオルガノスフェアを形成する方法を示す。この変形形態では、得られるミクロオルガノスフェアが、標的(例えば腫瘍)生検細胞と同様に、ミクロオルガノスフェアを形成するために組合せる1つ又は複数の付加的な生物活性剤も含む。例えば、第1の流路2103が、未重合材料(解離生検細胞及びマトリクス材料を含む)を含み得て、第2の流路2107が、付加的な活性生体物質を含み、非混和性物質(例えば油)を有する一対の交差流路2109、2109'が、合流点で合流し、ミクロオルガノスフェア2107を形成するために重合するサイズ制御された小滴を形成する。
【0139】
この例では、該付加的な活性生体物質が、例えば凍結培地(例えば、ミクロオルガノスフェアのバンク化を援助する)、及び/又は追加細胞(例えば、免疫細胞、間質細胞、内皮細胞等)との共培養、追加の支持ネットワーク分子(例えば、ECM、コラーゲン、酵素、糖タンパク質、生体模倣足場(biomimetic scaffold))、追加の成長因子、及び/又は薬剤化合物であり得る。
【0140】
(実施例2)
スクリーニング結果
前記のように、患者由来ミクロオルガノスフェア、及びその、薬物組成物をスクリーニングするための使用方法は、1つ又は複数の薬物療法に対する患者腫瘍の応答を正確に予測するために使用し得る。いくつかの場合、ミクロオルガノスフェアの使用が、従来の培養した薬物スクリーニングが薬物応答を正確には予測しない場合に正確な結果を提供し得る。例えば、
図22A~22Dでは、ミクロオルガノスフェアは、患者応答と相関し得たが、細胞株はそうではなかった。
図22Aでは、薬物(例えば、オキサリプラチン)を添加した従来の細胞株を調べた。薬物系列(drug line)は効果を示さず、腫瘍が、調べた全用量域で薬物に対して抵抗性であることが予測された。
【0141】
比較に、
図22Bに示すように、患者生検から複数のミクロオルガノスフェアを生成した。この例では、患者由来ミクロオルガノスフェアが、腫瘍ミクロオルガノスフェアからの細胞生存率の著しい低下を示し、薬物感受性を予測する。実際、この薬物で治療すると、
図22C(治療前)及び
図22D(治療後)に示すように、腫瘍は治療に応答した。
【0142】
(実施例3)
ミクロオルガノスフェアと患者応答との相関性
同様の一組の実験では、生検材料からミクロオルガノスフェアを生成し(
図23A)、得られたミクロオルガノスフェアを使用して薬効スクリーニングを行った。
図23Bは、それらのミクロオルガノスフェアに対する第1の薬物(オキサリプラチン)の効果を示し、薬物の存在下にミクロオルガノスフェアの生存百分率は変化せず、薬物耐性を予測した。同じく、第2の薬物であるイリノテカンでの処理が、
図23Cに示すように、ミクロオルガノスフェアに対する効果の欠如を示し、薬物耐性を予測した。患者を、オキサリプラチン及びイリノテカンの両方で治療すると、治療6か月後に応答はなかった。従って、ミクロオルガノスフェアは、標準治療の薬物に対する患者応答と強く相関した。この場合、患者は6か月の副作用及び毒性に耐え、それは、腫瘍がそれらの薬物には応答しないであろうと(生検から7~10日以内に)示唆する、ミクロオルガノスフェアから予測された応答により回避され得た。
【0143】
(実施例4)
多剤スクリーニング
図24は、本明細書に記載される患者由来の複数のミクロオルガノスフェアを使用して生成され得る、薬物(例えば化学療法剤)のパネルの一例を示す。この例では、患者由来ミクロオルガノスフェアを使用した薬物スクリーニングを、複数(27個)の薬物の各々に関して、複数のレプリケートの添加により行った。単一腫瘍生検を使用して複数のミクロオルガノスフェアを大量に非常に素早く(例えば2週間未満以内に)生成し、それらのミクロオルガノスフェアを、製剤のパネル(例えば、27製剤を示す)に対して試験した。この試験は、並行して行い自動的に定量できた(例えば、光学的な検出及び定量により)。この例では、この特定腫瘍に対して最大の毒性を示す薬物は、パゾパニブであった。
