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特表2022-534807思春期遅発を予測および処置するためのキスペプチン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(54)【発明の名称】思春期遅発を予測および処置するためのキスペプチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20220727BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20220727BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20220727BHJP
   A61K 31/568 20060101ALI20220727BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20220727BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20220727BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20220727BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220727BHJP
【FI】
A61K38/00
A61P5/24 ZNA
A61K31/485
A61K31/568
A61K31/565
A61K31/57
A61K38/22
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572513
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 US2020036662
(87)【国際公開番号】W WO2020247936
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】62/858,479
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】セミナラ,ステファニー ベス
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イー-ミン
(72)【発明者】
【氏名】リピンコット,マーガレット フリン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA20
4C084BA44
4C084DB01
4C084DB10
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZC04
4C084ZC10
4C084ZC11
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB23
4C086DA08
4C086DA09
4C086DA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZC04
4C086ZC10
4C086ZC11
4C086ZC75
(57)【要約】
キスペプチンおよびキスペプチンアナログを使用して、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症および生殖内分泌機能不全を診断および処置する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生殖内分泌機能不全、任意に病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する対象を処置する方法であって、治療的有効量の(i)複数用量のキスペプチンもしくはキスペプチンアナログ、および/または(ii)オピオイドアンタゴニストもしくは混合アゴニスト-アンタゴニストを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記複数用量が、1~6時間、好ましくは2時間の間隔で、少なくとも2~3日、好ましくは少なくとも1~12ヶ月にわたって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数用量がそれぞれ、静脈内ボーラス(IVB)によって投与される、0.08~2.4nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数用量がそれぞれ、0.2~0.3nmol/kgのキスペプチン-10、好ましくは0.24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数用量が、2.4~24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の少なくとも1つの超生理学的用量を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの超生理学的用量が、前記複数用量の最初の用量、または最初の2回または3回以上の用量、任意に前記複数用量の全てとして投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療的有効量のオピオイドアンタゴニストまたは混合アゴニスト-アンタゴニストを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記オピオイドアンタゴニストがナロキソンまたはナルトレキソンであるか、または前記混合アゴニスト-アンタゴニストがブプレノルフィンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
対象を、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症のリスクがある、または軽症型の病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有するものとして特定する方法であって、
前記対象におけるLHのベースラインレベルを測定することと、
刺激用量のキスペプチンまたはキスペプチンアナログ、例えば静脈内ボーラス(IVB)によって投与される、0.08~15nmol/kgのキスペプチン-10を含む用量、または皮下(SC)注射によって投与される、0.8~500nmol/kgのキスペプチン-10を含む用量を前記対象に投与することと、
前記刺激用量の投与後、例えば前記刺激用量の投与後の約10、15、20、30、45または60分以内に少なくとも1つのLHレベルを測定すること、
前記対象における前記LHのベースラインレベルを前記刺激用量の投与後のLHレベルと比較することと、
前記LHのベースラインレベルと有意差のない前記刺激用量の投与後のLHレベルを有する、思春期遅発を有する対象を、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有するものとして特定することと
を含む、方法。
【請求項10】
病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の処置を前記特定した対象に施すことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処置が、複数用量のキスペプチンまたはキスペプチンアナログを投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数用量が、1~6時間、好ましくは2時間の間隔で、少なくとも2~3日、好ましくは少なくとも1~12ヶ月にわたって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数用量がそれぞれ、静脈内ボーラス(IVB)によって投与される、0.08~2.4nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複数用量がそれぞれ、0.2~0.3nmol/kgのキスペプチン-10、好ましくは0.24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数用量が、2.4~24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の少なくとも1つの超生理学的用量を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの超生理学的用量が、前記複数用量の最初の用量、または最初の2回または3回以上の用量、任意に前記複数用量の全てとして投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
治療的有効量のオピオイドアンタゴニストまたは混合アゴニスト-アンタゴニストを前記対象に投与することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記オピオイドアンタゴニストがナロキソンまたはナルトレキソンであるか、または混合アゴニスト-アンタゴニストがブプレノルフィンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処置が、性腺ステロイド補充療法を施すことをさらに含む、請求項1または10に記載の方法。
【請求項20】
前記性腺ステロイド補充療法が、男性においてはテストステロンを、女性においてはエストロゲンおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチンを投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上のゴナドトロピンの投与をさらに含む、請求項1または10に記載の方法。
【請求項22】
複数用量のキスペプチンまたはキスペプチンアナログを投与することを含む、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する対象を処置する方法における使用のための、(i)キスペプチンもしくはキスペプチンアナログ、および/または(ii)オピオイドアンタゴニストもしくは混合アゴニスト-アンタゴニストを含む組成物。
【請求項23】
前記複数用量が、1~6時間、好ましくは2時間の間隔で、少なくとも2~3日、好ましくは少なくとも1~12ヶ月にわたって投与される、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記複数用量がそれぞれ、静脈内ボーラス(IVB)によって投与される、0.08~2.4nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記複数用量がそれぞれ、0.2~0.3nmol/kgのキスペプチン-10、好ましくは0.24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む、請求項24に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
前記複数用量が、2.4~24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の少なくとも1つの超生理学的用量を含む、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
前記少なくとも1つの超生理学的用量が、前記複数用量の最初の用量、または最初の2回または3回以上の用量、任意に前記複数用量の全てとして投与される、請求項26に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
治療的有効量のオピオイドアンタゴニストまたは混合アゴニスト-アンタゴニストを前記対象に投与することをさらに含む、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
前記オピオイドアンタゴニストがナロキソンまたはナルトレキソンであるか、または前記混合アゴニスト-アンタゴニストがブプレノルフィンである、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
前記方法が、性腺ステロイド補充療法を施すことをさらに含む、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
前記性腺ステロイド補充療法が、男性においてはテストステロンを、女性においてはエストロゲンおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチンを投与することをさらに含む、請求項30に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
前記方法が、1つ以上のゴナドトロピンの投与をさらに含む、請求項22に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2019年6月7日に出願された、米国仮特許出願第62/858,479号の利益を主張するものである。前述の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府の援助による研究または開発
本発明は、米国国立衛生研究所によって与えられる助成金番号HD043341、および食品医薬品局によって与えられる助成金番号FD005712の下で政府の支援によってなされた。政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書において、キスペプチンを使用して思春期遅発を診断および処置する方法が記載されている。
【背景技術】
【0004】
特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(IHH)は、視床下部においてGnRHニューロンが存在しないこと、または調節性の神経回路が存在しないことによる稀少な障害である。これは、黄体形成ホルモン(LH)および濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌の欠損ならびに18歳までに正常な生殖機能を達成できないことをもたらす。嗅覚消失を伴う場合、IHHはカルマン症候群(KS)と処置する。未処置の患者は、性的に乳児性のままである。
【0005】
思春期遅発を示す子供は、臨床医に厄介な課題を提起し、これは、どの子供が最終的に思春期に進行し、どの子供が進行しないかを予測することが困難であるためである(1、2)。思春期遅発のいくつかの原因は容易に認識可能であり、例えば原発性性腺機能不全、視床下部/下垂体領域の解剖学的病変、および機能的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(すなわち、慢性的な疾患、ストレスまたは陰性のエネルギー収支による生殖内分泌軸の生理学的抑制)である。しかし、これらの症状は、小児内分泌学治療を示す、少女の36~47%および少年の11~29%の思春期遅発しか説明していない(3~5)。思春期遅発を有する少女および少年の大部分について、提供者は顕著に異なる転帰、体質性遅発およびIHHの2つの可能性のある診断が残されている(1)。体質性遅発は、思春期が遅れて開始する(または開始した後一時的に停止する)が、最終的に開始し、完全な成人の生殖内分泌機能の達成へと進行する自然治癒症状である(6)。対照的に、IHHは、処置を必要とする病的障害である(7)。現在のところ、体質性遅発をIHHから前向きに区別する信頼性の高い方法は存在しない。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において、生殖内分泌機能不全、任意選択で病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する対象を処置する方法が提供される。本方法は、治療的有効量の (i)複数用量(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10以上、例えば2、3、4、5または6/日)のキスペプチンもしくはキスペプチンアナログ、および/または(ii)オピオイドアンタゴニストもしくは混合アゴニスト-アンタゴニストを対象に投与することを含む。本明細書において、複数用量のキスペプチンもしくはキスペプチンアナログ、および/または(ii)オピオイドアンタゴニストもしくは混合アゴニスト-アンタゴニストを投与することを含む、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する対象を処置する方法における使用のための、(i)キスペプチンもしくはキスペプチンアナログ、および/または(ii)オピオイドアンタゴニストもしくは混合アゴニスト-アンタゴニストを含む組成物が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態において、複数用量は、1~6時間の間隔、好ましくは2~3時間の間隔で、少なくとも2~3日、好ましくは少なくとも1、2、3、4、6、または12ヶ月にわたって投与される。
【0008】
いくつかの実施形態において、複数用量はそれぞれ、静脈内ボーラス(IVB)、皮下注射(SC)またはポンプによって投与される、0.08~2.4nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、複数用量はそれぞれ、0.2~0.3nmol/kgのキスペプチン-10、好ましくは0.24nmol/kgのキスペプチン-10に同等の用量を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、複数用量は、2.4~24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の少なくとも1つの超生理学的用量を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの超生理学的用量は、複数用量の最初の用量、または最初の2回または3回以上の用量、任意に複数用量の全てとして投与される。
【0011】
いくつかの実施形態において、本方法は、治療的有効量のオピオイドアンタゴニストまたは混合アゴニスト-アンタゴニストを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、オピオイドアンタゴニストは、ナロキソンまたはナロトレキソンであるか、または混合アゴニスト-アンタゴニストはブプレノルフィンである。
【0012】
いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上のゴナドトロピン(例えば、黄体形成ホルモン(LH)および/または濾胞刺激ホルモン(FSH))を投与することをさらに含む。
【0013】
本明細書において、また、生殖内分泌機能不全(RED)、例えば病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する、そのリスクがある、またはその軽症型を有する対象を特定するための方法が提供される。本方法は、対象におけるLHのベースラインレベルを測定すること、刺激用量のキスペプチンまたはキスペプチンアナログ、例えば静脈内ボーラス(IBV)によって投与される、0.08~15nmol/kgのキスペプチン-10を含む用量、または皮下(SC)注射によって投与される、0.8~500nmol/kgのキスペプチン-10を含む用量を対象に投与すること、刺激用量の投与後、例えば刺激用量の投与後の約10、15、20、30、45または60分以内に少なくとも1つのLHレベルを測定すること、対象におけるLHのベースラインレベルを刺激用量の投与後のLHレベルと比較すること、およびLHのベースラインと同等の刺激用量の投与後のLHレベル(例えば、ベースラインの3.5、3、2.5、または2倍未満)を有する、思春期遅発を有する対象を、RED、例えば病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有するものとして特定することを含む。
【0014】
あるいは、本方法は、刺激用量、例えば静脈内ボーラス(IVB)によって投与される、0.08~15nmol/kgのキスペプチン-10を含む静脈内用量、または皮下(SC)注射によって投与される0.8~500nmol/kgのキスペプチン-10を含む用量のキスペプチンまたはキスペプチンアナログを対象に投与すること、刺激用量の投与後、例えば刺激用量の投与後約10、15、20、30、45または60分以内に少なくとも1つのLHレベルを測定すること、刺激用量の投与後のLHレベルを参照レベルと比較すること、およびLHの参照レベルを下回る(またはそれと有意差がない)刺激用量の投与後のLHレベルを有する、思春期遅発を有する対象をRED、例えば病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有するものとして特定することを含んでいてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、本方法は、生殖内分泌機能不全、例えば病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の処置を、特定した対象に施すことを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、処置は、複数用量のキスペプチン、またはキスペプチンアナログを投与することを含む。いくつかの実施形態において、複数用量は、1~6時間の間隔、好ましくは2~3時間の間隔で、少なくとも2~3日、好ましくは少なくとも1~12ヶ月にわたって投与される。いくつかの実施形態において、複数用量はそれぞれ、静脈内ボーラス(IVB)、皮下注射(SC)またはポンプによって投与される、0.08~2.4nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む。いくつかの実施形態において、複数用量は、それぞれ、0.2~0.3nmol/kgのキスペプチン-10、好ましくは0.24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量を含む。いくつかの実施形態において、複数用量は、2.4~24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の少なくとも1つの超生理学的用量を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの超生理学的用量は、複数用量の最初の用量、または最初の2回または3回以上の用量、任意に複数用量の全てとして投与される。
【0017】
いくつかの実施形態において、本方法は、治療的有効量のオピオイドアンタゴニストまたは混合アゴニスト-アンタゴニストを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、オピオイドアンタゴニストはナロキソンまたはナルトレキソンであり、または混合アゴニスト-アンタゴニストはブプレノルフィンである。
【0018】
いくつかの実施形態において、処置は、性腺ステロイド補充療法、例えば男性においてはテストステロンを、女性においてはエストロゲンおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチンを投与することをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、本方法は、1つまたは複数のゴナドトロピン(例えば、黄体形成ホルモン(LH)および/または濾胞刺激ホルモン(FSH))を投与することをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、複数用量は、1~6時間、好ましくは2時間の間隔で、少なくとも2~3日、好ましくは少なくとも1~12ヶ月にわたって投与される。
【0021】
特に断らない限り、本明細書において使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本発明において使用するための方法および材料は本明細書に記載されており、当技術分野において公知の他の適当な方法および材料もまた使用し得る。材料、方法および実施例は、例示のためのものに過ぎず、限定することを意図するものではない。本明細書において言及する全ての出版物、特許出願、特許、配列、データベースエントリおよび他の参照文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】募集および参加の概要。
図2-1】思春期の遅発または停止を提示している子供における神経内分泌特性。プロトコルの概略図をパネルAに示す。プロトコルの詳細は参照文献(20)に示す。最初の来診時に、参加者は、血清LHを測定し、一晩の自発性の拍動性を評価し、キスペプチンおよびGnRHに対する応答を図表化する。その後、参加者は外因性の拍動性GnRHを受け、GnRHに対する下垂体応答性を増強した。彼らは、次いで2回目の来診に戻り、この下垂体「プライミング」後のキスペプチンおよびGnRHに応答するLH分泌を測定した。結果を、「キスペプチン非応答者」である参加者A(B)および「キスペプチン応答者」である参加者B(C)について示す。
図2-2】思春期の遅発または停止を提示している子供における神経内分泌特性。プロトコルの概略図をパネルAに示す。プロトコルの詳細は参照文献(20)に示す。最初の来診時に、参加者は、血清LHを測定し、一晩の自発性の拍動性を評価し、キスペプチンおよびGnRHに対する応答を図表化する。その後、参加者は外因性の拍動性GnRHを受け、GnRHに対する下垂体応答性を増強した。彼らは、次いで2回目の来診に戻り、この下垂体「プライミング」後のキスペプチンおよびGnRHに応答するLH分泌を測定した。結果を、「キスペプチン非応答者」である参加者A(B)および「キスペプチン応答者」である参加者B(C)について示す。
図3】思春期に進行した子供および進行しなかった子供におけるキスペプチンに対する異なる応答。思春期の遅発または停止を提示する少女(白丸)および少年(黒丸)は、キスペプチン刺激試験を受け、外因性キスペプチンに応答した黄体形成ホルモンの変化を評価した(ΔLHキスペプチン)。参加者は次いで18歳まで経過観察し、自発的に思春期に進行したかを決定した。
図4-1】思春期に進行したまたは進行しなかった子供のさらなるホルモン評価。思春期の遅発および停止を示す少女(白丸)および少年(黒丸)は、提示時の血清黄体形成ホルモン(LH)および濾胞刺激ホルモン(FSH)(それぞれAおよびB)ならびに外因性ゴナドトロピン放出ホルモンに応答したLHの変化(GnRH、パネルC)について評価した。少年はさらに血清インヒビンBについて評価した(D)。
図4-2】思春期に進行したまたは進行しなかった子供のさらなるホルモン評価。思春期の遅発および停止を示す少女(白丸)および少年(黒丸)は、提示時の血清黄体形成ホルモン(LH)および濾胞刺激ホルモン(FSH)(それぞれAおよびB)ならびに外因性ゴナドトロピン放出ホルモンに応答したLHの変化(GnRH、パネルC)について評価した。少年はさらに血清インヒビンBについて評価した(D)。
図5-1】キスペプチンに対するLH応答。点線は投与のタイムポイントを表す。(下向き黒三角)=改変されたSanten & Bardin判断基準によって決定されるLHパルス。A:健常男性。遺伝学は評価していない。6時間におけるキスペプチン0.313μg/kg IVB。(+)応答。B:KS男性。PROKR2 c.518T>G p.L173Rヘテロ、DMXL2 c.4016T>G p.V1339Gヘテロ。6時間におけるキスペプチン 0.313μg/kg IVB。(-)応答。C.KS女性。遺伝学は評価していない。LH応答は、キスペプチン用量に対応してグラフ化した。(+)用量範囲にわたるLH応答。D.KS男性。CHD7 c.2417T>Cp.M806Tヘテロ;PROKR2 c.254G>Ap.R85Hヘテロ。パネルCと同一の用量。(+)LH応答。全てのデータを同一のY軸上でグラフ化する。
図5-2】キスペプチンに対するLH応答。点線は投与のタイムポイントを表す。(下向き黒三角)=改変されたSanten & Bardin判断基準によって決定されるLHパルス。A:健常男性。遺伝学は評価していない。6時間におけるキスペプチン0.313μg/kg IVB。(+)応答。B:KS男性。PROKR2 c.518T>G p.L173Rヘテロ、DMXL2 c.4016T>G p.V1339Gヘテロ。6時間におけるキスペプチン 0.313μg/kg IVB。(-)応答。C.KS女性。遺伝学は評価していない。LH応答は、キスペプチン用量に対応してグラフ化した。(+)用量範囲にわたるLH応答。D.KS男性。CHD7 c.2417T>Cp.M806Tヘテロ;PROKR2 c.254G>Ap.R85Hヘテロ。パネルCと同一の用量。(+)LH応答。全てのデータを同一のY軸上でグラフ化する。
図5-3】キスペプチンに対するLH応答。点線は投与のタイムポイントを表す。(下向き黒三角)=改変されたSanten & Bardin判断基準によって決定されるLHパルス。A:健常男性。遺伝学は評価していない。6時間におけるキスペプチン0.313μg/kg IVB。(+)応答。B:KS男性。PROKR2 c.518T>G p.L173Rヘテロ、DMXL2 c.4016T>G p.V1339Gヘテロ。6時間におけるキスペプチン 0.313μg/kg IVB。(-)応答。C.KS女性。遺伝学は評価していない。LH応答は、キスペプチン用量に対応してグラフ化した。(+)用量範囲にわたるLH応答。D.KS男性。CHD7 c.2417T>Cp.M806Tヘテロ;PROKR2 c.254G>Ap.R85Hヘテロ。パネルCと同一の用量。(+)LH応答。全てのデータを同一のY軸上でグラフ化する。