【0144】
薬物の併用と同様に異なる薬物濃度も、並行して調査可能である。同じ腫瘍生検から、数百、数千、又は数万のミクロオルガノスフェアを生成できるため、本明細書に記載される方法及び装置により、その種のアレイ試験が実践的に行われる。
【0145】
(実施例5)
生検試料の調製
材料:小滴マイクロ流体チップ(200μm)を含む、前記のミクロオルガノスフェア形成用装置;Bio-rad社EvaGreen用小滴生成オイル(カタログ番号186-4006)、ラン当たり3~5mL、ペルフルオロオクタノール(PFO)、Sigma社、Novec HFE 7500中の10%ペルフルオロオクタノール(PFO)、PBS、細胞培養培地(即ちRPMIw/10%FBS及び1%PenStrep)、70μm又は100μmのフィルタ、50mLコニカルチューブ、ペトリ皿。
【0146】
生検試料の解離:患者からの解離試料(即ち、単一細胞組織)を生成するために生検試料(ヒト/動物)を使用。マイクロ流体チップをコーティングし、マイクロ流体チップとホルダとを組み立てる。マイクロ流体チューブ及びフィッティングを、ミクロオルガノスフェア及び廃油用の出力(例えば、マルチウェルプレート、15mLエッペンドルフチューブ等)に接続する。
【0147】
ミクロオルガノスフェアを形成するために装置を作動させる。小滴を含有する出力(例えば、プレート、エッペンドルフチューブ等)を、インキュベータから取り外す(少なくとも15分後)。出力から、どの余分な油も除去する。小滴は浮揚性であるため、油は、バイアルの底部にある。チューブから小滴を取り除かないように注意する。10%(v/v)PFO 100μLを出力に加える。慎重に旋回し、約1分間待つ。試料をピペッティングしたりかき乱したりしない。300gで60秒間遠心分離する。上清(余分な油/PFO)を除去する。試料をピペッティングしたりかき乱したりしない。PFOは、培養期間中の細胞生存率を下げ得るため、できる限り除去する。細胞培養培地1mLを加える。試料をピペッティングしたりかき乱したりしない。300gで60秒間遠心分離する。上清及び余分な油/PFOを除去する。細胞培養培地1mLを加える。1mLピペットチップを用いて、試料を慎重に上下に(約30回)ピペッティングする。ピペッティングしすぎたり小滴試料を乱したりしないように注意する。1mLピペットチップを用いて、70μm又は100μmのフィルタ(50mLコニカルチューブと接続)を介して、小滴媒体溶液を通す。一部の小滴は、出力(例えば15mLエッペンドルフチューブ)の内側に貼り付く。各チューブを2~3mLのPBSですすぎ、上下にピペッティングする。すすいだPBS及び小滴をろ過する。この工程を2回又はチューブが透明に見えるまで繰り返し、小滴をフィルタに移した。1mLピペットチップを用いて、小滴を含有するフィルタを、約5mLのPBSで慎重に洗う。フィルタの全表面積をカバーする。この洗浄工程は、いかなる余分な油及びPFOも試料から除去し、ゲル小滴を、最終的に、細胞培養培地へと回収させる。
【0148】
正しく水気を切ったら(約1~2分間)、50mLコニカルチューブからフィルタを慎重に取り出す。フィルタを裏返しにし、裏面を新鮮な細胞培養培地で洗い、溶液を新鮮なペトリ皿に捕集する。フィルタから小滴がはがれ、細胞培養培地に入る。1mLピペットチップの使用及び約5mLの培地での洗浄が推奨される。
【0149】
顕微鏡下で小滴の品質を点検する。油のほとんど/すべてが除去されていること。回収が低ければ、試料を再びろ過し得る。回収したミクロオルガノスフェアの密度は、血球計数器で点検し得る。
【0150】
(実施例6)
腎組織ミクロオルガノスフェア
別の例では、ミクロオルガノスフェアを、生検した腎組織から形成し得る。例えば、使用する計器は、チューブローテータ又は100μm及び70μmのセルストレーナ、15mLコニカルチューブ、50mLコニカルチューブ、カミソリ刃、ピンセット及び手術用ハサミ、ペトリ皿(100×15mm)又は組織培養皿を含み得る。試薬は、EBM-2培地、コラゲナーゼ(5mg/mLストック)、Hank's Balanced Salt Solution(HBSS)、塩化カルシウム(10mMストック溶液)、リン酸緩衝液(1xPBS)、マトリゲル、0.4%トリパンブルー溶液及びトリプシンを含み得る。
【0151】
腎組織は、低温の輸送培地中で常に氷上で貯蔵する。酵素消化液2mLを、15mLコニカルチューブに入れてもよい。塩化カルシウム600μL(最終濃度:3mM)を加えて、コラゲナーゼ200μL(最終濃度:0.5mg/mL)を加える。腎試料をペトリ皿/培養皿に移す。滅菌済み組織用刃又はカミソリ刃を用いて、余分な又は非腫瘍組織を除去する。酵素溶液1mLを組織に加える。滅菌済みカミソリ刃を用いて、試料を、小片(<2mm2)に細かく刻む。ピンセット又は手でプレートを押さえつける。細かく刻んだ組織及び酵素溶液を、酵素溶液を含む15mLチューブに戻す。チューブを、37℃インキュベータ中のチューブローテータ又は15mLチューブローテータに30~60分の間置く。チューブをインキュベータから取り出す。少なくとも6mLのEBM-2で酵素消化をクエンチする(酵素消化液の量の少なくとも3倍)。ピペッティングで混合する。100μm又は70μmのセルストレーナを、50mLコニカルチューブに載せる。ストレーナを介して試料を移す。溶液を、新しい15mLコニカルチューブに移す。試料を1500rpmで5分間遠心分離する。上清を捨てて、細胞ペレットを残す。ペレットを、EBM-2培地1mLに再懸濁する。細胞混合物10μLを、1片のパラフィルム上のトリパンブルー10μLに加えて、セルカウンタプレート又は血球計数器に移す。細胞濃度を計算する(数/mL)。1500RPMで5分間遠心分離し、上清を捨て、ペレットを残す。細胞ペレットを、1.25×105細胞当たり50μLのマトリゲルに再懸濁する。氷上で行う。マトリゲル-細胞懸濁液のドーム50μLを、予熱した24ウェル平底プレートのウェルの中央にプレーティングする。プレートを37°の細胞インキュベータに移し、少なくとも20分間インキュベートする。ドームが重合したことを確認する。予熱したEBM-2培地500μLを、ウェル壁を介して静かに加える。37℃のインキュベータ中でインキュベートする。2日おきに完全培地交換を行い、ミクロオルガノスフェアを増殖させる。
【0152】
(実施例7)
肝臓ミクロオルガノスフェア
述べたように、ミクロオルガノスフェアは、正常(例えば非癌)及び/又は異常組織から形成され得る。
図25A~25B及び
図26A~
図26Bは、マウス肝組織から形成したミクロオルガノスフェアの一例を示し、そのマウス肝組織を取り出し(dislocate)、流体マトリクス材料と組合せて未重合混合物を形成してから、該未重合混合物の小滴を重合させてミクロオルガノスフェアを形成した。この例では、ミクロオルガノスフェアが、約300μmの直径を有する。
図25A~25Bでは、小滴当たり単一の細胞を用いてミクロオルガノスフェアを形成した。
図26A~26Bでは、小滴当たり25個の細胞を用いてミクロオルガノスフェアを形成した。
図25Aでは、形成から1日後にミクロオルガノスフェアを示し、
図25Bは、培養10日後のミクロオルガノスフェアを示す。ミクロオルガノスフェアのいくつかの中の細胞は、分裂し、構造を示す集塊を形成し、別のミクロオルガノスフェアは、分裂が遅いか、又は分裂しない細胞を含んだ。同じく、
図26A~26Bでは、ミクロオルガノスフェアが、初めに、約25個の細胞を各ミクロオルガノスフェア中に含む。培養10日後、ミクロオルガノスフェアのいくつかは、かなりの細胞増殖を示し構造を形成したが、別のミクロオルガノスフェアはわずかな増殖しか示さなかった。両方の場合とも、ミクロオルガノスフェア内の細胞は、由来先の原発組織(例えば肝細胞)の特性を示すことが見出された。
【0153】
図27A~
図27Cに示すように、同じ方法を、ヒト肝組織を用いて効果的に行った。この例では、