図6】再グラフ化した、図5Cからのデータであり、2時間の頻度の可変性の用量におけるキスペプチンに対するKS女性の応答を示す。
図7-1】ベースライン神経内分泌プロファイリング。A.試験概略図、B.2010~2011年に8時間サンプリングを受けたIHHを有する試験対象、C.卵胞期前期(EFP)の健常姉妹。E2=エストラジオール。P=プロゲステロン、LH=黄体形成ホルモン。
図7-2】ベースライン神経内分泌プロファイリング。A.試験概略図、B.2010~2011年に8時間サンプリングを受けたIHHを有する試験対象、C.卵胞期前期(EFP)の健常姉妹。E2=エストラジオール。P=プロゲステロン、LH=黄体形成ホルモン。
図8-1】キスペプチンおよびGnRHに対する応答についてのベースライン試験。A.試験概略図、B.試験対象。矢印は、アルゴリズムによって検出される黄体形成ホルモンパルスを示していた。K=静脈内ボーラスによるキスペプチン-10であり、添字は、用量、1=0.24nmol/kg、2=0.72nmol/kg、3=2.4nmol/kgを示す。G=GnRH IVB 75ng/kg。E2=エストラジオール、FSH=濾胞刺激ホルモン、LH=黄体形成ホルモンである。
図8-2】キスペプチンおよびGnRHに対する応答についてのベースライン試験。A.試験概略図、B.試験対象。矢印は、アルゴリズムによって検出される黄体形成ホルモンパルスを示していた。K=静脈内ボーラスによるキスペプチン-10であり、添字は、用量、1=0.24nmol/kg、2=0.72nmol/kg、3=2.4nmol/kgを示す。G=GnRH IVB 75ng/kg。E2=エストラジオール、FSH=濾胞刺激ホルモン、LH=黄体形成ホルモンである。
図9】キスペプチン注入およびGnRHに対する応答。A.試験概略図、B.試験対象。矢印は、アルゴリズムによって検出される黄体形成ホルモンパルスを示していた。G= GnRH IVB 75ng/kg。E2=エストラジオール、FSH=濾胞刺激ホルモン。LH=黄体形成ホルモンである。
図10-1】キスペプチンおよびGnRHに対する応答および神経ペプチド投与。A.試験概略図、B.試験対象。矢印は、アルゴリズムによって検出される黄体形成ホルモンパルスを示していた。K=静脈内ボーラスによるキスペプチン-10であり、添字は、用量、1=0.24nmol/kg、2=0.72nmol/kg、3=2.4nmol/kgを示す。G=GnRH IVB 75ng/kg。E2=エストラジオール、FSH=濾胞刺激ホルモン、LH=黄体形成ホルモンである。
図10-2】キスペプチンおよびGnRHに対する応答および神経ペプチド投与。A.試験概略図、B.試験対象。矢印は、アルゴリズムによって検出される黄体形成ホルモンパルスを示していた。K=静脈内ボーラスによるキスペプチン-10であり、添字は、用量、1=0.24nmol/kg、2=0.72nmol/kg、3=2.4nmol/kgを示す。G=GnRH IVB 75ng/kg。E2=エストラジオール、FSH=濾胞刺激ホルモン、LH=黄体形成ホルモンである。
図11-1】性的発達の間をコントロールするTac2ノックアウトマウスおよび同腹仔に対するキスペプチン投与。点線=キスペプチン投与。黄体形成ホルモン値は各タイムポイントについての平均値±SEMである。
図11-2】性的発達の間をコントロールするTac2ノックアウトマウスおよび同腹仔に対するキスペプチン投与。点線=キスペプチン投与。黄体形成ホルモン値は各タイムポイントについての平均値±SEMである。
図12-1】成体OVX WTおよびTac2ノックアウトマウスにおける、LHパルスプロファイル(AおよびD)ならびにナロキソン(NLX)の効果(B、C、EおよびF)。AおよびD:NLX注射の120分前、およびNLX注射の180分後のLHパルス。NLX注射は矢印によって示す。矢頭はLHパルスを示す。BおよびE:それぞれ、WTおよびOVX Tac2KOマウスにおける、NLXの60分前および120分後のLH分泌の変化(平均値±SEM)。CおよびF:LH放出に対するNLX処置の効果もまた、NLX注射の20分前(NLX前)および20分後(NLX後)の平均値±SEMとして示す。*P<0.05、Student t検定。
図12-2】成体OVX WTおよびTac2ノックアウトマウスにおける、LHパルスプロファイル(AおよびD)ならびにナロキソン(NLX)の効果(B、C、EおよびF)。AおよびD:NLX注射の120分前、およびNLX注射の180分後のLHパルス。NLX注射は矢印によって示す。矢頭はLHパルスを示す。BおよびE:それぞれ、WTおよびOVX Tac2KOマウスにおける、NLXの60分前および120分後のLH分泌の変化(平均値±SEM)。CおよびF:LH放出に対するNLX処置の効果もまた、NLX注射の20分前(NLX前)および20分後(NLX後)の平均値±SEMとして示す。*P<0.05、Student t検定。
図12-3】成体OVX WTおよびTac2ノックアウトマウスにおける、LHパルスプロファイル(AおよびD)ならびにナロキソン(NLX)の効果(B、C、EおよびF)。AおよびD:NLX注射の120分前、およびNLX注射の180分後のLHパルス。NLX注射は矢印によって示す。矢頭はLHパルスを示す。BおよびE:それぞれ、WTおよびOVX Tac2KOマウスにおける、NLXの60分前および120分後のLH分泌の変化(平均値±SEM)。CおよびF:LH放出に対するNLX処置の効果もまた、NLX注射の20分前(NLX前)および20分後(NLX後)の平均値±SEMとして示す。*P<0.05、Student t検定。
【発明を実施するための形態】
【0024】
GnRHの発見から50年近くが経過しているにも関わらず(31)、性成熟を開始し、それに続いて生殖機能を維持する因子を理解することは、診断および処置を複雑化している課題のままであり続けている。特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(IHH)を有する患者は、異常なGnRH分泌/作用を有する(32、33)ため、これらのシグナルを明らかにするための重要な集団である。ほとんどのIHH患者は、遅発した思春期発達を有する10代として示され、処置されないままであれば、生涯にわたる性的幼稚症および不妊症を罹患する(32、33)。
【0025】
本明細書において、キスペプチンを使用して思春期遅発を診断および処置する方法が記載されている。
【0026】
病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の診断
数十年間、臨床医および研究者は、思春期遅発を有する子供が、最終的に思春期に進行するかを予測するための試験を開発しようとしていた(8)。これらの試験は、ベースライン(非刺激)血清ゴナドトロピン(黄体形成ホルモン、LH、および濾胞刺激ホルモン、FSH)、GnRHまたはGnRHアナログによる刺激後のゴナドトロピン、およびベースラインのインヒビンBの測定を含む。不幸なことに、これらの試験は全て、感受性、特異性、または両方に有意な不足を有する(8)。例えば、試験により、体質性遅発を有する少年と、IHHを有する少年の間に、血清インヒビンB濃度に有意な重複が示され、体質性遅発を有する少年の10~29%、およびIHHを有する少年の22~45%が、重複範囲にあるインヒビンBを有する(9~11)。IHHおよび体質性遅発の遺伝学の理解が次第に進んでいるにも関わらず、思春期の転帰を予測するには、遺伝学的試験は現在では不適当である。現在、IHH患者の半分未満は、IHH遺伝子に同定可能な変異を有する(7)。さらに、変異が発見された場合であっても、予測力は、可変性の浸透率および発現度によって限定され、同一家族において、IHH遺伝子の変異のいくらかのキャリアがIHHを有しており、他が体質性遅発を有している場合がある(24)。
【0027】
後に思春期に進行する、思春期遅発を有する子供は、しばしば、最初の提示時には、持続性の性腺機能低下症を有する子供と区別が不可能であり、所与の子供の転帰がわかるまで数年の待機が必要であり得ることが知られている。結果として、患者、家族、および提供者は、思春期遅発についての2つの共通する管理アプローチ、性ステロイドによる処置または介入なしの待機療法を決定する際に難問に直面し得る。
【0028】
キスペプチンは、現在まで試験されたヒトを含む全ての哺乳動物種において、GnRH分泌を強力に刺激する、視床下部において分泌される神経ペプチドである(12)。我々および他のグループによる試験において、生殖性がインタクトな成人は、単一ボーラスのキスペプチンに応答して、LHが強度に上昇し、一方、IHHを有する成人は大幅には応答しなかった(13~19)。したがって、キスペプチンを使用した誘発性試験は、個人のGnRH分泌能力を評価するために使用し得る。
【0029】
思春期が遅発または停止している子供は、応答なしから強い応答までの範囲のキスペプチンに対する応答を有する(20)。本明細書において、キスペプチンに対する子供の応答能力が、子供がその後思春期に進行するかを予測し得ることを示す、前向きな試験の結果を記載している。
【0030】
本明細書に記載するキスペプチン刺激試験は、思春期遅発を有する子供の思春期の転帰を予測する際の2つの根本的な課題を克服している。第1の課題は、正常な思春期の子供の生理学的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を、IHHを有する子供の病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症から区別する方法が存在しないことである。誘発性試験であるため、キスペプチン刺激試験は、子供の将来のGnRH分泌についての潜在的な能力を測定するための第1の方法を提供する。実際、我々は、キスペプチンが、身体検査時および日中の研究室の評価時に思春期前と考えられる時点において、最終的に思春期に進行した子供においてLH応答を誘発し得ることを見出した。
【0031】
第2の課題は、思春期発達が一時的に停止している子供を、IHHおよび持続的に停止した部分的な思春期発達を有する子供から区別することである。我々は、以前、IHHおよび部分的な生殖内分泌活性を有する成人は、キスペプチンに対して応答できないことを示している(19)。同様に、現在の試験において、部分的な生殖内分泌活性を示した1人の参加者(参加者8)は、キスペプチンに対する応答が減少しており、これは18歳まで思春期発達が見られないことを正確に予測しており、一方、インヒビンBおよびGnRH誘導LHは、後に思春期に進行することを示唆していた。
【0032】
実施例1に記載するように、2人の参加者(参加者Bおよび11)に一晩の測定時にLHパルスがないことは、参加者の最終的な思春期への進行を正確に予測するものではなく、一方、キスペプチン刺激試験は、参加者の転帰を正確に予測していた。これらの参加者は、その試験来診時に性ステロイド処置を受けており、これが内在性LH分泌を抑制していた可能性がある。対照的に、彼らのキスペプチンに対する応答は強く、したがって、キスペプチン刺激試験は、外因性性ステロイド処置(例えば、男性においてはテストステロン、女性においてはエストロゲンおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチン)の状況において行った場合であっても、最終的な思春期進行を高い信頼性で予測した。
【0033】
IHHを有するいくらかの患者は、キスペプチンに対してインタクトな応答を有する可能性がある(例えば、キスペプチンの上流で機能すると考えられている、ニューロキニンBまたはその受容体の遺伝子である、TAC3およびTACR3、またはキスペプチン自体をコードするKISS1に変異を有する患者)(25,26)。しかし、これは、IHH患者の小さいサブセットに過ぎない可能性が高く、これは、TACR3における変異は、正常嗅覚IHHの患者の約5%にのみ存在し、TAC3およびKISS1の変異は、IHHの稀な原因であるためである(27~30)。
【0034】
したがって、本発明の方法は、対象、例えば哺乳動物、例えばヒト対象における病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、例えばIHHを診断するために使用し得る。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも10、11、12、13、14、もしくは15歳、および/または18、19もしくは20歳未満であり、例えば、10~20歳、10~19、10~18、11~18、11~19、11~20、12~18、12~19、または12~20歳である。本方法は、また、例えば任意の年齢の対象における、生殖内分泌機能の機能不全、または部分的もしくは後期発症形態の病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を検出するのに使用し得る。いくつかの実施形態において、本方法は、例えば、任意の年齢の子供、例えば新生児において、先天性形態の病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を診断するのに使用される。
【0035】
いくつかの実施形態において、IHHの現在の公式の臨床的な定義は患者が18歳以上であることを必要とするが、18歳未満の対象において、本方法は、対象がIHHを有することを決定し、この診断が従来の年齢カットオフよりも早い年齢で行われることが可能になる。いくつかの実施形態において、本方法は、対象が、IHHを発症するリスクがあるか、またはIHHを発症する可能性が高いことを決定する。
【0036】
本方法は、好ましくは静脈内ボーラス(IVB)として投与される、少なくとも1つの刺激用量のキスペプチンまたはキスペプチンアナログ、例えば少なくとも0.08、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20、0.22または0.24nmol/kgのキスペプチン-10、最大約8、10、12、14、または15nmol/kgのキスペプチン-10、例えば0.08~15nmol/kgのキスペプチン-10、例えば0.1~12nmol/kgのキスペプチン-10、例えば0.2~10.11nmol/kgのキスペプチン-10、例えば0.2~0.5nmol/kgのキスペプチン-10、例えば0.22~0.25nmol/kgのキスペプチン-10、例えば0.24nmol/kgのキスペプチン-10と同等の用量の投与に応答したLHレベルの検出に依存する。用量はまた、例えば、皮下(SC)または鼻腔内ボーラスとして投与してもよい。SC投与される場合、用量は、IV用量範囲よりも高く、例えば、上記の範囲よりも、10、20または約30倍高く、例えば少なくとも0.8nmol/kg、最大約500、600、または750nmol/kgである。鼻腔内用量は、典型的には、皮下用量の約10倍、すなわち24~5000、6000、または7500nmol/kgである。
【0037】
本方法は、少なくとも1つ、例えば1つ以上のサンプルを対象から入手すること、およびサンプル中のLHのレベルを評価すること、およびレベルを、1つまたは複数の参照、例えば、正常なLHレベル、例えば病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有していない対象におけるレベルを表す対象参照、および/または病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する対象におけるLHレベルを表す疾患参照と比較することを含んでいてもよい。適切な参照値は、下記の実施例に示すものを含み得る。好ましい実施形態において、本方法は、対象から複数のサンプル、例えば、刺激用量の投与の前、間、および後に入手すること、およびサンプル中のLHレベルを決定すること、および刺激用量の投与前のサンプル中のLHレベル(例えばベースラインレベル)を、刺激用量の投与後のレベルと比較することを含む。したがって、本方法は、キスペプチン投与後の絶対的LHレベルを、参照(例えば、対象のコホートを代表する参照、または対象におけるベースラインレベル)と比較すること、および/またはベースラインから刺激後へのLHレベルの変化を、a)単位上昇(差異)、b)相対的変化(比率)のいずれかとして決定することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、3.5、4、4.5、またはそれ以上、例えば4.85またはそれ以上のLH比率を有する対象を、体質性遅発を有するものとして特定し、3.5未満、例えば3未満、例えば2.33またはそれ未満のLH比率を有する対象は、病的HHを有するものとして特定する。
【0038】
本明細書において使用する場合、「サンプル」という用語は、本明細書に記載する方法を使用してLHの存在について試験する材料に言及する場合、とりわけ、全血、血漿、血清または尿を含む。
【0039】
サンプルからのLHの定量化については種々の方法が当技術分野において周知である。本方法は、定量化前に、サンプルからのLHの単離および/または精製を含んでいてもよい。「単離」または「精製」された生物学的マーカーは、生物学的マーカーが由来する細胞または組織由来の細胞物質または他の混入物を実質的に含まない、すなわち、ヒトの介入の間に天然の状態から、部分的もしくは完全に変化するかまたは除かれる。例えば、サンプル中に含まれる核酸は、最初に標準的な方法にしたがって、例えば溶解性酵素、化学的溶液を使用して単離されるか、または製造者の指示にしたがって、核酸結合樹脂によって単離される。
【0040】
LHの存在および/またはレベルは、当技術分野において公知の方法、例えば、標準的な電気泳動およびタンパク質についての定量的な免疫アッセイ方法、例えば非限定的には、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ビオチン/アビジンタイプアッセイ、タンパク質アレイ検出、放射免疫アッセイ、免疫組織化学(IHC)、免疫沈降アッセイ、FACS(蛍光標示式細胞分取)、質量分析を使用して評価し得る(Kim (2010) Am J Clin Pathol 134:157-162; Yasun (2012) Anal Chem 84(14):6008-6015; Brody (2010) Expert Rev Mol Diagn 10(8):1013-1022; Philips (2014) PLOS One 9(3):e90226; Pfaffe (2011) Clin Chem 57(5): 675-687)。本方法は、典型的には、直接的または間接的のいずれかでシグナルを供給する、標識、例えば、蛍光、化学発光、放射活性、および酵素または色素分子を明らかにすることを含む。本明細書で使用する場合、用語「標識」は、検出可能な物質、例えば放射活性剤またはフルオロフォア(例えば、フィコエリトリン(PE)またはインドシアニン(Cy5))の抗体またはプローブへのカップリング(すなわち物理的な結合)、ならびに検出可能な物質との反応によるプローブまたは抗体の間接的な標識化(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、HRP)を指す。
【0041】
いくつかの実施形態において、ELISA法を使用してもよく、ここで、マイクロタイタープレートのウェルを、試験するタンパク質に対する抗体でコーティングする。生物学的マーカーを含む、または含む疑いがあるサンプルを次いでウェルにアプライする。抗体-抗原複合体が形成される、十分な時間の後、プレートを洗浄して非結合部分を除き、検出可能に標識された分子を添加する。再び、十分なインキュベーション期間の後、プレートを洗浄して過剰の非結合分子を除き、標識した分子の存在を当技術分野で公知の方法を使用して決定する。ELISA法のバリエーション、例えば競合ELISAまたは競合アッセイ、およびサンドウィッチELISAも、当業者に周知であるため、使用してもよい。免疫測定アッセイを使用することができる。
【0042】
質量分析、および具体的にはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-MS)、および表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析(SELDI-MS)は、LHの検出に有用である(米国特許第5,118,937号、第5,045,694号、第5,719,060号、第6,225,047号を参照のこと)。
【0043】
LHについての特異的なアッセイは、例えば、Wheeler, Methods Mol Biol. 2006;324:109-24; Beastall et al., Ann Clin Biochem. 1987 May;24 (Pt 3):246-62; Pappa et al., Theriogenology. 1999 Apr 1;51(5):911-26に記載されている。
【0044】
いくつかの実施形態において、キスペプチン刺激後のLHレベルは、疾患参照における、タンパク質の存在および/またはレベルと同等であり、対象は、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に関連する1つまたは複数の症候を有し、その場合、対象は、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する。いくつかの実施形態において、対象は、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の顕性の徴候または症候を全く有さないが、評価されたタンパク質の1つまたは複数の存在および/またはレベルは、疾患参照におけるタンパク質の存在および/または同等であり、その場合、対象は、軽症型の病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する、および/または病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の発症の高い可能性を有する。いくつかの実施形態において、対象は、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の徴候または症候を有するが、正常なLH応答を有し、この場合、対象はさらなる試験に送られる。いくつかの実施形態において、個人が病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有するか、または病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を発症するリスクが高いと一度決定されると、処置、例えば、当技術分野で公知であるか、または本明細書に記載する処置を投与してもよい。
【0045】
適切な参照値は、当技術分野において公知の方法、例えば標準的な臨床試験方法および統計学的解析を使用して決定し得る。参照値は、任意の関連する形態を有していてもよい。いくつかの場合において、参照は、有意義なLHレベル、例えば正常なLHレベルを表す対象参照レベル、例えば、罹患していない対象または本明細書に記載する疾患を発症するリスクがない対象におけるレベル、および/または病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に関連するLHレベルを表す疾患参照、例えば、IHHまたはKSを有する対象におけるレベルについての所定の値を含む。
【0046】
所定のレベルは、単一のカットオフ(閾値)値、例えば、中間値または平均値、または上または下の四分位値、三分位値、または他のセグメントから統計学的に異なっていると決定されている臨床試験集団の他のセグメントの境界を定義するレベルであり得る。それは、カットオフ(または閾値)値の範囲、例えば信頼区間であり得る。それは、比較群に基づいて確立されてもよく、例えば、ここで、1つの定義した群における疾患の発症のリスクまたは疾患の存在との関連は、他の定義した群における疾患のリスクまたは存在よりも数倍高い、または低い(例えば、約2倍、4倍、8倍、16倍またはそれ以上)。これは、特定の範囲であってもよく、例えば、ここで、対象集団(例えば、対照の対象)が、群、例えば低リスク群、中間リスク群および高リスク群、または最下の四分位が、リスクが最も低い対象であり、最上の四分位がリスクが最も高い対象である四分位、またはn-分位の最下部が、リスクが最も低い対象であり、n-分位の最上部が、リスクが最も高い対象である、n-分位(すなわち、n個の規則的に罹患した間隔)に均等(または非均等)に分割される。
【0047】
いくつかの実施形態において、所定のレベルは、同一の対象における、例えば異なるタイムポイント、例えばより早いタイムポイント(例えば、キスペプチンまたはキスペプチンアナログによる刺激前)におけるレベルまたは出現である。したがって、いくつかの実施形態において、本方法は、レベルの比率またはレベルの差異を算出すること、およびキスペプチンまたはキスペプチンアナログによる刺激後のLHのレベルの変化の存在を検出することを含み得る。
【0048】
所定の値に関連する対象は、典型的には参照対象と称する。例えば、いくつかの実施形態において、対照参照対象は、本明細書に記載する障害(例えば、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)を有さない。対照の対象が男性であることが望ましい場合も、対照の対象が女性であることが望ましい場合もあり、同一性別の対象について使用される参照レベルが確立される。対照の対象が病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有することが望ましい場合も、対照の対象が病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有さない(例えば、体質性思春期遅発症を有するが、最終的には介入なしに独力で思春期を経験する対象である)ことが望ましい場合もある。
【0049】
疾患参照対象は、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する対象である。
【0050】
したがって、いくつかの場合において、対象におけるLHレベルが、LHの参照レベル(または刺激後のLHの変化)未満または同等であることは、臨床状態を示す(例えば、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を示す)。他の場合において、対象におけるLHのレベルがLHの参照レベルを超えているかまたは同等であることは、疾患が存在しないこと、または疾患のリスクが通常であることを示している。いくつかの実施形態において、対象におけるレベルが参照レベルを下回る量は、対照の対象から対象を区別するのに十分であり、任意選択で、対照の対象におけるレベルを統計学的に有意に下回る。対象におけるLHのレベルが、LHの参照レベルと同等である場合、「同等であること」は、ほとんど同等であること(例えば統計学的に異なっていない)ことを指す。
【0051】
性腺機能不全を有する思春期前の子供において(脳または脳下垂体のレベルの不十分性、すなわち低ゴナドトロピン性性腺機能低下症とは対照的に)、キスペプチンに対する応答は、一般集団におけるより大きい場合がある。彼らはそれでも病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の「通常のリスク」を有する。
【0052】
所定の値は、選択する特定の対象(例えば、ヒト対象)の集団に依存している可能性がある。例えば、健常と思われる集団は、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する、有する可能性が高い、またはリスクが高い対象集団とは異なる「通常」範囲のLHレベルを有するであろう。したがって、選択した所定の値は、対象(例えば、ヒト対象)が属するカテゴリー(例えば、性別、年齢、他の疾患の存在)を考慮し得る。適当な範囲およびカテゴリーは、当技術分野の当業者によって、日常的な実験方法のみによって選択し得る。
【0053】
可能性またはリスクを特徴付ける際に、多数の所定の値を確立し得る。
【0054】
処置方法
本方法は、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症についての処置を含み得る。いくつかの実施形態において、処置を、本明細書に記載する方法によって特定される対象に施す。
【0055】
本明細書に記載する方法は、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に関連する障害の処置のための方法を含む。いくつかの実施形態において、障害は、IHH、またはKS(後えば、対象が嗅覚消失を有する場合)である。一般的に、本方法は、本明細書に記載する、治療的有効量のキスペプチンまたはキスペプチンアナログを、かかる処置を必要とする、または処置を必要とすると決定された対象に投与することを含む。本方法は、また、例えば、陰性のエネルギー収支状態(例えば、栄養不良、食欲不振、または運動選手)、高プロラクチン血症、成人発症低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、薬物療法効果(例えば、グルココルチコイド、オピオイド)による視床下部性無月経、または軽症型の病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する対象、および/または病的HHを発症するリスクがある対象、例えば、特発性不妊症、不規則的な月経サイクル、または異常な精液分析を有する対象を処置するために使用し得る。