図27Aに示すように、ミクロオルガノスフェアを、初めに約50個の細胞を用いて形成した。培養18日目までに、ミクロオルガノスフェアのいくつかは、集塊を有し構造を形成する細胞を示したが、別のミクロオルガノスフェアはより小さい構造を有するか、又は細胞が分裂しなかった。
【0154】
(実施例8)
培養細胞ミクロオルガノスフェア
例えば、ミクロオルガノスフェアを形成する直前又は少し前に摘出された初代組織に加えて、ミクロオルガノスフェアは、培養細胞、又は2D培養細胞若しくは3D培養細胞のいずれかを含む細胞から形成され得る。
【0155】
いくつかの変形形態では、ミクロオルガノスフェアが、患者由来異種移植片(PDX)の一部として増殖させた細胞株から形成され得る。例えば、
図28A~
図28Dは、培養PDX240細胞から形成したミクロオルガノスフェアを示す。PDX240細胞は、患者由来異種移植片(PDX)腫瘍細胞株(患者ソースに基づく番号240)であり、in vivo腫瘍を形成させるためにヒト腫瘍を免疫不全マウス中で増殖させた(PDX)。異種移植片組織を、抽出、解離し、前記のミクロオルガノスフェアを形成するために使用した。この例では、形成された各ミクロオルガノスフェア中に単一の細胞を含めた。
図28Aは、1日培養後のミクロオルガノスフェアを示し、
図28Bは、3日培養後のミクロオルガノスフェアを示し、
図28C及び
図28Dはそれぞれ、5日培養後及び7日培養後のミクロオルガノスフェアを示す。培養時間の進行と共に、ミクロオルガノスフェアの少なくともいくつかは、分裂して構造を形成する細胞を示す。
【0156】
図29A~
図29Dは、類似の実験を示し、その場合、各ミクロオルガノスフェアを形成する各小滴中に、初めに5個のPDX240細胞を含めた。培養時間と共に(例えば、
図29A~29Dにそれぞれ示すように、1日目、3日目、5日目及び7日目)、細胞が、分裂し構造を形成し得る。
【0157】
(実施例9)
ミクロオルガノスフェアと従来のオルガノイドとの比較
患者由来異種移植片細胞(前記のPDX240細胞及び第2のPDX細胞株、PDX19187を含む)からオルガノイドを形成し、同じ細胞を使用して形成したミクロオルガノスフェアと比較した。かかるオルガノイドは、ウェル又はディッシュ中の大量のマトリゲルに細胞を播種し、増殖が確認されるまで培養する従来の技術を使用して形成した。ミクロオルガノスフェアは、従来のオルガノイドから生成した。
【0158】
従来の(「バルク」)オルガノイド及びミクロオルガノスフェアの両方とも、次いで、同じ薬物(例えば、オキサリプラチン又はSN38)で処理し、3日間の処理後に細胞生存率を測定した。
図30及び
図31に示す薬物応答曲線を生成して、類似の応答曲線を示す。例えば、
図30では、PDO19187のバルクオルガノイド及びミクロオルガノスフェアの薬物応答曲線が、オキサリプラチン濃度に対して、PDX240のバルクオルガノイド及びミクロオルガノスフェアと同様の応答曲線を示した。
図31では、PDX19187及びPDX240の両方ともの薬物応答曲線が同じく、SN38に対して、バルクオルガノイド及びミクロオルガノスフェアの両方とも類似の結果を示した。
図32は、別の抗癌剤、5-FU(フルオロウラシル)に対する応答曲線を示し、再び、PDZ-19187及びPDX-240の両方ともの従来のオルガノイド及びミクロオルガノスフェアに関して、類似の薬物応答曲線を示す。
【0159】
従って、従来のオルガノイドと比べてより素早く且つ確実に形成可能であり、より高い全体的生存率を有し得る本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、同じ細胞を使用して形成されたバルクオルガノイドの薬物応答に匹敵する薬物応答を提供し得る。しかしながら、本明細書に記載されるように、ミクロオルガノスフェアは、より素早く使用可能であり、且つはるかに多数が形成可能である。
【0160】
(実施例10)
ミクロオルガノスフェアに対する薬効
概して、本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、毒性アッセイを含む1つ又は複数のアッセイを行うために使用できる。ミクロオルガノスフェア内に懸濁された組織(例えば、細胞、組織構造)の解析により結果が判定されるように、任意の適切なアッセイを行い得る。本明細書に記載されるミクロオルガノスフェアは、光学的、化学的、電気的、遺伝的、又は技術分野では公知の他の任意のやり方でアッセイ又は解析され得る。
【0161】
光学(手動又は自動のいずれか)検出は、特に有用であり得て、ミクロオルガノスフェア内の組織(細胞、細胞の集塊、細胞の構造等を含む)に対する1つ又は複数の製剤の効果の光学解析を含み得る。いくつかの変形形態では、前記のように、製剤を、細胞死に関してアッセイしてもよい(例えば、試験されるミクロオルガノスフェア内の組織の数及び/又は寸法)。別の変形形態では、ミクロオルガノスフェアを、寸法の低下、型及び/又は増殖速度を含む、細胞増殖に関してアッセイしてもよい。いくつかの変形形態では、ミクロオルガノスフェアを、形成される組織構造の変化に関してアッセイしてもよい。
【0162】
例えば、
図33A~
図33Bは、マウス肝臓ミクロオルガノスフェアに対する一製剤の効果、この例では、アセトアミノフェン(10mM)の効果を示す。
図33Aは、ミクロオルガノスフェアを処理しなかった対照群であり、培養に際し増殖した、ミクロオルガノスフェア内の組織(矢印)を示す。
図33Bは、マウス肝臓から形成された、同様の一組のミクロオルガノスフェアを示し、このミクロオルガノスフェアは、代わりに10mMアセトアミノフェンで処理された。対照群では、ミクロオルガノスフェア内の組織構造が、処理群と比べて比較的大きい。アセトアミノフェンを含む、大部分のミクロオルガノスフェア中の組織は、より小さく、且つ多数の死細胞を含有する。
【0163】
同じく、
図34A~
図34Bは更に、ヒト肝臓ミクロオルガノスフェアを使用した毒性アッセイを示す。
図34Aは、対照群で観察された典型的なヒト肝臓ミクロオルガノスフェアを、その中に形成された組織構造(矢印で示す)を含めて示す。
図34Bは、ヒト肝臓ミクロオルガノスフェアをアセトアミノフェン(10mM)で処理した処理群を示す。処理したミクロオルガノスフェア中の組織は、対照群と比べて、異常組織構造(矢印)及び破片の著しい増加を示す。
【0164】
光学的概観を含むこれらの概観のいずれかを、採点、等級付け、ランク付け、又は別の方法で定量してもよい。例えば、
図33A~
図33B及び
図34A~
図34Bでは、これらの2つのアッセイの結果を、寸法差、生/死細胞/組織の数等を示すために定量してもよい。いくつかの変形形態では、採点を自動化してもよい。
【0165】
本明細書に記載される方法(ユーザインタフェースを含む)のいずれかは、ソフトウェア、ハードウェア又はファームウェアとして実装されてもよく、且つプロセッサ(例えば、コンピュータ、タブレット、スマートフォン等)により実行可能である命令セットを記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体として記載されてもよく、その命令セットは、該プロセッサによる実行時に、表示、ユーザとの通信、解析、パラメータ(タイミング、頻度、強度等を含む)の改変、決定、変更等を含むがそれらに限定されない工程のいずれかの実行を該プロセッサに制御させる。
【0166】