【0056】
この文脈において使用する場合、「処置する」ことは、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に関連する障害の少なくとも1つの症候を寛解させることを意味する。病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症は、しばしば、例えば18歳まで思春期がないこと、または二次性徴の発達が不良であること、または発達していないこと、または不妊症をもたらし、そのため、処置は、思春期の開始、二次性徴の発達、および/または妊孕性の回復をもたらし得る。病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の処置のために本明細書に記載する化合物を治療的有効量投与することによって、LHレベルの上昇、性ステロイド(例えば、男性においてはテストステロン、女性においてはエストロゲンおよび/またはプロゲステロン/プロゲスチン)のレベルの上昇、および配偶子形成、例えばいくつかの場合においては、刺激用量のキスペプチンまたはキスペプチンアナログの投与に応答したLHのレベルの上昇の1つまたは複数がもたらされる。
【0057】
したがって、いくつかの実施形態において、病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、例えばIHHまたはKSを処置するための方法が本明細書に提供される。本方法は、1つまたは複数の用量、例えば、超生理学的および/または生理学的もしくは近生理学的用量のキスペプチン、またはキスペプチンアナログを投与することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、用量は、例えば周期的に、例えば、1~6、1~4、2~6または2~4時間ごとに、数日、数週間、数ヶ月または数年、例えば2~4日間、例えば48時間の期間にわたって、任意選択で、1ヶ月に1回、2ヶ月ごとに1回、3ヶ月ごとに1回、4ヶ月ごとに1回、6ヶ月ごとに1回、8ヶ月ごとに1回、10ヶ月ごとに1回、または1年に1回、任意選択で、長期的に、例えば、数日、数週間、数ヶ月または数年の期間にわたって毎日投与してもよい。処置は、所望の転帰、例えば、妊孕性、または二次性徴の発達が達成されるまで続けてもよく、これらが達成された際に、任意選択で停止しても、または減少させてもよい。いくつかの実施形態において、少なくともいくつかの用量は、生理学的または近生理学的なレベル、例えば、0.08~2.4、例えば、0.1~5、0.2~0.4、例えば0.24nmol/kgのIVBである。いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも1つの超生理学的な用量、例えば2~25、例えば、2.4~24nmol/kgのキスペプチン-10、例えば少なくとも2、2.4、2.5、2.6、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20nmol/kgのキスペプチン-10、最大10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25nmol/kgのキスペプチン-10に同等の用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、用量は、0.8~60nmol/kgの生理学的用量、および60~1200nmol/kgの超生理学的用量で皮下投与される。
【0058】
いくつかの実施形態において、投与は、例えば、静脈内、皮下、または経鼻である。いくつかの実施形態において、本方法は、用量を投与するためにポンプを使用することを含む。したがって、投与は、例えば、対象または患者が有するデバイスまたはシステムの形態の、活性剤を含む液体組成物を含むリザーバーおよび対象または患者への組成物の送達/投与のための注入ポンプを含む注入ポンプ、または対応する形態の活性剤の周期ボーラスを送達することができる、対象または患者の体内への埋め込みに適した小型化したデバイス、例えばインスリンポンプに類似したデバイスを使用して起こり得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、本方法は、上記のように、例えば2~3日後にキスペプチン刺激試験を反復することを含む。いくつかの実施形態において、処置は、全ての所望の効果が見られるまで、数ヶ月および数年継続する。例えば、女性における排卵誘導については、過程は、1ヶ月~6ヶ月のいずれであってもよい。男性における精子形成誘導については、過程は3~24ヶ月のいずれであってもよい。思春期誘導および/または生殖内分泌機能の維持については、処置は数年にわたるものであってもよい。
【0060】
本方法は追加で、または代替的に、オピオイドアンタゴニスト、および/または病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の慣用的な処置を施すことを含んでいてもよい。
【0061】
図5CおよびDは、KSを有する患者におけるものであるため、キスペプチン耐性は、性腺機能低下症の通常嗅覚または嗅覚消失形態で生じ得るものである。患者の遺伝的特性は、その人のキスペプチンに対する応答能力を予測するものではない。これは、実施例3により支持されており(図5D参照)、これにより、2つの遺伝子にバリアントを有する患者がそれでも応答することが示されていた。本試験のデータは、種々の根底にある遺伝学的診断にも関わらず、先天性の性腺機能低下症についての包括的な病理機序としてのキスペプチン耐性の役割を支持しており、これは、例えば、陰性のエネルギー収支状態(例えば、栄養不良、食欲不振、または運動選手)、高プロラクチン血症、成人発症低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、薬物療法効果(例えば、グルココルチコイド、オピオイド)による視床下部性無月経、または軽症型の病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を含む生殖内分泌機能不全、および/または病的HHを発症するリスクがある対象、例えば、特発性不妊症、不規則的な月経サイクル、または異常な精液分析を有する対象の他の原因にも拡張し得る。キスペプチンに対する感受性は、反復性の暴露に伴って上昇し、そのため、いくつかの実施形態において、本方法は、内在性のキスペプチン分泌が、キスペプチン耐性の回復を誘導するために、有意義な応答をもたらす点まで感受性を上昇させるための、キスペプチンの反復投与を含み得る。
【0062】
キスペプチンおよびキスペプチンアナログ
本明細書において使用する場合、キスペプチンは、KISS1遺伝子によってコードされる145アミノ酸前駆体ペプチドの切断によりもたらされる神経ペプチドのファミリーを指す(Lee et al. 1996, Ohtaki et al. 2001)。ヒトにおいて、活性形態のキスペプチンは、54アミノ酸ペプチドと考えられている(Ohtaki et al. 2001, Terao et al. 2004)。本方法は、全長のキスペプチン(NP_002247.3)、54アミノ酸ペプチド(キスペプチン-54(KP54))、または配列YNWNSFGLRF(配列番号1)を含む10アミノ酸ペプチドである、キスペプチン-10の投与を含んでいてもよい。Kiss-10のアナログは、当技術分野において公知であり、Curtis et al., Am J Physiol Endocrinol Metab. 2010 Feb; 298(2): E296-E303; Gutierrez-Pascual et al., Mol Pharmacol. 2009 Jul; 76(1):58-67; Niida et al., Bioorg Med Chem Lett. 2006 Jan 1; 16(1):134-7; Orsini et al., J Med Chem. 2007 Feb 8; 50(3):462-71; Roseweir et al., J Neurosci. 2009 Mar 25; 29(12):3920-9に記載されているものを含む。いくつかの実施形態において、アナログは、[dY]KP-10である。アナログは、保存的な置換、例えば、1、2、または3アミノ酸置換が本明細書に記載されている配列においてなされているものを含んでいてもよく、ここで、アナログは、KISS1Rに対するアゴニスト活性を維持している。いくつかの実施形態において、アナログは、とりわけ、例えば、国際公開第2014118318号に記載されているように、化合物のC末端に近接している領域に位置するグリシン残基と隣接する残基の間のペプチド結合が、二置換1,2,3-トリアゾール環によって置換されているペプチド化合物、米国特許出願公開第20200172575号に記載されているペプチド化合物、米国特許出願公開第20200046797号、米国特許第7,960,348号および第8,404,643号に記載されている化合物1、Parker et al., Theriogenology. 2019 May;130:111-119に記載されているC6、KISS1-305、TAK-448(Ac-D-Tyr-D-Trp-Asn-Thr-Phe-azaGly-Leu-Arg(Me)-Trp-NH2(配列番号2)、Decourt et al., Sci Rep. 2016; 6: 26908; MacLean et al., J Clin Endocrinol Metab. 2014 Aug;99(8):E1445-53; Skorupskaite et al., Hum Reprod Update. 2014 Jul; 20(4): 485-500)(例えば、TAK-448酢酸塩)参照、またはTAK-683(N-アセチル-YWNTFGL{Met-R}W-NH2(配列番号3)、Kanai et al., J Reprod Dev. 2017 Jun; 63(3): 305-310)参照、および米国特許出願公開第20160074320号、国際公開第200285399号、国際公開第2004060264号、国際公開第2004101747号、国際公開第2004063221号、欧州特許出願公開第1604682号、国際公開第2005117939号、および欧州特許出願公開第1464652号に記載されている化合物である。Matsui and Asami, Neuroendocrinology 2014;99:49-60も参照のこと。キスペプチンまたはキスペプチンアナログを含む、その薬学的に許容される塩、医薬組成物を本明細書中の方法において使用し得る。
【0063】
【化1】
【0064】
いくつかの実施形態において、ペプチドアゴニストを使用する場合、ペプチドは改変されている。逆向きの配列、例えばFRLGFSNWNY(配列番号4)を含むペプチドアナログもまた使用し得る。
【0065】
本明細書に記載するペプチドアナログは、当技術分野において公知の、ペプチド模倣物を作製するための方法にしたがって改変されたものを含み得る。例えば、Qvit et al., Drug Discov Today. 2017 Feb; 22(2): 454-462; Farhadi and Hashemian, Drug Des Devel Ther. 2018; 12: 1239-1254; Avan et al., Chem. Soc. Rev., 2014,43, 3575-3594; Pathak, et al., Indo American Journal of Pharmaceutical Research, 2015. 8; Kazmierski, W.M., ed., Peptidomimetics Protocols, Human Press (Totowa NJ 1998); Goodman et al., eds., Houben-Weyl Methods of Organic Chemistry: Synthesis of Peptides and Peptidomimetics, Thiele Verlag (New York 2003)、およびMayo et al., J. Biol. Chem., 278:45746 (2003)を参照のこと。いくつかの場合において、本明細書に記載するペプチドおよび断片のこれらの改変ペプチド模倣バージョンは、非ペプチド模倣ペプチドと比較して、インビボにおける安定性の増強を示す。
【0066】
ペプチド模倣物を作製するための方法は、ペプチド配列中のアミノ酸の1つまたは複数、例えば全てをDアミノ酸エナンチオマーで置換することを含む。かかる配列は、本明細書中で「レトロ」配列と称する。他の方法において、アミノ酸残基のN末端からC末端の順番が逆転し、元のペプチドのN末端からC末端のアミノ酸残基の順番が、改変ペプチド模倣物のC末端からN末端のアミノ酸残基の順番になるようになっている。かかる配列は、「インベルソ」配列と称し得る。
【0067】
ペプチド模倣物は、本明細書に記載のペプチドのインベルソバージョンの両方、すなわち「レトロ-インベルソ」バージョンであってもよい。新規のペプチド模倣物は、ペプチド模倣物中のN末端からC末端のアミノ酸残基の順番が、元のペプチドのC末端からN末端のアミノ酸残基の順番に対応するように配列されたDアミノ酸から構成されていてもよい。
【0068】
ペプチド模倣物を作製する他の方法は、ペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸残基を、化学的には異なるが、アミノ酸の機能的に認識されるアナログ、すなわち人工アミノ酸アナログで置換することを含む。人工アミノ酸アナログは、β-アミノ酸、β-置換β-アミノ酸(「β-アミノ酸」)、アミノ酸の亜リン酸アナログ、例えば∀-アミノホスホン酸および∀-アミノホスフィン酸、および非ペプチド結合を有するアミノ酸を含む。人工アミノ酸は、ペプチド模倣物、例えばペプチドオリゴマー(例えば、ペプトイドアミドまたはエステルアナログ)、β-ペプチド、環状ペプチド、オリゴ尿素またはオリゴカルバメートペプチド、または複素環式環分子の作製に使用し得る。例示的なレトロ-インベルソペプチド模倣物としては、FRLGFSNWNYが挙げられ、ここで配列は全てD-アミノ酸を含む。
【0069】
配列は、また、例えば、アミノ末端のビオチン化またはPEG化、および/またはカルボキシ末端のアミド化によって改変されていてもよい。
【0070】
オピオイドアンタゴニスト