特徴若しくは要素が、本明細書において別の特徴若しくは要素「上」に存在すると称される場合、その特徴若しくは要素が、該別の特徴若しくは要素上に直接存在してもよく、又は介在する特徴及び/若しくは要素が更に存在してもよい。それに対して、特徴又は要素が、別の特徴又は要素「上に直接」存在すると称される場合は、介在する特徴又は要素は存在しない。同じく、特徴若しくは要素が、別の特徴若しくは要素と「接続」、「付着」若しくは「連結」していると称される場合、その特徴若しくは要素が、該別の特徴若しくは要素と直接に接続、付着若しくは連結してもよく、又は介在する特徴若しくは要素が存在してもよいと理解される。それに対して、特徴又は要素が、別の特徴又は要素と「直接に接続」、「直接に付着」又は「直接に連結」していると称される場合は、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して記載又は示したが、そのように記載又は示した特徴及び要素は、別の実施形態に適用し得る。同じく、当業者は、別の特徴と「隣接して」配置されている構造又は特徴への言及は、該隣接する特徴と重複又はその下にある部分を有し得ると理解する。
【0167】
本明細書で使用する学術用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためであり、本発明を限定するとは意図されない。例えば、本明細書で使用する単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、複数形も含むと意図される。更に、用語「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」は、本明細書で使用する場合、記述される特徴、工程、操作、要素及び/又は成分の存在を指定するが、1つ又は複数の別の特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないと理解される。本明細書で使用する用語「及び/又は(and/or)」は、関連して列挙される項目の1つ又は複数のあらゆる組合せを含み、「/」と省略され得る。
【0168】
空間的に相対的な用語、例えば「の下方(under)」、「の下方(below)」、「下方の(lower)」、「の上方(over)」、「上方の(upper)」等は、図示されるような、1つの要素又は特徴の、別の要素又は特徴との関係を記載する際の記載しやすさのために使用し得る。該空間的に相対的な用語は、図面に描写される向きに加えて、使用又は操作中の装置の異なる向きを含むことを意図すると理解される。例えば、図面の装置をひっくり返した場合、別の要素又は特徴「の下方(under)」又は「の下方(beneath)」と記載される要素は、該別の要素又は特徴「の上方」を向くことになる。従って、例示的な用語「の下方」は、上方の向き及び下方の向きの両方とも含み得る。装置は、その他の向き(90度回転又は別の向き)でもよく、本明細書で使用する空間的に相対的な記述語は、適宜解釈可能である。同じく、用語「上向きに」、「下向きに」、「垂直に」、「水平に」等は、本明細書では、特に異なる指定がない限り、単に説明の目的で使用する。
【0169】
用語「第1の」及び「第2の」は、様々な特徴/要素(工程を含む)を記載するために本明細書で使用し得るが、それらの特徴/要素は、文脈が異なる指定をしない限り、それらの用語によって限定されない。それらの用語は、ある特徴/要素を、別の特徴/要素から区別するために使用され得る。従って、本発明の教示から逸脱することなく、下記で考察する第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と呼び得て、同様に、下記で考察する第2の特徴/要素は、第1の特徴/要素と呼び得る。
【0170】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通して、文脈が異なる要求をしない限り、単語「含む(comprise)」及び変形形態、例えば「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、様々な成分が、方法及び物品(例えば、組成物、及びデバイスを含む装置、及び方法)において一緒に使用されてもよいことを意味する。例えば、用語「含む(comprising)」は、指定した任意の要素又は工程の包括を示唆するが、別のいかなる要素又は工程の除外も示唆しないと理解される。
【0171】