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する方法は、有効量のオピオイドアンタゴニスト、例えばナロキソンもしくはナルトレキソン、または混合アゴニスト-アンタゴニスト、例えばブプレノルフィンの投与を含む。他のもの、例えばナルメフェンもまた使用し得る。オピオイドアンタゴニストは、キスペプチンもしくはキスペプチンアナログ、または本明細書に記載する他の処置の代替として、またはその前、後、もしくは同時に投与し得る。したがって、本明細書において、(i)キスペプチンまたはキスペプチンアナログ、および(ii)オピオイドアンタゴニスト、例えばナロキソンまたはナルトレキソン、または混合アゴニスト-アンタゴニスト、例えばブプレノルフィンを含む組成物が提供される。
【0071】
病的低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の慣用的な処置
いくつかの実施形態において、本方法は、性腺ステロイド補充療法、例えば男性におけるテストステロン、(例えばテストステロンエステル、(例えば、エナント酸エステル、シピオン酸エステル、ウンデカン酸エステル)および女性におけるエストロゲンおよび/またはプロゲスチン(例えば、結合型エストロゲン(Premarin)、エチニルエストラジオール、またはエストラジオール、および/またはメドロキシプロゲステロン、微粒子化プロゲステロン)、および/またはホルモン不妊薬(例えば、エチニルエストラジオール/ノルエチンドロン)を投与することを含む。本方法はまた、ゴナドトロピン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を投与することを含んでいてもよい。任意選択で、クロミフェンおよび/またはレトロゾールを、患者のサブセットにおいて排卵を刺激するために使用してもよい。
【実施例
【0072】
本発明はさらに、以下の実施例に記載されており、これは特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定するものではない。
【0073】
[実施例1]
思春期遅発を有する若者についての思春期の転帰を予測するためのキスペプチンの使用
材料および方法
以下の材料および方法を本実施例で使用した。
【0074】
試験承認
キスペプチン刺激試験時の生理学的試験は、Massachusetts General Hospital (MGH)/Partners IRBによって承認され、ClinicalTrials.gov(NCT01438034)に登録される。キスペプチンはIND113,591の下で使用され、GnRHはIND93,353の下で使用された。思春期遅発およびIHHの遺伝学についての試験は、それぞれBoston Children’s HospitalおよびMGHによって承認された。全ての参加者は、書面によるインフォームドアセントを提出し、少なくとも1人の親が書面によるインフォームドコンセントを提出した。再試験を経験した2人の参加者については、反復試験がPartners IRBによって承認され、参加者およびその親は再試験についての書面によるインフォームドアセントおよびコンセントを提出した。
【0075】
試験プロトコル
試験プロトコルの詳細は、以前に記載されている(20)。端的には、採用基準は、少女については12歳以上であり、少年については13.5歳以上であり、思春期の遅発または停止は、少女については乳房の発達、少年については精巣体積に基づいて定義される。特定可能な思春期遅発の原因を有する子供を排除した。参加者は、一晩の間のベースラインLH分泌、0.313mcg/kgのキスペプチン-10に応答したLH分泌(ΔLHキスペプチン)、および75ng/kgのGnRHに応答したLH分泌(ΔLHGnRH)を測定するための10分ごとの血液サンプリングについて、MGH Translational and Clinical Research Center(TCRC)への2回の入院をしていた。ΔLHキスペプチンおよびΔLHGnRHは、6日間、2時間ごとの拍動性の75ng/kgの皮下GnRHを使用した、下垂体の「プライミング」の前後の両方において評価し、GnRHに対する強い下垂体応答を確実にした(8)。
【0076】
参加者は次いで6ヶ月ごとの経過観察診療に戻り、身体検査およびFSH、LH,およびエストラジオールまたはテストステロンの測定を受け、生殖内分泌活性を評価した。年齢が18歳に達する際に、参加者は生殖内分泌活性の身体学的および研究室的な兆候についての最終評価を受けた。6つのステロイド処置を受けている参加者については、処置は研究室試験の前に行い、性ステロイド測定値が、外来性の投与(エストラジオールについては4週間、注射テストステロンについては6週間、および経皮テストステロンについては2週間にわたる)よりも内在性の産生を確実に反映するようにした。
【0077】
研究室アッセイ
TCRC来診については、LH、FSH、テストステロン(T)、およびエストラジオールが以前に記載されている(20)ように、MGH Clinical Laboratory Research Core、Brigham and Women’s Hospital Research Assay & Analysis CoreおよびLabcorpによって、例えば、血清LHおよびFSHについては、自動化Abbott AxSYMシステム(Abbott Laboratories、Chicago、IL)、血清T濃度についてはDPC Coat-A-Count RIAキット(Diagnostics Products Corporation、Los Angeles、CA)を使用した微粒子酵素免疫アッセイを使用して測定した(60)。LHアッセイの精度は4.3~6.4%であった。インヒビンBは、University of Virginia Ligand Assay Coreによる免疫アッセイによって単一のバッチにおいて測定し、アッセイ内の変動係数は2.5%であった。経過観察来診については、研究室試験は、Labcorp and Quest Diagnosticsによって行われた。Boston領域の外側の参加者については、経過観察データは、その地域の内分泌学者および臨床的研究室からの日常的な臨床治療によって得られた。
【0078】
遺伝学的試験
全エキソーム解析は、Broad Institute(Cambridge、MA)において行った。エキソーム解析データは、IHH/KS、思春期遅発または両方に関連する30遺伝子におけるバリアントについてスクリーニングした(表1(21)に列挙)。バリアントは、American College of Medical Genetics and Genomicsの診断基準に従って分類した(22)。
【0079】
統計学
Fisherの正確確率検定を使用して、キスペプチン刺激試験と思春期の転帰との間の相関を評価した。0.05未満のp値を有意とみなした。Jeffreys区間を使用して、感受性および特異性について信頼区間を算出した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
結果
キスペプチンに対する応答
思春期の遅発または停止を有する17人の参加者が本試験に参加した(4人の少女および13人の少年、図1)。これらの参加者のうちの15人(参加者1~15)についてのキスペプチン-およびGnRH-刺激試験の結果は以前に参照文献(20)に報告されている。参加者Aは、新しく本試験に参加し、「キスペプチン非応答者」パターンを示し、一方、同様にこの試験に新しく参加した、参加者Bは、「キスペプチン応答者」パターンを示した(図2)。参加者およびその神経内分泌表現型の特性は、表4および表2(21)に示す。
【0086】
長期間経過観察
この最初の神経内分泌特徴付けの後、参加者は、6ヶ月ごとの経過観察来診に戻った。8人の参加者(2人の少女および6人の少年)は、経過観察期間の間に思春期に進行した(表4、表3(21))。外来性処置の非存在下において、少年達は、精巣体積の進行性の増加を示し、少女達は、進行性の乳房発達を示した。これらの参加者は全員、外因性キスペプチンに応答し、LHが0.8mIU/mLまたはそれ以上上昇する、「キスペプチン応答者」であった(図3、表4)。
【0087】
対照的に、8人の参加者(1人の少女および7人の少年)は、18歳までに思春期に進行することができなかった(表4、表3(21))。これらの参加者は、身体検査時に持続性の性的未熟性を示し、少年は<4mLの精巣体積を示し、少女は、外因性のエストラジオールによる処置を開始するまで乳房発達がなかった。性ステロイド処置の中断後の内在性の生殖内分泌活性の評価時に、これらの参加者は全員、成人参照範囲を下回る血清濃度の性ステロイド(少女についてはエストラジオール、少年についてはテストステロン)、および低いか、または低性ステロイドの状況下では、不適性に通常のものである血清ゴナドトロピン濃度を有していた。思春期に入ることができなかった、これらの個人は、キスペプチンに対してほとんど~全く応答を示さなかった「キスペプチン非応答者」(1人の少女および6人の男性)(8番目の「非応答者」は、経過観察不能であった)および1人の男性の、0.4mIU/mLのキスペプチンに対してLH応答を示した「中間応答者」であった(図3、表4)。
【0088】
したがって、キスペプチンに対する参加者の応答は、後に思春期に進行した参加者を、進行しなかった参加者から明らかに区別するものであった(p=0.0002)。キスペプチン刺激試験についての感受性および特異性は共に100%であった(95%CI 74~100%)。
【0089】
3つの条件におけるLH測定:日中、一晩およびGnRH刺激後
非刺激LH濃度(日中または一晩の間に測定)および外因性GnRHによる刺激後に測定されたLHは、子供が最終的に思春期に入るかどうかを予測する方法として試験されている(8)。この試験において、2人の少年は、登録時に思春期の範囲の非刺激血清LH濃度を有しており、1人は、後に思春期に進行する様子が見られた。登録時に思春期範囲にLHを有する残りの14人の参加者のうち、7人は思春期に進行し、7人は進行しなかった(図4、表4)。したがって、非刺激LHは、正確には思春期の転帰を予測するものではなかった。
【0090】
初期思春期において、日中ゴナドトロピン測定は、生殖内分泌軸の活性を正確に反映しているものではない可能性もあり、これは、GnRHおよびLH分泌のパルスは、夜間の睡眠の深いステージにのみ生じるためである(23)。したがって、我々は、一晩の血液サンプリングを行い、睡眠関連LH分泌を検出した。一晩の間にLH分泌のパルスを少なくとも1回有していた子供は6人全て、後に思春期に進行する様子が見られた(表4)。対照的に、一晩の間にLHパルスが見られない10人の子供については、種々の転帰が観察された。8人は、思春期に進行することができなかったが、2人は思春期進行を示し、この2人は、神経内分泌評価時に、外因性性ステロイドで処置されていた1人の少女および1人の少年(参加者Bおよび11)であり、これが内因性LH分泌を抑制した可能性がある。
【0091】
GnRH刺激LH分泌もまた、思春期の転帰を予測するための試験として研究されていた(8)。我々のコホートでは、GnRHに対するLH応答は重複しており、後に思春期に進行した対象では1.2~15.4mIU/mLの範囲にあり、進行しなかった対象においては、0.2~7.5mIU/mLの範囲にあった(図4、表4)。
【0092】
したがって、これらの試験、日中に測定したものであっても夜間に測定したものであっても非刺激LH、またはGnRH刺激LHのいずれも、この試験コホートにおいて思春期の転帰を予測するためのキスペプチン刺激試験として正確なものではなかった。
【0093】
インヒビンB
血清インヒビンBの測定は、思春期遅発を有する子供についての思春期の転帰を予測するための方法として提案されている(8~11)。血清インヒビンBは、後に思春期に進行した少年においては、39~209pg/mLの範囲にあり、進行しなかった少年については、<17pg/mL~48pg/mLの範囲にあった(図4、表4)。したがって、インヒビンBは、後に思春期に進行するであろう子供と、進行しないであろう子供を正確に区別するものではなかった。
【0094】
遺伝学的試験
患者のサブセットは、エキソーム解析に同意した。30IHH遺伝子における病原性および病原性のある可能性が高いバリアント(表1(21))が、後に思春期に進行を見せた5人の参加者のうちの2人および、思春期に入らなかった6人の参加者のうちの2人において特定された(表5)。病原性または病原性のある可能性が高いバリアントは、IGSF10においては同定されず、これは、体質性遅発と関連する可能性のある遺伝子である。したがって、遺伝学的試験からは、思春期遅発を有する子供についての思春期の転帰を予測することはできなかった。
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
[実施例2]
思春期遅発を有する若者についての思春期の転帰を改善するための超生理学的キスペプチン
実施例1に記載する試験において思春期遅発を有する1人の対象は、15.3歳の時点で0.313μg/kg IVB(生理学的用量)のキスペプチン-10の投与を受けており、LH応答を開始することができなかった。その直後、別の入院の間に、対象は、超生理学的用量のキスペプチン(18μg/kg)の投与を受け、驚くべきことに、応答を見せた。対象の最終的な診断は、18歳までに思春期の身体的兆候を示すことができないことによって示されるように、IHHであった。このことによって、1)GnRH欠損は、キスペプチン耐性によるものであり得ること、ならびに2)この耐性は、高用量のキスペプチンによって克服し得ることが示される。
【0098】
この観察に基づいて、高用量および/または反復的なキスペプチンの投与が、IHH/KSを有する患者におけるGnRH誘導LH分泌を刺激し得ることが仮定された。この仮説に取り組むために、次のプロトコルを開始した、1)q10分の血液サンプリング×6時間、2)キスペプチン投与q2時間×40時間(それぞれ4用量の5セット:0.313、0.939、3.13、および13.19μg/kg)。比較のために、図5Aは健常な男性を示している。彼は、正常なLHパルスを有し、生理学的な用量のキスペプチンは、明らかにGnRH誘導LHパルスをもたらした。図5Bは、内在性LHパルスを有さず、キスペプチンに対してLH応答を示さない(すなわち、キスペプチン耐性)KS男性を示す。男性は、プロキネクチン受容体をコードする遺伝子、PROKR2およびDMXL2に稀少なバリアントを有する。図5Cは、生理学的用量のキスペプチンには応答しなかったが超生理学的用量に応答し、明確なキスペプチン誘導GnRH誘導LHパルスを有するKS女性を示している。さらに、パルスの振幅は経時的に上昇し、このことは、反復暴露の「プライミング」効果を示している。女性の遺伝学的特性は未だ知られていない。図5Dは、遺伝学的バリアントをも有するKS男性を示し、男性の応答は明白ではないが、超生理学的キスペプチンに対しても応答した。図6は、経時的な各用量に対する応答を明らかに示す、再グラフ化された図5Cからのデータを示す。したがって、持続性の性腺機能低下症を有する患者は、単一のIVボーラス用量においてキスペプチン耐性であると考えられたが、これらの患者はキスペプチンを反復的に、特により高い用量において投与する際に大きく異なる応答を示した。そのデータは、IHH/KSを有する患者におけるGnRHニューロンが、反復的キスペプチン刺激によって、休止状態から呼び起こされ得ることを示している。さらに、この反復性キスペプチン刺激は、GnRH誘導LH脈動をもたらした。
【0099】
[実施例3]
ニューロキニンBおよびダイノルフィンシグナル伝達から独立した、視床下部生殖内分泌パルス生成部活性
内在性因子(例えば、性腺ステロイド、ストレスホルモン、および栄養シグナル)および外部手がかり(例えば、社会的手がかりおよび日長)がGnRH放出を調節する求心性経路の特定は、近年、キスペプチン/ニューロキニンB/ダイノルフィンシステムに焦点を当てている(34)。キスペプチン、ニューロキニンB(NKB)およびそれぞれの受容体における不活化変異は、ヒトおよびマウスにおいてIHHを引き起こし、GnRHパルスの生成においてこれらの神経ペプチドを関連付けている(35~42)。ダイノルフィンは、月経サイクルの黄体期の間にプロゲステロンに応答したGnRHパルス生成活性の重要な遅延化を提供することによって、この刺激活性に対立すると考えられている(43~45)。これらの3つの神経ペプチドは、弓状態核、KNDy(キスペプチン-ニューロキニンB-ダイノルフィン)二ユーロンのニューロン集団において融合し、協調した様式で作用し、GnRHニューロンの分泌活性を同調させ、生殖内分泌機能を駆動させるのに必要なGnRH分泌のパルスを生成する(46~48)。
【0100】
両アレル性の機能損失型の変異は、遺伝子の両コピーを破壊するため、かかる変異を有する患者(すなわち、「ヒトノックアウト」)は、遺伝子の破壊または損失の表現型の結果に対する新規の洞察を提供する。この試験において、NKB(KNDyニューロンの重要な神経ペプチドの1つ)をコードする遺伝子に両アレル性の完全な機能損失型の変異を有する4人の姉妹は、遺伝子型駆動性表現型決定を受けた。IHHと最初に診断されたにも関わらず、何人かの姉妹は、成人期において自然に生殖内分泌機能を回復した。試験は、正常および、ニューロキニンB欠損家族メンバーならびに正常およびニューロキニンB欠損マウスの両方において実施し、NKBのGnRHパルス生成における役割を検討し、NKB、キスペプチンおよびダイノルフィンの間の相互作用を分析した。特異的な神経内分泌プローブの組合せの使用によって、視床下部が、3つのKNDy構成要素、NKBおよびダイノルフィンのうちの2つの遺伝学的および薬理的なアンタゴニズムにも関わらず、GnRH誘導LHパルスを生成することができることが明らかになった。
【0101】
結果は、IHHを有する対象におけるNLX注入の間のLHレベルの上昇を示している。現在までに、IHHを有する患者において通常の生理学を模倣する内在性GnRH誘導LH脈動を刺激する能力は、存在していなかった。
【0102】
LHパルスに関する考慮は、対象4が、対象5よりも顕著なNLXに対する応答を有していると考えられた観察を含んでいる。対象4は、外因性GnRHによる下垂体プライミングを受け、対象5は受けておらず、これが、対象4におけるLH応答に対するNLXの効果を増幅させた可能性がある。対象4はまた、GnRH放出時に内在性キスペプチン作用を増強させ得る間欠性のホルモン補充療法を受けていた。
【0103】
事前の試験において、健常男性および黄体期の女性において強いGnRH誘導LH応答をもたらす、同用量のkp-10が、一定範囲の遺伝子型のIHH患者において何の効果ももたらすことができないことはGnRH神経回路網の機能的な能力が、IHHを有する患者においては根本的に損なわれていることを示している(58)。これらのTAC3またはTACR3以外の遺伝子型を有するIHH患者における以前の観察とは対照的に、対象3、4および5は、kp-10 IVBに対して応答した(58)。ここで、低頻度のパルスおよび外因性のkp-10投与に対する応答能力は、パルス生成に必要なGnRH神経回路がNKBを欠損する患者においてインタクトなままであることを示している。しかし、LHパルスと共にkp-10に応答できることは、IVB投与の状況においてのみ観察され、以前他者によって報告されているような(59)継続的な注入では観察されなかった。kp-10の用量、LHアッセイおよびLHパルスアルゴリズムが異なっていることによって、この不一致を説明し得る。
【0104】
方法
以下の材料および方法を実施例3において使用した。
【0105】
対象および適格性判断基準
単一の血族の家族由来の5人の女性をその遺伝子型に基づいて募集した(表6)。対象は、生殖的に正常である(対象1;遺伝子型 TAC3 c.61_61ΔG p.A21LfsX44ヘテロ接合型)か、または低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の診断を有していた(対象2~5、遺伝子型TAC3 c.61_61ΔG p.A21LfsX44ホモ接合型)。兄弟および親は、試験参加に利用できなかった。IHHは、18歳以上の年齢および低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を引き起こし得る特定可能な医学的症状の非存在下において、低いまたは正常なゴナドトロピンレベルの状況における性腺機能低下性ステロイドレベル(女性においては、エストラジオール<20pg/mL)として定義した。以前の我々の報告(19)にあるように、女性におけるIHHの回復は、1)外因性GnRHまたはゴナドトロピン療法を使用しない妊孕性、2)処置の非存在下における少なくとも3ヶ月間の自発的な月経サイクル、および/または3)女性についての正常な範囲内のLHパルス頻度および振幅として定義された。回復後の再発は、性腺機能低下性ステロイドレベル(女性においては、血清エストラジオール<20pg/mL)および/または無月経を再び有することとして定義された。
【0106】
対象はまた、遺伝学試験にも参加した。患者のDNAは、以前に記載されているように(20、21)、IHHを引き起こすことが知られている遺伝子において、Genome Aggregation Database(gnomAD)において1%未満の少数のアレル頻度を有するものとして定義される、レア配列バリアント(RSV)についてスクリーニングした。スクリーニングした遺伝子は、CHD7(MIM608892)、FGF8(MIM600483)、FGFR1(MIM136350)、GNRH1(MIM152760)、GNRHR(MIM138850)、HS6ST1(MIM604846)、ANOS1(以前はKAL1と称した、MIM300836)、KISS1(MIM603286)、KISS1R(MIM604161)、NSMF(以前はNELFと称した、MIM60813)、PROK2(MIM607002)、PROKR2(MIM607123)、TAC3(MIM162330)およびTACR3(MIM162332)であり、エキソンのPCR増幅およびその後のサンガー配列決定により行われた。RSVは、それらが、4つのインシリコ予測プログラムPolyPhen-2(22)、SIFT(23)、Mutation Taster(24)またはPanther(25)のうちの少なくとも2つにおいて損傷性であると予測された場合に報告された。12項目の嗅覚試験からのUniversity of Pennsylvania Smell Identification Test(UPSIT)スコアを嗅覚能力の分類に使用した(26、27)。
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
試験設計
2010年に、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有する対象(対象2、3、4、5)は、血液サンプリングを10分間ごと(q10分間に)6~8時間行い、Wellcome Trust Clinical Research Facility、Cambridge、UKにおいて、I.Sadaf Farooqi教授の指示の下で、内在性LH脈動をマッピングする、詳細な神経内分泌表現型決定を行った(図7A)。
【0110】
2016年に、対象1、3、4および5は、内在性のLHパルスパターンが、GnRH、キスペプチン112-121(kp-10)およびダイノルフィンを遮断する非特異的なオピオイドアンタゴニスト、ナロキソン(NLX)の投与によって改変し得るかを決定するための、Massachusetts General Hospital (MGH) Clinical Research Center(CRC)における第2の一連の日中の試験に参加するように招待された(図8A図9A図10A)。下垂体性腺刺激ホルモン分泌細胞が、準備ができている状態にあることを確実にするために、対象3および4は、25ng/kgの外因性の拍動性GnRHを2時間ごとに(q2h)、Crono Fポータブル注入ポンプによって(Cane S.p.A、Turin、Italy)MGH CRCに入院する3日前に投与された(28)。対象5は、何らかの神経内分泌活性(年単位の自発的出血)の近年の根拠を有していたため、拍動性GnRHによるプライミングを受けなかった(表6)。
【0111】
ベースライン試験:全ての対象は、少なくとも6時間の間、q10分間の血液サンプリングを受け、MGH CRCへの来診日の1日の間の内在性GnRH誘導LH分泌を評価した(図7A図8A)。
【0112】
キスペプチンボーラス:内在性GnRH誘導LH分泌の評価後、対象3,4および5は、我々のグループの以前の仕事として、0.24nmol/kgのkp-10の静脈内ボーラス(IVB)の投与を受けており、この用量が、健常な男性および健常な黄体期の女性において生理学的な振幅のGnRH誘導LHパルスを一貫して誘発することが示されていた(29、30)(図8A)。対象4、5は、次いで0.72および2.4nmol/kgのkp-10IVBを投与された。対象3、4、および5は、次いで、これらの試験の最後に75ng/kg IVBのGnRHの投与を受け、これは、我々のグループが以前にこの用量が、インタクトな性腺刺激ホルモン分泌細胞機能を有する個人において強力なGnRH誘導LH応答をもたらすことを示しているためである(31)。
【0113】
キスペプチン注入:IVB試験とは対照的に、対象3は、CRCに戻り、kp-10が12時間連続的な注入(9.5nmol/kg/時間)として投与される第2の入院に参加し、内在性GnRH誘導LH脈動に対する影響を決定した。IVB試験と同様に、血液サンプルをq10分間で採取し、75ng/kg IVBのGnRHを試験の最後に投与した(図9A)。
【0114】
ナロキソン注入、ダイノルフィン遮断:対象4および5は、CRCに戻り、NLX注入(10mg IVBのNLX後の、0.8mg/時間の注入)を13時間受け、オピオイドアンタゴニズムによるダイノルフィンシグナル伝達の遮断の、NKBシグナル伝達の非存在下における内在性LHパルスに対する影響を決定した。注入の途中に、kp-10およびGnRHのボーラス(kp-10用量範囲:0.24~2.4nmol/kg、GnRH:75ng/kg)を投与し、NLX投与が、これらのペプチドに対する応答を増強させ得るかを決定した(図10A)。再び、血液サンプルをホルモン測定のためにq10分間採取した。看護の過誤により、対象5は、9時間で早期に終結したNLX注入を受けた。
【0115】
ペプチドの入手源
キスペプチンの10アミノ酸アイソフォームであるキスペプチン112-121(プレプロホルモンのアミノ酸112-121に対応)およびGnRHは、NeoMPS(PolyPeptide Laboratories、San Diego、CA)による良好な製造実践によって合成された。NeoMPSは、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Developmentに対する契約の下で、キスペプチン112-121を供給した。ナロキソンは、Hospira(Lake Forest、IL)から注文された。
【0116】
ヒト研究室アッセイ
各サンプルについてのLHおよび2時間プールのエストラジオールを、自動化Abbott ARCHITECT システム(Abbott Laboratories、Inc.、Abbott Park、IL)を以前に記載されているように使用して(28)、直接的な免疫アッセイによって測定した。エストラジオールは、2010~2011年の試験については、質量分析ベースのアッセイに追跡可能な第2世代免疫アッセイによって、2016年の試験については、Elecsys(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN)によって測定した(32、33)。
【0117】
思春期および成体Tac2ノックアウトマウスにおける拍動性LH放出の評価
Tac2+/-繁殖対を、Texas A&M Institute for Genomic Medicine(College Station、TX)によって作製し、遺伝子型を決定した(34)。全てのマウスは、Sv129/C57BL/6 ハイブリッドバックグラウンドで作製および維持され、Brigham and Women’s Hospitalにおいて、0600~1800時間の光、および供給される食料および水には自由に近づける状態で、温度および光を制御した環境で群収容(ケージ当たり3~5匹)された。マウスは、サンプリング条件への順応を可能にするために、実験前2~6週間毎日ハンドリングされた。
【0118】
LH分泌の変化は、性的に成熟している途中である(6週齢)および成体(16週齢)のインタクトな、および卵巣切除した(OVX)Tac2ノックアウト(KO)雌マウスおよび対照(野生型、WT)同腹仔(群当たりn=4~5)において測定した。マウスにおけるTac2は、ヒトにおけるNKBをコードしているため、これらのマウスはNKBを欠損している。拍動性のLH分泌の測定は、尾部の先端の単一の切開を介した反復性の血液採集によって評価した。尾部は、生理食塩水で洗浄した後、4μlの血液を、ピペットで切断した尾部から各タイムポイントにおいて採取した。全血をすぐに116μlの0.05% PBSTで希釈し、ボルテックス振盪し、ドライアイス上で凍結させた。サンプルを次のLH ELISAのために-80℃で保存した。kp-10投与試験のために、36の連続的な血液サンプルを、6時間のサンプリング期間にわたって収集した。サンプリング170分の時点(または思春期Tac2ノックアウトマウスのサンプリングについては180分の時点)でマウスに、マウスkp-10を腹腔内注射した(7.5nmol/100μl生理食塩水、Phoenix Pharmaceuticals)。NLX投与試験については、30の連続的な血液サンプルを、WTおよびTac2 KOマウスからの5時間のサンプリング期間にわたって収集した。WTおよびTac2 KOマウスは卵巣切除されており、LHパルスの生成におけるダイノルフィンの除去の作用をより良く決定するために、LHパルスの頻度および振幅を増加させた。サンプリングの120分の時点において、マウスにNLXを腹腔内注射した(5mg/kg/100μl生理食塩水、Sigma Aldrich)。