概して、本明細書に記載される装置及び方法のいずれかは包括的であると理解されるが、成分及び/又は工程のすべて又は一部は、その代わりに排他的であり得て、様々な成分、工程、副成分又は副工程「からなる」又はその代わりに「から本質的になる」と表し得る。
【0172】
実施例での使用も含めて明確に異なる指定がない限り、本明細書の記載及び特許請求の範囲で使用するすべての数は、たとえ明確には現れなくても、単語「約」又は「およそ」で始まるように読まれ得る。表現「約」又は「およそ」は、記載される値及び/又は位置が、値及び/又は位置の合理的な予想される範囲内にあることを示す大きさ及び/又は位置を記載する場合に使用され得る。例えば、数値は、表示値(又は値範囲)の+/-0.1%、表示値(又は値範囲)の+/-1%、表示値(又は値範囲)の+/-2%、表示値(又は値範囲)の+/-5%、表示値(又は値範囲)の+/-10%等である値を有し得る。本明細書で提供される任意の数値も同じく、文脈が異なる指定をしない限り、約又はおよそその値を含むと理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。本明細書で列挙される任意の数値範囲は、そこに包含されるすべての部分範囲を含むと意図される。更に、ある値が開示される場合、その値と「同等以下」、「その値と同等以上」及び値間の可能な範囲も、当業者が適切に理解するように開示されると理解される。例えば、値「X」が開示される場合、「Xと同等以下」と同様に「Xと同等以上」(例えば、Xは数値である)も開示される。更に、本出願を通じて、データが多数の異なる形式で提供され、且つそのデータは、終点及び始点、並びにそれらのデータ点の任意の組合せに関する範囲を意味すると理解される。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点「15」が開示される場合、10及び15を超える、10及び15と同等以上、10及び15を下回る、10及び15と同等以下、並びに10及び15と同等が、10~15の間と同様に開示されていると見なされると理解される。更に、2つの特定の数(unit)間の各数も開示されると理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13及び14も同じく開示される。
【0173】
様々な例示的実施形態を前記したが、特許請求の範囲で記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に対して多数の変更のいずれかを行い得る。例えば、記載される様々な方法工程を行う順序は、代替的実施形態で、頻繁には変更可能であり、且つ別の代替的実施形態では、1つ又は複数の方法工程をまとめてスキップしてもよい。様々な、装置及びシステムの実施形態の任意の特徴は、いくつかの実施形態には含まれていて別の実施形態には含まれていなくてもよい。従って、前記の記載は、主として例示的な目的で提供されており、特許請求の範囲に明記される本発明の範囲を限定するものとは解釈されない。
【0174】
本明細書に含まれる実施例及び例証は、限定としてではなく例証として、主題を実践し得る特定の実施形態を示す。述べたように、別の実施形態が、利用可能であり、且つ本開示の範囲を逸脱することなく構造的及び論理的な代用及び変更がされ得るように導出可能である。発明の主題のそのような実施形態は、単に便宜上、且つ実際に2つ以上開示される場合は本出願の範囲をいかなる単一の発明又は発明思想へとも任意に限定する意図なく、本明細書では個別又は集団として、用語「発明」と称され得る。従って、本明細書では特定の実施形態を例証し記載したが、同じ目的の達成を意図する任意の配置が、示した特定の実施形態の代わりに用いられ得る。本開示は、様々な実施形態のあらゆる適合又は変形形態を包含すると意図される。前期の明細書を見直すと、前記の実施形態の組合せ、及び本明細書に特には記載されない別の実施形態が、当業者には明らかになる。
【国際調査報告】