【0119】
データ解析
ヒトパルス解析:LHパルスは、検証されたSanten and Bardin法の改変(35、36)を使用して特定し、逆重畳積分アルゴリズムによって増強された(29)。kp-10誘導またはGnRH誘導LHパルスのパルス振幅を、kp-10またはGnRH投与の0時点とパルスのピークとの間の差異として算出した。
【0120】
マウスパルス解析:LHパルスは、LHサンドウィッチELISAによって収集される、LHパルスデータを読み取るカスタムメイドのMATLABコードを使用して特定した。コードは、a)LH値の高さが、2の以前の値のいずれかの高さを20%上回る、ならびに以下の値の高さを10%上回るか、b)第2の時間間隔(i=2)におけるピークが、パルスと見なされる前の単一の値を20%上回るかに基づいてパルスを決定するループを含む。
【0121】
統計:対応のある両側t検定を、ベースラインにおける平均LH、LH振幅(LHパルスの最下点からピーク)およびFSHを、上述の方法において規定するように、神経ペプチド介入に対する応答と比較して評価した。全ての値は、特に断らない限り、平均値±標準誤差として報告されている。
【0122】
試験承認
全てのヒト試験は、Institutional Review Board of MGH/Partners Healthcareまたは Local Regional Ethics Committee of Cambridge、United Kingdomによって承認された。全ての対象は、試験に参加する前に、書面によるインフォームドコンセントを提出した。マウス試験については、Brigham and Women’s Hospital Institutional Animal Care and Use Committeeが全ての手法を承認している。
【0123】
結果
試験対象の最初の臨床的提示および続く過程
対象1は、正常な初潮タイミング、正常な月経サイクルおよび自然妊娠を有していた(表6)。その姉妹である、対象2、3、4および5は、13~15歳の時点において、原発性無月経を有すると提示され、二次性徴を誘導するためにエストロゲン療法を受けた。18歳までの自発的な性成熟、正常なMRIが見られないこと、および低ゴナドトロピンのために、対象2、3、4および5は全員IHHの診断を受けた(表6)。姉妹の中に嗅覚消失のものはいなかった。4人のIHH姉妹のうちの3人は、妊孕性についての薬物療法なしに妊娠したこと(対象3および4)および規則的な自発性の月経サイクル(対象5)によって証明されるように、22~28歳において性腺機能低下症の回復を示した。しかしながら、回復は持続的なものではなく、生理学的試験の時点では、対象3、4,および5は、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の状態に戻っていた(表6)。
【0124】
遺伝学
候補遺伝子の配列決定により、対象1(正常な思春期タイミングおよび正常な月経サイクル)が、NKBをコードする遺伝子(TAC3)における単一ヌクレオチドの欠損についてヘテロ接合型(c.61_61ΔG p.A21LfsX44)であることが明らかになった。この塩基対欠損は、フレームシフト変異および、NKB配列前にプレプロホルモンの未成熟なストップコドンがもたらされ、これはナンセンス変異依存分解機構をもたらすと予測される。転写物がナンセンス変異依存分解機構を回避する場合であっても、フレームシフト変異は、プロセシングされて、NKBとして知られるデカペプチドを産生するプレプロホルモンの一部を破壊するであろう。対象2、3、4および5は、全員低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を有しており、このフレームシフト変異についてホモ接合型であるこの変異は新規であり、123,136のエキソームおよび15,496のゲノムを含む規範的なデータベースであるgnomADには見出されない(21)。注目すべきことに、gnomADには、TAC3についてタンパク質切断変異についてホモ接合型である個人は全く存在しない。この家族は、IHHを引き起こすことが知られている他の遺伝子変異を保有していない。
【0125】
ベースライン試験:緩やかなLHパルス頻度によって、ニューロキニンBのないIHH個人を特徴付ける
これらのベースライン試験時に、IHH姉妹(対象2,3,4および5)は、ホルモン薬物療法なしで、無月経であり血清エストラジオールレベルは低いが検出可能であり、プロゲステロンレベルは低かった(表6、図7B)。IHHを有する全ての対象は、低頻度のLH分泌イベントによって証明される、弱まっているが、組織化されたGnRHパルス発生部の根拠を有していた(低エストラジオール、低プロゲステロンによって特徴付けられる生理学的な卵胞期前期における比較のため、LH頻度7.0±1.8パルス/12時間、LH振幅2.3±1.0IU/L[平均±2SD])(37、38)。対象2、4および5において1つのパルスが、サンプリング間隔において観察された(7~8時間、平均LH振幅1.5±0.8mIU/mL)(図7B)。対象3においては、試験の間パルスは全く観察されなかった。さらに、対象3、4および5のLHレベルは、サンプリング間隔の開始時に緩やかな減衰を示し、このことは、LH分泌イベントが、試験の開始前に起こっていたことを示している。したがって、全ての対象が、異常に低い頻度のLH分泌イベントを示した。2016年に試験を反復する際、試験対象(対象3、4、5)は再び無月経であり、ホルモン薬物療法なしでは、エストラジオールレベルは低いが検出可能であった。全ての試験は、2010年に観察されたものと同一の内在性LHパターンを再現し、LH分泌イベントの頻度は低く、平均LH振幅は1.3±1.1mIU/mLであった(図8B)。
【0126】
対照的に、対象1、TAC3におけるヘテロ接合型の切断バリアントを有する健常姉妹は、月経サイクルの4日目において血液サンプリングを受けた(卵胞期前期;EFP)。対象は、12時間に11のLHパルスを示し、平均LHパルス振幅は、0.46±0.25mIU/mLであった(図7C)(健常な卵胞期前期の女性:頻度、7.0±1.8パルス/12時間、振幅2.3±1.0IU/L[平均±2SD])(19、20)。
【0127】
キスペプチンボーラス:NKBを有しないIHH個人はキスペプチンに応答する
全ての対象は、キスペプチンに応答し、LHパルスを有する(図8B)。2人の試験対象は、3つのキスペプチンボーラスの投与を受け、6ボーラスの5つにおいて、キスペプチン後にLHパルスを示した。1つの例外は、内在性LHピークの直後にキスペプチンが投与された場合に生じ、単一ピークの延長がもたらされた(図8B、対象5)。この応答性と一致して、全ての対象は、適切な下垂体プライミングを示し、これは、キスペプチン応答性を損ない得る下垂体欠損がないことを示している(GnRH投与後のLHパルス振幅、対象3:1.6mIU/mL、対象4:5.1mIU/mL、対象5:3.0mIU/mL)。
【0128】
キスペプチン注入:拍動性LH分泌なし
対象3は、kp-10注入(9.5nmol/kg/時間)を12時間受け、LHパルスは検出されなかった。注入の間、平均LHの軽度の増加が見られた(ベースライン:0.46±0.24mIU/mL;kp-10注入:0.63±0.08mIU/mL;p<0.0001)(図8B&9B)。平均FSHレベルはまた、ベースラインと比較して上昇した(ベースライン:1.9±0.2mIU/mL;kp-10注入:2.4±0.1mIU/mL;p<0.001)。kp-10注入後、対象3は、GnRHのIVBの投与を受け、これは、前日にベースライン試験において観察されたものと同等の振幅のLHパルスがもたらされた(ベースライン、1.6mIU/mL、kp-10注入後、2.5mIU/mL)。
【0129】
ナロキソン注入:ナロキソンによるダイノルフィンの遮断は、LH&FSH分泌およびLHパルス頻度を上昇させるが、キスペプチン誘導LHパルスを増幅しない
対象4および5は、非選択的オピオイドアンタゴニスト、NLXならびに漸増ボーラスのキスペプチン(0.24、0.72、2.4nmol/kg)の投与を受け、ダイノルフィンシグナル伝達の遮断の、内在性およびキスペプチン刺激LH分泌パターンに対する影響を決定した。両方の試験は、ベースラインと比較して、NLX注入の間の平均LHレベルの上昇を示した(対象4-ベースライン:1.44±0.76mIU/mL、NLX:2.82±0.54mIU/mL、p<0.00001;対象5-ベースライン:0.6±0.25mIU/mL、NLX:1.1±0.37mIU/mL、p<0.00001、適合させたタイムポイントにわたる)(図8B、10B)。NLX注入のonおよびoffのLHサンプリングが完了し、比較が可能になった試験対象、対象4について、LHパルス頻度は、6時間に1つのパルス(図8B)から6時間に4つのパルス(図10B)まで上昇した。平均FSHレベルもまた、ベースラインと比較して上昇した(対象4-ベースライン:3.7±0.3mIU/mL、NLX:5.0±0.9mIU/mL;p<0.01;対象5-ベースライン:3.3±0.3mIU/mL、NLX:5.1±0.1mIU/mL;p<0.0001)。LHパルス振幅には一致する変化は見られなかった(対象4-ベースライン:2.59mIU/、NLX:0.45±0.29mIU/mL、対象5-ベースライン:0.82mIU/mL、NLX:1.22および1.39mIU/mL)。NLX注入は、オピオイド緊張を阻害することによってダイノルフィンを遮断し、NKBシグナル伝達がないことによって、IHHを有する個人において、ゴナドトロピン分泌を上昇させ、LHパルス頻度を改善する。
【0130】
対象4および5はまた、漸増ボーラスのkp-10(0.24、0.72、2.4nmol/kg)の投与を受け、LHパルスが続き、再現結果がNLX offで見られた(図8B、10B)。onまたはoffのNLXに対するキスペプチン誘導LH応答の変化には有意な差はなく、明確な用量-応答関係性はなかったが、各用量における少数のボーラスが、かかる関係性を評価する能力を限定していた。
【0131】
キスペプチンボーラスは、思春期および成体のWTおよびNKB欠損(Tac2 KO)マウスにおいてLH放出を刺激する
IHH患者における知見を実証するために、我々はTac2 KOおよびWTの対照雌マウスにおいて試験を行った。kp-10の辺縁投与は、年齢および遺伝子型に関わらず、全ての群においてLHの強い上昇を誘発した。興味深いことに、NKBを欠く、思春期のTac2 KO雌マウスは、対照の雌(2.67±0.48ng/ml、n=5;p<0.01)よりも高い振幅のLH放出を示した(5.29±0.43ng/ml、n=5)(図11)。しかし、LHは、Tac2 KOマウスにおいて(注射後52±3.72分、n=5)、WT対照(68±3.72分、n=5;p<0.01)よりも速くベースラインに戻った。成体WTマウスは、kp-10に応答した予期されるLHパルスを示し、一方、kp-10に応答したTac2 KOマウスは、二相性の応答を示し、これはLHの2つの重複するピークを示す(図10)。両方の成体群において、LH放出の誘導は、思春期マウス(思春期WT:注射後、68±3.742分、n=5 vs 成体WT142.5±4.78分、n=4、p<0.0001;思春期Tac2 KO:52±3.742、n=5 vs 成体Tac2 KO 156.7±3.33分、n=3、p=0.07)よりも維持されていると考えられた。
【0132】
ナロキソンは成体OVX WTおよびTac2 KOマウスにおける拍動性LH放出を増加させる
NKBの非存在下におけるオピエート性(opiatergic)(ダイノルフィン)のキスペプチンシグナル伝達に対する影響の役割を決定するために、我々は、ダイノルフィンを阻害する、NLXのLH分泌に対する効果を試験した。NLXの5mg/kgの辺縁投与は、投与の20分以内に、WT(図12A~C)およびTac2 KOの雌マウスの両方においてLHの上昇を誘導した(図12D~E)(WT:NLX前20分、2.37±0.59、n=4 vs NLX後20分、4.31±0.32、n=4;p<0.05.Tac2 KO:NLX前20分、0.31±0.06、n=4 vs NLX後20分、1.22±0.29、n=4、p<0.05)。
【0133】
NLX投与後、WTマウスは、NLX投与後の続くLHパルスの期間が増加して応答した(NLX前:WT25±2.67分、n=3;Tac2 KO 23.33±2.10分、n=3、p=0.13;NLX後:WT:83.33±12.02分、n=3;Tac2 KO:30±5.77分、n=3;p<0.01)(図12A)。さらに、NLX後のLHパルスの期間の増加は、WTマウスにおける顕著なより長いパルス間の間隔を伴っていた(WTパルス間間隔、NLX前25.38±1.83分、WTパルス間間隔、NLX後46.67±3.33分、p<0.0002)。
【0134】
Tac2 KO動物は、OVX対照よりも顕著に低下したLHベースラインおよびパルス数を示した(NLX120分前において0-1LHパルス)。NLXの投与は、全ての場合において、処置後20分で生じた強いLHパルスを誘導し、ベースラインと比較して2倍の上昇に達したピークを有していた(NLX前:0.31±0.06mIU/mL、NLX後:1.2±0.28mIU/mL、p<0.02)。限られた数のLHパルスは、パルス間の間隔の解析を排除しており、データは、NLXが、LHパルスの期間を上昇させなかったことを示している(NLX前 Tac2 KO 23.33±2.10分、n=3、NLX後:Tac2 KO:30±5.77分、n=3、p>0.05)(図12D~E)。
【0135】
【表10-1】
【0136】
【表10-2】
【0137】
【表10-3】
【0138】
【表10-4】
【0139】
【表10-5】
【0140】
【表10-6】
【0141】
【表10-7】
【0142】
【表10-8】
【0143】
【表10-9】
【0144】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と関連して記載されているが、上述の記載は、例示を意図するものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。他の局面、利点および改変は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
【配列表】
2022534807000001.app
【国際調査報告】